女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
過去の映画作品紹介(2008年)
2008年1月12日〜
2008年1月19日〜
2008年1月26日〜
2008年2月1日,2日〜
2008年2月9日〜
2008年2月16日〜
2008年2月23日〜
2008年3月1日〜
2008年3月7日〜
2008年3月15日頃〜
2008年3月22日〜
2008年3月29日〜
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2008年4月12日〜
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2008年8月9日〜
2008年8月16日〜
2008年8月23日〜
2008年8月30日〜
2008年8月31日〜10月4日
2008年9月3日〜9月7日
2008年9月5日〜9月7日
2008年9月6日〜
2008年9月12日〜21日
2008年9月13日〜
2008年9月20日〜
2008年9月27日〜
2008年10月4日〜
2008年10月11日〜
2008年10月18日・19日〜
2008年10月18日・19日〜
2008年10月25日〜
2008年11月1日〜
2008年11月8日〜
2008年11月15日〜
2008年11月21日〜
2008年11月21日〜
2008年11月23日〜2009年1月24日
2008年11月29日〜
2008年12月5日〜
2008年12月6日〜
2008年12月13日〜
2008年12月20日〜
2008年12月21日〜2009年2月7日
2008年12月23日〜
2008年12月29日
2008年12月27日〜

ジプシー・キャラバン

監督:ジャスミン・デラル
出演アーティスト: タラフ・ドゥ・ハイドゥ−クス(ルーマニア)、エスマ(マケドニア) 、ファンファーラ・チョクルリーア(ルーマニア)、アントニオ・エル・ピパ・フラメンコ・アンサンブル(スペイン)、マハラジャ(インド)
特別出演:ジョニー・デップ

祖国も権力も持たない彼らが、生きる為に与えられたものは「音楽」だった

11世紀、インド北部パンジャーブ地方から放浪の旅に出て、北部アフリカ、ヨーロッパなどへ渡り、ジプシーという呼び名(エジプト人という誤解)で、各地で偏見を持たれ、差別的扱いを受けてきた自称ロマの人たち。
ナチスドイツ時代には、ユダヤ人と同じく強制収用所に送られ、50万人もの人が虐殺されたという。

ロマを自認する、スペイン・ルーマニア・マケドニア・インド4カ国5つのバンドが、“ ジプシー・キャラバン ”を組んで、6週間をかけて北米の諸都市を廻った。監督のジャスミン・デラルは、ツアーを追いかけるとともに、各バンドの故郷を訪れて彼らの音楽の背景を映し出し、本作を作り上げた。

スペインのフラメンコ一家に生まれたアントニオ・エル・ピパ。 外見はかなりヨーロッパ的だが、他のロマの人たちと共に過ごして、明らかに同じ血を感じると言う。
マケドニアのエスマは、ジプシー・クィーンと呼ばれる貫禄ある歌手。マケドニア人の夫との間に子供は出来なかったが、50人ものロマの孤児たちを引き取って音楽家を育てている。「世界から偏見や戦争、難民を無くしたい」のが彼女の願い。
映画『耳に残るは君の歌声』でルーマニアのタラフと出会ったジョニー・デップが、タラフへの思いを語っているのも興味深い。
私にとっては、インドのマハラジャの故郷を訪ねて行った先がラージャスターンだったことが嬉しい驚きだった。なぜだか2度訪れたことのあるジャイサルメール。この町からさらにパキスタン国境に近いところにある沙漠で、日の沈むのを待ちながら音楽と踊りを楽しんだのだが、それが実はロマのルーツだったと今さらながらに知った。
11月公開の『ヴィットリオ広場のオーケストラ』では、ローマで世界各地からの移民の人たちが集まって音楽を奏でている姿が描かれているが、この『ジプシー・キャラバン』では、逆に世界に散らばったルーツを同じくする民が一堂に会しているのが面白い。世界各地で偏見と差別に耐えてきたロマの人たちの心からの叫びを聞いた思いがする。ことに、「迫害された復讐は子供に教育を与えることで果たしたい」という言葉が深く心に残った。(咲)

アメリカ/2006/35mm/カラー/ 115分/1:1.85
提供:AMGエンタテインメント
配給:アップリンク、AMGエンタテインメント

公式HP>> http://www.uplink.co.jp/gypsycaravan/

★2008年1月12日(土)より、渋谷シネ・アミューズほか全国にて順次公開

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レンブラントの夜警(原題:Nightwatching)

監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ
撮影:レイニエ・ファン・ブルーメーレン
音楽:ヴウォテック・パヴリク、ジョヴァンニ・ソリーマ
美術:マーティン・ピエスルマ
衣装:ヤグナ・ヤンカ、マリット・ファン・テル・ブルグ
キャスト:マーティン・フリーマン(レンブラント)、エヴァ・バーシッスル(サスキア)、ジョディ・メイ(ヘールチェ)、エミリー・ホームズ(ヘンドリッケ)、ナタリー・プレス(マリッケ)ほか

1641年、35歳のレンブラントは、すでに一流の肖像画家としてヨーロッパ中に知られていた。多くの弟子たちと広々としたアトリエで注文をこなし、妻のサスキアのビジネス手腕も手伝って、莫大な富を築いていた。待望の男子も誕生し、レンブラントはまさに人生の絶頂期にあった。1642年に自警団の集団肖像画の注文を受けるまでは・・・。
肖像画はその人物の内面にまで迫って描かれた。特にこの才能に長けていたレンブラントは、依頼主の怒りを買い、訴訟騒ぎになったこともあった。彼は自警団の一人一人をつぶさに観察し始める。


(c)Nightwatching B.V.2007

最初のシーン、闇の中で光を受けているのは赤い天蓋つきの大きなベッド。まるで大きな舞台のようなしつらえです。舞台劇のように人々が登場してくるのにくぎづけになりました。レンブラントは偉人としてではなく、絵の才能はあるけれど欲と愛にも迷う、ごく普通の男として描かれています。
「夜警」の絵さながらに美しい光と影の中、表と違った顔を持つ人間模様が浮かび上がります。グリーナウェイ監督が、美術界でも活躍する作家であることを納得させられる美しさでした。門外不出の名画ができていく過程を見られるなんて素敵じゃありませんか?絵そのものに関心のある人はもちろん、凝った衣装や美術が好きな人、謎解きが好きな人それぞれが楽しめる作品です。(白)

2007/カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド・オランダ・イギリス合作/
カラー/35mm/スコープサイズ/ドルビーデジタル/139分
配給:東京テアトル、ムービーアイ
宣伝:メゾン

http://eiga.com/official/nightwatching/

2008年1月12日(土)〜テアトルタイムズスクエアほか全国にて公開

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ハーフェズ ペルシャの詩(うた)

監督+脚本+編集+撮影+セット・デザイナー+衣装:アボルファズル・ジャリリ
プロデューサー:定井勇二 + アボルファズル・ジャリリ
コーディネーター:ショーレ・ゴルパリアン
音楽:ヤンチェン・ラモ + アボルファズル・ジャリリ
出演:メヒディ・モラディ、麻生久美子、メヒディ・ネガーバン

コーランを暗唱した者に与えられる「ハーフェズ」の称号を得たジャムセディン(メヒディ・モラディ)は、高僧の娘ナバート(麻生久美子)に壁越しにコーランを教えることになる。二人は禁断の恋に落ち、罰せられたジャムセディンは称号を剥奪され、ナバートは別の男(メヒディ・ネガーバン)と結婚させられる。
恋に破れたジャムセディンは「鏡の誓願」を行う旅に出る。7人の処女に鏡を拭いてもらい、そのお礼に相手の願いを叶えるというもの。沙漠の中の7つの村を訪ね、ジャムセディンは様々な経験をする・・・

ハーフェズというと、イランを知る者にとっては、詩と薔薇で知られる古都シーラーズを象徴する大詩人。映画の舞台である沙漠のイメージはない。 (公式HP  Keywords 1を是非お読みいただきたい。) ナバートの母親をチベット人という設定にしたのも麻生久美子さんを起用したい為ではと違和感があった。 東京国際映画祭の折に開かれた記者会見で、監督は、「この作品はハーフェズの詩から自身が得たイメージを具現化したもの。ハーフェズが生きた七百年前を描くのに現代を感じさせない場所を求めました。また、麻生さんは自分にとってはイラン人と何ら変わらない人。皆さんに違和感があるとしたら、仕事文化が違うからではないか」と言い、麻生さんも「現場ではイラン人になりきって楽しみました」と語っていた。イラン人の友人からも、「イランにはいろんな人種の人がいて、麻生さんの人物設定にも違和感はない」と言われ、目から鱗。

それにしても、一度観ただけでは、観念的で意味のわからないところがあった。到着早々の監督に偶然お会いし、「難しかった」と感想を述べたら、翌日の記者会見で、「昨日、ある記者の方から、難しいと言われたので一言。ハーフェズの詩はイラン人にとっても七百年かけてもまだ理解し切れない。それを二時間で理解するのは無理。映画のすべての答えを二時間ではなく、観た後、自分の物語として考えてみてください。登場する二人の男は、一人の男に存在する二つのキャラクターの分身。一人は内面しか見ていない。もう一人は外面しか見ていない。愛には三つの方法。一つは、あまりの美しさに惚れて見た目だけに恋をする。別の愛の仕方は、内面に惚れる仕方。二つと別に神秘的な愛がある。内でも外でもない、愛する人にはすべてを犠牲に出来る。映画の中で二人の青年はお互いナバートを解放してあげようとします。その時、二人はほんとの愛を手に入れます」と延々説明が続いたが、ますますわからない私。 (麻生さんも、最初観た時に難しいと思ったが、2度目には、あれ〜?わかる〜と思ったそうだ。私も、もう一度観てみなくては!)

東京国際映画祭での上映後に、麻生さんは劇中で着ていた民族衣装で登壇。監督がベールを整えてあげるという微笑ましい一幕も。イランと日本の架け橋になれればと語っていた麻生さん。映画公開を前に、『忘れられない花のいろ 麻生久美子のペルシャ紀行』 を出版された。何かと風当たりの強いイランのイメージを変えてくれる一冊。映画と合わせてどうぞ!(咲)


麻生久美子さんのベールを
整えてあげるジャリリ監督

ティーチイン

記者会見

企画.製作:First Film Milad Co. + Bitters End, Inc.
提供:ビターズ・エンド + ハピネット
2007/イラン=日本/1:1.66/98分

★1月19日(土)より 東京都写真美術館ホールにて公開

公式HP>> http://www.bitters.co.jp/hafez/

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シルク(原題:SILK)

監督:フランソワ・ジラール
脚本:マイケル・ゴールディング
原作:アレッサンドロ・バリッコ「絹」白水社刊
撮影:アラン・ドスティエ
音楽:坂本龍一
衣装:イタリア・・カルロ・ポジオッリ/日本・・黒澤和子
出演:マイケル・ピット(エルヴェ)、キーラ・ナイトレイ(エレーヌ)、アルフレッド・モリーナ(バルダビュー)、役所広司(原十兵衛)、芦名星(少女)、中谷美紀(マダム・ブランシュ)、國村隼(右門)、本郷奏多(少年)、マーク・レンドール(ルドヴィク)ほか

— 遥か極東の国で、彼は何に出会ったのか?—
19世紀のフランスと日本を舞台にしたアレッサンドロ・バリッコの原作「絹」を、『レッド・ヴァイオリン』のフランソワ・ジラール監督が映画化。
主人公のエルヴェは、故国フランスで夫の帰りを待つキーラ・ナイトレイ演じる妻エレーヌを一生の伴侶として愛します。その一方で、蚕の卵を探す為訪れた極東の地日本で、神秘的な雰囲気を醸し出す少女と出会い、言葉も通じませんが、感性により運命的な恋に落ちます。エルヴェは生涯で二つの恋を経験します。東洋と西洋の全く異なる場所の恋ですが、文化や環境の違いに関係なく、愛は心の繋がりなのです。エルヴェは少女の書いた日本語の手紙を、マダム・ブランシュを介して翻訳してもらいます。マダムは大きな役割を担い、ラストでエレーヌと少女は一つに重なり合います。


(C)2006 Jacques-Yves Gucia/ Picturehouse Productions

フランスの美しい景色やエレーヌの庭園は、ローマ近郊のセルモネータ村に再現し、日本の情緒的な風景は、長野県の松本市と山形県酒田市でロケーションが行われました。格調高い音楽を坂本龍一が作曲し、ヨーロッパと日本の全く違う習慣で培われた衣装を見事に再現したのは黒澤和子。日本とフランスの美徳を併せ持った素晴らしいコラボレーション作品です。
親日家の監督が、「酒田や松本ロケを通じて江戸時代の伝統的な村や温泉など沢山の日本文化と出会い、ますます日本が好きになった」と完成披露試写で挨拶されていて印象的でした。
シルク・ドゥ・ソレイユ(*)もジラール監督と音楽の坂本龍一さん、衣装の黒澤和子さんと同じメンバーで製作されるので、『シルク』の映画上の芸術面の美がそのまま生かされ、更に日本の美を意識した作品になるのではないかと期待しています。(池)

*「シルク・ドゥ・ソレイユ」は、モントリオールに拠点を持ち、世界中で活動する一大エンターテインメント集団。動物を使わない、極限まで発揮される身体能力、高い芸術性…既存のサーカスとは一線を画すものです。
フランソワ・ジラール監督は、2008年10月、東京・舞浜に完成する常設劇場「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」のこけら落とし公演の原案・演出を手がけます。

2007/日本、カナダ、イタリア/カラー/1時間49分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース

http://www.silk-movie.com/

2008年1月19日(土)日劇3ほか東宝洋画系にて全国拡大ロードショー

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Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!(原題:MR. BEAN'S HOLIDAY)

監督:スティーヴ・ベンデラック
製作総指揮:リチャード・カーティス
脚本:ハーミッシュ・マッコール、ロビン・ドリスコル
撮影:バズ・アーヴァイン
音楽:ハワード・グッドール
出演:ローワン・アトキンソン(ミスター・ビーン)、ウィレム・デフォー(カーソン・クレイ)、エマ・ドゥ・コーヌ(サビーヌ)、マックス・ボルドリー(ステバン)ほか

あの伝説の“へんなおじさん”が帰ってきた!

ミスター・ビーンは教会のくじ引きで、なんと南仏旅行を引き当てた。しかもビデオカメラとお小遣いつき!さっそくカメラを回しながら目的地のカンヌへ向かう。リヨン駅で高速列車に乗り込むところを、通りがかった男性に録画してもらうが、あれこれ注文をつけるビーンのために電車に乗れず、ホームに取り残されてしまった。車内には「パパ!」と叫ぶ少年が…。父親はロシアの映画監督で、審査員を務めるためにカンヌへ向かう途中。10歳になるステバンはロシア語、ビーンは英語だけなので全く話が通じない。二人は次の駅で降りて後の電車で来る父親を待つことにした。ところが父親が乗った次の電車は急行で、二人の目の前を通過してしまった!!


(c) Universal Pictures. 2007 The unit photographer is Giles Keyte

10年ぶりのミスター・ビーンの登場です。映画祭真っ最中のカンヌが舞台、そこに辿り着くまでにまたいろいろとお騒がせしてくれるビーン。前作では喋りすぎたとの反省があったそうで、今回は言葉が通じないという設定。その分ボディランゲージを駆使します。無声映画のコメディをを観ているようで、試写会場もたびたび爆笑に包まれました。
ウィレム・デフォーがアメリカ人のナルシストの映画監督を、彼の映画に出演する女優サビーヌを『恋愛睡眠のすすめ』のエマ・ドゥ・コーヌ。初めは敵対する少年が言葉の通じないまま、ビーンと仲良くなっていくところもいいです。
初めてフランスに来たビーンが、レストランで○○に震えて吐き出すシーンがありました。イギリス人は食べないんでしょうか。美味しいのに。(白)

2007/イギリス/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD/89分
配給:東宝東和
http://www.mrbean.jp/

2008年1月19日 日比谷みゆき座ほか全国ロードショー

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ネガティブハッピー チェーンソーエッヂ

監督:北村拓司
脚本:小林弘利
原作:滝本竜彦「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」
撮影:小林 元
美術:川村泰代
音楽:高橋哲也
出演:市原隼人(山本陽介)、関 めぐみ(雪崎絵理)、浅利陽介(渡辺)、三浦春馬(能登)、野波麻帆(裕美)、板尾創路(加藤先生)ほか

誰でも、一度は、死にたがる。
かっこよく死ねるならオールオッケーなあなたに

寮生活を送る平凡な高校生、陽介。高級霜降り肉をパクッて逃げた帰り道、制服姿の美少女絵理と出会う。そこに突如現れたのはチェーンソーを持った黒尽くめの大男。信じられない光景に陽介は声も出ないが、絵理は颯爽と戦い始めるのだった。絵理の投げたナイフが命中して、チェーンソー男は空のかなたへ消えてしまう。毎晩男と戦っているという絵理は「誰も信じないから、今のことは忘れて」と陽介を拒絶する。なんだかよくわからないまま陽介は「あのチェーンソー男を倒さなければ。絵理を助けてかっこよく死ぬのだ」と心に決め、翌日から彼女について回ることにした。

原作は、滝本竜彦著「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」、これは角川学園小説大賞特別賞を受賞しています。
「根性なし」と言われ、能天気に生きている赤点男の陽介にも、毎夜戦い続ける美少女戦士の絵理にも、なにか事情があることがしだいにわかってきます。凛とした美貌の関めぐみ、ずり下げたズボン(どうして落ちないんでしょ?)姿の市村隼人、『ALWAYS 続三丁目の夕日』にも登場の浅利陽介、公開作が続いているイケメンの三浦春馬(彼だけ17歳)ら、今や売れっ子の若手たちがいまどきの高校生を演じ、違和感ありません。
荒唐無稽というなかれ、チェーンソー男は思春期の若者たちの漠然とした不安やいらだちが形になったものなのでしょう。彼らにはストライクゾーンど真ん中の作品。(白)

2007/日本/カラー/109分/シネマスコープ/
配給:日活
http://www.nega-chain.com/

2008年1月19日(土)より、シネリーブル池袋、新宿ジョイシネマほか全国ロードショー

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ちーちゃんは悠久の向こう

監督:兼重淳
脚本:山室有紀子、兼重淳
原作:日日日(あきら)「ちーちゃんは悠久の向こう」(新風舎文庫刊)
主題歌:奥華子「空に光るクローバー」(PONY CANYON)
出演:仲里依紗(ちーちゃん)、林遣都(モンちゃん)、高橋由真(武藤先輩)、波瑠(林田)、堀部圭亮(モンちゃんの父)、西田尚美(ちーちゃんの母) ほか

ちーちゃんとモンちゃんは幼なじみで大の仲良し。その関係は高校生になった今も変わらない。モンちゃんの家では両親が離婚しようとしていて、悩みは深いけれど、ちーちゃんの笑顔だけが気持ちを明るくしてくれる。モンちゃんは弓道部に入り、部長の武藤先輩は何かと目をかけてくれる。一方、ちーちゃんはオカルト研究会に入って、学校に伝わる七不思議を知り、乗り気じゃないモンちゃんを引っ張って七不思議めぐりを始める。ところが、次第に二人の周りで不思議なことが起き始める。

原作は日日日(あきら)のデビュー小説で、5つもの新人賞を獲った作品です。学園ホラーやピュアな恋、家族の崩壊と再生、そしてファンタジーと、様々な要素を欲張りなまでに取り入れて、まとめあげています。わたしは、もう少しモンちゃんの切ない気持ちに焦点があたっているといいのにと思うのですが。
この映画の見どころは、とにかく主演の二人(子役も)がかわいい! 仲里依紗は『時をかける少女』のヒロインの声優で一気にその名を知られ、その後も『渋谷区円山町』やテレビドラマの出演など、順調にキャリアを積んでいます。その天真爛漫な笑顔はモンちゃんじゃなくても癒されます。一方の林遣都は『バッテリー』の主人公をオーディションで射止め、映画のヒットで人気急上昇。これが2作目の映画主演です。「なんて眼のきれいな子」と見惚れてしまいました。二人ともお肌つるつるだし。クライマックスの美しい桜の木の下の二人を是非ごらんあれ。(梅)

宣伝協力:フレスコ
配給:シナジー
2007年/日本映画/35mm/アメリカンビスタ/DTS STEREO/カラー/94分

公式 HP >> http://www.chiichan.net/

★2008年1月19日(土)より、シアターN渋谷、シネマート新宿 他、全国順次公開!

ぜんぶ、フィデルのせい(原題:LA FAUTE A FIDEL!)

監督・脚本:ジュリー・ガヴラス
  出演:ニナ・ケルヴェル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ、バンジャマン・フイエ
原作:ドミティッラ・カラマイ著『Tutta Calpa de Fidel』

1970年、パリ。9歳のアンナは名門のカトリック女子小学校に通うお嬢様。スペインの貴族階級出身で弁護士のパパ、雑誌記者のママ、やんちゃな弟のフランソワと庭付きの大きなお家で何不自由ない幸せな日々をおくっていた。ところが、ある日、スペインで反政府運動をしていた伯父さんが亡くなり、伯母さんと従妹が一緒に暮らすことになる。平穏を掻き乱さてご不満のアンナ。キューバ人のお手伝いさんフィロメナも、二人を歓迎していない。その理由を“キョーサン主義”とか“カク戦争”とか難しい言葉を使って説明してくれるけど、要はフィデル・カストロって人が悪いらしい。伯父さんの死をきっかけに祖国に対して何かしなければと目覚めたパパはママを連れてチリへと旅立つ。ようやく帰ってきたパパは共産主義に目覚め、弁護士を辞め、チリのアジェンデ政権支援に立ち上がる。一家は贅沢な一軒家から小さなアパートにお引越し。転校をいやがるアンナは宗教学の授業を受けないならと約束させられる。やがて、狭いアパートに髭をはやした“革命家”たちが集うようになる。かたや、ママは中絶の自由を訴える女性解放運動に力を入れるようになる。おまけに、日曜日には反フランコのデモ行進にまで連れていかれて催涙弾をあびる羽目に。もう、アンナの不満は沸騰点。元の生活に戻りたい! ぜんぶ、フィデルのせいなのね!?

9歳の少女の目から見た70年代の激動の社会。アンナのパパは、1968年の5月革命では何も行動を起こさなかったことに負い目を感じているという設定。70年初頭という年代、アメリカではベトナム反戦運動や人種問題、日本でも60年安保闘争がいったん下火になっていたのがベトナム反戦運動ともあいまって学生運動が再燃していた時代。アンナが連れていかれたデモの場面で、70年代に地下鉄の駅で遭遇した角棒を担ぎ白いタオルで覆面したデモ隊の中に家族連れがいたのを思い出した。あの頃は、日本でも体制に立ち向かう人たちがいて、そういう意味で元気だった。自分の生活を犠牲にしてまでも、理想の社会に向って行動を起こすのには、ほんとに勇気がいる。(まぁ、現状でいいっか〜と、あくまで暢気な私!)

ジュリー・ガヴラス監督は、ギリシャ出身で社会派監督として知られるフランスの巨匠コスタ=ガヴラス監督の実娘。これまで、短編やドキュメンタリー映画を手がけてきたが、本作が初長編フィクション映画。
アンナ役のニナ・ケルヴェルは、ふくれっ面をしても、しかめっ面をしても、とてもキュート。理知的でもある。アンナの目線で大人の行動を見てみると、実に興味深くて面白い。(咲)

配給:ショウゲート
2006年/フランス/35mm/ドルビーSR/カラー/スコープ/99分

公式 HP >> http://www.fidel.jp/

★2008年1月19日(土)より、恵比寿ガーデンシネマほか全国にて順次公開

ペルソナ

監督・脚本:樫原辰郎
製作総指揮:斎藤正明、井内徳次
アクション監督:谷垣健治
出演:山崎真実(御園日和)、萩原聖人(木場幸一郎)、鈴木砂羽(木場の妻)、佐野史郎(真鍋)、菟田高城(相沢)、森次晃嗣、二階堂智、木村祐一ほか

妻を亡くしたばかりの医師木場幸一郎は、深夜に病院から抜け出したらしい女性日和(ひより)と出会う。彼女はすぐに追いかけてきた男たちに連れ戻されてしまうが、車が走り出すときに「幸一郎!」と叫ぶ。まるで妻に呼ばれたような気がした木場は、彼女が収容された研究施設を訪ねる。相沢医師にていよく追い出されてしまったが、帰りかけた木場は、また日和の不思議なことばを聞く。日和は騙されて人体実験に使われた女子大生。脳にはもう一人の人格が埋め込まれていた。

「ペルソナ・プロジェクト」という人間改造計画の犠牲となった女性が、組織と戦うストーリーです。SFチックなのですが、研究所の警備も施設も普通の病院です。あっさり逃げ出せるし、追う人も少ないし、もうちょっと何とかすると緊迫感が出たと思います。まあ予算の都合もありますしねぇ。
元新体操の選手だったという山崎真実は、改造手術により身体能力がアップしたという設定です。谷垣アクション監督の指導のもと、しなやかな身体を存分に使って綺麗なアクションを披露していました。長い足がまっすぐ上に、前にも後ろにも上がるのにびっくり。萩原聖人&鈴木砂羽の夫婦愛も切ないですが、佐野史郎に負けない怪演ぶりを見せた菟田高城(うだたかき)に注目しました。(白)

2007/日本/カラー/HD/84分
製作・配給:「ペルソナ」フィルムパートナーズ(クレイ、テンダープロ)
配給協力:リベロ
制作:キックファクトリー
2008年1月26日(土)よりシネマート六本木にてロードショー(全国順次公開)
(c)「ペルソナ」フィルムパートナーズ

http://persona-movie.jp/index.html

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マリア・カラス 最後の恋(原題:CALLAS E ONASSIS)

監督:ジョルジオ・カピターニ
脚本:マウラ・ヌッチェテッリ、ラウラ・イッポリッティ、レア・タフリ
撮影:ファビオ・ザマリオン
音楽:マルコ・フリシーナ
衣装:エリザベッタ・モンタルド
美術:フランチェスコ・ブロンツィ
出演:ルイザ・ラニエリ(マリア・カラス)、ジェラール・ダルモン(アリストテレス・オナシス)、アウグスト・ザッキ(バティスタ・メネギーニ)ほか

= 愛を求め続けた世界最高の"歌姫(ディーヴァ)"=
歌のテストを受けにきた美しいとはいえない太った娘、マリア・カラス。審査員の陰口に傷つき、帰ろうとしたところを実業家バティスタが止めた。再挑戦したマリアの歌声はみなを魅了し、採用されることとなった。バティスタの後援を受け、親子ほどの年の違いをこえて二人は後に結婚する。減量に努め美しいディーヴァとなったマリアは、マネージメントをするバティスタの意向で子どもを持つことも許されなかった。1957年、劇場で歌うマリアを海運王として知られるオナシスが見初める。初めての出会いで「君を手に入れる」と囁く彼にむっとするマリアだったが。

マリア・カラスの没後30周年記念作品。
2003年にフランコ・ゼフィレッリ監督の『永遠のマリア・カラス』が公開されています。ファニー・アルダン主演で、オナシスの死後隠遁生活を送るマリアの元へオペラ映画の話が持ち込まれるというものでした。今回の作品は原題の「カラスとオナシス」が示すように、マリア・カラスの絶頂期にオナシスと出会い恋に落ち、その破局までを中心に描いています。主要人物はみな亡くなられているので、どこまでが真実やら不明です。かの大統領夫人も出てきますしね。才能ある女性と野心満々の実業家との恋は映画としても面白い!ジュエリーやファッションに興味のある方は、セレブの女性の着こなしも楽しめるのではないでしょうか。ルイザ・ラニエリが堂々として華やか、とびきり美しいです。(白)

2005/イタリア/カラー/35mm/2時間2分/
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ/シナジー
宣伝:アニー・プラネット
http://www.callas-onassis.com/
2008年1月26日(土)よりシャンテシネにてロードショー

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ニコラ・フィリベールのまなざし〜正しき距離

2作品連続ロードショー+レトロスペクティヴ

『かつて、ノルマンディーで』(原題:Retour en Normandie)
現代最高峰の一人とされるドキュメンタリー作家、ニコラ・フィリベールの新作。 30年前ある映画の助監督だったニコラ・フィリベール。再びそのロケ地だったノルマンディーを訪ねて、かつて作品に出演した人々に会います。さまざまな人生を送った彼らは、映画に参加した日々を懐かしく語ります。

30年前ノルマンディーで撮影された映画とは、『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』という忌まわしい題の作品で、約200年前の実際におきた事件を元にしている。俳優は、ほとんどが現地調達の農民たち。忌まわしい内容にもかかわらず、物珍しさからか、村人こぞっての協力で撮影は行われた。皆、口々に昔を振り返り、自分にとってその貴重な経験がどのように人生や考えを変えたかを、切実に、時には笑い話で打ち明けている。ある女性は、「他人を演じるということは、自分自身を知ることだと感じ、そのことが、今でも心に残っている」と打ち明ける。
また、若い犯人役を演じたクロードは、「200年前の人だけど、彼のために祈った」と語っていた。現在は神父となっている。
映画の最後で、当時助監督だったフィリベール監督の父の姿が数分出てきた。それは、アリオ監督に請われて出演したが、カットされたシーンであった。フィリベール監督にとって、この30年前の映画は今の自分を生み出す原点だったということを、きっとこの1シーンで表したかったのではと感じた。(美)



2007/フランス/カラー/113分/ドルビーSRD/1.85

©Les Films d'Ici-MaÏa Films-ARTE France Cinéma-France 2006

『動物、動物たち』Un animal,des animaux
パリ5区にあるフランス国立自然史博物館。25年もの間閉鎖されていましたが、リニューアル・オープンすることになりました。1991‾1994年の改修工事中、博物館の内側を撮影したもの。数万に及ぶ標本や剥製が眠る博物館の不思議世界で、多くの人たちが修復作業に携わっています。初めて日本公開される幻の傑作。

静かで、動かない、動物たち…。四半世紀もの間、閉館していたフランス国立自然博物館で、たくさんの専門分野の人が動物たちを、その命を、蘇らせます。手際たるや、まるで手品をしている様。「初めて知った!」「へぇ〜そうするのか!」「う〜ん、なるほど!」「わぁ〜、リアル!」この連続です!剥製や博物館に興味のある方は、何をおいてもご覧いただきたい。傑作です。(美)

1994/フランス/カラー/59分/モノラル/1.66
同時上映『行け、ラペビー!』(1988年/27分)

『動物、動物たち』が「静」なら、この『行け、ラペビー』は「動」。この二つの組み合わせ…なかなか憎い。主人公は、1937年ツール・ド・フランスで伝説的勝利者になった、ロジェ・ラペビー、77歳。お顔は柔和だが、眼光は鷲の如し。レース会場では、握手攻めにあったり、サインをねだられたりの人気者の彼。 現在でも、厳密な食事療法と毎週300キロメートルを自転車で走る。毎年のツール・ド・フランスでは車で伴走している。そんな彼のドキュメンタリーは、まるで自分自身が自転車に乗り、颯爽と風をきって行くようだ。27分の小品だが、躍動感がこたえられない。(美)

ニコラ・フィリベール レトロスペクティヴ
代表作から初期短編まで、未公開作品を含む9本、6プログラム(下記A〜F)をスペシャルロードショー。

A クリストフシリーズ 4本で1プログラム
『カマンベールの北壁』(1985)
『クリストフ』(1985)
『たった一人のトリロジー〜クリストフ・プロフィのアルプス三大北壁単独登攀』(1987)
『バケのカムバック』(1988)
『パリ・ルーヴル美術館の秘密』(1990)
『音のない世界で』(1992)
『全ての些細な事柄』(1996)
『僕たちの舞台』(1998)
『ぼくの好きな先生』(2002)

配給:バップ+ロングライド
宣伝:ムヴィオラ
2008年1月26日(土)より 銀座テアトルシネマにてロードショー http://www.nicolas-movie.jp/

『動物、動物たち』『かつて、ノルマンディーで』2作品共通鑑賞券¥2800発売中!
 <クレールフォンテーヌ>オリジナルノートをプレゼント(数量限定)

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フローズン・タイム FROZEN TIME(原題:CASH BACK)

監督・脚本・プロデューサー:ショーン・エリス
撮影:アンガス・ハドソン
美術:モーガン・ケネディ
音楽:ガイ・ファーレイ
出演:ショーン・ビガースタッフ(ベン)、エミリア・フォックス(シャロン)、ショーン・エヴァンス(ショーン)、ミシェル・ライアン(スージー)ほか

— 時間が止まった世界。ボクの恋は加速する。—

画学生のベンは、ガールフレンドのスージーと別れて以来不眠症になった。子どものころからの親友のショーンは「新しい女を見つけろ!」と言うが、彼女を忘れることができない。眠れないまま深夜営業のスーパーで仕事をすることにした。そこには妙な連中と、そしてレジ係のシャロンがいた。2週間も不眠を続けているベンの頭はついに限界、突然周囲がフリーズしてしまう。時間が止まった中で、ベンは好きなだけ美しい女性たちを描きとめる。

ショーン・エリス監督は、気鋭のファッションフォトグラファー。これは第78回アカデミー賞、短編実写部門ノミネートされた作品を長編化したもの。一瞬を切り取るフォトグラファーらしいシーン満載。脚本も自ら書いていて、小学生のときの性の目覚めからバイト先のお馬鹿な同僚、ガールフレンドとの別れや新しいロマンス、そして不思議な体験までこれまた盛りだくさん。もっと絞ったほうがいいような気がしますが、この年頃の人たちには刺激が多くていいのでしょうか? 主人公のベンは『ハリー・ポッターと賢者の石』で、クディッチ・チームの主将役だったショーン・ビガースタッフ。ベンのスケッチとラストシーンが素敵です。(白)

2006/イギリス/カラー/102分/シネマスコープ/SRD/R-15
配給:CKエンタテインメント
http://www.frozen-time.jp/

2008年1月26日(土)〜渋谷Q-AXシネマほか全国順次ロードショー!

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凍える鏡

監督・脚本・編集:大嶋拓
撮影:宮野宏樹
音楽:伊藤ひさ子
出演:田中圭(岡野瞬)、冨樫真(矢崎由里子)、渡辺美佐子(矢崎香澄)、増沢望(秋沢清司)、川口節子(武田真知子)。下條アトム(吉村)、菊池隆則(後藤達夫)

童話作家の矢崎真澄は、普段は黒姫での一人暮らしだが上京しての仕事もある。帰りに道端で自分の絵を売っている岡野瞬に出会う。瞬はちょっとしたことですぐに怒りを爆発させ、周囲と問題を起こしていた。瞬に絵の才能を感じ、その精神の不安定さを案じた香澄は、臨床心理士をしている娘の由里子に彼のカウンセリングを頼む。瞬は子供のときに母親から虐待を受け、心に闇を抱えていたのだ。香澄や由里子と会話をすることで、瞬は少しずつ落ち着いていく。

ほんわかした雰囲気の田中圭が、こわれやすい心を必死で守っている青年役。いつもと全く違う役柄を繊細に演じています。彼を信頼し大きな愛情で包む作家を、これが出演100作目となるベテラン渡辺美佐子。劇中絵本の読み聞かせをするシーンがあり、全部聞いていたいほど良かったです。カウンセラーとして実績を積んできた娘を冨樫真。母親への不満が積もり積もって頑なになっている感じがよく出ていました。人はそうそう物分りよくはできないし、実の母娘だからこそ言い過ぎてしまうこともあります。母・娘としてどちらも頷けるエピソードに心がチクリとしました。
瞬の心のありようがそのまま出ている絵は、時間の経過どおりに同じ画家さんが描いたものだそうです。気になって試写にいらしていた監督に伺いました。(白)

2007/日本/カラー/100分/
製作・配給:「凍える鏡」製作事務所(TAC/ワコー/エクラアニマル/シネマポルト/AZ)
公式サイト http://www.kogoeru.net/
2008年1月26日よりシネマ・アンジェリカにて公開
(C)2007「凍える鏡」製作事務所

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魁!!男塾

監督・脚本・アクション監督:坂口拓
原作:宮下あきら「魁!!男塾」(集英社刊)
出演:坂口拓、照英、尾上寛之、山田親太朗、田中哲司、榊英雄、菅田俊、麿赤兒 ほか

日本のどこかにある、武士道精神を継承し、真の男を育てるための私塾「男塾」。今年、入塾してきた一号生の中に、文武両道の無口な男・剣桃太郎、ど根性男・富樫、野生児・虎丸、そして、やくざ組織の長の家に生まれながら超軟弱男の秀麻呂がいた。彼らは教官のあり得ないしごきに耐え、次第に強い絆を結んでいく。そんなとき、男塾に恨みを持つ男・伊達臣人が、男塾乗っ取りを企てていた。

 アクション監督&俳優として活躍している坂口拓さんが、映画の脚本と監督までやっちゃう八面六臂の活躍で、このありえない世界をアツく作り上げました。女のわたしから観ると「男、オトコって、こいつらアホちゃう」なんですが、その「アホちゃう」をつい目尻を下げて言ってしまう、かわいげが現れていたのがなかなかいいと思います。(梅)

2007年/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーSR/110分
制作:ゼアリズエンタープライズ
配給:ゼアリズエンタープライズ
宣伝:ビー・ウィング

公式 HP >> http://www.otokojuku-the-movie.com/

★1月26日(土)、シネマスクエアとうきゅう、シアターN渋谷ほかにてロードショー!!

夕映え少女

川端康成の短編作品集から4つの物語を、東京芸術大学大学院映像研究科に在籍する若手クリエイターたちが映像化したオムニバス作品。

『イタリアの歌』
 監督:山田咲 出演:吉高由里子、高橋和也
第二次世界大戦開戦前夜の抑圧された世相の中、大学で助手をしているその女性は教授と恋仲にあった。教授にイタリアへの留学の話が持ち上がったとき、彼女は一緒に行こうとプロポーズをうける。ところが、その直後に不幸な爆発事故が起きてしまう・・・

『むすめごころ』
 監督:瀬田なつき 出演:山田麻衣子、高橋真唯、柏原収史
女学校で親友同士の咲子と静子。咲子には武という許婚がいる。互いに信頼をしながらも、なぜか咲子は武と静子を近づけようとする。

『浅草の姉妹』
 監督:吉田雄一郎 出演:波瑠、韓英恵、三村恭代、河合龍之介
浅草の歓楽街にたくましく生きる三姉妹がいる。次女は三味線弾き、三女はレビューの踊り子。ある夜、久しく街から姿を消していた長女が現れる。悪い男たちに追われている長女を救おうと、二人の妹は力を合わせる。

『夕映え少女』
 監督:船曳真珠 出演:田口トモロヲ、宝積有香、五十嵐令子、円城寺あや、いしのようこ
作家の瀬沼はある日目にした一枚の少女の絵に心惹かれる。それは偶然にも瀬沼と縁のある女性の夫が描いたものだった。彼女が住むという湘南の海へと赴いた瀬沼は、そこであの絵のモデルとなった美しい少女に出会う。

『イタリアの歌』が独特の緊迫感を持っていて印象的。主演の吉高由里子は現在ドラマ「あしたの、喜多善男」にも出演中。
『夕映え少女』もラストシーンの微妙な不自然さが気になったのですが、美しい少女の持つ純粋さとエロティズムが、作品全体にも行き渡っていてよかった。監督4人の内、3人が女性。今後の活躍を期待したい。(梅)

原作:川端康成(新風舎文庫刊「夕映え少女」より)
2007年/日本映画/ヴィスタ/カラー/ステレオ/100分
製作:2007『夕映え少女』製作委員会(東京芸術大学 ジェネオン エンタテインメント)

公式 HP >> http://www.fnm.geidai.ac.jp/yubaeshojyo/

★1月26日(土)より、渋谷・ユーロスペースにて連日21:10よりレイトショー

ウォーター・ホース(原題:THE WATER HORSE: LEGEND OF THE DEEP)

監督:ジェイ・ラッセル
プロデューサー:ロバート・バーンスタイン、ダグラス・レイ、バリー・オズボーン
脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
原作:ディック・キング=スミス「おふろのなかからモンスター」
撮影:オリバー・ステイプルトンBSC
美術:トニー・バロー
音楽:ジェームズ・ニユートン・ハワード
出演:アレックス・エテル(アンガス・マクマロウ)、エミリー・ワトソン(アン・マクマロウ)、ベン・チャプリン(ルイス・モーブリー)、デヴィッド・モリッシー(ハミルトン大尉)、ブライアン・コックス(ナレーター)ほか

− この物語を信じるかい?−
ネス湖の生き物をとらえたあの写真は、世界で最も有名な写真の一枚かもしれない。旅の若者にある老人が語りかける。
第2次世界大戦中のスコットランド。アンガス少年が大好きな父親は出征したまま帰らない。一人浜辺で遊ぶアンガスは、青く光る卵を見つけて持ち帰った。生まれてきた不思議な生き物にクルーソーと名づけて、大切に飼うことにする。そのころアンガスの家は、湖を監視するためにイギリス軍の大尉たちが宿舎として使うことになった。もう一人ルイスという正体不明の男が、クルーソーを隠した部屋に住み込み、アンガスは気が気でない。食欲旺盛なクルーソーは一晩ごとに大きくなり、家では隠しきれなくなる。


©2007 Revolution Studios Distribution Company, LLC. All Rights Reserved.

クルーソーはスコットランドの伝説の海獣、ウォーター・ホースの卵だということです(シーホースだと「タツノオトシゴ」ですね)。この海獣の子と淋しいアンガスが無二の親友となり、アンガスはこのたった一人の友達を守るために奮闘します。原作は、あの子豚のストーリー「ベイブ」と同じディック・キング=スミス。主人公の少年は『ミリオンズ』(2004)のアレックス・エテル。あのキュートなソバカス顔のまま大きくなりました。時代は戦争中ということで、楽しいだけのファンタジーではありません。クルーソーの造形は『ロード・オブ・ザ・リング』3部作、『キング・コング』、『ナルニア国物語』の特殊効果を手がけたところだそうです。う〜ん、好みが分かれるかも。水中シーンはどうやって作り出したのでしょう、迫力満点です。(白)

2007/アメリカ/カラー/
配給:ソニー・ピクチャーズ

http://www.sonypictures.jp/movies/thewaterhorse/site/

2月1日(金)〜サロンパス ルーブル丸の内ほか全国ロードショー

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歓喜の歌

監督・脚本:松岡錠司
原作:立川志の輔
撮影:岡林昭宏
美術:原田満生
音楽:岩代太郎
合唱指導:辻志朗
出演:小林薫(飯塚正)、伊藤淳史(加藤俊輔)、由紀さおり(松尾みすず)、浅田美代子(飯塚さえ子)、安田成美(五十嵐純子)、田中哲司(北澤直樹)、藤田弓子(太田登紀子)、根岸季衣(塚田真由美)ほか

暮れも押し詰まった12月30日、みたま文化会館に1本の電話がかかってきた。これが騒動の始まり。
いいかげんな飯塚主任が調子よく「はい明日ですね、大丈夫ですよ〜」と応えたが、実は半年も前に二つのコーラスグループをダブルブッキングしていたのが発覚。真っ青になる部下、加藤を前に「どうせおばさんの暇つぶしだろ、なんとかなるさ」と請合う飯塚だったが、そう簡単にことは収まらなかった。セレブな奥様の集う「みたまレディースコーラス」のリーダーはスーパーを経営する未亡人松尾みすず。市長の妻もメンバーもこのグループは手ごわかった。もう一つの「みたま町コーラスガールズ」は、家事やパートで忙しい主婦のグループ。歴史は浅いがこの発表を励みに練習してきたのだ、と一歩も譲らない。こちらのリーダーは元音楽教師の五十嵐純子、加藤は教え子であった。翌日の発表会はどうなってしまうのか〜??

原作は人気落語家立川志の輔さんの新作落語。年末2日間のどたばた騒動をテンポよく描いていきます。二つのグループを行ったりきたりして、説得に相努めるうち仕事も家庭も投げやりだった主任がなんだか男らしくなっていきます。
公開が作品と同じ年末だったら、もっと盛り上がったのにと惜しいです。この冬場のシーンの撮影は真夏の熊谷市で行われたのだそうで、完成披露試写の舞台挨拶で、小林薫さんは記録的な猛暑の中演技をする辛さを語っていました。あまりに暑くて記憶が飛んだそうですが、どのシーンもそんなことを微塵も感じさせません。プロですねぇ。6年ぶりにスクリーンに復帰した安田成美さんは初の指揮者役で、指導の辻志朗氏の指揮ぶりを見て猛練習したそうです。コーラス曲も第九だけでなく、「お祭りマンボ」まで出てきます。いろんな意味で楽しめました。(白)

2007/日本/カラー/
企画・制作・配給:シネカノン 宣伝:フレスコ
http://kankinouta.com/ (音出ます)

2008年2月2日(土)〜シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQNほか全国ロードショー
2008年1月23日キングレコードよりCD発売決定!

(C)2008「歓喜の歌」パートナーズ

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山本薩夫名作集 Rediscovery of YAMAMOTO Satsuo

*英語字幕付き日本映画上映会

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)による英語字幕付き日本映画上映会の第9弾。
今回取り上げられるのは、山本薩夫監督。昨年11月の第8回東京フィルメックスで、東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催により、国際交流基金の協力のもと、“山本薩夫監督特集〜ザッツ<社会派>エンタテインメント”として特集上映が行なわれて好評を博し、再評価の機運も高まっています。社会的メッセージを含めつつエンタテインメント性の高い映画の数々の中から5本が上映されます。全作品とも良い状態のプリントにて上映(うち、「忍びの者」「続・忍びの者」「金環蝕」の3本はニュープリント)

英語字幕付きで上映されますので、お知り合いの外国人の方に、是非お知らせください。

○期間:2008年2/2(土)、3(日)

<タイムテーブル>(5作品上映) *入替制(開場は15分前)

■2/2(土)
 13:00  「忍びの者」(1962年/105分/A Band of Assassins)
 
 15:15  「続・忍びの者」(1962年/93分/Return of the Band of Assassins)
 
 17:30  「傷だらけの山河」(1964年/152分/The Tycoon)
 
■2/3(日)
 13:00  「白い巨塔」(1966年/150分/The Ivory Tower)
 
 15:35   講演:クリス・フジワラ Lecture by Chris FUJIWARA
 17:30  「金環蝕」(1975年/155分/Solar Eclipse)

○会場:赤坂・OAGホール
東京都港区赤坂7−5−56 ドイツ文化会館内)
    地下鉄銀座線・半蔵門線・都営大江戸線
     「青山一丁目」駅4番出口より徒歩5分
○主催:国際交流基金
○企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
○協力:角川映画

○料金:当日600円(当日券のみ)
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)
HP>> http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-9.html

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胡同の理髪師(原題:剃頭匠 The Old Barber)

監督:ハスチョロー(哈斯朝魯)
プロデューサー: リー・シュイホー(李水合)
脚本:ラン・ピン(冉平)
出演:チン爺さん;チン・クイ(靖奎)、チャン老人;チャン・ヤオシン(張耀興)、チャオ老人;ワン・ホンタオ(王洪濤)、ミー老人;ワン・シャン(王山)、チン爺さんの息子;マ・ジンロン(馬景竜)

80年間理髪師として生きてきたチン爺さんは、93歳になる今も現役。店こそ閉めたが、馴染みの客からお呼びがかかると、伝統家屋の立ち並ぶ風情ある胡同(フートン)の狭い道をかくしゃくと三輪自転車で出かけてゆく。かつては腕を見込まれて、数多くの有名人の理髪を手がけ、京劇の梅蘭芳の髪も整えたことがあるという。
朝は6時に起き、午前中少し仕事に出かけ、午後はボケ防止にお仲間と麻雀。そして、9時には入れ歯をはずして就寝。規則正しい静かな毎日を送っていたチン爺さんだが、住み慣れた胡同もいよいよ取壊しが決まり、役人が壁に「折」の文字を書いていく。じぃ〜と眺めて、字が間違っているとおおまじめな顔で指摘するチン爺さん。あわてて、一筆入れて訂正する役人( 正しくは「拆」)。「立ちのくころには、焼き場の煙」とつぶやく姿がちょっと寂しい...

アジアフォーカス・福岡映画祭2006で観て、公開を待ち望んでいた作品。監督がチン爺さんの実人生にほれ込んで映画化を決め、チン爺さん本人がチン爺さんを演じている。撮影当時93歳だったチン爺さん。映画の中で、道端で座り込んでしまって、あわやあの世に?と、はらはらする場面があるのだが、公開を前に昨年晩秋に監督と共に来日された。残念ながらお会いすることは出来なかったが、ご健在なのは、規則正しい日々をおくっておられるからだろう。

1年ぶりに映画を観て、あらためて気にとまったことがいくつかあった。(映画って、これだから、2度3度観たい!) テレビが、天安門広場にしつらえた北京オリンピックまで1000日のカウントダウン時計をテープカットする祝賀式を映し出していた。浮かれる人々の陰に、消え行く胡同から追い出される人々の悲哀を監督は描きたかったのだろう。
あと、もう一つ、什刹海前海に面した創業1883年のモツ屋を営むチャン老人が回族だということも、今回あらためて気がついた。イスラームに敏感なはずの私が気付かなかったとは...と、ちょっとショックだったのだが(忘れていただけかも?)、モツ屋の壁にもアラビア文字の飾り物がかかっていた。チン爺さんも、そのお仲間も、話題はもっぱら近付いているあの世行きのこと。チャン老人は、「その時」のことをイスラーム寺院に相談しなくてはと語っている。かつて北京を訪れたとき、王府井近くのモスクを訪れたことがある。瓦屋根の中国風のモスクだった。まだあのモスクはあるのだろうか・・・

今年は、いよいよ北京オリンピック。突貫工事が進む一方、伝統的家屋の残る胡同の価値を見直して、一部区域のみだが保存の動きもあるという。博物館的に残すのではなく、是非、そこに住む人たちの日常を壊すことなく、大切に守ってほしいと思う。 映画は、チン爺さんの人生賛歌であると同時に、消え行く胡同への鎮魂歌のよう。人間にとって大切なものは何かを問われているような気がした。(咲)

2006年/中国/1時間45分/ヴィスタサイズ/カラー/ドルビーSRD
後援:中国大使館文化部
提供:アニープラネット 彩プロ 太秦 フォーカス・ピクチャーズ
配給・宣伝:アニープラネット

シネマジャーナル69号に、アジアフォーカス・福岡映画祭2006の監督記者会見記事あり。

★岩波ホール創立40周年記念作品第2弾
2008年2月9日(土)よりロードショー!

公式HP>> http://www.futon-movie.com/

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恋する彼女、西へ。

監督:酒井信行
原作・脚本:田渕久美子
撮影:渡邊伸二
音楽:門倉聡
エンディングテーマ曲:「小さな花」歌:木村充揮
(JUSTLUCK RECORDS/HIPLANDMUSIC CORPORATION)
出演:鶴田真由(杉本響子)、池内博之(矢田貝亨)、かとうかず子(アンティーク店長)、辰巳琢郎(上司)、山口馬木也、徳井優、小林正寛、金田龍之介、小林桂樹

東京の建築会社に勤める杉本響子は、33歳独身のキャリアウーマン。付き合ってきた彼のアメリカ転勤を前に、自分の仕事を取ってプロポーズを断ってしまった。後悔しても取り返しがつかず、どつぼにはまっているというのに、後輩の尻拭いのため出張に出ることになった。8月の広島で、響子は気分の悪そうな若い男性に出逢う。軍服姿の彼は、60年前から現代にタイムスリップした海軍少尉の矢田貝亨と名乗る。突拍子もない話を信じられない響子だったが、折り目正しい谷田貝を捨ててもおけず、行くあてのない亨を自分の泊まっているホテルへ連れて行く。


(C)2007 『恋する彼女、西へ。』製作委員会
女性の原作・脚本だけあって、響子の普段の姿や台詞がとってもリアルでした。タイムスリップものというと、辻褄あわせが気になります。そこはドラマ作りの名手田渕久美子さん、そんな疑問がどうでもいいか、と思えるほど二人の感情の動きを丁寧に描いています。いまどきいない硬派な青年、亨に心が揺さぶられる響子に共感するのではないでしょうか。広島の街から戦争は切り離せませんが、今の広島の明るさ優しさも十分に伝わってくるロマンチックな作品です。(白)

2007年/日本/カラー/ヴィスタ/DTS/102分
配給:シナジー
宣伝協力:フリーマン・オフィス
http://koi-nishi.jp/top.html
2月9日(土)より、ユナイテッド・シネマ豊洲にてロードショー!

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アドリブ・ナイト

監督・脚本:イ・ユンギ
原作:平 安寿子「アドリブ・ナイト」(文春文庫所収)
撮影:チュ・サンホ
音楽:キム・ジョンボム
出演: ハン・ヒョジュ(彼女)、キム・ヨンミン(キヨン)、キム・ジュンギ(ミョンウンの叔父)、キ・ジュボン(ミョンウンの父)ほか

広場で待ち合わせをしていた彼女は、突然二人連れの青年に声をかけられた。家出して行方知れずの“ミョンウン”ではないかというのだ。否定して立ち去ろうとしたが、その“ミョンウン”の父親が危篤なので、死ぬ前に娘のふりをしてやってくれと懇願される。断りきれずに臨終に立ち会うことになってしまった。ミョンウンの家族や隣人も巻き込み、何が起こるかわからない「アドリブ・ナイト」がこうして始まった。

ドラマ「春のワルツ」でブレイクした新人ハン・ヒョジュがヒロイン。映画はほぼ原作どおりに進みますが、ヒロインの名前はずっと後まで明らかになりません。何度も探りを入れる男性のように、もしかしたらミョンウン本人なのだろうか?と観客も半信半疑になります。監督は『チャーミング・ガール』で第二のキム・ギドクとの呼び声高いイ・ユンギ。小さなエピソードを丁寧に描いて、彼女の心の奥底まで光を当てるような演出がなされます。原作にはなかったラストが爽やかでした。イ・ユンギ監督の次作は、同じ平安寿子原作の「素晴らしい一日」になるそうです。(白)

第20回シンガポール国際映画祭 主演女優賞受賞
韓国映画批評家協会賞 新人女優賞 受賞
第57回ベルリン国際映画祭 正式招待作品

2006/韓国/カラー/99分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:パンドラ 宣伝:スキップ、プランニングOM

2008年2月9日(土)より 渋谷アミューズCQNにてロードショー ほか全国順次公開
特別記事 『アドリブ・ナイト』ハン・ヒョジュ舞台挨拶 もご覧ください

公式 HP >> http://www.adlib-night.jp/

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潜水服は蝶の夢を見る(原題:LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON)

監督:ジュリアン・シュナーベル
プロデューサー:キャスリーン・ケネディ、ジョン・キリク
脚本:ロナルド・ハーウッド
原作:ジャン=ドミニク・ボビー「潜水服は蝶の夢を見る」講談社刊
撮影:ヤヌス・カミンスキー
美術:ミシェル・エリック/ローレン・オット
編集:ジュリエット・ウェルフィング
音楽:ポール・カンテロン、ジュリアン・シュナーベル
出演:マチュー・アマルリック(ジャン=ドミニク)、エマニュエル・セニエ(、マリー=ジョゼ・クローズ、マックス・フォン・シドー、イザック・ド・バンコレ、エマ・ドゥ・コーヌ

ジャン=ドミニクが目覚めると病室だった。看護士に返事をするが自分の言葉が通じない。身体は潜水服を着たように重く、唯一動くのは左眼のまぶただけになっていた。自分が脳出血で倒れ、「ロックトイン・シンドローム」と言う重態であることを知る。ELLEの編集長として活躍、人生を謳歌していたドミニクだったのに。しかし、言語療法士のアイディアにより瞬きで意思を伝え、さらに一字ずつ必要な文字を選んで文章を綴ることができるようになった。身体は動かずとも、記憶と想像力は蝶のように自由なのだ。次第に彼の希望は明日へと向かっていく。そして以前からの約束どおり、本を出版することを決心する。


©Pathe Renn Production-France 3

10年前の実話です。文章を書く方法は、使用頻度の高い順にアルファベットを読み上げ、ドミニクが瞬いたのを見て一字づつ書き留めるという、どちらにも根気のいるものです。彼は20万回の瞬きを繰り返し、2ヶ月かけて文章が綴られました。出版されてまもなく彼は亡くなりましたが、本はベストセラーとなり何ヶ国語にも翻訳されています。
ジョニー・デップも切望したというこの役ですが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』撮影のため、時間が取れず断念したとか。ちょっと自分の人生についても考えてしまった作品です。
主演のマチュー・アマルリックは 『そして僕は恋をする』『キングス&クイーン』 『ミュンヘン』などで知られるほか、シナリオを書き自分で監督もするようです。ほかに『愛されるために、ここにいる』のパトリック・シェネ と アン・コンシニ、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』のエマニュエル・セニエが出演。(白)

カラー/112min./35mm/フランス語
配給:アスミック・エース エンタテインメント
http://chou-no-yume.com/

2008年2月9日(土)より、シネマライズほか全国公開予定

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N. アイルランド・フィルム・フェスティバル 2008(NIFF=ニフ)

日本初の北アイルランドに注目した映画祭が開催されます。日本未公開作品を中心に北アイルランドを満喫する1週間です。ゲストを招いてのトークショーなども開かれます。詳細はHPでチェックしてみてください!

公式 HP >> http://www.niff.jp/

開催日程: 2008年2月9日(土) 〜 2月15日(金)
開催場所: 渋谷 ユーロスペース

[上映作品]  ★印:日本未公開作品
『キングス』Kings (2007)★ 監督:トム・コリンズ
『デリー・ダイアリー ブラディ・サンデーのその後』Bloody Sunday - A Derry Diary (2007) ★ 監督:マーゴ・ハーキン
『おやすみベイビー』Hush-a-Bye Baby (1990) ★ 監督:マーゴ・ハーキン
『7月、ある4日間』Four Days in July (1985) ★ 監督:マイク・リー
『ハリーに夢中』Wild about Harry (2000) ★ 監督:デクラン・ラウニー
『ジャンパーズ』Jumpers(1998) 監督:コナード・ジェイ
『オマー』Omagh (2004) ★ 監督:ピート・トラヴィス
『強盗達も恋に落ちるのか?』Do Armed Robbers Have Love Affairs?(2001) 監督:ブライアン・カーク
『眠れる野獣』As the Beast Sleeps (2002) ★ 監督:ハリー・ブラッドビア
『ガソリンスタンド・ブルース』Petrol Country Blues(2002) 監督:ガー・レオナード
『シェルショック・ロック』Shellshock Rock (1979) ★ 監督:ジョン・T・デイヴィス
『弾道の詩行』Lines of Fire (2000) ★ 監督:ブレンダン J. バーン
『9人のゲイ、殺される』9 Dead Gay Guys (2002) 監督:ラボ・カイ・モー
『12月の花嫁』December Bride (1990) 監督:サディアス・オサリヴァン
『ミキボーと僕』(2005) ★ 監督、脚本:テリー・ローアン
『ブラディ・サンデー』(2005) Bloody Sunday 監督、脚本:ポール・グリーングラス 特別無料DVD上映!

◆神戸でも開催されます
日程:2008年3月29日(土)、30日(日)(予定)
場所:神戸アートビレッジセンター
http://kavc.or.jp/

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クリアネス

監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原作:十和「クリアネス〜限りなく透明な愛の物語〜」スターツ出版
撮影:永森芳伸
音楽:仁科亜弓
主題歌:秦基博「僕らをつなぐもの」
出演:杉野希妃(さくら)、細田よしひこ(レオ)、小柳友(コウタロウ)、哀川翔(成瀬)、高久ちぐさ(エリ)、山田幸伸(アキラ)ほか

つないだ手は、きっと温かい。

さくらは、マンションの部屋で売春をしている女子大生。窓から向かいのビルを見るのを日課にしていた。そこは出張ホストの事務所で、さくらが「レオ」とひそかに名づけた金髪の美少年がいる。レオは仕事から帰るといつも熱心にケータイでメールを打っている。さくらは自分とどこか似ているものを感じていた。ある日しつこい客に困っていたとき、突然レオが部屋を訪ねてきて追い払ってくれる。驚くさくらに、いつも君を見ていたんだと告げる。

第1回日本ケータイ小説大賞受賞作。このところ次々と出版され、大ヒットしているケータイ小説からはすでに『恋空』が映画化されています。著者は10〜20代の女性がほとんどで、読者からの反響も大きく、ストーリーが変わっていくほどの勢いだそうです。主人公たちに共感するのでしょうね。
さくらをフレッシュさと硬さの見える杉野希妃、キム・ギドク監督の『絶対の愛』に出演しているとか。日本の作品には初お目見えです。レオにはテレビドラマでも人気の細田よしひこ。試写状で見た横顔と、画面で見た正面の顔が違いました。長身なのに子犬系。純真で可愛いレオを好演。カップルで観るのにぴったりの作品です。(白)

2007/日本/カラー/
http://www.clearness.jp/
配給:ゼアリズ・エンタープライズ/ドーガ堂

2月16日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー

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奈緒子

監督:古厩智之
脚本:林民夫、古厩智之、長尾洋平
原作:「奈緒子」(作:坂田信弘、画:中原裕 小学館刊)
出演:上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶 ほか
主題歌:ポルノグラフィティ「あなたがここにいたら」(SME Records)

ぜんそくの療養のため12歳の奈緒子は両親と共に長崎県の波切島にやってきた。両親と乗っていた釣り船から、港を走る少年が見える。釣り船の船長の息子・雄介だった。奈緒子にはとても眩しい姿に映った。その直後、海に落ちた奈緒子を助けようとして、船長が亡くなる不幸な事故が起きてしまう。雄介は奈緒子に「お父ちゃんを返せ!」と叫び、それは奈緒子の心に癒せぬ傷となって残った。
6年後、雄介は将来を期待されるランナーとなっていた。かつての雄介の走る姿に触発されて、自分も走るようになっていた奈緒子は、陸上競技会の会場で雄介と再会する。「もう忘れた」と言う雄介だが、言葉とは裏腹に奈緒子を受け入れられない。二人のことを知った、雄介の親代わりで陸上の西浦監督は、奈緒子を陸上部の夏合宿に参加するように誘う。

原作は1994年から2003年まで連載されていた漫画で、期間も長く、登場人物も多い話のようですが、映画はコンパクトに雄介と奈緒子が互いを受け入れ、波切島高校が駅伝の長崎大会で優勝するまでのひと夏を描いています。
タイトルが『奈緒子』の割には、彼女は雄介を見守る立場なので出番は少ないのです。しかし演じる上野樹里さんが素晴らしくて、もう少し彼女を見ていたいなという気持ちにさせられました。雄介役の三浦春馬さんは『恋空』に続く主演ですね。相当走り込んだらしく、きれいなフォームで一所懸命走っていました。(梅)

公式 HP >> http://www.naoko-movie.com/

★2/16(土)よりシネ・リーブル池袋、渋谷アミューズCQN、シネマート新宿ほか全国ロードショー!

ファーストフード・ネイション(原題:Fast Food Nation)

監督・脚本:リチャード・リンクレイター
原作・脚本:エリック・シュローサー(「ファストフードが世界を食いつくす」(草始社刊))
製作:ジェレミー・トーマス、ジェフ・スコール、マルコム・マクラーレン、アン・カーリ
出演:グレッグ・キニア、イーサン・ホーク、カタリーナ・サンディノ・モレノ、クリス・クリストファーソン、アシュレイ・ジョンソン、パトリシア・アークエット、アヴリル・ラヴィーンほか

ハンバーガー・チェーン、ミッキーズのマーケティング部長ドンは、”ビッグワン”が好調な売り上げを伸ばしていて上機嫌な中、社長に呼ばれる。大学院生がハンバーガーのパテを分析した結果、我が社のものから多量の糞便生大腸菌が検出されたという。公になれば会社は危機に陥る。その前に調査してほしいという命令だった。ドンはコロラドの工場へと向かう。そこで彼が知る事実とは…
その頃、メキシコとアメリカの国境付近の砂漠を歩く一団がいた。その中にシルビアとラウルの夫婦、そしてシルビアの妹ココたちもいる。運び屋の手引きでなんとか密入国を果たした彼らは、コロラドの精肉工場での違法労働を斡旋される。まじめに働いて生活基盤を作ろうとするシルビアだが、ココは評判の悪い現場監督とできてしまい危ない道を歩き始め、夫のラウルは作業中に大けがを負ってしまう…
コロラドに着いたドンが訪れたミッキーズのカウンターで働いているのは、まじめな女子高生アンバー。アンバーはかつて学生運動家だった叔父や、知り合った環境保護グループに影響され、アルバイトをやめる。そしてある抗議行動を起こそうとするのだが…。

近年日本でも、食品偽装発覚続きで、食の安全に大きな関心が寄せられています。また次第に広がる社会の格差、地方の荒廃。移民問題はないにしても、研修生名目で雇う外国人労働者の不当な扱いは近いものがあります。こうして考えると、この映画が描く問題は海の向こうのアメリカだけではなく、わたしたちにも密接につながっています。ファーストフードにかかわらず、安くて、手軽なものをわたしたちは求めます。でも、この映画を観たあとでは、商品を手に取ったとき、安さと手軽さを追求するために、作る過程でどんなことをしているんだろうと、想像するようになるかもしれません。
非常に登場人物の多い作品ですが、中でも出演リストには載っていませんが、ミッキーズの問題の鍵を握る人物ハリーをあのスキンヘッドの大物俳優が演じていて、かなり強烈なインパクトを残します。クリス・クリストファーソン演じる牧場主が「企業は利益のために平気で人を殺す」と語るシーンも印象的。(梅)

2006年/米英合作/108分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
提供・配給:トランスフォーマー
宣伝・配給協力:ザジ フィルムズ

公式 HP >> http://www.fastfoodnation.net/

★2月16日(土)より、ユーロスペースにてレイトショー他全国順次公開

アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生(原題:ANNIE LEIBOVITZ:LIFE THROUGH A LENS)

監督・脚本・製作:バーバラ・リーボヴィッツ
写真監督 エディ・マリッツ、ジェイミー・ヘルマン、バーバラ・リーボヴィッツ
出演:アニー・リーボヴィッツ、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、デミ・ムーア、キース・リチャーズ、アナ・ウィンター、 ヒラリー・クリントン、ミック・ジャガー、アーノルド・シュワルツェネッガー、ウーピー・ゴールドバーグ、パティ・スミ ス、ミハイル・バリシニコフ、ベット・ミドラー、ロザンヌ・キャッシュ、マーク・モリスほか

全裸のジョン・レノンが、黒いセーターとジーンズ姿のオノ・ヨーコに、しがみつくように寄り添う写真。1980年12月8日、ジョン・レノン暗殺の数時間前にアニー・リーボヴィッツが撮影したこの1枚は、1981年1月に特別追悼号として刊行されたローリングストーン誌の表紙を飾り、撮影時の感動的な秘話と共に伝説の写真として今も語り継がれている。心を解き放ったようなジョン・レノンの姿を撮り得たのは、さかのぼること10年前の1970年、アニーの最初の大仕事がジョン・レノンのインタビューだったことに鍵がある。20歳だったアニーは、ポップカルチャーの最先端を行くローリングストーン誌の編集部に必死に懇願して仕事を掴み取ったのだが、無名のアニーに心を開いてくれたジョンとの出会いが、その後の彼女の人生を決定づけたといわれる。1975年には、ローリング・ストーンズのツアーに完全密着。自分自身ドラッグに手を染めることになりながら、彼らの自然な姿をカメラにおさめている。
1977年、マンネリに陥っていたアニーは、出版デザインでカリスマ的存在のビア・フェイトラーに師事する。彼女から、ミュージッシャンを並べて撮っただけの写真を平凡だと指摘され、アニーは写真のコンセプトについて研究を重ねる。計算しつくしたシチュエーションの中で、大勢のセレブリティを撮るようになるアニー。トゲを全部取った何千本ものバラを目にして「私はもう彼女の奴隷になったわ」とベット・ミドラーは語る。妊娠中の大きなお腹を抱えたデミ・ムーアのヌード写真、真っ白なお風呂から飛び出すウーピー・ゴールドバーグ... 大胆で印象的な写真の数々。一方で、オノ・ヨーコもヒラリー・クリントンも、アニーは「魂」を撮りたがっていたと語る。

「死にゆくその日も写真を撮っていたい」と語るアニーの日常と、その生き様を描ききったのは、実の妹バーバラ・リーボヴィッツならでは。アニーの師であり、パートナーでもあったスーザン・ソンタグとのプライベートなエピソードも映画は語る。ソンタグは、『写真論』(1977年)の著者で、批評家、小説家、映画監督として活躍した、アメリカを代表する知識人。2004年12月28日、惜しまれながら逝ったソンタグを見送るアニー。ソンタグとの出会いがアニーにもたらしたものは大きい。

私自身は、素の姿を捉えた自然な写真が好みだが、力強いアニーの作品の数々を見て、アートとしての写真の可能性の大きさを感じさせられた。アニーの仕事に対する真摯な姿や、大胆な生き方に元気も貰った。一度しかない人生、私も精一杯好きなことを追求していきたいものだ。(咲)

提供:ギャガ・コミュニケーションズ×博報堂DYメディアパートナーズ×J-Dream×FM802
配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by ヒューマックスシネマ
宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ×maison d'art
2007年/アメリカ/ 83分/ カラー

公式 HP >> http://annie.gyao.jp/

★2008年2月16日(土)シネマGAGA!、シネカノン有楽町2丁目にて公開他全国順次ロードショー

いつか眠りにつく前に(原題:EVENING)

監督:ラホス・コルタイ
脚本:スーザン・マイノット、マイケル・カニンガム
原作:スーザン・マイノット
撮影:ギュラ・パドス
美術:キャロライン・ハナニア
音楽:ヤン・A・P・カチュマレク
出演:クレア・デインズ(アン・グラント)、トニ・コレット(ニナ)、ヴァネッサ・レッドグレーヴ(アン・ロード)、パトリック・ウィルソン(ハリス)、ヒュー・ダンシー(バディ)、ナターシャ・リチャードソン(コンスタンス)、メイミー・ガマー(ライラ)、アイリーン・アトキンス(看護婦)、メリル・ストリープ(ライラ・ロス)、グレン・クローズ(ウィッテンボーン夫人)ほか

臨終の近い老婦人アンの枕元に二人の娘ニナとコニーがつききりでいる。母親が混濁した意識の中で幾度も呼ぶ「ハリス」「バディ」という名は父のものではない。娘たちの知らない母の過去に何があったのか? アンの脳裏には歌手を目指していた若き日が浮かんでいる。
24歳のアンは親友ライラの結婚式でブライズメイドをつとめるために、ロードアイランドの高級住宅へ向かっていた。そこでライラがずっと心に秘めていた医師ハリスに出会う。アンとハリスは一目で惹かれあうが、ライラの弟バディもずっと前からアンを想っていたのだった。しかしアンにとってバディは弟のような存在で、アンは取り合わない。


(c)2007 Focus Feaures. All Rights Reserved

現在と過去のシーンが交互に現れますが、編集と役者のうまさで混同することはありません。アンの若き日をクレア・デインズが演じて歌声も披露します。子どもに歌って聞かせる場面で歌われるのは、実際にクレアの母親が歌ってくれた曲なのだそうです。とてもいいシーンでした。ヴァネッサ・レッドグレーヴと実の娘のナターシャ・リチャードソンが母娘役で共演。もう一組、メリル・ストリープと実の娘のメイミー・ガマーが、ライラの過去と現在を演じます。この二人は相似形のようにそっくり! 女優たちの競演と50年代のファッションも見所。(白)

2007/アメリカ/カラー/117分/スコープサイズ/
http://www.itsunemu.jp/

2月23日(土)より 日比谷みゆき座ほか全国ロードショー

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トゥヤーの結婚(原題:図雅的婚事)

監督:王全安(ワン・チュアンアン)
脚本:芦葦(ルー・ウェイ)、王全安
撮影監督:ルッツ・ライテマイヤー
出演:余男(ユー・ナン)、蘇合巴特尓(バータル)、森格(センゲー)

中国内モンゴル自治区の南西部。砂漠化の進むこの土地で、トゥヤーは遊牧をして暮らしているが、生活は困難を極めている。夫バータルは井戸掘の最中に事故を起こし、下半身不随の身となった。二人の子供はまだ幼く、トゥヤーは一人で日々の重労働を担っている。その苦労を見かねたバータルは、自分は姉の家で暮らすから、彼女に離婚して新しい夫を捜すことを勧める。トゥヤーには苦楽を共にした夫を見捨てることなどできない。かといってこのままでは生きていけない。渋々裁判所へ離婚の申請をしに行くが、そこで彼女は「新しい夫の条件は、バータルとも一緒に暮らしてくれる人であること」を離婚の条件にすると宣言した。気だての良い、働き者の美人が離婚したというニュースは瞬く間に広まり、トゥヤーの元には次々と男たちが求婚にやってくる。

久しぶりに乾いた大地にすっくと立つ、強く、美しい中国女性を見た。張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『紅いコーリャン』や『秋菊の物語』での鞏俐(コン・リー)を思い出す。トゥヤーはどんなに苦しくても愚痴一つこぼさず、家族が生きていくために黙々と日々の仕事をこなす。そればかりか、隣人の困ったへたれ男センゲーの心配までする。次々にやってくる求婚者たちには、バータルと一緒という少々常識外れの条件を一切妥協しない。厳しい自然の中に一人でいることは、命を落とす危険に直結すると知っているからこそ、その愛情はそんなにもまっすぐなんだろうか。
砂漠化した草原の中を、らくだに乗って駆ける姿。夕日に照らされて紅く染まったトラックの荷台に座るトゥヤー一家の姿。お茶を沸かす鍋からあがる湯気。トゥヤーのいくつもの鮮やかな色のスカーフ。原色があふれる結婚式。どれも素晴らしく美しい。
やっとこぎ着けた新たな結婚。男たちの姿を見ると、この先も苦労は続きそうだが、「きっとあなたなら大丈夫だよ」とトゥヤーに心からエールを送っていた。(梅)

第57回ベルリン国際映画祭≪金熊賞≫グランプリ受賞!!

2006年/中国映画/北京語/35mm/カラー/96分/ドルビーSR/アメリカンヴィスタ
日本語字幕:田村祥子、加藤浩志
後援:中華人民共和国駐日本国大使館文化部
協力:フォーカスピクチャーズ
配給:ワコー+グアパ・グアポ
宣伝協力:スローラーナー

公式 HP >> http://www.tuya-marriage.jp/

★Bunkamuraル・シネマにで、2月23日(土)よりロードショー!

sisters

監督:ダグラス・バック
脚本:ダグラス・バック、ジョン・フレイタス
原案:ブライアン・デ・パルマ
撮影監督:ジョン・キャンベル
音楽:エドワード・ズバク、デヴィット・クリスチャン
出演 クロエ・セヴィニー、ルー・ドワイヨン、スティーヴン・レイダラス・ロバーツ

ジャーナリストのグレース(クロエ・セヴィニー)は、小児診療所で起こった不審死を調べるために、潜入取材していたが、ラカン医師(スティーヴン・レイ)に追い出されてしまう。しかし、ラカンの美しい助手アンジェリーク(ルー・ドワイヨン/双子の姉アナベルと二役)の不安げで落ち着きのない様子を怪訝に感じたグレースはアンジェリークをマークし始める。一方、アンジェリークはボランティアで来ていた若い医師ウォレスに懇願して、そこから連れ出してもらうが、薬物を常用している為、薬が切れたアンジェリークは気を失ってしまう。同じ頃、アンジェリークを監視していたグレースは、若い医師ウォレスがアナベルに編み針で刺し殺される惨劇を目の当たりにする。だが、警官とアンジェリークの部屋に行くと、死体も事件の痕跡もなくなっていた…。

(c)2006 SISTERS WOOSTER, INC. AND IMAGE ENTERTAINMENT, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ミステリー、ホラー何でもOKの私ですが、この作品は今までとは違いました。びっくりするオドカシは全くなく、音楽も静かです。しかし、ねっとりしたくら〜い眼差し…、これが怖いんです。クロエ・セヴィニーは、事件の深みに入り込んで行くにつれ、目付きが暗くなり、何かに取りつかれたように虚になります。ルー・ドワイヨンは不安や秘密が半開き口元から、こぼれてきそうで怖かった…。個性派女優二人のキャスティングは見逃せません。最後、二人の女は、意外な結末を迎えます。
この作品、1973年、ブライアン・デ・パルマ監督の傑作『悪魔のシスター』のリメイク映画です。(美)

2006年/アメリカ/35mm/カラー/91分/R-18
配給・宣伝:アートポート
2008年2月23日より、シアターN渋谷ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.sisters-movie.jp/

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地上5センチの恋心(原題:ODETTE TOULEMONDE)

監督・脚本:エリック=エマニュエル・シュミット
撮影:カルロ・ヴァリーニ
美術:フランソワ・ショヴォー
衣装:コリーヌ・ジョリー
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:カトリーヌ・フロ(オデット)、アルベール・デュポンテル(バルタザール)、ファブリス・ミュルジア(息子ルディ)、ニナ・ドレック(娘スー=エレン)ほか

オデットは早くに夫を亡くし、息子と娘とつつましく暮らしてきた普通の主婦。化粧品売場で働き、夜は踊り子の羽飾りを作る内職をしている。一番の楽しみはロマンス小説を読むこと。著者のバルタザール・バルザンのサイン会にドキドキしながら駆けつける。憧れの人を前にして、自分の名前も正しく言えなかった彼女はすっかり落ち込んでしまうが、次の機会に手渡そうと初めてファンレターを書くことにした。
一方バルタザールは、自分の最新作をこきおろした批評家と妻がつきあっているのを知り、打ちのめされていた。そんなときオデットからの手紙を受け取り、自分への感謝と賞賛が書かれていることで喜びに包まれる。



平凡な主婦と人気作家のロマンチックな物語。『女はみんな生きている』のカトリーヌ・フロが、夢見がちでいつも楽しく暮らしている主婦を演じて、とても可愛いです。化粧品売り場のお客とのやりとりに、しっかりした主婦の一端も見せてなるほどと思いました。CGをうまく使って「天にも昇る心地」のときは天に昇らせてくれますし、カラフルな衣装や美術も楽しいです。原題は「オデット・トゥールモンド」というヒロインの名前そのままですが、邦題は映画の気分も現してしゃれていますね。
ストーリーは、作家でもある監督の実体験(主婦から熱烈なファンレターをもらった)から発したのだそうですよ。(白)

2006/フランス、ベルギー/カラー/100分/35mm/ドルビーデジタル/DTS/シネスコ
配給:クレストインターナショナル、ヘキサゴン・ピクチャーズ

http://www.chijou.jp/

2008年3月1日(土)よりシネスイッチ銀座にて浮き浮きロードショー!

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明日への遺言

監督:小泉堯史
脚本:小泉堯史、ロジャー・パルバース
原作:「ながい旅」大岡昇平
主題歌:森山良子「ねがい」
ナレーション:竹野内豊
出演:藤田まこと(岡田資中将)、富司純子(岡田温子)、ロバート・レッサー(フェザーストン弁護人)、フレッド・マックイーン(バーネット主任検察官)、リチャード・ニール(ラップ裁判長)、西村雅彦、蒼井優、田中好子ほか

第2次大戦終了後、アメリカ占領下の日本でB級戦犯に問われた軍人がいた。岡田資(たすく)中将は、パラシュート降下したアメリカ空軍兵士を処刑したとして被告の席にいる。上層部からの指令だと責任逃れをするものの多い中、彼は部下をかばい司令官として全ての責任を負う。米軍が犯した一般人の大量殺害の「処罰」をしたと主張し、住宅地商店街への無差別空襲の違法性も指摘する。「法戦」と名づけた法廷での戦いを続けるうち、弁護側だけでなく裁く側も彼に理解を示し始める。


(c)2007「明日への遺言」製作委員会

2007年の東京国際映画祭でワールドプレミア上映された作品。大岡昇平の「ながい旅」が原作、『雨上がる』『博士の愛した数式』の小泉堯史監督がメガホンをとりました。いまだに「必殺」のイメージがある藤田まことが、芯の通った誇り高い軍人像を見せます。「はぐれ刑事純情派」の安浦刑事ともまた違い、最後のサムライのような雰囲気です。
妻役の富司純子も凛として美しく、完成披露試写で登壇したロバート・レッサー、フレッド・マックイーン、リチャード・ニールらが口を揃えて「フジサン」を褒めておりました。このときに、それぞれの「明日への遺言」を司会者が尋ねました。父親(スティーブ・マックイーン)そっくりのフレッド・マックイーンがしばらく考えた末「日本はこのまま戦争に背を向け続けてください。そうしたら世界もきっと見習うでしょう」と述べたのが、とても印象的でした。 戦争シーンが直接出なくとも、その時代の日本人の生き方を描いて、背筋が伸びるような作品でした。(白)

2007/日本/カラー/110分/35mm/
配給:アスミック・エース
http://ashitahenoyuigon.jp/

2008年3月1日(土)より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー

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ペネロピ(原題:PENELOPE)

監督:マーク・パランスキー
脚本:レスリー・ケイヴニー
撮影:ミシェル・アマチュー
美術:アマンダ・マッカーサー
音楽:ジョビィ・タルボット
衣装:ジル・テイラー
出演:クリスティーナ・リッチ(ペネロピ)、ジェームズ・マカヴォイ(マックス)、リース・ウィザースプーン

上流家庭の一人娘ペネロピは、先祖にかけられた呪いのせいで「豚の耳と鼻」を持って生まれてきた。体面を気にした両親は赤ん坊のうちに死んだことにし、密かに屋敷の中だけで育ててきた。年頃になったペネロピの呪いをとくため、母親は口外しない誓約書つきで、名家の御曹司とのお見合いを次々とセッティング。しかし、ペネロピの姿を一目見ると、誰もが逃げ出してしまう。たった一人残ったのは、賭け事好きのマックスだけ。ペネロピは初めて心が動くのだった、が・・・。


(C)2006 Tatira Active Filmproduktions GmbH & Co.KG

特殊メイクの豚鼻もクリスティーナ・リッチがつけると、とてもキュート。子供のころから家から一歩も出られないままのペネロピですが、クールで賢い娘に育っています。大騒ぎする母親はキャサリン・オハラ、『ホーム・アローン』で叫んでいたママ、というと思い浮かぶでしょう。マックス役のジェームズ・マカヴォイは『ナルニア国物語』で半獣のタムナスさんだった青年です。ようやく顔がわかりました。この原作にほれこんだリース・ウィザースプーンが、製作を手がけました。作中では頼れる姐御としてペネロピを応援します。古い町並みの残るロンドンでの撮影が、このおとぎ話をいっそう魅力的にしています。(白)

2006/イギリス/カラー/101分/スコープサイズ/ドルビーデジタル/
配給:東京テアトル、デスペラード
http://www.penelope-movie.com/
2008年3月1日(土)より、テアトルタイムズスクエア他にて公開予定

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4ヶ月、3週と2日(原題:4 LUNI, 3 SAPTAMINI SI 2 ZILE)

監督・脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ

1987年、チャウシェスク政権末期のルーマニア。寒々しい学生寮の一室で、オティリアとガビツァの二人があわただしく手荷物を用意している。 歯磨き粉、石鹸、ドライヤー、ビニールシート...と、忘れ物はないか確認しあう彼女たち。「キャンプに行くみたいね」と言いながら、顔はこわばっている。 一人で寮を出たオティリアは、恋人に会ってお金を借り、その足でガビツァが予約したホテルへ行くと、予約が入っていない上に満室。 仕方なく他のホテルに掛け合い予約を取り、ガビツァに電話を入れると、体調が悪いので自分が会う約束をしている男を迎えにいってホテルに連れてきてくれと頼まれる。 男に会うと、ガビツァ本人が来ない上に、指定のホテルでないことに文句を言われる始末。 いやがる男を無理矢理ガビツァの待つホテルに連れて行くオティリア。 実は、望まぬ妊娠をしたガビツァは、ここで中絶手術をしてもらおうとしているのだ。 この時代、中絶は法律で禁じられていて、受ける方も施す方も罰せられる。 男は予定外の料金をふっかけてくる。でも、ガビツァはこれ以上中絶を先延ばしに出来ない...

妊娠何ヶ月かもよくわからず能天気なガビツァに対して、ルームメイトというだけで献身的に奔走するオティリア。 無神経とも思えるガビツァの為に、なぜここまでやってあげなくちゃいけないの?と、いらいらしながら、最後の最後まで、いったいどうなるのか・・と、緊張したまま目は画面に釘付け。 独裁政権下の自由のない張り詰めたような空気感がひしひしと伝わってくる。 でも、地味な社会派映画ではない。 性格の全く異なる二人の女性の1日を描いただけの映画なのに、こんなにも惹きつけられるなんて・・・!  昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した他、各地の映画祭で数々の賞に輝いたのも納得である。

中絶を施した男が、「野良犬に掘り返されないように土には埋めるな」と言い残していく場面がある。 12月に発刊されたシネマジャーナル創始者の一人佐藤玲子さん執筆の「ハノイを楽しむ」の中に、ブカレストを旅した場面が出てくるのだが、事前に調べたときに「野良犬に観光客が噛まれて狂犬病になった」と知って、佐藤さんが野良犬対策をどうしようかと本気で悩んだとあった。 映画でも犬の遠吠えや野良犬の姿が出てきて、ほんとに野良犬が多いところなのだなぁと、ちょっぴり可笑しくなった。チャウシェスク政権が崩壊して、ずいぶん国の雰囲気が変わった中でも、野良犬は健在?! (咲)

2007年/ルーマニア/113分/35mm/カラー/1:2.35/ドルビーSR

提供:コムストック・グループ、ツイン
配給:コムストック・グループ
配給協力:ツイン、マジックアワー
宣伝:マジックアワー
後援:ルーマニア大使館

★2008年3月1日より銀座テアトルシネマほか全国にて順次公開

公式HP>> http://www.432film.jp/

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チェスト!

監督:雑賀俊郎
原作・脚本:登坂恵里香(「チェスト!」ポプラ社刊)
音楽:松下奈緒
出演:高橋賢人、御厨響一、中嶋和也、宮崎香蓮、松下奈緒、高嶋政宏、大坪千夏、榎木孝明、羽田美智子 ほか

元気いっぱいのガキ大将で曲がったことが大嫌いな隼人には、人に嘘をついてまで隠していることがある。それはカナヅチだということ。学校では毎年「錦江湾横断遠泳大会」が行われているが、これまでなんだかんだと逃げてきた。でも、今年は小学校最後の年。何とかしたいと思っているのだが・・・
隼人のクラスに東京からの転校生・智明が入ってきた。硬い表情のまま、友達を作ろうとしない彼は、クラスで孤立していく。クラスメイトの雄太は緊張するとすぐに便意をもよおすため、みんなと一緒に泳いでもらえない。放課後、一人で練習していた雄太が足がつっておぼれかけたとき、素晴らしい泳ぎで助けてくれたのは智明だった。その様子を偶然見ていた隼人は、智明に泳ぎを教えてくれと頭を下げて頼み込む。かくして、隼人、智明、雄太の秘密の特訓が始まる。

「チェスト!」とは自分を乗り越えるための合い言葉。壁にぶつかっていくとき、気合いを入れて「チェスト〜! いけ〜!」と叫びます。『魁!!男塾』でも誰かが叫んでいました。
今年はNHKの大河ドラマ「篤姫」もあって、鹿児島が注目を集めそうです。その「篤姫」の時代にもあった、郷中(ごじゅう)教育の精神が受け継がれた小学校の伝統行事「錦江湾横断遠泳大会」を舞台に、子どもたちの成長と家族の絆をストレートに描いています。
わたしも小学校5年までカナヅチだったので、赤帽の恥ずかしさは身にしみてわかります。今でも25mしか泳げないのですが、それに比べ隼人君はゼロからのスタートで4.2kmを泳ぎ切れるようになるなんて、いくら海が浮くとはいえ、凄すぎます。うらやましい。もう一つうらやましいと思ったのは、子育てを親だけでなく地域で行う伝統でした。(梅)

耳慣れない「チェスト!」という気合を入れるためのかけ声。 「チェスト!」という鹿児島のブログポータルサイトもあって、鹿児島の人にとっては慣れ親しんだ言葉なのですね。30年以上前に、鹿児島を旅した時、坊津のバス停で、ご老人たちのみならず子供たちの話している言葉が、単語の一つも理解できなくて、びっくりしたことを思い出しました。敵に話している内容を理解されないように固有の方言を使ったとも聞いたことがありますが、言葉一つとっても、伝統文化を大事にしている風土を感じます。
映画の中で、ボーイスカウトの薩摩郷中起源説を紙芝居で見せる場面がありました。あくまで説のようですが、「負けるな!嘘をつくな!弱いものをいじめるな!」という郷中教育の魂は、ボーイスカウトの精神に通じるところがあるのでしょう。
映画でも時折映し出される桜島。薩摩の人々は桜島の雄姿に励まされてきたのだと感じます。小学生が錦江湾横断遠泳大会を乗り切る姿は、すがすがしいものでした。そして、個人的には、大好きな榎木孝明さん(鹿児島出身!)が素敵な父親姿で登場したのが嬉しかったのでした。(咲)

日本映画エンジェル大賞受賞
製作:共同テレビジョン、ポニーキャニオン、ピーズインターナショナル、アrテルナ
配給:ティ・ジョイ
支援:文化庁

公式 HP >> http://chesuto.com/

★2008年3月1日(土)、鹿児島先行ロードショー
 2008年4月19日(土)より、新宿バルト9他 全国ロードショー

泪壷

監督:瀬々敬久
脚本:佐藤有紀
原作:渡辺淳一
出演:小島可奈子(朋代)、いしだ壱成(雄介)、佐藤藍子(愁子)、菅田俊(父 周吾)、三浦誠己、柄本佑ほか

入院中の妹の見舞いに上京した朋代は、愁子の余命がいくばくもないのを知る。急に外へ走り出す朋代。子どものころ父親が泣き顔を嫌ったため、涙を見せまいとするのは今も変わらなかった。姉妹と雄介は少女のころからの知り合いで、朋代は雄介に惹かれていたが、結ばれたのは積極的な愁子のほうだった。
愁子は夫の雄介に「自分が死んだら骨で壷を作っていつもそばに置いて」と約束させて逝く。陶芸家に頼んで出来上がった壷には一筋の傷が入り、まるで愁子の泪のように見えた。20年に渡る朋代の片思いはどこに行ってしまうのだろう。

渡辺淳一の短編を元に、姉妹と彼女たちの愛した男性の3人の愛情が描かれます。原作より青春時代の描写が増えているようです。ピンク映画四天王と称された瀬々監督の前作は『堕ちた女郎蜘蛛』。私は未見ですが(美)さんが絶賛していました。妙に厳格な父親と、気弱な雄介。内に秘めてしまう朋代と開放的な愁子。母が遺したボーンチャイナの壷と、愁子の骨で作られる泪壷。官能と青春ドラマ。対比し繋がる何組かが、配されているような感じがしました。柄本佑くんが教え子役で顔を出しています。(白)

2007/日本/カラー/35mm/110分/
アートポート

公式 HP >> http://www.namidatsubo.jp/

★2008年3月1日(土)〜銀座シネパトス、K's cinemaほかにてロードショー

アジア新星流FOCUS FIRST CUTS

期間:3月1日(土)〜3月14日(金)
会場:シネマート六本木

アンディ・ラウが指揮をとって、アジアの新人監督を発掘するFOCUS : First Cuts≪FFC:アジア新星流≫プロジェクト。
この度、プロジェクト第一回目として制作された6作品が一挙上映されます。

*上映作品*
『クレイジー・ストーン〜翡翠狂騒曲〜』 (中国)
監督・脚本:ニン・ハオ
出演:グォ・タオ
『靴に恋する人魚』 (台湾)
監督・脚本:ロビン・リー
出演:ビビアン・スー、ダンカン・チョウ
『I’LL CALL YOU』 (香港)
監督・脚本:ラム・ジーチョン(『少林サッカー』出演)
出演:アレックス・フォン、ビアン・リアン
『MY MOTHER IS A BELLY DANCER』 (香港)
監督・脚本:リー・コンロッ
出演:エイミー・チョム、シドニー、クリスタル・ティン
『RAIN DOGS』 (マレーシア)
監督・脚本:ホー・ユーハン
出演:クァン・チュンワイ、リュー・ワイホン、ピート・テオ
『LOVE STORY』 (シンガポール)
監督・脚本:ケルヴィン・トン
出演:アレン・リン、エベリン・タン、エリシア・リー

上映スケジュール等詳細は、HPでご確認ください。

特別記事≪アジア新星流≫プロジェクト作品が一挙公開されます!!もご覧下さい。

公式 HP >> http://www.ffcjp.com



韓流シネマ・フェスティバル2008春

2005年から数え、4回目の韓流シネマ・フェスティバル。テレビドラマで活躍するスター達が、その顔とは違う“映画俳優”として取り組む姿にスポットを当てた作品14本が上映されます。

場 所:シネマート六本木・シネマート心斎橋ほか全国順次開催
時 期:六本木:2008年3月1日(土)〜2008年5月30日(金)
    心斎橋:2008年3月15日(土)〜

監督:キム・テヨン  出演:オム・テウン、ムン・ソリ
*上映作品*
『まぶしい日に』 監督:パク・クァンス 出演:パク・シニャン、ソ・シネ
『ひまわり』 監督:カン・ソッポム  出演:キム・レウォン、ホ.イジェ、キム.ヘスク
『家族の誕生』
『最強ロマンス』 監督:キム・ジョンウ  出演:イ・ドンウク、ヒョンヨン
『覆面ダルホ〜演歌の花道〜』 監督:キム・サンチャン  出演:チャ・テヒョン、イ・ソヨン
『マドレーヌ』 監督:パク・クァンチュン 出演:チョ・インソン、シン・ミナ
『なつかしの庭』 監督:イム・サンス  出演:チ・ジニ、ヨム.ジョンア
『ス』 監督:崔洋一 出演:チ・ジニ、カン.ソンヨン、ムン.ソングン
『ハーブ』 監督:ホ・イソム 出演:カン.ヘジョン、チョン.ギョンホ、ぺ.ジョンオク
『ジェニ、ジュノ』 監督:キム・ホジュン 出演:キム.ヘソン、パク.ミンジ、ソ.ミンジョン
『暴力サークル』 監督:パク・キヒョン 出演:チョン.ギョンホ、キム.ヘソン
『残酷な出勤』 監督:キム・テユン 出演:キム.スロ、イ.ソンギュン、コ.ウナ
『台風太陽〜君がいた夏〜』 監督:チョン・ジェウン 出演:チョン.ジョンミョン、キム.ガンウ、チョ.イジン、イ.チョニ、オン.ジュワン
『恋の潜伏捜査』 監督:パク・クァンチュン(『マドレーヌ』)  出演:キム・ソナ、コン・ユ

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/han-fes2008/

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花の夢〜ある中国残留婦人〜

監督・脚本:東志津
出演:栗原貞子
語り:余貴美子
プロデューサー:伊勢真一

中国残留婦人というのは国が終戦当時13才以上であれば、自らの意志で中国に残ったと見なしている女性たちを表します。そのため、帰国政策によって帰国した中国残留孤児と違って、帰国のための支援もなく、生活補助もありません。映画は、その一人である栗原貞子さんの口から語られる、苦難に満ちた過去と、慎ましく穏やかな現在とを対比させ、もう二度と戦争だけはやってはいけないという彼女の思いを強く静かに伝えます。

 

川崎市アートセンターにあるアルテリオ・シネマにて上映されることになりました。3月1日(土)、8日(土)の上映後には、東志津監督のトークも予定されています。その他、アルテリオ・シネマの3月の上映作品には、本サイトで過去に紹介した『ヒロシマナガサキ』『ハーフェズ ペルシャの詩』などもあります。

2007年/カラー/97分

アルテリオ・シネマ HP >> http://kawasaki-ac.jp/
いせフィルムHP >> http://www2.odn.ne.jp/ise-film/

★3月1日(土)〜14日(金)、 川崎市アートセンター アルテリオ・シネマにて上映

第16回地球環境映像祭

EARTH VISION The 16th Tokyo Global Environmental Film Festival

期日:2008年3月7日(金)〜3月9日(日)
会場:四谷区民ホール(東京都新宿区内藤町87番地 四谷区民センター9階)
参加:協力費1日1,000円 高校生以下無料・事前予約不要
3日間通し協力費(カタログ付き)一般2,000円 学生1,500円

★の作品には制作者によるトークセッションがあります。
スケジュール、内容は変更することがございます。

3月7日(金)
14:00 世界里山紀行 中国・雲南 竹とともに生きる★(日本)
15:15 赤貧洗うがごとき −田中正造と野に叫ぶ人々★(日本)
17:20 トラ −死の軌跡★(インド)
19:00 水になった村★(日本)
21:00 終了予定

3月8日(土)
◇◆子どものための環境映像プログラム◆◇
10:00 カルパ・ディエム−コイは生き残った(イタリア)/タツノオトシゴ(ドイツ)/みんなの自然?(アメリカ)
10:15 ブダペスト・ワイルド−街の生きものたち(ハンガリー)
11:00 校長先生とクジラ(日本)/ミートリックス(アメリカ)/生ゴミ堆肥が地球を救う!? 〜母娘のダンボールコンポスト循環生活(日本)
11:40 パフィン・アウェイ−地球に吐き出されたもの(カナダ) /タイガの子(ドイツ)
13:00 生きる −セマングム干潟を救え★(韓国)
14:20 海のゆりかご ーハチの干潟を守りたい★(日本)
○トークセッション「干潟のいま」
16:00 動物工場/アニマル・ファクトリー★(韓国)
17:30 エビの履歴書 −育てる人と食べる人★(日本)
18:00 自然の楯 −Tsunamiからいのちをまもったもの★(インド、インドネシア、スリランカ、タイ)
○トークセッション「マングローブとエビ」
19:00 終了予定

3月9日(日)
10:00 クルード −むき出しの欲望の果て★(オーストラリア)
13:00 ヒートアイランド東京 −風の谷と森が奇跡を呼ぶ★(日本)
13:45 プラネットアース −極地 氷の世界★(日本)
◇◆特別プログラム◆◇
15:10 IPCCノーベル平和賞受賞 記念講演
「地球温暖化ーわたしたちはどんな未来を選ぶのか」
国立環境研究所参与 西岡 秀三(IPCC作業部会メンバー)
[※ IPCC 国連・気候変動に関する政府間パネル]
上映「不都合な真実」(アメリカ/アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞)
18:00 表彰式
アース・ビジョン大賞作品上映/交流会

21:00までに終了予定
* 9日の終了時刻は、アース・ビジョン大賞受賞作品により異なります。

問い合わせ先
アース・ビジョン組織委員会
【事務局】TEL : 03-5802-0525
【本部】(財)地球・人間環境フォーラム TEL : 03-3813-9735
http://www.earth-vision.jp

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赤貧洗うがごとき −田中正造と野に叫ぶ人々

監督・脚本:池田博穂
撮影:西島房宏
音楽:小六禮次郎
朗読:藤田弓子、赤塚真人
ナレーター:湯浅真由美
出演:石神明治、あも、伊藤徹、船津基、中村裕、広尾博、広戸聡、山中いっとく、庭田隆次、庭田ハナ子

田中正造は1841年名主の家に生まれ17歳で名主に公選された。のちに県会議員、1890年には衆議院議員に当選。議会にて足尾銅山鉱毒の質問書を提出。以後、繰り返し質問するが進展はなし。衆議院議員連続6回の当選を果たすも、議員歳費値上げに反対し、一切の歳費を辞退。1901年には議会政治に見切りをつけ議員を辞職し、明治天皇への直訴を敢行・・・。73歳で倒れるまで絶えず実践の人であり、多くの人から敬愛された田中正造の生涯を描くドキュメンタリー。

最初の環境汚染・公害問題と言える「足尾銅山鉱毒」を追求した田中正造とは、なんとパワフルな人だったのかと驚きました。文字通り身命を賭し、財産も全て運動のためにつぎ込み、亡くなったときは無一文だったとか。このドキュメンタリーは、彼の縁者や研究家のインタビューに、再現ドラマなどもまじえてわかりやすく構成されています。
「赤貧の洗うがごとき心もて 無一物こそ富というなれ」
「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」
現代に置きかえてなお一層痛切なその言葉に、今こういう人がいてほしいと思いました。製作の方々も、まだまだ語り足りないのではないでしょうか?全国各地での上映が決定しています。お近くの会場へぜひどうぞ。(白)

◆長崎
3月 8日(土) 島原上映 島原文化会館 
3月15日(土) 長崎上映 長崎市チトセピアホール 
3月16日(日) 佐世保上映 佐世保コミュニティーセンター
3月20日(木) 大村上映 シーハット大邑・さくらホール
3月21日(金) 諫早上映 諫早文化会館・中ホール 

◆千葉
3月23日(日) アミュゼ柏 クリスタルホール
4月19日(土) 千葉県教育会館 

◆東京  
3月23日(日) EARTH VISION 多摩上映

◆群馬  
4月 6日(日) 笠懸野文化ホール パル
5月17日(土) 太田市学習文化センター 視聴覚ホール

◆神奈川 
4月29日(火) 横浜市緑区上映会 緑公会堂

詳細はHPでお確かめください。
http://www.sekihin.net/

2006年/日本/カラー/98分
企画:田中正造を後世に伝える会
製作:ドキュメンタリー映画「赤貧洗うがごとき」製作委員会

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アメリカを売った男(原題:BREACH)

監督・脚本:ビリー・レイ
撮影:タク・フジモト
音楽:マイケル・ダナ
出演:クリス・クーパー(ロバート・ハンセン)、ライアン・フィリップ(エリック・オニール)、ローラ・リニー(ケイト・バロウズ)、デニス・ヘイスバート(ディーン・プリザック)、カロリン・ダバーナ(ジュリアナ・オニール)ほか

野心家の若きFBI捜査官、エリックは上司のバロウズに呼び出される。FBI情報課のベテラン、ロバート・ハンセンの補佐を命じられる。そしてもう一つの目的は彼を徹底的にマークすること。勤続25年、定年を控えたハンセンは信仰心厚く愛妻家だった。任務に疑問を感じたエリックはバロウズを問い詰め、ハンセンが20年もの間KGBへアメリカの機密情報を漏らしていたことを知る。動かぬ証拠を押さえるため、エリックはハンセンの信頼を勝ち得ていく。

2001年2月18日、ロバート・ハンセンが逮捕されたニュースからこの物語は始まります。現役のFBI捜査官が、長年祖国を裏切り続けていたという実際にあった事件を元にしています。おとり捜査を開始してから、逮捕までの2ヶ月間を克明に描いていて、結果はわかっているのにどきどきしながら観てしまいました。映画化にあたり、正確に再現するためにFBIが多大な協力をしたのだとか。現在は弁護士となっている元捜査官エリック・オニールが、この映画の特別顧問をつとめました。ロバート・ハンセンを演じるクリス・クーパーの演技に感銘を受けたそうです。クリス・クーパーといえば『アメリカン・ビューティー』も忘れられませんが、闇を抱え裏と表の顔を使い分けてきた人物を演じきったこの作品も、彼の代表作になりそうです。(白)

2007/アメリカ/カラー/110分/ドルビーデジタル/ビスタサイズ
提供・配給・宣伝:プレシディオ
http://www.breach-movie.jp/
2008年3月8日(土)シャンテシネ他にて真実のロードショー!

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裸足のギボン

監督:クォン・スギョン
脚本:クォン・スンウォン/チョン・テウォン/クォン・スギョン
原案:パク・サンウク
撮影:キム・ヨンチョル
美術:チョン・ソンホ
音楽:キム・ウチョル/パク・ギョンジン
製作:テウォンF&M/ジオエンターテインメント
出演:シン・ヒョンジュン(ギボン)、キム・スミ(母)、イム・ハリョン(村長)、タク・チェフン(ヨチャン)、キム・ヒョジン(チョンウォン) ほか

−親子の“絆”を描いた本当の物語−

タンレイ村のギボンは、幼いころ熱病にかかって知能は8歳で止まったまま、40歳になった。父親をなくして生活は苦しいけれど、大好きなお母さんといるだけで幸せだ。年取ったお母さんのために、ギボンは毎日走り回り村の人の用を足して小銭を稼いでいる。たまたまマラソン大会に出くわしたギボンは、落ちていたゼッケンの持ち主を探すうちに、思いがけず入賞してしまう。彼の走る才能に気づいた村長は、ハーフマラソンに出場させようと思いつく。ギボンも賞金でお母さんに入れ歯を買ってあげようとするのだが。

TVのドキュメンタリー番組で紹介された実在の母子を見て、主演のシン・ヒョンジュンが企画し、クォン・スギョン監督と2年の準備期間を経て制作しました。これが初監督作のクォン・スギョン監督は、「親孝行をテーマにしたとてもシンプルな作品。ギボンの物語を通じて自分たちの心の中の物語に気づいてほしい」と言います。シン・ヒョンジュンのたっての願いで母親役となったキム・スミ始め、それぞれの俳優さんも好演しています。ちょっとだけ顔を見せている人にも注目。
元々親子モノの映画には弱くて、涙腺が緩みがちですが、ギボンが笑顔いっぱいでお母さんのためにいろいろ働くシーン、お母さんに「綺麗ね、綺麗ね」というシーンなどなど、混じり気なしの親子の愛情に泣けました。(白)

2006/韓国/カラー/100分/ビスタ/ドルビーデジタル/PG-12
提供:ケンメディア 配給:リベロ
http://www.gibon.jp/
@2006TAEWON ENTERTAINMENT Co.Ltd
2008年3月8日(土) 〜銀座シネパトスにて裸足のロードショー

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韓国アートフィルムショーケース2008

会期:2008年3月〜4月
会場:シアター・イメージフォーラム
上映作品:4本

『黒い土の少女』チョン・スイル監督 (3/8〜)
『俺たちの明日』ノ・ドンソク監督 (3/22〜)
『永遠の魂』ファン・ギュドク監督 (4/5〜)
『妻の愛人に会う』キム・テシク監督 (4/19〜)

◎『黒い土の少女』WITH A GIRL OF BLACK SOIL

原案・脚本・監督:チョン・スイル
脚本:ジュン・スンヨン
撮影:キム・ソンテ
美術:イ・ヨンフン
音楽:ゲ・スジョン
出演:ユ・ヨンミ(チェ・ヨンリム)、チョ・ヨンジン(父ヘゴン)、パク・ヒョヌ(兄トング)、カン・スヨン(特別出演)

江原道のある炭鉱住宅。かつては栄えた街だったが今は廃坑寸前、取り壊し予定の家には赤いペンキで目印が書かれている。その家の一つに住む少女ヨンリムは9歳。障がいを持った兄と父の3人暮らしで、母親代わりに兄の面倒もみるしっかり者だ。炭鉱夫の父は塵肺症のため会社をクビになってしまう。入院すれば補償金は出るが、それほどではない。社宅退去の準備金で新しい仕事を始めたが、思わぬ事故でだいなしになってしまった。

とても懐かしい風景が広がっていました。北海道の夕張炭鉱をずっと昔に見学したことがあり、そのときの炭鉱住宅のようすが思い出されました。雪に見え隠れする黒い土、水墨画のようなモノクロの風景が北海道の冬とよく似ていました。以前この土地で撮影をしたときに、炭鉱夫の人たちの話を聞いたことがこの作品のきっかけとなったそうです。饒舌な映画ではありません。台詞は極限まで少なく詩のような画面に吸い寄せられ、この少女を見つめることになります。ボタ山をすべり落ちる父親のように、この家族も不幸に向かってずりずりと落ちてゆきますがラストにはかすかに希望も見えます。心がしんとする作品でした。
チョン・スイル監督はパリの映画学校やパリ第7、第8大学に留学。現在は母校の慶星大学で教鞭をとりながら、釜山で映画制作を続けています。インタビューの機会をいただきましたので、特別記事もご覧ください(>> 特別記事『黒い土の少女』チョン・スイル監督インタビュー )。(白)

2007/韓国/カラー/89分/ヴィスタ/ドルビーSRD
2007年ベネチア映画祭 芸術映画連盟賞受賞 LINA MANGIACAPRE賞受賞
2007年釜山国際映画祭 最優秀アジア映画賞受賞
★3月8日(土)〜3月21日(金)

◎『俺たちの明日』BOYS OF TOMORROW

監督・脚本:ノ・ドンソク
撮影:チョ・サンギュン
編集:イ・チョンミン、ノ・ドンソク
照明:ホン・スンチョル
美術:キム・シヨン
音楽:クォン・セヨン
出演:キム・ビョンソク(ギス)、ユ・アイン(ジョンデ)

運転代行をして働くギスの夢は、モルジブへ行ってドラムを叩くこと。生活は苦しいが地道に暮らしている。ジョンデは、自分と母親を捨てた父親を憎み、銃さえあれば強くなれる気がしていた。二人は幼馴染で、年下のジョンデは昔からギスに弟のように懐いていた。子どものころ誤ってジョンデに怪我をさせて以来、ギスはますます保護者のような気持ちでいた。手っとり早く稼ごうと、風俗店に勤め始めたジョンデに注意するが聞き入れない。

「未来」「少年」という言葉からシナリオを書き始めたというノ・ドンソク監督。これは未来も希望も探しあぐねているような、貧しい若者たちの映画です。純粋で優しいだけでは幸せになれない、疾走する彼らに胸がちくちくします。ロケ場所は現在のソウルのどまん中だそうです。まだこんな場所があったんですね。ジョンデを演じたユ・アインはアイドル顔ですが、傷を抱える少年を好演。(白)

2007/韓国/カラー/ドルビーデジタル/93分
配給協力:ダゲレオ出版+マジックアワー
宣伝:マジックアワー
★2008年3月22日(土)〜4月4日(金)

◎『妻の愛人に会う』英題:DRIVING WITH MY WIFE'S LOVER

監督・脚本:キム・テシク
エクゼクティブ・プロデューサー:高橋松男、キム・ヒョンジョン
共同プロデューサー:イ・ヨンジン、霜村裕
出演:パク・クァンジョン、チョン・ボソク、チョ・ウンジ、キム・ソンミ

「チクショウ」の文字を削りだす男。江原道の海辺の町で小さなハンコ屋を営むテハンは、結婚して5年。妻が浮気をしているらしいと知り、愛人ジュンシクの住むソウルに向かう。ジュンシクは、若くてちょっとハンサムなタクシー運転手。彼がセクシーな妻に見送られて、派手なパッチワークのカバーをはずして仕事に出かけたのを見定めて、テハンはジュンシクのタクシーを止めて、江原道に向かうよう頼む。思わぬ長距離の客に喜ぶジュンシク。「この世に不倫など存在しない。あるのは愛だけ」と主張するジュンシクに、テハンは内心不愉快だ。道中、タクシーが故障したりしながら、二人の珍道中が続く。いよいよ江原道に着き、テハンを降ろしたジュンシクは愛人の元へ向かう...

寝取られ男のテハンが、黒縁めがねの風采のあがらない男で、これじゃぁねぇ...と思っていたら、えっ?と驚く思わぬ展開が。途中のガソリンスタンドで集団強盗らしき姿が後ろに映ったり、車が故障した道路で、スイカがたくさんゴロゴロころがってきたりと、不可思議な場面が出てくる。なんだか憎めない男たちも可笑しい。
監督は、1980年ソウル芸術大学映画学科在学中に日本映画学校に留学。日本のTVやCFでも仕事をした経験がある。パク・チョルス監督『家族シネマ』の助監督をきっかけに映画界入り。本作が長編デビュー作。(咲)

2006年/韓国/92分/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD

製作:フィルム・ライン・ピクチャーズ
配給:Mirovision inc.
宣伝:マジックアワー

協力:アジア太平洋映画祭in幕張
★2008年4月19日 シアター・イメージフォーラムにてロードショー

公式 HP >> http://www.kaf-s.com/
★2008年3月上旬より渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

プライスレス 素敵な恋の見つけ方(原題:Hors de Prix)

監督:ピエール・サルヴァドーリ
脚本:ピエール・サルヴァドーリ、ブノワ・グラファン
撮影:ジル・アンリ(A.F.C.)
美術:イヴ・フルニエ
衣装:ヴィルジニー・モンテル
音楽:カミーユ・バズバズ
出演:オドレイ・トトゥ(イレーヌ)、ガッド・エルマレ(ジャン)、マリー=クリスティーヌ・アダム(マドレーヌ)、ヴァーノン・ドブチェフ(ジャック)、ジャック・スピエセル(ジル)ほか

−お金じゃ買えない恋がある。−

ジャンは高級ホテルで働くお人良しのウエイター。バーで出会った美女イレーヌと、誤解から始まった一夜を過ごした。ジャンはすっかり彼女のとりこになるが、イレーヌは玉の輿を狙う小悪魔。ジャンの本当の姿を知ってさっさと逃げ出すのだった。彼女の心を繋ぎとめるには、ホテルのスイートルームにシャンパン、キャビア、ブランドのジュエリーにドレスetc・・・ジャンの財布はあっというまに空っぽ。イレーヌのそばにいるために、裕福な未亡人マドレーヌのジゴロになってしまった。

不思議ちゃん『アメリ』(01)のオドレイ・トトゥのラブ・コメディ。大金持ちの男性を射止めるため、手練手管を弄するイレーヌを演じて魅力的。まじめに働いてきたジャンが、イレーヌに恋したばかりに貯金もはたいて尽くすさまは胸が痛みます(でも笑える)。マドレーヌに気に入られてからは、ファッションも変わり自信もついて、イレーヌとようやく対等になります。この駆け引きが軽快でとても楽しいです。ピエール・サルヴァドーリ監督は俳優・脚本家としても活躍中、台詞を必ず自分で言ってみてから書くそうです。皮肉とユーモアのきいた台詞まわし、コート・ダジュールの風景、豪華ホテルや次々と出てくるブランド品などお楽しみ満載の作品。(白)

2006/フランス/カラー/105分/スコープサイズ/SRD DTS
配給:シネカノン
http://www.priceless-movie.com/  (公式ファンサイトへのリンクあり)
2008年3月8日(土)、シネカノン有楽町2丁目、シネ・リーブル池袋ほかにてロードショー

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花影

監督: 河合勇人(第一回監督作品)
原作・脚本: 市川森一
出演: 山本未來、キム.レウォン、戸田恵子、パク・ジョンス、笹野高史、片岡静香、竹下明子、伴杏里、山田雅人、柄本明、佐藤浩市、石黒賢
主題歌:「アリラン」sg WANNA BE+(エスジーワナビー)

ジュエリーデザイナーとして青山に店を構え活躍する在日三世の五木尚美(山本未來)。韓国釜山の新しいホテルにジュエリーショップ出店のオファーを受け釜山に赴くが、日本でセレブの女性たちから支持されているのをいいことにタカビーな態度 に出てしまい、断られてしまう。むしゃくしゃした気持ちで、「風の丘墓園」に祖先の墓参りに行くが、お墓がどこにあるのかわからない。折しも、満開の桜を写生に来ていた小学生たちに出会う。駐在員の日本人の娘の通訳で、教師ソン・スンウ( キム・レウォン)に事情を説明し、小学生たちにお墓を探し出してもらう。通訳をした少女のちょっとしたいたずらで、尚美はスンウに名刺を渡し、方や、スンウは尚美とまた一年後桜の下で会う約束をしたと思い込む。
日本に帰った尚美は、不倫関係にあったカメラマン土門竜(石黒賢)との結婚の夢がつぶれたあげくに、スキャンダルが報じられ、仕事も行き詰まってしまう。身を隠すように奈良の実家に帰った尚美は、ある日、ハングルで書かれたラブレターを受け取る...

満開の桜の中から現れるキム・レウォン演じるスンウの満面の笑顔に、尚美ならずとも癒されます。スンウとの再会のときの為に、尚美が必死にハングルを勉強したように、山本未來さんも必死でハングルの台詞をマスター。立膝で座ったり、韓国式 にお墓参りをしたりと、韓国の作法もこなしています。最初は高慢でちょっとイヤな女だった尚美が、愛し合える人との出会いで顔までもが和んでいくのが感じられました。「宮廷女官チャングムの誓い」でチャングムを助ける女官長役のパク・ジョ ンスが、スンウの母親役を演じているのも、なんだかほっとします。幸せを掴んだかと思ったら、思いがけない展開... それはスクリーンでご確認を!(その肝心の展開のところでふっと寝ていた私!)(咲)

配給・宣伝:アステア
2007年/日本/カラー/ヴィスタ/88分

公式 HP >> http://www.hana-kage.jp/

★2008年3月8日より、シネマート六本木、新宿K’s cinemaほか、全国順次ロードショー
特別記事『花影』完成記者会見レポート もご覧下さい。

スルース(原題:SLEUTH)

監督:ケネス・ブラナー
脚本:ハロルド・ピンター
原作戯曲:アンソニー・シェイファー
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
プロダクションデザイン:ティム・ハーヴェイ
音楽:パトリック・ドイル
出演:マイケル・ケイン(アンドリュー・ワイク)、ジュード・ロウ(マイロ・ティンドル)

ロンドン郊外に住む小説家アンドリュー・ワイクは監視カメラの映像を眺めている。玄関のベルを鳴らしたのはマイロ・ティンドル。若くてハンサムな彼はワイクの妻の愛人で、離婚するように促しに来たのだ。富も名声も手に入れたワイクは、今仕事がない俳優のティンドルに「君には贅沢に慣れた妻を養うことはできないだろう」と言い放つ。そしてある取引を持ちかけるのだった。

(c)MRC IIDistribution Company LP

故ローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインが共演した『探偵<スルース>』(1972年)のリメイク。この作品のプロデューサーでもあるジュード・ロウが、マイケル・ケインに作家役をオファー、自分はかつてマイケルが演じたティンドル(前作では美容師という設定)役に。脚本は台詞を少なく、多くの意味を持たせて、このイギリスを代表する二人の俳優の丁々発止をスリリングに見せています。(白)

アンドリュー・ワイクとマイロ・ティンドルという二人の男の知力を尽くした真剣勝負であり、マイケル・ケインとジュード・ロウという二人の俳優の演技上でのガチンコ対決でもあります。これは1972年版も観てみたいと探しましたが、まだDVDリリースされていませんでした。公開に合わせて、是非とも旧作のDVDリリースもしてほしいものです。何はともあれ、ジュード・ロウ ファンは必見です!その色気にゾクゾク〜(梅)

2007/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/1時間29分
配給: ハピネット 宣伝:ザジフィルムズ

公式 HP >> http://www.sleuth.jp/

★2008年3月8日(土)より シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国順次公開

フランス映画祭2008

■期間・会場
2008年3月13日(木)〜3月16日(日):[東京] TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
2008年3月16日(日)〜3月18日(火):[大阪] TOHOシネマズ なんば
主催:ユニフランス

■ゲスト
フランス代表団 団長ソフィー・マルソー
ほか各作品の監督、出演者が来日いたします。
スケジュールほか詳細はHPへ

■チケット情報
料金 前売・当日券ともに1,500円(税込)【全席指定席】
購入方法 :インターネットチケット販売
     2月16日(土) AM0:00より発売開始[ インターネットチケット vit ]
     各会場チケットカウンター 2月16日(土) AM9:00より発売開始
     [ TOHOシネマズ 六本木ヒルズ ][ TOHOシネマズ なんば ]
 お問い合わせ 050-5541-8600 2/16(土)〜3/18(火)(7:00〜23:00)

オープニング作品
『ドーヴィルに消えた女』
監督:ソフィー・マルソー
出演:クリストフ・ランベール、ソフィー・マルソー、ニコラ・ブリアンソン
上映作品
『譜めくりの女』
監督:ドゥニ・デルクール
出演:カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ、パスカル.グレゴリー
配給:カフェグルーヴ+トルネード・フィルム
GW、シネスイッチ銀座、渋谷シネアミューズほかにてロードショー
(C)Philippe Quaisse
『バグズ・ワールド』
監督:フィリップ・カルデロン
提供/配給:エイベックス・エンタテインメント+トルネード・フィルム
初夏、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、池袋シネマサンシャインほか全国ロードショー
(c)2006 Les Films du Reve
『アストレとセラドンの恋(仮)』
監督:エリック・ロメール
出演:アンディー・ジレ、ステファニー・クレイヤンクール
配給:アルシネテラン
2008年公開予定
(C)Rezo films, Les Amours d'Astreacute;e et deCeacute;ladon
『屋敷女』
監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
出演:ベアトリス・ダル、アリソン・パラディ
提供:キングレコード
配給:トルネード・フィルム
初夏、ライズXにてロードショー
(C)2007 LA FABRIQUE DE FILMS- BR FILMS
『水の中のつぼみ』
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ポーリーヌ・アキュアール(新人)、ルイーズ・ブラシェール(新人)、アデル・ヘネル
提供:ツイン/ポニーキャニオン
配給:ツイン
初夏、渋谷Q-AXにてロードショー
(C)Les Productions Balthazar 2007
『秘密』
監督:クロード・ミレール
出演:セシル・ドゥ・フランス、パトリック・ブリュエル、リュディヴィーヌ・サニエ 他
製作:イブ・マルミオン(UGC YM)
『パリ』
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:アルベール・デュポンテル、ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス 他
『暗闇の女たち』
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:ソフィー・マルソー、ジュリー・ドパルデュー、マリー・ジラン 他
『食料品屋の息子』
監督:エリック・ギラド
出演:ニコラ・カザレ、クロティルド・エスム、ダニエル・デュヴァル
『娘と狼』
監督:ジル・ルグラン
出演:レティシア・カスタ、ジャン=ポール・ルーヴ、ステファノ・アコルシ 他
『ディディーヌ』
監督:ヴァンサン・ディエッチ
出演:ジェラルディーヌ・ペラス、クリストファー・トンプソン、ジュリー・フェリエ
『死者の部屋』
監督:アルフレッド・ロット
出演:メラニー・ローラン、エリック・カラヴァカ、ジル・ルルーシュ
短編映画特集
『彼女の棲む場所(耐震)』監督:オリヴィエ・エムス
『エドゥアールのような幸せ者…』監督:ヴァンサン・ビュルジュヴァン、フランク・ルボン
『トニー・ゾレイユ』監督:ヴァランタン・ポワティエ
『橋』監督:ヴァンサン・ビエールヴェルト
『タクシー・ドライバー』監督:ローラ・フレデリック
『ティティ』監督:ベアトリス・エスピナス、ユーグ・エスピナス
『屠殺場』監督:ディディエ・ブラスコ

公式 HP >> http://www.unifrance.jp/festival/index_pc.php

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ジェリーフィッシュ(原題:Meduzot(くらげ))

監督:エドガー・ケレット、シーラ・ゲフェン
脚本:シーラ・ゲフェン
挿入歌:「バラ色の人生」
出演:サラ・アドラー(『アワーミュージック』J=L・ゴダール)、ニコル・ライドマン、ゲラ・サンドラー、ノア・ノラー

テルアビブ海辺のホテルの結婚式場で働くバティア。同居していた恋人に別れを告げられるが、「行かないで!」の言葉を彼が去ってからしか言えない。アパートは天井から水が洩れるし、職場では失敗ばかり。福祉活動に熱心な母親はバティアにはおかまいなし。おまけに、浮き輪を付けた迷子の少女を職場に連れていったことをきっかけに首を言い渡されてしまう。一緒に首になったカメラマンの女性と親しくなるバティア。カメラマンの部屋で彼女の幼い時の8ミリ映像や写真見せてもらう。「よくある退屈なものでしょ」と言われるが、バティアには8ミリどころか、幼い頃の写真は1枚もない。
一方、バティアの働く結婚式場で披露宴を挙げていた花嫁のケレンは、式の最中に骨折。カリブへの新婚旅行を諦め、ホテルに泊まることに。狭い部屋に憂鬱な思いでいたら、花婿マイケルがホテルの外階段でスイートルームに泊る謎めいた詩人の女性と知り合い、部屋を交換してもらえることなる。が、マイケルと詩人との関係を疑うケレンと口論になってしまう。舞台女優ガリアから母親マルカの介護を依頼されたジョイ。フィリピンから出稼ぎに来た彼女は、国に5歳の男の子を置いてきていて、いつか大きな船の模型をお土産に買って帰るのが夢。言葉の通じないジョイにマルカは文句ばかり。ある日、ガリアが出演する舞台のポスターを見つけたジョイは、マルカを舞台に誘う。

海辺の町を舞台に繰り広げられる3組の人間模様。登場人物は皆、家族や周りの人とのコミュニケーションを取るのが、あまり上手じゃない。それぞれにいろんな思いを抱えて人生を歩んでいる様子が、美しい色彩と、ふわ〜っとした雰囲気で描かれていて、不思議な世界。失敗を繰り返しても、なんだか人生これでいいんだという、暖かい思いになる。
監督は、イスラエルが誇る人気作家エトガー・ケレットと、詩人で劇作家のシーラ・ゲフェン。二人は公私共にパートナーである。二人で手がけた初の長編である本作は、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(最優秀新人監督賞)を受賞。2007年の第8回東京フィルメックスで上映され、観た友人たちも皆絶賛。公開を待ち望んでいた作品。
3組の登場人物は、よ〜く見ていると思わぬところで接点がある。冒頭の結婚披露宴の会場にも、実は3つのエピソードの主人公が一堂に会していると資料にあったが、2度目に観た時にも気付かなかった! 監督二人の遊び心があちこちに散りばめられているのを見つけるのも楽しみな映画。 また、イスラエルというと思い浮かパレスチナ紛争や政治的な問題は直接的には出てこないが、イスラエルの社会的背景があちこちに見え隠れして興味深い。(咲)

協力:?潟Wェイ・シー・イー・オーバーシーズ
後援:イスラエル大使館
配給:シネカノン

2007年/イスラエル=フランス/82分/35mm/1:1.85/ドルビーSRD/カラー

★3月15日より、渋谷シネ・アミューズほかにて全国順次公開

公式HP>> http://www.jellyfish-movie.com/

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コントロール

監督:アントン・コービン
脚本:マット・グリーンハール、デボラ・カーティス
原作:デボラ・カーティス 「タッチング・フロム・ア・ディスタンス」蒼氷社刊
撮影:マーティン・ルーエ
音楽監督:イアン・ニール
音楽:ニュー・オーダー、ジョイ・ディヴィジョン
出演:サム・ライリー(イアン・カーティス)、サマンサ・モートン(デボラ・カーティス)、アレクサンドラ・マリア・ララ(アニーク)、ジョー・アンダーソン(フッキー)、ジェームズ・アンソニー・ピアソン(バーナード)、ハリー・トレッダウェイ(スティーヴン)、トビー・ケベル(ロブ)、クレイグ・パーキンソン(トニー・ウィルソン)ほか

1970年代後半、田舎町に住む高校生イアンはデヴィッド・ボウイに憧れていた。友人のガールフレンドだったデボラと出会ったイアンは、「僕たちは結婚すべきだ」という。1977年、バーナードのバンドに加入し仕事のかたわら夜にライブ活動を始める。イアンがヴォーカルとソングライターとなったバンド「ジョイ・デヴィジョン」は人気を博し、マネージャーにロブ・グレッドンを得てファクトリーレコードと契約。ロンドンの公演からの帰り道、イアンは初めての発作に襲われた。病名はてんかん。

(c)Northsee Limited 2007

若くして結婚し、献身的な妻を持ちながら、のちに出会うアニークとの愛人関係を清算できないイアン。病気への不安と妻への罪悪感からどんどん鬱に陥っていきます。イアンの書く詩にはそんな生活が見え隠れしています。本当のところ子どものままで夢見ていたかったのに、夫となり父親となり、それもまっとうできずにいる自分。自らもインディーズバンドのヴォーカリストのサム・ライリーがそんなイアンを、家計を支えながら子育ても一人で負うデボラを、サマンサ・モートンが演じて痛ましいです。元々ロックミュージシャンを撮る写真家で、生前のイアンの撮影もしたアントン・コービンの初監督作。モノクロの画面がシャープ。(白)

2007年カンヌ国際映画祭カメラドールスペシャルメンション賞
2007年英国インデペンデント映画賞
ほか受賞多数

2007/イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本/モノクロ/35mm/119分/シネマスコープ/デジタルSRD
配給:スタイルジャム
オリジナルサウンドトラック:ワーナーミュージック・ジャパン

公式 HP >> http://control-movie.jp/

★2008年3月15日(土)よりシネマライズほか全国順次ロードショー

ビルマ、パゴダの影で(原題:IN THE SHADOW OF THE PAGODAS--THE OTHER BURMA)

監督:アイリーヌ・マーティー

“千のパゴダの輝く黄金の国”ビルマ(ミャンマー)。1981年に世界旅行の一環として初めてこの国を訪れた監督は、人々の親しみやすさに魅了されながら、アジアのほかの国とは違う何かを感じる。その後、1989年、軍事政権は国名をミャンマーと改称し、国民民主連盟の総書記長アウンサンスーチーを自宅軟禁する。アウンサンスーチーに象徴される民主化運動は数多く報道されているが、監督は自身がビルマの各地を旅して感じた少数民族の悲惨な状況については知られていないことに心を痛める。本作は、スイスの観光用PR番組の撮影と偽ってビルマに潜入し、ジャングルの奥深く国境地帯へも分け入り、カレン族やシャン族など少数民族の人たちの証言を収録したものである。

私が大学を卒業して就職した商社で、隣の席にいたのが、アウンサンスーチーに似たビルマ人女性だった。彼女からいただいた様々な民族のこけしで、ビルマが多民族国家であることをおぼろげに知った。その後、彼女は国に帰り派手な結婚式を挙げ、そのことがずいぶん非難の的になったと聞かされた。駐在員からは、電話が盗聴されたり、行動を監視されている状況を聞かされていた。おっとりとした仏教の国というイメージの裏で、何か不穏なことが起きているのを感じていたのだが、本作を見て、迫害の実態に驚いた。もちろん、現政権はそのことを否定している。何が真実なのか? 映像の力を信じたい。(咲)

2004年/スイス/Video/カラー/74分/16:9/英語、ビルマ語、カレン語、シャン語、他
協力:在日ビルマ人共同実行委員会(JAC)、ビルマ市民フォーラム、ビルマ情報ネットワーク、アムネスティ・インターナショナル日本、社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)、難民支援協会、アーユス仏教国際協力ネットワーク、アジア女性資料センター、wam女たちの戦争と平和資料館、スイス大使館
配給宣伝:アップリンク

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/burma/

★2008年3月15日(土)より、渋谷アップリンクXにてロードショー

特別記事『ビルマ、パゴダの影で』アイリーヌ・マーティー監督舞台挨拶&Q&Aもご覧下さい。

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第4回国際交流基金 アラブ映画祭2008

2005年から始まったアラブ映画祭も、4回目を迎えました。
新作6本と、過去3回に上映された作品の中から9本の計15本が上映されます。

期間および開催場所
3月17日(月)〜3月19日(水) 草月ホール
3月23日(日)〜3月25日(火) OAGホール

◆アラブ新作パノラマ
『サービス圏外』2007年 シリア
『ヘリオポリスのアパートで』2007年 エジプト
『満開(満月)』2006年 ヨルダン
『VHSカフルーシャ 〜アラブのターザンを探して』 2006年 チュニジア
『デイズ・オブ・グローリー』 2006年 アルジェリア=仏=モロッコ=ベルギー『BOSTA(ボスタ)』 2005年 レバノン
 
『ヘリオポリスのアパートで』 『BOSTA(ボスタ)』
◆アラブ映画祭 2005〜2007アンコール
『ラジオのリクエスト』2003年 シリア 
『忘却のバグダッド』 2002年 イラク=スイス=独 
『Waiting』2005年 パレスチナ=仏 
『エドワード・サイード/OUT OF PLACE』 2005年 日本 
『ヤコービエン・ビルディング』 2006年 エジプト 
『バーバ・アジーズ』2004年 チュニジア=独=仏=英  
『インターネットの扉』 2004年 アルジェリア 
『ヒンドとカミリアの夢』1989年 エジプト  
『テロリズムとケバブ』 1992年 エジプト 

アラブ映画祭2005 (シネマジャーナル65号に紹介)
アラブ映画祭2006 (シネマジャーナル67号に紹介)
アラブ映画祭2007 (シネマジャーナル70号に紹介)

アンコール作品は、どれも映画祭で人気の高かった見ごたえのある素敵な作品ばかり。 シネマジャーナルでは、過去のアラブ映画祭全作品について紹介しています。 参考にしていただければ幸いです。

◆シンポジウム「アラブのドキュメンタリーをめぐって」
3月18日(火)19:00〜  無料

主催:国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
プログラム・ディレクター:石坂健治(東京国際映画祭アジア部門ディレクター)
協力:在日本アラブ.エジプト共和国大使館 エデン (株)シグロ アルバトロス(株) アラブ・アジア文化交流協会(アーダード) ほか
運営協力:ぴあ株式会社

公式HP>> http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2008.html

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ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008」

■開催日程: 2008年3月19日(水)〜3月23日(日)
■会場: ゆうばり市民会館、シネサロン、夕張商工会議所ほか夕張市内会場
■主催: ゆうばり国際ファンタスティック映画祭実行委員会
    特定非営利活動法人ゆうばりファンタ

■招待部門作品(12作品)
オープニング作品:『僕の彼女はサイボーグ』
  監督:クァク・ジェヨン/出演:綾瀬はるか、小出恵介
  ギャガ・コミュニケーションズ powerd by ヒューマックスシネマ 配給
クロージング作品:『スパイダーウィックの謎』
  監督:マーク・ウォーターズ/出演:フレディ・ハイモア
  パラマウント ジャパン 配給

『最高の人生の見つけ方』
  監督:ロブ・ライナー/出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン
  ワーナー・ブラザース映画 配給
『Sweet Rain 死神の精度』
  監督・脚本:筧昌也/出演:金城武、小西真奈美
  ワーナー・ブラザース映画 配給
『JUNO/ジュノ』
  監督:ジェイソン・ライトマン/出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ
  20世紀フォックス映画 配給
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
  監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン/出演ダニエル・デイ=ルイス
  ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン 配給
『ミラクル7号』
  監督:チャウ・シンチー/出演:チャウ・シンチー、シュー・チャオ
  ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給
『砂時計』
  脚本・監督:佐藤信介/出演:松下奈緒、夏帆、井坂俊哉
  東宝 配給
『相棒−劇場版−絶体絶命!42.195km東京ビッグシティマラソン』
  監督:和泉聖治/出演:水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽
  東映 配給
『光州5・18』
  監督:キム・ジフン/出演:アン・ソンギ、キム・サンギョン
  角川映画 配給
『アフタースクール』
  監督:内田けんじ/出演:大泉洋、佐々木蔵之介
  クロックワークス 配給
『シューテム・アップ』
  監督・脚本:マイケル・ディヴィス/出演:クライヴ・オーウェン、モニカ・ベルッチ
  ムービーアイ 配給

■オフシアターコンペティション部門(14作品)
■フォーラムシアター部門(21作品)
■チケット
・招待作品 作品別チケット P-code 554-018
  前売り¥1,000  当日¥1,300
・オフシアター部門・・・ 無料
・フォーラムシアター部門・・・ 無料

■販売場所
期間: 2008年2月15日(金)より
インターネット http://pia.jp/t/ パソコン、携帯電話共通
電話予約 0570-02-9999 24時間受付
(但し、4:00〜7:00はメンテナンスのため休止)
一部の携帯電話・PHS・IP電話及び発信者番号非通知は受付不可

店舗
全国のチケットぴあのお店、サンクス、サークルK、ファミリーマート
営業時間は店舗毎に異なります。コンビニエンスストアは10:00〜23:30。
※チケットぴあのお店のリストは上記urlのhpで参照可能です。

■ウェルカムパーティ
2008年3月20日(木) 21:00開始(予定)
P-code 554-017 ¥5,000 (当日券はありません)

http://yubarifanta.com/index_pc.php
(C) YUBARI INTERNATIONAL FANTASTIC FILM FESTIVAL

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パレスチナ1948・NAKBA(ナクバ)

監督・撮影・写真:広河隆一

1948年、イスラエル国家誕生の陰で、数多くのパレスチナ人が故郷を追われた。この事をパレスチナの人たちはNAKBA(大惨事)と呼んでいる。

1967年、当時23歳だった広河隆一は、キブツ(共同農業体)に社会主義の理想があると思い、イスラエルのキブツダリアで働き始める。ある日、農場のはずれにある白い廃墟が、かつてパレスチナ人が暮らしていたダリヤトルーハ村だと知る。ホロコーストを経験したユダヤ人のキブツが、パレスチナ人の土地に建てられている事実に衝撃を受けた広河は、追い出されたパレスチナの人たちを捜す旅を始める。それは中東情勢がますます混迷する今なお続く長い旅である。

ある日突然48時間以内に村を出ろと言われ、何も持ち出せず、遠くから自分の家が破壊されるのを見るしかなかったダリヤトルーハ村の人たち。 同様の悲劇は、400以上の村で起こったことだという。ユダヤ人たちは、「約束の地」にイスラエル国家が建設されることになったものの、そのままでは国の半分がパレスチナ人だと気付き、追い出すことにしたというのだ。さらに、追い出しただけでない事実も明らかにされていく。

男たちに溝を掘らせた後、女子供の前で皆殺し... ユダヤ人の歴史学者が、虐殺に携わったユダヤ人から得た証言によって、虐殺が組織的に行われたことが裏づけられる。肉親を目の前で殺された年老いたパレスチナ女性の涙に嘘はない。
一方で、イスラエルの地に移り住んだユダヤ人の2世3世の人たちにとっては、すでにそこが故郷となっている。かつて国の方針でガザ地区に入植したユダヤ人たちが、今また国の方針で無理矢理その地を追い出されるという悲劇も起きている。

占領→抵抗→弾圧→さらなる抵抗という悪循環。難民キャンプさえもが破壊されていく理不尽。パレスチナ人もユダヤ人も、皆、静かに普通の暮しを営みたいだけなのに、なぜ、共存できないのだろう... 広河氏が40年間に撮り続けた映像や写真を目の前につきつけられて、呆然とするしかない私である。(咲)

2008年/日本/130分/スタンダード/ドキュメンタリー

配給:バイオタイド

公式HP>> http://www.nakba.jp/

★3月22日(土)よりユーロスペースにてロードショー、ほか全国順次公開

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マイ・ブルーベリー・ナイツ(原題:MY BLUEBERRY NIGHTS)

監督:ウォン・カーウァイ
ストーリー:ウォン・カーウァイ
脚本:ローレンス・ブロック、ウォン・カーウァイ
撮影:ダリウス・コンジ
プロダクションデザイン:ウィリアム・チャン
音楽:ライ・クーダー
出演:ノラ・ジョーンズ(エリザベス)、ジュード・ロウ(ジェレミー)、ナタリー・ポートマン(レスリー)、レイチェル・ワイズ(スー・リン)、デイヴィッド・ストラザーン(アーニー)

=あなたに近づくための、5603マイルの旅=
NYの小さなカフェに、連絡の取れないボーイフレンドを探しにやってきたエリザベス。オーナーのジェレミーは彼女の話に耳を傾け、ブルーベリーパイを勧める。カウンターにはお客が預けていったたくさんの鍵があった。エリザベスはひとつひとつの鍵の物語を聞く。何日か通った後、突然姿を消したエリザベスから、ジェレミーにメンフィスのレストランで働いていると絵葉書が届く。

ウォン・カーウァイ監督初の英語作品。ノラ・ジョーンズと仕事をしたかったからと始まったプロジェクトだそうです。なんとも豪華な俳優をキャスティングして、アメリカ各地でのロケを敢行。『天使の涙』『恋する惑星』を思い出させるちょっと切ない映画です。音楽にうとい私は、有名なジャズ歌手のノラ・ジョーンズの歌声も知らずに観ました。短い撮影期間の中で監督の演出なのか、キャリアのある俳優たちに囲まれて磨かれたのか、初めの失恋したばかりのころより、後のほうがどんどん自然になっていった感じがしました。キャラがしっかり立っているレイチェル・ワイズや、ナタリー・ポートマンの印象が強く残りますが、電話でなく「手紙のほうが伝わる気がする」と葉書を書き続ける平凡な女の子エリザベスに共感。まるで台詞の代わりのようにぴったりと合った音楽がとってもいいです。(白)

配給:アスミック・エース
http://blueberry-movie.com/
(C)Block 2 PICTURES 2006
2008年3月22日(土)〜日比谷スカラ座ほか東宝洋画系にて全国拡大ロードショー

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88ミニッツ

監督:ジョン・アヴネット
脚本:ゲイリー・スコット・トンプソン
撮影:ドニ・ルノワール
音楽:エドワード・シェアマー
出演:アル・パチーノ(ジャック・グラム)、アリシア・ウィット(キム・カミングス)、エイミー・ブレネマン(シェリー)、リリー・ソビエスキー(ローレン)、ウィリアアム・フォーサイス(フランク)、デボラ・カーラ・アンガー(キャロル)、ニール・マクドノー(フォースター)、ベンジャミン・マッケンジー(マイク)ほか

1997年、若い女性ばかりを狙う連続猟奇殺人事件が起きた。双子の姉ジョーニーが殺され、妹のジェイニーはすんでのところで助かった。容疑者のジョン・フォースターの裁判で、ジェイニーの目撃証言と、FBI異常犯罪分析医ジャック・グラムの証言により有罪、死刑判決が下る。9年後、フォースターの死刑が執行される日、シアトルの大学の教授となっていたジャックの教え子が殺される。しかもかつての事件とそっくりの手口だった。フォースターは無罪なのか、真犯人は別にいるのだろうか。ジャックの携帯が鳴る。「お前の命は、あと88分だ。チクタク、チクタク・・・」


© 2006 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GmbH & Co. KG III and Nu Image Entertainment GmbH.
All Rights Reserved.

脅迫電話を受けてから、ほぼリアルタイムで進行するサスペンス映画です。ジョニー・デップの『ニック・オブ・タイム』を思い出します。記録が大変だったでしょうね。
アル・パチーノは1940年生まれ。今回は酒と女にだらしない教授役です。最初さすがに年取ったかと見えましたが、脅迫電話を受けてからは走り、階段を駆け上がり、車をすっ飛ばしと大活躍。誰もがあやしく見える中、スピーディに展開するストーリー、真相が少しずつ明らかになってゆくのに固唾を呑みます。辛い過去を語るジャックのシーンに胸がつまりました。うまい俳優さんは短いカットでさえ心を掴みますね。『告発のとき』のスーザン・サランドンもしかり。ストーリーで腑に落ちないところもありましたが、ネタばれになるので割愛。新旧女優の競演もお楽しみに。(白)

2007/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/107分
配給:日活 宣伝:SPO
http://www.nikkatsu.com/88minutes/

3月22日(土)より銀座シネパトス他、全国順次ロードショー

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ザ・フィースト(原題:FEAST)

監督:ジョン・ギャラガー
製作総指揮:ベン・アフレック、マット・デイモン、クリス・ムーア、ウェス・クレイヴン
脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン
撮影:トーマス・L・キャラウェイ
音楽:スティーヴン・エドワーズ
キャスト:バルサザール・ゲティ、ヘンリー・ロリンズ 、ナヴィ・ラワット、ジュダ・フリードランダー、ジョシュ・ザッカーマン、ジェイソン・ミューズ、ジェニー・ウェイド、クリスタ・アレン、クルー・ギャラガーほか

テキサスの荒野の酒場。常連客で賑わう中に、突然銃を手にした血まみれの男が飛び込んでくる。その場の皆は身構えるが、男は「素早くて残虐な“何か”が迫ってくる」と思いもよらないことを叫ぶ。男が放り投げたのはその怪物の頭だった。「まだ外に何匹かいる。ここを封鎖するんだ!」外への連絡に手間取るうちに、店に目にも留まらない速さで飛び込んできたモノがいた。


(C) 2006 The Weinstein Company, LLC. All Rights Reserved.

ベン・アフレック、マット・デイモンが設立した映画製作会社が送り出す、モンスターパニック映画。『ソウ4』 のパトリック・メルトン、マーカス・ダンスタンが、オリジナル脚本を執筆。スプラッターやホラーは苦手なのですが、冒頭に登場人物にかぶせて「名前、職業、寿命、特記事項」などが文字でカチカチと出てきます。これが面白いです。
モンスターがハイスピードなので、どこから何が出てくるかと驚きますが、じわじわ来る怖さは少ないです。ノリの良い音楽と台詞、ゲーム感覚でわいわいと楽しめそうです。(白)

モンスター映画の定石をよくふまえた上で、あえてそれを外したり、随所にブラックな笑いをちりばめて、ただスプラッタな恐い映画にはなっていません。モンスター一家が死んだ我が子をじっと見つめた次の瞬間とった行動には、大爆笑してしまいました。モンスターがいったい何者なのか、一切説明しない潔さもいいです。テンポが非常に良くて、この手の映画が好きな人にはオススメです。(梅)

2006/アメリカ/カラー/35mm/シネスコ/86分/R-15
配給:アートポート

http://www.feast-movie.com/

2008年3月22日(土)より シアターN渋谷 ほかロードショー

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燃えよ!ピンポン(原題:BALLS OF FURY)

監督:ロバート・ベン・ガラント(『TAXI NY』『ナイト ミュージアム』脚本)
脚本:トーマス・レノン 、 ロバート・ベン・ガラント
撮影:トーマス・E・アッカーマン
音楽:ランディ・エデルマン
出演:ダン・フォグラー (ランディ・デイトナ)、クリストファー・ウォーケン(フェン)、ジョージ・ロペス(ロドリゲス)、マギー・Q(マギー)、ジェームズ・ホン(ワン師匠)、トーマス・レノン(カール)、テリー・クルーズ(フィンガーズ)、ロバート・パトリック(父)、マシ・オカ(ジェフ)ほか

ランディ・デイトナは、1988年のアメリカ代表選手決定戦に出場した天才卓球少年だったった。しかし父親が試合に賭けたと知って動揺、無残に敗れてしまった。19年たった今すっかりメタボ体型となり、場末のカジノでピンポンの曲芸を見せて暮らしている。そんな彼のところへ、突然FBIの捜査官が訪ねてくる。ランディの父を殺したフェンが牛耳る裏社会で行われる卓球世界大会に出場し、潜入捜査をしろというのだ。しかし長いブランクで、すっかり力の落ちたランディは、中華街の老マスター・ワンから少林卓球の特訓を受ける。ワンの美しい姪マギーに会ったランディは、やる気満々。ついに出場権を獲得する。



(c)2006 Rogue Pictures. All Rights Reserved.

『ナイト・ミュージアム』のスタッフが2500万ドルをかけて、かなり強引に中華テイストもまぜたピンポン映画を製作。ガラント監督と共同脚本を担ったトーマス・レノンはブルース・リー映画のファンだそうです。デスマッチ・トーナメントというのもそのへんからでしょうか。トーマス・レノンは、少年ランディにトラウマを植えつけた、東ドイツのチャンピオンも演じています。かなりの怪演ですが、その上を行くのがクリストファー・ウォーケン。『マウスハント』にも驚きましたが、今回もすごい。ほんとになんでもやってくれる人なのね、と感心しきりです。今回は衣装も派手でファンは必見ですよ。(白)

2007/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/SRD/90分/
配給・宣伝:東北新社
http://www.moe-pin.com/

2008年3月22日(土)、日比谷みゆき座ほかにて全国拡大ロードショー!

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ポストマン

監督:今井和久
脚本:鴨義信
製作総指揮:長島一茂
出演:長島一茂、北乃きい、原沙知絵、犬塚弘、谷啓、竹中直人、野際陽子 ほか

郵便局員の海江田龍平はいまだにバイクではなくバタンコ(自転車)を使って配達してまわる昔気質な男で、地域の人の信頼は厚い。家庭では3年前に妻を亡くし、男手一つで娘のあゆみと息子の鉄平を育てている。中学生のあゆみはいまだに母の死を受け入れられず、つらさから逃れるように寮のある遠くの高校への進学を希望している。しかし龍平は家族は一緒にいるべきだと、頑として許さない。それには龍平なりの家族への深い思いがあるのだが、あゆみには理解できず反発を強めていく。

民営化したばかりの日本郵政のPR映画のような感じを受ける部分もありますが、自分の仕事に誇りを持つこと、家族の、さらには人と人との絆がどれほど大切なものかを感じさせてくれる、春らしい温かい作品でした。クレイジーキャッツのメンバーだった犬塚弘、谷啓のお二人の出演には、その役柄もあってちょっとグッと来るものがあります。
たまにはEメールではなくて、相手を思って便箋や封筒を選び、手書きで手紙を書くのも、お互いにうれしいこととは思いませんか。(梅)

2008年/日本映画/カラー/35mm/ヴィスタ/DTS/111分
製作:「ポストマン」製作委員会
制作:ナガシマ企画
配給:ザナドゥー

公式 HP >> http://www.postman-movie.jp/

★3月22日(土)、全国ロードショー

デッド・サイレンス(原題:Dead Silence)

監督:ジェームズ・ワン
脚本:リー・ワネル
ストーリー:ジェームズ・ワン、リー・ワネル
出演:ライアン・クワンテン、アンバー・ヴァレッタ、ドニー・ウォルバーグ、ボブ・ガントン ほか

ジェイミーとリサは仲のいい夫婦。ある雨の日、差出人不明の荷物が届き、中にはビリーという名の腹話術人形が入っていた。ジェイミーは薄気味悪さを感じるが、リサは上機嫌だ。その後すぐに、ジェイミーは一人夕食を買いに出かける。そして家に戻って彼が見たものは、舌を切り取られ殺されたリサの無惨な姿だった。
ジェイミーは警察に疑いをかけられるが、何の証拠もなく、ひとまず釈放される。しかし彼には気になることがあった。”メアリー・ショウにご用心。子のない彼女は人形が好き。夢で彼女に出会っても、叫んじゃダメだ。舌を抜かれるぞ!” 彼の故郷にはこんな古くから伝えられる詩があった。この詩と妻の死に何か関係があるのではと考え、彼は故郷の街へと車を飛ばす。

大ヒットシリーズ『ソウ』を生み出した、ジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビが新たに描くのは、腹話術人形にまつわるゴースト・ストーリー。最近「『ソウ』シリーズのスタッフが制作」という宣伝文句がついたサスペンス、ホラー系作品がたくさんありますが、ようやく生みの親たちによる、正真正銘の新作が届きました。2004年に『ソウ』の公開に合わせて二人が来日したとき、マスコミ披露試写会場にも来て挨拶がありました。その時すでに、次回作は腹話術人形にまつわる作品を考えていると話していたのですが、『ソウ』のヒットで続編制作が続いたためか、なかなか作品となって世に出てこなくて、どうしたかなと思っていたので、ちょっと感慨をもって見ました。
今回の作品はゴシック・ホラーのような雰囲気が楽しめます。わたしは常々人形は恐いと思っていましたが、中でも顔や手足が動く腹話術人形はとりわけ不気味。100体以上もの人形たちがおかれた部屋の光景に思わずゾクゾク〜!としてしまいました。ジグソウ人形もちらりと出演していますから、お見逃しなく。(梅)

2007年/アメリカ/カラー/ドルビーSRD,DTS/スコープサイズ/89分
協力:NTTDoCoMo、ジェネオン エンタテインメント
配給:東宝東和
宣伝:フリーマン・オフィス

公式 HP >> http://dead-s.jp/

★3月22日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー

受験のシンデレラ

監督・原案:和田秀樹
脚本:武田樹里
撮影監督:??間賢治(JSC)
音楽:三枝成彰
主題歌:星野みちる「ガンバレ!」(作詞・秋元康/作曲・星野みちる)
出演:寺島咲(遠藤真紀)、豊原功補(五十嵐透)、田中実(小宮医師)、浅田美代子(真紀の母)、徳井優、橋爪淳、清水圭ほか

=よりよく生きる方法を知れば、人生は変えられる=

五十嵐透は受験指導のカリスマと呼ばれ、富も名声も手に入れた絶頂のとき、末期癌であることがわかる。東大医学部時代の同級生だった癌専門医の小宮は、余命は1年半くらいと診断し緩和ケアを薦める。
予備校講師もやめた五十嵐は、高校中退の真紀に出会い、貧しかった学生時代を思い出す。真紀の父親は家を出て若い女性と一緒におり、母親は家業の洋品店も放って借金しながら遊び歩いていた。劣悪な家庭環境の中、なにもかも諦めようとしていた真紀の受験指導を思い立つ。まずは高等学校卒業程度認定試験だ。

分数の足し算ができない真紀が2年後の東大受験に挑戦。えぇ〜?!と半信半疑で観ていました。五十嵐が真紀にちょくちょく渡す「受験の要領」が面白く(昔先生からも言われた記憶が)監督のプロフィールを見ましたら、主人公の五十嵐と同じ東大医学部卒の精神科医、受験勉強法通信教育ゼミを主催、著書多数とあります。受験指導の実体験が多く含まれているのでしょう。作りはストレートな初監督作品。
娘の模試費用をくすねるダメ母に浅田美代子。まったくもう、というだらしなさがよく出ていました。真紀の服装がだんだん若い女の子らしくなっていくのもミソ。寺島咲は『魍魎の匣』で黒木瞳の娘役でした。特別出演のかたが何人か顔を出しています。(白)

第5回モナコ国際映画祭
エンジェル・フィルム・アワード
最優秀作品賞
最優秀男優賞 - 豊原功補
最優秀女優賞 - 寺島咲
最優秀脚本賞 - 武田樹里

http://www.juken-movie.com/
2007年/日本/カラー/35mm/DTSステレオ/106分
(C) 「受験のシンデレラ」パートナーズ

3月29日より新宿K's cinema、シアターN渋谷、 横浜ジャック&ベティにてロードショー

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本格路上活劇 カクトウ便

Vol.1『Battle Run XX』 
監督:植田中
脚本:江面貴亮
出演:小阪由佳、甲斐麻美、内ヶ崎ツトム、諏訪太朗、森次晃嗣

Vol.2『VS 謎の恐怖集団人肉宴会』 
監督:石井哲也
脚本:佐東みどり
出演:木口亜矢、甲斐麻美、山崎樹範、籏谷力、稲宮誠

Vol.3『そして、世界の終わり』
監督:宇田川大吾、山本俊輔
脚本:藤田学、山本俊輔
出演:次原かな、甲斐麻美、AKIRA、小沢仁志

製作総指揮:斎藤正明
プロデューサー:植田中、林大造
アクション監督:谷垣健治
キャスティング:小林良二

日本全国どこへでも、どんな“ワケあり荷物”も届ける裏の運び屋“カクトウ便”。
危険なところも走り抜け、行く手を阻まれたら体当たりで闘う運び屋の姿を描いた“本格路上活劇”3本!

香港と日本を股にかけて活躍するアクション監督・谷垣健治さんの名前に惹かれて、『そして、世界の終わり』の試写に行ってみたら、なぁ〜んと、満室の試写室で女性は私一人! 主演女優は、グラビアやCMでも活躍するアイドルたち。そうっか〜、観客層の狙いも若い男の子たちか・・・ アクションは、さすが谷垣さん仕込でした。(咲)

製作:クレイ、ハピネット、キティライツ&エンターテインメント、アデンディス
制作:キックファクトリー
配給・宣伝:クレイ

2007年/カラー/各約90分/DV

*ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008<フォーラムシアター部門>正式招待作品

★3月29日(土)より池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開

公式HP>> http://kakutoubin.com/

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カンフーくん

監督・VFX:小田一生
原案:山岸きくみ
脚本:大地丙太郎
撮影:谷川創平
アクション監督:谷垣健治
音楽:大坪直樹
出演:チャン・チュワン(カンフーくん)、泉ピン子(泉)、藤本七海(レイコちゃん)、矢口真里(さゆり)、佐藤めぐみ(優香先生)、桜塚やっくん(風神)、武田真治(龍神)、金剛地武志(雷神)、笹野高史(黒校長)、佐田真由美(黒女教師)、西村雅彦(黒文部大臣)ほか

中国・少林寺で修行中のカンフーくんは、子どもながら免許皆伝まであと一歩のところへきた。しかし師匠は「最後の敵」が日本にいると、カンフーくんを送り出す。頼りは敵が近づくと鳴り出す不思議な鈴だけ。東京の下町まで吹き飛ばされたカンフーくんは、中華料理店「ニュー幸楽」の泉ちゃんと孫娘のレイコに出会い、お店を手伝いながら敵を探すことになった。レイコはカンフーくんを弟のように可愛がり、学校へも連れて行く。すると鈴が鳴ったのだ!いったい何があるのだろうか?


(c)2007 映画「カンフーくん」製作委員会

くりくり頭のチャン・チュワンの武術に目が丸くなりました。2000人の中から選ばれたという彼は、撮影当時まだ7歳。笑顔は無邪気で年相応ですが、戦いに入るときは闘志満々で眼光炯炯。泉ピン子さん始め、居並ぶ俳優さんたちにも、それぞれ特徴のあるアクションがついていて、谷垣アクション監督のご苦労を思いました。レイコの友達の小学生たちも元気で可愛くて、春休みに親子連れで観るのにぴったりの作品。(白)

2007/日本/カラー/98分/35mm/アメリカンビスタ/DTSステレオ/ドルビーデジタル
配給:角川映画 宣伝協力:アンプラグド
http://www.kung-fukun.jp/

3月29日(土)より新宿ガーデンシネマ,シネカノン有楽町2丁目他、全国ロードショー!!

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タクシデルミア ある剥製師の遺言(原題:TAXIDERMIA)

監督:パールフィ・ジョルジ(『ハックル』)
原作:パルティ・ナジ・ラヨシュ
脚本:ジョーフィア・ルットカイ、パールフィ・ジョルジ
撮影:ポハールノク・ゲルゲイ
アートディレクター:スローッシイ・ゲーザ
音楽:アモン・トビン
出演:ツェネ・チャバ(祖父ヴェンデル・モロジュコヴァーニ)、 トローチャーニ・ゲルゲイ(父カルマン)、シュタンツェル・アデール(母ギゼラ)、マルク・ビシュショフ(息子ラヨシュ)ほか

第2時世界大戦中の小さな村。若かった祖父は、中尉とその家族に当番兵としてこき使われ、罵倒されていた。厳寒の夜、たった一つの楽しみは妄想にふけること。ある晩、豚のように太った中尉夫人が祖父の小屋を訪れる。
共産主義時代のハンガリー。父カルマンは人気のスポーツ大食い競争の選手となっていた。大食い女性チャンプのギゼラと出会い結婚。小さな息子ラヨシュを授かる。
そして現代、ラヨシュは剥製師として自活している。父は過去の栄光にすがるだけ、今や身動きできないほどの身体に膨らんでいた。愛想を尽かして出ていった母に代わって、ラヨシュは父の世話をしているが感謝の言葉もない。


Copyright 2007 新日本映画社/エスパース・サロウ .All Rights Reserved.

ハンガリー映画史上、最大の制作費を投入して制作されたこの作品は、サンダンス映画祭でサンダンス・NHK賞を受賞しました。しかし、 その“規格外”の内容により、NHKは日本でのTV放映権を手離し出資を見送ったのだそうです。NHKテレビでこの映像はやっぱりまずいんでしょうね。タクシデルミアとは剥製術の意味です。息子のラヨシュがアートとしての剥製を目指して、究極の剥製を作り出す様は…劇場でご覧ください。(白)

2006年シカゴ映画祭 シルバーヒューゴ賞
2006年トランシルバニア映画祭 最優秀監督賞
2006年第37回ハンガリー・フィルムウイークグランプリ、批評家賞、最優秀助演男優賞・女優賞
ほか受賞多数

ハンガリー・オーストリア・フランス/91分/35mm/カラー
配給:エスパース・サロウ

公式 HP >> http://www.espace-sarou.co.jp/taxidermia/

★2008年3月29日(土)より、シアターイメージフォーラムにてロードショー!
★2008年4月 5日(土)より、シネ・ヌーヴォ(大阪)にてロードショー!

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シティ・ライツ座 in Yokohama 『父と暮らせば』音声ガイド付き上映

視覚障がいのある方も映像を言葉で説明し、それをFMラジオ(FM88.5MHz)できくことのできる「音声ガイド」で映画を楽しむことができます。
ご希望の方はイヤフォン付FMラジオをご持参下さい。
※ お申込は不要です。当日直接会場へお越しください。
(※会場最寄り駅から誘導をご希望の方、ラジオの貸出をご希望の方のみ、3月末日までにお申し込みください。)

日時:2008年4月4日(金)
会場:関内ホール(大ホール) TEL 045−662−1221
交通アクセス:JR京浜東北・根岸線「関内」駅北口徒歩5分
       市営地下鉄ブルーライン「関内」駅9番出口からすぐ
     みなとみらい線 「馬車道」駅 5番出口より 徒歩3分
料金:無料
主催:バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツ
共催:横浜ニューテアトル/シネマ・ジャック&ベティ
協力:シネマ・アシスト
音声ガイド協力: シネマ・アクセス・パートナーズ

プログラム
 12:00 開場
 13:00 音声ガイドって何だろう? (紹介ビデオの上映とお話)
 13:40 『父と暮らせば』上映開始
 15:30 上映終了
●『父と暮らせば』2004年/日本映画/99分
 監督:黒木和雄 
 原作:井上ひさし
 出演:宮沢りえ 、 原田芳雄 、 浅野忠信 ほか

バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティ・ライツHP >>  http://www.ne.jp/asahi/city/lights/

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特集「その男の職業、刑事」上映

"シネマアートン下北沢(東京・下北沢)では2008年4月5日〜25日で「その男の職業、刑事」と題し、特集上映を行います。名作「飢餓海峡」での伴淳三郎の名演、佐田啓二が企画した「左ききの狙撃者 東京湾」、勝新太郎が監督・主演した「顔役」、菅原文太扮する執念の刑事が犯人を追う「太陽を盗んだ男」などなど、人間の欲望が渦巻く社会で刑事たちのドラマが始まります! 御期待ください。"

第一週  4/5(土)〜11(金)
13:30  彼女だけが知っている
(監督:高橋治/出演:笠智衆、渡辺文雄、小山明子)
【1960年/松竹】
14:50  殺(バラ)すまで追え 新宿25時
(監督:長谷和夫/出演:天知茂、川津祐介、佐藤允)
【1969年/松竹】
16:40  飢餓海峡
(監督:内田吐夢/出演:三国連太郎、伴淳三郎、高倉健、左幸子)
【1965/東映】
第二週  4/12(土)〜18(金)
14:30  張込み
(監督:野村芳太郎/出演:大木実、宮口精二、田村高広、高峰秀子)
【1958年/松竹】
16:50  左ききの狙撃者 東京湾
(監督:野村芳太郎/出演:西村晃、石崎二郎、榊ひろみ)
【1962年/松竹】
18:30  野獣狩り
(監督:須川栄三/出演:藤岡弘、伴淳三郎、渚まゆみ)
【1973年/東宝】
第三週  4/19(土)〜25(金)
13:30  顔役
(監督:勝新太郎/出演:勝新太郎、山崎努、太地喜和子、若山富三郎)
【1971年/東宝】
15:30  桜の代紋
(監督:三隅研次/出演:若山富三郎、関口宏、松尾嘉代、渡辺文雄)
【1973年/東宝】
17:20  太陽を盗んだ男
(監督:長谷川和彦/出演:沢田研二、菅原文太、池上季実子)
【1979年/東宝】

■各回入替制
■料金 当日券:一般・学生 1,200円/シニア 1,000円
 2回券:2,000円/3回券 3,000円/会員:900円

シネマアートン下北沢 公式サイト http://www.cinekita.co.jp/

ランジェ公爵夫人(原題:NE TOUCHEZ PAS LA HACHE LA DUCHESSA DI LANGEAIS (DON'T TOUCH THE AXE) )

監督・脚本:ジャック・リヴェット
共同脚本:パスカル・ボニツェール、クリスティーヌ・ローラン
原作:オノレ・ド・バルザック「ランジェ公爵夫人」
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー
美術:マニュ・ド・ショーヴィニ
音楽:ピエール・アリオ
出演:ジャンヌ・バリバール(ランジェ公爵夫人)、ギョーム・ドパルデュー(モンリヴォー将軍)、ミシェル・ピコリ(ヴィダム・ド・パミエ)、ビュル・オジエ(ブラモン・ショーヴリ妃)ほか

19世紀初頭のパリ。華やかな舞踏会でランジェ公爵夫人はモンリヴォー将軍と出会った。一目で夫人に惹かれた将軍は屋敷へ日参するものの、夫人の思わせぶりな態度に翻弄され続ける。夫人は知的な恋愛ゲームを楽しんでいたのだった。直情径行のモンリヴォー将軍に通じるはずもない。業を煮やした彼は、仲間を引き入れ強硬手段に打って出る。


(c)2006 Pierre Grise Productions - Arte France Cinema - Cinemaundici

貴族社会の中の恋愛とはこんなものだったのか〜。しもじもの理解の及ぶところではありません。平民でよかった。ジャンヌ・バリバールは後半自分の気持ちに気づいて、切実な表情になってからが良かったです。モンリヴォー将軍をジェラール・ドパルデューの息子のギョーム・ドパルデュー、無骨な軍人を演じて似合います。彼の足音がよく響いて耳に残りましたが、実際にバイク事故の怪我が元で足を切断し義足なのだそうです。『夜顔』のミシェル・ピコリとビュル・オジエが揃って出演。夫人達の豪奢な衣装やお屋敷の家具調度など、優雅な恋愛ゲームの背景にも注目。(白)

2006/フランス、イタリア/カラー/1:1.85/ドルビーSR/2時間17分

http://www.cetera.co.jp/Langeais/index.html
2008年4月5日(土)〜岩波ホールほか全国順次ロードショー

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モンゴル(原題:MONGOL)

監督・脚本・製作:セルゲイ・ボドロフ
撮影:セルゲイ・トロフィモフ/ロジェ・ストファーズ
編集:ザック・ステーンバーグ
プロダクション・デザイン:ダシ・ナムダコフ
音楽:トゥオマス・カンテリネン
出演:浅野忠信(テムジン/チンギス・ハーン)、スン・ホンレイ(ジャムカ)、クーラン・チュラン(ボルテ)ほか

12世紀のモンゴル。部族間の抗争と陰謀渦巻く時代に、族長イェスゲイの長男として生まれたテムジン。父はメルキト族との和平を願い、9歳のテムジンの妻を決める旅に出た。しかしテムジンは、別の部族の少女ボルテと運命の出会いをし、5年後に迎えに来ると約束する。帰る途中、父は宿敵の族長に勧められた酒を飲み干し、毒にあたって客死する。これを見たイェスゲイの部下タルグタイは、恩義も忘れテムジン一家を追放し、以後テムジンの命を狙い続けるのだった。凍てつく湖に落ちたテムジンは、たくましい少年ジャムカに出会い、兄弟の契りを交わした。

セルゲイ・ボドロフ監督は、主役に日本人の浅野忠信を起用した理由として、彼の存在感に「ハーン(王)」を感じたといいます。テムジンの子ども時代から、広大な草原をバックに描かれますが、青年となり幽閉された後、大軍を率いるようになるところがちょっと駆け足の気がしました。覇者となっていくのはこのまた後なので何部作かになるのかもしれません。妻役のラン・チュランは新人と思えません。全編モンゴル語、乗馬、戦闘シーンと数々の難題を越えて完成したこの映画は、ぜひぜひ大きな画面でご覧ください。(白)

本年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

2007/ドイツ、ロシア、カザフスタン、モンゴル/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/2時間15分
配給:ティ・ジョイ、東映

http://mongol-movie.jp/

2008年4月5日(土)〜丸の内TOEI(1)、新宿バルト9他全国拡大ロードショー
(C)2007 CTB FILM COMPANY/ANDREYEVSKY FLAG FILM COMPANY/X FILME CREATIVE POOL/KINOFABRIKA/EURASIA FILM.ALL RIGHTS RESERVED.

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船、山にのぼる

監督・編集:本田孝義
プロデューサー:伏屋博雄
撮影:本田孝義、林憲志、濱子正
音響構成:米山靖
ナレーター:川野誠一
音楽:風の楽団

広島県の北東部の3町にまたがる灰塚地域にダムが建設されることになった。1994年から「灰塚アースプロジェクト」が始動し、美術家、写真家、建築家のユニットであるPHスタジオも関わる。森の木が伐採されダムに水没することを知って、その木材で船を作って山へ乗せようというアイディアが出る。ダム完成のおりの湛水実験時(たんすいじっけん:ダムの最も高いレベルまで水をためる)に湖上に浮かべ、曳航すれば山に船を乗せることも可能なのだ。2003年に船はほぼ完成し、2005年には湛水実験が始まる。

本田孝義監督は、「船を作り山に乗せることに、どのような意味があるのだろう」と思いながら、「わからないから知りたいと思ってカメラを回していった」そうです。私自身も そう思いながら画面を眺めていました。
故郷がダムの底になるという人々が、全長60mもの大きな筏形の船作りにさまざまな形で協力しています。町にあった樹齢500〜600年といわれる老木「えみき」の移植のようすが、夜までかかっての撮影です。ダムに沈むところですから住民は移転してしまい、もう電気もなくなっています。御幣や紅白の幕をかけた「えみき」の乗った大型の車を、大人も子どもも総出で曳いているのを見ていたら、なぜだか涙が。あれ〜と拭っていたら、試写室の中何人も同じ人がいました。帰り道、東京国際フォーラムのガラス棟が山にのぼった巨大な船に見えました(白)。

2007/日本/カラー/88分/DV
http://www.fune-yama.com/

4月5日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー(連日21:00〜)
4月12・13日、 4月19・20日の土日のみモーニングショーあり〈朝9:45〜〉

本田孝義監督の特集上映会 本田孝義ビジュアルセッション
期日:3月27日(木)20:00〜
『平野幻想』『Tokyo-Osakaミクスチャー』『沖縄ソウル』
     料金1000円(1ドリンク付)
    3月29日(土) 15:00〜『科学者として』+『続・科学者として』
            17:00〜『ニュータウン物語』
            19:00〜交流会
    料金:各プログラム1000円 交流会1000円(1ドリンク付)
   (両日とも『船、山にのぼる』前売り券をお持ちの方は1プログラム800円)
会場:Space NEO 千代田区神田小川町2-10-13 御茶ノ水ビル1F
問い合わせ:戸山創作所 03-5338-9490

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恋の罠

監督・脚本:キム・デウ
美術:チョ・グニョン
撮影:キム・ジヨン
衣装デザイン:チョン・ギョンヒ
出演:ハン・ソッキュ、イ・ボムス、キム・ミンジョン、オ・ダルス ほか

李朝時代、実直な官吏であるユソンは当代きっての名文家と知られている。しかし、まじめさ故に一家の仇敵にさえ公平な態度を貫くため、腰抜けと陰口をたたかれ、家でも居場所がない。そんな彼が王妃の持つ名画が偽物とすり替えられた事件の捜査を命ぜられ、一家の仇敵である捜査官のイ・グァンホンの協力を得て、市場の食器屋に踏み込む。そこで彼は禁断の官能小説を目にして衝撃を受けるのだった。
ユソンは王の寵愛を一身に受ける妃チョンビンに思いを寄せられる。妃への秘めた思いを源に、自由奔放な筆を走らせ、覆面官能小説家へと変貌する。彼の本はその世界で大評判となるが、さらなる創作のために、ユソンは自ら妃へと近づいていく。

初めて目にした世界に衝撃を受け、ずるずると引きずり込まれるようにのめり込み、人生を変えることになってしまう。これってまるで香港映画に出会ったときの自分のよう。ただ、この男の場合は対象が官能小説だったというだけ。妙に親近感を覚えました。しかし、この男は作家先生になってかなり調子に乗ってしまい、禁断の一手を使ってしまったために、大ピンチに陥ってしまいます。
ハン・ソッキュもイ・ボムスも大まじめな故のおかしさをいいテンポで見せてくれて、グッジョブです。一方で宮廷内の愛憎劇を、劇的に切なく美しく見せてもくれます。衣装と美術は『デュエリスト』も手がけた方々。なるほどと思う美しさです。(梅)

2006年/韓国/139分/カラー/シネマスコープ/ドルビー・デジタル/R-15/全7巻
韓国原題:淫乱書生 / 英題:Forbidden Quest

*** 映画賞受賞歴 ***
第42回 百想芸術大賞 新人監督賞
第43回 大鐘賞 衣装賞
第26回 韓国映画批評家協会賞 新人監督賞 脚本賞 美術賞  ほか

公式 HP >> http://www.cinemart.cp.jp/koinowana/

★2008年4月5日(土)より、シネマート六本木、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか 全国順次ロードショー

うた魂♪(うたたま)

監督:田中誠
脚本:栗原裕光
主題歌:「青い鳥」歌:ゴスペラーズ
出演:夏帆、ゴリ(ガレッジセール)、薬師丸ひろ子、ともさかりえ、間寛平ほか

荻野かすみは七浜高校合唱部のソプラノパートリーダー。歌うことが大好きで、歌っている自分は相当いけていると思っている、ちょっと自意識過剰気味な女の子。前から気になっていたイケメン生徒会長から「歌っている君の写真を撮りたい」と言われて有頂天だ。合唱コンクールの壮行会では、いつもにもまして力一杯歌ったが、彼が撮った写真を見て「あたし歌っているときこんな顔してるの?!」と驚愕! ところが彼に「産卵中のサケみたいな顔でユーモラスじゃん」とさらりと言われ、おまけに生徒会新聞の表紙にその写真を載せられて、大大大ショック。すっかり自信喪失し、合唱部を辞めようと思う。最後の舞台のつもりで臨んだ合唱祭で、かすみは権藤番長が率いる湯ノ川学院高校のヤンキー合唱部と出会う。

わたくし実は小、中学校と合唱部だったんですが、「産卵中のサケみたいな顔」というのには、そうなのよ!と笑ってしまいました。真剣になればなるほどそうなってしまって、合唱になじみのない人が見ると、かなり珍妙な光景だって、やりながら頭の片隅で思ってました。でも、笑いをこらえてちょっと見て、聞いてみて下さい。たくさんの人が心一つにハーモニーを奏でる瞬間に出会うと、絶対にドキドキします。これがましてややる方にまわると、本当に楽しい!気持ちいい!素晴らしい!のです。この作品はそんな気持ちを伝えてくれる、青春映画でした。
ヤンキー合唱部の番長・権藤洋役(10代)を36歳のゴリがやっているのは、「いくらなんでもありえないでしょ」なんですが、ありえなさを逆手にとった感じで、お芝居の間もとっても良くてグッジョブでした。何より、彼が率いる湯ノ川ヤンキー合唱部の歌う「15の夜」のパフォーマンスが素晴らしくって、マジで感動しました。(梅)

2007年/日本映画/35mm/アメリカンヴィスタ/ドルビーSRD・DTSステレオ/カラー/120分
配給・宣伝:日活株式会社

公式 HP >> http://www.utatama.com/

★2008年4月5日(土)より、シネクイント、シネ・リーブル池袋、新宿ジョイシネマほかにて、全国ロードショー

ぼくたちと駐在さんの700日戦争

監督:塚本連平
脚本:福田雄一
原作:ママチャリ「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(高陵社書店刊)
撮影:瀬川龍
美術:太田喜久男
音楽:志田博英
主題歌:ファンキー・モンキーベイビーズ
出演:市原隼人(ママチャリ)、佐々木蔵之介(駐在さん)、麻生久美子(加奈子)、石田卓也(西条)、加冶将樹(孝昭)、賀来賢人(グレート井上)、脇知弘(千葉)、冨浦智嗣(ジェミー)、小柳友(辻村さん)、石野真子(ママチャリ母:たみ子)、竹中直人(親方)ほか

1979(昭和54)年の平和な田舎町。エネルギーを持て余す高校生ママチャリら7人。いたずら常習犯のぼくたちの前に立ちはだかったのは、赴任してきた駐在さん。その日から「戦争」が始まった。やられたらやりかえす!駐在さんも負けてはいない。あれは公務員であることを忘れているに違いない。おまけに喫茶店で見つけた美人・加奈子さんはなんと駐在さんの妻!!ますます燃えるぼくたちだった。



(c) 2008『ぼくちゅう』PARTNERS

原作は人気NO.1の同名ブログ小説。半実話だそうですが、どれが実話かは不明。 現在も継続中(14章54話)で、読者がコメントを入れて参加できるようになっています。リクエストもあったりで楽しそうです。
映画はほぼ30年前のちょっと昔。いたずら合戦といっても、他愛ないほのぼのした攻防がくりかえされます。出演作の続く市原隼人、石田卓也くんはじめ若手男優がまとめて登場。『LittleDJ 小さな恋の物語』で注目した賀来賢人くんはやはりイケメンでした。佐々木蔵之介さんはちょっとへたれな役が続いていましたが、この一見大人げない駐在さんはいい味出ていました。大きな事件はありませんが、じ〜んとくるエピソードも追加してバランスよくできています。(白)

2008/日本/カラー/110分/
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:ギャガ・コミュニケーションズXアルシネテランXスターキャスト・ジャパン

http://bokuchu.gyao.jp/

2008年4月5日(土)シネマGAGA!ほか全国順次ロードショー

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今夜、列車は走る(原題:Próxima salida)

監督・脚本:ニコラス・トゥオッツォ
出演:ダリオ・グランディネッティ(『トーク・トゥ・ハー』)、メルセデス・モラン、ウリセス・ドゥモント

雨の中を走る二人の少年と一人の少女。「運命は変えられるのか?」という声が響いてくる。
舞台は、鉄道路線廃止が決定されたアルゼンチンのとある町。突然職を失った鉄道員たちが、生きる為、家族の為、仕事探しに奔走する。雨の中を走っていた少年の一人は、父親が組合代表者だったが、労使交渉がうまくいかなかったことを責め、自 ら命を絶ってしまった。
タクシー運転手を始める者、マルチ商法の仕事を紹介されるが馴染めない者。サンドイッチマンの職にしかありつけなかった男は、とうとうスーパーマーケットに集団強盗を企てる。一方、そのスーパーマーケットで警備を始めた若い元鉄道員は、かつての同僚と対峙することになる。そして、警官たちが囲む膠着状態の現場の前の線路を、廃止されたはずの列車が通っていく...。

1990年代初頭、国鉄民営化の嵐が吹いたアルゼンチン。赤字路線が廃止されていき、6万人の鉄道員が失業したという。本作は、厳しい現実の中で、自らの誇りを取り戻そうとする5人の鉄道員とその家族の物語。1970年生まれの監督の力強い初長編作品。

主人公の鉄道員たちの一部は、自主退職すれば退職金が保証されるとそそのかされ自主退職してしまいます。実は、私もかつて勤めていた会社の業績が急に傾き、希望退職募集に応じるという形で辞めた経験があります。倍の退職金に目がくらんで自ら希望したわけではなく、あくまで会社の希望というのが実感だし、それが希望退職の実態。その後の人生は、お金には縁はないけど、時間が自由になって、好きなことをしていて、とりあえずは良い転機になったと感謝しているのですが、それもこれも私が独身で親のすねをかじれる立場だから。現実は、この映画の鉄道員たちのように、ほんとに厳しいものだと思います。それでもなんとか生きていくのが人間でしょうか・・・。誰にでも起こりうる物語。「出口はきっとある!」の言葉に勇気づけられました。(咲)

配給:Action Inc.

2004年/アルゼンチン映画/110分/カラー/35mm/ビスタサイズ/ドルビーデジタルSRD

★東京ユーロスペース 4月12日から公開
 大阪 第7芸術劇場 5月3日から公開
 神戸 神戸アートビレッジセンター 5月10日から公開

公式HP>> http://www.action-inc.co.jp/salida/index.html

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フィクサー(原題:MICHAEL CLAYTON)

監督・脚本:トニー・ギルロイ
撮影監督:ロバート・エルスウィット
音楽:ジェイムス・ニュートン・ハワード
編集:ジョン・ギルロイ
製作:ジェニファー・フォックス他
製作総指揮:スティーヴン・ソダーバーグ他
キャスト: ジョージ・クルーニー(マイケル・クレイトン)、トム・ウィルキンソン(アーサー・イーデンス)、ティルダ・スウィントン(カレン・クラウダー)ほか

全米を騒然とさせた3000億円にのぼる薬害訴訟は、被告の巨大薬品会社の有利に訴訟が解決されようとしていたが、製薬会社の弁護を担当していたニューヨーク最大の法律事務所の弁護士が、全てを覆す<秘密>を知ってしまう。彼は良心の呵責に堪えられず、事実を暴露する決意をした。このことを知った法律事務所はフィクサー(事務所に所属し、公にできな案件を裏で内密に処理する)マイケル・クレイトンに揉み消しを依頼する。しかし数日後、その弁護士の死亡を知り、不審を抱いたマイケルは真相を追求するのだった。


(c)2007 Clayton Productions, LLC

アカデミー賞他、数多くの映画賞に輝いた極上のシリアス・サスペンス!是非、是非ご覧ください!としか申し上げられません。始めのハテナマークが、最後にはビックリマーク&納得マークになります。
私の勉強不足ですが、ジョージ・クルーニーがこんなに魅力的な俳優さんとは知りませんでした。哀愁が漂う表情にはうっとりです。それに、こちらが目を覆いたくなるほど、切羽詰まった緊張を演じたカレン役のティルダ・スウィントン。
男性社会で女性が肩を並べていくのに、ここまで追い詰められいくのかと少し同情してしまいました。

2007年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/120分/
http://www.fixer-movie.com/

4月12日(土)より、みゆき座ほか全国ロードショー

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ブラックサイト

監督:グレゴリー・ホブリット
脚本:ロバート・ファイヴォレント、マーク・R・ブリンカー、アリソン・バーネット
撮影:アナスタス・ミコス
編集:デヴィッド・ローゼンブルーム
音楽:クリストファー・ヤング
出演:ダイアン・レイン(ジェニファー・マーシュ)、 ビリー・バーク(エリック・ボックス)、コリン・ハンクス(グリフィン・ダウド)ジョセフ・クロス(オーウェン・ライリー)、メアリー・ベス・ハート(ステラ・マーシュ)ほか

FBI特別捜査官ジェニファーは、ネット犯罪のエキスパート。ある日「kill with me.com」という不審なサイトの情報が入る。ネズミ捕りの粘着紙の上で動けなくなった子猫が衰弱死していく様をライブ映像で流していた。通報したのはその管理人自身らしい。発信元が地元であることだけは突き止めたが、使用サーバーはロシアでFBIの管轄外だった。強制閉鎖をしてもアドレスは無限にコピーされ管理人は高度の知識をもっていると思われた。1週間後、同じサイトに中年の男性が縛り付けられ失血していく映像が映し出される。胸には「一緒に殺そう」の文字。身体に繋がれた抗凝血剤は、PCでコントロールされアクセスが上がる毎に増えるしくみになっていた。ジェニファーは地元のボックス刑事と捜査を進める。


いまやインターネットは生活に欠かせなくなってきています。それに伴っての犯罪も多発していますが、この作品は究極の悪意とも言えるネットを利用した殺人を見せています。流される映像を好奇心から覗く、何万人もの人々。それが人の命を奪うことになるという巧妙なしかけがあり、事件が繰り返される毎にサイトは知れ渡りアクセス数は増え、スピードが早まっていきます。見えない相手の手がかりを必死で探すジェニファーに思わず肩入れしてしまいました。
個人の情報がいとも簡単に流失してしまうこと、悪意のある相手を見極められないことを思うと、さらに怖いです。『ストリート・オブ・ファイヤー』('84)のダイアン・レインも40代ですが、スタイルの良さは変わらず。(白)

2008/アメリカ/カラー/100分/
配給:ソニー・ピクチャーズ

http://www.sonypictures.jp/movies/untraceable/

2008年4月12日(土)〜渋谷東急ほか全国ロードショー

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つぐない(原題:ATONEMENT)

監督:ジョー・ライト(『プライドと偏見』)
脚本:クリストファー・ハンプトン
原作:イアン・マキューアン 『贖罪』(新潮社刊)
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
美術:サラ・グリーンウッド
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:キーラ・ナイトレイ(セシーリア・タリス)、ジェームス・マカヴォイ(ロビー)、ロモーラ・ガライ(ブライオニー・タリス)、シアーシャ・ローナン(ブライオニー13歳)、ヴァネッサ・レッドグレイブ(ブライオニー晩年)ほか

1935年夏のイングランド。政府官僚のジャック・タリスの家では、末娘のブライオニーが初めての戯曲を書きあげていた。帰省する長男リーオンとその友人の歓迎会で上演するのだ。姉娘のセシーリアは大学を卒業したものの、今後の身の振り方が決まらず、無為の日々を過ごしている。 子供のころからともに育った使用人の息子のロビーは、セシーリアを愛していたが、身分の違いから口に出さずにいた。とあるできごとから互いの気持ちが明らかになった二人は、晩餐会の日、書斎で愛し合う。たまたまその光景を見てしまったブライオニーには、セシーリアが乱暴されていたと思い込む。夜になり家出したいとこを探すうち事件が起こった。目撃者となったブライオニーは、ロビーの名を口にする。


© 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

聡明で潔癖だがまだ大人の機微を知らない少女の一言が、一組の恋人たちを引き裂いてしまいます。本当に愛し合っていた姉とその恋人は別れ別れとなり、戦争も二人をさらに苦しめます。苦境に落とす原因を作ってしまった妹は一生をかけて、その罪を償おうとするのですが。
語り部であるブライオニーを3人の女優が演じます。少女時代のシアーシャ・ローナンが大人の俳優の中にあっても堂々として素晴らしいです。キーラ・ナイトレイとジェームス・マカヴォイの悲運の恋人たちを浮かび上がらせる、当時の屋敷を再現した美術、衣装、美しい田園風景などもお見逃しなく。(白)

映画を観た後に原作を読んだのですが、非常に丁寧に原作の世界を映像化したのがわかり、驚きました。純粋で美しい愛と、非情な現実世界との対比が見事で、深い余韻に浸れる作品です。『ペネロピ』を観て「ジャームス・マカヴォイかっこいい!」と思った方は、是非観ましょう。(梅)

2007/イギリス/カラー/2時間3分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/PG-12
http://www.tsugunai.com/

2008年4月12日(土),テアトルタイムズスクエアほかにてロードショー

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大いなる陰謀(原題:Lions for Lambs)

監督:ロバート・レッドフォード
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン
製作総指揮:ダニエル・ルピ
撮影:フィリップ・ルースロ
美術:ヤン・ロールフス
音楽:マーク・アイシャム
キャスト:ロバート・レッドフォード(スティーヴン・マレー教授)、メリル・ストリープ(ジャニーン・ロス/ジャーナリスト)、トム・クルーズ(ジャスパー・アーヴィング上院議院)、アンドリュー・ガーフィールド(トッド・ヘイズ/カリフォルニア大学生)、マイケル・ペーニャ(アーネスト・ロドリゲス/志願兵)、デレク・ルーク(アーリアン・フィンチ/志願兵)

ジャニーン・ロスは40年間にわたり、アメリカの政治を取材し続けてきたベテランのジャーナリストだ。彼女はジャスパー・アーヴィング上院議員から呼び出しを受けた。 アーヴィングは、いまや共和党の次期大統領候補と目されている人物。ジャニーンをオフィスに招いた理由は、対テロ戦争中のアフガニスタンで新しく展開させる作戦について、好意的に報道を促し、世論の支持を取り付けるのが狙いだった。
二人が話し合っていた同時刻、アフガニスタンでは新しく展開させる「高地占領作戦」に向けてヘリを飛ばしていた。その中には、志願兵アーネストとアーリアンの姿もあった。アフガニスタンで作戦が開始された頃、歴史学のマレー教授は、豊かな才能をもつ生徒トッドのふしだらな生活を心配し、人生について話し合っていた。アーネストとアーリアンは彼の教え子だった・・・。

1時間半の作品だが、観ている時間の進行と同時に三っの場所の時間も同じ速さで流れる。 あまりの臨場感と言葉の持つ力に圧倒された。最後、三つが一本の線で繋がるが、戦争や対テロ作戦などが、どのように作られ、戦われ、報じられるのか、無関心ではいられなくなる作品。
俳優はもちろん文句なし。 ロバート・レッドフォードの後悔と良心、トム・クルーズのカリスマ性と野心、メリル・ストリープの知性と戸惑い。どれも甲乙つけがたい演技。若者ではトッド役のアンドリュー・ガーフィールドの不安げな口元が秀逸だった。(美)

2007年/アメリカ/1時間32分/シネマスコープ/
配給:20世紀フォックス映画
http://movies.foxjapan.com/ooinaru/
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX
2008年4月18日(金)〜日劇1ほか全国ロードショー

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パーク アンド ラブホテル

監督・脚本:熊坂出
撮影:袴田竜太郎
編集:普嶋信一
音楽:日比谷カタン
美術:松塚隆史
出演:りりィ(艶子)、梶原ひかり(美香)、ちはる(月)、神農幸(マリカ)、津田寛治、三石研ほか

バックパックを背負い、ポラロイド写真を撮りながら歩いている少女は美香。新宿にある古いラブホテルに、老人や子どもが入っていくのを見かけて、後について行く。屋上はブランコや滑り台のある小さな公園になっていた。都会のオアシスのようなそこでは、将棋をさす男性、歌を楽しむグループ、子供達が日の暮れるまで思い思いに過ごしていた。ラブホテルのオーナー、艶子は美香のようすが気にかかり一晩泊めることになった。その後、艶子は毎日ウォーキングをしている主婦の月と、毎回違う男性と現れるホテルの常連客マリカに関わることになる。

70年代に「私は泣いています」でヒットを飛ばした歌手のりりィが主演。過去を抱えて一人で生きる女性を演じます。無愛想だけれど、来る人を拒まずに迎えるところは、屋上の公園とシンクロします。世代の違う3人の女性たち美香、月、マリカの共通点は孤独。昔の艶子のような彼女たちが、艶子に出会ったことで少しだけ幸せになっていきます。具体的にこうしろと言っているわけではありません。自分で選ぶ力をつけて出て行き、艶子も同じように少し踏み出す力を得ます。それぞれが何か食べるシーンが必ずあり、一緒に食べることって大事だと思わせます。熊坂監督はPFFアワード2005で3賞に輝き、スカラシップ(奨学生)を受けこの劇場用長編を作りました。胸の中がぽっと温まるような作品。(白)

*2008年ベルリン国際映画祭フォーラム部門 最優秀新人作品賞 受賞
2007/日本/カラー/35mm/1:1.85ビスタ/モノラル/111分
配給・宣伝:マジックアワー
http://www.pia.co.jp/pff/park/

4月26日(土)より渋谷ユーロスペースにてGWロードショー!
(c)PFFパートナーズ

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あの空をおぼえてる

監督:冨樫森
原作:ジャネット・リー・ケアリー「あの空をおぼえてる」(ポプラ社刊)
脚本:山田耕大
撮影:中澤正行
音楽:中野雄太
主題歌:平井堅 「いつか離れる日が来ても」
出演:竹野内豊(父・深沢雅仁)、水野美紀(母・慶子)、広田亮平(英治)、吉田里琴(絵里奈)、小池栄子(ユリコ先生)、中嶋朋子、品川祐、小日向文世(福田)ほか

小学生の英治は、幼稚園児の妹絵里奈にいつもふりまわされる。英治のものを勝手に持っていくし、いたずらだし、デタラメな歌を作っては歌う。でもおてんばで明るくてお日様のような子だった。だった・・・というのは、二人でホームセンターまで出かけたとき、トラックにはねられて空へ飛んでいってしまったからだ。
英治は重傷で入院し、松葉杖と一緒に家に帰ってきた。お父さんは話をしないし、お母さんは泣いてばかりいる。絵里奈がいなくなって家はすっかり変わってしまった。学校でカウンセラーの福田先生にノートをもらった英治は、絵里奈へ手紙を書くことにした。


(C)2008「あの空をおぼえてる」フィルムパートナーズ

『ごめん』『天使の卵』の繊細な作風が印象的だった冨樫森監督が、子どもを失った家族の悲しみと再生のストーリーを手がけました。
一番沈み込んでしまった父親を、映画7年ぶりという竹野内豊。お腹にいる3人目の子どもと、英治のために心の整理をしようとする母親の水野美紀。
英治役の広田亮平くんは、『マリと子犬の物語』でもやさしいお兄ちゃん役でした。妹がいなくなった家の中で一人奮闘するのですが、これは親が先に泣いてしまったからです。この親たちの悲しみはわかるけれど、残った子を支えなくてどうするんじゃ、と歯がゆい思いでした。この子は手放しで泣いたりせず、辛い思いをしまって妹へ手紙を書きます。いじらしいやらかわいそうやら、涙×鼻水でティッシュがなくなりました。絵里奈役の吉田里琴もほんとに可愛いです。子どもには勝てませんね。平井堅作の主題歌でまた泣けるので、ハンカチは持ったままで。(白)

2008/日本/カラー/ビスタサイズ/115分/
ソニーピクチャーズエンタテインメント
http://www.anosora.jp/

2008年4月26日(土)〜新宿バルト9ほか全国ロードショー

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ブレス(英題:Breath)

監督・脚本:キム・ギドク
出演:張震(チャン・チェン)、パク・チア(『春夏秋冬そして春』)、ハ・ジョンウ(『絶対の愛』)、 キム・ギドク

死刑囚チャン・ジンは、同房の囚人が壁に絵を描くのに使っていた道具を奪い取り喉を突いて自殺未遂を図る。死刑囚自殺未遂のニュースを見た主婦のヨンは彼に面会しようと刑務所に行く。看守に昔の恋人だと言い張り面会にこぎつける。ヨンは、浮気がばれても平然としている夫に対するうっぷんを晴らすがごとく、死刑囚に愛情をそそぐ。殺風景な刑務所の面会室を、行くたびごとに春夏秋と季節を変えて色鮮やかに演出し、歌を歌うヨン。死しか目の前になかったチャンに、いつしかヨンへの恋心が芽生え、生への思いが甦る...

キム・ギドク監督の14作目。四季折々の光景が、ヨン一人の手であっという間に面会室に再現されるなんて、絶対ありえない〜と思いつつ、キム・ギドクの世界に引き込まれてしまいます。登場人物それぞれの息づかいが鬼気と迫ってきて、見ている方も息苦しい思い。監視モニターに映る看守はキム・ギドク。さりげなくご出演です。
ちなみに死刑囚の名前チャン・ジンは、張震の韓国語読み。楊徳昌(エドワード・ヤン)の『牯嶺街少年殺人事件』で初々しくデビューした張震。『ブエノスアイレス』『愛の神、エロス』等で王家衛監督、『グリーン・デスティニー』で李安監督、そして『呉清源 極みの棋譜』で田壮壮監督と、各国の個性的な監督のもとで、大きく育った張震。本作でも、静かに存在感を示しています。

それにしても、死刑囚(赤い番号札)のチャンが、死刑ではない(白い番号札)他の囚人と5人の雑居房に入れられていて、韓国の刑務所って、そういうものなのかと興味深いものがありました。同房の囚人たちとの不思議な連帯感がまた可笑しくて、ごろにゃ〜んと、皆で固まって寝ているところなど最高! そして、面会人が来て呼び出されるチャンに嫉妬心をあらわにする若い囚人(カン・イニョン)が、これまた可愛くていいです。門井肇監督の『休暇』では、独房で執行の日を待つ死刑囚の思いを西島秀俊が体現していますが、『ブレス』を観て、死刑囚を雑居房に入れるのも一理あるかなと思った次第です。それにしても死刑... 来年始まる裁判員制度のことを考えずにはいられません。(咲)

2007年/韓国/84分/カラー/ビスタ/ドルビーSRD

配給: エスピーオー

★5月3日(土)シネマート六本木にて、四季に包まれるロードショー! 他、全国にて順次公開

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/breath/

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軍鶏 Shamo

監督:ソイ・チェン(鄭保瑞)
原作・脚本:橋本以蔵
出演:ショーン・ユー(余文楽)、アニー・リウ(劉心悠)、フランシス・ン(呉鎮宇)、ペイペイ(裴唯瑩)、ディラン・クォ(郭品超)、石橋凌、ブルース・リャン(梁小龍)、魔裟斗

裕福な家庭に育ち、名門私立高校に通う16歳の少年が、両親をナイフで惨殺した。その少年・成嶋亮は鯵ヶ崎高等少年院へ送られるが、冷酷な院長や院生たちから執拗ないじめを受ける。唯一の心のよりどころだった妹も彼の元を去り、ひ弱な彼にはどこにも生きる場所がなかった。
そんな彼に空手家の黒川は空手を仕込む。黒川は日本有数の空手家だったが、首相暗殺を企てた罪で終身刑となり投獄されていた。一切から拒絶されてきたことにおいて、二人は共通していた。
出所した成嶋は、夜の街で行方不明の妹を捜しながら、マダムの相手をする男娼として生きていた。ある日、ショウアップされた格闘技大会リーサル・ファイトの模様を見て、そのチャンピオンである菅原に対して激しい敵意をあらわにする。いつかあいつを倒す・・・


 
(C)2007 IZO HASHIMOTO / ART PORT INC. / PONY CANYON INC. All rights reserved

昨年『ドッグ・バイト・ドッグ』が公開され、容赦ない暴力描写で観客に鮮烈な印象を残したソイ・チェン監督。この作品がきっかけで、今回の『軍鶏』の映画化にあたって監督は彼しかいないだろうということになったそうです。双方の作品とも、暴力の中でしか生きられなかった人間の哀しみを描いている点が共通しています。
主演のショーン・ユーは『インファナル・アフェア』で日本でも広く知られるようになりました。今回はこれまでになく凶暴な男の役で、全く新しい一面を見せてくれています。空手家の黒川を演じるのはフランシス・ン。彼がいるだけで画面がぐっと締まる、素晴らしい存在感。ファンは必見です。カツラかぶったブルース・リャンの貫禄も必見。(梅)

2007年/香港/105分/カラー/35mm/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/PG-12
提供:アートポート X ポニーキャニオン
配給・宣伝:アートポート

公式 HP >> http://www.shamo-movie.jp/

★2008年5月3日(土)、新宿トーア他全国ロードショー

光州5・18(英題:MAY 18)

監督: キム・ジフン
脚本:ナ・ヒョン
原案:パク・サンヨン
撮影:イ・ドゥマン
音楽:キム・ソンヒョン
照明:カン・ソンフン
編集:ハム・ソンウォン
出演:アン・ソンギ(パク・フンス)、キム・サンギョン(カン・ミヌ)、イ・ヨウォン(パク・シネ)、イ・ジュンギ(カン・ジヌ)、ソン・ジェホ(キム神父)ほか

タクシー運転手ミヌは純朴で心優しい青年。 早くに両親を亡くし、弟ジヌと二人暮らし。彼は、家事一切を引き受け、名門ソウル大学を目指している弟を見守っていた。また、ミヌは看護士をしているシネに想いを寄せているが今だに告白できないでいた。1980年の風かおる5月、三人が映画館でコメディを楽しんでいた時、外では悪夢の事件が起きていたのだった。


(c)2007 CJ Entertainment & KiHweck ShiDae. All Rights Reserved.

1980年5月18日、韓国・光州市。平和な町に住む市民の前に突然悲劇は起こった。二万五千余名の戒厳軍が民主化を求める学生らと衝突し、軍の弾圧は多くの市民を巻き添えにした。この<光州事件>は、情報操作により正確には伝えられなかった。韓国映画が取り持つ縁で、映画好きの私にとって韓国は身近に感じるようになった。しかしこの映画を観るまで、こんなにセンセーショナルなものだったとは知らなかった。
そういえば、2007年暮れに公開された『ユゴ 大統領有故』の事件(1979)を発端に、民主化運動が始まるが、クーデターで権力を握った新軍部勢力により、民主化の動きを封じ込めようと起きたのが、この光州事件。そして、その後の不穏な時代に「殺人の追憶」の事件が起きたのか・・・。

この作品で一番痛切に感じたことは、立てこもり戦い続けたミヌたちも、治安部隊の兵士たちも、貧しい庶民であり、同じ民族であること。約30年前の事件だが、その傷は癒えていないと思う。 イ・ジュンギの若々しい制服姿も、もちろん必見だが、この事件を真正面から捉え、当時そのままを再現し、かなり大勢の人々のシーンもCGを使わず作りあげた監督に頭がさがる。(美)

2007/韓国/カラー/121分/35mm/スコープサイズ/PG-12
配給:角川映画
http://www.may18.jp/
5月10日(土)より、新宿ガーデンシネマ・シネカノン有楽町・渋谷アミューズCQN 他全国ロードショー

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最高の人生の見つけ方(原題:THE BUCKET LIST)

監督:ロブ・ライナー
脚本:ジャスティン・ザッカム
製作:クレイグ・ゼイダン、他
製作総指揮:トラビス・ノックス、他
撮影:ジョン・シュワルツマン,A.S.C.
美術:ビル・ブルゼスキー
編集:ロバート・レイトン
音楽:マーク・シェイマン
キャスト:ジャック・ニコルソン(エドワード・コール)、モーガン・フリーマン(カーター・チェンバーズ)、 ショーン・ヘイズ(カーターの秘書トマス)、ロブ・モロー(ホリンズ医師)、ビバリー・トッド(カーターの妻バージニア)ほか

勤勉実直な自動車整備工と、大金持ちの実業家。二人は偶然にも余命半年と言われ、同じ病院で同室になった。カーターには家族の親身な見舞いがあるが、エドワードはお金は腐るほどあるのに、見舞い客は秘書だけ。 なんの共通点もなかったが、二人を結び付けたのは<棺おけリスト>だった。
棺おけに入る前にやっておきたいことを書き出したリスト…。 その話題で親しくなり、二人の生涯最後の冒険旅行が始まったのだ。 棺おけに後悔を持ち込まないために、そして、最高の人生だったと心の底から微笑むために…。


(C)2005 Warner Bros. Entertainment Inc.

『死ぬまでにしたい10のこと』の23歳のアンを思い出した。彼女は余命約2ケ月と宣告された。 ジンジャー・キャンディの味と、彼女の書き綴った10のことが切なくて、今でも時々思い出す。
それと比べれば、この作品はとてもカラッとしていて、二人の意気のあった演技に魅了される。棺おけリストには
・荘厳な景色をみる
・赤の他人に親切にする
・涙が出るほど笑う・スカイダイビングをする
・マスタングを乗りまわす・ライオン狩りをする
・世界一の美女にキスをする
等々。まぁ、棺おけリストもお金次第と言ってしまえばそのとおりだが、もっと大切なことがあるんだよと教えてくれる場面もあり、ホロリとさせられた。(美)

2007年/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/97分/
配給:ワーナー・ブラザース映画
http://wwws.warnerbros.co.jp/bucketlist/

5月10日(土) 丸の内ピカデリー他 全国ロードショー

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P2

監督:フランク・カルフーン
脚本:フランク・カルフーン、アレクサンドル・アジャ、グレゴリー・ルヴァスール
製作総指揮:ボブ・ヘイワード、デイヴィッド・ギャレット、アリックス・ティラー
撮影監督:マキシム・アレクサンドルA.I.C.
美術:オレグ・ザヴィッキー
音楽:トマンダンディ
キャスト: レイチェル・ニコルズ(アンジェラ)、ウェス・ベントリー(駐車場の警備員トーマス)、サイモン・レイノルズ(上司ハーバー)、フィリップ・エイキン(ビルの警備員カール)

ニューヨーク、クリスマス・イヴの夜。高層ビルのオフィスで一人残業するアンジェラは、やっと仕事が片付き、たくさんのクリスマスプレゼントを抱え、地下駐車場へと向かう。しかし車の故障で、警備員のトーマスにタクシーを呼んでもらう。だが出口がロックされていた為、タクシーに乗れず、ビルからも出られなくなった。 再び、地下駐車場に戻ったアンジェラは、暗闇の中、背後から何者かに麻酔薬を嗅がされ気を失う。

スリル満点でゾクッとしました。 私の好きなリアル・サスペンスです。
犯人は確かに異常だ、しかし寂しさと積み重ねた想いがある・・・少し同情してしまう。一方、彼女にも性格に弱点があり、事を悪い方へと導く、負のオーラがあるのです。そこの描写がとても教訓的なのが面白かった。ビル地下のカー・チェイス、エレベーター内水浸しシーン等、見どころはあちこちにあり満足!音楽もなかなかの凝りようです! (美)

2007年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/SRD/1時間37分/
配給:ムービーアイ
http://www.p2-movie.jp/
5月10日(土)より シアターN渋谷、銀座シネパトス他 全国ロードショー

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ハンティング・パーティ

監督:リチャード・シェパード
原案:スコット・アンダーソン
撮影監督:デヴィッド・タッターサル
編集:キャロル・クラヴェッツ
音楽:ロルフ・ケント
キャスト: リチャード・ギア、テレンス・ハワード、ジェシー・アイゼンバーグ、ダイアン・クルーガー、リュボミール・ケレケス、ディラン・ベイカー他

ボスニア戦争終結から5年後の、2000年サラエボ。
記念式典の取材のため、5年ぶりにサラエボに降り立った元戦場カメラマンのダック(テレンス・ハワード)。 そこには、かつての相棒サイモン(リチャード・ギア)が待ちかまえていた。サイモンは戦場リポーターの頂点に輝きながら、上司との衝突で破滅し消息を断っていた。その姿は、過去の栄光の面影もなく、うらぶれていた。驚くダックに、サイモンは「ぶっ飛ぶようなネタがある」と言う。
そのネタは、500万$の報奨金がかけられている重要戦争犯罪人フォックスの居場所だった。ダックは半信半疑ながら、新米プロジューサー(ジェシー・アイゼンバーグ)と3人で潜伏予想地・チェレビチを目指す。


(c)2007 IM Filmproduktions GmbH All Rights Reserved

まず最初、字幕で「この映画で、まさか?と思われることは、すべて事実である」と知らされる。身を乗り出してしまった。 緊張とスリルとスピード感ある展開の中で、数々の「まさか」に遭遇する。
2007年に公開された『サラエボの花』『カルラのリスト』…そして、今年5月に公開されるこの『ハンティング・パーティ』。 ボスニア紛争をそれぞれ違う角度で描き、戦争が遺した傷痕、陰謀、裏社会の取引、驚愕の事実を教えてくれる。
サイモンを演じるリチャード・ギアは、言うまでもなくハリウッド・スターとして輝かしいキャリアの男優ですが、私生活において、熱心な人権活動家でもあるのです。この役には彼自身、相当な思い入れがあったのではと感じました。(美)

*2007年ヴェネチア映画祭正式招待作品
2007/アメリカ/カラー/シネマスコープ/SRD/103分/字幕翻訳:戸田奈津子

公式 HP >> http://www.huntingparty.jp/

★2008年5月10日(土)より シャンテシネ、新宿武蔵野館、他、全国ロードショー

丘を越えて

監督:高橋伴明
脚本:今野勉
原作:猪瀬直樹「こころの王国」(文春文庫)
出演:西田敏行、池脇千鶴、西島秀俊、余貴美子、島田久作、猪野学 ほか

昭和の初め、モダン文化の花開く東京にあって、江戸の情緒が残る竜泉寺町に育った細川葉子は、女学校を卒業し、就職先を探している。友人の紹介で文藝春秋社の面接を受けに行くと、入り口で少しキザな美青年に声をかけられる。彼の名は馬海松。朝鮮の貴族の出身で、編集員の一人だった。「編集長はダメだと言うだろうが、社長は君を気に入るだろうな」という彼の言葉通り、彼女は社長・菊池寛の個人秘書として雇われる。菊池の元で経験するのは、それまでまるで縁のなかったモダンできらびやかな生活。また、菊池本人の不思議な人間的魅力に接する中で、次第に女流作家になりたいという夢をふくらませる。菊池は彼女の伸びやかな個性に愛おしさを感じる。一方、面接の日に出会った馬も彼女への興味を隠さず、彼女も馬に惹かれていく。

「真珠夫人」のベストセラー作家であり、芥川賞や直木賞の創設者、文藝春秋社社長であり、大映の社長でもあった菊池寛。世の中を冷静に観察する目を持つ一方で、破格の人情家。モダン文化を謳歌、推奨しながら、ひどくだらしのない一面もありと、矛盾だらけだが魅力的な人物です。演じる西田敏行は本人と風貌がよく似ていることもあって、ぴったりです。朝鮮の貴族(両班)出身の馬海松を演じる西島秀俊は、クラシックなスーツがよく似合い、拳法まで使ってどえらいかっこよさ。しかし、話の中心となる細川葉子の人物像がもや〜っとぼやけていて、残念です。彼女の着こなす着物や昭和モダンのファッションがとってもキュート。(梅)

2008年/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ/DTSステレオ/114分
製作 :「丘を越えて」製作委員会
配給 :ゼアリズエンタープライズ/ティ・ジョイ

公式 HP >> http://www.okaokoete.com

★5月17日(土)ロードショー! シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか

マンデラの名もなき看守(原題:GOODBYE BAFANA)

監督:ビレ・アウグスト
製作:ジャン=リュック・ファン・ダム、他
製作総指揮:カミ・ナーディ、他
脚本:グレッグ・ラッター、ビレ・アウグスト
撮影:ロバート・フレイス
美術:トム・ハンナム
衣装:ダイアナ・シラーズ
メイク・ヘアデザイン:ピア・コーネリアス
音楽:ダリオ・マリアネッリ
キャスト:ジョセフ・ファインズ(ジェームス・グレゴリー)、デニス・ヘイスバード(ネルソン・マンデラ)、ダイアン・クルーガー(グロリア・グレゴリー)、フェイス・ンドゥクワナ(ウィニー・マンデラ)、パトリック・ライスター〈ジョルダン少佐)ほか

看守のジェームス・グレゴリーは人種差別主義者。しかし、1968年の南アフリカでは、当たり前のことだった。アパルトヘイト政策により、黒人には投票権がなく、住居、就職、教育でも差別されていたのだ。
グレゴリーは国内一の刑務所のあるロベン島に赴任した。ジョルダン少佐から、ネルソン・マンデラの担当に抜擢される。グレゴリーがマンデラの故郷の近くで育ち、彼らの言葉、コーサ語がわかるので、秘密の会話をスパイするためだった。妻のグロリアと共に、異例の出世を喜ぶグレゴリー。まさか、これがマンデラとの長い長い付き合いの始まりとは思いもしなかった。


(C) ARSAM INTERNATIONAL,CHOCHANA BANANA FILMS,X-FILME CREATIVE POOL,FONEMA,FUTURE FILM FILM AFRIKA

南アフリカ共和国で、黒人の自由と権利 獲得するために闘い続け、初の黒人大統領になったネルソン・マンデラ。2008年に90歳になったマンデラが、初めて自分の人生の映画化を許可した記念すべき映画です。この映画では、マンデラが表舞台で活躍する以前の<27年間の囚われていた時代>が描かれています。
マンデラやその妻ウィニーの誇り高く、気品のある態度。出世欲旺盛なグレゴリーが、マンデラの気高い魂に傾倒していく様子に胸を打たれました。お互いに最も大切な宝を亡くすという共通の苦しみを乗り越え、相手の気持ちを、唯一理解し合う友として別れますが、感動しました。歴史的な勉強にもなりました。
また、亭主の出世に一喜一憂する妻グロリアには、始め観ていてイライラしましたが、挫折や、まわりから無視された時も、グレゴリーを信じ支えていました。一番成長し、変わったのは彼女なのではないでしょうか。(美)

2007年/仏、独、べルギー、伊、南ア合作/カラー/117分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ

公式 HP >> http://mandela.gyao.jp/

★2008年5月17日(土)より、シネカノン有楽町1丁目、渋谷シネマGAGA 全国順次ロードショー

春よこい

監督:三枝健起
原作:中村努
脚本:中村努、いながききよたか
撮影:藤澤順一
音楽:三枝成彰
主題歌:夏川りみ「だいじょぶ、だいじょうぶ」
出演:工藤夕貴(尾崎芳枝)、西島秀俊(岡本利夫)、時任三郎(尾崎修治)、小清水一揮(ツヨシ)、吹石一恵(岡本先生)、犬塚弘(尾崎一平)、宇崎竜童(安藤刑事)、高橋ひとみ(清水聡美)ほか

佐賀の漁師町で貧しいながら暖かい家庭を築いていた尾崎一家。4年前、誤って借金の取立人を死なせてしまった夫修治は、逃亡したまま帰ってこない。残された芳枝は年取った義父一平と9歳になった息子ツヨシを抱えて、必死で働き続けていた。交番の手配書が張り替えの時期になり、ツヨシは「父ちゃんの顔を忘れそうだ」と修治の手配写真を見ている。新聞社の支局の岡本は、そんなツヨシの姿をそっと撮り、父親が現れるのではないかと記事にした。小さな町は蒸し返された事件の話でもちきり、芳枝はパート先をやめざるを得なくなる。


(C)2008 映画「春よこい」製作委員会

『オリヲン座からの招待状』(07)の三枝健起監督作品。一家の大黒柱が抜けてしまった穴は大きい。いくら動転して逃げたとしても、過失致死なら自首すれば刑は軽くなるはず。4年も音沙汰なしだなんてあんまりじゃないの、働いてるなら送金してやれ〜!留守を守る芳枝に甘えるんじゃない〜!と怒り半分。
記事を書いた後のことを考えない新聞記者や、のんきな警察、あれこれ変なところは多いけれど、小清水一揮くんは可愛かった。(梅)さんは岡本兄妹の「微妙さ」が気になってしまったそうです。(白)

2008年/日本/カラー/1時間48分/
配給:東映
http://www.harukoi.com/

5月24日より佐賀先行ロードショー、6月7日"幸せを届ける"全国ロードショー!

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Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼(原題:Mr. Brooks)

監督:ブルース・A・エヴァンス
製作:ケヴィン・コスナー
脚本:レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス
撮影: ジョン・リンドレー
音楽: ラミン・ジャワディ
出演: ケヴィン・コスナー(アール・ブルックス)、デイン・クック(スミス)、デミ・ムーア(アトウッド刑事)、ウィリアム・ハート(マーシャル)、マージ・ヘルゲンバーガー(エマ・ブルックス)、ダニエル・パナベイカー(ジェイン・ブルックス)ほか

ポートランドで若いカップルの銃殺死体が発見された。現場に残された被害者の血でつけられた指紋に、警察は騒然とする。いまだ逮捕どころか、犯人を確定することさえできない連続殺人鬼のしわざとわかったからだ。その正体は実業家として成功をおさめ、良き家庭人としても知られるアール・ブルックス。彼は殺人鬼という裏の顔を誰にも知られずにいたが、このときだけミスを犯していた。現場のカーテンが開いていて、向かいのビルから隠し撮りをしている男がいたのだ。彼はブルックスに接触を試みる。


(c)2007 ELEMENT FUNDING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンスは、『スタンド・バイ・ミー』の脚本家として知られています。「最も恐ろしい中毒症とは何か?」と考えたことから、このダークな物語が始まったと言います。2面性を持ったアール・ブルックスを演じるのは、自ら進んで制作にも加わったケビン・コスナー。ブルックスの闇の部分を担うマーシャルをウィリアム・ハート。面白い設定です。パワフルな女性刑事をデミ・ムーア。若い夫から離婚の慰謝料を執拗にせまられているのがなんだかおかしいです。デミ・ムーアは16歳年下のアシュトン・カッチャーとカップルなので、ちょっとそっちへ想像がいったりして。 殺人中毒症の実業家がいつまで逃げおおせるのか、どんな鉄槌がくだるのかは、劇場でご確認ください。(白)

2007/アメリカ/カラー/120分/スコープサイズ/
配給:プレシディオ 宣伝:アルシネテラン
http://www.mrbrooks.jp/

5月24日(土)〜渋谷Q−AXシネマほかにてロードショー

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山のあなた 徳市の恋

監督・編集・脚色:石井克人
製作:亀山千広
脚本:清水宏
撮影:町田博
録音:森浩一
美術:都築雄二
衣装:川崎健二
キャスト: 草なぎ剛(徳市)、加瀬亮〈福市)、三沢美千穂(マイコ)、堤真一(大村真太郎)、広田亮平(真太郎の甥)

目の不自由な按摩の徳市と福市は、山の温泉場に向かっていた。二人は前を歩く人の人数、性別、どこから来たかも嗅ぎ分けられる鋭い勘の持ち主であった。彼らの横を馬車が通り過ぎたが、瞬時にその中に都会の女の匂いを感じ取っていた。
温泉場の按摩宿泊所に落ち着いた徳市たちは、客から声がかかり出かけると、そこには都会の匂いのする女、美千穂がいた・・・徳市の淡く、切ない恋のはじまりだった。


(C)2008 フジテレビジョン・J-dream・東北新社・東宝

1938年製作、清水宏監督「按摩と女」のカヴァー作品です。
『茶の味』の石井克人監督は、清水監督作品を何本も観ているうちに自分が目指す演出方法との接点を見つけ清水監督の持ち味そのままを、カラーにかえて作ることを思いついたそうです。
清水監督の作品は未見ですが、SMAPの草なぎ剛と加瀬亮の盲人役はうまい!!の一言。美千穂のたおやかさ・・・着物のはんなりとした配色の素晴らしさは衣装の川崎氏に脱帽です。 昔の温泉場にタイムスリップした<湯けむり映画>を体感してください。(美)

2008/日本/カラー/94分/ヴィスタ・サイズ/
配給:東宝
http://yamano-anata.jp/

5月24日(土曜)東宝系ロードショー

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幻影師アイゼンハイム(原題:THE ILLUSIONIST)

監督・脚本:ニール・バーガー
原作:スティーヴン・ミルハウザー
『幻影師、アイゼンハイム』(『バーナム博物館』白水Uブックス所収)
撮影:ディック・ポープ
衣装デザイン:ナイラ・ディクソン
音楽:フィリップ・グラス
出演:エドワード・ノートン(アイゼンハイム)、ポール・ジアマッティ(ウール警部)、ジェシカ・ビール(ソフィ)、ルーファス・シーウェル(皇太子レオポルド)、エディ・マーサン(興行師フィッシャー)、ジェイク・ウッド(ヤルカ)、トム・フィッシャー(ウィリグート)、アーロン・ジョンソン(若きアイゼンハイム)ほか

すべてを欺いても手に入れたいもの、それは君。

19世紀末、ハプスブルグ帝国末期の芸術の都ウィーンでは、大掛かりな奇術=イリュージョンが一世を風靡していた。なかでもアイゼンハイムという幻影師が一番の人気で、ある晩皇太子の観覧するところとなった。観衆の見守る中、皇太子の婚約者の公爵令嬢が舞台に上がる。彼女はアイゼンハイムが少年の頃出会い、互いに思いを寄せ合いながらも身分の違いから引き裂かれたソフィであった。

短編の原作を長編映画として撮るためには、登場人物を増やし、視点を変え、物語を深めてゆく作業をするそうです。この作品は幻想と現実を織り交ぜて、たくみなストーリーを作り、観客をもその幻影師の虜にします。エドワード・ノートンはイリュージョンの技術とパフォーマンスを特訓し、350人のエキストラと現場のスタッフを完全に煙に巻き、驚愕させたほど上達したそうです。
ウール警部役のジアマッティが、皇太子に忠誠を誓いながらアイゼンハイムに魅せられてゆくさま、彼の軽妙で憎めないキャラにこちらも思わずニヤリとします。スティーブン・キングが「何度でも観たくなる!」とベストテンに推したという意味がわかるラスト。どのシーンもお見逃しなく。(白)

2006/アメリカ、チェコ/カラー/109分/ビスタ/SR−D/SDDS
配給:デジタルサイト、デスペラード
http://www.geneishi.jp/
5月24日(土)よりシャンテシネ、シネマート新宿にて"喝采"のロードショー

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今、愛する人と暮らしていますか?

監督:チョン・ユンス
脚本:キム・ソンミ、キム・ジン
撮影:カン・スンギ
プロダクション・デザイン:キム・シヨン
音楽:チョン・ジェヒョン
出演:イ・ドンゴン(パク・ヨンジュン)、オム・ジョンファ(ソ・ユナ)、ハン・チェヨン(ハン・ソヨ)、パク・ヨンウ(チョン・ミンジェ)ほか

建設会社の取締役のヨンジュン、インテリアの店を経営するソヨは若いセレブ夫婦。いつも元気なユナとホテルマンのミンジェは妻主導型の夫婦。共通の友人のバーで知りあった二組は、互いに惹かれるものを感じていた。ソヨとミンジェは、たまたま同じ時期に出張した香港で出会う。そのころ、ヨンジュンとユナは反発しながら強烈な印象を抱いていた。二組のカップルの想いは、それぞれのパートナーに知られないまま交錯していく。

早く言っちゃうとW不倫というかX不倫というか、二組の夫婦が互いの相手と付き合ってしまうというものです。こんなことってあるのかしらん?先行きが気になる連続ドラマのような展開です。秘密を知った共通の友人がパニックになるところがおかしかったです。熱い想いも時間がたてばさめていくもの。何十年と夫婦でいるのは、そこのところを乗越えてきたわけです。気持ちに正直で、生活力がある人が増えたことが、離婚を急増させたのでしょう。この二組の顛末は劇場でご覧下さい。韓国ではラブシーンが話題になったそうです。ファンの方はちょっとクラクラするかも。(白)

2007/韓国/カラー/116分/ドルビーSRD
配給:ツイン 宣伝:フリーマン

5月25日(日)〜TOHOシネマズ六本木ヒルズにてモーニングロードショー

公式 HP >> http://www.aisuruhito.jp/

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ラスベガスをぶっつぶせ(原題:21)

監督:ロバート・ルケティック
脚本:ピーター・スタインフェルド、アラン・ローブ
製作:ケヴィン・スペイシー、ディナ・ブルネッティ、他
製作総指揮:ウィリアム・S・ビーズリー、他
撮影:ラッセル・カーペンター、ASC
美術:ミッシー・スチュワート
衣装:ルカ・モスカ
音楽:デヴィッド・サーディ
カード・コンサルタント:カイル・モリス
原作:ベン・メズリック
出演:ジム・スタージェス(ベン・キャンベル)、ケイト・ボスワース(ジル・テイラー)、アーロン・ヨー(チョイ)、ライザ・ラピラ(キアナ)、ジェイコブ・ピッツ(フィッシャー)、ジョシュ・ガッド(マイルス)、サム・ゴルザリ(キャメロン)、ローレンス・フィッシュバーン(コール・ウィリアムス)、ケヴィン・スペイシー(ミッキー・ローザ)

MIT(ボストンのマサチューセッツ工科大学)で優秀な成績を収め、前途洋々の学生ベン・キャンベルは、ハーバード大学医学部に進学し医師への道を歩むのが夢だった。その為には、学費30万ドルを用意しなければならない。母子家庭のベンにとってあまりにも巨額な為、スーツ・ショップてアルバイトをしているが、到底追い付かない金額だ。ある日、ベンの天才的な数学力を見込んだミッキー・ローザ教授から声をかけられる。彼の教室に行くと、内密でブラックジャックの必勝方法をグループで研究、訓練をしていた。迷いに迷った彼は、学費の為と割り切って、週末にチームでラスベガスに乗り込むのだった。


天才的頭脳でブラックジャックを勝ち続けるグループ対カジノのルール違反を取り締まるチームの攻防を軸に、仲間の諍い、貧乏な時代の親友との感情のずれ、良心の痛み、ミッキー教授への不信などが、ラスベガスの超豪華なホテルやカジノを舞台に繰り広げられます。ベン役のジム・スタージェス、期待の新星です。眼差しに情があります。ガリ勉で真面目なベンが、だんだんギャンブラーに変身していく姿を、母親の気持ちで心配してしまいました。製作にも名前を連ねているミッキー・ローザ教授こと、ケヴィン・スペイシー・・・『セブン』からの大ファンです。演技はもちろんのこと、彼の柔らかく、輝きのあるビロードの声も堪能してください。(美)

2008年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/122分/
字幕翻訳:菊池浩司
配給:ソニー・ピクチャーズ
http://www.sonypictures.jp/movies/21/index.html
5月31日土曜日 有楽座他、全国ロードショー

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シューテム・アップ

監督・脚本:マイケル・デイヴィス
製作:スーザン・モントフォード、他
製作総指揮:ダグラス・カーティス、他
撮影:パーター・パウ
美術:ゲイリー・フルトコ
衣装:デニーズ・クローネンバーグ
音楽:ポール・ハスリンガー
銃器スペシャリスト:チャールズ・テイラー
出演:クライヴ・オーウェン(スミス)、モニカ・ベルッチ(ドンナ"DQ")、ポール・ジアマッティ(ハーツ)、スティーブン・マクハッティ(ハマーソン)、グレッグ・ブライク(ローン・マン)、ダニエル・ピロン(ラトリッジ上院議員)

ここはニューヨークの暗黒街。ブラック・レザーに身を固めた一匹狼のガンマン、スミス。彼は、妊婦から死に際に託された赤ん坊を守るため、馴染みの娼婦ドンナと共に、ハーツ率いるマフィアに決死の戦いを挑む。しかし、 マフィアの背後にはさらなる巨大な陰謀が隠されていたのだ。なぜ赤ん坊が狙われるのか…。思わぬ成り行きに、スミスとドンナはガン&ベイビーを抱えて、群がる敵を蹴散らして行く。


ゲーセンに行くと必ずある、悪者が出て来たら、いち早く撃つゲーム。あのゲーム好き!って方にオススメです。撃って、撃って撃ちまくるガン・アクション!銃弾2万5千発…何人お亡くなりになったか数え切れません。しかし、マカロニ・ウェスタン調の音楽がとてもリズミカルで、惨いはずのシーンも湿り気はありません。
にんじんを生でポリポリしただけで、あんなに大立ち回りできるスミス。マフィアの親分だけど恐妻家のハーツ。それに、赤ん坊を見つめるドンナの美しさ・・・。それぞれに隠された秘密がありそうです。(美)

2007年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/SRD/86分/R‐15/
字幕:風間綾平
配給:ムービーアイ
http://www.shootemup.jp/
5月31日(土)〜 渋谷東急、109シネマズ×ユナイテッド・シネマほか全国ロードショー

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幸せになるための27のドレス

監督:アン・フレッチャー
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
製作:ロジャー・バーンバウム、他
美術:シェパード・フランケン
衣装:キャサリン・マリー・トーマス
音楽:ランディ・エデルマン
キャスト:キャサリン・ハイグル(ジェーン)、ジェームス・マーズデン(ケビン)、テス(マリン・アッカ−マン)、ジュディ・グリア(ケイシー)、エドワード・バーンズ(ジョージ)ほか

主人公ジェーンは充実した仕事と、友達の結婚式の世話役に追われる日々。クローゼットにはブライドメイド(結婚式の友人代表用のドレス)がなんと27着!だが、こと自分のこととなると奥手で夢見がちな女性だった。
ふとしたきっかけでジェーンを知ったライターのケヴィン(ジェームズ・マーズデン)は、彼女のことを記事にしようと企てる。そんなある日、セクシーで積極的なジェーンの妹テスが、ジェーンの片思いの上司に急接近。あっという間に彼をおとしたテスは結婚式の世話役をジェーンに頼むと言い出した・・・。


(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX

主演は、TVシリーズ「グレイズ・アナトミー」でエミー賞を獲得したキャサリン・ハイグル。特別美人!ってことないですが、表情がとても豊かです。特に焦っている時や、何よ!と怒った時など格別です。
さて、私ごとですが、6月に娘がシドニーでガーデンウェデングを挙げます。随分前から招待状つくりやブライドメイドのドレスの注文などいろいろな方のアドバイスを受けながら準備をしています。えっ、そんなこともするの?売ってないの?など、わからないことだらけでしたが、これを観て納得!日本ではほとんどが式場で用意されているものの中からチョイスするだけですが、とてもお国柄の違いがわかりました。27のドレスは見ようによっては、個性的過ぎるんじゃない?ってのもありましたが、それぞれのカップルの想いが込められた最高の装いだったのですね。(美)

2008年/アメリカ/カラー/シネスコ/111分/
配給:20世紀フォックス
http://movies.foxjapan.com/27dress/

2008年5月31日 日比谷みゆき座他全国ロードショー

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アウェイ・フロム・ハー 君を想う(原題:Away from Her)

監督・脚本:サラ・ポーリー
製作総指揮:アトム・エゴヤン
製作:ダニエル・アイロン、シモーン・アードル、ジェニファー・ワイス
撮影:リュック・モンペリエ
音楽:ジョナサン・ゴールドスミス
美術:キャスリーン・クリミー
キャスト:ジュリー・クリスティ(フィオーナ)、ゴールド・ビンセント(グラント)、オリンピア・デュカキス(マリアン)、オーブリー(マイケル・マーフィ)ほか

グラントとフィオーナは結婚して44年になる。心身共に満ち足りた生活を送っていたが、フィオーナにアルツハイマー型認知症の兆候が出てくる。グラントは辛抱強く妻を介護し見守るが、困惑するフィオーナは、老人介護施設の入所を自ら決意する。 その施設は生活に馴染む為、入所してから30日間家族の面会や電話が禁止だと聞いたグラントは、入所を躊躇するが、フィオーナの意志は変わらなかった。1ケ月後、フィオーナは夫を覚えておらず、車椅子の男性オーブリーをまるで自分の恋人のように世話をする姿に、グラントはショックを隠せなかった。


(c)2006 The Film Farm/Foundry Films/pulling focus pictures

女優サラ・ポーリーといえば『死ぬまでにしたい10のこと』『アメリカ、家族のいる風景』『あなたになら言える秘密のこと』の個性的な演技で知られている。その彼女の長編初監督作品は、不思議な縁で交差する二組の夫婦を通して、わかり合えない苛立ちと孤独の厳しい現実をみせてくれる。
女性監督ならではのセリフがあった。介護施設の女性が、グランドに「過去を振り返って、悪い人生じゃなかった!と言うのはみんな男。あなたの奥様はそうじゃなかったかもね」と言わせている。夫婦が長く一緒に生活し仲良く見えていても、きっとこんな思い違いや、心のしこりはあるに違いない・・・と感じた。この作品、是非ご夫婦でご覧ください!!人生、変わるかも・・・。(美)

30前のサラ・ポーリーがなぜ老夫妻の話を?と不思議でした。原作はアリス・マンローの 「クマが山を越えてきた」(新潮社刊「イラクサ」所収の短編)です。1931年生まれのマンローが70歳で発表した作品を、若い監督がどう映像化したのか楽しみに観ました。皮肉で切ない映画でした。ジュリー・クリスティはこの演技でゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞。1941年生まれですがとてもエレガント。『月の輝く夜に』(もう20年前!)の母親役が印象深いオリンピア・デュカキス(1931年生まれ)も元気です。変わらないなぁ。(白)

2006年/カナダ/カラー/ビスタ/110分/字幕スーパー翻訳:古田由紀子
ヘキサゴン・ピクチャーズ
http://www.kimiomo.com/

5月31日(土)より、銀座テアトルシネマにてロードショー

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おいしいコーヒーの真実(原題: Black Gold)

監督・プロデューサー:マーク・フランシス、ニック・フランシス
音楽:アンドレアス・カプサリス
出演:タデッセ・メスケラ他

世界中で愛飲されているコーヒー。全世界での1日あたりの消費量は約20億杯。コーヒーの取引規模は石油に次ぐという。本作では、コーヒーの原産国で世界第2位の収穫量を誇るエチオピアで、74000人以上のコーヒー農家を束ねるオロミア州コーヒー農協連合会の代表タデッセ.メスケラが奔走する姿を追いながら、貧困にあえぐコーヒー農家の実態や、世界のコーヒー市場の仕組みを描き出していく。

コーヒーが西欧社会に入ってきたのは、1683年。ウィーン近くまで迫ったオスマントルコ軍が撤退した後に残されていたのが緑色のコーヒー豆。初めは駱駝の餌と思われたとの話も伝わっていますが、これがウィーンでカフェ文化として花開く元となりました。トルコやアラビアでの飲み方とは違う形で西欧社会に定着し、今やコーヒー店チェーンが世界規模で席捲。けれども、例えば1杯330円のトールサイズのコーヒーの内、コーヒー農家に支払われる金額は、わずか、3〜9円。かつての西欧諸国の植民地政策や、資本主義経済のひずみが、このような不公平を生み出しているのではないでしょうか。監督の二人は、公正な取引(フェアトレード)の必要性を人々に訴えるために、親しみやすいコーヒーを選んだといいます。

普段、八百屋さんで野菜を買う時、安ければ嬉しいけれど、こんなに安くて農家は大丈夫だろうかと心配になることがあります。さらに、高くても果たしてそれなりに作った人の収入になっているのだろうかとも思います。貧困にあえぐ人たちの自助努力に対し、正当に報いることができるような仕組みはどうしたら実現するのでしょう。本作では、提言だけに終わっているのがちょっと残念です。でも、第一歩!(咲)

2006年/78分/イギリス・アメリカ/オリジナル言語:英語・アムハラ語・イタリア語/16:9/ VIDEO/ステレオ/カラー
配給・宣伝:アップリンク

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/oishiicoffee/

★2008年5月31日より、渋谷アップリンクXほか全国にて順次公開

秘密結社 鷹の爪 THE MOVIEII〜私を愛した黒烏龍茶〜

同時上映『古墳ギャルのコフィー 12人と怒れる古墳たち
監督・脚本・Flash・編集・声の出演など: FROGMAN(フロッグマン)
声の出演:滝口順平、銀河万丈、野沢雅子他
主題歌: the HOOSiERS (UKチャートNo.1!)

世界征服をたくらむベンチャー秘密結社“鷹の爪”。そして、彼らの野望を阻む正義の味方・デラックスファイター。何をやっても失敗ばかりの鷹の爪団と、正義なのかよくわからないヒーローとのやり取りを描いた世界征服コメディ。
2006年にテレビの深夜枠で放送を開始し人気を呼んだ、史上初のFlashアニメTVシリーズ「秘密結社 鷹の爪」の劇場版第2弾。劇場版第1作目の前作『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE〜総統は2度死ぬ〜』はNY国際インディペンデント映画祭にてアニメーション最優秀作品賞、国際アニメ?ション最優秀監督賞の2部門を受賞の快挙を達成!

究極の「参加型エンタテインメント・ムービー」を目指したという本作。画面右手に常時出ている使った予算が一目でわかる「バジェットゲージ」に、ついつい目がいきます。スポンサー名が画面に出てくると予算が増えたり、凝った画像の時にはぐっと予算が減ったりと、ゲージを見ているだけでも笑えます。そして突然挿入される「告白タイム」。第一弾では1組の夫婦が誕生したとか。今回新登場した「リラックスタイム」には、思わず騙されます。

テーマは、『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIEII〜私を愛した黒烏龍茶〜』が金融問題、同時上映『古墳ギャルのコフィー 12人と怒れる古墳たち』は、2009年から開始される裁判員制度。時事問題を取り入れつつ、監督の出身地で今も住む島根県をしっかりPRしながら笑わせてくれます。「鷹の爪」の主人公・吉田くんが、島根県知事より直々に『島根Super大使」に大抜擢されたとか。実は私の祖父母は父方母方共に島根県。最過疎県と言われ、影の薄い島根県を大いにアピールしてくれて、島根県人の血を引く私としても嬉しい限りの映画です。(咲)

2008年/日本/90分
配給・宣伝:株式会社ディー・エル・イー

公式 HP >> http://www.takamovie.jp/

★5/24よりTOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行公開
 5/31より無理なく計画的に全国ロードショー!

シークレット・サンシャイン(原題:密陽(ミリャン))

監督・脚本:イ・チャンドン
原作:イ・チョンジュン「虫の物語」
撮影:チョ・ヨンギュ
美術:シン・ジョムヒ
音楽:クリスチャン・バッソ
出演:チョン・ドヨン(イ・シネ)、ソン・ガンホ(キム・ジョンチャン)、ソン・ジョンヨプ(ジュン)、チョ・ヨンジン(パク・ドソプ)、キム・ヨンジェ(イ・ミンギ)、ソン・ミリム(チョンア)ほか

シネは息子のジュンと二人、 亡くなった夫の故郷のミリョンに引越してきた。途中で車が動かなくなり、レッカー車を呼ぶとやってきたのは、独身で車の修理工場を営んでいるジョンチャンというぶっきらぼうな男。ピアノ教室を始めたいというシネに不動産やを紹介し、なにかと世話を焼くのだがシネは気にも留めない。穏やかな日が始まったかにみえたある日、ジュンが行方不明になり、シネに脅迫電話がかかってきた。預金をありったけ引き出して約束の場所へ届けたが、ジュンは戻らなかった。夫を亡くし再出発をしようと、精一杯彼女なりの「武装」をしたことが裏目に出てしまったのだった。



COPYRIGHT©2007 CINEMA SERVICE CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

韓国はクリスチャンが多いそうで、絶望に沈んだシネも近所の信者から教会へ誘われます。賛美歌を聞き、初めて声を上げて泣いたシネは、重い重い枷が外れたように見えます。が、ことはそう簡単に進みません。揺れ続けるシネを演じるチョン・ドヨンは鬼気迫るものがありました。シネに俗物と言われても、彼女を思うジョンチャン役のソン・ガンホが、愚直な愛情を見せてとても良いです。こういう人にそばにいてもらえば幸せなのに、きっと逆のタイプに惹かれてきたシネだったんでしょう。冒頭からラストまで、タイトルどおり降り注ぐ光がとても印象的です。2時間半近くの長さを少しも感じませんでした。(白)

2007/韓国/カラー/142分/シネマスコープ/ドルビーSRD/
配給:エスピーオー
http://www.cinemart.co.jp/sunshine/

6月7日(土)〜シネマート六本木ほか全国順次ロードショー

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休暇

監督:門井肇
製作:野口英一、小池和洋
原作:吉村昭(短編集「蛍」より)
脚本:佐向大
音楽:延近輝之
撮影:沖村志宏
美術:橋本千春
刑務関係アドバイザー:坂本敏夫
キャスト:小林薫(平井、看守部長)、西島秀俊(金田、死刑囚)、大塚寧々(美香、平井の妻)、大杉漣(三島、副看守長/平井の上司)、宇都秀星(達哉、美香の連れ子)

真面目で寡黙なベテラン刑務官平井は、シングルマザーの美香と近々結婚する。気掛かりは、美香の連れ子達哉と打ち解けてないことだ。三人でどこか新婚旅行に行きたいが、平井の母の葬儀で有給休暇を使い切ってしまった。当分お預けだ。そこに、彼が勤める刑務所で三年ぶりに死刑執行の命令がくだる。執行の際、「支え役」をすると一週間休暇を与えられると聞く。誰もが嫌がる役目だ。彼は考えた末、その休暇で新婚旅行に行こうと、自らその役を名乗り出た。


(C)「休暇」制作委員会

つい最近『歓喜の歌』で小林薫が市民会館の職員を軽妙に演じた。この時も公務員で、今度も公務員。小林薫は短い期間で、一番暇な公務員(映画ではドタバタしていたが)と、一番心身ともに辛い公務員を演じたわけですね。
しかし、何を支えるの? 知りたい! 見てみたい!こんなに試写が待ち遠しい作品はなかった。静かな映画で、思っていたほど恐くはなかった。しかしすっごく緊張した。そのピーンと張り詰めた緊張感は最後まで切れることなかった。これから新しい家族で生きて行こうとする男と、死に直面した男の偽りのない葛藤が繊細に描写されている。門井監督は前作「棚の隅」 同様、男の微妙な心のゆれを的確に捉えることのできる若手監督。
ストーリーを読んだだけで「私は観ないわ」なんて言わないで、恐がらずに映画館に足を運んでほしい。期待どおりの作品で、後味も悪くない。(美)

死刑囚の中には、自分の罪を反省することのないまま執行される人もいるでしょうし、この映画の金田のように罪の重さを認識して刑に服する人もいるでしょう。遺族に対して何の謝罪もないまま、ある日突然その死が知らされても、果たしてそれは遺族や関係者にとって解決になるのでしょうか。一方、罪を認識して反省し、生まれ変わった人間に、なおも死を与えることは妥当なのでしょうか。いとも簡単に人を殺す事件が相次ぐ昨今ですが、これは死刑という制度を通して、人の命の重さをじっくりと考えさせてくれる作品です。(梅)

2008年/日本/カラー/ヴィスタサイズ115分
http://www.eigakyuka.com/

★6月7日より有楽町スバル座ほか全国ロードショー

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美しすぎる母(原題:SAVAGE GRACE)

監督:トム・ケイリン
脚本:ハワード・A・ロッドマン
原作:「SAVAGE GRACE」ナタリー・ロビンズ&スティーヴン・M・L・アロンソン
撮影:フアン・ミゲル・アスピロス
音楽:フェルナンド・ベラスケス
出演:ジュリアン・ムーア(バーバラ)、エディ・レッドメイン(トニー)、スティーヴン・ディレイン(ブルックス)、ヒュー・ダンシー(サム)、エレナ・アラヤ(ブランカ)、ウナクス・ウガルデ(ジェイク)ほか

=実話に基づく、時代の闇に埋もれた衝撃のスキャンダル=

貧しい家庭で育ったバーバラはその美貌を武器に、憧れの上流階級の妻の座を手に入れる。夫のブルックスは、ベークライトを発明し、一代で財を成したレオ・ベークランドの孫。ベークランド家は2代目のジョージが家業に失敗し、家を傾けていたが、いまだ上流階級であることにはかわりはない。名士のカードを収集するバーバラは、劣等感をおくびにも出さず、艶然と微笑み上流社会を泳ぎ回る。しかし優雅なたたずまいの裏には、生来の野蛮さが隠されていた。待望の息子トニーも産まれ、幸せを満喫する日々だったが、夫婦間の溝は少しずつ大きくなっていた。


(c) Lace Curtain, Monfort Producciones and Celluloid Dreams Production

原題の直訳は「野蛮な優美さ」。相反するこの二つを合わせ持ったバーバラを、数々の賞に輝くジュリアン・ムーアが演じます。激しすぎる母親と冷たい父親の間にいて、心のバランスを失っていく息子をエディ・レッドメイン。実話を元にした小説が原作。100年ほどのストーリーがある原作から、バーバラに関わるエピソードを選び出して映画としたそうです。悲劇的な結末を迎えるストーリーなので、見終わって晴れ晴れとはしません。それは俳優の演技が素晴らしいからかも。(白)

2007/スペイン、フランス、アメリカ/1時間37分/ヴィスタ/ドルビーデジタル/R-18
配給:アスミック・エース
http://utsukushisugiru.com/

6月7日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

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ブルー・ブルー・ブルー(原題:NEWCASTLE)

監督・脚本:ダン・キャッスル
撮影:リチャード・ミカラク
水中撮影:ティム・ボニーソン
製作:ナオミ・ウェンク
音楽:マイケル・イェツェルスキー
出演:ラクラン・ブキャナン(ジェシー)、ハビエル・サミュエル(ファーガス)、レシャード・ストリック(ビクター)、カーク・ジェンキンス(アンディ)、イスラエル・カナン(スコッティ)、ベン・ミリケン(ネイサン)ほか

プロサーファーを目ざす若者たちのメッカ、オーストラリアのニューカッスルが舞台。
毎日サーフィンに明け暮れるジェシーは17歳。異母兄のビクターは、かつてチャンピンを目指しながら怪我で挫折し、父と同じ港湾労働者になっている。ジェシーは、世界に通用するプロサーファーになってこの生活から抜け出したい。当面の目標はジュニアチャンピオンだ。しかし、あせるあまりに失敗しその大事な予選に落ちてしまう。出場が決まったのは裕福な家の息子たち、ネイサンとアンディだった。スコッティはすっかり落ち込んだジェシーをキャンプに誘う。ジェシーが思いを寄せるデブラも参加、互いの親たちには嘘をついて出かけることになった。


(C)2007 Film Finance Corporation Australia Limited, 3DAP Japan LLC, Shadowfire Entertainment Pty Limited, Jour de Fete LLC and Newcastle Pictures Pty Limited

明るいサーフィン映画かと行ってみたら、冒頭はサスペンスタッチの映像と音楽。屈折した思いを抱える主人公ジェシーの心模様だったのかもしれません。ジェシー役のラクラン・ブキャナンはもちろん、本物のプロサーファーで映画初出演の美形、カーク・ジェンキンスもすばらしいパフォーマンスを見せます。思わず目をひかれたのはジェシーの弟ファーガス役のハビエル・サミュエル。昔のキアヌ・リーブスを思い出させます。『明日、君がいない』に出て注目されたそうですが、クラスメート役だったのか覚えていません。運動音痴でオタクという設定で、兄のライバル、ハンサムなアンディに惹かれています。男の子5人に女の子2人が加わってキャンプに出かけ、カップルでそれぞれの一夜を楽しみます。一人余るのが、実は歌手でもあるイスラエル・カナン。この子いい味出しています。撮影は数々のサーフィン映像が絶賛されているカメラマン。どうやって撮ったのか、すごい迫力です。泳げない私など観るだけで死にそうですが、好きな方には鳥肌ものの映像でしょう。ラストすぐ席を立たないようご注意ください。まだシーンが残っています。(白)

2008/オーストラリア/カラー/107分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル、ドルビーSR/PG-12
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

公式 HP >> http://www.blueblueblue.jp/

★6月7日(土)〜 シネセゾン渋谷ほかロードショー

チベット チベット

監督・撮影:キム・スンヨン(金昇龍)
製作:RAGOS
プロデューサー:キム・スンヨン、田中瑠佳
編集:梶愛、比嘉賢史
音楽:大久保智久

キム・スンヨン監督は在日コリアン3世。1997年、あてどない世界旅行をしているときに、北インドで亡命してきて異国で暮らすチベット人に出会います。彼らと在日の人々の間に共通点を感じたのをきっかけにチベット問題を考えるようになります。多くの人へ知らせたいという思いはチベット亡命政府に届き、ダライラマ14世の同行取材をも可能にしました。
監督の旅はその後も続き、チベット自治区の美しい自然や精神文化をカメラにおさめています。
ノンフィクション・ロード・ムービー。(白)

2008年再編集作品/チベット/カラー/Video/85分/16:9/日本語・英語・チベット語・中国語
6月7日(土)〜6月27日(金)渋谷アップリンクXにて公開
6月21日(土)〜7月5日(土)横浜ジャック&ベティ
7月26,27日、8月2,3,9,10日ポレポレ東中野

公式 HP >> http://tibettibet.jp/

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REC/レック (原題:[REC])

監督・脚本:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ
撮影:パブロ・ロッソ
美術:ヘマ・ファウリア
音楽:ハビ・マス
出演:マニュエラ・ヴェラスコ(アンヘラ)、フェラン・テラッサ(マヌー)、ホルヘ・ヤマン(セルジオ)、カルロス・ラサルテ(セザール)、パブロ・ロッソ(パブロ)、ダビ・ベルト(アレックス)ほか

アンヘラはTV局の若い女性レポーター。今晩は消防署の密着取材。カメラマンのパブロと二人、深夜まで消防士の食事風景や待ち時間のすごし方を撮影していた。内心では、火事でも起きてスクープをモノにできないかと期待していると、あるアパートの住人から通報があった。隣の部屋で騒動が起こっているという。さっそくアンヘラも車に同乗して現場へ向かう。警官も一緒に部屋を訪ねると、そこには血まみれで興奮状態の老婆がいた。アンヘラはパブロに「何があっても録画を続けるのよ!」と言う。そっと近づく警官に老婆は突如襲い掛かり、信じられない速さで喉笛に噛み付いてきた!


(C)2007 CASTELAO PRODUCUTIONS,S.A.

スペインで公開されるやいなや、メジャー大作を押しのけて大ヒットした作品。二人の監督は、まるでほんとのTV中継のように、観客の前にカメラのとらえる映像を差し出します。アパートの住人たちは何が起こっているのかわからないまま、外に逃げることもできません。こちらも一緒にたたみかけてくる恐怖に怯えることになります。
マニュエラ・ヴェラスコは実際にTVのレポーターから抜擢(この作品で新人女優賞)。ほか、あまり顔を知られてない俳優たちをキャスティングすることで「リアル」に見せたそうです。リメイクが決定したアメリカではどうなるんでしょう。初め77分は短いと思いましたが、これで十分です。緊張しました。カメラと編集がうまいです!いや〜、怖かった!(白)

2007/スペイン/カラー/77分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/R-15
配給:ブロードメディア・スタジオ
http://www.recmovie.jp

2008年6月14日(土)、池袋シネマサンシャインほかにて“絶叫”ロードショー!!

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1978年、冬。(原題:西幹道)

監督:リー・チーシアン(李継賢)
脚本:リー・チーシアン(李継賢)、リー・ウェイ(李微)
撮影:ワン・ユー(王[日/立])
製作:中国電影集団、株式会社ワコー
ノヴェライズ:「1978年、冬。」(愛育社刊)
出演:チャン・トンファン(張登峰)、リーチエ(李傑)、シェン・チアニー(沈佳女尼])

1978年。文化大革命の混乱が終わりを告げた年。スーピンとファントウの兄弟が住む中国東北部の小さな町には、まだ変化の波は届かない。その年の冬、北京から一人の少女・シュエンがやってきた。彼女がまとう華やかな都会の匂いと、裏腹の孤独。それは兄弟の外の世界への憧れと孤独感に呼応し、凍てつく冬の空気の中でかすかに熱いものが動き始める。


2007年東京国際映画祭で来日(撮影:宮崎)

はじめこそ、スーピンの考えなしな行動に”オイオイ”とつっこみを入れ、お母さんのスーピンに対する怒り方があまりに激しくて、ちょっと引いたりもするのですが、後半になると登場人物の心情がじわじわと心に染みてきて、見終わるとズシンと残るものがあります。
閉塞した社会の中で生きる若者と、壊れそうで壊れない、家族の強い絆を描いた点は『孔雀』に似ています。荒涼とした枯れ野の凍てついた空気が伝わってくる美しい映像が素晴らしいです。(梅)

2007年東京国際映画祭コンペティション部門審査員特別賞受賞

2007年/日本・中国/中国語/35mm/カラー/1.85/ドルビーSR/101分
後援:中華人民共和国駐日本国大使館文化部
協力:マルマン株式会社
配給:ワコー。グアパ・グアポ
配給協力:フォーカスピクチャーズ
宣伝:グアパ・グアポ
宣伝協力:テレザ

公式 HP >> http://www.1978-winter.com/

シネマジャーナル72号にリー・チーシアン監督、脚本のリー・ウェイさん、女優のシェン・チアニーさんのインタビューを掲載しています。
★6月14日(土)より、ユーロスペースにてロードショー

1000の言葉よりも 報道写真家 ジブ・ゴーレン(原題: ...MORE THAN 1000 WORDS)

監督:ソロ・アビタル
出演:ジブ・コーレン

イスラエル・パレスチナ問題を追い続けているイスラエルの報道写真家ジブ・コーレン。自爆テロにより爆発したバスの現場写真はタイム誌の表紙を飾り、彼を一躍有名にした。イスラエル人の死んでいる姿が自国の新聞に掲載されたのは、この写真が最初で最後だという。

イスラエル人であるコーレンにとって、パレスチナの紛争現場で撮影することは、ほかの写真家以上に危険を伴うことである。ヘブライ語で書かれたものを一切身につけないように気遣い現場に急行する。監督ソロ・アビタルもまた、危険を覚悟でコーレンの姿を追いかける。

美しい妻と可愛い子・・・商業写真を撮っていれば、家族と穏やかで裕福な暮しができるのに、彼を紛争の現場に駆り立てるものは何だろうか? そしてコーレンの姿を追ったソロ・アビタル監督。イスラエル人の側からも、ますます混迷を深めるパレスチナ紛争解決への一助になると信じての一石を投じたいという思いが伝わってくる作品。バイクに乗って現場に駆けつけるコーレン自身のカッコよさや、監督のスタイリッシュな撮影手法が凄惨な場面を和らげているが、これはこれで眼を背けたい人にも観てもらえるのではないかと思う。(咲)

配給・宣伝:アップリンク
2006年/イスラエル/78分/オリジナル言語:ヘブライ語・英語/スタンダード/VIDEO/ステレオ/カラー

★2008年6月14日より東京都写真美術館ホールほか全国にて順次公開
※公開初日6月14日(土)17:20の回上映後、ジブ・コーレンと外山俊樹氏(「アエラ」フォトエディター)によるトークショーあり!

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/1000words/index2.php

◆1000の言葉よりも ジブ・コーレン報道写真展公開に先駆け、写真展「1000の言葉よりも」が開催されます。

日時:2008年6月10日(火)〜21日(土)11:30〜19:00
場所: BankART 1929 Yokohama, 3F 1929スペース
横浜市中区本町6-50-1/みなとみらい線「馬車道駅」下車
料金:一般600円

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コミュニストはSEXがお上手?(英題: Do Communists Have Better Sex ?)

監督・脚本: アンドレ・マイヤー

第二次世界大戦で敗戦後、1949年に西と東に分断されたドイツ。ベルリンの壁が壊され、再び1990年に統一されるまでの約40年、資本主義と共産主義という全く違った体制の下で過ごした人々。同じドイツ民族なのに、セックスの面でも大きく隔たりが...。
歴史学者やセックス研究家の証言を織り交ぜ、かわいいアニメも登場させて、東西ドイツのセックスの違いを分かりやすく、科学的に解説してくれる。何より興味深いのは、東の女性たちの方が、セックスに対して、より自由で満足度が高いこと。社会主義体制の下で女性の社会進出が著しかったから? “道徳”を重んじる教会の影響がなかったから? かたや西では性風俗は発達したが、家庭での満足度はいかに?と、社会学者は投げかける。

タイトルに気が引けて、一人では劇場に足を運びにくいかも知れない。が、本作はユーモアを交えて、体制の違いが人々の生活や性格までをも変えてしまうことを見せてくれて、実に面白い。(咲)

2006年/ドイツ/52分/カラー/スタンダード/モノクロ/DVカム
配給: パンドラ

★2008年6月21日 東京 ユーロスペースにて公開の他、名古屋 シネマテーク、大阪 シネ・ヌーヴォ

公式HP>> http://www.commusex.jp/

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西の魔女が死んだ

監督:長崎俊一
脚本:矢沢由美・長崎俊一
原作:梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫刊
撮影:渡辺眞(JSC)
美術監修:種田陽平
美術:矢内京子
音楽:トベタ・バジュン
主題歌:手嶌葵 「虹」
出演:サチ・パーカー(おばあちゃん)、高橋真悠(まい)、りょう(ママ)、大森南朋(パパ)、高橋克実(郵便屋さん)、木村祐一(ゲンジ)ほか

「魔女が倒れた。もうだめみたい」とママが言った。魔女とはママのママ、英国人の祖母のこと、二人だけの呼び名だ。
おばあちゃんの家に向かう車の中で、まいは2年前を思い出す。中学に入ったばかりのころ、学校に行けなくなったまいは、おばあちゃんの家ですごすことになった。おばあちゃんは魔女の血筋で、物事の先を見通す能力を持つのだそうだ。まいも魔女になれる?さっそく魔女修行が始まった。「早寝早起きをすること、しっかり食事をとること、規則正しい生活をすること・・・」そして「なにごとも自分で決めること」。


(c)2008「西の魔女が死んだ」製作委員会

原作は、発表後100万部にせまるロングセラーの児童文学作品。梨木香歩さんはこのほかの著作でも、おばあちゃんと孫娘の交流を描いています。
清里に建てられた家は、キッチンもベッドルームもほんとうに居心地が良さそうです。ハーブの畑や林の中のまいのお気に入りの場所など、訪ねていきたくなります。なによりおばあちゃんを演じたサチ・パーカー(シャーリー・マクレーンの娘)が役にぴったりでした。子どもののころ10年住んでいて覚えたという綺麗な日本語と、丁寧なセリフまわし、おだやかな物腰。よくキャスティングしてくれました。母娘孫と続くいのちを縦糸に、まいの成長や自然のきらめきを横糸に織り込んでいったような一品でした。(白)

2008/日本/カラー/1時間55分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/
http://nishimajo.com/
2008年6月21日(土)、恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館 ほか、全国一斉ロードショー

★本誌73号に柘植プロデューサーのインタビューが2p掲載されています

●公式ブログができました。おばあちゃんの思い出やシナリオちょこっと紹介など。 http://blogs.yahoo.co.jp/nishimajo_movie/

●「おばあちゃんの家」が5月17日(土)より公開されています。
詳しくはこちら http://blogs.yahoo.co.jp/nishimajo_movie/7321577.html

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ONE CALIFORNIA DAY

監督・脚本・カメラ・プロデューサー:ジェイソン・バッファ&マーク・ジェレミアス
ナレーター:デヴォン・ハワード
出演:ジョー・トム・カレン、ランス・カーソン、スキップ・フライ、ジミー・ガンボア、タイラー・ハジーキアン、デヴォン・ハワード、アレックス・ノスト、ジョエル・チューダー、ザ・マロイ・ブラザーズ、ジェド&グレッグ・ノール、デイン・バーリー、タイラー・ウォレン

スクリーンいっぱいに広がる美しい波、また波。そして、サーファーたちの超絶テクニック。 サーフ・カルチャーの側面から、カリフォルニアの魅力を、再発見させてくれるドキュメンタリー映画。

カリフォルニアの海岸線のサーファーたちを魅了するポイント7ヶ所を、サーファーの生き方を織り交ぜて語りかけてくれます。
サンディエゴ、セントラルコースト、オレンジ・カウンティー、マリブ、サンタバーバラ、サンタクルーズ、そしてサウスベイと、行く先々でサーフィンとともに生きるライフスタイルがエネルギッシュに描かれています。『エンドレス・サマー』、『ステップ・イントゥ・リキッド』など数々のサーフィン映画のある中で、この映画の素晴らしい点は、工房、手作り職人にも焦点をあてていることです。太陽の下で、波を楽しんでいる人生・・・うらやましいの一言です。(美)

2007年/アメリカ/カラー/96分/ビスタ/
2008年6月21日より、渋谷シネクイントにてレイトショー

屋敷女

監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ 脚本:アレクサンドル・バスティロ 出演:ベアトリス・ダル、アリソン・パラディ、ナタリー・ルーセルほか

雨の日、妊娠中のサラは夫を助手席に乗せて車の運転をしていた。突然、激しい衝撃が彼女を襲う。車は大破し、夫は即死した。
4ヶ月後のクリスマス・イブの夜。奇跡的に母子共に一命を取り留めたサラは、出産予定日を翌日に控えていた。夫を亡くした悲しみが蘇るが、翌日のために早く休もうと思ったその時、誰かが家を訪ねてきた。ドアの外には見知らぬ女が立っていて、電話を貸して欲しいという。サラは断るが、女は執拗にドアを開けて欲しいと頼む。次第に態度は強硬になり、とうとう窓を割って進入しようとまでする。恐怖を感じたサラは警察を呼び、それを察した女は姿を消した。警察がきて周囲を調べるが女の姿はなく、夜中にまたパトロールに来ると約束して引き上げていった。不安を抱えたまま床についたサラは、悪夢にうなされ目を覚ます。ところが目を開けて見たものは、まさに悪夢の光景だった。

あまりに痛くて、おぞましい展開に、久しぶりにマジ怖かったです。謎の女を演じるのは『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のベアトリス・ダル。ジト〜っとした情念の固まりみたいな女がはまりすぎです。サラ役のアリソン・パラディはヴァネッサ・パラディの妹だそうです。あぁ、げに恐ろしきは女の執念。絶対に妊婦さんは観ない方がいいです。(梅)

2007年/フランス/カラー/ヴィスタサイズ/83分/フランス語
提供:キングレコード
配給:トルネード・フィルム
宣伝:B.B.B.Inc.

公式 HP >> http://www.cinemacafe.net/official/yashiki-onna/

★6月21日(土)より、ライズXほか全国ロードショー

ハブと拳骨

監督:中井庸友
原案・クリエイティブ・ディレクター・音楽:田中雄一郎
出演:尚玄、虎牙光揮、宮崎あおい、石田えり ほか

ベトナム戦争時、米軍占領下の沖縄で、良は米軍の物資を横流しして小遣いを稼ぎ、時にはバーで三線と歌を披露する気楽な生活をしている。兄の銀と妹の杏は戦争孤児で血はつながっていないが、母のカミィは分け隔てなく愛情を注ぎ、3人は本当の兄弟のように仲がいい。銀は喧嘩がめっぽう強く、地元のヤクザの用心棒のようなことをしている。カミィと杏は沖縄そばの店をやっている。
ある日、カミィが米軍のトラックにひき逃げされ、足に重傷を負う。警察は米軍に対して何も出来ず、泣き寝入りするしかない。その上、米軍か本土の病院に行かなければ、歩けなくなるだろうと言われるが、そんな金はどこにもなかった。焦った良がとった行動は、一家をさらなる窮地に追い込む。

日本にもアメリカにも邪険に扱われてきた沖縄の恨みと哀しみを込めつつ、それでも明るく、たくましく生きる家族の絆を描いています。原案の田中雄一郎さんは、前作『殴者』では闘うことで生きる実感を得ようとする格闘家を描いていました。その格闘家を演じた虎牙光揮さんが、今回は好きではないけど喧嘩がめっぽう強く、暴力の世界でしか生きられない男を演じています。前回は背中に”気合い”をしょっているようでしたが、今回は”悲哀”をしょっています。(梅)

2006年/日本映画/35mm/ビスタ/モノラル/124分
配給:ナインエンタテインメント、アルゴピクチャーズ
宣伝:アルゴ・ピクチャーズ

公式 HP >> http://www.habugen.jp/habugen/

★6月21日(土)よりユーロスペース、新宿K's cinemaにてロードショー

ミラクル7号(原題:CJ7 長江7号)

監督・脚本:チャウ・シンチー
脚本:ヴィンセント・コクほか
撮影:プーン・ハンサン
プロダクション・デザイナー:オリヴァー・フォン
音楽:レイモンド・ウォン
出演:チャウ・シンチー(ティー)、シュー・チャオ(ディッキー)、キティ・チャン(ユエン先生)、ラム・ジーチョン(ボス)、リー・ションチン(カオ先生)、ホアン・レイ(ジョニー)ほか

小学生のディッキーは父ティーとの二人暮らし。チョー貧乏だが、実直なティーの座右の銘は「嘘をつかない、ケンカしない、一生懸命に勉強すれば貧乏でも尊敬される」だ。学のないティーは、ディッキーには最高の教育を、と有名私立小学校へ無理をして通わせている。しかし、お金持ちの子供たちばかりの中で、ディッキーは人知れず苦労をしていた。運動靴はボロボロで体育の授業にも参加させてもらえない。
ある日、いじめっ子のジョニーが見せびらかしたおもちゃ「ミラクル1号」がほしくてたまらないディッキーは、デパートで初めて駄々をこねる。きつく叱ってしまったティーは、ゴミ捨て場で見つけた緑のボールをディッキーのお土産にする。実は謎の宇宙船が残していった不思議な生命体だった。


『カンフーハッスル』で香港映画最大のヒットを飛ばしたチャウ・シンチーの最新作。監督・主演でダメ男の再生・復活ストーリーが続きましたが、この作品は初めて子供が主人公となりました。若い頃に繰り返し観た『E.T.』のような映画が作りたかった、のだそうです。どこかで見たようなシーンが集まっているのは、香港の監督お得意のパロディ。
主人公のディッキーを女の子のシュー・チャオが演じているのが話題になりましたが、そればかりではありません。ほかの男の子二人も女の子が、そしてディッキーに心を寄せる女の子を男性が演じています!子供の演技の達者なのに驚きました。
CGを駆使してできあがった地球外生命体の「7(ナナ)ちゃん」は、つぶらな目が可愛いです。シンチー監督にしては毒の少な〜い、お子様と一緒に楽しめる映画。(白)

2008/中国/カラー/98分/スコープサイズ/SRD・SR/広東語
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.sonypictures.jp/movies/cj7/
6月28日(土)〜シネマスクエアとうきゅうほか全国ロードショー

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告発のとき(原題:IN THE VALLEY OF ELAH)

監督・脚本:ポール・ハギス(『クラッシュ』)
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:ジョー・フランシス
音楽: マーク・アイシャム
出演: トミー・リー・ジョーンズ(ハンク・ディアフィールド)、 シャーリーズ・セロン(エミリー・サンダース) 、スーザン・サランドン(妻ジョアン)、 ジャームズ・フランコ(カーネリー大佐)、ジョナサン・タッカー(息子マイク)、ジェイソン・パトリック(カークランダー警部補)、フランシス・フィッシャー(エヴィ)、ショーン・ヒューズ(オシャ−大佐)、メカッド・ブルックス(ロング)、ジェイク・マクラフリン(ボナー)ほか

2004年11月1日、ハンク・ディアフィールドに息子のマイクが軍から失踪したとの連絡が入った。マイクはイラクから帰還したばかりで、妻ともども再会を心待ちにしていたところ。無許可離脱などあり得ない。ハンクはかつて軍警察におり、自ら息子の行方を捜すために基地へ向かった。 地元警察の女性刑事エミリー・サンダースの助けを得て、捜査を続けるうちマイクの焼死体が発見される。ひとつひとつの事実を追ううちに、衝撃的な真実が明らかになっていく。

数々のすばらしい脚本を書いたポール・ハギスの最新作。加えてアカデミー賞常連の俳優陣により、観終わった後、胸にずっしりとくる作品でした。前回の『父親たちの星条旗』 (2006・脚本)、『硫黄島からの手紙 』(2006・製作総指揮 /原案)と違って直接戦争を描く場面はとても少なく、それもノイズまじりで判然としません。また60年も前の話でなく、2003年7月に起こった米兵による殺人事件が元になっています。戦争は生き残った者にも大きな傷を負わせ、今アメリカにいる多くの帰還兵が心に傷を負ったままであることをこの映画は「告発」していました。
原題の「IN THE VALLEY OF ELAH」は旧約聖書に登場する「エラの谷」のことで、巨人ゴリアテと少年ダビデが戦った場所です。このエピソードと星条旗が象徴的に出てきますので、ご注意くださいね。(白)

2007/アメリカ/カラー/シネスコ/DTS/121分/PG−12
配給:ムービーアイ
http://www.kokuhatsu.jp/

(c) 2006 Elah Finance V.O.F.
6月28日(土)より、有楽座ほかTOHO系にてロードショー

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マーキュリーマン

監督・脚本:バンデッド・ソンディ
製作:プラッチャヤー・ピンゲーオ
製作総指揮:ソムサック・デーチャラタナプラスート
アクション監督:パンナー・リットグライ
出演:ワサン・カンタウー(チャーン),メティニー・キンパヨーム(アリーナ),アノン・サーイセンチャン(ウサマ),パリンヤー・ジャルーンポン(グレース)、ジンウィパー・ゲーウガンヤー(プニマ)ほか

刑務所に収監されていたテロリスト、ウサマ・アリが手下によって脱獄を果たした。
同じころ、チベットでは古代から伝わる秘宝「月の護符」がウサマの右腕アリーナに奪われていた。
二つの護符を合わせると強大なパワーを持つことができるのだ。
しかし、ウサマが逃げる際にウサマの持つ「太陽の護符」は、正義感あふれる消防士チャーンの体内に吸収される。
身体の変化にとまどうチャーンのもとを「月の護符」の守護者のプニマが訪れ、護符の力を自在にコントロールするため精神を鍛えなければならない、と伝える。ウサマの一味は、太陽の護符を取り戻そうと、チャーンの身辺に迫っていた。


(C)2006 SAHAMONGKOLFILM INTERNATIONAL CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

『マッハ!』(‘03)の制作コンビが新進の監督を迎えて、超人ヒーローを作り上げました。アクション監督はトニー・ジャーの師匠のパンナー・リットグライ。ただし主演のワサン・カンタウー、メティニー・キンパヨームの二人は元モデル。戦う場面はほとんどスタントマンとおぼしき二人をすごいカットで繋いでいて、これがめまぐるしい。グレース役のパリンヤー・ジャルーンポンは元ムエタイ選手、プニマ役はテコンドーの名手ということで、それぞれのアクションが見られます。テロリストのウサマが不思議な雰囲気でしたが、人気バンドのボーカルでもあるそうで納得です。
チャーンがマーキュリーマンに変身してからは、ほかのヒーローものと似たような活躍ぶりで話があっちこっちへ飛びますが、これがやりたかったんだろうな、と(ほかと温度差がある)思えます。タイ語のやさしい響きは悪人の台詞や緊迫したシーンにあんまり似合いませんが、アクションは香港だけではない!と気を吐いています。(白)

2006/タイ/カラー/35mm/ビスタサイズ/106分
配給:アートポート

公式 HP >> http://www.mercuryman.jp/

★6月28日(土)より銀座シネパトス他にてロードショー

SHARKWATER ー シャークウォーター 神秘なる海の世界 ー

監督・脚本・撮影・制作:ロブ・スチュワート
水中撮影:ロブ・スチュワート、ダディ・ハンナ
編集:マイケル・クラーク、リック・モダン、チャック・ミラー、ジェレミー・スチュワート
音楽:ジェフ・ロナ

サメとサメの住む海域を驚くほど美しい映像でとらえ、現在の海洋生物保護について考えさせてくれるドキュメンタリー作品です。
監督のロブ・スチュワートは子どもの頃にサメの姿を間近で見て以来、その美しさに魅せられてしまいました。スキューバダイビングの資格を取得し、海洋生物学や動物学を学び、撮影技術を学んで、野生動物撮影のエキスパートになって、ディスカバーチャンネルやBBCといった世界中のメディアに映像を提供してきました。彼の願いは一つ。世界中の人々のサメに対する誤解を解いて、急速に減少するサメを保護したいということ。

サメはどう猛で人を襲うというのはメディアが作り上げた虚像で、本当はサメの方が人間を怖がっているのです。それなのに、サメは人間に憎まれ、疎まれて、次々に殺されてきました。なんだか、似た話を聞いたことがありますね。そう、陸上ではオオカミがそうでした。その結果、日本のオオカミは絶滅し、世界的にも絶滅の危機にあります。サメも過去50年で90%も減少しているのだそうです。もしも生態系の頂点にいるサメが絶滅したら、地球環境全体への影響は計り知れないと心配されています。

また、映画は監督がサメを追って保護海域を撮影していたときに出会った、サメの密漁船によってトーンが変わっていきます。現在、サメは巨大な利益を生むフカヒレ産業のために、乱獲されますます減少しています。その漁の方法の酷いことと言ったらもう・・・。監督はコスタリカで危険を冒してサメを密漁する台湾マフィアの実態に迫り、大変なトラブルに巻き込まれていくのです。このあたりはスリル満点。
ところで、監督が同行する自然動物保護団体は、日本でもその過激な行動で有名なシーシェパードです。しかしここでは、ニュース映像でみるだけではわからない、違った側面が映っていて興味深いです。(梅)

2006年/カナダ/89分/カラー
提供:レイドバック コーポレーション
配給:グラッシィ
宣伝:アムモ

公式 HP >> http://www.glassymovie.jp/sharkwater/

★6月28日(土)より渋谷Q-AXシネマにてモーニング・レイトショー

香港レジェンド・シネマ・フェスティバル

かつてのショウ・ブラザーズ作品から、今世界で最も精力的に創造性溢れる作品をとり続けている監督、杜[王其]峰(ジョニー・トー)の日本未公開作品や、新作『ミラクル7号』の公開も間近な周星馳( チャウ・シンチー)出演の日本未公開作品など、全13作品が上映されます。
夜の上映には、トークショーもあります。香港映画ファンは集結せよ!

日程: 6月28日(土)〜7月4日(金)
会場: シアターN渋谷  (03-5489-2592)
主催: 香港レジェンド・シネマ・フェスティバル実行委員会
チケット: 6月7日(土)より、チケットぴあにて独占発売開始! 作品別・日時指定 前売り券:¥1,300(税込)  当日券:¥1,500均一

裸足のクンフーファイター
 原題:赤脚小子 The Bare-Footed Kid 1993年・香港・日本未公開
ファイヤーライン
 原題:十萬火急 Lifeline 1997年・香港・日本未公開
チャウ・シンチーのゴーストバスター
 原題:回魂夜 Out Of The Dark 1995年・香港・日本未公開
冷血十三鷹
 原題:冷血十三鷹 The Avenging Eagle 1978年・香港・日本未公開
空とぶギロチン
 原題:血滴子 The Flying Guillotine 1975年・香港・日本未公開
チャウ・シンチーのゴーストハッスル
 原題:師兄撞鬼 Look Out, Officer! 1990年・香港・日本未公開
チャウ・シンチーの熱血弁護士
 原題:審死官 Justice, My Foot 1992年・香港・日本未公開
武侠怪盗英雄剣・楚留香
 原題:楚留香 Clans Of Intrigue 1977年・香港・日本未公開
ヒーロー・オブ・クンフー裸足の洪家拳
 原題:洪拳小子 Disciples Of Shaolin 1975年・香港・日本未公開
残酷復讐拳
 原題:殘缺 Crippled Avengers 1978年・香港・日本未公開
液体人間オイルマン
 原題:油鬼子 Oily Maniac 1976年・香港・日本未公開
香港ラバーズ 男と女
 原題:男與女 Hongkong Hongkong 1983年・香港・日本未公開
唐朝エロティック・ストーリー
 原題:唐朝豪放女 An Amorous Woman Of Tang Dynasty 1984年・香港・日本未公開

※すべてDLP上映
上映スケジュールの詳細は公式HPをご覧下さい

公式 HP >> http://hk-lcf.com

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歩いても 歩いても

監督:是枝裕和
企画:安田匡裕
原作・脚本・編集:是枝裕和
撮影:山崎裕
美術:磯見俊裕・三ツ松けいこ
音楽:ゴンチチ
出演:阿部寛(横山良多)、樹木希林(とし子)、夏川結衣(ゆかり)、原田芳雄(恭平)、 YOU(ちなみ)、高橋和也(信夫)、田中祥平(あつし)、寺島進(小松)ほか

-- 人生は、いつもちょっとだけ間にあわない? --

横山良多は40歳になる絵画修復士。兄の命日に久しぶりに実家を訪ねるところだ。開業医だった父とはそりが合わず、失業中なのを妻のゆかりに口止めする。ゆかりは前夫と死に別れ、息子のあつしを連れて良多と再婚した身。いまも良ちゃんと呼ぶ息子に「今日だけでいいからパパと呼んだら」と頼んでいる。先に家族4人で来ていた姉ちなみは、母のとし子を手伝って料理の準備中。家を改築して同居しようと提案しているが、良い返事がもらえない。
仕事をやめて以来、家に居場所のない父は元の診察室にこもってばかりいる。好物のてんぷらの揚がる音にようやく食卓にやってくる。

是枝裕和監督『花よりもなほ』から2年ぶりの新作。横田家のほぼ一日を描いたホームドラマです。
短い台詞がリアルです。ことさら説明するでもなく、何げないシーンの積み重ねと短い言葉で、家族のありようや心の底を見せるのです。ものすごくこだわってるはずなのに、窮屈さがありません。監督も脚本も俳優もうまい!!
期待していた長男を事故で亡くした両親、兄と父への複雑な気持ちを抱える次男、再婚したその妻と連れ子、屈託のない姉家族、誰かに自分の気持ちが重なります。頑固な父親にふき出し、大人の気遣いをみせるあつしくんにほろりとします。
老夫婦が過ごしてきた家のたたずまいに(実際のお医者さまの家を使っています)、父の仕事に寄せる気持ちがわかります。子どもたちが巣立った後の部屋など、どこもこうでしょう。人は生きて死んでいかねばならず、残るのも先立つのも切ないですが、誰かのどこかに小さな繋がりが残っていくのだと、今更ながら思います。亡くなったお母さんに「何もしてやれなかった」という後悔から、この映画が出発したと監督が書かれていますが、たぶん残った者はみな(私も)そう思うのです。
母とし子が腕を振るう料理が美味しそうです。からっぽの状態で見るとおなかが鳴りますよ。(白)

2007/日本/カラー/114分/1:1.85/ドルビーSR
配給:シネカノン

公式 HP >> http://www.aruitemo.com/index.html

★6月28日(土)よりシネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館他 全国順次ロードショー

バグズ・ワールド

監督・脚本:フィリップ・カルデロン、ギィヨーム・ヴィンセント
キャスト:オオキノコシロアリ、サスライアリ、ハゲワシ、カメレオン

アフリカのブルキナファソの大地には、オオキノコシロアリの”城”が立ち並ぶ。そこから飛び立った無数の王と女王候補の羽アリたちは、伴侶を見つけると新たな城を築き始める。女王アリはひたすら卵を産み続け、生まれた働きアリたちは、ひたすらにそれぞれの役目を果たし、難攻不落の城は築かれていく。ところが、嵐の日、落雷による倒木が城を直撃し、大きな被害を受けてしまう。
その頃、少し離れた森林をサスライアリの隊列が行進していた。彼らが通った後には、小さな生物は一掃されるほど、どう猛な集団だ。その彼らの行く先には、修復に追われるオオキノコシロアリの城があった。サスライアリの軍団は猛攻撃を開始する。

CGではありません。本物のアリたちのミクロの世界を描いています。アリたちの生態を紹介しつつ、利用して壮大な戦争映画を作り上げているのです。オオキノコシロアリはいわば農耕民族で、巨大な巣の中に一大帝国を築いています。そこに狩猟民族であるサスライアリが攻め込んできて、死闘を繰り広げます。その戦いの様子たるや『グラディエイター』か『エイリアン』かといった迫力。いつの間にか「シロアリがんばれ!」と応援してしまいます。(梅)

2006年/フランス/35mm/カラー/ビスタ/ドルビーSRD/82分
配給:エイベックス・エンタテインメント、トルネード・フィルム
宣伝:フリーマン・オフィス

公式 HP >> http://www.cinemacafe.net/official/bugsworld/

★6月28日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか、全国ロードショー

庭から昇ったロケット雲(原題:THE ASTRONAUT FARMER)

監督:マイケル・ポーリッシュ
脚本:マーク・ポーリッシュ&マイケル・ポーリッシュ
製作:マーク・ポーリッシュ、ポーラ・ワインスタイン、レン・アマト、マイケル・ポーリッシュ
撮影:M.デヴィッド・ミューレン
美術:クラーク・ハンター
音楽:スチュアート・マシューマン
エンディング・テーマ:「ロケットマン」エルトン・ジョン
キャスト:
  ビリー・ボブ・ソーントン(チャーリー・ファーマー)
  ヴァージニア・マドセン(チャーリーの妻オーディ)
  ブルース・ダーン(オーディの父)
  ティム・ブレイク・ネルソン(チャーリーの友人で弁護士)
  マックス・シェリオット(チャーリーの息子)
  某ハリウッド大スター(マスターソン大尉)

かつてはNASAで宇宙飛行士だったチャーリー・ファーマーは、 宇宙にいく前に父親の死で、急遽、家業の農場を継ぐことになった。 しかしファーマーは諦めなかった。自分で作ったロケットで自分の農場から宇宙へ行くと誓ったのだ。
彼の夢をを支えるのは妻のオーディと三人の子ども達。 世間から様々な妨害にあいながらも懸命に頑張るファーマーだが、 本当に宇宙に行くことが出来るのだろうか…。


(C)2005 Warner Bros. Entertainment Inc.

ポーリッシュ兄弟といえば、数年前の東京国際映画祭に来日した時のことを思い出します。あの時は『ツィン・フォールズ・アイダホ』で、兄弟監督はわかりやすく撮影の裏話などを、 実演をまじえて、トークを楽しませてくれました。
この作品も、時間軸があっちこっちせず、とてもわかりやすく、そして感動的に作られています。きっと小学高学年以上でしたら理解できます。
しかし、すさまじいシーンがありました。ロケット発射に失敗したのです。上に昇らず横に発射したんです!大袈裟な話でなく、村全体が消滅するぐらいの破壊力で、一体何人お亡くなりに…、
でも実話じゃなくてよかった!と胸を撫で下ろしました。(美)

でも、聞くところによると、アメリカでは2009年に弾道飛行用宇宙旅客機が就航する予定だそうです。
すっごく勇気があって、すっごくお金持ち以外は、この映画でいち早く宇宙旅行を楽しんでください!もちろん!ハラハラドキドキ付きですよ。

〓可愛い女の子二人は、監督さんそれぞれのお嬢さん。
〓某ハリウッド大スターとは『ファーストフード・ネイション』にも登場。

2007年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/104分/
配給:デスペラード

http://www.rocket-gumo.jp/

7月5日(土)、日比谷シャンテシネ、シネマート新宿他全国順次ロードショー

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バックドロップ クルディスタン

監督・撮影:野本大(のもと まさる)
撮影:山内大堂、大澤一生
制作・編集:大澤一生
出演:カザンキラン一家ほか

2004年、映画学校の学生だった野本監督は、クルド難民のカザンキラン一家と知り合いました。国連大学前で72日間座り込みを続けた姿を、「一番近くにいた傍観者」として撮影し続けます。一家はUNHCR(国連難民高等弁務官)からマンデート難民認定は受けましたが、日本政府からの認定は受けられませんでした。2005年1月、父親と長男はトルコへ強制送還され、残った家族は後日第3国へ出立します。
難民の厳しい現実を初めて知った野本監督は、学校を中退し映画の完成を目指します。しかし疑問が何一つとけていないのに気づきトルコへ旅立ち、それまでに抱いた疑問を解消すべく、トルコ国内を巡ります。


知らなかったことを素直に知ろう、と踏み出す一歩、それを続けた監督の熱意。クルド人家族の愛情。日本ってこういう国なの?という発見etc。様々なことに心がゆさぶられました。3年をかけて完成したドキュメンタリー作品。(白)

この作品は、日本に住むトルコのクルド難民と知り合った24歳の監督が、彼らの姿を追ったドキュメンタリーです。

クルド難民のカザンキラン一家と出合った野本監督は、難民認定を求めて国連大学前で座り込みを続ける一家の姿を撮影し始めます。国連から難民と認定されたのに、一家のお父さんと長男が強制送還され、他の家族も日本での在住を認められず、第3国へ出国してしまいます。監督は、彼らがなぜ難民となったのかを知るため、彼らの後を追いトルコやニュージーランドへも取材し、この作品を仕上げました。映画学校の卒業制作にと思って撮り始めた監督ですが、企画会議で落選してしまい、撮影を続行するため学校を辞めて撮影を続け、3年かけて完成させたそうです。

この作品を通して、あまりに理不尽な日本政府の難民政策が見えてきます。
そして、人の苦難に無関心な日本人の姿も…。
「難民を装って日本に来る人たちもいるから難民認定が厳しくなるのもしょうがない」という人もいますが、映画のパンフによると、トルコのクルド難民で日本政府から難民と認定された人はまだ誰もいないそうです。ほんとにそうなのでしょうか。だとしたら、難民に認定された人もいない状態なのに、そういう風に言うのは、あまりに悲しいことではないでしょうか。

若い監督の作品なので経験不足な面もありますが、彼らと誠実に向き合い、一生懸命作った作品だと思います。プロデューサー、編集の大澤一生さんと二人三脚での仕事ぶりに初々しさを感じ、日本の若者も捨てたもんじゃないと、心強く思いました。
ぜひぜひ、いろいろな人に見てもらいたい。(暁)

2007山形ドキュメンタリー映画祭 アジア千波万波部門 「市民賞」「奨励賞」受賞
毎日映画コンクール「ドキュメンタリー映画賞」受賞

2007/日本/カラー/DV/102分/日本語・トルコ語/
製作・配給・宣伝:バックドロップ・フィルム

http://www.back-drop-kurdistan.com/
7月5日(土)より ポレポレ東中野にてロードショー

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純喫茶 磯辺

監督・脚本・編集:吉田恵輔
テーマ曲:「男の滑走路」クレイジーケンバンド
出演:宮迫博之、仲里依紗、濱田マリ、近藤春菜(ハリセンボン)、麻生久美子 ほか

裕次郎は妻が家を出て行って以来、娘の咲子と二人で暮らしてきた。そんな彼の元に死んだ父の遺産が転がり込む。ある日、喫茶店で若い女の子といちゃつくマスターの姿を見た裕次郎は、自分も喫茶店のマスターになろうとひらめいた。それからはとんとん拍子にことはすすみ、「純喫茶 磯辺」がオープンする。娘の咲子は、父の無計画ぶりも、喫茶店のダサさも信じられない。オープンした店には、バイトの美女・素子への下心か、怪しげな常連客が入り浸る。素子に下心アリアリなのは裕次郎も同じ。素子の方もまんざらでもなさそうで、咲子のイライラは募るばかり。

出てくる人物の誰一人としてかっこよくない。いい加減で、へたれで、自分勝手で。でも、なぜか憎めない。みんな、それなりに一所懸命で、痛い思いを抱えつつ、幸せになりたいと願っているのがわかるから。吉田監督は前作『机のなかみ』に続き、痛いけど可笑しい人間関係を絶妙に描いています。このイタキモに近い感覚、クセになります。
宮迫博之は『蛇イチゴ』以来、6年ぶりの映画主演。彼を筆頭に、役者陣みんな間がいいですねぇ。そして誰より麻生久美子がこれまでとは全く違った役柄を演じていて、そのワケのわからなさが最高です。(梅)

2008年/日本映画/ビスタ/カラー/DTSステレオ/113分
製作:「純喫茶磯辺」製作委員会
配給:ムービーアイ

公式 HP >> http://www.isobe-movie.com/

★7月5日(土)、テアトル新宿+渋谷シネ・アミューズほか全国ロードショー

BUG バグ

監督:ウィリアム・フリードキン
脚本:トレイシー・レッツ
撮影:マイケル・グレイディ
プロダクション・デザイン:フランコ・カルボーネ
音楽:ブライアン・タイラー
出演:アシュレイ・ジャッド(アグネス)、マイケル・シャノン(ピーター・エバンス)、リン・コリンズ(R.C)、ハリー・コニック・Jr(ジェリー・ゴス)ほか

アメリカのオクラホマ州。レストランバーで働き、モーテルに一人で住むアグネスは、毎日のようにかかる無言電話に悩まされている。服役して最近仮出所した夫のジェリーではないかと思うが、暴力を振るう彼とよりを戻す気はない。一人息子は6歳のときに行方不明になってもう10年になる。仕事仲間のR.Cが連れてきたたピーターにどことなく共通点を感じ、一晩だけ泊めることにした。朝目覚めると夫のジェリーが戻っていて、拒絶するアグネスを殴って現金を持ち出して行った。不安なアグネスはピーターに一緒にいてくれるよう頼み、ベッドを共にするが、そのときから「虫(バグ)」の存在を感じ始める。ピーターはアグネスに秘密を打ち明けた。軍によって体に「虫」を埋め込まれたというのだ。


ポスターの感じから、ホラーかな?と想像して観始めました。子どもをなくして、DV夫に怯えるアグネス。あれ、家族劇かと思ってるうちに、秘密めいた男ピーターの出現。このマイケル・シャノンの表情が変化していくのにご注目。ピーターが秘密を打ち明けてから、アグネスがピーターにひきずられていき、どんどんテンションが高くなっていきます。狂気からくる妄想なのか事実なのかわからないまま、アグネスの錯乱にまきこまれそうになります。後半モーテルの部屋の中だけのやりとりに、なんだか前衛劇を観ているような気分になりました。後でプレスを読んだら、元はオフ・ブロードウェイの舞台劇でした。今回脚本のトレイシー・レッツが戯曲を書いています。見方を変えればラブストーリーでもあります。(白)

2007/アメリカ/カラー/102分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/R-15
配給:ブロードメディアスタジオ

公式 HP >> http://www.bugmovie.jp/

★7月5日(土)〜 シアターN渋谷ほかにてロードショー

レッドライン(原題:RED LINE)

監督:アンディ・チェン
製作:ダニエル・サデク
撮影:ビル・バトラー
出演:ナディア・ビョーリン(ナターシャ)、ネイサン・フィリップス(カルロ)、アンガス・マクファーデン(マイケル)、ティム・マシスン(ジェリー)、エディ・グリフィン(インフェイマス)、ジェシー・ジョンソン(ジェイソン)ほか

アメリカ西海岸の公道での違法なレースに、多額の金をかけている金持ちたちがいる。そのドライバー、ジェイソンの兄カルロがイラクから戻ってきた。出かけたクラブで、カルロは男にからまれているナターシャを助けた。歌手志望の彼女の父親はレーサーで事故死していた。たぐいまれなドライビングテクニックを持っているナターシャは、賭博レースの常連インフェイマスの策略で、ジェイソンと同じレースに出場することになってしまった。


監督の名前が中華系だなと思っていたら、ジャッキー・チェンのスタントマン協会に所属のスタント出身の方でした。初監督作品。アクションシーンの指導もやったのかも。公道レースや競技場で大破する車はCGではなく、本当に高価な車がぶつかっているのだそうです。もったいない!カーマニアであるプロデューサー、ダニエル・サデクがコレクションをこの撮影のために提供したのだとか。車、スピード、ギャンブルに美女とサービス満点(香港テイスト)の作品です。(白)

2007/アメリカ/カラー/95分/ドルビーデジタル/シネマスコープ/
配給・宣伝:プレシディオ
http://red-line-movie.jp/

7月5日(土)〜丸の内プラゼール系にて全国公開

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クライマーズ・ハイ

監督:原田眞人
原作:横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文春文庫刊)
脚本:加藤正人/成島出/原田眞人
出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子、高嶋政宏、山崎努

1985年8月12日夕刻、大阪発の日航ジャンボ機が消息を絶った。墜落したのは、群馬か長野か? 群馬の地元有力紙、北関東新聞社の社内は騒然となる。ワンマン社長・白河頼三が、航空機事故の全権デスクに任命したのは、遊軍記者・悠木和雅(堤真一)。悠木は翌朝、販売局所属の無二の親友、安西(高嶋政宏)と谷川岳衝立山登頂に挑戦すべく約束していたが、連絡も取れないままに、墜落事故報道の社内統率をはかることになる。現場に急行する県警キャップ・佐山(堺雅人)と神沢(滝藤賢一)。必死の思いで電話のあるところまで下山し、事故現場の凄惨な様子を伝えるも、印刷締め切りが早まっていて間に合わない。一方、女性記者・玉置千鶴子(尾野真千子)は、事故原因調査委員の中に大学の恩師がいるのを知り、佐山と共にスクープを狙って動く。

 
(C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ」

毎日各部の責任者が集まって行われる会議。トップ記事は? スクープは? 加熱する全国紙との報道合戦の一方、社内の力関係や妬みで苛立ちも沸騰点に。極限状態の中で、全権として何を報道すべきかの判断を迫られる悠木。ジャーナリストとしての倫理観を考えさせられる場面である。

クライマーズ・ハイとは、登山時に興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態。作家・横山秀夫が、地元紙の社会部記者時代として体験した壮絶な日航機事故報道現場を元に書き上げた「クライマーズ・ハイ」を、『突入せよ!「あさま山荘」事件』に続き、実録スタイルで描いた原田監督。新聞社の1フロアーに存在する50人すべて、俳優一人一人が部署と名前を与えられ、その職務に従って「働いて」いる。カメラアングルに入っているかどうかは関係なく、皆が動いているところが面白い。

原作では男性だった玉置という目立たない記者を女性にしたのは、1985年という年が男女雇用機会均等法の制定された年で、監督はそういう背景の中で頑張る女性を登場させたかったのだという。今から思えば、女性が男と肩を並べて働くことがようやく社会の枠組みとして認められた時期だった。実態はともかく。

事故の日から、もう23年。あの日、延々と読み続けられる犠牲者の方の名前を暑い部屋で聞いていたことを、つい昨日のことのように思い出す。あの日を境に520名の方の家族の運命も変わったのだと思うと、なんともいえない思いにかられる。けれども、家族を亡くすということは、誰しもが経験すること。それがこうした事故という状態で起こることもあるということを思い、家族や友達との一日一日を大事にしたいと、今また思う。(咲)

製作プロダクション:ビーワイルド
配給:東映×ギャガ・コミュニケーションズ Powerd by ヒューマックスシネマ

2008/日本映画/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/145分

公式 HP >> http://climbershigh.gyao.jp/

★7月5日(土)より、丸の内TOEI (1) ほか全国にてロードショー!!

特別記事『クライマーズ・ハイ』記者会見報告もご覧下さい。

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ツール・ド・フランス特集上映

地球上で最も過酷なスポーツイベントと言われるツール・ド・フランス。今年も7月5日に開幕し、世界中から集まった自転車ロードレースチームの男たちが、フランスの大自然を舞台にスピードと忍耐力を競い合っています。TVでは放送されることのない、ツール・ド・フランスの知られざる真実を描いた3本が一挙上映されます。

『ツアー・オペレーター/知られざるツール・ド・フランス』
監督:ジャン・クリストフ・ロゼ
出演:ランス・アームストロング、デイヴィッド・ミラー、他

2000年のツール・ド・フランス。チーム「コフィディス」の栄光と敗北を、併走するツアー・オペレーターの視点で追う。大観衆の前では颯爽と走り去る選手たちが、オフで見せる葛藤や苦悩。いかに過酷なレースなのかを思い知ります。かたや、かつて選手として走った老人が、昔を懐かしみながら選手たちを待ち構え、水を配ろうとする姿がなんともいい。(咲)
2001年/フランス/100分/フランス語・英語・イタリア語
提供:J SPORTS、アップリンク

『ツール・ド・フランス オフィシャル・ヒストリー1903-2005』
出演:エディ・メルクス、グレッグ・レモン、ランス・アームストロング、他

1903年から2003年までのツールの歩んだ歴史をパリ〜ニースで前人未到の7連勝(1982-1988)を遂げた名選手ショーン・ケリーが解説。ツール黎明期の映像やエディ・メルクス、グレッグ・レモン、ランス・アームストロングなど選手へのレース直後のインタビューなどを織り交ぜながらその歴史を綴る。次々に誕生する偉大なチャンピオン、臆することなく挑むライバル。100年以上にわたるツールの多彩にして驚くべき歴史を一気に描き出す。

2003年/イギリス/114分/英語
提供:J SPORTS 

『マイヨ・ジョーヌへの挑戦 ツール・ド・フランス100 周年記念大会』
監督:ペペ・ダンカート/ヴェルナー・シュヴァイツァー
出演:ランス・アームストロング、ヤン・ウルリッヒ、エリック・ツァベル、他

ドイツの「チーム・テレコム(現T-モバイル)」の視点から、 開催100周年を迎えた2003年のツール・ド・フランスを描いたドキュメンタリー。 ツールがどの様に発展して行ったかを過去の映像を交えて紹介しつつ、 「プリズナー・オブ・ストリート(道の囚人)」と呼ばれるプロのサイクリスト達の挑戦、 苦悩する姿を描き出す。

2004年/ドイツ/123分/英語・フランス語・ドイツ語  提供:アップリンク

★7月12日(土)より、渋谷アップリンクにて特集上映!
9月5日(金)『ツアー・オペレーター』DVD発売!

公式HP>> http://www.uplink.co.jp/factory/log/002676.php

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近距離恋愛(原題:MADE OF HONO)

監督:ポール・ウェイランド
原案:アダム・スティキエル
脚本:アダム・スティキエル、デボラ・カプラン、ハリー・エルフォント
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
出演: パトリック・デンプシー(トム)、ミシェル・モナハン(ハンナ)、ケヴィン・マクキッド(コリン)、シドニー・ポラック(トムの父:トーマス)、キャスリーン・クインラン(ハンナの母:ショーン)、ほか

プレイボーイのトムとしっかり者のハンナは、大学生のころからの大親友。性格も好みも、付き合った恋人のことまで知り尽くしている。あまりに身近すぎて恋愛の対象にならなかったのだが・・・。美術館に勤めるハンナが英国に長期出張になり、彼女と長く離れたことのないトムは、初めてかけがえのない女性なのだと気づく。帰国したら告白しようと花を手に会いに行くと、そこには婚約者だというコリンがいた。幸せいっぱいのハンナは、あろうことかトムに花嫁の付添い人を頼む。


(c)2007 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved

原題の「MADE OF HONOR」は花嫁の付添い人(プライズメイド)の筆頭として式の準備やドレスの選択など花嫁のそばにいて手伝う「maid of honor」のもじりです。通常は一番仲の良い未婚の女性が務めます。トムはハンナにつきっきりでいられるこのチャンスに、なんとか逆転を試みるのですが果たして?
パトリック・デンプシーはテレビドラマ「グレイズ・アナトミー」で人気。ミシェル・モナハンは『M:i:III』のヒロインに抜擢されて知名度が上がり、秋にも主演作がひかえています。トムの父親、を5月26日癌のため逝去されたシドニー・ポラック監督が演じています。(白)

2007/アメリカ/カラー/102分/ビスタ/ドルビーデジタル/
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

http://www.sonypictures.jp/movies/madeofhonor/

7月12日(土)より日比谷みゆき座ほか全国ロードショー

ホートン ふしぎな世界のダレダーレ(原題:HORTON HEARS A WHO!)

監督:ジミー・ヘイワード、スティーヴ・マーティノ
脚本:シンコ・ポール、ケン・ダウリオ
製作:ボブ・ゴードン
製作総指揮:オードリー・ガイゼル、クリストファー・メレダンドリ
音楽:ジョン・パウエル
声の出演者とキャラクター
〓ジャングルヌールの住民たち
ジム・キャリー(ホートン/ゾウ)、キャロル・バーネット(カンガルー)、ウィル・アーネット(ブラド/オオワシ)、セス・ローゲン(モートン/ネズミ)他。
〓ダレダーレの住民たち
スティーヴ・カレル(市長)、アイラ・フィッシャー(メアリー博士)他。

陽気で明るいダレダーレたちが住むダレダーレ国。そこは争いごとのない平和で楽しい世界。そんなダレダーレにちょっとした異変が起こり始める。地面が揺れたり、妙な巻き雲が現れたり…。実は、ヒマワリの花に安住していた国全体が、突然の大風で空中に放り出されたのだ。 このままではダレダーレは壊滅してしまう! そんなダレダーレたちの助けを求める声を、ジャングルヌールに住むゾウのホートンが偶然聞き付けた。自分の耳のそばで、小さな小さなホコリから、確かに救いを求める声を聞いたと信じるホートンは、仲間に馬鹿にされながらも、ダレダーレ国の人々を助けるため行動を起こすのだった…。

ファンタジーの世界にようこそ!もう、この呼びかけしか思い浮かびません。
小さな小さなケシツブに国一つが入っているのです。もちろん、住民たちもたくさんいて日常生活をしています。そのケシツブを、私たちの住む地球に置き換えてみても話しが通じる教訓的な部分もあり、子どもはもちろんのこと、大人も思わずため息が出てしまう・・・そんなアニメです。色合いも原色ではなく、"和菓子の色合い"なんです!ほんのり甘く、繊細に細工されたねりきりの和菓子を連想してしまいました。
公開は夏休み始まりの頃。是非、ふしぎなダレダーレ国に、ご家族で旅をしてください。(美)

2008年/アメリカ/カラー/86分/ビスタ/
配給:20世紀フォックス
http://movies.foxjapan.com/horton/

7月12日(土)〜お台場シネマメディアージュ他全国ロードショー
(C) 2008 Fox, Based on Dr. Seuss characters TM & (C) Dr. Seuss Enterprises

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008(第5回)

期間:7月19日(土)〜27日(日)
場所:埼玉県川口市「SKIPシティ」彩の国ビジュアルプラザ
  映像ホール・多目的ホール他
アクセス:会期中、JR川口駅東口キャスティ前臨時バス停より、SKIPシティまで直行の無料シャトルバスが20分間隔で運行されます。(所要:約12分)
   → http://www.skipcity-dcf.jp/access/

メインは、国内外のデジタルで撮影・制作されたデジタルシネマ作品の長編・短編コンペティション。上映は4Kデジタルシネマプロジェクターという最高の環境。また、各作品の上映後には、各国から訪れた作品ゲストとの交流の場も用意されています。詳細は公式HPでご確認ください。また、HPでは、全作品の予告編も観ることができます。
そのほか、招待作品(シネマ歌舞伎、Livespire作品)、特集上映プログラム(「カメラ・クレヨン」キンダー・フィルム プレゼンツ)、D-コンテンツマーケット、シンポジウムや市民イベントなど様々なプログラムが開催されます。

長編部門(国際コンペティション)
『キャプテン アブ・ラエド』ヨルダン、アメリカ
『戦禍の下で』レバノン
『エゴイスト』ドイツ、スイス
『赤い蟻』ルクセンブルグ、ベルギー、フランス
『Waiting for the Sun〜天気待ち〜』日本
『幸せのアレンジ』アメリカ
『ザ・クラス』エストニア
『記憶の谺(こだま)』デンマーク
『ガブリエルが聴こえる』スペイン
『リノ』フランス
『囲碁王とその息子』中国
『コンクリート・ピロウ』トルコ
公式HP>>  http://www.skipcity-dcf.jp/index.html

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百万円と苦虫女

監督・脚本: タナダユキ
撮影:安田圭
音楽:櫻井映子 、平野航
主題歌: 原田郁子 「やわらかくて きもちいい風」
出演:蒼井優(佐藤鈴子)、森山未來(中島亮平)、ピエール瀧(桃農家息子 春夫)、竹財輝之助(ユウキ)、齋藤隆成 (弟 拓也)、佐々木すみ江(桃農家の母親 絹)、笹野高史(喫茶店主 白石)、堀部圭亮、嶋田久作、モロ師岡ほか

鈴子は短大を卒業したものの就職浪人中。友達がいないからと、携帯も持っていない。バイト先の同僚リコからルームシェアの誘いがかかり、その気になったのだが、リコの心変わりでとんでもないことに・・・。警察のご厄介になって「受験に差し支える」と6年生の弟拓也に文句を言われ、ますます実家に居辛くなる。「百万円たまったら家を出ます!」と家族に宣言、いくつものバイトをかけもちして必死に働く鈴子だった。


百万円たまるごとに別の土地に移り、また働いて百万円をためる生活をする鈴子。根が生えたように動けない、変えられない人間(私も)は思わず羨ましくなります。鈴子は、高給が取れそうなオミズ系にはいきません。電話の苦情受付やビル清掃など、手作り弁当を持っていってひたすら働きます。実家を出る前に、「カーテンは高いから」と自分でせっせと縫うのも実直そのもの。最初は生意気で可愛くないと思えた弟の拓也が、学校でいじめられていてそれなりに苦労していること、姉の果敢な姿を見て寄り添っていくところなど、じ〜〜んとしました。けっして甘くはない外の生活に触れながら、少しずつたくましくなる鈴子を応援したくなります。蒼井優さんをはじめ、どのキャストもぴったり。(白)

2008/121分/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD・DTSデジタル 配給・宣伝:日活
http://www.nigamushi.com/
7月19日(土)、シネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

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あの日の指輪を待つきみへ

監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:ピーター・ウッドワード
プロデューサー:ジョーカ・ギルバート、リチャード・アッテンボロー
撮影監督:ロジャー・プラット
衣装:ヘイゼル・ウェブ=クロージャー
音楽:ジェフ・ダナ
キャスト:
 シャーリー・マクレーン(エセル・アン)
 クリストファー・プラマー(ジャック)
 ミーシャ・バートン(若き日のエセル・アン)
 ピート・ポスルスウェイト(クィンラン)
 ブレンダ・フリッカー(ジミーの祖母エレノア)
 スティヴン・アメル(テディ)
 ネーヴ・キャンベル(エセルの娘マリー)
 グレゴリー・スミス(若き日のジャック)
 マーティン・マッキャン(ジミー)

ある日突然、アメリカに暮らすエセル・アンのもとに、アイルランドから報せが届いた。エセルの名前が刻まれた指輪がベルファストの丘から発見されたという。送りましょう、という申し出をなぜか断るエセル。彼女は長年連れ添った夫チャックを亡くしたばかり。娘マリーは、父の死も淡々と受け止める母に、不満を抱く。そんなマリーにエセルは「私の人生は21歳で終わったのよ。いまさら嘆くことないわ」と語る。マリーは両親の親友ジャックに真相を聞くが、彼も過去を語ろうとはしなかった。


(c) Scion Premier(Third) Limited Partnership/UK Film Council/
Closing The Ring Limited/CTR Canada Limited

今から、数年前、アイルランドのラジオから変わったニュースが流れた。ベルファルトの丘で、50年以上前ここに墜落したアメリカ軍の兵士の結婚指輪が見つかったというものだった。いったいこの指輪はどんな運命をたどって来たのか、そして誰のもとに帰るのか・・・。
このニュースを聞いて、脚本家ピーター・ウッドワードは激しく創作意欲をかきたてられ、二大陸を結んだ半世紀にわたるラブ・ストーリーを書き上げた。

60代、70代の素晴らしい4人の俳優たちの演技にうなった。アメリカ、ミシガン州の二人、シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー、そして、アイルランドのピート・ポスルスウェイトとブレンダ・フリッカー。実年齢の強みもあり、重ねて来た人生経験が滲み出ていた。若手俳優では、指輪を見つけたアイルランドのジミーこと、マーティン・マッキャン!4人の俳優すべてに絡みますが、是非注目していただきたい。(美)

2007年/イギリス、カナダ、アメリカ/カラー/ヴィスタ/118分
配給:松竹
7月19日(土) テアトルタイムズスクエア他全国ロードショー

http://www.yubiwa-movie.jp/

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ビルと動物園

監督・脚本・編集:齋藤孝
撮影:百束尚浩
美術:佐藤彩
音楽:おおはた雄一
出演:坂井真紀(原田香子)、小林且弥(大村慎)、山口祥行(一太)、森廉(修治)、渡辺哲(原田史郎)、馬渕英俚可(れな)、三浦誠己(江藤)、犬山イヌコ(笹都)、津田寛治(佐伯先生)、河原さぶ(組合長)、勝村政信(杉浦課長)ほか

大手企業のOLをしている香子は、上司の杉浦との不倫に疲れ、実家からの見合いの催促にもうんざりしていた。窓拭きのアルバイト中の音大生・慎は、就職活動に身が入らず、将来の目標が定まらない。慎は窓越しに目が合った香子に一目ぼれ。慎の先輩の一太は、元動物園の飼育係。ビルの中で働く人間たちを動物に見立て、外から眺めるのを楽しみにしていた。香子をテンに似ているといい、おくてな慎一を後押しして二人を屋上で出会わせる。初めて二人で居酒屋で飲んだ後、慎は香子を動物園でのデートに誘った。

ビルの窓拭きを下から見上げていて「中の人と目が合うだろうな」と思ったことがあったので、そこから始まるのが面白かったです。
いつのまにか日が過ぎ30歳目前になった香子、バイトに明け暮れしているうちに卒業が近づいて来た慎一に気持ちが重なる方も多いでしょう。私は親の年代なので、男手一つで娘を育ててきた頑固親父の心情がよくわかります。主人公の二人が静かで台詞も少ないかわり、先輩の一太と組合長が元気で賑やかです。大きな事件はないけれど、誰もが経験するような感情の揺れをていねいに描いて好感の持てる作品でした。(白)

2007/日本/カラー/1時間40分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給・宣伝:アートポート
(c)2007『ビルと動物園』製作委員会
7月19日(土)〜ユーロスペースにてロードショー

愛流通センター

監督:土屋哲彦
脚本:なるせゆうせい
原作:唯沢みず「愛流通センター」(ゴマブックス刊)
出演:足立梨花、前田公輝、入来茉里、松永博史、水橋研二 ほか

女子高生のチカコは、ケンタにふられたことが、どうしても吹っ切れない。神社に行っては「本当の愛がみつかりますように」と神だのみをしている。願いが叶うなんて思ってはいないけれど・・・。
ある日、チカコの携帯に「愛流通センター」からメールが届く。なにそれ?とは思ったけれど、どうせ迷惑メールだと消去しようとしたのに、なぜか間違って登録してしまった。早速やって来た新人営業マンの稲羽は、いかにも営業には不向きな、人の良さそうな男。無料モニターでもいいから使ってみて下さい!と必死な彼の勢いに押され、メニューにある「失われた愛」を選んで、ケンタの携帯にメールを送信。すると、あれほど素っ気なかったケンタがやり直そうと言ってきた!

ケータイ小説が原作の映画というと去年大ヒットした『恋空』が思い出されます。この作品の原作もケータイ小説投稿サイト「フォレストノベル」で生まれた、ケータイ小説です。ユーザーが「自分が見たい映画は、自分が作る!」をキャッチフレーズに小説を投稿し、ユーザーの投票によって映画の原作が生まれたそうです。更にはロケにエキストラ参加したり、現場レポートをするなど、制作にもユーザーが参加しています。こういったユーザー参加型映画制作と言える様々な試みは、映画を観るだけではない、新たな楽しみ方としてこれから発展するのかと興味深いところです。
主演の足立梨花さんは2007年のホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞した注目株。映画初主演でちょっと緊張気味な部分もありますが、恋と友情の間で揺れる10代の女の子を等身大で演じて、これからの成長を大いに期待させてくれます。
不思議な営業マン稲羽さんを演じるのは水橋研二さん。ドジだけど憎めないキャラを絶妙に演じて、胸キュンです。(梅)

2008年/日本/カラー/HDV/ヴィスタサイズ/83分
制作プロダクション:葵プロモーション
製作:モブキャスト/第一興商
配給:アステア
宣伝:モブキャスト

公式 HP >> http://www.love-center.jp/

★7月19日(土)より、渋谷Q-AXシネマ他、全国順次ロードショー

チェブラーシカ

監督:ロマン・カチャーノフ
原作:エドゥアルド・ウスペンスキー
脚本:エドゥアルド・ウスペンスキー、ロマン・カチャーノフ

動物園の孤独なワニに会いに来たのは、都会の隙間の電話ボックスに暮らす、チェブラーシカだったー。

ロシアの国民的人形アニメーション『チェブラーシカ』が全4話完全デジタルリマスター版となって劇場公開されます。動物も人間もみんな一緒に暮らす不思議な世界の、愛らしくて、心温まるお話。でも、どこか哀愁が漂い、胸の奥の方がツンとします。すでに観たことがある方も、まだない方も是非劇場へ足をお運び下さい。ちなみに、チェブラーシカはオリンピック、ロシアチームの公式マスコットなのだそうです。(梅)

1969年、1971年、1974年、1983年/ロシア/73分/デジタルリマスター版/スタンダード/モノラル
提供:三鷹の森ジブリ美術館/スタジオジブリ/日本テレビ/ディズニー/フロンティアワークス
配給:三鷹の森ジブリ美術館

★渋谷シネマ・アンジェリカ限定で、ロマン・カチャーノフ監督作3本を同時上映します。
  『ミトン』(1967) 7月19日(土)〜8月1日(金)
  『レター』(1970) 8月2日(土)〜8月15日(金)
  『ママ』(1972) 8月16日(土)〜8月29日(金)

★公開初日『チェブラーシカ』ミニ福袋プレゼント
  7月19日(土)公開初日
  『チェブラーシカ』公開8劇場にて
  (シネマ・アンジェリカ、立川シネマシティ、チネチッタ川崎、シネマイクスピアリ、シネプレックス新座、テアトル梅田、シネ・ヌーヴォ、シネカノン神戸)
  各劇場先着300名様にプレゼント

公式 HP >> http://www.ghibli-museum.jp/cheb/

★7月19日(土)、渋谷シネマ・アンジェリカほか全国ロードショー

ドラゴン・キングダム

監督:ロブ・ミンコフ
脚本:ジョン・フスコ
アクション監督: ユエン・ウーピン
撮影:ピーター・ポウ
製作デザイナー:ビル・ブルゼスキー
編集: エリック・ストランド
音楽:デヴィッド・バックリー
出演:ジャッキー・チェン(ルー・ヤン/オールド・ホップ)、ジェット・リー(サイレント・モンク/孫悟空)、マイケル・アンガラーノ(ジェイソン・トリピティカス)、コリン・チョウ(ジェイド将軍)、リウ・イーフェイ(ゴールデン・スパロウ)、リー・ビンビン(白髪魔女)ほか

ボストンに住むジェイソンはカンフーおたく。いつもDVDを買うオールド・ホップの店で、古びた金色の棒を見つける。老店主は、それは売り物ではなく預かり物だが持ち主が取りに来ないのだと言う。その日、ジェイソンはストリート・ギャングたちにからまれ、ホップの店へ押し入る手引きを渋々引き受けるが、ギャングのリーダーが老店主に発砲。混乱の中、老店主は金色の棒を元の持ち主に返して欲しいとジェイソンに頼む。その棒に導かれるように、ジェイソンはビルの上から転落してしまう。
気がついたとき、そこは古代中国の農村だった。やってきた兵隊にわけもわからず追われるジェイソンを助けたのは、酔拳を操る男ルー・ヤン。この国には伝説があり「導かれし者が現れ、如意棒を持ち主に返すとき、悪の呪いは解かれる」という。ジェイソンが持つ棒こそ、その如意棒で悪の将軍ジェイドを倒す希望なのだ。ジェイソンとルー・ウェイはジェイド将軍のいる五行山へと向かう。


(c) 2008 J&J Project LLC

脚本のジョン・フスコ自身がカンフーおたくなのだとか。その自分の夢を見事に叶え、ジャッキー・チェンとジェット・リーの共演を実現させるという快挙をやってのけました。それだけでなく、かつてのショウ・ブラザーズやゴールデン・ハーベストといった香港カンフー映画のポスターなどをコラージュしたオープニングといい、中国ではおなじみの様々なキャラクターを登場させたり、あらゆるカンフーの型が披露されるなど、ファン心理をくすぐる仕掛けがいっぱい。カンフー映画になじみのない人でも、大人から子供まで気軽に楽しめるエンタテインメントになっています。(梅)

2007/アメリカ/カラー/105分/スコープサイズ/SRD/
提供:ジェネオン・エンタテインメント、松竹
配給:松竹
http://dragon-kingdom.jp/index2.html

7月26日(土) より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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帰らない日々(原題:RESERVATION ROAD)

監督:テリー・ジョージ
脚本:テリー・ジョージ、ジョン・バーナム・シュワルツ
原作:ジョン・バーナム・シュワルツ 「帰らない日々」(早川書房刊)
撮影:ジョン・リンドレー
音楽:マーク・アイシャム
出演:ホアキン・フェニックス(イーサン・ラーナー)、マーク・ラファロ(ドワイト・アルノー)、ジェニファー・コネリー(グレース)、エル・ファニング(エマ)、ショーン・カーリー(ジョシュ)、ミラ・ソルヴィノ(ルース・ウェルドン)、エディー・アルダーソン(ルーカス)ほか

大学教授のイーサンは妻のグレース、息子のジョシュ、娘のエマとコネチカット州の小さな町で幸せに暮らしていた。しかし思いがけない事故でジョシュは命を奪われ、家族は悲しみの底に突き落されてしまった。ジョシュをはねて、その場から走り去った車を運転していたのは、弁護士のドワイト。離婚した妻のところにいる息子と一緒に野球観戦をし、帰りを急いでいるところだった。ダッシュボードに目をぶつけた息子が気がかりで逃げてしまい、ニュースでジョシュが死んだことを知る。自責の念に苛まれるが自首の決心がつかない。イーサンは警察の事故調査が進まないのに業を煮やし、弁護士事務所へ相談に行く。担当となったのはドワイトだった。


(c) 2007 Focus Features LLC. All Rights reserved

『ホテル・ルワンダ』のテリー・ジョージ監督最新作。愛する子どもを突然奪われた家族といえば、4月に公開された邦画『あの空をおぼえてる』もそうでしたが、憎む相手はいませんでした。こちらはひき逃げをした犯人が、もう一人の主人公となっています。
絵に描いたような幸せな毎日から最愛の息子が奪われてしまうイーサン、壊れてしまった家庭で息子との繋がりを何より大切に思っているドワイト。二人の父親を交互に映し出し、二人が出会ったところからサスペンスの色が入ってきます。悲しみと、犯人への憎悪を増す父親を演じるのはフェニックス・ホアキン。この人を見るとどうしても早世した兄のリバーを思い出します(ああ、もったいない)。イーサンとドワイトの周囲の人々とのつながり、ラストまでの静かな盛り上がり、テリー・ジョージ監督手堅いです。妹役のエル・ファニングは名前で想像がつきましたか?ダコタ・ファニングの妹で、よく似ています。(白)

2008/アメリカ/カラー/102分/アメリカン・ビスタ/SRD・DTS
配給:ブロードメディア・スタジオ
http://www.kaeranaihibi.jp/
7月26日(土)〜シャンテシネほか全国順次ロードショー

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白い馬』(原題:Crin Blanca)

監督・脚本:アルベール・ラモリス
撮影:エドモン・セシャン
音楽:モーリス・ルルー
出演:アラン・エムリーほか

南フランスのカマルグ地方。沼地に続く荒地に野生馬の群れがいました。リーダーの白いたてがみは群れを守って馬飼いたちとも果敢に戦います。沼のほとりに住む少年は初めて見る白い馬にすっかり魅了されます。何度捕まえても逃げ出す馬に手を焼いた牧童の頭は「捕まえたらお前にやるよ」と少年をからかいますが、少年はそうしようと心に決めます。一度は我が家に白いたてがみを連れ帰りますが、仲間の声を聞いて追いかけていってしまいました。群れには新しいリーダーがいて、白いたてがみは少年の家に戻ってきました。しかし牧童たちは白いたてがみを追い回すことをやめません。

1953/フランス/カラー/モノラル/1:1.33/40分
配給:カフェ・グルーヴ、クレスト・インターナショナル

公式 HP >> http://ballon.cinemacafe.net/

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赤い風船(原題:Le Ballon Rouge)

監督・脚本:アルベール・ラモリス
撮影:エドモン・セシャン
音楽:モーリス・ルルー
出演:パスカル・ラモリスほか

パスカルは学校に行く途中に街灯にからまっている赤い風船を見つけました。風船と一緒ではバスにも乗れず、走って行きます。教室にも入れないので門番のおじさんに帰るまで預かってもらう。雨が降ってきたので、傘を持っている大人に頼んで風船を傘の中に入れてもらいます。びしょびしょで帰ったパスカルを見て、お母さんは大切に持って帰ってきた風船を飛ばしてしまいました。でも風船はパスカルの窓辺に戻ってきます。パスカルと風船は友達になったのです。

1956/フランス/白黒/モノラル/1:1.33/36分
配給:カフェ・グルーヴ、クレスト・インターナショナル

カンヌ映画祭で絶賛されたアルベール・ラモリスの2作品がデジタルリマスター版で公開されることになりました。50年以上の前の作品なのに今観ても少しも古くありません。どちらも無垢な子どもと、人間以外のものとの友情を描いています。
『白い馬』はモノクロの詩情あふれる作品ですが、ラストは悲劇ともハッピーエンドとも取れます。子どものときに見たなら逃げて逃げて逃げ切って、やった!と思ったかもしれませんが、この地で幸せになれないのかと胸が詰まります。自由になることには痛みが伴うのでしょうか?走る馬を追うカメラがすばらしいです。ヘリコプターで画面を揺らさずに撮る技術を開発した監督が、後にヘリコプターの事故でなくなるとはなんとも皮肉です。『白い馬』で少年の弟役の幼児は監督の実子のパスカル・ラモリス、『赤い風船』では主演しています。青い風船を持って登場する少女も実子だそうです。パリの街角や狭い小道を縦横に走るパスカルと風船、くすんだ街に真っ赤な風船が映えて綺麗です。今ならCGで処理できると想像がつきますが、当時はどうやって表情豊かな動きをつけたのでしょう。この映画の絵本化を切望して実現したいわさきちひろさんの「あかいふうせん」も人気です。(白)

公式 HP >> http://ballon.cinemacafe.net/

★7月26日(土)、待望の公開決定!シネスイッチ銀座ほかにて 『白い馬』『赤い風船』2本立てロードショー

ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン(原題:LE VOYAGE DU BALLON ROUGE)

監督:ホウ・シャオシェン
脚本:ホウ・シャオシェン、フランソワ・マルゴラン
撮影:マーク・リー・ビンビン
美術:ポール・フェイヤール
出演:ジュリエット・ビノシュ(スザンヌ)、イポリット・ジラルド(マルク)、シモン・イテアニュ(シモン)、ソン・ファン(ソン)ほか

シモンは7歳、バスティーユの駅前で真っ赤な風船を見つけたが手が届かない。風船はまるで意思を持っているように、メトロに乗ったシモンを追いかけてきた。シモンの父は外国に行ったまま帰ってこない。母スザンヌは新作の人形劇で忙しい上、夫は音信不通。階下の部屋を貸している夫の友人マルクが家賃を払わず、情緒不安定になっている。中国人留学生のソンがベビーシッターにやってきて、スザンヌとシモンの支えになる。映画を勉強している彼女は、シモンを主人公に『赤い風船』の映画を撮り始めた。

オルセー美術館が、開館20周年事業として立ち上げた映画制作プロジェクトの第1回作品。指名されたホウ・シャオシェン監督は、フランスについて書かれた本や映画を観る中で、ラモリス監督の『赤い風船』に出会いました。ラモリス監督とその作品にオマージュを捧げながら、現代のパリに住む人々の日常を描いています。ゆったりとパリの空を飛ぶ赤い風船は、住人を見守っているようでもあり、訪れる旅人のガイドのようでもありました。(白)

2007/フランス/カラー/113分/ドルビーSR/SRD/1:1.85
配給:カフェグルーヴ、クレストインターナショナル

公式 HP >> http://ballon.cinemacafe.net/

★7月26日(土)、シネスイッチ銀座にてロードショー

敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜(原題:Mon Meilleur Ennemi)

監督:ケヴィン・マクドナルド(『ラストキング・オブ・スコットランド』、『運命を分けたザイル』)

クラウス・バルビーは3つの人生を生きた。それも、とびきり冷酷で欺瞞に満ちた人生を。
第2次世界大戦中、ナチス占領下のフランスで数々のユダヤ人やレジスタンス活動家たちを死に追いやったゲシュタポとして。
戦後のヨーロッパで、反共のために活動したアメリカ陸軍情報部(CIC)のスパイとして。
南米ボリビアで軍事政権を支持し、CICと結託してチェ・ゲバラの暗殺計画を立案したクラウス・アルトマンとして。
 バルビーに関わった様々な立場の人間や歴史学者などに対する、多くのインタビューと資料映像とを交え、バルビーの人生を検証していく。そうして見えてきたのは、知られざる戦後史の裏側だった。

衝撃の○○という宣伝文句は使い古されて、その文字をみるとそう簡単に衝撃など受けるものかと斜に構えて観てしまうのだが、これは久々に「衝撃のドキュメンタリー」という言葉にふさわしい作品だった。
幼い子供ですらアウシュビッツに送り込んだ非情なゲシュタポが、戦後は戦犯として裁かれるどころか、CICのスパイとして反共のために活躍していたこと。それがフランスに察知されると、CICの依頼でバチカンの右派神父たちの手によって南米へと逃がされていたこと。更には移住先のボリビアで軍事独裁政権を支援して、チェ・ゲバラ殺害計画に関わり、ナチス残党による第4帝国設立を夢見ていたこと。どれをとっても驚きの事実だ。そして大戦後のヨーロッパ、アメリカ、南米の歴史が、この一人の男によって、どす黒い線で結びついたときの衝撃は大きい。アメリカという国は自由だの、人権擁護だのと掲げている看板と、裏でやっていることの落差が激しすぎる。
もう一点、深い印象を残したのはフランスでの裁判でバルビーの弁護士を勤めたジャック・ヴェルジェスだ。彼はおそらく大きな批判にさらされたであろうが、彼が誠心誠意弁護士としての職務を尽くしたおかげで、ナチス占領下のフランス政府の真の姿がかいま見られ、一人の人間を悪魔として血祭りに上げるだけの裁判にならなかった。
現在においてアフガニスタンやイラクの問題や、また日本の戦後史を考えるとき、この映画は様々な示唆を与えてくれる。(梅)

2007年/フランス/90分/1.66/35mm/Dolby SR-SRD/英題:My Enemy's Enemy
配給:バップ、ロングライド
宣伝:アルシネテラン

公式 HP >> http://www.teki-tomo.jp/

★7月26日(土)、銀座テアトルシネマ他にてロードショー!

雲南の花嫁 (原題:花腰新娘)

監督:チアン・チアルイ(章家端)
脚本:モン・チアソン、ハン・サンピン
撮影:ワン・ミン
美術:リー・ウェンポー
音楽:トン・ウェイ
出演:チャン・チンチュー(フォンメイ)、イン・シャオティエン(アーロン)、ツイ・チェンミン、ハー・ウェンチャオ、チャオ・チアイー、ワン・イーリンほか

雲南省イ族の鳳美(フォンメイ)は、幼いうちに母を亡くしたが父の手で美しく奔放な育った。幼馴染の阿龍(アーロン)との結婚がきまっている。イ族には「結婚後3年経ってはじめて、夫婦と認められ同居できる」"帰家"というしきたりがある。フォンメイは結婚式で酔いつぶれ、アーロンの寝床に入ったまま朝を迎えてしまい「恥知らず!」とベッドごと実家に送り返されてしまった。フォンメイは、しきたりどおりに3年待つのががまんできず、アーロンに会いたくてたまらない。アーロンが指導をしている娘龍舞隊にもぐりこもうとする。


雲南省は中国の最も西南に位置し、チベット自治区、ラオス、ミャンマーと国境を接しています。25の少数民族があり、最も人口の多いのがこのイ族です。美しい刺繍の民族衣装でも知られ、地域、家族ごとに微妙に異なっています。つくづくと見入ってしまいました。昔からのしきたりは、生活に即した意味あるものなのでしょうが、この「帰家」がまだ続いているのはなぜなのでしょう?
フォンメイのおてんばぶりに振り回されるアーロンは気の毒なものの、自分の気持ちに正直で行動的なフォンメイに共感します。チャン・チンチューは少々オーバーに演じているのではないかと思いますが、歌声も聞かせとても魅力的。豊かな自然とアーロンの龍舞もみどころです。
この作品は『雲南の少女 ルオマの初恋』につぐチアン・チアルイ監督の雲南3部作の2作目。3作目『芳香之旅』も観たいですね。(白)

2005年、彩の国さいたま中国映画祭で『花嫁大旋風』というタイトルで上映され、シネジャスタッフに好評だったこの作品が、『雲南の花嫁』というタイトルで公開される。この映画をとても気に入っていたのでとても嬉しい。

 幼馴染のアーロンと結婚した村一番のお転婆娘フォンメイは、「帰家」の風習に我慢できず、アーロンが指導する女性ばかりで作る龍舞隊に参加する。フォンメイはスーパースポーツガールで、走るのは早いし、力持ち。龍舞隊でも一番力のいる龍の頭を支える部分を受け持つことに。
 フォン・メイのあっけらかんとして明るいキャラクター、そして、何者にも負けない強い意志の持ち主なのがとても魅力的な作品。フォン・メイに振り回されるアーロンや村人たちのことを思うと、『花嫁大旋風』の方がふさわしいタイトルのように思えるのは私だけでしょうか。
 フォン・メイを演じた張静初(チャン・チンチュー)は、もともと中央戯劇学院監督科の出身。卒業後女優に。初出演作『孔雀 我が家の風景』で注目され、この作品に出演後、『セブンソード』『ラッシュアワー3』『門徒』などに出演している注目の女優なのである。章家瑞監督の作品は三本出演している。さいたま映画祭での上映時には張静初が来日し、この作品の中で歌っていた歌を披露してくれた。歌もとてもうまかった!
 穏やかで明るい雲南の少数民族の人たち、雲南の景色や、華やかな民族衣装など、章家瑞監督の描く雲南はどれも魅力的である。撮影監督は、日大芸術学部で学んだ王敏(ワン・ミン)。1996年、張芸謀監督の『キープクール』の撮影現場(北京)で姜文(チアン・ウェン)にインタビューしたとき、王敏さんにお世話になった。(暁)


2005年彩の国さいたま中国映画祭(撮影:宮崎)
シネマジャーナル関連記事掲載号
『雲南の花嫁』掲載 66号73号
『孔雀 我が家の風景』顧長衛監督インタビュー 69号

★関連イベント★
6月20日〜7月31日
横浜中華街 「九龍陳列窓」にて写真展開催中
萩野矢慶記氏の雲南の少数民族の写真と、『雲南の花嫁』場面写真
(西側の延平門よりすぐの陳列スペースです)

2005/中国/カラー/91分/ヴィスタ/SRD
配給:ショウゲート

公式 HP >> http://www.yunnan-bride.jp/

★7月26日(土)〜 K’s cinemaにてロードショー

第1回横浜黄金町映画祭

シネマジャーナル73号「映画館を訪ねて」でご紹介したシネマ・ジャック&ベティで、初の「黄金町映画祭」が開催されることになりました。「地域の特色ある映画館にしたい」と熱く語っていた梶原支配人の思いが一歩先へと進んだのですね。
気鋭の監督たちの作品をはじめ、フレッシュな学生映画、横浜を舞台にした懐かしいモノクロ作品(1933年『港の日本娘』の活弁つき上映も2回!)、シネマ・ジャック&ベティが登場する『わが人生最悪のとき』もラインナップ。暑い盛り、映画館で涼みつつ映画の世界に浸るのも一興です。ぜひお出かけください。(白)

日時:7月26日(土)〜8月1日(金)

会場:シネマ・ジャック&ベティ
〒231-0056 神奈川県 横浜市 中区 若葉町 3−51
TEL:045-243-9800/FAX:045-252-0827
アクセス
・京浜急行線 黄金町駅下車 徒歩5分
・横浜市営地下鉄 阪東橋駅下車 徒歩7分
・JR線 関内駅下車 徒歩15分

チケット:前売り1回券1000(シニア800)円、5回券4500円、パスポート8000円
     当日券1200(シニア1000)円
発売所
・チケットぴあ (Pコード:479-622)
・シネマ・ジャック&ベティ窓口
・有隣堂本店(イセザキモール)
・伊勢佐木書林(イセザキモール)
・イセザキ書房(伊勢佐木町)
・高橋書店(元町)

プログラム:Program A:【海外が注目する日本の才能】18本
        Program B:【学生映画】4本
        Program C:【横浜名画】6本
        Program D:【黄金町映画】2本

スケジュール等 詳細は公式HPまで

公式 HP >> http://www.koganecho.com/

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地球でいちばん幸せな場所(原題:OWL AND THE SPARROW)

監督・脚本・撮影:ステファン・ゴーガー
製作総指揮:ティモシー・リン・プイ
音楽:ピート・グエン
出演:ファム・ティ・ハン(トゥイ)、レー・テー・ルー(ハイ)、カット・リー(ラン)ほか

トゥイは10歳。両親が亡くなって叔父さんにひきとられ、工場で竹の加工をして働いている。失敗をきつく叱られたトゥイは貯めたお金とお気に入りの人形をリュックに入れ、家出してしまう。ホーチミン市は人であふれているが、トゥイは行くあてもなく一人ぼっち。見かねた町の子どもたちの助言で、花売りのしごとにありつくことができた。
フライトアテンダントのランがいつものホテルに向かうと、受付の娘たちが従兄弟を紹介すると言う。ランには長い付き合いのパイロットがいたが、彼には家庭があり結婚は望めなかった。 動物園で飼育係をしているハイは、最近婚約者のフォンに振られたばかり。おまけに、園長から子象をインドへ売ることにしたと告げられる。生まれたときから世話をしてきたハイは淋しくてたまらない。


(c)ANNAM PICTURES

ベトナムとアメリカ人の両親を持つステファン・ゴーガー監督の第1作。監督は、町の人たちの中に分け入り、出会った人々からインスピレーションを得てこのストーリーを組み立てました。監督が英語で書いた脚本をベトナム語に翻訳し、さらに俳優たちにはいつも話すことばに置き換える自由を与えたそうです。手持ちカメラ+同時録音で、ホーチミンの町を歩く人の目のように切り取り、暑い空気まで感じられるようです。
ベトナムに旅した人から「子どもたちが元気で本当によく働いている」と聞いたことがあります。この作品にも大人顔負けのしっかりした子どもたちが登場します。勝気で行動力のあるトゥイのまっすぐな眼差しは、安易な同情など寄せ付けません。どこか気弱な大人の二人が、保護しているつもりが実はトゥイに励まされています。原題の「フクロウとスズメ」は二人のこと。ハイに見覚えが、と思ったら海洋映画祭でグランプリを獲得した『バッファロー・ボーイ』('05)の主演の青年でした。(白)

2007/アメリカ、ベトナム/カラー/98分/ビスタ/ドルビーSR/
配給:エスピーオー
http://www.cinemart.co.jp/shiawase/

8月2日(土)、シネマート六本木ほか全国順次ロードショー

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881 歌え!パパイヤ

監督・脚本:ロイストン・タン
音楽監督:エリック・ン
出演:ミンディー・オン、ヤオ・ヤンヤン、チー・ユーウー、リウ・リンリン

シンガポールでは、旧暦7月の1ヶ月間死者をお迎えする舞台「歌台(ゲータイ)」が町の辻々に設えられ、華やかに歌や踊りなど様々なパフォーマンスが繰り広げられる。小さい頃から、歌台のスターになることを夢見ていたリトル・パパイヤとビッグ・パパイヤが知り合って、パパイヤ・シスターズを結成。歌に感情が込められていないと言われ、お針子のリンおばさんに手ほどきを受けて練習に励むが、なかなか夢はかなわない。面倒見のいいリンは、疎遠になっていた双子の姉“歌台の女神”に助けを求めに行く。その甲斐あってか、リンおばさんの作る奇抜でカラフルな舞台衣装に身を包み、テクノ・ビートを取り入れた歌唱で、スター街道を進むパパイヤ・シスターズ。でもビッグ・パパイヤは親の反対を押し切っての活動で、成功を素直に喜べない。一方、孤児のリトル・パパイヤは、亡くなった両親と同じく癌に冒されていた・・・


(C) Courtesy of Zhao Wei Films

可愛いパパイヤ・シスターズと対照的に、ちょっと毒のある妖しい魅力のドリアン・シスターズも出現して、バトルが繰り広げられます。きらびやかな衣裳がいくつもいくつも登場して、眼を見張ります。パパイヤ・シスターズを優しく見守るリンおばさんや隣人たちの姿に、近所付き合いが健在なのは歌台のお陰もあるのだなぁと感じました。かつて、シンガポールを訪れた時、街頭のあちこちの小さな舞台でチャイニーズ・オペラを上演していて、地元の人たちが楽しんでいる姿が印象的でした。次回は、歌台の季節に訪れてみたいと思いました。
ちなみに、ビッグ.パパイヤを演じたヤオ・ヤンヤンは、去年東京国際映画祭で上映された『シンガポールドリーム』で臨月の長女を演じていた女優さん。ぐっと違った雰囲気で映画を観ていた時には気がつきませんでした。(咲)

後援:シンガポール大使館
協賛:シンガポール政府観光局
提供:ビー・ワイルド
配給・宣伝:マジックアワー+チャンネルアジア

2007年/シンガポール/109分/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル

★2008年8月9日よりユーロスペースほか全国にて順次公開
アジアフォーカス・福岡国際映画祭2008 (http://www.focus-on-asia.com)でも上映されます。
ロイストン・タン監督来日予定

公式HP>> http://www.881movie.com/

Web版特別記事>> 特別試写会舞台挨拶報告

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コレラの時代の愛(原題: Love in the Time of Cholera)

監督: マイク・ニューウェル
原作: ガブリエル・ガルシア=マルケス (ノーベル文学賞作家)
出演:ハビエル・バルデム、ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、ベンジャミン・ブラット 

1897年、独立後の好景気に沸くコロンビアのカタルヘナ。しがない郵便局員フロレンティーノ(ハビエル・バルデム)は配達先の令嬢フェルミナ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)と恋に落ちる。しかし、一代で富を築いたラバ商人のフェルミナの父は、身分違いと二人を引き離し、医師のフベニル(ベンジャミン・ブラット)と結婚させる。フロレンティーノは彼女にふさわしい男になって何年でも彼女を待ち続けると心に誓う。
そして、51年9ヶ月と4日。大聖堂からもの悲しい鐘の音が聞こえてくる。「その日が来た!」と、傍らにいた若い女性を押しのけ、ベッドから起き上がり、主が亡くなり悲しみに暮れているお屋敷に急ぐフロレンティーノ。

所詮、恋は幻想。一旦はフロレンティーノと恋に落ちたフェルミナも、父から薦められた医師と結婚し、裕福で満ち足りた暮しを送ります。現実的な選択! そして、愛する夫が亡くなった日に、この日を待ってましたとばかりに求婚されても、怒って断るしかないでしょう。かたや、初恋の女性の夫が死ぬのを待ち続けていた主人公は、これでもかと女をむさぼり、その数622人! 記録を書き綴っていたというのも、異常。 でも、話はここで終わらないところが、まさに、恋の行方はわからないということでしょう。なぜ、コレラの時代の愛なのかは、観てご確認を!
独身の私、いつか妻に先立たれる「いい男」はいないかと密かに待っていたりします。笑(咲)

2007年/アメリカ/ 2時間17分カラー/スコープサイズ/ドルビーSR/ ドルビーデジタル/SDDS/PG-12

配給: ギャガ・コミュニケーションズ

★8/9(土)より シャンテ シネ、Bunkamuraル・シネマ ほか 全国順次ロードショー

公式HP>> http://kore-ai.gyao.jp/

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『Neo Action』シリーズ2本立て上映

『ハード・リベンジ、ミリー

監督・脚本:辻本貴則
撮影:湯浅弘章
編集:辻本貴則
美術:黒沢通利
VFX:佐藤敦紀
音楽:吉田光
出演:水野美紀、大口広司、中村哲也、紗綾、今村浩継、虎牙光揮他

20XX年。銃刀法撤廃により無法地帯となったヨコハマ。ミリーはジャック・ブラザーズに夫と幼い子を目の前で惨殺された。瀕死の重傷を負いながら命をとりとめ、銃と刀を身体に埋め込み、復讐のため自らが「凶器」となった。すでに引退していたジュウベエに、恩師から受け継いだ刀の修理を依頼する。初めは断ったジュウベエだったが、ミリーの傷を見て承諾し「一人斬るごとに磨け」と助言する。そしてジャック・ブラザーズと対決するときがやってきた。


(c)2008 『Neo Action』シリーズ製作委員会
『THE MASKED GIRL 女子高生は改造人間

監督・脚本:金子功
撮影:村川聡
美術:安宅紀文
音楽:吉田光
出演:清水由紀、中村静香、きだつよし、佐藤藍子他

運動オンチの女子高生・星野愛は下校中に何者かに連れ去られ、目覚めると手術着姿になっていた。そこは悪の化身ブラックマリアの率いる秘密組織ジョーカーのアジト。愛は肉体改造を施されたらしい。運動能力が格段にアップしていて、敵を蹴散らし逃げることができた。愛は親友の片桐由美に相談するが、由美はすでにジョーカーに洗脳された後だった。


(c)2008 『Neo Action』シリーズ製作委員会

黒皮のコートに身を包んだ水野美紀、可愛らしい制服姿の女子高生二人が活躍する『Neo Action』シリーズ。2本立て上映です。

配給:日本出版販売
宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
http://www.neo-action.com/

8月9日(土)〜渋谷Q-AXにて レイトショー公開

シティ・オブ・メン(原題:CITY OF MEN)

監督:パウロ・モレッリ
製作:フェルナンド・メイレレス
原案:エレナ・ソアレス、パウロ・モレッリ
脚本:エレナ・ソアレス
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
音楽:アントニオ・ピント
出演:ダルラン・キュンハ (ラランジーニャ)、ドグラス・シルヴァ(アセロラ)、 ジョナタン・ハーゲンセン(マドゥルガド)、エドワルド(ネファスト)、 ロドリゴ・ドス・サントス(エラウド)、カミラ・モンテイロ(クリス)ほか

ブラジル、リオデジャネイロ。山肌にはりつくように広がるスラム街は、ファヴェーラと呼ばれている。暴力とドラッグは日常だが、関わらずに暮らす人々もいる。デッド・エンド・ヒルで兄弟のように育ったラランジーニャとアセロラもその一人。二人は18歳になった。ラランジーニャは父親を知らず、消息を尋ねまわっている。アセロラは一度の付き合いで妊娠してしまったガールフレンドのクリスと結婚し、早々と父親になった。父のいないアセロラは、自分の子どもをどうしていいのかわからず、海辺に連れて行ってすっかり忘れてしまったりする。 ファヴェーラのギャングを牛耳っているのは、ラランジーニャの従兄弟のマドゥルガド。その横暴に部下のネファストが反旗を翻した。暴力を避けて暮らしてきた二人も巻き込まれていく。


(c)2007 02 Cinema Ltda.All rights reserved.

製作のフェルナンド・メイレレスが2003年に監督した『シティ・オブ・ゴッド』の姉妹篇とも呼べる作品。メイレレスと長く共同制作を続けてきたパウロ・モレッリが監督を務めました。ダルラン・キュンハ、ドグラス・シルヴァ、ジョナタン・ハーゲンセンらは『シティ・オブ・ゴッド』についでの出演で、成長ぶりがわかります。貧困の中で育ち、犯罪に染まってゆく少年たちを描いた前作より、親子や友達との関係に目を向けたこの作品のほうが希望を持つことができました。映像をさらに彩る音楽を集めたサウンドトラックも23日に発売されます。(白)

2007/ブラジル/カラー/106分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/PG-12
配給:アスミック・エース
http://cityofmen.asmik-ace.co.jp/
2008年8月9日(土)〜 渋谷シネ・アミューズ ほか全国順次ロードショー!

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アクロス・ザ・ユニバース(原題:ACROSS THE UNIVERSE)

監督:ジュリー・テイモア
原案:ジュリー・テイモア、ディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ
脚本:ディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ
撮影:ブリュノ・デルボネル
プロダクションデザイン:マーク・フリードバーグ
衣装デザイン:アルバート・ウォルスキー
編集:フランソワ・ボノ
音楽:エリオット・ゴールデンサール
出演:エヴァン・レイチェル・ウッド(ルーシー)、ジム・スタージェス(ジュード)、ジョー・アンダーソン(マックス)、デイナ・ヒュークス(セディ)、マーティン・ルーサー・マッコイ(ジョジョ)、プルーデンス(T.V.カーピオ)ほか

1960年代、リバプールの造船所で働く青年ジュードは、自分の父を探してアメリカに渡る。米兵だった父は駐留先で母と出会い、帰国後ジュードが生まれたのだ。プリンストン大学で管理人として働く父を尋ね当てるが、思いもかけない息子の出現に戸惑うばかり。ジュードは失望するが、そこの学生のマックスと知りあう。感謝祭の食事に招待されたジュードは、マックスの美しい妹ルーシーに眼を奪われる。彼女にはベトナムに従軍した恋人がいたが、やがて戦死の報が届く。退学したマックスに誘われ、一緒にニューヨークへ出たジュードの前には新しい世界が広がっていた。
彼らがシェアした歌手セディのアパートには、さまざまな人間たちが集まってきた。やがてマックスの召集令状を携えたルーシーもその仲間に加わった。


(c)2007 Revolution Studios Distribution Company,LLC. All Rights Reserved.

舞台版「ライオン・キング」を大ヒットさせた演出家、ジュリー・テイモアのミュージカル映画。
200曲を越えるビートルズの歌から33曲を選び、その歌から作り出された登場人物たちとストーリー、それにぴったりと当てはまるキャスト、彼らの歌う懐かしい歌に60年代が蘇ります。歌詞が台詞になっていたりしますので、ビートルズファンにはお楽しみがたっぷり。歌だけでなく当時のヒッピーやドラッグ、サイケデリックなファッションなど、若い人たちには逆に新鮮でしょう。1952年生まれのテイモア監督は、主人公たちに自分の兄弟姉妹のイメージを重ね、キャストを固定イメージのない新しい俳優で固めています。唯一メジャーな作品に出演していたエヴァン・レイチェル・ウッドは『サーティーン〜あの頃欲しかった愛のこと』の美少女から一回り大人になりました。オーディション当時俳優業のかたわらロックバンドにもいたというジム・スタージェスはこの作品で大ブレイク。後の『ラスベガスをぶっつぶせ』でも主演。こちらはもうすぐ公開です。みんながそれぞれの思いをのせて歌いますが、セディの歌が特に良かったのとダンスのシーンがとても楽しいです。(白)

ビートルズを語った物語じゃないのに、主人公ジュードという名前からして、"Hey Jude"から取っているように、映画のそこかしこにビートルズに対するオマージュが散りばめられているのが楽しい。何より驚いたのは、ビートルズの曲の歌詞が、そのまま映画のストーリーに、ぴったりはまり込んでいること。よくぞ監督は膨大な曲の中から選んできたと感心します。思えば、曲は何度も聴いていたけれど、歌詞の意味をじっくり吟味したことなどなかったので、あらためてビートルズの歌詞の持つメッセージに引き込まれました。
監督と同世代の私にとって、1960年代という時代は、なんだかよくわからないけど、少し上の世代の人たちが反戦運動に燃えているなぁ〜という時代でした。本作では、ジュードがアメリカに渡って出会うルーシーが、恋人はベトナムで戦死、兄も徴兵され精神的にショックを受けて帰還するという設定。反戦運動にのめりこむルーシーに、もっと自分を大切にしようよ、愛に生きようよ、とジュードならずとも声をかけたくなります。が、反面、今の世の中は、あの頃と変わらず世界のあちこちで戦争や紛争が絶えないのに、反戦運動に身をやつす人が少なくなったと感じます。(ずぅっ〜とノンポリを貫いている私もだ!) 若い人たちがこの映画を観て、何かを感じてくれれば嬉しいとも思いました。

私が一番好きな場面は、この映画のタイトルになった曲“Across The Universe”が流れている、地下鉄の中で色々な人種の人たちが行き交っているところ。戦争などない、皆が愛に生きる世界がどうして実現しないのでしょう。ビートルズの曲の中で私が一番好きな“Because”は、上記の場面画像の一番左、ルーシーの兄マックスが入隊する直前、9人の仲間たちが草の上に寝そべっているシーンで使われました。幻想の世界に導いてくれる大好きな曲。いろいろなことに捉われず、自分の世界を大切にして生きていきたい・・・と、再確認させてもらった映画でした。(咲)

2007/アメリカ/カラー/131分
配給:東北新社 宣伝:アルシネテラン

公式 HP >> http://across-the-universe.jp/

★8月9日(土)より、渋谷アミューズCQN、シネカノン有楽町他にて全国ロードショー!

◆公開を記念して、12人のビートルズ・フリークによる、エッセイ集「アクロス・ザ・ユニバース〜林檎をめぐる物語〜」が発売されます。
ビートルズとの出会い、思い出、心に残る1曲…誰の心にもいつのまにかビートルズの曲がある。
映画『アクロス・ザ・ユニバース』の中で使われた曲にのせビートルズをこよなく愛する12人の著名人が贈る12篇のアンソロジー。

執筆者: 恩田陸、北川悦吏子、倉本美津留、佐野元春、武田双雲、TAKURO(GLAY)、つんく♂、野田秀樹、ピーター・バラカン、古川日出男、茂木健一郎、本秀康 【敬称略、五十音順】

7月30日発売 定価:1575円(税込)四六版/上製 ソニー・マガジンズ刊

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この自由な世界で(原題:It's a Free World..)

監督:ケン・ローチ(『麦の穂をゆらす風』)
出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック

アンジーは、11歳の1人息子を親に預けて働くシングルマザー。職業紹介会社の面接官として、今日も出張先のポーランドで、てきぱきとイギリスでの仕事を斡旋し紹介料を徴収している。夜、バーで身体を触ろうとした上司の手を振り払ったのが気に障ったのか、突然解雇されてしまう。アンジーは経験を生かして、ルームメイトのローズと共に、私設職業紹介所を立ち上げ、世界の各地から夢を求めてイギリスにやってきた外国人たちに仕事の斡旋を始める...

立場の悪い不法移民の外国人たちに仕事を斡旋する一方で、彼らから搾取して金儲けに走るアンジー。彼女もまた生きていかなくてはならない弱い人間。“この自由な世界で”とは、まさに、自由って何だろうと考えさせてくれるタイトル。より自由に生きたいともがく人たちの姿が悲しい。

ポーランド、ウクライナ、アフリカ、中南米などなど各地から自由があると信じてイギリスにやってくる人たち。登場した中で、気になったのが、イランから家族を連れ不法に入国したマフムード。彼は、反体制の本を出版したことでイスラーム政権に逮捕されたと語っている。興味深いのは、彼の父親が王政時代に反体制的な動きをして、やはり逮捕されているということ。言論の自由は、イスラーム現政権だけでなく、王政時代にもあったことを述べて、ケン・ローチ監督はいつの時代にも統制は行われることを示唆している。 アンジーの生き方についても、善悪は語っていない。ずっしりと重いものをつきつけられた気がする。(咲)

2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン/96分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD

配給:シネカノン
宣伝:ムヴィオラ

★8月16日(土)より、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー!

公式HP>> http://www.kono-jiyu.com/

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同窓会

監督・脚本:サタケミキオ
撮影:小松原茂
美術:大庭勇人
音楽:矢田部正、西田和正
出演:宅間孝行(南克之 通称かっつ)、永作博美(友永雪 通称ゆき)、鈴木砂羽(ひめ)、二階堂智(ぶんちゃん)、阿南敦子(わだまさ)、飯島ぼぼぼ(トネイチ)、尾高杏奈(ゆき)、兼子舜(かっつ)、うつみ宮土理(母)、笑福亭鶴瓶(父)ほか

30代半ばの南克之は映画プロデューサー。年下の新進女優めぐみと気楽な不倫を楽しみ、高校時代の初恋を実らせて結婚した雪とあっさり離婚してしまった。それを聞いた克之の親友ぶんちゃんは大激怒。「相手がかっつなら」と自分の恋を諦め、身を引いた過去があったのだ。克之は新作のロケの手配をするため、故郷の長崎を訪れる。実家の部屋には高校時代の思い出の品がそのまま残され、克之は青春時代を思い出していた。雪は高校時代からの親友ひめに会い、新しい生活を始めることを決意するが身体に変調がおきる。


(c)2008「同窓会」製作委員会

人気劇団「東京セレソンデラックス」の主宰、サタケミキオ(=俳優:宅間孝行)の初監督作品。
冒頭に「勘違いは人生最高の悲劇であり喜劇である」と字幕が登場します。初めっからネタばらししているわけで、主人公克之の勘違いから怒る悲喜劇を観客が楽しむものです。雪役の永作博美は、大ヒットした『人のセックスを笑うな』で、松山ケンイチが憧れる年上のヒロインを演じました。一度に好感度アップしたんじゃないでしょうか。この映画では夫の浮気に気づきながら、口に出さずニコニコと離婚も承諾してしまいます。こんな奥さんいないよ!?ですが、この人だと可愛くてなんだかいそうな気になってしまいます。
監督の人脈なのかいろんな方が顔を出しています。1980年代を再現した映像も懐かしく、こんなことあったと思わず顔がほころびます。そうそう、勘違いがもう一つありますが、こちらは最後までわかりませんでした。(白)

俳優としての宅間孝行さんは、最近ドラマでちょくちょく見かけます。「鹿男あをによし」のライバル校の剣道部の顧問とか、「おせん」のフードチェーン会社の社長とか。劇団率いていて脚本家でもあるとは知りませんでした。プレスシートでうつみ宮土理さんが「ちょっとチャン・ドンゴンに似てるところが」とおっしゃってますが、あんまり言うとドンゴン・ファンに怒られるかも(笑)。映画は初監督ということで、まだ映像制作に慣れないのかなと感じるところもありますが、役者陣が達者なのと、キャラクターの感情がちゃんと伝わる物語なのでなかなか楽しいです。(梅)

2008/日本/カラー/ビスタ/DTS/105分
配給:エスピーオー 宣伝:グアパ・グアポ

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/dousoukai/

★8月16日(土)よりシネマート新宿ほかにてロードショー

カンフー・ダンク!

監督:朱延平(チュー・イェンピン)
アクション監督:程小東(チン・シウトン)
撮影監督:趙小丁(チャオ・シャオティン)
音楽プロデューサー:石川光IDEA Inc.
出演:周杰倫(ジェイ・チョウ)、陳柏霖(チェン・ポーリン)、陳楚河(バロン・チェン)、蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)、曾志偉(エリック・ツァン)

バスケット・コートの近くの草むらに捨てられていた赤ん坊ファン・シージエは、カンフー学校の師父に育てられた。しかし、師父は時空を操る危険な技の修練中にシージエの目の前で死んでしまう。
青年になったシージエは、ある夜リーという中年男と出会う。リーはシージエが尋常でないコントロールで空き缶をゴミ箱に投げ入れる姿を見て、一緒に金持ちになろうと持ちかける。リーはシージエを言葉巧みに大学バスケットボール部に売り込む。そこにはシージエが以前から憧れていた女の子リリーがいた。初めこそ慣れなくて失敗を繰り返すシージエだが、徐々にチームにとけ込み、ずば抜けた才能を見せ始める。順調にチームは決勝に勝ち進むが、決勝の相手はチームにとって因縁の相手だった。


(c)2008 Chang Hong Channel Film & Video Co., Ltd., Shanghai Film Group Corporation & Emperor Motion Picture(International) Ltd. All Rights Reserved.

今年の旧正月に中華圏で公開され大ヒットした作品が、日本では北京オリンピックの開催に時を合わせていよいよ公開されます。『少林サッカー』はカンフーとサッカーの融合でしたが、今度はカンフーとバスケット・ボール。『少林サッカー』のあの興奮が蘇る、マジ、メガすげェェェェェー!映画になっています。
主演のジェイ・チョウは、ミュージシャンとしてはアジアの大スターですが、本格的な映画出演は3本目。これまでにない、ちょっとすっとぼけた、コミカルな演技が光ります。エリック・ツァンとの年の離れたバディっぷりもとてもいい。自身も大のバスケ好き。仲間とバスケに興じる練習シーンなどでは、リアルな腕前も披露しています。
ちょっとお久しぶりな感のあるチェン・ポーリンは、髭をたくわえワイルドな感じになってました。彼のアル中演技を観ていて、『傷だらけの男たち』の金城武を思い浮かべるのは、監督のねらい通りなんでしょうか? その他にもシャーリーン・チョイや新人イケメンのバロン・チェンといった若手に加え、呉孟達(ン・マンタ)や梁家仁(レオン・カーヤン)、高雄(エディ・コー)といった香港映画ファンにはおなじみのベテランもそろって楽しませてくれます。(梅) 

2008年/台湾・香港・中国合作/カラー/1時間40分/スコープサイズ/ドルビーSRD
配給:角川映画
宣伝:シナジー・リレーションズ

公式 HP >> http://www.kf-d.jp/

★8月16日(土)より、全国ロードショー!

すずかけシネマ&トーク『オフサイド・ガールズ』

すみだ女性センター主催

映画:「オフサイド・ガールズ」 (ジャファル・パナヒ監督/イラン/字幕)
講演:日本イラン文化交流協会 事務局長 景山 咲子
大学生の6割以上が女性! 好奇心旺盛で元気いっぱいなイラン女性
日時:平成20年8月23日(土)
午後1時30分から午後4時まで(午後1時開場)
定員:100名
会場:すみだ女性センター ホール (墨田区押上二丁目12番7号111)
申込:すみだ女性センター(03-5608-1771)
詳細はこちら
ちらしはこちら(pdf)

第7回東京フィルメックス(上映タイトル『オフサイド』)で観客賞を受賞した抱腹絶倒のコメディー仕立ての社会派ドラマです。昨年一般公開されましたが、見逃した方、もう一度見たい方、是非お出かけください。
なお、私事で恐縮ですが、上映の後に講演の時間をいただきました。この30年程の間に私自身が見てきたイランの女性たちのことなどお話しようと思っております。あわせてお聴きいただければ幸いです。(咲)

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横浜 フランスアニメーション映画祭2008

フランスから届いた、とっておきの贈り物。 珠玉のアニメーション52作品を一挙上映!

開催期間:8月23日(土)〜29日(金)
会場:シネマジャック&ベティ
    横浜市 中区 若葉町 3−51
    最寄り駅:黄金町
料金:一般1,200円(2回券:2,200円、パスポート:5,000円)
   学生・シニア・日仏会員1,000円
   小学生以下500円(同伴の保護者は1,000円)

主催:横浜日仏学院
協力:シネマ・ジャック&ベティ、東京藝術大学映像研究科

スケジュール:
A 甘美なフランス
B 子供たち
C アニメーションの味わい
D Supinfocom 特集 20周年!
E Lardux Films
F フランス外務省特選プログラム:短編から長編へ

8/23(土) 14:10 Aプロ/15:30 Dプロ/20:00 Cプロ
8/24(日) 14:10 Eプロ/15:30 Bプロ/20:00 Fプロ
8/25(月) 14:10 Fプロ/15:30 Dプロ/20:00 Eプロ
8/26(火) 14:10 Eプロ/15:30 Fプロ/20:00 Dプロ
8/27(水) 14:10 Bプロ/15:30 Aプロ/20:00 Fプロ
8/28(木) 14:10 Dプロ/15:30 Fプロ/21:10 Eプロ
8/29(金) 14:10 Cプロ/15:30 Eプロ/20:00 Dプロ
※20:00と21:10の回はシネマ・ジャックにて上映

8/28(木)20:00、トークショーあり
ゲスト:ジェローム・ブルベス(アニメーション作家、プログラムディレクター)×伊藤有壱(アニメーション作家)

詳細はシネマジャック&ベティHPまで
http://www.jackandbetty.net/

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R246 STORY

6人の監督がそれぞれの切り口で国道246号線を描きました。

『JIROル〜伝説のYO・NA・O・SHI』
監督:中村獅童
出演:中村獅童、的場浩司、大杉漣
清水の次郎長がタイムスリップから戻ってきた。未来の日本の若者はR246が清水に繋がっていることさえ知らず、義理も人情も仁義もない腑抜けばかり。森の石松を世直しのため、現代の東京に送り込んだ。

『DEAD NOISE』
監督:VERBAL(m-flo)
VERBAL本人が今後日本のHIPHOPはどうなるのか、アーティストたちにインタビューしたドキュメンタリー。

『ありふれた帰省』
監督:須藤元気
出演:須藤元気、津田寛治、吹原幸太、林雄大
R246で交通量調査をする4人の若者。そのうちの一人は、はぐれてしまった彼女を探すためにこの仕事をしていることがわかり、ほかの3人も手伝おうとする。

『CLUB246』
監督: ILMARI(RIP SLYME)
出演:石田卓也、HARU
内気で平凡な男の子がクラブ好きの女の子に片思い。彼女のいるクラブに初めて足を踏み入れる。

『224466』
監督:浅野忠信
出演:浅野忠信、加瀬亮、大森絢音ほか
宇宙人246は身体の一部であるドラムセットを無くしたため、ロックンロール星に帰れなくなってしまった。老人と少女は彼の手助けをしようと試みる。

『弁当夫婦』
監督:ユースケ・サンタマリア
出演:ユースケ・サンタマリア、永作博美
長い間同棲し、互いの存在がすっかり当たり前になった男女。女は腕をふるって毎日弁当を作り、男の仕事場の近くで一緒に昼食をとるのが日課となっていた。

2008/日本/カラー/147分/
配給:ゴー・シネマ
http://www.r246s.jp/

8月23日(土)〜渋谷Q‐AXシネマほかにてロードショー

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シスター・チャンドラとシャクティの踊り手たち

監督:松居和

南インドのタミルナード州で、ダリット(不可触民)の少女たちにダンスを教え、差別反対のための公演をしているカソリックのシスター・チャンドラ。ダリット(不可触民)は、カースト制度の枠外の最下層。女性はさらにその中で差別されている。シスターから、裁縫や読み書き、さらに権利意識について学び、目覚めていく少女たち。
幸せとは? との問いに、「集まること、そして、わかちあうこと」と答えるシスター。
人間はなぜ踊るのか? 
「神の作った秩序を思い出すためかもしれない」と、監督は語る。
本来女性が触れることを禁止されている太鼓を敲きながら踊る少女たち姿は、力強く美しい。

シスターと踊り手たちの話に惹きつけられた松居和氏は、カメラを買い、一人でインドへ向い、この映画を完成させました。 その初監督作品が、第41回ヒューストン国際映画祭でRemi金賞受賞! 快挙です。

下記日程で、都内で上映会が開かれます。


◆7月30日(水) 午前10:30
場所:東京YWCA武蔵野センター(無料)
東京都武蔵野市中町1-19-16
TEL:0422-52-3881
監督も出席します

◆8月23日(土)13:30〜16:00(開場13:00)
場所 まちだ中央公民館 7階ホール
・「シスター・チャンドラとシャクティの踊り手たち」上映
・ 監督による講演 製作秘話  松居和氏
対象:市内在住、在勤、在学の方    
参加費:無料    定員:150名(先着順)
申込み:町田市コールセンター 電話:042-724-5656 FAX:042-724-5600
  8月6日12時から8月21日23時まで。
  22日以降の問い合わせは「アフリカを学ぶ会」電話:09057603415

HP>> http://cosmosblue.net/sakthi/

能登の花ヨメ

監督:白羽弥仁
撮影:山本英夫
音楽:大江千里
主題歌:岩崎宏美「始まりの詩(うた)、あなたへ」
出演:田中美里(みゆき)、泉ピン子(松子)、内海桂子(フジばあさん)、甲本雅裕(茂雄)、池内万作(紘一)、松尾貴史(鹿島)、本田博太郎(山田)、松永京子(海乃)、平山広行(健二)ほか

みゆきは広告代理店の派遣OL。結婚を控えて、同僚に「30前に勤め先で相手をゲットするなんて派遣の花道」と羨ましがられている。婚約者の母親が交通事故に遭ったと連絡が入り、能登で一人暮らしの姑を手助けすると宣言。いさんで向かったのだったが、初めて会う人々に初めての土地の習慣、都会育ちのみゆきはヤギやミミズに驚き、魚をさばくこともできない。姑の松子はギプスの足のままで、早く起きて家事をこなしている。みゆきは気持ちはあるのだが、手を出すたびに失敗ばかり。

まだ震災の爪あとの残る能登を舞台に、初めての田舎の生活や姑との付き合いに苦労する都会の嫁を、田中美里がはつらつと演じます。姑の松子はテレビでの嫁役が今も記憶に残る泉ピン子。二人のやりとりはちょっとオーバーかなぁと思いますが、実際あることなのでしょう。過疎地で一人住まいの老親と、気にかけながらも都会での自分の暮らしでいっぱいの子ども達。これは私も同じようなもので、身につまされました。隣のフジばあさん役の内海佳子が絵手紙を、息子役の本田博太郎が書を披露しています。(白)

2008/日本/カラー/109分/35mm/アメリカンビスタ/DTS/
http://www.notonohanayome.com/
配給:ゼアリズエンタープライズ
(C)「能登の花ヨメ」製作委員会
石川県先行公開

8月23日(土)〜 全国ロードショー

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言えない秘密 不能説的・秘密

監督:周杰倫(ジェイ・チョウ)
脚本:杜緻朗(トー・チーロン)
撮影:李屏賓(リー・ビンビン)
音楽:テルサック・ヤンバン、周杰倫
出演:周杰倫(ジェイ・チョウ)、桂綸[金美](グイ・ルンメイ)、黄秋生(アンソニー・ウォン) ほか

シャンルンは父も教師をしている音楽学校へと転校してきた。初登校のその日、古いピアノ室から不思議な美しい曲が聞こえてくる。音にひかれて中にはいると、そこにはシャオユーという少女がいた。「今の曲は何?」と尋ねたシャンルンに、シャオユーは「それは言えない秘密よ」と耳元でささやいた。その時、二人の恋は始まった。


(c) 2007 East Empire International Holding Limited

ジェイ・チョウの初監督作品が公開です。これまでにも自身のPVを監督して、なかなか観て楽しい作品が多く、その才能の片鱗をみせていました。初監督作品では、素晴らしい映画スタッフに支えられ、自身も共演者も魅力いっぱいに描いてみせています。台湾金馬奨3部門(最優秀台湾映画賞、主題歌賞、視覚効果賞)受賞という快挙も成し遂げました。ほぼ同じ時期に主演作品『カンフー・ダンク!』も公開され、今年の夏はジェイ大ブレイクの予感。(梅)

2007/台湾/カラー/シネマスコープ/ドルビーSR/102分
配給:エイベックス・エンタテインメント

公式 HP >> http://ienai-himitsu.com/

★8月23日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

中国インディペンデント映画祭

中国での映画制作において必ず話題になるのが検閲の問題です。以前よりは随分と緩やかになったとはいえ、自由な表現を求める映画監督にとっては大きな壁であることにはかわりありません。中国インディペンデント映画とはそんな検閲を通さず、独自制作をした映画のことをさします。
今年初めてそのような中国のインディペンデント映画を集めて上映する映画祭が開催されることになりました。東京フィルメックスで2年連続審査員特別賞を受賞した、應亮(イン・リャン)監督の2作品を始め、ドキュメンタリー作品2本を含む、計8本が上映されます。いずれも中国の今を切り取る興味深いものばかり。この機会に是非、ご覧下さい。

8月23日から9月5日 ポレポレ東中野にて(東京)
9月13日から9月26日 プラネットプラスワンにて(大阪)

◆上映作品◆
 『あひるを背負った少年』
 『アザー・ハーフ』
 『山清水秀 − 息子』
 『塵より出づる』
 『草芥(そうかい)』
 『馬烏甲(マー・ウージャ)』
 『高三』
 『最後の木こりたち』

なお、シネマジャーナル本誌70号、68号、66号に『アザー・ハーフ』『高三』『あひるを背負った少年』関連記事の掲載があります。

公式 HP >> http://cifft.net

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台湾シネマ・コレクション

とき:8月23日(土)〜9月26日(金)
ところ:シネマート六本木
チケット:1回券1300円
      5回券5000円(1000円券×5)
特典:特製大判ポストカードをプレゼント(劇場窓口でご購入の方に限ります。)
上映作品:
『練習曲』チェン・ホワィエン監督/イーストン・ドン、Saya 、達倫(K-One)
『シルク』スー・チャオピン監督/江口洋介、チャン・チェン、チェン・ボーリン
『ウェスト・ゲートNo.6』リン・ユゥシェン/エディ・ポン、イーサン・ルァン
『TATTOO‐刺青』ゼロ・チョウ監督/レイニー・ヤン、イザベラ・リョン
『ビバ!監督人生!!』ニウ・チェンザー監督/ニウ・チェンザー、チャン・チュンニン
『DNAがアイ・ラブ・ユー』ロビン・リー監督/ピーター・ホー、テリー・クワン
『遠い道のり』リン・チンチェ監督/グイ・ルンメイ、モー・ズーイー


グイ・ルンメイ        モー・ズーイー

リン・チンチェ監督、グイ・ルンメイ、モー・ズーイー
以上3枚は2007年東京国際映画祭での舞台挨拶(撮影:宮崎)
『午後3時の初恋』ジョン・フェンフェン監督/ ジョセフ・チャン、グォ・ビーティン

スケジュールほか詳細はHPまで
http://www.cinemart.co.jp/taiwan2008/

『ビバ!監督人生!!』
テレビドラマのディレクター兼俳優として成功しているドウズは、社会派のモキュメンタリー作品を撮ろうと発奮する。政府の助成金はえられることになったものの、主演俳優には逃げられ、出資者は現れずで計画は頓挫。おまけに自分の浮気と身勝手のために、恋人にも去られ、どん底を味わう。

監督・主演の鈕承澤(ニウ・チェンザー)は、「花ざかりの君たちへ〜花様少年少女〜」などの台湾トレンディ・ドラマを手がけた有名ディレクター。かつては侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『風櫃の少年』で主役を演じてもいます。モキュメンタリーを作ろうとしているドウズが彼自身と重なり、映画そのものがモキュメンタリーとなっている二重構造。どこまでリアルかは定かでないですが、自尊心を捨てて出資者を捜す姿や、黒社会との繋がりなど、かなり赤裸々な実態が描かれているのが面白いです。(梅)

『練習曲』
大学卒業を前に、ミンはギターを担ぎ自転車で台湾一周の旅に出る。美しい台湾の海岸沿いを巡りながら、様々な人々と出会い、自分の生まれた国の美しさと抱えている社会の問題を再認識していく。

去年のアジア海洋映画祭 イン 幕張で上映されさわやかな印象を残した作品です。風光明媚な台湾の風景を堪能できます。この映画のヒットで、主人公のように自転車で台湾一周の旅をする人が増えたそうです。主人公を演じたのは本当に聴覚障害を持ち、美術デザイナーだった東明相(イーストン・ドン)。これが映画デビューで、その後ドラマや映画に出演が続いています。(梅)


アンジェリーカ・ワン プロデューサー(撮影:宮崎)
72号に去年のアジア海洋映画祭での アンジェリーカ・ワン プロデューサーのインタビュー記事が掲載されています。

『シルク』
天才物理学者の橋本は、さまざまな電磁波を吸収できるメンジャー・スポンジを開発し、それを利用して少年の幽霊を捕獲することに成功する。ところが少年は近づく者を次々と殺してしまう。橋本は並外れた動体視力と読唇術を持つ敏腕刑事イエ・チートンに少年の背景を調べるよう依頼する。


(2007年東京国際映画祭での舞台挨拶(江口洋介 スー・チャオピン監督)--撮影・宮崎)

一昨年の東京国際映画祭で上映されました。日本から俳優の江口洋介と美術の種田陽平が参加。台湾映画としては大変規模の大きなサスペンス・ホラー映画で、2006年の興行収入第1位を記録しました。刑事役のチャン・チェンのかっこよさが光ります。(梅)

『TATTOO‐刺青』
刺青師の竹子の元に、小緑がやってきて、壁に飾られた彼岸花の図柄のタトゥーを彫って欲しいと言う。しかし、竹子にとってその図柄は特別なもの。他人には彫れないと拒む。竹子はまだ気づいていない。小緑がかつて愛した少女だと・・・

楊丞琳(レイニー・ヤン)のコケティッシュな魅力と、梁洛施(イザベラ・リョン)の凛とした美しさの対比が素晴らしい。特にイザベラの男前っぷりにはちょっとドキドキ。(梅)

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落語娘

監督:中原俊
脚本:江良至
原作:永田敏也(「落語娘」講談社刊)
主題歌:「一途な星」JiLL-Decoy associaion(PONY CANYON)
出演:ミムラ、益岡徹、伊藤かずえ、絵沢萌子、津川雅彦

子どもの頃、亡くなった落語好きの叔父のために一席披露したのがきっかけで、落語家になることを夢見てきた香須美。大学の落研に入り、学生コンクールを総なめにしたまではよかったが、プロの敷居は高かった。憧れの三松家柿紅には女を理由に弟子入りを断られ、途方に暮れていたところを師匠の三々亭平佐に拾われる。しかし、この師匠が破天荒で知られた、業界の鼻つまみ者。稽古は全くつけてくれず、挙げ句の果てに弟子の彼女にソープ代をせびる始末で、香須美は頭が痛い。
そんな師匠が、起死回生をはかって長い間封印されてきた”禁断の落語”をやると言い出した。演じた噺家たちが次々に急死したといういわく付きの噺だ。香須美の心配をよそに、平佐はどんどんと話を進めてしまう。

ここ数年、落語がブームとも言える人気です。落語を題材とした映画は、去年だけでも『しゃべれども しゃべれども』『てれすこ』『歓喜の歌』などの作品がありました。ドラマでもNHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」が人気を博しました。どれもそれぞれに趣向があり楽しい作品ですが、それらにましてこの『落語娘』は心浮き立つ、楽しい作品でした。
女前座として、男社会の伝統芸能の世界でがんばる、若き女性のさわやかさがまず素敵。まっすぐすぎる弟子と、老練な師匠のかけひきが可笑しいし、普段は見ることのできない落語の裏方世界をのぞき見るようで興味深いです。劇中には有名な古典落語を演じるシーンがありつつ、オリジナルの「緋扇長屋」という禁断噺をめぐるミステリーがあり、更には映画そのものが新作落語の世界という、見事な構成になっています。加えて演じるミムラさんの一所懸命さや、津川雅彦さんの軽みと貫禄が役にドンピシャ。幸せな映画です。
ところで、テレビのお笑いブームというのもありますが、あちらが瞬間芸で笑わせる傾向にあるのに対して、落語は修練を積んだ伝統的な話芸をじっくりと楽しむもの。どちらも同時期に人気が高いというのは、面白い傾向だなと思います。世相が暗い分だけ、大衆は明るい笑いを求めているということでしょうか。(梅)

2007年/日本映画/35mm/109分/アメリカンヴィスタ/ドルビーSRD/カラー
制作:エクセレントフィルム
配給・宣伝:日活株式会社
宣伝協力:リベロ

公式 HP >> http://www.rakugo-musume.com/

★2008年8月23日(土) シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノ3ほか、全国ロードショー

小さな赤い花(原題:看上去很美/Little Red Flowers)

監督・脚本・製作:チャン・ユアン(張元)
原作:ワン・シュオ(王朔)
脚本:ニン・ダイ
撮影:ヤン・タオ
音楽:カルロ・クリヴェッリ
出演:ドゥン・ボウェン、ニン・ユアンユアン、チン・マンヤン、シャオ・ルイ、リ・シャオフェンほか

全寮制の幼稚園に預けられることになった4歳の少年・チアン。園内では起きてから寝るまで、食べるのもトイレもみんな一緒。先生のいうとおりにできた子、良いことをした子は紙で作った赤い花が貰え、悪い子は逆に取り上げられるという決まりがあった。壁に貼られた一覧表に赤い花がないのはチアンだけ。先生の顔色を見ながら頑張ってみるが、なかなかもらうことができない。仲良しの友達もできたチアンは、そのうち「花なんかいらないやい!」とばかりに反抗的になっていく。初めはチアンと一緒にいた子たちも次第に離れていき、いつのまにか一人ぼっちになっていた。

ワン・シュオの半自伝的小説を映画化したもの。こういう体験をして今の彼になったわけですね。この主演がなかなか芯の強そうな男の子で、写真で見るワン・シュオとそっくり。全くの他人なんでしょうか?
赤い花は、指導のとおりにできたか、みんなから外れなかったか、という結果を如実に見せるものです。日本でも昔だけのことではなく、今でもこうやって比べられ競わせることや、「人と違う」ことがマイナスと見られたりすることも多いです。股割れパンツの子どもたちはとても可愛いですが、はみ出した子の嘆きは切なく、子どもの世界に形を借りた大人の話として見ると、かなり胸痛むものでありました。(白)

2006 /中国・イタリア/カラー/アメリカンビスタ/DTS/92分/
配給:アルシネテラン
8月23日(土)より、シアター・イメージフォーラムにて公開

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/akaihana/

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グローバル・メタル

監督:サム・ダン、スコット・マクフェイデン
出演:メタリカ、アイアン・メイデン、スレイヤー、YOSHIKI(X JAPAN)、オルファンド・ランド、唐朝、伊藤政則、マックス・カヴァレラ、マーティ・フリードマン 他

2006年に日本でも公開された『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』の続編。骨の髄までメタル愛が染みこんでいるカナダ人のサム・ダンとスコット・マクフェイデンのチームは、前作で「メタルはなぜ毛嫌いされるのか?」というテーマを追って、メタルの発生起源や欧米諸国でのメタルシーンの発展を紐解いていきました。
この作品が世界の30以上もの国で公開された結果、各国のメタル・ファンからメールが届き、サムたちは欧米以外の国でもメタルシーンが台頭している事実に触れます。そして彼らは「全く異なる文化、政治、宗教をバックグラウンドに持つ人々にとって、ヘヴィ・メタルはどのような意味を持つのか?」「人類学者の研究するグローバル化と、ヘヴィ・メタルも同じ道をたどっているのか?」といった疑問に取り組むため、再びカメラを持って世界各国を旅するのです。ブラジル、日本、中国、インドネシア、インド、イスラエル、アラブ首長国連邦(ドバイ)といった、本当にまったく異なるバックグラウンドでありながら、メタルを語る誰もが笑顔であることに感動を覚えます。メタルファンは何をおいても必見。メタルを知らなくても音楽が好きならば是非!(梅)

2007年/カナダ/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD/93分
提供:アミューズソフトエンタテインメント
配給:B.B.B.inc./アミューズソフトエンタテインメント
宣伝:B.B.B.inc.

★8月23日(土)より、アミューズCQNにてレイトショー!

公式 HP >> http://www.amuse-s-e.co.jp/globalmetal/

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コッポラの胡蝶の夢(原題:Youth Without Youth)

監督・製作・脚本:フランシス・F・コッポラ
原作:ミルチャ・エリアーデ「若さなき若さ」
撮影:ミハイ・マライメア・Jr
美術:カリン・パプラ
音楽:オスヴァルト・ゴリジョフ
出演:ティム・ロス(ドミニク・マティ)、アレクサンドラ・マリア・ララ(ラウラ/ヴェロニカ/ルピニ)、ブルーノ・ガンツ(スタンチュレスク教授)、アンドレ・ヘンニック(ルードルフ博士)、マーセル・ユーレス(トゥッチ博士)、アレクサンドラ・ピリチ(6号室の女性)、エイドリアン・ピンティー(学問僧)ほか

1938年、第2次世界大戦が近づくルーマニア。復活祭の夜、一人の老人がブカレスト北駅に降り立った。彼は言語学者のドミニク・マティ。研究に打ち込みすぎ、婚約者ラウラに去られてからは仕事も完成できず、人生に絶望して自殺しようとしていた。力なく歩き始めたとたん、ドミニクは雷の直撃を受ける。大火傷を負ったものの奇跡的に一命を取りとめ、医者の問いに答えられるほどに回復した。「75歳」と答えるドミニクを回りは怪訝に思う。巨大なエネルギーを浴びた肉体が若返っていたのだった。彼は主治医のスタンチュレスク教授に相談し、新たな身分証を作って亡命を企てる。保安部ばかりかゲシュタポが目をつけ始めていた。


(c)2007 American Zoetrope, Inc. All Rights Reserved.

映画界の巨匠コッポラを10年ぶりに映画作りにかりたてたのは、ルーマニアのミルチャ・エリアーデの遺した一篇の幻想小説でした。チャンスを与えられ、研究の完成と失った愛の再生を願うドミニクはティム・ロス。26歳から101歳までを演じます。ドミニクに生涯愛される女性をアレクサンドラ・マリア・ララ。3役をこなし、ただの美人女優ではないところを見せます。 身体ばかりでなく、知的能力も驚異的に発達した言語学者のドミニクは幾つもの言語をあやつり、ドミニクの影響か、ヴェロニカの意識は前世まで遡って古い言語を口にします。
研究の目的は言葉の起源を辿り、つきとめることですが、研究を保護・保存するためドミニクは新しい言語を考え出します。これには実際に大学教授が作ったものが映画に使われています。言語は新しく作り出せるんですね。そういえば『ロード・オブ・ザ・リング』でもトルーキンが考え出した「エルフ語」がありましたっけ。「幻想世界」へあなたもぜひ。(白)

2007/アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、ルーマニア/カラー/124分/シネマスコープ/ドルビーSR,SRD
配給:CKエンタテインメント

8月30日(土)より(渋谷Q-AXシネマ改め)渋谷シアターTSUTAYAにてロードショー

公式 HP >> http://www.kochou-movie.jp/

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インビジブル・ターゲット(原題:男児本色 INVISIBLE TARGET)

監督・製作・脚本:ベニー・チャン
音楽:アンソニー・チュウ
出演:ニコラス・ツェー(チャン刑事)、ジェイシー・チェン(ワイ巡査)、ショーン・ユー(フォン警部補)、ウー・ジン(ヨンサン)、アンディ・オン(ヨンイー)、ロー・ワイコン(ウォン警部)、マーク・チェン(ロー警視)、サム・リー(ホー)、リョン(エレイン・コン)ほか

香港の繁華街セントラル地区で、現金輸送車の襲撃事件が起こった。犯人グループが使用した爆発物の威力は大きく、近くの宝飾店で指輪を選んでいたチャン刑事の婚約者も死亡する。結婚式を目前にして最愛の女性を失ったチャン刑事はこの事件以来、抜け殻のようになりながらグループを追っていた。過激な捜査で知られるフォン警部補は、不審なバンを見つけるものの部下を撃たれ、ボスのヨンサンに弾丸を飲まされてしまう。失踪した兄タツを尊敬しているワイ巡査は、特捜のロー警視から、以前の事件にタツが関わっていると知らされる。チャンとフォンは、タツの行方を探ろうとワイに接近してきた。


(c)2007 Universe Entertainment Limited, Sil-Metropole Organisation Ltd., Guangzhou Ying Ming Media Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED

香港映画の原点のような、警察と犯罪集団との攻防に男たちの友情をからませたアクション満載の熱い作品です。追いつ追われつ、肉弾戦はいうまでもなく、車は爆発して吹き飛び、大きなガラスが割れ、と香港アクションの王道まっしぐら。製作・脚本・監督はベニー・チャン。近くは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』『プロジェクトBB』などジャッキー・チェンとの作品も多く、古くは『天若有情(ビデオ:アンディ・ラウの 逃避行)』(90)で鼻血のアンディを印象付けた監督です。
99年作の『ジェネックス・コップ』当時19歳だったニコラス・ツェーもすでに結婚して父親となりましたが、今回も身体を張ったアクションを見せています。出演作が続いているショーン・ユー、今まであまりいなかったタイプのジェイシー・チェン、犯人グループのウー・ジン、アンディ・オンらと共に今後の活躍が期待されます。NGシーンをお見逃しなく。みな満身創痍だったのではないでしょうか。(白)

2007/香港/カラー/129分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/
配給:アートポート
後援:香港政府観光局
宣伝:ユナイテッド・エンタテインメント
http://www.invisible-target.jp/

8月30日(土)より シネマスクエアとうきゅうほか全国順次ロードショー

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ボリウッド・ベスト BOLLYWOOD BEST

インド映画ファンの皆様、お待たせしました。やっと、やっと念願叶ってインド映画3作品が一挙上映されます。『DON 過去を消された男』は、1978年のアミターブ・バッチャン版『DON』を見ておくと、楽しさも倍増する作品。今回上映されるシャー・ルク・カーン版は昨年アジアフォーカス福岡国際映画祭でも上映されています。『たとえ明日が来なくても』『家族の四季』もそれぞれTOKYO FILMeX、東京国際映画祭で上映済みですが、見逃した方はこの機会に是非インド映画の世界に触れてみてください。

『DON 過去を消された男』(2006年)
監督:ファルハーン・アクタル
出演:シャー・ルク・カーン、プリヤンカー・チョープラー、アルジュン・ラームパール、カリーナー・カプール

 世界の麻薬密輸を牛耳るスィンガーニヤーの右腕として、犯罪組織を仕切る男ドン。11ヶ国の警察から指名手配されているが、逮捕されたことは一度もない。ドンの逮捕に執念を燃やすデシルバ警視は、遂にムンバイでドンを追い詰め、彼に瀕死の重傷を負わせてしまう。デシルバにとって、犯罪組織を壊滅させるにはドンが必要だったので、彼はドンにうりふたつのヴィジャイを替え玉にし犯罪組織に潜入させる。しかしデシルバが組織との闘いで死亡し、ヴィジャイはドンとして警察に追われることになってしまう。果たしてヴィジャイの運命は?!ドンに兄と友人を殺され復讐に燃えるローマーや、デシルバに逮捕されたことによって妻を殺されてしまったジャスジートが絡み、ハリウッド張りのアクションとどんでん返しの連続、そして、まさか、まさかのラストまで息を尽かせぬ168分!!

『たとえ明日が来なくても』(2003年)
監督:ニキル・アドヴァーニー
出演:シャー・ルク・カーン、プリティ・ジンター、サイフ・アリー・カーン

ナイナーは、祖母、母、弟と妹と共に家族でニューヨークで生活を送っていた。父親が家族を残し自殺してから祖母と母は反目し合い、家族を支えている小さなレストランも負債が増える一方で、毎日続く言い争いにナイナーは長い間笑顔を忘れてしまっていた。彼女にとっては、親友のローヒトと過ごす時間が唯一の救いだった。ある日、向かいの家にアマンが越してくる。彼は、持ち前の明るさで周りの人々と打ち解けていく。初めは、一見軽薄に見えるアマンに対して良い印象を持つことができなかったナイナーだが、いつしか愛し始めていた。しかしなぜかアマンはナイナーとローヒトを結びつけようとする…。全編ニューヨークロケのこの作品は、人の優しさ、愛情がしみじみと伝わってくる。ラストは涙、涙でハンカチは2、3枚は必携!

『家族の四季 愛すれど遠く離れて』(2001年)
監督:カラン・ジョーハル
出演:シャー・ルク・カーン、アミターブ・バッチャン、リティク・ローシャン、カージョル、カリーナー・カプール

大富豪ラーイチャンドの次男ローハンは、寄宿学校から戻ったある日、尊敬する兄ラーフルが養子だったと知る。ローハンが子供の頃、ラーフルが父親の決めた良家の娘ネイナとの縁談を断り、下町の娘アンジャリーとの結婚を通そうとして厳格な父親の逆鱗に触れ勘当されてしまっていたのだ。ラーフルとアンジャリーは逃げるようにロンドンに移住していた。すべてを知ったローハンは何とか家族の絆を取り戻そうとロンドンに向かう。かくしてローハンは素性を明かさずにラーフルとアンジャリーの元で暮らし、何とか父親と引き合わせようとするのだが…オールスターが勢揃い。セットも衣装もダンスもゴージャスで目が眩みそう。その中で本当の家族の愛を描き切り、見終わった後も余韻がずっと続く作品。

アドバイザー:松岡環
宣伝協力:プランニングOM/ライスタウンカンパニー
提供:パンドラ/プランニングOM
企画/配給:パンドラ

ファミリーレストラン ロイヤルホストではインドマジック!キャンペーン実施中!

公式 HP >> http://www.pan-dora.co.jp/

★8月30日(土)よりシネマート六本木にて公開
その後、大阪・シネマート心斎橋、名古屋・シネマスコーレにて順次公開

デイ・オブ・ザ・デッド

監督:スティーヴ・マイナー
脚本:ジェフリー・レディック
原案:ジョージ・A・ロメロ作品『死霊のえじき』
出演:ミーナ・スヴァーリ、ニック・キャノン、ヴィング・レイムス、マイケル・ウェルチ、アナリン・マッコード、スターク・サンズ ほか

コロラド州の山間部にある町で、突然軍隊による検疫隔離演習がはじまる。この町出身のサラ伍長が、久しぶりに自宅を訪れると母親が風邪らしき症状で寝込んでいる。部下のバドや弟らと共に町の病院へ母を連れて行くが、そこは同じような症状を示す患者であふれかえっていた。上からの命令は演習だったが、これはただごとではないと察知したときにはすでに遅く、患者たちが次々にゾンビと化して襲いかかってくる。

1985年の『死霊のえじき』のストーリーをリニューアルして作られたアクション&ホラー&スプラッタな作品。でもコワイのはちょっとだけ。次から次へと襲いかかるゾンビをバッタバッタとなぎ倒していく、サバイバル・ゲームのよう。主人公は可愛い女性だけれど、誰より冷静で勇気凛々。演じるミーナ・スヴァーリは『アメリカン・ビューティー』でバラの花びらに埋もれていた美少女と言えば覚えている人も多いのでは? ゾンビになっても彼女を密かに思い続けるバドくんが切なかったり、笑ってしまうシーンも多くて、カップルでお化け屋敷に行く感覚で観に行くと楽しいでしょう。(梅)

2008年/アメリカ/カラー/ヴィスタサイズ/SRD/85分/R-15
配給:ムービーアイ
宣伝協力:フリーマンオフィス

公式 HP >> http://www.dayofthedead.jp/

★8月30日(土)より、シアターN渋谷、銀座シネパトスほか全国ロードショー!!

死にぞこないの青

監督:安達正軌
脚本:森岡利行
原作:乙一「死にぞこないの青」(幻冬舎刊)
出演:須賀健太、谷村美月、城田優、入山法子、瓜生美咲、博多華丸、坂井真紀

新学期が始まり、新任教師の羽田がマサオのクラスの担任になった。ところがマサオは羽田に嫌われてしまったようで、陰湿な方法で執拗に攻撃を受けるようになる。クラスメイトも次第に羽田に同調し、マサオはすっかりイジメの対象になってしまう。何も言い返せず、誰にも相談できず、鬱々とする彼の前に、全身真っ青で拘束服を着た不気味な少女・アオが現れ、マサオに反撃しろとけしかけるようになる。

学校という密室で起きる見えにくい犯罪イジメをテーマにしたノワール作品。子どもが主役なので、ノワールと言うにはちょっと甘さが目立ちますが、最悪な大人のイジメに対する精一杯の戦いをみせてくれます。イケメン俳優の城田優が、虐待教師を演じているのが新鮮です。小さな子どもにとって学校の先生は絶対的な存在に思えます。でも、実のところ先生も弱い人間の一人だと気づくのは、自分も大人になる頃。しかしそれは遅いと非難されることではなくて、そうであった方が幸せだなと思います。(梅)

2007年/日本映画/カラー/35mm/ヴィスタサイズ/DTSステレオ/95分/PG-12
配給:ザナドゥー
宣伝協力:竜カンパニー

★8月30日(土)より、シアターN渋谷

昭和の銀幕に輝くヒロイン 総集篇【1】

今秋オープン10周年を迎えるラピュタ阿佐ケ谷で、 名物企画『昭和の銀幕に輝くヒロイン』シリーズの総集篇が開催されます。 今まで特集した女優の中から29人、全40作が前後篇に分けて上映されます。



特集上映: 『昭和の銀幕に輝くヒロイン 総集篇【1】』
開催場所: ラピュタ阿佐谷
開催期間: 2008年8月31日(日)〜10月4日(土) メイン特集
上映作品: 原節子    驟雨(1956年/監督:成瀬巳喜男)
晩春(1949年/監督:小津安二郎)
司葉子    丼池(1963年/監督:久松静児)
別れて生きるときも(1961年/監督:堀川弘通)
高峰秀子   名もなく貧しく美しく(1961年/監督:松山義三)
(1941年/監督:山本嘉次郎)
池内淳子   花影(1961年/監督:川島雄三)
新珠三千代  黒い画集 寒流(1961年/監督:鈴木英夫)
夜の鴎(1957年/監督:佐分利信)
香川京子   愛情不動(1959年/監督:佐伯幸三)
有馬稲子   抱かれた花嫁(1957年/監督:番匠義彰)
夜の鼓(1958年/監督:今井正)
芦川いづみ  結婚相談(1965年/監督:中平康)
硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962年/監督:蔵原惟繕)
倍賞千恵子  霧の旗(1965年/監督:山田洋次)
月丘夢路   白夜の妖女(1957年/監督:滝沢英輔)
藤純子    緋牡丹博徒 お命戴きます(1971年/監督:加藤泰)
桂木洋子   密会(1959年/監督:中平康)
佐久間良子  孤独の賭け(1965年/監督:村山新治)
越後つついし親不知(1964年/監督:今井正)

8/31から10/4まで、ラピュタ阿佐ヶ谷で『昭和の銀幕に輝くヒロイン総集篇1』をやっている。昭和を彩った原節子、高峰秀子、有馬稲子、新玉三千代、香川京子、有馬稲子、芦川いづみ…まだまだ名前をみただけで個性的で美しい日本の女優たちの顔が浮かんでくる。美しく、怪しく、セクシーな女性たち描いた作品がずらりと並び、観応え十分。山田洋次、中平康の若い頃の作品もラインナップされているのが嬉しい。素晴らしい企画。ハズレなしです。10/5-11/8は総集篇2も上映される。


詳しくはラピュタ阿佐ケ谷HPをご覧下さい。
http://www.laputa-jp.com/

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あいち国際女性映画祭2008

(美)様よりいただいた情報を掲載します:

7月3日に、2008年開催の記者発表がありました。
シネマ・ジャーナルには、毎年原稿を書かせていただいており、地元名古屋の映画祭として 今回で13回をむかえたことを嬉しく思います。
しかも今回は、シネマ・ジャーナル発足メンバーのお一人、泉悦子監督 「心理学者 原口鶴子の青春」が上映されます。二日目(9月4日)ウィルホールという大きな会場です。
いまから宣伝に努め、満員にしたいと張り切っております。(美)

日時   2008年 9月3日(水曜)〜9月7日(日曜)
会場   ウィルあいち
田原市
北名古屋市
弥冨市
小牧市
日進市
チケット  チケット引換券600円(5枚以上)引き換え期間(8月1日〜上映前まで)
映画指定前売り券800円
当日券1000円
交流パーティ券2000円
シネマ・ピクニック600円
販売所   ウィルあいち2階9:00〜17:00(月曜・祝日休館)
愛知芸術文化センタープレイガイド(052−972−0430)
チケットぴあ(0570−02−9999)
ローソン(前売り券)
プログラム
日本初公開 デンマーク/ナターシャ・アーティー監督「ファイター」 監督来場予定
アメリカ・インド/ロス・カウフマン、ザナ・ブリスキ監督「ボーン・イントゥ・ブロッセルズ」
オランダ/パウラ・ヴァンデルウスト監督「ティラミス」監督来場予定
愛知初公開 韓国/イム・スンレ監督「私たちの生涯最高の瞬間」監督来場予定
日本/笹部香監督「日常」監督他ゲスト来場予定
シンガポール/イェン・イェン・ウー、コリン・ゴー監督「シンガポール・ドリーム」監督来場予定
カナダ/カリ・スコグランド監督「ストーン・エンジェル」
日本/大森美香監督「ネコナデ」監督来場予定 など
ドキュメンタリー 泉悦子監督「心理学者 原口鶴子の青春」監督来場予定
田代陽子監督「空想の森」監督来場予定
山本眸古監督「小梅姐さん」監督来場予定

スケジュール、その他は公式HPでお確かめくださいませ。

http://www.will.pref.aichi.jp

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アジア海洋映画祭 イン 幕張

期日:9月5日(金)〜9月7日(日)
会場:JR京葉線 海浜幕張駅北口すぐ
★シネプレックス幕張・・・コンペ作品上映 9月5日(木)〜7日(日)
★ホテルスプリングス幕張・・・アマチュア短編ビデオ上映 9月7日(日)

主催:アジア海洋映画祭イン幕張実行委員会
千葉県・千葉市・(財)千葉県文化振興財団・(財)ちば国際コンベンションビューロー・ (株)幕張メッセ・千葉テレビ放送(株)

上映作品:
◎コンペティション参加作品

『フォトグラフ』
(インドネシア・94分)
『奇跡の海』
(日本・112分)
『海角七号』
(台湾・129分)
『少年監督』
(韓国・87分)
『バタネス』
(フィリピン・103分)
『夏休み ハートはドキドキ!』
(タイ・128分)

◎アマチュア短編ビデオ作品(無料)

チケット:コンペ部門 1作品1000円。全席自由席
8月7日(木)より発売開始
メール専用フォーム、またはFAXでお申し込みください。 FAX 043−234−1022 詳細は下記HPまで http://www.amffm.net/index.htm

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わが教え子、ヒトラー(原題:Mein Fuhrer)

監督・脚本:ダニー・レヴィ(『イカれたロミオに泣き虫ジュリエット』『ショコラーデ』)
出演:ウルリッヒ・ミューエ(『善き人のためのソナタ』)、ヘルゲ・シュナイダー、ジルヴェスター・グロート

独裁者ヒトラーに演説の指導をしたユダヤ人俳優がいた!
1944年12月、ナチス・ドイツは連合軍との戦いに相次いで敗れ、ベルリンの街も廃墟と化していた。国家存亡の危機をなんとか乗りきろうと、宣伝大臣ゲッペルスは、新年にヒトラーの演説を企てる。自信喪失し引篭もり状態のヒトラーを鼓舞しようと、演説指導のためにユダヤ人俳優グリュンバウムを収容所から呼び寄せる。1月1日まで残された日は、あと5日...

ユダヤ人監督が描いたヒトラーの物語。冒頭に「この話は真実だが、あまりに真実すぎるため、歴史の本には出てこない」と語られる。ユダヤ人虐殺の旗振りをしたヒトラーに、ユダヤ人が演説指導するなどという皮肉なシチュエーションからして信じがたい。
チーズとハムのサンドイッチを出されたグリュンバウムが、困ったような顔をしてハムを床の絨毯の下に隠す。それを隣の部屋から入ってきた犬が、嗅ぎつけたところで、もしかして、これってブラックユーモア? と気づいて、その後は、しっかり笑わせていただいた。
ちなみに、ユダヤの教えでは豚肉は禁忌で、さらに肉と乳製品は同時に食べてはいけない。文化の違いを知ってほしいという監督の思いがちらりと感じられた瞬間。
さて、1月1日、道いっぱいに集まった群集を前に立ったヒトラーだが、実は声が出ない。口パクで演技するヒトラーの演台の下で、マイクに向ったグリュンバウム。爆笑の演説は、是非劇場でご確認を! (咲)

2007年/ドイツ/95分/ドルビーSRD/ビスタサイズ

提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム

★9月6日、Bunkamuraル・シネマ他にてロードショー

公式HP>> http://www.cinemacafe.net/official/waga-oshiego/

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イントゥ・ザ・ワイルド(原題:Into The Wild)

監督・脚本:ショーン・ペン
原作:ジョン・クラカワー著 「荒野へ」(集英社刊)
撮影:エリック・ゴーティエ
編集:ジェイ・キャシディ
美術:デレク・R・ヒル
音楽:マイケル・ブルック
出演:エミール・ハーシュ(クリストファー・マッカンドレス)、マーシャ・ゲイ・ハーデン(母ビリー)、ウィリアム・ハート(父ウォルト)、ジェナ・マローン(妹カリーン)、ブライアン・ダーカー(レイニー)、キャサリン・キーナー(ジャン)、ヴィンス・ヴォーン(ウェイン)、クリステン・スチュワート(トレイシー)、ハル・ホルブルック(ロン・フランツ)ほか

1990年、ジョージア州の大学を卒業したクリスは、「お祝いに新車を買ってあげる」という両親に「まだ充分乗れる車があるのに。僕が新車なんか欲しがると思った?」と答える。彼には大きな計画があった。通帳に残っていた2万4千ドルを全て慈善団体に寄付し、古いダットサンを駆って誰にも告げずに旅に出た。これが始まりだった。アリゾナ州で鉄砲水に遭って車を捨て、カリフォルニアでヒッピーのカップル、レイニーとジャンに出会う。しばらく一緒にすごした後、砂浜に「ありがとう」の言葉を残してクリスはそこから去っていく。サウスダコタの農場で働き始めたのは、荒野の真ん中で生きるのに必要な準備をするためだった。 両親は息子が姿を消してしまったことにようやく気づく。妹カリーンは、仲の良かった兄の気持ちがよくわかった。クリスは誰にも探してもらいたくないのだ。


(c)MMVII by RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC and PARAMOUNT VANTAGE, A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved.

1992年、アラスカの荒野でクリストファー・マッカンドレスという青年の遺体が発見されました。裕福な家庭に育ち、優秀な頭脳を持つ彼がなぜここで死んだのか。彼の残した日記を手がかりに、2年の間に彼が辿った道、関わった人々に取材したジョン・クラカワーは、クリスを自分自身のように近しく思ったそうです。無謀だ、荒野への無知が招いた死だ、との批判も起きた反面、彼が何もかも捨てて始めた自由な生活、大地から得るものだけを糧に生き、そして掴んだことに共感した人も多く「荒野へ」はベストセラーとなりました。
ショーン・ペン監督がその原作に出会って以来映画化を熱望し、10年かけて実現した力作。 冒頭は行方の知れない息子の声を聞く母親のシーンから始まります。遠く離れながら通じた親子の情にまず打たれました。シーンは2年前に遡り、家庭の複雑な事情やクリスが嫌悪したもの、憧れたものを少しずつ見せてゆきます。クリスをひきつけてやまなかった自由な旅の行程、アラスカの大地への畏怖と憧憬がダイナミックなカメラで存分に捕らえられています。純粋な魂を持つクリスを演じたのは、エミール・ハーシュ。信念を曲げない頑固さと、出会った人々に深い印象を残す魅力を持った青年を熱演。ぜひ大きなスクリーンでご覧下さい。(白)

2007/アメリカ/カラー/148分/シネマスコープ/ドルビーSRD/
配給:スタイルジャム 配給協力:ピックス
宣伝:メゾン

2008年9月6日(土)〜シャンテシネ、テアトルタイムズスクエアほか全国拡大ロードショー

幸せの1ページ(原題:NIM'S ISLAND)

監督・脚本:ジェニファー・フラケット&マーク・レヴィン
製作・脚本:ポーラ・マズール
原作:ウェンディ・オルー
撮影:スチュアート・ドライバーグ
美術:バリー・ロビソン
音楽:パトリック・ドイル
出演:ジョディ・フォスター(アレクサンドラ・ローバー)、アビゲイル・ブレスリン(ニム・ルソー)、ジェラルド・バトラー(アレックス・ローバー/ジャック・ルソー)、マイケル・カーマン(キャプテン)ほか

—人生なんてたった1行で変えられる—

冒険小説家のアレクサンドラには秘密がある。彼女が次々と出すベストセラーのヒーローとは正反対。対人恐怖症で潔癖症、郵便受けまで行くのにも一苦労の引きこもりだったのだ。家から一歩も出ず、小説のネタを探していたアレクサンドラは、ネットにあった海洋生物学者のジャック・ルソーの記事に目をとめる。
そのジャックは一人娘のニムと旅を続け、今は火山のある孤島に住んでいた。ニムはアレクサンドラの冒険小説の大ファン。主人公のアレックス・ローバーはニムのヒーローだった。ジャックが研究のためしばらく海に出ることになったが、「親友の動物たちがいるから平気」とニムは父を送り出す。一人留守番をするニムの元へ、アレックス・ローバーからのメールが届く。

ジョディ・フォスターは、いつも眉を寄せて口をきゅっと結んだヒロインの印象でしたが、今回はとびきり変わった設定です。冒険小説家なのに、外出恐怖症、極度の潔癖症で消毒用のアルコールを買いだめしないと心配でたまらない・・・。今までにないハイテンションで、コミカルな彼女が見られます。そんな彼女とも知らず、SOSを送るニムは『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリン。動物好きでしっかりものの少女を生き生きと演じています。『オペラ座の怪人』、『300』で主演のジェラルド・バトラーは、子煩悩なパパ、ジャックと、小説の主人公アレックス(インディ・ジョーンズみたい)の全く違う雰囲気の二役。 他の子どもたちと交流することなく育ってきたニムと、家から出られなかったアレクサンドラはちょっとだけ似ていて、その二人が出会うことで新しい1ページが加わります。家族で観るのにぴったりの作品。オープニングもなかなか楽しいです。(白)

2008年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD,SDDS/1時間36分
配給:角川映画
http://www.shiawase1.jp
(C) Copyright Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
9月6日(土)より、丸の内ピカデリー2ほか、全国ロードショー!!

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キズモモ。

監督:山本透
脚本:吉井真奈美、山本透
原案:細井真奈美(第2回UNITED CINEMAS シネマプロットコンペティション応募作品より)
出演:馬場徹、古川雄大、河合龍之介(特別出演)、水木薫、小林且弥(特別出演)、甲本雅裕、織本順吉

ただ立っているだけで必死だった・・・

フリーターのアキはいつものように自転車でふらりと旅に出る。行き先は決めていない、気ままな旅。ところが途中でチェーンが切れてしまい、たまたま出会った時計職人のお宅に一晩泊めてもらうことになる。そこには夫婦と、もう一人住み込みで働く将也という青年がいた。アキは将也が幼なじみの勇人にそっくりなのに驚き、戸惑う・・・。アキの心の傷がうずき出す。

イケメン二人が並ぶ試写状を見て、てっきりBLかと思っていたら、全然違いました。人当たりはいいけれど、とらえどころのない青年が、運命の出会いによって封印していた心の傷と向き合う繊細なお話です。(梅)

2008年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/70分
製作:日本出版販売/モブキャスト/ジェネオン エンタテインメント/ダブ
制作:ダブ
配給:日本出版販売/モブキャスト/ダブ
宣伝:ビー・ウイング

公式 HP >> http://kizumomo.com/

★9月6日(土)より、ユナイテッド・シネマとしまえん、ユナイテッド・シネマ浦和、渋谷Q-AXシネマにて公開

グーグーだって猫である

監督・脚本:犬童一心
原作:大島弓子「グーグーだって猫である」角川書店
撮影:蔦井孝洋
美術:磯田典宏音楽:細野晴臣
主題歌:「good good」小泉今日子・細野晴臣
出演:小泉今日子(小島麻子)、上野樹里(ナオミ)、加瀬亮(沢村青自)、大島美幸(加奈子)、村上知子(咲江)、黒沢かずこ(美智子)、林直次郎(マモル)、伊阪達也(タツヤ)、大後寿々花(サバ)、マーティ・フリードマン(ポール)ほか

売れっ子の天才漫画家、麻子さんの愛猫「サバ」が静かに息を引き取りました。気づいてやれなかった麻子さんは、ショックで仕事ができなくなってしまいます。麻子さんを心配したアシスタントたちは、なんとか元気づけようとするのですが、立ち直るには時間がかかるようです。しばらくたったある日、ペットショップに引き込まれるように入った麻子さんは、アメリカンショートヘアの子猫に吸い寄せられてしまいました。かくして、子猫は「グーグー」と名づけられて麻子さんちの新しい仲間になったのです。元気で冒険心いっぱいのグーグーは、麻子さんに思わぬ出会いももたらしてくれました。

大島弓子さんの大ファンだという犬童一心監督が、今も連載中のエッセイ漫画を映画化しました。「綿の国星」で猫を擬人化して見せた、ちょっと不思議な感覚は私も大好きでした。しばらく漫画から遠ざかっていたので、この映画を観て初めて大島弓子さんが闘病していたのを知って驚いたり、子どもの頃憧れた漫画家の生活を見せてもらえて嬉しかったりしました。 愛猫サバの別れの場面は、ペットと別れてきた人には号泣ものです。忘れがちですが、小さな生き物の時計は人間の何倍も早く動いているのでした。グーグーはエプロンドレスの女の子になったりはしませんが、麻子さんと回りの人たちに笑顔をプレゼントします。毎日の生活のちょっとした楽しみや、人や動物と繋がって生きることを思い出させてくれる柔らかいやさしい映画です。
完成披露試写の舞台に登場した小泉今日子さんは、実際に猫と暮らしていて「おかあさん」と呼んでいるのだとか。原作にはない役柄で登場した加瀬亮さんはどの役をやってもこれが素じゃないか、と思わせます。上野樹里さんもこの映画以来猫好きになったとか。猫の手は役に立たない代表になっているけれど、猫も犬もそばにいるだけで実はたくさんのものを与えてくれているのでした。(白)

2008/日本/カラー/1時間56分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
http://www.gou-gou.jp/
(C) 2008『グーグーだって猫である』フィルム・コミッティ
9月6日(土)より、シネマライズ、シネカノン有楽町1丁目ほかにてロードショー

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落下の王国(原題:The Fall)

監督・プロデューサー:ターセム
脚本:ターセム、ニコ・ソウル・タナキス、ダン・ギルロイ
撮影:コリン・ワトキンソン
プロダクション・デザイン:ゲド・クラーク
音楽:クリシュナ・レヴィ
衣裳:石岡瑛子
出演:カティンカ・アンタルー(アレクサンドリア)、リー・ペイス(ロイ・ウォーカー/黒山賊)、ジャスティン・ワデル(看護士エヴリン/エヴリン姫)、ダニエル・カルタジローン(シンクレア/総督)、エミール・ホスティナ(アレクサンドリア父/黒山賊)、ロビン・スミス(ルイジ/俳優仲間)、ジートゥ・バーマ(インド人/オレンジ農園の使用人)、レオ・ビル(ダーウィン/病院職員)、マーカス・ウェズリー(オッタ・ベンガ/氷配達人)、ジュリアン・ブリーチ(霊者/オレンジ農園使用人)、キム・アーレンブルグ(医師/アレキサンダー大王)ほか

— 夜明けの来ない夜はない それは、落ちてはじまる物語 —
1915年ロサンゼルスの病院。映画スタントマンのロイは、恋人が主演俳優のシンクレアに心を移したのにショックを受け、撮影中に大怪我をして入院中だ。彼のベッドに5歳の少女アレクサンドリアの手紙が風に吹かれて舞いこんでくる。オレンジ農園で木から落ちて腕を骨折した彼女は、人懐こく誰にでも話しかけ、病院中の人気者。ベッドから降りることもできず失意のロイは、彼女を利用して自殺用の薬を手に入れようと思いつく。歓心を買うため、ロイが語るアレキサンダー大王にまつわる物語に、アレクサンドリアは夢中になった。

「構想26年、撮影期間4年、映像の魔術師タ−セムが魂を込めて作り上げた」のキャッチフレーズに納得!の素っ晴らしい映像美です。病院での生活とロイの語る空想の物語が交互に描かれ、目を輝かせて聞き入るアレクサンドリアと同じように一喜一憂しました。こちらは世界各地でのロケと、石岡瑛子さんの衣裳に彩られた映像つきですので、彼女の何倍も楽しんだことになります。物語の中には彼らの回りの人々が奇抜な衣裳で登場し、目を見張るような背景の中で縦横無尽に活躍します。
アレクサンドリア役のカティンカとロイ役リーのやりとりは、演技にみえずごく自然ですがそれもそのはず、カティンカはリーが本当に動けないとずっと信じていたのだとか。ほぼ即興という二人のシーンは、感情の動きそのままにリアルです。
ターセム監督は「作品の自由を奪われないために、家以外の全てを売って」この作品を作り上げたそうです。なんともゴージャスな自主制作映画です。次回作のため資金が回収されるよう、この作品が世界中でヒットしてほしいと思ってしまいました。ぜひ大きなスクリーンで堪能してください。ラストの無声映画のシークエンスも必見!(白)

2006/アメリカ/カラー/ビスタ/118分/
配給:ムービーアイ・エンタテインメント

http://www.rakka-movie.com/

9月6日(土)より、シネスイッチ銀座、渋谷シネ・アミューズCQN、新宿バルト9ほか全国ロードショー

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭2008

会期: 9月12日(金)〜9月21日(日)
場所: ソラリアシネマ1(福岡市中央区天神2-2-43 ソラリアプラザ7F)
エルガーラホール(福岡市中央区天神1-4-2 エルガーラビル8F)他

18回目を迎えたアジアフォーカス・福岡国際映画祭。今年の特集は、アジアの西の端、トルコ。それぞれ趣の違う興味深い4本が上映されます。また、パキスタンの作品は初登場。先日、『神に誓って』のショエーブ・マンスール・ハーン監督が来日されました。 (8月10日付スタッフ日記をご参照ください。) ほかにも、アジアフォーカスでしか見られないかもしれない作品がライナップされています。協賛企画も盛りだくさんです。是非ホームページでご確認を!

公式HP>> http://www.focus-on-asia.com

上映作品
◇トルコ・シネマ・ルネッサンス
至上の掟(トルコ)
天使の墜落(トルコ・ギリシャ)
卵(トルコ・ギリシャ)
インターナショナル(トルコ)

◇アジアの新作・話題作
サービス圏外(シリア)
サントゥール奏者(イラン)
すずめの唄(イラン)
神に誓って(パキスタン・イギリス・アメリカ)
盗まれた花嫁(キルギス・カザフスタン)
オーム・シャンティ・オーム(インド)
881 歌え!パパイヤ(シンガポール・日本)
ポケットの花(マレーシア)
サイアム・スクエア(タイ)
どん底(フィリピン)
愛を信ず(中国)
愛の歯(中国)
生きていく日々(香港・中国)
マッド探偵(香港)
神も人も犬も(台湾)
7月32日(韓国)
見知らぬ国で(韓国)
パボ(韓国)
ネコナデ(日本)

★李安監督特集
推手(台湾)
ウェディング・バンケット(台湾)
恋人たちの食卓(台湾)

★特別上映
クロッシング・ザ・ブリッジ(トルコ・ドイツ)
友だちのうちはどこ?(イラン)

至上の掟


インターナショナル


すずめの唄


盗まれた花嫁

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フライングラビッツ

監督:瀬々敬久
脚本:山名宏和
原作:深田祐介
撮影:斉藤幸一
音楽:安川午朗
主題歌:「ギフト」ポルノグラフティ
出演:石原さとみ(早瀬ゆかり)、真木よう子(垣内千夏)、渡辺有菜(早瀬ゆかり)、滝沢沙織(水野樹)、堀内敬子(藤代敦子)、柄本佑(彼氏)、大杉漣(上司)、高田純二(林監督)、白石美帆(マネージャー)ほか

早瀬ゆかり22歳。子どものころから憧れのキャビン・ アテンダント(CA)になった。これから研修というとき、同姓同名の人間と間違えられ、バスケットボール・チーム"ラビッツ"の合宿所に送り込まれる。まったくのど素人のゆかりのどこが気に入ったのか、監督の推薦で無理矢理入部させられる事になってしまった。厳しい練習とCAの研修、その合い間に彼氏とも会いたい!ゆかりはシャカリキに頑張ってみるのだが。

どっちをとるかで悩むのでなく、どっちも好きだからと手ばなさずに頑張るゆかり。少々無謀だけど応援したくなるキャラを、石原さとみが元気に演じています。Wリーグ(Women's Japan Basketball League)とJALの全面協力を得て、研修のようすやラビッツの現役の選手も交えたバスケの試合など、リアルで迫力あるシーンが見られます。個性豊かなチームメイトの女優陣もクラインクイン前に猛練習を重ねて、吹き替えなしで撮影に臨んでいます。(白)

2008/日本/カラー/
配給:東映
http://www.flying-rabbits.jp/
(c)2008「フライングラビッツ」製作委員会
9月13日(土)よりLet's Fly!!

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ああ、結婚生活(原題:MARRIED LIFE)

監督:アイラ・サックス
脚本:アイラ・サックス、オーレン・ムーヴァーマン
原作:ジョン・ビンガム著「Five Roundabouts to Heaven」
撮影:ピーター・デミング
美術:ヒューゴ・ルジック=ウィオウスキー
編集:アフォンソ・ゴンサルヴェス
音楽:デイコン・ハインクリフェ
音楽監修:スーザン・ジェイコブ
出演:クリス・クーパー(ハリー・アレン)、ピアース・ブロスナン(リチャード)、パトリシア・クラークソン(パット・アレン)、レイチェル・マクアダムス(ケイ)、アナベル・カーシャウ(ジョーンズ)ほか

1940年代のアメリカ。ハリーは会社を経営し、高級住宅地で妻と二人で暮らしている。一見理想的な夫婦、穏やかな生活に見えるが、実はハリーにはブロンドの若い愛人ケイがいた。自分に頼りっぱなしの妻パットを傷つけるだろうと、別れ話を持ち出すことができない。いっそ殺してしまおうと薬を手に入れる。ハリーは親友のリチャードに秘密を打ち明け、ケイを紹介するのだが、リチャードもすっかり心を奪われてしまう。


(C)2007 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

長年連れ添った夫婦はほんとうに相手のことをわかっているのでしょうか?
いやいやそんなに簡単じゃありません。知っている、とわかっているは違いますからね。自分がいなくてはダメだと思うあたり、もうわかっていないのです。クリス・クーパー演じる自己中な夫は、不器用にも殺人計画を立て、これがうまくいくのかいかないのか、観客はちょっとハラハラします。40年代に設定しているのは、何もかも便利になった現代では成り立たないお話だからでしょう。時代背景が変わっても人の心はそうは変わらないので、この毒のあるドラマも楽しめます。(白)

2007/アメリカ/カラー/90分/ドルビーデジタル/ビスタサイズ/
提供・配給:プレシディオ
http://marriedlife.jp/

9月13日(土)〜Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

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青空ポンチ

監督:柴田剛
原作・脚本:いこま
撮影:近藤龍人
主題歌:「恋のルアー」ジッタリン・ジン
挿入歌:「夏祭り」ジッタリン・ジン
出演:石田真人(カツヲ)、板垣善之(マスオ)、小池里奈(玉枝)、山本剛史(舟木)、戸田比呂子、 内堀義之、蛭子能収、神戸浩、北山ひろし、あじゃ

ミュージシャンとして上京したものの突然地元に戻ってきたカツヲ(21)。地元で家業を継いだ元バンド仲間のマスオ(21)。トラブルで大阪から田舎に住む祖父の元へ預けられた玉枝(14)。出世の夢を失った元エリートサラリーマン舟木(27)。ひょんな事からこの4人がバンドを結成するコトに。目指すは地元の花火大会のイベントライブ! しかしカツヲの意味不明な言動からバンドは空中分解の危機に陥ってしまう…。

映画を見ているというより、ドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥りました。落ちこぼれ4人組と一緒に忘れられないひと夏を過ごしたような気分です。舞台は香川県で、タイトルのような素敵な「青空」の映像が印象に残ります。
完成披露試写会では、監督、プロデューサー、主要キャストの方々が登壇しました。(裕)

2008年/日本映画/90分(予定)
製作・配給:月眠
公式HP >> http://www.aopon.jp

★9月13日(土)よりユーロスペースにてレイトショー

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おくりびと

監督:滝田洋二郎
脚本:小山薫堂
撮影:浜田毅
美術:小川富美夫
編集:川島章正
音楽:久石譲
照明:高屋齋
録音:尾崎聡
出演:本木雅弘(大悟)、広末涼子(大悟の妻、美香)、山崎努(NKエージェンシー社長佐々木/ベテラン納棺師)、余貴美子(NKエージェンシーの事務員)、吉行和子(銭湯のおばちゃん)、笹野高史(いつも銭湯にいる)ほか

東京のオーケストラでチェロ奏者をしていた大悟は、楽団の解散でチェロを諦め、故郷の山形に帰ることにした。ウェブデザイナーの妻、美香もあっさり同意してくれた。故郷には母の遺した家があるが、問題は職さがしである。ところが願ってもない好条件の求人広告が目に入り、早速面接に行くと、それは安らかな旅立ちをお手伝いする納棺の仕事だった!慌てる大悟に、社長の佐々木は法外な月給を示す。それに面接に来ただけなのに、2万円もくれた。社長に「少しやってみて、考えれば?」と言われるがまま、引き受けてしまう大悟だった。


(C)2008 映画「おくりびと」製作委員会

もう五年以上前に、釣崎清隆監督の『死化粧師オロスコ』を観ました。コロンビアの葬儀屋街の老エンバーマー、オロスコのドキュメンタリ−です。目を覆う場面もあったはずですが、今、印象に残っているのは、オロスコの迷いのない手順と、死体に対しての尊厳と愛だけ。さて、日本ではどうなんだろう?
これは、主役本木が十数年前に読んだ「納棺夫日記」(青木新門著)を映画関係者に紹介したことから、映画化が実現したもので、本木の作品に対する意気込みが伝わって来ました。彼の品のある顔立ちや手元の動きに見とれました。まるで手品師の様。それにチェロもなかなかの腕前。深刻な場面もありますが、こんなに丁寧に愛を込めておくられたら・・・と感じ入ってしまいました。
この作品の脚本は、東京の言葉にも、柔らかい山形弁にも、独特なリズム感があり驚きました。(美)

2008/ヴィスタサイズ/カラー/ドルビーSPD/2時間10分/
http://www.okuribito.jp/
9月13日(土)〜丸の内プラゼ−ルほか松竹系にて全国ロードショー

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アキレスと亀

監督・脚本・編集・挿入画:北野武
出演:ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬、伊武雅刀、大杉漣、筒井真理子、吉岡澪皇、徳永えり、大森南朋

真知寿(まちす)は、田舎町の裕福な家のお坊ちゃま。美術好きの父親は、画商や画家を呼び寄せては、絵画を買って家中に飾っている。そんな環境で育った真知寿は、絵を描くのが何よりも大好きだ。ある日、屋敷を訪れた画家に絵を褒められ、赤いベレー帽を貰った真知寿は、画家になることを夢見るようになる。だが、父の会社が倒産し、父は芸者と心中。母も後を追って自殺してしまい、真知寿の人生は一転する。
青年になった真知寿は、新聞配達や印刷工場で働いたお金で美術学校に通う。父と付き合いのあった画商の息子に絵を見せるが、「技術的に優れていても普通の絵では...」と言われる。新たな芸術を試みる真知寿に、バイト先の事務員幸子が共感し、二人は結婚する。
幸子の助けを借りて創作に励むが、中年になっても真知寿の絵はいっこうに売れない...


©2008『アキレスと亀』製作委員会

少年時代の真知寿が実に可愛くて、なぜあんな不細工な青年に?と思わず笑ってしまいます。(柳憂怜さん、すみません!)北野武の映画は、過激な暴力シーンがあまり好きじゃなかったのですが、今回は絵画創作で暴力的な光景が展開されて、これはもう、笑わずにはいられません。どんな逆境にあっても自分の好きなことを貫く姿には感服! 真知寿と幸子の夫婦愛にも、ほろっとさせられました。(咲)

『アキレスと亀』タイトルの由来
古代ギリシアの哲学者ゼノンが考えた、解くことの出来ない命題の名称。
本作品においては、【正解のない芸術と、その芸術で評価されることを夢見る主人公】の姿を比喩する言葉として、引用されているとのことです。

製作: バンダイビジュアル・テレビ朝日・東京テアトル・WOWWOW・オフィス北野
配給: 東京テアトル/オフィス北野

2008/日本/119分/カラー/ヴィスタビジョンサイズ/ドルビーSRD

◆9月10日 オリジナル・サウンドトラック発売!
 音楽: 梶浦由記  発売元:ドリーミュージック

★9月20日(土)テアトル新宿、銀座テアトルシネマほか全国ロードショー!!

公式HP>> http://www.office-kitano.co.jp/akiresu

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次郎長三国志

監督:マキノ雅彦
脚本:大森寿美男
撮影:加藤雄大
美術:小澤秀高
音楽:宇崎竜童
殺陣:玄海竜二
出演:中井貴一(次郎長)、鈴木京香(お蝶)、北村一輝(小政)、温水洋一(石松)、近藤芳正(鬼吉)、笹野高史(大五郎)、岸部一徳(大政)、木下ほうか(鶴吉)、山中聡(綱五郎)、佐藤浩市(勝蔵)、竹内力(三馬政)、蛭子能収(久六)、大友康平(佐太郎)、真由子(おきん)、高岡早紀(お仲)、前田亜季(お千)、木村佳乃(お園)ほか

— 義理に弱いが喧嘩にゃ強い。東海道の暴れん坊次郎長一家が帰ってくる —

新婚の恋女房お蝶をおいて渡世修行に出かけた清水の次郎長。情に厚くて義理堅い次郎長を慕って桶屋の鬼吉、関東綱五郎、大政、小政、森の石松、坊主くずれの法印大五郎と子分たちが集まってきた。3年ぶりに戻った清水で、ようやくお蝶とおちつき一家を構えることができ、男伊達次郎長の名前は広まっていく。初めての花会も催して、そうそうたる親分衆にもお目どおり。一方、子分たちと因縁の深い悪党三馬政が近くに現れたことがわかり、みんなは色めきたつ。

「清水の名物は?」と聞かれたらなんと答えるでしょう。最近の人は「清水エスパルス」?私も含めてある年齢以上の人は「清水といえば次郎長」と浮かぶのではないでしょうか。実在した最期の侠客とも言えるこの人は、はじめは講談や読み物、後には映画で知られていきました。その次郎長映画(9本+4本)を撮ったのがマキノ雅弘監督。
初監督の『寝ずの番』で軽妙洒脱な手腕を見せたマキノ雅彦監督の第2弾は、その叔父の代表作のチャンバラ映画でした。長い話のまずは小手調べといったところか、『寝ずの番』に続いて大森寿美男とタッグを組み、主演も引き続き中井貴一。達者な面子を集めた清水一家は、テンポよくホロリ&ワクワクさせ、楽しめました。豪華なキャストに続編を期待!!(白)

2008/カラー/126分/ビスタサイズ/SRD/
配給:角川映画
http://www.jirocho-movie.jp/
(C)「次郎長三国志」製作委員会
9月20日(土)〜角川シネマ新宿、シネカノン有楽町2丁目、渋谷アミューズCQNほかにてロードショー

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東南角部屋2階の女

監督:池田千尋
脚本:大石三知子
撮影:たむらまさき
美術:三ツ松けいこ
音楽:長島寛幸
出演:西島秀俊(野上)、加瀬亮(三崎)、竹花梓(涼子)、香川京子(藤子)、高橋昌也(友次郎)、塩見三省(石山)ほか

野上の父親が莫大な借金を残して死んでしまった。祖父所有の土地を売却することが解決策だと野上は考えるが、祖父の友次郎は沈黙するばかり。その土地には祖父の弟の婚約者だった藤子所有の古アパートが建っている。野上が会社を辞めると聞いて、取引先のクレーム攻勢に疲れた後輩の三崎も退職してしまう。同棲していた彼女は「相談もなく辞めるなんて」と怒り、三崎は追い出されて行き所がない。野上とお見合いをした涼子も更新料が払えず、二人は藤子のアパートの住人となった。このアパート2階の東南角部屋は、鍵が開かず、隣の部屋には不思議な穴があった。

池田千尋監督の長編第1作。謎の東南角部屋を中心に、若者3人と、人生の第一線を退いて静かに生きている人々との小さな交流を描いています。何かと不満を抱えている若者たちがどこか及び腰で、大英断のように退職してもちっとも変わっていません。問題を先送りしてるだけ、と言い争うのはそれに自分でも気がついているから。ざらざらした画面の中、そんな若い男女の気持ちはよく描けていると思うし、香川京子さんのたたずまいは美しいです。しかし部屋の謎を長くひっぱるのと、高橋昌也氏が無言の演技ばかりというのは惜しい気がしました。(白)

2008/日本/104分/35mm/スタンダード/DTS-SR
製作・配給:トランスフォーマー

公式 HP >> http://www.tounankadobeya.com/

★9月20日(土)より心ゆさぶるロードショー

韓流シネマ・フェスティバル2008秋 ラブ&ヒューマン

会期:
9月27日(土)〜12月19日(金)シネマート六本木
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/

10月18日(土)〜11月14日(金)シネマート心斎橋
http://www.cinemart.co.jp/theater/shinsaibashi/

作品:
『M(エム)』
監督:イ・ミョンセ『デュエリスト』 主演:カン・ドンウォン/イ・ヨニ
人気絶頂のベストセラー作家、ミヌ(カン・ドンウォン)は最近誰かに見つめられているような気がしてならない。同棲中の恋人との結婚も間近というのに、原稿は少しも進まず不眠症になっている。ある日、見知らぬ小路に迷い込んだミヌは「ルパン」というバーで少女ミミ(イ・ヨニ)に出会う。

凝った美術と映像が印象的なラブストーリー。迷路のようなミヌのマンション、光と闇の演出がミステリアスな空間を作っています。初恋の想い出のシーンでは、高校生役のドンウォンとヨニが違和感なく、ほほえましいカップルを演じています。いろんな表情のドンウォンが見られてファンは必見。(白)

『ハピネス』
監督:ホ・ジノ『八月のクリスマス』 主演:イム・スジョン/ファン・ジョンミン
ヨンス(ファン・ジョンミン)はソウルで奔放な生活をし、経営していた店を潰した挙句、身体を壊してしまった。田舎の療養所にやってきた彼が出会ったウニ(イム・スジョン)は、重い肺疾患で長く闘病中だった。つつましくも明るい彼女とヨンスはいつしか恋に落ち、二人は一緒に暮らし始める。

ホ・ジノ監督が喧騒のソウルと田舎での静かな生活を対比して描きました。二つの間で揺れ動く男と、彼を一途に愛する幸薄い女のラブ・ストーリー。監督の演出と、それに応える俳優、ロケーションも良くて感動のドラマとなっています。『M』でカン・ドンウォンの婚約者を演じたコン・ヒョジンが、この作品ではソウルの恋人役を演じ、大韓民国映画大賞 女優助演賞を獲得しています。青龍映画監督賞、韓国映画評論家協会賞 脚本賞。(白)

『ビューティフル・サンデー』
監督:チン・グァンギョ 主演:パク・ヨンウ/ナムグン・ミン

『私の恋』
監督:イ・ハン 主演:カム・ウソン/チェ・ガンヒ/オム・テウン





『愛(サラン)』
監督:クァク・ギョンテク『タイフーン』 主演:チュ・ジンモ/パク・シヨン

『優雅な世界』
監督:ハン・ジェリム『恋愛の目的』 主演:ソン・ガンホ/オ・ダルス

『6年目も恋愛中』
監督:パク・ヒョンジン(第一作) 主演:キム・ハヌル/ユン・ゲサン
編集者のタジン(キム・ハヌル)とCMプロデューサーのジェヨン(ユン・ゲサン)は付き合って6年のカップル。慣れすぎたあまりの不満もたまり、言わなくてもいいことまでつい口にしてしまう。ジェヨンはバイトの女の子の積極的なアプローチを受け、タジンは担当のブックデザイナーの言葉に心がときめくのを感じる。

『僕らのバレエ教室』('04)のユン・ゲサンの兵役後の復帰第1作。すっかり大人になった感じですが、" g.o.d."の活動を打ち切って映画デビューした当時すでに26歳だったのでした。同い年のキム・ハヌルとのリアルな台詞のやりとりは、痛かったり可笑しかったり。観る人の共感を呼びそうです。(白)

『セックス・イズ・ゼロ2』
監督:ユン・テユン 主演:イム・チャンジョン/ソン・ジヒョ

『正しく生きよう』
監督:ラ・ヒチャン 脚本:チャン・ジン 主演:チョン・ジェヨン/ソン・ビョンホ

『俺たちの街』
監督:チョン・ギリョン 主演:オ・マンソク/リュ・ドクファン/イ・ソンギュン

『宮女(クンニョ)』
監督:キム・ミジョン 主演:パク・チニ/ユン・セア/ソ・ヨンヒ

『ファム・ファタール』
監督:イ・サンギ 主演:ソン・イェジン/キム・ミョンミン
凶悪犯罪担当のチョ刑事(キム・ミョンフン)は、ヤクザとも繋がるスリ集団の捜査を始めた。高度なテクニックと残虐性を持ったグループのボスは、若いペク・チャンミ(ソン・イェジン)。妖艶な美貌の彼女と出会ったチョ刑事は、正体を知らぬまま惹かれていく

ソン・イェジンがこれまでの清純派のイメージを覆すファム・ファタールを熱演。傷を抱えた刑事を誘惑し、手玉に取ります。セクシーなファッションと、スリの手口も必見。ベテラン女優のキム・ヘスクが泣かせどころをしっかり抑え、犯罪アクション映画に深みを与えています。大鐘賞映画祭女優助演賞(キム・ヘスク)。 (白)

『リターン』
監督:イ・ギュマン 主演:キム・ミョンミン/ユン・ジュンサン/キム・テウ

『最高のパートナー』
監督:キム・ジョンヒョン 主演:アン・ソンギ/チョ・ハンソン

『楽しき人生』
監督:イ・ジュニク『王の男』 主演:チョン・ジニョン/キム・ユンソク/チャン・グンソク

『星から来た男』
監督:チョン・ユンチョル『マラソン』 主演:チョン・ジヒョン/ファン・ジョンミン

『喧嘩 ─ヴィーナスvs僕─』
監督:ハン・ジスン『エンジェル・スノー』 主演:ソル・ギョング/キム・テヒ

チケット:
シネマート六本木
1回券(前売・当日共) : 1,800円(税込) ※日時・座席指定

【購入方法】
1) 7月31日発売の"ぴあ関東版・関西版"にて先行ハガキ予約開始(8月6日締切)※一部作品
2) 8月15日(金)より@電子チケットぴあにてプレリザーブ開始
3) 8月23日(土)より@電子チケットぴあ及びシネマート六本木劇場窓口にて一般販売開始(各上映日の2日前まで販売)

チケットぴあでの購入の際は下記のPコードが必要になる場合がございます
《Pコード》
 554-423 (9/27〜10/31上映分)
 554-424(11/1〜28上映分)
 554-425(11/29〜12/19上映分)
 554-426(スクリーン1上映分)
 554-427(スクリーン2上映分)


◎特別チケット
ハンフェス5thアニバーサリー 5枚綴り記念チケット
ご好評頂いております5枚綴りチケットが今回も登場。限定500セット。
価格 : 7,500円(税込) [1,500円x5枚]
※シネマート六本木では前売り券が完売の回には使用できません。(当日券販売のある作品のみ有効)

タイムスケジュールほか詳細は下記HPまたは、劇場HPを参照してください。
http://www.cinemart.co.jp/han-fes2008/
●韓国映画『ハピネス』ティーチ・イン開催決定!!

ホ・ジノ監督『ハピネス』で語る<愛と人間>
日時:10月3日(金)19:20上映回 / 10月4日(土)19:20上映回
会場:シネマート六本木

ハピネスは9月27日(土)よりロードショー

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シロタ家の20世紀(英題:The Sirota family and the 20th century)

監督:藤原智子(『杉の子たちの 50年』『ルイズその旅立ち』『伝説の舞姫 崔承喜』『ベアテの贈りもの』
企画:藤原智子、富田玲子、白井堯子
音楽:Leo Sirota 園田高弘 藤田晴子 Polskie Nagrania

藤原監督が前作『ベアテの贈りもの』で焦点を当てたベアテ・シロタ・ゴードンは、22才の若さで日本国憲法の人権条項作成に携わった女性。父のレオ・シロタは、帝政ロシア領だったウクライナ出身のユダヤ人の音楽家。19世紀末ユダヤ人迫害を逃れてシロタ家一族は故郷を離れ、レオ・シロタの5人の兄弟姉妹はその後ナチスの台頭と第二次世界大戦により、それぞれに劇的な運命を辿る。レオ・シロタは、ヨーロッパで演奏活動を続けた後、ベアテが5歳だった1929年に来日し17年間日本に滞在した。

本作の製作は、2005年12月、パリの日本文化会館で『ベアテの贈りもの』上映後、アリーヌ・カラッソという女性が、ベアテの従姉妹の娘だと名乗り出てきたことに始まる。レオ・シロタの弟ピエール・シロタの孫娘にあたるアリーヌは、母ティナの亡き後、シロタ家一族の資料を集めていた。レジスタンスに身を投じ、ポーランド軍のノルマンディ上陸作戦に参加して戦死した母の従兄弟イゴールのこと、貨車でアウシュヴィッツに連れ去られた祖父のこと、偽造パスポートでユダヤ狩りを逃れた母ティナのこと…

シロタ家の数奇な運命を通して、戦争と狂気の20世紀を見据え、混迷を深める今日の世界に人間の英知の復活を願う気持ちを込めて、監督はこの作品を製作したという。映画の構想を固めていた頃、監督は東横線の車内でレオ・シロタの愛弟子藤田晴子さんの遺産の一部を預かっていた富田玲子さんに出会う。文化事業に使って欲しいという藤田さんの遺志にそえることと、本作製作資金に差し出されたそうだ。パリの上映会で、アリーヌさんが現れたのも運命的出来事だったが、富田玲子さんとの出会いという偶然の連鎖で完成することができた作品だと監督は語る。

戦争に翻弄されたシロタ家一族。今も戦争によって苛酷な人生を強いられている人々が世界の各地にいる。一部の権力者の思惑に、罪のない庶民が巻き込まれる悲劇がいつまで続くのかと悲しい。(咲)

製作:レオ・シロタ製作委員会・日本映画新社
助成:芸術文化振興基金

2008年/日本/カラー/93分/ドキュメンタリー

★2008年9月27日(土)より10月17日(金)まで岩波ホールにて特別上映

公式HP>> http://sirota-family.net/index.html

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窓辺のほんきーとんく

監督・脚本:堀井彩
撮影:百瀬修司
照明:太田博
録音:松本浩樹
音楽:弘瀬謙二、花澤孝一
出演:辻岡正人(石井晃)、吉沢明歩(眞名水)、安藤彰則(村崎渚)、神楽坂恵(橘多菜子)、今野悠夫(多摩欄坂みちる)、椎葉智(野村映太郎)、ホリケン(峯田大作)ほか

突然勤め先が倒産して途方にくれる石井晃。そんな折も折り、映研先輩だった村崎が「映画を作ろう!」と押しかけてくる。まだシナリオもない段階でのオーディションに集まった濃い面々は5人。村崎がシナリオハンティングの旅に出かけて、残った眞名水と晃はいつしか親しくなってゆく。眞名水のために就職しなくては、と思った矢先、戻ってきた村崎のシナリオは、眞名水をヒロインに「ホンバン」ありの過激な内容だった。

映画とはこんな風に「勢い」でできちゃうものなんでしょうか? 虚虚実実といった感じの怒涛の展開です。
割り切る眞名水に今どきの女の子ってこんな?と驚き、茫然自失の晃が気の毒になります。映画なんですけどね。
今回主演の辻岡正人さんの初監督作品だった『ロスト・バイ・デッド』('03)の試写を観たのを思い出しました。長髪で大きな目が印象的な辻岡さんは、一人一人に細い体を折り曲げて丁寧な挨拶をされていましたっけ。(白)

2008/日本/カラー/80分/
配給:太秦(アムモ)
http://madobeno-honky-tonk.com/index2.html

9月27日(土)〜池袋シネマロサにてレイトショー

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女工哀歌(エレジー)(原題:CHINA BLUE)

監督・撮影・製作:マイケル・ペレド

— 私たちが毎日作るジーンズ、誰がはいているんだろう —

グローバリゼーションの波の中であえぐ中国の女工たちをとらえたドキュメンタリー。四川省の村から、広東省のジーンズ工場へ出稼ぎにやってきた16歳のジャスミン。残業手当はなく時給7円という低賃金で睡眠時間を削って働く。初任給は退職を防ぐため工場があずかり、楽しみにしていたジャスミンには1円の支払いもない。寮で使うものは全て給料から差し引かれ、外出した者には見せしめの賃金カット、その給料も遅延はしょっちゅうだ。ジャスミンが帰郷するのにかかる電車代は給料一ヶ月分。手元にそれだけのお金のない彼女は休みにも帰郷できず「お母さんとこんなに長く離れたのは初めて」と涙ぐむ。
元警察署長だという工場長は、注文が絶えないように無理な受注を繰り返し、納期に間に合うように従業員のお尻を叩く。
欧米や日本の消費者が、安いものを手に入れようとするしわ寄せは、こんなところに行っている。労働に見合った賃金を受け取ることは、ごく当たり前の要求ではないのか。流通の中で一番立場の弱いものが一番過酷な目に遭っている現実をどうかしっかりと見てほしい。
こんな中にあっても、ジャスミンたち少女がたくましく、小さな楽しみも見つけて頑張っていることが救いだ。彼女たちの現在が気になる。(白)

2005年/アメリカ/カラー/88分/ビスタ/中国語・英語
配給・宣伝:エスパース・サロウ
9月27日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか順次全国ロードショー

公式 HP >> http://www.espace-sarou.co.jp/jokou/

特別記事 グローバル化を考えるその2 『女工哀歌(エレジー)』マイケル・ペレド監督インタビュー もご覧下さい。

三本木農業高校、馬術部 〜盲目の馬と少女の実話〜

監督:佐々部清
原案:「私、コスモの目になる!」主婦と生活社
脚本:岡田茂、佐々部清
撮影:坂江正明
美術:若松孝一
メインテーマ:「君がくれた時間」押尾コータロー
主題歌:「この胸に・・・」STGM(ステゴマ)
出演:長渕文音(菊池香苗)、柳葉敏郎(古賀先生)、奥村知史(岡村賢治)、森田彩華(森陽子)、西原亜希(園田帆乃夏)、小林裕吉(高橋守)、黒谷友香(北里大獣医)、松方弘樹(校長)ほか

香苗は三本木農業高校の馬術部に所属している。部員は寮生活をしながら、それぞれ馬の世話をしている。かつて優秀な競技馬でありながら、病気のため視力を失いかけているタカラコスモス(通称コスモ)が彼女の担当。プライドが高く少しも懐かないコスモに手を焼いている香苗だが、ほかの人間がコスモの悪口を言うのは許せない。17歳のコスモはこれが最後と思われる種付けのため北海道の牧場に送り出され、やがて妊娠して戻ってくる。香苗は子馬の誕生を楽しみに献身的に世話を続け、ある日コスモは香苗の呼びかけに反応した。



(C)2008「三本木農業高校、馬術部」製作委員会

佐々部清監督は、『半落ち』『夕凪の街 桜の国』など手がけてきましたが、今回は実在する青森の「青森県立三本木農業高等学校」を舞台に、盲目の馬と女子高生の絆を描きました。もの言わぬ動物のエピソードが、幾多の台詞より泣けてしまいます。動物好きの方はハンカチ・ティッシュを忘れずに。初主演の長渕文音は、長渕剛と志穂美悦子の長女。子どもの頃からバレエを続けてきたそうですが、馬術には初挑戦。特訓の末、競技場面もスタントなしで頑張っています。(白)

2008/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/117分/
配給:東映
宣伝:東北新社
http://sannou-bajutsu.com/index.html
10月4日(土)〜全国ロードショー

完成披露試写会(2008/7/20)写真(撮影:宮崎)


舞台挨拶:(左から)佐々部監督、森田彩華、黒谷友香、
長渕文音、柳葉敏郎、奥村知史、小林祐吉 他




囲み取材: (左から)佐々部監督、柳葉敏郎、長渕文音、黒谷友香、押尾コータロー

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初恋の想い出(原題:情人結)

監督:フォ・ジェンチイ
脚本:スー・ウー、チャン・レンチェ
撮影:スン・ミン
美術:ツイ・レン
音楽:ワン・シャオフォン
出演:ヴィッキー・チャオ(チー・ラン)、ルー・イー(ホウ・ジア)、ソン・シャオイン(ホウ・ジアの母)、チャン・チアン(チー・ランの父)、ツイ・ミンチャ(チー・ランの母)、シン・チアトン(チー・ランの兄)、イーレン(兄嫁)ほか

— 激動の時代に出逢ったふたり。運命の赤い糸と家族の絆では、どちらが強いのだろうか —
1970年代の中国、ホウ・ジアとチー・ランは同じ官舎で育った幼馴染。いつしか恋心が芽生え、互いに大切な存在となっていた。ホウ・ジアの大学合格が決まった日、母親は「父さんはチー・ランの父親のせいで自殺した」と、チー・ランとの交際は許さないと突き放す。身体の不自由な母に心配をかけまいとホウ・ジアはチー・ランに別れを告げる。チー・ランは家族に事情を尋ねるが、誰も答えてはくれなかった。たまたま出逢った「ロミオとジュリエット」の本は傷ついたチー・ランの心に深くしみこんできた。チー・ランはホウ・ジアに本を届け、二人は同じ境遇の彼らに自分たちを重ね合わせてよりどころとした。

「ロミオとジュリエット」は400年も前のあまりにも有名な小説。それに深く共感した二人。親同士の確執の元、悩む若者というのは程度の差こそあれ、今も残っているのではないでしょうか。人間って変わらないものですね。美しい風景の中で輝いていた若い二人が、思いあいながら次第に年を重ねていくのは切なくてやりきれません。フォ・ジェンチイ監督は、新聞に連載されていたノンフィクションに感動して、この映画の着想を得たそうです。細やかな演出と映像の美しさは今までの作品と共通しています。10代から30代のチー・ランを演じたヴィッキー・チャオは、この作品で上海国際映画祭主演女優賞を受賞しています。(白)

2005/中国/カラー/112分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ

公式 HP >> http://www.hatsukoimovie.jp/

★10月4日(土)〜渋谷シアターTSUTAYA(旧 Q-AXシネマ)ほか全国ロードショー

宮廷画家ゴヤは見た(原題:GOYA’S GHOSTS)

監督: ミロス・フォアマン
製作:ソウル・ゼインツ
脚本:ミロス・フォアマン、ジャン=クロード・カリエール
撮影: ハビエル・アギーレサロベ
音楽: ヴァルハン・バウアー
出演:ハビエル・バルディム(ロレンソ神父)、ナタリー・ポートマン(イネス)、ステラン・スカルスガルド(ゴヤ)、ランディ・クエイド(国王)ほか

18世紀末から19世紀のスペイン。国の内外で動乱の嵐が吹き荒れるころ、天才画家のゴヤは宮廷お抱えの画家として国王カルロス4世や奥方たちの肖像画を描く一方、貧しい庶民の暮らしや権力者の醜い姿を告発する版画や絵画も制作し続けていた。異端者を糾弾する先鋒ロレンソ神父が肖像画の依頼に訪れる。彼はゴヤのミューズともいえる美しい少女イネスの肖像画に目を留める。ほどなくして、イネスが異端者審問所に捕われたとの知らせが入った。

画家を主人公にした映画は印象的で、つい昨年は『レンブラントの夜警』がありましたね。これはゴヤにまつわる数々のエピソードの中から、ミロス・フォアマン、ジャン=クロード・カリエールが生み出したキャラクター、イネスとロレンソ神父を中心に描いたものです。宗教と政治が密接に繋がっていた時代こんなことが行われていたのか、と活字では知っていましたが映像で見ると迫力倍加です。ナタリー・ポートマンはイネスの役を得て、明るく純真無垢な少女が捕われの身となり、唯一会えたロレンソ神父のみにすがって心が壊れていくさまを体当たり(あの美人がそこまで・・・)で演じます。女優根性は人一倍の彼女には当たり前なのかも。様々な顔を見せるロレンソ神父には、スペイン屈指の演技派ハビエル・バルディム。豪華な脇役陣と美術も合わせて見所の多い映画です。(白)

2006/アメリカ・スペイン/カラー/1時間54分/ヴィスタサイズ/ドルビー
配給:ゴー・シネマ
(C)2006 Xuxa Producciones SL - All Rights Reserved

公式 HP >> http://www.goya-mita.com/

★10月4日(土)〜スバル座・渋谷東急・新宿ミラノ、シネ・リーブル池袋他全国ロードショー

ふみ子の海

二人のふみ子の会
 山路ふみ子福祉賞受賞作品『ふみ子の海』上映
2008年10月4日(土)14:00〜上映 16:30〜懇親茶話会 無料
場所 学習院創立百周年記念会館正堂
お申込みファックス
 03−3479−1086(お名前、ご住所、後連絡方法を記入) 

公式 HP >> http://www.fumikonoumi.com/

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昭和の銀幕に輝くヒロイン 総集篇2

若尾文子、岸恵子、岩下志麻、団令子、津島恵子、山口淑子、久我美子、淡島千景、桑野みゆき、高峰三枝子、野川由美子、山本富士子、岡田茉莉子、加賀まりこ、京マチ子の主演作品21本

期日:2008年10月5日(日)〜11月8日(土)
会場:ラピュタ阿佐ヶ谷
チケット:一般…1,200円  シニア・学生…1,000円  会員…800円 3回券…2,700円 水曜サービスデー…1,000円均一
スケジュール、作品解説など詳細は下記へ。

公式 HP >> http://www.laputa-jp.com/

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僕らのミライへ逆回転(原題:BE KIND REWIND)

監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
撮影:エレン・クラス
編集:ジェフ・ブカナン
音楽:ジャン・ミシェル=ベルナール
出演:ジャック・ブラック(ジェリー)、モス・デフ(マイク)、ダニー・グローヴァー(店長)、ミア・ファロー、シガーニー・ウィーヴァー、メロニー・ディアスほか

マイクの勤めているレンタルビデオ店は、近所に大きなライバル店ができたうえ、再開発のため潰れそうだ。マイクの友人のジェリーは何かにつけトラブルを起こす男。店長が留守のときにやってきて、よりによって店にあるビデオテープの中味を全て消してしまった!!やってくるお客を断ると収入が途絶えてしまうので、二人は苦肉の策を考え出す。なんと自作自演で『ゴースト・バスターズ』、『ロボコップ』、『ドライビング・ミス・デイジー』を作り、リメイク版として店に出したのだ。すぐにばれて騒動になるかと思いきや、意外なことに二人の手づくりビデオは大うけする。俳優不足は町の人で補い、次々と作品を完成させ、店には行列ができていった。


(c)2007 Newline Productions/ Junkyard Productions

『エターナル・サンシャイン』、『恋愛睡眠』のミシェル・ゴンドリー監督作。追い込まれた二人が、ホームビデオで映画作りをする場面が面白いです。『恋愛睡眠』でもいかにも手づくりの美術が楽しかったですが、こちらもダンボールや廃材を駆使して名作、いや迷作を作り上げます。1本について見せてくれる場面が短いので、そこまでうけるものだろうかと疑問が湧いてしまうのが惜しいです。ここはちょいと説得力不足。大作好みのハリウッドへの皮肉にもなっているのかもしれません。
マイク役のモス・デフという人は、俳優&ラッパーなんですね。名前は口癖だった"Most Definitely(最も確実に)"からとったんだとか?ジャック・ブラックは近くにいたら「うざい」と言いたくなりそうなほどあいかわらず賑やかです。原題の「BE KIND REWIND」はビデオ店の決まり文句「巻き戻して(お返し)ください」の意味。映画のビデオ店の店名でもあります。 (白)

2008/アメリカ/101分/シネマスコープ/ドルビーSRD/
配給:東北新社
http://www.gyakukaiten.jp/

10月11日(土)より、シネマライズ、シャンテ シネ、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー

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フレフレ少女

監督:渡辺謙作
脚本:橋本裕志
出演:新垣結衣、永山絢斗、柄本時生、斎藤嘉樹、染谷将太、内藤剛志 ほか

百山桃子は恋に恋する純情乙女。その彼女が恋に落ちた相手は野球部のエースピッチャー。何とか近づきたいと思っても、当然ながらライバルは多い。あきらめかけていた彼女に、天からの声が!「我々は〜、どんな困難にも諦めず立ち向かわねばならない〜っ!」
たった一人の応援団員・龍太郎が叫ぶ団の訓示だった。桃子は野球部を応援したい一心で入団を決意。足りない団員を集め、野球部の応援に駆けつけるのだが、あまりのへなちょこ応援でかえって野球部の足を引っ張り負けてしまうありさま。更にはエースがライバル校に転校すると判明し、桃子たちはすっかりやる気をなくしてしまう。そんなところへ、伝説の応援団OB・柳原がやってきて、ゴールデンウィーク合宿を持ちかける。柳原の口車に乗せられて、軽い気持ちで合宿へと向かうのだが・・・

長身、スリムな新垣結衣ちゃんが長ラン&はちまきで一所懸命応援する姿にかなり萌えます(笑)。団長の彼女について行く応援団員を演じる4人は、いずれも注目の若手。永山絢斗(けんと)さんは、初映画出演。お兄さんの瑛太さんと声がよく似てる! 柄本時生さんも柄本祐さんの弟ですね。
自分がいた高校にも伝統ある応援団があって、1年生の時の応援団長が長ラン&マント&高下駄でビシッとしているのが、恐くてかっこよかったなぁと思い出しました。(梅)

2008年/日本/114分/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:松竹
製作:テレビ朝日、松竹、バップ、電通、レプロエンタテインメント、衛生劇場、集英社、日販、メ〜テレ、九州朝日放送、北海道テレビ、静岡朝日テレビ、リトルモア
制作:リトルモア、フィルムメイカーズ

公式 HP >> http://www.fure-fure.jp/

★10月11日(土)より、全国ロードショ〜〜!!

トリコン!!!リタ→ンズ

監督:佐々木浩久
脚本:高野倉薫、佐々木浩久
出演:進藤学(エース)、南圭介(キング)、八神蓮(ジャック)、小西遼生(ユージ)、飛鳥凜(瞳)、蛍雪次朗(菅原)

同じ孤児院で育ったエース、キング、ジャックの3人は、窓際刑事の菅原に紹介してもらったアルバイトをしながら、もうからないトリプル探偵事務所を続けている。そんな3人の元に、瞳という少女が兄を捜して欲しいとやってきた。彼女の兄というのは、3人と同じ孤児院から養子にもらわれていったユージだった。彼らの父は、殺人事件の容疑者として警察に拘留され、それ以来ユージは家に戻ってこないのだという。3人はユージの行方を捜し始めるが、調べれば調べるほどユージが事件に深く関わっているのではないかと疑惑が高まってくる。

ジャンルは青春×アクション×コメディでしょうか。サスペンスとしては謎解きや盛り上がりが小粒、よく見ていると早めにネタがわかります。これはイケメンくんたちの様々な表情を楽しむ作品なんだと思いましょう。残念なのは画面が暗くて、せっかくのイケメンくんたちの顔が影になっているところがあること。一般道路でのシーンのうるさい音が台詞にかぶってしまっていること。1作目『トリコン!!!』に続き同じスタッフ&キャストでチームワーク良し、アドリブらしい台詞のやりとりが軽やかです。ユージの義妹役の飛鳥凛が元気はつらつ。あじゃに追いかけられるシーンのわけは1作目のDVDをご覧下さい。(白)

横浜を舞台に、イケメン3人組が事件の謎を追う。戦隊ヒーローもののようなノリと、レトロでしゃれた雰囲気がミックスされているけれど、全体的にユルイなぁ。画面がひどく暗くて、せっかくのイケメンがはっきり見えないのも気になります。試写には主役の3人もいらっしゃっていました。さすがに常人とは明らかに違う容姿端麗さで、目を引きました。(梅)

製作・配給:スーパービジョン
宣伝協力:アムモ
2008年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/89分

公式 HP >> http://www.toricon.com/

★10月11日(土)より、渋谷シアターTSUTAYA(Q-AXシネマ改め)にてレイトショー

私がクマにキレた理由(わけ)(原題:The Nanny Diaries)

監督・脚本:シャリ・スプリンガー・バーマン&ロバート・プルチーニ
撮影:テリー・ステイシー
プロダクション・デザインマーク・リッカー
衣装:マイケル・ウィルキンソン
音楽:マーク・スオッゾ
原作:「ティファニーで子育てを」文春文庫刊 
主演:スカーレット・ヨハンソン(アニー・ブラドック)、ローラ・リニー(ミセス・X)、アリシア・キーズ(リネット)、クリス・エヴァンス(ハーヴァード)、ニコラス・リース・アート(グレイヤー)、ポール・ジアマッティ(ミスター・X)、ドナ・マーフィ(ジュディ・ブラドック)ほか

大学を卒業したアニー、金融業界への就職に失敗してしまった。自分が本当は何をしたいのかわからず悶々としていたとき、セレブの家庭の「ナニー(子守)」の仕事を引き受けることになった。マンハッタンの豪華なアパートに目を丸くするアニー。しかし何不自由ない暮らしのはずのミスター&ミセスXは、少しも幸せそうに見えない。5歳のグレイヤーはアニーにすっかり懐き、上に住むハーヴァードとも知り合ったが、ナニーの恋愛はご法度。デートの時間もないのだった。

アニーは看護士の母に育てられ、大学では文化人類学を専攻していたという設定です。冒頭マンハッタンの人間が自然史博物館の展示のように、分類・紹介されています。賞レース常連のローラ・リニー演じるミセスXのブランド尽くしのファッションにも注目。心の隙間をうめているかのような気合の入り方です。衣装担当の方は選び甲斐があったことでしょう。原作はマンハッタンの30以上の家庭でナニーとして働いた経験を元に書かれたもの。映画でも雇い主とナニーとの攻防がことこまかに出てきて興味をひかれます。ナニーと子どもの物語といえば「メリー・ポピンズ」が有名ですが、この中にも傘のシーンやおまじないのことばが登場してオマージュを捧げています。自然史博物館のほかにもニューヨークの名所がたくさん登場し、旅行社とのコラボでそれを訪ねるパッケージツアーができています。燃油代が安ければ行きたいですけどねぇ。(白)

2007/アメリカ/カラー/106分/ヴィスタ/SRD
配給:ショウゲート

公式 HP >> http://www.kuma-kire.com/

★10月11日(土)〜日比谷みゆき座ほかにて全国ロードショー

ワイルド・バレット(原題:Running Scared)

監督:ウェイン・クラマー
出演:ポール・ウォーカー(ジョーイ・ガゼル)、ヴェラ・ファーミガ(テレサ・ガゼル)、キャメロン・ブライト(オレグ・ユゴルスキー)、チャズ・パルミンテリ(アンゾ・ユゴルスキー)、カレル・ローデン

ジョーイはイタリア系マフィアの一員。殺人の証拠となる銃の後始末を命じられているが、保身のためずっと家に隠し持っていた。ジョーイの息子ニッキーと隣家の息子のオレグは、ジョーイたちが悪徳警官たちとの銃撃戦で使った銃を隠すところをたまたま目撃してしまう。暴力を振るう義父を憎んでいたオレグは、そのうちの1丁の拳銃を持ち出し、母を殴った義父に向かって発砲する。銃と弾を処分せねば今までの件がばれてしまい、粛清されることになる。ジョーイはオレグと拳銃の行方を追い、ニッキーを乗せて夜の街へと車を飛ばす。警察とマフィアの双方も動き出していた。

 
(c)2006 Media 8 Entertainment All Rights Reserved.

なくなった拳銃が物語を紡いでいく作品はほかにもありますが、これは全編にわたってテンション高く、すごいスピードでぐいぐい引っ張られていき、自分が参加したかのように終わるとぐったりでした。体調整えてどうぞ。「奥さん、それはいかんでしょう」とか、「あ、君はもう死んでます」とか、つっこみどころが多いもののそれも振り切られてしまいます。タランティーノ監督が絶賛したというのがわかります。大好きそうですもん。
隣のロシア人の息子を演じるキャメロン・ブライトはいったどんな俳優になってしまうのか期待と心配が入り混じります。子役として活躍できる期間は短く、一時期注目されてもその後鳴かず飛ばずで終わってしまうことも多い映画界です。脱皮しながら成長していってほしいと老婆心。ウェイン・クラマー監督はこの作品のヒットで、ハリソン・フォード、ショーン・ペンが共演する自作のリメイクが決定したそうです。(白)

2006/アメリカ/カラー/122分/35mm/シネマスコープ/ドルビーデジタル
提供:ハピネット
配給・宣伝:アートポート

公式 HP >> http://www.wild-bullet.jp/

★10月11日(土)、新宿トーア、銀座シネパトス他にて全国順次ロードショー!

KING OG TOKYO O FILME キング・オブ・トーキョー・オ・フィウミ

監督・編集:太田綾花
出演:アマラオ(ワグネル・ペレイラ・カルドーゾ)、マルコス、ケリー、ツゥット、川渕三郎、ラモス瑠偉(友情出演) ほか

Jリーグが開幕した1992年、アマラオはブラジルからやって来た。しかし、彼が移籍したのはJリーグチームではなく、JFL(アマチュアリーグ)の東京ガスだった。それから7年、FC東京が発足してJ2のチームとなり、2000年にはとうとうJ1へと昇格した。アマラオはチームとともに、サポーターとともに成長し、いつしか「キング・オブ・トーキョー」と呼ばれるようになった。

映画はアマラオをとてもビッグな人間として奉るような雰囲気ではなく、彼を知る人々が心から彼を愛し、彼もまた彼らを愛しているのが伝わってくる。来日当初の彼を「へたくそだった」と笑って語る人もいる。それでも彼はチームにとってなくてはならない、唯一無二の存在になっていった。プロとして技術も大切だけれど、それ以上に人間としての魅力が大切なんだなぁ。
現役時代の試合映像がもっとあって欲しかったし、サッカーのようにもう少しテンポが良ければ、もっとよかったのにと思う。(梅)

2008年/カラー/104分/日本/日本語字幕・ポルトガル語字幕/ステレオ
配給:スリー・ジー・コミュニケーションズ
宣伝:ビー・ビー・ビー

公式 HP >> http://www.kingoftokyo.com/

★10月11日(土)より渋谷シネパレス、10月18日(土)より吉祥寺バウスシアターにてレイトショー

アメリカン・ティーン(原題:American Teen )

監督・脚本:ナネット・バースタイン
出演:ハンナ・ベイリー、コーリン・クレメンズ、ジェイク・トゥイッシー、メーガン・クリズマティック、ミッチ・ラインハルト ほか

アメリカの中西部、インディアナ州の地方都市ワルシャワ。そこにひとつだけある高校の3年生にに1年間密着してカメラを回し続けました。彼らの高校生活は、社会構造と同じにいくつかの階層に分けられます。jock(スポーツ選手)、princess(女王様)、hearttherob(イケメン)、geek(オタク)、rebelled(変わり者)など。代表的なキャラクターの5人をメインに、ドキュメンタリーよりもリアル、フィクションよりもドラマチックな作品が誕生しました。描写の合間に彼らの理想を表すアニメーションが挿入されます。ゲーム好きなジェイクが「ゼルダの伝説」の主人公になっているのに、個人的に大ウケでした。顔まで似せてあります。
監督は『くたばれ!ハリウッド』で高い評価を得たナネット・バーンスタイン。高校生活最後の1年間を過ごす彼らの姿の中に、かつての自分を見出す思いがします。あなたの17歳はどんな風でしたか?(白)

サンダンス映画祭最優秀監督賞受賞作
2008/アメリカ/1時間35分/G-12
配給:パラマウント

公式 HP >> http://www.americanteen.jp/

★10月11日(土)より新宿バルト9ほかにてロードショー

泉谷しげる黄金週間

●『ロード・オブ・ライブ』新作ドキュメンタリー
●『戦後最大の誘拐・吉展ちゃん事件』

ソフト化されていない泉谷しげる主演のドラマ
10月11日(土)〜17日(金)
横浜黄金町シネマジャック&ベティにて上映

*トーク&ライブ
 期日:10月13日(月・祝)16:15〜
    14日(火)19:30〜
    (開場45分前)
 料金:・映画・トーク&ライブ セット券(整理番号付)
   一律3000円 ※劇場前売り9/13(土)〜、チケットぴあ10/3(金)発売
  ・映画のみ当日券(2本立て料金)
   一般1500円、大高1200円、小中シニア1000円、ラスト1本800円(入替なし)

シネマジャック&ベティ HP >> http://www.jackandbetty.net/

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第14回 KAWASAKI しんゆり映画祭 2008

・10月12日(日)ワーナー・マイカル・シネマズ新百合ヶ丘
          新百合ヶ丘駅南口 サティ・ビブレ6F
・10月12日(日)—11月3日(月・祝)川崎市アートセンター
          新百合ヶ丘駅北口下車 徒歩3分
          〒215-0004 川崎市麻生区万福寺6-7-1
          Tel.044-955-0107
・料金:一般前売=1800円 一般当日=2000円
    高校生以下、シニア、障害者とその介助者=前売・当日共 1800円
*前売券は「チケットぴあ」にて販売

●上映作品
特集・新藤兼人
『石内尋常小学校 花は散れども』
『愛妻物語』
『裸の島』
『鬼婆』
『午後の遺言状』

ジュニア映画制作ワークショップ発表会
『リプレイ〜戻る時計と進む少女〜』

DEEP JAPAN
『靖国 YASUKUNI』監督:李纓
『実録連合赤軍 あさま山荘への道程』 監督:若松孝二

NEW WABE JAPAN
『かぞくのひけつ』監督:小林聖太郎
『ジャーマン+雨』監督:横浜聡子
『童貞。をプロデュース』監督:松江哲明
『国道20号線』監督:富田克也
『秘密結社鷹の爪THE MOVIE〜総統は二度死ぬ〜』監督:FROGMAN
『休暇』監督:門井肇

舞台そして映画
『グミ・チョコレート・パイン』監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
『クワイエットルーム』監督:松尾スズキ

映画から見えてくるアジア
『トゥヤーの結婚』監督:ワン・チュアンアン
『黒い土の少女』監督:チョン・スイル
『妻の愛人に会う』監督:キム・テシク

特別企画 澤登翠活弁上映+トーク
『瀧の白糸』監督:溝口健二

スクリプター白鳥あかねの映画人生50年
『帰らざる日々』監督:藤田敏八

国境を超えて活躍する女性たち
『ペルセポリス』監督・脚本:マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー
『その名にちなんで』監督:ミーラー・ナーイル

川崎の監督たち
『オオカミの護符』監督:由井英
『0(ゼロ)からの風』監督:塩屋俊

オーストラリア特集
『Broken Sun』監督:Brad Haynes
『雲の下を』監督:アイヴァン・セン
『WALKABOUT 美しき冒険旅行』
「豪日学生フォーラム」

ハロウィン特集
『チャーリーとチョコレート工場』監督:ティム・バートン
『ゾンビーノ』監督:アンドリュー・カリー
『ペネロピ』監督:マーク・パランスキー
『パンズ・ラビリンス』監督:ギレルモ・デル・トロ

スケジュール、ゲスト、作品の解説など詳細は公式サイトへ
http://www.siff.jp/siff2008/
■お問合せ
NPO法人KAWASAKIアーツ・映画祭事務局
電話 044-953-7652  FAX 044-953-7685

公式 HP >> http://www.siff.jp/

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香港カルトシネマ・フェスティバル

香港映画のホラー、クンフー、ファンタジー作品を集めました。
この機会を逃すと他で観ることはできないかも!!

日程:10月18日(土)〜24日(金)
会場:シアターN渋谷
主催:香港カルトシネマ・フェスティバル
作品:全5作品 全てDLP上映

『魔 デビルズ・オーメン』1983年
 監督:カイ・チーホン
『邪 ゴースト・オーメン』1980年
 監督:カイ・チーホン
 出演:タニー・ティエン
『新死亡遊戯 七人のカンフー』1975年
 監督:リム・ピン
 出演:ホー・チョンドー
『如来神掌 カンフーウォーズ』1982年
 監督:テイラー・ウォン
 出演:イー・トンシン、アレックッス・マン、ロー・リエ
『少林拳対五遁忍術』1982年
 監督:チャン・チェ
 出演:チャーリー・チェン
(C)2008 CELESTIAL PICTURES LTD. All Rights Reserved.

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2008香港エンタテインメントシネマ・ウィーク」

期日:10月18日(土)〜24日(金)
主催・企画:フリーマン・オフィス 協力:シアターN渋谷
チケット:前売り1200円(ぴあ発売)、当日1,500円
*香港スター直筆サイン展示会など楽しいイベントを実施!

<上映作品>
  • 『ファースト・ミッション』原題:龍的心/1985
    監督・主演:サモ・ハン・キンポー 出演:ジャッキー・チェン、エミリー・チュウ
  • 『失われた龍の系譜〜トレース・オブ・ア・ドラゴン』原題:龍的深處-失楽的?圖/2003年
    監督:メイベル・チャン 出演:ファン・ダオロン、ジャッキー・チェン
  • 『拳神 KENSHIN』(日本最終上映)原題:拳神/2001年
    監督:アンドリュー・ラウ、コリー・ユン 出演:ワン・リ−ホン、スティーブン・フォン
  • 『剣客之恋』原題:老鼠愛上猫/2003年
    監督:ゴードン・チャン 出演:アンディ・ラウ、セシリア・チャン
  • 『上海グランド』原題:新上海灘/1996年
    監督:プーン・マンキッ 出演:レスリー・チャン、アンディ・ラウ
  • 『ミラクルマスクマン 恋の大変身』原題:百變星君/1995年
    監督:ウォン・チン 出演:チャウ・シンチー、ジジ・リョン
  • 『トランサー霊幻警察』原題:2002異霊霊異/2001年
    監督:ウィルソン・イップ 出演:ニコラス・ツェー、スティーブン・フォン

公式 HP >> http://hkccf2008.blog7.fc2.com/
上映日程 >> http://hkccf2008.blog7.fc2.com/blog-category-6.html

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東京国際映画祭

今年は「地球環境を守る」ため「エコロジー」をテーマとして、従来のレッドカーペットに替えて「グリーンカーペット」を実施するほか、人間と自然の共生をテーマとした作品を特集する「natural TIFF」部門を新設。おなじみの「コンペティション」、「特別招待作品」、「アジアの風」、「日本映画・ある視点」部門も益々パワーアップします!

会期:10月18日(土)〜26日(日)
会場:六本木ヒルズ(東京・六本木)、Bunkamura(東京・渋谷)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
チケット前売り開始:10月4日(土)
http://www.tiff-jp.net/ja/

【問い合わせ】
ハローダイヤル (1) 050-5541-8600 (2) 03-5777-8600
*営業時間8:00〜22:00

■ 開催記念グッズ「TIFFオリジナルハーブ缶」を3名様にプレゼント!
  詳細はTOPページへ。

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第21回東京国際女性映画祭

映像が女性で輝くとき

東京国際映画祭と共に第21回を迎えた東京国際女性映画祭。 オープニングとクロージングを日本の女性監督作品で飾ります。 記者会見にも、どなたでも参加できます。女性映画人の息吹を 肌で感じることの出来るチャンスをお見逃しなく!

期間:2008年10月19日(日)〜10月22日(水)
会場:東京ウィメンズプラザ

10月19日(日)
12:00 『嗚呼 満蒙開拓団』羽田澄子監督(日本、2008年)
14:30  シンポジウム「満州とは」 ★入場無料
       パネリスト:藤原作弥(ジャーナリスト)、羽田澄子、高野悦子
18:00 『西の魔女が死んだ』長崎俊一監督(日本、2008年)

10月20日(月)川喜多かしこ生誕100年記念上映
12:00 『制服の処女』レオンティーネ・ザガン監督(ドイツ、1931年)
14:00 記者会見 ★入場無料
18:00 『ねむの木の詩が聞こえる』宮城まり子監督(日本、1977年)

10月21日(火)
12:00 『私たちの生涯最高の瞬間』イム・スルレ監督(韓国、2007年)★入場無料
15:00 『シリアの花嫁』エラン・リクリス監督(フランス,ドイツ,イスラエル 2004年)
18:00 『Take My Eyes』イシアル・ボリャン監督(スペイン、2003年)

10月22日(水)
12:00 『子供の情景』ハナ・マフマルバフ監督(イラン、2007年)
*東京フィルメックス2007上映時タイトル『ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた』
15:00 『ブラジルから来たおじいちゃん』栗原奈名子監督(日本、2008年) /『ファット・チャンス』関口祐加監督(オーストラリア、2007年)

主催:東京国際女性映画祭実行委員会
お問合せハローダイヤル:03-5777-8600(7:00〜23:00)

公式HP>> http://www.iwff.jp

◆会期中、東京国際女性映画祭関連記事を掲載したシネマジャーナルのバックナンバーを販売いたします。サプライズプレゼントもございます。是非、シネジャのコーナーにお立ち寄りください。

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マルタの優しい刺繍(原題:Die Herbstzeitlosen)

監督:ベティナ・オベルリ
脚本:サビーネ・ポッホハイマー、ベティナ・オベルリ
撮影:ステファン・クティ
美術:モニカ・ロットマイヤー
音楽:ルック・ツィメルマン
出演:シュテファニー・グラーザー(マルタ)、ハイジ=マリア・グレスナー(リージ)、アンネマリー・デューリンガー(フリーダ)、モニカ・グブザー(ハンニ)ほか

スイス、エメンタール地方の小さな村。80歳になるマルタは、最愛の夫を亡くしてから毎日を無気力に過ごしていた。ある日、合唱団旗の修繕を頼まれたマルタは、町の布地屋に出かける。ショウウィンドウを覗くうちに、昔腕の良いお針子だったころ自分で作ったランジェリーの店を持ちたかったことを思い出す。親友のリージに打ち明けると大賛成、さっそく花の刺繍を施したランジェリーを作り貯める。夫の遺した食料品店を改装し、いよいよランジェリーショップを開店するが・・・。

白髪のマルタや仲間のおばあちゃんたちがとても可愛い。それぞれに事情を抱えていて、はじめから皆が賛成したわけではないけれど、他から糾弾されれば友人をかばい応援し、とチームワークを発揮する。牧師の息子や保守的な村の人々に冷たい視線を浴びるけど、マルタは諦めない。「夢があれば楽しく生きられる」、「いくつになっても遅すぎることはない」というメッセージ受け取りました。原題の「Die Herbstzeitlosen」は花の名前「コルチカム(ユリ科コルチカム属)」で、花言葉は「華やかな青春」。昨年の大阪ヨーロッパ映画祭で『遅咲きの乙女たち』のタイトルで上映されています。(白)

2006/スイス/86分/アメリカン・ビスタ/ドルビーSR/ドイツ語
提供:博報堂DYメディアパートナーズ/アルシネテラン
配給・宣伝:アルシネテラン
http://www.alcine-terran.com/maruta/

10月18日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

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ボーダータウン 報道されない殺人者(原題:BORDERTOWN)

脚本・監督:グレゴリー・ナヴァ
出演:ジェニファー・ロペス、アントニオ・バンデラス、マヤ・ザパタ、マーティン・シーン ほか

シカゴの新聞記者ローレンは上司からメキシコのフアレスで起きている連続女性殺人事件の取材を命ぜられる。気乗りのしない彼女だが、海外特派員のポストと引き替えに承知し、フアレスへと向かう。そこではかつての仲間ディアスが新聞社を経営していた。真実の報道をしようと奮闘しているが、警察などによる妨害、脅しは日常茶飯事だ。ローレンはその新聞社を訪ねてきた一組の親娘に出会う。娘のエバはなんと殺人事件の唯一の生還者だった。彼女を通してローレンは事件の全体像をつかみ、失いかけていたジャーナリストとしての使命感を取り戻していく。しかし、彼女たちの前に大きな壁が立ちはだかる。

実際に今なお起きている事件を基に作られた物語です。スター俳優が出演しているサスペンス映画ですが、そこに描かれているのはかなりハードな現実の問題です。過酷な工場労働をしている若い女性たちが、過去15年間で5000人近くも殺されているのに、いまだに真剣な捜査が行われず、何の対策も講じられないメキシコの現実。一方で、大企業がオーナーとなり独立性が危ぶまれて久しいアメリカのジャーナリズムの現実。楽しみながらも、厳しい問題を考えさせられる作品です。(梅)

2007年/アメリカ/112分/カラー/ヴィスタ/SRD
提供:アミューズソフトテンタテインメント、クオラス
後援:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
配給:ザナドゥー
宣伝協力:リベロ

公式 HP >> http://www.bordertown.jp/

特別記事 グローバル化を考える その1 『ボーダータウン 報道されない殺人者』グレゴリー・ナヴァ監督インタビュー もご覧下さい。

★10月18日(土)より、シャンテ シネほかにてロードショー

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P.S.アイラヴユー

監督:リチャード・ラグラヴェネーズ
脚本:リチャード・ラグラヴェネーズ、スティーヴン・ロジャース
原作:「P.S.アイラヴユー」セシリア・アハーン著 小学館文庫刊
撮影:テリー・ステイシー
プロダクション・デザイン:シェパ−ド・フランケル
音楽:ジョン・パウエル
出演:ヒラリー・スワンク(ホリー)、ジェラルド・バトラー(ジェリー)、キャシー・ベイツ(母パトリシア)リサ・クドロー(デニース)、ジーナ・ガーション(シャロン)、ハリー・コニック・ジュニア(ダニエル)、ジェフリー・ディーン・モーガン(ウィリアム)ほか

― まだ"さよなら"は言えないんだ ―
ホリーは最愛の夫ジェリーを脳腫瘍で突然亡くしてしまった。生きる気力もなく、電話にも出ず、荒れ放題の家に引きこもっていたとき、親友と母親が訪ねてくる。ホリーの30歳の誕生日にお祝いにやってきたのだ。そのときジェリーからのプレゼントが届く。いったい誰が?といぶかるホリー。バースデイケーキの箱に入っていたテープを再生すると懐かしいジェリーの声が流れてきた「・・・これからいろんな方法で手紙が届くよ。内容に従えよ、いいね?・・・」次の日、約束どおり1通目の手紙が届いた。


©2007 CUPID DISTRIBUTION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

リチャード・ラグラヴェネーズ監督とヒラリ2007年の『フリーダム・ライターズ』についで2度目のタッグ。まず夫婦喧嘩で始まります。12ページに及ぶという、長い台詞をぶつけ合うシーンは主演の二人の面目躍如。生き生きとしたやりとりに続いて、次のシーンは夫の葬儀の場面。前が賑やかだった分、喪失感がひしひしとせまってきます。ホリーを支える友人や母親、ジェリーからの10通の手紙が次々と登場し、泣かせるシチュエーションはいっぱいですが、愛情がぎゅっとつまっているせいか、幸せな作品になっています。この原作はセシリア・アハーンが21歳のときに書いた純愛小説。彼女は第10代アイルランド首相のお嬢さんだそうです。アイルランドの美しい風景もたっぷり登場します。(白)

2007/アメリカ/カラー/2時間6分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/SRD
配給:ムービーアイ、東宝東和
http://www.psiloveyou.jp/

10月18日(土)〜有楽座ほか全国ロードショー

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「中国映画の全貌2008」

日中平和友好条約締結30周年、北京オリンピック開催記念
上映期間:10月18日(土)〜12月19日(金)
場所:新宿K's cinema

<開催記念新作上映>
『パティシエの恋』(原題:後備甜心)
監督:盧弘軒(アンドリュー・ロー)、李明文(モーリス・リー)
脚本:岸西(アイビー・ホー)
出演:林嘉欣(カリーナ・ラム)、鄭伊健(イーキン・チェン)、胡兵(フー・ビン)、曾志偉(エリック・ツァン)

イタリアン・レストランのオーナー・ジルは、医者のチーオンとつきあっているが、プレイボーイの彼にとってはいつだって第2の女。それでもいつかは自分が一番になれると尽くしているが、なかなかチーオンには伝わらない。
レストランのシェフが引退する自分の代わりに連れてきたのは、ジャックというイケメンシェフ。しかし、ジルは彼が恋人に冷たく当たる姿を見て不快感を抱き、何かと彼に突っかかる。ところが、それはジルのとんだ勘違い。実際はジャックとジルは似たもの同士だったのだ。

3年前の作品ですが、これまで日本での公開がありませんでした。おしゃれでロマンティックな作品です。顔のパーツも身体もでかいフー・ビンに比べると、イーキンがちょっと貧相に見えてしまうのがなんですが、カリーナと二人で醸し出す雰囲気が良くて、「ジル、早くジャックの存在の大きさに気づきなさい!」と応援したくなります。引退しようとするシェフ役のエリック・ツァンは、出番はそう多くないのに、またもしっかりとおいしいところを持って行って、観るものの涙を誘います。(梅)

2005年/香港/ヴィスタ(1:1.85)/ドルビーSRD/94分
提供:ワコー

『草原の女』(原題:珠拉的故事)
監督:哈斯朝魯(ハスチョロー)
脚本:ルー・ユアン
出演:哈斯高娃(ハースカオワ)、トゥメン、デンジバヤル、バオハンルン

内モンゴルで息子と二人で暮らすゾルの元に、ある冬の日、羊番の手伝いは必要ないかと見知らぬ男がやってくる。彼女は警戒していらないと断ったが、その年は雪が多く、狼が昼間でも羊を襲おうとする。その窮地を彼が助けてくれた。ゾルはあらためて彼に手伝いを頼むことにした。彼は異常に火を恐がるため、人々からガルと呼ばれる。
ゾルには夫がいたが街に行ったきり戻らず、もうすぐ離婚する予定だった。息子はガルになつき、彼女も次第にガルを頼りにするようになるが、ガルはなかなか過去を語ろうとはしない。

『胡同の理髪師』のハスチョロー監督の長編デビュー作です。あまりに定番な音楽の使い方(何か大事が起こると「ジャ〜ン!」)や、メロドラマのような展開に笑ってしまう部分もありますが、たくましいモンゴル女性と子役の笑顔のかわいらしさが印象に残ります。(梅)

2000年/中国/英題:The Story of Zhula/ヴィスタ(1:1.85)/91分
提供:彩プロ、フォーカスピクチャーズ、ワコー

以上二つの新作の他、以下のような上映作品があります。観逃したもの、もう一度大きいスクリーンで観たいもの・・・ぜひ劇場へ足をお運びください。

『胡同の理髪師』、『胡同のひまわり』、『胡同愛歌』、『ただいま』、『呉清源 極みの棋譜』、『モンゴリアン・ピンポン』、『トゥヤーの結婚』、『白い馬の季節』、『活きる』、『山の郵便配達』、『故郷の香り』、『鬼が来た!』、『太陽の少年』、『再見〜また逢う日まで』、『ジャスミンの花開く』、『追憶の上海』、『カンフー無敵』、『クレイジー・ストーン〜翡翠狂騒曲〜』、『[登β]小平』、『ニーハオ[登β]小平』、『紅いコーリャン』、『阿片戦争』、『思い出の夏』、『1978年、冬。』、『狩り場の掟』、『項羽と劉邦-その愛と興亡』、『心の香り』、『子供たちの王様』、『菊豆』、『盗馬賊』、『乳泉村の子』、『芙蓉鎮』、『古井戸』、『變面〜この櫂に手をそえて〜』、『榕樹の丘へ』、『北京の恋―四郎探母』、『雲南の少女 ルオマの初恋』、『ようこそ、羊さま。』、『玲玲の電影日記』、『小さな中国のお針子』
●上海アニメーション
『胡蝶の泉』、『琴と少年』、『猿と満月』、『ナーザの大暴れ』、『不射之射』、『牧笛』、『鹿鈴』

2000年/中国/ヴィスタ(1:1.85)/91分
提供:彩プロ、フォーカスピクチャーズ、ワコー

配給:ワコー/グアパ・グアポ

詳しいスケジュールは新宿K's cinema HPでご確認下さい >> http://www.ks-cinema.com/china2008.html

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ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢

監督:ジェイムズ・D・スターン&アダム・デル・デオ
製作総指揮:ジョン・ブレリオ
編集:フェルナンド・ビレナ、ブラッド・フラー
出演:「コーラスライン」オリジナルキャスト&スタッフ、マイケル・ベネット

― 世界初公開!これがブロードウェイのオーディション―
ブロードウェイのミュージカルの最高峰と言われる「コーラスライン」(1975年〜1990年まで6137公演)が16年ぶりに再演されることになった。そのオーディション会場に初めて入ることを許されたカメラは、応募した3000人の中からわずか19人が選ばれていくまでの8ヶ月を克明に見せる。「コーラスライン」はオーディションのようすをそのままミュージカルにしたものだ。そのキャストのオーディションということで、このドキュメンタリーは入れ子のようになっている。夢にかける男女の真摯な姿を見て、自分はこんなに一生懸命になったことがあったかと、短い人生を振り返ってしまう。
懐かしいナンバーの数々を耳にしながら、一つの役を競い合うのを見ていると、自分もその家族や審査員になったような気がして、この人あの人と思いいれができてくる。中にたった一人、日本人の高良結香さんがいて、思わず応援。合間にオリジナルのキャストや演出家だった人々の証言をはさんでいるのは貴重。エンターテイメント志望の人はもちろん必見なうえ、観客の一人一人に夢を見ることの力を思い出させてくれる作品。映画版『コーラスライン』を観てから、このドキュメンタリーを観たらますます面白くなるはず。その逆もOK。(白)

2008/アメリカ/カラー/93分/ヴィスタサイズ/SD, SRD/
配給:松竹、ショウゲート 宣伝:メゾン

公式 HP >> http://www.broadway-movie.jp/

★10月25日(土)より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

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ハロウィン(原題:HALLOWEEN)

監督・脚本・プロデューサー:ロブ・ゾンビ
出演:マルコム・マクダウェル(ルーミス医師)、タイラー・メイン(マイケル・マイヤーズ青年)、デーグ・フェア(マイケル・マイヤーズ少年)、シェリ・ムーン・ゾンビ(母:デボラ・マイヤーズ)、スカウト・テイラー・コンプトン(妹:ローリー・ストロード)、ブラッド・ドゥーリフ(ブラケット保安官)

友人もいなく、家庭でも愛されないで育った孤独な少年、マイケル・マイヤーズはハロウィンの夜、遂にその牙を剥いた。不気味なマスクを被り、母親の恋人、姉、姉のボーイフレンドを次々に惨殺してしまうのだ。ただ一人かわいがっていた赤ん坊の妹を残して…
その夜からマイケルは精神病院に収容され、ルーミス医師の治療を受けることになった。
しかし17年後のハロウィンの日、マイケルは精神病院を脱走する。あの日生き残った妹ローリーを求めて故郷に向かった彼は再びマスクを被り、惨殺を繰り返し始めた。脱走を聞いたルーミス医師は、マイケルの暴走を止めるべくブラケット保安官に協力を求める。

ホラー映画の巨匠、ジョン・カーペンターが監督し1978年に公開された映画史上に残る不朽の名作、『ハロウィン』のリメイクである本作は、2007年8月31日に全米公開され、オープニング(4日間)の興行収入が35億円を超える全米?1の大ヒットとなった。監督はヘヴィメタファンの間で知られるロブ・ゾンビ。『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルや、『カッコーの巣の上で』でオスカー候補にもなったブラッド・ドゥーリフなどの名優が出演している。今回のゾンビ版はオリジナル版では描かれなかったマイケル・マイヤーズの少年時代や精神病院時代に重きが置かれていて、マイケル少年の一家惨殺シーンなどはオリジナルよりかなりジックリと執拗に描かれている。精神病院の中での徐々に殺人鬼に変貌していくプロセスなどは、かなり息苦しくジットリとした汗が流れ出てくる感じだ。特筆すべきは、このマイケル少年を演じているデーグ・フェア。1992年生まれなので今年16歳。8歳で既に15分ほどの短編映画の脚本、監督、一部編集などをこなしたという彼の不気味さは、演技ではないのではないかと思うほどの迫力だった。『ハンコック』にも出演しているというから要チェック。
ホラー映画、特にこのようなスプラッタ映画というとかなり好き嫌いがハッキリとするが、1978年から続いた『ハロウィン』シリーズの総決算として完成度の高いこの作品を是非見ていただきたい。(よね)

原題HALLOWEEN/2007/アメリカ/カラー/109分/シネマスコープ/Dolby-Digital-SDDS-DTS/R15
配給:ザナドゥー
宣伝協力:ライス タウン カンパニー

公式 HP >> http://www.hallo-ween.jp/

★10月25日(土)より お台場シネマメディアージュ、シアターN渋谷、池袋シネマサンシャインにてロードショー公開

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ロック誕生 The Movement 70's

監督:村兼明洋
出演:(インタビュー)内田裕也、ミッキー・カーチス、近田春夫、中村とうよう、加納秀人、森園勝敏
   (ライブ映像)フラワー・トラヴェリン・バンド、頭脳警察、はっぴいえんど、イエロー、遠藤賢司、ハルヲフォン、ファー・イースト・ファミリー・バンド、村八分、クリエイション、四人囃子

1970年代初頭、日本においてオリジナルなロックが次々に誕生していった。ブルース、ハード、プログレッシブなど、多種多様なロックの形態を吸収し、独自の個性を発揮するバンドが多数生まれ、異様な熱気を放っていた。その中で、ロックをやるなら日本語か英語か?といった論争も白熱した。
映画は当時そのまっただ中にいた内田裕也、ミッキー・カーチスといった人物へのインタビューと、貴重な当時のライブ映像をがっつり見せる構成になっている。ライブ映像は今見ても新鮮で、面白い! フラワー・トラヴェリン・バンドとか、イエローとか、うまいし、めっちゃかっこいい!!(梅)

2008年/日本映画/カラー(一部モノクロ)/75分/STEREO(一部MONO)/デジタル上映
製作:日本出版販売/ユニバーサル ミュージック/エイベックス・マーケティング/ビタミン
配給:『ロック誕生』Partners/日本出版販売

公式 HP >> http://www.rock-tanjo.jp/

★10月25日(土)〜11月21日(金)、シアターN渋谷にてレイトショー(整理番号制)

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むずかしい恋

監督:益子昌一
脚本:いながききよたか、益子昌一
出演:水橋研二、璃乃亜、前田綾花、森岡龍、柳沢なな、載寧龍二、安藤サクラ、三浦誠己

バー”NO〜MU"は元バレエダンサーの南が開いている。店にはそれぞれに恋の悩みを抱えた男女が訪れる。彼らをカウンター越しに優しく見守りながら、南自身もままならぬ思いを抱えていた。

柔らかい光をたたえたバーの空間で、いろいろなタイプの恋の顛末が繰り広げられます。監督は『贅沢な骨』『きょうのできごと a day on the planet』など行定勲監督の脚本を手がけた方で、これが初監督。これほど閉じた空間での人間模様を初監督で撮るのは少々ハードルが高かったのではと思います。南役の水橋研二さんのたたずまいがとてもいいです。(梅)

2007/日本/カラー/HDV/ヴィスタサイズ/102分
配給:アステア
宣伝:ビー・ウィング/ポケット
(c)2007 「むずかしい恋」製作委員会

公式 HP >> http://www.muzu-koi.jp/

★10月25日(土)よりシネマート六本木他、全国順次ロードショー

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ブリュレ

監督・脚本:林田賢太
撮影:早坂伸
出演:中村梨香、中村美香、平林鯛一、瀬戸口剛、小田豊

幼い頃に両親が死んで別々に育てられた双子の日名子と水名子。日名子は北国の街でケーキ屋を営むおじさんの元で暮らしている。日名子には秘密がある。ときどき衝動にかられて小さな放火を繰り返していたのだ。その日名子の元に、水名子が骨壺を抱えて訪ねてくる。一緒に暮らしていたおばあさんが亡くなったのだという。10数年ぶりの、心から願っていた再会。しかし水名子は嘘をついていた。本当のことを言えぬまま、日名子のもとを去ろうとする日、日名子のいつもの火遊びが思いもかけぬ大火事となっておじさんの家を焼き尽くす。二人は手に手を取って逃げ出す。もう絶対に離れたくない・・・

一卵性双生児という一番濃い繋がりを持つ二人の運命的な愛の物語。美少女二人の危うい関係が美しいリリカルな映像でつづられます。心の底に潜む激しい感情がもう少しかいま見られると、メリハリがつくと思うのですが。全体に平板で主旋律がどれなのかがちょっと曖昧。(梅)

2008年/日本/カラー/ステレオ/DV撮影・HDCAMマスター/16:9ワイド/71分
製作・配給:シネバイタル
配給協力:ゼアリズエンタープライズ

公式 HP >> http://www.brulee-movie.com/

★10月25日(土)よりユーロスペースにてレイトロードショー

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林田賢太監督が11月1日に急逝されたことが7日にわかりました。まだ32歳の若さ。心よりお悔やみ申し上げます。

レッドクリフ PartI(原題:赤壁)

監督:呉宇森(ジョン・ウー)
アクション監督:元奎(コリー・ユン)
音楽:岩代太郎
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、金城武、林志玲(リン・チーリン)、張豐毅(チャン・フォンイー)、胡軍(フー・ジュン)、張震(チャン・チェン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)、中村獅童 ほか

西暦208年、曹操は献帝を強迫して劉備、孫権に対する討伐命令を出させ、自ら80万の軍勢を率いて新野の劉備軍を襲った。長坂坡の戦いで壊滅的打撃を受けながら辛くも逃げ延びた劉備たち。軍師・諸葛亮は呉の孫権と同盟し曹操に対抗することを提案し、自ら使者として一人呉へと向かう。呉は開戦か降伏かで重臣たちの意見は真っ二つに割れていた。孫権は諸葛亮の説得に開戦へと傾きかけるが、老臣たちの抵抗にあってなおも躊躇している。諸葛亮は呉の重臣・魯肅の意見を聞き入れ、まず大都督・周瑜を説得しようと会いに行く。


(C)2008 Three Kingdoms Ltd. (C)Bai Xiaoyan

「三国志」の中でも最高の山場である「赤壁の戦い」。呉宇森監督にとって、この映画化は20年来の夢でした。相次ぐ主演俳優の交代、撮影中の事故など、アジア映画過去最高規模のこの作品は相当難産でしたが、公開後は各国で快進撃をつづけ、中国映画史上最高の興行成績を記録しています。
日本人には吉川英治や北方謙三の「三国志」がなじみ深いかと思います。わたしは吉川英治版を読みましたが、やはり映画はいろいろとエピソードが異なっていますし、かなりモダンになっています。そういった違いを是非楽しんでください。戦場を駆けめぐり大暴れする関羽、張飛、趙雲らを、遙か彼方を静かに見つめ、口跡さわやかに語る孔明を、音楽と妻を愛し孔明に負けぬ知己を持つ周喩を、花も実もある俳優たちが体現し、男と男の友情を撮っては右に出る者なしの呉宇森が監督なのですから、面白くないわけがないです。2部作の前編なので、最大の山場は後編の『レッドクリフ PartII』に詰まっているのですが、その来年4月の公開を楽しみに待つためにも是非大きなスクリーンでご覧になって下さい。(梅)

2008年/アメリカ・中国・日本・台湾・韓国/35mm/145分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル/翻訳:鈴木真理子/字幕:戸田奈津子/監修:渡邉義浩(大東文化大学)
配給:東宝東和、エイベックス・エンタテインメント
宣伝:KICCORIT、P2

公式 HP >> http://www.redcliff.jp/

★11月1日(土)より日劇1ほか全国超拡大ロードショー
第21回東京国際映画祭オープニング作品に決定!

本誌74号に監督、出演者らの記者会見記事が掲載されています。

特別記事 東京国際映画祭始まる!にオープニングイベントに参加する監督、出演者の写真が掲載されています。

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ブタがいた教室

監督:前田哲
脚本:小林弘利
原案:「豚のPちゃんと32人の小学生」黒田恭史著(ミネルヴァ書房刊)
音楽:吉岡聖治
キャスト:妻夫木聡(星先生)、大杉漣(仁科教頭)、田畑智子(池沢先生)、原田美枝子(高原校長)、 池田成志(小鷲先生)ほか生徒役の子どもたちたくさん

6年生の担任になった新卒の星先生。子豚を飼う許可を学校に取り付け「いのちの授業」を開始する。卒業まで豚を大きくしてみんなで「食べよう」と言う約束だった。生徒たちはPちゃんと名づけ、当番を決めて世話をする。卒業がせまってきて、あらためてPちゃんの「処分」を話し合う。「食べる」、「食べない」で、クラスは真っ二つに分かれての大論争となった。

関西の小学校で実際にあった話です。やる気満々の新任の先生は、豚のPちゃんと32人の生徒たちと一緒に卒業までの900日を過ごしました。この取り組みはテレビのドキュメンタリーとして平成5年に放映され、ギャラクシー賞奨励賞、動物愛護映画コンクール総理大臣賞を受賞しました。テレビ局には多くの反響が寄せられたそうです。
ご本人の黒田先生が当時を振り返って書いた本が原作です。妻夫木聡が生徒たちと一緒に育っていく教師役を熱演。ロケ中の仲の良さがそのまま画面に現れているような子役たちの演技も自然です。台本なしでの討論の真剣なようすに目を見張り、Pちゃんを思う子どもたちの言葉に泣けました。先生も生徒もいのちについて、どれほど深く考えたことか。どうするのが一番よかったのか、その問いはこれからもついて回るのでしょうが、かけがえのない経験だったことは間違いありません。(白)

2008/日本/カラー/35mm/109分/ビスタサイズ/ドルビーSRD/
配給:日活

公式 HP >> http://www.butaita.jp/

★11月1日(土)〜シネ・リーブル池袋、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

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ハンサム★スーツ

監督:英勉(はなぶさ・つとむ)
脚本:鈴木おさむ
撮影:小見山充、北川聡
音楽:川口大輔
出演: 塚地武雅(大木琢郎)、谷原章介(光山杏仁)、北川景子(星野寛子)、温水洋一(?)、大島美幸(橋野元江)、佐田真由美(來香)、本上まなみ(谷山久恵)、池内博之(狭間真介)、ブラザー・トム(明)、中条きよし(白木社長)ほか

心優しい独身男、大木琢郎は母親が残した定食屋“こころ屋”をついで繁盛させている。腕も性格も良い琢郎だが、ブサイクに生まれたと劣等感を持っていた。美人アルバイトの寛子ちゃんに恋して勇気を振り絞って告白するが、彼女は「がっかりしました」と言って出て行ってしまう。すっかりへこんだ琢郎、友達の結婚式に出席するためスーツを買いに行くとなぜか奥へ案内された。「あなたにぴったりなのはこれ!」と勧められたのが“ハンサム・スーツ”。無理やり試着させられて鏡を見ると、そこには全く違った自分がうつっていた!!

ハンサムとブサイクの代表、美人とブスの代表として登場する面々に、多少異論の向きもあるかと思いますが、ケラケラ笑って楽しめてぽっと気持ちのあったかくなる作品でした。塚地武雄が変身して谷原章介になり、谷原章介は中にいる塚地武雄演技もしなくてはいけません。これがいつものすました彼ではなくかなり振り切れています。塚地くんが完成披露の舞台挨拶で「谷原さんハンサムな上に面白いなんて、こちら上がったりですわ」とぼやいて笑わせました。
脚本は鈴木おさむさん、「ブスの瞳に恋してる」、「SMAP×SMAP 」などの構成作家としても有名。この映画には愛妻の大島美幸さんも出演していて笑顔に癒されます。公式サイトにはいろいろ面白いコンテンツがありますので、公開前にぜひどうぞ。(白)

2008/日本/ビスタ/カラー/
配給:アスミック・エース
(c)『ハンサム★スーツ』製作委員会

公式 HP >> http://www.handsome-suits.com/

★11月1日(土)〜全国“レッツ、ハンサム”ロードショー

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イエスタデイズ

監督:窪田崇
原作:本多孝好
脚本:清水友佳子
主題歌:榎本くるみ 「イエスタデイズ~大切な贈りもの〜」
出演:塚本高史(柳田聡史)、國村隼(柳田昭彦)、(柳田昭彦:32年前)、原田夏希(真山澪:32年前)、蟹江一平(柳田慎一)、カンニング竹山(藤井哲男)、風吹ジュン(柳田節子)ほか

バイト生活を続けている聡史は、海辺のホスピスにいる父昭彦を訪ねる。レストランチェーンを経営し仕事人間だった父親との諍いを機に、一人家を出て以来の再会だった。死期が近づいている父親の頼みとは、学生時代の恋人だった真山澪(まやまみお)を探してほしいということだった。聡史は父親の描いたスケッチブックを持って描かれた場所を訪ね歩き、絵を媒介に自分と同じ年齢の父親と澪に出会うという不思議な体験をする。本人の口から語られることのなかった昔の父は、画家になる夢を持った若者だった。

父親と息子の確執はよく映画のテーマとなります。母と娘は(経験上)言いすぎるあまりに喧嘩になり、父と息子は言葉が少なすぎての誤解が元になるような気がします。この映画の父親と息子もまさにそれでした。頑固な父を國村隼、若き父は和田聰宏。ちゃんと似ていますね。
『地下鉄(メトロ)に乗って』(2006)は、息子(堤真一)が反発していた父の若いころにタイムスリップし、父を理解し和解するものでした。過去には戻れないけれど、自分はいつか親の年齢になります。でもそのころには遅いんだよね、とちょっと酸っぱい気持ちになりました。想像する(思いやる)ことがそのすきまを埋めるんじゃないでしょうか。(白)

2008/日本/カラー/119分/ビスタ/DTSステレオ/
配給:エスピーオー

公式 HP >> http://www.yesterdays-movie.com/

★11月1日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

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アイズ(原題:THE EYE)

監督:ダヴィド・モロー&ザヴィエ・パリュ
脚本:セバズチャン・グティエレス
撮影:ジェフリー・ジャー
美術:ジェームス・スペンサー
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:ジェシカ・アルバ(シドニー)、アレッサンドロ・ニヴォラ(ポール)、パーカー・ポージー(ヘレン)、ラデ・シェルベッジア(サイモン・マクロー)ほか

盲目の若いバイオリニスト、シドニーは姉ヘレンの強い勧めで角膜移植手術を受けた。ヘレンはシドニーが幼いころに失明したのは自分のせいだとずっと罪悪感を持っていたのだ。手術は成功したが、シドニーの目にはほかの人間には見えないものが見えるようになっていた。死に行く人を導く黒い影や、観たこともない荒れた風景、炎に包まれる人々など。医者のポールは、手術の後の精神不安定によるものだというが納得できない。シドニーは真相をつきとめるため、自分の角膜のドナーを教えてとポールに頼む。


(C)2008 Lions Gate Films Inc. And Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures.
All Rights Reserved

アンジェリカ・リーが主演した2002年作品『the EYE(原題:見鬼)』をリメイクしたもの。パン兄弟の前作はずいぶん怖かった気がしますが、こちらはもう少し穏やか(それでもときどきドッキリしました)。
シドニーが自分を襲う幻影の中の少女の訴えに気づき、彼女の魂を救おうと恐怖を乗越えていく姿がより強く描かれています。世界的な盲目のバイオリニストの役ということで、演奏シーンのためにバイオリンの特訓をし、盲目の感覚をつかむために指導も受けたジェシカ・アルバの熱演が光ります。(白)

2008/アメリカ/カラー/97分/シネマスコープ/ドルビーSR・SRD/DTS
提供・配給:ムービーアイ
http://www.eyes-movie.jp/
11月1日より渋谷東急ほか全国ロードショー

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さくらんぼ 母ときた道

監督:張加貝(チャン・ジャーベイ)
脚本:鮑十(パオ・シー)(『初恋のきた道』)
撮影:丸池納
音楽:安田芙充央
出演:苗圃(ミャオ・プゥ)、妥国権(トゥオ・グゥオチュアン)、龍麗(ロン・リー)

美しい棚田が広がる中国雲南省の村。知的障がいを持つ女性桜桃(インタウ)は、足の悪い貧しい葛望(グォワン)と結婚し、子どもを切望するがなかなか授からない。ある日、捨てられていた女の子を拾ってくるが、跡継ぎの男の子が欲しい夫は、赤ちゃんを売り飛ばしてしまう。気が狂ったように赤ちゃんを探して彷徨う桜桃に根負けして、紅紅(ホンホン)と名づけて二人の子として迎え入れる。幼い時にはいつも母にぴったりくっついていた紅紅も、小学校に上がり物心がついてくると、障がいを持つ母が疎ましくなってくる・・・

 
© 2008「さくらんぼ 母ときた道」製作委員会

2007年東京国際映画祭「アジアの風」部門で『さくらんぼ 母の愛』のタイトルで上映された本作は、来日して17年になる張加貝監督が、『初恋のきた道』の脚本家鮑十と共に作り上げた無償の母の愛の物語。
舞台となった雲南省元陽の棚田の風景が実に美しい。棚田の写真家として有名な馬理文(マ・リーウェン)も村長役として出演している。
時代は、文革後の1980年代初頭。夫の葛望が村の広場で奏でる二胡の調べが、当事の人情味溢れる雰囲気を感じさせてくれる。 

配給: ザナドゥー
製作・中国:上海電影集団公司 上海電影制片厂 四川騰竜影業有限公司
製作・日本:「さくらんぼ 母ときた道」製作委員会/シップヤード/ハピネット/メモリーテック 
2007年/日本・中国共同製作映画/カラー/35mm/ビスタサイズ/ドルビーSRD/107分

公式 HP >> http://www.sakuranbo-movie.com/

★2008年11月1日(土) 銀座テアトルシネマほか全国順次ロードショー

特別記事『さくらんぼ 母ときた道』張加貝(チャン・ジャーベイ)監督インタビューもご覧下さい。

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帝国オーケストラ ディレクターズカット版(原題:The “Reichsorchester” The Berlin Philharmonic and the Third Reich )

監督:エンリケ・サンチェス=ランチ(『ベルリン・フィルと子どもたち』)
出演:フルトヴェングラー時代の演奏家とその関係者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)、ナチス宣伝大臣ゲッベルスほか、当時の記録映像収録

ベルリン・フィル創立125周年記念上映 第一弾

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン・フィル)は、政府や権威に対する反逆精神を持つ楽団で、国営ではない独立企業として運営することを基本方針として1882年に設立された。第一次世界大戦後、極端なインフレにより楽団も倒産の危機に陥る。アドルフ・ヒトラーが政権を掌握した1993年、ヒトラーの宣伝大臣ゲッベルスは、楽団を海外・国内双方に対する文化的宣伝として利用価値があるとして財政的支援を行うことを決定。1934年1月、ドイツ帝国は楽団経営権の100%を購入して、帝国オーケストラが設立される。団員は公務員扱いとなり、1945年までの11年間、楽団は第三帝国の文化大使の役割を担うこととなる。

1933年当事、ベルリン・フィルには4人のユダヤ人メンバーが在籍していたが、ヒトラー政権の管理下となり、指揮者フルトヴェングラーの努力も叶わず、4人は楽団を後にする。また、ユダヤ人妻を持つ者や、ユダヤ系祖先を持つ者は、引き続き楽団への所属を許されたものの、いつどうなるかわからない恐怖に怯えていたという。

1939年、第二次世界大戦が勃発し、男たちが戦地に借り出されていく中、楽団のメンバーは兵役を免除され、演奏を続けることを許された。待遇面でも特権的な立場にあった団員だが、当時の状況や複雑な思いが96歳となったヴァイオリニストのJ・バスティアンと86歳のコントラバス奏者E・ハルトマンにより明らかにされる。

何より驚いたのは、自分たちのホールを爆撃で焼失した後も、終戦間際まで場所を工面して演奏会が続いていたことだ。演奏途中で空襲警報が出されると団員も観客も避難し、解除されれば続きから演奏が行われたという。日本ではどうだったのだろうと思い、父に聞いてみたら、昭和20年4月にも兵役の合間に歌舞伎を観にいったという。戦争という非日常の中で、人々が文化的営みを忘れることなく、それを心の糧にしていたことに救われる思いがする。(咲)

2008年/ドイツ/カラー、モノクロ/デジタル/97分
提供・配給:セテラ・インターナショナル
協力:ドイツ文化センター

公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/library/Reichsorche

初日舞台挨拶&プレゼントのお知らせ

*初日舞台挨拶
11月1日(土)12:00の回上映後と14:15の回上映前
ゲスト:エンリケ・サンチェス=ランチ監督

*プレゼント
11月1日(土)、2日(日)各日先着150名様にギリアンチョコレートをプレゼント

★11月1日(土)より渋谷・ユーロスペース他全国順次ロードショー

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「第9回NHKアジア・フィルム・フェスティバル」

会期:2008年11月1日(土)〜11月5日(水)
会場:NHKみんなの広場ふれあいホール

◆上映作品
<国際共同制作作品>
『僕たちのキックオフ』シャウキャット・アミン・コルキ監督
 2008年/イラク・クルディスタン地域
<アジア各国・地域制作作品>
『Orz ボーイズ!』ヤン・ヤーチェ(楊雅?)監督
 2008年/台湾
『パンドラの箱』イェシム・ウスタオウル監督
 2008年/トルコ=フランス=ドイツ=ベルギー
『My Son 〜あふれる想い〜』チャン・ジン監督
 2007年/韓国
『追憶の切符』ジェイコブ・チャン(張之亮)監督
 2008年/中国
<招待作品>
『キネマの大地』向陽監督
 2008年/中国
◆トークショー 〜いま、映画を創るということ〜
サンダンス・NHK国際映像作家賞受賞監督らによるトーク&ディスカッション
日時:11月2日(日)17:30〜18:30
入場無料/先着順
【出席者】
イェシム・ウスタオウル(『パンドラの箱』『雲が出るまで』『遙かなるクルディスタン』監督)
呉美保(『酒井家のしあわせ』監督)
富永まい(『ウール100%』監督
中嶋莞爾(『クローンは故郷をめざす』監督
【司会】
渡辺俊雄(衛星映画劇場支配人)

公式 HP >> http://www.nhk.or.jp/sun-asia/aff/9th/index.html

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ウォー・ダンス / 響け僕らの鼓動(原題:War Dance)

監督:ショーン・ファイン&アンドレア・ニックス・ファイン

アフリカ東部のウガンダ共和国。1970年代実権を握っていた悪名高きアミン大統領が去った後も、北部地方では反政府武装勢力によるゲリラ活動が続いている。反政府軍に誘拐された村の子どもたちは、男の子は少年兵として前線で殺戮を強要され、女の子は慰安婦として性的虐待を受けている。運よく脱走したり、救出された子どもたちは、軍による24時間警備で守られた避難民キャンプに集められている。本作は、そうしたキャンプの一つ、6万人の大所帯のパドンゴ避難民キャンプの学校で、心に深い傷を負った子どもたちに、教師が自分たちアチョリ族の伝統音楽と踊りを子どもたちに教え、「全国音楽大会」を目指す姿を追ったドキュメンタリー。

 
© 2006 Shine Global, Inc. All rights reserved.

木琴が得意な男の子ドミニク、聖歌隊で歌う女の子ローズ、踊りの上手なナンシーの三人に焦点を当てて、合間に彼らの過去が語られる。まだ十代なのに、あまりに過酷な人生に驚かされる。
熱意ある教師や首都カンパラからやってきた2人の音楽専門家による特訓で、子どもたちの歌や踊りはめきめきと上達する。腰の振り方やリズムの取り方は、これはもう天性のものだろう。皆でくったくなく踊る姿に、一時でも辛い過去を忘れてほしいと願わずにはおられない。彼らの姿には希望が感じられる。それでも、ほんとうに安心して暮らせる社会が実現するのは何時のことだろうと暗澹たる気持ちはぬぐえない。(咲)

2007年/アメリカ/カラー/107分/英語・スワヒリ語
サンダンス映画祭2007 ドキュメンタリー部門 監督賞受賞
第80回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー部門 ノミネート

公式 HP >> http://www.wardance-movie.com

★2008年11月1日(土)より東京都写真美術館、アップリンク他全国順次ロードショー

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恋愛上手になるために(原題:The good night)

監督・脚本:ジェイク・パルトロウ
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
美術:イヴ・スチュワート
衣装:ヴェリティ・ホークス
出演:グウィネス・パルトロウ(ドーラ)、ペネロペ・クルス(アンナ/メロディア)、マーティン・フリーマン(ゲリー)、ダニー・デビート(メル)、サイモン・ペグ(ポール)ほか

かつて人気バンドのメンバーだったゲリーは、現在CMの作曲をしているがいまいちうだつがあがらない。大恋愛で結ばれたドーラとの同棲も長くなって、結婚に踏み切る情熱も薄れてきている。
同じバンド仲間のポールが昇進して別荘まで手に入れると聞き、ゲリーは置いていかれた気分になる。そのうえドーラに棘のある言葉を口にされ、立つ瀬がない。しかし夢の中に現れたセクシーな女性、アンナは優しく自分を理解してくれる。彼女こそ理想の女性!と夢の続きを見ることばかり考えていたとき、ちょうどドーラが海外出張になった。

監督はグウィネス・パルトロウの実弟。これが初の長編作品です。邦題は甘い雰囲気ですが、倦怠期に入ったカップルをリアルに見せる辛口の作品です。知的だけれど地味なファッションのグウィネスと対照的に、夢の中で理想の女性を演じるペネロペのゴージャスなこと!セレブ御用達のブランドが多数参加しています。ちと情けない男性ゲリーを、レンブラントを演じたマーティン・フリーマン。前のはコスプレでしたから、今回ようやく顔を覚えました。
友人のポールもゲリーが夢相談をするメルも、現実的な女性たちと違って夢見るロマンチストたちです。都合の悪い現実と、夢を混同してしまうゲリーの行動は痛いですが、その心情に男性は親近感を持つでしょう。(白)

2007/アメリカ/90分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給:株式会社ファインフィルムズ
宣伝:スキップ、プランニングCM
http://www.finefilms.co.jp/renai/

★11月1日(土)より、渋谷シアターTSUTAYAにてロードショー!

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オリンダのリストランテ(原題:Herencia)

監督:パウラ・エルナンデス 出演:リタ・コルテセ(オリンダ)、アドリアン・ウィツケ(ペーター)、マルティン・アジェミアン(フェデリコ)

鍵を大事そうに両手で包む中年女性オリンダ。鍵は、イタリアからアルゼンチンに移民してきた彼女が築き上げた小さなリストランテのもの。大家から老朽化を理由に立ち退きを迫られているのだ。ある日、ドイツ人青年ペーターが、ホテルでお金を盗まれ、オリンダのリストランテに住み込みで働きたいと居座ってしまう。ペーターから恋人を探しにはるばるやってきたと聞かされ、オリンダは自分も戦後、連絡の途絶えた恋人を追ってアルゼンチンに来たことを思い起こす。恋人には会えないまま、故郷から遠く離れた地で過ごしてきた日々... 折しも、故郷の町が大地震に見舞われたことを知り、ついに彼女はイタリアに帰る決意をする。彼女にとって、それは新たな人生への始まりだった...

悔いを残したまま死にたくない! 若いペーターと出会ったことで、もう一度チャンスを掴もうとするオリンダの姿に、幾つになっても、夢を追い続ける心を忘れないでいようと元気付けられました。かつて恋した人への思いを大事に抱えるのも素敵なことですが、前進あるのみ! 人生って、思いがけない出会いがあるもの。まだまだ楽しみ〜 (咲)

モスクワ国際映画祭で最優秀作品賞、アミアン国際映画祭で観客賞・主演女優賞を受賞 2001/アルゼンチン/カラー/96分/35mm
配給:パイオニア映画シネマデスク
宣伝:トライワークス

=愛、人生、音楽(タンゴ)こそがアルゼンチン=
★11月1日(土)よりシネマ・アンジェリカにて2作品同時公開

公式 HP >> http://argentina-movie.com/

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タンゴ・イン・ブエノスアイレス―抱擁―(原題:Abrazos Tango En Buenos Aires)

監督:ダニエル・リヴァス
脚本:セシリア・グエルティ、アドリアン・ダモーレ、ディエゴ・ラティヴォイ
インタビュー:ロレナ・ロペツ
音響:ファビアン・ペルサ・ロメロ
編集:パブロ・カミノ
出演:ホセ・リベルテーラ(バンドネオン奏者)、ルベン・フアレス(バンドネオン奏者・歌手)、ルイス・ボルダ、フアンホ・ドミンゲス(ギタリスト)、マリア・グラーニャ、アドリアナ・バレーラ(タンゴ歌手)

“ブエノスアイレス・タンゴ・フェスティバル” 1回目が行われた2003年の模様を中心に、アルゼンチンを代表する伝説的なバンドネオン奏者ホセ・リベルテーラを始めとするミュージシャンたちの魂のこもった演奏風景もたっぷり見せてくれるドキュメンタリー。

世界中から集まったダンス出場者たちは300組。ここまで来たという感動と興奮、本番を控えた緊張の表情も捉えています。日本人カップルも一組、彼らを指導した男性の「全部は教えていないよ」と茶目っ気たっぷりの一言も入っていました。(白)

2003/アルゼンチン/カラー/86分/35mm
配給:パイオニア映画シネマデスク
宣伝:トライワークス

=愛、人生、音楽(タンゴ)こそがアルゼンチン=
★11月1日(土)よりシネマ・アンジェリカにて2作品同時公開

公式 HP >> http://argentina-movie.com/

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Happyダーツ

監督・脚本:松梨智子
製作総指揮:大月俊倫
撮影:柳田裕男
音楽:ラクライ
主題歌:熊木杏里『モウイチド』
出演:辺見えみり(美奈子)、佐藤仁美(麻衣)、加藤和樹(篠塚)、新田恵利(サキ)、村杉蝉之介、森泉(八王子)、DAIZO、森次晃嗣(オーナー)ほかダーツプレイヤーのみなさん

派遣社員の美奈子は退社時間前には化粧直しを始め、時間ぴったりにタイムレコーダーを押して帰る。社内恋愛もてきとーにやってのけ、周りの女子の視線は冷たいがいっこうに気にしない。仕事の意欲は全然なく、興味のあるのはブランドもの。しかし、同僚で親友の麻衣に連れられてやってきダーツバーで、爽やかな年下青年篠塚に出会って美奈子の毎日は一変する。篠塚は日本でも指折りのダーツプレイヤーだった。彼に一目会いたいがため美奈子はダーツバーに通い始め、いつしかダーツの魅力にはまっていく。久しぶりに頑張れるもの、見つけちゃった!

ダーツはおもちゃでしか遊んだことがなく、この作品で初めてルールを知りました。古くからある先端が金属製のものはハードダーツ、この映画で使われているのはプラスチック製のソフトダーツです。コンピュータ内臓のダーツマシンには、点数の自動計算や音響・映像の演出のシステムがあり、華やかでより楽しめるものになりました。愛好者もここ数年で激増し、この作品にも実際のダーツ店、プレイヤーが数多く登場しています。
なにより松梨監督自身が製作が決まってからダーツ修行を始めて、半年後には全日本トーナメントに出場してベスト8まで進んだというのですから驚きです。ダーツの入門編としても充分な内容に、辺見えみり演じる向上心ゼロのOL美奈子が、好きなものを見つけて輝きだす過程もからめて面白く仕上がっています。元おニャン子クラブの新田恵利が21年ぶりに映画に復帰したのも話題。(白)

2008/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD/1時間26分
http://www.happy-darts.jp

11月8日(土)〜アミューズCQNほか全国順次公開

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かけひきは、恋の始まり(原題:LEATHERHEADS)

監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ダンカン・ブランドリー&ニック・ライリー
製作総指揮:シドニー・ポラック
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
プロダクション・デザイン:ジム・ビッセル
編集:スティーヴン・ミリオン
音楽:ランディ・ニューマン
出演:ジョージ・クルーニー(ドッジ・コネリー)、レニー・ゼルウィガー(レクシー)、ジョン・クラシンスキー(カーター)、ジョナサン・プライス(エージェントCC)ほか

1925年のアメリカ。アメリカン・フットボールのプロ・チーム「ダルース・ブルドッグス」は、スポンサーがおりて解散に追い込まれてしまった。キャプテンのドッジは、そろそろ選手生命も終わりの中年男。チームメイトと自分のためにもなんとかたてなおしたい。お客を呼ぶためにカレッジ・リーグのスタープレイヤー、カーターをチームに入れようと算段をする。
カーターは第1次大戦で勲章を受けた英雄だったが、新聞社にそれは事実と違うというタレコミがあった。敏腕女性記者のレクシーは、暴露記事を書く代わりに昇進の約束を編集長に取り付ける。それぞれ違う思惑をもってカーターに近づき、出会ったドッジとレクシーは丁々発止の舌戦を繰り広げる。

プロデュース、監督業に進出して以来快進撃を続けるジョージ・クルーニーが、15年以上あたためていたという大人のラブ・ストーリーを作りました。相手役は脚本段階から想定していたというレニー・ゼルウィガー。男勝りで野心満々、だんだんドッジに惹かれていくレクシーをレトロなファッションで魅力的に演じています。カーター役は、TVで人気が出たばかりのところを、クルーニーに大抜擢されたジョン・クラシンスキー。好感度高し。抜け目のない計算高いエージェントCC役のベテラン、ジョナサン・プライスはかつての自分のエージェントを手本にしたというのがおかしいです。旧き良き時代のアメリカン・コメディを彷彿とさせるお洒落な映画です。(白)

2008/アメリカ/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/113分/字幕:岡田壮平
配給:東北新社

公式 HP >> http://www.kakekoi.com

★11月8日(土)〜日比谷みゆき座ほか全国ロードショー
								
□■赤坂エクセルホテル東急■□

◆“恋のはじまり”特別ディナー

物語の舞台であるアメリカの食材とお料理を取り入れたオリジナルのディナーコース。
ニューヨークスタイルに仕上げたオードブルから豚バラ肉をコーラで煮込んだ肉料理
など古き佳きアメリカをイメージしたお料理の数々をお楽しみください。

○ 場所:赤坂エクセルホテル東急 3階  『赤坂スクエアダイニング』
○ 日時:2008年11月1日(土)〜11月30日(日) 17:00〜22:00
○ 料金:魚料理と肉料理のどちらか1品をチョイス  4,800円(税・サ込み)
           フルコース 6,000円(税・サ込み)
★ 特典:本映画の半券を持参のお客様には
  グラスワイン(赤、白、スパークリングのいずれか)サービス
◆“恋のはじまり”特製カクテル

大人のラブストーリーを描く、映画のイメージを取り入れたカクテル2品をご用意。

○場所:赤坂エクセルホテル東急 3階 
『赤坂スクエアダイニング・サロンコーナー』
○日時:2008年11月1日(土)〜11月30日(日) 17:00〜02:00(L.O.1:00)
○料金: 各1,200円(税・サ込み)
■“レザーヘッズ”(LEATHRHEADS)  
■“スピークイージー”(SPEAKEASY)
□■新橋愛宕山 東急イン■□

◆映画観賞券・PASMOつき ご宿泊プラン 

ホテルから『かけひきは、恋のはじまり』が上映される日比谷みゆき座へお出かけする
のもPASMOつきで楽々。劇場観賞券とホテルからのお出かけに嬉しいPASMOがついた、
心行くまで特別なひと時をお楽しみいただけるプランです。
映画の特製エコバックもプレゼント。

○ 期間:11月1日(土)〜11月30日(日)
○ 一名様につき、『かけひきは、恋のはじまり』観賞券1枚、
 PASMO(1000円分)1枚がつきます。 (税、サ込み)

シングルルーム南館
 コンフォートメンバー:¥13,300/一般:¥13,600
 シングルルーム新館 コンフォートメンバー:¥14,500/一般:¥14,800
 ツインルーム南館  コンフォートメンバー:¥ 8,600/一般:¥ 8,900
 ツインルーム新館  コンフォートメンバー:¥ 9,800/一般:¥10,100

※コンフォートメンバーとは東急ホテルズのメンバー会員のことを意味します。
※朝食につきましては1名当たり¥1,200(税込)プラスとなります。
★お申し込み:新橋愛宕山東急インHPよりお申し込みください。
◆“かけひきは、恋のはじまり”秋の特別ディナーご優待

秋に相応しい恋愛映画をご覧になった後は、ゆっくりとホテルのレストランでお食事を。 
レストラン『シャングリ・ラ』では、秋の食材を贅沢に散りばめた、メインセレクト
ディナーをご用意しました。 
メイン料理4品と相性抜群のワインと共に秋の味覚を存分にお楽しみください。

○ 場所:新橋愛宕山 東急イン 1階『レストラン Shangri-La』
○ 時間:17:30〜22:30(月-金)/17:30〜22:00(土・日・祝日)
   (L.Oは営業終了1時間前)
○ 料金:6,000円(税、サ込み)
★ 特典:映画の半券を持参のお客様はお食事代が10%OFF。

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その木戸を通って

監督:市川崑
脚本:中村努、市川崑
原作:山本周五郎「その木戸を通って」(「おさん」所収:新潮文庫刊)
撮影:秋場武男
出演:浅野ゆう子(ふさ)、中井貴一(平松正四郎)、フランキー堺(田原権右衛門)、井川比佐志(吉塚助十郎)、岸田今日子(むら)、石坂浩二(岩井勘解由)、神山繁(鹿島大学)、榎木孝明(田原角之助)ほか

娘ゆかの婚礼の日、初老の正四郎は庭の木戸を見やって思いをめぐらしている。若いころの彼は、老中の娘との縁組も決まり順風満帆の将来が待っていた。ある日泊まりこみの城勤めを終えて帰宅すると見知らぬ娘がいた。長く旅したらしいいでたちで、正四郎の名前のほかなんの記憶もないという。心当たりはないものの記憶が戻るまでしばらく家におくことにしたが、正四郎の後見人である田原はせっかくの縁談が壊れると反対する。吉塚夫婦が仮に「ふさ」と名づけ、武家の娘であったらしいふさは家の手伝いをして暮らすようになった。

市川監督の70本あまりの作品中、唯一公開されなかった作品。もとは1993年に日本初のハイビジョンで製作された長編ドラマでした。山本周五郎の短編小説を元に、美しい映像で綴られています。オープニングの闇と光、木の葉に止まるしずく、ほの暗い部屋に浮かび上がる着物姿などなど。主演の中井貴一さん浅野ゆう子さんは現在とあまり変わらない印象ですが、フランキー堺さん、岸田今日子さんの元気な姿があり、市川監督も2月に亡くなられて時間が確実に流れたのだと知らされます。BSで一度放送され、二つの映画祭に出品されたきりでしたが、昨年オリジナルフィルムの存在がわかって公開の準備がなされてきたものです。東京国際映画祭での上映も決定。(白)

1993/日本/ドルビーステレオ/92分/
カラーhdtv1125-60システムより35mm(ヴィスタサイズ)に変換/
配給・宣伝:ゴー・シネマ

公式 HP >> http://www.ponycanyon.co.jp/sonokido/

★11月8日(土)より丸の内東映?他にて特別上映

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「山下耕作監督特集」

任侠映画の巨匠、山下耕作監督の24作品を一挙特集上映。

期日:2008年11月9日(日)〜12月20日(土)
会場:ラピュタ阿佐ヶ谷
チケット:一般…1,200円  シニア・学生…1,000円  会員…800円
 3回券…2,700円  水曜サービスデー…1,000円均一

【トークイベント】
 11.9(日)12:40『関の彌太ッぺ』終了後
 [ゲスト]鈴木則文監督 [聞き手]山根貞男さん(映画評論家)
 『関の彌太ッぺ』に助監督として参加された鈴木則文監督をお迎えし、撮影当時のエピソードや、山下耕作監督の思い出などを語っていただきます。
スケジュール、作品解説など詳細は下記へ。

公式 HP >> http://www.laputa-jp.com/

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秋深き

監督:池田敏春
脚本:西岡琢也
原作:織田作之助「秋深き」「競馬」(講談社文芸文庫 刊)
音楽:本多俊之
出演:八嶋智人、佐藤江梨子、渋谷天外、山田スミ子、赤井英和、佐藤浩市

仏具屋のぼんぼん育ちで学校の先生をしている寺田は、大阪・北新地のクラブのホステス・一代に恋をして、酒も飲めないのに通い詰めている。寺田は一大決心をして一代にプロポーズすると、彼女は意外にあっさりと受け入れた。
両親の承諾を得ないまま、寺田と一代は結婚して一緒に暮らし始める。幸せな日々ではあったが、寺田は美しく社交的な一代の行動にハラハラし、過去の男性遍歴に勝手に嫉妬を募らせる。そんな中、一代が「おっぱいが痛い」と言い出す。

小心者でどうしようもない男と孤独を恐れて幸せを夢見る女の愛情物語。「夫婦善哉」の織田作之助の短編をもとに作られた作品で、いかにも大阪らしい人情悲喜劇です。しかし八嶋智人演じる寺田のあかんたれぶりは丁寧に描かれているのに、一代の存在があまりに夢の女で、現実味が足らないと感じました。可笑しくて哀しい二人のはずが、どうも愚かさが目立ってしまってなかなか感情移入できず残念。(梅)

2008/日本/カラー/ヴィスタ/DTS/105分
配給:ビターズ・エンド
宣伝:マジックアワー

公式 HP >> http://www.akifukaki.com/

★11月8日(土)より、シネマスクエアとうきゅう他、全国順次ロードショー

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ブラジルから来たおじいちゃん

監督:撮影 栗原奈名子
撮影:エリオ・イシイ
出演:紺野堅一さんほか

栗原奈名子監督

 92歳の紺野堅一さんは72年前、不況真っ只中の日本からブラジルに移民しました。最初は言葉もわからないなか、10回も職業を変え、破産の経験もしたけど、あきらめずに努力をした結果、今はサンパウロの3女の家で悠々自適の生活をしています。
 そんな紺野さんですが、この数年、26時間もかかる飛行機に乗って日本にやってきて、1ヶ月くらい滞在し、日本に出稼ぎに来ているブラジル人を訪ね歩いています。現在日系ブラジル人の数は、31万人を超え、長期滞在化の傾向にあります。そんな彼らの姿が、出稼ぎのつもりがブラジルに定住するはめになった自分の姿と重なり、彼らの将来が気にかかります。彼らの話を聞き、子供たちの学校にも、先生と相談するために出かけていきます。驚くことに92歳の紺野さんの移動手段は、電車やバスなど公共の乗り物。そんな紺野さんの姿を見るだけで、観客は元気をもらえます。
 栗原監督の初めての海外体験は30年前。父親に連れて行ってもらったブラジルで、紺野さんに会ったそうです。その紺野さんが、毎年日本に来ていることを知り、彼の姿を追ったドキュメンタリーを作りました。これは、紺野さんの人生を振り返る旅でもあり、日本のブラジル移民の歴史をたどる旅にもなりました。  

 
© 2008 Nanako Kurihara

今年はブラジル移民100周年だそうです。日系ブラジル人のルーツでもある移民1世の紺野さんの姿に、真のグローバル化とは何かということを考えてみませんか。(暁)  

2008/日本/カラー/59分/?ミニDV/ステレオ/日本語・ポルトガル語
配給:アムキー

★11月8日(土)より、ポレポレ東中野にて11am〜 1日1回上映、週末にトークイベントあり
 全国順次ロードショー
 11月22日(土)〜 28日(金)シネマテークたかさき
 12月14日(日)〜 26日(金)横川シネマ(広島)
 第七藝術劇場(大阪)2009年1月初旬公開予定

公式 HP >> http://amky.org/senhordobrasil/index.html

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ダイアリー・オブ・ザ・デッド(原題:DIARY of THE DEAD)

監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
出演:ミシェル・モーガン、ジョシュ・クローズ、ショーン・ロバーツ、エイミー・ラロンド、スコット・ウェントワースほか

山中でホラー映画を撮影している若者たちがいる。大学の映画学科の学生で、卒業制作をしているのだった。その中、ラジオを聞いていた仲間が、死者が突然起き上がって人々を襲い始めているという信じがたいニュースに気づいた。まさかと思いつつも、両親と連絡を取ろうとしても携帯電話はつながらない。不安になった彼らは、とりあえず山を下りてみる。そこで彼らが目にしたのは、本当に死者が生きている人々を襲う姿だった。ドキュメンタリー作家志望だったジェイソンは、手持ちのカメラですべてを撮影し、混乱したメディアに変わって、真実の映像をネット上に公開しようと心に決める。

ジョージ・A・ロメロは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68)で、モダン・ゾンビ映画を確立した監督。1940年生まれといいますからもう68歳になりますが、作品に老いなどまったくなく、なおいっそう血気盛ん。つい最近、彼の作品『死霊のえじき』(85)のリメイクである『デイ・オブ・ザ・デッド』が日本公開されたばかりなど、再びゾンビ映画が注目される中、この新作は真打ち登場と思わせます。主人公の若者たちが直にゾンビに襲われる怖さに加え、インターネットの動画投稿サイトを効果的に使って世界全体が確実に終わりへと向かっていく恐怖を感じさせるのです。さらにはカメラを覗くことによって対象にこうも無慈悲になれてしまう人間の怖さも描いています。ゾンビ映画というジャンルで、エンタテインメント性は忘れずに、きっちり現代社会や人間のもろさを描いてリアルを感じさせるのはさすがです。(梅)

2007年/アメリカ/カラー/95分/Dolby Digital/ビスタサイズ/字幕翻訳:川又勝利/R-15
提供・配給・宣伝:プレシディオ
協力:ジェネオン エンタテインメント

公式 HP >> http://www.diaryofthedead.jp/

★11月15日(土) 池袋シネマサンシャイン、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

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ラブファイト

監督:成島出
脚本:安倍照雄
原作:まきの・えり「ラブファイト 聖母少女」(講談社文庫・今秋発売)
出演:林遣都、北乃きい、浪岡一喜、藤村聖子、桜井幸子、大沢たかお

稔と亜紀は幼なじみ。稔はずっといじめられっ子で、亜紀はそんな稔を守るため、滅法ケンカに強くなった。高校生になっても稔は相変わらずヘタレのまま。亜紀は天使の顔して不良男子学生をも蹴り倒す女の子になっていた。さすがに稔もこのままではダメだと思っていたところ、元日本チャンピオンで今はボクシングジムを経営している大木と出会う。いつか亜紀に勝ちたいとの密かな思いを抱いてボクシングを習い始めるのだが、亜紀は早々に稔の通うジムを見つけ、自分もボクシングを始めてしまうのだった。

逃げ足だけは速いけど臆病すぎてパンチが出せない稔と、攻めの一手でガードの甘い亜紀。ボクシングを通して自分の弱さと、お互いに対する本当の気持ちに気づいていく姿が何とも言えずさわやかで、観ているだけで若さを分けてもらえるような気分になります。二人とも吹き替えなし、CGなしでボクシングシーンを演じていて、アザや怪我が絶えなかったといいますが、その甲斐あって迫力も説得力もあるファイトシーンになっています。最後の二人のガチンコ対決シーンは、痛いのにとってもスウィート。必見です。必見と言えば、林遣都ファンは劇中ちらりと映る宝塚スターコスプレ写真をお見逃しなく。(梅)

公式 HP >> http://www.lovefight.jp/

★11月15日(土)、全国ロードショー

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GSワンダーランド

監督:本田隆一
脚本:本田隆一、永森裕二
撮影:小林元
美術:丸尾知行
音楽プロデューサー:高護
音楽監督:サリー久保田
出演:栗山千明(大野ミク)、石田卓也(紀川マサオ)、水嶋ヒロ(正巳屋シュン)、浅利陽介(柏崎ケンタ)、大杉漣(蒲田専務)、高岡蒼甫(ナックルズのリーダー)、武田真治(梶井)、杉本哲太(佐々木ディレクター)、岸部一徳(松田社長)、温水洋一(大河内)ほか

世界中に広まったビートルズ旋風のおかげで、日本もGS(グループサウンズ)人気まっさかり。マサオは日劇カーニバルに出演することを夢見る高校生だった。ロックバンドのナックルズにバンドボーイになりたいと頼みに行くがいいようにあしらわれる。たまたま出逢ったシュンとケンタと一緒に3人で「ザ・ダイアモンズ」というバンドを作る。屋上での初演奏を聞きつけたのは、ちょうど新しいGSを探していた弱小プロダクションの梶井。指令元のファインレコード会社の意向ではキーボードが必須。歌手志望の女の子ミクを男装させて4人はデビューする。

1968年といえば私もGSブームの中におりました。当時覚えきれないほどのグループのデビュー合戦、次々と繰り出される目立ったもん勝ちなコスチューム、なんでもありの妙なエネルギーだけはよ〜く覚えております。芸能界の裏側など考えてもみない純朴な高校生だったので、この映画の中の躍起になっている業界の方々のようすはまことに面白かったです。今だから笑えますがみんな真剣だったんですね。本田隆一監督は1974年生れで団塊の子ども世代ですが、なぜかGSフリークだそうで、もしかして映画に使われた小物も私物蔵出しでしょうか?
美形男子(?)の栗山千明、石田卓也、水嶋ヒロ、浅利陽介、その名も「タイツメン」な4人の王子様ルックは二度と拝めないでしょう。彼らの歌う橋本淳・筒美京平ゴールデンコンビによる主題歌「海岸線のホテル」はCD+DVD発売。今回憎まれ役になった高岡蒼甫さんがいい声で上手なのにびっくり、いじられキャラの多い温水洋一さんにスポットライトが当たったのは嬉しかったです。(白)

2008/日本/カラー/シネスコ/100分/ドルビーSRD/
配給:デスペラード

公式 HP >> http://www.gs-w.jp/

★11月15日(土)、40年ぶりにGSブーム再燃?! 渋谷シネマGAGA!シネ・リーブル池袋、シネマート新宿にて公開

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ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて

監督:トマス・グルベ(『ベルリン・フィルと子どもたち』)
出演:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、サー・サイモン・ラトル(指揮)
音楽:シモン・シュトックハウゼン

ベルリン・フィル創立125周年記念上映 第二弾

2005年秋、アジア6大都市をめぐる三週間のコンサートツアーを追った記録。
北京、ソウル、上海、香港、台北、そして東京・・・ 各都市2日間の公演と1日の移動日というハードなツアーだが、すべての会場でリハーサルを欠かさない。どの都市でも同じ曲を演奏するのにもかかわらず、指揮者ラトルから毎回厳しいチェックが入る。そして、緊張の本番。どの都市でも、完璧といえる演奏が繰り広げられる。そんな中で、ほっとする一幕が、台北で演奏会場の外でコンサートの模様をスクリーンで観ていた数万人の聴衆が、指揮者ラトルと団員を熱烈歓迎する場面だ。思わずラトルや団員の顔がほころび、ツアーの疲れを吹き飛ばすかのようである。
一方、このコンサートツアーは、新人団員にとっては試用期間であり、ツアーの終了と共に合否結果が出されるという緊張感の抜けないものである。新陳代謝を繰り返しながら、ベルリン・フィルがその伝統を守り続け、最強のオーケストラであり続けていることを認識させられた次第である。

蛇足ながら、私にとって香港文化中心での演奏会シーンは、1997年7月の香港返還記念コンサートで、ヨーヨー・マーと張学友の共演を楽しんだことを思い出させてくれる嬉しい一幕だった。(咲)

2008年/ドイツ/カラー/35?/ドルビーデジタル/108分
配給:セテラ・インターナショナル
◆11月15日(土)、16日(日)各日先着150名様にベルリン・フィル公式2008・2009コンサートスケジュール帳プレゼント

公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/BPO

★11月15日(土)より渋谷・ユーロスペース他全国順次ロードショー

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ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日(原題:ANGUS, THONGS AND PERFECT SNOGGING)

監督:グリンダ・チャーダ
脚本:グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス、ウィル・マックロブ、クリス・ビスカルディ
原作:ルイーズ・レニソン 『ジョージアの青春日記』(講談社刊)
撮影:リチャード・ポープ
プロダクション・デザイン:ニック・エリス
音楽:ジョビィ・タルボット
出演:ジョージア・グルーム(ジョージア)、アーロン・ジョンソン(ロビー)、カレン・テイラー(ママ)、アラン・デイビス(パパ)、エレノア・トムリンソン(ジャス)、ジョージア・ヘンショウ(ロージー)、マンジーヴェン・グレウォル(エレン)、キンバリー・ニクソン(リンジー)、ショーン・ボーク(トム)ほか

イギリス南端のビーチリゾート地ブライトンは、気候が良くて老人の多い町。ジョージアは、化石のように頭の古い両親と小さな妹、凶暴な猫のアンガスと暮らしている。自分の顔をいまいちと気にしているけど、仲良し4人組と大騒ぎするのは何より楽しい。クラブで15歳のバースディパーティをするのがジョージアの目下の夢。それまでには絶対素敵な恋人がほしい!そんなとき転校生の2卵生双子のトムにジャスが、ジョージアはロビーに一目ぼれ。しかしロビーはすでに学校1のビッチなリンジーと付き合っていた。

 

大ヒットした「ブリジット・ジョーンズの日記」の妹版と呼ばれた原作を、『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督がイギリス風に脚色しました。南のリゾート地はこんなにも明るくて可愛い家が立ち並んでいるのですね。その中で些細なことに悩んだり笑ったりのティーンの日常が繰り広げられます。綿密なリサーチがリアルな台詞に生きているので、中高生が共感して大喜びしそうです。ジョージアが恋する甘いイケメン君、ロビーは『シャンハイ・ナイト』や『幻影師アイゼンハイム』のアーロン・ジョンソン。『幻影師アイゼンハイム』ではジャス役のエレノア・トムリンソンと共演していました。
映画のシーンを盛り上げる音楽もここ、1,2年のうちに名前が知られた若手ミュージシャンのものばかり。特筆すべきは映画のために組まれたロビーのバンド「Stiff Dylans」が、撮影終了後にBGMソニーからデビューが決まったこと!(白)

2008/イギリス/カラー/100分/シネマスコープ/DTS,SRD/
配給:パラマウント

公式 HP >> http://www.g-nikki.jp/

★11月15日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ他ロードショー

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DISCO ディスコ

監督:ファビエン・オンテニエンテ
脚本:フランク・デュボスク
出演:フランク・デュボスク(ディディエ)、エマニュエル・ベアール(フランス)、ジェラール・ドパルデュー(ジャクソン)、サミュエル・ル・ビアン(ウォルター)、エバス・ザーマニ(ヌヌイユ)ほか

ディディエは離婚した妻との間に息子がいるが、無収入のためバカンスに誘うこともできない。なんとか親父らしいところを見せたいと思っていたところ、地元のクラブでダンスコンテストをするというニュースが入ってくる。優勝者は海外旅行に行けると聞いて、息子と出かけよう!と一念発起。40代になったディディエも、昔はディスコで大人気のトリオ「ビー・キング」のリーダーだったのだ。ウォルターもヌヌイユも今やすっかりダンスとは縁が切れた生活だったが、ディディエのために一肌脱ぐことにする。美人のバレエ教師フランスに頼み込んで、猛特訓に励むのだが。

『サタデー・ナイト・フィーバー』から30年も経ちましたか。トラボルタもすっかり恰幅のいい中年になりましたものね。この作品ではもう少し若いものの、いまいちな人生を送っている3人が父の自覚と友情をきっかけに、スパンコールの衣装とともにダンスフロアに戻ります。主演のフランク・デュボスクは有名なコメディアンだそうです。この人が出ればヒットという、エマニュエル・ベアールとドパルデュー(ますます貫禄)も加わってフランスではオープニング1位の興行。ビー・ジーズ、ドナ・サマーなど黄金のディスコサウンドにのせて、おじさんたちの青春がもう一度蘇ります!(白)

40男たちの奮闘ぶりは初めこそイタイ感じで笑っちゃいますが、決勝戦ではごきげんなディスコサウンドにノリノリで踊る姿に「やるじゃない!」と拍手したくなります。憧れのバレエの先生役のエマニュエル・ベアールがこれまでの妖艶なファム・ファタル的なイメージとは打って変わって、純粋で可愛らしい女性を演じているのも新鮮。決勝戦のシーンで来ている衣装は、彼女にしてはかなりぶっ飛び。でも、かわいかった。(梅)

2008/フランス/カラー/103分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/
配給:アートポート
11月15日(土)より、シャンテ シネ他全国ロードショー

公式 HP >> http://www.disco-movie.jp/

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ブロークン(原題:The Broken)

監督・脚本:ショーン・エリス
出演:レナ・ヘディ、リチャード・ジェンキンス、ミシェル・ダンカン、アシエル・ニューマン、メルヴィル・プポーほか

ロンドンに暮らすジーナは彼女の恋人、弟、弟の恋人と一緒に父の誕生日にサプライズパーティをしかける。驚き喜ぶ父と共に楽しい食卓を囲んでいたが、突然背後にあった大鏡が割れ落ちる。5人は苦笑しながら「鏡が割れると7年間不幸が続く」という迷信を口にする。しかし、その後彼女たちを襲った不幸は、その迷信の比ではなかった。

鏡に見ていてふと不安になることはありませんか? そこに映る自分が、自分と違う動きをしたらどうしようとか。鏡にまつわる迷信は日本にもいくつもあって、それだけ古来から畏怖の対象だということでしょう。この作品はそんな鏡を仕掛けとしたサスペンス映画。シンメトリーにこだわった構図や、キリキリ不安をあおる音、どんよりとした空の下に広がるロンドンの風景などがいやでも緊張を高めます。監督のショーン・エリスはファッション・フォトグラファーとして名をなして後、映画監督へ転身し、この作品は『フローズン・タイム』に続く長編第2作目となります。映像の美しさはさすがといえます。(梅)

2008年/イギリス・フランス/カラー/シネマスコープ/ドルビー/SRD/88分/PG-12
提供:アミューズソフトエンタテインメント、博報堂DYメディアパートナーズ、熱帯美術館
配給:リベロ

公式 HP >> http://www.broken-movie.jp/

★11月15日(土)より、テアトルタイムズスクエアにてロードショー

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BOY A

監督:ジョン・クローリー(『ダブリン上等!』)
脚本:マーク・オロウ
原作:ジョナサン・トリゲル
出演:アンドリュー・ガーフィールド(『大いなる陰謀』)、ピーター・ミュラン(『マイ・ネーム・イズ・ジョー』)

「過去の君は死んだ。今日からの名前を決めよう!」という中年男性の言葉に、傍らの雑誌に目をやり、「ジャックにする」と目を輝かせる青年。中年男性は、ソーシャルワーカーのテリー。〔悪魔の少年、成人に〕の新聞の大見出し。どうやらジャックは少年時代に罪を犯したらしい。新しいアパートで向かえた夜、夢にうなされたジャックは、テリーに「フィリップの墓に連れていって欲しい」と頼む。墓石には、1983年—2000年の文字。フィリップは17歳で亡くなっている。「死んで謝罪したのかな?」とつぶやくジャック。
運送業の仕事に就き、ペアを組んだ同世代の青年クリスとの関係も上々。同僚のミシェルという女性とも、クリスの後押しで恋仲になる。本気でミシェルを愛し始めたジャックは、彼女にはほんとうのことを打ち明けたいと、テリーに相談するが、「君の安全のために、絶対口外してはならない」と言い聞かされる。
ある日、仕事の途中で事故車に出会い、ジャックは助手席の少女の命を救う。しかし、このことがジャックの過去をあばくことになってしまう...

ジャックは、少しおどおどしているけれど爽やかな青年。何かを犯して、更正して、人生を再出発したと説明されなければ、ごく普通の好青年だ。過去が明らかになったとたん、色眼鏡で見る人々。脚本家のマーク・オロウも、「先入観をすてて、主人公の青年を見てください」と語る。 友人として信用して接していた人物が、過去に何かを犯していたと知らされた時、私だったらどうだろう? 友ならば、過去も許せるかもしれない。でも、それが、少し距離を置いた人物ならば、やはり避けるような気がする。罪を犯した人が、過去を償っても、晴れて普通の生活をすることの難しさをまざまざと考えさせられた。(咲)

2008年ベルリン映画祭パノラマ部門エキュメニック審査員賞
2008年BAFTA最優秀男優賞、監督賞、編集賞、撮影賞
2007年/イギリス//107分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
宣伝:ムヴィオラ
配給:シネ・カノン

★11月15日より渋谷シネアミューズ他 全国順次公開 

公式 HP >> http://www.boy-a.jp/

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「第15回大阪ヨーロッパ映画祭」

日時:11月21日(金)〜24日(月・祝)
会場:リサイタルホール
関連イベント:11月1日(土)より

<メイン・イベント>
『アラビアのロレンス』ニュープリント記念上映 11月21日(金)
2008年度ヨーロッパ最新作品日本初上映 11月22日〜24日
世界のCMフェスティバル2008 in 大阪 11月28日(金)オールナイト

詳しくは公式HPにてご確認下さい

公式 HP >> http://www.oeff.jp/

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「第9回東京フィルメックス」

開催日程:11月22日(土)〜11月30日(日)
会場:有楽町朝日ホール、フィルムセンター大ホール、シネカノン有楽町1丁目
作品数:コンペティション 10作品、特別招待作品 12作品、蔵原惟繕監督特集 12作品、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ 5作品
チケット発売:チケットぴあにて11月3日(祝)より前売り券発売

今年の東京フィルメックスはブラジル映画に注目です。日本人ブラジル移住100周年記念の年ということで、オープニング作品にはウォルター・サレス監督(『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリーズ』)の新作でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞した『リーニャ・ヂ・パッシ』」が決まりました。さらに特別招待作品にはサンパウロ映画祭が製作した『ウェルカム・トゥ・サンパウロgがあり、50〜60年代のシネ・ノーヴォ運動で重要な役割を果たしたジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督作品の特集上映もあります。

コンペティションにはアジアの新鋭による10作品が集まりました。カザフスタンから2作品というのが目を引きます。また、中国から3作品、日本からは2作品、ほかイスラエル、レバノン、韓国からの出品です。このコンペティション作品を審査する審査委員長を野上照代さんがつとめます。審査員の中には香港の俳優・梁家輝(レオン・カーファイ)の名前も! 残念ながら今年は出演作の上映はありませんが、丸の内カフェでのトークサロンの可能性もあるのでファンの方は是非ご注目下さい。

恒例の日本人監督の特集上映は、今年は蔵原惟繕(これよし)監督の作品です。蔵原監督というと『南極物語』(83)や『キタキツネ物語』(78)といった大作娯楽映画や、日活時代には『銀座の恋の物語』(62)、『憎いあンちくしょう』(62)といった石原裕次郎主演作など第一線の監督として活躍した方です。しかし、蔵原監督作品を特集する企画はこれまでなく、特にその初期の作品が顧みられることはありませんでした。それら初期の作品には強い作家性が感じられ、プログラム・ディレクターの市山氏にとっても驚きの発見であったとおっしゃっています。『ある脅迫』(60)を観ましたが、2本立て興行だった当時、人気俳優が主演するメイン作品の添え物的B面映画として製作された作品ですが、演出も役者の演技も冴えた非常に見応えのあるノワール作品でした。是非この機会にご覧下さい。

コンペティション作品
私は見たい(英題:I Want To See)
 レバノン
 ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ
 75min.
ショーガ(英題:Shuga)
 カザフスタン、仏
 ダルジャン・オミルバエフ
 88min.
バシールとワルツを
(英題:Waltz With Bashir)
 イスラエル
 アリ・フォルマン
 87min.
ノン子、36歳(家事手伝い)
(英題:NON-KO)
 日本
 熊切和嘉
 105min.
ヘアカット(英題:Strizh)
 カザフスタン
 アバイ・クルバイ
 80min.
木のない山(英題:Treeless Mountain)
 韓国、米
 キム・ソヨン
 89 min
黄瓜(きゅうり)
(英題:Cucumber /原題:黄瓜)
 中国
 チョウ・ヤオウー(周耀武)
 100min.
サバイバル・ソング
(英題:Survival Song /原題:小李子)
 中国
 ユー・グァンイー(于廣義)
 94min.
完美生活
(英題:Perfect Life /原題:完美生活)
 香港, 中国
 エミリー・タン
 97min.
PASSION(英題:PASSION)
 日本
 濱口竜介
 115min.
特別招待作品
夜と昼(英題: Night and Day) 韓国 ホン・サンス 145min
文雀(英題:Sparrow) 香港、中国 ジョニー・トー 87min
愛の剥きだし(英題:Love Exposure) 日本 園子温 237min
いつか分かるだろう(英題:One Day You Will Understand) フランス アモス・ギタイ 89min
デルタ(英題:Delta)
 *クロージング作品
ハンガリー ムンドゥルツォ・コルネール 92min
ティトフ・ヴェレスに生まれて
(英題:I Am From Titov Veles)
マケドニア テオナ・ストゥルガー・ミテフスカ 102min
夜と昼 文雀
ベガス (英題:Vegas: Based on a True Story) アメリカ アミール・ナデリ 102min
ウェルカム・トゥ・サンパウロ
(英題:Welcome to Sao Paulo)
ブラジル V.A. 97min
可視から不可視へ(英題:FROM VISIBLE TO INVISIBLE) ブラジル マノエル・デ・オリヴェイラ 7min
河の上の愛情(英題:Cry me a River / 原題:河上的愛情) 中国 ジャ・ジャンクー 19min
クラウド9(英題:Cloud 9) ドイツ アンドレアス・ドレーゼン 97min
リーニャ・ヂ・パッシ(英題:LINHA DE PASSE)*オープニング ブラジル ウォルター・サレス 110min
クラウド9 リーニャ・ヂ・パッシ
  • アニエスベー・アワード 観客の投票によって決まる賞です。みなさん、是非ご参加下さい。
  • 丸の内カフェ トークサロン 丸の内カフェ(千代田区丸の内3−3−1新東京ビル1F)にて、映画祭期間中に来日ゲストによるトークサロンを開催します。詳しくはhttp://www.marunouchicafe.com/をご覧下さい。
  • アテネ・フランセ文化センターにて「ジャキン・ペドロ・アンドラーデ監督特集」追加上映 3プログラムを12月6日(土)に追加上映いたします。映画祭期間中、ご覧になれなかった方はぜひこちらへ。

公式 HP >> http://www.filmex.net/

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中華学校の子どもたち

監督・プロデューサー・撮影:片岡希
撮影:樋口伊喜夫、山本直史
録音:渡辺洋一、西本憲吾、津守優晴
編集:渡会清美
音楽:加藤千晶
登場する子どもたち:シャオリン、ユウカ、ティエンチョン、ジーチャオ、ヨウシュー、インシャンほか

これが初の長編作品となる片岡監督は『ヨコハマメリー』のプロデューサーです。かつて北京電影学院に留学中、教育が人を作ることを身をもって感じ、日本に住む華僑華人の人々がどんな教育を受けているのか、と思ったことがこの作品のきっかけとなったそうです。
全国に5校ある中華系学校のうち2校が横浜にあります。大陸系の横浜山手中華学校と台湾系の横濱中華学院。元はひとつであったものが事情により分かれてしまったのだとか。この作品は、横浜山手中華学校の1年生を3年間にわたって追ったドキュメンタリーです。屈託のない無邪気な子どもたちの様子ばかりでなく、日中戦争、中国内戦、文化大革命など様々な歴史を経験してきた華僑華人の1、2世のインタビューもまじえています。その中で語られる「落地生根」ということばは、遠く故郷を離れた土地に根を下ろし、枝葉を茂らせて大樹となるという意味で、華僑の人たちの生き方そのままです。同時に故郷の文化を大切にし、子孫に伝えたいという思いから中華学校が生まれました。現在母校の教師となった一人が「日本にいれば中国人、中国に行けば日本人と言われる」と悩んだことを吐露すれば、別の先生は「どこに行っても絶対中国人」と言い切ります。中国語も日本語も話し、どちらの文化も身につけている子どもたちが将来日中の架け橋となることを期待します。そして違いを認め合いながら、国を超えて「アジア人」、「地球人」といえる日が来るように、どこの国でもそんな教育が行われることを願っています。(白)

 

2008/日本/カラー/86分/
配給:ブロードメディアスタジオ

公式 HP >> http://cyugakko-movie.jp

★11月22日〜横浜ニューテアトルにて公開

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バンク・ジョブ(原題:THE BANK JOB)

監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ
撮影:マイケル・コールター B.S.C.
音楽:J・ピーター・ロビンソン
出演:ジェイソン・ステイサム(テリー・レザー)、サフロン・バロウズ(マルティーヌ)、リチャード・リンターン(ティム)、スティーヴン・キャンベル・ムーア(ケヴィン)、ダニエル・メイズ(デイヴ)、ジェームズ・フォークナー(ガイ)、アルキ・デヴィッド(バンバス)、マイケル・ジプソン(エディ)、ピーター・デ・ジャージー(マイケルX)、ピーター・ボウルズ(アークハート)、デヴィッド・スーシェ(ルー)ほか

=封印された英国史上最大の銀行襲撃事件―これは実話である。=

中古車販売をしているテリー、商売はおもわしくなく借金取りに店を荒らされて頭を抱えている。古いつきあいの女友達マルティーヌに誘われ、被害が表に出にくい銀行の貸し金庫を狙うことになった。地下トンネルを掘るのに信用できる仲間を集めるが、マルティーヌはこっそりと知らない男に会っていた。この話には裏があり、王室のスキャンダルを消そうとする組織が暗躍していたのだ。そうと知らないテリーたちは、貸し金庫の現金や宝石に、これで第2の人生を送ると大喜びする。金庫の中には知られたくないものがほかにも入っていた。

1971年、アマチュア無線家がたまたま銀行の金庫襲撃事件のやりとりを傍受し、ロンドン警視庁に通報しました。近隣の銀行を全てターゲットに捜査を開始しますが、休日のため時限錠は月曜日まで開かず、事件が発覚したのは月曜の朝。まれに見る大きな事件であったにも関わらず、数日後にはD通告(国防機密報道禁止令)が発動され、その後一切の報道がなされませんでした。
この映画は綿密なリサーチを重ね、匿名の関係者たちの協力を得て作られています。点々と散らばる事実を推理と創作で繋げたストーリーは、大泥棒が活躍するわけではなくアクションも控えめです。しかし手先として利用されたテリーが、巨大な敵から家族を保護し、仲間を救おうと奮闘するさまに肩入れしてしまいました。ベイカー街はシャーロック・ホームズの住居として有名ですが(221bに博物館があります)、事件はそのベイカー街にある銀行で起こりました。街並みは当時からあまり変化していないそうです。「シャーロック・ホームズに謎を解いてもらうがいい」と犯人たちが書き残していたというのが面白いです。(白)

2008/イギリス/カラー/スコープサイズ/SRD/111分/
配給:ムービーアイ
http://www.bankjob.jp/
(c)2007 Baker Street Investors, LLC. All Rights Reserved.

★11月22日(土)より、シネマライズほか全国ロードショー

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未来を写した子どもたち(原題:BORN INTO BROTHELS: CALCUTTA'S RED LIGHT KIDS)

監督・撮影:ロス・カウフマン&ザナ・ブリスキ
音楽:ジョン・マクダウエル
登場する子どもたち:コーチ、アヴィジット、シャンティ、マニク、プージャ、ゴウル、スチートラ、タパシ

1998年、ニューヨークのフォトジャーナリスト、ザナ・ブリスキはカルカッタ(現:コルカタ)の売春窟で暮らし始めた。売春婦たちを取材し撮影するためだったが、彼女はこの迷路のような地域に多くの子どもたちがいるのに気づく。彼らの大半は劣悪な環境の中、学校にも行かず母親の手伝いをして女の子は長じれば同じ売春婦に、男の子は彼女たちの世話をするようになるのだ。ザナは彼女にまとわりつく子どもたちがカメラに興味を持つのを知って、インスタントカメラを用意し写真の撮り方を教える。喜々として自分の家や街を取る子どもたち。ザナはビデオカメラで彼らのようすを記録することにした。知人のドキュメンタリー作家のロス・カウフマンにビデオテープを送ると、ロスはすぐにカルカッタにやってきた。子どもたちばかりでなく、ザナが彼らのために奮闘するようすを撮影したかったからだ。

子どもたちが無心に撮影した写真は、その街の暮らしや人々の表情を捕らえています。プロのカメラマンには撮れないものでしょう。ザナの必死の尽力で何人もの子どもたちが、学校教育を受ける機会を得ました。中でも天賦の才能を見出された少年は、カルカッタの寄宿学校を経て奨学金でアメリカの高校を卒業し、この9月にはニューヨーク大学に進学しているはずです。感心したのは映画を撮ってそれで終わるのではなく、「KIDS WITH CAMERAS」基金が設立され、現在もエルサレム、ハイチ、カイロなどの子どもたちの支援を続けていることです。(白)

2005年第77回アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞ほか、多くの映画祭で受賞

2004/アメリカ/カラー/85分/ヴィスタ/ドルビーSRD/ベンガル語・英語
配給:アット エンタテインメント

公式 HP >> http://www.mirai-kodomo.net/

★2008年11月22日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開

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旅立ち〜足寄より〜

監督:今井和久
脚本:鴨義信
原作:松山千春「足寄より」扶桑社刊
撮影:上赤寿一
美術:北谷岳之
音楽:松山千春
出演:大東俊介(松山千春)、萩原聖人(竹田健二)、尾野真千子(絵里子:千春姉)、ペ・ジョンミョン(佐藤・シュガー)、伴杏里(河合紀美子)、林剛史(高木)、奥貫薫(竹田依子)、石黒賢(西口プロデューサー)、泉谷しげる(松山明:父)ほか

1975年、札幌で開催された「‘75全国フォーク音楽祭北海道大会」に足寄からやってきた松山千春が出場する。自作の「旅立ち」は聴衆を魅了するが、生意気な態度が審査員の印象を悪くして落選。会場を後にする千春に、審査員の一人だったSTVラジオのディレクター竹田が声をかける。「いつかチャンスが来る。曲をいっぱい作っておけよ」これが二人の出会いだった。
千春の才能に惚れ込んだ竹田は、彼を起用した番組の企画書を何度も出し続ける。竹田の熱意についに上層部が折れ、毎週一度の番組のコーナーで歌えることになった。

十勝平野の東北部にある日本一広い足寄というこの街を有名にしたのは、やはり松山千春でしょうね。彼の歯に衣着せぬ正直な物言いと、伸びのある高音の歌はラジオやコンサートを通じて日本中に広まっていきます。この映画はその始まりを作った竹田ディレクターとの出会いを中心に描き、鼻っ柱の強い千春を『クローズZERO』、『リアル鬼ごっこ』の大東俊介、千春を育てる竹田を萩原聖人。会うたびに言う台詞「千春、飯食ってるか」に滋味があって、彼も少年の頃から長く芸能界にいたんだったなぁと思いました。
松山千春の歌はよく聞いていましたが、ベストセラーとなった原作は未読で、歌手誕生までの逸話をこの映画で初めて知りました。人との出会いは宝です。竹田との急な別れに、千春が満場の観客と「旅立ち」を歌う姿にもらい泣きしてしまいました。(白)

2008/日本/カラー/35mm/DTSステレオ/ヴィスタサイズ/1時間52分
配給:エム・エフボックス

公式 HP >> http://www.ashoro-movie.com/

★11月22日(土)より、北海道先行ロードショー、1月全国公開
 10月1日、松山千春ベスト・コレクション+映画オリジナルサウンドトラック発売

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平凡ポンチ

監督・脚本:佐藤佐吉
原作:ジョージ朝倉「平凡ポンチ」(小学館IKKI COMIX)
撮影:長野康隆(J.S.C)
音楽:KUJUN
出演:秋山莉奈(鰐淵ミカ)、佐藤佐吉(真島アキ)、小西遼生(イケメン真島)、森下悠里(中村ヒナ)、柄本佑(新開エイジ)、岩田ゆい(よこすかさん)

真島アキはぱっとしない自主映画の監督。その気になっていた初の商業映画の仕事が後輩に行ってしまい、すっかり落ち込んでいる。そんな折、ナゾの美少女ミカちゃんを助けて自宅へ連れ帰るはめになってしまった。ミカちゃんは巨乳に憧れ、自分の貧乳を隠すため涙ぐましい努力をしている女子高生。女優志願の彼女を主演に映画を撮ることになり、真島は思っても見なかった方向へ引きずられていく。

人気グラビアアイドルの秋山莉奈主演、佐藤佐吉監督は脚本ばかりか主演もこなしています。原作のジョージ朝倉の「この漫画を映画化できるのは佐藤佐吉しかいない」というご指名だったとか。佐藤監督前作『東京ゾンビ』同様、相当ぶっ飛んだストーリーです。佐藤監督は『キル・ビル』に俳優として出演した経験もあるとか、どこにいたのでしょう。(白)

2008/日本/カラー/102/ステレオ/
配給:エスピーオー 宣伝:ユナイテッド エンタテインメント
©ジョージ朝倉/『平凡ポンチ』小学館IKKI  ©2008「平凡ポンチ」製作委員会

★11月22日(土)~シネマート六本木、シネマート新宿にて公開

公式 HP >> http://www.heibonponch.com/

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俺たちに明日はないッス

監督:タナダユキ
脚本:向井康介
原作:さそうあきら「俺たちに明日はないッス」小学館
撮影:山崎裕
美術:谷内邦恵
編集:宮島竜治
歌・編曲:銀杏BOYZ
出演:柄本時生(比留間)、遠藤雄弥(峯)、草野イニ(安パイ)、安藤サクラ(ちづ)、水崎綾女(秋恵)、三輪子(友野)、ダンカン(ちづの父)、田口トモロヲ(吉田)ほか

くわえタバコでマージャンしてもビールを飲んでも、カッコよくない17歳。優等生の友野が吉田先生と一緒にホテルから出てくるところを見てしまった。弱みを握ったと友野の顔さえ見れば「ヤらせろ」と言うけど、「ほんっとバカね」と毎回鼻にもかけてもらえない。集会で倒れた友野が心配で保健室に行くと吉田といちゃついていて、むかついた挙句吉田を呼び出して殴りつけてやった。「吉田先生は大人」だって?違うね。
峯はちづに好きだなんて言われるし、安パイは巨乳の秋恵とラブラブになってしまった。俺だけ!?ようやく友野を海へ連れ出すけどちっともうまくいきゃしない。今日でなきゃダメなんだッ!!

 
©2008 さそうあきら・小学館/『俺たちに明日はないッス』製作委員会

『神童』、『コドモのコドモ』と映画化が続くさそうあきらの漫画は、女の子が男の子より大人です。現実もそうか。タナダユキ監督はもやもや~な気持ちを、べたべたさせずにクールに描くのがうまいなぁといつも思います。銀杏BOYZの歌う「17歳」はからりと明るかった南沙織のオリジナルと違って、カッコよくないなりに一所懸命だったあの日がいっぱいに詰まっているようです。少し上の年頃の俳優さんたちが演じる17歳がそれぞれに良くて、自分が17だったときを思い出しました。(白)

2008/日本/カラー/79分/15-R
配給:スローラーナー

*原作の同名コミック新装版絶賛発売中!
*銀杏BOYZの初!映画主題歌CD「17歳」は11月19日発売!
★11月22日(土)~ユーロスペースにてロードショー

公式 HP >> http://oreasu.com/

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特集上映 昭和の銀幕に輝くヒロイン 第44弾 乙羽信子

開催期間:2008年11月23日(日)〜1月24日(土)モーニングショー 連日10:30より
     (モーニング休映:2008年12月31日〜2009年1月4日)

開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷

ラピュタ阿佐ケ谷の人気シリーズ『昭和の銀幕に輝くヒロイン』の第44弾では、愛らしい笑顔で“100万ドルのえくぼ”と謳われた名女優乙羽信子が特集されます。
宝塚で絶大な人気を誇った娘役スターは銀幕の世界に飛び込み、演技派女優としてその才能を開花させ、生涯を一女優として生き続けました。
工業地帯の外れで、貧しいながらも人を信じることしか出来なかった主人公を演じた「どぶ」。
美しいだけではない芸者の暗く侘びしい闇を熱演し、演技派女優としての地位を固めた「縮図」。
「強虫女と弱虫男」はそのタイトル通り、刺されても死なず、裏切られてもめげない、弱い男を守る屈強な女を、齢40になり円熟した乙羽信子がみせます。
97歳の現役監督新藤兼人の生涯のパートナーであった彼女は、華やかな世界と裏腹の、厳しい現実を体現した女優でした。人生を映画の発展と愛にささげた名女優、乙羽信子の選りすぐった8作品の特集上映です。

上映作品:

  • 大阪の宿(1954年/監督:五所平之助)
  • どぶ(1954年/監督:新藤兼人)
  • 新己が罪(1956年/監督:毛利正樹)
  • 肌色の月(1957年/監督:杉江敏男)
  • 野良猫(1958年/監督:木村恵吾)
  • 縮図(1953年/監督:新藤兼人)
  • 太夫さんより 女体は哀しく(1957年/監督:稲垣浩)
  • 強虫女と弱虫男(1968年/監督:新藤兼人)
入場料金:一般…1,200円、シニア・学生…1,000円、会員…800円
     ※水曜サービスデー…一般1,000円

(C)1953 近代映画協会

上映日程 >> 阿佐ヶ谷ラピュタのサイト記事 参照

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SAW5

監督:デイヴィッド・ハックル
脚本:パトッリック・メルトン、マーカス・ダンスタン
撮影:デヴィッド・A・アームストロング
プロダクション・デザイナー:トニー・イアンニ
出演:トビン・ベル、コスタス・マンディラー、スコット・パターソン、ベッツィ・ラッセル、マーク・ロルストン、カルロ・ロータほか

5人の男女が目覚めると、見知らぬ部屋でそれぞれが首輪をはめられ、ケーブルでつながれていた。「これまでと違った生き方を選べ」というテープの声。彼らは何者なのか、なぜここに集められたのか、これから何が始まるのか、疑心暗鬼にかられながら互いを見やる。刻々と時間は過ぎていく。さあ、どうする?!

さあ、ゲームを始めよう」というジグソウの声を聞いてから、もう5作目。半分目をつぶりながら(?)観続けてきました。怖けりゃ観なければいいようなものですが、なんだか気になるこのシリーズ。ジグソウも、後継者となったアマンダも死に、前作の「4」で新たなゲームが始まりました。デイヴィッド・ハックル監督は、2~4のプロダクション・デザイナーで、3,4ではセカンドユニットの監督だったそうです。完成披露試写の舞台に上がった監督は明るい、よくお喋りする方でした。あんなえげつない残酷なゲームを、どこから考え出すのかと不思議。みんなでワイワイとああしようこうしよう、とやっているのでしょう。「監督がこれまで一番痛い思いをしたのは?」という質問に答えて「17歳のときに車の事故に遭い、クリスマスの間中なんの記憶もなかったこと。両親はプレゼントしないで済んだけどね」。日本のホラーの中では『殺し屋ICHI』が好きだそうです。(白)

2008/アメリカ/カラー/1時間33分/ヴィスタ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
宣伝:ファントム・フィルム

★11月28日(金)~TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

公式 HP >> http://saw5.asmik-ace.co.jp/

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青い鳥

監督:中西健二
脚本:飯田健三郎、長谷川康夫
原作:重松清「青い鳥」(新潮社刊)
監修:松山善三
撮影:上野彰吾
美術:金田克美
音楽/主題歌:まきちゃんぐ
出演:阿部寛(村内先生)、本郷奏多(園部真一)、太賀(井上武志)、梅田好太郎(鈴木達也)、伊藤歩(島崎先生)、井上肇(石野先生)、岸博之(教頭)、重松収(校長)ほか

東ヶ丘中学校2年1組に臨時教員がやってくる。緊張気味の生徒達を前に村内先生はひどくつかえて挨拶をした。生徒たちは笑ってしまうが、村内先生は意に介さず1点を見て「忘れるなんて卑怯だな」とぽつりと言う。片付けられていた机を日直に戻させて、「野口くん、おはよう」と無人の机に向かって声をかけクラスは凍りつく。野口哲也は、前学期に自殺未遂を起こして転校した生徒。同級生に言われるまま、親の経営するコンビニから商品の持ち出しを続け、これを苦にして遺書を残して自殺を図ったのだ。事件はマスコミでも大きな話題となり、発表された遺書には「いじめた人間」として塗りつぶされた3つの名前があった。クラス委員の園部真一は自分の名前がある気がして苦しんでいた。村内先生の机への挨拶は、落ち着いたように見えたクラスを動揺させ、学校や保護者にも波紋を広げていく。

映画化の続く重松清さんの原作です。吃音で「カ行とタ行が苦手」とか具体的なので、身近にいらしたのかと思えば御本人がそうだったのだとか。原作は短編の連作になっていて、村内先生が行く先の学校でのエピソードが納められています。「青い鳥」はそのうちの1篇で、生徒からの声を聞こうと設けられた投書箱の名前。吃音だけれど国語教師の村内先生は、話すのが苦手だから「大切なことだけを本気で」話します。原作ではもっさりしたおじさんの村内先生が阿部寛さんではカッコよすぎるのですが、生徒に真剣に向き合う村内先生と本郷奏多くん演じる園部真一のやりとりは泣かせます。泣き笑いの表情がいつまでも残る山崎和也くんもよかった。ほかの人の傷や悲しみに気づけるように、なんにでも慣れてしまわないこと、と自戒。(白)

*2008年 東京国際映画祭 特別招待作品
2008/日本/カラー/1時間45分/ビスタサイズ/ドルビーSRD/
http://www.aoitori-movie.com/

11月29日(土)〜新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

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変態“ピ”エロ(原題:HEROS)

監督・脚本:ブルーノ・メルル
共同脚本:エマニュエル・デストルモウ
出演:ミカエル・ユン、パトリック・シェネ、ジャッキー・ベロワイエ、エロディー・ブシェーズ

ピエールは俳優だが、今はテレビ局で公開番組の前説を主にしている。そこでは異常なまでにハイテンションなパフォーマンスで観客を盛り上げている彼だが、私生活では不眠に悩まされ、鬱々と暮らしている。そんな彼が、自分の崇拝の対象であり国民的歌手のクロヴィス・コスタを誘拐し、自宅に監禁する。彼の目的は果たして何なのか?


© Les Films du Requin - Arte France Cinema - Artistic Images

わかりやすくて安心、安全な映画ばかり増殖している中、これは久々に強烈なパンチ力を持って観るものを不安にさせる、挑発的な作品です。カンヌで上映されたときも、上映後観客がどう反応していいかわからず呆然としていたといいます。理解不能なことデビッド・リンチなみ。それでも凄いエネルギーでもって惹きつけられ、イカれたピエールにせつなさを感じてしまったりするのです。脳みそを直接グリグリされているような感覚。刺激的な映画をお求めの方は是非ご覧下さい。(梅)

2007年カンヌ映画祭批評家週間 オープニング上映作品
2007年/フランス/カラー/ドルビー/115分(スコープサイズ74分+スタンダードサイズ41分)
デジタル(DLP) 上映
提供・配給:キングレコード+iae
協力:アップリンク

★11月29日(土)より、アップリンクXにてイブニング&レイト(1日2回上映) ロードショー(他、全国順次公開)

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最強☆彼女(原題:武林女大生)

監督:クァク・ジェヨン
脚本:クァク・ジェヨン、イ・シンンホ
撮影:チン・ディンチャン
音楽:チェ・スンヒョン
武術指導:ディオン・ラム
出演:シン・ミナ(ソフィ)、オン・ジュワン(イリョン)、ユゴン(ジュンモ)、イム・イェジン(婦人警官ヘイン)、チェ・ジェソン(ソフィの父カプソン)、イ・デグン(イリョンの父チョンプン)、キム・ヒョンイル(チャンハク)、ディオン・ラム(コルワン)他

武林の名門四家の一つ、カン家の一人娘ソフィは大学のサークル活動で「鉄人姫」で怪力ぶりを見せて観客はドン引き。すっかり落ちこんだソフィは、女の子らしくなりたいと武術の修行をやめてしまった。スズキのバイクに乗るハンサムなジュンモに一目ぼれ、彼の所属するアイスホッケー部に「刃研ぎ係」として入部する。
ソフィが亡き母の「芙蓉美剣」を受け継ぐべく鍛えてきたのに、と父親は大激怒。武林に戻るように説得するが、ソフィの決心は固い。幼馴染のイリョンもバイクに夢中とわかり、父親たちは次の武術大会に二人を出場させようと目論む。

主演の3人はめちゃめちゃキュートです。怪力娘のソフィはもちろん、ソフィが一目ぼれする王子様顔のジュンモ、天然とシリアス両面を見せるイリョン、それぞれがいろんな表情を見せてファンは必見。もてない女の子の初恋ストーリーかと思えば、意外な方向に転がって行きます。現代での武林と伝説の剣というのは面白い設定ですが、ソフィとイリョンのエピソードの繋がりがちょっと無理矢理な感じがしました。アクションはとても頑張っています。なんだか香港映画っぽいなと観ていたら、武術指導は香港のディオン・ラムでした。父親たちに慕われ、手話を駆使して意思疎通するコルワン役で登場。当然ハードなアクションも見せています。(白)

2008/韓国/カラー/115分/シネマスコープ/ドルビーSRD/
提供:アミューズソフトエンタテインメント/フィールズピクチャーズ
宣伝協力:マジックアワー
配給・宣伝:エスピーオー

★11月29日(土)~シネマート新宿、シネマート六本木他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/saikyo/

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デス・レース(原題:DEATH RACE)

監督・脚本:ポール・W.S.アンダーソン
撮影:スコット・キーヴァン
製作総指揮:ロジャー・コーマン
音楽:ポール・ハスリンガー
出演:ジェイソン・ステイサム(エイムズ)、ジョアン・アレン(ヘネシー)、イアン・マクシェーン(コーチ)、タイリース・ギブソン(ジョー)、ナタッリー・マルティネス(ケース)、マックス・ライアン(パチェンコ)、ジェイソン・クラーク(ウーリック)ほか

犯罪が急増する近未来のアメリカが舞台。刑務所は政府の手に余り、民間が経営している。ターミナル・アイランドと呼ばれる凶悪犯ばかりを収容する刑務所では、ここからTV中継される流血と死のカーレースが熱狂的な人気を博していた。選ばれた囚人は特殊武装を施した車両に乗り込み、命がけのバトルを5回勝ち抜けば釈放、負けた者には容赦のない死が待っている。そこへ妻殺しの罪を着せられたジェンセン・エイムズが入所する。刑務所長ヘネシーは元レーサーのジェンセンに事故死した仮面のレーサー、フランケンの身代わりで走らないかと持ちかける。フランケンはすでに4回優勝しているので、あと1回勝ち抜けば自由の身だという。

'75製作の『デス・レース2000』のリメイク。出演作が相次ぐジェイソン・ステイサムはすっかりアクション俳優として地位を築いたようす。
戦車と見まがうばかりのレースカーが、ターミナルアイランドを駆け抜けます。コースの中には剣や盾のマークが隠されていて、上を通過すれば武器が使用可能になったり防御ができたりします。助手席には美女のナビゲーターが座り、コース取りやアイテムの注意をするという視聴者へのサービスもあります。TV番組の視聴率稼ぎのために非情な刑務所長が繰り出す必殺武器や、悪辣な手段などこのまんまゲームになりそう。我が子にはやってほしくないけど。ちょうどアメリカの株大暴落のときに観たもので、10年後こんなになりませんように、と祈りたい気分です。(白)

2008/アメリカ/カラー/105分/スコープサイズ/ドルビーSRD/配給:東宝東和
©UNIVERSAL STUDIOS

★11月29日(土)~有楽座、TOHOシネマズ六本木他にてロードショー

公式 HP >> http://www.deathrace.jp/

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蘇る玉虫厨子~時空を超えた「技」の継承

監督:乾弘明
プロデューサー:益田祐美子
脚本:釜澤安季子
撮影:長塚史視ほか
音楽:引地康文
テーマ音楽:真島俊夫
出演&語り:三國連太郎
出演:法隆寺管長 大野玄妙、立野敏昭、中田秋夫、八野明、故中田金太他


三國連太郎さんと金太さんご夫妻

世界最古の木造建築といわれる国宝「玉虫厨子」を五年かけて復元したようすを記録したもの。1300年前の職人に学び、これを越えるものを作ろうとする職人さんたちの姿がすばらしいです。気の遠くなるような研究と努力で2つの新しい玉虫厨子が完成します。一つはできるだけ正確に復元し法隆寺に奉納されたもの。もう一つは今持てる技をつぎ込んで新しく生まれた「平成の玉虫厨子」。こちらは飛騨高山の美術館へ。このプロジェクトに私財を投じた中田金太氏は、『風の絨毯』で、飛騨高山の山車を復元しようとした資産家として紹介されています。作中で中田氏役を演じた三國連太郎氏とは以来深い友情を結びました。中田氏はフィルムの完成を待たずして亡くなられ、ナレーターもつとめた三國氏が万感の思いをこめて語りをつけています。(白)

かつて、映画『風の絨毯』がご縁で、高山に金太さんを訪ねたことがあります。小柄で腰が低く好々爺という雰囲気の金太さんからは、一代で富を築いた大金持ちだとは信じられません。茶の湯美術館2階の展示室を埋め尽くす玉虫の作品に度肝を抜かれ、失礼ながらちょっと悪趣味と思ったものでした。実は、産卵後に死んだ玉虫の羽がフィリピンで処理に困るほどあると聞いた金太さんが工芸家の方にお願いして利用を考えていただいたもので、日本の伝統工芸の技を駆使する機会を常に思っていらしたのだとわかりました。その集大成が、玉虫厨子の復元だったわけですが、金太さんは、「人生でやりたいことを、モノ造りをしている方が工程表を書くように書いてみると、175歳まで生きていなければならない」とおっしゃっていたので、まだまだ大きな事を成し遂げてくれたことと、あまりに早い旅立ちが残念でなりません。
2006年9月第5週のスタッフ日記に、中田金太さんの一代記 「わしゃ、世界の金太! ー平成の大成功者と5人の父ー」 (高山秀実著・毎日新聞社発行)の出版を祝う会での三國連太郎さんのスピーチなどを紹介しています。日記に掲載した金太さんご夫妻と三國連太郎さんの写真を再度アップします(咲)

2008/日本/カラー/64分/ドキュメンタリー
製作:平成プロジェクト

★11月29日(土)~銀座テアトルシネマにてロードショー

公式 HP >> http://heiseimaster.com/tamamushi/index.html

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WALL・E ウォーリー

監督:アンドリュー・スタントン
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:アンドリュー・スタントン/ピート・ドクター
脚本:アンドリュー・スタントン/ジム・リードン
プロダクション・デザイナー:ラルフ・エッグルストン
撮影:ジェレミー・ラスキー/ダニエル・フェインバーグ
サウンド・デザイナー:ベン・バート
音楽:トーマス・ニューマン
キャスト:ベン・バート(ウォーリー、モー)、エリッサ・ナイト(イヴ)、ジェフ・ガーリン(艦長)、フレッド・ウィラード(BNL会長)、マッキントーク(オート)、ジョン・ラッツェンバーガー(ジョン)、キャシー・ナジミー(メアリー)、シガニー・ウィーバー(コンピュータ)

人類はゴミだらけになった地球を捨てて、宇宙に逃れた。残されたのはただ一人、ゴミ処理ロボットのウォーリー(WALL・E)。彼は700年もの間、たった一人でコツコツと働き続けていた。楽しみはゴミの山の中からお気に入りを見つけてコレクションすること。人間たちが残した品々はウォーリーをちょっとだけ幸せにした。中でも大好きなものはミュージカル「ハロー・ドーリー!」のビデオテープ。繰り返し観るのは手をつなぐ二人のシーン。ウォーリーはいつか誰かが現れて、手をつなぐことを夢見ていた。
ある日大きな宇宙船からピカピカのロボットが降りてくる。真っ白い体に青い瞳のイヴに、ウォーリーは一目で恋に落ちる。物凄いスピードで探し物をしている彼女は、必死で気を引こうとするウォーリーに目もくれない。


©WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

大ヒット作『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントン監督の最新作。一人ぼっちのロボットのアイディアはピクサーで『トイ・ストーリー』(’94)制作中のころ、ほかのロボットに恋するストーリーは『ファインディング・ニモ』(’03)のときにひらめいたのだそうです。長い年月をかけて暖められ、育てられたこの作品は、未来の地球と宇宙を舞台にしたウォーリーのいちずな愛の物語として生まれました。サウンド・デザインのベン・バートは『スター・ウォーズ』からキャリアをスタートさせ、あのR2-D2の声などを作り上げた音響の達人。ウォーリーとモーはバート自身の声が元になっています。
四角い体にキャタピラの足、双眼鏡のような目のウォーリーはほんとに「けなげ」で愛らしいキャラです。イヴが現れるまで、彼はホコリとゴミだけの地球で(ほんとにこうなりそうなリアルさ!)一人ぼっち。彼の生活のようすになんだか胸がキューンとするのは私だけではないはず。流線型の最新型探査ロボットのイヴは、とにかく速くて無駄がなくて、ウォーリーと正反対。29世紀の地球がどんなものか、ウォーリーの恋は叶うのか、ぜひ大きなスクリーンでお確かめください。私も今度は吹替版を観に劇場へ行きま~す。(白)

2008/アメリカ/1時間44分/シネマスコープ・サイズ/字幕スーパー版、日本語吹替版/
配給:ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャーズ ジャパン

★12月5日(金)より日比谷スカラ座他全国ロードショー

ディズニーの公式 HP >> http://www.disney.co.jp/

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ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト(原題:SHINE A LIGHT)

監督:マーティン・スコセッシ
撮影:ロバート・リチャードソン
編集:デヴィッド・テデスキ
出演:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド、チャーリー・ワッツ、バディ・ガイ、ジャック・ホワイト、クリスティーナ・アギレラ、マーティン・スコセッシ

ストーンズのミック・ジャガーの提案で、ライブを映画にすることになった。彼が最高の映画監督とリスペクトするマーティン・スコセッシが快諾。スタジアム規模でのワールドツアー中だったが、監督は大きな会場ではなく、シアターでの観客との親密なライブを考えた。選ばれたのは2800人収容のニューヨーク、ビーコンシアター。セットリストを直前まで検討するメンバーに、しびれを切らしている監督のシーンも入っている。会場のあちこちにセッティングされた18台のカメラは、パフォーマンスを邪魔せず彼らの動きに密着して特等席で見ている気分。
しかしなんと元気な60代!!創設当初から解散せず、メンバーの入れ替わりはあっても、ずっと続いているロック・グループはほかにあるのでしょうか? 彼らは孫がいてもいい年頃なのに、ロック少年のままなのです。帰宅して40年前のライブ映像と比べて見ても、キースのおなかが少し丸くなったかな、くらい。ミックもチャーリーもロンも昔の体型とほとんど変わらず。ミックなど舞台の隅から隅まで、若いときの何倍も動いています。恐れ入りました。(白)

 
 
©2007 by PARAMOUNT CLASSICS, a Division of PARAMOUNT PICTURES, SHINE A LIGHT, LLC and GRAND ENTERTAINMENT (ROW) LLC. All rights reserved.

2008/アメリカ/カラー/ヴィスタ/122分
配給:ムービー・アイ

*オリジナルサウンドトラック発売中 ユニバーサル インターナショナル
*11・7(金)伝記2冊も発売
 「ミック・ジャガーの成功哲学」、「キース・リチャーズの不良哲学」 アラン・クレイソン著/大田黒奉之訳

公式 HP >> http://www.shinealight-movie.jp/

★12月6日(土)〜TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

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ぼくのおばあちゃん

監督:榊英雄
脚本:亀石太夏匡、榊英雄
原作:なかむらみつる「ぼくのおばあちゃん」(ぴあ刊)
撮影:宮川幸三
美術:井上心平
音楽:榊いずみ
出演:菅井きん(おばあちゃん)、岡本健一(村田智宏)、柳葉敏郎(父:征二)、原日出子(母:千恵子)、加藤貴子(妻:絵美)、阿部サダヲ(茂田洋一)、清水美沙(茂田美佐子)、寺島進(八百屋のおじさん:新海)、深浦加奈子(八百屋のおばさん)、宮川一朗太(薬局のお兄さん:鈴木)、伊澤柾樹(5歳の智宏)、吉原拓弥(14歳の智宏)、石橋蓮司(茂田源次郎)ほか

住宅会社のトップセールスマンとして多忙な日々を送る智宏は、一人息子との約束もなかなか果たせない。顧客の茂田家で新築の相談にのるうち、おじいちゃんと孫のほほえましいようすに気がつく。智宏も子供のときおばあちゃん子だったことを思い出していた。入院中の父の看病で母はいつも不在、おばあちゃんが智宏の親代わり。いつでもどこでも一緒だった優しいおばあちゃんを、智宏は小さいながら自分が守ると決めていた。



どこからでもお城の見える大洲の町。山と川と人情のある商店街があります。砂利道を曲がると古い家。縁がわから眺める庭には小さな畑と柿の木。絵に描いたような故郷の風景にもうじんわりしてしまいました。82歳にして初めての主演という菅井きんさん。TVドラマ必殺シリーズでの「婿殿!」の声が耳に蘇りますが、今回は普通のおばあちゃんです。思い出の中の人はさらに優しくて、自分の祖父母や亡くなった人のことが浮かんで、涙ぽろぽろでした。思い出と今現在とのカットバックがちょっと多いかなぁ。茂田家の奥さんがヒステリックなので、清水美沙さんだと気づいたのは笑顔が出てきてから。静かな阿部サダヲさんを初めて見た気がしました。深浦加奈子さんの遺作でもあります。(白)

2008/日本/カラー/2時間3分/
配給:キノシタマネージメント
第21回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門参加

公式 HP >> http://www.bokuoba.com/

★12月6日(土)〜テアトル新宿ほか全国ロードショー

特別記事『ぼくのおばあちゃん』榊英雄監督インタビューもご覧下さい。

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斬〜KILL〜

ブレイド・アクションをテーマに、4人の監督が4篇のエピソードを撮っている。

キリコ

監督・脚本・撮影・編集:辻本貴則
アクション監督:園村健介
音楽:吉田光
出演:森田彩華、山口祥行、池田成志、水野美紀(特別出演)

暗殺組織から足を洗い妹キリコとどこか遠くで暮らそうとするキリナだが、ボスのクモタニにキリコを奪われてしまう。奪還すべく一人乗り込んだキリナだが、キリコを目の前で撃たれ、自身も日本刀で串刺しにされる。それから半年、病院のベッドでキリコは目覚める。

こども侍

監督:深作健太
脚本:藤田大
殺陣:西本良治郎
音楽・活弁士:山崎バニラ
出演:溝口琢矢、木村耕二、今野真菜 ほか

亡き父に幼いころから武士道をたたき込まれた小学6年生の机龍之介は、母と妹と共にのどかな城下町に越してきた。新しい学校生活のスタート早々、いじめられっ子のクラスメイトを助けたことから、クラスのリーダー格である師直(もろなお)と敵対してしまう。過去の過ちから剣を封印してきた龍之介だが、師直のエスカレートする行動を見て葛藤する。

妖刀射程

監督・脚本・編集:田原実
監督補・撮影・編集協力:辻本一樹
音楽:本多俊之
出演:石垣佑磨、辻本一樹 ほか

戦国の時代、名刀と讃えられた太刀がいつしか意志を持つがごとく持つ者に取り憑き、残虐な振る舞いを起こさせたため、妖刀と恐れられるようになった。それを作った刀匠の子孫はその狼藉を憂い、同じ鋼から脇差しを作って一対にして岩に封印した。長い時が流れ、明治の末期、一兵士の持つ銃と妖刀が共鳴し融合を果たす。鋼の魔物となった妖刀はその兵士と共に生き続け、現代にいたるまで暴れまくるのであった。

ASSAULT GIRL 2

監督・脚本:押井守
演出・撮影・編集:佐藤敦紀
音楽:川井憲次
出演:藤田陽子、菊池凛子

雨の降り続く荒野で、白い戦闘服を着た女がじっと何かを待っている。やがて雨のやむころ、気配を感じた女は手に持つ長剣を抜き真一文字に空を斬った。すると・・・

“斬る”をテーマに作られた短編集。『キリコ』はパワフルなガールズ・アクション。『こども侍』は学校でのイジメをチャンバラ時代劇の世界にはめ込んだら意外にはまって面白い。『妖刀射程』は刀と銃の特性を両方持ち合わせた武器とそれを使ったアクションが独特。『ASSAULT GIRL 2』はいかにも押井守な映像世界。と、小品ながらそれぞれに見所があります。(梅)

2008/日本/カラー/82分/DV/16:9フレーム/ステレオ
製作:ジェネオン エンタテインメント
制作・配給:デイズ
配給宣伝:ビー・ウイング
配給協力:ジョリー・ロジャー

★12月6日(土)より、渋谷シネクイントにてレイトショー公開

公式 HP >> http://www.deiz.com/kill/

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エグザイル/絆(原題:『放・逐』EXILED)

監督・製作:ジョニー・トー
脚本:セット・カムイェン、イップ・ティンシン
撮影:チェン・シウキョン
美術:トニー・ユー
衣装:スタンリー・チョン
編集:デヴィッド・リチャードソン
音楽:ガイ・ゼラファ
アクション:ウォン・チーワイ、サン・チャンホン
出演:アンソニー・ウォン(ブレイズ)、フランシス・ン(タイ)、ニック・チョン(ウー)、ジョシー・ホー(ジン)、ロイ・チョン(キャット)、ラム・シュ(ファット)、サイモン・ヤム(フェイ)、ラム・カートン(キョン)、エレン・チャン(売春婦)、リッチー・レン(チェン軍曹)ほか

中国返還が近づくマカオ。4人の男たちが広場にいる。ブレイズとファットは香港のボス、フェイの命令でウーを消しにやってきたのだった。タイとキャットは、ウーを守るために。5人は一緒に育ち絆は強かったが、ブレイズはウーを怨むフェイに逆らうことができない。帰宅したウーと一緒に家に入った4人は同時に撃ち合うが、赤ん坊の泣き声で銃をおろす。「死ぬなら妻子に金を遺したい」というウーのため、5人はマカオのボスのジェフに仕事を斡旋してもらう。キョンの殺害を請け負って待ち構えたレストランには、フェイも現れた。

『ザ・ミッション』のメンバーが結集したジョニー・トー監督のノワール・アクション。『エレクション』2部作で疲れ切ったという監督が、脚本もなく物語を自然にまかせて撮ったという作品です。そんな始まりでどうやって映画ができていくのだ?と思いますが、ジョニー・トー組のチームワークの良さが遺憾なく発揮されて「なんてかっこいいんだ!」という男達の物語になっています。監督は俳優の良さを引き出すのがうまくて、どの人もそれまでのイメージから抜け出るターニング・ポイントとなっているようです。八面六臂の活躍を見せる監督が様々な傾向の作品を作るたび、わくわくするカメラワークはもちろん、今度はどんな人の新しい顔が見られるだろうか、という楽しみもあります。
この作品のキャッチコピー「彼らこそ、最高だった。」は、監督の俳優達への賞賛そのままで、「10年後の彼らと映画を撮りたい」と語っています。ぜひぜひ実現してほしいものです。その間も面白い作品を待っております。(白)

2006/香港・中国/カラー/109分/スコープサイズ/
提供:キングレコード、アートポート、ムヴィオラ
配給:アートポート

公式 HP >> http://www.exile-kizuna.com/

★12月6日(土)より、シネマスクエアとうきゅう、シアター・イメージフォーラム他 全国ロードショー!

特別記事『エグザイル/絆』アンソニー・ウォン&フランシス・ン来日!もご覧下さい。

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アラトリステ(原題:ALATRISTE)

監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
原作:アルトゥーロ・ペレス=レベルテ
剣術指導:ボブ・ロバートソン
衣装監督:フランチェスカ・サルトリ
美術監督:ベンハミン・フェルナンデス
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン(ディエゴ・アラトリステ)、エドゥアルド・ノリエガ(グアダルメディーナ伯爵)、ハビエル・カマラ(オリバーレス伯爵)、ウナクス・ウガルデ(イニゴ)、アリアドナ・ヒル(マリア)、エレナ・アナヤ(アンヘリカ) 他

17世紀初頭のスペイン。アルマダの海戦で大英帝国軍に敗れて以来、それまでの強国の地位が揺らぎつつあった。国内では、フェリペ4世に代わり寵臣のオリバーレス伯爵が事実上権力を握っていた。1622年、ディエゴ・アラトリステは、遠征中のフランドルでグアダルメディーナ伯爵の命を救う。王の傭兵として、マドリード最高の剣客としてアラトリステの名はさらに高まる。戦死した友人の願いで、その息子イニゴを引き取った彼は、我が子のように連れ歩いていた。マドリードに戻ると「イギリスからやってくる異端者二人を消せ」という奇妙な依頼が舞い込んでくる。

戦場ジャーナリスト出身というアルトゥーロ・ペレス=レベルテ原作の長編小説が原作。アラトリステはスペインでは誰でも知っている主人公のようです。当時のスペインの歴史を頭に入れて観ると、この冒険譚がより楽しめます。全編スペイン語ですが、ヴィゴ・モーテンセンは、父がデンマーク人、母がアメリカ人で、子どものころ南米で育っています。それでフランス語、デンマーク語、スペイン語も流暢なのだそうです。羨ましい。監督は『ウェルカム!ヘヴン』でペネロペ・クルスをセクシーで男前(?)に撮ったアグスティン・ディアス・ヤネス。(白)

2006年/スペイン/カラー/2時間25分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給: アートポート
http://www.alatriste.jp/

(C) Estudidos Picasso/Origen PC/NBC Universal Global Networks Espana 2006

★12月13日(土)よりシャンテ・シネほか全国順次ロードショー

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空へ ー救いの翼 RESCUE WINGSー

監督:手塚昌明
主題歌:「君の声」柴咲コウ
出演:高山侑子、渡辺大、井坂俊哉、金子賢、木村佳乃、三浦友和 ほか

川島遥風は子どもの頃に母を救ってくれた救難団に憧れて、女性初の航空自衛隊救難ヘリパイロットになった。厳しい訓練と次々に課せられるミッションの中で、時には感傷を捨てて冷徹な判断を下さなければならない。充実感もあれば、未熟さを思い知って落ち込むときもある。彼女を見守る先輩たちの支えもあって、少しずつプロとして成長していく。

自衛隊全面協力で、救難ミッションの場面はリアルな緊迫感に溢れ、大迫力の映像です。航空オタクさんたちにも嬉しい映像満載でしょう。惜しむらくは、ドラマの部分がつぎはぎのような、とってつけたような印象をぬぐえないこと。主演の高山侑子さんはこれが映画デビューとなります。意志の強そうな眼が印象的。彼女の父は新潟救難隊員だったそうで、2004年の新潟中越地震で活躍し、翌年の訓練中に不幸にも墜落事故で殉職されています。映画の主人公は女性初の救難ヘリパイロットですが、残念ながら実際にはまだ女性パイロットはいないそうです。映画を観て目指す人が増えればいいですね。(梅)

2008年/日本映画/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーSR
配給:角川映画

★12月13日(土)より、角川シネマ新宿ほか 全国ロードショー

公式 HP >> http://www.sorae-movie.jp/

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桜映画社特集 桜映画はしなやかである

開催期間:2008年12月13日(土)~29日(月)全17日間特別開催
開催場所:ポレポレ東中野

桜映画社は1955年の創立以来53年間に823本の映画を製作してきた。それらは短編から長編映画まで、分野も記録、劇、アニメ、教育、PRなど広い範囲に及んでいる。しかし、作品の多くは劇場で上映される機会がなく、一般の映画ファンは観ることができなかった。
来春1月長編ドキュメンタリー映画『里山っ子たち』と『Little Challengers小さな挑戦者たち』が公開されるのを記念して、選りすぐりの88本を一挙公開することとなった。

主な上映作品:
さよなら蚊とはえさん(1955 監督:青山通春 21分)
海ッ子山ッ子(1958 監督:木村荘十二 70分 ベネチア映画祭入賞)
生きものと教室の仲間たち(1980 監督:内藤誠 43分)
おこんじょうるり(1982 監督:岡本忠成 25分 アニメ)
草原のテングリ(1977年 監督:大塚康生 21分 アニメ)
歌舞伎の立廻り(1981年 監督:藤原智子 34分 記録)

詳細と上映日程は

ポレポレ東中野 HP >> http://www.mmjp.or.jp/pole2/

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悪夢探偵2

原作・監督・脚本:塚本晋也
原作:「悪夢探偵2 怖がる女」塚本晋也(角川文庫刊)
出演:松田龍平、三浦由衣、韓英恵、内田春菊、光石研、市川実和子

“悪夢探偵”影沼京一は、ここのところ亡くなった母の夢を頻繁に見る。それは彼の哀しい記憶を呼び覚ますものだった。母は世の中のすべてのものを恐がった。息子である京一さえも。そして自殺してしまったのだ。
その京一の元に女子高生の雪絵が悪夢で眠れないと助けを求めてきた。彼は初めこそ彼女を拒絶するが、彼女の夢に出てくる同級生の菊川が異常なまでの恐がりだという話を聞いて興味を持つ。亡き母の姿と重なったのだった。

「あ〜イヤだ、イヤだ・・・」の悪夢探偵ふたたび。今回は彼の生い立ちと、抱えている絶望の根源を探る心の旅が描かれています。そして「人間にとって一番恐いこととは?」を考えさせる内容です。
自分の一番弱いところと正面切って向き合った影沼京一は、今後もネガティブ・ヒーローでいられるんでしょうか? それがちょっと心配。(梅)

2008年/日本/35mm/102分/アメリカンビスタ/ドルビーSR
企画・制作プロダクション:海獣シアター
配給:ムービーアイ
©2008NIGHTMARE DETECTIVE 2 FILM VENTURER

公式 HP >> http://www.akumu-tantei.com/

★12月20日(土)より、セゾン渋谷ほか全国順次ロードショー

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魔法遣いに大切なこと

監督:中原俊
脚本:山田典枝
撮影:石井浩一
美術:古積弘二
音楽:羽毛田丈史
出演:山下リオ(鈴木ソラ)、岡田将生(緑川豪太)、田中哲司(原誠一郎)、木野花(白石沙織)、永作博美(ソラの母)、余貴美子(川田女史)、草村礼子(赤池菊子)、鶴見辰吾(権田伊男)、緑友利恵(浅葱ほのみ)、太賀(黒田浩二)

魔法遣いが普通に存在している世界。魔法遣いの血筋を受け継ぐ子は、16になったら魔法士適性試験と講習を受けることになっている。今年東京の魔法局に招聘された新人は、北海道で母と二人暮しのソラ、自分が魔法遣いの血筋だとわかったばかりの豪太、勝気なほのみ、国防の仕事につきたいという浩二の4人。それぞれ先輩の魔法士の元でホームステイし、訓練をうけ最後に認定試験に臨む。少しも魔法が使えず、ふてくされ気味の豪太と違ってソラは真剣だ。ソラがどうしても魔法士になりたいわけとは?

『落語娘』、『櫻の園』と若い女性の物語が続いた中原監督の最新作。山田典枝さんが以前受賞したシナリオを元に、新たな主人公を作って書き上げたオリジナルストーリーです。これが初出演の山下リオさん、初々しいところが役柄にぴったり。若者たちをベテラン陣がしっかり支えています。魔法遣いといっても、ハリー・ポッターのような華々しい魔法は登場しません。こちらには生死に関わる魔法はなく、何もないところから金銀を出すようなこともできません。魔法士は一般人からの依頼書によって初めて魔法を遣う公務員(サービス業という台詞)で、喜びと希望を持つお手伝いをしてくれる人です。ソラが出会う最初の依頼人のエピソードから早くもホロリ。ハンカチ必携ですが気持ちの良い映画です。疑問なのは山本浩司くん扮するおたく青年の依頼をどう叶えたのか? 映画の中では描かれていないんですが、ああ、気になる~。(白)

2008/日本/カラー/100分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給・宣伝:日活

★12月20日(土)~シネマート新宿、シネマート六本木他にてロードショー

公式 HP >> http://www.maho-movie.com/

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チェチェンへ アレクサンドラの旅 (原題:ALEXANDRA)

監督:アレクサンドル・ソクーロフ(『太陽』『エルミタージュ幻想』)
ガリーナ・ヴィシネフスカヤ、ワシーリー・シェフツォフ、ライーサ・ギチャエワ、エフゲーニー・トゥカチュク

チェチェン共和国グロズヌイにあるロシア軍駐屯地。蒸し暑く埃っぽい大地にテントが並ぶ。80歳になるアレクサンドラは、職業軍人の孫デニスに会いにやって来た。大尉とはいえ、くたびれた軍服を着て、シャワーもろくに浴びてない様子だ。「生きて戦いから帰ってきても、殺すことしか知らない子になってしまう」と、孫の将来を心配するアレクサンドラだが、今日もデニスは掃討作戦に出陣していく。孫の不在の間、駐屯地を抜け出して地元の市場に出かけたアレクサンドラは、チェチェンの女性マリカと知り合い、彼女の家に招かれる。その住まいは半分破壊されたアパート。紛争で家も家族も失ったマリカだが、「ここの民は陽気に暮らしている。老人に優しいし」と健気に語る。それでも、かつては心優しかった若者たちが、長いロシアの侵攻の中で変わってきたとも嘆く。帰り道を心配したマリカは、隣人の青年にアレクサンドラを見送らせる。「行きたいところは?」との問いに「メッカ」と答える青年。「もう私たちを解放してください」と続ける青年と「武力や暴力に真実はない」と語り合うアレクサンドラ。駐屯地に戻り、孫に「あなたたちは嫌われている」と告げるが、デニス自身、複雑な思いでいることを祖母にぶつける・・・

年老いた女性がまだ少年のような兵士たちを運ぶ貨車に同乗して目的地に向う冒頭のシーンから、すでに息の詰まるような空気が伝わってくる。長く続く紛争は攻められる側だけでなく、攻める側にとっても忍耐の限度を越えていることをひしひしと感じさせてくれる。監督は、実際のチェチェンの最前線でロケを敢行。アレクサンドラ・ニコラエヴナという主人公の名前は、監督の本名を女性形にしたものだという。自分の分身を旅させたドキュメンタリーのようでもある。アレクサンドラを演じたガリーナ・ヴィシネフスカヤは、ロシアが世界に誇るオペラ歌手。旧ソ連時代、国籍を剥奪され20年間以上アメリカで亡命生活を送ったことがあり、秘めた心強さが滲み出る彼女の風格がこの作品を味わい深いものにしている。
荒廃した町で暮らすチェチェンの人々がアレクサンドラを優しく受け入れてくれるのは、「お客様は神様からの賜物」というイスラームの精神が生きているからなのだろう。「ロシア語が上手ね」とアレクサンドラに言われ、「ロシア文化を受け入れてきましたから」と答えるマリカ。平穏に共生したいという思いは、なぜ叶えられないのだろう。
アレクサンドラが駐屯地から去る日、列車まで見送りに来たマリカたちは抱き合って別れるが、マリカは去っていく列車に背を向けどこかをじっと見据えている。それはまるで見えない戦争の出口を探しているように思えた。(咲)

2007年/ロシア/92分/35mm/ヴィスタサイズ1:1.66/ドルビー・デジタル/カラー
配給:パンドラ+太秦

★12月20日(土)より、ユーロスペースにてロードショー!

公式 HP >> http://www.chechen.jp

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懺悔 (英題: REPENTANCE)

監督・脚本:テンギズ・アブラゼ
出演:アフタンディル・マハラゼ、ゼイナブ・ボツヴァゼ、ケテヴァン・アブラゼ、エディシェル・ギオルゴビアニ

器用にピンクのクリームで薔薇の花を作って教会型のケーキに乗せるケテヴァン。彼女の隣で新聞を広げていた男が、「偉大な人が亡くなった」と叫ぶ。一面に市長として君臨していたヴァルラム・アラヴィゼの大きな顔写真。盛大な葬儀の翌朝、ヴァルラムの息子アベルは、窓の外に墓から掘り起こされた父の遺体を目の当たりにする。埋葬してもまた庭に掲げられる遺体。犯人はケテヴァンだった。「私が生きている限り墓地では眠らせません」と、法廷で堂々と語るケテヴァン。画家だった彼女の父親は、ヴァルラムの市長就任演説を聴かなかったとして粛清され、死に追いやられたのだ。無実の犠牲者が数多くいたことを知ったヴァルラムの孫息子トルニケは、祖父の犯した罪におののき父アベルを責めるが、「そういう時代だった」と取り合わない・・・

 本作が完成したのは、ソビエト連邦がペレストロイカ(改革)の時代を迎える前の1984年。厳しい検閲のあった時代に、独裁者を糾弾するかのような映画が作られたことに驚かされる。宗教が否定されていた時代に、教会をかたどったケーキが華やかに並ぶ映像にも監督の勇気を感じる。1987年、カンヌ国際映画祭で審査員特別大賞等を受賞し、その後ソ連全土で公開され記録的な大成功を収め、「パカヤーニエ(ロシア語で懺悔)現象」と呼ばれたという。1991年のソ連邦崩壊にもつながるペレストロイカ、グラスノスチ(情報公開)の象徴となった映画である。

市長の名前「アラヴィゼ」は、グルジア語で「誰でもない」という意味でアブラゼ監督の造語。町を彷徨うケテヴァンの両親を追いかける市長のそばには鎧姿の兵士もいる。いつの時代にも独裁者に抑圧される人々が存在する不合理を語っている。だからと言って、独裁者を抹殺しただけでは、平穏な社会になるわけでないことも歴史は教えてくれている。何も言えず流されていく人たちが多い中、孫息子トルニケが純粋に疑問を投げかける。人と人とが共生していくには、赦しあうことも必要だと『懺悔』は感じさせてくれた。(咲)

1984年/ソビエト連邦(グルジア)/2時間33分/カラー/スタンダード/モノラル/グルジア語版
配給:ザジ・フィルムズ

★2008年12月20日より岩波ホールほか全国にて順次公開

公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/zange/

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女バス Basketball Girls(THE HEART OF THE GAMES)

監督:ウォード・セリル
制作:リズ・マン
製作総指揮:ラリー・エステス
編集:エリック・フリス
音楽:編集:エリック・フリス
ナレーション:クリス・“リュダクリス”・ブリッジス
出演:ビル・レスラー、ダーネリア、デヴォン、メーガン、ジェイド、リンジー、マイク、エミリー、ヒラリー、モナ、キーシャ、ジョイス・ウォーカーほか

ルーズベルト高校女子バスケットボールチーム/ラフライダーズのコーチに採用されたのは、ワシントン大学の税学の教授のビル・レスラー。コーチ経験はなかったがバスケットが好きで、独特の指導方法を展開した。毎年「狼の群れ」「夏の嵐」「ライオンの群れ」などのテーマを決め、選手たちの行動の指針とした。試合前の気合の入れ方も半端でなく、あっけにとられるほど。彼女たちは狼やライオンのように相手を襲い、ボールにくらいつく。このドキュメンタリーは、コーチとラフライダーズの選手たちを7年間に渡って追い、平凡だったチームが大会を勝ち上がっていくようすをしっかりと捕らえる。技術を向上させるだけでなく、チームプレーを身につけ、個々の問題に直面しながら成長していく彼女たち。必要なときには励まし、離れて見守るビル・レスラーの指導はバスケットボール、いやスポーツに限らない教育そのもの。ライバルのブルドックスに戻ってきた、元プロ選手のジョイス・ウォーカーもあっぱれなコーチぶり。そんな硬いことは抜きにしても、彼女たちの練習や試合のシーンはどんなスポーツ音痴も心揺さぶられる。98分の編集もお見事!!(白)

2006/アメリカ/カラー/98分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給:グラッシィ
宣伝:フリーパブリスト小倉聖子

★12月20日(土)~渋谷シアターTSUTAYAにてモーニング&レイトショー

公式 HP >> http://www.jobas.jp/

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ノン子36歳(家事手伝い)

監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
撮影:近藤龍人
美術:古賀浩二
音楽:赤犬
主題歌:「太陽のラ」PoPoyans(Good Records)
出演:坂井真紀(ノン子)、星野源(マサル)、津田寛治(安川時夫)、宇津宮雅代(母)、斉木しげる(父)、佐藤仁美(妹)、館昌美(和人)、新田恵利(藤子)、鶴見辰吾(元ダンナ)

坂東ノブ子、通称ノン子は三十路半ばにしてバツイチ、タレントの夢破れて実家の神社へ戻った姉を妹は「終わってる」と斬り捨てる。やる気も何もなく「家事手伝い中」も名ばかりのノン子の前に、神社の祭りに店を出したいという青年マサルが現れる。祭りの露店を仕切る安川に引き合わせた後、しばらく実家に泊めることにした。世界に出るのが夢というマサルになんとなく惹かれていくノン子。気だるかった毎日が少しだけ変わる。

坂井真紀さんは『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』での壮絶なリンチ場面が記憶に残っています。熊切監督との『青春☆金属バット』ではエキセントリックな巨乳女性を演じ、『ビルと動物園』では三十路女性の可愛いところを見せました。いろんな顔を持つ女優さんです。今回は狭い町に出戻り、ママチャリを駆って、通りのゴミ箱や看板を蹴っ飛ばしています。閉塞した状況の中、ほんとはどうでもいいと思っていない気分が出ていました。マサル役の星野源さんは不思議な存在感があり、どういう人かと見たら、俳優、ミュージシャン、ラジオのパーソナリティもすれば小説も書くという多才な方でした。熊切監督の『揮発性の女』もたまたまやってきた年下男性に心と身体を開く女性の物語でしたが、こちらのラストが断然明るくて好きです。(白)

2008/日本/カラー/HD撮影/35mm/105分/ビスタサイズ/R-15/
配給:ゼアリズエンタープライズ
©2008「ノン子36歳(家事手伝い)」Film Partners

★12月20日(土)より、銀座シネパトス、ヒューマントラストシネマ文化村通り(シネ・アミューズ改め)他にてロードショー

公式 HP >> http://www.nonko36.jp

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40歳問題

監督:中江裕司
主題歌:「Lost Control」浜崎貴司x大沢伸一x桜井秀俊(サウンドトラック Epic Record Japan)
出演:浜崎貴司、大沢伸一、桜井秀俊、スネオヘアー ほか

80年代、バブル経済まっただ中の日本で、バンドブームが起こった。「イカ天(イカすバンド天国)」などのアマチュアバンドの登竜門番組が人気となり、たっくさんのバンドがデビューした。
あれから20年。当時の若者も今は40代。結婚、離婚、育児に介護。様々な経験をして、昔よりずっと深刻な問題をかかえ、何となく守りに入ってしまうお年頃。そんな彼らがどうやって音楽と人生を両立させているのかを探るため、監督は3人の40代ミュージシャンを集め、「3人で一緒に曲を作ってください」と唐突な課題を出す。戸惑いながらも彼らは曲作りを始める。

大学生のころ友人が「イカ天」に出るなど、わたしも当時のバンドブームを肌で感じていた世代です。アマチュア臭さがそのまま残っているようなバンドが多数出現して、消えていきました。そんな中、生き残って今なお活躍している3人の方々は、すっかりプロ中のプロの顔になっていました。何となくまとまってしまいそうになるものを、もっと壊そう、もっと違うものをと追求する大沢伸一さん。それに触発されて違う表現方法を模索する浜崎貴司さん、桜井秀俊さんの緊張感溢れる関係が映像として見えてくるのが面白いです。ただ「40歳問題」というタイトルが持つテーマの広さを描き切れているかは、ちょっと疑問。(梅)

第21回東京国際映画祭シネマ・ヴァイブレーション部門 正式出品作品
2008年/日本/カラー/87分/ビスタ/DTSステレオ
配給:ジョリー・ロジャー
宣伝:ビー・ウイング、Pocket

★12月20日(土)より、シアターN渋谷ほか 全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.40sai-problem.com/

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パリ(原題:PARIS)

監督・脚本:セドリック・クラピッシュ(『猫が行方不明』『スパニッシュ・アパートメント』) 出演:ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ、カリン・ヴィアール、ジュリー・フェリエ、メラニー・ロラン

“これがパリ。
 誰もが不満だらけで、文句を言うのが好き。皆、幸運に気づいていない。
 歩いて、恋して、口論して、遅刻して、なんという幸せ。
 気軽にパリで生きられるなんて。 - ピエール”

ピエールはムーランルージュのダンサーだったが、心臓を患い、移植手術しか助かる見込みはないと医師に宣告される。彼の身を案じて姉のエリーズは4人の子どもを連れてアパートに同居することに決める。残された日々を静かに生きる彼の唯一の楽しみは、アパートのベランダからパリの街並みと人々の営みを見つめることだった。
そのパリの街では、教え子に恋する大学教授、市場で働く人々、パン屋の女主人とアルバイトのアラブ系女学生などなど、様々な人々が悩みを抱え、不平を言いつつ日々を暮らしている。

あらゆる異なった環境で生きる人々を対照的につないだ、クラピッシュらしいパリの点描画。しかし、これまでクラピッシュ作品で陽気で快活な役を演じていたロマン・デュリスが、正反対の病気で鬱々とした表情を見せているためか、映画全体にもそんな空気が漂っている。軽快な感じを期待するとはずれますが、人生の愛(かな)しさを感じられる大人の映画です。(梅)

2008年/フランス/35mm/カラー/129分
提供:博報堂DYメディアパートナーズ、アルシネテラン
配給:アルシネテラン 協力:ユニフランス、フランス政府観光局

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/paris/

★12月20日(土)、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー!

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反恋愛主義(原題:JUSTSEX AND NOTHINGELSE)

監督:クリスティナ・ゴダ
脚本:ディビニ・レーカ、クリスティナ・ゴダ、ガーボル・ヘッレル
撮影:ブダ・グヤーシュ
音楽:マダラース・ガーボル
出演:ユディット・シェル(ドラ)、シャーンドル・チャーニー(タマス)、カタ・ドボー(ゾフィ)

脚本家のドラは30代半ばになり、恋人の弁護士とそろそろ結婚したいと考えている。彼の事務所を訪ねると来客があり、裸でベランダに出された彼女は、隣で笑って見ていた男性の部屋へ入れてもらった。シャツを借りて服を取りに戻ると、弁護士の身重の妻と鉢合わせ。騙されていたと知ったドラは大ショック。仕事先で演出家に紹介された新しい俳優タマスは、くだんのシャツを貸してくれた男性だった。結婚をあきらめたドラは親友のゾフィに相談し、子どもだけ持とうと「セックスフレンド募集」の広告を出すが、集まってくるのは変な男ばかり。タマスが好意を示しても、最初の出会いのせいか素直になれないドラはどっちへ向かうのか?

『君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』のクリスティナ・ゴダ監督が先に発表していた軽妙なラブ・コメディ。キャリアをつけて周りを見回せば、いい男は皆妻帯者。私に似合う男性はどこへ~?という笑いながらも、胸もちょっと痛むストーリー。お気楽に男から男を渡り歩いて見えるゾフィも男運は良くありません。何度も結婚しては離婚する演出家、トルコからの移民らしい男性、隣家の老婦人のエピソードなどちょっとした小ネタをきかせて、ストーリーをまとめるのが上手です。シャーンドル・チャーニー、カタ・ドボーは『君の涙…』でも共演しています。まったく違ったテイストのこの2作品で06年のハンガリー映画興行収入1、2位を独占したという、ゴダ監督の次回作が楽しみです。(白)

2005/ハンガリー/カラー/104分/35mm/ヴィスタサイズ/
配給:イースト・プレス 配給協力:トラヴィス

★12月20日(土)、ユーロスペースほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.hanrenai.com/

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特集上映企画「昭和家族百景 Home, Bittersweet Home」

『家族』が織りなす悲喜こもごもの風景には、普段覗くことの出来ない、それぞれのドラマがあります。一つ屋根の下で、人がそばにいる安らぎや、意見の食い違いへの寂しさ。家族が織りなすドラマは綺羅星のごとく、小さくも美しく、無数に輝きます。
小津安二郎監督作「一人息子」は戦後の貧困を生きた、子供の為に尽くす母親と、期待を背負う息子の愛情を描いた傑作。中村登「我が家は楽し」は辛い出来事の連続にめげそうになる子供を支える親の愛を、切々と謳いあげる物語です。また日本国民を代表する一家、サザエさんでおなじみの磯野家の実写映画など、数多くの家族劇の中から選りすぐった26作品を7週間にわたって特集いたします。

開催期間:2008年12月21日(日)〜2009年2月7日(土)
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷
上映作品:「一人息子」(1936年/監督:小津安二郎)
     「家庭の事情」(1962年/監督:吉村公三郎)
     「結婚式」(1963年/監督:中村登)
     「東京暮色」(1957年/監督:小津安二郎)
     「花と娘と白い道」(1961年/監督:森永健次郎)
     「はたらく一家」(1939年/監督:成瀬巳喜男)
     「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959年/監督:市川崑)
     「好人好日」(1961年/監督:渋谷実)
     「サザエさんの新婚家庭」(1959年/監督:青柳信雄)
     「『粘土のお面』より かあちゃん」(1961年/監督:中川信夫)
     「四つの恋の物語」(1965年/監督:西川克己)
     「戸田家の兄妹」(1941年/監督:小津安二郎)
     「サザエさんの赤ちゃん誕生」(1960年/監督:青柳信雄)
     「わんぱく天使」(1963年/監督:久松静児)
     「河のほとりで」(1962年/監督:千葉泰樹)
     「三人姉妹」(1959年/監督:生駒チ里)
     「春を待つ人々」(1959年/監督:中村登)
     「お父さんはお人良し」(1955年/監督:斎藤寅次郎)
     「二人の息子」(1961年/監督:千葉泰樹)
     「月夜の傘」(1955年/監督:久松静児)
     「大根と人参」(1965年/監督:渋谷実)
     「幸福な家族」(1959年/監督:原研吉)
     「あの手この手」(1952年/監督:市川崑)
     「稲妻」(1952年/監督:成瀬巳喜男)
     「春らんまん」(1968年/監督:千葉泰樹)
     「我が家は楽し」(1951年/監督:中村登)
入場料金:一般…1,200円、シニア・学生…1,000円、会員…800円、
     3回券…2,700円
     ※水曜サービスデー…一般1,000円

上映スケジュールはラピュタ阿佐ヶ谷のHPでご確認下さい

ラピュタ阿佐ヶ谷 HP >> http://www.laputa-jp.com/

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ティンカー・ベル(TINKER BELL)

監督:ブラッドリー・レイモンド
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:ブラッドリー・レイモンド、ジェフリー・M・ハワード
脚本:ジェフリー・M・ハワード
美術:フレッド・ウォルター
デジタル・プロデューサー:ダグ・リトル
アニメーション・ディレクター:シェリル・サーディナ・サッケット
音楽:ジョエル・マクニーリイ
ボイス・キャスト:メイ・ホイットマン(ティンカー・ベル)、クリスティン・チェノウェス(ロゼッタ)、レイウン・シモーネ(イリデッサ)、ルーシー・リュー(シルバーミスト)、アメリカ・フェレーラ(フォーン)、ジェーン・ホロックス(フェアリー・メアリー)、アンジェリカ・ヒューストン(クラリオン女王)ほか

ネバーランドのピクシー・ホロウには様々な妖精たちが暮らしている。ある日メインランド(人間界)の赤ちゃんの初めて笑い声がタンポポの種に乗って届き、この谷に可愛い妖精が一人生まれた。この女の子にどんな才能があるのか、クラリオン女王と妖精の仲間たちが見守る。並べられたたくさんの「しるし」のうち、ハンマーに女の子が近づくと大きく光リ始めた。女王は女の子にティンカー(もの作り)の妖精、“ティンカー・ベル”と名づけた。ティンカー・ベルはもの作りの妖精たちの村に案内され、毎日道具作りをすることになった。

 
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世界中で一番有名な妖精はこの「ティンカー・ベル」かもしれません。ピーター・パンといつも一緒にいて、キラキラ光る小さな羽のある女の子。ピーターとは通じるようですが、私たちには彼女の言葉が聞こえず、どこからきたのかも知りませんでした。そんなナゾが4部作でだんだん明らかになるようです。春夏秋冬と一つの季節ごとに物語ができるそうで楽しみですね。
 今回はティンカー・ベルが生まれて、最初の春になるまで。自分の仕事がもの足りなく思えてしまい、じたばたする彼女が身近な女の子のような気がします。妖精やファンタジーが大好きな人だけでなく、新しいことを始めた人、自信をなくしそうな人が観ても勇気と元気が出ますよ。しかし、妖精たちってなんてナイスバディなんでしょ。コスプレしたい人は磨いてね。(白)

2008/アメリカ/1時間44分/シネマスコープ・サイズ/字幕スーパー版、日本語吹替版
配給:ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャーズ ジャパン

★12月23日(火・祝)~全国ロードショー

ディズニーの公式 HP >> http://www.disney.co.jp/

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第20回 澤登翠 活弁リサイタル(第605回無声映画鑑賞会)

日時:12月29日(月)午後6時より
場所:新宿・紀伊国屋ホール
料金:一般1800円 学生1600円
   前売、電話&E-mail予約1500円
   会員優待券1000円
前売券発売所:紀伊國屋書店・新宿本店5階 キノチケットカウンター(店頭販売のみ)
問合せ、予約:無声映画鑑賞会事務局
E-Mail: gakugei@regasu-shinjyuku.or.jp
電話:03-3605-9981

 
左:『ラ・ボエーム』 右:『弥次喜多・尊王の巻』

上映作品

『ラ・ボエーム』La Boheme(93分)1926年米
 監督:キング・ヴィダー
 主演:リリアン・ギッシュ、ジョン・ギルバート

『居酒屋の一夜』〈漫画映画〉(11分)昭和11(1936)年
 作画:村田安司
『大当り空の円タク』〈漫画映画〉(11分)昭和7(1932)年
 作画:加藤禎三
『弥次喜多・尊王の巻』(15分)昭和2(1927)年
 監督:池田富保
 主演:河部五郎、大河内傳次郎

詳しい情報は下記HPをご覧下さい

公式 HP >> http://www.matsudafilm.com/matsuda/indexj.html#1229

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アンダーカヴァー(原題:WE OWN THE NIGHT)

監督・脚本:ジェームズ・グレイ
撮影:ホアキン・バカ=アセイ
美術:フォード・ホイーラー
衣裳:マイケル・クランシー
音楽:ダナ、ヴォイチェフ・キラール
出演:ホアキン・フェニックス(ボビー・グリーン)、マーク・ウォルバーグ(ジョセフ・グルジンスキー)、ロバート・デュバル(バート・グルジンスキー)、エヴァ・メンデス(アマダ・フアレス)

80年代のNY。ボビーは父や兄のように警察官になるのを嫌って家を飛び出し、母方の姓を名乗っている。クラブのマネージャーとして成功しているが、そこはロシアン・マフィアと深いつながりのある店だった。麻薬の取引情報を摑んだ父と兄ジョセフは、証拠を押さえるためボビーに協力を頼んでくる。オーナーを信頼していたボビーは協力を拒否し、ジョセフはボビーの留守を狙って店の一斉捜査を行う。大麻を所持して逮捕されてしまったボビーは、ジョセフの計らいで釈放されるが、兄弟の溝は深まって行く。主犯と目されたニジンスキーを取り逃がし、手下は制裁を怖れて自殺。ジョセフの捜査は行き詰まった上、帰宅途中に狙撃され重傷を負う。

名門の警察官一家に生まれてエリート警官に育った兄、反発してアウトローの道に進む弟、家族の繋がりとそれぞれの感情もきっちり描かれていて、一層ドラマチックです。ただの犯罪+アクション映画ではありません。ジェームズ・グレイ監督は、以前2000年の監督作『裏切り者』で主演の二人に出会っています。今回彼らを想定して脚本を書いたのだそうです。持ち味がよく生かされているのに納得。二人はこの作品のプロデューサーとしても名を連ねています。若手スターだった彼らも30代半ばで貫禄がついてきました。ハリウッドきっての演技派たちですが、もすこし身体を締めてくれたらもっと色っぽいのになぁ。(白)

2007/アメリカ/カラー/117分/ビスタサイズ/ステレオ/PG12
配給:ムービーアイ

★12月27日(土)~渋谷東急、新宿ミラノほか

公式 HP >> http://www.undercover-movie.com/

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そして、私たちは愛に帰る (原題:The Edge of Heaven)

監督・脚本:ファティ・アキン(『太陽に恋して』『愛より強く』『クロッシング・ザ・ブリッジ〜』)
出演:バーキ・ダヴラク、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、パトリシア・ジオクロースカ

プロローグ:人気のないガソリンスタンドに哀愁漂うトルコのポップスが鳴り響いている。時は犠牲祭。黒海沿いの町に車を走らせる青年。
 第一章「イェテルの死」 ドイツ、ブレーメン。トルコ移民のアリは、一緒に暮らし始めたトルコ人の娼婦イェテルと些細なことから喧嘩になり、あやまって殺してしまう。服役した父に代わり、イェテルの遺体をトルコに届けたアリの一人息子で大学教授のネジャットは、イェテルの娘アイテンが消息不明だと聞き、彼女を探す為、トルコに留まる決意をする。
 第二章「ロッテの死」 反政府運動に身をやつしているイェテルの娘アイテンは、偽装パスポートでドイツに向かい母を捜す。所持金もなくなり、ドイツ人学生ロッテの家に転がり込むが、保守的なロッテの母スザンヌはいい顔をしない。不法滞在が見つかりトルコに強制送還されて投獄されたアイテンを救おうとロッテはトルコに向う。イスタンブルでロッテは偶然ネジャットのアパートに間借りするが、不幸にもスリを追いかけている時に偶発的な事故で死んでしまう。
 第三章「天国のほとりで」 ロッテの母スザンヌが娘の間借りしていた部屋で日記を読み、娘の代わりにアイテンを救い出す決意をする・・・

トルコ系移民二世としてハンブルクに生まれ育ったファティ・アキン監督の放つ、ドイツとトルコを舞台に描いた3組の親子の物語。親子は時に引き裂かれ、他人だった者たちは運命的に出会う。不思議な人の縁。
イスラームの犠牲祭に集う人々を眺めるドイツ人のスザンヌに、トルコ人のネジャットが祭の起源を語る。信仰心を試す為、神が息子を差し出せと命じた旧約聖書の一節。「同じ話が私たちにもあるわ」とスザンヌ。イスラームもキリスト教とルーツは同じであることを思い起こす。初対面の時にはトルコのEU加盟を巡って言い争っていたスザンヌとアイテンが、様々な出来事を経て歩み寄るように、文化や宗教が違っても人は気持ちを分かち合えるものだろう。対立している親子もまた同じ。突き動かされるように父に会いに向うネジャットの姿が愛おしい。(咲)

2007年カンヌ国際映画祭 最優秀脚本賞・全キリスト協会賞 受賞
2007年/ドイツ=トルコ/35ミリ/1:1.85/122分
後援:トルコ大使館、ドイツ連邦共和国大使館 支援:German Films
提供:ビターズ・エンド、ポニー・キャニオン
配給:ビターズ・エンド

★12月27日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/ainikaeru

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