『家族』が織りなす悲喜こもごもの風景には、普段覗くことの出来ない、それぞれのドラマがあります。一つ屋根の下で、人がそばにいる安らぎや、意見の食い違いへの寂しさ。家族が織りなすドラマは綺羅星のごとく、小さくも美しく、無数に輝きます。
小津安二郎監督作「一人息子」は戦後の貧困を生きた、子供の為に尽くす母親と、期待を背負う息子の愛情を描いた傑作。中村登「我が家は楽し」は辛い出来事の連続にめげそうになる子供を支える親の愛を、切々と謳いあげる物語です。また日本国民を代表する一家、サザエさんでおなじみの磯野家の実写映画など、数多くの家族劇の中から選りすぐった26作品を7週間にわたって特集いたします。
開催期間:2008年12月21日(日)〜2009年2月7日(土)
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷
上映作品:「一人息子」(1936年/監督:小津安二郎)
「家庭の事情」(1962年/監督:吉村公三郎)
「結婚式」(1963年/監督:中村登)
「東京暮色」(1957年/監督:小津安二郎)
「花と娘と白い道」(1961年/監督:森永健次郎)
「はたらく一家」(1939年/監督:成瀬巳喜男)
「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」(1959年/監督:市川崑)
「好人好日」(1961年/監督:渋谷実)
「サザエさんの新婚家庭」(1959年/監督:青柳信雄)
「『粘土のお面』より かあちゃん」(1961年/監督:中川信夫)
「四つの恋の物語」(1965年/監督:西川克己)
「戸田家の兄妹」(1941年/監督:小津安二郎)
「サザエさんの赤ちゃん誕生」(1960年/監督:青柳信雄)
「わんぱく天使」(1963年/監督:久松静児)
「河のほとりで」(1962年/監督:千葉泰樹)
「三人姉妹」(1959年/監督:生駒チ里)
「春を待つ人々」(1959年/監督:中村登)
「お父さんはお人良し」(1955年/監督:斎藤寅次郎)
「二人の息子」(1961年/監督:千葉泰樹)
「月夜の傘」(1955年/監督:久松静児)
「大根と人参」(1965年/監督:渋谷実)
「幸福な家族」(1959年/監督:原研吉)
「あの手この手」(1952年/監督:市川崑)
「稲妻」(1952年/監督:成瀬巳喜男)
「春らんまん」(1968年/監督:千葉泰樹)
「我が家は楽し」(1951年/監督:中村登)
入場料金:一般…1,200円、シニア・学生…1,000円、会員…800円、
3回券…2,700円
※水曜サービスデー…一般1,000円
ラピュタ阿佐ヶ谷 HP >> http://www.laputa-jp.com/
監督:ブラッドリー・レイモンド
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:ブラッドリー・レイモンド、ジェフリー・M・ハワード
脚本:ジェフリー・M・ハワード
美術:フレッド・ウォルター
デジタル・プロデューサー:ダグ・リトル
アニメーション・ディレクター:シェリル・サーディナ・サッケット
音楽:ジョエル・マクニーリイ
ボイス・キャスト:メイ・ホイットマン(ティンカー・ベル)、クリスティン・チェノウェス(ロゼッタ)、レイウン・シモーネ(イリデッサ)、ルーシー・リュー(シルバーミスト)、アメリカ・フェレーラ(フォーン)、ジェーン・ホロックス(フェアリー・メアリー)、アンジェリカ・ヒューストン(クラリオン女王)ほか
ネバーランドのピクシー・ホロウには様々な妖精たちが暮らしている。ある日メインランド(人間界)の赤ちゃんの初めて笑い声がタンポポの種に乗って届き、この谷に可愛い妖精が一人生まれた。この女の子にどんな才能があるのか、クラリオン女王と妖精の仲間たちが見守る。並べられたたくさんの「しるし」のうち、ハンマーに女の子が近づくと大きく光リ始めた。女王は女の子にティンカー(もの作り)の妖精、“ティンカー・ベル”と名づけた。ティンカー・ベルはもの作りの妖精たちの村に案内され、毎日道具作りをすることになった。

世界中で一番有名な妖精はこの「ティンカー・ベル」かもしれません。ピーター・パンといつも一緒にいて、キラキラ光る小さな羽のある女の子。ピーターとは通じるようですが、私たちには彼女の言葉が聞こえず、どこからきたのかも知りませんでした。そんなナゾが4部作でだんだん明らかになるようです。春夏秋冬と一つの季節ごとに物語ができるそうで楽しみですね。
今回はティンカー・ベルが生まれて、最初の春になるまで。自分の仕事がもの足りなく思えてしまい、じたばたする彼女が身近な女の子のような気がします。妖精やファンタジーが大好きな人だけでなく、新しいことを始めた人、自信をなくしそうな人が観ても勇気と元気が出ますよ。しかし、妖精たちってなんてナイスバディなんでしょ。コスプレしたい人は磨いてね。(白)
2008/アメリカ/1時間44分/シネマスコープ・サイズ/字幕スーパー版、日本語吹替版
配給:ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャーズ ジャパン
ディズニーの公式 HP >> http://www.disney.co.jp/
監督・脚本:ジェームズ・グレイ
撮影:ホアキン・バカ=アセイ
美術:フォード・ホイーラー
衣裳:マイケル・クランシー
音楽:ダナ、ヴォイチェフ・キラール
出演:ホアキン・フェニックス(ボビー・グリーン)、マーク・ウォルバーグ(ジョセフ・グルジンスキー)、ロバート・デュバル(バート・グルジンスキー)、エヴァ・メンデス(アマダ・フアレス)
80年代のNY。ボビーは父や兄のように警察官になるのを嫌って家を飛び出し、母方の姓を名乗っている。クラブのマネージャーとして成功しているが、そこはロシアン・マフィアと深いつながりのある店だった。麻薬の取引情報を摑んだ父と兄ジョセフは、証拠を押さえるためボビーに協力を頼んでくる。オーナーを信頼していたボビーは協力を拒否し、ジョセフはボビーの留守を狙って店の一斉捜査を行う。大麻を所持して逮捕されてしまったボビーは、ジョセフの計らいで釈放されるが、兄弟の溝は深まって行く。主犯と目されたニジンスキーを取り逃がし、手下は制裁を怖れて自殺。ジョセフの捜査は行き詰まった上、帰宅途中に狙撃され重傷を負う。
名門の警察官一家に生まれてエリート警官に育った兄、反発してアウトローの道に進む弟、家族の繋がりとそれぞれの感情もきっちり描かれていて、一層ドラマチックです。ただの犯罪+アクション映画ではありません。ジェームズ・グレイ監督は、以前2000年の監督作『裏切り者』で主演の二人に出会っています。今回彼らを想定して脚本を書いたのだそうです。持ち味がよく生かされているのに納得。二人はこの作品のプロデューサーとしても名を連ねています。若手スターだった彼らも30代半ばで貫禄がついてきました。ハリウッドきっての演技派たちですが、もすこし身体を締めてくれたらもっと色っぽいのになぁ。(白)
2007/アメリカ/カラー/117分/ビスタサイズ/ステレオ/PG12
配給:ムービーアイ
公式 HP >> http://www.undercover-movie.com/
監督・脚本:ファティ・アキン(『太陽に恋して』『愛より強く』『クロッシング・ザ・ブリッジ〜』)
出演:バーキ・ダヴラク、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、パトリシア・ジオクロースカ
プロローグ:人気のないガソリンスタンドに哀愁漂うトルコのポップスが鳴り響いている。時は犠牲祭。黒海沿いの町に車を走らせる青年。
第一章「イェテルの死」 ドイツ、ブレーメン。トルコ移民のアリは、一緒に暮らし始めたトルコ人の娼婦イェテルと些細なことから喧嘩になり、あやまって殺してしまう。服役した父に代わり、イェテルの遺体をトルコに届けたアリの一人息子で大学教授のネジャットは、イェテルの娘アイテンが消息不明だと聞き、彼女を探す為、トルコに留まる決意をする。
第二章「ロッテの死」 反政府運動に身をやつしているイェテルの娘アイテンは、偽装パスポートでドイツに向かい母を捜す。所持金もなくなり、ドイツ人学生ロッテの家に転がり込むが、保守的なロッテの母スザンヌはいい顔をしない。不法滞在が見つかりトルコに強制送還されて投獄されたアイテンを救おうとロッテはトルコに向う。イスタンブルでロッテは偶然ネジャットのアパートに間借りするが、不幸にもスリを追いかけている時に偶発的な事故で死んでしまう。
第三章「天国のほとりで」 ロッテの母スザンヌが娘の間借りしていた部屋で日記を読み、娘の代わりにアイテンを救い出す決意をする・・・
トルコ系移民二世としてハンブルクに生まれ育ったファティ・アキン監督の放つ、ドイツとトルコを舞台に描いた3組の親子の物語。親子は時に引き裂かれ、他人だった者たちは運命的に出会う。不思議な人の縁。
イスラームの犠牲祭に集う人々を眺めるドイツ人のスザンヌに、トルコ人のネジャットが祭の起源を語る。信仰心を試す為、神が息子を差し出せと命じた旧約聖書の一節。「同じ話が私たちにもあるわ」とスザンヌ。イスラームもキリスト教とルーツは同じであることを思い起こす。初対面の時にはトルコのEU加盟を巡って言い争っていたスザンヌとアイテンが、様々な出来事を経て歩み寄るように、文化や宗教が違っても人は気持ちを分かち合えるものだろう。対立している親子もまた同じ。突き動かされるように父に会いに向うネジャットの姿が愛おしい。(咲)
2007年カンヌ国際映画祭 最優秀脚本賞・全キリスト協会賞 受賞
2007年/ドイツ=トルコ/35ミリ/1:1.85/122分
後援:トルコ大使館、ドイツ連邦共和国大使館 支援:German Films
提供:ビターズ・エンド、ポニー・キャニオン
配給:ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/ainikaeru
日時:12月29日(月)午後6時より
場所:新宿・紀伊国屋ホール
料金:一般1800円 学生1600円
前売、電話&E-mail予約1500円
会員優待券1000円
前売券発売所:紀伊國屋書店・新宿本店5階 キノチケットカウンター(店頭販売のみ)
問合せ、予約:無声映画鑑賞会事務局
E-Mail: gakugei@regasu-shinjyuku.or.jp
電話:03-3605-9981

公式 HP >> http://www.matsudafilm.com/matsuda/indexj.html#1229
監督・脚本・編集:アレックス・コックス(『レポマン』『シド・アンド・ナンシー』)
エグゼクティブ・プロデューサー:ロジャー・コーマン
出演:デル・ザモーラ、エド・パンシューロ、ジャクリン・ジョネット、サイ・リチャードソン、ザン・マクラ—ノン
日雇い仕事にあぶれたメルは、通りがかった家の中から流れてきた曲に足を止める。それは、かつて自分が出演した西部劇のテーマ曲。テレビを観ている男にそのことを告げると、フレッドというその男も出演していたという。当時まだ子役だった二人は、撮影中に脚本家フロビシャーに虐待されたことを根に持っていた。奇しくも、そのフロビシャーがモニュメント・バレーでサイン会をすることを知り、復讐に行こうと意気投合する。メルは娘デライラの車を足にしようと目的を隠してまんまと旅に誘い込む。かくして、3人はロス・アンジェルスからアリゾナの荒野を目指す・・・
道中、メルとフレッドが延々と続ける映画談義には、西部劇や往年のスターへのオマージュと共に率直な批判も飛び出して、西部劇に疎い私も思わず笑ってしまいました。車の後ろには、「奴らを倒し、石油を奪え」のステッカー。そして、繰り返される「石油」「正義」「復讐」の言葉。道中、戦死した人たちのお墓をいくつも通りかかるなど、痛烈なブッシュ批判に拍手喝采です。「自分が外国人(イギリス人)で、しかもコメディという環境だからこそ大事なことが言えたのがポイント」と、来日したアレックス・コックス監督は語っていました。インディペンデントにこだわった本作は、HPで出資者を募り、クルー10名で撮影期間もわずか15日間。ヘリコプターが登場する場面は、イギリスに帰った時に、友人がプレステ用に作ったものを利用してみる?と言うので使ってみたそうですが、思わず本物?という出来でした。ラストは、ジョン・フォードの『捜索者-The Searchers』のロケ地モニュメント・バレーで撮影。雄大な風景に魅了されました。(咲)
2007年/アメリカ/英語/カラー/1:1.78/VIDEO/96分
提供:JVCエンタテイメント 配給・宣伝:アップリンク
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/searchers/
監督・原作・脚本・脚色:リュック・ジャケ
共同脚本・脚色:エリック・ロニャール
撮影:ジェラール・シモン
動物トレーナー:パスカル・トレギー
音楽:アリス・ルイス、エフゲニー・ガルバリン、デヴィッド・レイエス
セット・デザイナー:マルク・ティエボー
出演:ベルティーユ・ノエル=ブリュノー(リラ)、イザベル・カレ(ナレーション/現在のリラ)、トマ・ラリベルトゥ(少年)
秋、リラは学校帰りに初めて野生のキツネに出会う。美しい姿に思わず近づくと、キツネは身を翻して逃げていってしまった。それ以来もう一度キツネに会いたくて、森を探しまわるようになった。冬が過ぎ、キツネに会えないまま春になった。ようやく巣穴を見つけて覗き込むと、そこには子ギツネがいた。リラが出会ったキツネは母親になっていたのだ。

世界中で大ヒットした『皇帝ペンギン』から4年、リュック・ジャケ監督の長編第2作が誕生しました。子どもの頃、野生のきつねに魅せられた体験がベースになった、ドキュメンタリー風のファンタジーです。ロケ地は監督が子ども時代に住んだというフランス南東部のルトール高原と、イタリアのアブルッツォという国立公園。ほとんどリラとキツネの場面なのですが、四季の移り変わりの中に小さな動物たちも登場します。美しい場所をぼ~~っと観ているだけでも、固まった心身がほどけてゆくようです。リラの可愛い部屋や何げないファッションもおしゃれ。(白)
2007/フランス/カラー/96分/スコープサイズ/ドルビーSRD/
★2009年1月10日(土)~新宿ピカデリー、恵比寿ガーデンシネマ、丸の内ピカデリーほかにてロードショー公式 HP >> http://kitsune12.jp/index.html
監督・脚本:中嶋莞爾
エグゼプティブ・プロデューサー:ヴィム・ヴェンダース
撮影:浦田秀穂
美術:木村威夫
音楽:山下雄太
出演:及川光博(高原耕平)、石田えり(高原洋子)、永作博美(高原時枝)、嶋田久作(影山)、品川徹(勅使河原)、塚本僚(耕平・少年時代)ほか
宇宙飛行士の高原耕平は、船外作業中の事故で殉職する。出発前にクローン契約を結んでいたため、合法的に生まれ変わったが、何も知らされていなかった妻の時枝は混乱する。しかもクローンは記憶障害を起こし、新しい記憶はないかわり生前封印していた幼い頃の記憶が復活していた。耕平には子どもの頃、自分を助けようとして溺れた双子の弟がいたのだ。故郷へ向かう途中、耕平は宇宙服を着た自分の死体を発見する。
中嶋莞爾監督が手がけたオリジナル脚本は、2006年サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞しています。このときの審査委員長はヴィム・ヴェンダース監督。この縁でエグゼクティブ・プロデューサーとして参加しています。クローン技術がもっと発達した近未来、そのときにどう対応すればいいのか。進んでいく技術に人のこころはどうなっていくのだろうか。精神的なテーマを持った物語に、3役を演じる及川光博が意外にはまっていました。(白)
クローン技術で人間一個体を作り出すなんて、ましてや記憶までも再現するなんて、とうてい近未来でできそうにはないけれど、もしも将来できてしまったら、人間はそれをどう受けとめるのでしょうか? 古来から日本人が信じてきた魂と、複数存在するクローンとの関係は? その人をその人たらしめているのは、記憶と肉体だけなのか? そんなかなり壮大なテーマをもちながら、個人の溢れる感情を詩情豊かな映像で静かに、真摯に描いていて、好感が持てます。(梅)
2008/日本/カラー/110分/35mm/アメリカン・ビスタ/DTSステレオ/
配給:アグン 宣伝:アムモ
©2008「クローンは故郷をめざす」製作委員会
公式 HP >> http://clone-homeland.com/
監督:デイヴィッド・シントン
撮影:クライヴ・ノース
作曲:フィリップ・シェパード
出演:パズ・オルドリン(11号)、マイク・コリンズ(11号)、デイヴ・スコット(9号/15号)、ジーン・サーナン(10号/17号)、ジム・ラヴェル(8号/13号)、ジョン・ヤング(10号/16号)ほか
人類が初めて月に第一歩を標してから40年。我々人類にとって月へ行くこと、そして地球に生きることの奇跡を謳う感動の宇宙体験が始まる。
1969〜1972年のアポロ計画により、12人の宇宙飛行士が月に降り立った。このドキュメンタリーは当時の宇宙飛行士たちのインタビュー、NASAに保存されている貴重な蔵出し映像から構成されている。

最初に月に降り立ったニュース映像はよく覚えています。月そのものより宇宙から見た地球の美しさのほうに感動しました。月に降り立ちたかったのは競争していた米ソだけではなく、宇宙を目指すものの悲願であったはずです。このニュースを知った人々はみな空を見上げたのではないでしょうか。最初の一歩を標したのはアポロ11号のアームストロング船長でした。「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」ということばが有名です。地球人として一つでいることはなんと難しいのだろう、と思う昨今だからこそ、広大な宇宙の映像を観てきませんか?(白)
NASAに液体窒素保存されていた、アポロ計画の全記録フィルムをデジタル化する機会にあわせ、制作者たちが通い詰めて選び出した蔵出し映像と、宇宙飛行士たちへのインタビューでつづられています。月や地球の映像も美しいですが、何と言ってももう70歳を越えた宇宙飛行士たちの話が大変面白いです。久しく世捨て人のように暮らしていると言われるニール・アームストロング船長が出演しなかったのは少し残念ですが、共に月へ向かったバズ・オルドリンやマイク・コリンズといった仲間の話から、彼の存在の大きさが感じられます。(梅)
2007/イギリス/カラー/100分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://themoon.asmik-ace.co.jp/
監督・編集:井上晃一
脚本:松田裕子
原作:鈴木由美子「カンナさん大成功です!」
撮影:百東尚浩
美術:木村文洋
音楽:田中茂昭
衣装:青木貴子(監修)、川崎瑤子
出演:山田優(神無月カンナ)、山川静代(カバコ)、中別府葵(隅田川奈々子)、永田彬(蓮台寺浩介)、佐藤仁美、柏原崇、浅野ゆう子 他
神無月カンナはあまりにもブスな自分を捨て、誰もが振り向く超美人に生まれ変わった。もとい、全身整形美人になったのだ!貯金を全部はたいたけれど、怖かったけれど、鏡の中の私は惚れ惚れしちゃうほどの美人。あこがれのあの王子様にアタック~! やってきたのはアパレル業界のナンバーワン「亀戸商会」。ここの蓮台寺浩介くんの彼女になるのよっ!鼻息荒いカンナはまんまと就職に成功し花の受付嬢となった。天然美女×有能な隅田川奈々子をお手本に美女修行に励むが、ブス時代の同僚だったカバコに再会。カバコには意外な才能があった。
一足先に韓国で映画化された同名作品は、芸能界が舞台でブス作りは特殊メイクでした。こちらはより原作に忠実だそうです(未見)。過去の回想部分はCGの人形劇風、カンナが目を細める視界はホームビデオの画面のような作りになっています。主演は“CanCam”の人気モデル山田優。全身整形美人になっても、ブス時代のクセが抜けきらないカンナをコミカルに演じています。『ハンサム・スーツ』の谷原章介さんといい、この山田優さんといい、今の美男美女俳優さんたちはほんとにお笑いもいけるんですね。カンナの原色の衣装を着こなし、作中新ブランド(実際に商品展開される予定)のショーのモデルもつとめる山田優さん、華やかな衣装を次々に披露します。やり手の社員役の田宮五郎さんがあまりにも田宮二郎さんに似ているので驚きました。親子ですねぇ。(白)
2008/日本/カラー/110分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR
配給:ゴー・シネマ
宣伝:デジタル・ハリウウッド・エンタテインメント
公式 HP >> http://www.kannasan.com
監督:フォン・シャオガン
脚本:リウ・ホン
撮影:リュイ・ユエ
編集:リュー・ミャオミャオ
音楽:ワン・リグァン
エフェクト監修:フィル・ジョーンズ
出演:チャン・ハンユー(グー・ズーティ)、ドン・チャオ(チャオ・アルドゥ)、ユエン・ウェンカン(ワン・ジンソン)、タン・ヤン(スン・グイチン)、リアオ・ファン(ジアオ・ダーポン)、ワン・パオチアン(ジアン・マオツァイ)、レン・チュアン(指導員)、フー・ジュン(リウ・ゾーシュイ)
一人生き残り、全てを背負う―。
かつてないスケールで描く中国“内戦”の姿。これは真実の物語である。
1948年、毛沢東率いる中国共産党の人民解放軍と、蒋介石率いる国民党軍は主導権を巡って激しい内戦を繰り広げていた。人民解放軍中原野戦軍第2師139団3営第9連隊のグー・ズーティは部下とともに、最前線の淮河(わいが)へ送られることになった。リュー・ゾーシュイ団長は「旧炭鉱を正午まで守りきれ。集合ラッパの合図で撤収」と命令を下す。最後の一人まで戦い続ける覚悟で果敢に攻撃したが、圧倒的な物量でくる国民党軍に押され、連隊の兵士は次々と倒れて行った。グーは戦闘中に耳を負傷し、部下が聞いたという集合ラッパの音が確認できなかった。このままでは全滅だというジアオの今際の言葉を聞きながら、最後の突撃を図る。47人の部下全員が戦死し、野戦病院に収容されたグーは自責の念にかられていた。第2師団の消息は不明、身元の確認もできない彼はチャオ・アルドゥの連隊に加わる。

原作はわずか3pの短編小説(「Guan Si(訴訟)」ヤン・ジンジュアン著)。戦死した部下の名誉回復のため、死に物狂いで遺体を捜す姿にフォン監督が感動。脚本のリウ・ホンとともに歴史書を調べ、関係者を探し兵士の手紙を参考にしてストーリーをふくらませていきました。
国共内戦は1949年に中華人民共和国が建国されるまで、世界大戦をはさんで2次に渡り、延べ14年間に及びました。同じ民族が政治の利害によって分断され、戦わねばならないというのは昔も今も変わらず、人は学習せず欲から逃れられないのでしょうか。大きな犠牲となるのはいつも庶民、将棋の駒のように歩兵は奥に鎮座している大将を守るため、突撃して時間稼ぎの盾になります。悲憤慷慨するグーは奔走して部下の名誉を回復しました。脚本を読んで号泣し、グー役を切望したというチャン・ハンユーは渾身の演技で、グー連隊長を生身の人間としてくっきりと蘇らせました。韓国映画『ブラザーフッド』を手がけたスタッフが参加した迫力満点の戦争シーンを観ながら、フォン監督や俳優さんたちの熱意を感じました。多くの賞を受け、空前のヒットを記録したそうですが、こういう悲劇を胸に刻んで決して繰り返さないでと祈ります。(白)
いわゆる娯楽作品を撮ってきたフォン監督ですが、この作品はうって変わって、冒頭から始まる戦闘シーンなど観ていて恐くなるほどのリアリティです。『イノセント・ワールド〜天下無賊〜』(2004)で世間知らずの朴訥な青年を演じていたワン・パオチアンも出ているのですが、みんな顔がすすけて真っ黒で、誰が誰だかわからないほど。国共内戦を一兵士の個人の視点で描いたことも、中国映画としては画期的です。どんなに立派な大義名分を掲げたとしても、戦争は殺し合いにすぎないと痛感させられます。さらに戦争が終わってもグーさんの本当の戦いはそこから始まります。死んだ部下たちの名誉の回復。そんなことをしても本質的にはむなしいのですが、1人生き残った者として彼らの死を何もなかったかのごとく葬られるのは何としても阻止せねばと思う気持ちが、切々と伝わってきました。(梅)
2007/中国/カラー/124分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:税田春介
配給:ブロードメディアスタジオ
公式 HP >> http://requiem-movie.jp/
監督・脚本・製作:ラリー・ビショップ
製作総指揮:クエンテエィン・タランティーノほか
撮影:スコット・ケヴァン
美術:ティム・グライムス
音楽:ダニエレ・ルッビ
出演:ラリー・ビショップ(ピストレロ)、マイケル・マドセン(ジェント)、エリック・バルフォー(コマンチ/ビックス)、レオノラ・ヴァレラ(ナダ)、ジュリア・ジョーンズ(チェロキー・キズム)、ローラ・カユーテ(ダニー)、デイヴィッド・キャラディン(デュース)、ヴィニー・ジョーンズ(ビリー・ウィングス)、デニス・ホッパー(エディ・セロ)
ピストレロ、ジェントは、バイカー・チーム「ヴィクターズ」のメンバー。対抗するグループ「シックス・シックス・シックス」に仲間のセント・ルーイを殺され復讐を誓う。チームに若いコマンチを加え、まずトレーラーハウスにいた「シックス〜」のメンバーを襲う。

クエンティン・タランティーノは60年代末、グラインドハウス(B級映画館)に通い詰めてバイカー・ギャング映画を観ていたという。その伝説のカルト・アクターでありディレクターだったのがラリー・ビショップ。彼にかつての作品を越えるものをと依、監督・主演をつとめている。共演にはタランティーノ作品常連のマイケル・マドセン、デイヴィッド・キャラディン、なんとデニス・ホッパーも出演を快諾した。15歳以上でも真似をしてはいけません。(白)
2008/アメリカ/カラー/1時間24分/スコープサイズ/SRD/R15
ディメンション・フィルムズ&クエンティン・タランティーノ提供
配給:ムービー・アイ
宣伝協力:フリーマン・オフィス
公式 HP >> http://www.hellride.jp/
監督:光石富士朗(『おぎゃあ』)
原作:森下裕美「大阪ハムレット」(扶桑社刊/「漫画アクション」連載作品)
主題歌:倉木麻衣「会いたくて・・・」(NORTHERN MUSIC)
出演:松坂慶子、岸部一徳、森田直幸、久野雅弘、大塚智哉、加藤夏希、白川和子、本上まなみ、間寛平
お父ちゃんが突然死んだ。葬式に集まった人たちは誰も悲しんでない。お母ちゃんまで一緒になって「子供用の棺桶にしといたら安上がったのに」と笑ている。そこに突然、おっちゃんがやって来て、場違いな大泣きを始めた。だ、誰? おっちゃんはお父ちゃんの弟らしい。それ以来、うちに住み着いてしもて、5人での生活が始まる。
長男の政司は側溝に落ちそうになった女子大生・由加を助けて自分が恋に落ちた。「どこの大学?」と聞かれてつい「同志社」と嘘をついてしまう。本当は中3やのに・・・
ヤンキー中学生の次男・行雄は、担任のりゅうのすけに「久保君はハムレットやなぁ」と言われる。その理由が気になって辞書を片手に読んだところが「ハムレットのお父ちゃんの弟が、兄ちゃん殺してお母ちゃんたらしこんで王様になった」と知って大激怒。でも、ふと自分が死んだお父ちゃんに似ていないことが気になり始める。「俺、誰の子や?」
小学生の三男・宏基はクラスの将来の夢を発表する場で「女の子になりたい思てます。本気やから変にからこうたりせんとってください」と宣言。先生もクラスメイトも一瞬どん引きするが・・・

大阪の岸和田を舞台に、何があっても揺るぎない愛情をもって家族を支えるおかあちゃんと、悩み多き3人の息子たち、それになんやようわからんけど一緒に住み始めたおっちゃんの5人家族が織りなす、笑いと涙の人生賛歌。不思議なことに笑いながら泣いてました。原作の漫画はいくつもの短編に、別々の家族の話として描かれていましたが、それを一つ屋根の下に暮らす家族をめぐる話に仕立て上げた映画は、より濃密な家族の関係を実写ならではのリアリティをもって描けています。ハムレットの有名なセリフ「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」に、大阪らしく「なんでやねん!生きとったらええやん!」とおもいっきりつっこみを入れる。この不景気の折、落ち込んでいる人も多いかと思いますが、この映画は元気をくれますよ。(梅)
2008/日本/35mm/カラー/107分/アメリカンビスタ/DTS STEREO
配給:アートポート
宣伝:グアパ・グアポ
公式 HP >> http://www.osaka-hamlet.jp/
監督:川野浩司
脚本:池田眞美子
原作:片岡薫夏「花ゲリラ」
撮影:今泉尚亮
美術:野尻郁子
音楽:佐橋俊彦
主題歌:「アカルイミライ」歌:小西遼生
出演:小西遼生(ユウスケ)、伴杏里(大平映子)、永山たかし(粕谷浩二)、馬場徹(山口遼)、宮野真守(田畑)、大河内浩(川辺)、アンナ・リー(ワン)
社会人2年目の映子は一日中モニターとにらめっこで校正作業をしている。判で押したような毎日にあきあきしていたころ、夜中の線路にしゃがむ人影を見つけた。見回りの保線員に追いかけられた若い男性は、軽々と身をかわしていなくなってしまった。しばらくたってまた彼に出会った映子は、思い切って声をかける。夜中に一人で花の種を蒔いているというユウスケ、人付き合いが苦手で一人ひっそりと暮らしていた。映子は「花ゲリラだね。私も手伝う」と宣言してついて歩く。ユウスケは戸惑いつつもポツリポツリと話すようになった。
ミュージカル「テニスの王子様」のキャスト&スタッフから生まれた“キラキラMOVIES”第1弾。まず主演ありきで企画された3作品のうちの1本です。人知れず花の種をまく引きこもりの青年と平凡なOLの出会いが、毎日を少しだけ変えました。追いかけてきた保線員のおじさんとの出会いも世界を広げます。いつも立ち寄るコンビニのバイトくんや派遣の中国人の女の子も、元カレのサラリーマンくんにも、人知れない悩みやストレスがあります。ちょっとだけ踏み出すことが、何かを変えるきっかけになるよ、とメッセージをくれた気がします。静かなたたずまいの小西遼生さんの横顔が少しずつ現れてくるオープニングと、反対に動きのあるラストが印象的でした。(白)
2008/日本/カラー/1時間38分/
配給:ゴー・シネマ
公式 HP >> http://wwww.kirakiraweb.jp/
監督:サム・メンデス
脚本:ジャスティン・ヘイス
原作:リチャード・イェーツ 「家族の終わりに」(ヴィレッジブックス刊)
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:レオナルド・ディカプリオ(フランク・ウィーラー)、ケイト・ウィンスレット(エイプリル・ウィーラー)、マイケル・シャノン(ジョン)、キャスリン・ハーン(ミリー)、デヴィッド・ハーバー(シェップ)、キャシー・ベイツ(ヘレン)
1950年代、高度成長期のアメリカ。郊外に家を持ち、子供二人に恵まれ傍目には理想的な夫婦に見える若いウィーラー夫妻。フランクは毎朝電車に揺られてニューヨークの会社に通い、退屈な仕事も妻子のためと割り切っている。エイプリルは元女優志望、地元のアマチュア劇団の芝居に出演するができは散々だった。慰める夫に怒りをぶつけ、互いに不満を吐き出して激しく言い争う。翌日帰宅したフランクを、エイプリルはドレスアップして出迎える。子供たちと誕生祝いのテーブルを整えて待っていたのだ。そして思いがけない提案をする。「パリで暮らしましょう!」と。フランクは兵隊時代パリに駐留したことがあり、その街で成功する夢を妻に語っていた。今の生活に行き詰っていた彼女は、新しくやり直すならパリと夢見ていたのだ。途方もないことと一蹴したものの、熱心なエイプリルの言葉についに秋には移住しようと決心する。
あの『タイタニック』の二人が11年ぶりに共演。30代半ばとなってすっかりスターの貫禄がついたディカプリオが少年ぽさを残した直情的な夫フランクを、ケイト・ウィンスレットは女優志望だったが平凡な主婦になっているエイプリルを熱演しています。
色あせた結婚生活に新しい夢ができて高揚する二人と、さめた目で見る隣人や同僚たちの対比。夫婦の家を斡旋したヘレンの息子ジョンが、引きあわされた二人に向ける痛烈な言葉。精神を病んで電気ショックを受けたというジョンは、夫婦の心の中に気づきほかの誰よりもまともな言葉を口にする皮肉。『アメリカン・ビューティ』で絶賛されたサム・メンデス監督の面目躍如の作品。すでに足並みがそろわないことに気づいていく過程がなんとも辛いです。女性の地位が低かったこの時代、傷つき揺れ動きながら再生したいと願うエイプリルが痛ましく、ケイト・ウィンスレットの演技に打たれました。なお、メンデス監督とウィンスレットは2003年に結婚し、男の子が生まれているそうです。(白)
2007/アメリカ・イギリス/カラー/113分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給:パラマウントピクチャーズ
公式 HP >> http://www.r-road.jp/
avexの期待の新星たちを主役にすえ、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマなどそれぞれ異なるタイプの映画作品5本連続公開上映となります。次世代のスターがここにいるかもしれません。
監督:三城真一
脚本:阿部裕樹
出演:近野成美、相葉弘樹、高山都、武下公美
監督・脚本:加納周典
出演:伊藤ゆみ、緒形幹太、松田賢二、渋谷亜希
監督・脚本:川上春奈
出演:大石参月、下宮里穂子、谷口紗耶香
監督・脚本:菱沼康介
出演:金澤美穂、斉藤リナ、米村美咲
監督:安達正軌
原案・脚本:田中貴大
出演:江野沢愛美、円城寺あや、指出瑞貴、田中柚里佳、風間トオル
『年々歳々』だけ拝見しました。不幸な事故でお父さんを失った母娘が7年経ってもその痛手から立ち直れずにいます。母はやりきれない思いを抑えきれず、娘はそんな母を気遣うあまりにすべては自分のせいだと思いこむ。そんな二人に訪れる奇跡を描いていました。それぞれの心情が丁寧に描けていたと思います。風間トオルさんもお父さん役をやるようになったのですね。(梅)
★2009年1月24日(土)より、渋谷シアターTSUTAYAにて5作品連続レイトショー公式 HP >> http://www.avex-newstar.com/
監督:パンジャマン・マルケ
製作:ダニエル・マルケ
撮影:ロラン・シャレ、セバスティアン・ビッシュマン、パンジャマン・マルケ
出演:ル・ムーラン・ナ・ヴォンの子供たち、コーチ、厩務員、先輩のジョッキー
フランス、シャンティには競馬場と、唯一の国立の騎手・厩務員養成学校がある。新学期の始まる9月、14歳の子供たち30人が入学した。親元を離れて寄宿舎生活を送る彼らは、これからの3年間厳しい研修を受けていく。ごく少数の優秀な者は騎手になり、それ以外は厩務員として教育される。まだ暗いうちから、馬の世話のために起き、厩舎と教室、馬場を往復する日々が続く。自分の何倍もある大きな馬を制御するのは容易ではない。どんどんスピードが出る馬に泣きながらしがみついて、降り落とされないようにするのがいっぱいだ。年度末には見習い騎手になるための試験が待っている。

このドキュメンタリーは一緒に入学した子供たちのうちから3人に焦点をあて、彼らのクラスに10ヶ月間密着して撮影したものです。思春期入り口の子供たちが選択した厳しい道をただレポートしたのでなく、彼らの心情に寄り添う優しさが感じられる作品。監督自身も1ヶ月間見習いとなり、皆と同じリズムの生活と落馬まで経験したのが、よく反映されているのでしょう。軍隊で乗馬経験のある父がしきりに「馬は賢くて可愛い」と言っていたのを思い出しました。(白)
2008/フランス/カラー/35mm/99分/ドルビーSRD/
配給:CKエンタテインメント
公式 HP >> http://jockey-movie.jp/
監督・脚本・作詞:ジャック・ドゥミ
音楽/作曲:ミシェル・ルグラン
撮影:ジャン・ラビエ
美術:ベルナール・エヴァン
衣裳:ジャクリーヌ・モロー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(ジュヌヴィエーヴ)、ニーノ・カステル・ヌオーヴォ(ギイ)、マルク・ミシェル(カサール)、アンヌ・ヴェルノン(母)、エレン・ファルナー(マドレーヌ)、ミレイユ・ペリー(ギイの伯母)
ジュヌヴィエーヴは16歳。父は亡くなり、母が細腕で切り盛りしてきた傘屋を手伝っている。車の修理工をしている恋人のギイは20歳、病弱な伯母を友人のマドレーヌへ託し、兵役へ行かねばならない。ジュヌヴィエーヴの母は、まだ若すぎるとギイとの結婚に反対するが、戦線に出る前夜二人は結ばれる。妊娠したジュヌヴィエーヴは、離れていることが不安でたまらない。それまで母娘を援助してきた宝石商のカサールは、事情を知った上、ジュヌヴィエーヴに求婚する。やがてギイが怪我をして帰国するが、すでに店は閉められていた。
デジタルリマスター版での上映です。 ずいぶん前に観たので、ドヌーブの役が「傘屋さんの娘で未婚の母になる」というところだけ記憶にありました。全部の台詞が歌だったことや、詳しいストーリーをすっかり忘れていたので新鮮。昔はジュヌヴィエーヴの気持ちに重ねて観たのですが、今は若い二人よりも、母親の気持ちのほうに親近感を覚えます。同じ映画でも観る時期で変わるものです。歌はそれぞれ歌手による吹き替えで、母役の歌はミシェル・ルグランの実姉のクリスチャンヌ・ルグランがあてています。オープニングは俯瞰で道行く人々が撮られ、色傘やレインコートの鮮やかな色が動く雨のシーンがおしゃれです。この作品で大ブレイクした若く美しいドヌーヴと、スタンダードナンバーとなった音楽をお楽しみください。(白)
1964/フランス、ドイツ合作/1時間31分/イーストマンカラー/1:1.66/
配給:ハピネット 宣伝:マジックアワー
公式 HP >> http://demy.jp/
監督:武正晴
脚本:小林弘利
出演:大河元気(雅也)、純名りさ(愛子)、加地千尋、小野健斗、長澤奈央、日向丈、白木みのるほか
時代を越えていつもめぐりあい、愛し合ってきた男女。原始のころから二人はいつも赤い糸で結ばれていた。そして現代でも…。早朝、日課のジョギングをしていた愛子と、雅也は出会うべくして出会った。運命に導かれるままに結婚した二人。しかし雅也はまだ高校生、卒業するまでは形ばかりの夫婦でいる約束をする。年上の愛子が叔父である理事の世話でやってきた新しい職場は、な、なんと雅也の通う高校だった。愛子は謹厳実直な校長として勤め始めたが、雅也は嘘がつけない特異体質。ほかの生徒のいる前で愛子に会った雅也は呼吸困難に陥り、必死で歌ってごまかすはめになってしまう。
『ボーイ・ミーツ・プサン』、『カフェ代官山』の武監督の最新作。もうずっと前に(1970年)石立鉄男&岡崎友紀「おくさまは18歳」という傑作TVドラマがありました。実際に高校生だった岡崎友紀が、高校教師と結婚して周囲には秘密にしているヒロイン。同じ学校のためいろいろ騒動がおきる学園ラブコメでした。それ以後似たような設定のドラマがいくつも生まれたようですが、この作品は男女逆バージョン。赤い糸で結ばれた二人が繰り返し出会うことになっているという始まりが新しいかな。
新聞部員が雅也を「特異体質のため嘘はつけない、それで生徒会長をやっている」と紹介するのがおかしいです。そういう人ばかりが政治家だといいけど…みんな呼吸困難になりそう。愛子校長のほかの教師たちはクセモノぞろいで、ストーカーも平気。まるでコントのようなベタなシーンが笑わせます。「テニスの王子様」には若いイケメンくんたちが大挙登場して、今あちこちで活躍中。大河元気(おおかわげんき)、小野健斗もその一人。初々しさを生かした可愛い映画です。(白)
2009/日本/カラー/70分/ヴィスタサイズ/
配給:
公式 HP >> http://hanamuko18.com/
監督:ヤウ・ナイホイ(游乃海)
出演:レオン・カーファイ(梁家輝)、サイモン・ヤム(任達華)、ケイト・ツィ(徐子珊)
香港警察の中には凶悪犯罪の容疑者を監視、追跡する専門部隊、通称”パパラッチ"と呼ばれる刑事情報科・監視班がある。エリート中のエリートが集まるこの部隊に、新人女性警官のホーが配属されることになる。リーダーのウォンによる指導の下、現場で鍛えられていくが、なかなか冷静になりきれない。そのころ街では宝石強盗が多発。強盗団のリーダー・チャンは切れ者で、警察はなかなかしっぽをつかめずにいた。
2007年の東京フィルメックスで上映され、審査員特別賞を受賞した『アイ・イン・ザ・スカイ』がいよいよ公開されます。脚本・監督のヤウ・ナイホイはジョニー・トー作品で脚本を書いてきた方で、これが初監督作品。しかし、第1作目だなんてとうてい思えない、素晴らしい演出のキレです。何の前情報も無く観たわたしは、冒頭シーンからドキドキして一気に映画の世界に引きずり込まれ、片時も目を離せずあっという間に90分が経ってしまいました。たくさん映画を観ていても、こういう経験はなかなかないです。
主演のケイト・ツィはこれが映画デビューで、2007年香港電影金像奬新人賞を受賞。監督も新人監督賞を受賞しています。若い二人を支えるのは、レオン・カーファイやサイモン・ヤム、またジョニー・トー組のスタッフといったベテランたち。特にレオン・カーファイはこれまでにない役柄を演じています。
ところで、ケイト・ツィの顔しか映っていない赤いチラシにこの邦題で、はじめ『アイ・イン・ザ・スカイ』とは全く気がつかず、チラシ置き場を素通りしてしまいました(爆)。結構、そういう香港映画ファンはいるのではないかと思うのですが、どうでしょう。(梅)

2007/香港/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/広東語
提供:ツイン、博報堂DYメディアパートナーズ
宣伝・配給:トルネード・フィルム
シネマライズ HP >> http://www.cinemarise.com/
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・タルデンヌ
撮影監督:アラン・マルコァン
出演:アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ、アルバン・ウカイ ほか
ロルナはアルバニア系移民。よりよい生活を求めてベルギーのブリュッセルにやってきた。将来は同じ故郷の恋人とこの街に店を開きたいと願っている。国籍を獲るためにブローカーを通して偽装結婚をしたのは、クローディという麻薬中毒の青年だった。偽りの関係ではあるが、クローディはロルナに希望の光を見いだして、必死に麻薬を止めようともがいている。ロルナは何かと頼ってくる彼を疎ましく感じているが、必死な姿を目の前にして手を貸さずにもいられない。心が少しずつ通じ合っていく。しかし、ロルナには彼に決して言えない秘密がある。
1999年の『ロゼッタ』から4作連続カンヌ国際映画祭の主要部門を受賞し、名実共に現代の巨匠であるタルデンヌ兄弟監督。『ロルナの祈り』は脚本賞の受賞です。彼らの作品は、人の愚かさや厳しい現実を冷徹に描きながらも、決して突き放してはいません。人間性の価値を深く信じていて、慈愛に満ちたまなざしを感じます。この作品では主演のアルタ・ドブロシが実に魅力的。思い詰めたような、いらだちを押し殺したような表情がほとんどなのですが、あるシーンで心から幸せそうな笑顔を見せます。その笑顔のかわいいこと。その次のシーンとの落差とあいまって、非常に印象深いです。麻薬中毒者のクローディを演じたジェレミー・レニエは、タルデンヌ監督の前作『ある子供』にも主演していましたが、今回は役作りのために2か月で15キロも減量し、あまりにげっそりしていて一瞬彼だとわからないほどでした。ちょっとうっとうしいけれど、ロルナが見捨てられなくなる善良さ、純粋さを実によく体現しています。(梅)
2008/ベルギー・フランス・イタリア/1:1.85/カラー/ドルビーSRD/105分/
配給:ビターズ・エンド
宣伝:ムヴィオラ
特別記事『ロルナの祈り』タルデンヌ兄弟監督&アルタ・ドブロシ来日会見もご覧下さい。
公式 HP >> http://lorna.jp/
原案・脚本・監督:園子温
主題歌・挿入歌:ゆらゆら帝国(ソニー・ミュージック アソシエイテッド レコーズ)
出演:西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、渡辺真起子、渡部篤郎 ほか
幼いころの母を亡くしたユウは父と二人暮らし。母の死後、父は神父になり、ユウはいつか自分のマリア様と出会う日を夢見て穏やかな生活を送っていた。サオリという女が来るまでは。奔放なサオリの押しの一手に、聖職者でありながら陥落する父。教会の外に家を借り、密かに3人で暮らし始める。しかしそれも長続きせず、サオリは彼らの元を去り、それ以来父は人が変わってしまい、ユウに毎日神父として懺悔を強要し始める。ユウは懺悔するための罪作りを始める。何をやっても神父として”許す”の一言で終わる懺悔の時間。しかし、そんな父を激怒させたのが”盗撮”だった。変態呼ばわりされて殴られたユウは、これこそ父の愛だと感じ、ますます盗撮にのめり込んでいく。そんな日々の中、ユウは仲間に課せられた罰ゲームで女装をして街で女の子をナンパする羽目になった。その時、チンピラに絡まれていたヨーコに出会う。一目見て、彼女こそ探し求めていた自分のマリア様だと確信。恋に落ちた。ところが、女装していたためヨーコはユウを女だと思いこみ、しかも女であるユウに恋してしまう。そんなユウたちの様子を謎の女・コイケがじっと観察していた・・・

掟破りとも言える上映時間4時間の作品。しかし、始まってしまうとあれよあれよと話が転がり、まさしく怒濤の237分。世間からは変態呼ばわりされている男の子と、男はみんな変態だと思いこんでいる女の子の純愛物語なのですが、そこに怪しげな新興宗教団体が絡んできて、過激で壮絶な戦いに発展していきます。まるで韓流ドラマのようであり、しかし決して韓流ドラマにはありえない展開。監督が友人から聞いた実話がベースというのも驚きです。主演の西島隆弘さんはAAA(トリブル・エー)のメンバー。くしゃっと笑う顔が可愛らしい男の子で、女装がとってもお似合いです。数々のあり得ない盗撮技もかっこよく決めてくれます。コイケ役の安藤サクラさんは、『俺たちに明日はないッス』のとき以上に、エキセントリック。父親役の渡部篤郎さんは、もしかして本当にこんな人?と思わせられるほど、やばさ全開の演技で強烈な印象を残します。(梅)
2008/日本/カラー/237分/ヴィスタ/DTSステレオ/R-15指定
配給:ファントム・フィルム
宣伝:パンドラ
公式 HP >> http://www.ai-muki.com/
監督・主演・脚本:ナディーン・ラバキー
出演:ナディーン・ラバキー、ヤスミーン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼム
ベイルートの街角の小さな美容院。オーナーの女性ラヤールは30歳。恋人から連絡があると、客を放り出していそいそと出かけていく。車のフロントには、いつものように駐車違反を知らせる貼紙。ラヤールに気のある警官ユーセフが彼女に近寄る口実を作りたいのだ。そんなこととは思いもよらず、ユーセフを振り切って恋人の元に急ぐが、家庭のある彼との逢瀬はあわただしい。恋人の誕生日を祝う為にホテルを予約しようとしても、既婚を証明できず、結局場末のホテルしか取れない。綺麗に掃除して、風船をたくさん膨らませ、手作りのケーキを用意して彼を待つが、「妻とは別れられない」のメールが来るのみ。ラヤールはホテルの部屋に、美容院の従業員のニスリンとリマ、そして常連客のジャマルを呼んでおしゃべりをして憂さ晴らしをする。結婚を間近に控えているニスリンが、実は処女でないことを彼に言えないでいると皆に打ち明ける。イスラーム教徒のニスリンは、伝統的に結婚式の翌朝、血の付いたシーツを皆に見せなくてはいけないのだ。「鳩の血がいいらしいわよ」と、一番年長のジャマル。彼女は夫と別居中で、自分の存在価値を試そうと何度もオーディションに挑戦している。一番若いリマもまた、同性にしか心を惹かれない自分に気づいている。それぞれに悩みを抱える4人。
一方、美容院の向かいで仕立て屋を営む65歳のローズは、気の強い義姉リリーに振り廻されている。ある日、スーツの仕立て直しを頼みにやってきたフランス人の老紳士との間にほのかな恋心が芽生える・・・

アラビア語の原題は、『スッカル・バナート』(女の子たちの砂糖)。スッカル・ナバート(氷砂糖)をもじったそうだ。中東では砂糖と水とレモン汁を煮詰めてキャラメル状にしたもので無駄毛を処理する伝統があって、ラヤールの恋人の妻を「脱毛無料サービス」の偽チラシでニスリンたちが美容院に呼び寄せた時、ラヤールは熱いキャラメルで思い切り激しく恋人の妻に脱毛を施します。
不倫、嫉妬、同性愛、介護、老いらくの恋、片思い、あらたな人生への挑戦等々、どこの社会にも普遍的に存在する様々な人間模様をユーモアたっぷりに描いていて、観る人の誰もが、きっとこの中に自分の姿を発見することと思います。
一方で、中東の国レバノンの実情も見え隠れして異国情緒も楽しめます。ニュースでは、宗教対立が強調されがちですが、去る7月のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008で上映されたレバノン映画『戦禍の下で』に出演し助監督も務めたビシャーラ・アッタラ氏にインタビューした折、「レバノンは人口が四千万人しかいないのに、宗教はキリスト教、イスラーム教織り交ぜ17宗派。撮影クルーは10人程でしたが、それぞれ違う宗派で、まさにレバノンの縮図。お互いバリアーもないし、普段宗教を意識することはありません。イスラーム教徒といっても様々。外見ではわかりません」と語っていたのが思い出されます。本作でも、主人公のラヤールはキリスト教徒、ニスリンはイスラーム教徒とわかりますが、あとの人物の宗教的背景は特に描かれていません。聖母祭やイスラーム式の結婚の模様などから、宗教が生活の中に自然に溶け込んでいることが伺えます。
東京国際映画祭に来日予定だったナディーン・ラバキー監督は、ご懐妊のため大事をとって来日中止。いろいろお話を伺ってみたかったのに残念でした。是非いつか子連れで来日を!(咲)
2007年/レバノン、フランス/96分/35mm/ドルビーSRD/アラビア語
配給:セテラ・インターナショナル
公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/caramel/
監督・脚本:ゴンサロ・アリホン
撮影:セザール・シャローン
編集:クラウディオ・ヒューズ
美術:ダニエル・フェルナンデス
音楽:フォロレンシア・ディ・コンチリオ
生還者:ナンド・バラード、ロベルト・カネッサ、エドゥアルド・ストラウチ、アドルフォ・ストラウチ、ダニエル・フェルナンデス、グスタボ・セルビーノ、カルトリス・パエス、アントニオ・ビシンテン、パンチョ・デルガード、ホセ‐ルイ・インシアルテ、ハビエル・メトール、ペドロ・アルゴルタ、ロイ・アルレー、モンチョ・サベージャ、ボビー・フランソワ、アルバーロ・マンヒーノ
1972年10月12日、ウルグアイ空軍の軍用飛行機が45名の人々を乗せて、モンテビデオからサンチアゴに向けて飛び立った。ラグビーチームが親善試合出場のためチャーターし、若者たちの家族や友人も週末を過ごそうと同乗していた。しかしアンデス山脈上空の悪天候によりメンドーサで1泊、天気の回復を待って再び飛び立った。15:30サンチアゴの管制塔に位置と高度を連絡したのち、管制官からの通信にこたえはなく行方を絶ってしまった。大規模な捜索が続けられたが、大雪の山で白い機体を探すのは困難をきわめた。乗員乗客生存の見込みはないものと、10日後捜索は打ち切られる。

実際に起こった悲惨な飛行機事故のドキュメンタリーです。監督はモンテビデオ出身で、事故に遭った生還者たちの友人です。事故の前後のようすを俳優によるモノクロの映像で再現し、当事者たちのインタビューをカラーで多く取り入れて構成しています。事故から72日後に救出された16人の「奇跡の生還者」のニュースをよく覚えています。35年後、生還者と遺族たちが事故現場を訪れて肩を組み、鎮魂の祈りを捧げている姿に心がしんとしました。(白)
30年以上経ったとはいえ、最も大きな決断をしたときのことを話す表情から、今なお彼らの心がずっしりとその重みを感じていることが伝わってきます。そして生き残った人々が自分の子どもや遺族たちと語らう姿を見ると、どんなことがあっても生き抜くことこそが大切なのだと、それこそが亡くなった人たちの供養になるのだと思います。彼らが奇跡の生還を果たしたのは、1972年の12月23日で、”クリスマスの奇跡”と呼ばれたそうです。(梅)
*2008年 東京国際映画祭 特別招待作品
2007/フランス/カラー、モノクロ/113分/ビスタサイズ/ステレオ/スペイン語
配給:熱帯美術館、グアパ・グアポ
2009年春 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.seikansha.jp/
監督:マキノ雅彦
脚本:輿水康弘
原案:小菅正夫「〈旭山動物園〉革命-夢を実現した復活プロジェクト」(角川書店刊)
撮影監督:加藤雄大(J.S.C)
動物撮影:今津秀邦
美術:小澤秀高
音楽:宇崎竜童
出演:西田敏行(滝沢/園長)、中村靖日(吉田強/獣医・飼育係)、前田愛(小川真琴/獣医・飼育係)、堀内敬子(池内早苗)、長門裕之(韮崎飼育係)、六平直政(三谷飼育係)、塩見三省(砥部飼育係)、岸部一徳(柳原飼育係)、柄本明(臼井飼育係・絵本作家)、笹野高史(磯貝商工部長)、梶原善(三田村市議会議員)、平泉成(上杉市長)、萬田久子(平賀市長)
北海道旭川市の旭山動物園に新しい飼育係がやってきた。子供のころから昆虫の好きだった吉田強。人付き合いが苦手な吉田をベテラン飼育係たちが迎え入れた。入園者数が下降線を辿り、修繕費用もなかなか捻出できないこの動物園を存続させようと、滝沢園長は今日も奔走している。客集めのために市が導入したジェットコースターは、そこだけの集客にとどまった。園長たちは動物園の魅力を伝えようと、飼育係による「ワンポイントガイド」や「夜の動物園」など、新しい試みを次々と実行していく。しかし、侵入したキタキツネによるエキノコックス症に動物が感染し、閉園の危機に見舞われる。

マキノ監督は旭山動物園のドキュメンタリーを観て、映画化を思いついたところ2006年のTVドラマで園長を演じることになりました。以来、足しげく旭山に通い、小菅園長を始め飼育係の方々と交流を深めていったそうです。たくさん聞き貯めた昔話がこの作品となって花開きました。外からは見ることができない、内側でのご苦労や喜びなどが詰まっています。危機にあたって奮闘した経緯などもっと詳しく知りたい方は、原作ほか書籍が多く出版されていますので、そちらも。できれば実際に旭川まで足を運んで、旭山動物園の「行動展示」をゆっくり見たいものです。(白)
2009/日本/カラー/112分/ビスタサイズ/SRD/
製作:角川映画 日本映画ファンド NTTドコモ
配給:角川映画
宣伝協力:マジックアワー
配給・宣伝:エスピーオー
©「旭山動物園物語」製作委員会
公式 HP >> http://www.asahiyama-movie.jp
監督:マイケル・アリアス
脚本:大森美香
原案:映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』
撮影:小松高志
照明:蒔苗友一郎
美術:岩城奈美子
音楽:Plaid
主題歌:アンジェラ・アキ「KNOCKIN’ON HEAVEN’S DOOR」
出演:長瀬智也(青山勝人)、福田麻由子(白石春海)、長塚圭史(小久保)、田中さんずい+民(辺見)、大倉孝二(安達)、黄川田将也(岸谷)、和田聰宏(御子柴)、三浦友和(長谷川)ほか
夢見ていたミュージシャンにもなれず、バイトでしのいでいた28歳の勝人。検査に行った病院で「大きな脳腫瘍がある、いつ死んでもおかしくない状態」と告げられ呆然とする。入院してもどうせ後は死ぬだけ、と病室で煙草を吸う始末。勝人から煙草を取り上げたのは先天性の病気で入院中の少女、14歳の春海だった。
余命1ヶ月の晴海は、子どもの頃から病院暮らしで海を見たことがない、という。「余命が短い」のだけが接点の二人は真夜中に厨房へしのびこみ、酒を飲んで盛り上がる。勝人は酔った勢いで車を盗み、エンディングくらい最高に、と春海と一緒に海へ向かって疾走する。その車はある企業の社長のもので、トランクにはとんでもないものが入っていた。
99年のドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を元に、アニメ『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督が手がけた初の実写長編作品。コメディ色の濃かった男性二人の物語を、28歳の男性と14歳の少女に翻案。前作のシロとクロのコンビを彷彿とさせる純なバディ&ロードムービーに作り上げました。ちぐはぐなコンビが車を盗み、行きがかりで強盗を働いてしまい、追われるうちに愛でも恋でもない繋がりができていくのが切ないです。アニメは細部まで作り手の思いのままになりますが、実写で生身の俳優さん相手ではそうはいきません。アリアス監督はそれも楽しまれたようです。
主演の長瀬智也さんは「20代の締めくくりに、今までの集大成となる作品となりました」と舞台挨拶で語っていました。死を達観しているクールな面と、外の世界を知らずに育った無邪気な面の2つを演じ分けた福田麻由子さん、すっかり女優さんの顔になりました。脇を固めるキャストも豪華、アンジェラ・アキさんの歌うテーマソングがいつまでも耳に残ります。余命3日なら何をするか、ちょっと考えてしまいました。(白)
2009/日本/カラー/1時間46分/スコープサイズ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://h-door.jp/
監督:ケニー・オルテガ
脚本:ピーター・バルソチーニ
撮影:ダニエル・アラニョ
振付:ケニー・オルテガ
音楽:デヴィッド・ローレンス
出演:ザック・エフロン(トロイ・ボルトン)、ヴァネッサ・ハジェンス(ガブリエラ・モンテス)、アシュレイ・ティスデイル(シャーペイ・エヴァンス)、コービン・ブルー(チャド・ダンフォース)、ルーカス・グラビール(ライアン・エヴァンス)、モニーク・コールマン(テイラー・マッカーシー)、オリシア・ルーリン(ケルシー・ニールセン)ほか
イースト高校バスケットボールチーム「ワイルドキャッツ」の最上級生は最後の試合に勝った。キャプテンのトロイは、チャドと一緒にアルバカーキ大学への推薦入学が内定しているが、ガールフレンドのガブリエラはスタンフォード大学へ進学。二人は1600kmも離れることになり、将来へ期待が膨らむと同時に不安と寂しさがつのっていた。
恒例のミュージカルのオーディションにクラス全員が参加と決定。その舞台に登場する4人、シャーペイとライアンの双子、ケルシー、トロイはジュリアード音楽院奨学生選考対象だった。やる気十分のシャーペイには転校生キアラがアシスタントにつく。トロイとガブリエラは二人でいる時間をできるだけ楽しく過ごそうとするが、期末試験、卒業パーティが刻々とせまってくる。

アメリカのディズニーチャンネルで大人気だった青春ミュージカルです。進路や恋愛の悩みはありますが、深刻にしすぎずとにかく楽しい歌とダンスがいっぱいの作品です。そんな青春はうそ臭い?いえいえそんな夢のような映画があってもいいじゃないですか。世界中に広まった人気が、こんな明るい作品が見たかったという証拠です。多くのコンサートの制作、振り付けをしてきたオルテガ監督はこの作品に、今まで舞台や映画に登場したミュージカルのあらゆる要素を取り込みました。若い観客たちに古き良きハリウッドやブロードウェイを観せたかったのですって。
東京では12/6にスペシャル前売り券が発売されましたが、2500人が早朝から新宿ピカデリーに列をなし、1000枚が即完売。このうち500枚にはポスター、ポストカードのほか「応募カード」がついていて、応募した中から50人が出演者の登場するイベントに招待されます。主演のザック・エフロンとヴァネッサ・ハジェンス来日が決定しているそうですから、あの素敵なカップルの笑顔が見られるのは楽しみですね。以前のリメイクではなくストーリーが続いているので、ぜひ1,2のDVDを観てから劇場版を映画館でどうぞ!(白)
2008/アメリカ/カラー/112分
配給:ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.hsm-movie.com
監督:横山一洋
脚本:友松直之
原作:立原あゆみ「極道の食卓」(秋田書店「プレイコミック」連載)
主題歌:Ryu「遅刻」(ZAIN RECORDS)
出演:松平健(久慈雷蔵)、中村譲(若頭 吉田)、岩佐真悠子(咲子)、久保翔(良平)、斎藤工(マルハ)、大門正明(牛田)、ダイアモンド★ユカイ(ゼブラ)、秋本奈緒美(妻)ほか
濁組の組長・久慈雷蔵は今までできなかったことをしようと、55歳にして熟年離婚。組員たちには内緒で夜間高校に通い、一食一食を心をこめて食卓へ向かうことを決意する。昼はヤクザ、夜は高校生の雷蔵は、クラスメートの咲子から「クジラ」というあだ名をもらい、夜間部の番長だという良平から目をつけられる。
ライバルの牛田組の組長は、邪魔な雷蔵のシマを横取りしようと画策していた。そんなとき雷蔵の前に子分志願の若者、マルハこと羽丸飛が現れる。
原作は立原あゆみのコミック(未見)。わざわざ離婚しなくても「学・食」はめざせると思うのですが、自由になってイチからと決心したのでしょうか。一人だけ学生服というのもまず「形」から入りたい主人公のこだわりが見えます。松平健氏は料理好きだそうで、この久慈雷蔵が子分たちにうんちくをかたむけながら、手料理を作る場面がはまっています。完熟トマト入りつゆで食べる流しそうめん、掘りたて筍の味噌汁が美味しそうでした。複雑な立場のマルハ(魚肉ソーセージが出てきたので笑った)を演じた斎藤工くんが目力あって良かったです。(白)
2008/日本/カラー/
宣伝・配給:エクセレントフィルムパートナーズ
公式 HP >> http://www.exf.info/kujira/
監督:ダニエル・リー(李仁港)
アクション監督:サモ・ハン(洪金寶)
出演:アンディ・ラウ(劉徳華)、マギー・Q(李美琪)、サモ・ハン(洪金寶)、アンディ・オン(安志杰)、プー・ツンシン(濮存[日斤])、ヴァネス・ウー(呉建豪)、ティ・ロン(狄龍)、ダミアン・ラウ(劉松仁)
戦乱の世が続く中、貧しい家に生まれた趙雲(アンディ・ラウ)は祖国の統一を願って、劉備の軍に志願した。そこで出会ったのは、同郷の先輩である平安(サモ・ハン)。二人は厳しい戦いの中で絆を深めていく。劉備の軍師となった諸葛亮(プー・ツンシン)の助言により曹操(ダミアン・ラウ)の陣に奇襲をかけたとき、趙雲は平安の命を救い、敵の大将を討ち取る手柄を挙げるが、すべてを平安に譲った。その結果、平安は劉備の家族を警護する大役を任されることになる。ところが、曹操率いる大軍に攻め込まれ、劉備軍が逃亡する中で、平安は劉備の夫人たちと一人息子の阿斗を見失うという失態を演じる。趙雲は激怒する関羽(ティ・ロン)や張飛(チェン・ツィホイ)を押さえ、劉備に救出を誓い、一人敵軍の地へと飛び出していく。奇跡的に無事だった阿斗を見つけた趙雲は、萬余の敵をなぎ倒し、曹操の剣まで奪って帰還するという超人ぶりを発揮する。その鬼神のごとき戦いぶりは、曹操の孫・曹嬰(マギー・Q)の記憶に焼き付いた。それ以来、趙雲は劉備の厚い信頼を得て出世していく。平安をそんな趙雲を見守るだけだった。

三国志に登場する武将の中でもひときわ人気の高い趙雲子龍。その生涯を架空の人物である平安の目を通して描いた『三国志ー趙雲伝』といった内容です。このサモ・ハン演じる平安の人間くささが、完全無欠のヒーロー趙雲といい対比になっています。もう1人の架空の人物がマギー・Q演じる曹嬰。女性ながら曹操の才能と気質をよく受け継いでいる将軍という、ちょっと突飛な設定ですが、これがなかなかはまっていて、かっこいいんです。晩年の趙雲の配下で勇猛果敢に戦う武将・[登卩]芝役のアンディ・オン(ドレッド・ヘア!)がまたかっこいいですよぉ。とはいえ、これはまぎれもなくアンディ・ラウの映画。久々にアンディによる男の滅びの美学を観たって気がします。『レッドクリフ PartII』の公開前に、また違った角度から描かれた三国志を観るのも面白いと思いますよ(梅)
2008/中国/カラー/102分/シネマスコープ/Dolby Digital
提供・配給・宣伝:プレシディオ
公式 HP >> http://www.sangokushi-movie.jp/
監督・共同脚本・プロデューサー:エラン・リクリス
共同脚本:スハ・アラフ(パレスチナ系イスラエル人女性)
出演:ヒアム・アッバス、マクラム・J・フーリ、クララ・フーリ
イスラエル占領下のゴラン高原マジュダルシャムス村。今日は3時に軍事境界線で結婚式が行われることになっている。村の娘モナが、シリアに住む親戚の人気俳優タレルに嫁ぐのだ。警察では、親シリア派で投獄されたこともある花嫁の父親を結婚式に行かせるなとやっきになっている。モナは姉のアマルと美容院に向うが、晴れやかな日のはずなのに二人とも悲しげなのは、軍事境界線を越えて嫁ぐとシリア国籍が確定し、イスラエル領の家族のところに戻れなくなるからなのだ。
約束の時間になりモナ一家が境界線に到着し、中立地帯を挟んだ柵の向うのシリア側にも花婿一行が遅れて現れる。モナの通行証にイスラエルの出国印が押され、国際赤十字のスタッフの女性がモナの通行証を持ってシリア側に手続きに行く。ところが、シリアの担当官は、イスラエルの出国印が押されていることを理由に許可できないという。ゴラン高原はシリア領なのだから、花嫁はシリア国内を移動するだけという次第だ。5ヶ月も待った許可の日に式を挙げられないなんてと嘆くモナ・・・
1967年の第三次中東戦争でシリア領のゴラン高原はイスラエルに占領され、さらに1981年、一方的にイスラエルに併合された。住民は望めばイスラエル国籍・市民権を取得できるが、シリアへの帰属意識が強く、ほとんどが無国籍者となっている。本作で描かれているモナの一家は、ドゥルーズ派というイスラームの少数派。ドゥルーズ派はシリア南部、レバノン山脈、ゴラン高原北部、イスラエル北部に多く住む人たちで、彼らの居住区を分断する形で国境線が存在している。レバノン映画『ラミアの白い凧』(ランダ・シャハール・サッバーグ監督)では、イスラエルとレバノンの国境地帯で暮らすドゥルーズ派の国境を越えての結婚が描かれている。ちなみに、「シリアの花嫁」で検索したら、軍事境界線を越えて嫁ぐ本物の花嫁の写真が出てきた。家族と涙ながらに別れを惜しむ姿も映画とそっくり同じ。境界線をはさんで拡声器を使って肉親どうしが会話している姿も、映画やニュースでよく見る日常で繰り返されている光景だ。
映画の中で、ちょっと救われた気持ちになったのは、境界線を警備するイスラエル兵が、「申し訳ない」「おめでとう」など、精一杯のアラビア語を使った場面。字幕ではそれがアラビア語だとわからないのが残念。
また、本作では父権の強い社会の中で女性が自立しようとする姿も描いている。姉のアマルは屋根の修理に来た男と成り行きで結婚したのだが、最近は些細なことで喧嘩が絶えない。人生をやりなおそうとアマルは大学進学を決意したが、それも反対されている。アマルは、父親が結婚式に出られるよう警察に談判しにいくなど勇敢な女性。大学に行く夢はきっと叶うと信じたい。なんといってもアマルは「希望」という意味なのだから。そして、分断されたドゥルーズ派の人たちが自由に行き来できる日のくることも切に願いたい。(咲)
モントリオール世界映画祭グランプリ、観客賞、国際批評家連盟賞、エキュメニカル賞の4冠受賞!
2004年/イスラエル=フランス=ドイツ/アラビア語・ヘブライ語・英語・ロシア語・フランス語/35mm/カラー/Dolby SRD/シネマスコープ/97分
後援:イスラエル大使館
文部科学省特別選定(成人向)文部科学省選定(青年向、家庭向)
配給:シグロ、ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/hanayome/