女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
過去の映画作品紹介(2012年)
2012年12月21日, 22日~
2012年12月15日~
2012年12月8日~
2012年12月1日~
2012年11月23日, 24日~
2012年11月17日~
2012年11月13日~
2012年11月9日, 10日~
2012年11月2日, 3日~
2012年10月27日~
2012年10月20日, 21日~
2012年10月12日, 13日~
2012年10月6日~
2012年9月28日, 29日~
2012年9月22日~
2012年9月18日~
2012年9月14日, 15日, 16日~
2012年9月7日, 8日~
2012年9月1日~
2012年8月25日~
2012年8月17日, 18日~
2012年8月15日~19日
2012年8月11日~
2012年8月4日~
2012年8月1日~
2012年7月28日~
2012年7月21日~
2012年7月13日, 14日~
2012年7月6日, 7日, 8日〜
2012年6月30日, 7月1日〜
2012年6月21日, 22日, 23日〜
2012年6月16日〜
2012年6月8日, 9日〜
2012年6月1日, 2日〜
2012年5月25日, 26日, 27日〜
2012年5月18日, 19日〜
2012年5月11日, 12日〜
2012年5月5日〜
2012年4月28日〜
2012年4月20日, 21日〜
2012年4月14日〜
2012年4月11日〜
2012年4月7日〜
2012年3月31日〜
2012年3月24日〜
2012年3月16日, 17日〜
2012年3月9日, 10日〜
2012年3月1日, 2日, 3日〜
2012年2月25日〜
2012年2月17日, 18日〜
2012年2月11日〜
2012年2月3日, 4日〜
2012年1月27日, 28日〜
2012年1月21日〜
2012年1月13日, 14日〜
2012年1月7日〜
2012年1月4日〜
2012年1月1日〜

愛について、ある土曜日の面会室(原題:Qu'un seul tienne et les autres suivrontDAVANDEH)

監督・脚本:レア・フェネール
出演:ファリダ・ラウアッジ(『ジョルダーニ家の人々』)、レダ・カテブ(『預言者』)、ポーリン・エチエンヌ、マルク・ロティエ(『親指の標本』)、デルフィーヌ・シュイヨー(『ポーラX』)、ディナーラ・ドルカーロワ(『動くな、死ね、甦れ!』)

フランス・マルセイユ。未成年で一人では恋人に面会できない少女、息子を殺した犯人を訪ねるアルジェリアからやってきた母親、自分と瓜二つの受刑者と入れ替わってほしいと依頼された青年。それぞれの思いを抱えた者たちが、面会日を迎える・・・

本作の原点は、レア・フェネール監督が刑務所の脇で見かけた泣き叫ぶ女性の姿。塀の向こうにいる愛する人を思う人々に眼差しを向けた作品。それぞれの事情で刑務所に収監されている人たち。そして、その家族や恋人や関係者たち。一人一人に人生があり、物語がある。3組の受刑者とその家族や恋人たちが、どこかで接点があるのかは、観てご確認を。
2012年6月、フランス映画祭で上映された折に来日した監督は、息子が出来て1年半の新米ママ。子育てに無我夢中で映画作りを忘れた日々でしたが、次作の脚本を書き始めたとのこと。子供が出来る前とは明らかに感情が変わり、子供が登場する作品を家族を巻き込んで作る予定と語っていたのが印象的でした。(咲)


レア・フェネール監督(一番右)

2009年/フランス/35ミリ/1:1.85/ドルビーSRD/120分
配給・宣伝:ビターズ・エンド

★2012年12月15日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/ainituite/

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映画 妖怪人間ベム

監督:狩山俊輔
脚本:西田政史
特殊撮影:岡野正広
美術:内田哲也
特殊メイク:梅沢壮一
出演:亀梨和也(ベム)、杏(ベラ)、鈴木福(ベロ)、観月ありさ(さゆり)、柄本明(名前のない男)

暗くて音のない世界で、一つの細胞から生まれた三つの生き物。それが人間になれなかった「妖怪人間」ベム、ベラ、ベロだ。
醜い身体に正義の心を持つ三人は、「名前のない男」との最後の戦いで、人間になるより「人間を守って生きて行く」という道を選んだ。そして友人の夏目刑事たちの目の前からも姿を消してしまった・・・。
それから、3人が行く先々で怪事件が連続して発生する。 被害者は全て大手製薬会の社員。事件現場には巨大な爪跡が残されていた。犯人の正体と目的は何か。
事件の謎を追うベムの前に、「名前のない男」が再び姿を現す。

そういえば昔テレビアニメでやっていたなと思い出した。 キャラクターは不気味だったことしか頭にないが、思い出すぐらいだから当時は相当人気があったのだろう。

映画中でも顔や皮膚や姿が醜くおぞましいので,みんなに蔑まれ、悪者扱いにされる。 人間の醜さや傲慢さが妖怪の目線から見ているので、現在の社会や生活に置き換えても、通じる内容になっている。

内容は単純だが、お子様向けだけではなく、大人にも昔懐かしく作られている。 試写じゃなかったら観ない作品だけど、丁寧に作っていて好感が持てた。

「名前の無い男」の柄本明 「ナイスバディ」の観月ありさなど特殊メイクで楽しませてくれた。ベラ役の杏さんが一番メイク張りがよかった。

(美)

2012年/日本/カラー/124分
配給:東宝

★12月15日より東宝系映画館にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.bem-movie.jp/index.html

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レ・ミゼラブル(原題:Les Miserables)

監督:トム・フーパー
脚本:ウィリアム・ニコルソン
撮影:ダニー・コーエン
美術:イヴ・スチュワート
衣装:パコ・デルガド
出演:ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン)、ラッセル・クロウ(ジャベール)、アン・ハサウェイ(フォンティーヌ)、アマンダ・セイフライド(コゼット)、エディ・レッドメイン(マリウス)、ヘレナ・ボナム=カーター(マダム・テナルディエ)、サシャ・バロン・コーエン(テナルディエ)、サマンサ・バークス(エポニーヌ)、アーロン・トヴェイト(アンジェルラス)

19世紀のフランス。パンを一つ盗んだ罪で19年間も投獄され過酷な労働をさせられていたジャン・バルジャンは、月に1回警察に出頭する約束のもとに仮釈放された。
だが、すぐに生活に行き詰まり教会で盗みをする。それを警察に見つかってしまうが、「それは差し上げたものですよ」と、その罪を赦してくれた司教の慈悲に触れ、「生まれ変わろう」と決意した。
マドレーヌと名前を変え、工場主として成功して市長にもなった彼だが、警官のジャベールは仮釈放のままの彼を執拗に追いかけてくるのだった。

はっきり言ってミュージカルものは嫌い。
「ほとんど声が後付けだから気にくわない」と言うと「これは違うんです。是非観てください」と配給の方に言われた。
圧巻だった!いちゃもんがつけられないから悔しい!みんな歌がうまい!いい声している!ニッポンの映画俳優さんで芝居も歌も◎の方、何人いらっしゃるだろうか・・・。

警官のジャベールのラッセル・クロウが安定した発声。
サマンサ・バークス(エポニーヌ役/表現力ある歌い手)とアーロン・トヴェイト(アンジェルラス役/言葉に力が漲る歌い手)がうまい。
(美)

2012年/イギリス/カラー/158分
配給:東宝東和

★12月21日よりTOHOシネマズ 日劇他、全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.lesmiserables-movie.jp/

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ブラッド・ウェポン(原題:逆戦 The Viral Factor)

監督 ダンテ・ラム(林超賢)
出演 ニコラス・ツェー(マン・ヨウ)、ジェイ・チョウ(ジョン)、リン・ポン(レイチェル)、 バイ・ビン(アイス)、アンディ・オン(ショーン)、リウ・カイチー(マン・テン)、エレイン・ジン(ホン・レイ)、クリスタル・リー(マン・セン)

『ティラミス』『ビースト・ストーカー/証人』『密告・者』『コンシェンス/裏切りの炎』などのダンテ・ラム監督の最新作は、ヨルダンやマレイシアを舞台にした、驚天動地のクライム アクション。次から次へと、銃撃戦や戦闘・爆発シーン、炎上シーンが登場。
ウィルス・テロを企む巨大犯罪組織を追う国際警察のジョン。組織が天然痘ウィルス強奪と科学者誘拐実行犯として選んだのは、幼い頃生き別れた実の兄ヨウだった。貧しさから犯罪者の道を歩む兄、テロ組織との闘いで頭に銃弾を受け、2週間の命と宣告された弟。生き別れた兄弟は敵同士として再会した。銃を向け合う弟と兄。追跡と逃亡、攻防戦の中でわかった国際警察の不正、テロ組織の裏切り。本当に戦うべき相手は誰なのか?兄弟同士の闘いをやめ、二人は真の敵に立ち向かってゆく。

ヨルダン政府軍全面協力による戦車、戦闘機、バズーカ砲など、大量の実戦兵器が登場し、本当の戦闘のような迫力。マレイシア クアラルンプール市の協力による一般道でのバスの爆破シーンなど、仰天のシーンが続く。ペトロナスツインタワーの間を飛び交う軍用ヘリの空中戦は圧巻。
兄ヨウを演じるのはニコラス・ツェー、弟ジョンを演じるのはジェイ・チョウ。まわりをベテラン俳優で固め、アクションも切れのよい俳優が出演している。


ニコラス・ツェとジェイ・チョウ


ニコラス・ツェ                ジェイ・チョウ


アンディ・オン                       

©2012 Emperor Motion Picture Limited All Rights Reserved

息も尽かさぬ銃撃、戦闘、爆破、炎上のシーンが続き、ほんとにハンパないアクションの連続で、観終わった後、とても疲れました(笑)。ダンテ・ラム監督の作品はどんどんヒートアップしています。
香港での映画撮影は規制が厳しくて、ヨルダンやマレイシアで撮影したそうです。ヨルダンでのシーンは軍の協力ということで、見たこともないような兵器がたくさん出てきて度肝を抜かれます。またマレイシアの撮影で印象的だったのはペトロナスツインタワーでした。まるで未来都市のような光景の中でヘリコプターでの追撃シーンは迫力がありました。また、イスラム建築風の最高裁判所の建物がやっぱり出てきました。クアラルンプールといえばここですね。『ポリス・ストーリー3』でも、この裁判所が出てきましたし、他の作品でも見かけたことがあります。
1990年に初めて行った海外旅行で、初めて下りた外国がクアラルンプールでした。クアラルンプールのあちこちを歩きましたが、中でもあの裁判所の建物が印象に残っています。
今回、その裁判所でのシーンが結構出てきたけど、ほんとにあの裁判所は絵になります。

主演のニコラス・ツェとジャイ・チョウは、しっかりとアクションしていましたが、それだけでなく兄弟愛溢れる物語に仕上がっていました。ほかにも家族の物語がしっかり描かれ、単なるアクションものではない作品だったと思います。リウ・カイチーが二人の父親役でしたが、今回はつるつる頭で出ていました。また母親はエレイン・ジンが演じています。
物語りを膨らませるものとして「夢」に見た光景も、うまく伏線として使っているなと思いました。
この作品で、ジョンの同僚だったショーンが気になったのですが、見覚えあるのに最後まで誰だかわからず。終わってからパンフを見てアンディ・オンだとわかりました。シネマジャーナル65号の「気になるあの人」で紹介したこともあったのに、我ながらなんてこったでした(笑)。でもさすがのアクションでした。『香港国際警察』の最後で、ジャッキー・チェンと互角に長時間戦っていたのが印象的でしたが、主役級になるにはちょっとオーラがないなと思っていました。でもこの作品ではかなりオーラが出ていました。彼のこれからの活躍も楽しみです。
(暁)

2012年 香港
配給 角川映画  上映時間 123分

★12月22日(土)より角川シネマ新宿にてロードショー

公式 HP >> http://bloodweapon.jp/

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はちみつ色のユン(原題:Couleur de peau : Miel)

監督・脚本:ユン ローラン・ボアロー
原作:「Couleur de peau : Miel」(「肌の色:はちみつ色」)ユン著(クアドランツ/ソレイユ刊)
美術監督:ジャン=ジャック・ロニ
編集:エンワン・リケール
音楽:ジークフリード・カント 主題歌 : リトルコメット「Roots」
ストーリーボード:エリック・ブリッシュ、アレクシ・マドリッド
キャラクターデザイン:エリック・ブリッシュ
音響:カンタン・コレット、マチュー・ミショー
製作:モザイク・フィルム(フランス)
   アルテミス・プロダクシオン(ベルギー)
   フランス3シネマ(フランス)
   パンダメディア(韓国)
   ナダスディ・フィルム (スイス)
日本版編集 : 山本達也

韓国では、朝鮮戦争後の大量の孤児や、ベトナム戦争後の韓国人女性と米兵との混血児たちなど、孤児院や施設に預けられた子供たちが多く、1960年代から1970年代にかけて約20万人の子どもが養子として外国に渡った。
この作品は、国際養子として韓国からベルギーの一家に迎えられた少年の半生を、ユン監督自身が書いたアニメと、本人自身が出演する実写シーンを合わせた「アニメーション+ドキュメンタリー」で描いた作品。
すでに4人の兄弟姉妹がいるベルギーの家族に温かく迎え入れられたユンは、初めておなかいっぱい食事をし、おもちゃで遊ぶ。血のつながりのない家族の中で、他の兄弟姉妹たちと分け隔てなく育ててくれる両親。フランス語を覚え、韓国語を忘れていった。
いたずらっ子でガキ大将のようなユン。悪さをして学校から呼び出しをくらうことも多い少年時代を過ごす。
しかし、思春期になるにつれ、ベルギー人でもなく、韓国人でもない自分は何者なんだと、自身のアイデンティティについて悩みだす。そんなユンの成長過程を描いている。
そんな満たされない孤独感の中で、絵に目覚め、才能を開花させ、日本文化にも傾倒した作品も多く描いていく。
40年ぶりに韓国を訪ねるユン。見かける中年婦人たちに母の面影を重ねる。しかし、どこに行っても旅人の気分だった。そして、二つの国のアイデンティティを持って生きていくことにたどりつく。
「僕の一部は西洋人、一部は東洋人。僕はヨーロッパ人だし、アジア人。白人でも黒人でもない。僕の肌の色ははちみつ色」
主人公ユンのたどった軌跡や感情の変遷が描かれる。


左:韓国でのユン監督、中:ユン監督の子供のころ、右:ローラン・ボアロー共同監督


『はちみつ色のユン』ユンとベルギーの家族たち


孤独感を感じ始める               描くことに目覚める

(c)Mosaique films - Artemis Productions - Panda Media - Nadasdy Films - France 3 cinema - 2012

韓国から国際養子縁組でベルギーに行った人の物語で、とても興味深い作品でした。
『冬の小鳥』でも描かれたテーマですが、韓国から20万人もの子供が国際養子として海外に渡っていたとは知りませんでした。
日本でも、中国にたくさんの残留孤児が残りましたし、戦後、米兵との混血児がたくさん生まれ、混血児を預かったエリザベス・サンダース・ホームを巣立った子供が2000人くらいいるそうです。やはり戦争が孤児を生み出すという構図は、どこの国でも共通なんだと思いました。そういえば、今井正監督の『キクとイサム』のイサムもアメリカに養子に出されました。
それにしても、裕福な家でもなく、4人も実子がいるのに養子を受け入れ、さらにもう一人、韓国から養子を受け入れたユンの育ての親というのはすごいと思いました。

ユンはベルギーではアジア人と言われ、韓国に行くと旅人でしかないと思い、自分は何者なんだろうと悩みますが、二つの祖国を持った人のアイデンティティということもテーマでした。
現在公開中の『二つの祖国で 日系陸軍情報部』でも、米国の日系人がそのことで悩んでいましたし、在日コリアンも、日系ブラジル人も、そのことで悩んでいるという姿は、いくつもの映画で描かれてきました。しかし、二つの祖国を持つということは、多面的に考えられるという利点もあります。そういう視点を持った作品もいくつもあります。今後は、そういう作品も増えていくのではないでしょうか。
はちみつ色というのは、ユンが国際養子として登録された書類に書かれた肌の色のこと。アジアの人たちは黄色人種と言われているけど、はちみつ色という響きがすてきだなと思いました。(暁)

第36回アヌシー国際アニメーションフェスティバル 観客賞&ユニセフ賞 W受賞

2012年/フランス・ベルギー・韓国・スイス/75分/HD/16:9/ドキュメンタリー×アニメーション/
配給 : トリウッド、オフィスH
後援 : フランス大使館 ベルギー大使館 駐日欧州連合代表部

★12月22日より ポレポレ東中野、下北沢トリウッドにて公開

公式 HP >> http://hachimitsu-jung.com/

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大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]

監督:金子文紀
脚本:神山由美子
原作:よしながふみ「大奥」白泉社刊 プロデューサー:荒木美恵子、磯山晶
音楽:村松崇継
出演:堺雅人(右衛門佐)、菅野美穂(徳川綱吉)、尾野真千子(柳沢吉保)、柄本佑(秋本)、要潤(伝兵衛)、桐山漣(大典侍)、竜星涼(新典侍)、満島真之介(佐之助)、郭智博(中村)、永江祐貴(斉藤)、三浦貴大(浅沼)、市毛良枝(牧野備後守)、榎木孝明(阿久里)、由紀さおり(水無瀬)、堺正章(隆光)、宮藤官九郎(御台所・信平)、西田敏行(桂昌院)

男子だけがかかる疫病によって多数の死者が出、男女の役割が逆転してしまった江戸時代。治世は安定しているものの、五代将軍綱吉は跡継ぎに恵まれなかった。京から側室候補としてのぼってきた貧しい公家出身の右衛門佐(うえもんのすけ)は、美貌と才覚でたちまち大奥での地位を築き上げる。綱吉の一人娘松姫が急死したことから、正室と側室の権力争いはますます熾烈なものとなる。綱吉は政治から遠ざけられ、子作りに専念せねばならなかった。

劇場版大奥の第2弾。テレビドラマ版の大奥誕生編では有功を演じた堺雅人さんが野心を秘めた右衛門佐。後の世まで犬公方として知られる綱吉を菅野美穂さん。男女逆転の設定はそれだけでコメディっぽくなりそうですが、後継者作りを強いられる将軍が女性だと、男性の場合より悲哀が倍増します。最後にスキップするように廊下を走っていく姿に女心を感じてぐっときました。
時代物では鬘のせいでずいぶんと印象が変わり、柳沢吉保役の尾野真千子さんが誰かしばらくわかりませんでした。なかなか貫禄があります。桂昌院の西田敏行さんがめったにないこと(役得ですね)と舞台挨拶でコメントした濡れ場もあり。(白)

2012年/日本/カラー/124分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:松竹/アスミック・エース
©2012 男女逆転『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』製作委員会

★12月22日(土)丸の内ピカデリー他全国ロードショー

公式 HP >> http:// ohoku.jp/

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シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~(原題:COMME UN CHEF)

監督:ダニエル・コーエン
脚本:ダニエル・コーエン、オリヴィエ・ダザ
撮影:ロベール・フレース
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:ジャン・レノ(アレクサンドル・ラガルド)、ミカエル・ユーン(ジャッキー・ボノ)、ラファエル・アゴゲ(ベアトリス)、ジュリアン・ボワッスリエ(スタニスラス・マテール)、サロメ・ステヴナン(アマンディーヌ)

パリの高級レストラン「ガルゴ・ラガルド」の看板シェフのアレクサンドル。今年もミシュランの三ツ星を守るために、新しいメニューを生み出さねばならない。しかしスランプに陥った彼にはなんの閃きも湧いてこなかった。前オーナーの住む老人ホームを訪ねて、絶品の料理に出会う。生活のためペンキ職人として働いていたジャッキーが、ホームの厨房でアレクサンドルのレシピを真似て作ったものだった。ジャッキーは一流シェフのレシピを再現できる舌と腕を持ちながら、頑固な性格が災いして、どこのレストランでも長続きできなかったのだ。アレクサンドルはジャッキーを助手に抜擢する。

家庭を顧みず料理に打ちこみ、三ツ星シェフとして君臨するも娘からの信用を失墜しているアレクサンドル。自分を過信するあまり人と相容れず、婚約者に愛想尽かしをされるジャッキー。問題を抱えたベテランと新人、二人のシェフが三ツ星死守のため、チームと共に新しいメニューを開発していきます。活気のある厨房から次々と送り出される美味しそうな料理に「食べた~い」とお腹の虫が鳴きそうです。料理を作る楽しさ、食べる楽しさいっぱいの作品。
アレクサンドルの自宅にディスプレイされている和服が気になっていましたが、大変重要なシーンで使用されます。お楽しみに。(白)

2012年/フランス/カラー/84分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
© 2012 GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - A CONTRACORRIENTE FILMS

★12月22日(土)銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://chef.gaga.ne.jp/

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サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ(原題:SIDE BY SIDE)

監督:クリス・ケニーリー
製作:キアヌ・リーヴス、ジャスティン・スラザ
撮影:クリス・キャシディ
出演:マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・リンチ、クリストファー・ノーラン、ダニー・ボイルほか多数

100年余りの映画の歴史の中でフィルムの時代が長く続いていたが、ここ20数年デジタル機器が発達し、現在フィルムとデジタルシネマが肩を並べている。フィルムは消えていくのだろうか?俳優として表舞台に立ち、内側から映画の変遷を見つめてきたキアヌ・リーヴスが製作にあたり、自らハリウッドの錚々たる監督、カメラマン、編集者、カラリストらへインタビューしていく。


© 2012 Company Films LLC all rights reserved.

ちょうど過渡期にさしかかった現在よいタイミングでできたドキュメンタリーです。キアヌ・リーヴスの率直な疑問は観客の聞きたいことであり、その返答もあくまでもフィルムにこだわる人、デジタルカメラのおかげで映画が作れるようになったと喜ぶ人、さまざまです。過去を手繰り寄せ、現在と未来を考えるうえで貴重な声のつまった作品となりました。映画の好きな方は必見です。それにしてもキアヌは髭剃ってほしかった。(白)

2012年/アメリカ/カラー/99分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アップリンク

★12月22日(土)より、新宿武蔵野館、渋谷アップリンクほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/sidebyside/

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もうひとりのシェイクスピア(原題:ANONYMOUS)

監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ジョン・オーロフ
撮影:アンナ・J・フォースター
衣装デザイン:リジー・クリストル
出演:リス・エヴァンス(オックスフォード伯エドワード・ド・ビア)、ヴァネッサ・レッドグレーヴ(エリザベス1世)、ジョエリー・リチャードソン(若き日のエリザベス1世)、デヴィッド・シューリス(ウィリアム・セシル)、エドワード・ホッグ(ロバート・セシル)、ジェイミー・キャンベル・バウアー(若き日のオックスフォード伯エドワード・ド・ビア)、デレク・ジャコビ(語り)

16世紀末、エリザベス1世統治下のイギリス。宰相のセシルは王位継承者にスコットランド王をすえ、自分の権力をさらにゆるぎないものにしようと目論んでいた。そのころ芝居に民衆が熱狂する様に恐れを感じ、息子のロバートとともに芝居に関わるものを弾圧し始めていた。一方、オックスフォード伯エドワードは、義父にあたるセシルと後継者問題で対立、秘かに書き続けている戯曲で民衆に訴えることを考えていた。入獄させられていた劇作家ベン・ジョンソンを助け出し、自分にかわって戯曲を発表し公演するよう取引をする。

シェイクスピア別人説を大胆に脚色した作品。シェイクスピアについては、フランシス・ベーコン、フィリップ・マーロウ、複数の共作などいろいろ説がある中で、この作品では第17代オックスフォード伯エドワードがシェイクスピアであるとしています。このエドワードとエリザベス1世とのかかわりを初めとする宮中での権力争い、身分をかくして執筆していた理由などみっちりと作品につめこまれています。宮殿内部の美術や衣裳、演じる俳優の魅力も全開。劇中劇でいくつもの名作が上演され、観客が舞台とひとつになって熱狂するようすには、まるで現代のロックコンサートのようであっけにとられました。この熱狂ぶりに扇動手段として使える、と思う人、そう危惧して弾圧する人の双方の攻防も描かれ、ラストへとなだれ込みます。
主演のリス・エヴァンスは、ハリー・ポッターシリーズでルーナのパパ役。若き日のエドワードを演じるジェイミー・キャンベル・バウアーも闇の魔法使いとして出演していました。二人ともクラッシックなハンサムぶりが貴族の衣裳に負けず、よくお似合いです。ルーピン先生もいたことに気づいたのは解説を見てからでした。(白)

2012年/イギリス、ドイツ/カラー/129分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファントム・フィルム
©2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC All Rights Reserved

★12月22日(土)より、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館他全国ロードショー

公式 HP >> http://shakespeare-movie.com/

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拝啓、愛しています(英題:LATE BLOSSOM)

監督:チュ・チャンミン
脚本:チュ・チャンミン、イ・マニ、キム・サンス、キム・ヨンドク
撮影:チェ・ユンマン
音楽:カン・ミングク
出演:イ・スンジェ(キム・マンソク)、ユン・ソジョン(ソン・イップン)、キム・スミ(グンボンの妻)、ソン・ジェホ(グンボン)、ソン・ジヒョ(ヨナ)、オ・ダルス(ダルス)

マンソクは妻に先立たれ、小遣い稼ぎに毎朝牛乳配達をしている。坂道でリヤカーを引いていた女性が転び、手助けをしたことが縁で、彼女のことが気にかかってくる。駐車場の管理人のグンボンは認知症の妻を介護しているが、ある日姿が見えなくなってしまった。マンソクがたまたま見つけたことで、グンボンと一緒にいたリヤカーの女性ソンに再会する。グンボンやソンと親しく言葉を交わすようになって、マンソクは今までにない充実した日々を送る。ソンに名前がないのを知ったマンソクは、孫のヨナがいる役所に申請にいった際「イップン」と強引に名づけてしまう。

原作は韓国の人気漫画家、カン・プルのベストセラーコミックス。舞台劇にもなってヒットしたそうです。
怒りっぽくて、言葉も荒いマンソクが妻を亡くして後悔に沈むようす、グンボンが妻の介護に追われ、イップンが生活に苦労するようすは、同年代としては他人事ではありません。老いること、死ぬことは避けられませんが、それでも人と関わること、互いに思いやることで人生は豊かになるよ、と控えめに語っています。4人のベテラン俳優の好演に、若い俳優たちがエールを送っているような、哀しいけれど暖かい作品。(白)

貧しい一人暮らしの可愛い老女を演じるユン・ソジョンさんは、今見ているドラマ「全部あげるよ」では、金持ちの口うるさいお祖母さん。その老女に恋する頑固者の爺さんを演じるのは、「イ・サン」の英祖役などで威厳ある姿のイ・スンジェさん。ドラマ「母さんに角が生えた」では、やはり老いらくの恋に走る爺さん役でした。もう一組、認知症の妻を甲斐甲斐しく介護する夫を演じるソン・ジェホさんは、「愛を信じます」でも心優しいお父さん役。認知症の妻を演じるキム・スミさんは、今年のアジアフォーカスで上映された『家門の栄光4:家門の受難』でのヤクザの女親分がまさにはまり役だけど、こんな役もできるとは! テレビや映画でお馴染みの役者さんたちの、さすがな演技と、坂道の多いソウルの町の情緒を楽しめる作品でした。(咲)

2011年/韓国/カラー/118分/シネマスコープ/ドルビーSRD
配給:アルシネテラン
©Next Entertainment World All rights reserved

★12月22日(土)より、シネスイッチ銀座、シネマート新宿ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/haikei/

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駆ける少年(原題:DAVANDEH 英題:THE RUNNER)

監督・脚本:アミール・ナデリ
出演:マジッド・ニルマンド、ムサ・トルキザデエ、アッバス・ナゼリ

1970年代初め、イラク国境に近いペルシャ湾岸の町アバダン。親を亡くし廃船で暮らす11歳の少年アミールは、外国航路の船員相手に水を売ったり靴磨きをして日々の糧を稼いでいる。ある日、友達から海に捨てられた瓶を拾い集めればお金になると聞いたアミールは、少し大きな少年たちに交じって瓶を拾う。意地悪されてしまうが、負けちゃいない。駆けっこ競争で一番になっても走り続ける。自分の力を試したかったのだ。ある日、アミールは読み書きができないことに気付いて愕然となる。必死になって文字を覚えるアミール・・・

飛び立つジャンボジェットと競争して、一生懸命自転車を漕ぎながらアルファベットを叫ぶアミールの姿が眩しい。汽車、外国航路の船、そしてジャンボジェット・・・ 大きくはばたきたいと夢をいだいていたアミール少年は、その後、映画監督となってアメリカへ、そして現在、日本に軟着陸中。インタビューの折にナデリ監督に、「ご自身の原点ともいえる『駆ける少年』を日本で公開したいと思ったのは?」と伺ったら、「この映画が今、自分を日本で見せてと言ってくれたのです。走って走って26年。運命的に日本に来たのです」との答えが返ってきました。何があっても負けないアミール少年は、『CUT』で西島秀俊が演じた映画監督の秀二になったという次第。どんなことがあっても這い上がる力をこの映画から得てくれれば嬉しいと語るナデリ監督でした。インタビューの模様は特別記事で後日お届けします。(咲)

1985年/イラン/35mm/91分
製作:児童青少年知育協会(『友だちのうちはどこ?』)
配給:『駆ける少年』上映委員会

★2012年12月22日(土)より、オーディトリウム渋谷にて全国順次ロードショー

公式 HP >> http://runner-movie.net/

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フランケンウィニー(原題:Frankenweenie)

監督:ティム・バートン
製作総指揮:ドン・ハーン
製作:ティム・バートン/アリソン・アベッテ
脚本:ジョン・オーガスト
撮影監督:ピーター・ソーグ
音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ウィノナ・ライダー(エルザ・ヴァン・ヘルシング)
     マーティン・ショート(トシアキ/ブルゲマイスター町長/ボブ)
     キャサリン・オハラ(スーザン・フランケンシュタイン/体育の先生/フシギちゃん)
     マーティン・ランドー(ジクルスキ先生)
     チャーリー・ターハン(ヴィクター・フランケンシュタイン)
     アッティカス・シェイファー(エドガー)

小さな街ニュー・オランダに住んでいる少年ヴィクターは科学が大好き。いつも一緒の愛犬スパーキーは最高の相棒だったが、不幸な事故がスパーキーの命を奪ってしまった。スパーキーの死を受け入れられないヴィクターは、科学の授業で習った“電気の実験”を内緒で試してみる。実験は成功して、つぎはぎだらけのフラン犬(ケン)としてスパーキーは蘇った。ちょうど研究発表の準備をしているクラスメートたちが秘密を知ってしまい、われもわれもと死んだペットたちを蘇らせ、街は大混乱に陥ってしまう。

ティム・バートン監督が1984年に作った短編映画を、ストップモーションアニメとしてリメイクしました。1秒24コマということは、パペットをほんの少しずつ動かして24回撮影して1秒分。87分のこの作品のためにアニメーター、スタッフたちは気の遠くなるような作業を繰り返したことになります。2年かけた成果をご覧ください。犬好きの監督らしく、スパーキーの動きの可愛いことといったら!クリスマス時期になると見直したくなる『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)が大好きな方、必見です。およそ可愛いとはいいかねる個性的なキャラクターがたくさん活躍します。中でも日系(?)のトシアキの英語が日本人らしく語尾のTやKを発音しているのに笑えました。後半怒涛のような展開になるので、じっくり映像を楽しみたい方は字幕を追わずに済む吹き替え版がお勧めです。(白)

2012年/アメリカ/モノクロ/87分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ディズニー
©2012 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

★12月15日(土)3D/2D同時公開

公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/frankenweenie/

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最初の人間(原題:Le premier homme)

監督:ジャンニ・アメリオ
脚本:ジャンニ・アメリオ
撮影:イヴ・カープ
音楽:フランコ・ピエルサンティ
衣装:パトリシア・コリン
出演:ジャック・ガンブラン(1957年当時のジァック・コルムリ)、カトリーヌ・ソラ(1957年当時のキャサリーン・コルムリ)、ニノ・ジグレット(1924年当時のジァック・コルムリ)、マヤ・サンサ(1924年当時のキャサリーン・コルムリ)、ドゥニ・ポダリデス(ベルナール先生)

1957年。小説家のコルムリはアルジェリアに数年ぶりに帰郷した。フランス領であるこの国は、アルジェリア人とフランス人の間で激しい紛争が起こっていた。
作家として成功をおさめた彼の発言には、歓声と批判が飛び交っていた。 その喧騒の中、彼は少年だった自分を振り返りながら、フランスとアルジェリアの未来を考えるのだった。

 これはカミュ自身の自伝的な内容の作品で、彼の遺稿が基になっている。生誕100年を記念して作られ、監督はイタリアのジャンニ・アメリオ監督(『家の鍵』)。

年老いた母との静かな時間、恩ある先生の変わらぬ師弟愛、幼友達の難題に奔走するコルムリ・・・その数日間で、彼は自分の置かれている立場の栄光とは裏腹な不安定さに、苛立っているようにも見えた。

ジャンニ・アメリオ監督作品の本領である「静かに語りかける」作風はここでも健在。 また、過去・現在のつなぎ方、子役の使い方など『家の鍵』同様の実力を見せてもらった。

※アルベール・カミュの略歴
(1913~1960)アルジェリア生れ。
フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。
高等中学(リセ)の師ベルナール先生の影響で文学に目覚める。
アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。
1942年「異邦人」が絶賛される。
1951年「反抗的人間」を巡りサルトルと論争し孤立。
1957年ノーベル文学賞受賞。
1960年1月パリ近郊において交通事故で死亡。
(美)

2011年/仏、伊、アルジェリア/カラー/105分/ビスタ
配給:ザジフィルムズ

★12月15日より岩波ホールほか全国順次ロードショー公開

公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/ningen/

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マリー・アントワネットに別れをつげて(原題:LES ADIEUX A LA REINE)

監督:ブノワ・ジャコー
脚本:ブノワ・ジャコー、ジル・トーラン
撮影:ローマ・ウィンディング
音楽:ブリュノ・クーレ
美術:カティア・ワイスコフ
衣装:クリスチャン・ガスク、ヴァレリア・ランコー
出演:レア・セドゥ(シドニー・ラボルド)、ダイアン・クルーガー(マリー・アントワネット)、ヴィルジニー・ルドワイアン(ガブリエル・ド・ポリニャック)、グザヴィエ・ボーヴォワ(ルイ16世)

1789年のフランス。王侯貴族を打倒しようとする革命はもう目の前。
ギロチンリストが出回り、そこには王妃マリー・アントワネットの名が筆頭にあり、王妃が寵愛するポリニャック夫人は3番目に書いてあった。
王妃を敬愛する朗読係のシドニーは、どんな時でもお傍にいることを願うが、王妃は「ポリニャック夫人の身代わりに・・・」と命令される。

 今までに何本か「マリー・アントワネット」ものを観ているが、これはオススメ。 目の保養にもなる作品で、2回も試写に行ってしまった。
女性の目線からマリー・アントワネットを描いている。わがまま放題で毎日を過ごしているが、確実に信頼できる人がまわりにいないので、それを試すようにアントワネットは無理難題を言い続けているのだろう。
どんな早朝でも深夜でも「眠れないから話をしてくれ」の一言で、朗読係が馳せ参じて、今はどんな本がいいかとお傍の方に相談するのだ。「朗読係」は史実として存在していた。
アントワネットが愛していたポリニャック夫人との駆け引きは、観てのお楽しみだが、アントワネットの人々の中傷や裏切りに満ちた最期は切ない。

余分なひと言
(1)「服地の見本帳」は必見の価値あり!アップで映ったが、今、持っている洋服の布きれが貼ってあり、「次につくるのはこれに合う、アクセサリーはこれが合う、刺繍はこんな風に」などそれを見て決めていた。
(2)身代わりになる時に着る若草色のドレスは、元々はポリニャック夫人の服という設定だが、夫人が着ていた時は、ちょっとぶかぶかしていた。これは後からレア・セドウが着てぴったり・・・。なんだかこんなことで予算をケチってはと思ったが、2回目観たときに気付いたくらいだから、仕方ないかな。
(3)マリー・アントワネットの旦那様のルイ16世役が、なんと『神々の男たち』のグザヴィエ・ボーヴォワ監督だった。イメージ狂ってしまった。お顔は小太りで邪気のない温和な役柄だったが、「タイツの後ろ姿、特に足の形」がとても素敵だった。(美)

2012年/フランス、スペイン/カラー/100分/シネマスコープ
配給:ギャガ

★12月15日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://myqueen.gaga.ne.jp/

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従軍慰安婦、性暴力に関する映画の上映

「従軍慰安婦」映画を通して考える

○日程
12月8日(土)10:00~『ガイサンシーとその姉妹たち』(80min)
上映後 班忠義監督×鈴木邦男さん<「一水会」顧問>によるトーク
 司会:山上徹二郎<シグロ> (11:25~12:30を予定)
 
 (c)2007 SIGLO/Ban Zhongyi

12月9日(日)10:00~『戦場の女たち』(55min)
上映後 関口祐加監督(本名:典子)×金平茂紀さん<テレビ・ジャーナリスト>によるトーク
 司会:山上徹二郎<シグロ> (11:00~12:30を予定)
 
 (c)1989 SIGLO/TENCHIJIN PRODUCTIONS

○会場:オーディトリウム渋谷(TEL.03ー6809ー0538)
  東京都渋谷区円山町1ー5 KINOHAUS 2F
  渋谷Bunkamura前交差点を左折
  劇場サイト> http://a-shibuya.jp/
  
○料金:当日のみ(映画とトーク共通)
一般 1,500円 シニア 1,200円 学生 1,000円
リピーター割引 1,000円
(※本企画のチケット半券を受付にてご提示下さい)

☆上映作品の詳細などは公式サイトやチラシをご覧下さい。
 公式サイト>http://www.cine.co.jp/iannhu2012.html

チラシ(pdf)

従軍慰安婦問題に関して、「軍は関与していない。民間人がやったことだ。軍が関与してるというなら証拠を見せろ。女たちは金儲けのために行ったんだ」というようなことを言う人がいますが、性暴力の被害者たちの声を聞こうとせず、慰安婦などいなかったなどと、またぞろ否定する人が出てくる気配。性被害にあった方たちに対して、大変失礼な言動だと思います。自分がその立場になったら、あるいは愛する家族がその立場になったらという風に考えたら、そんなことは言えないはずです。
お金を得るために行った人もいるでしょう。でも、そういう人たちも貧しさから逃れるため。
あの時代、貧しい農村からの娘の身売りというのはたくさんありましたが、金儲けをするために行った女性はほとんどいなかったはずです。しかし、連行され、お金も支払われず、監視された場所で逃げることもできずにいた人たちもたくさんいたのです。

そんな中、シグロで製作された作品の中から、『戦場の女たち』と『ガイサンシーとその姉妹たち』の2本が上映されます。この世相を危惧したシグロの山上代表が、今、このドキュメンタリーを上映しておかなければと企画しました。
『戦場の女たち』は、今年『毎日がアルツハイマー』が公開された関口祐加監督のデビュー作で、1989年に製作され、当時、日本全国で上映されました。
パプア・ニュギニアの太平洋戦争時における証言記録で、慰安所のことも出てきます。
この作品の中で、軍医だった方も証言され、しかも自分で撮った写真を提供しています。慰安所にあった看板も写真に撮っていて、それを見ると軍が管理していたということがよくわかります。
『ガイサンシーとその姉妹たち』は、日中戦争時代、日本軍の陣営に連れ去られ、性暴力を受けた女性たちの話。監督の班忠義(パン・チョンイー)さんは、故郷の遼寧省撫順市に住んでいた時、近所に住む日本人残留婦人と知り合い、交流を続けるうち1987年日本に留学。その中国残留婦人のことを書いた「曽おばさんの海」で、1992年、朝日ジャーナルノンフィクション大賞を受賞しています。その2年後、支援団体、市民の力で、中国残留日本人に対する帰国保証が議員立法の形で実現。曽おばさんとの出会いががきっかけで、戦争被害者を調査していた班さんは、1992年、東京で開かれたある集会で、日中戦争当時、日本軍兵士に性暴力を受けたという中国人女性の証言と、体に残された傷跡にショックを受け、その後、日中戦争の真実を知るため10年に渡る調査を続け、このドキュメンタリーを完成させました。

ぜひ、これらの作品を観て、戦争中の性暴力被害について考えていただけたらと思います。こういう被害者を出さないためにも、戦争は絶対起こしてはならないことです。ちょっときな臭い今、平和を維持することの大切さを考えてほしいと思います。

シネマジャーナルスタッフ (暁)


なお、シネマジャーナルでは本誌下記号で上記作品および、従軍慰安婦に関する作品を紹介しています。 71号と86号は、8日と9日の二日間、会場のオーディトリウム渋谷で販売していただくことになりました。12号については品切れのため、関口監督インタビュー記事のコピーを71号の付録としてお付けいたします。どうぞお求め下さい。

●『戦場の女たち』 12号(1989年発行) 関口典子監督インタビュー掲載
(なお、12号は在庫切れのためHPで記事を読むことができます)
http://www.cinemajournal.net/bn/12/senjo.html

●『ガイサンシーとその姉妹たち』 71号(2007年発行) 作品紹介掲載
71号目次
http://www.cinemajournal.net/bn/71/contents.html

本誌最新号86号(2012年11月発行)に、あいち国際女性映画祭で上映されたフィリピンにおける従軍慰安婦を描いたドキュメンタリー『カタロゥガン!ロラたちに正義を!』の竹見智恵子監督インタビュー記事が掲載されています。
86号目次
http://www.cinemajournal.net/bn/86/contents.html

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ニッポンの、みせものやさん

監督:奥谷洋一郎
撮影・録音:江波戸遊土、遠藤協、奥谷洋一郎、早崎紘平、渡辺賢一
編集:江波戸遊土、奥谷洋一郎
整音:黄永昌
音楽:街角実
出演:大寅興業社のみなさん

見世物小屋を生業とする大寅興業社の日々を記録した作品。二家族が生活を共にし、動物も小屋を作る材料も一緒に全国を旅している。奥谷監督は大学生のときに初めて見て、お化け屋敷でアルバイトをしながら十年交流を続けてきた。「残しておかなければ消えてしまう」という思いにかられ撮影を始め、初めは撮影を拒否されたそうだが、誠意が通じたのだろう。一座のお母さん的存在の裕子さんは小屋の歴史を語り、舞台裏の様子まで見せてくれている。裕子さんのお父さんが戦前に起こした一座は、弟の初太郎さんが継ぎ家族中で支えている。小屋をたたんだ同業者たちも登場する。射的に商売変えした男性が、小屋がけの骨組をミニチュアで作って残している。小屋をたたんで引退した女性も自慢の口上を聞かせてくれる。そうやって愛してきた見世物小屋は、時代の波に押し流されて大寅興業社が最後の一軒となった。


©2012 Yoichiro Okutani All Rights Reserved.

裕子さんは奥谷監督を「洋ちゃん」と呼ぶ。二人は仲のいい叔母ちゃんと甥っ子のように見える。対象との距離をおいて作るドキュメンタリーもあるが、ここには時間が醸し出したほっこりした空気がある。
一昨年「今見ておかなくちゃ」と、私も花園神社の酉の市に出かけた。レトロな絵看板に見とれ、生きのいい口上を聞きながら小屋に入ると、珍品のお披露目や手品から始まった。蛇が食べたくて入ったという妖艶な小雪太夫はほんとに蛇をむしゃむしゃと食べ、年齢不詳のお峰太夫は豪勢な火を噴いた。そういえば入場料を集めていた女性が裕子さんだった。裕子さんは仕事で回った都市を挙げ「札幌はよかった」という。私も住んでいたころの札幌のお祭りは本当に賑やかだった。夏の衣替えの時期に北海道神宮の例大祭があり、参道にびっしりと店が並んだ。その中にお化け屋敷、見世物小屋もあったと思うが、入った記憶はなく「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」という口上だけが耳に残っている。(白)

2012年/日本/カラー/90分/DVCAM/
配給:スリーピン

★12月8日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.dokutani.com/

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ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ

監督・撮影:小谷忠典(こたに・ただすけ)
編集:辻井潔(つじい・きよし)
音楽:CORNELIUS(コーネリアス)
出演:佐野洋子、渡辺真起子、フォン・イェン

絵本作家・エッセイストの佐野洋子さんが1977年に発表した絵本「100万回生きたねこ」は、35年後の今も読みつがれて累計180万部になるという。小谷監督は、病のため余命を宣告された佐野さんに「顔を映さない」という条件で撮影を許され、日常を映しとっていく。この絵本の読者たちも訪ねてそれぞれの思いに耳を傾ける。子どもは子どもなりに、大人は大人なりに、この絵本と自身の心とを重ね合わせる。撮影途中に佐野さんは亡くなられ、葬儀を見届けた後、佐野さんの故郷北京へと飛ぶことになった。

世代を問わず人気のあったこの絵本、今も店頭に並んでいます。私も発刊当時読み、後に子どもにも読み聞かせました。このドキュメンタリー中の著者の佐野さんのハスキーな声と、闘病中と思えないさばさばとした口調に、想像したイメージに近かったなぁと思ったことです。佐野さんの故郷を訪ねるのは女優の渡辺真起子さん。開発ですっかり様変わりしてしまった北京なので、建物はすでになくなっていました。
けれど一つ嬉しい発見。かの地で絵本を広げている母はなんとドキュメンタリー『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』のフォン・イェン監督でした。作品中では読み聞かせている姿だけでしたが、2008年にインタビューして以来だったので、心中で「あ!」と言っていました。(白)

2012/日本/カラー/91分/
配給:東風
©ノンデライコ/contrail/東風

★12月8日(土)シアター・イメージフォーラムにてロードショーほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.100neko.jp/

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今日、恋をはじめます

監督:古澤健
脚本:浅野妙子
撮影:喜久村徳章
出演:武井咲(日比野つばき)、松坂桃李(椿京汰)、高岡早紀(京汰の母・京香)、木村文乃(菜奈)、

真面目で古風でダサい女子高校生・日比野つばきは、高校の入学式に同じ組になり、イケメン・椿京汰の隣の席になる。噂では成績優秀で女子にモテモテのイケメン男子。
ひょんなことから、クラス全員の前で勝手に交際宣言されて、キスまでされてしまう。 もちろんつばきにとってはファースト・キスだ。
驚きと恥ずかしさで動転するつばきだったが、その後、京汰の思いがけない一面を知り、だんだん惹かれていくのだった。

 甘っちょろい若者向きの作品だと期待せず観たが、主役二人の確かな演技、飽きさせない展開、脚本のわかりやすさ、音声、音楽、衣装、ヘアスタイルと文句がつけられなかった。
松坂桃李は『ツナグ』とは正反対の役を見事に演じている。 そして武井咲の「昭和おんな」の表情と喋り声がいい! 喋り声は抜群にいい!目をつむって聴いたが、濁音の余分なにごりがなく、特に日本人が汚い「え」の発音がとても綺麗だった。どんなふうに成長していくか楽しみな主役の2人だ。

※文句なし!と言いながらも、ちょっぴり不満なところ
・京汰の中学時代の同級生の元カノ・菜奈はどう見ても15~17歳には見えなかった。どう見ても20歳すぎのお姉さんだ。
・高校時代でこんなに恋愛で明け暮れしてしまうってどうなんだろう。コミックの中だけ?映画の中だけ?って思って観ていたら、つばきの妹も(中学生なのに)男女交際には積極的だったから・・・現実はどうなんだろうと考えてしまった。

(美)

2012年/ドルビーデジタル/121分
配給:東宝

★12月8日より全国東宝系映画館にてロードショー公開

公式 HP >> http://kyokoi-movie.jp/

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砂漠でサーモン・フィッシング(原題:Salmon Fishing in the Yemen)

監督:ラッセ・ハルストレム(『ギルバート・グレイプ』)
脚本:サイモン・ビューフォイ(『スラムドッグ$ミリオネア』)
原作:ポール・トーディ「イエメンで鮭釣りを」(白水社刊)
出演:ユアン・マクレガー(『ビッグ・フィッシュ』)、エミリー・ブラント(『プラダを着た悪魔』)、クリスティン・スコット・トーマス(『サラの鍵』)

英国首相広報室。今日もまたアフガニスタンで爆弾事件。「中東でいいニュースを探しなさい!」といらつく広報担当官のマクスウェル女史。そんな彼女の目にとまったのが、“イエメンで鮭釣プロジェクト”。「これよ、これ!」。でも、実はこのプロジェクトを持ち込まれた水産学者のジョーンズ博士は途方に暮れていた。依頼人はイエメンの石油成金のシェイフ(族長)だと、代理人のコンサルタントのハリエットは言うけれど、お金をかければ叶うというものじゃない。でも、これはもう、中東政策の汚点をカバーすべく、国家の威信をかけて成功させなくちゃならない。かくして、ジョーンズ博士とハリエットはイエメンに乗り込む。はたして、イエメンの川で鮭釣りをしたいというシェイフの夢は叶うのか・・・

「暑くて水のない砂漠じゃ無理」というジョーンズに、「山間部では夜20度になるし、緑もある」と説明するハリエット。そうなのだ。アラビア半島の南東にあるイエメン。どこも暑い砂漠地帯と思ってしまうけれど、イエメン北部には、緑豊かな山間部もある。砂漠の中には、紀元前に作られたダムさえある。10数年前に訪れたことのあるイエメンが舞台ということで、とても楽しみにしていた。映画を観て、これは行った地域じゃないなと思ったら、イエメンでの撮影は許可が出ず、モロッコで撮影したと映画を観た後で知った。男性の服装など、さもありなんという感じで、すっかりだまされてしまった。一瞬出てきた家並みに、ちょっと疑問は持ったのだけど! それはともかく、本作、政治的な駆け引きは背景にあるけれど、人と人、男と女の心の触れ合う心温まる物語だった。原作で、広報担当官のマクスウェル女史が人とのコミュニケーションをとるツールは、ツイッターやメール。首相とのチャットがとても楽しい。(咲)

砂漠の国イエメンで、鮭釣りがしたい──そんなバカな!と思うのが当たり前。持ち込んできたのはイエメンの大富豪(イケメン!)の代理人コンサルタントのハリエット(行動力のある美人!)だ。「不可能!」と一蹴したものの、ハリエットが美人だから、初対面の彼は「こんな美人が代理人?不可能だけど、おしゃべりするぐらいは可能!」と思ったはず! (一瞬そんな目をしたぞ!マクレガーめ!)
だが話は政治レベルになり、あれよあれよと話が進む。案外、政治の裏側なんてこんな駆け引きや思惑が絡んでいるのが多いのかな。サーモンの行く末より、恋愛より、そっちの駆け引きが面白い。まあ、夢のようなお話だが、あんなにサーモン死なせちゃって大丈夫?
あっ、まだあった!マクレガー、とっても絵がうまい。
チラシにも載っていると思うが、あれは彼が書いているはず!
何かハリエットに説明しながら書いているんだけど、ハリエット「うまい!」
マクレガー「えっ?説明(がうまくて)わかってくれました?」
ハリエット「違うの、その絵がうまい!」と、褒めていた。
このシーン、ストーリーに何の関係もないけど、いいシーンだった。お気に入りのユアン・マクレガーの情けない学者ぶり(髪の毛くしゃくしゃ)も素敵!(美)

2011年/イギリス/108分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/ドルビーSR/SDDS
配給:ギャガ

★2012年2012年12月8日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開

公式 HP >> http://salmon.gaga.ne.jp/

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ラブ沖縄@辺野古・高江・普天間

監督:藤本幸久・影山あさ子
撮影:栗原良介ほか 編集:栗原良介 企画・製作:森の映画社

@辺野古
沖縄本島の東海岸にある辺野古。美しいサンゴの海には、国の天然記念物、ジュゴンもやってくる。
この海を埋め立てて、米海兵隊の基地を建設する計画が持ち上がったのは1997年。住宅や学校に隣接し「世界一危険」といわれる宜野湾市の米海兵隊普天間基地を閉鎖し、辺野古に移設すると日米両政府が合意。
しかし、15年たった今も、辺野古の海には、一本の杭も打たれていない。それは、そこに暮らす人たち、抵抗し続ける人たちがいるからだ。海と陸での座り込み、辺野古のおじぃやおばぁの思い、県内移設に反対する9万人の県民大会。県庁前に集まり、環境影響評価書の搬入を止める人びと。2004年に、ボーリング調査を阻止するために始まったテント村での座り込みも2012年7月に3000日を迎える。1997年から始まった辺野古の闘いの歴史と今を描く。

@高江
沖縄本島の北部、やんばるの森は、国の天然記念物のノグチゲラやヤンバルクイナも棲む自然の宝庫。 高江は、この森に囲まれた人口160人の集落だ。しかし、この森の多くは、米軍の北部訓練場。 ジャングル戦の戦闘訓練施設で、1957年以来、ゲリラ戦の訓練、サバイバル訓練、ヘリコプターの飛行訓練などが行われている。在日米軍の再編計画の中、この高江をとり囲むように新たに6か所のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)の建設が予定されている。民家から、わずか400メートル。ここにヘリパッドができたら、飛行訓練が増えるだけではない。配備されるのは、新型機オスプレイ。事故の危険性も、爆音も爆風も、従来を上回る。2007年に工事が始まったが、住民たちは、座り込みを続け今日も建設を止め続けている。

映画が終わった後も、なんだかやりきれない感情を持て余してしまいました。
座り込みをする人たちも、排除しようとする行政側の人たちも、同じ人間で、みんなそれぞれに事情を抱え、限りある命を生きているのに、この埋められない感情のギャップは、どうしたことなのでしょうか。怒号が耳に残り、気持ちがいつまでもざわついていました。
沖縄の面積は、日本全体の0.6%ということですが、米軍基地の75%が沖縄に集中しているということです。 沖縄では、基地に依存した経済効果ということを主張してきた保守派の人たちでさえ、最近は世論に押される形で、この異常な負担に対して、米軍基地の県外移設を支持するようになったといいます。 今や、「オール沖縄」が基地反対を叫んでいるにもかかわらず、国の方針は変わりません。
国益のためと言って、地方に住む、市井の人々が犠牲にされる…。
自然に沿い、気持ち良く暮らしたいというだけの、素朴な望みが叶わない…。
戦争も差別も水俣も福島も薬害も貧困もすべては同根です。 豊かで楽しくて愛おしいものたちが壊され、踏みにじられるのをこれ以上黙って見ているのは心が苦しいです。
座り込みをする一人の女性が言っていた言葉が忘れられません。
「リラックスしながら、緊張を持続させるのはたいへんです。毎日が自己トレーニングみたいです」
私たちは、対立したいわけではありません。誰が正しいなんてことは実はどうでもいいことなので、どうしたらみんな心がやすらかに暮らしていけるのか、福島と同じように、沖縄からも目をそらすことはできないと思いました。
この映画をきっかけに、沖縄の人たちの気持ちに寄り添うことを考えようと思います。毎日が、自己トレーニングです。(せ)

2012年/カラー/ビデオ
配給:影山あさ子事務所

★12月8日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー!

公式 HP >> http://america-banzai.blogspot.jp/

★『ラブ沖縄@辺野古・高江・普天間』アンコール上映

 1/12(土)~2/1(土) (1/13休映)
 毎日 16:40~ポレポレ東中野
 http://www.mmjp.or.jp/pole2/
 *土・日は藤本/影山監督も劇場に来るそうです

=今後の上映予定=

★劇場公開

 横浜 ジャック&ベティ 2/9(土)~
 沖縄 桜坂劇場 2/16(土)~
 大阪 シネ・ヌーヴォ 3/2(土)~

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ダーケストアワー 消滅(原題:The Darkest Hour)

監督:クリス・ゴラック
原案・脚本:ジョン・スペイツ
出演:エミール・ハーシュ(ショーン)、オリヴィア・サールビー(ナタリー)、レイチェル・テイラー(アン)、マックス・ミンゲラ(ベン)、ジョエル・キナマン(スカイラー)、ヴェロニカ・ヴェルナドスカヤ(ヴィカ)

モスクワでの起業を成功させようとやってきたショーンとベン。一足早く商談に持ち込んだスカイラーに横取りされてしまった。ナイトクラブでアメリカ人の女の子ナタリーとアンに出会って少し気を取り直すが、突然の停電に見舞われる。空中からは謎の光が降り注ぎ、それに触れた人間は砕け散っていった。からくも逃げ出したショーンたちは、世界中が同時に停電して、姿なきエイリアンに侵略されているのを知る。

エイリアンが圧倒的に強く、しかも姿が見えません。攻撃するにも標的がなく、稲妻のように現れる敵にまたたくまに「粉砕」されてしまいます。ほかのエイリアンものと違ってキャラクター(の姿)が一瞬しか登場しないのは新鮮(?)。触れた人間は跡形もなくなってしまうから死体を作る手間が省けるなぁ…などと、余計なことを考えずに、ショーンたちがどう立ち向かっていくのか、ハラハラしながらゲームのように楽しんでくださいまし。敵の弱点をさぐりあてるのがちょっと早すぎるような気がしますが、映画の時間内で決着しないとね。(白)

2011年/アメリカ/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー
©2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

★12月1日(土)、シネマート六本木・新宿にてロードショー、シネマート心斎橋ほか全国順次公開

公式 HP >> http://video.foxjapan.com/movies/darkesthour/

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恋のロンドン狂騒曲(原題:You Will Meet a Tall Dark Stranger)

監督・脚本:ウディ・アレン
製作総指揮:ハビエル・メンデス
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
出演:アンソニー・ホプキンス(アルフィ)、ジェマ・ジョーンズ(ヘレナ)、ナオミ・ワッツ(サリー)、ジョシュ・ブローリン(ロイ)、フリーダ・ピント(ディア)、ルーシー・パンチ(シャーメイン)、アントニオ・バンデラス(グレッグ)、ロジャー・アシュトン=グリフィス(ジョナサン)

長年連れ添ったアルフィとヘレナの離婚騒動に娘のサリーは頭が痛い。父は母を捨てて、金髪のコールガールに走ってしまい、母はインチキ占い師の甘言を心のよりどころにしている。サリーの夫ロイは、処女小説があたったばかりにサラリーマンをやめて作家専業になったものの、万年スランプ状態で無収入である。ロイは向かいの窓に見える赤い服の美女に心奪われ、原稿が進まないばかりかサリーに冷たい。満たされないサリーは職場のかっこいいボス、グレッグにときめく毎日だ。懲りない大人たちの恋の行方は??

二組の夫婦の結婚生活にひびが入り、4人がそれぞれ新しい恋に胸こがすというストーリー。アンソニー・ホプキンスが孫のようなデート嬢と結婚し、無理を重ねて若ぶるようすが涙ぐましくもイタイ。サリーの旦那も若い女の子にメロメロになる。この夫は自分の才能のなさに気づいても現実的になれない男。早く別れちゃいなさい>サリー。二人の男には今にしっぺがえしが来るからね、と思ってしまうのはこちらが妻の立場だからか。脚本・監督のウディ・アレンはシニカル&コミカルに彼らを描きつつ、つきはなしてはいません。馬鹿なことをしてしまうのも人間だものしかたないよね、といった感じがします。(白)

2010年/アメリカ、スペイン/カラー/98分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ロングライド
©2010 Mediapro, Versatil Cinema & Gravier Production, Inc.

★12月1日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開

公式 HP >> http://koino-london.jp/

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リターン・トゥ・ベース(原題:R2B )

監督:キム・ドンウォン 
出演:チョン・ジフン(ピ RAIN)(『スピード・レーサー』「サンドゥ、学校へ行こう」)、ユ・ジュンサン(「棚ぼたのあなた」『ハハハ』『次の朝は他人』『黒く濁る村』)、シン・セギョン(『青い塩』)、キム・ソンス「フルハウス」、イ・ハナ(『フェアラブ』「太陽の女」)、イ・ジョンソク(「シークレット・ガーデン」)

大空で繰り広げられる空軍特殊飛行チーム"ブラック・イーグルス"の航空ショー。冒険心豊かなテフン(チョン・ジフン:RAIN)は、禁じられている技法をトライして大きく軌道を外す。お目玉をくらってテソ(キム・ソンス)が編隊長を務める実戦部隊21戦闘飛行団に移籍させられる。同期の女性パイロットのユジン(イ・ハナ)や後輩のソッキュン(イ・ジョンソク)と再会し、次第にチームになじんでいくが、トップガンといわれるチョルヒ(ユ・ジュンサン)とは何かと衝突する。ある日、北の一機がソウルまで降下してくる。哨戒飛行中の 21 戦闘飛行団は予想外の交戦をすることになる。北の脅威は一機にとどまらず、国家の危機を救うため最高機密作戦"リターン・トゥ・ベース"が発令される・・・



(c)2012 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

原題「R2B」とは、Return to Base(リターン・トゥ・ベース)の略語。基地帰還を意味する軍事用語。本作では韓国の空域を守るため、7分間という限られた時間で交戦する極秘作戦のこと。高層の63ビル追撃シーンには、911でNY世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだシーンを彷彿させられる。緊張感溢れる戦闘シーンが繰り広げられるけれど、印象に残るのは、茶目っ気たっぷりのピの姿や、ドラマでもお馴染みの役者たちが演じる航空隊員の人間模様。「棚ぼたのあなた」で、旦那様にしたい男性ナンバーワンの地位を得たユ・ジュンサンが、硬派なパイロットを演じているのも楽しい。(咲)

2012年/韓国/114分/カラー/5.1chサラウンド
配給:CJ Entertainment Japan

★初日入場者プレゼント
映画本編のフィルムをしおり大にカットして、全国合計で3000名様限定先着順に!

★レアグッズが当たるリピーターキャンペーン『リターン・トゥ・シアター!』
12月1日(土)~12月21日(土)までにご鑑賞した際の鑑賞券の半券を集めて応募。
パイロット姿のチョン・ジフン等身大スタンディ、非売品R2Bグッズ福袋など。
応募詳細は公式ホームページ http://www.R2B-movie.jp/へ!

★2012年12月1日(土)新宿バルト9、シネマート六本木ほか全国ロードショー!

公式 HP >> http://www.R2B-movie.jp/

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僕の中のオトコの娘

監督:窪田将治
脚本:窪田将治
撮影:根岸憲一
音楽:與語一平
出演: 川野直輝(足立謙介)、 中村ゆり(足立裕子/謙介の姉)、 草野康太(カレン)、河合龍之介(中村登)、木下ほうか(静香ママ)、ベンガル(足立謙三/謙介の父)

謙介は大学を卒業し就職するが仕事の失敗ばかりで辛い毎日が続き、思い悩んだ末に自殺未遂をしてしまう。それが引き金となって引きこもりになって5年。
父とは口を聞かず、姉・裕子の優しさに頼る日々だった。
そんなある日、偶然に女装するネットサイトを見た彼は興味を感じハンドルネーム「カレン」と知り合う…。

「女装娘=ジョソコ」という言葉があるなんて知らなかった。 しかし巷では、女装好きな男の方専門の店があり、着替え用の服、かつら、靴、化粧をする場所を提供して、飲み食い歓談することができると聞いている。
こんな店に行くような男は「ゲイか特殊な嗜好」の持ち主だと思い込んでいた。 間違いに気づいただけでも観てよかった作品だった。
さて映画感想は、男~女姿に変わる時のドキドキ感が伝わり、同体験しているよう。 だが素に戻ると「なんだぁ~、魅力ないじゃん!」となり、「これでやめたらもったいない!もっとやれ~」っと叫びそうになった!そう、その落差がこの作品の面白さかな。
ま、深く考えずに「のぞき見」感覚でみるのもいい。
惜しい!と思ったのは、脇役の河合龍之介さんはただ店に来て楽しくお話して帰って行くお客様だったが「女装」がみたかった。この方、お顔立ちがすっきりしている美男子! 女装したら凄いんじゃないか!
ママ役の木下ほうかの素(もちろん普通のお顔は知っているが、化粧を落とした映画の中の素)を見せてほしかった。
わがままを書いてしまったが、この作品で一番感心したことは、ちゃんと謙介は父親と姉に「今まで、心配かけてすみません・・・」と言葉に出していることだ。
なかなか言えないことだし、台詞にすると臭くなってしまうが、謙介の素直な気持ちがストレートに伝わった。それまでに成長したジョソコは何も恐くない!(美)

2012年/カラー/100分/HD
配給:太秦

★12月1日より銀座シネパトスほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.boku-naka.com/

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ドリームハウス(原題:Dream House)

監督:ジム・シェリダン
脚本:デヴィッド・ルーカ
撮影:キャレブ・デシャネル
プロダクションデザイン:キャロル・スピア
衣装デザイン: デルフィーヌ・ホワイト
出演:ダニエル・クレイグ(ウィル・エイテンテン)、ナオミ・ワッツ(アン・パターソン)、レイチェル・ワイズ(リビー)、マートン・ソーカス(ジャック・パターソン)、イライアス・コティーズ(ボイス)

ウィルは仕事に追われて家族との時間をとれずにいた。思い切って編集の仕事をやめ、小説家に転身。郊外にマイホームを手に入れる。愛する妻リビーと可愛い二人の娘たちとの新しい生活が始まるはずだった。しかし不審な男が現れたり、娘たちが幽霊のようなものに会ったり、不可解なできごとが続く。調べてみると、かつてこの家で母親と娘が惨たらしく殺される事件があったことがわかる。しかも犯人はまだ捕まっていなかった。

ダニエル・クレイグが妻と娘を守り、姿なき犯人を追う父親。思わせぶりなカメラが誰もかれもを怪しく見せて、ついつい先読みしてしまいたくなるサスペンス作品(とはいえ、ひとつのジャンルに入らない作品です)。007だったらとっとと解決してしまうのに、と普通の男のダニエル・クレイグがちょっとじれったくなるのですが、ひとひねりもふたひねりもしてある脚本なのでしっかり観ていてください。ラストで納得した後、もう一度確かめたくなります。これで夫婦役を演じたダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズは結婚してしまったのですから、よほど良いチームワークで望んだ仕事だったのでしょう。(白)

2011年/アメリカ/カラー/92分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2011MORGAN CREEK ALL RIGHTS RESERVED

★11月23日(金・祝)、池袋シネマサンシャイン他、TOHOシネマズ系列にて全国ロードショー

公式 HP >> http://dreamhouse-movie.com/

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人生の特等席(原題:Trouble with the Curve)

監督:ロバート・ローレンツ
脚本:ランディ・ブラウン
撮影:トム・スターン
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:クリント・イーストウッド(ガス)、エイミー・アダムス(ミッキー)、ジャスティン・ティンバーレイク(ジョニー)、ジョン・グッドマン(ピート・クライン)、マシュー・リラード(フィリップ・サンダーソン)、ロバート・パトリック(ヴィンス)

メジャーリーグのスカウトマンを長く続けてきたガス、最近はデータ分析が重視され、ガスのような旧態依然としたやり方は軽視されつつあった。球団との契約も次は更新できそうもない。一人娘のミッキーは有能な弁護士として活躍しているが、父親とはぎくしゃくしてたまに会ってもけんかばかり。ガスの親友のピートの頼みで、ミッキーはしぶしぶガスの最後の仕事先に出向き、目がかすみ始めた父親を手助けすることになった。ドラフトの候補選手を決めるこの旅で、ガスは昔スカウトした選手ジョニーに出会う。

スクリーンには4年ぶりのイーストウッド、主演俳優に徹するのは19年ぶりとか。監督はイーストウッドの直弟子のロバート・ローレンツ。助監督・製作に携わってきましたが、監督として初の長編作品です。頑固な父と娘が、ドラフト候補の選手を決定するための旅で、ぶつかりあいながら互いの絆を再生していきます。そっくりだからぶつかってしまう(おまけに誤解もある)二人の間で良い緩衝材となるのが、ガスがプロ野球にスカウトした元ピッチャーのジョニー。今は同じスカウトマンになって旅先で出会い、ガスとミッキーの間を取り持つ役回りです。よく見えなくなったガスが、長年の経験から耳で球がミットに収まる音、バットに当たる音を聞き分け的確な判断をするシーンに、昨年の『マネーボール』を思い出しました。ブラッド・ピットがスカウトのゼネラルマネージャー、データ分析を駆使する若者を引き抜いていましたっけ。どちらも野球の知識がなくても面白く観られるのは、登場する人間がしっかり描かれているからでしょう。名優クリント・イーストウッドと、若手ながら幅広く深い演技のできるエイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、脇のキャストも良かったです。(白)


東京国際映画祭でのロバート・ローレンツ監督(撮影:宮崎暁美)

2012年/アメリカ/カラー/111分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ワーナー・ブラザース
©2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

★11月23日(金)全国ロードショー

公式 HP >> http://wwws.warnerbros.co.jp/troublewiththecurve/

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裏切りの戦場 葬られた誓い(原題:L'ORDRE ET LA MORALE 英語題:REBELLION)

監督:マチュー・カソビッツ
原作:フィリップ・ルゴルジェ「La morale et l'action」
脚本:マチュー・カソビッツ、ブノワ・ジョベール、ピエール・ゲーレ
撮影:マルク・コナンクス
音楽:クラウス・バデルト
出演:マチュー・カソビッツ(フィリップ・ルゴルジュ大尉)、イアベ・ラパカ(アルフォンス・ディアヌ)、マリック・ジディ(JP)、アレクサンドル・ステイ(ガージャン・ビアンコーニ検事代理)、ダニエル・マルティン(ベルナード・ポンス海外大臣)

1988年4月、フランス領ニューカレドニアのウベア島で、フランスからの独立をめざすカナック族の急進派グループがフランス憲兵隊宿舎を襲撃した。4人の警官を殺害、30人を人質として誘拐した。ヴェルサイユにある国家憲兵隊治安部隊(GIGN)のフィリップ・ルゴルジュ大尉は、事件解決のための交渉人として現地に赴く。ルゴルジュはカナック族の犯人たちもフランス国民として、慎重に対処する考えだったが、陸軍が大部隊を送り込み、その指揮下に入ることになってしまった。本部と過激派の間に立つルゴルジュは、平和な解決を図ろうと画策するが、おりしも本国では大統領選のまっ最中。長引くことはいい結果とならないと政府は判断し、収束を急がせ次第にルゴルジュの望まぬ方向へとずれていってしまう。

ニューカレドニアという名前を知ったのは「天国に一番近い島」(1966年/森村桂著)でした。のどかな楽園と想像していたところにこんな悲劇があったとは。
フランス政府によって事実が隠蔽されていましたが、主人公であるフィリップ・ルゴルジュ大尉が退官後、事件の詳細を書いた手記を出版したことにより一般に知られるようになりました。軍人として国家に忠誠であろうとすると、人間としてのモラルから外れてしまい、その狭間でルゴルジュ大尉は苦悩します。10年前から映画化を考えていたというマチュー・カソビッツが多くの遺族と話し合った末、監督・脚本・主演を果たし、たいへん重みのある作品となっています。独立派のリーダー、アルフォンス・ディアヌを演じているのはニューカレドニア出身のイアベ・ラパカ。これが初の映画出演です。
オーストラリアの近くのこの島がなぜフランス領なのか?1774年にキャプテン・クックが発見し、いろいろあった末1853年にフランス領に。初めは流刑地として使われていたのが、ニッケルの鉱脈が見つかってからは激変。鉱業がさかんになり人が集まってきました。1998年にヌーメア協定により一定の自治権が認められ、将来国民投票が行われるのだそうです。(白)

2011年/フランス/カラー/134分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:彩プロ
©2011 Nord-Ouest Films - UGC Images - Studio 37 - France 2 Cinema

★11月24日(土)より、シネマスクエアとうきゅうほか全国ロードショー!

公式 HP >> http://uragiri.ayapro.ne.jp/

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阿賀に生きる(16㎜ニュープリント上映)

監督:佐藤真  撮影:小林茂
録音:鈴木彰二/撮影助手:山崎修/録音助手:石田芳英/助監督:熊倉克久
スチール:村井勇/音楽:経麻朗/整音:久保田幸雄/録音協力:菊池信之
ナレーター:鈴木彰二/題字:小山一則/ネガ編集:高橋辰雄
製作:阿賀に生きる製作委員会
ニュープリント呼びかけ人:阿賀に生きる製作委員会代表 大熊孝/阿賀に生きるファンクラブ代表 旗野秀人/阿賀に生きるスタッフ一同/長倉徳生(カサマフィルム代表)/秦 岳志(「阿賀の記憶」編集)/矢田部吉彦(「阿賀の記憶」プロデュサー・東京国際映画祭ディレクター)

『阿賀に生きる』は2007年に亡くなったドキュメンタリー映画作家、佐藤真の初監督作品である。 1992年当時としては異例ともいえる劇場でのロードショー公開がなされ、第24回ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭で銀賞ほか4賞受賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞受賞、文化庁優秀映画作品賞、フランス・ベルフォール映画祭最優秀ドキュメンタリー賞、サンダンス・フィルム・フェスティバルIN TOKYO グランプリ受賞など、名だたるドキュメンタリー映画祭で最高賞を次々獲得。
新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごと収め世界中に大きな感動を与えた。


©阿賀に生きる製作委員会

20年前、六本木でロードショー公開されたこの作品を観ました。こんなおもしろい映画は初めてだと思いました。社会問題を扱うドキュメンタリー映画という概念が180度変わってしまいました。声高に問題を糾弾するようなシーンはひとつもありません。自然とともに暮らしてきた普通の人々の生活を、愛情を込めて描くことで、こんなにも楽しくて愛おしい、大切なものが破壊されてきたということがぐーっと胸に迫ってきます。深刻に問題を語るよりも、この軽やかな楽しさが、より問題を深くえぐり出しています。震災、原発事故後の日本で、今、この映画が再公開されることの意味は大きいと思います。ここにこれからの映画の在り方と、私たちの生き方のヒントがあるように感じています。(せ)

1992年/日本/115分/カラー/16ミリ/スタンダードサイズ/モノラル
提供:カサマフィルム 協賛:シグロ 配給・宣伝:太秦 配給協力:コミュニティシネマセンター

★11月24日(土)より渋谷ユーロスペースにてモーニングショーほか全国順次公開!

公式 HP >> http://www.kasamafilm.com/aga/
公式 twitter >> @aganiikiru

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ポーランド映画祭2012 Poland Film Festival 2012

2012年11月24日(土)-12月7日(金)2週間限定
渋谷シアター・イメージフォーラムにて開催!
[チラシ(pdf) 表面] [チラシ(pdf) 裏面]

1950年代半ばから1960年代初頭にかけて製作されたポーランド映画の中から、イエジー・スコリモフスキ監督が中心になって選んだ名作の数々が一挙上映されるポーランド映画祭が開催されます。このほか、戦後ポーランドのアンダーグラウンド・カルチャーの実態を映し出したドキュメンタリー2本、そして、スコリモフスキ兄弟最新監督作『イクシアナ』のジャパン・プレミア上映と盛りだくさん。イエジー・スコリモフスキ監督が来日し、11月25日に舞台挨拶や解説トークも行われます。

★上映作品★

◆アンジェイ・ムンク監督

鉄路の男
 『エロイカ』1957年/87分/デジタル
 『鉄路の男』1957年/89分/デジタル
 『不運』1960年/92分/デジタル
 『パサジェルカ』1963年/61分/35mm

◆アンジェイ・ワイダ監督

灰とダイヤモンド
 『地下水道』1957年/89分/デジタル
 『灰とダイヤモンド』1958年/102分/デジタル
 『夜の終りに』 1961年/87分/デジタル

◆イエジー・カヴァレロヴィッチ監督

夜行列車
 『影』1956年/98分/35mm
 『戦争の真の終わり』1957年/89分/35mm
 『夜行列車』1959年/100分/デジタル
 『尼僧ヨアンナ』1961年/108分/デジタル

◆イエジー・スコリモフスキ監督

 『バリエラ』1966年/81分/デジタル




◆ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督

サラゴサの写本
 『愛される方法』1963年/97分/デジタル
 『サラゴサの写本』1965年/182分/デジタル



◆カジミェシュ・クッツ監督

沈黙の声
 『沈黙の声』1960年/98分/デジタル
 『列車の中の人々』1961年/98分/デジタル



◆タデウシュ・コンヴィッキ監督

 『夏の終りの日』1958年/66分/デジタル




◆ヤヌシュ・モルゲンシュテルン監督

 『さよなら、また明日』 1960年/88分/デジタル




◆ロマン・ポランスキー監督

 『水の中のナイフ』1962年/94分/デジタル









◎戦後ポーランドのアンダーグラウンド・カルチャーの実態を映し出したドキュメンタリー
『ビーツ・オブ・フリーダム』
監督:ヴォイテク・スウォタ、レシェク・グロインスキ 2011年/78分/デジタル

『ポリティカル・ドレス』
監督:ユディタ・フィビゲル 2011年/61分/デジタル

◎『イクシアナ』ジャパン・プレミア上映
監督:ミハウ・スコリモフスキ、ユゼフ・スコリモフスキ 2011年/98分/デジタル


主催:ポーランド広報文化センター 
共催:マーメイドフィルム/VALERIA/スコピャ・フィルム
協力:フィルムスタジオ・カドル/アダム・ミツキェヴィチ・インスティチュート/東京国立近代美術館フィルムセンター
後援:駐日ポーランド大使館 
配給:マーメイドフィルム 宣伝:VALERIA  配給協力:(社)コミュニティシネマセンター
第25回東京国際映画祭提携企画

公式 HP >> http://www.polandfilmfes2012.com/


★大阪でのポーランド映画祭2012(12/1~12/28)は、ライナップが多少違います。
イエジー・スコリモフスキ監督の下記作品が上映されます。
『身分証明書』 1964年/75分/デジタル
『不戦勝』1965年/74分/デジタル
『手を挙げろ!』1967年/80分/デジタル
『アンナと過ごした4日間』2008年/94分/35mm
『エッセンシャル・キリング』2011年/83分/デジタル

その他、大阪での詳細は下記サイトで確認ください。
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/poland/poland.html

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ワーキング・ホリデー

監督:岡本浩一
原作:坂木司「ワーキング・ホリデー」(文春文庫刊) 脚本:山岡真介
撮影:平田修久
音楽:松下昇平
出演:AKIRA(沖田大和)、林遼威(神保進)、綾野剛(雪夜)、逢沢りな(ナナ)、西野亮廣、忽那汐里
(友情出演)ちすん(神保由紀子)、ほんこん(所長)、ゴリ(ジャスミン)、近江谷太朗、永田彬

新宿歌舞伎町でホストをしている沖田大和のもとに、ある日突然、小学5年生の進(林遼威)が現れた。自分の息子だという進に、身に覚えのある大和はしぶしぶ自宅に連れ帰る。ヤンキー時代に彼女だった由紀子と突然別れて10数年。由紀子は妊娠を告げず、一人で進を育てていた。事故で死んだと聞かされていた進は、最近初めて父親が生きていることを知り、訪ねてきたのだった。しっかりしていて家事全般をこなし、料理上手な進と、年は取っても精神年齢は低いままの大和は、春休みの間共同生活をすることになった。ホストから宅配便に仕事を変えた大和。二人は「父親と息子」になれるのだろうか。


© 2012「ワーキング・ホリデー」製作委員会

『ちゃんと伝える』(2009年/園子温監督)についで2度目の主役のAKIRAさん、さすがに父親役は初めて。この作品はいきなり息子が出現して大人にならねばならない設定。林遼威(はやし ろい)くんとの親子は、だんだん馴染んで受け入れて行くというのがよく出ていました。遼威くんは『誘拐ラプソディー』『犬とあなたの物語 いぬのえいが』からまたちょっと大きくなって、ほんとに先が楽しみな少年です。ストーリーは主人公の性格そのままにわかりやすく、コメディですがホロリとさせて、いい気持ちで観終えました。周りで支える人々のうち出色なのは、ホストクラブオーナーのジャスミン役のゴリさん。あんな友人がほしい。(白)

2012年/日本/カラー/88分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

★11月17日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.wh-movie.com/

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ふがいない僕は空を見た

監督:タナダユキ
脚本:向井康介
撮影:大塚亮
音楽:かみむら周平
出演:永山絢斗(斉藤卓巳)、田畑智子(岡本里美/あんず)、窪田正孝(福田良太)、原田美枝子(斉藤寿美子)

高校生の卓巳は友人と行ったアニメの同人誌のイベントで、アニメ好きの主婦・あんずこと里美と出会う。まもなく、二人は愛し合うようになる。
あんずは自分の家で卓巳に自分の好きなアニメのキャラクターにコスプレをさせて情事にふけっていた。
そんなある日、卓巳は前から気になっていた同級生の七菜に告白されて・・・。

141分の長い作品。
眠っちゃうの覚悟で観たが、盛りだくさんの難題につぐ難題で、寝てる暇もなかった。こんなにハードな作品とは思いもよらなかった。
それにしても、不妊、孫に異常に執心する姑、変態、ボケ老人、いやがらせ、いじめ・・・ありとあらゆる「今の世相」がぎゅうぎゅう詰め。
問題のある登場人物(この作品では問題を抱えている人ばかり)の中で「孫・熱望の姑」があからさま過ぎて理解不能だった。
一番理解できたのは、病院経営の息子の「俺はとんでもない奴だ、だから、その反対にいいことも出来るだけしたいのだ」と言う台詞。
観終わってから「いい台詞がいっぱいあった」ことに気づいた。
もう一度映画を観るか原作を読みたくなった。 一言感想は「激辛青春映画」だ。(美)

映画を観る前に、窪美澄さんの原作を電車の中で読んでいたらえらくエロチックな描写が多く、人目が気になって思わず本を閉じてしまいました。このコスプレ主婦と男子高校生の章は、「女による女のためのR-18文学賞大賞」(2009年)の受賞作だったのです。ほかの登場人物の章を3つ加え連作長編とした単行本は山本周五郎賞(2011年)を受賞していました。
久しぶりのタナダユキ監督、どんな映画になったのだろうと楽しみでした。あんずと斉藤くん、その周りの人々が抱える痛みがきちんと描かれていて、切なかったり痛かったりしました。自分で解決できることと、頑張ってもできないことがあります。「生きていくのって大変なんだよ」と思いつつ、助産院で新しい命が産まれるシーンにやっぱり希望を持たずにいられません。R18+ですが、タナダ監督のカラリとした描写と田端智子さん、永山絢斗くんの清潔さもあっていやらしくないです(え、残念ですか?!)。(白)

2012年/カラー/141分
配給:東京テアトル

★11月17日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.fugainaiboku.com/

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第13回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2012 (13th Edition)

2012年11月23日(金・祝)~12月2日(日)
有楽町朝日ホール、東劇、TOHOシネマズ日劇にて

毎年、作家の個性が光る作品揃いの東京フィルメックス。今年も、映画の明るい未来を信じるディレクターの林加奈子さんと、プログラムディレクターの市山尚三さんの二人による選りすぐりの46本が上映されます。上映後の密度の濃いQ&Aや、映画の合間のトークイベントなども楽しみです。ぜひお出かけください。

◎コンペティション

『514号室』(Room 514/イスラエル/シャロン・バルズィヴ)
 

『エピローグ』(Epilogue/イスラエル/アミール・マノール)
 

『111人の少女 』(111 Girls/イラク/ナヒード・ゴバディ&ビジャン・ザマンピラ )
 

『愛の身替わり』(All Apologies/香港/エミリー・タン)
 

『ティエダンのラブソング』(The Love Songs Of Tiedan/中国/ハオ・ジェ)
 

『記憶が私を見る(Memories Look At Me/中国/ソン・ファン)
 

『グレープ・キャンディ』(Grape Candy/韓国/キム・ヒジョン)
 

『おだやかな日常』(Odayaka/日本/内田伸輝)
 

『あたしは世界なんかじゃないから』(I am not the world you want to change/日本/高橋泉)
 


コンペティション部門国際審査員
映画監督SABUさん(審査委員長)、映画批評家のダン・ファイナウさん、同じく秦早穂子さん、イランの女優ファテメ・モタメダリアさん、ユニフランス・フィルムズのヴァレリ=アンヌ・クリステン日本支局長の5名

◎特別招待作品

『3人のアンヌ』(In Another Country/韓国/ホン・サンス)
『サイの季節』(Rhino Season/イラク、トルコ/バフマン・ゴバディ)
『ギマランイス歴史地区』(Historic Center/ポルトガル/アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラ)
『チョンジュプロジェクト2012』(Jeonju Digital Project 2012/韓国、スリランカ、フィリピン、中国/ヴィムクティ・ジャヤスンダラ/ラヤ・マーティン/イン・リャン)
『父へのララバイ』(Lullaby to My Father/イスラエル、フランス、スイス/アモス・ギタイ)
『カルメル』(Carmel/イスラエル、フランス、イタリア/アモス・ギタイ)
『庭師』(The Gardener/イラン/モフセン・マフマルバフ)
『メコンホテル』(Mekong Hotel/タイ、イギリス、フランス/アピチャッポン・ウィーラセタクン)
『ピエタ(原題)』(Pieta/韓国/キム・ギドク)
『三姉妹(原題)』(Three Sisters/香港、フランス/ワン・ビン)
『ぼっちゃん』(BOZO/日本/大森立嗣)
『BAD FILM』(BAD FILM/日本/園子温)
『Things Left Behind(原題)』(Things Left Behind/日本/リンダ・ホーグランド)
『東京暗黒街・竹の家』(House of Bamboo/アメリカ/サミュエル・フラー)

◎イスラエル映画傑作選

『エルドラド』(El Dorado/メナヘム・ゴーラン)
『サラー・シャバティ氏』(Salachi Shabati/エフライム・キション)
『子どもとの3日間』(Three Days and a Child/ウリ・ゾハル)
『アバンチ・ポポロ』(Avanti Popolo/ラフィ・ブカイー)

◎木下惠介生誕100年祭

『歓呼の町』Jubilation Street/1944
『陸軍』The Army/1944
『女』Woman/1948
『肖像』The Portrait/1948
『お嬢さん乾杯』Here's to the Young Lady/1949
『破れ太鼓』Broken Drum/1949
『婚約指環(エンゲージリング)』Wedding Ring/1950
『カルメン故郷に帰る』Carmen Comes Home/1951
『カルメン純情す』Carmen's Innocent Love/1952
『日本の悲劇』Tragedy of Japan/1953
『女の園』The Garden of Woman/1954
『二十四の瞳』Twenty Four Eyes/1954
『遠い雲』The Tattered Wings/1955
『野菊の如き君なりき』You Were Like a Wild Chrysanthemum/1955
『夕やけ雲』Farewell to Dream/1956
『太陽とバラ』Rose on His Arm/1956
『喜びも悲しみも幾年月』The Light House/1957
『楢山節考』The Ballad of Narayama/1958
『風花』The Snow Flurry/1959
『今日もまたかくてありなん』Thus Another Day/1959
『笛吹川』The River Fuefuki/1960
『永遠の人』Immortal Love/1961
『死闘の伝説』A Legend or Was It?/1963
『香華(前篇・後篇)』The Scent of Incense/1964

全46作品

公式 サイト>> http://filmex.net/

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シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語

監督・脚本:アンドリュー・アダムソン
製作総指揮:ジェームズ・キャメロン
出演:シルク・ドゥ・ソレイユ、エリカ・リンツ(ミア)、イゴール・ザリポフ(青年)

ミアは小さなサーカスのテントに目をとめる。準備をしていた青年が微笑みかける。公演が次々と進み、空中ブランコが始まった。見上げると飛ぼうとしているのは先ほどの青年だった。青年もミアに気づくが、そのとたんブランコから落ち、足元に現れた砂の海に飲み込まれてしまった。思わず後を追いかけたミアは、見たこともない不思議な世界へと迷い込んでいく。


© 2011 Cirque du Soleil Burlesco LLC. All Rights Reserved.

華麗なパフォーマンスで世界中を魅了しているパフォーマンス集団「シルク・ド・ソレイユ」(日本語だと″太陽のサーカス″)の七つの公演を背景に、ドキュメンタリーではなくオリジナル脚本のラブ・ストーリーにしたてた作品。公演を見たことがなかったのでそのパフォーマンスと幻想的な演出に驚きました。オリンピックの体操競技みたいと感じた部分もありました。資料には、実際もとオリンピック選手もたくさん在籍しているそうで、第1級のパフォーマンスなのも頷けます。客席では見られない角度、3D映画ならではの効果が最大限に現れている映像に、この世ではない異世界へと主人公と一緒に出かけた気分です。セリフは殆どありませんので画面に没入できます。できるだけ大きな画面で正面から観るのがお勧め。(白)

2012年/アメリカ/カラー/91分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント・ジャパン

★11月9日(金)より、TOHOシネマズ 有楽座他、全国3Dロードショー!

公式 HP >> http://www.cirque-3d.jp/

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チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~(原題:Poulet aux prunes)

監督・脚本:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー(『ペルセポリス』)
原作:マルジャン・サトラピ「鶏のプラム煮」
出演:マチュー・アマルリック(『潜水服は蝶の夢を見る』)、マリア・デ・メディロス(『パルプ・フィクション』)、イザベラ・ロッセリーニ(『ブルーベルベット』)、キアラ・マストロヤンニ(『そして僕は恋をする』『ペルセポリス(声)』)、ゴルシフテ・ファラハーニ(『ワールド・オブ・ライズ』『彼女が消えた浜辺』)、ジャメル・ドゥブーズ(『アメリ』『アンジェラ』)

1958年秋。テヘランの楽器屋にバイオリンを買いにきたナセル・アリ。通りを行く白髪の女性を見かけ、「僕を覚えていますか?」と声をかけるが、「いいえ、まったく」と立ち去られてしまう。かつて恋した女性イラーヌに間違いない・・・ 愛のない結婚生活の果て、妻にバイオリンを壊されてしまった天才音楽家ナセル・アリ。ラシュトの町に名バイオリンがあると聞き、息子を連れて山を越えていくが、無駄足になる。生きる希望を失った彼は、8日後に死ぬことにした。
かくして綴られるナセル・アリの人生の最後の8日間。思い出すのは、かつてバイオリンの修行に行ったシーラーズで出会った美しいイラーヌのこと。留学から戻り、彼を慕うファランギーズと結婚するも、虚しい日々。4日目、がさつだけど健気な妻がナセルの好物チキンのプラム煮を作るが、食べる気になれない。母が亡くなる前に口にした言葉を思い出したりしているうちに、6日目、真っ黒な顔をした死の天使アズラエルが迎えにくる。8日目、美しいイラーヌとの愛の物語を夢にみながらナセル・アリはいよいよ旅立つ・・・

1958年というと、イランで石油国有化をはかり、イランの主権を回復しようとした民族主義者のモサッデグ首相が、米英の後押しによる皇帝派クーデターで失脚させられた1953年から5年後のこと。結ばれることのなかった憧れの女性イラーヌは、伝統に裏づけされたイランの化身。バイオリンを壊した妻ファランギーズは、ペルシア語で西洋を意味するファランギーを彷彿させる名と深読みすれば、イランの民主化を壊した西欧社会を象徴している。
1979年のイラン革命を経験し、その後14歳の時からフランスに住むマルジャン・サトラピ。グローバルな目線で愛と人間を描こうとしたという本作。「yeki bud yeki na bud」と、ペルシアの昔話の決まり文句で始めるところに、故国への思いを感じる。また、可憐なイラーヌを演じたゴルシフテ・ファラハーニは、『ワールド・オブ・ライズ』でレオナルド・ディカプリオと共演したことなどから、イランに戻れないでいる。憂いある彼女の眼に、彼女自身の故国への思いをも感じさせられた。(咲)

2011年/フランス・ドイツ・ベルギー合作映画/92分/カラー/シネスコ/ドルビーSR、ドルビーデジタル
配給:ギャガ

★2012年11月10日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町他にて、全国順次ロードショー

公式 HP >> http://chicken.gaga.ne.jp/

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カミハテ商店

監督:山本起也(やまもと たつや)
脚本:山本起也、水上竜士
撮影:小川真司
音楽:谷川賢作
出演:高橋惠子(森田千代)、寺島進(森田良雄)、あがた森魚(バスの運転手)、水上竜士(須藤昌幸)、深谷健人(奥田智)、平岡美保(さわ)

山陰地方の小さな町「上終(カミハテ)」。バスの終点の前で、母が遺した小さな商店を細々と続ける千代。愛想ひとつない初老の千代の店を訪れるのは、一人暮らしを心配する役場の職員の須藤と牛乳配達の青年。ほかに一度訪ねて2度とは来ない人々がいる。店から海に向かうと断崖絶壁があり、そこは隠れた自殺の名所となっていた。死を覚悟した人は誰もがここでバスを降り、千代の焼いたコッペパンと牛乳を買う。さまざまな理由で死に急ぐ人を千代は引き止めたりはしない。黙って見送り、翌日崖の上に残された靴を持ち帰っていた。

京都造形芸術大学映画学科 には“北白川派”という映画プロジェクトがあります。毎年プロの映画人と学生が組んで劇場用映画を1本製作するものです。本作が第3弾。高橋惠子さんは23年ぶりの映画主演作とのことですが、生きる意欲を少しも持っていないような女性を演じています。『ふみ子の海』での厳しい按摩の師匠が深く印象に残っていますが、この作品の千代も同じように残りそうです。都会で懸命に生きる弟を寺島進さん、バスの運転手をあがた森男さん、そんなプロの俳優さんと大学生たちが混じって、いい作用が起こったんだなぁと思えた作品でした。(白)

2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:マジックアワー、北白川派
©北白川派

★2012年11月10日(土)より ユーロスペースほか 全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.kitashira.com/

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映画と恋とウディ・アレン

監督・脚本:ロバート・B・ウィード
出演:ウディ・アレン

秘密主義のウディ・アレンに一年半にわたって密着し、これまでに見せたことのないプライベートな映像を披露。昔懐かしいモノクロ映像の出演番組、大ヒットした作品、ミューズたちの監督評などなど、もりだくさんのうえ深くて充実。ウディ・アレン公認のドキュメンタリー。


© 2011 B Plus Productions,LLC. All rights reserved.

まるごとウディ・アレン。彼をよく知る人も知らない人も面白く見られる内容です。年代順の経歴、作品一つ一つ、あらゆる関係者の証言などを聞いて知るにつけ、つくづく面白い+興味深い人だと思います。モノクロ映像のスタンダップコメディアン時代を初めて見て、その間のよさ、軽さにびっくり。いくつもの顔を持つ多才な人ですが、それが過去のことではなく、今も第一線の現役でコンスタントに作品を送り出しているのもすごい!(白)

2011年/アメリカ/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ロングライド

★11月10日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ にて全国ロードショー

公式 HP >> http://www.woody-documentary.jp/

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ゲットバック(原題:STOLEN)

監督:サイモン・ウェスト
脚本:デビッド・グッゲンハイム
出演:ニコラス・ケイジ(ウィル)、ジョシュ・ルーカス(ヴィンセント)、マリン・アッカーマン(ライリー)、サミ・ゲイル(娘・アリソン)

銀行強盗の罪で服役していたウィル・モンゴメリーは、出所したその日に娘が誘拐された。
犯人の要求は「8年前の犯行後に失くなった10億円を12時間以内に引き渡せ」という条件だった。
窮地にたったウィルは娘を必死で探す一方、その身代金を稼ぐために無謀な銀行強盗を企むのだが…。

 最近のニコラス・ケイジの立ち位置は微妙。手当たり次第に来る仕事、来る仕事に出ずめって感じだから、ニコラス・ケイジ=B級映画の帝王?的になっている。
この作品も主役がニコラス・ケイジじゃなかったら見向きもされないかなと思ったが、手堅く演出されていて案外掘り出しだった。
最後のオチがちょい甘めで「あれで騙されるかな?」と笑いながらも、「ま、ニコラス・ケイジなら許すか」となるから、やはりB級帝王さまだ。
 助演の女優さんがいい!恋人のマリン・アッカートン、娘アリソンのサミ・ゲイル(ニコラスの目元が似ていたので親子で納得)の自然な美しさと演技に◎。 それにヘアメイクが良かった! (美)

2012年/アメリカ/カラー/95分
配給:日活

★11月10日より新宿ミラノ、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.getback-movie.com/

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ホン・サンス 恋愛についての4つの考察

2003年春、パリでそれまでの作品が一般公開されたことをきっかけに、その名がヨーロッパで一気に知れ渡ることになったホン・サンス監督。それ以降、ヨーロッパでは作品が公開され続け、中でも『ハハハ』はカンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリを受賞し、パリで大ヒットしている。
今回、「ホン・サンス 恋愛についての4つの考察」として、『よく知りもしないくせに』『ハハハ』『教授とわたし、そして映画』『次の朝は他人』の4作品が一挙公開される。男女の恋愛を、一目惚れ、三角関係、再び燃える過去の恋等々、いろいろな角度から描いた作品たち。観客の誰もが、どこかで自分の経験と重ね合わせて、くすっとしたり、ほろ苦い思いに浸ったりできそうだ。
ムン・ソリやコ・ヒョンジョンなど個性の光る女優たち、韓流ドラマでも人気のイ・ソンギュンやユ・ジュンサンなどの男優たち。ノーギャラでも出演したいと集まった俳優たちの競演も見逃せない。どの作品も、なんともいえない会話の間が可笑しい。『豚が井戸に落ちた日』(1996年)『アバンチュールはパリで』(2008年)も同様の空気感だった。今年の東京フィルメックスのオープニング作品として上映される『3人のアンヌ』もあわせて観てみたい。(咲)

『よく知りもしないくせに』原題:よく知りもしないで

監督・脚本:ホン・サンス
出演:キム・テウ(『JSA』『キッチン~3人のレシピ~』)、コ・ヒョンジョン(『浜辺の女』)、 オム・ジウォン(『グッド・バッド・ウィアード』)
2009年/韓国/カラー/126分
配給:ビターズ・エンド

真夏、映画祭の審査員として参加している映画監督ギョンナム。映画祭コーディネーターの女性が気になる日々。旧友サンヨンの家でその妻ユ・シンと飲み明かし、二日酔いでホテルで目覚めたギョンナムにサンヨンから「二度と自分の前に現れないでくれ」というメッセージ。映画祭コーディネーターのヒョニからは、酔いつぶれた自分を部屋に置き去りにしたと責められる。訳もわからず映画祭から逃げ出すギョンナム。数日後、済州島で元恋人で今は先輩の画家チョンスの妻スンと再会し、恋心が再燃する・・・

『ハハハ』 原題:ハハハ(夏夏夏)

監督・脚本:ホン・サンス
出演:キム・サンギョン(『殺人の追憶』『気まぐれな唇』)、ムン・ソリ(『ペパーミント・キャンディー』『オアシス』『飛べ,ペンギン』)、ユ・ジュンサン(『黒く濁る村』「棚ぼたのあなた」)、キム・ガンウ(『京義線』『男たちの挽歌』)、イェ・ジウォン(『気まぐれな唇』)
2010年/韓国/カラー/116分
配給:ビターズ・エンド

カナダで暮らそうと決意した映画監督ムンギョンは、先輩の映画評論家ジュンシクと久しぶりに飲んでいる。
二人は違う目的で偶然、南の港町トンヨンに行って来たばかりで、そのときの話がはずみ、ひと夏の友人や女性たちの出会いについて語り始める・・・。

ムンギョンの港町トンヨンの行動とジュンシクのそれがうまく絡み合っているが、お互い知らない部分もあって、それが面白みになっている。
随分前だが、この監督さんの『映画館の恋』とチャン・リュル監督の『キムチを売る女』を名古屋のシネマスコーレで続けて観た時に、「こんな韓国映画もあるんだ!」と、えらく衝撃を受けた。この『ハハハ』も題名からしても変わっている。恋人たちの駆け引きは真剣。
観ているものは、その「軽いおかしみ」と「運命のいたずら」に「ハハハ」や「フフフ」となってしまう。やっぱり独特な空気感を出せる監督さんだ。
※キム・サンギョンのお坊ちゃんぶりと手や指先の動きが目に焼き付いている。 (美)

ひと夏の出来事をビール片手に話すムンギョンとチュンシクが、動画でなく静止画で映し出される。偶然にも二人は同じトンヨンの町を訪れていて、話が盛り上がる。本人たちはなかなか気づかないけれど、実はトンヨンで同じ人物たちと接触していたというのを観客は楽しむという次第。なんとも愉快。でも、こういう偶然って意外とありそうだ。(咲)

『教授とわたし、そして映画』原題:オッキの映画

監督・脚本:ホン・サンス
出演:イ・ソンギュン(「コーヒープリンス1号店」「パスタ?恋が出来るまで?」)、チョン・ユミ(『甘い人生』)、ムン・ソングン(『冬の小鳥』)
2010年/韓国/カラー/80分
配給:ビターズ・エンド

<呪文を覚える日> 30代の映画監督ジング。アート系の映画では生活できず大学の恩師ソン教授の口利きで映画学科で教えている。先輩からソン教授が金を貰って別の講師を昇進させたと聞かされる。飲み会で酔った勢いでソン教授に絡むジング・・・
<キング・オブ・キス> 映画学科の学生だった頃、ジングは同じ学科のオッキに恋をした。オッキに付きまとうジングだが、オッキはソン教授と秘密の関係を持っていた。寒い冬の夜、オッキの部屋の前で一晩待っていたジングをオッキは部屋に招き入れる・・・
<大雪の後に> 大雪の翌日、映画学科のソン教授の講義にやって来たのは、女子学生オッキと男子学生ジングの二人だけだった。「何か質問はあるか?」との教授の言葉に、ふたりは、「恋愛とは何か?」「愛とは何か?」と問いかける・・・
<オッキの映画> 映画学科のオッキは、若い男と年上の教授との三角関係の経験をもとに、年の瀬と正月の一日違いのデートで同じ山を訪れたことを映画にし、自らの恋愛を検証する・・・

4つの短編は、それぞれがオッキという女性を巡る若者ジングと年配のソン教授の三角関係を描いている。もちろん三角関係なのを知るのはオッキと観客のみだ。オッキは結局どちらの男を選ぶのか・・・ きっと誰もがこんな三角関係の思い出を持っているのでは? (どの男も選ばなかった私! あ、選ばれなかった・・・です。)

『次の朝は他人』原題:プクチョン(北村)方向

監督:脚本:ホン・サンス
出演:ユ・ジュンサン(「棚ぼたのあなた」)、 キム・サンジュン(「私の男の女」)、 ソン・ソンミ(『マイ・ボス マイ・ヒーロー』)、キム・ボギョン(『友へ チング』)
2011年/韓国/モノクロ/79分
配給:ビターズ・エンド

冬、先輩に会うためにソウルを訪れた映画監督ソンジュン。先輩に電話するも連絡がつかない。雪の中、先輩の住む北村の街をあてもなく歩き、ふっと入った店で一人で飲んでいると、自分の作品を観たことがあるという3人の映画学校の学生から声をかけられる。映画論で盛り上がり、もう1軒行こうという話になるが、ソンジュンは彼らを巻いて2年前に別れたキョンジンの部屋を訪ねる。未練があるのか暇つぶしなのかわからない一夜を過ごす。翌日、ようやく会えた先輩に連れられ「小説」というバーに行く。昔の恋人にそっくりなオーナーの女性に魅了され、ソンジュンはその翌日もまた「小説」を訪ねる・・・

男と女の出会いって、こんな風に案外いい加減だ。ふっとしたことで惹かれあい、そして、別れていく・・・ 伝統家屋が残る北村の町並みがモノクロ映像で美しく迫ってきて、それだけでも価値のある一作。(咲)

★2012年11月10日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー公開

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/4kousatsu/

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のぼうの城

監督:犬童一心、樋口真嗣
脚本:和田竜
撮影:清久素延、江原祥二
主題歌:エレファントカシマシ
出演:野村萬斎(成田長親)、佐藤浩市(正木丹波守利英)、榮倉奈々(甲斐姫)上地雄輔(石田三成)、鈴木保奈美(珠)

天下統一を目指す豊臣秀吉は関東の北条家に大軍を投じるが、その中に最後まで落ちなかった武州・忍城(おしじょう)があった。
その城には領内の民から「のぼう様」(でくのぼうの最初の二文字を取って)と呼ばれ親しまれていた成田長親がいた。
秀吉は20000人の石田三成軍で攻撃を仕掛けるが・・・。
たった500人の軍勢で成田長親が戦いいどむ史実の話。

 武州・忍城(おしじょう)を、石田三成が水攻めにした史実を基にした作品で、本当は去年秋の公開予定だったが、東日本大震災の津波被害を思い出させる映像があるので公開が延期となっていた。
特殊撮影樋口真嗣監督さんは、「東日本大震災の津波被害を思い出させる映像」を震災前に既に撮っていたとのこと。ここは必見シーンだ。
始め、なんだこのしゃべりは、だいたい大声を無理に出しているから声がきたない、怒鳴り声だ。主役野村萬斎と家来の佐藤浩市だけ合格。演技でぶれなかったのは鈴木保奈美と上地雄輔。
文句をたれながら観ていたが、負けると決まってる戦いにのぼうが「戦う!」と言った時から俄然面白くなり、文句なんか吹っ飛んでしまった!  「よくやったのぼう、あんたは頭いい!」と叫びたかった!
※エレファントカシマシの主題歌「ズレてる方がいい」はこの作品のために作詞作曲されたもの。エンディングで聴いていてこんなに勘当した歌はなかった。 (美)

2012年/カラー/145分
配給:東宝、アスミック・エース

★11月2日よりTOHOシネマズ スカラ座、新宿バルト9ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://nobou-movie.jp/

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ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋

監督・脚本:マドンナ
共同脚本:アレック・ケシアン
撮影:ハーゲン・ボグダンスキー
衣装デザイン:アリアンヌ・フィリップス
音楽:アベル・コジェニオウスキ
出演:アビー・コーニッシュ(ウォリー・ウィンスロップ)、アンドレア・ライズブロー(ウォリス・シンプソン)、ジェームス・ダーシー(エドワード)、オスカー・アイザック(エフゲニ)

1998年、ニューヨーク。結婚6年になるウォリーは、はためには何不自由のない暮らしをしているが秘かな悩みがあった。一流分析医の夫は子どもを望まず、仕事を理由に毎晩家を空ける。ウォリーは鬱屈した心を抱え、「王冠をかけた恋」で知られるイギリスのエドワード8世とウォリス・シンプソンの遺品オークションに出かける。並んだ美術品だけでなく、二人の愛の物語に魅了されていく。
1936年12月11日。英国王エドワード8世は、ラジオで国民へ退位することを伝えた。反対を押し切り、王位を捨てて離婚歴のあるアメリカ人女性シンプソン夫人との禁断の恋を実らせたのだった。


© 2011 W.E. Commissioning Company Limited. All Rights Reserved.

マドンナ監督第2作。イギリス国王に王位を捨てさせたアメリカ人女性、ウォリス・シンプソンの物語を描き出しました。スキャンダルといわれようが、多くの恋する男女がロマンチック~!と酔いしれたに違いありません。ウォリスはどれほど魅力がある女性だったのか、エドワード8世は王冠を捨てましたが、ウォリスが恋を成就した代わりに失ったものはなかったのか。知らされなかったさまざまなことが、現代に生きる女性ウォリーの生活とあわせて語られていきます。
破綻しかかっていたウォリーの結婚生活、いえ、人生を変えたのは、ウォリスとの時空を越えた出逢いでした。この二つのストーリーをどのように監督が采配しているのか、まずは劇場でご覧ください。カルティエが全面協力した豪華な宝飾品、普通の撮影の倍も作られたというセットにもご注目!(白)

2011年/イギリス/カラー・モノクロ/119分/シネマスコープ/ドルビーSRD
配給:クロックワークス 宣伝:アルシネテラン

★11月3日(土)より新宿バルト9、TOHOシネマズシャンテほか全国にて公開ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.we-movie.net/

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ザ・レイド(英題:THE RAID)

監督・脚本:ギャレス・エヴァンス
アクション指導:イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン
音楽:リンキン・パーク
出演:イコ・ウワイス(ラマ)、ヤヤン・ルヒアン(マッド・ドッグ)、ジョー・タスリム(ジャカ)、レイ・サヘタピー(タマ・リヤディ)、ドニー・アラムシャ(アンディ)

ジャカルタのスラム街にある高層アパートは、麻薬王リヤデイとその仲間のアジトとなっていた。これまで手を出しかねていた警察が、ついに強制捜査(レイド)に乗り出すことになり、ある早朝20人のSWAT隊員は奇襲作戦を開始した。新人もまじえた隊員たちは隊長の指示通り、少しずつリヤディへ近づいていくが、行く先々に敵が待ちかまえ壮絶な死闘になだれ込んでいく。

「強すぎ!殺りすぎ!敵多すぎ!」がこの映画のキャッチです。ほんとにまあ、このとおり。倒しても倒しても、敵がわくように出てきて、高層ビルの中でのアクションがノンストップで続きます。絶対誰か怪我しているにちがいない!観るだけでも痛い戦いを繰り広げる俳優が格闘技シラットの達人で、アクションも彼らが考えているそうです。力いっぱいのアクションだからといってストーリーが雑かというとそうではなく、ちゃんとラストまでひっぱる力もあります。続編とハリウッドでのリメイクが決定。(白)

2011年/インドネシア/カラー/102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:角川映画
© MMXI PT.MERANTAU FILMS

★10月27(土)、渋谷シネマライズ、角川有楽町ほか全国順次公開

公式 HP >> http://theraid.jp/

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旅の贈りもの 明日へ

監督:前田哲
脚本:前田哲、篠原高志
撮影:佐々木原 保志
美術:磯見俊裕
出演:前川清(仁科孝祐)、酒井和歌子、山田優(香川結花)、葉山奨之(孝祐)、清水くるみ(美月)、須磨和声(久我晃)

いま、人生の忘れ物を探す旅に出る―
仁科孝祐は大阪の大手建設会社で定年を迎えたが、長年の苦労をいたわってくれる家族はいない。一人、部屋の片付けをしていて古い絵手紙を見つける。高校時代の孝祐は美大志望だった。雑誌で知り合った絵の好きな美月と絵手紙を交換していたが、美大進学に反対する父親の知るところとなり、画材や絵手紙を燃やされてしまう。孝祐は福井に向かい、初めて顔を合わせた美月と一日すごし、東京での再会を約束する。しかし美月は1本の桜を描いた絵手紙をよこしたきり、消息を絶ってしまった。それから42年が過ぎ、最後に受け取った絵手紙を手に、孝祐はもう一度福井へ向かっていた。同じころ結婚間近の結花、夢破れたヴァイオリニストの久我が福井へ向かう。


©2012 「旅の贈りもの 明日へ」製作委員会

列車と旅のシリーズ第2弾の作品。1作目の『旅の贈りもの~0:00発~』(2006年/原田昌樹監督)は主なロケ地が島根、広島、岡山など。瀬戸内海の島で見知らぬ人々がいっとき心を通わせるお話でした。今回は福井県でのハートフルストーリー。42年前の高校生だった孝祐の思い出と、それをたどる現在。そこに福井へ向かう二人のエピソードが加わります。前川清さんは30数年ぶりの映画出演。主題歌「春の旅」も歌っています。久しぶりにスクリーンで観る酒井和歌子さんが還暦を過ぎているはずなのに、今も若くて可愛らしく「女優さんって別人種では」と感嘆しました!(白)

2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:キノフィルムズ

★10月27日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://www.tabi-fukui.jp/

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希望の国

監督・脚本:園子温
撮影:御木茂則
美術:松塚隆史
出演:夏八木勲(小野泰彦)、大谷直子(小野智恵子)、村上淳(小野洋一)、神楽坂恵(小野いずみ)、清水優(鈴木ミツル)、梶原ひかり(ヨーコ)、菅原大吉(志村)、山中崇(加藤)、河原崎建三(産婦人科医)、筒井真理子(鈴木めい子)、でんでん(鈴木健)

東日本大震災数年後。酪農業の小野泰彦は家族とつつましいながら幸せに暮らしていた。しかし、東方沖を大津波が襲い、原発から半径20km圏内が警戒区域となる。道路を隔てた鈴木家は強制的に避難させられ、愛犬を託していった。小野は前回の大地震を忘れていない。いずれはここも警戒区域になることだろう。息子洋一といずみの夫婦を追い立てるように「できるだけ遠くへ」と避難させ、自分は痴呆症の妻智恵子とともに自宅にとどまった。やがていずみは妊娠していることがわかり、放射能への恐怖を募らせていく。

これまでエキセントリックな作品を多く送り出してきた園監督。今回はうってかわって血も暴力もみえない静かな作品です。老境に入った康彦が覚悟をきめて妻と残り、互いをいとおしむ様子、これまで手塩にかけて育ててきた牛を自らの手で始末する様子(銃声のみで現されます)が胸に染み入ってきます。静かな画面ではありますが、その底深くにあるものは目にはみえない戦争のようなもの。過敏になったいずみが叫ぶことばが耳に残ります。直後は誰もがうんと心配していました。なぜこうも忘れっぽく、鈍感になってしまったのでしょう。答えはすぐ出てきます。そのほうが楽だから。そのつけがどっと回ってくるのは孫子の時代、パンドラの箱に希望はまだ残っているでしょうか。(白)

2012年/日本、イギリス、台湾/カラー/133分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ビターズ・エンド
© The Land of Hope Film Partners

★10月20日(土)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国ロードショー!

公式 HP >> http://www.kibounokuni.jp/

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菖蒲(原題:Tatarak)

監督:アンジェイ・ワイダ
撮影:パベル・エデルマン 出演:クリスティナ・ヤンダ(マルタ)、パベル・シャイダ(ボグシ)、ヤン・エングレルト(マルタの夫)

大河を望むポーランドの小さな町。
医師と妻マルタは長年連れ添ったものの、第二次大戦中のワルシャワ蜂起の際、二人の息子を亡くしたことがしこりになって、夫婦間に距離ができてしまった。
夏が訪れようとする頃、医者の夫は妻が重病で余命いくばくもない事を知るが、妻に告知できずにいた。
一方、マルタは河辺のカフェで美しい青年ボグシを見かけ、彼の輝くような若さと純真さに、淡い好意と亡くなった息子たちの姿をだぶらせていた。
ある日、マルタはボグシと河で泳ぐ約束をしたが・・・。

ワイダ監督の撮影現場。
主演の女優クリスティナ・ヤンダの私生活で、この作品の撮影監督だった夫・エドヴァルト・クウォシンスキが亡くなるまでを語るヤンダ。
そして、映画のストーリーの3つの構造から成り立っている。
だが、混乱することもなく、滔々と流れる大河に身をまかせているような浮遊感のある作品だった。
映像のなかにハッとする美しさ、残酷さ、シュールで幻想的な場面があり、その一つひとつの場面に暗示があった。これが本物の「大人の映画」だと感じた。
※女優クリスティナ・ヤンダが撮影現場から逃げ出すシーンがとても印象深く、言い知れぬ胸騒ぎがした。(美)

2009年/ポーランド/カラー/87分/シネマスコープ
配給:紀伊国屋書店、メダリオンメディア

★10月20日より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開

公式 HP >> http://shoubu-movie.com/

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演劇1・演劇2

演劇1

監督・製作・撮影・編集:想田和弘
出演者:平田オリザ ほか

想田監督の観察映画第3弾。
日本を代表する劇作家で演出家の平田オリザと、彼が主宰する劇団・青年団。
『演劇1』は、その創作現場にカメラを向け「平田オリザの世界」を徹底解剖する。
台詞や動きがあまりに複雑かつ自然な平田作品を、即興の産物であると勘違いする観客もいる。しかし、台詞はすべて平田によって戯曲に書き込まれ、俳優の動きや仕草は細心の注意を払って練り上げられたものである。したがって、稽古場は修羅場と化す。現実世界を原寸大で再現した、精密モデルのような超リアルな舞台の裏では、極めて不自然で徹底的な操作が行われているのだ。想田和弘監督は、戯曲の執筆、稽古、照明、美術、劇団運営の実際など、あらゆる活動に密着し、その哲学や方法論、組織論を描き出している。

平田オリザさん。名前だけは知っていたが、まさか、こんな天才が日本にいたなんて!そして、天才とは睡眠欲をコントロールできるひとのことだと確信。私なんて8時間くらい寝てるんですけど(笑)。とにかく、まずは駒場東大前のアゴラ劇場へ足を運ばねば、と心躍った私でした。(千)

圧倒されました。ここには、目からウロコが落ちるような何か「真実のようなもの」が映っている。 まず内面があって、それから表現があるのではなく、人間とは最初から演じる生き物であるということ。 ほんとうの自分とか、自分らしく生きる、という時の「自分」とは何でしょうか。 そんなよくわからない自分というものにゆさぶりをかけ、玉ねぎの皮をむいていくように淡々と解体してしまうような、不思議な時間が、この映画には流れています。 自分探しに疲れてしまった若者や大人たちもこの映画を観た方がいいですねー。 ほんとうの自分なんかとりあえず置いといて、笑顔の練習でもした方がいいってことかなー。 人間は、関係性の中にしかいないということがわからなくなってしまっているのは、やはり何かの洗脳なんでしょうね。(せ)

2012年/日本・米国/HD/172分
配給:東風

★10月20日(土)より渋谷イメージフォーラムにてロードショーほか全国順次公開!

演劇2

監督・製作・撮影・編集:想田和弘
出演者:平田オリザ ほか

観察映画第4弾。
演劇とは、コストも時間もかかる超アナログな芸術である。逃れがたく経済が付き纏う。
青年団の事務所には『三文オペラ』の文句が掛けられている。「まず食うこと それから道徳」。しかし、不況と財政難で公的な芸術関連予算は縮小傾向に。この逆境に対する平田の戦略は、シンプルかつ遠大なものだった。「演劇が社会にとって必要不可欠である事」を世間に納得してもらおうというのだ。平田は文字通り東奔西走。教育現場や地方の演劇祭、果てはメンタルヘルスケア大会まで、その知識とノウハウを伝えていく。政治家への働きかけも積極的だ。他方で、海外進出やキラーコンテンツとしての「ロボット演劇」など、助成金に頼らない劇団経営を模索する。
『演劇1』が「平田オリザの世界」ならば、『演劇2』は「平田オリザと世界」を見つめている。

天才・平田オリザさまですら経済的な問題に日々頭を悩ましていた。やっぱり、この世はユダヤマネーなのか、と悲しくなる一方で、この資本主義の社会に負けないよ!って云う信念を持って演劇しているオリザさんを見ていると元気がでた。オリザとは本名だそうで、稲のことだ。それにしても想田監督はオリザさんのことが大好きなんだなあと思った。画面(スクリーン)からオリザさんへの愛が溢れていた。(千)

ここまで来ると、ほんとうにもう危険思想という感じです・笑。
だって、ロボットが演技すると、感情を持っているように見える…ということは???
ロボット演劇のテクニカルアドバイザーである大学教授の言葉として引用されたのは、「心っていうのは、誰かによって書かれたものに違いない。自分が個と思っているものは、ロボットのプログラムと本質的に一緒ではないか」ということ。 私たちはロボットのように、自動的に演じてしまっているんですね。 しかし、肝心なのは、私たちには自己プログラミングできる能力があるということかもしれません。 自分があるから演じているのではない。演じることで自分をプログラミングすることが出来るんだと思います。 演劇にしろ映画にしろ、芸術を創造するということは、自分の内部表現を書き換えるということ、 自己プログラミングの作業かも知れないなーと思いました。 この現実は、とてつもなくおもしろいことが起こっているのかもしれません。 そして、そのとてつもないことが、この映画にそのまま写し取られているように思いました。(せ)

2012年/日本・米国・フランス/HD/170分
配給:東風

★10月20日(土)より渋谷イメージフォーラムにてロードショーほか全国順次公開!

公式 HP >> http://engeki12.com/

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よみがえりのレシピ

監督: 渡辺智史
プロデューサー:高橋卓也  撮影:堀田泰寛  整音:石寺健一  編集:渡辺智史
出演者: 奥田政行、 江頭宏昌ほか

栽培者自身が種苗を管理し守ってきた在来作物(ざいらいさくもつ)は、世代を超えて地域に受け継がれてき。しかし品種改良された作物より収量が少なく、病気にも弱いことから市場で評価されず、多くは消失。そんな時代に独自の料理法で在来作物の存在に光を当てた“山形イタリアン”「アル・ケッチャーノ」の奥田政行シェフ。野菜の個性的な味・食感・香りを生かした料理には、新鮮な魚介や肉と、地域の風土や物語も盛り込まれます。また焼き畑農法を研究する江頭宏昌先生は「ここにしかない価値」を秘める在来作物が地域再生の起爆剤になると確信しています。手間を惜しまず種(たね)を守り続ける農家の人たち。

去年のドキヤマで見逃していて、とても見たくて切望していた作品(シネジャ83号に書いてます・笑)でした。 モンサント系の種がほとんどの現在の日本で、いかに在来種が大切かを切実に訴えているわけではないが、それはとても大事なことだと理解できる。また、発芽のシーンなどを見ていると渡辺監督の温かさを感じるとともに故・小川紳介監督の作品を思い出させられた。そして山形イタリアン「アル・ケッチァーノ」の料理が凄く美味しそう!ぜったい食べに行きます!(千)

私たちがマクドナルドやケンタッキーで食べて、スーパーの見栄えの良い安い野菜を買っているうちに、ほんとうに奥深い、豊かなものがたくさんたくさん失われて行きました。遺伝子組み換え作物などで、多国籍企業が種を私物化し、世界の食を支配しようとしています。 F1と呼ばれる一代限りの種がほとんどになり、農家の自家採種はほとんど行われなくなってしまいました。
しかし、このような事情は、この映画では、まったく語られません。 原発のことでもすごく思ったことなんですが、何かに反対するという行為や表現と、何かに希望を見出すという行為や表現とでは、同じテーマでも、まったく別のことになってしまいます。 どちらも必要なことではあるのでしょうが、この映画には、日本の未来が輝いて見えるような「希望」があって、私はそれがとても素晴らしいことに感じました。反対したり、糾弾したりすることよりも、こちらの方が奥行があって、すごく豊かな感じがします。在来作物を守り続けるということで、この希望をつないできた名もない人たちと、人と人をつなぎ、新しい価値を創造している奥田シェフたちに心から拍手を送りたい。渡辺監督の自己主張しない映像も好感。(せ)

2011年/日本/95分
配給:「よみがえりのレシピ」製作委員会

★10月20日(土)より渋谷ユーロスペースにてロードショーほか全国順次公開!

公式 HP >> http://y-recipe.net/

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ペンギン夫婦の作りかた

監督:平林克理
脚本:平林克理、アサダアツシ
撮影:小松高志
音楽:安川午朗
出演:小池栄子(歩美)、ワン・チュアンイー(ギョウコウ)、深水元基(法務局の役人)

東京でフリーライターをしていた歩美と、出版社で専属カメラマンだった中国人ギョウコウは5年前に国際結婚をするが、彼の出版社が倒産。それを聞いた歩美は「ラッキー!石垣島に旅行しない?」と気晴らし旅行に出かけた。二人はこの石垣島が気に入り、移住することに決めたが・・・。

うわぁ~い!素敵な風景、料理、小池&ワンのラー油風味の夫婦、島の人々…ホントに行ってみたくなったぁ~!
実は我が娘(数ヶ月前は渋谷アパートに住んでいた)が、突然、何を思ってか、仕事、習い事をやめて、アパートを引き払い、「小笠原諸島」に行ってしまった。
それからはいつもblogで生活を知らされているが、似たような景色があり、食べ物の豊富さに驚いている。だから思い入れもあり一層楽しんだ作品。
主役の二人+法務局の面接官のやり取りは絶品!(美)

原案は、辺銀愛理さんの著書「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし」。石垣島で辺銀食堂を営む辺銀暁峰(ぺんぎん ぎょうほう)さんと辺銀愛理さんの物語。
外国人が帰化する時、好きな名字をつけることができる。私の友人のイラン人アリさんは有田姓。フィンランド人のツルネン・マルテイさんは、そのまま当て字で弦念丸呈さん。好きにつけていいからと、辺銀(ぺんぎん)姓を名乗ってしまった愛理さんたち! 素敵です。そんな彼女たちだからこそ、気に入ったから石垣島に住んでしまおうという大胆な発想ができたのですね。
法務局の審査官との面接を軸に夫の帰化が認められるまでがテンポよく描かれています。実際に国際結婚した何人かの友人たちから聞かされてきたのは、「審査官がどうしてそこまで立ち入って質問するの?」と、ちょっとここに文字にして書けないようなことばかり。さすが、これは映画。そういった部分はカットして、面白可笑しく絶妙なやり取りが展開。辺銀食堂に行ってみたくなりました。(咲)

2012年/日本/カラー/90分
配給:プレシディオ

10月20日(土)より全国ユナイテッド・シネマほかにて公開

公式 HP >> http://www.penguinfufu.jp/

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第25回東京国際映画祭

期間:2012年10月20日(土)~10月28日(日) 9日間
会場:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
上映作品:109作品

●コンペティション 17作品
●特別招待作品 22作品
公式オープニング作品『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』
特別オープニング作品『JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]』
公式クロージング作品『人生の特等席』

●アジアの風-中東パノラマ 17作品
●インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト 6作品
●ディスカバー亜州電影~伝説のホラー&ファンタ王国カンボジア 3作品
●日本映画・ある視点 10作品
●WORLD CINEMA 12作品
●natural TIFF 8作品
●特別上映-TIFF 特別感謝賞記念 レイモンド・チョウ オールナイト 
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』『霊幻道士』『キャノンボール』
●特別上映-審査委員長 特別オールナイト コーマン魂
『レッドバロン』『ピラニア』『モンスター・パニック』
●TIFFin 日本橋 6作品
●みなと上映会 3作品
●文化庁映画賞 3作品


チケット:10月6日より発売開始 ticket boardで取り扱い中

今回から携帯電話がチケットになります。チケット発券の手数料が不要で、会場入り口で携帯をかざすだけ。
従来の電話予約も受付。ticket boardインフォメーションセンターへお問い合わせください
Tel. 0570-02-7023 (10時~20時、開催期間最終日まで無休)
★学生の方は、当日券が500円!(劇場窓口販売分のみ)対象外の作品がございます。


スケジュール、上映作品の詳細は公式HPで
http://2012.tiff-jp.net/
(c)2012TIFF

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第25回東京国際女性映画祭:フィナーレ -映像が女性で輝くとき-

期日:2012年10月21日(日)
会場:セルバンテス文化センター東京
上映作品:
11:00『ひまわりと子犬の7日間』
監督:平松恵美子/出演:堺雅人、中谷美紀/117分
(C)2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会

14:15 『100年の谺(こだま)─大逆事件は生きている』
監督:田中啓/企画・脚本:藤原智子/90分/ドキュメンタリー

17:00『そしてAKIKOは…AKIKO─あるダンサーの肖像II』
監督:羽田澄子/120分/ドキュメンタリー

チケット:チケットぴあ Pコード550-260(10月20日まで)


     『ひまわりと子犬の7日間』     『100年の谺―大逆事件は生きている』 『そしてAKIKOは…AKIKO―あるダンサーの肖像II』

公式 HP >> http://www.tiwff.com/index.html

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推理作家ポー 最期の5日間 (原題:THE RAVEN)

監督:ジェームス・マクティーグ
脚本:ベン・リビングストン、ハンナ・シェイクスピア
撮影:ダニー・ルールマン
音楽:ルーカス・ヴィダール
出演:ジョン・キューザック(エドガー・アラン・ポー)、ルーク・エヴァンス(エメット刑事)、アリス・イヴ(ポーの恋人・エミリー)、ブレンダン・グリーソン(アリスの父・ハミルトン大尉)

1849年のボルチモア。ある殺人事件を担当することになった若手刑事エメット・フィールズは、事件が推理作家エドガー・アラン・ポーの作品によく似ていることに気付く。
貧乏で酒びたりの生活を送るポーははじめこそ疑いをかけられるが、自らのアリバイも証明された。それらはすべてポー自身の小説の模倣殺人だったため、事件解明のため捜査に加わるが・・・。

1849年10月7日、「レイノルズ…」と言う不可解な言葉を残して死んでしまったエドガー・アラン・ポー。怪奇・幻想小説で世界初の推理小説家。彼の最期の日々は謎に包まれているらしい。
怖いもの好きな私には見逃せない作品だが、惜しいかなエドガー・アラン・ポーの原作は読んでいない。これを読んでいたら100%楽しめること保障する。
スケールの大きな殺人仕掛け、仮面舞踏会の盲点、不穏な空気いっぱいの烏の大群…。

ポーを演じるジョン・キューザックは、事件が佳境に入るにしたがって、「小説家魂」が出てきて、自分を抑えられなくなる様子に「上手い役者だな」と改めて感じた。

※暗く残酷な内容だが、それほど怖く感じなかったのは、色調が古典的であること、ランプやろうそくで温かみのある間接照明が落ち着きを与えてくれていたからだろう。(美)

2012年/アメリカ/カラー/110分/シネスコサイズ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

★10月12日より丸の内ルーブル、新宿ミラノ他にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.movies.co.jp/poe5days/

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フタバから遠く離れて

監督:舩橋淳(ふなはしあつし)
プロデューサー:橋本佳子
撮影:舩橋淳、山崎裕
音楽:鈴木治行
出演:双葉町のみなさん

日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、福島県双葉町の住民1423人が、約250キロ離れた埼玉県の旧騎西高校で避難生活を送ることになった。以前は原発によって潤った町。さらに招聘しようと考えていた町長。その矢先に未曾有の地震と津波に襲われ、そして「想定外」の事故が起きてしまった。突然、否応なく故郷をあとにし、すぐに帰れるはずだったのに先の見えないまま日々を暮らすことになった町の人たち。その日常を9カ月間にわたり映像に残し、この1本の映画ができあがった。エンディングテーマ曲「for futaba」は、坂本龍一が心をこめて書き下ろしている。

大震災を記録した映像はこれまでずいぶん観てきて、そのたびに胸がふさがりました。故郷から放射能に追われるように避難した方々は、2ヶ月ぶりにようやく我が家に一時帰宅できます。変わり果てた風景、命を落とした人へと花を手向ける姿、あれこれに涙するのですが、ある厩舎が映りました。ゴミの山とも見えたものは、繋がれたまま餓死した牛たちでした。「一番むごい死に方だ」と言ったご主人がどんなにここに戻りたかったか、牛たちがどんなに待ちわびていたかと思うと、今でも泣けてきます。
戻ってはこない失われた人やもの、いつ終わるともしれない避難所の生活…。都市圏が便利な生活を享受するために地方に強いた犠牲は、自然災害が引き起こしたとはいえ、こんな形であらわになりました。(白)

2011年/日本/カラー/96分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ドキュメンタリージャパン、ビッグリバーフィルムズ
©2012 Documentary Japan, Big River Films

★10月13日(土)よりオーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://nuclearnation.jp/

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桃(タオ)さんのしあわせ(原題:桃姐)

監督:許鞍華(アン・ホイ)
原作・製作:李恩霖(ロジャー・リー)
脚本:陳淑賢(スーザン・チャン)
編集:鄺志良(コン・チョーリン)
撮影:余力為(ユー・リクワイ)
音楽:羅永暉(ロウ・ウィンファイ)
出演:葉德嫻(ディニー・イップ)、劉德華(アンディ・ラウ)、秦海璐(チン・ハイルー)、秦沛(チョン・プイ)、王馥荔(ワン・フーリー)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、徐克(ツイ・ハーク)、洪金寶(サモハン)

13歳から60年間、同じ家族の下で働いてきた家政婦の桃さん(桃姐/桃ねえさん)。雇い主の家族はアメリカに移住してしまい、映画プロデューサーをしている雇い主の息子ロジャーと二人暮らし。その桃さんが、ある日脳卒中で倒れた。桃さんに幼い頃からごく当たり前に身の回りの世話をしてもらってきたロジャーだったが、桃さんが倒れ老人ホームに入りたいと言ったことから、老人ホーム探しが始まる。桃さんが入った老人ホームに仕事の合間に訪れるロジャー。ロジャーと桃さんは「母と息子」のような絆で結ばれてゆく。



©Bona Entertainment Co. Ltd.

これは、この作品のプロデューサー、ロジャー・リーの実体験が基になっている。
誰にでも訪れる老い、そして人生の仕舞い支度、いつの世も変わらない人と人との絆の尊さ、そんな普遍的なテーマが描かれる。
桃さんを演じたディニー・イップはベネチア、台湾、香港で主演女優賞を受賞。ロジャーを演じるのはアンディ・ラウ。他にもたくさんの香港映画人(上記の出演者以外にレイモンド・チョウ、ジョン・シャム、ロー・ラン、チャップマン・トー、アンジェラ・ベイビー、ニン・ハオ監督など)がカメオ出演している。
今年3月、中国、香港、台湾で公開されて以来、15億円を突破する興行収入を上げ、エンターテイメントでない作品としては異例のメガヒットを記録した。
本作が11年ぶりの銀幕復帰となったディニー・イップは、昨年9月に開催された第68回ヴェネチア映画祭で、中華圏二人目となる最優秀女優賞を獲得して以来、台湾金馬奨、アジア映画祭に続き、今年4月に行われた香港電影金像奨でも主演女優賞を受賞した。また金像奨では作品賞、監督賞(アン・ホイ)、脚本賞(スーザン・チャン)、主演男優賞(アンディ・ラウ)の最多5部門、主要賞を独占した。

シネマジャーナル香港電影金像奨記事
http://www.cinemajournal.net/special/2012/hkfa/index.html
撮影:宮崎暁美 撮影:宮崎暁美
     最優秀監督賞 許鞍華(アン・ホイ)      最優秀脚本賞 陳淑賢(スーザン・チャン)

撮影:宮崎暁美 撮影:宮崎暁美
最優秀主演女優賞 葉徳嫻(ディニー・イップ)     最優秀主演男優賞 劉徳華(アンディ・ラウ)  

撮影:宮崎暁美 撮影:宮崎暁美
    主演男女優賞劉徳華&葉徳嫻        秦沛(チョン・プイ)
                        助演男優賞ノミネート


撮影:宮崎暁美 撮影:宮崎暁美
秦海璐(チン・ハイルー)           桃姐一行(左 原作者李恩霖)    
助演女優賞ノミネート                            

(撮影:宮崎暁美)

香港の老人ホーム事情や、老人ホームでの生活、リハビリのやり方なども観ることができて興味深かった。中でも自分で食事ができないお年寄りを横並びにして、スタッフがイスを移動しながら一口づつ食事を口に運んでいく姿には驚いた。日本では、そういうのは見たことがない。それに香港の車いすは安全ベルトが胸の位置にもあるのにびっくりした。日本では腰の位置だけのものしか見たことがない。やはり坂の多い街だからだろうか。
許鞍華監督は『女人、四十』でも、老人介護について描いていたし(そういえば、『女人、四十』もロジャー・リーがプロデューサーである)、他にもDV、マイノリティ、貧困など、社会問題を含む作品を多く撮ってきたが、深刻な話をユーモアに包んで描くのがうまい。『桃(タオ)さんのしあわせ』でも、老人ホームに入るのに値切るシーンが出てきて笑える。
香港電影金像奨取材で、今年4月、香港に行った時、現地で2回観たが、4月14日(土)の夕方旺角の映画館で観たときはほぼ満員だった。公開が始まって1ヶ月くらいたっていたのにいっぱいでびっくりし、大ヒットしているというのを実感した。香港の映画館に入ったことは何度もあるのだけど、こんなに人が入っていたのは初めてだった(笑)。若い人が多かったのにも驚いた。
そして翌日15日、金像奨当日の朝9時の回を観に行ったら、こちらはガラガラだった。チムサッチョイの新しくできたONEというビルにある映画館だったけど、やっぱりそんなに早い時間に行く人は少ないのだろう。モーニングショーは40ドルだったけど、シニア割引があって10ドル(120円くらい)だった!(暁)

2011年/中国・香港/119分/広東語
配給:ツイン

★10月13日より、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://taosan.net/

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情熱のピアニズム(原題:Michel Petrucciani/Body&Soul)

監督 マイケル・ラドフォード
出演:ミシェル・ペトルチアーニ、チャールス・ロイド、アルド・ロマーノ、リー・コニッツ 他
編集/イヴ・デシャン 撮影/ソフィー・マンティニュー 録音/オリヴィエ・ル・ヴァコン
2011/仏・独・伊/カラー/デジタル/ビスタ/5.1ch/103分/日本語字幕:寺尾次郎
提供:コムストック・グループ 配給:キノフィルムズ

~ジャズピアニスト・ミシェル・ペトルチアーニの生涯~

ヨーロッパで初めて名門ブルーノート・レコードと契約したフランス最高のジャズピアニスト・ミシェル・ペトルチアーニの36年の生涯は、全身の骨が折れた状態で誕生した時から「数奇な人生」が始まっていた。 その病のために大人になった時の背丈は約1メートル。自力での歩行は常に補助器具なしでは無理だった。だが、彼には「二つの天分」が与えられていた。それは誰にも負けない音楽的才能と誰からも愛されるカリスマ的人格だった。

魔法のような演奏に酔いしれる

身体を支える器具でステージに登場した彼は、器具を手放すと素早く、自分の何十倍もあるグランドピアノに身体をバタンと預ける。彼にとってピアノは体を支えてくれる頼りになる物体でもあり、溢れんばかりの才能を開花させる楽器でもあった。
足元には、幼い頃から手ほどきを受けた父親手製のペダル台を置いて、演奏が始まる。
小さくて壊れそうな身体だが手だけは大きく、鍵盤を滑走する指はまるで魔法にかかったとしか形容できない。ピアニッシモからフォルティッシモの強弱の幅を全身の体重を傾けて弾く姿に驚く。その音には自信が漲り、輝き、そして情熱がほとばしっていた。
セッションする相手の音にも耳を傾け、協調の中に新しい提示のふくらみも加えていく。
瞬時の転調などは、彼独特の才能だろう。

全速力で走り抜けた記録映画

監督は名作『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード。ミシェル・ペトルチアーニの膨大な資料や現存するフィルムを使い、家族、音楽仲間、妻や愛人たちにインタビューしている。その中には彼の弱点でもある暗部にも迫っているが、それはここでは書くまい・・・。
1998年に年間220回のコンサートを開き、その疲れから体調が悪化。翌年、ニューヨークで亡くなった。2002年、パリ18区の広場が「ミシェル・ペトルチアーニ広場」と名づけられ、墓は「ピアノの詩人」と呼ばれる作曲家ショパンの隣にある。



©Les Films d'Ici–Arte France Cinéma-LOOKS Filmproduktionen GmbH–Partner Media Investment–Eden Joy Music–2011

★10月13日(土)より、シアター・イメージフォーラム、10月27日名古屋名演小劇場ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.pianism-movie.com/

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ミステリーズ 運命のリスボン(原題:MISTERIOS DE LISBOA)

監督:ラウル・ルイス
原作:カミロ・カステロ・ブランコ
脚本:カルロス・サボーガ
撮影:アンドレ・スザンコウスキ
音楽:ホルヘ・アッリアガダ
出演:アドリアーノ・ルース(ディニス神父)、マリア・ジュアン・バストス(アンジュラ・リマ)、リカルド・ペレイラ(アルベルト・デ・マガリャンエス)、クロチルド・エム(エリーズ・ド・モンフォール)、アフォンソ・ピメンテウ(ペドロ・ダ・シルヴァ成人)、ジュアン・アハイス(ペドロ・ダ・シルヴァ少年期)、メルヴィル・プポー(エルネスト・ラクローズ)、レア・セドゥー(ブランシュ・ド・モンフォール)、マリック・ジディ(アルマニャク子爵)

19世紀前半、内戦下にあったポルトガル王国。リスボンの修道院で育った孤児の少年ジョアンには姓がない。ジョアンを産んだ母は、出自を明らかにはできずどうしても手元で育てられない事情があった。出生の秘密を知るディニス神父は、ある日ジョアンを実母のアンジェラと引き合わせる。不可解な秘密はジョアンの成長とともに少しずつ明らかになっていく。

とても一度では覚えられないほど、多くの登場人物がそれぞれに秘められた過去を持ち、いくつもの顔を見せていきます。見続けながら誰がだれやら、相関図がほしい!と思ってしまいました。ポルトガル、フランス、イタリア、ブラジルとところを変えてつむぎ出される物語を、背景を楽しみながらご覧ください。入り組んだストーリーがいつしか一続きになりますが、メビウスの輪のように捩れてまたもとに戻り、人間の営みは終わらずに繰り返されていくような気がしました。ラウル・ルイス監督は多作の名匠とのことですが、昨年70歳で亡くなられ、これが遺作となりました。合掌(白)

2010年/フランス,ポルトガル/カラー/267分/ハイビジョン/デジタル上映
配給:アルシネテラン
©CLAP FILMES(PT)2010

★10月13日(土)~11月30日(金) シネスイッチ銀座にてロードショー、全国順次公開

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/mysteries/

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SAFE/セイフ

監督・脚本:ボアズ・イェーキン
撮影:ステファン・チャプスキー
プロダクションデザイン:ジョセフ・ネメック三世
音楽:マーク・マザースボウ
出演:ジェイソン・ステイサム(ルーク・ライト)、キャサリン・チェン(メイ)、ジェームズ・ホン(ハン・ジャオ)、クリス・サランドン(トラメロ市長)、ジョセフ・シコラ(ヴァシリー)、ロバート・ジョン・バーク(ウルフ警部)、レジー・リー(チャン・クワン)

ルーク・ライトはNY市警の元特命刑事だったが、今は落ちぶれて格闘技の賭けファイターとなっている。八百長試合に誤って相手を死なせてしまったルークは、そのために大損害を受けてしまったロシアのマフィアに妻を惨殺されてしまう。生きる意欲をなくして地下鉄のホームに佇んでいたとき、何者かに追われている中国人の少女を発見する。追っ手の中に妻を殺したロシア人を認め、思わずルークは少女の逃亡を助ける。メイというその少女には数字を記憶し忘れないという特殊能力があり、チャイニーズマフィアから長い暗証番号を覚えさせられていた。

しょっぱなからすごいアクションシーンが連続し、今からこんなに盛り上げてしまっていいのだろうか?!というのは杞憂でした。いくらでも山がやってきます。数字を記憶する能力など皆無の私には、神業としか思えないメイの記憶力。おかげで命を狙われるのですが、ジェイソン・ステイサムがそばにいればきっと大丈夫、と思ってしまいます。ロシアン・マフィア、チャイニーズ・マフィア、三つ巴の闘いがどう収束していくのか、予想もフル回転で!(白)

2012年/アメリカ/カラー/94分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ=ポニーキャニオン
©2011 Safe Productions,LLC All Rights Reserved.

★10月13日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー

公式 HP >> http://www.safe-movie.jp/

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生き抜く 南三陸町 人々の一年

監督:森岡紀人
プロデューサー:井本里士
撮影:原淳二、古東千由、大西史浩

3月11日東日本大震災。毎日放送のスタッフは津波の一報を得て渋滞と混乱の中28時間後に宮城県南三陸町にたどり着いた。全てが破壊され、その瞬間から時を止めている街の中で懸命に動く人たちがいた。以来1年間にわたって人々に寄り添い、撮りためた800時間の映像を編集したドキュメンタリー。

被災地、被災者とひとくくりにするのではなく、個人に向き合って、その人が抱える思いをそっと映しとっていました。それが毎日放送というマスコミの、テレビ局の製作であるのに驚きます。3部作としてテレビで放映したものに、シーンを加え構成も変えて1本に編集しなおしたものです。
最後まで町民に避難を呼びかけていた夫を探す妻。ずっと遺体は見つかっていません。 娘を亡くした父。妻を亡くして子供二人と残された夫。さまざまな境遇の人が登場します。1年あまりたって、立ち上がる人もいれば、なんの希望も見出せずにいる人もいました。静かな映像ですが、センセーショナルな作りよりも感情がこちらに届きます。情緒過多にならず、程よい距離できっちりと報道しています。(白)

2012年/日本/カラー/99分/
配給:MBS
©1995-2012,Mainichi Broadcasting System,Inc.All Rights Reserved.

★10月13日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.mbs.jp/ikinuku-movie/

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ツナグ

監督:平川雄一朗
原作:辻村深月「ツナグ」(新潮文庫刊) 脚本:平川雄一朗
撮影:中山光一
音楽:佐藤直紀
出演:松坂桃季(渋谷歩美)、樹木希林(渋谷アイ子)、佐藤隆太(土谷功一)、桐谷美玲(日向キラリ)、八千草薫(畠田ツル)、橋本愛(嵐美砂)

一生でたった一回一人にだけ、死者と再会を叶えてくれる人がいるらしい…そんな都市伝説が囁かれていた。
半信半疑で依頼してくる人は、ごく普通の男子高校生が現れるので驚くが、本人の歩美(松坂桃李)は「ツナグ」能力を、祖母のアイ子から正式伝授される前の見習い中だった。

え~、こんな陳腐なストーリーとナメてかかった私。なんと涙ボーボー流して観てしまった。
誰でも「会いたい」人がいると思う。私もいる。でも会うと閉じかけた悲しみがまた開くような気がして恐い。「死んでしまった」悲しみは時間と生活の雑事の中で薄まっていくものだから・・・。
「こんなこと映画の中だけだよ」と200パーセントわかっているはずが、本当に泣けた。試写室を出る時、私の泣きあとをみて東宝の方が驚いて見ていたような気がした。

「ツナグ」のお約束ごと。
★依頼人が死者に会えるのは一回だけで一人だけ。
★死者も会えるのは一回。死者からは依頼できない
★会えるのは月夜で夜明けまで。

※これって凶悪殺人事件の犯人探しにも活用できるじゃん!といろいろ空想してしまった。警官や刑事が自分の一回の権利を警視庁に五百万円くらいで売る~犯人見つかる~世の中平和ってのはどうかなぁ~。そういうことが都市伝説で広まると凶悪犯罪はなくなる!
五百万円なら売りたい私。(美)

2012年/カラー/129分/ドルビーデジタル
配給:東宝

★10月6日より全国東宝系にてロードショー公開

公式 HP >> http://tsunagu-movie.net/

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アウトレイジ ビヨンド

監督:北野武
脚本:北野武
撮影:柳島克己
音楽:鈴木慶一
出演:ビートたけし(元大友組組長・大友)、西田敏行(花菱会若頭・西野)、三浦友和(山王会会長・加藤)、加瀬亮(山王会若頭・石原)、小日向文世(マル暴刑事・片岡)

5年前、ヤクザの世界で生き残りをかけた権力闘争で、暴力団「山王会」は関東の頂点を極めて、政界にまで勢力を広げていた。
彼らの撲滅を目指す刑事の片岡は、関西最大の「花菱会」と対立させるべく策略を考えていた。
そんな中、恨みのある木村に刺されて、獄中で死んだと思われていたはずの大友(ビートたけし)が生きていたという噂が広まる。その大友が出所することになり・・・。

そうそうたる俳優陣をみて、「この中で生き残るのは誰?」と予想してから観た。
一位は小日向文世、二位が西田敏行、三位が新井浩文
度肝をぬくような展開も、あっと驚く残虐シーン(一箇所、あるにはあるが・・・)もないが、スピードとヤクザ言葉のこなれた台詞で最後まで飽きずに観られた。
警察の癒着が逸脱しているように思ったが、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』よりはこちらの方が現実味があると思う。
最後に笑う(生き残る)人は、私の予想はすべて外れてしまったが、最後の幕切れは見事。「さすが北野監督!」と叫びそうになった。
※若頭・加瀬亮がキレると声が甲高くなり、凄みが増していた。(美)

2012年/カラー/112分/シネマスコープ
配給:ワーナー・ブラザーズ映画/オフィス北野

★10月6日より新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://wwws.warnerbros.co.jp/outrage2/

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特集上映「中国映画の全貌2012」

期日:10月6日(土)~11月16日(金)
会場:新宿 K's cinema
チケット:当日料金 大人1500円、大・高1200円 小・中・シニア1000円
作品:46本
・開催記念特別公開 『ロスト・イン北京』『私の少女時代』
・甦る!新中国草創期の中国映画 『五人の娘』ほか
・若き巨匠 ジャ・ジャンクーVSワン・ビン 『一瞬の夢』『長江哀歌』ほか
・歴史から学ぶ 『孔子の教え』ほか
・世界の映画作家 『覇王別姫』ほか
・政治の嵐、そして… 『青い凧』ほか
・現代中国模様 『海洋天堂』ほか
・少数民族の存在 『トゥヤーの結婚』ほか
・現代中国恋愛事情 『狙った恋の落とし方。』ほか


スケジュールの詳細はHPでご確認ください http://www.ks-cinema.com/movie/chinesefilm2012/

ロスト・イン・北京(原題:苹果)

監督:リー・ユー
脚本:リー・ユー、ワン・リー
出演:ファン・ビンビン(ピングォ)、レオン・カーフェイ(リン・トン)、トン・ダーウェイ(アン・クン)、エレイン・チン(ワン・メイ)、ツアン・メイホイ(ツシャオ・メイ)

ピングォは東北の村から北京に出稼ぎにきて、リン・トンの経営するマッサージパーラーで働いている。美人で気配りのできるピングォは人気ナンバー1。ビルの窓拭きをしている夫アン・クンがあるが、店では既婚者を雇わないので内緒にしている。ある日、酔っ払って店のベッドで眠り込んだピングォは、女好きなリン社長を夫と間違えて抱きついてしまう。途中で気づいて押しのけるが、リンは離さずに結局レイプされた形になった。ちょうど窓拭きをしていたアン・クンが目撃して激怒。おまけにピングォは妊娠してしまう。夫の子かリン社長の子かわからないピングォは中絶しようとするが・・・。

経済成長著しい中国、その要の都市北京に住む二組の夫婦の悲喜劇。中国一の美人女優ファン・ビンビンの体当たりの濡れ場が話題になったそうですが、それを差し引いても、活気のある街のようすや、成金の富裕な夫婦と自分も一攫千金の夢をつかみたい貧しい若い夫婦の対比が面白いです。またお客のセクハラに抗ってクビになってしまったピングォの後輩シャオメイが切なくて印象に残ります。登場するたびに衣装やメイクが変わり、若い女の子がだんだんどうしようもなく堕ちていくのがわかるのです。
本作は、2007年のベルリン映画祭のコンペ参加作品。激しいセックス描写が問題になって中国当局からカットの要請がありましたが、間に合わずそのまま上映したのだとか。中国公開時には要請どおりのカット版にも関わらず、2008年に上映禁止となったそうです。今回はカットなし完全版の上映です。(白)

『ブッダ・マウンテン』で、2010年の東京国際映画祭芸術貢献賞と最優秀女優賞を受賞した李玉(リー・ユー)監督が、『ブッダ・マウンテン』の前に撮影した作品。私はてっきり、その後に撮影した作品かと思ったけど、5年も前に撮影した作品だったんだと知りびっくりした。それほど、この『ロスト・イン・北京』は、けっこう大胆な性描写がある作品だった。
主人公苹果(ピングォ=リンゴ)を演じたのは、『ブッダ・マウンテン』で東京国際映画祭主演女優賞を受賞した范冰冰(ファン・ビンビン)。『ブッダ・マウンテン』では、范冰冰が主演女優賞?という疑問の声もあったが、この『ロスト・イン・北京』を観れば、ただ綺麗なだけの女優ではなく、それだけの演技力があるということがわかる。中国では、なかなかそういう女優はいなかったと思う。
李玉監督はなかなか大胆な演出をする女性監督だと思った。しかもプロデューサーの方励(ファン・リー)は実の父親とのこと。こういう大胆な性描写があるような作品を親子、しかも父と娘で製作するというのも驚き。
それにしても、地方から北京に出稼ぎに来て成功した人と、これから成功を目指す人との交差という話題は、現代の中国の縮図なのだと思った。范冰冰の夫役を演じた佟大為(トン・ダーウェイ)も中国の人気若手俳優で、『レッド・クリフ』ではヴィッキー・チャオに恋心をもつ兵士の役を演じていた人。レオン・カーファイのオヤジ役は、最初違和感があったけど、後半すっかりハマっていると思った。(暁)


(左から)                          
范冰冰 2011年東京国際映画祭審査員             
李玉監督 2011東京国際映画祭にて              
左:李玉監督 右:方励プロデューサー 2011東京国際映画祭にて

2007年/中国/カラー/109分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:オリオフィルムズ

私の少女時代(原題:我的少女時代)

監督:フェン・ゼンジ
原作・脚本:チャン・ハイディー
出演:リー・イーシャオ(ファン・タン)、ワン・イー(リー・ジャン)

1960年代後半のある都市。ファン・タンは5歳でかかった病気のため、下半身が麻痺して動かない。学校へは行けず、いつも2階の窓辺で一人勉強を続けていた。外を眺めていて、アコーディオンを弾く青年リー・ジャンと言葉を交わし、読書好きな二人はすぐに親しくなる。しかし文化大革命の波が二人にも押し寄せ、ファン・タンは両親と遠い農村へ、リー・ジャンはまた別の村へ下放となり引き離されてしまった。ファン・タンは労働ができない代わりに、子どもたちの学習指導をし、さらに独学で鍼灸の治療を身につける。山深い村では医者にかかるにも遠出せねばならず、ファン・タンの鍼灸は村人たちの役に立っていく。

自伝小説「車椅子の上の夢」を著者のチャン・ハイディーが自ら脚色、脚本を書き上げた作品。前半は障害のある美少女の淡い恋物語、後半は下放されてから研鑽に励んで村人の治療にあたり、皆に慕われるという模範的な物語。後半に登場する村人、子どもたちには地元の人も多く参加しているのかとても馴染んでいました。ファン・タンが嬉しいとき、夢見るときには突如シーンが変わり、花咲く草原で踊りだすというのにはびっくりでしたが、昔の少女マンガにはこんなシーンがありました。「中国障害者連合会」の女性会長となったチャン・ハイディー本人が、映画の最初と最後に登場します。(白)

『ロスト・イン・北京』が現代的な映画なのに対して、こちらの作品は、昔ながらの中国映画の路線を行く作品。しかもこちらの方が『ロスト~』より4年も後に作られた作品と知り、ちょっと驚き。ま、こういう路線の映画はなくならないのでしょうね。人々の善意というのがほどよく描かれ、努力すれば障害者でも治療行為をできる人(医師なのかな?)になれるという、一種の成功物語でもある。
実話に基いた作品ということ。村の子供たちとの交流シーンは結構泣ける。子供たちが押していた村人お手製の車いすは、シンプルながらよくできていた。今でこそ車いすの製作メーカーがあり、いろいろ便利な車いすがあるけど、40年くらい前はそういうメーカーもなく、それぞれ工夫した車いすを作っていた。
この車いすを見て、『ベンダ・ビリリ!もうひとつのキャンササの奇跡』でコンゴの街角障害者楽団の人たちが乗っていた車いすを思い出した。彼らもいろいろ工夫した車いすに乗っていた。
最後に本人が車でさっそうと出てくるシーンは、こんな古い作りの作品と思ったのにちょっと感動した。(暁)

2011年/中国/カラー/102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:オリオフィルムズ

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マヤ -天の心、地の心 -(原題: HEART OF EARTH, HEART OF SKY)

監督・脚本:フラウケ・ザンディッヒ、エリック・ブラック
製作:アンブレラ・フィルムズ・プロダクション、ZDF/3SAT共同製作

古代マヤと現代マヤを、美しい自然を背景にマヤの創世神話「ポポル・ヴフ」を織り交ぜて、時空を超えて紡いだドキュメンタリー。
かつて、スペインやアメリカの侵略者たちによって僻地に追いやられたマヤの人たち。現代のマヤ人900万人はメキシコのチアパス州やグアテマラで暮らしている。その地もグローバリゼーション、遺伝子組み換え作物、鉱山開発などにより、マヤ人たちの文化や生活環境が崩壊の危機に瀕している・・・

「古代マヤ暦の偉大なカレンダーは2012年12月21日に終焉する。どのようにして終わりを迎えるのだろうか。海は荒れ狂うのだろうか。最後の木 が切り落とされた時、天が落ちてくるのだろうか。私たちが今直面している問題 にマヤ暦の終わりが、不思議にもタイミングが同期している」と、宣伝会社の方から本作の案内をいただいた。5125年という周期が終わることに、地球が最後を迎えるようなイメージを抱いたが、365日の1年の周期が終わって、また次の1年が始まるのと同じ感覚で捉えればいいとわかった。
マヤの人たちの言葉からは学ぶことが多かった。マヤの人たちの心に潜むのは、先祖から受け継いだ自然を愛し、自然に逆らわずに生きること。先住民の女性が語る「私たちは地球を借りているだけ。傷つけて金を掘り起こすことなど考えたことがない」という言葉が、ずっしりと迫ってきた。(咲)

2011年/ドイツ/スペイン語/98分/カラー/16:9
第24回 アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭 オフィシャルセレクション
バンクーバー国際映画祭 2012 オフィシャルセレクション
配給: ユナイテッドピープル

★2012年10月6日(土)渋谷アップリンクでロードショー!

公式 HP >> http://www.heart-of-sky.net/

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最終目的地 (原題:The City of Your Final Destination)

監督:ジェイムス・アイヴォリー(『眺めのいい部屋』『モーリス』『上海の伯爵夫人』)
脚本:ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
原作:ピーター・キャメロン
出演:アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャルロット・ゲンズブール、オマー・メトワリー、真田広之

コロラド大学文学科の教員オマー・ラザギは、1冊の著作を残し自ら命を絶った作家ユルス・グントの伝記を執筆しようと遺族に許可を求める手紙を出す。遺言で伝記は許可できないとの返事に、オマーの恋人ディアドラは、ウルグアイにいる遺族に会いに行って直接許可を貰うしかないとオマーの肩を押す。ウルグアイの人里離れた屋敷を訪れると、そこには、ユルスの兄アダムとそのパートナーである年下の男性ピート、ユルスの妻、ユルスの愛人と娘の5人がひっそりと暮らしていた。アダムとユルスの両親は、ドイツからナチスの迫害を逃れて、ファーストクラスでウルグアイにやってきたユダヤ人だった。アダムは母親が残した宝飾品をアメリカに持ち帰って金にすることを条件に伝記執筆を認めるという。ユルスの妻は、夫は伝記を望んでいなかったと頑なに拒否する。そのうち、実はユルスが2冊目を執筆していたことが判明する・・・

アダムの年下の恋人ピートを演じた真田広之さんに取材の機会をいただけるとのことで、いそいそと試写へ。プレス資料を開いたら、「イラン生まれのコロラド大学教員オマー(オマル)・ラザギ・・・」という物語の書き出し。オマーがイスラーム革命後にアメリカに逃れたイラン人という設定に興味を惹かれました。そしてアダムたちの両親グント夫妻はウルグアイに新天地を求めたユダヤ人。人生の最終目的地をどこに求めるのか・・・ そんなことを考えさせてくれる味わい深い文芸作品。 美しいミニアチュールやペルシアの詩人ハーフェズの詩を語る場面が出てきたり、アレキサンドリアの図書館が焼かれた話が出てきたりと、アイボリー監督のオリエントへの造詣の深さも感じさせてくれます。そして、何より、アンソニー・ホプキンスさん相手に自然体で年下のパートナーを演じた真田広之さんが素敵でした。インタビューは特別記事で後日お届けします。 (咲)

2009年/アメリカ/117分/35mm/カラー/1:1.85
提供・配給:ツイン
配給協力・宣伝:太秦
協力:パラマウント ジャパン

★2012年10月6日(土)よりシネマート新宿にてロードショー 他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.u-picc.com/saishu/

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くろねこルーシー

監督:亀井亨
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
主題歌:平松愛理「花と太陽」
出演:塚地武雅(鴨志田賢)、安めぐみ(幸子)、大政絢(渚)、濱田マリ(ガリンシャ)、山本耕史(陽)
特別出演:京野ことみ、佐戸井けん太、生瀬勝久

鴨志田賢38歳。人生の節目に必ず黒猫に前を横切られ、受験に失敗、リストラ、妻と別居。すっかり黒猫恐怖症になっている。サラリーマンから占い師に転職した鴨志田だったが、鑑定内容も態度も頼りないせいで人気はない。同業のガリーシャには「キャラが弱すぎる」といわれ、妻の幸子も甲斐性のない夫に呆れ、一人息子の陽を連れて出て行った。たまに会う陽は父親には少しも懐かず、いつも他人行儀だ。
アパートの近くで猫を探す飼い主に出会った。ルーシーというその黒猫は最近よく見かけていたが、子猫を鴨志田のドアの前に置いたまま戻ってこない。カラスが子猫を狙っているので、鴨志田は苦手な猫の面倒をみるはめになってしまった。

元は連続テレビドラマで、そちらは息子の鴨志田陽が主演。父親と同じ黒猫が苦手。この映画版では父親の賢が主人公の前日譚となっています。人が良いけど、不器用な占い師の鴨志田。家族の生活を支えるほどは稼げずにいたのが、たまたま連れていった黒猫がお客をなごませ、評判を呼びます。ドラマのゆるい展開と可愛い黒猫でまったりする作品。
「黒猫が横切るのは縁起が悪い」というのはいつから言われているのでしょう。見た目から不吉と思われるとは、なんの責任もない猫には気の毒。魔女につきものの黒猫も、『魔女の宅急便』効果も加わって、ファンが増えていそうな気がします。(白)

2012年/日本/カラー/107分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:AMGエンタテインメント
©2012「くろねこルーシー」製作委員会

★10月6日(土)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国“開運”ロードショー

公式 HP >> http://www.kuroneko-lucy.info/

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コンフィデンスマン/ある詐欺師の男 (原題:THE SAMARITAN)

監督:デヴィッド・ウィーヴァー
脚本:エラン・マスタイ、デヴィッド・ウィーヴァー
撮影:フランソワ・ダジュネ
出演:サミュエル・L・ジャクソン(フォリー)、ルーク・カービー(イーサン)、ルース・ネッガ(アイリス)、トム・ウィルキンソン(ゼイビア)

詐欺師のフォリーは親友を殺して25年服役して出所したばかり。詐欺師稼業からは足を洗い、これからかたぎの生活をしようと考えていた。バーで出会ったアイリスとささやかな暮らしを始め、穏やかな人生を送れると思っていた矢先、イーサンが訪ねてくる。彼はフォリーが殺した親友の息子だった。負い目を感じているフォリーは、イーサンの依頼を断りきれず、再び裏社会へと戻っていく。


いつも若い主人公の脇で、作品をぴりっと締めている印象のサミュエル・L・ジャクソンの主演作。製作にもあたっています。裏切り、裏切られの闇の世界で、親友を殺してしまったのはなぜなのか、その息子が近づいてくるのはどんな魂胆なのか。ちょっと設定の似た作品に、ジェイソン・ステイサムの『メカニック』(2011)があります。そちらはプロとしての手際の良さが見えるのですが、こちらは詐欺師なので具体的な天才ぶりが見えないところが惜しいです。私は男たちのかけひきより、紅一点のアイリスを演じたルース・ネッガに注目。(白)

2011年/カナダ/カラー/94分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2262730 Ontario Inc.

★10月6日(土)より銀座シネパトスにて過去を打ち抜くロードショー

公式 HP >> http://conman.jp/

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ビラルの世界(原題:Bilal)

監督・撮影・編集:ソーラヴ・サーランギ

走る、転ぶ
 もらす、抱きつく
 叱られる
 手をつなぐ
 カルカッタの路地
 ビラル、3歳

ビラルはインドのコルカタ(カルカッタ)の貧民街で盲目の両親、弟と住んでいます。ソーラヴ・サーランギ監督はビラルがまだ赤ちゃんのころ病院で出会いました。転んで重傷を負っていたのに、監督を見ると目の見えない母親に触れてそっと知らせたのだそうです。
両親は病気のために視力を失っています。母親は監督に「世の中の汚いものを見なくてすむ」と言い、悟りともあきらめとも聞こえる言葉に胸を打たれます。コルカタの小さな住居には親類も同居して近所の子どもも出入りします。たくましく生きる人々の中で、ビラルは成長していきます。可愛いビラルが今どうしているのか、とても気になるドキュメンタリーでした。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2009では、“アジア千波万波・奨励賞”と“コミュニティシネマ賞”の2冠に輝き、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭では、ビラル一家が“IDFA賞 (ドキュメンタリー映画の被写体への援助金)”を 受賞。(白)

9月11日(水)、ポレポレ東中野で『ビラルの世界』上映後、フィンランド公共放送YLEのドキュメンタリー専門のプロデューサーであるイーッカ・ヴェヘカラハティ氏のトークが行われた。イーッカさんは世界各地でお金を出して映画作りのサポートをされているが、『ビラルの世界』もその一つ。インドにも数多くのインディペンデント作家がいる中で、ソーラヴ・サーランギ監督に支援しようと思ったのは、映像素材が決してシャープじゃないのに、直感的に何か特別なものを感じたからだという。なによりビラルがチャーミング。腕白で少し問題も抱えている。初めて映像を観たときに、「こういうものを見せたい」という押し付けがましいところがないのがいいと思ったそうだ。まさに、本作、盲目の両親と暮らす少年ビラルの日々が綴られているだけ。ビラルの目線で、日常と、お祭りや割礼の非日常が映し出されている。ここで思い出したのが、『happy - しあわせを探すあなたへ』(2012年 ロコ・ベリッチ監督)の冒頭で、コルカタの貧民街で暮らす人々の幸福度は平均的アメリカ人と変わらないと語られていたことだ。ビラルの家族の暮らしも、ほんとに貧しい。でも、あのビラルの輝く瞳はどうだ! 盲目の両親も子供たちに囲まれて満ち足りた表情をしている。家族っていいなぁ~と思わせてくれる一作。(咲)

2008/インド/カラー/ベンガル語・ヒンディー語/88分/DVカム(16:9)
配給:ドキュメンタリー・ドリームセンター

★オーディトリウム渋谷にて先行ロードショー
10月6日(土)~12日 毎日10:30から1回上映。トークショーを予定。
10月13日(土)以降は一日2回上映

公式 HP >> http://ddcenter.org/bilal/

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ボーン・レガシー(原題:The Bourne Legacy)

監督:トニー・ギルロイ
脚本:トニー・ギルロイ、ダン・ギルロイ
撮影:ロバート・エルスウィットASC
音楽:ジェームス・ニュートン・ハワード
出演:ジェレミー・レナー(アーロン・クロス)、レイチェル・ワイズ(マルタ・シェアリング博士)、エドワード・ノートン(リック・バイアー)、アルバート・フィニー(アルバート・ハーシュ博士)、ジュアン・アレン(パメラ・ランディCIA内部調査官)

記憶を失くした最強の元暗殺者ジェイソン・ボーンによって、CIAの「暗殺者養成極秘プログラム トレッドストーン計画」が表に出てしまった。
その指揮をとった国家調査研究所のリック・バイヤーは、その中の重大機密がもれることで、CIA長官に危機が及ぶことを回避するため、プログラムの存在そのものを「抹消」することを決定した。
そのため育成した暗殺者や関わった人間を次々と抹殺されていく。
しかし「アウトカム計画」の遺伝子操作と人格改造による「最高傑作」のアーロン・クロスは、抹殺の危機を回避した。
彼は遺伝子操作の研究者である女性医師マルタが抹殺されかけたとき助ける。それには彼なりの目的があった・・・。

2002年『ボーン・アイデンティティー』、2004年『ボーン・スプレマシー』、2007年『ボーン・アルティメイタム』など世界的ヒット作品の「ボーン」シリーズ。
その最新作品。過去3作品の脚本を書いたギルロイ監督が、新しい主人公アーロン ・クロス(ジェレミー・レナー)に変えて監督する。
アーロン ・クロスの遺伝子操作と人格改造も「薬が切れると・・・」表情がぼんや~り、動きも怠慢になって元の木阿弥。
薬漬け生活を見ていると映画中だけじゃない現実(私の周りに薬漬け生活の方が何人かいらっしゃるので)に向き合わされて辛かった。
エドワード・ノートンの冷静悪役ぶり◎
※ジェレミー・レナーは『アベンジャーズ/弓の名手の役』にも出演。体力勝負の作品続きだなぁと思っていたら、つい最近、家族や友人の生活を大切にするため「休養宣言」をしたらしい。(美)

2012年/アメリカ/カラー/135分/スコープサイズ/ドルビーSRD
配給:東宝東和

★9月28日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://bourne-legacy.jp/

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アイアン・スカイ(原題:IRON SKY)

監督:ティモ・ヴオレンソラ
音楽:ライバッハ
出演:ユリア・ディーツェ(レナーテ・リヒター)、クラウス・アドラー(ゲッツ・オットー)、クリストファー・カービー(ジェームズ・ワシントン)、ウド・キア(総統)、ステファニー・ポール(アメリカ大統領)

2018年、アメリカ大統領選挙のキャンペーンのため月に飛んできたモデルのジェームズ・ワシントンは、とんでもないものを発見し目を疑う。すぐに何者かに拉致され、連れて行かれたのは広大な秘密基地であった。拉致したのは1945年第2次世界大戦で敗北したナチスの末裔。彼らはひそかに月へと脱出し、地球からは見えない月の裏側で虎視眈々と復讐の機会をうかがっていた。ジェームズをガイドとして、大挙してニューヨークの上空に現れた月面ナチス軍は、なすすべもない人々を攻撃する。

月の裏側にナチスが!という奇想天外なプロットに、映画ファンから集まった資金が約1億円とか。おばかなコメディのようでいて、痛烈な皮肉がきいている本作。ユリア・ディーツェという格好のヒロイン(強力なミニスカ・ポリスって感じです)を得て、男性ファンの目も楽しませながら、ドイツでは反ナチ映画としてヒットしたそうです。字幕監修は町山智弘さん、「映画秘宝」ファンの方は気に入ること必至。(白)

奇想天外なブラック・コメディーだ。
時代は第2次大戦に敗れたナチスの残党が月に逃げて約70年。地球を征服する目的で日夜研究、研鑽、訓練をしていたのだ。
「あほらしい、そんな馬鹿な・・・」のB級作品には違いないが、2018年のアメリカも月面ドイツナチスも、双方の狂いっぷりに説得力があって、こんなハチャメチャなパロディ作品もたまにはいいなぁと感じた。

※部屋いっぱいの月世界コンピューターと手のひら・スマホの高性能の差が面白かった。(美)

2012年/フィンランド、ドイツ、オーストラリア/カラー/93分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
©2012 Blind Spot Pictures, 27 Film Productions, New Holland Pictures

★9月28日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー!!

公式 HP >> http://gacchi.jp/movies/iron-sky/

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アシュラ

監督:さとうけいいち
原作:ジョージ秋山
脚本:高橋郁子
主題歌:小南泰葉「希望/Trash」EMIミュージック・ジャパン
出演:野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ、玄田哲章、平田広明、島田敏、山像かおり、山口勝平、水島裕

15世紀の京都。洪水、旱魃に襲われ、内戦が続き、荒廃しきった世で人々はあえぎつつ生きていた。そんなときに生れ落ちた赤子がアシュラ。飢えのあまり気が狂った母親に見捨てられた子は、一人ケダモノのように育っていく。放浪するうち、若狭という娘に出会い、アシュラは初めて人のやさしさを知る。若狭の村も長引く飢饉に苦しみ、若狭も追い詰められアシュラをかまう余裕を失う。

1970年から少年マガジンに連載された原作は、人肉を食べるシーンが問題となり、掲載された本が回収されました。私が見たのは単行本化されてからだったと思います。その時代が戦乱と天災によってより辛苦であったことが生き難い原因でもあるのですが、人間の持つ深い業を余さず伝えていて、「生まれてこなければよかった」という台詞がいつまでも残りました。40年を経て映画化された本作は、子供にも観られるよう少しやわらかい表現になり、最後も希望の持てるものになっています。
しかし、この間に世の中が良くなったかといえば…離れてはいるけれども、いつもどこかで戦争があり、陰惨な事件のニュースが絶え間なく流れています。思いがけない天災に見舞われもして、生きるのが楽ではないことはどの時代でも変わらないのかもしれません。″動くアシュラ″に長い時間が一挙に縮まり、ちょっぴり見せた笑顔にホッとしました。(白)

2012年/日本/カラー/75分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
©ジョージ秋山/アシュラ製作委員会

★9月29日(土)より全国順次公開

公式 HP >> http://asura-movie.com/

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壊された5つのカメラ-パレスチナ・ビリンの叫び(原題:5 BROKEN CAMERAS)

監督:イマード・ブルナート、ガイ・ダビディ
出演:シャー・ルク・カーン、カリーナー・カプール、アルジュン・ラームパール、アルマーン・ヴァルマー、特別出演:ラジニカーント(『ロボット』のチッティ役)

パレスチナの民衆抵抗運動の地、ビリン村住むイマード・ブルナート。2005年2月、ちょうど4男ジブリールが生まれた時に1台目のカメラを手に入れ、4男の成長と共に村での出来事を撮り始める。イスラエルの測量士たちが村へ現れ、オリーブの木が根こそぎ切られる。イスラエルの入植地が近くに出来、分離壁を村の真ん中に作るためだ。耕作地の多くが奪われ、自分のオリーブ畑に行くのに壁を越えて行かなければならなくなる。怒った村人たちはイスラエルの活動家とも相談し、毎週金曜日の集団礼拝のあと、皆で抗議運動をすることを決める。イスラエル兵が人々を次々に逮捕し、その様子を撮るイマードのカメラが壊される。2台目のカメラをイスラエル人の友人から譲り受けイマードはさらに撮影を続ける。そうして4男が5歳の誕生日を迎える。イマードの前には壊された5台のカメラが並んでいる。4男の成長と村の抵抗運動を記録し続けたカメラだ。カメラが何度も壊され、イマード自身も被弾したり逮捕されたりしても、イマードは6代目のカメラで村を記録し続けている・・・

イマードが撮りためた映像をなんとか映画にしたいと、たびたびビリン村を訪れていたイスラエル人の映像作家ガイ・ダビディに相談し、二人でまとめ上げたのが本作。村で何が起こったかを、子供たち、そして世界の人たちに観てほしいという思いが、静かに伝わってくる。共同で映画を作り上げたパレスチナ人とイスラエル人の二人の監督がそろって来日。「こうして今、日本に二人でいることが幸せ」と語っていました。私がこの映画で一番印象的だったのは、ビリン村のある男がイスラエル兵に「イスラエル人と俺たちは親戚みたいなものじゃないか」と訴えていたシーン。本作が平和共存への一助になることを願ってやみません。(咲)


ガイ・ダビディ監督(左)とイマード・ブルナート監督

2011年/イスラエル・パレスチナ・フランス・オランダ/90分
配給:浦安ドキュメンタリーオフィス

★2012年9月22日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてモーニング&レイトロードショー!

公式 HP >> http://www.urayasu-doc.com/5cameras/

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王様とボク

監督:前田哲
原作:「王様とボク」やまだないと著(イースト・プレス刊)
脚本:やまだないと、前田哲
製作:三宅容介、長田安正、川端基夫
プロデューサー:男全修二、清水陽、赤城聡、鈴木嘉弘
ラインプロデューサー:山本礼二
音楽:吉岡聖治
撮影:板倉陽子
美術:寺尾淳
照明:南園智男
録音:小宮元
編集:太田義則
主題歌:Good Coming「ours~ボクらの足跡~」(Sony Music Records/gr8!records)
制作プロダクション:フラミンゴ
制作協力:ドラゴンフライエンタテインメント
宣伝・配給:ユナイテッドエンタテインメント
出演:菅田将暉(モリオ)、松坂桃李(ミキヒコ)、相葉裕樹(トモナリ)、二階堂ふみ(キエ)、中河内雅貴(ジュン)、松田美由紀(三井景子)

恋人・キエと初めて結ばれた、18歳の夜―。ミキヒコはふと、6歳の頃に不慮の事故に遭って以来、昏睡状態で眠り続けている同級生・モリオのことを思い出す。その後、長い眠りからモリオが目を覚ましたことをニュースで知ったミキヒコは、キエと病院まで会いにいくが、12年ぶりに再会したモリオは、身体が18歳の青年に成長したものの、心は6歳当時のままだった。受験のために予備校に通い、次第に大人になっていく自分に、どこか不安や戸惑いを感じていたミキヒコ。ピュアな心を持つモリオの姿を通して、彼は自由気ままな王様のように振舞っていた、少年時代に想いをはせていくのだった…。

主役モリオを演じるのは『仮面ライダーW』で史上最年少ライダーとしてデビューし、今作品が映画初主演となる菅田将暉。6歳の心を持つ18歳の青年という難役を、本当に6歳の男の子のような純真無垢な表情で演じた彼に拍手を送りたい。感想はいろいろとあるが、あえて書かずにおこうと思う。それはこの作品の感じ方はまさに十人十色で、観る際には気持ちをニュートラルな状態にしておいてほしいから。そしてできれば誰かと一緒に観て欲しい。観終わった後に正解はないけれども、他の人がどう思ったかを聞いてみたくなるだろう。だから本当は私も感想を書きたいのだけれど。(裕)

製作:「王様とボク」製作委員会 ポニーキャニオン ユナイテッドエンタテインメント Thanks Lab.
2012年/日本/カラー/ビスタサイズ/84分
©2012「王様とボク」製作委員会

★9月22日(土)よりユナイテッドシネマ、シネマートほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.o-boku.com/
公式ツイッター >> @oboku_movie

※ >> Web版特別記事 『王様とボク』記者会見&トークイベント

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これは映画ではない(原題:in film nist   英題:This is not a film)

監督:ジャファール・パナヒ(『白い風船』『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』)、モジタバ・ミルタマスブ

広々とした優雅な自宅で、バターや蜂蜜やジャムを薄いナンに付けて食べるパナヒ監督。2010年3月に突然逮捕され、20年間の映画製作禁止などを言い渡され自宅軟禁中の身だ。脚本を書くのは禁止されているけれど、読むのはいいかなと、おもむろにかつて書いた脚本を読み上げる。大学の芸術学科に合格したヒロイン。進学に反対する親が手続きに行かせまいと娘を軟禁した部屋の様子を絨毯の上で再現していきます。窓から見える小路の向こうに佇む青年に恋心を抱く娘。この青年、実は娘の監視役だったと解説が続く。やりたいことをさせてもらえない状況を描いた物語。パナヒ監督のこの様子を撮影しているのは、電話で呼び出された友人の映画監督モジタバ・ミルタマスブ。用事があるからとミルタマスブがカメラを置いて帰ってしまった後も、パナヒの撮影は続く・・・

映画製作禁止を言い渡されたパナヒ監督が苦肉の策で「映画ではない」として撮った本作からは、どんな状況でも映画を撮り続けたい監督の思いが伝わってきました。かといって悲壮感はなく、ペットのイグアナがゆったりと監督にまとわりつく姿からは余裕さえ感じさせられました。
ユーモアを交えて、脚本を語る監督の姿と共に、本作には、さりげなく現体制が良しとしない事柄も盛り込まれています。
映画を撮った日は、イラン暦の新年(春分の日が元旦)を迎える前の最後の水曜日の夜。
「チャハールシャンベ・スーリー」という火の上を飛び越えながら、無病息災を祈る行事を行う日。イスラームがイランに入る前からの伝統だとして、革命後に政府が禁止を言い渡したこともある行事。これでもかという勢いの焚き火が映って、あんな火の上を飛べるのか? 火事にならないかと心配になります。花火や爆竹も動員して、日頃のうっぷんをはらす行事になっている状況も映しています。
 もう一つは、時々アパートの階下の住人の女性が外出したいからと預けにくる犬。一度は預かる監督ですが、ワンワン吠える犬をイグアナが怖がるからと返したりして笑いを誘います。犬は預言者ムハンマドが不浄だとした伝承から、イスラームでは忌み嫌われてきました。昨今はイランでもペットとして飼う人が増え、本作が撮られていた頃、国会で「犬の所持禁止法案」が審議されていました。
 イグアナが、のそのそとパソコンのキーボードを踏みそうになる場面では、「どっちみち、どのページもブロックされていて、見られるのはくだらないサイトばかり」と監督がつぶやきます。
民を押さえつけようとする国家権力。それに対抗するように、笑いを交えて描いた「映画」に拍手喝采です。(咲)

イラン / 2011年 / 75分/ペルシャ語/カラー
配給:ムヴィオラ

★2012年9月22日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開

公式 HP >> http://eigadewanai.com/

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ソハの地下水道(原題:W ciemności  英題: In Darkness)

監督・原作:アヌバウ・シンハー
出演:シャー・ルク・カーン、カリーナー・カプール、アルジュン・ラームパール、アルマーン・ヴァルマー、特別出演:ラジニカーント(『ロボット』のチッティ役)

1943年、ナチスの支配下にあったポーランドの街ルヴフ(現在はウクライナのリヴィウ)。下水道作業員のソハは、泥棒稼業に精を出し家計を助けている。ある日、ソハはゲットーの住まいの居間に穴を堀って脱出しようとするユダヤ人たちと出会う。ナチスに通報すれば報償金が貰える。が、ソハはここで、待てよ、金や宝石を持っているユダヤ人を金づるにしようと、勝手知った地下水道に彼らを匿う。ある日、一日500ズロチと決めた報酬も払えるのは今日が最後と聞いたソハ。いよいよナチスに突き出すのかと思ったら、思いもかけない行動に出る・・・

森の中を裸で逃げ惑う女性たち。銃を持って追いかける男たち。そして裸の死体の山… 冒頭からナチスのホロコーストの恐怖におののいた時代をずっしり感じさせられる。骨太で大胆な本作を撮ったホランド監督は、1948年ワルシャワ生まれのポーランド女性。アンジェイ・ワイダからも指導を受けている。1982年にフランスへ移住。レオナルド・ディカプリオを主演に詩人ランボーを描いた『太陽に背いて』も彼女の作品である。
これまでにもホロコーストの時代にユダヤ人を助けた話は映画でもよく描かれてきた。主役は助けられた側のユダヤ人であることが多かった。本作の主人公は助けた側の人物。しかも、単純な美談ではない。金儲けの為に始めたことだった。そうはいっても、11名ものユダヤ人の食糧を調達するのは並大抵のことでない。しかも匿ったことが見つかれば、自分の身も危ないのだ。ソハのようにユダヤ人を命がけで助けた人たちがいたことに、人間捨てたもんじゃないとホッとさせられる。ナチスのホロコーストには終止符が打たれたが、今なお世界の各地で他者を差別しての争いは絶えない。同じ悲劇を繰り返さないでほしいという監督の思いをずっしり感じる一作である。(咲)

2011年/ドイツ・ポーランド合作/145分 
★原作(ロバート・マーシャル著)の翻訳本「ソハの地下水道」集英社文庫より8月21日刊行
★2011年 アカデミー賞外国語映画賞ポーランド代表作
配給: アルバトロス・フィルム /クロックワークス
(C) 2011 Schmidtz Katze Filmkollektiv GmbH, Studio Filmowe ZEBRA, Hidden Films Inc.

★2012年9月22日(土・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか 全国にて順次公開.

公式 HP >> http://www.sohachika.com/

※ 特別記事 『ソハの地下水道』アグニエシュカ・ホランド監督インタビュー

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第34回ぴあフィルムフェスティバル

期間:9月18日(火)~28日(金)(月曜休館)
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール(東京都中央区京橋3-7-6)
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html

自主制作映画のコンペティション「PFFアワード」候補の16作品のほか、招待部門でイギリスの巨匠監督マイケル・パウエルの特集上映、森田芳光監督の8ミリ時代の特集、日本映画の新作プレミア、WOWOWのドラマの上映など、映画ファンのみならず幅広い観客が楽しめるプログラムが展開されます。

◎コンペティション部門 PFFアワード2012
1977年から続く世界最大の自主制作映画のコンペティション。今年も多数の応募作品から選出された16作品がノミネートされました。
『あの日から村々する』
『あん、あん、あん』
『オハヨー』
『かしこい狗は、吠えずに笑う』
『くじらのまち』
『故郷の詩』
『極私的ランナウェイ』
『水槽』
『stay チューン』
『飛び火』
『Her Res~出会いをめぐる三分間の試問3本立て~』
『Please Please Me』
『継母』
『魅力の人間』
『ゆれもせで』
『リコ』

◎招待作品部門
◆PFFスカラシップ作品お披露目
『HOMESICK』監督:廣原 暁

◆日本映画最新作
『Playback』監督・脚本・編集:三宅 唱
『リルウの冒険』監督・脚本・撮影:熊坂 出

◆映画の“ルック”を浴びてみる!
~マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー&ジャック・カーディフ~
『老兵は死なず』
『天国への階段』
   
『黒水仙』
『赤い靴』
『ヒズ・ロードシップ』

◆追悼・森田芳光監督 幻の8ミリ作品たち
   
第一部『映画』『遠近術』
第二部『水蒸気急行』『ライブイン茅ヶ崎』

◆テレビドラマに挑戦!WOWOWのドラマをみる
『贖罪』
『エンドロール~伝説の父~』
   

主催:PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/公益財団 法人ユニジャパン

公式 HP >> http://pff.jp/34th/

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白雪姫と鏡の女王(原題:MIRROR MIRROR)

監督:ターセム・シン・ダンドワール
脚本:マーク・クライン、ジェイソン・ケラー、メリッサ・ウォーラック
撮影:ブレンダン・ガルヴィン
衣装:石岡瑛子
音楽:アラン・メンケン
出演:ジュリア・ロバーツ(女王)、リリー・コリンズ(白雪姫)、アーミー・ハマー(王子)、ネイサン・レイン(ブライトン)、メア・ウィニンガム(ベイカー・マーガレット)、マイケル・ラーナー(男爵)、ロバート・エムズ(チャールズ・レンボック)、ショーン・ビーン(国王)

白雪姫は父王が亡くなってから継母の女王に閉じ込められて暮らし、城から一歩も出ずに18歳になった。わがままで浪費家の女王のせいでお城の金庫は空っぽになり、国民からの税金ももうこれ以上は絞り取れない。苦肉の策として女王はリッチな国土の王様と結婚することを思いつく。女王が催したパーティに招待された若くてハンサム王子は、女王ではなく白雪姫に一目ぼれしてしまった。邪魔者の白雪姫は殺されることになったが、森に逃げ込んで小人のギャング団に助けられる。


©2011 Relativity Media, LLC. All Rights Reserved.

おなじみの白雪姫のお話を映像美に定評のあるターセム・シン・ダンドワール監督が映像化。6月にクリスティン・スチュワートと、シャーリーズ・セロンの『スノーホワイト』が公開されたばかりですが、ほかにビデオスルーのアドベンチャー版白雪姫もあったりして、なにかブームでも起きているのでしょうか??共通しているのは、どれも小人たちに守られ、王子様を待つだけではなく自ら闘いに参加して、自分の居場所を取り戻すお姫様であること。意地悪な女王の内面が御伽噺よりもっと書き込まれていることでしょうか。老いの悲しみをたたえたシャーリーズ女王はどこか共感するところがありました。こちらの高ビーなジュリア女王は、若くてイケメンな王子と結婚しようと思うところからコメディタッチです。鏡の精が正反対にとてもクールなのがグッド!普段いい人でいなくてはいけない(たぶん)ハリウッドの大女優がなんだか楽しげに演じています。
絢爛豪華な衣装は『落下の王国』も素晴らしかった石岡瑛子のデザイン、惜しくもこれが遺作となりました。合掌。(白)

2012年/アメリカ/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ

★9月14日(金)丸の内ルーブル他全国ロードショー

公式 HP >> http://mirrormirror.gaga.ne.jp/

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第5回したまちコメディ映画祭in台東

今年も浅草・上野地区で“したコメ”が開催されます。現役のお子様から昔のお子様まで楽しめる企画がいっぱい。会場が4箇所に分かれております。上野東急は閉館になりましたので、東京都美術館講堂が新たに加わりました。ご注意くださいませ。

期日:9月14日(金)~9月17日(月・祝)
会場:浅草公会堂、浅草中映劇場、東京都美術館講堂、不忍池水上音楽堂
チケット:前売りはチケットぴあにて販売中。
詳細は公式HPでご確認ください。
http://www.shitacome.jp/

9/14(金) 22:00~ 浅草中映劇場
前夜祭オールナイト「したコメドリームマッチ 東映まんがまつり vs 東宝チャンピオンまつり」

9/15(土) 17:30~ 浅草公会堂
オープニングセレモニー&上映/特別招待作品 『TOKYOてやんでぃ~The Story Teller's Apprentice~』
9/15(土) 11:30~ 浅草中映劇場
生誕88周年記念 岡本喜八監督特集~KIHACHI MEETS COMEDY~ 
 『ああ爆弾』『近頃なぜかチャールストン』『独立愚連隊』
9/15(土) 14:30~ 東京都美術館講堂
コメディ栄誉賞「ザ・ドリフターズ」特集 『ズンドコズンドコ全員集合!!』

9/16(日) 10:30~ 浅草公会堂
ファミリー企画「映画『紙兎ロペ』 つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」
9/16(日) 14:00~ 浅草公会堂
「映画秘宝」presents 映画秘宝まつり
9/16(日) 18:30~ 浅草公会堂
特別招待作品 『ボス その男シヴァージ』
9/16(日) 10:20~ 浅草中映劇場
台東区フィルム・コミッション支援作品 『メンゲキ!』
9/16(日) 15:30~ 浅草中映劇場
短編コンペティション したまちコメディ大賞2012
9/16(日) 18:30~ 不忍池水上音楽堂
声優口演ライブinしたコメ2012
9/16(日) 12:30~ 東京都美術館講堂
コメディ栄誉賞「ザ・ドリフターズ」特集
 『ドリフターズですよ! 特訓特訓また特訓』『舞妓はんだよ全員集合!!』

9/17(月・祝) 11:00~ 浅草公会堂
特別招待作品『バカリズム THE MOVIE』『レミントンとオカマゾンビの呪い』
9/17(月・祝) 10:30~ 浅草中映劇場
内田けんじ監督 コメディ映画講義
9/17(月・祝) 11:00~ 東京都美術館講堂
「DVD&ブルーレイでーた」presents ソフト・スルー・コメディ大賞
9/17(月・祝) 14:00~ 不忍池水上音楽堂
クロージングセレモニー&イベント ザ・ドリフターズ リスペクトライブ

《 Pコード 》

[浅草公会堂] ◆Pコード:550-040
[浅草中映劇場] ◆Pコード:550-041
[東京都美術館講堂] ◆Pコード:550-042
[不忍池水上音楽堂] ◆Pコード:550-043

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012 Focus-on-Asia Fukuoka International Film Festival 2012

9 月14日(金) 野外オープニングセレモニー(レッドカーペット)・ 野外オープニング上映
9 月15日(土)~23日(日) 公式招待作品等一般上映

主要会場 天神ふれあい広場、T・ジョイ博多、JR 九州ホール、JR 博多シティ会議室

今年で21年目となるアジアフォーカス。昨年より、メイン会場を天神からJR博多駅直結のT・ジョイ博多に移したアジアフォーカスですが、協賛企画もバラエティに富み、アジアマンスの福岡を豊かに彩ります。アジアフォーカスでしか観られない作品も多数。博多見物がてら遠方からもぜひお出かけください。素敵な作品に出会えること請け合います! ■作品本数:15か国・地域、36作品(国外初公開1本、アジア初公開3本、日本初公開13本含)協賛企画まで含めると15か国・地域、約230作品 ■作品内容:韓国で400万人を動員したメガヒットコメディ「ダンシング・クイーン」(野外オープニング作品)、ヒッチコックに匹敵するモダンなサスペンス映画「カハーニー/物語」(インド)、アカデミー賞受賞監督 アスガー・ファルハディ全作上映(5本)、特集とシンポジウムの連動企画<アグリ・シネマ>農業と映画(3本)などバラエティ豊かなラインナップ

◆オープニングセレモニー・初の野外レッドカーペット、野外上映!
アジアンパーティ(アジアマンス2012)のオープニングイベントとして、天神ふれあい広場(市庁舎西側広場)で映画祭のゲストが一堂に会しレッドカーペットを歩く!
●公式招待作品―アジアの新作・話題作 17 作品
『未来へつづく声』 Future Lasts Forever  2011 トルコ 監督:オズシャン・アルペル
『9月』 The September 2011 トルコ 監督:ジェミル・アァジュクオウル
   
   『9月』 トルコ 2011
『BOL ~ 声をあげる~』 Speak Up  2011 パキスタン 監督:ショエーブ・マンスール
   
   『BOL ~ 声をあげる~』 パキスタン 2011
『カハーニー/物語』 Kahaani 2012インド 監督:スジョイ・ゴーシュ
   
   『カハーニー/物語』 インド 2012
『やさしい女』 With You, Without You 2012 スリランカ/インド 監督:プラサンナ・ヴィターナゲー
『わが友ラシェド』 My Friend Rashed 2011 バングラデシュ監督:モルシェドゥル・イスラム
   
   『わが友ラシェド』バングラデシュ 2011
『4月の終わりに霧雨が降る』 In April the Following Year, There Was a Fire 2012 タイ 監督:ウィチャノン・ソムウムジャーン
『ねじきれ奇譚』 Twisted 2011 シンガポール/マレーシア 監督:ツァイ・ユィウェイ
『飼育』 The Catch 2011 仏/カンボジア 監督:リティー・パニュ
『さかなの寓話』 Fable of the Fish 2011 フィリピン 監督:アドルフォ・ボリナガ・アリックスJr.
『アモク 』 Amok 2011 フィリピン 監督:ローレンス・ファハルド
『ミスター・ツリー』 Mr. Tree 2011 中国 監督:ハン・ジェ
『時空の扉』 Lee's Adventure 2011 中国 監督:リー・ヤン/クオ・ファン
『天龍一座がゆく』 Flying Dragon, Dancing Phoenix 2011 台湾 監督:ワン・ユィリン
   
   『天龍一座がゆく』 台湾 2011
『あの頃、君を追いかけた』 You Are the Apple of My Eye 2011 台湾 監督:ギデンズ
   
   『あの頃、君を追いかけた』 台湾 2011
『ダンシング・クイーン』 Dancing Queen 2011 韓国 監督:イ・ソクン
   
   『ダンシング・クイーン』 韓国 2011
『バラナシへ』 From Seoul to Varanasi 2011 韓国 監督:チョン・ギュファン

●アカデミー賞受賞監督 アスガー・ファルハディ全作上映 5作品
昨年、アジアフォーカスでも福岡監督賞を受賞した『別離』(映画祭タイトル『ナデルとシミン』)のアスガー・ファルハディ監督の長編5作品が一挙上映されます。
『砂塵にさまよう』 Dancing in the Dust 2003 イラン
『美しい都市』 Beautiful City 2004 イラン
『火祭り』 Fireworks Wednesday 2006 イラン
『彼女が消えた浜辺』 About Elly 2009 イラン
『別離』 Nader and Simin, A Separation 2011 イラン
●《アグリ・シネマ》農業と映画
『ひかりのおと』 The Sound of Light 2011 日本 監督:山崎樹一郎
『恋するトマト』 Love Tomato 2006 日本 監督:南部英夫
『遠雷』 Enrai 1981 日本 監督:根岸吉太郎
●観客賞授賞式上映会
『大鹿村騒動記』 2011
●この秋公開される話題の新作日本映画をいち早くご紹介
『黄金を抱いて翔べ』 2012 日本
●バリアフリー上映会
『一枚のハガキ 』 2011 日本
『彼女が消えた浜辺』 About Elly 2009 イラン
●福岡フィルムコミッション支援作品
『私の叔父さん 』 2011 日本
『家門の栄光4:家門の受難』 Unstoppable Family 2011 韓国
●《福岡アジア文化賞》受賞監督作品
今年23年目となる《福岡アジア文化賞》を受賞したフィリピンのキドラット・タヒミック監督の5作品
『トゥルンバ祭り』 Turumba 1983 フィリピン
『月でヨーヨー』 Who Invented the YoYo? Who Invented the Moon Buggy? 1981 フィリピン
『虹のアルバム 僕は怒れる黄色 '94』 I am Furious yellow '94; Why is Yellow Middle of Rainbow? 1994 フィリピン
『悪夢の香り』 Perfumed Nightmare 1977 フィリピン
『マゼラン(制作中)』 2012 フィリピン

主 催 アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会、福岡市
問い合わせ先:福岡アジアマンスインフォメーション TEL:092-262-0676
8月20日(月)から、平日10時00分~17時00分、9月から、土日祝日も対応

公式 HP >> http://www.focus-on-asia.com

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そして友よ、静かに死ね(原題:LES LYONNAIS 英題:A GANG STORY)

監督:オリヴィエ・マルシャル
原作:エドモン・ヴィダル
脚本:オリヴィエ・マルシャル、エドガル・マリー
撮影:ドゥニ・ルーダン
音楽:エルワン・クルモルヴァン
出演:ジェラール・ランヴァン(エドモン・ヴィダル/モモン) チェッキー・カリョ(セルジュ・ステル)、ダニエル・デュヴァル(クリスト)、ディミトリ・ストロージュ(モモンの青年時代)、オリヴィエ・シャントロー(セルジュの青年時代)、パトリック・カタリフォ(マックス・ブロナー)、フランソワ・レヴァンタル(ジョアン・シャベーズ)、フランシス・ルノー(ブランドン)、リオネル・アスティエ(ダニー)

昔ギャングとして名をはせたエドモン・ヴィダル(通称モモン)はとうの昔に引退し、還暦を迎えて家族との穏やかな日々を送っていた。若いときから共に数々の犯罪に手を染めてきた親友、セルジュが長い逃亡生活の末に捕まったことを知る。一度は愛する家族との生活を守るために関わらないと決めるが、セルジュとの思い出がかけめぐる。やはり盟友を見捨てることはできなかった。奪還する計画に加担することになったが。

1970年代のフランスに実在したエドモン・ヴィダルの友情と裏切りを書いたノワール・サスペンス。本人の自叙伝をもとにフィクションを織り交ぜた作品です。監督は『あるいは裏切りという名の犬』のオリヴィエ・マルシャル。前作も骨太のノワールものでした。義理と人情にしばられる日本のヤクザ映画より、もっと乾いた感覚です。渋くてダンディなシニア世代の俳優が勢ぞろい。
邦題が香港映画(の邦題)みたいですね。ネタばれな気がしますがいいのかな?英題はシンプルな「A GANG STORY」。(白)

2011年/フランス/カラー/102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:コムストック・グループ
©2010 LGM FILMS GAUMONT FRANCE 2 CINEMA HATALOM RHONE-ALPES CINEMA

★9月14日(土)銀座テアトルシネマ他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://soshitetomoyo.com/

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ル・コルビュジエの家(原題:EL HOMBRE DE AL LADO)

監督:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
脚本:アンドレス・ドゥプラット
撮影:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
音楽:セルヒオ・パンガロ
出演:ラファエル・スプレゲルブルト(レオナルド)、ダニエル・アラオス(ビクトル)、エウヘニア・アロンソ(アナ)、イネス・ブダッシ(ローラ)

彼の住まいはブエノスアイレスのラプラタにあるクルチェット邸(実在の有名建築家ル・コルビュジエの設計した邸宅)で妻と娘の三人で暮らしていた。レオナルドは才能豊かなデサイナーで、独創性のある椅子のデザインで一躍有名になった。
ある朝、壁をたたきわる打撃音で目を覚ましたレオナルドは、付き合いのない隣家の住民が、クルチェット家に向かって壁に穴をあけているのに気づく。
もちろん壊しているのは隣家の壁だが、隣家の主人は「明かりを入れたいだけだ」と主張し、話し合いは平行線になって・・・。

この作品を観て熱海・西山の「佐々木信綱」の家を思い出した。当時、その家が売りに出されていて、案外安い値段で驚いたことがあった。でも土地のお年寄りが「あれは何回か引き合いがあるけど、有名な人が住んでいた家は道から覗かれたり、入り込んで来られたり、なかなか大変だから売れないらしい」と言っていた。私も散歩がてら細い道に面したところから覗きこんだ覚えがあった。そこは「旧佐々木信綱住居」と立て札があり、立ち止まる人は後を絶たないだろう。ま、話はそれてしまったが、ル・コルビュジエの家もそんな場面が出て来た。
この作品では、隣人によって起こる家庭の不協和音が浮き彫りにされていく内容。
もう公開しているが、まだ間に合うので、これをお読みになったら、すぐに観に行って頂きたい。必ずパンフレット(700円?)を買いたくなる作品。
※『瞳の奥の秘密』『ボンボン』もアルゼンチン映画で、その年のベストテンに入れた。 この作品も入るだろう。でも「予想もしない終わり方」ベストテンなら1位だ・・・。(美)

2009年/アルゼンチン/カラー/103分/HD
配給:Action Inc.

9月15日よりK's cinemaにて3週限定ロード.ショー公開

公式 HP >> http://www.action-inc.co.jp/corbusier/

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ライク・サムワン・イン・ラブ(原題:LIKE SOMEONE IN LOVE)

監督・脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:柳島克己
美術:磯見俊裕
編集:バフマン・キアロスタミ
出演:奥野匡(タカシ)、高梨臨(明子)、加瀬亮(ノリアキ)、でんでん(店長)

84歳、かりそめの恋を 夢みた
元大学教授のタカシは、デートクラブを経営する知人を通じて女子大生の明子を家に呼ぶ。明子は田舎から自分を訪ねてきた祖母に会えないのが気になっている。亡き妻に面影の似ている明子をタカシはもてなそうとするが、いやいややってきた明子はさっさとベッドに入ったかと思うと寝入ってしまった。翌朝タカシが大学まで送り届けると、明子ともめていた若い男が近づいてくる。明子の婚約者だというノリアキはタカシを明子の祖父だと思い込んでしまう。


©mk2/eurospace

イランの巨匠キアロスタミ監督が日本で、日本の俳優・スタッフで作り上げた日本語の作品。台本はなく、一日の撮影の始まりに説明があっただけ。演技しようと思わずに普通にしゃべってくれればいい、という「演出」であったそうです。84歳にして外国の監督作品に初主演となった大ベテランの奥野匡さんはじめ、みんなが日常を切り取られた風に見えるのはそういうことだったのか、と納得。とはいえ、『海炭市叙景』のDV夫役以来、なんだかキレル役が続いている加瀬亮くんは、そのリアルさが怖い~。笑顔の加瀬くんが観たいなぁ…とないものねだりしたくなる今日このごろ。(白)

2012年/日本・フランス/カラー/109分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ユーロスペース

★9月15日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

公式 HP >> http://likesomeoneinlove.jp/

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ファインディング・ニモ 3D(原題:FINDING NEMO)

監督:アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ
製作総指揮:ジョン・ラセター
脚本:アンドリュー・スタントン、ボブ・ピーターソン、デヴィッド・レイノルズ
音楽:トーマス・ニューマン
日本語吹き替え:木梨憲武(マーリン)、室井滋(ドリー)、宮谷恵多(ニモ)、山路和弘(ギル)

グレートバリアリーフに住むカクレクマノミのマーリンは、愛妻のコーラルと子供たちの誕生を心待ちにしていた。突然大型魚に巣を襲われ、気絶したマーリンが目覚めたとき、コーラルと卵たちはいなくなってしまっていた。たった一つだけ傷つきながらも残った卵があった。マーリンは生まれたニモを大切に大切に育てた。ヒレの片方が小さいままだったが、ニモは元気に大きくなり小学校へいく日がやってきた。心配性のマーリンは、ついあれこれと世話を焼き、授業にまでついてくる。閉口したニモは同級生にいいところを見せたくて、絶対に出てはいけないさんご礁を離れ、人間につかまってしまった。一人息子を目の前で連れ去られたマーリンは必死にボートの後を追う。途中で陽気なナンヨウハギのドリーに出会い、少ない手がかりをたぐりながらニモを探し続ける…。
短編アニメーション『レックスはお風呂の王様』(監督:マーク・ウォルシュ)同時上映。『トイ・ストーリー』シリーズの人気キャラクター“レックス”が主人公。いつも仲間からやっかいもの扱いされているレックスが、初めてのお風呂で一躍人気者に!


©DISNEY / PIXAR

記録的なヒットとなったオリジナル版が3Dになって再登場。今回は日本語吹き替え版だけでの公開です。当時も話題となった水の表現や美しいさんご礁の景観が3Dでさらにパワーアップしていました。普遍的な親子の情愛に、それぞれよく描きこまれたキャラクターたちの活躍、小さなお子様から大人までそれぞれ気持ちを重ねて観ることができます。愛情深い父親のマーリンと腕白なニモが初めて離れ離れになって、さんご礁では出会えないさまざまな体験をします。ハラハラする場面と思わず笑ってしまう場面、緩急のつけかたが絶妙です。いつ観ても古くならない傑作。吹き替えのキャストも素晴らしく、私は室井滋さんのドリーがお気に入り。(白)

2003年/アメリカ/カラー/101分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

★9月15日(土)3D限定公開

公式 HP >> http://www.disney.co.jp/finding-nemo-3d/home/

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鍵泥棒のメソッド

監督・脚本:内田けんじ
撮影:佐光朗
音楽:田中ユウスケ
美術:金勝浩一
主題歌:吉井和哉「点描のしくみ」
出演:堺雅人(桜井武史)、香川照之(コンドウ/山崎信一郎)、 広末涼子(水嶋香苗)、 荒川良々(工藤純一)、 森口瑤子(井上綾子)

桜井武史35歳、全く売れない役者。おんぼろアパートでいまだ一人暮らし、自殺にも失敗して見つけたチケットで銭湯に行く。たまたま銭湯で転んだ男の鍵が桜井の目の前に落ちてきた。桜井はつい出来心で自分の鍵と取り替えてしまう。黒のスーツにクライスラーで乗りつけてきた男山崎信一郎のマンションに行った桜井は、自分とはまるで違う羽振りの良さに呆然とする。山崎の正体は伝説の殺し屋コンドウであった。
転んだコンドウは頭を打って記憶喪失になり、自分が誰か思い出せない。残された鍵から桜井と思い込んで、そのアパートに戻っていく。役者として成功すべく、本を読み几帳面にメモをとりまじめに仕事を始める。編集長の水嶋香苗は婚活宣言をしたばかり。香苗は、知り合った記憶喪失のコンドウの世話を焼くうちに恋心が芽生えてくる。

『運命じゃない人』『アフタースクール』では、観客の予想を超えたストーリー展開で楽しませてくれた内田監督。今回は人生が入れ替わってしまった二人の男と、関わってしまった一人の女をメインに爽快なコメディを作りました。キャストの今までにない面を見せて、クスクス笑えること請合います。
「もしも●●だったら」と誰もが思い描いたことがあるはず。別の人生を手に入れたらどうするか、一時の夢が覚めたときにどうなるか、そんな想像を内田監督が形にして見せてくれます。芸達者な俳優たちが繰り広げるメソッド演技をお楽しみください。桜井と山崎の部屋にもぜひともご注目を。(白)

香川照之が殺し屋? どんな殺し屋なんだろうという興味から観に行った。伝説の殺し屋との設定だけど、実は殺し屋家業の内容が後でわかる。それが痛快だった。そして、堺雅人が売れない役者の役というのもおかしかった。芸達者たちの演技合戦と、ユーモアに溢れたストーリー。観た後、ほんわかした気分になった。(暁)

2012年/日本/カラー/128分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス
©2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会

★9月15日(土)シネクイント他全国ロードショー

公式 HP >> http://kagidoro.com/

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人生、いろどり

監督:御法川修
脚本:西口典子
撮影:石井勲
音楽:水谷広実
主題歌:原由子「ヘヴン」
出演:吉行和子(徳本薫)、富司純子(石本花恵)、中尾ミエ(尾関路子)、平岡祐太(江田晴彦)、村川絵梨(石立裕香)、戸次重幸(徳本輝之)、キムラ緑子(女将),大杉漣(鈴木)
特別出演:粟田麗、佐々木すみ江、螢雪次朗、菅谷茂、藤竜也、徳本輝雄

徳島県上勝町、過疎化と高齢化の進んだ小さな村。みかんの栽培が寒波のため大打撃を受け、さらに村を離れる人も出てきた。農協職員の江田晴彦は居酒屋で料理に添えられた生の葉をみて、村おこしのビジネスにできないかと考える。説明会を開いても男たちにはまるで相手にされないが、小さな雑貨店を開く石本花恵は乗り気になる。花恵は幼馴染の徳本薫や尾関路子を誘って慣れない仕事を始める。市場ではゴミ扱いされ、村では嘲笑されるが、あきらめずに研究を重ねて徐々に受け入れられるようになってきた。

本当にあったお話が元になっています。農協職員と農家のおばあちゃんたちが始めた、料理の「つまもの」をビジネスとして成功させるまでの涙と笑いのストーリー。新しいことがなかなか受け入れられない、世帯主である男たちの力が大きい村での彼女たちの奮闘ぶりに頭が下がります。演じる吉行さん、富司さんが垢抜けて綺麗なので村のおばあちゃんには見えないのでは、と気になりましたが衣装の助けもあって馴染んでおられました。中でちゃんとお洒落をするシーンもあります。藤竜也さんはダンディぶりを消して、頑固なオヤジさんを熱演。こういう人いそう、という存在感がありました。
完成披露試写会では深いしわの刻まれた本物のおばあちゃんたちも徳島からかけつけ、ちんまりと舞台に座られて可愛らしく場がなごみました。(白)

TVで、この事業のことを知ったとき、おばあちゃんたちの行動に拍手喝采した。とても痛快だった。こんなことがあるんだと感心した。そしておばあちゃんたちの姿に勇気をもらった。でも、木の葉でビジネスができるなんて面白い。物事考え方しだいなんだと思った。
それにしても、いくら実話に基いた作品といっても、男たちの考え方に柔軟性がないのにはイライラしながら観ていた(笑)。 この作品では、おばあちゃん役を演じる、吉行さんや富司さん、中尾さんが垢抜けしすぎて浮いてしまうのではないかと思ったけど、意外にマッチしていて、さすがの女優魂と思った(暁)。

2012年/日本/カラー/112分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2012『人生、いろどり』製作委員会

★9月15日(土)シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.irodori-movie.jp/

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スリープレス・ナイト(原題:NUIT BLANCHE)

監督:フレデリック・ジャルダン
脚本:フレデリック・ジャルダン、ニコラ・サーダ
撮影:トム・スターン
出演:トメル・シスレー(ヴァンサン)、ジョーイ・スタール(フェイデック)、ジュリアン・ボワッスリエ(ラコンブ)、ロラン・ストーケル(マニュエル)

白昼マフィアの車を襲い、大量のドラッグを強奪したヴァンサンとマニュエル。二人は刑事でありながらドラッグの転売をして大儲けしようと企んでいた。しかし素性をつきとめたマフィアは、ヴァンサンの一人息子トマを誘拐して人質にする。ヴァンサンは息子を取り戻すため、ナイトクラブに潜入する。マニュエルはヴァンサンに従うと見せかけて、裏で麻薬捜査官のラコンブに連絡をとっていた。ラコンブが送った女性捜査官、コカインを受け取るはずだったマフィアもナイトクラブに来て、入り組んだ抗争が始まる。


©Chic Films – PTD – Saga Film

舞台がパリで、フランス語が飛び交いながら、ハリウッドのアクション映画を見ているかのようでした。息もつかせないアクションの連続ですが、家庭を顧みずに息子と心が離れてしまった父親の心も挟み込んでいます。ハリウッドがリメイク権を獲得したそうですので、また別の俳優と味付けで観られそう。『ラルゴ・ウィンチ』で颯爽と登場したトメル・シスレーは、モデル出身かと思うようなスマートさですが、意外にもスタンダップコメディアンであったそうです。前作に引き続き、かなりのアクションを自分でこなしているとか。フランス映画祭での舞台挨拶に登場しましたが、映画そのままにかっこよかったです。(白)

2011年/フランス、ルクセンブルク、ベルギー/カラー/102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:トランスフォーマー

★9月15日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://sleeplessnight.jp/

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わたしたちの宣戦布告(原題:La Guerre Est Declaree)

監督:ヴァレリー・ドンゼッリ
出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム、セザール・デセック、ガブリエル・エルカイム

目と目があう男と女。名前を聞く。「ロメオ」と答える男に「からかってるの?」という女の名はジュリエット。瞬く間に恋に落ち結婚したロメオとジュリエット。ほどなく息子アダムが生まれる。いつまでも泣き止まないアダムに普通じゃないものを感じて病院に連れていく。アダムはラブドイド腫瘍という難病だと診断される。幸せの絶頂から、奈落の底へ。でも、諦めない二人。我が子の病との闘いが始まる・・・

本作はジュリエットを演じたヴァレリー・ドンゼッリ監督と、ロメオを演じたジェレミー・エルカイムの二人の実体験に基づいた物語。長きにわたる入院、莫大な治療費・・・ 二人はアパートも売り払い我が子のために奔走する。
ジェレミーがインタビューで「僕達がこの映画で特に大事にしたかったことは、コンセントに指を突っ込んだようなエレクトリックな感じ」と語っている。全編に流れるポップな音楽。絶望感でいっぱいのはずなのに、軽やかに病と闘う二人の思いが、まさにビビビと迫ってくる。最後に、病を克服し8歳になった息子のアダムも、本人役で出てきてほっとさせられる。今はパートナーを解消してしまった両親だが、アダム君は二人の思いをしっかり受け止めているにちがいない。
フランス映画祭の折に来日したヴァレリー・ドンゼッリ監督、子育てをしながらの映画作りの苦労について質問を受け、「子供がいない状態で映画を撮ったことがないので、子供が何かのさまたげになるというより、励ましてくれる原動力」と語っていました。撮影をやめるのは学校に迎えに行く時くらいとも。撮影現場を子供たちにも見せているそうだ。難病を克服すること、そして子育てのヒントをこの映画は与えてくれる。(咲)


フランス映画祭記者会見:真ん中がヴァレリー・ドンゼッリ監督
(左:レジーヌ・アッチョンドさん、右:レア・フェネール監督)

2011年/フランス/100分/HD/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル
第84回アカデミー賞外国語映画部門フランス代表作品
配給:アップリンク

★2012年9月15日(土)、Bunkamura ル・シネマ、シネ・リーブル梅田ほか全国順次上映

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/sensenfukoku/

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スケッチ・オブ・ミャーク

監督:大西功一
原案・監修・整音:久保田麻琴
出演者:久保田麻琴/長崎トヨ/高良マツ/村山キヨ/盛島宏/友利サダ/本村キミ/ハーニーズ佐良浜/浜川春子/譜久島雄太/宮国ヒデ/狩俣ヒデ/嵩原清 ほか
協力:東京[無形文化]祭
後援:沖縄県/宮古島市/宮古島市教育委員会/エフエム沖縄/沖縄タイムス社/沖縄テレビ放送/宮古新報/宮古テレビ/宮古毎日新聞社/ラジオ沖縄/琉球朝日放送/琉球新報社/琉球放送 (順不同)
特別協賛:特定非営利活動法人 美ぎ島宮古島/日本トランスオーシャン航空株式会社/有限会社 宮古ビル管理(順不同)

沖縄県宮古諸島には、沖縄民謡と異なる知られざる唄がある。厳しい島での暮らしや神への信仰などから生まれた「アーグ(古謡)」と「神歌(かみうた)」がそれだ。昔からこの島では生きることと、神への願いと唄はひとつのものであった。あたかも遠い時代に輝いた星の光が時を経てこの地球に届くように、この島ではいまだに古くからの信仰と唄がその姿を色濃く残す。それらは、宮古諸島に点在する村々の中でひっそりと歌い継がれてきた。特に数世紀に及ぶ長い歴史を持つ御嶽(うたき:霊場)での神事のなかで歌われる「神歌」は、喜びと畏敬の念をもって、幾世紀にも渡り口伝されてきた。すべては音楽家の久保田麻琴が、島でそれら貴重な唄に出会ったことに始まる。そしてそれらの素晴らしい歌群が、絶滅の危機に瀕していることを知る。本作は歌を唄い継ぐ人々の暮らしを追うなかで、神と自然への畏れ、そして生きることへの希望を見出したドキュメンタリー。

近代化とかグローバル経済とかよくわからない流れの中で、ともすれば歌とかアートまで商品化され、消費されているような現代において、素朴な暮らしの中にある歌が、いかに豊かで崇高なものであったのか、私たちの遠い記憶を呼び戻してくれているような気がします。便利さとか効率ばかりを追い求めた挙句、すっかり脆弱になってしまった私たちの精神を、おばあたちの歌声が、激しく揺さぶります。いのちまで商品化しようとする人たちに対して、どう生きればいいのか。本質的に生きるとはどういうことか。もう一度、足元から見直したくなるような、ほんとうにいいものを見させてもらいました。何かに導かれたように、自然に生まれた映画…なるほど、これは混迷の時代に、闇の中に差し込んだ一条の光のような映画かもしれません。答えはわりと簡単なことなんだよ、おばあたちの笑顔は、そう語りかけているようでもあります。(せ)

2011年/日本/カラー/HD/ステレオ/104分
配給:太秦

★9月15日(土)より東京都写真美術館ホールにてロードショー 他、全国順次公開!

公式 HP >> http://sketchesofmyahk.com/
公式 facebook >> https://www.facebook.com/MYAHK77
公式 twitter >> @MYAHK77

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イラン式料理本(原題:Dastour-e Ashpazi  英題:Iranian Cookbook)

監督:モハマド・シルワーニ (『大統領ミール・ガンバール』)
出演者:監督の妻、母、妹、伯母、義母、母の友人、もうすぐ100歳の友達の母親

台所で料理をしながら語る女性たち。
14歳で40歳の夫に嫁いだ母の友人。ルビヤーポロー(インゲン豆の炊き込み)12人分を手馴れた手つきで作っていく。
家事に飽きて学校に通い始めた妹。夫のレザは不満だ。子供たちが好きなパスタも夫には不評。今日はお客様も来るのでと茄子の煮込みに挑戦するも、慣れない伝統料理に苦戦。
挽肉をこねる義理の母。「若い子は道具を使ったりするけど、2年は洗ってない手でよく混ぜるの」とくったくない。隣に座る姑に「嫁に来たころ、なんであんなにいじめた?」と笑う。
断食月に女性たちが集まってたくさんの料理を作る伝統的な光景が出てくると思えば、夜遅く旦那(監督)が連れてきたお客にレトルトの煮込みを出す今時の若い奥さんの姿も映しだす。もう作り方も忘れたという100歳近い母親に寄り添う息子の姿も。料理を通していろんな世代の人生が語られる。

昨年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で観た友人たち皆が絶賛していて、早々に公開が決まったのを嬉しく思っていた作品。
イランの家庭料理の美味しさや、ソフレ(食布)を囲んでイランの人たちと楽しく過ごしたことを懐かしく思い出した。なにより、毎日、食事作りに追われる女性たちの本音が炸裂していて、ぜひ世の男性たちに観てほしいと思った。
イランの人たちは、親族や友人たちと集まるのがほんとに大好きだ。映画の中でも、若い頃、お客が多くて夫の顔を1日1時間もゆっくり見たことがないという言葉があったが、私の知人でイラン人と結婚した日本人女性の方も、もう40年程前の新婚当時、1年間イランのご主人の実家で過ごしていた折、朝から親戚が押し寄せる状況で、家族だけで食事をしたのは数えるほどしかないと話してくれたことがある。お料理上手の家には、自然に人が集まるようだ。
ただ、最近は、物価があがったこともあるのか、ホームパーティもかつてより減っているようだ。友人の在日イラン人が1年ぶりにイランに帰って、親族が集まってくれた時に、「こうやって集まるのも1年ぶり」と言われ、自分が帰国したのをきっかけに集まったのを知ったそうだ。 ちょっと残念な傾向。
外では髪を隠さなければならないとか、国外に出るには親族の男性の許可がいるとか、イランでは女性にはいろいろ制限があって、一見男性優位のように見えるが、実際にイランの人たちと接していると、実は女性の力が意外と強いらしいということを感じる。現在、大学生の6~7割が女性を締めていて、女性がどんどん自立する力をつけている。とにかく、皆、自分の意見をはっきり言う。 『イラン式料理本』では、年配の女性たちも負けずに発言しているところがほんとに楽しい。きな臭いニュースばかりが流れるイランだけれど、本作からはイランの素顔が垣間見える。(咲)


この作品は去年、山形のドキュメンタリー映画祭で観たので1回目と2回目の感想を並べてみた。

「1回目」
台所で料理する6人の女性たちは監督さんの家族や親戚の方々。イランの伝統的な家庭料理や、女性の年代によっては手抜き料理もちゃんと見せてくれた。女性たちは手を休めないで、まるでお料理教室のように作り方の説明から、嫁姑の愚痴、昔話など面白おかしくしゃべってくれる。どの家庭も中流と監督さんは教えてくれたが、日本の中流家庭の台所と比べると非常に広くて清潔で無駄がない。
ベテラン主婦は(多分監督のお母様)「家の中の仕事は飽きないわ」と言うし、かたや、監督さんの奥様(若くてお美しい)は「この間、お客にスープを出したの、みんな美味しい、美味しいとほめるから、私、それは缶詰よっと言ったの。後から俺の顔をつぶしたって怒るから、夜の10時にたくさんお客を連れてくるほうが悪い!と言ってやったの」と得々と話していた。
監督さんはその後、離婚なさったとか・・・トホホ。これは絶対公開してほしい作品。
※監督さんの周りは役者揃い?だから、続篇も期待したい。

「2回目」
公開が待ち遠しかった!山形ドキュメンタリー映画祭で一番面白く、印象に残った作品だ。
新婚ほやほやの若妻(監督の奥様)から、ベテラン主婦が台所で料理を作りながら、料理のコツだけではなく、愚痴や本音も聞かせてくれる。
最後の字幕で「監督も監督さんの妹夫婦もその後離婚した」と書かれていたが、たしか料理好きで姑の恨みつらみを面白く語ってくれたベテラン主婦は「監督さんの義理の母」と書いてあったはず。
あの朗らかな方とも別れてしまう運命とは、離婚は本当に二人だけの問題でなくなるから、料理絡みの笑いがいっぱいのドキュメンタリーの中に、悲哀もあったんだと2回目でわかった。夫婦愛にも料理にも、スパイスは必要だけど、効き過ぎてもダメってことだ。(美)

2010年/イラン映画/1時間12分/ペルシャ語/DVカム/カラー
2011 年山形国際ドキュメンタリー映画祭 市民賞、コミュニティシネマ賞受賞
配給:アニープラネット

★2012年9月15日(土)岩波ホール他、全国順次公開

公式 HP >> http://www.iranshiki.com/

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コッホ先生と僕らの革命(原題:DER GANZ GROSSE TRAUM)

監督:セバスチャン・グロブラー
脚本:フィリップ・ロス、ヨハンナ・ライネルト
撮影:マルティン・ランガー
音楽:インゴ・ルードヴィヒ・フレンツェル
出演:ダニエル・ブリュール(コンラート・コッホ)、ブルクハルト・クラウスナー(グスタフ校長)、カトリン・フォン・シュタインブルグ(生徒ヨストの母親)、ユストゥス・フォン・ドーナニー(生徒フェリックスの父親/地元名士)

19世紀末、帝国主義のドイツでは、反英感情が高まり、イギリスで生まれたサッカーは「反社会的」なものだった。
そんな中、名門校にイギリスからドイツ初の英語教師が赴任してきたのがコンラート・コッホ先生だ。
後に「ドイツ・サッカーの父」と呼ばれる実在の人物で、若いコッホ先生は、英語に興味をもたせるため、授業にサッカーを取り入れていく。

 ドイツは機械体操が盛んな国で統制、規律を第一にしたスポーツのお国柄でもあり、国民の気質に合っている。
サッカーはその点、闘志むき出しな面があるので、紳士のお国として嫌がられたのだろう。
コッホ先生は約200年前のドイツの身分制度が厳しい中で、階級や国籍に対する差別に対し、公平に敵味方なく敬意を払う 「フェアプレイ」の精神や、仲間を思いやる「チームプレイ」の大切さなども教えていく様子は感動的だ。
コッホ先生を演じるダニエル・ブリュールは『グッバイ・レーニン』のドイツ若手俳優。落ち着いた物言いと躍動感のある演技に魅了された。(美)

2011年/ドイツ/カラー/114分/ドルビーデジタル
配給:ギャガGAGA

★9月15日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://kakumei.gaga.ne.jp/

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ヴァンパイア(原題:Vampire)

監督: 岩井俊二
脚本: 岩井俊二
撮影: 岩井俊二
音楽: 岩井俊二
出演:ケヴィン・ゼガーズ(サイモン)、アデレイド・クレメンス(レディバード)、蒼井優(ミナ)、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ(ゼリーフィッシュ)、アマンダ・プラマー(ヘルガ)

サイモンは20代後半。高校の生物学の先生。
彼には「プルート」というハンドルネームがある。その彼が「ゼリーフィッシュ」と名乗る若い女性と待ち合わせていた。
それはパソコン上で「共に死のう」と意気投合した見知らぬ二人だった。プルートはゼリーフィッシュにもっと楽に死ねる方法があると提案する。

 手の込んだヴァンパイもの。嫌、つまらなくて言っているのではなく、今までとはまったく違う切り口なのだ。これぞ「岩井ワールド」とゾクゾクした。
この青年教師、病身の母親にたくさんの水素風船をつけて部屋の中の異動を楽にしたり、死にたい女性をパソコンで募り、合意の上で睡眠薬をのませたり・・・あ~、この先を書いてしまうとダメだ! 言いたいけど、書きたいけど、我慢しよう。
酷い場面はないので「題名だけでノーサンキュー」なんて言わないで、是非!映画館へ。

※『恋に至る病』も生物・高校男性教師だった。世の生物教師たちが「なんでぼくらが!」と蜂起しないかなぁ。そうすると映画より面白いのに!
※蒼井優が秀逸。デビュー当時そのままでたたずんでいた。
(美)

2011年/アメリカ、カナダ、日本/カラー/119分
配給:ポニーキャニオン

★9月15日より渋谷シネマラズ、川崎チネチッタほか全国順次公開

公式 HP >> http://vampire-web.com/opening.html

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特集上映『昭和の銀幕に輝くヒロイン 第66弾 新珠三千代』

開催期間:2012年9月16日(日)~11月10日(土) 連日10:30より1回のみ上映
※10月1日(月)は全館メンテナンスのため休館
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷  http://www.laputa-jp.com/

上映作品:
『千代田城炎上』1959年/監督:安田公義/勝新太郎、三田登喜子、美川純子
『あした来る人』1955年/監督:川島雄三/山村聰、三橋達也、月丘夢路
『女殺し油地獄』1957年/監督:堀川弘通/中村扇雀、中村鴈治郎、香川京子
『馬喰一代』1963年/監督:瀬川昌治/三國連太郎、金子吉延、多々良純
『大菩薩峠』1966年/監督:岡本喜八/仲代達矢、内藤洋子、加山雄三
『惜春』1967年/監督・脚本:中村登/香山美子、加賀まりこ、森光子
『母三人』1958年/監督:久松静児/山田五十鈴、木暮実千代、織田政雄、二木てるみ
『喜劇 陽気な未亡人』1964年/監督:豊田四郎/フランキー堺、坂本九、淡島千景

入場料金:一般…1,200円
     シニア・学生…1,000円
     会員…800円
     ※水曜サービスデー…一般1,000円

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デンジャラス・ラン(原題:SAFEHOUSE)

監督:ダニエル・エスピノーサ
脚本:デヴィッド・グッゲンハイム
撮影:オリヴァー・ウッド
音楽:ラミン・ジャヴァディ
出演:デンゼル・ワシントン(トビン・フロスト)、ライアン・レイノルズ(マット・ウェストン)、ヴェラ・ファーミガ(キャサリン・リンクレーター)、ブレンダン・グリーソン(デヴィッド・バーロー)

地の果て、南アフリカのケープタウンでCIA新米職員マットは、めったに使われない隠れ家の管理人として退屈な日々を送っていた。
諜報活動で活躍したいと願っていた彼の元に、ある日、一人の男が連行されてきた。彼の名はトビン・フロスト。
36カ国から指名手配を受けている元CIA超大物の犯罪者だ。マットは自分の実力を証明するチャンスと張り切るが、彼が収容されるやいなや襲撃される。
マットは「どうして隠れ家がわかったのか」と驚くが、フロストに「奴らは俺を狙っている。お前は俺を守る義務がある」という言葉に我にかえり無我夢中で隠れ家からフロストを連れ出すのだった…。

チラシにもパンフレットにも恐い目をしたデンゼル・ワシントンがこちらを睨んでいる。
良識的で人間味あふれる男=デンゼル・ワシントンだから、「わぁ、恐い目で睨んでる」と配給さんに言ったら、「今回は極悪人という設定なんですよ」と教えてくれた。
至近距離、人混みも容赦なくドンパチには首を傾げてしまったが、納得いく展開だった。 いただいたパンフレットにはCIAの裏話がたくさん書かれていて、最初に読むべきだったなぁと思った。
※重要な役でもあるCIAの上司に、大阪ヨーロッパ映画祭で(できることなら)主演男優賞を差し上げたかった『アイルランドの事件簿』の主役ブレンダン・グリーソンさんが活躍していた。
またマットの恋人役ノラ・アルネゼデールさんは、少しの出番だったが演技力に裏打ちされた美しさにほれぼれ。 映画そのものより以外な役と珍しいキャスティングでポイントが上がった作品だった。 (美)

2012年/アメリカ国/カラー/115分/スコープサイズ
配給:東宝東和

★9月7日よりTOHO シネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://d-run.jp/

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ディクテーター 身元不明でニューヨーク (原題:The Dictator)

監督:ラリー・チャールズ
脚本:サシャ・バロン・コーエン
撮影:ローレンス・シャー
美術 :ビクター・ケンプスター
衣装 :ジェフリー・カーランド
音楽:エラン・バロン・コーエン
出演:サシャ・バロン・コーエン(アラジーン将軍)、アンナ・フェリス(ゾーイ)、サー・ベン・キングスレー(タミール)、ジェイソン・マンツォーカス(ナダル)、ジョン・C・ライリー(クレイトン)

ワディヤ共和国を統治するアラジーン将軍様(サシャ・バロン・コーエン)は、悪政をして国民を苦しめるのを楽しみにしている暴君で、処刑宣告を繰り返すとんでもない独裁者。
そんなアラジーンが、核疑惑釈明のため国連本部のあるニューヨークに乗り込んだはいいが、何者かに拉致されトレードマークであるあごヒゲを剃られてしまう・・・

6月にシドニーで観たが、会場の笑いについていけなかった。やっと字幕つきで、その笑いの意味がわかった!試写室にも度々笑い声が起きていた。
今まで、悪ふざけや痛烈皮肉ばかりの悪趣味(?)作品だったが、今回は「情」がある。
これくらいのレベルのほうが受け入れ安いと思う。最後のオチも面白い。
こじき王子や『デビルズ・ダブル』にリンクする。
粗末に扱われて苦労したが、おかげで女性を見る目が養われて良かった!
恋人役のアンナ・ファリスが特別美人じゃないが、知的でいい感じだった。(美)

冒頭、「キム・ジョンイルを偲んで」と掲げられているところから大笑い。コーエン流の皮肉は随所にたっぷり。「悪の巣アメリカに乗り込む!」と叫んでニューヨークに赴くアラジーン。理由をでっちあげて戦争をする国と断罪。「カダフィ、サッダーム、キム・ジョンイル、そしてチェイニーも、独裁者は皆いなくなった」と、独裁者にチェイニーの名も連ねているところも憎い。 そんなアラジーン様が、髭を剃られ、身分もわからない一介の人間となってニューヨークの町に放り出される。そして、恋に落ちた相手ゾーイはエコ活動家。だんだん彼女に感化を受けて普通の人になっていくアラジーン様。最後はめでたしめでたしのゾーイとの結婚式だが、ここでも愉快なオチが。それは観てのお楽しみ!(咲)

2012年/アメリカ/カラー/83分/シネマスコープ
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

★9月7日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他、全国順次公開

公式 HP >> http://www.dictator-movie.jp/

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夢売るふたり

監督・原案・脚本:西川美和
企画:佐々木史朗
撮影:柳島克己
音楽:モアリズム
出演:松たか子(市澤里子)、阿部サダヲ(市澤貫也)、田中麗奈(棚橋咲月)、鈴木砂羽(睦島玲子)、安藤玉恵(太田紀代)、江原由夏(皆川ひとみ)、木村多江(木下滝子)、やべきょうすけ(岡山晃一郎)、大堀こういち(中野健一)、倉科カナ(佐伯綾芽)、伊勢谷友介(太田治郎)、古舘寛治(東山義徳)、小林勝也(金山寿夫)、香川照之(外ノ池俊作/明浩)、笑福亭鶴瓶(堂島哲治)

人間最大の謎は、男と女
小料理屋を営む若い夫婦、貫也と里子。常連客もついてようやく5周年を迎えた夜、厨房からの失火で店は全焼してしまった。全てを失ったが、気丈な里子はまた一からやり直そうと言う。貫也は何もやる気が起きず、飲んだくれて日をすごしていた。たまたま常連客だった玲子に再会した貫也は、酒の勢いで一夜を共にしてしまう。浮気はすぐにバレて、貫也は平謝り。しかし、不倫を清算したばかりの玲子がもらった手切れ金をそっくり貫也に贈っていたことから、里子はこれをきっかけに、夫を使った結婚詐欺を思いつく。

店を建て直したいばかりに始めてしまった結婚詐欺。世の寂しい女たちの心の隙間にしのびこんで、金を騙し取っていく二人はどんどん嘘を積み重ねていってしまいます。西川美和監督作品の人物はリアルで、毎回ぎくりとしたり、イタかったりします。今回も同じく、どこでばれるのかドキドキした私は被害者よりも詐欺師側に肩入れしていたのかしら・・・?
愛嬌があって誰にも優しそうな夫の阿部サダヲさん適役。夫を詐欺に送り出す妻の松たか子さん、それまでになかった面を見せた『告白』よりも、さらにリアルな愛憎に揺れる「女」を演じて、いやぁ、すごかったです。男性諸氏はお風呂場のシーンに震えが来るかもですぞ。(白)

2012年/日本/カラー/137分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
©2012「夢売るふたり」製作委員会

★9月8日(土)ロードショー

公式 HP >> http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/

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凍える牙(原題:HOWLING)

監督・脚本:ユ・ハ
原作: 乃南アサ「凍える牙」(新潮社刊)
出演:ソン・ガンホ(サンギル)、イ・ナヨン(ウニョン)ほか

駐車場の車が炎上し、中にいた男が焼死した。焼身自殺と思われ、身元を調査するサンギル。中年にいたったが、署内の出世競争からは取り残され、家庭でも問題を抱えるさえない刑事である。パートナーにと、新米の女性刑事ウニョンを押し付けられてくさっていたが、ウニョンはその焼死体に動物の噛み跡を見つけた。やがて相次いで殺人事件が起き、狼の血を引く大型犬のしわざと判明する。

乃南アサの直木賞に輝いた同名小説が原作。『霜花店(サンファジョム) 運命、その愛』のユ・ハ監督が脚本・監督で映画化。日本では2度テレビドラマ化されているが、映画化はこれが初となりました。不可解な事件を軸に、謎解きや犯人の追跡劇ばかりでなく、主演のソン・ガンホとイ・ナヨンのそれぞれの人間模様も味わい深く描いています。犬と狼の交配種であるウルフドックに、孤独な人間たちの悲しみを重ねているようでした。(白)

2012年/韓国/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ

★9月8日(土)丸の内TOEI、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.kogoeru-kiba.com/

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ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1(原題:痞子英雄 首部曲 全面開戦)

監督・脚本:ツァイ・ユエシュン
アクション監督:シリル・ラファエリ、リー・チュンチー
撮影:リー・ピンビン
出演:マーク・チャオ(ウー・インション)、ホァン・ボー(シュー・ダーフー)、Angelababy(ファン・ニン)、DEAN FUJIOKA(リー捜査官)、テリー・クァン(シャオチン)、レオン・ダイ(ジャバー)、アレックス・トー(オウ隊長)

新米刑事のウー・インションは正義感が強く、事件解決のために後先考えず突っ走ってしまい、上層部にうけが悪い。そんな熱血刑事が、ふとしたことで、人のいいチンピラのダーフーと関わった。お調子者のダーフーは大きなヤマとは知らずに首をつっこんだ取引でダイヤ入りの鞄を手に入れた。追ってくる敵の数や規模が尋常ではなく、ウーとダーフーは心ならずも一緒に行動することになってしまう。

刑事とチンピラ、正反対のデコボココンビが、大きな犯罪に巻き込まれていきます。『モンガ』(2010年)では、高校生のモスキート役だったマーク・チャオがこんなに男っぽい役を!!とびっくりしたのですが、もとは2009年にヒットしたTVドラマで、そのときから、この熱血刑事インション役だったのだそうです。監督・脚本はテレビドラマと同じツァイ・ユエシュン。製作にもあたっています。
監督の意気込みが伝わるアクション満載の作品で、俳優陣も監督の意気に応えて熱演、数々のスタントを自分でこなしています。全編これヤマ場ばかり!?のため、ラストはどうなるのか気になりましたが期待にたがわず、最後まで力を抜いていませんでした。中国の人気コメディアンのホァン・ボーがダーフー役で笑いを起こしてくれて、緊迫した場面の続く中いい緩衝材になりました。(白)

2012年/台湾/カラー/128分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
© 2012 Hero Pictures Corporation Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

★9月8日(土)丸の内TOEIほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.bw-movie.jp/

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シグロ・ドキュメンタリー映画特集

「シグロ・ドキュメンタリー映画特集」が開催されます!!


2011年秋、パリのシネマテーク・フランセーズにてシグロ特集上映が開催されました。
22日間にわたって23本のシグロ作品が上映され、主催者であるシネマテークからは、シグロ作品を包括するモチーフとして、『レジスタンス=抵抗』という言葉が提示されました。
今回の凱旋上映では、その中からシグロがこの26年間に製作・配給したドキュメンタリーの代表作・話題作7作品を上映いたします。
また、各作品上映後には監督などによるトークイベントを行う予定です。
ぜひ、ご来場下さい!!


☆上映情報

□日程:9月8日(土)~14日(金) 連日13:00~
オーディトリウム渋谷にて TEL:03-6809-0538
http://a-shibuya.jp/

□上映作品
・9月8日(土)『はだしのゲンが見たヒロシマ』2011年/77min
 漫画家 中沢啓治/監督 石田優子 トーク
 ※ 中沢啓治氏は、広島からインターネットTVによるトークを予定しております。
 シネマジャーナル掲載記事 スタッフ日記 2011年8月第3週
 http://www.cinemajournal.net/diary/2011.html#d11-08-03

・9月9日(日)『戦場の女たち』1989年/55min
 監督 関口祐加 トーク
 今年、『毎日がアルツハイマー』が公開された関口監督のデビュー作(関口典子名)
 シネマジャーナル12号 映画紹介&関口監督インタビュー記事
 本誌在庫無しのためHPにも掲載:
 http://www.cinemajournal.net/bn/12/senjo.html

・9月10日(月)『ゆんたんざ沖縄』1987年/110min
 監督 西山正啓 トーク

・9月11日(火)『チョムスキー9.11』2002年74min
 監督 ジャン・ユンカーマン トーク
 『チョムスキー9.11』 シネマジャーナルHP紹介記事
 http://www.cinemajournal.net/special/2002/chomsky911/index.html

・9月12日(水)『エドワード・サイード OUT OF PLACE』2005年/137min
 プロデューサー 山上徹二郎 トーク
 シネマジャーナルHPスタッフ日記掲載『エドワード・サイード OUT OF PLACE』
 2006年10月第3週 http://www.cinemajournal.net/diary/2006.html#d06-10-03

・9月13日(木)『靖国YASUKUNI』2007年/123min
 監督 李纓 トーク
 『靖国YASUKUNI』 李纓監督インタビュー記事 シネマジャーナル73号掲載

・9月14日(金)『沈黙を破る』2009年/130min
 監督 土井敏邦 トーク(予定)

詳細はコチラ→http://cine.co.jp/special2012.html

□料金
 前売り:¥1,300
 当日一般:¥1,500/学生:¥1,300/シニア:¥1,000
 3回券:¥3,000
   (9月29日(土)~ドキュメンタリー映画『亡命』共通回数券)

◆【お問い合わせ】シグロ TEL:03-5343-3101/MAIL:siglo@cine.co.jp
◆株式会社シグロ サイト: http://www.cine.co.jp/

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DON'T STOP!

監督:小橋賢児
出演:高橋歩、CAP他

20代から70代の男女11人がキャンピングカーとハーレーでルート66を駆け抜ける姿を追ったドキュメンタリー。この旅が実現したのは、一人の母親の息子の夢を叶えてあげたいという切なる思い。26歳の時、交通事故で下半身と右腕の自由を失い、その後20年、車椅子生活の息子、通称“CAP”。ある日、北海道名寄の自宅近くで開かれた「毎日が冒険」著者の高橋歩のトークライブに出向いた母。「息子に会ってほしい」と頼む。真剣な目にほだされて会いに行った高橋歩。その場で、「ルート66に行くべ」と。こうして、高橋歩の仲間とCAPの家族の珍道中が始まる・・・

この旅のことを聞きつけ映画にしてしまったのは、俳優活動を休止して、自らの生き方を模索していた小橋賢児。旅の1か月前からCAPの自宅でカメラを回し始める。父親のシモの世話をする娘二人。旅に出ると、娘二人は自由人たちの旅になかなかついていけない。何かと頼ろうとする娘たちに自立を促す高橋歩。一方で、雄大な風景をCAPに見せるために、男4人がかりで車椅子を抱えたり、ハーレーに乗せてあげたりと、一度でいいからルート66を走りたかったというCAPの夢の実現に力を惜しまない。なにより感銘を受けたのは、息子のためにダメモトで高橋歩に会いに行ったお母さん。旅の実現が決まると自分も幼馴染を誘って一緒に行ってしまう。いやもう、母は偉大です。 願えば夢は叶う!(咲)

2011年/日本/109分

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2011」SKIPシティアワード受賞作品
配給:ゴー・シネマ=株式会社デジタルSKIPステーション

★2012年9月8日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

『DON'T STOP!』前夜祭イベントと初日舞台挨拶が行われます。

◆前夜祭イベント<DON'T STOP! FES.>

映画に出演している旅人・自由人の高橋歩と仲間たち、小橋賢児監督ほか、"夢をあきらめない"DON'T STOP!スピリットを持つ仲間たちが集結し、夏の夜空の下、熱いトークやライブが繰り広げられます!
日時 : 2012年9月7日[金] 開場 18:00/開演 19:00(22:00終了予定)
場所 : WILD MAGIC イベントエリア (ゆりかもめ新豊洲駅すぐ)
出演者: 高橋歩、CAP、GAKU-MC、小橋賢児監督
入場無料

◆初日舞台挨拶

日時 : 2012年9月8日[土]
1回目 9:15の回、上映後(11:10~11:40予定)
2回目 12:35の回、上映前(12:15~12:35予定)
場所 : 新宿武蔵野館
登壇者: 高橋歩、CAP、小橋賢児監督

公式 HP >> http://dontstop.jp/

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最強のふたり(原題 : UNTOUCHABLE)

監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
撮影:マチュー・ヴァドピエ
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
出演:フランソワ・クリュゼ(フイリップ)、オマール・シー(ドリス)、 アンヌ・ル・ニ(イヴェンヌ)、オドレイ・フルーロ(マガリー)

パラグライダーの事故で首から下が麻痺し、車椅子の生活をおくっている大富豪フィリップは、介護人応募に面接に来たスラム出身の黒人青年ドリスに興味をおぼえた。
初対面から話がかみ合わないふたりだったが、今まで杓子定規の介護人に満足していなかったフィリップは、どうせ長続きしないだろうとドリスを仮採用することにした。

これは去年の東京国際映画祭さくらグランプリと主演男優賞も受賞!した作品。
腫れ物にさわるように介護されたり、同情ばかりされたりとクサクサしていた大富豪フィリップにとってドリスは何もかも新鮮だったに違いない。
フィリップの屋敷従業員、養子の娘、ドリスの背景もウェットにならない描き方で好感が持てた。
ご本人たちの映像が最後に少しだけ出たが、映画中の黒人という感じではなく、背丈も普通で浅黒い方だった。いまでも交流して仲良しらしい。立場を超えた結び付きが幸せ気分に浸らせてくれた。(美)

去年の東京国際映画祭で観ることができなくて、残念に思っていた作品。観客賞も取っているし、主演男優賞を主演のふたりが受賞していたので、よけい気になっていたけど、やっと観に行くことができた。
主人公たちの関係性は良かったと思う。それに介護される人と介護人の関係が、患者と保護者という感じで描かれていなくて、その点は良かったと思う。それに、親戚や、周りの人たちからの、常識的なアドバイスなどは無視して、自分の思うことを信じて行動する障害者の姿も良かったと思う。
一歩間違えれば、わがままな障害者となるところが、絶妙なバランスで、そうならないように演出されていた。そして何よりも、障害者は保護されるべき立場という視点ではなく描かれているのがいい。
でも、首から下が麻痺して全介護が必要な富豪とスラム出身の黒人の物語という設定自体が、いかにもステレオタイプという感じで、そこがちょっと残念だった。(暁)

2011年/フランス/カラー/113分/33mm/ドルビーデジタル
配給:ギャガ GAGA

★9月1日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公式 HP >> http://saikyo-2.gaga.ne.jp/

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カルロス(原題:Carlos)

監督:オリヴィエ・アサイヤス(『イルマ・ヴェップ』『クリーン』『夏時間の庭』)
主演:エドガー・ラミレス(『チェ 28歳の革命』)

イリッチ・ラミレス・サンチェス。
ベネズエラ出身のパレスチナ解放人民戦線(PFLP)のテロリスト。
暗号名、「カルロス」。
1974年ロンドンにおける経済界の大物殺害未遂から、1994年スーダンのハルツームで逮捕されるまでの20年間、テロ14件、殺害83人、 負傷者100人以上の事件に関与したといわれる。
本作は、伝説のテロリスト、カルロスの半生を、史実や報道をもとに、オリヴィエ・アサイヤス監督が想像を膨らませて描いた5時間半にわたる超大作。

第一部(101分)
1970年にヨルダンで訓練を受け、親パレスチナのテロ組織「黒い九月」のアブ・イヤドの下で戦闘に参加していたカルロス。1973年、レバノン・ベイルートで、パレスチナ解放人民戦線のリーダー、ワディ・ハダドと面会し、武装闘争による世界革命に貢献したいと進言する。折しも、パリで「黒い九月」のリーダーが暗殺され、パリ在住の「アンドレ」が後継のリーダーとなっていた。カルロスはハダドの命でアンドレの補佐となる。
ロンドンでシオニスト支援者の経済界大物襲撃を皮切りに、日本赤軍によるハーグのフランス大使館襲撃の後方支援、オルリー空港でのイスラエル機砲撃等々、次々とテロ事件に関わる。カルロスは仲間と共に次なる標的ウィーンで開催される石油輸出国機構(OPEC)総会襲撃に向け、作戦を開始する・・・

第二部(107分)
1975年12月21日、ウィーン、OPEC本部の会議室に乱入したカルロスたち。ターゲットはベネズエラ石油相エルナンデス、サウジアラビア石油相ヤマニ、そしてイラン石油相アムゼガルの3名だ。ほかの代表団の者たちも人質にし、航空機でイラクのバグダードへ向かうよう指示する。テロリストと人質を載せた飛行機は、調停役を引き受けたアルジェリア大統領のいるアルジェに降り立つ。その後、リビア、チュニジアへと移動するが、受け入れを拒否され結局アルジェに戻る。人質は解放され、カルロスたちも解放される。その後、南イエメンのアデン、イラクのバグダード、東ドイツの東ベルリンと潜伏先を変えるカルロス。

第三部(118分)
シリア政府の庇護のもと、東ヨーロッパに拠点をもうけたカルロスたちは大量の武器を密輸し、各地でテロの黒幕として暗躍していたが、1989年11月のベルリンの壁崩壊と共に支援者を失い、カルロスたちはスーダンへ逃れる。酒と女に溺れるカルロスのもとに、やがて追手がやってくる・・・

70年代から80年代にかけての名だたるテロ事件を引き起こした人物の生き様に、5時間半、スクリーンに釘付けになった。アメリカを中心とする自由主義世界と、ソ連を中心とする社会主義世界が対立した冷戦の時代。カルロスの父親がマルクス主義者の学者だったことが影響したにしても、カルロスが革命の戦士として、身の危険を冒してまで行動した原動力は何だったのか? 当時、日本赤軍の行動にも、なぜ日本人がパレスチナ解放に暴力で立ち向かうのかと不思議に思ったものだ。
オリヴィエ・アサイヤス監督は、カルロスと同じベネズエラ出身で、5か国語を使えるエドガー・ラミレスを起用して、革命に身をやつした人物像に迫っている。スペイン語、英語、フランス語、ドイツ語などが飛び交う本作。エドガー・ラミレスは、自身の出来ないアラビア語の台詞にも挑戦している。PFLPに関わったカルロスは当然ながらアラビア語も出来たのだと納得。本作を通じて、なぜカルロスが革命に身をささげたのかは、残念ながら理解できなかったが、監督が時代の変遷を細やかに捉えていることには敬意を表したい。例えば、1975年、OPEC本部襲撃の際、イラン石油相アムゼガルは背広にネクタイ姿。机上のイランの国旗は獅子が剣を振りかざした姿が真ん中に描かれている王政時代のもの。後に、カルロスのスーダン亡命に手を貸したイランの外交官は、ネクタイをしない詰襟風のシャツ姿。
私にとってオリヴィエ・アサイヤス監督はマギー・チャンの元夫という位置づけでしかなかったけれど、骨太な本作を観て、今後、どんな作品を生み出してくれるのか注目したい監督の一人となった。(咲)

フランス=ドイツ/2010年/カラー/スコープ/第1部101分、第2部107分、第3部118分
配給: マーメイドフィルム

★2012年9月1日より、渋谷シアター・イメージフォーラム、吉祥寺バウスシアターにて5週間限定ロードショー

公式 HP >> http://www.carlos-movie.com/

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コロンビアーナ(原題:COLOMBIANA)

監督:オリヴィエ・メガトン
製作・脚本:リュック・ベッソン
脚本:ロバート・マーク・ケイメン
撮影:ロマン・ラクールパ
音楽:ナサニエル・メカリー
出演:ゾーイ・サルダナ(カトレア)、アマンドラ・ステンバーグ(少女時代のカトレア)、ジョルディ・モリャ(マルコ)、クリフ・カーティス(エミリオ)、マイケル・ヴァルタン(ダニー)、レニー・ジェームズ(レス)

1992年、コロンビア。マフィアの幹部であった父が組織から抜けるとき、笑顔と握手で送り出したボスはすぐに家族もろとも殺せ、と命じた。カトレアに秘密を託した父は応戦するもあえなく惨殺される。両親を殺されたカトレアは叔父エミリオを頼って一人渡米し、15年後、美しき暗殺者となった。
復讐を心に刻むカトレアは一人暗殺するごとに、口紅でカトレアの花を描いた。仇である組織の人間もそれに気づき、殺し損ねた彼女を追って身辺にせまってくる。

決断力と勇気を持つ小学生のカトレアがまず登場し、追跡するマフィアをまいてコロンビアの街を走ります。『レオン』(1994年)の続編を目論んで同じリュック・ベッソンが製作しましたが、演じたアマンドラ・ステンバーグも将来ナタリー・ポートマンのような女優になってくれますように。
大人になったカトレア、ゾーイ・サルダナは、モーション・キャプチャーで演じた『アバター』のヒロイン、ネイティリを思い出させるしなやかでセクシーな肢体で魅了します。マフィアへの挑発が意外に無防備で「そりゃ危険すぎる」と、叔父のエミリオ同様、ハラハラさせられました。執拗な攻撃をかいくぐって報復を遂げるかどうか、劇場でお確かめください。(白)

2011年/アメリカ、フランス/カラー/108分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2011 EUROPACORP - TF1 FILMS PRODUCTION - GRIVE PRODUCTIONS

★9月1日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://colombiana.jp/

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ハイザイ~神さまの言うとおり~

監督:福永周平 泉尾昌宏
脚本:泉尾昌宏
音楽:スネオヘアー 出演:落合モトキ ともさかりえ 深水元基 吹田早哉佳 ALISA MIINA 西田幸治 スネオヘアー

沖縄にはスピリチュアルなパワーで人々を占う“ユタ”と呼ばれる巫女がいる。ボスの命令でそのユタを連れに来たヤクザの原沢は、誰もいない店内で万引き中の深谷とはち合わせる。その時苦し紛れに店長のふりをした深谷をユタと勘違いし、拉致してしまう。一方、本土から遊びにきた橋本と工藤のカップルがいた。上機嫌の橋本だったが、なぜか行く先々で頭に石をあてられる。時を同じくして、コックリさんの予言で自分の余命が10年と告げられていた地元の高校生Alisaは友達のみいなと一緒に店を訪ねるが店は閉まっていた。交差する6人(+α)の運命の行き先とは……。

タイトルの「ハイザイ」は、沖縄方言の“ハイサイ”と運命を左右する“采配”、ミラクルというサプリを配りたいという意味の“配剤”とのトリプルミーニングを含む言葉遊びから。落合モトキ×ともさかりえのコンビの空気感が絶妙!何も考えずに見ていても、ププッと笑ってしまうこと間違いなし。(明)

2012年/日本/カラー/74分/アメリカン・ヴィスタ
配給:アルゴ・ピクチャーズ

★9月1日(土)より、キネカ大森ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.haizai-movie.com/

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歌えマチグヮー

企画・撮影・編集・監督:新田義貴
出演:栄町市場おばぁラッパーズ、栄町市場シンガーズ、もりと、栄町市場の方々

音楽が鳴っているところに何かがうまれる
 日本一元気な、街と人々の物語

沖縄県那覇市安里にある栄町市場は、4000坪のアーケード街に120もの店がたち並ぶ。マチグヮーとは市場の意味。栄町市場が誕生したのは今から60年前。「ひめゆり学徒隊」で知られる女学校の学び舎が戦災で焼け落ち、昭和24年、その跡地に公設栄町市場が誕生しました。
昭和30年代が一番の最盛期だったが、沖縄の本土復帰後、大型スーパーの進出に押されて少しづつ活気がなくってしまいました。10年前に再開発計画が持ち上がり、「音楽」をキーワードに有志たちが市場の再生を目指す活動を開始。元気なおばぁや、どこからか集まってきた若者たちが、昭和の情緒が今も残るマチグヮーを復活すべく動き始めます。
キーワードは「音楽」。その中心にいるのが「栄町おばぁラッパーズ」。
メンバーは、看護師の新城カメ、八百屋の高良多美子、リサイクルショップの上地美佐子。 カメラは、それぞれの仕事を紹介し、市場を元気にするためラップの練習に明け暮れる3人の姿を追う。そして、マチグヮーの店主(乾物屋、八百屋、蕎麦屋)で結成された「栄町市場シンガーズ」、居酒屋<生活の柄>を経営しながら「マルチーズロック」というバンドを結成し音楽活動を行うもりとや、市場にあるお店の数々が映し出されます。
この街と音楽が大好きな人々がたくさん登場し、活気を取り戻したマチグヮーや地域コミュニティ再生の様子が伝わってきます。
毎年6月から10月の最終土曜日には「栄町市場屋台祭り」が開催(2006年開始)され、その模様も映し出されます。なんと、「めいどいん栄町市場」(2006年)、「めいどいん栄町市場vol.2」(2010年)の2枚のCDもリリースしているそうです。


栄町おばぁラッパーズ              栄町市場60周年  


栄町市場屋台祭りにて

新田義貴監督は、NHKディレクターとして、主にアジアや中東、アフリカなど第三世界が抱える問題に焦点を当てた番組制作を行ってきました。6年前、仕事の都合で沖縄に引越し、住んだところが栄町市場のすぐそばだったことから、市場の人たちと親しくなり、記録を始めたそうです。2009年に独立し、映像制作会社ユーラシアビジョンを設立。



おばあラッパーズ
(2012.7.28 沖縄音楽フェスティバルにて)

映画を観る前、7月28日新宿で行われる新宿エイサー祭りに「栄町おばぁラッパーズ」が来るというので見に行きました。新宿アルタ前のエイサー祭りのオープニングで「おばぁラッパーズ」は登場はしましたが、人、人、人で、姿はほとんど見ることができず、その日行われる<沖縄音楽フェスティバル>にも出演するというので、こちらに行きました。
古謝美佐子さんや夏川りみさんも参加したフェスティバルでしたが、「おばぁラッパーズ」は、ふたりに負けないくらいの歌と面白いパフォーマンスを見せてくれました。
最初、おばあがラップ?と思いましたが、沖縄音楽とラップがよく溶け合い、またMCが面白く、『歌えマチグヮー』に対する期待も膨らみました。「おばぁ」と言うから、私は70代以上を想像していたのですが、50代(たぶん)くらいの若い方たちでした。

栄町市場は、懐かしさを感じる商店街。今では、こういう昭和の情緒を感じさせる商店街は少なくなっていますが、私はこういう商店街、市場が大好きです。
映画では、栄町で生まれ育った「おばぁラッパーズ」のメンバー、それぞれの仕事場の光景や家族なども映し出され、ラッパーに変身する姿が面白かった。ドラムのスティックを何するのかと思ったら、結った髪を止めるのに使っていたり、八百屋の前掛けを舞台衣装にしていて、なかなかアイデアが面白い。この映画のナレーションを勤めた新城カメさんは沖縄の伝統的な着物だし、リサイクルショップの上地美佐子さんはトレーナーの上下のような服と、三人三様。
市場の中のいろいろなお店が出てきたが、その中で、もりとさんが経営する居酒屋<生活の柄>が気になった。このタイトルの歌を高田渡が歌っていたが、この詩は、元々、那覇出身の山之口貘の詩なので、店主は山之口貘にちなんで店名にしたのかと思い、監督に聞いてみたら、なんと高田渡のファンなのでこの店名にしたとのこと。私も最初に買ったレコードが高田渡のものだったし、同じアパートに住んでいたこともあり、なにかと高田渡と縁があるので嬉しかった。もりとさんは「めいどいん栄町市場」CD制作の中心人物でもあるという。
若い人から年配の人まで、様々な人たちが集まって、栄町市場を盛り上げている姿に、この街の活気を感じた。また、いつか沖縄に行って、この市場に行ってみたい。(暁)


もう30年程前、沖縄を旅した折、那覇の町を歩いていた時に入った市場で、青い魚や豚の頭に驚いたことを思い出しました。シャッター商店街になりそうだった市場が、月に一度の踊れ歌えやのお祭りで元気を取り戻したことを嬉しく思いました。かつては日本のどこにでもあった人間味溢れる市場がどんどん減っている中、快挙です。「栄町市場おばぁラッパーズ」のお一人がナレーターを務めているのですが、味わいのある語り口。この栄町市場、「ひめゆり学徒隊」の学び舎だった女学校が戦災で焼け落ちた跡地に昭和24年にできた公設市場だということにも、ほろっとさせられました。(咲)

2012年/日本/89分/HDVカラー/ドキュメンタリー
製作・配給:ユーラシアビジョン

★2012年8月25日(土)~9月21日(金) シアターイメージフォーラム(渋谷)にてレイトショー上映!!
 10月6日(土)~26(金) 桜坂劇場(那覇)にてロードショー

公式 HP >> ttp://utae-machigwa.com/

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よこはま若葉町多文化映画祭

  • 会期 2012年8月25日(土)~9月2日(日)
         (映画館での上映は8月31日(金)まで)
  • 会場 シネマ・ジャック&ベティ+横浜パラダイス会館
         〒231-0056横浜市中区若葉町3-51-3
  • 交通 京浜急行「黄金町」駅より徒歩5分
        市営地下鉄「阪東橋」駅より徒歩5分
        JR「関内」駅より徒歩15分
  • 料金
     ▼一般1800円/大専1500円/小・中・高・シニア・外国人1000円
     「かぞくのくに」「サニー 永遠の仲間たち」「ロボット完全版」

     ▼一般1700円/大専1400円/小・中・高・シニア・外国人1000円
     「オロ」

     ▼一般1500円/大専1200円/小・中・高・シニア・外国人1000円
     「孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~」「ヤクザガール 二代目は10歳」

     ▼一般1300円/大専1000円/小・中・高・シニア・外国人1000円
     「カタロゥガン!ロラたちに正義を!」「森の慟哭」+「忍び寄る原発~福島の苦悩をベトナムに輸出するのか?~」

     ▼一般1200円/大専1000円/2才~高校生800円
     「きかんしゃトーマス ディーゼル10の逆襲」

     ▼3回券 3600円

     ▼J&B会員+ART LAB OVA会員割引あり。

    *上記外国人割引、3回券のご利用は、8月25日(土)~8月31日(金)の間だけです。

     ▼そのほかの割引【いつでもどの映画でも割引が適用されます】
     ・夫婦50割引:どちらかお一人様でも50歳以上のご夫婦は、2人で2,000円
     ・高校生友情プライス:高校生3人以上で1人1,000円
     ・しょうがい者割引:障害者手帳ご提示で、ご本人と付添の方1人1,000円
     ・レディースデイ:毎週水曜日女性1,000円
     ・メンズデイ:毎週木曜日男性1,000円
     ・映画の日:毎月1日だれでも1,000円
★North Korea北朝鮮
『かぞくのくに』
drama
日本/日本語・조선말/2012/100分
監督・脚本:ヤン・ヨンヒ
出演:安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン
在日コリアン2世として「ディア・ピョンヤン」、「愛しきソナ」で自分の家族を撮影してきたヤン・ヨンヒ監督。今回の作品は、その実体験をベースにした人間ドラマである。病気治療のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄ソンホと、彼を迎える妹リエら家族の姿を通し、価値観の違いと変わらぬ家族の絆を綴っていく。韓国映画「息もできない」監督・主演のヤン・イクチュンも北の監視員役で出演している。
・料金 一般1800円/大専1500円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★South Korea韓国
『サニー 永遠の仲間たち』
drama
韓国/한국어/2011/124分
原題:써니 Sunny
監督:カン・ヒョンチョル
出演:ユ・ホジョン、チン・ヒギョン、コ・スヒ、ホン・ジンヒ
きらめく学生時代を共に過ごした7人の女子高生によるグループ「サニー」が、25年ぶりに集まって生涯で最高の瞬間を蘇らせる…。70~80年代の洋楽&コリアンヒットナンバーの数々で彩られ、民主化前夜、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権下のソウルの若者たちの文化と生活がイキイキと描かれている。様々な人生の皮肉をコミカルに描き、笑って泣ける青春ポップな作品。
・料金 一般1800円/大専1500円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★Tibetチベット
『オロ』
documentary
日本/日本語・Tibetan/2012/108分
監督:岩佐寿弥
音楽:大友良英
6才の少年オロは母親に背中を押され、ヒマラヤを越えてチベットから亡命した。現在、インド北部の町で、チベット亡命政府が運営する「チベット子ども村」に寄宿し学んでいる。3年間一度も会っていない母に思いをはせ、さまざまな人々と触れ合いながら、「なぜ母はぼくを異国へ旅立たせたのか」という疑問の答えを探し続けるオロ。監督は岩波映画出身、77才の岩佐寿弥。おちゃめな少年とアバンギャルドな監督の映画である。
*8/26(日)岩佐寿弥監督と「オロ」スタッフによる舞台挨拶&交流会
・料金 一般1700円/大専1400円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★Braziブラジル
『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』
documentary
日本・ブラジル/日本語・Português/2011/88分
監督:津村公博、中村真夕
自動車産業を支える労働力として、多くの日系ブラジル人が暮らしている静岡県浜松市。日本で生まれ育ったにも関わらず、ブラジル国籍であるため義務教育も保障されず、安定した仕事にもつけない青年たちだが、いつもいきいきとして明るい。しかし、2008年のリーマンショック以降、仕事を失い帰国を余儀なくさる者も現れ、家族や友人、恋人たちと別れなくてはならず…。
*8/25(土)津村公博監督舞台挨拶
*8/29(水)上映後、中村真夕監督+ヨコハマメリー中村高寛監督トーク(15分ほど)
*8/31(金)上映後、中村真夕監督+宮ケ迫ナンシー理沙さんトーク&交流会(1時間ほど/ワンドリンク制)
・料金 一般1500円/大専1200円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★Russiaロシア
『ヤクザガール 二代目は10歳』
comedy
ロシア/日本語・русский язык/2010/82分
原題:DOCH YAKUDZY
監督:セルゲイ・ボドロフ
ヤクザの組長にかわいがられている10才の可憐な孫娘ユリコが、敵対する組織に追われ、ひょんなことからロシアの大地で珍道中を繰り広げるコメディー映画。荒唐無稽なストーリーの中に、ロシア人の日本観が見え隠れする。監督は浅野忠信主演「モンゴル」の本格派セルゲイ・ボドロフ。CMドラマで活躍中の子役・荒川ちかがとってもキュート!
・料金 一般1500円/大専1200円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★Indiaインド
『ロボット完全版』
sci-fi action
インド/ Hindu/2010/177分
原題:ENDHIRAN
監督:シャンコール
出演:ラジニカーント、アイシュワリヤー・ラーイ
映画大国インドが放つSFアクション。『ムトゥ踊るマハラジャ』のラジニカーントが無敵のロボットに扮し、まさかの大暴走を展開する。完全版はカットされていた38分のダンスシーンもてんこ盛りで、インド映画ならではの摩訶不思議な世界観、なんでもありの壮絶アクション、絢爛豪華な歌と踊りが怒濤のように押し寄せる。文句なしに楽しめるスーパーエンターテイメントで3時間はあっという間!
・料金 一般1800円/大専1500円/小・中・高・シニア・外国人1000円

★Philippinesフィリピン
『カタロゥガン!ロラたちに正義を!』
documentary
日本/日本語・Tagalog・English /2011/80分
監督:竹見智恵子
撮影・編集:中井信介
音楽:アリソン・オパオン
太平洋戦争中のフィリピン。ある日、武装した日本兵が村にやってきて、男たちを殺し、家々に火を放ち、恐怖に震える少女たちを駐屯地に連行して「慰安婦」にした。少女たちは、想像もつかないほどの苦しみや悲しみを味わいながらロラ(おばあさん)になり、長い沈黙の後、失われた過去を取り戻すために立ち上がり、80才を過ぎた今も闘い続けている。
*8/25(土)竹見智恵子監督トーク&交流会+アリソン・オパオンさんミニライブ
*8/28(火)竹見智恵子監督トーク&交流会
・料金 一般1300円/大専1000円/小・中・高・シニア・外国人1000円
    *交流会は1時間ほど、ワンドリンク制

▼以下2本は同時上映
*8/26(日)中井信介監督トーク&交流会
*8/29(水)中井信介監督トーク&交流会+中ムラサトコさんミニライブ
・料金 一般1300円/大専1000円/小・中・高・シニア・外国人1000円
     *交流会は1時間ほど、ワンドリンク制

★Malaysiaマレーシア
『森の慟哭』
documentary
日本/日本語・Bahasa Melayu・English/2010/45分
監督・撮影・編集:中井信介
音楽・ナレーション:中ムラサトコ
制作:国際環境NGO FoE Japan
マレーシアのサラワク州には、先祖代々の智恵と伝統を受けつぎ、森の恵みと共に暮らす人々がいる。かつてその森から世界中に木材が輸出され、森林は急速に後退した。残された二次林も今、アブラヤシ・プランテーションの海に飲み込まれ、先住民族と政府・企業の間の係争も数多く起きている。そして、日本は、昔も今もサラワクの木材の最大顧客なのだ。

★Vietnamベトナム
『忍び寄る原発~福島の苦悩をベトナムに輸出するのか?~』
documentary
日本/日本語・Tiếng Việt/2012/26分
監督・撮影・編集:中井信介
制作:国際環境NGO FoE Japan
日本がパートナーとなって建設されることが決まったベトナムの原発。その建設予定地は、女性たちがぶどうの収穫にいそしむ美しい村だった。そして「住み慣れた土地を離れたくない」と願う村人たちは原発建設予定地から1kmしか離れていない土地への移転を自ら決めた。村人たちに浸透している原発の安全神話は日本からの情報だ。一方、日本の福島では…。

▼こどもたぶんかえいがさい

★『きかんしゃトーマス ディーゼル10の逆襲』
animation
イギリス/2011/61分
監督:グレッグ・ティアナン
ソドー島に火事が発生! トーマスとパーシーは全力で消火にあたったものの、結局はベルのおかげで鎮火できました。トーマスは放水ができる新しい仲間のベルを気に入り、すっかり仲良くなります。すると、パーシーは親友のトーマスから取り残されたような気分になり…
・料金 一般1200円/大専1000円/2才~高校生800円

公式 HP >> http://downtownart.hama1.jp/

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神弓 KAMIYUMI(英題:WAR OF THE ARROWS BOW THE LAST WEAPON)

監督・脚本:キム・ハンミン
撮影:キム・テソン
美術:チャン・チュンサウンド
音楽:キム・テソン
出演:パク・ヘイル(ナミ)、ムン・チェウォン(ジャイン)、リュ・スンリョン(ジュシンタ)、キム・ムヨル(ソグン)、大谷亮平(ノガミ)

幼いころに国家反逆罪で父を殺されたナミとジャインの兄妹は、追っ手から逃れて父の友人キムの家にたどり着く。それから十数年、ナミとジャインはひっそりと身を隠して成長する。父の最期の言葉「妹を守れ」を生きる使命としていたナミは、妹ジャインと養家の息子ソグンとの結婚式の日、自分の役目は終わったとそっと家を出る。そのころ清の軍隊が朝鮮半島に侵攻(1636年 丙子胡乱)し、多くの民が捕虜として連れ去られていた。清の軍勢を目にしたナミは急ぎ村へ戻るが、家は踏み荒らされ、養親のキム夫妻は殺されていた。ジャインとソグンは他の村人と一緒に捕らえられ、清への過酷な旅を始めたところだった。弓の名手であるナミは家宝の「神弓」を手に、ジャインを救うため、ただ一人清軍を追跡する。


©ROTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

テレビではたくさんの韓国ドラマが放映されていますが、殆ど見ることがないので久しぶりの韓国時代劇でした。主演のパク・ヘイルは時代劇もアクションもお初のようですが、特訓を重ねた成果あり。妹を思う必死な兄を熱演して大鐘賞、青龍賞ともに主演男優賞を獲得しました。曲がりくねって飛ぶ神弓は、射手のいる方向が特定できず敵をおおいに霍乱します。敵方の猛将ジュシンタは大型の弓の名手で、精鋭部隊を率いてナミを執拗に追い、この攻防が見所です。精鋭部隊の一員でジュシンタに負けない鋭い眼光のノガミはなんと日本人俳優でした。大谷亮平さんは2003年から韓国のCMに出演、テレビドラマで活躍の場を得た後、これがスクリーンデビューです。2011年の韓国で観客動員ナンバー1作品。
この試写と同じころ、ディズニーのアニメの『メリダとおそろしの森』、ヒーローが勢ぞろいする『アベンジャーズ』試写を観ました。神弓のナミ、王女のメリダ、アベンジャーズのホークアイはともに弓の名手という偶然が重なり、弓が流行中? 時代劇ばかりでなく、未来の兵器の中で一矢ずつ人間が手をかける弓矢が活躍するのが、逆に新鮮な感じがしました。(白)

2011年/韓国/カラー/122分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート

★8月25日(土)ほか全国順次公開

公式 HP >> http://kamiyumi.jp/

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フェイシング・アリ(原題:FACING ALI)

監督:ピート・マコーマック
出演:ジョージ・フォアマン、ジョー・フレージャー、ラリー・ホームズ、レオン・スピンクス、ジョージ・シュバロ、ケン・ノートン、ヘンリー・クーパー、ロン・ライル、アーニー・シェーバース、アーニー・テレル

ボクシング史上最強のチャンピオン、モハメド・アリのデビュー当時からの映像と、彼と戦った10人の男たちとのインタビューで構成したドキュメンタリー。

ボクシングの試合は痛そうで観られない私でも、モハメド・アリは、カシアス・クレイのころから知っています。男性諸氏はさぞその試合に興奮したことでしょう。"Float like a butterfly, sting like a bee" (蝶のように舞い、蜂のように刺す)と形容された軽いフットワークと速くて強いパンチ。徴兵を拒否してボクシングライセンスを剥奪されながら、じっと耐えて3年後チャンピオンに返り咲いたとき、ヒーローがここにいる!と思った人は多いのではないでしょうか。
アリと実際に戦ったボクサーたちのコメントが出色。監督が選びに選んで心から出演を願い、実現したインタビューにわくわくしている、そのおすそ分けをもらったような気分でした。アリはボクシング界のライバルたちにもこうして愛される人なのだなぁと胸があたたかくなります。(白)

2009年/アメリカ、カナダ/カラー/101分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
提供:キングレコード 配給宣伝:アップリンク
(C)MMIX NETWORK FILMS INC.

★8月25日(土)より、渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/facingali/

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放課後ミッドナイターズ(英語題:AFTER SCHOOL MIDNIGHTERS)

監督:竹清仁
脚本:小森陽一 竹清仁
音楽:北里玲二
出演:山寺宏一 田口浩正

名門・聖クレア小学校の学校見学会。立ち入り禁止の理科室に迷い込んだ大人顔負けのスーパー園児マコ、ミーコ、ムツコ。3人はそこでガラスケースに陳列された人体模型(キュンストレーキ)を発見し、いたずらしてしまう。真夜中にしか身動きが取れないキュンストレーキは怒りを爆発させる。相棒の骨格標本ゴスとともに、夜な夜な動き出す学校中のミッドナイターズを巻き込み大復讐劇を始める。


©AFTER SCHOOL MIDNIGHTERS PARTNERSHIP

とても夢がある映画である。理科室、音楽室、プール……真夜中の少し危険な香り漂う学校に忍び込んで行ってみたいと、子供の頃誰もが一度は思ったことじゃないだろうか。キャラクターデザインも日本人が作ったとは思えないほど独創的で、オリジナル企画としては異例の5カ国同時公開を決定している。ダークでキュートなアニメーション映画。夏の終わりに家族や友達とどうぞ。(明)

2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ティ・ジョイ

★8月25日(土)新宿バルト9他にてアジア一斉ロードショー

公式 HP >> http://afterschool-midnighters.com/

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るろうに剣心

監督:大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」
撮影:石坂拓郎JSC
アクション監督:谷垣健治
音楽:佐藤直紀
出演:佐藤健(緋村剣心)、武井咲(神谷薫)、吉川晃司(鵜堂刃衛)、蒼井優(高荷恵)、青木崇高(相楽左之助)、奥田瑛二(山県有朋)、江口洋介(斎藤一)、香川照之(武田観柳)

明治維新後、10年たった東京では「人斬り抜刀斎」と名乗って手当たりしだいに人を斬る男が現れた。一人立ち向かった神谷薫は見知らぬ男に助けられる。薫は父から受け継いだ道場へ男を案内するが、彼こそ緋村剣心と名を変えた「人斬り抜刀斎」だった。今は「不殺」の誓いをたて、斬れない刀「逆刃刀」を携えて流浪の旅を続けていた。
「人斬り抜刀斎」をかたった偽者は鵜堂刃衛。実業家の武田観柳の用心棒だった。武田は女医の高荷恵たちにアヘンを作らせて莫大な富を築き、武器を買い集めていた。元新撰組の斎藤一は警官となって武田の陰謀をかぎつけていたが、大きな権力を握っている武田に抗するすべがない。さらに武田は神谷道場一帯を手に入れようと刺客を送り込む。無辜の人々の苦しみを見かねた剣心は、ついに戦うことを決意する。

1994~99年「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載され、人気を博した和月伸宏の漫画「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」を実写映画化したもの。女性ファンも多かったこの原作、主人公の剣心を佐藤健が演じます。大友監督がこの人でなくては、と思っただけあり、普段のちょっとぽわんとして優しげな表情と、ひとたび剣を握ったときの精悍な表情とのギャップを魅力的に見せてくれます。1本にまとめるのがたいへんだったろうと想像するストーリーに、多くの出演者が絡んでいきます。それぞれに個性的なアクションがつくので、アクション監督の谷垣さんはさぞ苦しみながらも、楽しんだのではないでしょうか??また機会があったら伺ってみたいものです。(白)

2012年/日本/カラー/134分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ワーナー・ブラザース映画
©和月伸宏/集英社 ©2012「るろうに剣心」製作委員会

★8月22,23,24日先行上映決定!25日(土)全国順次公開

公式 HP >> http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/

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闇金ウシジマくん

監督:山口雅俊
脚本:山口雅俊、福間正浩
撮影:西村博光
出演:山田孝之(丑嶋馨)、大島優子(鈴木未来)、 林遣都(小川純)、黒沢あすか(未来の母・文江)、 新井浩文(肉蝮)

十日で五割(トゴ)、時には一日三割(ヒサン)という暴利貸し付けの伝説闇金業者・丑嶋(ウシジマ)は、今日も手下を連れて情け容赦なしの取り立てをしていた。
その闇金にお金を借りているパチンコ狂いの母親・文江の娘・鈴木未来は、ウシジマの迫力に負けて利子を払うはめになった。思い余った彼女は身体を売らないまでも、デート嬢になる。
その一方、未来の幼なじみ・小川純は携帯を3台も持ってイベントサークルで大金を握り、ビックになろうと野望を抱いていた。

昔のことを思い出してしまった。私が学生の時、妹から五千円かりた。妹は四千五百円くれた。私は翌日には返せると言ったのに利子先取り(トイチか?)だ。なにせ今でも蓄財能力は身内一でがっちりしている。この作品を観てトゴとかヒサンなどその道の隠語まで覚えてしまった。
ひっど~い取立てをするが、人間のつながりの強さは不思議なことに闇金ウシジマの周りにあった。痛い映像はたくさんあるが、後味は悪くない。
山田孝之、林遣人、大島優子、脇の黒沢あすか、ちょっとだけ出た市原隼人もよかった。 こんな作品には新井浩文がぴったりなのに・・・と思っていたらやっぱり「獣」みたいな格好で出ていた。後半まで新井浩文とは知らずに観ていたので損した気分だった。(美)

2012年/日本/アメリカンビスタ/130分
配給:S・D・P

★8月25日より新宿バルト9ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://ymkn-ushijima-movie.com/

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ドキュメンタリー・ドリーム・ショー――山形in東京 2012

山形国際ドキュメンタリー映画祭2011年の上映作品を中心に、世界のドキュメンタリー映画100本近くを一挙にお披露目。 グランプリを受賞した『密告者とその家族』の監督をイスラエルより迎え、インターナショナル・コンペティション、アジア千波万波の新作に、キューバ特集など目玉企画も交えた特集。山形まで行ったけれども見逃した作品のある方、山形まで足を伸ばせなかった方、どんなものか覗いてみたい方、ぜひお出かけください。

期日&会場:オーディトリウム渋谷 8月17日(金)~8月31日(金)
      ポレポレ東中野 9月 1日(土)~9月21日(金)

主催:シネマトリックス
共催:山形国際ドキュメンタリー映画祭/オーディトリウム渋谷/ポレポレ東中野


「密告者とその家族」(コンペ・グランプリ作品)


          「殊勲十時章」       「雨果(ユイグォ)の休暇」(アジア千波万波グランプリ作品)

「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー2012」公式ホームページ
>> http://www.cinematrix.jp/dds2012/

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アベンジャーズ(原題:THE AVENGERS)

監督・脚本:ジョス・ウェドン
脚本:ザック・ペン
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
プロダクションデザイン:ジェームズ・チンランド
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ロバート・ダウニー・Jr(トニー・スターク/アイアンマン)、クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャーズ/キャプテン・アメリカ)、マーク・ラファロ(ブルース・バナー/ハルク)、クリス・ヘムズワース(ソー)、スカーレット・ヨハンソン(ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ)、ジェレミー・レナー(クリント・バートン/ホークアイ)、トム・ヒドルストン(ロキ)、クラーク・グレッグ(エージェント・フィル・コールソン)、ステラン・スカルスガルド(エリック・セルヴィグ)、コビー・スマルダーズ(エージェント・マリア・ヒル)、グウィネス・パルトロー(ペッパー・ポッツ)、サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー)

国際平和維持組織シールドの基地で、世界を破壊する力をもった四次元キューブを極秘で調査するプロジェクトが進められていた。研究中に突然装置が暴走し、邪悪な神ロキが現れる。セルヴィグ博士とシールド最強のエージェント、クリント・バートンをあやつりキューブを強奪していく。シールド長官のニック・フューリーはナターシャを呼び寄せ、ベテランエージェントのフィル・コールソンと共に、キューブ奪還を目指す。地球征服を目論むロキに対抗するために、アイアンマンほか各地にいるヒーローたちを集めてアヴェンジャーズを結成しようとするが、それぞれ心の傷にとらわれる彼らは、チームを組んで戦うことを拒み続ける。

ディズニーがこれまで送り出してきたヒーローが勢ぞろいするオールスター映画。これだけの陣営を采配するプロデューサーのご苦労がしのばれます。悪役が最初に登場するロキ(マイティ・ソーの僻みっぽい弟)だけでは不足なので、シールドの2人がロキに操られて敵に回るという工夫?もあり…あんまり書くのはやめます。ともかく劇場へお出かけください。たいへんに派手ですので、それが生きるようできるだけ大きな画面でごらんになるのをお勧めします。
ひいきのヒーローが特別いなくとも、見終わるまでに思わず肩入れしてしまうキャラができることでしょう。私は弓の名手であるクリント・バートン/ホークアイがお気に入り。演じるジェレミー・レナーはそれまで脇役ながら印象に残る人でしたが、『ハート・ロッカー』(2008)で全米批評家協会賞主演男優賞を獲得してから大躍進。『ザ・タウン』、『マイティ・ソー』、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』、そして9月末公開の『ボーン・レガシー』で堂々の主役アーロン・クロスとこれからも楽しみな俳優さんです。(白)

2012年/アメリカ/カラー/144分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
© 2011 MVLFFLLC. TM & © 2011 Marvel. All Rights Reserved.

★8月14,15,16日先行上映!8月17日(金)3D/2D同時公開!

公式 HP >> http://www.marvel-japan.com/movies/avengers/

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石巻市立湊小学校避難所

監督・撮影:藤川佳三(『サオヤの月』)
プロデューサー:坂口一直、瀬々敬久(『ヘヴンズ ストーリー』『アントキノイノチ』)
編集:今井俊裕

2011年3月11日の東日本大震災で、津波被害を受けた町の一つ、宮城県石巻市。死者・行方不明者3,779人。ピーク時には5万758人が避難所生活を強いられた。大震災から約1か月後、避難所の1つとなった湊小学校を訪れた藤川佳三監督は、明るく振る舞う避難所の人たちの姿に驚く。彼らの心の奥に潜んでいるものを知りたいと、避難所が閉鎖される10月11日までの約半年間、監督は避難所に泊まり込んでカメラを回した。

一つの教室に何人もの人がプライバシーもなく暮らす生活・・・ これまでにも大災害が起こる度に、避難所生活をする人たちの姿がニュースで流されてきた。それでも、それはいつも他人事で、まさか自分に降りかかることとは思いもしない。この映画に登場する石巻市立湊小学校避難所の人たちだって、きっとそう思っていたに違いない。半年間、避難所生活に寄り添ってカメラを回した本作。いざ自分が被災者の立場になってみると、報道カメラや見物人を疎ましく思ったり、「起こってしまったことは、しょうがないのよ」と達観して、笑顔で頑張るしかない気持ちが痛いほど伝わってきた。天災でいつ自分もこんな目に合うかもしれないと、本気で思った。人生を狂わされても、そこから這い上がろうとする気力が自分にもあるだろうか・・・ 被災者の方々が大家族のように、お互いをいたわり合いながら暮らす姿に、人間捨てたもんじゃないと思いながら、なぜこんな目にあわなくちゃいけないの?とやりきれない気持ちはぬぐえない。(咲)

2012年/日本/HD/カラー/124分

配給:配給: 「石巻市立湊小学校避難所」を上映する会 /ムヴィオラ

★2012年8月18日(土)K's cinema他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.minatohinanjo.com/

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籠の中の乙女(原題:KYNODONTAS  英題:DOGTOOTH)

監督・脚本:ヨルゴス・ランティモス
出演:クリストル・ステルギオグル、ミシェル・ヴァレイ、アンゲリキ・バブーリャ、マリア・ツォニ、クリストス・バサリス、アナ・カレジドゥ

燦々と太陽がふりそそぐプール付の広々とした芝生の庭。両親と思春期を迎えた二人の娘と息子。裕福で幸せそうな一家だが、この家の子どもたちは、高い塀で囲まれた邸宅から外界に出ることなく育てられてきた。今日もカセットテープを聴いて単語の勉強。(機種はナショナル パナソニック!) 母親が告げる単語の意味は、本来とは異なる独自のものだ。猫は人を食い殺す動物、塀の向こうは恐ろしい場所として教えられている。ある日、父親が長男の性処理の相手として若い女性を連れてくる。初めて恐ろしい外界に住む人間と接した子どもたち。徐々にこの家に変化が訪れる・・・

世間と隔絶して、我が子を純粋培養しようとする親の気持ちは痛いほどわかる。本作の父親は、それがあまりに極端だ。でも、程度の差はあれ、しょせん人は限られた情報の中で育っている。自分の今いる場所で常識だと思われていることが、ほかの世界では非常識ということも多々あるはず。本作は、狂信的なある一家を描いているけれど、国家や組織が「洗脳」で人を作っている場合があることに思いが至る。適切な「教育」で子どもを育てることの大切さを思う。でも、何が「適切」なのか・・・  ギリシャから届いた風変わりな映画に、実は普遍的な問題が掲げられていることを感じた。 ちなみに、原題KYNODONTASは「犬歯」の意。外の世界に出られるのは「犬歯」が抜けてからと、父親から教えられている子どもたちが取った行動は、映画を観て確認を!(咲)

2009年 / ギリシャ /カラー/ スコープサイズ / BD / ギリシャ語 / 96分
第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ
アカデミー賞外国語映画部門ノミネート
配給: 彩プロ

★2012年8月18日、シアター・イメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://kago-otome.ayapro.ne.jp/

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プンサンケ(原題:PHUNGSAN DOG 豊山犬)

監督:チョン・ジェホン
脚本・製作:キム・ギドク
出演:ユン・ゲサン キム・ギュリ

北朝鮮製の煙草・豊山犬を吸うことから、プンサンケと呼ばれる正体不明の運び屋がいた。38度線を飛び越えソウルとピョンヤンを行き来し、離散家族の最後の手紙やメッセージを運ぶ。ある時、亡命した北朝鮮元高官の愛人イノクをソウルに連れていくという依頼が入った。命がけで境界線を飛び越えるうち、二人は互いに言い知れぬ感情を抱くようになっていく。


©2011 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

韓国の鬼才と呼ばれるキム・ギドクがオリジナル脚本を、ギドク作品で助監督を務めてきた新鋭チョン・ジェホンが監督を務めた。
主人公のプンサンケは言葉を話さない。しかし、悲しみ、絶望、愛しみ、憐れみという感情がその佇まいから伝わってくる。彼を演じたユン・ゲサンの演技がとても良かった。北朝鮮と韓国の関係を大胆に皮肉と愛を持って見る者に突きつけているこの映画は、“分断国家”について考える機会になると思う。(明)

これは実話に基いているのだろうか。悲しみを背負い、北と南を行ったり来たりする人物。こんな風に鉄条網を飛び越えて「北」と「南」を行ったり来たりできるものだろうかと思いながら観た。最後まで、プンサンケは、いったい北の人なのか、南の人なのかわからない設定で、うまい作りだと思った。
プンサンケを演じたユン・ゲサンが、ビョン・ヨンジュ監督の『僕らのバレエ教室』(04)に出演しているということで、いったいどの役だったんだろうと思ったんだけど、主人公の少年だったと知り、びっくり。同じ人とは思えなかった。(暁)

2011年/韓国/カラー/121分/ビスタ/ドルビー/HD
配給:太秦

★8月18日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.u-picc.com/poongsan/

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WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々(原題:WIN WIN)

監督・脚本:トム・マッカーシー
原案:ジョー・ティボーニ
撮影:オリヴァー・ボーケルバーグ
音楽:ライル・ワークマン
出演:ポール・ジアマッティ(マイク)、エイミー・ライアン(ジャッキー)、ボビー・カナヴェイル(テリー)、ジェフリー・タンバー(スティーブ)、アレックス・シェイファー(カイル)バート・ヤング(レオ)

小さな町で弁護士をしているマイク、不況で仕事がなく家族の生活費をかせぐため違法すれすれのことも引き受ける。一人暮らしの老人レオの孫のカイルと知り合い、行きがかり上自宅で面倒を見ることになった。自分がコーチをしている高校のレスリング部に連れていくと、カイルは思いがけない才能を発揮する。カイルが入部すれば、弱小チームが勝ちあがるのも夢ではない。お互いに好都合な“ウィン・ウィン”の関係となった二人は、実の家族以上の信頼関係を結ぶ。そこへドラッグ中毒を治療中のカイルの母親が現れ、波風が立ち始めた。


© 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation, Everest Entertainment, LLC and Dune Entertainment III LLC. All Rights Reserved.

「貧すれば鈍す」と言われますが、この主人公のマイクもお金に困ったばかりに判断を間違い、弁護士の倫理に反して窮地に陥るのですが、それはしばらく後のこと。カイルが現れてから二人が同じ目的を持ってまい進するところを暖かく描きます。さっきの問題はいつばれてしまうのだろうとハラハラする一方、試合の行方も気になります。地味な映画ですが、まじめに生きてきたのにちょっと足を踏み外してしまった主人公に共感したくなるリアリティがあります。思わず自分勝手な母親につっこみたくなり、それでいいわけ~?とむかついたりしました。彼女も「貧すれば鈍す」の類なのでしょう。貧乏は辛い。
「レスリングができること」を条件に探したというカイル役のアレックス・シェイファーは女の子のような容姿ですが、実際に高校生でレスリングのチャンピオンになったこともあるのだそうです。そんな経歴からか、芸達者な共演者たちを相手にしての映画初出演を立派にこなしています。(白)

2011年/アメリカ/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー

★8月18日(土)より、シネマート新宿にてロードショー!

公式 HP >> http://video.foxjapan.com/win2-movie/

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第20回 キンダー・フィルム・フェスティバル

期日:2012年8月15日(水)~19日(日)
会場:調布市グリーンホール 大ホール
東京都調布市小島町2-47-1
京王線調布駅 南口より 徒歩1,2分
★19日は工事のため初電~10時頃まで、「八幡山~府中間」「調布~京王稲田堤間」が運休となります。

上映作品:コンペティション作品 長編4本、短編11本
(長編はそれぞれ1回のみですが、短編は数回上映)
特別上映作品 『リサとガスパール』『きかんしゃトーマス』『ピングー』・・・さらに『チャップリンの犬の生活』など9本

イベント:大道芸、屋台村、だがし屋さん、ワークショップetc

スケジュールほか詳細は 公式HPをご覧ください♪
http://www.kinder.co.jp/


会場


『ビッケと神々の秘宝』ライブ吹き替えをした皆様 (8月15日)
左から 佐久間レイさん、三ツ矢雄二さん、中山秀征さん、戸田恵子さん、内田恭子さん、ルー大柴さん、堀内賢雄さん

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ニュー香港ノワール・フェス

8月11日(土)~9月6日(木)新宿武蔵野館にて3本一挙ロードショー
http://www.3hknoirfes.net/
(c) 2010 Media Asia Films(BVI)Ltd. All Rights Reserved.
配給:ファントム・フィルム/宣伝:フリーマン・オフィス/提供:キングレコード/協力:香港政府観光局

強奪のトライアングル(原題:鐡三角)

監督・製作:ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トー
監督補:ソイ・チェン
出演:サイモン・ヤム(ファイ)、ルイス・クー(サン)、スン・ホンレイ(モク)、ケリー・リン(リン)、ラム・カートン(ウェン)

タクシー運転手のファイ、エンジニアのサン、古物商のモク、飲み友達の3人はそれぞれ金に困っているがもう金策のあてがない。ファイは、ヤクザから強盗の手伝いまで強要されているところだ。そんな彼らの前に立った見知らぬ老人が「興味があったら連絡を」と、1枚の金貨と名刺を置いていった。金貨が本物の唐代の貴重品とわかって3人は目の色を変えるが、連絡を取ろうとした矢先老人が亡くなってしまったのを知る。さらに調べた結果、地下に唐代の財宝があることを突き止めた。財宝をめぐり、借金取立てのヤクザらを巻き込んだ争奪戦が始まる。

ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トーの3人の監督が、リレー方式で撮影した映像を1本につなげて完成させたもの。それぞれの監督の持ち味が出た30分ずつは、先の見えない意外性に満ちています。お互いに連絡をとらず、作品として出来上がって初めてほかの部分を観たそうですが、よくうまいことまとめたものだと感心しました。かつて同じ会社で仕事をした仲良し3人組だったから可能になった企画のようです。監督補として『アクシデント』のソイ・チェンが参加していますが、ソイ・チェン監督だけが通して観て構成したんでしょうか? ソイ・チェン監督に当時のお話を聞いてみたいものです。
2007年の香港映画祭でオープニング上映されていて、ツイ・ハーク監督、リンゴ・ラム監督のお二人にインタビューさせていただいています(シネジャ本誌72号)。こちらの記事もどうぞ(リンク)。(白)

2007年/中国・香港合作/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファントム・フィルム


コンシェンス 裏切りの炎(原題:火龍)

監督:ダンテ・ラム
脚本:ジャック・ン
アクション監督 チン・ガーロッ
出演:レオン・ライ(マン)、リッチー・レン(ケイ)、ビビアン・スー(エレン)、リウ・カイチー(チョン)、ミシェル・イェ(メイ)、ワン・パオチャン(ヨン)

娼婦が殺害され、たたき上げのマン警部、相棒のチョン、メイの3人が捜査を開始する。マンは2ヶ月前、身重の妻を電車内で殺され、独自に犯人を追ってミニバンで暮らしていた。本庁のエリート刑事のケイは、部下が奪われた携帯電話を探してマンと出会う。二人は同じ龍年とわかり、全く違う境遇ながら意気投合する。ある日、マンたちが拳銃密売グループの取引現場を押さえようと張り込むが、激しい銃撃戦となり容疑者のトウを逃がしたうえ、多数の犠牲者を出してしまった。マンは、事件のたびに現場に姿を見せるケイが警察の情報を漏らしているのではと疑い始める。

『孫文の義士団』(2009年)に続いてまた髭(あんまり似合いません…)のレオン・ライがはみ出し刑事、『ブレイキング・ニュース』(2004年)以来、すっかりジョニー・トー作品常連となったリッチー・レンがエリート刑事という顔合わせ。役の外見も絵に描いたように正反対の二人が、一瞬道が交わって出会いながら、進んで行く先は全く違うというストーリー。奉職した当初は同じように正義感に燃えていたはずなのに。ダンテ・ラム監督作品に欠かせないリウ・カイチーも印象に残る役です。
レオン&リッチーはこれが初共演。歌手としても人気の二人、主題歌の「煙火」をデュエットしています。リッチーはこの作品で、韓国のプチョン・ファンタスティック映画祭において主演男優賞を獲得したとか。おそまきながら恭喜!恭喜!(白)

2010年/中国・香港合作/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファントム・フィルム


やがて哀しき復讐者(原題:報應)

監督:ロー・ウィンチョン
製作:ジョニー・トー
出演:アンソニー・ウォン(ウォン)、リッチー・レン(イウ)、キャンディ・ロー(エイミー)、ジャニス・マン(デイジー)、ペリー・ウォン(チュン)

不動産会社社長のウォンは不審な電話を受ける。送られてきた画像には、目隠しされ「誘拐されたので身代金を払って」と叫ぶ娘デイジーが映っていた。普段から折り合いが悪く家を出たデイジーの狂言だと決め付けたウォンは、自分で現金を指定場所まで届けようとする。しかし渋滞に巻き込まれ、バイクの男に現金入りのカバンを盗まれてしまった。ウォンの忠実な部下のイウは、裏社会のルートを使ってようやくデイジーの手がかりをつかむが、すでに殺された後だった。ウォンは娘の遺体を見て、なんとしても犯人を探し出し復讐しようと決心する。

アンソニー・ウォンが2児の父親。あくどい手も使いながらのし上がってきた彼は、娘と息子も自分の支配下に置こうとして背かれ、ついに娘を失ってしまいます。自分が悪いとは絶対思わない、よくいそうなタイプの父親を熱演。息子チュンを演じているのは実の息子のペリーで、これが俳優デビュー。
子持ちの前科者という設定のリッチー・レンが、男気のあるクールな用心棒を好演しています。俳優として幅が拡がっているのを一ファンとして喜んでいますが、笑わせ泣かせの人情路線もたまにやってくれるとさらに嬉しい…。(白)

2011年/中国・香港合作/カラー/97分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファントム・フィルム

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マクダルのカンフーようちえん(英題:MCDULL,KUNG FU KINDERGARTEN)

監督・脚本:ブライアン・ツェー
美術監督:アリス・マク
音楽:スティーヴ・ホー
声の出演(日本語吹替版):鈴木福(マクダル)、剛力彩芽(メイ)、林沙織(チェン先生)、難波圭一(マクデブ)、なべおさみ(園長先生)、前田美波里(ミセス・マク)

ドジでお人よしの子ブタのマクダルは、香港の春田花花幼稚園で楽しい日々を送っている。シングルマザーのママは、もっと強くて立派な子に育ってほしいと願い、中国の山奥にある“カンフーようちえん”にマクダルを連れていく。ママのためにここで厳しい修行を積み、世界一の子ブタになることを誓うマクダルだったが、仲良しのメイやママと離れて暮らすのがさびしくてたまらない。


(C)Bliss (C)SEGA

『春田花花幼稚園 ~マクダルとマクマグ~』(テレビシリーズ1997~2000)、『マクダル パイナップルパン王子』(2004)についで3度目の日本上陸となります。可愛い幼稚園児マクダルたちは、中華圏では国民的な人気者。絵柄そのままにほのぼのしているだけでなく香港の社会情勢も盛り込み、シングルマザーのママもマクダルを愛している分甘やかしません。ちょっとシニカルなところが大人のファンを取り込んでいます。日本語吹替版のマクダルと映画の題字は人気子役の鈴木福ちゃん。(白)

2009年/日本、中国、香港/カラー/80分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:マジックアワー

★8月11日(土)シネマート新宿ほか全国ロードショーほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.mcdull.jp/

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桐島、部活やめるってよ

監督:吉田大八
脚本:貴安浩平
撮影:近藤龍人
出演:神木隆之介(前田涼也)、橋本愛(東原かすみ)、東出昌大(菊地宏樹)、大後寿々花(沢島亜矢)

バレー部・キャプテンの桐島はスポーツも勉強も優秀な人気者。ガールフレンドは校内一の美人。だが、ある金曜日の放課後から桐島の姿が見えない。
「部活をやめた」という噂が流れる。
部員は騒然となり、噂は学校中に広がる。だが、映画部の部員だけは新作撮影に夢中で・・・。

この監督さんの『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』や『パーマネント野ばら』はお気に入りの作品。そして新作も面白い。神木隆之介くんの持ち味が開花した作品でもあり、とても嬉しい。
始めの金曜は高校生それぞれの視点で映し出されて、人間関係が浮かび上がってくる。 ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』を思い出した。

桐島騒動を尻目に、映画部は顧問の先生の反対を押し切り「青春ゾンビ」映画を撮り出す。その工程がとても興味深い。
映画好きには2倍、3倍と面白い作品。(美)

原作を知らずに観たので、桐島が主人公で神木くんが演じるのだと思っていた。ところが神木くんはオタクな映画部員前田で、桐島はいつまでたっても登場しない。タイトルのように噂がとびかうばかりだ。部活で華々しい活躍をした「桐島がやめる」という一石が投じられ、周囲に及ぶ波紋を描いている。桐島の回りの高校生の心のうちが浮かび上がってくる作りだ。映画部員がかわす会話が面白かった。ジョージ・ロメロについて神木くんが熱く語るくだりや「映画秘宝見た?」の台詞に試写室うけていた。原作は朝井リョウ、2009年早稲田大学在学中に発表したデビュー作で、小説すばる新人賞を受賞。(白)

2012年/日本/カラー/103分/シネマスコープ
配給:ショーゲート

★ 8月11日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.kirishima-movie.com/

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セブン・デイズ・イン・ハバナ(原題:7 DAYS IN HAVANA)

監督:ベニチオ・デル・トロ、パブロ・トラペロ、フリオ・メデム、エリア・スレイマン、ギャスパー・ノエ、フアン・カルロス・タビオ、ローラン・カンテ

ハバナの市民の生活を月曜から日曜の7つのエピソードをそれぞれの監督が描いている。
どの作品も素晴らしいキューバ音楽をバックに楽しませてくれた。
8月中旬から渋谷で始まる「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー」のキューバ作品の誘い水になるような作品たちだった。

★月曜日『ユマ』ベニチオ・デル・トロ監督
映画学校にかようためにハバナに着いたテディ。スペイン語ができないので、ただ傍観者の彼だが、唯一友人になってくれた長身の女性は…
・俳優のベニチオ・デル・トロピが監督。ユマとは外人とか白人という意味で、最後のオチも面白い。
★火曜日『ジム・セッション』パブロ・トラペロ監督
ハバナの映画祭に来た有名監督が酒浸りになり土地のタクシー運転手に親切にされる…。
・監督さんの心に宿る苛立ちがびしびしと伝わってきた。運転手のトランペットがよかった。
★水曜日『セシリアの誘惑』フリオ・メデム監督
ハバナで歌手をしているセシリアはスペインから来たクラブオーナー・レオナルドと恋仲になる。スペインで歌手にならないかと言われ嬉しい反面、同棲している野球選手ホセの存在の間を揺れ動く彼女の気持ちをじっくり捉えていた。
・スペインクラブオーナー・レオナルドは『コッホ先生と僕らの革命』のダニエル・ブリュール!男の色気が漂う!私なら迷わずレオナルドと…。
★木曜日『初心者の日記』エリア・スレイマン監督
パレスチナ人のエリア・スレイマン(本人)は、キューバの指導者にインタビューをする仕事でハバナに来たが、インタビュー日時までの暇な時間をあちらこちらに行って、今まで自分の考えていたハバナと目の前に繰り広げられるあけっ広げなハバナを黙って傍観する…。
・『D.I.』の監督さんだ。いつもつまらなそうな顔をしているが、彼の目に写るハバナ庶民は貧しいがみんな逞しく、楽しげだ。たとえ自分がその輪の中に入れなくても…。 映像的にこの作品が一番好き。
★金曜日『儀式』ギャスパー・ノエ監督
同性愛の娘を儀式によって清める…。
・ただそれだけの映像だが、意味ありげな儀式の生々しさが充満していた。
★土曜日『甘くて苦い』フアン・カルロス・タビオ監督
ミルタは精神科女医であり、週一回テレビにも出ている。だが一方では菓子作りをして家計を助け、アル中の夫を文句を言いながらも元気づけている。今日は珍しく娘が来て自分の荷物を持ち出していた…。
・これが一番面白く感じた。生活に疲れた主婦か?とおもいきや何とテレビ画面では、びしっと女医トークをして見違えてしまった。荷物を取りに来た娘は水曜日の歌手セシリアだ。話の展開が面白い。
★日曜日『泉』ローラン・カンテ監督
朝早く、おんぼろアパートの住民をたたき起こしたマルタばあさんは、「川の女神」のお告げの夢を見たから、夢の通りの祭壇を作り、祭をしたいと言う。ぶつぶつ言いながらもばあさんの言われるまま作業を始めるが…。
・一致協力のまとまりの速さが小気味よい。足りないものだらけのキューバの内情も、一人一人のアイデア(どこに何があるから警備のいない隙に・・・など)が面白い。(美)

2012年/スペイン、フランス/129分/アメリカンヴィスタ
配給:コムストック・グループ、アルシネテラン

★8月4日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://7dayshavana.com/

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トガニ 幼き瞳の告発(原題:トガニ)

監督・脚本:ファン・ドンヒョク
原作:コン・ジヨン「トガニ 幼き瞳の告発」蓮池 薫/訳 (新潮社刊)
撮影:キム・ジヨン
出演:コン・ユ(カン・イノ)、チョン・ユミ(ソ・ユジン)、キム・ヒョンス(ヨンドゥ)、チョン・インソ(ユリ)、ペク・スンファン(ミンス)、チャン・グワン(校長/行政室長)

美術教師のカン・イノは、恩師の紹介で霧津の町聴覚障害児学校に就職が決まった。妻に先 立たれたイノは、身体の弱い一人娘を実母に預けての単身赴任だ。途中車の事故で知り合っ た人権センターのチョン・ユミに学校まで送ってもらう。行き会う生徒たちはなぜか怯えた目をし、学校は異様な空気に包まれていた。
人当たりの良い校長と双子の事務局長は、イノに違法な裏金を平然と要求。教員室にはしつけと称して男子生徒を殴りつける教師がいる。寮長が女生徒に暴行を加えるところに出くわしたイノは、子どもを助け出して人権センターのユミに連絡した。子どもたちが手話で訴える事実に驚愕するイノたち。校長を含む教師達が生徒たちに性的虐待を加えていたというのだ。

ネット小説から発したこの原作は事実に基づいており、出版後も大きな反響があったそうです。コン・ユが兵役中に原作に出会って映画化を熱望し、社会派の映画で注目されていたファン・ドンヒョク監督がメガホンを取ることになり、460万人の観客を動員。映画公開後、この事件はさらに多くの人に知られるところとなり、性暴力犯罪に対する法律が改正されるなど社会現象となりました。事件後も続いていた学校はすでに閉鎖になり、先日被告に求刑よりも重い判決が出たばかり。1本の映画が社会を動かしたといえます。コン・ユの熱演はもちろんですが、虐待される生徒たちを演じた子役たちの表情が胸にささるようで、演技とはいえ心に傷を受けなかったかしらと心配になるほどでした。(白)

現実に起きた事件だ。これは韓国だけではなく、先月上映された『孤島の王』でもそうだった。
日本でもきっと起きているに違いない。
観ているのも辛い展開で暗い気持ちになるが、これを現実としてしっかり受け止めないと死んでいった子どもが浮かばれないだろう。

この作品でも、韓国の子役の達者さには舌を巻く。
また、裁判中で手話通訳をした女性の理知的な美しさに見とれてしまった。女優さんなのだろうか、手話専門の方なのだろうか、お名前もわからず残念。

※月刊誌「新潮45」8月号 P.246~原作者のコン・ジョンさんと蓮池薫氏の対談が載っていた。 「小説と映画が韓国社会を動かした」という始まりの文言に感動した。 その中には、被害にあった少年少女たちのその後も書かれている。(美)

*「トガニ」…日本語に直訳すると“坩堝”(るつぼ)の意である。“興奮のるつぼと化す”“人種のるつぼ”など、日本では日常的に使われる単語でもあるが、本来の意味は高温処理をおこなう耐熱式の容器。出口のない密閉した空間で、ジリジリと焼かれていく想像を超えた恐怖と痛み――。本作の“トガニ=坩堝”は控えめに言っても、地獄そのものである。(公式HPより)

2011年/韓国/125分/カラー/シネスコ/ドルビーSRD/日本語字幕:根本理恵
配給:CJ Entertainment Japan
©2011 CJ E&M Corporation. All Rights Reserved

★8月4日(土)より シネマライズ、新宿武蔵野館 ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://dogani.jp/

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ラ・ワン(原題: RA ONE)

監督・原作:アヌバウ・シンハー
出演:シャー・ルク・カーン、カリーナー・カプール、アルジュン・ラームパール、アルマーン・ヴァルマー、特別出演:ラジニカーント(『ロボット』のチッティ役)

英国・バロン社に勤めるシェカル(シャー・ルク・カーン)が開発したゲーム「Ra.One」の完成披露パーティ。シェカルの息子プラティクが皆の前でさっそく“ルシファー”の名前でログインし、ゲームの中の最強のラスボス「ラ・ワン」を打ち倒す。怒ったラ・ワンは、ルシファー抹殺を誓って現実世界に復活。シェカルは息子を救うため、自分がルシファーであると名乗り出て、ラ・ワンに殺害されてしまう。父の突然の死に疑問を持ったプラティクはゲーム開発の研究室を探るうち、ラ・ワンが現実社会に出てきてルシファーを狙ったことに気付く。そして、プラティクの前にラ・ワンが現れたとき、父シェカルの姿をしたヒーロー「Gワン」が救いにくる・・・

ゲームも、SFXもちょっと苦手だけど、シャー・ルク・カーンが主役となれば、これは観なくては!と、東京都写真美術館で開かれた試写へ。歌あり踊りありのボリウッド映画のお決まりはもちろん、ほろっとさせられる親子関係や、奥様とのロマンチックなシーンもあって、しっかり楽しみました。なにより、シャー・ルク・カーンもアルジュン・ラームパールも、前半の生身の人間と、後半のゲームの中のキャラクターの二役を見事に演じ分けていて素晴らしかったです。ラジニカーントが一瞬登場する場面があって、『ロボット』は観ていないながら、そのキャラであることは会場がどよめいたことで想像がつきました。『ロボット』は、8月3日(金)まで東京都写真美術館で1日1回17:30より上映中です。『ロボット』を観てから『ラ・ワン』を観れば、さらに楽しめることと思います。
また、インド映画といえば松岡環さんのブログ「アジア映画巡礼」に、『ラ・ワン』の背景がよくわかる記述があります。ぜひ、お読みください!
http://blog.goo.ne.jp/cinemaasia/e/e3a65264c38f0944708c4260cb82c20f
(咲)

2011年/インド/156分/シネマスコープ/カラー/ドルビーSRD/ヒンディー語
配給:パルコ
配給協力:アップリンク

★2012年8月4日(土)、東京都写真美術館ホール他、全国順次公開

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/raone/

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画皮 あやかしの恋(原題:画皮 英題:PAINTED SKIN)

監督・脚本:ゴードン・チャン
撮影:アーサー・ウォン
美術:シュー・リーコン、ビル・ルイ
衣裳:ウー・バオリン
出演:ジョウ・シュン(シャオウェイ)、ヴィッキー・チャオ(ペイロン)、チェン・クン(ワン・シェン)、スン・リー(シア・ビン)、チー・ユーウー(シャオイー)、ドニー・イェン(パン・ヨン)ほか

ワン・シェン将軍は西域での戦闘中捕らえられていた美しい娘シャオウェイを救出して連れ帰った。ワン・シェン夫人のペイロンは、身寄りのないシャオウェイを妹のように世話をする。実は人間の姿をしたキツネの妖魔シャオウェイは、ワン・シェンに恋してしまったことから、あの手この手で幻惑し妻の座を得ようと図る。しかし、夫妻の絆は固く思いは遂げられない。一方、街では心臓を抉り取られる猟奇事件が多発していた。トカゲの妖魔であるシャオイーが、愛するシャオウェイのために暗躍していたのだ。シャオウェイは美貌を保つために、人間の新鮮な心臓が欠かせない。ペイロンはシャオウェイの本性に気づき、あやかしに魅入られる夫の身を案じる。

中国の清代に書かれた怪奇小説ばかりを集めた「聊斎志異」から素材を得た一編。妖魔、夫婦、思い思われる人々の切なくも強い愛情を描いています。タイトルの「画皮」はシャオウェイが貼り付けている美しい顔が描かれた皮膚のことで、文字通り一皮剥けばおぞましい姿に変わります。ほんの1シーンだけ登場しますのでよく観ていてください。
「還珠姫 ~プリンセスのつくりかた~」(1997/原題:還珠格格)で一躍中華圏のアイドルとなったヴィッキー・チャオ、いつのまにか人妻役も似合う大人の女性になっていました。夫を守るために妖魔に変わり、血の涙を流す妻をしっとりと演じて主演女優賞を受賞しています。
あいかわらず激しくも美しい立ち回りを見せるドニー・イェンは、思い人であったペイロンがワン・ションと結婚したために流浪の身となったのですが、ペイロンの窮地には駆けつけるのです。泣かせる~。(白)

中国映画の古装ものということで、食指が動かない人がいるかもしれない。でもそれはストーリーの背景であって、本質はとてもせつない恋愛映画になっている。男気あふれる将軍の夫と美しく貞淑な妻。そして将軍に心を奪われ、美しい女性に化けている狐の妖魔。陳腐に言ってしまえば三角関係だが、それぞれの心の動きが緊迫感にあふれていて、特に妻と妖魔が対峙するシーンは趙薇と周迅の抑えた演技の迫力に息もつけないほど。愛の力はこんなにも強いものなのか?相手が将軍だったから?そう、将軍を演じた陳坤が切れ者でふたりに愛される男前ぶりを好演しているからこそ、強く悲しい愛の物語になったのだろう。最近主演作が続いている甄子丹は、出番は少ないながらクライマックスで登場するヒーローのような役回りで、華麗なアクションは言うに及ばず。(裕)


趙薇(ヴィッキー・チャオ)と陳坤(チェン・クン)@2009年中国映画週間(撮影:宮崎)


陳坤(チェン・クン)@2007年中国映画週間(撮影:宮崎)

2008年/シンガポール・香港・中国/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:太秦
©EASTERN MORDOR FILM COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

★8月4日(土)有楽町スバル座ほかにて全国ロードショー

公式 HP >> http://www.gahi-movie.com/

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東野圭吾ドラマシリーズ“笑”

第1笑「モテモテ・スプレー」
監督:水落豊
原作:東野圭吾「黒笑小説」(集英社文庫)所収
出演:濱田岳、倉科カナ、津川雅彦

同僚のアユミに告白してあっさり振られたタカシは、モテたい一心で探したサイトの怪しい博士を訪ねる。博士はタカシの発する「究極のモテないオーラ」に驚き、とっておきのスプレーを作ってくれた。スプレーをかけたうえで誘うと、これまでの態度が一変する。効果は絶大だったが、ある欠点があった。


第2笑「あるジーサンに花束を」
監督:石井聡一
原作:東野圭吾「怪笑小説」(集英社文庫)所収
出演:笹野高史、菅田将暉、宮澤佐江(AKB48)

妻を亡くしてから慎ましい一人住まいのジーサン。本屋の優しい店員千春と話すのが小さな楽しみ。ある日、かかりつけの医師に若返りの実験に協力してほしいと頼まれ、高額な報酬についひきうけてしまった。手術後みるみる若返って、すっかり嬉しくなったジーサン、医師の「特定の人と関わらないこと」という注意ををよそに、病院を抜け出して千春に会いに行く。「若返ったジーサン」を孫と信じた千春と、もう一度青春を謳歌し始めたジーサンだったが。


第3笑「誘拐電話網」
監督:英勉
原作:東野圭吾「毒笑小説」(集英社文庫)所収
出演:三上博史、ミムラ

川島夫婦は子どもがなく、二人で蕎麦屋を営んでいる。ある日かかってきた電話は「子どもを誘拐した」というものだった。うちには子どもはいない、と反論すると「無作為に選んだんだ」と笑い、「3日以内に1千万円の身代金を払え」という。知らない子どもとはいえ、なんとか救いたい。しかし身代金のあてもない川島はあることを思いつく。

8月1日より1ヶ月に1本ずつ配信開始になる短編ドラマ(27,8分)です。当代一のミステリー作家である東野圭吾の原作に、強力なスタッフ・キャストを配してぴりっと締まった3本がお目見えしました。短い中でクスリと笑えてほろりとしたり、その展開に驚いたり…。


一度限りの特別試写会に「モテモテ・スプレー」主演のお二人が登場しました。

Q:ドラマの見どころは?

濱田:短いのであまり喋るとネタばれになっちゃうんですよ。クスクスっというちょっとブラックな笑いを楽しんでください。

倉科:モテようとする濱田さんがとても可愛いんです。私が(スプレーのないときあるときで)全然違う顔をするのを見てくださいね。

Q:津川雅彦さんとの共演はいかがでした?

濱田:お名前を聞いただけで緊張して、お会いしてまた緊張していたんですが、気さくでいろいろ話して下さる方でした。現場でもいろいろなアイデアを出されて、とても勉強になりました。すごくファンキーな博士です。

Q:今いちばんほしいアイテムは?

濱田:「身長が伸び~る」です(笑)。180cmくらいになるといいなぁ。

倉科:「どこでもドア」! 移動時間なしに、現場にすぐ行けますから。


倉科カナ            濱田岳 

濱田岳と倉科カナ

公式サイトでは「笑顔」写真を募集中。二人もさっそくお互いの笑顔を撮りっこしました。
シリーズの主題歌は、トータス松本の軽快な「笑ってみ」。

*配信の詳細はこちらから
http://www.jcom.co.jp/files/joker/
J:COMオンデマンド http://www.myjcom.jp/tv/vod.html
au「ビデオパス」・「スマートパス」で!
http://pr.videopass.jp/
http://pass.auone.jp/

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マダガスカル3(原題:MADAGASCAR 3: EUROPE'S MOST WANTED)

監督:エリック・ダーネル、トム・マクグラス、コンラッド・ヴァーノン
脚本:エリック・ダーネル 音楽:ハンス・ジマー 声の出演:ベン・スティラー(アレックス)、クリス・ロック(マーティ)、デヴィッド・シュワイマー(メルマン)、ジェイダ・ピンケット=スミス(グロリア)、サシャ・バロン・コーエン(ジュリアン)
吹替版声の出演:玉木宏(アレックス)、柳沢慎吾(マーティ)、岡田義徳(メルマン)、高島礼子(グロリア)、小木博明(キング・ジュリアン)、矢作兼(モーリス)

一緒ならきっと《奇跡》は起きる!?
アフリカの厳しさをいやというほど知り、ニューヨークの動物園に帰りたいアレックス、マーティ、メルマン、グロリアの4人組。ペンギンズを探してモンテカルロのカジノで大騒動を引き起こし、動物狩りに全てをかける女警部デュボアに追われるハメになってしまった。ヨーロッパ中に指名手配され、今にもつぶれそうなおんぼろサーカスに逃げ込んだ。アレックスたちはサーカスを立て直してニューヨークに帰ろうと決心する。

第1作(2005年)でニューヨークの動物園を飛び出し、マダガスカルへ。第2作(2008年)ではついに生まれ故郷のアフリカへ。3Dになった第3作めの本作は、デュボア警部という好敵手を得て、ヨーロッパを舞台に大冒険を繰り広げます。『ミッション・インポッシブル』顔負けのアクションもすばらしい!
4人組が主人公ですが、ペンギンズほか脇のキャラたちがいつもいい味を出しています。今回は不死身の女警部とサーカスの仲間たちが、ストーリーを彩ります。アレックスたちは懐かしいニューヨークに帰れるのか?その顛末はぜひお子様連れでどうぞ~。(白)

2012年/アメリカ/カラー/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給&宣伝:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
©2011 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

★8月1日(水)、新宿ピカデリー他全国ロードショー!
映画ファーストデー、3D/2D同時公開

公式 HP >> http://www.madagascar.jp/

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ベティ・ブルー/愛と激情の日々(原題: BETTY BLUE/37-2 LE MATIN)

監督:ジャン=ジャック・ベネックス
脚本:ジャン=ジャック・ベネックス
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:ジャン=ユーグ・アングラード(ゾルグ)、ベアトリス・ダル(ベティ)、ジェラール・ダルモン(エディ)、コンスエロ・で・アビラン(リサ)

海辺のバンガローで塗装や修理など管理人めいた仕事をしながら暮らしている男ゾーグは、きままな少女ベティ・ブルーと出会い、すぐさま同棲してセックス浸りになる。
以前に小説家になろうと思っていたゾーグだが、書き溜めて放っておいた原稿を読んだベティは、彼の隠れた才能を見つけ、無我夢中でタイプを打ち、出版社に送りつけ、毎日毎日郵便を待っている。
そんなベティの純情な面にほだされ、二人の時間を楽しんでいたが・・・。

なんて激しい女性だろう。年齢的には小娘の年齢だが、やることは大胆で荒々しく、並みの男は相手に出来ないだろう。
だが、男でも女でもベティに憧れる部分はあると思う・・・自分は言ったり、やったり出来ないけど・・・10メートル以内にいなければ(もっとかな?)楽しい存在かもしれない。
驚くことに才能を発見する能力も自然にそなわっている。ゾーグのピアノ演奏に単音だが合いの手を入れるところなど見事だった。
始めは「わぁ~、本当にセックスしてるんじゃない?」と仰け反ってしまったが、「こんな痛い生き方もあるんだなぁ」に変わり、最後は「彼女らしい幕切れかもしれない・・・」としんみりしてしまった。(美)

1986年/フランス/カラー/121分/ヴィスタサイズ
配給:フロンティア・ワークス、アーク・フィルムズ

★7月28日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.betty-blue.info/

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ゴッド・ブレス・アメリカ(原題:God Bless America)

監督:ボブキャット・ゴールド・スウェイト
脚本:ボブキャット・ゴールド・スウェイト
撮影:プラッドリー・ストーンサイファー
音楽:マット・コラー
出演:ジョエル・マーレー(フランク)、タラ・ライン・バー(ロキシー)、マッケンジー・プルーク・スミス(エバ)、メリンダ・ペイジ・ハミルトン(アリソン)

(1) 離婚したが、子どもにも嫌われて会えない。
 (2) リストラされた。
 (3) 不治の病で死の宣告を受けた。
こんな中年太り男・フランクは拳銃自殺しようとするが、テレビに写っていたワガママ・有名人「クロエ」にムカムカと腹が立ち、翌日、なんと彼はクロエをこっそり射殺。それを見て感動した女子高生ロキシーは強引にフランクと行動するが・・・。

超・ブラック・ユーモア作品。中年男と十代の家出娘のコンビがこんなにたくさん人を殺して…最初こそ「ヤレ!ヤレ!」と胸がすく思いだったが、あまりの見さかいの無さにドン引き。
私だって空想好き(いや、妄想好き?)だからもう何人殺したろう。
電車の中で週刊誌の芸能ニュースオンパレードの中年オバと化粧する女、映画館でビニール音を長々とさせる奴・・・死刑になるぐらい妄想上でヤッている。
だから腹立ちまみれもわからんではないが、先行き「光が見えない」ってのが辛い。 これ、最後「あっ、夢だった」にはできなかったかな。

※主演男優(ビル・マーレーの弟だって!)の中年太りが触りたいくらい魅力的だった! 「きっとお腹なんかマシュマロみたいな手触りかな」っとまたまた妄想してしまった。
(美)

2011年/アメリカ/カラー/104分/シネスコサイズ
配給:トランスフォーマー

★7月28日よりシネマライズほか全国順次ロードショー公開

公式 HP >> http://www.gba-movie.com/

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かぞくのくに

監督・脚本:ヤン・ヨンヒ
撮影:戸田義久
美術:丸尾知行
音楽:岩代太郎
衣裳:宮本まさ江
出演:安藤サクラ(リエ)、井浦新(兄/ソンホ)、ヤン・イクチュン(ヤン同志)、京野ことみ(スニ)、大森立嗣(ホンギ)、村上淳(ジュノ)、省吾(チョリ)、津嘉山正種(父)、宮崎美子(母)、諏訪太郎(叔父)

70年代の帰国事業により北朝鮮に移住していた兄ソンホが25年ぶりに帰ってくる。病気治療のため、特別に3ヶ月間だけ帰国を許されたのだ。指折り数える妹リエ、母も息子の好物を揃えて待っている。ようやく戻ったソンホには見知らぬ男が監視役としてついていた。家族揃って食卓を囲むが、送り出した責任を感じている父はぎくしゃくしたままだ。懐かしい旧友たちにも再会し、ソンホはそっと歌をくちずさむ。病院での検査の結果は良くなく、3ヶ月ではとても治療しきれないという医師の言葉に、家族は滞在を引き伸ばす算段を始めるが・・・。


©2011『かぞくのくに』製作委員会

ヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』に続き、初めての長編フィクションが完成しました。ドキュメンタリーでは表現しきれなかった監督の思いがぎゅっと詰まっているようで、試写室でぼろぼろ泣いた作品です。物静かなソンホ役の新さん、勝気で明るいリエ役のさくらさんの二人をはじめ、キャストの方々がぴたりとはまっています。離れ離れになってしまった家族が再会する喜びと、それが暗転する衝撃。家族にこんな思いをさせる「国」とはいったい何なのでしょう。淡々と受け止めるソンホによけい心揺さぶられました。
公開に先立って『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』の2本立て特集上映が決定しました。こちらを観ておくと背景がよくわかり、『かぞくのくに』がより深く感じられると思います。この機会にぜひ! 本誌85号にはヤン・ヨンヒ監督のインタビューを掲載しています。(白)


『かぞくのくに』公開記念 ヤン・ヨンヒ監督特集~家族の肖像~

○公開期間:7/21(土)~7/27(金)
○上映作品:『ディア・ピョンヤン』、『愛しきソナ』2本立て上映
○料金:一般:1500円/学生・シニア:1000円
★『かぞくのくに』前売券ご提示で一般料金より200円引き
★『ヤン・ヨンヒ監督特集』の半券ご提示でテアトル新宿での『かぞくのくに』一般・学生料金より200円引き
詳細はこちらへ http://www.ttcg.jp/theatre_shinjuku/

2012年/日本/カラー/100分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:スターサンズ

★7月21日(土)より全国ロードショー

公式 HP >> http://kazokunokuni.com/

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メリダとおそろしの森(原題:BRAVE)

監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン
原案: ブレンダ・チャップマン
製作: キャサリン・サラフィアン
製作総指揮: ジョン・ラセター
音楽:パトリック・ドイル
出演:ケリー・マクドナルド(王女メリダ)、ビリー・コノリー(ファーガス王)、エマ・トンプソン(エリノア王妃)、ケヴィン・マクキッド(マクガフィン卿)、クレイグ・ファーガソン(マッキントッシュ卿)、ロビー・コルトレーン(ディンウォール卿)、ジュリー・ウォルターズ(魔女)/日本語吹替版: 大島優子(王女メリダ)

スコットランドのとある王国。幼い王女メリダは、父親のファーガス王から、誕生日に弓矢を贈られた。その直後巨大な熊が森から現れ、ファーガス王は家族を守って戦い、片足を失う。その武勇伝は語り草となった。メリダは弓の名手に成長したが、おてんばで森を駆け回る毎日。王家の伝統を守り結婚して欲しいと願う母親エリノア王妃とは相容れない。しかし年頃になったメリダの結婚相手を決めようと武術大会が開かれることになった。不思議な鬼火に導かれて森の奥深くに入り込んだメリダは魔女に出会い、禁じられている森の魔法で「自分の運命を変えたい」と願ってしまう。


©Disney/Pixar.All Rights Reserves.

『カールじいさんの空飛ぶ家』でおじいさんを主人公にしたピクサー、今度は初めてのヒロイン!それも舞台は中世です。メリダは馬と弓が好きでまだまだ結婚などしたくない女の子。17,8なんでしょうか。少女から大人の女性に代わる不安定な時期で、身近な母親と衝突してしまいます。王家でなくてもよくあることで、共感を呼びます。観客の年齢層は広いと思われるので、小さな弟たちや魔女の出現、因縁の熊との対決などいろいろなエピソードをよく組み合わせてありました。ストーリーを練るのに何年もかかったそうです。画像についてみても、メリダのふわふわカーリーのヘアスタイル、その髪が風や動きに伴って動くのですから(どうやって作るんでしょう?)、これだけでも製作にあたった皆様お疲れ様といいたくなりました。(白)

2012年/アメリカ/カラー/100分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ディズニー

★7月21日(土)より全国ロードショー

公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/merida/

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屋根裏部屋のマリアたち(原題:LES FEMMES DU 6EME ETAGE)

監督:フィリップ・ル・ゲ
脚本:フィリップ・ル・ゲ、ジェローム・トネール
撮影:ジャン=クロード・ラリュー
音楽:ホルヘ・アリアガータ
出演:ファブリス・ルキーニ(ジャン=ルイ・ジュベール)、サンドリーヌ・キベルラン(シュザンヌ・ジュベール)、ナタリア・ベルベケ(マリア)、カルメン・マウラ(コンセプシオン)、ロラ・ドゥエニャス(カルメン)ほか

1962年のパリ。ジャン=ルイ・シュベールは、祖父の代からの証券会社を経営する資産家。妻のシュザンヌは先代からのフランス人メイドをやめさせ、新しくスペイン人のマリアを雇った、半熟卵のゆで加減もようやくジャン=ルイ好みになった。マリアは同郷のメイド仲間と一緒に屋根裏部屋に住んでいたが、狭いうえトイレが詰まったりで環境は良くない。これに気づいたジャン=ルイがすぐに修繕を頼んでメイドたちは大喜び。妻とのいさかいから同じく屋根裏の住人となったジャン=ルイは、明るく働き者のメイドたちとの暮らしに安らぎを見出していく。

フランス映画祭2011では『6階のマリアたち』のタイトルで上映されています。60年代のパリにはたくさんのスペイン人のメイドが働いていました。スペイン内戦後の、軍事政権下の時期です。それぞれの事情を抱えながら異郷でたくましく働く女性たち。フィリピンやロシア、ブラジルからの女性を思い浮かべました。
妻のシュザンヌはブルジョア階級に嫁いできて、回りの奥様たちに合わせるのに手一杯のようす。メイドのマリアはとても魅力的。これでは惹かれていくのも無理はないのですが、みな手放して新しい幸せを見つけたジャン=ルイとうらはらに、淋しそうなシュザンヌの表情も忘れられません。(白)

2010年/フランス/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アルバトロス・フィルム
©Vendome Production-France2Cinema-SND All rights reserved.

★7月21日(土)、Bunkamuraル・シネマほか順次公開

公式 HP >> http://yaneura-maria.com/

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ローマ法王の休日(原題:Habemus Papam)

監督:ナンニ・モレッティ
脚本:ナンニ・モレッティ
撮影:アレッサンドロ・ペシ
美術:パオラ・ビザーリ
出演:ミシェル・ピッコリ(メルヴィル/ローマ法王)、イエルジー・スチュエル(報道官)、レナート・スカルパ(グレゴリー枢機卿)、ナンニ・モレッティ(精神科医)、マルゲリータ・ブイ(精神科医)

ローマ法王死去。この一大事を受け、新法王選出のためヴァチカンに集まる各国の枢機卿たち。
彼らは全員、心の中で必死に祈りを捧げていた。「神様、一生のお願いです。どうか私が選ばれませんように」。
そして新法王に選ばれてしまったのが、ダークホースのメルヴィル。
彼は大観衆を前に演説をしなければならないが、あまりの緊張からローマの街に逃げ出してしまい…。

最初、私の目を引き付けたのは、お偉い各国の枢機卿たちの手に燦然と輝く指輪だった。労働をしない手の柔らかさと宝石・・・それも極上品に見えた。

「このお偉いさん方はいったいどんな生活をしているのだろうか」「この宝石はどうやって手にいれたのか」「給料はいくら?」などが頭をよぎった。

それに、枢機卿たちのやってることや思っていることは「本当かいな」と疑ってしまう。 誰しも法王にはなりたくない?こんなに皆仲良くて、無邪気?・・・。 ラストシーンの新法王の挨拶を聞いて、はたと思いあたった。

モレッティ監督さんは多分、「指輪は本当でも、やってること、思っていること、言ってることはすべて裏返しだよ」って言いたかったのかな・・・。

※「コンクラーヴェ」語源はラテン語の[鍵のかかった」という意味で、決定まで枢機卿たちはヴァチカンに拘束され、携帯電話所持も禁止。新法王のお名前はバルコニーの最初の演説の時まで外部の人は知らされない。
(美)

2011年/イタリア・フランス/カラー/104分/ドルビーデジタル
配給:ギヤガGAGA

★7月21日(土) TOHOシネマズ シャンテ、名古屋ベイシティほか全国順次公開

公式 HP >> http://romahouou.gaga.ne.jp/

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The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛(原題:The Lady)

監督:リュック・ベッソン
脚本:レベッカ・フレイン 
出演:ミシェル・ヨー、デヴィッド・シューリス

ビルマ民主主義運動のリーダーとして、あまりにも有名なアウンサンスーチー。父アウンサン将軍は、1947年に凶弾に倒れた死後も「ビルマ建国の父」と多くの国民から慕われている人物。
スーチーは、1972年、チベット研究者のイギリス人マイケル・アリスと結婚し、二人の息子にも恵まれ、英国オックスフォードで幸せに暮らしていた。1988年、ビルマにいる母親が心臓発作で倒れ、スーチーは看病のために帰国する。折しも、故国では軍事独裁政権に対する民主主義運動が活発化し、政府がデモ隊を武力で弾圧していた。スーチーの帰国を知った活動家たちは選挙への出馬を求め、彼女もビルマの人々のために立ち上がる決意をする。スーチーの公式演説に数十万人もの人が集まった様子をみて、独裁者ネ・ウィン将軍は夫マイケルを国外退去させてしまう・・・


Photo Magali Bragard © 2011 EuropaCorp – Left Bank Pictures – France 2 Cinéma

スーチーは、1989年から3度にわたり通算15年間も自宅軟禁生活を強いられ、夫マイケルが1999年に癌で亡くなった時にも死に目に会えなかった。家族よりもビルマの人々のことを優先したスーチー。邸宅の門の上に細い身を乗りだし、集まった支援者に向かって演説する姿がほんとに凛々しかった。そんな彼女をミシェル・ヨーが体現。生の花を髪に飾って民衆の前に立つ姿が実に素敵だ。
本作は、演じたミシェル・ヨー自身が、2007年にアウンサンスーチーの激動の半生を綴ったレベッカ・フレインの脚本に感銘を受け、友人であるベッソン監督に企画を持ち込み、約4年の歳月をかけて映画化が実現したもの。
2010年11月、スーチーは自宅軟禁から解放され、ようやく政治の場に踊りだし、この6月には24年ぶりに出国を許され外交デビュー。ノルウェーでのノーベル平和賞受賞演説などを経て、6月19日に67歳の誕生日を迎えた翌日には、亡き夫・マイケルとの出会いの場 オックスフォード大学から名誉博士号も授与された。
このタイミングで日本公開される本作。スーチーがいつか国民の為に活躍する場を勝ち取る日が来て欲しいというミシェル・ヨーが映画製作に込めた思いが通じたようだ。日本公開タイトルも外交デビューを祝して、当初の『The Lady ひき裂かれた愛』から、『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』に変更された。かつて、ビルマでは、アウンサンスーチーの名前を語ることは危険を伴うことから、運動をする人々の間では「The Lady」と呼ばれていたのだ。

実は、ニュースでスーチーを見るたびに思い出す女性がいる。もう○十年も前、大学を出て商社に入社した年、半年間隣の席にいた楚々としたビルマ美人。富豪のお嬢様で、帰国し歌手を呼んでの派手な結婚披露宴が新生ミャンマー政府のお咎めを食らったと聞いた。その後、夫と別れ娘を連れての米国留学でMBAを取得。国に戻り父を継いだ貿易業の傍らビジネススクールも経営し、「やり手」と日本人駐在員からも一目置かれる女性に。しなやかなのに芯の強いところもスーチーに似ている。きっと彼女もスーチーの活躍を喜んでいることだろう。(咲)

2011年/フランス/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD-EX/2時間13分
協力:GUERLAIN 
配給:角川映画

★2012年7月21日(土)より、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか 全国ロードショー

公式 HP >> http://www.theladymovie.jp/

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ジョルダーニ家の人々(原題:Le cose che restano)

監督:ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ
出演:クラウディオ・サンタマリア(『007/カジノ・ロワイヤル』)、パオラ・コルッテレージ、ロレンツォ・バルドゥッチ、エンニオ・ファンタスティキーニ(『あしたのパスタはアルデンテ』)、レイラ・ベクチ(『預言者』)、フランチェスコ・シャンナ(『シチリア!シチリア!』)
キャスト:役名と俳優の一覧表はこちら→http://www.iwanami-hall.com/contents/special/staff.html

ローマの古い瀟洒な邸宅で暮らすジョルダーニ家。外務省に勤める長男アンドレアが5ヶ月ぶりに家に帰って来る日、母アニタはアンドレアの好きなミモザのケーキを買い求める。食卓には技術者の父ピエトロ、大学で建築を学ぶ次男ニーノ、高校生の三男ロレンツォ、そして心理カウンセラーの長女ノラも夫を連れて訪れ、久しぶりに家族が顔をそろえる。そんな中、ロレンツォが今晩は彼女と一緒に勉強すると一家団欒の場から飛び出していく。その晩、ロレンツォはバイクの事故で逝ってしまう。3男の死を受け入れられない母は精神的に不安定になり療養所へ。次男ニーノは浮気をしている父に反発して学生用の共同アパートに移り住む。父は不倫相手に別れを告げ、イラクのプラント建設現場へ。そして長男アンドレアも仕事でシチリアへ赴くことになり家には誰もいなくなる。そんなある日、ニーノがイラクから娘を探しにきた女性シャーバと出会い、空き家になっていた自宅に住まわせる。ニーノは外務省に勤めるアンドレアにも手助けしてもらいシャーバの難民申請をし、娘アリナを探しだすために奔走する。一方、アンドレアはフランス人男性ミシェルと出会い、お互いに惹かれあうようになる。実はミシェルは不治の病を抱えていて、長女ノラのカウンセリングを受けている患者だった・・・

ジョルダーニ家と一家を巡る人々の悲喜こもごもを描いた6時間39分。4部構成のドラマには、人と人との出会いや、さまざまな人物の人生が描かれている。医師の仕事をやめ子育てに邁進してきた母、廃屋になった孤児院を利用して理想的な建物を設計しようとする次男など、ジョルダーニ家の人々の物語もそれぞれが興味深いが、イラクからやってきたシャーバとその娘アリナや、長女ノラがカウンセリングをしているアフガニスタンの戦場で記憶を失った大尉の物語に私は格別興味を抱いた。また、アリナと同じクラブで働いていたモンテネグロ出身の女性が殺害され船で遺体が故郷に運ばれるのだが、モンテネグロの立派な墓地で大勢の家族や友人に見守られながら埋葬される場面が丁寧に描かれていた。思えば端役の女性の葬儀なのに、実に感動的だった。ヨーロッパで増え続けている不法移民。たどり着いた国で亡くなられるケースも多いだろう。彼女のように故国で埋葬されることは少ないのではないだろうか。そんなことにも思いが至った。
さて、一度は空き家になったジョルダーニ家の邸宅。最後には、また人のぬくもりを取り戻す。家族の絆、そして、人種や宗教を超えていたわり合う心の大切さを感じさせてくれる作品だった。
『輝ける青春』のスタッフが再集結して製作したものだが、イタリア現代史を背景にした『輝ける青春』で感じたスケールの大きさとはまた違った趣の人間ドラマ。家族愛、夫婦の関係、同性愛、自分の進むべき道、余命宣告、難民、移民・・・ 実に様々な問題を盛り込んだ作品である。父がイラクへ行くと言った時に、次男の口から「まず破壊して再建するのか」と、大国を皮肉った言葉もさりげなく出てくる。小さな台詞に脚本家が込めた思いを感じた瞬間だった。(咲)

2010年/イタリア・フランス合作/399分/イタリア語/ドルビーデジタル/HDV
配給 チャイルド・フィルム,ツイン
提供 チャイルド・フィルム,ツイン,朝日新聞社
後援 イタリア大使館
特別協力 イタリア文化会館

★2012年7月21日 岩波ホールにて6時間半一挙上映ロードショー

公式 HP >> http://giordanike-movie.com/

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汚れた心(原題: CORACOES SUJOS  英題:DIRTY HEARTS

監督: ヴィセンテ・アモリン(『善き人』)
脚本: ダヴィド・フランサ・メンデス
原作: フェルナンド・モライス
音楽: 松本晃彦
メインテーマ演奏: 宮本笑里
出演:伊原剛志、常盤貴子、菅田俊、余貴美子、大島葉子、エドゥアルド・モスコヴィス、奥田瑛二

1946年、ブラジル。サンパウロ州の小さな町で写真館を営むタカハシ(伊原剛志)は、妻ミユキ(常盤貴子)とつつましいながら幸せに暮らしていた。当時、日本との国交は断絶していて、日本語を使うことも集会を開くことも禁止されていた。日系移民の大半はいまだに第二次世界大戦で日本が勝利したと信じていたが、一部の情報を得ることの出来た者は日本が負けたことを知っていた。ある日、日系人のコミュニティの精神的リーダーである元日本帝国陸軍の大佐ワタナベ(奥田瑛二)が日系人を集めて、日本が負けたと言う人々を国賊として断罪せよと息巻く。ワタナベから刺客に指名されたタカハシは、苦悩しながらも標的となった隣人のササキ(菅田俊)のもとへ日本刀を携えて乗り込む・・・

当時の日系人社会が、勝ち組と負け組に分断されていたと聞いて、移民後の生活に成功した者たちと失敗した者たちかと思ったら、そうではなく、日本が戦争に勝ったと信じている「勝ち組」と、負けたと知っている「負け組」のことだった。当時、日本とブラジルの国交が断絶していたことや、ブラジルで日系人が抑圧されていたことも知らなかった。まして、勝ち組と負け組の間で多くの死傷者まで出る抗争があったことは全く知らなかった。当時を知る人たちがまだ存命の中、タブーともいえる事実をフェルナンド・モライス原作をもとに、ブラジル人であるヴィセンテ・アモリン監督が日本の著名な俳優たちを起用して映画化。
日本人としては、地球の反対側で起こった日系人の恥部をさらけ出されたことに辛い気持ちもある。それは封印して、不寛容や人種差別などによって、今なお争いが絶えない世界に一石を投じた監督の思いをずっしりと噛みしめたい。(咲)

2011年/ブラジル/日本語・ポルトガル語/107分/ドルビーSRD/シネマスコープ
配給:アルバトロス・フィルム、インターフィルム
後援:駐日ブラジル大使館

★2012年7月21日(土) 、ユーロスペースほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.kegaretakokoro.com/

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おおかみこどもの雨と雪

監督:細田守
脚本:細田守、奥寺佐渡子
キャラクターデザイン:高木正勝
声の出演:宮崎あおい(花)、大沢たかお(彼)、黒木華(雪の少女時代)、西井幸人(雨の少年時代)、菅原文太(韮崎)

19歳の大学生・花は、おおかみ男と運命的な恋にち、やがて2人の子ども・雪と雨を授かる。
子どもたちは人間とおおかみの両方の血を引く子として、この世に生まれた。そのことは誰も知らないが、家族四人幸せに都会で暮らしていた。
だが、ある日、この一家に不幸が襲い・・・。

『時をかける少女』や『サマーウォーズ』などを手掛けた細田守監督の最新作。
ストーリーも分かりやすく、非常に美しい画面だった。淡い色彩で小さい微妙なユレが新鮮に感じた。特に花畑の花が風に揺らぐ、一片一片の動きに目を奪われた。
声優さんの豪華さにも驚くが、大沢たかおと菅原文太は文句なし。宮崎あおいはキャラクターとあごの骨格が一致しないので、観ている方に「宮崎の声」で聞こえてしまう。私は作品に入り込むには「誰々さんの声」って聞こえるのは好きじゃないから、この点が少し気になった。
パンフレットを見ると、脇役は「骨格」ぴったり! 後で「あ~、この方だったのか」と思う人選。売れっ子の染谷将太、谷村美月、麻生久美子はとは気が付きもせず入り込めた。
(美)

2012年/日本/カラー/117分
配給:東宝

★7月21日よりほかTOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿バルト9ほかにて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.ookamikodomo.jp/

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BRAVE HEARTS 海猿

監督:羽住英一郎
脚本:福田靖
撮影:江崎朋生
音楽:佐藤直紀
美術:清水剛
出演:伊藤英明(仙崎大輔)、加藤あい(仙崎環菜)、佐藤隆太(吉岡哲也)、仲里依紗(矢部美香)、三浦翔平(服部拓也)、井原剛志(嶋一彦)

海上保安官13000人の中で、わずか36人だけという高度な救助技術者のスペシャリスト集団「特殊救難隊」にいる仙崎大輔と吉岡。嶋副隊長の指導の下、日々苛烈な任務であけくれていたが、家庭では大輔の妻・環菜は2人目の子を身ごもり、吉岡にはキャビンアテンダントの美香という恋人がいて、充実した毎日を送っていた。
そんなある日、美香の乗っているジャンボ旅客機・乗客346名のエンジンが炎上、飛行が困難になり、様々な救助案が検討される中、東京湾への着水と決まったが・・・。

確かに突っ込みどころは多い作品だが、ハラハラドキドキの連続だった。 こんなに一分一秒が大切なのに、ここで「愛の告白?」、こんなに時間が立っているのに「生きてた?」など頭をかすめながらも、次々展開する救助方法に手に汗をにぎってしまった。
こういう現場で働いている方の感想をお聞きしたい。いっぱい言いたいことが出てきそうだ。
※最初のシーンは伊藤英明の筋トレシーン。いい体していた。画面から熱気が伝わってきた。(美)

2012年/日本/カラー/116分/ドルビーSRD
配給:東宝

★7月13日(金曜)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿バルト9他にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.umizaru.jp/

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ムカデ人間2(原題:The Human Centipede)

監督:トム・シックス
脚本:トム・シックス
撮影:デヴィッド・メドウズ
音楽:ジェームス・エドワード・バーカー
美術:トーマス・ステファン
出演:ローレンス・R・ハーヴェイ(マーティン)、アシュリン・イェニー(『ムカデ人間』出演の方、本人役)

真夜中のロンドン。地下駐車場の夜間警備員として働く醜い中年男マーティンは、さして仕事のないのをいいことに、じっとパソコンを見ている。
見ているのはDVD「ムカデ人間」…時折、ため息をつきながら画面をなぜている。彼はこの作品にのめり込むだけではなく…。


これは2回(試写1回と初日に)観ているのでそれぞれの感想を書きたい。
★東京で1回だけ試写が行われた。
鳥肌もの! とても興奮した!一回こっきりの東京試写。だけど満員じゃない! もったいな~い! だけどわざわざ名古屋から来た甲斐は200%あり!
上手く出来ている!話し出したら止まらない! 書き出したらいつもより支離滅裂になる!  身悶えするくらいステキ!モノクロって言われるまで気がつかない!  もう私的にはトム様=トム・シックス監督でトム・クルーズではない!
映画を観て妄想好きな私にとって宝のような映画・・・映画を観たあと、誰しも経験はあると思う「私だったらきっとこうするわ」が病的になってしまったひとりの男の物語だ。
★名古屋スコーレで初日初回に。
東京も名古屋同時公開。嬉しい!シネマスコーレはほぼ満員。
2回目だから細かいところまで目が通せた。やはり「救い」があった。この種明かしはネタバレになるから書けないが、救いのない『セルビアン・フィルム』『ホーボー・ウィズ・ショットガン』の後味悪さはなかった。
会場は「固唾を呑んで観る」とはこんなことを言うんだ!と感じる緊迫感だった。パンフレットが飛ぶように売れていた!(もちろん私も買った)
初回限定プレゼントは気持ち悪くなったら吐くための袋(なぜか紙製)

※家に帰りゆっくりパンフレットを読んで驚くこと2つ。
(1) 主演ローレンス・R・ハーヴェイは子ども番組に出演していた方! 私的にはローレンス・R・ハーヴェイはアカデミー賞主演男優だ。
(2) 『ムカデ人間3』は撮影中。なんとなんと次は500人だと!  最後には世界中がムカデになれば「戦争なし!平和になる」ってか?

※年金おばぁからの声援
「ずっとずっと続けてほしい。最終回まで死なずに待ってるよ! トム様!
(美)

2011年/オランダ、イギリス/モノクロ/91分/ビスタサイズ
配給:トランスフォーマー

★7月14日より新宿武蔵野館他にて公開中

公式 HP >> http://mukade-ningen.com/mukade2/

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012(第9回)

期 間:2012年7月14日(土)~7月22日(日) 9日間
会 場:SKIPシティ(映像ホール・多目的ホールほか) 〔埼玉県川口市上青木3-12-63〕
アクセス:会期中、JR川口駅東口キャスティ前臨時バス停より、SKIPシティまで直行の無料シャトルバスが20分間隔で運行されます。(所要:約12分)
http://www.skipcity-dcf.jp/access.html
車でお出かけの方には、上映チケットの半券提示で駐車料無料のサービスもあります。

デジタルシネマの新しい才能を発掘する目的で2004年にスタートした「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」も今年9回目。長編・短編部門のコンペティション作品をはじめ、Dシネマの潮流、招待作品、シネマ歌舞伎、SKIPシティ・セレクション、バリアフリー上映など、選りすぐりの作品が上映されます。また、映画以外にもSKIPシティ夏祭りなどイベントも盛りだくさん用意され、家族ぐるみで楽しめる映画祭です。


月の下まで ©Takeo Urakami            旅の始まり ©Pupkin   


  真実の恋 ©Daniel Lauten – Cinenord/SF Norge      我が子、ジャン ©Ovunc USTER      

◆長編部門(国際コンペティション)

*国内作品
チチを撮りに(監督:中野量太)
月の下まで(監督:奥村盛人)
Heart Beat(監督:浅沼直也)

*海外作品
死と乙女という名のダンス(監督:アンドレ・ヒューレス、カナダ・ハンガリー・スロベニア)
真実の恋(監督:アンネ・セウィッツキー、ノルウェー)
旅の始まり(監督:マルヒン・ロハール、オランダ)
沈黙の歌(監督:チェン・ジュオ、中国)
二番目の妻(監督:ウムト・ダー、オーストリア)
ノノ(監督:ロメル・トレンティーノ、フィリピン)
レストレーション~修復~(監督:ヨシ・マドモニ、イスラエル)
ワイルド・ビル(監督:デクスター・フレッチャー、イギリス)
我が子、ジャン(監督:ラシト・チェリケゼル、トルコ)


◆Dシネマの潮流2012 (オープニング作品)
青木ヶ原(監督:新城卓)

◆招待作品
カウントダウン(監督:ホ・ジョンホ、韓国)

◆シネマ歌舞伎
天守物語(2009年7月上演の収録版)

◆SKIPシティ・セレクション
春、一番最初に降る雨(監督:佐野伸寿、エルラン・ヌルムハンベトフ、カザフスタン・日本)
ミニミニ大作戦(監督:F・ゲイリー・グレイ、アメリカ)
ミラノ・スカラ座オペラ「カルメン」(2009年12月(イタリア)上演の収録版)

◆バリアフリー上映 (日本語字幕+音声ガイド付き上映) ※入場無料
アントキノイノチ(監督:瀬々敬久)

主 催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、 特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会

公式 HP >> http://www.skipcity-dcf.jp/

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毎日がアルツハイマー

企画・製作・監督・撮影・編集:関口祐加

『THE ダイエット!』で、抱腹絶倒の自らのダイエット記録を公開した関口祐加監督。今度はシドニーから横浜の実家に戻って、お母さんの宏子さんの撮影を始めた。お父さんを突然亡くしてから10年、引きこもりがちになったお母さんはアルツハイマー型認知症と診断された。離れて暮らした29年間を埋めるように寄り添う日々を2年半撮り続け、動画サイトyoutubeに発表してきた。累計20万ヒット。このほどお母さんの喜怒哀楽の場面を時系列に編集、ドキュメンタリーとして劇場公開が実現した。


完成披露試写会での関口祐加監督

関口監督は試写の舞台挨拶で「この病気の初期は本人が一番辛い。介護する側は一人で抱え込まず、カミングアウトして周り(医師の診断をうけて公的機関の援助を申請する)に助けてもらうことが大事」と力説。「コップの中に水が半分ある。それを半分しかない、と思うか後半分もあると思うかで違ってくると思います。アルツハイマーになったからといって、不幸せなんだろうか? 母をみていて人生を考えさせられました」という関口監督とお母さんの笑いがいっぱいの毎日に、こちらが元気がもらえること請け合います。(白)

2011年/日本/カラー/ 1時間33分/HDV
製作協力・配給:シグロ
特別協力:シネマテーク動画教室 バリアフリー映画研究会 / 協賛:第一三共株式会社
©2012 NY GALS FILMS

★7月14日(土)よりポレポレ東中野、銀座シネパトス、横浜ニューテアトルにて夏休みモーニング・ロードショー!

公式 HP >> http://www.maiaru.com/

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ぱいかじ南海作戦

監督・脚本:細川徹
原作:椎名誠「ぱいかじ南海作戦」新潮文庫刊
撮影:芦澤明子
音楽:櫻井映子
出演:阿部サダヲ(佐々木)、永山絢斗(オッコチ)、貫地谷しほり(アパ)、佐々木希(キミ)、ピエール瀧(マンボさん)、浅野和之(先生)、斉木しげる(ギタさん)、大水洋介(ヨシオ

リストラと離婚が続いてしまった佐々木、今後のことをゆっくり考えよう、と南の島にやってくる。何もかものんびりゆったりした海岸には思いがけず4人の先客がいた。風体こそ悪いものの、気の良い男たちに佐々木はすっかり心を許し、島の暮らしのコツなど教わりながらキャンプのような楽しい日々を過ごした。しかし酒盛りの後目覚めると、浜には誰一人残っていなかった。佐々木の荷物も綺麗さっぱりなくなっている。一時は落ち込むが、「ここからが本当のサバイバル生活!」と、気を取り直したところに若いバックパッカーがやってきた。少し前の自分と同じく、何にでも感激している彼に、無一文になった佐々木は狙いを定める。


©2012「ぱいかじ南海作戦」製作委員会

椎名さんのホンワカした原作が、かなり忠実に映画化されています。沖縄へ訪れたことのある人は、あの心地よいゆるさのとりこになるのは、都会と違って包容力があるからでしょうか? それ故すっかり居ついてホームレス化してしまうこんな男たちもいそうな気がします。都会から来たばかりの佐々木は「カモネギ状態」でした。しかし次のカモネギとするはずの「オッコチ君」には頼りにされ、関西からの女子アパとキミの二人組も、良き仲間になっていきます。このいかにもゆるい展開が「南の果ての島+阿部サダヲ」だと何の違和感もなく、あるかもねぇと思ってしまうのですから、どんぴしゃのキャスティング。阿部サダヲさん貴重な俳優さんです。若い3人も可愛い!(白)

2011年/日本/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:キングレコード=ティ・ジョイ

★7月14日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://paikaji-movie.com/

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だれもがクジラを愛してる。(原題:BIG MIRACLE)

監督:ケン・クワピス
脚本:ジャック・アミエル、マイケル・ベグラー
撮影:ジョン・ベイリー
音楽:クリフ・エデルマン
出演:ドリュー・バリモア(レイチェル・クレイマー)、ジョン・クラシンスキー(アダム・カールソン)、クリスティン・ベル(ジル・ジェラード)、ダーモット・マローニー(スコット・ボイヤー大佐)、テッド・ダンソン(J・W・マグロウ)、ヴィネッサ・ショウ(ケリー・マイヤーズ)

1988年アラスカ州バロー。テレビリポーターのアダムは取材中に氷の海に閉じ込められそうになっている3頭のクジラを発見した。小さな子どものクジラもいる。ひらけた海までは8kmもあり、このままでは呼吸ができなくなってクジラは死んでしまう。アンカレッジへ画像を送信すると、環境保護団体のレイチェルが救出に動き出す。石油採掘会社のマグロウや、州知事、報道関係者たちの注目を集め、多くの人間が小さな町にやってくる騒ぎとなった。

親子のクジラの救出活動を中心に、集まって来た人間たちのさまざまな思惑とかけひきを描いています。これがいやはや・・・という感じなのですが、人間の欲深さは離れて見ている分には面白いものです。当時実際にあったことで、世界中に配信されたニュースを見たかもしれませんが全く記憶にありません。日本でも川に迷い込んだタマちゃんとか、街に降りてきた動物のニュースなどがときどき話題になりますが、こちらはクジラなのでスケールがド~~ンと大きくなり、大統領(レーガン)や冷戦状態にあったロシアまで関わります。次々繰り出される作戦がなかなか上手くいかず、ハラハラさせられました。今ならどうやって助けるのでしょう。知力を尽くし、自分の身体をはって行動するドリュー・バリモア演じるレイチェルがとても頼もしいです。(白)

実際に1988年に起こったアラスカでのクジラの救出劇。最初は損得勘定で動いていた人たちが、純粋にただクジラを助けたいという想いに変わっていく様が感動的。当時ホワイトハウスと冷戦状態にあったソ連までをも動かすなんて、まさに「事実は小説よりも奇なり」。しがらみなどなくひとりの人間として向き合えば、争いごとなどなくなるのかもしれないのにと思った。クジラが最終的にはどうなってしまうのか、当時の事件を知らなかった私には本当にハラハラ、ドキドキ、そして悲しみや人々の温かさを感じて号泣。実在する人物が多数描かれていて、エンディングロールでは実在と劇中の人物との対比も楽しめるので、席をお立ちになりませんように。(裕)

利害関係の対立する人たちが、最後には利害関係を超えてクジラを助けるために力を合わすことが素晴らしいと思った。『ザ・コーヴ』(クジラではなくてイルカだっただけど)のような相手の伝統文化も考えない一方的な話ではなく、いろいろな意見があるということがちゃんと表現されていた。
この映画を観ると、このクジラの救出劇は世界的な大騒ぎになっていたように描かれているけど、この事件のことは日本ではそんなに大きく取り上げられなかったのかな? 氷に閉じ込められたクジラが助け出されたという報道を見た記憶はあるが、このことだったかどうかは定かではない。少なくとも日本では大騒ぎにはなっていないと思う。でも今思うと、この1988年にあったクジラの救出劇の後くらいから、クジラやイルカなどの保護運動が大きくなり、捕鯨に対する反対運動が広がっていったような気もする。
この映画の舞台になったのは北米大陸最北端の町、バロー(人口約4000人)。この映画を観て、家に帰ってから、たまたま以前に録画してあったTV番組を見たら、偶然、このバローの町と、この作品にも出ていたイヌピアックエスキモーの人たちが出てきてびっくり。それは世界最北端にある和食レストランの紹介だったのだが、いろいろな種類の寿司があり、イヌピアックの人たちで大繁盛していた。イヌピアックの人たちは生魚を食べるという食習慣が日本人と似ているという。捕鯨の習慣があり、クジラの生肉や刺身も食べていた。
この作品でも、イヌピアックの人たちは、最初、3頭を捕まえて食料にしたいと考えていた。でも、世界的な話題になってしまい、そんな中でクジラを殺せば自分たちが捕鯨を続けるために不利になると考え、助けることに協力することにした。賢明な選択だと思った。
この番組は、「和食を世界無形文化遺産に」というための番組だったけど、食文化というのはそれぞれの地域によって違う。牛肉や豚肉を食べるのは良くて、クジラを食べるのは悪いというのはやっぱりおかしい。  (暁)

2012年/アメリカ/カラー/107分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東宝東和
©2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

★7月14日(土)、TOHOシネマズ シャンテ他順次公開

公式 HP >> http://love-whale.jp/

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いわさきちひろ ~27歳の旅立ち~

監督・編集:海南友子
エグゼクティブプロデューサー: 山田洋次
ナレーション:加賀美幸子
出演:黒柳徹子、高畑勲、中原ひとみ、松本善明
声の出演:檀れい、田中哲司

 すべてを失った日、
  わたしは夢に向かって
  歩き始めた。
絵本作家のいわさきちひろの人生を、貴重な証言で綴ったドキュメンタリー。故人をしのびながら語られるエピソードに、穏やかな外見のうちに強い意思と熱情を秘めていた方であったことを知ることができます。淡い色の愛らしい絵が一枚できあがるまでに、数多くのデッサンがあったことも彼女の人生と重なるようです。

杉並に住んでいたとき、自転車で行けるところにあった「ちひろ美術館」の会員でした。年に何度か展示替えになるのを楽しみに出かけて、原画を飽きずに見ていたものです。透明水彩で描かれた優しい花や可愛い子どもの絵のファンは全国にたくさんいらっしゃることでしょう。教科書の表紙でもよく見かけられますね。美術館に再現されているアトリエの主は1975年に亡くなって、もうその作品も増えることはありませんが、ちひろさんが絵に託した思いはこれからもずっと受けつがれていくことでしょう。(白)


私が通っていた高校は「ちひろ美術館」がある上井草(西武新宿線)にあり、20代前半から30代まで住んでいたのが、その隣りの駅の上石神井。ということで、ちひろ美術館は身近にあり、何度か行きました。しかも、妹がちひろさんの絵が好きで、もう何十年もカレンダーは、ちひろさんのカレンダー。実家の居間に飾ってあるので、あの淡い色合いの子供や花の絵は、いつも目の隅にありました。今、原稿を書いている目線の先にあって、今年の7月、8月の絵は3歳くらいの女の子が赤のビキニスタイルで大きな青っぽい帽子をかぶっている姿です。夏の海辺の光景なのでしょう。
心癒される絵の数々は、何年たっても色あせません。
また、私の第2のふるさとである信州にある「安曇野ちひろ美術館」にも行きました。北アルプスが眺められる場所にあるこの美術館は、残雪と田んぼの緑が目に嬉しい初夏に行くのがお薦めです。
しかも、写真学校に通っていた時、「選挙」という課題が出て、杉並区の選挙戦を取材し、ちひろさんの夫である松本善明さんの選挙事務所の写真を撮ったこともあります。ということで、勝手にちひろさんとは縁があると思っている私です。
さらに、この映画を監督した海南友子さんの作品は、今までいくつかシネマジャーナルで紹介しています。
このドキュメンタリーは、ちひろさんが絵本作家として出発した時の葛藤やエピソードが描かれています。優しさは強さだと思うけど、ちひろさんの優しい絵の中には強い信念が見えるように感じていましたが、この作品を観て、やっぱりそうだったと思いました。
ちひろさんの息子で、ちひろ美術館常任顧問の松本猛さんが、出演したTV番組の中で、ちひろさんの絵の描き方の話をしていましたが、猛さんがやっている行動を見て、「ちょっとそのポーズのまま動かないで」と言って、瞬く間にスケッチしたりしていたようです。猛さんがモデルになった作品がたくさんあったんですね。(暁)

シネマジャーナルで紹介している、その他の海南友子監督作品

『にがい涙の大地から』
シネマジャーナル本誌63号

『ビューティフル アイランズ 〜気候変動 沈む島の記憶〜』
シネマジャーナル本誌78号 第22回 東京国際女性映画祭レポート
・シネマジャーナルHP 第22回 東京国際女性映画祭記者会見
 http://www.cinemajournal.net/special/2009/iwff2/index.html
・シネマジャーナルHP 第22回 東京国際女性映画祭作品紹介
 http://www.cinemajournal.net/special/2009/iwff3/index.html
・シネマジャーナルHP 第22回 東京国際女性映画祭シンポジウム
 http://www.cinemajournal.net/special/2009/iwff1/index.html

2012年/日本/カラー/96分/16:9/ステレオ
配給・宣伝:クレストインターナショナル
©ホライズン・フィーチャーズ

★7月14日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://chihiro-eiga.jp/

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シャーク・ナイト(原題:SHARK NIGHT 3D)

監督:デヴィッド・R・エリス
脚本:ウィル・ヘイズ,ジェシー・ステューデンバーグ
撮影:ゲイリー・カポ
プロダクションデザイン:ジェームズ・ヒンクル
音楽:グレーム・レヴェル
出演:サラ・パクストン(サラ)、ダスティン・ミリガン(ニック)、クリス・カーマック(デニス)、キャサリン・マクフィー(ベス)、ドナル・ローグ(グレッグ保安官)

大学生のサラは、夏のバカンスに同級生6人を誘って地元へ戻ってきた。クロスビー湖のほとりにある別荘で楽しく過ごす予定だった。自分のことをあまり話さない、恋人もいないらしいサラに内気なニックはひそかに思いを寄せている。買い物に立ち寄った雑貨屋の駐車場で柄の悪い男たちに絡まれ、止めに入ったサラは元カレのデニスと気づく。ダイビングのインストラクターだったデニスは、デート中の事故で顔に大きな傷を負ってしまったのだ。別荘に到着してさっそく湖で遊ぶ一行に不気味な影が近づいていた。


©2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

夏になると必ず現れるパニック&ホラー映画の1本。本国では大きなポップコーンを抱えて、ワーワー!ギャーギャーと大騒ぎしながら観るのでしょう。今までの巨大サメものと違って、今回は大量!46種類のサメが登場だそうで、サカナ君は絶対に見なくては(笑)。数が多いので、途中で数えるのをやめてしまいましたが、余裕のある方は確認してみましょう。塩水湖なのでサメが棲息できるという設定ですが、人の悪意がからんでいるのはいうまでもありません。都会からやってくるいろんなキャラの大学生たち(犠牲になる順番の予想を)の水着姿と、絶景を楽しんでいられるのは冒頭だけです。お見逃しのないように。(白)

2011年/アメリカ/カラー/91分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ポニーキャニオン

★7月14日(土) TOHOシネマズ日劇 モンスターナイトカーニバル第一弾

公式 HP >> http://shark-night.jp/

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ピラニア リターンズ(原題:PIRANHA 3DD)

監督:ジョン・ギャラガー
脚本:パトリック・メルトンほか
撮影:アレクサンドル・レーマン
音楽:エリア・クミラル
出演:ダニエル・パナベイカー、マット・ブッシュ、ヴィング・レイムス、クリストファー・ロイド、デヴィッド・ハッセルホフ

地底湖で生きながらえていた古代ピラニアがスプリング・ブレイクを襲って1年。惨劇のあったビクトリア湖は閉鎖されたが、ピラニアは餌を求めて移動していた。クロス湖のウオーター・パーク「ビッグ・ウェット」は、金儲け主義のオーナーが安全確認を怠ったままオープンを迎えていた。クロス湖の周辺で、不可解な事件が起きていることを知ったマギーは、遠く離れたビクトリア湖の事件を思い出す。能天気な若者たちが大挙押し寄せたとき、マギーの心配は現実のものとなった。

第1作よりエロ、グロ、ナンセンス度が上がっているんですが、シネジャ作品紹介に入れてもいいものでしょうか。お化け屋敷に入るような感覚で楽しめばいいような気がしないでもありません。グラマーな水着のお姉ちゃんがいっぱいで、これだけでターゲットは老若男性と判明します。R18+なのでお子様は観られません。
警察はまったく頼りにならない(解決してはいけない)、普通はもっとパニックになって、いち早く水から出ようとすると思うのですが、なかなかみんな出ないんです(恐怖で腰が抜けているのか?)。いや、全部ここで撮影してしまわないとダメなんでしょう予算的に、と裏側の想像をたくましくしたり、夥しい数の死傷者役の人たちを観ながら美術さん、助監督さんはさぞ大変だったろうと、感嘆したりでした。ラストは問題あり、と思いますがここでは書けません。(白)

2012年/アメリカ/カラー/83分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/R18+
配給:ブロードメディアスタジオ
©2011 PDOUBLED FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

★7月14日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.piranha-3d.jp/

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苦役列車

監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
撮影:池内義浩
出演:森山未来(北町貫多)、高良健吾(日下部正二)、前田敦子(桜井康子)、マキタスポーツ(高橋岩男)、田口トモロヲ(古本屋の店主)

1980年代の後半。19歳の北町貫多は日雇い労働で稼いだ金を飲み食いやいかがわしい場所で使い果たし、家賃も払えない自堕落な生活を送っていた。
もちろん友人などもなく孤独に暮らしていた。
そんなある日、肉体労働の現場に専門学校生の日下部正二が入ってきて親しくなる。日下部は、貫多が一目ぼれしていた古本屋で働く桜井康子を取り持ってくれた。そのおかげで彼女と友達になれたが・・・。

原作を読んでいたので興味深々だった。小説より映画の方が「本質」に迫っているように感じた。貧しさ、惨めさ、わびしさ、悔しさのねじれが倍増して迫ってきた。
さすが山下敦弘監督。俳優陣のバランスがとてもよかった。暗くねじれた森山未來、明るくてなぜか気が合う高良健吾、清純な前田敦子、それに大風呂敷の高橋岩男ことマキタスポーツさんの演技と歌(しびれた!)、一瞬しか出ない『ジャーマン+雨』の野嵜好美。内容があってこんな贅沢な作品は稀。

※日下部正二は始め敬語を使っていたが貫多と同年と知ると、とたんにため口になっていたが、30年前に既に「敬語」「ため口」を切り替える「若者社会?」があったのかな・・・。 (美)

2012年/日本/カラー/112分
配給:東映

★7月14日より丸の内TOEI,新宿バルト9ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.kueki.jp/

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ヘルタースケルター

監督:蜷川実花
原作:岡崎京子 「ヘルタースケルター」祥伝社フィールコミックス
脚本:金子ありさ
音楽:上野耕路
テーマソング:浜崎あゆみ「evolution」(avex trax)
エンディングテーマ:AA=「The Klock」(SPEEDSTAR RECORDS)
出演:沢尻エリカ(りりこ)、大森南朋(麻田誠)、寺島しのぶ(羽田美知子)、綾野剛(奥村伸一)、水原希子(吉川こずえ)、新井浩文(沢鍋錦二)、鈴木杏(保須田久美)、寺島進(塚原慶太)、哀川翔(浜口幹男)、窪塚洋介(南部貴男)、原田美枝子(和智久子)、桃井かおり(多田寛子)

芸能界の頂点に君臨するトップスターりりこには、全身整形という秘密があった。美に執着しわがまま放題のりりこだが、秘密を知っている芸能事務所社長の多田や、献身的なマネージャーの美知子はどこかそんな彼女を憎みきれない。そして整形手術の後遺症がりりこの身体を蝕み始める。その上、りりこが通う美容クリニックが犯罪に関わっていると検察庁の麻田らが動き出したことから、秘密がばれるかもしれないという恐怖、美しい後輩モデル出現のあせり、御曹司の恋人が別の女性と婚約するなど精神的にも追い詰められていくりりこ。最後に彼女が出した決断は?

沢尻エリカによる沢尻エリカのための映画・・・きっと観た人全員がそう思うであろうほど、彼女がいなければできなかった作品といえるだろう。フィクションなのにノンフィクションと思えて仕方がなかった。彼女のお人形的な圧倒的美貌もさることながら、そのオーラと演技力で観るものを惹きつける。りりこがきれいになって何を目指したかったのかがわからないので、お人形の八当たりに見えてしまったのは残念だが、きれいだからしょうがないよねと思ってしまう。人は美しいものにはひれ伏してしまうからだろうか。写真家でもある蜷川実花監督の色彩感覚は独特のベタな艶やかさで、赤と青がとても印象に残った。そしてその色味の中では、存在感のあるものしか存在できない。りりこは確かに存在していた。(裕)

2012日本/カラー/127分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
製作:映画『ヘルタースケルター』製作委員会(WOWOW アスミック・エース エンタテインメント パルコ ハピネット Yahoo!JAPAN 祥伝社 ラッキースター)
制作プロダクション:アスミック・エース エンタテインメント シネバザール
配給:アスミック・エース
©2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会 WOWOWFILMS

★7.14 sat. 全国ロードショー

公式 HP >> http://hs-movie.com

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ぼくたちのムッシュ・ラザール(原題:MONSIEUR LAZHAR)

監督:フィリップ・ファラルドー
脚本:フィリップ・ファラルドー
撮影:ロナルド・ブランチ
音楽:マルティーヌ・レオン
出演:モハメッド・フェラグ(バシール)、ソフィー・ネリッセ(アリス)、エミリアン・ネロン(シモン)ダニエル・プルール(校長)ブリジット・プパール(先生)、ルイ・シャンパーニュ(清掃員)

モントリオールの小学校で、ある朝、女性教師が担任の教室で首をつって自殺した。朝の当番で早く登校した生徒は現場をみてしまい、学校全体が動揺を隠せずにいた。
数日後、先生が足りなくなって困っているところに、校長室に突然訪ねてきたアルジェリア出身の中年男性バシール・ラザールを自己申告だけで、教員として採用することになった。
ラザールの指導方法は一風変わっていたが、生徒に真剣に向き合う姿勢に、生徒も周りの先生も少しずつ親しくなっていく。
だが、ラザールには誰にもいえない秘密と深い傷を抱えていた。

新しい担任と生徒たちの交流を描いたほのぼの系作品かと思っていたが、最初のシーンからぞわぞわっと鳥肌がたった。教師ともあろうものが、なにも教室で、生徒が見てしまうと思う時間に、首をつらなくても・・・と嫌な気分になった。
これを見た生徒2人(シモンとアリス)がこの作品の鍵となるわけだが、なんとも言いようのない気持ちにさせられた。この気持ちを最後まで引き摺ってしまうのだが、ここまで書いて「オススメ作品」と言い切ってしまうのもなんだけど、観ていただきたい作品。
学校がてんやわんやの時に、ふらぁ~っ(なんだかそう見えた)と「新聞の記事を読んで、僕ができることなら」と現れたのがラザール先生。「こんなタイプの先生いる、きっと、人生の辛苦を経験済みで親身になってくれそう・・・」などと思ったのは校長先生ばかりでなく、私もそう思った。
だが、このラザール先生の自己申告だけで、意外に簡単に教師になれてしまう。日本だって教師はともかくも、何年もニセ医者が診療していたっていうのがたまにあるから他の国を笑えない。
このアルジェリア難民で異文化のラザール氏の抱える事情と、若い女教師自殺の原因が分かってくるにしたがって、私の苛立ちも半分氷解した。

※男の子シモン(エミリアン・ネロン)と女の子アリス(ソフィー・ネリッセ)はケベックのアカデミー賞といわれているジェトラ賞で助演男優・助演女優賞をうけている。 ほかの生徒さん役や、ただ座っているだけの子たちも、(存在自体が)本当に自然で驚いた。監督さんはこの「一生子どもたちが忘れられないであろう一時期を設定した」中で、どんなふうに寄り添ったのだろうか。
(美)

2011年/カナダ/カラー/95分/ドルビーSRD
配給:アルバトロス・フィルム

★7月14日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.lazhar-movie.com/

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さらば復讐の狼たちよ(原題:讓子彈飛)

監督 姜文 チアン・ウェン
撮影 チャオ・フェイ
美術 張叔平 ウィリアム・チャン
音楽 久石譲

出演
周潤發  チョウ・ユンファ (ホアン)
姜文   チアン・ウェン(あばたのチャン)
葛優   グォ・ヨウ (詐欺師マー)
劉嘉玲  カリーナ・ラウ(県令夫人)
陳坤   チェン・クン (用心棒フー)
胡軍   フー・ジュン (偽のあばたのチャン)
周韵   チョウ・ユン (ホアジエ)
姜武   チアン・ウー(軍師ウー)

●ストーリー
時は1920年。辛亥革命(1911年)後、政治が腐敗し、軍閥が各地方を支配していた。
県知事マー(グォ・ヨウ)は、妻(カリーナ・ラウ)と書記のタン(フォン・シャオガン監督)とともに、赴任先の地方都市鵝城へと向かっていた。マーは実は詐欺師で、金で県知事の官位を買っていた。彼らが乗っている馬列車を、指名手配中の“あばたのチャン”(チアン・ウェン)率いる7人の覆面盗賊集団が襲撃。
妻とともに捕えられたマーは、自身の命を守るため書記になりすまし、チャンに「鵝城の県知事になれば、金儲けできる」と吹き込み、県知事になりすますことをすすめる。それを聞いたチャンは県知事になりすまし、マーと(県知事の)妻、さらに手下を引き連れて鵝城へ向かう。たどりついた鵝城は金と暴力で街を牛耳る独裁者ホアン(チョウ・ユンファ)が支配する街だった。
ホアンは人身売買や麻薬の密売などで金を稼いできたため、県知事一行の赴任を快くは思っていないが、チャンたちを県知事だと信じ込み街に迎え入れた。虎視眈々とチャンの失脚を狙うホアン。 そんな時、町民に横暴を働いたホアンの部下ウー(チアン・ウー)をチャンが罰したことで、ホアンが激怒。その報復にチャンの仲間のひとり、六弟(ジャン・モー)を罠にはめて自殺へと追い込んでしまった。 ホアンへの復讐を誓うチャン。部下と一緒に6人でホアンに挑む。盗賊のボスと街の独裁者の戦いは、民衆をも巻き込み、誰も想像しなかった結末へと進んでゆく。



© 2010 EMPEROR MOTION PICTURE (INTERNATIONAL) LTD. BEIJING BUYILEHU FILM AND CULTURE LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

●公式HPより
中国で公開されるやいなや、『レッドクリフ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』を軽く超え、中国映画“歴代”興行収入No.1の大ヒット!!
ギャングが冷酷な支配者に戦いを挑むという“逆転”構造と、「義」のために命を懸ける男たちのドラマが絶妙に絡み合い、観客の心をわしづかみにした。街の権力者・ホアンには、ハリウッドでも活躍し確固たる地位を築いたチョウ・ユンファ。ホアンと対峙する盗賊団のリーダーで義に厚い男・チャンを本作の監督も務めたチアン・ウェンが熱く演じる。また、作品ごとにまったく違う演技を魅せるグォ・ヨウのほか、香港映画界を代表する名女優カリーナ・ラウ、人気急上昇中の若手俳優チェン・クン、『レッドクリフ』での趙雲役も記憶に新しいフー・ジュン等がこぞって出演、まさに中国・香港映画界を代表する豪華キャストが集結した。
 さらに観客を熱狂させたのが、劇中に織り込まれるさまざまな描写の数々。中国の現代社会を絶妙に風刺していると話題になり、その謎解きに夢中になる人々が続出。各シーンを分析・解説するため何度も劇場に足を運ぶ人も。この状況を重く見た中国当局は上映上映館数を減らすよう指示するも勢いは止まらず、その年の流行語大賞にもなるなど、社会現象を巻き起こした。そんな前代未聞のエンターテイメント超大作が、ついに日本に上陸する。


      周潤發                   周韵(チョウ・ユン)  


周潤發と姜文

©2010 EMPEROR MOTION PICTURE (INTERNATIONAL) LTD. BEIJING BUYILEHU FILM AND CULTURE LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

●感想ほか

姜文の4作目の監督作品になる『さらば復讐の狼たちよ』は、西部劇風復讐劇の形を使い、庶民が大きな力に挑むという姿を描いている。ブラックユーモアを効かせた作品を作りたいと語っていた姜文らしい作品。
あばたのチャンのセリフの中に「俺は頭を下げてまで金儲けしたくない。頭を下げずに金儲けする」というのが出てくるが、『鬼が来た!』で、当局の審査を経ずカンヌに出品したため、7年もの間映画製作禁止になり、やっとできた前作『陽もまた昇る』が興行成績不振だったので、「権力に屈せず映画をヒットさせたい」という監督の思いがこめられているとの説も。
馮小剛監督は、ここでも冒頭に出てきてすぐ死んでしまう。『カンフーハッスル』でもそうだったし、思わず笑ってしまった。それに、姜文の妻 周韵(チョウ・ユン)も娼婦の役で出演している。『ヘブン・アンド・アース天地英雄』(2003年)での共演後結婚したが、 『陽もまた昇る』『さらば復讐の狼たちよ』 と姜文監督の作品に続けて出演している。ここではピストルも撃ってしまう芸妓を演じている。
解説を読んで「そういうことなんだ」とわかった箇所もいくつかあった。中国のことをよく知らないとわからない風刺などもあり、再度観てみようと思わせる。
それにしても、男の人は鉄砲を撃ち合う映画が好きなんだ。「姜文あなたもですか」と思ってしまった。弾丸の飛び交う数がハンパじゃない。そんなに撃ち合いばかりのシーンばかりでなくてもいいのにと思うのは私だけ? 『讓子彈飛』という原題にもあるように、弾が飛び交う映画です。

私が映画にはまるきっかけになった作品『芙蓉鎮』に主演し、シネマジャーナルを知るきっかけにもなったのが姜文(チアン・ウェン)。『芙蓉鎮』での姜文(チアン・ウェン)の演技に感動し、なんと26回もこの品を観た。あとにも先にもこんなに回数を見た作品はない。この作品では主演女優の劉暁慶(リュウ・シャオチン)のことばかりが絶賛されていたが、私は姜文の演技も評価されるべきと思っていた。そんな時、姜文の演技を評価していたのがシネマジャーナルだった。その後、シネマジャーナルの読者からスタッフになり、とうとう1996年には中国まで行って姜文にインタビューしてしまった。そのとき姜文は、『鬼が来た!』の構想を熱心に話していたが、それが、カンヌで賞を獲るような作品になるとは、そのときは思いもよらなかった。「風刺、ブラックユーモアを効かせた作品を作っていきたい」と語っていたのが印象的だった。
この作品も、まさにそういう路線の作品だ。


(左)『讓子彈飛』一行 香港電影金像奨にて                
(右)姜文(チアン・ウェン)&周韵(チョウ・ユン)夫妻 香港電影金像奨にて
『さらば復讐の狼たちよ(讓子彈飛)』は今年の、第31回香港電影金像奨で、10部門もノミネートされていたが、張叔平(ウイリアム・チャン)が最優秀衣装デザイン賞を受賞しただけ。姜文自身は、作品、監督、脚本、主演、編集の五部門でノミネートされていたが、結局どれも取れなかったので、とても残念。

姜文(チァン・ウェン)金像奨にて
1992年に姜文が中国映画祭のゲストで来日した時、レセプションパーティで「周潤發がぜひあなたと共演したいと語っているけど、どう思いますか?」と質問したら、 姜文は「もちろん共演したい。英雄を描いた作品がいい」と答えていた。20年たって、それが実現した。
シネマジャーナル22号(1992年)掲載
HPでも掲載しています。「姜文ってお茶目」というタイトル。
http://www.cinemajournal.net/bn/22/jiangwen.html

他にも姜文関連の記事は、シネマジャーナルでは多数掲載されています。
良かったらこちらにアクセスしてみてください。

(暁)

2010年/中国/カラー/132分/
配給 ファントム・フィルム

★7月6日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー

8月4日から2週間の予定でシネマート六本木で上映されます。
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/lineup/20120727_9819.html

公式 HP >>

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崖っぷちの男(原題:MAN ON A LEDGE)

監督:アスガー・レス
脚本:パブロ・F・フェニベス
撮影:ポール・キャメロン
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:サム・ワーシントン(ニック・キャシディ)、エリザベス・バンクス(リディア・マーサー)、ジェイミー・ベル(ジョーイ・キャシディ)、アンソニー・マッキー(マイク・アッカーマン)、エド・バーンズ(ジャック・ドハーティ)、エド・ハリス(デイヴィッド・イングランダー)

なぜ、ここに…?
いま、起死回生のショータイムがはじまる。
ニューヨークの高層ホテルの窓枠に乗り、今しも飛び降りそうな男がいる。ニック・キャシディ、ニューヨーク市警の元警察官だったが、30億円相当のダイヤを横領したとして収監されていた。警察がやってくると、彼は交渉人として女性刑事リディアを指名する。彼女は窓越しに対話するが、うまくかわされてなかなか身元を掴むことができない。ニックは周到な計画のもと、自殺騒ぎを起こして観衆と警察をひきつける役目を負っていたのだ。

高いところが苦手な人には酷なシーンがいっぱいです。足がぞわぞわするのをこらえて展開に見入ってしまいました。なぜ? という疑問を少しずつときながら、内と外、上と下でドラマが進んでいきます。アスガー・レス監督の前作は、スラムを支配するギャングのドキュメンタリーだったそうです。好評を博してこの作品でめでたく長編劇映画デビューとなりました。主役のサム・ワーシントンは『アバター』で一躍世界中に知られるようになった後、『タイタンの戦い』『キリング・フィールズ 失踪地帯』『恋と愛との測り方』と主演作が続いています。ぱっと見た感じは地味ですが、こう人のほうがどんな役柄もいけて長く残るのかも。(白)

2011年/アメリカ/カラー/ 102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©2011 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

★7月7日(土)丸の内ルーブル他全国ロードショー!

公式 HP >> http://disney-studio.jp/movies/gakeppuchi/

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クーリエ 過去を運ぶ男(原題:THE COURIER)

監督:ハニ・アブ・アサド
脚本:ピート・ドリス、ブラノン・クームズ
撮影:アントニオ・カルヴァッシュ
音楽:ニマ・ファクララ
出演:ジェフリー・ディーン・モーガン(クーリエ)、ジョシー・ホー(アナ)、ティル・シュヴァイガー(FBI捜査官リスビー)、リリ・テイラー(ミセス・カポ)、ミゲル・ファーラー(ミスター・カポ)、ミッキー・ローク(マックスウェル)

クーリエ(運びや)とだけ呼ばれる男は、預かり物の中味を詮索せず、確実に指定された場所と時間に届ける仕事をこなしている。その手腕を見込まれて、行方知れずの男へ鍵のかかった鞄を運ぶことになった。期限は60時間。わかっているのは“イーヴル・シヴル”という名前だけ。クーリエはまず、その正体も居場所もわからない男の手がかりを探すことから始めた。


©2011 COURIER PRODUCTIONS, LLC

ジェフリー・ディーン・モーガンの濃い顔には見覚えがありました。『ウォッチメン』で主要人物のコメディアン役。ロバート・ダウニー・jrにちょっと似ていませんか? 記憶をなくしている男という設定で、なぜかとても腕がたちます。そのへんで深読みしたくなりますが、次々と周りの関係者が死んでいくのでそんなヒマはありません。この危険な運びや稼業に巻き込まれたのは、香港映画ファンにはお馴染みのジョシー・ホー。ミシェル・ヨーと同じく「姐さん」と呼びたい雰囲気のある人です。マカオのカジノ王の娘だというのは知っていましたが、この作品の資料で「カナダ陸軍士官学校を卒業し、陸軍中尉の称号を持つ」というのを初めて知りました! この二人はもちろん活躍しますが、出番短いながらインパクトあるカポ夫妻に注目~。(白)

2011年/イギリス/カラー/95分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活

★7月7日(土) 銀座シネパトスほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.courier-movie.jp/

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ユナイテッド ミュンヘンの悲劇

監督:ジェームズ・ストロング
脚本:クリス・チブナル
撮影:クリストファー・ロス
美術監督:エドワード・トーマス
音楽:クリント・マンセル
出演:デヴィッド・テナント(ジミー・マーフィー)、ダグレイ・スコット(マット・バスビー)、ジャック・オコンネル(ボビー・チャールトン)、サム・クラフリン(ダンカン・エドワーズ)

1956年。マンチェスター・ユナイテッド(以下MU)に在籍しているが、まだ試合に出場できないボビー・チャールトン。バスビー監督やコーチのジミー・マーフィーの指導に従って黙々と練習を続けていた。ようやく巡ってきたチャンスに、ボビーは貴重なゴールを決めてレギュラーを勝ち取ることができた。
1958年2月。きつい日程の中、MUはヨーロッパ遠征でも着々と成果を収めていた。リーグ戦に間に合うよう帰国するため飛行機をチャーターしたが、悪天候のミュンヘンの空港で離陸に失敗、墜落炎上した。乗員乗客44名のうち23名が死亡する惨事となった。MUも関係者3名、主力メンバー8名を失い、バスビー監督は重傷を負う。
この大惨事にクラブはもはや存続不能かと思われたが、バスビー監督に代わって指揮をとるジミー・マーフィーを中心に、再起へ向けてチーム作りが始まった。ショックのあまり、ボールにさわることもできなかったボビーも1ヵ月後チームに復帰する。

実際にあった悲劇を入念にリサーチし、良い俳優を得て劇映画化したものです。名門MUにこんなことがあったんですね。映画はまず事故直後のシーンから始まり、前にさかのぼります。10~20代の若い選手たちがあまりにも明るく、まぶしく、その後暗転してしまう運命の惨さを感じずにいられません。チームとドラマの牽引役となるコーチ、ジミーを演じるのはデヴィッド・テナント。イギリスの人気テレビ番組「ドクター・フー」の10代目ドクター。ジェームズ・ストロング監督はこのシリーズ7話を演出、脚本のクリス・チブナルも「ドクター・フー」つながりなので、チームワークがいいのでしょう。
20歳で事故に遭い、心身ともに傷つきながらチームの主力へと成長するボビー役のジャック・オコンネルは、『THIS IS ENGLAND』('06)にも出ています。私も観ているのですが、主役の少年以外記憶にありません。気になる俳優さんにプラス。(白)

2010年/イギリス/カラー/94分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ゴー・シネマ
©World Productions(United) Limited MMX1

★7月7日(土)より、シアター N 渋谷、新宿 K's cinema ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.united-movie.com/

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プリンセス・カイウラニ(原題:PRINCESS KA'IULANI)

監督:マーク・フォービー
脚本:マーク・フォービー
撮影:ガブリエル・ベルスタイン 衣装:ケイトリン・モリソン 音楽:スティーヴン・ウォーベック
出演:クオリアンカ・キルヒャー(カイウラニ王女)、バリー・ペッパー(ローリン・サーストン)、ウィル・パットン(サンフォード・B・ドール)、ショーン・エヴァンス(クライヴ・ディヴィーズ)、ジミー・ユィール(アーチー)

1889年。ホノルルのイオラニ宮殿に初めて電気が点いた夜、反王政派が反乱を起こした。騒ぎの中、ハワイを脱出したカイウラニ王女は、実父アーチボルトとともにイギリスに向かう。カイウラニ王女を迎え入れたのは、父親の旧友テオ・デイヴィーズとその家族だった・・・。


写真コピーライト

去年暮れからハワイ関連の作品が続いている。『ワンヴォィス~ハワイの心を歌にのせて~/ハワイ語を禁止された背景』『マイティ・ウクレレ/ウクレレの音色が気に入った王様がハワイのコア材を使ってウクレレを地場産業にした』『ファミリー・ツリー/遺産としてハワイの地を受け継いだ王族末裔が主人公』『ソウル・サーファー/ハワイ=波乗り=サメに襲われる=家族の力』とこんなにハワイ関連が続いて観たのは初めて。それらの作品に「ハワイの誇り」を感じた。
このカイウラニ姫は短い一生だったが、ハワイの方々には今も王女の精神が息づいているように思う。

★カイウラニの一生
  • 1875年にカラカウア王の妹リケリケ王女とスコットランド出身のアーチボルド・クレゴーンの娘として生まれる。
  • 生まれてすぐカラカウア家の養女となる、プリンセスとして養育される。
  • 13歳から英国へ留学。
  • カラカウア王が死去。王位継承者の1位に指名される。
  • その後は政変が続き、ついにハワイ王朝崩壊の知らせを受けて、カイウラニは王政復古を実現させようと努力するが、米国に併合されてしまう。
  • 23歳という若さでこの世を去った。
  • 日本との縁も深く、カラカウア王が明治天皇にカイウラニと日本の山階宮との縁談を持ちかけたが、カイウラニは5歳だったのでその話は進まなかった。

今までハワイ作品を観てきた私にとって、この作品には「特別な思い」なしでは観られなかった。
(美)

2010年/アメリカ/カラー/98分/ドルビーデジタル
配給:アニープラネット

★7月7日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.princess-eiga.com/

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グスコーブドリの伝記

監督:杉井ギサブロー
脚本:杉井ギサブロー
キャラクター原案:ますむら・ひろし
アニメーション監督:前田庸生
音楽:小松亮太
声の出演:小栗旬(グスコー・ブドリ)、忽那汐里(妹のグスコー・ネリ)、佐々木蔵之介(コトリ)、柄本明(クーボー博士)

イーハトーヴ森の木コリの息子として両親と妹と穏やかに暮らしていたグスコー・ブドリは、森を襲った冷害のため家族を失くし、一人ぼっちになってしまう。
だが、ブドリは一生懸命学び、やがて火山局に勤めるまでに成長する。
そこに再び大きな冷害が襲うが、ブドリは幼いころ経験した悲劇を食い止めようと決心して、ある行動に出る。

宮沢賢治が1932年に発表した童話を、『銀河鉄道の夜』も手がけた杉井ギザブロー監督がアニメーション映画化した作品。
最高のアニメだった!有名な宮沢賢治の原作だが内容はあまり知らなかった。作画、構図、色合い(ブドリの顔がムラサキ!)、音楽、声優さん(佐々木内蔵助◎)すべてに満足した。
柄本明のしわがれ声も飄々としていて、ブドリの若々しい声との調和が心地好かった。
ただ最後ブドリが温度をあげて民を救うシーンは省いてあったので疑問に感じた。原作では火山に身を投げるのではなかったかと思うが…。原作を読んでみたくなった。
(美)

2012年/日本/カラー108分
配給:ワーナー・ブラザーズ映画

★7月7日より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://wwws.warnerbros.co.jp/budori/

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特集上映『昭和の銀幕に輝くヒロイン 第65弾 酒井和歌子』

60年代の東宝青春映画を支えた清純派スター、団塊世代のアイドル酒井和歌子の特集です。
ワコちゃんの愛称で親しまれ、今もなおテレビや舞台などで活躍している女優「酒井和歌子」の魅力が全開の10作品を上映。背景の町並も懐かしく胸いっぱいになりそうな予感。(白)

開催期間:2012年7月8日(日)~9月15日(土) 連日10:30より1回のみ上映
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷
上映作品:『でっかい太陽』/『空想天国』
     『兄貴の恋人』/『街に泉があった』
     『フレッシュマン若大将』/『恋にめざめる頃』
     『二人の恋人』/『俺たちの荒野』
     『悪魔が呼んでいる』/『百万人の大合唱』

入場料金:一般…1,200円
     シニア・学生…1,000円
     会員…800円
     ※水曜サービスデー…一般1,000円

ラピュタ阿佐ケ谷 公式 HP >> http://www.laputa-jp.com/

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モバイルハウスのつくりかた

監督・撮影・編集:本田孝義
出演:坂口恭平、鈴木正三、船越ロビンソン、隈研吾、磯部涼

建てない建築家だった坂口恭平氏が初めて家を作ることになった。多摩川の河川敷に住んでいる「ロビンソンさん」の指導のもと、今まで見てきた手作りの家のエキスが詰まった可動式のコンパクトな家の設計をする。材料は誰でも手に入れられるようにホームセンターで揃え、大きな車輪も入れて26,000円也。水道やトイレは外部のものを利用するため設置しない。手作りが好きな人がこれを観ると、きっと自分でもやってみたくなるはず。


このドキュメンタリーを観た後、それまで知らなかった坂口さんに俄然興味が湧きました。「TOKYO 0円ハウス 0円生活」「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」など何冊もあった著書を読んで、目からウロコがぽろぽろと落ちました。ものの考え方がとても自由で、行動的。人との間の垣根もとても低いのです。きっと誰とでも話せる人なのでしょう。路上生活をする鈴木さん、ロビンソンさんも登場します。この方々も心が柔らかくて、今の自分の生活を楽しんでいます。震災後、郷里の熊本に移った坂口さんは「ゼロセンター」を作り、避難所に多くの人を迎え入れました。「新政府」も樹立して新たな活動も続けています。目が離せません。(白)

2011年/日本/カラー/98分/HD
配給:戸山創作所=スリーピン

★6月30日(土)より渋谷ユーロスペース、ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.mobilehouse-movie.com/

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Beyond the ONEDAY ~Story of 2PM & 2AM~

監督:大道省一
製作:新坂純一 北川直樹
出演:2PM+2AM ‘Oneday’

野獣アイドルと呼ばれる“魅せる”6人―2PMとK-POP史上最高のヴォーカルグループといわれる“聴かせる”4人―2AM。アジア音楽界の最前線に立つ2つのグループが、2PM+2AM ‘Oneday’となって新たな挑戦へ向かう。その一歩を踏み出した瞬間を追った密着ドキュメント。

もともと同じオーディションで誕生した2PMと2AM。互いのことを認め合う2つのグループが韓国を飛び出し今、日本で人気を集めている。その姿は、謙虚だが野心にあふれていた。日本でのライブでの裏側や東京の街を楽しむメンバーの姿はファン必見。彼らの曲を知らない人でも1曲まるまるライブ映像が使われていたりするので楽しめると思う。(明)

2012年/日本/カラー/107分/ビスタサイズ
配給:東宝映像事業部
©2012「Beyond the ONEDAY」製作委員会

★6月30日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.oneday-movie.jp/

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ラム・ダイアリー(原題:THE RUM DIARY)

監督:ブルース・ロビンソン
原作:ハンター・S・トンプソン「ラム・ダイアリー」(朝日新聞出版刊)
脚本:ブルース・ロビンソン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:クリストファー・ヤング
出演:ジョニー・デップ(ポール・ケンプ)、アーロン・エッカート(サンダーソン)、マイケル・リスポリ(ボブ・サーラ)、アンバー・ハード(シュノー)、リチャード・ジェンキンス(ロッターマン)、ジョヴァンニ・リビシ(モバーグ)

最低な毎日は“最高”だ。
1960年、ニューヨークの生活に疲れたポール・ケンプは、カリブ海に浮かぶ島プエルトリコの新聞社に勤め始める。風変わりな同僚とラム酒漬けの記者生活は心地よく、すぐに馴染んでいった。アメリカ人実業家のサンダーソンと婚約者シュノーに出会ったポールは、奔放で美しいシュノーの魅力に惹かれていく。野心家のサンダーソンにはこの楽園での大きな計画があり、ポールは同僚のボブを誘ってそれを暴こうとする。

このところコスプレっぽい役柄が続いたジョニー・デップが、素顔で勝負。親友であり敬愛するジャーナリストだった故ハンター・S・トンプソンを演じます。デップがトンプソンの自宅を訪ねた折にこの原稿を見つけ、ふたは出版と映画化を相談したそうです。本は1998年に刊行されましたが、2005年にトンプソンは亡くなり、この映画を見ることは叶いませんでした。
ジョニー・デップは自ら企画・製作し、主演をノリノリでつとめています。南国の日差しにも負けない美貌のアンバー・ハードにも注目。(白)

2011年/アメリカ/カラー/120分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2010 GK Films, LLC. All Rights Reserved.

★6月30日(土)、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

公式 HP >> http://rum-diary.jp/

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プレイ‐獲物‐(原題:La proie)

監督:エリック・ヴァレット
脚本:リュック・ボッシ、ローラン・ターナー
撮影:ヴァンサン・マチアス
音楽:ノーコ
出演:アルベール・デュポンテル(フランク・アドリアン)、ステファーヌ・デバク(ジャン・ルイ・モレル)、セルジ・ロペス(マニュエル・カレガ)、ナターシャ・レニエ(クリスティーヌ)

銀行強盗で服役中のフランクは、仲間たちから奪った大金のありかを白状しろと脅されている。毎日をやり過ごす力になっていたのは、愛する妻と一人娘のアメリ。短い面会だけでなく、元どおり家族で暮らせる日々を待ちわびていた。同房のモレルが先に出所することになり、フランクは穏やかな彼を信じて妻子の連絡先を伝える。しかしその後フランクを訪ねてきたマヌエルという男から、知らなかったモレルの一面を教えられて、にわかに不安になった。モレルが冤罪だと主張していた「未成年者への暴行」は本当だったのか!? 妻と連絡が取れないフランクは脱獄を決意する。

主演のアルベール・デュポンテルといえば、『PARIS』や『地上5センチの恋心』。後者ではカトリーヌ・フロに惚れられる人気ロマンス作家でした。こんなに走り回り、ハードなアクションもやってのけるとは驚きです。これがまた香港映画か?というくらい不死身!妻子とモレルの行方を追い、脱獄者として警察に追われるフランク。おまけにモレルの犯した罪の濡れ衣までかぶってしまいます。その間にもモレルの異常犯罪は止まず、とハラハラの連続。タイトルのプレイは“獲物=prey”で、“play”ではありません。(白)

2010年/フランス/カラー/104分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エプコット
©2011/BRIO FILMS-STUDIOCANAL-TF1 FILMS PRODUCTIONS-Tous Droits Reserves

★6月30日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次ロードショーほか

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/prey/

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少年は残酷な弓を射る(原題:WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN)

監督:リン・ラムジー
原作:ライオネル・シュライバー「少年は残酷な弓を射る」(イースト・プレス刊)
脚本:リン・ラムジー、ローリー・スチュワート・キニア
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ティルダ・スウィントン(エヴァ)、ジョン・C・ライリー(フランクリン)、エズラ・ミラー(ケヴィン)

作家のエヴァは、夫フランクリンと二人の生活を満喫し、仕事にも打ち込んでいたが、予定外の妊娠をする。息子ケヴィンは、エヴァの気持ちを見抜いているかのようにすこしも懐かなかった。言葉もオムツが外れるのも遅く、エヴァは手を焼くが、夫は楽観的だった。息子の敵意は母親にだけ向けられていた。やがて娘が生まれ、ケヴィンも美しく聡明な少年に成長するが…。

子どもができてもすぐ親になれるわけではない、産んだからといって誰もが愛せるとは限らない、と突きつけられた気がします。親にいろんな都合はあっても、生まれてくる子どもは、ただただ抱きしめてくれる母親を求めているだけ。
ケヴィンを演じる子役たちを監督はどう演出したのか、みな演技くささがない。小さな子も母を脅かす目をするし、エズラ・ミラーには、相反した感情を包んだ表情がはっとするほど妖艶。日常も望みもなくしてしまったエヴァ、ティルダ・スウィントンの演技に惹きつけられ、苦い物語をなんとか飲み込みました。英国のオレンジ賞を受賞した原作(ライオネル・シュライバー著)の邦訳本が映画公開にあわせ、イースト・プレス社より刊行。(白)

2011年/イギリス/カラー/112分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス
©UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010

★6月30日(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公式 HP >> http://shonen-yumi.com/

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ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して(原題:THE BIG YEAR)

監督:デヴィッド・フランケル
製作総指揮:ベン・スティラー
原作:マーク・オブマシック「ザ・ビッグイヤー」(アスペクト刊)
脚本:ハワード・フランクリン
音楽:セオドア・シャピロ
出演:ジャック・ブラック(ブラッド・ハリス)、オーウェン・ウィルソン(ケニー・ボスティック)、スティーヴ・マーティン(スチュ・プライスラー)、ブライアン・デネヒー、アンジェリカ・ヒューストン

大人げないオトナたちが見つけた、小さな幸せ。
バードウォッチング愛好家の大きなイベント、“ザ・ビッグイヤー”が近づいた。1年間、北アメリカのすみずみまで駆け回って野鳥と遭遇した数を競う大会だ。1種類でも多く、と血眼になる3人。いまだ親掛かりで恋人もいないブラッド、早く引退して自分の好きなことがしたいスチュ、タイトルを失わないために家庭をかえりみず、離婚を繰り返しているケニー。三者三様の理由でイベントに参加した3人の1年は・・・。

バードウォッチャーは日本でも多いと思うけれど、こんな大会はあるのでしょうか? バーダーと呼ばれるアメリカの鳥愛好家たちは、日常生活をなげうってあの広いひろいアメリカ大陸を「希少種が現れた!」と言っては大移動するのです。それに費やすお金も時間も膨大なもの。原作は実際に参加したジャーナリストのルポルタージュだそうです。コメディ映画では定評のある主役の3人が、ぴったりのキャラを得て活躍しています。ワンマン映画よりも3人のテンション低めのせいか好き嫌いなしに観やすくなっています。脇の配役もぜいたくで、映画2,3本作れそう。野鳥の現れる背景の自然がすばらしく、思わず旅に出たくなりました。(白)
*原作本は「ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲(ラプソディー)」(朝倉和子・訳/アスペクト)として刊行されています。

2010年/アメリカ/カラー/100分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー
© 2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

★6月30日(土)より、シネマート新宿にてロードショー!ほか全国順次公開!

公式 HP >> http://video.foxjapan.com/shiawasenotori/

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死刑弁護人

監督:齊藤潤一 ナレーション:山本太郎

弁護士、安田好弘氏。撮影当時64歳。
「あさま山荘事件」「日航機ダッカハイジャック事件」「新宿西口バス放火事件」「オウム真理教事件」「和歌山毒カレー事件」「光市母子殺害事件」等々・・・ 本作は多くの名だたる死刑事件の裁判の弁護を担当している安田氏の生き様を追ったドキュメンタリー。
これら死刑事件に共通するのは、マスコミが騒ぎ立て、死刑以外にないだろうと私たちが思い込まされている極悪被告人ばかり。安田氏が弁護を引き受ける理由の一つは、引き受け手がいないこと。弁護士までもが、悪人扱いされかねないし、時間がかかる上に、金儲けになる裁判ではないから、誰も引き受けたがらない。それでも安田氏が挑むのは、凶悪犯罪の起こる原因をあぶり出し、同じ過ちを繰り返さないでほしいという思いがあるからなのだ。「生まれ育った環境が生む歪みを無視し、加害者を断罪することが、事件の解決と言えるのか」と安田氏は静かに語る。

安田氏の語り口は朴訥としていて、テレビドラマや映画の弁護人がややもすると口角泡飛ばして弁舌を奮うのとは対照的。だからこそ、説得力がある。中でも、「和歌山毒カレー事件」の林眞須美被告に関しては、林がカレーに何かをいれた姿をカーテン越しに見ていたという証言者の部屋から、実際にはぼんやりとしか人の姿が見えないことを立証。さらに、「夫婦で詐欺をはたらいて豪華な生活をしていたのですから、一銭の得にもならないことをやるはずがないです」と断言。林眞須美は無罪だと納得させられた。まさにこれぞ弁護人!と感心した次第。もっとも私の知人の弁護士たちは、飛鳥で世界一周したり、シルクロードの国々をくまなく旅したりと優雅な暮らしをしているけれど、発言には説得力があって、いつもなんだか納得させられる(丸め込まれる?)。清貧な弁護士だから有能だというわけでもない。1週間に1度しか自宅に帰らずに書類が山積みになった狭い部屋で多くの担当案件を検証し続ける安田氏の姿に、同じ弁護士といっても、暮らしぶりがずいぶんと違うなぁと。ちゃんと報いてあげてほしいと思ってしまった。(咲)

2012年/97分/HD/16:9/日本/ドキュメンタリー
製作・著作・配給: 東海テレビ放送
配給協力:東風

★2012年6月30日(土)より、ポレポレ東中野・名古屋シネマテークにてロードショー

公式 HP >> http://shikeibengonin.jp/

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クレイジーホース★パリ 夜の宝石たち(原題:CRAZY HORSE)

監督・音響・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:フィリップ・ドゥクフエ、クレイジーホースダンサー

1951年にアラン・ベルナルダンによって設立された、パリのキャバレー「クレイジーホース」。
女性ダンサーたちの完璧で魅惑的な肉体と、計算しつくされた音と光の演出で、ジャン=ポール・ゴルチエ、スティーヴン・スピルバーグら世界中のアーティストたちをも虜にしている、「クレイジーホース」のエンターテインメントショーに密着したドキュメンタリー映画。
ショーそのものはもちろんのこと、リハーサルやオーディションなど舞台裏にも70日間に渡りカメラを回し続けた監督は、ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。

女性の肉体をスクリーンに見立てて光で表現する様がなんとも美しく、幻想的で、衝撃的でもありました。 美しいダンサーたちの自信に満ち溢れているプロフェッショナルなパフォーマンスは必見。 こんな素晴らしいショーが毎夜パリで繰り広げられているなんて、パリに旅する予定のある方には、是非とも足を運んでいただきたいです。 ただ、ナレーションやテロップを使用しない監督のこだわりがあるので、舞台裏でのスタッフの役割が少々わかりづらいのが難点(だからこそ自分もその場にいるような感覚に陥ることができるのですが)。 よりわかったほうが、個々の側からのこだわりが理解できると思うので、公式サイトなどで少し知識を得てからこの作品を観たほうがより楽しめると思います。 (裕)

2011/フランス・アメリカ/35mm/カラー/ビスタサイズ/SRD/134分
配給:ショウゲート
後援:フランス大使館、フランス観光開発機構、ユニフランス・フィルムズ

★ 6月30日(土)より、Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://crazyhorse-movie.jp/

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第9回東京平和映画祭

開催日程:2012年7月1日(日) 9:30開場、10:00開演 20:10終了予定
会 場:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟大ホール(758席)
    渋谷区代々木神園町3-1
    <アクセス>小田急線参宮橋駅下車徒歩7分

◆上映作品:
『The Story of stuff』
 脚本・監督・主演:アニー・レオナルド 2007年/アメリカ/22分
『放射性廃棄物 ?終わらない悪夢?』
 監督:エリック・ゲレ 2009年/フランス/92分
『friends after 3.11』
 監督:岩井俊二 2012年/日本/135分
『フクシマの嘘』
 レポート:ヨハネス・ハーノ 制作:ZDFドイツテレビ 2012年/ドイツ/29分

◆トークショー:松井英介氏、上杉隆氏、佐藤潤一氏、藤波心氏

◆参加方法:東京ピースフィルム倶楽部への会員登録(無料)の上、スライディングスケール(それぞれのご事情とお気持ちで1600円~4800円)の参加費をお振り込み下さい(高校生以下は無料)。
登録、参加申し込み:公式サイトから
   http://www.peacefilm.net/joinus/index.html

主催:東京ピースフィルム倶楽部

公式 HP >> http://www.peacefilm.net/

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20th アニバーサリー フランス映画祭

期日:2012年6月21日(木)~24日(日)
会場:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇

上映作品:
◎『最強のふたり』エリック・トレダノ監督
昨年の東京国際映画祭でサクラグランプリ、主演男優賞(二人がW受賞)を受賞。心が温まって元気の出る作品。
2012年9月1日より、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開
c2011 SPLENDIDO / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / TEN FILMS / CHAOCORP

◎『わたしたちの宣戦布告』ヴァレリー・ドンゼッリ監督
ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイムが我が子の難病に立ち向かった実話を元に本人主演で製作。
2012年9月、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開

◎『A HAPPY EVENT(仮)』
レミ・ブザンソン監督
ルイーズ・ブルゴワン主演で、妊娠と出産を女性の本音でリアルに描く。
2012年冬公開予定

◎『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』フィリップ・グランドリュー監督
1960年代に鮮烈な映像を送り出し、やがて革命に身を投じた足立正生を被写体にしたドキュメンタリー。
2012年夏、アップリンクにて公開

◎『プレイヤー』
『アーティスト』で世界中を虜にしたジャン・デュジャルダンがセクシーに魅せる、オトナの恋愛ゲーム。
6月23日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

◎『リヴィッド』ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督
デビュー作『屋敷女』でフレンチ・ホラー・ブームの火付け役となった二人の2作目。ファンタスティック・ホラー。
2012年9月8日よりシアターN渋谷ほか全国順次公開

◎『そして友よ、静かに死ね』オリヴィエ・マルシャル監督
実在したギャング、エドモン・ヴィダルの友情と裏切りの半生。ジェラール・ランヴァン、チェッキー・カリョ、ダニエル・デュヴァルら渋いオジ様勢揃いのサスペンス・ドラマ。
2012年9月 銀座テアトルシネマ他全国ロードショー

◎『ミステリーズ・オブ・リスボン』ラウル・ルイス監督
19世紀ポルトガルの人気小説を名匠ラウル・ルイスが完全映画化。孤児院で育った少年ジョアンが、自分の出自を探っていく愛と真実についての267分。
今秋、シネスイッチ銀座ほか全国公開

◎『スリープレス・ナイト』フレデリック・ジャルダン監督
『ラルゴ・ウィンチ』でダンディなアクション・スターとして登場したトメル・シスレーが今度は拉致された一人息子を取り返すために一人奮闘するノンストップアクション。ハリウッドでのリメイクも決定。
2012年9月ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

◎『愛について、ある土曜日の面会室』レア・フェネール監督
刑務所の面会室に集まる人々は、いくつもの物語を抱えている。それぞれのこれまでの旅路を描いたドラマ。
2012年冬、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

◎『アーネストとセレスティーヌ』パンジャマン・レネール監督ほか
大きなクマのアーネストと小さなネズミのセレスティーヌが、周囲の無理解にめげず友情を育んでいくストーリー。やわらかな水彩画風のアニメーション。お子様もぜひ一緒に。
公開未定

◎短編(6作品96分)
『ビンぞこメガネ』『宇宙からの巨大怪物の襲撃』『踏切警手』『人間運送』『ラスト・ワゴン』『近日公開』

スケジュール、チケットなど詳細は公式HPへ
http://unifrance.jp/festival/2012/

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ネイビー・シールズ(原題:ACT OF VALOR)

監督:マイク・マッコイ、スコット・ワウ
脚本:カート・ジョンスタッド
撮影:シェーン・ハールパット
出演:ローク、マイキー、デイブ、エイジェイ、サニー、レイ、ダンカン・スミシ、ワイミー、マラー

医師を装ってコスタリカに潜入していたCIAの女性エージェントが拉致される。 直ちに<NAVY SEALS>のチーム7に出動命令がかかり、隊員たちは敵のアジトを襲撃して、見事に奪還に成功した。
しかし、誘拐犯の携帯電話から、イスラム系テロリストによる全世界規模のテロ計画が割り出され、彼らに再び指令が出される。そんな中、大尉であるロークは妻のはじめての出産が控えていたが、戦闘の地へ身を投じるのだった・・・。

ウサマ・ビン・ラディン暗殺を遂行したことで、全世界にその実力を見せつけた<NAVY SEALS>は、米国海軍に所属するわずか0.5%の精鋭で構成されている。
韓国でも精鋭が集まる海兵隊のなかで、その更に1%しか入隊できない海兵隊特殊捜索隊に初めて配属された女性下士官の姿を描いた『大韓民国1%』という映画があった。
私の戦争映画のベストNo.3の作品は1位『ボーフォート~レバノンからの撤退~』、2位『5デイズ』、3位がこの『ネイビー・シールズ』だ。この3作品のメイキングがあればどこへでも出かけていって観たいくらいだ。
それに本物兵士の「俳優づら(顔)」にはタマゲタ!「あんたたち、本当は俳優なんでしょ?様にはもちろんなってるが、そんなに顔の良い兵士さんばかり?」と聞いてみたくなるくらい「いい男揃い」なのだ。次々とハリウッドから声がかからなかったのかなぁ。
どこまで真実戦闘映像か映画かわからないので「本物兵士たち、本当に死んじゃったの」と心配になって来た。(まさか!とはおもいつつ本当に心配している・・・)
(美)

2012年/アメリカ/カラー/110分/ドルビーデジタル
配給:ギャガ GAGA★

★6月22日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー公開

公式 HP >> http://navyseals.gaga.ne.jp/official/

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フィリップ・ガレル 愛の名作集 ~正統派ロマンチシズム - いま輝く珠玉のフランス映画~

『愛の残像』『灼熱の肌』連続公開

愛の誕生と喪失を描き続ける孤高の作家フィリップ・ガレル。16歳から映画を作り始め、70年代にはアンディ・ウォーホルのミューズでありヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫だったニコと運命的に結ばれ、実験的な映画7本を二人で生み出している。
ニコはアラン・ドロン、ブライアン・ジョーンズ、ボブ・ディラン、ジム・モリソンたちと浮き名を流すが、後に「本当に愛したのはフィリップ・ガレルただ一人」と語っている。ガレルは形式主義に陥ることなく映画というアートを探求し続け、ジーン・セバーグ、アンヌ・ヴィアゼムスキー、ジャン=ピエール・レオー、カトリーヌ・ドヌーヴなど数々の名優たちとコラボレーション。79年にニコと破局し別々に暮らしていたが、91年、ニコの突然の死をテーマに描いた『ギターはもう聞こえない』がベネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝く。続いてベネチアで2001年には『白と黒の恋人たち』が国際批評家連盟賞、2005年には『恋人たちの失われた革命』が銀獅子賞とオゼッラ賞を受賞している。
このたび、「フィリップ・ガレル 愛の名作集」として、最新作『愛の残像』と『灼熱の肌』の2本が連続して公開される。


愛の残像(原題:La Frontière de l'aube)

監督:フィリップ・ガレル 
脚本:フィリップ・ガレル、マルク・ショロデンコ、アルレット・ラングマン
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー
出演:ルイ・ガレル、ローラ・スメット、クレマンティーヌ・ポワダツ

パリ。若い写真家フランソワは撮影の仕事で女優キャロルと出会い激しい恋に落ちる。が、キャロルは人妻。夫が出張先のアメリカから帰ってきたことにより、ほどなく破局を迎える。キャロルは次第に狂気にとらわれ自ら命を絶ってしまう。1年後、フランソワは付き合っていたエヴという女性から妊娠を告げられ、結婚の約束もするが、突然キャロルの姿が彼の前に現れるようになる・・・

モノクロームの映像が、一時代前の雰囲気をかもしだしているけれど、時代は今。
現実と幻想が交錯して戸惑うフランソワの姿に、こちらもクラクラ。これほどまでに狂おしく激しい愛があるだろうか・・・ いやいや、愛なんて、そもそもが幻想。愛に生きるフランス人をしっかり感じた。(咲)

フランス・イタリア・スイス/2011年/95分/カラ―/シネマスコープ/デジタル/ドルビーSRD 
配給: ビターズ・エンド/コムストック・グループ

★2012年6月23日(土)シアターイメージフォーラム他にて公開

灼熱の肌(原題:Un été brûlant)

監督:フィリップ・ガレル 
脚本:フィリップ・ガレル、マルク・ショロデンコ、カロリーヌ・ドリュアス=ガレル
撮影:ウィリー・クラン 音楽:ジョン・ケイル
出演:モニカ・ベルッチ、ルイ・ガレル、モーリス・ガレル、セリーヌ・サレット、ジェローム・ロバール、モーリス・ガレル

フランスでの映画の撮影中、端役どうしで恋人となったポールとエリザベート。ポールはローマに住む友人の画家フレデリックのところへエリザベートを伴って訪れる。フレデリックの妻アンジェラは美貌を誇る女優。深く愛し合う二人だが、ポールとエリザベートが同居したことにより、少しずつ関係が崩れていく・・・

ガレル監督の息子ルイ・ガレルが奔放な画家フレデリックを好演。監督の父で個性派俳優のモーリス・ガレルもフレデリックの祖父役で出演している。
男の友情も大切にしたいフレデリックと、自分だけを見ていてほしいアンジェラ・・・ 
気持ちの擦れ違いが生み出す嫉妬。愛されることを望むより愛するほうが、ほんとは楽なのになぁと思った。(咲)

2008年/フランス/108分/モノクロ  ※デジタル上映
配給:ビターズ・エンド 配給

★2012年7月21日(土)シアターイメージフォーラム他にて公開

公式 HP >> http://bitters.co.jp/garrel-ai/

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ベルセルク 黄金時代篇 II ドルドレイ攻略

監督:窪岡俊之
原作:三浦建太郎
アニメーション制作:STUDIO4℃
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之
音楽:鷺巣詩郎
声の出演:岩永洋昭(ガッツ)、櫻井孝宏(グリフィス)、行成とあ(キャスカ)、梶裕貴(ジュドー)、寿美菜子(リッケルト)、矢尾一樹(ガストン)、豊崎愛生(シャルロット)ほか

戦闘のプロの傭兵集団「鷹の団」を率いるグリフィスは、一匹狼だったガッツを入団させ大きな戦力とした。数々の戦闘で勝利を収め、グリフィスと鷹の団はミッドランド王国に招かれる。敵対するチューダー帝国との最終決戦を迎えていたミッドランドは、難攻不落のドルドレイ要塞を前に苦戦していた。グリフィスは鷹の団だけで出陣すると王に進言する。

シリーズ第2弾。戦闘、戦闘、また戦闘の日々が続き、戦闘ゲームの様相です。アニメとはいえ、血しぶきは飛ぶわリアルだわ、なので苦手な女子はご注意ください。夢を追うグリフィスと対等の友でいたいガッツは袂を分かち、この最強コンビの友情と行く末が大いに気になります。そしてあの妖しいペンダントは・・・? すでに分割されて出ているテレビ版のDVDに手を伸ばしそうになりますが、次が出るまでお楽しみにしているところ。シリーズものって楽しみでもあり、気がかりでもあり。(白)

2012年/日本/カラー/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ワーナー
(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK

★6月23日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://www.berserkfilm.com/

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プレイヤー(原題:LES INFIDELES 英題:THE PLAYERS)

共同監督:ミシェル・アザナヴィシウス、フレッド・カヴァイエほか
原案:ジャン・デュジャルダン 出演:ジャン・デュジャルダン(フレッド/エリック)、ジル・ルルーシュ(グレッグ/ローラン)、ギョーム・カネ、サンドリーヌ・キベルラン、マチルダ・メイ、アレクサンドラ・ラミー

フレッドとグレッグは互いの浮気もカバーしあう親友。浮気は男の甲斐性とばかりに妻の目を盗んでナンパに精を出す毎日。パリの街中で、夢見たラスベガスで・・・ところが変わっても、浮気だけはやめられない男たちの生態を、さまざまなシチュエーションでコミカルに描き出す。

無声映画『アーティスト』で絶賛されたジャン・デュジャルダンが、今度は饒舌なプレイボーイ役。一続きの物語ではなく、ジャン・デュジャルダンとジル・ルルーシュは、エピソードごとに違う人物を演じていて最初混乱しました。2人ともえらく楽しそうに、そこまでサービスしなくても、と言いたくなるフルヌードまで披露していて目が丸くなりました。5人の監督に加えて主演の2人も最後のラスベガスのエピソードを監督。「男性1人が2人以上の女性と一緒に来場すれば全員1000円」という“プレイボーイ割引”も実施中(ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、銀座テアトルシネマ)だそうです。(白)

2012年/フランス/カラー/109分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ=コムストック・グループ
©2011 JD PROD, BLACK DYNAMITE FILMS, MARS FILMS, M6 FILMS, COOL INDUSTRIE

★6月23日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー!

公式 HP >> http://player-movie.jp/

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ワン・デイ 23年のラブストーリー(原題:One day)

監督:ロネ・シェルフィグ
脚本:デヴィッド・ニコルズ
撮影:ブノア・ドゥローム
音楽:レイチェル・ポートマン
出演:アン・ハサウェイ(エマ)、ジム・スタージェス(デクスター)、パトリシア・クラークソン(アリソン/デクスターの母)、ケン・ストット(スティーヴン/デクスターの父)

1988年7月15日、スコットランド。大学の卒業パーティではじめて会話を交わしたエマとデクスター。二人は、魅かれあうものを感じながらも「毎年、7月15日には連絡を取り合って会いましょう」と約束する。
エマは心の奥にデクスターへの想いを秘めて、親友として毎年「7月15日」に連絡を取り合っていた。一緒に旅行に行ったり、恋の悩みを相談したり、喧嘩をしたりで、それぞれの人生を歩んでいた。そんなある年の「7月15日」エマはデクスターから別の相手との結婚を知らされる・・・。

ここだけの話、地元の試写仲間でよくおしゃべりする男性の方が、涙を浮べていたので、これ「ロマンティックで純情な方向けぴったり作品!」とする。作品も丁寧に作られている。
七夕さんみたいに毎年一回だけ会うなんて私の性には合わないが、それを23年間やりながら、ずっと愛していたなんて、信じられない不純な私。
一年一回会うだけの相手だからこそ、気楽に隠し事なしで何でも打ち明けられる男の気持ちはわかる。
だが、エマの方は彼に比べればえらく深刻で、なんで「彼を想い続けられたのか」がわからないのだ。
本当に彼女がデクスターを愛していたなら、エマを真剣に愛しているイアン(同棲相手)を傷つけていたことになる。いかにも一途さをウリにしても、一方では傷つけている厚かましさが気にいらない!
現実的に、学校のクラス会なんかはこんな風に一年に一回ぐらいしか会わないけど「元彼と会えるから毎年行っている」という方はけっこういるはず。でも深刻ではなく人生のスパイス程度にしておかないと人生を本当に一緒に歩いていく人に失礼じゃないかな・・・。
※アン・ハサウェイは美しいが、美人を意識させない表情で登場していた。これはなかなか難しいことだ。
(美)

2011年/アメリカ/カラー/107分/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース

★6月23日TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://oneday.asmik-ace.co.jp/

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アタック・ザ・ブロック(原題:Attack the Block)

監督:ジョー・コーニッシュ
脚本:ジョー・コーニッシュ
撮影:トム・タウネンド
音楽:スティーブン・プライス
出演:ジョディ・ウィッテカー(サム)、ジョン・ボヤーガ(モーゼス)、アレックス・エスメイル(ペスト)、ニック・フロスト(ロン)、ルーク・トレッダウェイ(ブルース)、br/>

ここはイギリス・ロンドンの貧しい公営住宅。ここに住むモーゼス率いる悪ガキ集団は、たまたま出くわした女性サムから金を巻き上げようとする。
だがサムが襲われようとしたまさにその時、空から隕石らしきものが降って来た。なんと凶暴なエイリアンが現れ、彼らや街の人々を襲い始めたのだ。

この悪がきお兄ちゃんたちは一人歩きの女性からお金を巻き上げるなんて朝飯前の仕事。だが、話が進むにつれて、この悪がきが変わってくる・・・そこが見どころなんだけど、あれだけ公営住宅で騒がしくやっていて警察がなかなか出てこないのが不思議。
スピード感溢れる展開、音楽、カメラの位置などがとてもよくて最後ホロリとする。 若い俳優さんたちの個性的な顔立ちや一生懸命さが伝わってきた。これからがブレイクしそうな予感がする。
※実はこの作品、公開する前に2回観た。「あっ、この監督さん、恐怖、ゾンビ作品好きな方じゃないかな?」と感じた。それに追っかけたり、追っかけられたりのシーンが上手いのだ。だからそれ観たさに試写のおかわりをしてしまったのだ!
2回目、内容はさておき、監督の細部のこだわりが、「やっぱりこの手の好きな監督さん」と確信した。
監督さんは実際に,このご近所に住んでいて、不良たちに携帯や財布を盗られた経験から構想を練ったとか!「転んでもタダでは起きない」方だ。(美)

2011年/イギリス、フランス/カラー/88分/シネマスコープ
配給:アステア+パルコ

★6月23日(土)渋谷シネクイントほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://attacktheblock.jp/

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ブラック・ブレッド(原題:Pa negre)

監督:アグスティ・ビリアロンガ
脚本:アグスティ・ビリアロンガ
撮影:アントニオ・リエストラ
音楽:ホセ・マヌエル・パガン
出演:フランセスク・クルメ(アンドレウ)、マリナ・コマス(ヌリア)、ノラ・ナパス(フロレンシア)、 ルジェ・カザマジョ(ファリオル)、セルジ・ロペス(町長)

スペイン内戦の傷跡が痛ましく残るカタルーニャの山の中で、11歳の少年アンドレウは馬車もろとも谷底に落ちて血まみれになって倒れているディオニスとその息子クレットを見つける。クレットは「ピトルリウア・・・」という言葉をのこして死んでしまった。
ピトルリウアとは、村に伝わる「洞穴に住む羽をはやした怪物」の名前だった。 現場の状況から殺人と断定した警察は、アンドレウの父ファリオルに容疑をかける。鳥の鳴き声大会を開くために、死んだディオニスと共同で鳥を飼っている父だが、以前から政治的な活動により村人たちから快く思われていなかったために、捕まる前に姿を隠すことにした。
母は工場に働きに出ているため、アンドレウは祖母の家に預けられ身を寄せる。祖母の家には事故で左手を失った従妹のヌリアもいて、2人で新しい学校に通いはじめる。

人間関係がおどろおどろしている割には隠された驚愕部分は、なんてことない・・・なんて思ったのは私だけかもしれないが、サスペンス要素は期待しないで観てほしい。
内戦は終わってはいるが、田舎のことだからそのまま敵味方のしこりは当然のこっている。
少年の父ファリオルは左派だったので村八分にあっていて、この際とばかりに嫌疑をかけられるだろうと感じて身を隠したのだ。
でも馬車もろとも谷底に落ちて死んだのだから、どんな証拠があって犯人とされたのか台詞ではわからなかった。
それに男女の性描写や学校の中での先生、生徒の関係など驚くほど不道徳で開けっぴろげなのに、同性愛となると村一致でリンチ・・・左派なら罪をかぶせてしまおうとする横暴さと一致する。
(美)

2010年/スペイン、フランス/113分/デジタル/35mm
配給:アルシネテラン

★6月23日より銀座テアトルシネマ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/blackbread/

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ハングリー・ラビット(原題:SEEKING JUSTICE)

監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ロバート・タネン,ユーリー・ゼルツァー
撮影:デヴィッド・タッターサル
音楽:J・ピーター・ロビンソン
出演:ニコラス・ケイジ(ウィル・ジェラード)、ジャニュアリー・ジョーンズ(ローラ・ジェラード)、ガイ・ピアース(サイモン)、ハロルド・ペリノー(ジミー)

高校教師のウィルは、音楽家の妻ローラと幸せな日々を過ごしていた。ある夜、帰宅途中のローラが暴行され、ウィルはショックを受ける。待合室でウィルを見つめていたサイモンという男が「犯人を始末してやろうか」とささやく。悲しみと怒りで呆然としていたウィルは思わず誘いにうなずくが、その提案には続きがあった。犯人が始末された半年後、今度はウィルが誰かの代わりに人を殺さなければならなくなってしまう。

現代アメリカ版「仕置き人」だなぁと観ていましたら、もすこしひねりがきいていました。すっかりアクションづいてしまったニコラス・ケイジが、愛する妻の敵討ちをしたばかりにカーチェイスするわ、走りに走るわと熱いところを見せています。対する謎の男ガイ・リッチーが曲者でなかなか正体がわかりません。ケイジと逆に表情ひとつ変えず、冷酷な所業をやってのけます。「ハングリー・ラビット」は彼らのキーワード。((白)

2011年/アメリカ/106分/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
©2011 HRJ DISTRIBUTION, LLC

★6/16(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー!

公式 HP >> http://hungry-rabbit.com/

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希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言

企画・製作・撮影:都鳥拓也 監督:都鳥伸也
音楽:柴田晃一
ナレーター:大久保千紗

日本では年間約3万人の自殺者が出ている。自殺率が一番高い秋田県の小さな町で、自殺防止のとりくみがなされている。「こころといのちを考える会」の袴田俊英さんは、1杯100円のコーヒーハウスを始めて、地域のコミュニティを復活させようとしている。「NPO法人 蜘蛛の糸」の佐藤久男さんは、中小企業の経営者の相談に乗る。仙台の「藍の会」の田中幸子さんは自死遺族の自助グループを運営する。このドキュメンタリーは、彼らがさまざまな人々と出会い、やがて大きな流れを作っていくようすを見つめている。

日本の自殺率が異常に高いのはなぜなんでしょう?交通事故死が多かったときは、国をあげて交通安全を大合唱していたのに、1998年から3万人を越え、ずっと高止まりしている自殺については、対策を講じているとは思えませんでした。数字をみると、交通事故(事故死は1万人を割っています)よりもずっと他人事ではないのだと、あらためて驚きました。人と人とのつながりを取り戻そうと活動する人たちを、双子の映像作家、都鳥(とどり)拓也さん、伸也さんが追っていきます。(白)

2012/日本/カラー/102分/DVCAM
配給:ロングラン 映像メディア事業部、配給協力:東風
製作:『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ/ロングラン映像メディア事業部
(c)2010『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ. All Rights Reserved.

★6月16日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開

公式 HP >> http://ksignal-cinema.main.jp/

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幸せへのキセキ(原題:We Bought a Zoo)

監督:キャメロン・クロウ
脚本:キャメロン・クロウ
撮影:ロドリコ・プリエト
出演:マット・デイモン(ベンジャミン・ミー)、スカーレット・ヨハンソン(ケリー・フォスター)、トーマス・ヘイデン・チャーチ(ダンカン・ミー)、パトリック・フュジット(ロビン・ジョーンズ)、エル・ファニング(リリー・ミシュカ)、ジョン・マイケル・ヒギンズ(ウォルター・フェリス)

ベンジャミン・ミーは、ロサンゼルスの新聞社のコラムニスト。半年前に最愛の妻キャサリンを亡くし悲しみを癒す間もなく、子育てに追われる日々を送っていた。
息子のデュランは14歳で、母を失った寂しさから非行に走るようになり、ベンジャミンとも口喧嘩が絶えない。天真爛漫な7歳の娘ロージーの笑顔も曇りがち。
心機一転、住む場所を変えようと、閉鎖した動物園付きの家を買ってしまったベンジャミン・ミー一家は・・・。

よくホラー映画では元葬儀屋さんの家を買ったとか、隣の土地が墓場だとかいう設定はあるが、「動物園」は初めてだ!
これはイギリスのコラムニストのベンジャミン・ミーの実体験が基になっているのだが、「大丈夫?生き物相手にやっていけるの?」と心配になるのも当然だ。
動物園を再開するにあたって、いろんな検査をクリアーしないとダメなのだが、検査官がとっても嫌味で意地悪に映った。だが、「動物園など、気軽に再開するなんて思ってもらっては困る!」という警告からだったのが後から分かった。
動物園再園に向けて一致協力できるようになった一家に、新しい愛が二つ芽生えて、めでたしめでたし!現在もちゃんと営業していて、敷地内に住んでいるとのこと。
※マット・デイモンのお父さん役って珍しいが年齢的にはもちろん違和感はない。
※ヘアスタイルが働いている方の髪の流れで、本当に自然だった。
※ちょうど日本でも、つい最近、秋田県鹿角市の八幡平クマ牧場で事故があったばかりだったので、この検査官の重箱の隅を突っつくような指摘が理解できた。
(美)

2011年/アメリカ/カラー/124分/ドルビーSR・SRD
配給:20世紀フォックス映画
(C) 2012 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

★6月8日よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.foxmovies.jp/sk/

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道 ~白磁の人~

監督:高橋伴明
原作:江宮隆之「白磁の人」(河出文庫刊)
脚本:林民夫
撮影:ナ・ヒソク
音楽:安川午朗
エンディング曲:ハクエイ・キム
出演:吉沢悠(浅川巧)、ペ・スビン(チョンリム)、酒井若菜()、石垣佑磨(浅川伯教)、塩谷瞬(柳宗悦)、黒川智花(妻みつえ)、近野成美(妻)、市川亀治郎(朝田政歳)、堀部圭亮、田中要次、大杉漣、手塚理美(母・浅川けい)

日本が韓国を併合した1910年から4年後。林業技師の浅川巧が京城(日本統治時代のソウル)に赴任してくる。軍人ばかりでなく日本人の多くが支配者として朝鮮人を差別する中、偏見を持たない巧は、試験場に勤めるチョンリムから朝鮮語を習い、友情を深めていく。二人は荒廃した山を緑に戻そうと、熱心に苗木の研究をした。先に暮らしていた兄の家で朝鮮の白磁を見た巧は、その温かみのある美しさに感嘆する。当時、普段使いの器で美術品とみなされていなかった白磁を、巧は収集していく。

日本がアジアで我が物顔をしていた時代の映画を観ると、自分の生まれる前のことなのになんだか申し訳なくて身が縮む思いをします。この映画で「こういう人もいてくれた」と、安心しました。のちに民芸運動をすすめる柳宗悦にも大きな影響を与えた巧は、惜しくも早世してしまいます。もっと長生きして両国の橋渡しをしてもらいたかった…。
韓国の美しい風景がたくさんおさめられているこの作品、天候不順に泣かされたそうです。しかし苦楽をともにした日韓混合の製作スタッフ、キャストたちが、巧の望んだように友情を育んだのが、何よりも大きな成果であったと高橋伴明監督。(白)

2012年/日本/カラー/119分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:ティ・ジョイ 宣伝:ヨアケ
© 2012『道 ~白磁の人~』フィルムパートナーズ

★6月9日(土)より新宿バルト9、有楽町スバル座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://hakujinohito.com/

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ソウル・サーファー(原題:SOUL SURFER)

監督:ショーン・マクナマラ
脚本:ショーン・マクナマラ
撮影:ジョンR.レオネッティASC
出演:アナソフィア・ロブ(ベサニー・ハミルトン)、ヘレン・ハント(シェリー・ハミルトン)、デニス・クエイド(トム・ハミルトン)

2003年。ハワイのカウアイ島で13歳の少女がサーフィンの練習中にサメに襲われて左手を肩の付け根近くまで喰われてしまう大怪我をしてしまう。サーファー一家の娘ベサニー・ハミルトンだ。
彼女は全米アマチュア・ジュニアの部で優勝するほどの実力があり、暇さえあれば幼なじみで親友アラナと二人でサーフィンをしていてプロのになるのを夢みていた。
一命は取りとめたサニー・ハミルトンは、それでもサーファーの夢を捨てきれず片腕で挑戦するが・・・。

いつ、サメがでてくるのかハラハラした。水面下のカメラはとっても緊迫感があった。
左腕のある時のベサニーと、サメに食われてしまってからのベサニーを、いろんなことを絡めて、失ったもの、得たものを感動をもって教えてくれた。
また、天候次第でどんな波が来るのか分らないサーフィンだが、人生も同じことが言えると感じた。
※(実話だから)最後にご本人が登場するが、ベサニーを演じるアナソフィア・ロブ(素晴らしい!)とよく似た可愛い方だった。
※映画の中盤に喰ったであろうサメを捕獲したとき、父親が「娘が食われた歯型の紙」をサメの歯型と一致したから「これに間違いない!」と言い切っていたが、サメも人間と同じように、個別の歯型を持っているのだろうか?
※サメが出る可能性のある海岸では、朝夕は海にはいらない方がいいと聞いた。ロケ地探訪したい方はご注意あれ。(美)

2010年/アメリカ/カラー/106分/ビスタサイズ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

★6月9日より新宿バルト9他にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://disney-studio.jp/movies/soulsurfer/

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キリマンジャロの雪(原題:Titre français )

監督:ロベール・ゲディギャン
脚本:ロベール・ゲディギャン
撮影:ピエール・ミロン
出演:アリアンヌ・アスカリッド(マリ=クレール)、ジャン=ピエール・ダルッサン(ミシェル)、ジェラール・メイラン(ラウル)、グレゴワール・ルプランス=ランゲ(クリストフ)、マリリン・カント(ドゥニーズ)

結婚30年を迎えた中年夫婦ミシェルとマリ=クレールは、キリマンジャロへの記念旅行を楽しみにしていたが、強盗に押し入られてお金を盗られしまった。
なんとその犯人はミシェルと一緒に職場をリストラされた青年だった。労働組合委員長としてやり方に自信をもっていたミシェルはショックを受ける・・・。


(C)AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

職場のみんなを集めて、リストラされる人をくじ引きで決めるという場面が最初のシーンだった。公平にくじ引きでやることがいいか悪いか分からないが、犯人の若い青年の家庭環境を考える余地はあったのではないか?と頭をよぎった。
もちろんミシェルはリストラ組に進んで入り、首になったが、ここでまた「この国の年金はどうなってるの?」と映画に直接関係ないことがえらく気になった。ここでは年金のねの字も出ないけど、結婚30年なら55歳ぐらいとして、フランスはどうなってるのか?
近い将来に年金があるなら、くじ引きもいいけど50歳以上の人は60歳まで働くことができるが、2人で一人前の給料を半分にして、若いもののリストラを一人でも少なくしょう、とか工夫できない?年金話になると途端に現実的になるのはカンベンしてほしい。だって私、年金満額ばぁさんだもの!
この映画の結末は日本人はきっとできないだろうなと思うが・・・それは観てのお楽しみだ!
(美)

2011年/フランス/カラー/107分/35mm
配給:クレストインターナショナル

★6月9日より岩波ホールほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

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君への誓い(原題:The Vow)

監督:マイケル・スーシー
原案:スチュアート・センダー
撮影:ロジャー・ストファーズ
音楽:レイチェル・ポートマン、マイケル・ブルック
出演:レイチェル・マクアダムス(ペイジ)チャニング・テイタム(レオ)ジェシカ・ラング(リタ・ソーントン)サム・ニール(ビル・ソーントン)、スコット・スピードマン(ジェレミー/元婚約者)

シカゴに住むレオとペイジは友人の立会いの下、シカゴ美術館でささやかな結婚式を挙げたばかりの幸せカップルだった。
レオは録音スタジオ経営、ペイジは新進彫刻家して充実した日々を送っていたが、ある日、2人は自動車事故に遭う。
レオは無事だったが、ペイジは目覚めたとき、過去4年~5年の記憶をすべて失ってしまっていた。もちろん結婚したことも、レオのことも・・・。

字幕に実話と書いてあった。恋愛していたのも結婚したのも忘れてしまっているのだから無理もないが、シカゴ美術館での式には花嫁家族はいなかった。きっと実家とは嫌なことがあって疎遠になっていたんだろう・・・。
でも疎遠になったことも忘れてしまっているから嬉々としてペイジは実家にかえってしまう。実家は金持ちで、これ幸いと優しく迎い入れるのだが、そうなるとレオの立場がなくなる・・・
記憶喪失もので新鮮味はないと思っていたけど、この展開は辛いが有りえる設定。 妻の記憶を取戻すのも大変だけど、元婚約者と嬉しそうに会話するペイジに「僕と結婚していたんだよ」と言って、ちょっとでも嫌な顔されれば、愛情も吹っ飛んじゃう。 それに実家両親には白い目でみられちゃうし・・・レオの我慢強さに頭が下がってしまった。

※シカゴ美術館の外観がとても素敵だった。(美)

2012年/アメリカ/カラー/104分/スコープサイズ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

★6月1日より丸の内ピカデリーほか全国にてロードショー公開

公式 HP >> http://www.kimi-chikai.jp/

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ミッシング ID(原題:ABDUCTION)

監督:ジョン・シングルトン
脚本:ショーン・クリステンセン
撮影:ピーター・メンジースJr.,A.C.S
音楽:エドワード・シェアマー
出演:テイラー・ロートナー(ネイサン)、リリー・コリンズ(カレン)、アルフレッド・モリナ(バートン)、シガーニー・ウィーヴァー(ベネット博士)、ミカエル・ニクヴィスト(コズロフ)、ジェイソン・アイザックス(ケヴィン)、マリア・ベロ(マーラ)

高校生のネイサンは、厳格だが優しい両親と幸せな日を送っているが、同じ悪夢に悩まされることがあった。ある日「行方不明者のサイト」で自分の子どものころの写真を見つける。残っていた同じTシャツを比べると着衣のしみの場所まで同じだった。自分が誰なのか、それまで両親だと思っていたケヴィンとマーラは何者なのか。写真を掲載しているサイトに連絡を取ったとたん、ネイサンの日常が崩れ始める。誰が味方か敵かわからないまま、唯一信じられるガールフレンドのカレンと二人、命がけの逃亡が始まった。

これまで信じていたものが根こそぎ覆るようなことがあったら、どうやって対処していけばいいのでしょう。高校生のネイサンの混乱は想像にあまります。しかし、鍛えられた肉体を武器に敢然と立ち向かうネイサン。「トワイライトシリーズ」の狼族のジェイコブ役で大ブレイクしたテイラー・ロートナーがはまり役です。2003年、11歳で空手の数々の部門世界ランク1位になったというのですから、これは本物。ベテラン俳優の助演をうけて陰謀はさらに拡がっていくようです。『ボーン・アイデンティティー』に継ぐヒットシリーズになりそう。(白)

2011年/アメリカ/カラー/106分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(C)2011 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
★6月1日(金)丸の内ピカデリー他全国ロードショー

公式 HP >> http://missing-id.gaga.ne.jp/

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ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)(原題:I DON'T KNOW HOW SHE DOES IT)

監督:ダグラス・マクグラス
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
原作:アリソン・ピアソン「ケイト・レディは負け犬じゃない」(ソニーマガジンズ刊)
撮影:スチュアート・ドライバーグ
音楽:アーロン・ジグマン
出演:サラ・ジェシカ・パーカー(ケイト・レディ)、ピアース・ブロスナン(ジャック)、グレッグ・キニア(リチャード・レディ)、クリスティナ・ヘンドリックス(アリソン)、セス・マイヤーズ(クリス)、オリヴィア・マン(モモ)

ケイトは投資会社に努めるキャリアウーマン。家庭では愛する夫や子どもたちのよき妻であり、母である。大切な家庭と、やりがいのあるファンドマネージャーの仕事の両立に毎日忙しい。バザーに手作りのパイを出すのも、苦肉の策でクリアする。会社では要領よく立ち回る同僚にむかつくこともあるが、それまでのケイトの努力が実を結んで、ニューヨーク出張のチャンスが巡ってきた。同じころ夫のリチャードにも大事な仕事ができてしまう。

仕事を持っている女性なら共通の悩みや、その奮闘振りに共感すること必至。ママ友との付き合いや、気の置けない親友との会話もリアルでしょう。夫を愛していても眠気に勝てない姿も笑いを誘います。サラ・ジェシカ・パーカーはマシュー・ブロデリックと97年に結婚していますが、こんな風に家庭と仕事の両立に頑張っているのかしらと想像してしまいました。(白)

2011年/アメリカ/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファインフィルムズ
(C)2011 IDK USA, LLC. All Rights Reserved.

★6月2日(土)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.finefilms.co.jp/kate-reddy/

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ジェーン・エア(原題:JANE EYRE)

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
原作:シャーロット・ブロンテ
脚本:モイラ・バフィーニ
撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:ミア・ワシコウスカ(ジェーン・エア)、マイケル・ファスベンダー(エドワード・フェアファックス・ロチェスター)、ジェイミー・ベル(セント・ジョン・リバース)、ジュディ・デンチ(フェアファックス夫人)

早くに親を無くし、冷たい叔母に疎まれたジェーンは寄宿学校へ送られる。逆境に耐えて勉強した彼女は、寄宿学校の教師を務めた後、由緒あるソーンフィールド家の家庭教師となった。屋敷の主人ロチェスターは率直なジェーンに惹かれ、ジェーンも初めて愛する相手を得た。ロチェスターは身分の違いを越えてジェーンに求婚し、ジェーンはとまどいながらも承諾する。しかし彼には大きな秘密があった。


(C)RUBY FILMS (JANE EYRE) LTD./THE BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2011.

かつて中高生だったころ、名作全集を読み漁りました。はや●十年の時が流れ、ストーリーはいろいろまぜこぜになってしまい、試写で「こんな物語だったっけ・・・」。165年も前の原作、こんなに意思が強く自立した女性像はさぞ驚きを持って迎えられたことでしょう。ジェーンには『アリス・イン・ワンダーランド』でアリスに抜擢されたミア・ワシコウスカ、ロチェスターは『シェイム』のマイケル・ファスベンダー。日本でいえばお侍、といいたいようなクラシックな容貌に思えるのですが、欧米人の目にもそうなのかしら。ロケは小説の舞台であるダービーシャー州で行われたそうです。時代を忠実に再現した美術や衣裳も見逃せません。(白)

2011年/アメリカ/カラー/120分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ

★6月2日(土)TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式 HP >> http://janeeyre.gaga.ne.jp/

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EUフィルムデーズ2012( EU Film Days 2012)

東京:5月25日~6月16日 東京国立近代美術館フィルムセンター
福岡:6月13日~6月19日 福岡市総合図書館

毎年5月に日本と欧州連合(EU)の市民交流の促進を目的とした「日・EUフレンドシップウィーク」の一環として行われているEUフィルムデーズも第10回を迎えました。今年はEU加盟27カ国中21カ国の作品が上映されます。過去に一般公開されたり、映画祭で上映された映画のほか、日本初上映作品も7本上映されます。また、『メイド・イン・ハンガリー』のフォニョー・ゲルゲイ監督が来日予定です。
詳細は公式サイトで確認を! 

◆アイルランドの事件簿  原題:THE GUARD 
監督: ジョン・マイケル・マクドノー
アイルランド/2011年/96分/35mm/カラー
第18回大阪ヨーロッパ映画祭で上映   *84号に掲載
アイルランドの小さな町で働く中年警官・ジェリー・ボイルは、新しい相棒のエイダンとバカンス用アパートで見つかった他殺死体の事件に手こずっていた。そこにEBI捜査官エヴェレットがやって来て、「大量の麻薬の取引が数日後にある」と言い、手配写真を見せたが、その中の一人が、例のバカンス用アパートの死体の男だった。
面白い作品だった。何と言ってもジェリー・ボイル刑事の破天荒さが小気味よい。しがない独身刑事だが、日曜は売春婦たちと面白おかしくはめを外し、病身の母親には見舞いを忘れない。そこに新婚ホヤホヤの超真面目な相棒が転勤して来て、事件を探るが、この相性のさほど良くないコンビに、FBI捜査官のドン・チードルが加わり、意見の違い、行動の行き違いなど、丁々発止のやり取りが見もの。事件内容より配役の妙にまいってしまった。
これ、絶対にオススメだ。一言で評すれば「珍コンビ・ブラックユーモア事件簿」
※主演男優賞があれば田舎刑事役・ブレンダン・グリーソンに差し上げたい。(美)

◆人生、ここにあり! 原題:SI PUÒ FARE
監督: ジュリオ・マンフレドニア
イタリア/2008年/111分/35mm/カラー
82号に掲載
1983年のミラノ。正義感にあふれる労働組合員のネッロは、異端すぎたために反発を招き、新たな組合に異動させられてしまう。そこは、廃止された精神病院を出てきた元患者たちで構成された協同組合だった。 しかし熱血漢ネッロは、目的もなく無気力に過ごす元患者たちを見て、やる気を取り戻してもらおうと、建築現場の"床貼り"を請け負う事業を立ち上げるのだった。
イタリアってすごい国だ。刑務所だって模範囚なら外に働きに出る映画もあった。
薬の量や彼の行動に反対の立場の医師がいたが、実際事故がおきたとき「ほれ、見たことか」とはいわなかった。「薬の量の多い少ないの問題でなくても、こんな事故はおきる。あまり気をおとさないで」とネッロに言っていた。(今でも、この言葉一つが忘れられない)
楽しいコメディ調が主軸だが、現実的な厳しさも忘れていない。(美)

◆エリックを探して  原題:LOOKING FOR ERIC
監督: ケン・ローチ
英国・フランス・イタリア・ベルギー・スペイン/2009年/ 117分/35mm/カラー
何をやってもうまくいかない毎日を送っている郵便局員エリック。 そんな彼の前に、憧れの的だったサッカー選手エリック・カントナが突然現われる。 それ以来、カントナはエリックにいろいろなアドバイスをするようになった・・・。
エリックは息子2人と生活している。息子たちは2番目の妻の連れ子だが、エリックの人の良いのをいいことに我が物顔で暮らしている。 そこに30年前に別れた最初の妻リリーと会わなくてはならない出来事が起こり、今でも、その妻を忘れられないエリックは鬱気味になってしまう。 見るからにエリックは思っていることの半分もちゃんと言えない。そんな情けない男をスティーヴ・エヴェッツは自然体で演じていた。
※サッカー選手エリック・カントナ本人が出ているが、うまく演出されていて、2人のエリックは息もぴったりだった。(美)

◆発明村のロッテ  原題:LEIUTAJATEKÜLA LOTTE
監督: ヘイッキ・エルニツ、ヤンノ・プルトゥマ
エストニア・ラトビア/2006年/78分/35mm/カラー

◆カロと神様 原題:KARO UND DER LIEBE GOTT
監督: ダニエレ・プロスカー
オーストリア/2006年/94分/35mm/カラー ★日本初公開

◆サニー・ボーイ 原題:SONNY BOY 
監督: マリア・ペータース
オランダ/2011年/131分/35mm/カラー ★日本初公開

◆ぼくのエリ 200歳の少女 原題:LÅT DEN RÄTTE KOMMA IN
監督: トーマス・アルフレッドソン
スウェーデン/2008年/115分/35mm/カラー
12歳のオスカーは友達もなく虐められていた。 そんな彼が、髪はボサボサ、青白い顔の少女エリに出会った。いつも夜しか姿を見せないエリにオスカーは初めての恋をする。 エリが吸血鬼と知ってもその気持ちは変わらなかった・・・。
バンパイアもので、メルヘン調と聞いていち早く観た。 メルヘン調といえども、エリが人間に飛び掛り血を吸う行動は素早く、まるで獣のようだった。 2人の通信手段は壁をたたいて連絡しあっていた。原作題名が「モールス」と聞いて納得。 3度観たがゾクゾク感は増すばかり・・・是非そのゾクゾク感を味わってほしい。

◆ペーパーバード 幸せは翼にのって 原題:PÁJAROS DE PAPEL
監督: エミリオ・アラゴン
スペイン/2010年/123分/35mm/カラー
スペイン内戦で芸人の両親を亡くし孤児になったミゲル。終戦後、やはり内戦で妻子を亡くし気力を無くしていた喜劇役者のホルヘに引き取られ、芸人一座と共に巡業に出かける。ある日、ミゲルはニュース映像に母親が映っていたと騒ぎ出す。ホルヘは母親を探しに行く。ホルヘは戦時中フランコ将軍をからかう歌を歌っていたことから当局から目をつけられている身だった。一座にも監視役が潜入している。ある日、一座は将軍の前で演じることを命じられる・・・
最後のシーンで泣いてしまった。国と国の戦争も痛ましいには違いないが、同じ国民同士が敵味方となる内乱は、人々が拭い去れない憎しみを、同じ国の、もしかしたら隣人が持っている可能性もあるのだ。やりきれない気持ちでいっぱいになった。
※少年ミゲルがホルヘに気に入られようと一所懸命やる喜劇舞台の様子がいじらしい。(美)


『ペーパーバード 幸せは翼にのって』主演女優カルメン・マチさんとエミリオ・アラゴン監督
作品紹介http://www.cinemajournal.net/review/2011/index.html#paperbird
81号 エミリオ・アラゴン監督&女優カルメン・マチ インタビュー
82号 

◆空飛ぶツィプリアンの伝説 原題:LEGENDA O LIETAJÚCOM CYPRIÁNOVI
監督: マリアナ・チェンゲル=ソルチャンスカ
スロヴァキア・ポーランド/2010年/108分/35mm/カラー

◆ブロンドの恋 原題:LÁSKY JEDNÉ PLAVOVLÁSKY
監督: ミロシュ・フォルマン
チェコスロヴァキア/1965年/75分/35mm/白黒

◆ポートランド 原題:PORTLAND
監督: ニールス・アルデン・オプレヴ
デンマーク/1996年/104分/35mm/カラー

◆ソウル・キッチン 原題:SOUL KITCHEN
監督: ファティ・アキン
ドイツ・フランス・イタリア/2009年/99分/35mm/カラー
レストランの若いオーナーのジノスは、恋人は上海に行ってしまい、雇ったシェフは頑固者で、なんとか軌道にのったと思った店も乗っ取られる危機になってしまう。
軽快な音楽と共にハンブルグ郊外の若者たちのエネルギッシュな生き方が描かれていた。
今までなんとも思っていない間柄だった男女が、ちょっとした言葉やしぐさで恋に落ちる瞬間が面白く、監督の手腕を感じた。(美)

『ソウル・キッチン』ファティ・アキン監督
*Web版特別記事 ファティ・アキン監督来日レポート
  http://www.cinemajournal.net/special/2010/soulkitchen/index.html
78号81号に記事掲載

◆メイド・イン・ハンガリー 原題:MADE IN HUNGÁRIA
監督: フォニョー・ゲルゲイ
ハンガリー/2009年/109分/35mm/カラー ★日本初公開
フォニョー・ゲルゲイ監督来日予定 

◆危険なレシピ 原題:KATASTROFIN AINEKSIA
監督: ジョン・ウェブスター
フィンランド/2008年/86分/35mm/カラー
地球温暖化を機に、ウェブスター一家(夫婦と幼い息子二人)はライフスタイルを変えないで、石油化学製品を一切買わない、<オイルフリー>の生活の実践を決めた。
ドキュメンタリー好きな私には、見逃せない作品だった。この提案をしたのはジョン・ウェブスター監督自身だ。奥様は渋々納得して、1年間の<車のない生活、プラスチック製品ダメ、ビニールラッピングされた食品ダメ、等々>の生活に突入。生活必需品のほとんどが使用制限される中、監督さん一家は大きく様変わりする。時には夫婦喧嘩もしていたけど、ひとつの目標に向かって行けた家族が羨ましいなと思った。それに、自分の生活を考えてみるきっかけにもなる。

◆食料品屋の息子 原題:LE FILS DE L'EPICIER
監督: エリック・ギラド
フランス/2006年/99分/35mm/カラー
田舎で移動食料品屋を営む父が倒れ、十年ぶりに都会から帰省する息子。無愛想に客相手をする息子が次第に目覚めていく様を、『サンジャックへの道』でアラブ系青年を演じたニコラ・カザレが好演。(咲)
フランス映画祭2008で上映
『食料品屋の息子』エリック・ギラド監督

『食料品屋の息子』エリック・ギラド監督
73号 エリック・ギラド監督インタビュー

◆ヤギ 原題:КОЗЕЛЪТ
監督: ゲオルギー・デュルゲロフ
ブルガリア/2006年/111分/35mm/カラー ★日本初公開

◆水の中のナイフ 原題:NÓZ W WODZIE
監督: ロマン・ポランスキ
ポーランド/1962年/94分/35mm/白黒

◆ブロンド少女は過激に美しく 原題:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
監督: マノエル・デ・オリヴェイラ
ポルトガル・スペイン・フランス/2009年/64分/35mm/カラー
ポルトガルの文豪エサ・デ・ケイロスの短編小説を、100歳を迎えた巨匠マノエル・デ・オリヴェイラが映画化。
窓から彼女を見つめるなんて、フランス映画の『仕立て屋の恋』のミシェル・ブランだ。だが、この作品のオチにがっくり!若気のいたりで美しさばかりに目を奪われていた男には、いい薬になったに違いない。(美)

◆愛の揺らめき 原題:DANCIS PA TRIM
監督: アルヴィーズ・クリエヴス
ラトビア/2011年/110分/35mm/カラー ★日本初公開

◆クルリク 原題:CRULIC - DRUMUL SPRE DINCOLO
監督: アンカ・ダミアン
ルーマニア・ポーランド/2011年/73分/35mm/カラー ★日本初公開

◆反抗 原題:RÉFRACTAIRE
監督: ニコラ・シュタイル
ルクセンブルク・スイス/2009/100分/35mm/カラー ★日本初公開


主催:駐日欧州連合代表部、在日EU加盟国大使館・文化機関、東京国立近代美術館フィルムセンター

公式 HP >> http://www.eufilmdays.jp/

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相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶

監督:松林要樹
出演:福島の人々

東京電力福島第一原子力発電所から「20キロ圏内」にある南相馬市原町区江井地区。2011年4月3日、津波と放射能汚染と強制退去で様変わりしたこの地域へ、松林要樹は救援物資を携えて向かった。市議会議員田中京子さんとの偶然の出逢いから、松林の取材生活が始まる。

松林監督は『311』にも4人の(共同監督)のうちの1人として名を連ねています。この作品はそれよりさらに後の映像になります。たまたま出会った市議会議員の田中さんのつてにより、普通足を踏み入れることのできない地域に入り、貴重な映像を残すことができました。避難所、または自宅に残り不自由な生活を続ける方々の言葉をていねいに掬い取っています。みなさんがおだやかで明るいことに、ほっとする半面、たくさんの怒りや悲しみを抑えておられるだろうと想像します。こんな理不尽な目にあった方々をどう応援していけばいいのでしょうか。
タイトルは「走馬看花」という故事成語から。本来の意味は、走る馬から花を見ること、おおざっぱにうわべだけを見ることをいうそうです。松林監督が私淑するジャーナリストの橋田信介さん(イラク取材中に亡くなる)は、あえて「走る馬からでも美しい花は目に止まる」という解釈をしました。松林監督はその意をくみ、「相馬」の字を当ててタイトルとしたそうです。(白)

2011年/日本/カラー/109分/
配給:東風
(C)松林要樹

★5月26日(土)よりオーディトリウム渋谷にて公開、ほか全国順次公開

公式 HP >> http://somakanka.com/

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ヴィダル・サスーン(原題:VIDAL SASSOON: THE MOVIE)

監督:クレイグ・ティパー
脚本:ヘザー・ゴードン
プロデューサー:マイケル・ゴードン
出演:ヴィダル・サスーン、マリー・クヮント、クリストファー・ブッカー、ジョン・フリーダ、ティム・ハートリー、キャロライン・フォックス

ロンドンの美容界に登場、サスーン・カットと呼ばれる独特なヘアカットでファッション界も牽引したヴィダル・サスーン。後進はみな彼の影響をうけていると言っても過言ではないだろう。それまでの女性のヘアスタイルはパーマをかけて盛り上げ、ヘアスプレーでかためるのが普通だった。14歳からロンドンの美容室で修行したヴィダル・サスーンは、鋏一本で髪の自然な流れを生かしたカットを作り上げる。若き日の映像にマリー・クヮントら友人たちの証言を交えながら、サスーンの半生を浮き彫りにする。

若いときからとてもチャーミングな人だったのが、このドキュメンタリーでよくわかります。マリー・クヮント、ミア・ファーローやツィギーのヘアカットのシーンを、懐かしい当時のヒット曲とともに観ることができます。ヘアサロンの開設ばかりでなく、アカデミーの設立、ヘアケア商品の世界展開など事業家としての側面も見せています。私も濃い赤いパッケージのヘアケア商品を使っていました。最後の映像は2年前のものですが、80を過ぎてもとてもお洒落で若々しいヴィダル・サスーン。HPには今年4月のインタビューの映像があります。このときはすでに病気療養中だったのだとか。映画公開を待たずに5月9日亡くなられました。(白)

2010年/アメリカ/カラー/91分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アップリンク

★5 月26 日(土)より渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/sassoon/

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私が、生きる肌(原題:THE SKIN I LIVE IN)

監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:アントニオ・バンデラス(ロベル・レガル)、エレナ・アナヤ(ベラ・クルス)、マリサ・パレデス(マリリア)

天才的な形成外科医ロベル・レガルは、12年前に最愛の妻ヴェラを交通事故の全身火傷で死なせてしまった。その負い目から「完璧な人工肌」の研究に没頭して、完成間近かだった。
ロベルの密室の実験室で人工皮膚の移植を受けている若い女性は亡き妻ヴェラにそっくりの女性だ。
食事や身の廻りの世話をするのがマリリアという老婆。マリリアは実はロベルの父レガルの子を宿した女中で、ロベルの母親でもあった。

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』の監督さん。
試写がすむとすぐ、「これ、白井さん好みだね」と声をかけてくれた。あ~、もう倒れこんでしまいそうなくらい好き!な作品!
意外性に満ちているが、その一つ一つが納得できて、納得したのもつかの間に、また意外なことが出てくるのだ。食いつくようにして観てしまった。
医学的な芸が細かい。『ムカデ人間』よりう~~んと面白い!(そう、言いながらも『ムカデ人間2』を首を長くして待っているが・・・)こんな素敵な作品だからなんにもいいたくない!観ていただくしかない!
※音楽◎ 特にヴァイオリン独奏のトレモロの部分にうっとりした。そういえば私が一番最初に映画音楽CDを買ったのは『トーク・トゥ・ハー』だった。(美)

2011年/スペイン/カラー/120分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
Photo by Jose Haro(C)El Deseo

5月26日TOHOシネマズシャンテ、シネマライズ他全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.theskinilivein-movie.jp/

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ミッドナイト・イン・パリ(原題:Midnight in Paris)

監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
撮影:ダリウス・コンジ
美術:アン・セイベル
衣装:ソニア・グランデ
出演:オーウェン・ウィルソン(ギル・ベンダー)、ニーナ・アリアンダ(キャロル)、カート・フラー(ジョン)、トム・ヒドルストン(F・スコット・フィッツジェラルド)、コリー・ストール(ヘミングウェイ)、キャシー・ベイツ(ガートルード・スタイン)

 ハリウッドで脚本の仕事をする作家志望のアメリカ人男性が、婚約者とともに向かったパリで一人の時間をもてあまして、真夜中に街をさまよっていたところ、一軒の酒場を見つけ入ってみると、そこにはヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ピカソといった伝説の作家や芸術家たちが集う1920年代パリだった・・・。

『テルマエ・ロマエ』もそうだったが、こんなタイムスリップ映画は大歓迎!
オーウェン・ウィルソンは、パッとしない俳優さんのイメージだったが見直した。
私の好きなキャシー・ベイツ(ガートルード・スタイン/詩人で美術収集家/パリで芸術家たちが集うサロンを開いていた方)も素敵だった。
パリ市内、郊外の観光有名所はちゃんとおさえてあるので、映画代でパリ旅行した気分になってしまうお得な作品。(美)


深夜のパリ。0時の時計台の鐘がなり、旧式のプジョーが現れて、酔っ払った男たちが主人公ギルを車に誘う。言われるままついていった先で出会うのは、1920年代に一世風靡した著名人たち。ピカソやダリと名乗る男に思わずギョッとするギルに、観ている私たちは思わず笑ってしまう。こんなことが実際に起こったら、楽しいだろうなぁ。そして、主人公ギルは、ウディ・アレンの映画のお決まり通り、ちょっとドモッておどおどした姿がウディ・アレン生き写し!
久しぶりにウディ・アレンを見直した素敵な映画。(咲)

2011年/スペイン=アメリカ合作/カラー/94分/アメリカン・ビスタ/ドルビーデジタル
配給:ロングライド

★2012年5月26日新宿ピカデリー、ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.midnightinparis.jp/

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ミッドナイトFM(原題:MIDNIGHT FM)

監督:キム・サンマン
脚本:キム・サンマン、キム・フィ
出演:スエ(コ・ソニョン)、ユ・ジテ(ハン・ドンス)、マ・ドンソク(キム・ドクテ)

元・テレビアナウンサーのソニャンは、娘の病気治療にアメリカに行くために、五年間担当した深夜のDJを降りることにした。
実の妹に娘をみてもらい、最後の番組の収録をしていた時、放送中に「指示どおりの曲をかけないと家族を殺す」という脅迫電話がかかってきた。最初は相手にしなかったが、携帯画面に写る映像を見て衝撃を受ける…。

 映画の冒頭、ソニャンの声を同僚が「男性はあの耳をしゃぶられているような声、堪らないんじゃない?」とやっかみ半分で言っていた。実際にスエさんの声を聞いて「まさしく!それ!誰か知らんが、よくぞ的確に!」と思った。
そのセックスアピールのある声だからこそ、ストーカー的ファンの両極端の二人がいるんだが、一人は風采の上がらない<なんでもご存知オタクおじさん>と怖い<人質・兄さん>がいたってことだ。
スエさんのとっさの機転で、中継車を出して犯人と対決する場面は、母は強し!と応援してしまった。(美)

2010年/韓国/カラー/106分
配給:ビーズインターナショナル
(C) 2010 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

★5月 新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次公開

公式 HP >> http://midnightfm-jp.com/

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MY HOUSE

監督・企画:堤幸彦
脚本:佃公彦 原作:坂口恭平『TOKYO 0 円ハウス 0 円生活』(河出文庫刊)/『隅田川のエジソン』(幻冬舎文庫刊) 撮影:古市英高
美術:津留啓亮
出演:いとうたかお(鈴本さん)、石田えり(スミちゃん)、村田勘(ショータ)、板尾創路(社長)、木村多江(主婦)

公園の一角に住む鈴本はいわゆる路上生活者。公園の一角の手作りのマイホームに住んでいるが、公共の場所なので、違法である。お役人が見回りにきて、月に一度は全部片付けなければならない。パートナーのスミちゃんと手際よくまた建て直す。最後にブルーシートをかけると完成。材料はすべて0円。あちこちから拾い集めてきたもので、釘1本買っていない。必要なものはみなどこかで手に入る。どうしても必要な現金収入はアルミ缶集めで得ている。律儀な鈴本には空き缶を取っておいてくれるお得意さんがいるのだ。

この映画を観ると、「一生に一度の買い物」だからとローンを組んで返済のために働いているのが疑問に思えてきます。生活の知恵が詰め込まれたコンパクトな家がものすごく住み心地よさそうなのです。原作者の坂口恭平氏は、建築学科を卒業した方ですが、新しく家やビルを建てるのでなく、既存のものを別の視点からみるのが基本なのだとか。ホームレスの人たちのユニークな家に興味を持って、何冊もの本を書かれています。堤幸彦監督はその中から映画のためのエキスを抽出し、スパイスを加えて作品としました。目からウロコが落ちました。(白)

2011年/日本/モノクロ/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:キングレコード、ティ・ジョイ
(C)2011「MY HOUSE」製作委員会

★5月26日(土)新宿バルト9他全国ロードショー

公式 HP >> http://myhouse-movie.com/

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真!韓国映画祭2012

期間:5月26日(土)~6月15日(金)
会場:k’s cinema(新宿区新宿3丁目35-13 SHOWAKAN 3F)
※名古屋、大阪、ほか全国順次開催!

今年で3回目を迎える「真!韓国映画祭」。本国で話題になりながらも、日本でなかなか公開されない、ちょっと地味だけど、骨太で味のある作品たちが今年も上映されます。今年韓国で公開されたばかりの『18歳、19歳』『偕老~最も美しい同行~』を含む、日本未公開作品13本! ロマンス、家族や動物との絆、人権問題など、多彩な映画から、韓国の素の姿が垣間見れることと思います

<上映作品>

『もう少しだけ近くに』 2010年/108分
監督:キム・ジョングァン
出演:ユン・ゲサン、チョン・ユミ、ユン・ヒソク
「短編映画の感性の番人」と称賛されてきたキム・ジョグァン監督の初の長編作。 5組のカップルの愛と別れを通して恋愛の多様な姿を描く、壊れた愛に関する秘密の話。

『18歳、19歳』 2010年/94分
監督:ペ・グァンス
出演:ユ・ヨンソク、ペク・ジニ
周囲の人々から誤解されるほど仲のいい双子の兄妹に訪れた初めての恋。 恋愛に不慣れで、傷つくことを恐れない10代の揺れる感性を描いた青春スキャンダル。

『怪しい隣人たち』 2010年/97年
監督:ヤン・ヨンチョル 
出演:パク・ウォンサン、チョン・ミソン、ユン・ヒソク
地方新聞社を舞台に、告発記事のせいでストーカーまがいの復讐に悩まされる記者と風変りな人々が抱えている事情を描く。シニカルなヒューマン・コメディ。
★新聞社存続のためには広告を取ってこい!とゲキを飛ばす女編集長のもとで、戦々恐々と過ごす記者たちと、そのまわりの人たちをめぐる人生の悲喜こもごも。「ハッピーバースデー」「間違った出会い」「お隣りの女性」「タクシードライバー」「良い人々」と、オムニバスのエピソードで綴られる小さな町の物語。いろいろな人の人生が交差していく様に、笑ったり、涙したり。(咲)

『ごめんね、ありがとう』 2011年/114分
監督:ソン・イルゴン、オ・ジョムギョン、パク・フンシク、イム・スルレ
出演:キム・ジホ、ソ・テファ、ムン・ジュンヒ
生活の中で喜怒哀楽をともにする動物たちとの心のふれあいを、実力派の中堅監督たちがそれぞれのカラーで異なる視点からドラマチックに描いた感動ドラマ。

『Green Days~大切な日の夢~』 2011年/98分
監督:アン・ジェフン、ハン・ヘジン
声:パク・シネ、ソン・チャウィ、オ・ヨンソ
企画から制作まで11年を費やし、CGを最小限に抑えた手作業のアニメーション。 『初恋のアルバム~人魚姫のいた島~』のソン・ヘジン作家による脚本は、初恋にときめく平凡な女子高生と、空を飛ぶ夢を語る少年の純粋な感情を通して、懐かしさと感動を伝えてくれる。

『視線の向こうに』 2010年/144分
監督:カン・イグァン、プ・ジヨン、ユン・ソンヒョン、シン・ドンイル
出演:キム・ヒョンジュ、パク・ヒョックォン、パク・チョンウク
人権を素材にした映画は退屈だという偏見を破り、愉快に問いかける「視線シリーズ」第5弾。差別や偏見による視線の暴力、インターネット上の無分別な情報の露出と見えない視線。警告と鋭い風刺をこめた、楽しい人権メンタリング。

『お兄ちゃんが帰って来た』 2010年/93分
監督:ノ・ジンス 
出演:ソン・ビョンホ、キム・ミンギ、イ・アヒョン、ハン・ボベ
今の世の中に不満が多い旧世代の父親と、夢を追いかけてばかりいる新世代の息子。 5年ぶりに同居することになった2人の衝突と和解を愉快に描くヒューマン・コメディ。

『偕老~最も美しい同行~』 2011年/117分
監督:チェ・ジョンテ 
出演:チュ・ヒョン、イェ・スジョン
世界各国で翻訳されたフィンランドの作家タウノ・イリルシの小説「Hand in Hand」が原作。40年以上を共にしてきた老夫婦が、病による死の危機に接したとき、長い間忘れていた愛のときめきを再び感じるようになる。人生の最後に訪れた奇跡のような愛の物語。

『2階の悪党』 2010年/115分
監督:ソン・ジェゴン
出演:ハン・ソッキュ、キム・ヘス
神経衰弱直前の母と容姿コンプレックスの娘が住む家の2階に越してきた正体不明の男。 しだいに接近していく男と母親の、異なる思惑を描くサスペンス・コメディ。

『グランプリ』 2010年/109分
監督:ヤン・ユノ 
出演:キム・テヒ、ヤン・ドングン
レース中の事故で馬を死なせ自信を失った女騎士が、同じような傷を負った男と出会い彼の助けと激励でもう一度走る勇気をとり戻していく。済州島の自然の中でさわやかに描かれる希望とロマンス。

『二番目の愛』 2007年/101分
監督:キム・ジナ 
出演:ハ・ジョンウ、ヴェラ・ファーミガ
恋人をアメリカに呼ぶためにお金が必要な男と、夫との幸せな結婚を維持するために妊娠を願う女の密かな取引。イ・チャンドン監督プロデュースによる衝撃のラブストーリー。

『僕のヤクザみたいな恋人』 2010年/105分
監督:キム・グァンシク
出演:パク・チュンフン、チョン・ユミ
ケンカもまともにできない三流チンピラと、キャリアウーマンを夢みる経歴はないが度胸だけはいい女。アパートの半地下部屋に住む二人の、互いに譲らないロマンチックな闘い。
★ちょっと情けないチンピラがはまり役のパク・チュンフン! 面接試験に間に合わない彼女のために、ヤクザらしく身体を張って頑張る姿がなんとも可愛いです。自分の学んだことを生かしたいと仕事を探す若い女性を演じたチョン・ユミも爽やかで実に素敵。今夏8月4日に公開される『トガニ 幼き瞳の告発』でも、子供たちのために奮闘する人権センター幹事を爽やかに演じています。今後注目したい女優さん。(咲)

『ロマンチックヘブン』 2011年/117分
監督:チャン・ジン 
出演:キム・スロ、キム・ドンウク、キム・ジウォン、イ・スンジェ
逝ってしまった最愛の妻が大切にしていた赤いカバンをさがす男、初恋に人に会いたがる祖父の願いを叶えてあげたい青年、闘病中の母を助けたい少女。彼らの切実な想いが奇跡をおこす。チャン・ジン監督が、長い間、胸の奥にしまっていた感動の物語。

主催:キノアイジャパン
配給・宣伝:キノアイジャパン 
配給・宣伝協力:オリオフィルムズ
後援:プラザマルマン、マルマン会館、タイムストーリー、株式会社KRコンテンツグループ   駐日韓国大使館 韓国文化院、韓国観光公社配給・宣伝:ユナイテッドピープル

★2012年5月26日(土)~6月15日(金) k’s cinema ほか、名古屋、大阪、ほか全国順次開催!

公式 HP >> http://blog.livedoor.jp/kinoeye/

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ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ( John Cassavetes Retrospective)

1989年2月に59歳でこの世を去ったジョン・カサヴェテス。愛すること、失うことに耐えること、生きる意味を見出すこと・・・闘いを物語り続けた孤高の映画作家。“インディペンデント映画の父”とも称された彼の作品の中から、6作品が回顧上映されます。



【上映作品】
アメリカの影(1959年)
フェイシズ(1968年)
 
チャイニーズ・ブッキーを殺した男(1976年)
オープニング・ナイト(1977年)
こわれゆく女(1975年)
ラヴ・ストリームス(1984年)

私がジョン・カサヴェテスの名前を耳にしたのは、東京フィルメックスで、アミール・ナデリ監督と西島秀俊さんが二人の出会いを語った折のこと。二人がお互いジョン・カサヴェテスを敬愛していることも意気投合した理由の一つだったと聞いて、どんな作品を作った人なのか興味津々でした。今回、試写で『こわれゆく女』と『ラヴ・ストリームス』の2作品を観て、人の気持ちが壊れていく様を独特の感性で描いているのを目の当たりにしました。なるほど、これがナデリと西島さんの心をくすぐった世界なのだと実感。
カサヴェテスは、自分の思う映画を作るために、俳優として映画に出演しギャラを稼いでは自主製作費用に注ぎ込んでいたそうです。ギリシャ系移民の美男。出演作も是非観てみたい。(咲)


配給・宣伝:ザジフィルムズ

★2012年5月26日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/cassavetes/

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特集上映 世紀の大怪優II 西村 晃MAGIC

開催期間:2012年5月27日(日)~7月14日(土)
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷

上映作品:28本
『散歩する霊柩車』(1964年/佐藤肇)
『越前竹人形』(1963年/吉村公三郎)
『果しなき欲望』(1958年/今村昌平)
『眞空地帶』(1952年/山本薩夫)
『月は地球を廻ってる』(1959年/春原政久)
『無宿人別帳』(1963年/井上和男)
『東京湾』(1962年/野村芳太郎)
『雲ながるる果てに』(1953年/家城巳代治)
『経済学入門 ネオン太平記』(1968年/磯身忠彦)
『徳川家康』(1965年/伊藤大輔)
『銀座のお兄ちゃん挑戦す』(1960年/野村芳太郎)
『喜劇 爬虫類』(1968年/渡辺祐介)
『脅迫(おどし)』(1966年/深作欣二)
『大平洋の翼』(1963年/松林宗恵)
『関東おんな悪名』(1969年/森一生)
『十三人の刺客』(1963年/工藤栄一)
『西銀座駅前』(1958年/今村昌平)
『南の風と波』(1961年/橋本忍)
『ブラック・コメディ ああ!馬鹿』(1969年/須川栄三)
『十一人の侍』(1967年/工藤栄一)
『牡丹燈籠』(1968年/山本薩夫)
『悪の階段』(1965年/鈴木英夫)
『怪談片目の男』(1965年/小林恒夫)
『マタギ』(1982年/後藤俊夫)※16mm
『くノ一化粧』(1964年/中島貞夫)※ニュープリント
『赤い殺意』(1964年/今村昌平)
『ある脅迫』(1960年/蔵原惟繕)
『怪談せむし男』(1965年/佐藤肇)

入場料金:一般…1,200円
     シニア・学生…1,000円
     会員…800円
     ※水曜サービスデー…一般1,000円

公式 HP >> http://www.laputa-jp.com/

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ファミリー・ツリー(原題:The Descendants)

監督・脚本:アレクサンダー・ペイン
原作:カウイ・ハート・ヘミング「ファミリー・ツリー」(ヴィレッジブックス刊)
撮影:フェドン・パパマイケル
音楽:ドンディ・バストーン
出演:ジョージ・クルーニー(マット・キング)、シェイリーン・ウッドリー(アレクサンドラ・キング)、アマラ・ミラー(スコッティ・キング)、ニック・クラウス(シド)、ボー・ブリッジス(従兄弟のヒュー)、ロバート・フォスター(スコット・ソーソン)、ジュディ・グリア(ジュリー・スピアー)、マシュー・リラード(ブライアン・スピアー)、メアリー・バードソング(カイ・ミッチェル)、ロブ・ヒューベル(マーク・ミッチェル)、パトリシア・ヘイスティ(エリザベス・キング)

ハワイのオアフ島。弁護士のマット・キングは仕事で多忙な日々を送っている。彼はカメハメハ大王の末裔で、先祖から受け継いだカウアイ島の広大な原野の処遇について一族の意見をまとめる立場にいた。家庭を妻エリザベスにまかせきりにし、しばらく帰宅もせずに過ごしていたある日、エリザベスがボート事故で意識不明の重態となったと知らせが入る。高校生のアレックス、小学生のスコッティの二人の娘ともひさしぶりに会ったマットは、エリザベスが浮気をしていたこと、離婚を考えていたことをアレックスから聞く。マットは大きなショックを受けるとともに、夫・父としての自分を考え直すことになる。

家庭人のにおいが全くしないジョージ・クルーニーが、妻に裏切られ、娘たちに反抗される悩める父を演じています。50を過ぎたので、このくらいの子どもがいても不思議はないのでした。離れてしまった娘たちとの絆を取り戻そうとする不器用な父親には親近感がわきます。妻の不倫相手の家を訪れ、何も知らない相手の妻にちょっとした仕返しをするところに注目。
原題は「子孫」と言う意味のようで、先祖から伝えられた土地とその思いをどう受け継ぐかが、この作品のもう一つの主題。お金が入りそうだとなると寄ってくる人や、開発の利権に目の色を変える業者たちのようすも活写。アカデミー賞で主演男優賞はなりませんでしたが、脚色賞を受賞しています。(白)

2011年/アメリカ/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:20世紀フォックス映画
©2011 Twentieth Century Fox

★5月18日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://movies.foxjapan.com/familytree/

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バッド・ティーチャー(原題:BAD TEACHER)

監督:ジェイク・カスダン
脚本:ジーン・スタプニッキー、リー・アイゼンバーグ
音楽:マイケル・アンドリュース
出演:キャメロン・ディアス(エリザベス)、ジャスティン・ティンバーレイク(スコット)、ジェイソン・シーゲル(ラッセル)

公立中学校に勤めるエリザベスはいい加減な女教師。教職は金持ちと結婚するまでの腰掛けでしかない。実は彼女はつい最近、金持ちの婚約者がいたが、親に金目当てだと見抜かれて破談になり、かつての職場であるこの中学校に復帰したばかりだった。
そこに、ハンサムなスコットが赴任する。彼が大企業の御曹司だと知ったエリザベスは、玉の輿にのろうともくろむ。スコットの元カノが巨乳だったという情報をつかんだエリザベスは・・・。

このところ『ぼくたちのムッシュ・ラザール』『フェイシズ』『幸せの教室』など先生ものをよく観る。元々、映画では全般的に教師設定は多いが、極めつけがこの「あくどい&お色気」先生だ!
このありえないはちゃめちゃ教師をキャメロン・ディアスは、「私そのものよ!」と思わせるほどの軽々しさでやっている。
辛辣なブラックコメディとして、日ごろの憂さ晴らしは確実にできるはず。
※知らなかったが、ジャスティン・ティンバーレイクはキャメロン・ディアスの元彼。まさか、これが一番の映画宣伝になった?
(美)

2011年/アメリカ/カラー/92分/ドルビーデジタル
配給:日活

★5月19日より渋谷HUMAXシネマほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://badteacher.info/

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ザ・マペッツ(原題:The Muppets)

監督:ジェームズ・ボビン
脚本:ジェイソン・シーゲル、ニコラス・ストーラー
撮影:ドン・バージェス
音楽:クリストフ・ベック
出演:ジェイソン・シーゲル(ゲイリー)、エイミー・アダムス(メアリー)、クリス・クーパー(テックス)

田舎町で兄弟のように育ったゲイリーとマペットのウォルター。テレビ番組マペットショーの大ファンの二人はいつかロサンゼルスのスタジオに行くのが夢だった。ゲイリーが大人になってもテックスとの仲の良さは変わらない。ゲイリーの恋人のメアリーは、交際10周年記念のロサンゼルス旅行にウォルターも同行すると聞いてがっかり。今度こそ二人きりになってプロポーズされると思っていたのに。
ウォルターは憧れのマペット・スタジオの寂れように驚く。おまけに石油成金のテックスが地下に眠る原油を狙って買い取ろうとしていた。ゲイリーとメアリーに相談して、3人は引退したマペットスター、カエルのカーミットの屋敷を訪ねる。


©2011 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

日本ではセサミストリートのマペットたちがおなじみです。カエルのカーミットやミス・ピギーら人気のマペットたちとの、主演の二人、たくさんのダンサーたちが歌い踊るミュージカル作品。ジェイソン・シーゲルが脚本も担当しています。人間とマペットが違和感なく共演していて、マペットたちの豊かな表情や動きを楽しみました。スタジオを取り戻すために奔走し、ショーを開催するまでの苦労が花開くショーが圧巻です。アカデミー賞で主題歌賞を受賞しています。(白)

2011年/アメリカ/カラー/103分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ディズニー

★5月19日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/muppets/

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虹色ほたる ~永遠の夏休み~

監督:宇田鋼之介
原作:川口雅幸「虹色ほたる 永遠の夏休み」
脚本:国井桂
キャラクターデザイン、作画監督:森久司
音楽:松任谷正隆
主題歌:松任谷由実
声の出演:武井証、木村彩由実、新田海統、櫻井孝宏、能登麻美子、中井和哉、大塚周夫、石田太郎

6年生のユウタの父は1年前交通事故で突然亡くなってしまった。夏休みに入って、父親と一緒にカブトムシをとった思い出の山にやってきた。不思議な老人に出会った後、雨で足が滑ったユウタは転んで意識を失ってしまう。目がさめるとさえ子という少女が見守っていた。さえ子はおばあちゃんと二人暮らしの家にユウタを連れていく。ユウタをさえ子のいとことして迎えるおばあちゃん。なにがなんだかわからないユウタの前に再び老人が現れ、30年前にタイムスリップしたことを知る。ここに一ヶ月いなくてはならないらしい。近所のケンゾーとも友だちになり、ユウタの不思議な夏休みが始まった。

大好きなタイムスリップもので、舞台は1970年代の里山。まだゲーム機も携帯電話もない時代です。川遊び、虫取り、花火にお祭りと懐かしい風景が次々と現れ、今街では体験できないかけがえのない夏休みが始まります。物語に進むにつれ、少しずつ謎がとけてきますが、それは後のこと。観ている間は子どもに戻ってユウタといっしょに夏休みを楽しんでください。
原作者は川口雅幸氏。自分のHPで好評を博した連載小説が出版され、このたび映画化されたものです。アニメだからこそ可能な表現と手描きの線、登場人物と近い年齢の子供たちが声をあてて、優しいこの物語によく似合います。(白)

2011年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
©川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション

★5月19日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://www.nijiirohotaru.com/

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ダーク・シャドウ(原題DARK SHADOWS)

監督:ティム・バートン
脚本:セス・クレアム=スミス
撮影:ブリュノ・デルボネル
美術:リック・ハインリクス
出演:ジョニー・デップ(バーナバス)、エヴァ・グリーン(アンジェリーク)、クロエ・グレース・モレッツ(エリザベスの娘)、ミシェル・ファイファー(エリザベス)

18世紀の半ば、イギリスからアメリカに移り住み、事業を起し港に街を築いたコリンズ家。その名誉ある一家に生まれた御曹司バーナバス(ジョニー・デップ)は、ほんの出来心で手を出したメイドが、実は嫉妬深い魔女アンジェリーク。その嫉妬によってヴァンパイアにされてしまった上に、生きたまま埋められてしまう・・・。
200年後、ふとしたことで目覚めるが、コリンズ家は屋敷こそ残ってはいたが、末裔たちはすっかり落ちぶれていた。

ジョニー・デップさんの白塗りバンパイアのお顔も立ち姿も素敵!
200年も眠っていたので今の変わりように驚く様子が面白い。末裔の家族も個性的。
バーナバスは父の遺言でもある「一番大切な財産は家族」を胸に行動を起こすのだが、200年たったこの屋敷にも魔女アンジェリークが支配しているという設定だから、予測不能な展開でワクワクしてしまった。

それにこのデップ様・ヴァンパイヤはやはり「特別バージョン型!」
★魔女を振ってしまったのでヴァンパイヤにされた。(可哀相だが、ちょっとは反省してね)
★時代の流れについていけない。(これはしょうがない・・・)
★髪型がおかしい。(似合ってますよ~)
★サングラスと日よけで昼も出歩ける。(でも十分注意してね)
★家族を大切にする。(なかなかできないこと・・・)

ジョニー・デップのファンは必見だが、クロエ・グレース・モレッツも痛快な反抗的な少女をシレッとした表情でやっていた。
こんな映画をデートにチョイスする彼なら、帰りに首筋くらいなら・・・ダメ?(美)

2012年/アメリカ/カラー/113分
配給:ワーナー・ブラザーズ
(C)2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

★5月19日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://wwws.warnerbros.co.jp/darkshadows/

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サニー 永遠の仲間たち(原題:SUNNY)

監督: カン・ヒョンチョル(『過速スキャンダル』)
出演: シム・ウンギョン、カン・ソラ、ミン・ヒョリン、ユ・ホジョン、ジン・ヒギョン、コ・ソヒ、ホン・ジニ

優しく高収入の夫と高校生の娘に恵まれ、専業主婦として何不自由ない生活を送っているナミ。ある日、母親を見舞いに行った病院で、高校時代の仲良しグループ“サニー”のリーダー、チュナに再会する。25年前、地方からソウルの女子高に転校し、方言をからかわれていたナミを仲間に入れてくれたのが姉御肌のチュナだった。チュナは癌に侵され余命2ヶ月の宣告を受けていた。彼女の願いは、亡くなる前に一度“サニー”のメンバー7人で集まること。仲良かった7人だったが、ある事件が元で、その後会うこともなかったのだ。ナミはチュナの願いを叶えようと、残りのメンバー5人を探し始める・・・・

韓国でクチコミが広がり740万人動員した2011年の大ヒット作。高校時代と25年後の中年になった彼女たちを、なるほど、この少女がこの女性に・・・と納得のキャスティング。テレビのドラマでよく見かける人たちも出ています。自虐的で笑ったのが、病室でドラマを観ている人たちが、恋する二人が実は兄妹だったとか、主人公が不治の病だと判明したりする場面で、「またか~」「やめてくれ~」とため息をつくところ。ほんとにお決まりのパターンです。 原題になっているボニー・Mの「サニー」のほか、1970年代から80年代にかけての曲が流れてきて、日本でも同じような曲が流行っていたなぁと懐かしくなりました。中でも、ヒロインのナミが男の子に心ときめくシーンでかかる映画『ラ・ブーム』のテーマ「愛のファンタジー」は大好きな曲。あの頃の恋を思い出し、ちょっと切なくなりました。でも、今になって会いたいと思うのは、案外同性の友達。だんだん老いてきて、好きだった男の子に今さら会いたくないというのもさりながら、仲良かった女友達と会って、ぞんぶんにおしゃべりするほうが楽しい! 高校時代の友達には結構会っているつもりだったけど、思い出してみれば、卒業以来会ってない人も。会いたいなぁ~ (咲)

2011年/韓国/124分/カラー/シネスコサイズ/ドルビーSRD
配給: CJ Entertainment Japan

★2012年5月19日 Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.sunny-movie.com/

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幸せの教室(原題:Larry Crowne)

監督:トム・ハンクス
脚本:トム・ハンクス、ニア・ヴァルダロス
撮影:フィリップ・ルースロ
音楽:ジェームス・ニュートン・ハワード
出演:トム・ハンクス(ラリー・クラウン)、ジュリア・ロバーツ(メルセデス・テイノー)、ブライアン・クランストン(ディーン・テイノー)、セドリック・エンターティーナー(ラマー)、ジョージ・タケイ(マツタニ教授)、グレース・ガマー(ナタリー・カリメリス)

大卒ではないという理由で、長年勤めていたスーパーをリストラされてしまったラリー・クラウンは再就職のアテもなく落ち込んでいたが、心機一転、学歴をつけようと、短期大学に入学する。受けた講義は「スピーチ」と「経済学」だった。
「スピーチ」の教師メルセデス・テイノー(ジュリア・ロバーツ)は、いつも仏頂面でやる気なし。クラスが定員に満たないとすぐ帰ることばかり考えている情熱のなさ。
一方の日本人経済学の先生は人気があり、いつも満員。ラリーはそんな中で幸せな未来を見つけることが出来るのだろうか。

一番に感じたことは字幕の的確さ!きわどい字幕ナンバー1の栗原とみ子さんだ。この作品はきわどい言葉は出てこないが、いろんな国の方が出てくるので、いわゆるスラング的な言葉が出てきたと思う(確実なところはわからないが)。だから最後にとみ子さんのお名前を見た時、嬉しかった!
もう一つ、強く感じたことは、ラリー・クラウンは過去20年アメリカ軍のコックをしてきたという経歴の持ち主。それからスーパーに就職したんだけど、ここで何年勤めたか分からないが、高卒で軍に入って辞めたのが38歳から40歳として、スーパーを首になったのは45歳から50歳?とする。
ここで私が考えたことは年金は将来もらえるんだよね?ということ。スキルアップして後の人生を何か別の仕事するのはいいが、年金があるなら、(車はバイクに変えたのはうなずけるが、家は貸家にしたりできなかった?)また違った選択もできるんじゃないかって思ったのだ。
ラリー・クラウンは2つの講義の知恵で持ち家を上手く手放し、オマケに彼女まで手に入れちゃったが、なかなかそう上手くはいかないのが現実。でも、う~~~んと楽しめた作品だった!

※ラリー・クラウンはスーパーでお買い物カートをたくさんつなげて片付けていた。このシーンで「あっ、そういえばどこかで観たシーン!」と思ってよく考えたら、スピルバーグ監督『ターミナル』で飛行場暮らしを余儀なくされたトム・ハンクスが、荷物運びカートをいっぱい連ねて、小銭目当てで片付けていたことを思い出した。

※名女優メリル・ストリープの次女グレース・ガマーが出ているが、どんな役で出演しているかもお楽しみだ。
(美)

2011年/アメリカ/カラー/98分/シネスコサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

★5月11日(金曜)TOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://disney-studio.jp/movies/shiawase/

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Sintok2012 シンガポール映画祭(Sintok Singapore Film Festival Tokyo)

期日:2012年5月12日(土)~20日(日)
会場:シネマート六本木

特集上映:ロイストン・タン監督全長編作品
オープニング作品:『12Lotus』ロイストン・タン監督作品
クロージング作品:『Sandcastle』ブー・ジュンフォン監督作品(カンヌ映画祭2010批評家週間)
その他、『Here』ホー・ツーニェン監督作品(カンヌ映画祭2009監督週間)、エリック・クー監督初期短編集、公式パートナーであるシンガポール国立美術館との協同企画などを上映

チケット:当日券(指定席)1,300円
     3回券 (指定席)3,600円 (前売りと会期中劇場での限定枚数発売)
     ※3回券では、オープニング・プレミアとクロージング上映にはご入場いただけません。
(チケットぴあ他、オンライン・チケッティングでのお取扱いはありません)

スケジュールなど詳細は公式サイトへ
http://www.sintok.org/

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さあ帰ろう、ペダルをこいで(英題:The World Is Big and Salvation Lurks Around the Corner)

監督:ステファン・コマンダレフ
原作:イリヤ・トロヤノフ
出演:ミキ・マノイロヴィッチ(『パパは、出張中!』『アンダーグラウンド』)、カルロ・リューベック、フリスト・ムタフチェフ、アナ・パパドプル

1975年、共産党政権下のブルガリアの小さな田舎町。父ヴァスコ、母ヤナの間に生まれたアレクサンダル。愛称サシコ。祖父バイ・ダンは町一番のバックギャモン(すごろく)の名手。祖父に自分もやってみたいとせがむサシコ。幼い孫に「決して金は賭けないこと」と手ほどきする。1983年、父ヴァスコは勤務先の上司からバイ・ダンを含む周囲の者の反政府的な言動を報告するよう命令される。バイ・ダンはかつてハンガリー動乱で学生運動を組織したことがあったのだ。バイ・ダンにバックギャモンを挑んだヴァスコが、「手詰まりです」とうなだれる。「よくみろ。抜け道は必ずある。最善を信じて強行突破すればいい」と諭すバイ・ダン。その言葉にヴァスコは亡命を決意する。いやがる妻ヤナをサシコの将来のためと説得してブルガリアを後にし、イタリアの難民キャンプを経て西ドイツにたどり着く。それから25年。別居していた妻子のところに突然やってきたヴァスコは、ブルガリアに帰ろうという。故郷に向けて車を走らせるが、交通事故で両親は即死。残されたサシコは記憶喪失に。ブルガリアから駆けつけた祖父バイ・ダンは、二人乗りの自転車タンデムでブルガリアに帰ろうとサシコを誘う。大自然の中、バックギャモンを教わりながらの旅。サシコは次第に記憶を取り戻す。それは新たな人生への旅立ちだった・・・

国家の体制に翻弄された家族の物語。でも、実に爽やかな作品。いろんな思いをしてきたはずのバイ・ダンがユーモアに溢れ、とても魅力ある人物だ。オスマントルコ時代を彷彿させられるブルガリアの田舎の街並みも、どこか懐かしい。のどかな町なのに、国家の方針で心安らかに暮らせない辛さ。
イタリア・トリエステ郊外の難民キャンプを抜け出し、家族3人でトリエステの町に繰り出す場面がある。大きな広場で家族3人が味合う自由な空気・・・。1988年に旧ユーゴスラビアから国境越えをしてイタリアに旅をした時のこと、社会主義国を出て最初に出会った町がトリエステだった。300年にわたりハプスブルグ家の支配下にあった港町トリエステは、重厚な赤茶系の建物が並び、イタリアというよりオーストリアの雰囲気だったけれど、あきらかに自由主義国の空気だったのを思い出す。
さて、祖父と孫を繋ぐバックギャモンは、世界最古のボードゲームの一つ。正倉院御物の中に、「雙六局」と呼ばれるバックギャモンが何点かあって、日本にも7~8世紀頃にペルシアから伝わったらしい。その後、日本ではほとんど興じられなくなったけれど、今でも欧米・中東を中心に盛ん。イランやトルコでも男たちが興じている姿をよく見かけたものだ。映画の中で、バイ・ダンが「人生はサイコロと同じ。時の運と、本人の才覚次第」と語る。まさに人生の縮図のようなゲーム。
そして二人乗り自転車のタンデムも人生を象徴した乗り物。かつて軽井沢でタンデムに乗ったことがある。自転車に乗れない私を気遣ってのことだったけれど、漕げない人を乗せていると舵取りが大変。二人の息があってないとよろよろしてしまう。他者を思いやる心がないと乗れない乗り物。
最後に、プレス資料の中にあった、原作者イリヤ・トロヤノフが引用したイスラーム神秘主義詩人ジャラール・ウッディーン・ルーミーの言葉をここに記しておく。「友よ、“我”から“自身”への旅をしなさい。そんな旅が世界を金鉱に変えるのだ」
自由な心で人生を旅したいと思わせてくれた映画のエッセンスはここにあったのだと納得! (咲)

2008年/ブルガリア=ドイツ=ハンガリー=スロベニア=セルビア/105分/カラー/1:1.85/ドルビーSRD
後援:駐日ブルガリア共和国大使館
配給:エスピーオー

★2012年5月12日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開!

公式 HP >> http://www.kaerou.net/

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happy - しあわせを探すあなたへ(英題: HAPPY)

監督・撮影監督・プロデューサー:ロコ・ベリッチ
メインプロデューサー:清水 ハン 栄治
製作総指揮:トム・シャドヤック
出演:エド・ディーナー、ソーニャ・リュボミアスキー、ダニエル・ギルバート、グレゴリー・バーンズ、ミハイ・チクセントミハイ、P. リード・モンタギュー、ティム・キャサー、リチャード・デビッドソン、ダライ・ラマ14世、ダショー・キンレイ・ドルジ ナレーション:マーシー・シャイモフ

インド・コルカタの貧民街で暮らす人力車の車夫。どんなに仕事で疲れても、家に帰って息子の顔をみれば幸せと語る。アメリカで1981年から始まった幸福度研究で、コルカタの貧民街の人々の幸福度は平均的アメリカ人と変わらないという結果が出ているという。翻って、日本は先進国の中で幸福度の低い国と位置づけられている。経済成長しても働き続ける日本人。過労死する人も多い。一方、同じ日本でも沖縄の人たちは長寿。長生きの秘訣は? そして、どうすれば人は幸せになれるのだろう?と、ロコ・ベリッチ監督と清水ハン栄治氏が5大陸16か国を4年かけて探った人々の暮らし。国民総幸福量を上げる政策を取っていることで注目を浴びるブータン。電力をインドに売れば儲かるが自然が破壊されると開発をしない。幸福を感じることの出来る環境と伝統文化を国が守る。最も幸せな国とされるデンマークでは、複数の家族が共同生活を行う「コウハウジング」を視察。アフリカのナミビアのカラハリ沙漠では、誰かが病気になれば全員で祈祷する姿を映し出す。


以前、「ロンドン大学が世界で行った国民の幸福度調査で、バングラデシュは1位」ということを聞いてびっくりしたことがあります。思えば映画の冒頭に出てきたコルカタはバングラデシュに近い町。プロデューサー清水ハン栄治氏にお伺いしたら、本作を作ったのも、製作総指揮のトム・シャドヤック氏が、バングラデシュが1位というデータを見て、なぜ?と思ったのがきっかけだそうです。16か国を取材してみて、しあわせな人はいい奴が多い。心が優しい。不幸せな奴は意地悪な人が多いと清水氏。また、映画の中で、お金や地位に固執する人は満足度が低い、しあわせな人は、家族や友人に囲まれていたと語られていました。要は、他者と比べてうらやましがらないことが一番!と、私は納得しました。でもねぇ・・・ (咲)


現在、バリ島でシンプルライフを満喫している清水ハン栄治氏

★メインプロデューサー清水ハン栄治氏による上映後トークイベント「ハピネス40%向上ドリル」
ハピネス40%向上ドリルとは?
心の不調や病いの治療だけでなく、すでに健常な精神状態の人間をもっと幸せにする目的で欧米を中心に研究が進んでいる新しい心理学『ポジティブ心理学』。その最新情報を共有しながら、“怪しくなく”“楽しく”“効果的に”ハピネスを向上させるメソッドを実践します。アカデミー賞ノミネート監督でもあり大親友の監督ロコ・べリッチと共に、清水氏が4年間の撮影期間を通して体験し学んだ”ハピネスの鍵”を教わることができる機会です。

■イベント日時
5 月12 日(土)14:10 の回上映後 15:30~16:00 (「ハピネス40%向上ドリル」)
5 月13 日(日)14:10 の回上映後 15:30~16:00 (「ハピネス40%向上ドリル」)
5 月14 日(月)18:15 の回上映後 19:35~20:00 (「ハピネス40%向上ドリル」)
5 月15 日(火)18:15 の回上映前 (本編上映前のトークのみ、18:30 まで)

■場所
渋谷アップリンク(渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1・2 階) TEL: 03-6825-5503

■登壇者
清水 ハン 栄治氏(映画『happy』メインプロデューサー / 第2 ユニット監督 / 撮影)

2012年/76分/アメリカ/Color HD
製作:ワーディ・ラム・プロダクションズ
配給・宣伝:ユナイテッドピープル

★渋谷アップリンク他にて2012年5月12日(土)よりロードショー

公式 HP >> http://www.happyrevolution.net/

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ちりも積もればロマンス

監督:キム・ジョンファン
出演:ハン・イェスル(「クリスマスに雪は降るの?」)、ソン・ジュンギ(「トキメキ☆成均館スキャンダル」)

28歳の青年チョン・ジウンは、今日も面接試験に失敗。憂さ晴らしに飲み干したビールの瓶を狙って隣の建物の屋根部屋に住む29歳の女性ク・ホンシルがビルを飛び越えてやってくる。空き瓶も売れば1本50ウォン。1年分にすれば・・・と金を貯めるコツを説くホンシル。やがて、家賃が払えず部屋を追い出されたジウンを、ホンシルは自分の屋根部屋の前にテントを張らせて住まわせ、2か月間自分に従えば500万ウォン貯めるノウハウを教えると持ちかける・・・


© 2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

28歳にもなって職につけず、母親からお小遣いをせびって暮らす甘っちょろいジウンに対し、ホンシルは何事も倹約し、こつこつと小金を貯めています。ホンシルがそこまでどケチになったのには、ワケがありました。(聞くも涙・・・) なんとかお金を稼ごうとする二人ですが、悪徳商法に巻き込まれたり、信用していた銀行家に裏切られたりとなかなかお金は溜まりません。でも、人生、金ばかりじゃない。そんなことを感じさせてくれるラブコメディ。大卒でも正規雇用されない若者が多い状況は日本も韓国も変わらないことを垣間見せてくれます。屋上にある屋根部屋は、韓国ドラマでもよく貧しい人が住んでいる設定なのを見かけるので家賃が安いのでしょうけど、眺めがよさそうでいいなぁ~と。(咲)

2011年/韓国/114分/カラ―/シネマスコープ/ドルビーSRD
配給: CJ Entertainment Japan
「トキメキ☆花実男(コミナム)パラダイス」として、4月28日より公開の『ワンドゥギ』に続いてのロードショー

★2012年5月12日(土) より 新宿武蔵野館にてロードショー

公式 HP >> http://www.cjent.jp/chiri/

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ポテチ

監督・脚本:中村義洋
原作:伊坂幸太郎「ポテチ」(新潮文庫刊「フィッシュストーリー」所収)
撮影:相馬大輔
音楽:斉藤和義
出演:濱田岳(今村忠司)、木村文乃(大西若葉)、大森南朋(黒澤)、石田えり(今村弓子)

空き巣稼業の今村はプロ野球選手の尾崎に格別の思いいれがあった。同じ街で同年同月同日に生まれたからだ。向こうは自分を知りもしないけれど、尾崎が活躍すると自分のことのように嬉しい。試合の日、今村は彼女の若葉と一緒にこっそり入り込んだ他人の部屋でテレビ観戦する。若葉と知り合ったのも、この仕事が縁だった。今村は尾崎の窮地を知り、先輩の黒澤に相談する。


(C)2012『ポテチ』製作委員会 (C)2007伊坂幸太郎/新潮社

まじめでどこかとぼけた味のある濱田岳が、主人公そのままのようです。「僕、すごいこと発見しちゃったんです(以下略)!」も濱田くんのセリフだと、真実に聞こえました。
伊坂幸太郎作品の中にたびたび登場する人気の黒澤を演じるのは大森南朋。本ではもっと鋭角的な人を想像しましたが、空き巣は目立ってはいけないので、大森南朋の雰囲気も「あり」。人情味が出ています。中村義洋監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」(07)、「フィッシュストーリー」(09)、「ゴールデンスランバー」(10)、「ポテチ」(12)と伊坂作品4度目。原作の空気をすっかり捕まえて過不足なく映像化、映画から原作に手を伸ばしたファンも多いことでしょう。68分と短いですが、普通の長さの映画に少しもひけをとらず面白く観ました。(白)

2011年/日本/カラー/68分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート

★4月7日(土)より仙台先行公開、5月12日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開

公式 HP >> http://potechi-movie.jp/

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キラー・エリート

監督:ゲイリー・マッケンドリー
脚本:マット・シェリング
撮影:サイモン・ダガン
音楽:ジョニー・クリメック、ラインホルト・ハイル
出演:ジェイソン・ステイサム(ダニー)、クライヴ・オーウェン(スパイク)、ロバート・デ・ニーロ(ハンター)

1980年、メキシコでの極秘任務についていたダニーは標的の暗殺に成功したが、目撃者の少年を殺すことはどうしてもできなかった。自分の限界を感じて引退したダニーはオーストラリアの農場での静かな暮らしを選ぶ。1年後、自分の師匠でよき相棒でもあったハリーが、任務に失敗して捕えられたことを知る。ハンターを助けるためにダニーはそのミッションを受け継ぐことを決意する。それは「元SAS(*)の精鋭を事故に見せかけて殺す」というものだった。 *SASとはイギリス陸軍特殊部隊“Special Air Service”の略称。世界初の特殊部隊で、かつ「世界最強の特殊部隊」と言われる。

主役のはれる3人の競演で中身の濃いアクション+サスペンス作品。国家の秘密組織のメンバーがからむ殺しのエリートの話で、原作は元SAS隊員のラヌルフ・ファインズ。発表されたときはどこまで本当なのか物議をかもしたにちがいありません。豪華な共演者をまとめあげたのはゲイリー・マッケンドリー監督。これが初の長編作品ですが、05年発表の短編作品は米アカデミー賞短編映画賞にノミネートされた経験があります。男性ばかりの中、オーストラリア出身の女優イヴォンヌ・ストラホフスキーが、ジェイソンの幼馴染の恋人役で花をそえています。(白)

2011年/アメリカ/カラー/117分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

★5月12日(土) 新宿バルト9他全国ロードショー

公式 HP >> http://killer-elite.jp/

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ムサン日記~白い犬~(原題:Musanilgi)

監督:パク・ジョンボム
脚本:パク・ジョンボム
撮影:キム・ジョンソン
美術:ウン・ヒサン
出演:パク・ジョンボム(スンチョル)、チン・ヨンウク(ギョンチョル)、カン・ウンジン(スギョン)

北朝鮮と中国の国境近くのムサンから、幸せを求めて脱北して来た青年スンチョルは、先輩格の仲間ギョンチョルとソウルで暮らしている。
脱北者とわかると定職もままならず、ピンク業界のポスター張りやビラ配りなど貧しい生活を送っていた。
ギョンチョルは危ない仕事に手を出しているが、スンチョルは髪型も服装も昔のままに真面目に暮らしている。そんな彼を慰めるのは拾った白い犬だけ・・・。

韓国で暮らす脱北者への差別は『クロッシング』の監督さんにお聞きしていたので、すんなり理解することができた。
寡黙な青年スンチョルの孤独が白い犬によって大きく癒されていることが、スンチョルにとっては救いであるが、観ている方にとっては非常に不安にさせられた。
「大切」なものを守ろうとするが「守りきれない」現実をまざまざと見せ付けられる最後の場面は、かえって解きほぐされた開放感を持ってしまった。
「守るものがない」ことは「何にも囚われない」こと。このスンチョル青年はここから強く生きていけると思った。
パク・ジョンボム監督さんの映画つくりの情熱が感じられる力作。

※監督さんの亡き親友でもあった脱北者の青年が主人公のモデルとなっている。
※ギョンチョル役のチン・ヨンウクさんは、キム・テギュン監督『クロッシング』に出演されていて、スギョン役のカン・ウンジンさんは、2011年アジアフォーカス・福岡国際映画祭で一番印象深かかった『浄土アニャン』に出ていた女優さんだった!
(美)

2010年/韓国/カラー/127分/HD
配給:スターサンズ

★5月12日(土曜)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

公式 HP >> http://musan-nikki.com/

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ロボット(原題:Endhiran the Robot)

監督:シャンカール
撮影:R・ラトナヴェール
音楽:A・R・ラフマーン
出演:ラジニカーント(バシーガラン博士/チッティ)、アイシュワリヤー・ラーイ(サナ)、ダニー・デンゾンパ(ボラ教授)

ロボット工学のバシー博士は、研究の末に二足歩行ロボットを開発した。それも自分そっくりの高性能ロボット(チッティと名づけた)だ。人間の感情をそのままプログラムされたチッティは、なんと博士の恋人サナに恋をするが、「人間と機械は愛し合えない」とフラれてしまう。
失恋のショックから大暴走を始めたチッティは、大量生産した自らのレプリカで最強の戦闘軍団を結成。サナを手に入れるため、人間を相手に破壊行為を繰り返すのだった・・・。

インド映画だから139分とちょっと長めだが、あっという間だった。映像は3Dかと思わせるぐらい巧みにCGが使われていて、機械音の声も音も悪くない。
世界一?と言われているサナの美しさもプロポーションも抜群で、これならロボットも惚れるはずだ。
ロボット・チッティに人間の感情を理解させようと苦心するが、恋する気持ちは良しとしても、相手を憎み戦闘的になってしまう人間の醜さも皮肉に表現されていた。 インド映画の華麗&娯楽性の高さに映像技術がプラスされた必見作品。(美)

2010年/インド/カラー/139分/ドルビーデジタル
配給:アンプラグド

★5月12日(土曜)より渋谷TOEIほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://robot-movie.com/

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ベイビーズ-いのちのちから-(原題:BEBE(S))

監督:トマ・バルメ
原案・製作:アラン・シャバ
出演ベイビーズ:ハティ(アメリカ)、ポニジャオ(アフリカ)、バヤル(モンゴル)、マリ(日本)

アメリカのオークランド、アフリカのナミビア、モンゴル、東京で2009年の4月に生まれた4人の赤ちゃん。彼らが歩き出すまでの成長を1年間追ったドキュメンタリー。


©2010 Chez Wam/Thomas Balmes

こういうドキュメンタリーはありそうでなかった。赤ちゃんのいる家庭のホームビデオには同じようなシーンがたくさん残されているにちがいない。それぞれの家族の宝物のはず。
この映画は風土も生活習慣も違う4カ国の赤ちゃんたちのようすが交互に見られるところが面白い。どの子も可愛くて思わず笑顔になる。自分が子育てしたときを思い出しながら、親戚のおばさんのように大きくなっていくようすを見守ってしまう。この子たちがこれからも元気でありますよう、明るい未来でありますようにと願わずにいられない。(白)

2010/フランス/カラー/79分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスパース・サロウ

★5月5日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.babies-movie.net/

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王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件(原題:狄仁傑之通天帝國、英題:DETECTIVE DEE AND THE MYSTERY OF THE PHANTOM FLAME)

監督:ツイ・ハーク
脚本:チャン・チアルー
撮影:チャン・チーイン、パーキー・チャン
アクション監督:サモ・ハン
出演:アンディ・ラウ(判事ディー・レンチェ)、リー・ビンビン(チンアル)、ダン・チャオ(ペイ・ドンライ)、レオン・カーフェイ(シャトー)、カリーナ・ラウ(則天武后)

紀元689年、唐王朝時代の洛陽。則天武后が初の女帝になる日にあわせ、巨大な菩薩像「通天仏」の建立が進んでいた。しかし、重要な政治関係者が次々と焼死する事件がおきて、牢獄から一人の男が召還される。8年前、則天武后が皇帝の死後権力を握ったことを批判して投獄された判事ディーである。聡明で武術にも優れたディーに、則天武后は監視役として側近のチンアルを、補佐官に司法官のペイを任命した。
ディーは通天仏建立の現場監督をつとめている旧友のシャトーと再会する。シャトーは人間の身体が自然発火して炎上する様を目の前で目撃していた。

『セブンソード』(2005年)以来久しぶりに公開になるツイ・ハーク監督作品。本作で香港電影金像奨の最優秀監督賞。則天武后のカリーナ・ラウが主演女優賞を受賞しています。中国版シャーロック・ホームズと言われるディー判事は実在の人物だったそうで、実際に則天武后に仕え、法務大臣にまでなったとか。それにしても人体発火はフィクションでしょうと思って観ていたら、原案はオランダ人作家ロバート・ファン・ヒューリックによる人気探偵小説「ディー判事」(早川書房からシリーズとして出版)。サモ・ハン御大指導のアクションに加え、宮殿や衣裳、都や通天仏内部の美術、人体発火や建物倒壊のシーンなど見所はたくさんです。(白)

2010年/香港/カラー/128分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ツイン 配給協力:太秦
©2010 Huayi Brothers Media Corporation Huayi Brothers International Ltd. All Rights Reserved

★5月5日(土)よりシネマート新宿にてG.W.ロードショー ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.dee-movie.com/

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孤島の王(原題:KONGEN AV BASTOY)

監督:マリウス・ホルスト
音楽:ヨハン・セーデルクヴィスト
出演:ステラン・スカルスガルド(院長)、クリストッフェル・ヨーネル(ブローテン寮長)、ベンヤミン・ヘールスター(エーリング)、トロン・ニルセン(オーラヴ)

1915年。ノルウェーのオスロ南方の孤島バストイ島。この島には少年矯正施設があり、罪を犯した8〜18歳までの少年たちが学習と労働の毎日を送っていた。船員だったエーリングはC−19と呼ばれ、監獄のような施設で権限をふりかざす院長や冷酷な寮長に反抗し、問題児として目をつけられる。模範生でもうじき退寮となるオーラヴに諌められるがエーリングは我慢できない。気弱な少年が寮長に虐待を受けているのを知り、脱走の決意がますます固まっていく。

そう遠くない過去の実際にあった事件を元にした本作は、隔絶された島での理不尽な暴力にさらされた少年たちを描いています。過酷な暮らしの描写は、モノトーンの雪景色の中で背筋まで凍る思いがするほどです。エーリングの目は反骨精神に満ちていて、きっと何かやらかしてくれるに違いない、と観ながら期待してしまいました。この暴動事件は、軍隊が鎮圧に出動するほどになりましたが、歴史の闇に葬られてノルウェーの国民にもあまり知られていなかったそうです。監督はこの施設で少年時代を送ったという人物に出会って映画の着想を得たのだそうですが、辛い事実も描きながら鎮魂の思いも伝わる詩情あふれる作品となっています。(白)

2010/ノルウェー、フランス、スウェーデン、ポーランド/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アルシネテラン
©les films du losange

★4月28日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー

公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/kotou/

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女ドラゴンと怒りの未亡人軍団(原題:楊門女將 英題:THE LEGENDARY AMAZONS)

監督・脚本:フランキー・チャン
プロデューサー:ジャッキー・チェン
出演:セシリア・チャン(桂英)、リッチー・レン(楊宗保)、リウ・シャオチン(六娘)、チェン・ペイペイ(余太君)、キャシー・チョウ(五娘)、大島由加里(蘭秀)、シャオ・ミンユー(文広)

11世紀の中国・宋の時代。無能な皇帝のために悪政がはびこり民は戦続きで疲弊していた。名門楊家の将軍とその一族は西夏の侵略を受け、男たちは次々と戦死していった。長男の宗保夫人である桂英は、敵に囲まれた夫が放った鳩が戻ったのを見つけて泣き崩れる。その鳩には二人の愛の証であった桂英の髪の毛が結ばれていた。宗保の母と桂英が官吏にしたかった跡継ぎの文広は、父の仇を討つといきり立つ。楊家をつぶしたい朝廷はこれを好機として、文広を元帥に任じて西夏と戦えとの勅命を下す。一族最後の男子である文広を守るため、桂英をはじめ残された兄弟の未亡人たちはともに戦地に向かう。

日本では馴染みがありませんが、この作品の原作「楊家女將」は京劇にもなっている有名な古典文学。1974年にショウ・ブラザーズが『14アマゾネス/王女の剣』として映画化したものをジャッキー・チェンのプロデュースでリメイク。久しぶりに映画に復活したセシリア・チャンを主演に、チェン・ペイペイをはじめ豪華女優陣集結の作品ですが、なぜかつっこみどころ満載の「秘宝映画」(プレスより)として宣伝展開されています。昔の香港アクションを見慣れた目には懐かしいような感覚でした。まじめに作られたはずですが、最近の洗練されたものしか知らない方には、人間つり橋や奇妙な技は笑えちゃうでしょうね。今回のセシリアは山賊出身の腕のたつ嫁という役どころですが、なんだかキーキー叫んでいるのが耳について残念。『星願 あなたにもういちど』(1999)でセシリアと組んで泣かせてくれたリッチー・レンは、楊家の長男である将軍役で男っぽいところを見せています。(白)

2011年/中国/カラー/108分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活
© 2011 JACKIE & JJ PRODUCTIONS LTD All Rights Reserved

★4月28日(土)、銀座シネパトス、シアターN渋谷 ほか 全国順次公開!

公式 HP >> http://dragon-miboujin.com/

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ワンドゥギ(英題:PUNCH)

監督:イ・ハン
脚本:キム・ドンウ
原作:キム・リョリョン
撮影:チョ・ヨンギュ
音楽:イ・ジェジン
出演:キム・ユンソク(ドンジェ)、ユ・アイン(ワンドゥク)、パク・スヨン(父)、イ・ジャスミン(母)、キム・ヨンジェ(ミング)、キム・サンホ(隣人)、パク・ヒョジュ(ホジョン)、カン・ビョル(ユナ)

男子高校生のワンドゥクには母がいない。生活保護を受け、障がいを持ちながら芸人をしている父と叔父と3人で屋上の部屋に住んでいる。父たちはしょっちゅう地方に仕事に行き、一人きりのワンドゥクを担任のドンジェ先生がなにかとかまう。知られたくないことをクラスでばらすわ、隣に住んでいるために毎日呼びつけるわで鬱陶しいことこの上ない。「早く先生を死なせてください」と神様に祈る始末だ。勉強嫌い、将来の夢も親しい友だちもないワンドゥクに、優等生で美人のユナがなぜか声をかけてくる。



©2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

ベストセラー小説が原作だそうで、人との繋がりや家族の情が気持ちよく描かれています。『チェイサー』のキム・ユンソクが、口は悪いけれど内実は心熱い担任を好演しています。喧嘩の強い男子高校生役のユ・アインは180cmの長身、お母さん役の小柄なイ・ジャスミン(フィリピンの女優さんだそうですがこの作品で初めて観ました)とのやりとりに泣かされました。お父さんも小柄なので、大きな体を縮めたり曲げたりして親に向かいあう一人息子ワンドゥクがとてもいいです。がさつなようで小さなことにちゃんと気がつくのにジーンとしました。(白)

2011年/韓国/カラー/108分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:CJ Entertainment Japan
© 2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

★4月28日(土)より新宿武蔵野館にてロードショー

公式 HP >> http://www.cjent.jp/wdk/

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ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン(原題:BRIDESMAIDS)

監督:ポール・フェイグ
脚本:アニー・マモーロ、クリステン・ウィグ
撮影:ロバート・ヨーマンASC
音楽:マイケル・アンドリュース
衣裳:リーサ・エヴァンス
出演:クリステン・ウィグ(アニー)、マーヤ・ルドルフ(リリアン)、ローズ・バーン(ヘレン)、メリッサ・マッカーシー(メーガン)、ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ(リタ)、エミリー・ケンパー(ベッカ)

アニーは30代の独身女性。自営の手作りケーキ店は経営不振で閉店。恋人には捨てられ、母の紹介で宝石店の売り子をしている。だが、口が悪く客を怒らせてばかりいる。
そんな彼女の学生時代からの親友リリアンが婚約して、ブライズメイドのまとめ役メイド・オブ・オナーを頼まれて有頂天になる。他にも4人のブライズメイドがいて意見がわかれたり、競争意識が出たりでてんやわんやに。
アニー以外のブライズメイド・メンバーは、リリアンの従姉(子持ち)のリタ。新婚ホヤホヤのベッカ。リリアンの妹で太めのメーガン。花嫁リリアンの上司の妻のヘレン。このヘレンが鼻持ちならない。金持ちの自分がまとめ役メイド・オブ・オナーにぴったりと思っているのだ。


©2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

日本人には想像できないが(私だけそうおもっているのか?)ブライズメイドやそのまとめ役なんて、何故に頼まれて嬉しいのかわからない。
 よっぽど祭好きか、暇人じゃないとやっちゃぁいられない!アメリカやヨーロッパの物まね好きな日本でも、こればっかりは流行ってないところを見ると「そんな暇どこにある?」が本音だろう。
日本の結婚式場お仕着せ流れ作業は、味気ないけど(あれも案外細かい決め事があり簡単ではないが)今の余裕のない日本では致し方ないシステム。
この5人の行動はブライダルサロンでの糞尿譚、食中毒にはのけぞってしまったが、男性版の『ハングオーバー!!』よりは楽しめた(お下品?)コメディだった。
※きわどい字幕担当はやはり栗原とみ子さん!お見事
(美)

2011年/アメリカ/カラー/125分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東京テアトル

★4月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国ロードショー!

公式 HP >> http://bridesmaidsmovie.jp/

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HOME 愛しの座敷わらし

監督:和泉聖治
原作/萩原 浩「愛しの座敷わらし」(朝日文庫刊) 脚本:金子成人
撮影:会田正裕
美術:近藤成之
音楽:池頼広
出演:水谷豊(高橋晃一)、 安田成美(高橋史子)、 濱田龍臣(高橋智也)、 橋本 愛(高橋梓美)、草笛光子(高橋澄代)、佐々木すみ江(米子の姉)、草村礼子(菊池米子)、織本順吉(地区長・栃尾粂太郎)

父親の晃一の転勤で、東京から岩手の田舎に引っ越して来た高橋一家五人。それぞれに悩みを抱えていた一家が、築200年以上の藁葺き屋根の古家で慣れない暮らしに入るが、時々不思議な現象に遭遇する。
やがて、その家には座敷わらしがいることがわかり、家族の関係に少しずつ変化が訪れる。

一週間ぐらいなら、こんな黒光りする藁葺き屋根の古民家に住んでみたい! 冬はあまりにも広いので寒いだろうし、夏は虫がでるなどと思うと一週間が限度だ。
でも「座敷わらし」つきなら、即座にノー。
家族は半信半疑ながら「それ」の気配を怖がってはいたが、その怖さは他の家族との「会話」や「気遣う気持ち」につながって、最後にはふんわりと受け入れている。
周りの村の衆は「それ」を知ってはいるが、「悪さ」をしないから、今の住民の行動に「注目」をしている。これ、全然意地悪目線じゃないからご安心を。
田舎に住んだ経験から言うと人の口は確かに「うるさい」が「わかってしまう」と守ってもくれるのだ。この作品でも、どっちかと言えば「見守られている」に近いかもしれない。
さて、この映画で一番素晴らしい!と感じたことは、お年寄り役の絶品さだ。 お年寄りグランプリ・佐々木すみ江(米子の姉)、準グランプリ・草笛光子(高橋澄代)、草村礼子(菊池米子)、織本順吉(地区長・栃尾粂太郎)の方々だ。この四人の方を選んだ監督さんは素晴らしい眼力だ。
GWにご家族全員で楽しんでいただけると自信を持ってオススメできる作品。

※夫・晃一(水谷豊)は行きは颯爽と自転車だが、帰りは登り坂で苦しそうだった。帰りくらい自家用車で(自転車は荷台か後ろ座席に置いて)最寄の駅めで、迎えに行ってあげてほしかった。(美)

2012年/日本/カラー/110分
配給:東映

★4月28日より丸の内TOEI、新宿バルト9 他にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.warashi.jp/

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ブラックパワー・ミックステープ ~アメリカの光と影~(英題:THE BLACK POWER MIXTAPE 1967-1975)

監督:ゴーラン・ヒューゴ・オールセン

アフリカ系アメリカ人たちの公民権運動を捉えた1967年から1975年にかけての映像を紡いだドキュメンタリー。30年もの間、スウェーデンのテレビ局の倉庫に眠っていたフィルムにはキング牧師、マルコムX、ハリー・ベラフォンテ、アンジェラ・ディビス、ストークリー・カーマイケル等々、伝説の人物たちが自由と平等を求め、権力に立ち向かった姿が残されていた・・・


冒頭、「意見は人の数だけ存在する」という言葉が掲げられる。そして、映し出されていく様々な人々の姿。それぞれの思いでアメリカの黒人たちの人権を訴えた勇気ある人物たちのことをあらためて知ることができました。中でも、魅惑的な目鼻立ちが大きなアフロヘアーに包まれたアンジェラ・ディビスや、眼光するどく精悍なストークリー・カーマイケルのことは、これまで知らなかっただけに、もっと彼らのことを知りたいと興味を引かれました。また、本作がスウェーデンのテレビ局が撮った映像であることから、アメリカのテレビガイド誌がスウェーデンはアメリカの否定的な面だけ報道していると批判したことや、スウェーデンがアメリカのベトナム爆撃をナチスに例えたことから国交を解消したことなど、スウェーデンから見たアメリカという点も興味深いものでした。
バラク・フセイン・オバマが、アメリカで初のブラック系大統領となるまでの長い道のりの中で、幾多の挫折や屈辱を感じながら勇気を持って権力に立ち向かった人たちがいたことを、今一度思い起こさせてくれる一作。(咲)

2011年/スウェーデン・アメリカ合作/93分/カラー・白黒
配給:キュリオスコープ

★2012年4月28日(土)~ 新宿 K’s cinemaにて衝撃!緊急!!ロードショー!!!

公式 HP >> http://www.curiouscope.jp/BLACKPOWER/

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ル・アーヴルの靴みがき(原題:Le Havre)

監督:アキ・カウリスマキ
出演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン、ブロンダン・ミゲル、ジャン=ピエール・レオー、ライカ

かつてパリで暮らしていた元芸術家のマルセル・マルクス。今は、北フランスの港町ル・アーヴルで靴みがきをして、献身的な妻アリエッティと愛犬ライカと共につつましいながら幸せに暮らしている。ある日、妻アリエッティが病に倒れ入院してしまう。そんな頃、港にアフリカ・ガボンからの不法難民が潜んだコンテナが漂着する。警察の検挙をすり抜けてきたイドリッサという少年をマルセルは匿う。イドリッサが先に国を出てロンドンにいる母親のもとに行きたいと知ったマルセルは、なんとか彼を母親に会わせたいと、近所のパン屋や八百屋、ミュージッシャンの友人たちに協力を仰ぐ。一方、妻は病院で余命宣告を受けていた・・・

8年かけて身分証明書を取得したベトナム人チャングを弟子に、靴磨きをしているマルセル。不法難民のアフリカの少年への眼差しもやさしい。入院している妻は心やさしいマルセルを気遣って、医者に余命宣告を受けたことを言わないでくれと頼みます。一方、イドリッサ支援のために奔走するマルセルや彼を手助けする友人たち。各地で摩擦を起こしている不法移民問題ですが、こんな風に、皆が他者を気遣う社会なら・・・と、ほろっとさせられました。現代のおとぎ話のよう。アキ・カウリスマキ作品に漂う独特の空気も健在。(咲)

パン屋や八百屋、バーなどが立ち並ぶ、港町ル・アーヴルの裏町に暮らす心優しき人々の慎ましい生活を描きつつ、庶民の絆、力強さを描いた作品。
タイトルからは、不法難民を扱った作品だとは全然思わなかったけど、靴磨きのマルセルが、偶然知り合った密航少年のために奔走する姿と、それに協力する街の人たちの姿が、古き良き港町の雰囲気を漂わせていた。
難民の多いフランスならではの作品。良い人ばかりが出てきて、現実にはこういうことはなかなかないと思うけど、観た後、ほっとさせてくれる作品だった。
関わってくる人々の中で、ユニークだったのが刑事(ジャン=ピエール・ダルッサン)。最初から、少年をかくまっていることをわかっていながら、見てみないふり。『キリマンジャロの雪』の試写を観にいった時、主人公の人、どこかで見たことがあると思ったら、この作品の刑事役をやった人でした。さらに調べてみたら、『サン・ジャックへの道』にも出演していました。味わい深い俳優さんです。(暁)

2011年/フィンランド・フランス・ドイツ/フランス語/93分/35mm・DCP/カラー/1.85:1/ドルビーSRD
配給:ユーロスペース

★2012年4月28日より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.lehavre-film.com/

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テルマエ・ロマエ THERMAE ROMAE

監督:武内英樹
脚本:武藤将吾
撮影:川越一成
美術:原田満生
出演:阿部寛(ルシウス)、上戸彩(山越真実)、北村一輝(ケイオニウス)、竹内力(館野)、宍戸開(アントニウス)笹野高史(真実の父)、市村正親(ハドリアヌス)

 古代ローマの浴場設計技師のルシウスは、生真面目すぎる性格が災いして失業してしまった。友人に誘われて公衆浴場行くと、何を思ったのか、何がそうさせたのかわからないが、公衆浴場の排水口に首を突っ込んでしまい、流れついた先が現代の日本の銭湯。タイムスリップしてしまったのだ。
そこには「平たい顔族=日本人」がいて、漫画家志望で銭湯の娘・真実と出会う。
ルシウスは日本の風呂の文化に感銘を受け、そこで浮かんだアイデアを古代ローマに持ち帰り一躍有名になっていく・・・。

この意味不明の題名が「今、一番熱い漫画」とは知らなかった。ユニークで面白い!ほりの深い顔・古代ローマ人・阿部寛とひらべったい日本人顔・上戸彩が楽しそうに演じていた。
古代ローマと現代日本の行き来が公衆浴場の廃水口なんて奇想天外。だが、違和感なしで最後までホットな気分で観られた。
それにしても日本の濃い顔の俳優さん勢ぞろいだ。阿部寛、北村一輝、宍戸開、市村正親みんな誇り高い古代ローマ人を堂々と演じていた。
私は無性に銭湯に行きたくなり、その足で近くの温泉施設へ。そこで、ふと「女湯の排水口につながってなくてよかったなぁ」と馬鹿な想像をして一人で笑ってしまった・・・。(美)

2011年/日本/カラー/108分br/> 配給:東宝

★2012年4月28日より全国東宝系映画館にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://thermae-romae.jp/

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Black & White ブラック&ホワイト(原題:THIS MEANS WAR)

監督:マックG
脚本:ティモシー・ダウリング、マーカス・カウテセン
撮影:ラッセル・カーペンター,ASC
出演:リース・ウィザースプーン(ローレン・スコット)、クリス・パイン(FDR)、トム・ハーディ(タック)、ティル・シュヴァイガー(カール・ハインリッヒ)、チェルシー・ハンドラー(トリッシュ)

CIAの敏腕諜報員のFDRとタックは、闇商人のカールを追い詰めたが、人ごみの中での銃撃戦になり、カールにも逃げられたことでデスクワークになってしまう。
その暇なうちに、若い二人は恋人を見つけたいと思い、タックは恋人紹介サイトでローレンと知り合う。だが、なんとFDRもローレンをレンタル・ビデオ店でナンパ。
同じ女性とは知らない二人は、超ご機嫌で、ウキウキ気分で自慢しながらお互いの彼女を見せ合ったところ・・・!

この作品、CIAお決まりのドンパチ3割、恋愛7割の、どちらかというとデート向け作品じゃないかな。彼氏も満足、彼女も満足っていうなかなかありそうでない作品!
テンポ良し、流れがすんなり理解できるから映画慣れしていない方にもいいと思う。
男二人は、一人は初婚だけど実家がなかなかいいから親戚付き合いがネック(になるかもしれないし)、かたや、もう一人は子持ちだ!(今は可愛いけど反抗期になったら?)
素敵なリース・ウィザースプーン演じるローレンがどっちを選ぶか・・・最後まで分からない。
男には男の意地、女には女の見栄も描かれていて、「わかる!その気持ち!」の台詞も盛りだくさん。肩がこらずに文無しで楽しめる作品。(美)

2012年/アメリカ/カラー/98分/シネマスコープ
配給:20世紀フォックス映画

★4月20日(金曜)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.foxmovies.jp/blackwhite/

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フランス映画未公開傑作選

「映画の國名作選V」として、フランス映画『刑事べラミー』『ある秘密』『三重スパイ』の3作品が、4月21日(土)より5週間限定で渋谷、シアターイメージフォーラムで公開されます。

◆『刑事べラミー』 原題:Bellamy

監督・脚本:クロード・シャブロル
出演:ジェラール・ドバルデュー、ジャック・ガンブラン

休暇中で妻と共に居間でくつろぐベラミー警視。テレビでエミール・ルルの保険金詐欺事件が報じられていた折り、見知らぬ男が訪ねてきて電話番号だけ伝えて立ち去る。夜、その男から呼び出され、モーテルに赴くと、ノエル・ジャンティと名乗るその男から、自分と瓜二つの男の写真を見せられ、その男を殺したと打ち明けられる。ノエルの身辺調査をするも、警察にデータはなく、身分証は偽造。不審に思ったベラミー警視はノエルの妻を訪ね、写真を見せると、エミール・ルルだという。それは保険金詐欺事件の張本人だ。ノエルと名乗った男は、実はエミールなのか・・・

冒頭、高台の墓地から見渡せる海辺に転がる黒こげの自動車と焼死体。明るくのどかなフランスの海辺の町で繰り広げられるサスペンス。2010年にこの世を去ったクロード・シャブロル監督。ゴダール、トリュフォー、ロメール、リヴェットと共にヌーヴェル・ヴァーグを代表する作家として活躍し、”フランスのヒッチコック”と称されるシャブロル監督にふさわしい遺作。名優ジェラール・ドパルデュー演じる貫禄たっぷりのベラミー警視。海辺の墓地がまばゆい。

2009年/ 110分/カラー

◆『ある秘密』 原題:Un Secret

監督:クロード・ミレール 
原作「ある秘密」(新潮クレストブック刊)
出演:セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリック、ジュリー・ドパルデュー

少年フランソワは一人っ子だが、兄がいることを創造して食卓で幻の兄の食器を用意したりする。「お前とママとパパだけだ」と困惑する父親。フランソワは、ある日、隣に住む独身女性ルイーズから、父の前妻と息子がホロコーストの犠牲になったことを聞かされる。背景には思いもかけない両親の禁断の恋が・・・。

2008年フランス映画祭で『秘密』のタイトルで上映された作品。原作は、1950年代のパリを舞台にしたフィリップ・グランベールの自伝的長編。ナチス占領下のフランスでもユダヤ人の悲劇があったことが重要な背景となっています。父親はユダヤ人であることを拒否して、スポーツで身体を鍛えることで出自を隠そうとします。フランソワが生まれた時にも、こっそりクリスチャンの洗礼を受けさせます。学校でホロコーストの映像を見せられて、複雑な思いのフランソワ。ナチス占領下のフランス政府がユダヤ人狩りに手を貸したことを認めたのはずいぶん後年になってからのことですが、いろんな思いがフランスに住むユダヤ人にあることも垣間見ることができます。2008年フランス映画祭上映作品の中で私の一押しの作品。シネマジャーナル73号に、父親を演じたパトリック・ブリュエルと、隣に住む独身女性ルイーズを演じたジュリー・ドパルデューのインタビューを掲載しています。
スタッフ日記 2008年3月第3週に二人の写真があります。


秘密』パトリック・ブリュエル氏
アルジェリア生まれのユダヤ系フランス人。
シャンソン歌手としても有名な方。色男でした!


秘密』&『暗闇の女たち』ジュリー・ドパルデューさん
女優にはなりたくなくて、大学でユダヤ哲学を学び、
ヘブライ語もできるとのこと。笑いの絶えない可愛い方でした。

なお、クロード・ミレール監督がこの4月4日、パリ市内で永眠されました。ご冥福をお祈りいたします。

◆『三重スパイ』 原題:Triple Agent

監督・脚本:エリック・ロメール
出演:カテリーナ・ディダスカル、セルジュ・レンコ

1930年代パリ。ボルシェヴィキ政権が成立したロシアから亡命者を数多く受けいれていた時代。ロシア帝政軍の将校フョードルもギリシャ人の妻アルシノエと共に亡命してきた一人だ。表向きは在仏ロシア軍人協会の事務員として働き、アルシノエは自宅で油絵を描いて過ごしていた。スペインで内戦が勃発し、フョードルは出張することが多くなる。アルシノエが夫に毎日何をしているのかと問い詰めると、自分は諜報員だからすべての活動は秘密厳守だと答える。ある日、フョードルがパーティに出るためのドレスを新調しようと妻を連れて洋装店に赴く。ドレスの手直しが終わるまでの小1時間、フョードルは妻を残して外出する・・・

ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠、エリック・ロメールが未だ謎を残す実話を元に描いたスパイ物語。はたしてこの人物はどういう立場なのか・・・ 複雑な背景や人間関係にくらくらしながら、映画に惹きこまれました。生きるために、自分の立ち位置を考えなくてはいけなかった人々がいることに思いを馳せました。

2003年/ 115分/カラー

(咲)


★2012年4月21日(土)よりシアター イメージフォーラムにて5週間限定ロードショー

公式サイト >> http://www.eiganokuni.com/meisaku5-france/

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裏切りのサーカス(原題:Tinker Tailor Soldier Spy)

監督:トーマス・アルフレッドソン
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ブリジット・オコナー
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)、コリン・ファース(ビル・ヘイドン)トム・ハーディ(リッキー・ター)マーク・ストロング(ジム・プリドー)ジョン・ハート(コントロール)

1973年の東西冷戦下のイギリス諜報部(別名・サーカス/英国諜報部の所在地から由来した)の作戦失敗で、上司もろとも追い出された初老スパイ・スマイリー。
ほどなく上司は謎の死を遂げるが、引退したスマイリーの元に<もぐら=二重スパイ>を捜し出せと極秘命令が下る。絞り込まれた容疑者はかつての仕事仲間の4人。緻密な捜査を続けるスマイリーは徐々に核心に近づくが・・・。

『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン監督作品と聞いて楽しみにしていた。スパイ映画といえば「007」や「ミッション:インポッシブル」シリーズを思い浮かべるが、この作品にはスピーディなアクション、カーチェイス、洒落た会話などはない。
あるのは、任務のためか独り急ぎ足で歩く姿、ぼそぼそとした話し声、タバコの紫煙の中でぼーっと遠くを見つめる目…。スパイとは密かに任務を遂行するものだということを改めて教えてくれた。
決して万人受けしないし、気楽に観られるものではないが、ゲイリー・オールドマンを筆頭に、イギリスの名優たちの静かなる競演が素晴らしい。それに最後の最後まで、誰がスパイか、何が本当か嘘かが分からない緊張感で、久しぶりに頭の体操になった。

※今年、あたしの観た作品中で、眼鏡が似合った俳優さんベストワンは、ゲイリー・オールドマンさんが今のところ一番。 二番は『善き人』の主役・ヴィゴ・モーテンセン。三番は邦画『はさみHASAMI』の田村いちこ役(お笑いコンビ「大好物」)のなんしぃさん。 サングラスじゃなくて、眼鏡をずっとかけて出てくる設定は、映画の世界ではとっても少ないのは何故だろう? (美)

2011年/イギリス、フランス、ドイツ/カラー/128分/ドルビーデジタル
配給:ギャガ GAGA

★4月21日TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://uragiri.gaga.ne.jp/

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オレンジと太陽(原題:ORANGES AND SUNSHINE)

監督:ジム・ローチ
原作:マーガレット・ハンフリーズ「からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち」
脚本:ロナ・マンロ
撮影:デンソン・ベイカー
衣装デザイン:カッピ・アイルランド
音楽:リサ・ジェラルド
出演:エミリー・ワトソン(マーガレット・ハンフリーズ)、デヴィッド・ウェナム(レン)、ヒューゴ・ウィーヴィング(ジャック)、タラ・モーリス(アシュリング・ロフタス)

1986年のイギリス。ソーシャルワーカーのマーガレットは見も知らぬ女性シャロンに声をかけられる。幼いころ施設に預けられていた彼女は、たくさんの子どもたちとオーストラリアまで送られ、あちらの施設で育ったのだそうだ。大人になり、自分の生まれたところや親がどこにいるのか知りたくてわざわざやってきたのだという。子どもだけが?とすぐには信じられないマーガレットだったが、この件を独自に調査することになった。調べるうちに1970年まで「児童移民」が政府によって行われ、多くの子どもが「オレンジと明るい太陽の国」に送られていたことを知る。

マーガレット・ハンフリーズは実在の女性。ジム・ローチ監督は最初彼女の著書を読んでドキュメンタリーを作りたいと思ったのだそうです。2002年に会って話すうちに意気投合し、ドラマとして作る方向が定まり初の映画デビュー作となりました。マーガレットを中心にすえたリアルなストーリー、俳優陣の確かな演技は高い評価を得ました。
この児童移民は結局13万人にものぼったのだとか。施設にいた子どもたちが親の承諾もなしに、国や団体によってオーストラリアに送られ、過酷な労働をさせられたり虐待を受けたりしていたことは、マーガレットが丹念な調査で明らかにするまで伏せられていたようです。マーガレットは出会ってしまったこの問題を自分の仕事として誠実に続け、両方の国を行き来して数千の家族が再びまみえることに尽力しました。その活動は現在も続いており、この映画の製作中、2009年にオーストラリア、2010年にはイギリスの首相が事実を認めて謝罪したと資料にあります。(白)

2011年/イギリス/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ムヴィオラ
©Sixteen Midlands (Oranges) Limited/See-Saw (Oranges) Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation

★4月14日(土)より岩波ホールにてロードショー

公式 HP >> http://oranges-movie.com/

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アンネの追憶(原題:Mi ricordo Anna Frank  英題:MEMORIES OF ANNE FRANK)

監督・脚本:アルベルト・ネグリン
作曲・演奏・音楽監督:エンニオ・モリコーネ
出演:ロザベル・ラウレンティ・セラーズ、エミリオ・ソルフリッツィ、モーニ・オヴァディア

1935年、アムステルダム。小学校に通うアンネ・フランクは、同じユダヤ系の少女ハネリ・ホスラーと出会い、仲良くなる。13歳の誕生日、プレゼントのサイン帳に日記を書き始めるアンネ。程なく、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害が厳しくなり、父オットー・フランクは経営する会社の建物の本棚で入口を隠した裏の部屋に一家で身を潜めることを決意する。ハネリが訪ねてきたのを窓からそっと眺めるアンネ。1年後、ハネリが家族と共にナチスに捕らえられたことを知る。息を殺しながらの隠れ家の暮らしの中で、一緒に潜んでいた少年ペーターとの間に恋も芽生え、つかの間の青春の日々。やがて、ゲシュタポに見つかり、強制収容所に送られ、一家はばらばらになってしまう。戦争が終わり、父オットーはアムステルダムに帰るが、生還できたのは自分一人だと知る。会社の事務員ミープが大事に保管していたアンネの日記を受け取ったオットーは、日記を出版。アンネの親友ハネリが生き延びていたことを知ったオットーは父親代わりとなってハネリ姉妹をパレスチナへと送り出す。オットーから本を受け取ったハネリは、アンネがなりたがっていた作家になったことを知って喜ぶのだった。


(C) ITALIAN INTERNATIONAL FILM sri

映画の原作は、アンネの親友ハネリ・ホスラーのインタビューをまとめた「もうひとつの『アンネの日記』」(アリソン・レスリー・ゴールド著)で、アンネとの思い出やハネリ自身のつらい体験も語られているそうです。ホロコーストを生き延びたハネリ自身の思いも、もう少し映画で語ってほしかったところですが、なにしろ、「アンネ日記」は60カ国語以上の言語に翻訳され、発行部数は2500万部を超える大ベストセラー。どうしてもアンネの話を中心に置くことになってしまったのでしょう。
私自身、小学校5~6年生の頃に夢中になって読み、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害を知るきっかけになり、その後、ずっとホロコーストの実態を気にかけるようになりました。ユダヤ人への同情を煽られた思いもあります。大人になって、世界に目をむけると、酷い行為はナチス・ドイツだけでないことにも気づいていくのですが・・・。
「アンネ日記」の初版が発行されて、今年で60周年。今、またアンネ・フランクのことが語られるのは、戦争の絶えない世界で、反戦への思いを促すという意味で意義あることだと思います。一部の権力者によって引き起こされる戦争で犠牲になるのは、罪のない庶民であることを忘れてはならないでしょう。(咲)

2009年/イタリア/英語/カラー/99分
提供:パラディソ  配給:ゴー・シネマ

★2012年4月14日、有楽町スバル座 ほか 全国ロードショー

公式 HP >> http://www.gocinema.jp/anne/

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マンイーター (原題:ROGUE)

監督:グレッグ・マクリーン
脚本:グレッグ・マクリーン
撮影:ウィル・ギブソン
出演:ラダ・ミッチェル(ケイト)、マイケル・ヴァルタン(ピート)、サム・ワーシントン(ニール)、ミア・ワシコウスカ(シェリー)

世界遺産のオーストラリア北部のカガドゥ国立公園を訪れたシカゴからやってきた旅行ライターのピート。
アレンは余命を宣告された妻と娘シェリーと三人で思い出にしょうとクルーズに参加。
エヴェレット夫婦は観光旅行。
他に、一人参加は、カメラ・マニアのサイモン、妻の遺灰を川にまきたい夫、きままな一人旅の中年女性。
以上9人の乗客は、女性熟練ガイド・ケイトとその愛犬と共に大自然のクルーズが船出した。
船は絶景の中、ワニがうじゃうじゃいる川にむかって餌を投げたりして楽しんでいたが・・・。

試写が終わって、ある男性の方が「巨大ワニが一匹でよかったねぇ」といわれたので、皆で笑ってしまった。あれが何匹もいたら目もあてられない!それほど凶暴で、人間などはもちろんひと飲み込みだ。
あまりに口が大きいから(体長は8メートル)鵜呑みにされたら中でしばらく生きてたりして! わぁ~嫌な想像して、すみません!
怖さで体が硬直する者、自分だけ助かろうとする者、危険をおかしても水に入る者、恐怖と人間の本性を描いているが、目の前で次々と飲み込まれてしまったら、誰が人間らしく、物ごとを考えられるだろうか。
人喰いワニのリアルな動きに目を見張ったが、本当に一匹でよかった! (美)

2007年/アメリカ・オーストラリア合作/カラー/92分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:フェイス・トゥ・フェイス+ポニー・キャニオン

★4月14日より TOHOシネマズ日劇他にて全国ロードシヨー

公式 HP >> http://www.maneater.jp/

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台北カフェ・ストーリー(原題: 第36個故事 英題:Taipei Exchanges)

監督・脚本:シアオ・ヤーチュアン(蕭雅全)
製作総指揮: ホウ・シャオシェン(侯 孝賢)
出演:グイ・ルンメイ(桂綸?)、リン・チェンシー(林辰唏)、チャン・ハン(張翰)、中孝介(特別出演)

お菓子作りが大好きなドゥアルは会社勤めを辞め、念願だったお洒落なカフェをオープンする。母親から、自由気ままに暮らしている妹チャンアルをカフェで働かせるように言われ、二人で開店の日を迎える。思いもかけずたくさんのカラーの花を入手して困惑しているドゥアルに、チャンアルは来店した客が持参した物と交換することを提案する。さらに、物々交換をカフェの名物にしてしまうチャンアル。妹の夢は、物々交換で車を手に入れることだ。やがて、客の持ち込んだ変わった物たちで、お洒落なカフェはいっぱいになってしまう。ある日、一人の男性が世界35都市で集めた35個の石鹸を持ってきて、何か特別なものと交換したいという。石鹸にまつわるエピソードを一日一話ずつ語る男性。ドゥアルはそれを絵にして石鹸に添える。そうして、35の物語を語り終える日が来る・・・

お洒落なカフェで繰り広げられる、ちょっと風変わりな人間模様。その合間に、台北の街角でのインタビューが突然挟み込まれて、現実に引き戻される。「あなたにとって、一番 大切なものは?」という問いに、真面目に答える人たち。そしてまた、カフェでの石鹸を巡るエキゾチックな物語の世界に・・・ 夢見る姉に、現実的な妹が対照的で面白い。自分にほんとに必要なものって何だろう・・・ 自分のやりたいことって何だろう・・・と考えさせれます。(咲)

2010年/台湾/中国語/カラー/81分
配給・宣伝:ユナイテッドピープル

★2012年4月14日、シネマート六本木にて公開

公式 HP >> http://www.taipeicafe.net/

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ロードショーとスクリーン ブームを呼んだ外国映画

時期:4月11日(水)より7月29日(日)まで  ※月曜日休館
場所:東京国立近代美術館フィルムセンター(大ホール)【東京都中央区京橋3-7-6】
★全17作品35㎜プリント上映

輸入映画の質的向上と輸入配給事業の健全な発達を図るため、国内資本の外国映画配給会社による社団法人外国映画輸入配給協会(外配協)が発足して/カラー、今年で50年目を迎えます。この機会にあわせて、フィルムセンターと外配協が、「ロードショーとスクリーン ブームを呼んだ外国映画」と題して記念の上映会を共同で開催されます。 主として1970年代/カラー90年代に日本公開された外国映画を特集する本上映会では、破格の製作費を投じたパニック超大作/カラーアクション、コメディ、ホラーまで、多彩なジャンルにわたる外国映画、計17本を上映。大ヒットを記録した『キングコング』(1976年公開)から、デビッド・リンチ監督作『エレファント・マン』(1981年公開)、80年代ミニシアター・ブームの先駆けとなった『ジェラシー』(1981年公開)まで、ブームを呼んだ外国映画の数々をフィルムセンターのスクリーンでお楽しみ下さい。

◆上映作品
大脱走 ('63/アメリカ/監督:ジョン・スタージェス/173分/35mm//カラー)
キングコング ('76/アメリカ/監督:ジョン・ギラーミン/134分/35mm//カラー)
カサンドラ・クロス('76/イタリア=イギリス/監督・脚本:ジョルジ・パン・コスマトス/128分/35mm/カラー)
コンボイ('78/アメリカ=イギリス/監督:サム・ペキンパー/114分/35mm/カラー)
ジュリア(‘77/アメリカ/監督:フレッド・ジンネマン/118分/35mm/カラー)
サスペリアPART2('75/イタリア/監督・原作・脚本:ダリオ・アルジェント/106分/35mm/カラー)
Mr.BOO ! ミスター・ブー('76/香港/監督・脚本・出演:マイケル・ホイ/100分/35mm/カラー)
エレファント・マン('80/アメリカ=イギリス/監督・脚本:デビッド・リンチ/124分/35mm/白黒)
ジェラシー('79/イギリス/監督:ニコラス・ローグ/122分/35mm/カラー)
エンドレス・ラブ('81/アメリカ/監督:フランコ・ゼフィレッリ/116分/35mm/カラー)
ハウリング('81/アメリカ/監督:ジョー・ダンテ/90分/35mm/カラー)
愛と哀しみのボレロ('81/フランス/監督・脚本:クロード・ルルーシュ/184分・/35mm・/カラー)
ランボー('82/アメリカ/監督:テッド・コッチェ/93分/35mm/カラー)
プロジェクトA('83/香港/監督・脚本・出演:ジャッキー・チェン/105分/35mm/カラー)
ストリート オブ ファイヤー('84/アメリカ/監督・脚本:ウォルター・ヒル/94分/35mm/カラー)
フィールド・オブ・ドリームス('90/アメリカ/監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン/107分/35mm/カラー)
ターミネーター2('91/アメリカ/監督・脚本:ジェームズ・キャメロン/137分/35mm/カラー)

主催:一般社団法人外国映画輸入配給協会/東京国立近代美術館フィルムセンター
お問い合わせ先:ハローダイヤル 03-5777-8600
料金:当日券:一般¥1,000 高・大・シニア(65歳以上):\800 小・中:\600
         キャンパスメンバーズ:学生\650/教職員\750
東京国立近代美術館60周年を記念して、誕生日当日のご入場は無料となります(証明できるものをご提示ください)。

東京国立近代美術館フィルムセンター 公式 HP >> http://www.momat.go.jp/

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ビースト・ストーカー/証人(原題:証人/BEAST STALKER)

監督:ダンテ・ラム
脚本:ダンテ・ラム
アクション指導:トン・ワイ
出演:ニコラス・ツェー(刑事トン)、ニック・チョン(犯人・ホン)、チャン・ジンチュウ(女検事・アン)

刑事トンは、ある事件で罪もない少女の命を奪ってしまい、心に大きな痛手を受けていた。その3ヵ月後、亡くなった少女の母親である検事アンのもう一人の娘が誘拐されてしまう。
犯人は元ボクシング選手のホン。病気の妻の高額な治療費のために暗殺者として犯罪に手を染めていたのだ。
トンは責任を感じ、ホンを追うが、一方犯人のホンも、トンやアンに復讐しなければならない理由があった・・・。


©2008 Emperor Classic Films Company Limited All Rights Reserved.

2008年制作。こんな面白い香港映画なのに今まで日本で公開されていなかったことに驚く。 同じ監督作品に『密告・者』があるが、この作品はそれ以上の出来だと思う。
最初の約7分ほどでニコラス・ツェーのすごく恐くて険しい表情と優しい表情が見られ、人の目線位置のリアルなカーチェイス、そして車がぶつかるスローモーションの見事な映像が堪能できる! ここまでで入場料の半分は軽く元が取れる!
もう公開しているからこれ以上書かないが、是非観ていただきたい作品。
※ニコラス・ツェーがすぐ鼻血を出すので「病気か? 最後は白血病かなにかで死ぬのか?」と先読みし過ぎたが、この鼻血はきっと涙の変わり、憤怒の変わりだったのだろう。

※名古屋は試写がなかったのでDVDで見せていただいたが、それでこの迫力と見応え! 名古屋は5月。待ちきれないから東京に行った時、一番に大画面で観るぞ~。

(美)

2008年/香港/カラー/109分/ドルビーSRD
配給:ブロードメディア・スタジオ

★4月7日よりシネマスクエアとうきゅう、5月12日名古屋センチュリーシネマほか全国順次公開

公式 HP >> http://beaststalker.net/

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核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝(英題:Atomic Wounds)

監督・脚本・撮影・録音:マーク・プティジャン
助監督・編集:瀬戸桃子
日本語版ナレーション:染谷将太
出演:肥田舜太郎

第2次大戦中、軍医として広島陸軍病院に勤務していた肥田医師は、8月6日の原爆投下に遭遇し自身も被ばくしながら治療に当たる。直接熱線を浴びなかった人までが次々と死んでいった原因が放射線というものであった、とは30年も後に知った。戦後も被ばく者の治療と核廃絶運動に献身してきた肥田医師の歩みを紹介する。2006年フランス人監督により作られた作品だが、今こそもう一度観るべきものとして一般上映されることになった。原発事故の後の講演をまとめた『311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より』(アップリンク製作/31分)も同時上映。

1917年生まれの肥田医師は、医療活動から3年前に引退しましたが、95歳の今も「当時の惨状を知る医師はもう自分だけだから」と自身の被ばく体験を語り続けています。原発事故の後、取材や講演依頼が急増。立ったまま1時間、1時間半の熱のこもった講演を毎週のようにこなしています。日本国中、いまや安全な場所などどこにもないといいます。大地や水にとけこみ、身体にもとりこんでしまった放射性物質は消えることがなく、ずっと放射線を出し続けるのだそうです。『100,000年後の安全』を観たときも思いましたが、全く人間はなんというものを作り出してしまったのだろうと震撼します。決して元に戻せない&消すこともできないものとどう対処していけばいいのか、肥田医師の言葉に耳を傾けてください。(白)

2006年/フランス/カラー/53分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アップリンク

★4月7日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次公開

公式 HP >> http://www. uplink.co.jp/kakunokizu/

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トテチータ・チキチータ

監督:古勝敦
脚本:古勝敦、北里宇一郎
撮影:高橋清
音楽:棚谷祐一
出演:豊原功補(木村一徳)、寿理菜(一ノ瀬凛)、葉山奨之(大越健人)、松原智恵子(木暮百合子)、大鶴義丹(一ノ瀬孝一)、石堂夏央(玲子)、佐藤仁美(森下)

東京で事業に失敗し、なにもかもなくした木村一徳は不思議な少女に出会う。死ぬことを思いとどまって新しい仕事につき、福島にやってきた。一徳を知っている口ぶりの少女は一ノ瀬凛。両親の離婚で父と福島に来た。原発から避難してきた高校生大越健人も凛と出会う。一徳と再会した凛は、「前世で私たちは家族だった。健人が父、凛が母、一徳は息子」「今私たちを呼んでいる人がいる。だから生まれ変わってここに集まったの」と言う。半信半疑の一徳と健人。もう一人の家族とは、一徳が詐欺まがいのリフォームの仕事の売り込みで訪れた一人暮らしの老女、木暮百合子だった。

思いがけない震災と原発事故にみまわれ、一時は中止を危ぶまれた作品。多くの応援を得て福島の全県で撮影を敢行。別れた家族が生まれ変わって出会うファンタジーではありますが、かたや戦争、かたや災害という理不尽な力に否応なくまきこまれた人々のリアルな生活や感情が描かれています。かつてアイドルスターだった松原智恵子さんが、今も清楚で可愛らしいのに驚きました。(白)

2011年/日本/カラー/95分/ビスタ/HD
配給・宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
© 2012 映画「トテチータ・チキチータ」製作委員会

★福島県先行上映、4月7日(土)より銀座シネパトスほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.totecheeta-movie.jp/

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キリング・ショット(原題:CATCH.44)

監督・脚本:アーロン・ハーヴィー
撮影:ジェフ・カッター
音楽:ジョー・パガネッリ
出演:フォレスト・ウィテカー(ロニー)、ブルース・ウィリス(メル)、マリン・アッカーマン(テス)、ニッキー・リード(カラ)、デボラ・アン・ウォール(ドーン)、シェー・ウィガム(ビリー)、ジル・ストークスベリー(フランシーヌ)

真夜中のラスベガス。ドラッグ・ディーラーのテスは、ボスのメルの命令で郊外のダイナーへ向かっていた。仲間のカラとドーン同様簡単な仕事だと思っていたが、途中で警官に止められて時間をくってしまう。到着したダイナーには予想に反して数組の先客がいた。時間になっても誰がターゲットかわからない。痺れをきらして銃を構えるとなんと店の女主人がライフルで応戦。さらにコックがテスに狙いを定める。「お前らを殺せばメルから大金がもらえる」・・・テスは耳を疑う。

アーロン・ハーヴィー監督の長編2作目。スピーディな展開のクライム・サスペンス作品です。ブルース・ウィルスが歌手としても活動していたとは、この中のエピソードで知りました(可愛い子ちゃんたちに車の中で歌のテープをダサイとけなされる)。
狭いダイナーの中でのみつどもえの銃撃戦。このスタイルはよく香港映画で見かけましたが、そのたびに早く引き金引いたもん勝ちなのに~と思いましたっけ。睨み合ってセリフ言ってるまに撃て!とは、映画鑑賞作法上まずいでしょうか・・・。(白)

2011年/アメリカ/カラー/94分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
©2011 CATCH44 AP LLC ALL RIGHTS RESERVED.

★4月7日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.killing-shot.jp/

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KOTOKO

監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也
原案・企画・音楽・美術:Cocco
出演:Cocco(琴子)、塚本晋也(田中)

琴子にはものが二重に見える。歌っているときだけ世界はひとつになる。琴子は一人で幼い息子大二郎を育てているが、子どもを守ろうとするあまり、大きな恐怖におしつぶされそうになる。パニックになった琴子は児童虐待を疑われ、大二郎は沖縄の姉に預けられることになった。生きていることを確かめるように自傷行為を繰り返す琴子の前に、歌に感動したと田中という男が現れる。田中は琴子に献身的に尽くし、琴子にも落ち着いた生活がめぐってくるのだが。

塚本監督が尊敬するシンガーソングライターCoccoとほとんど二人だけで作ったプライベートフィルムのような作品。初めての子どもを守りたい母親の必死さは、今この時期だからこそ余計に胸に響きます。父親になり、最愛のお母様を看取った塚本監督の母性への思いがぎゅっとつまっています。この作品を観て初めて聞いたCoccoの歌声には力強さと切なさがありました。映画初主演とはいえ、歌手としての表現力が、音楽や美術などいろんな方面に現れています。子どもを抱っこしながら「ちゃんとできない~!」と泣き泣き料理をする場面に「とりあえず背中におんぶしなさい」と言いたくなりました。
昨年のベネチア映画祭オリゾンティ部門でグランプリを受賞し、長いスタンディングオベーションを受けた作品。(白)

2010年/日本/カラー/91分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:マコトヤ
©2011 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

★4月7日(土)テアトル新宿ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.kotoko-movie.com/

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花開くコリア・アニメーション2012

【開催日程】
 東 京:4/7(土)・4/8(日)@アップリンク・ファクトリー
 大 阪:4/14(土)~4/19(木)@PLANET+1
 名古屋:5/12(土)・5/13(日)@愛知芸術文化センター

韓国インディーズ・アニメーション界の登竜門的位置づけにある映画祭「インディ・アニフェスト」の2011年受賞作を中心に短編アニメーション25作品を「Life」「City」「Nature」の3プログラムで紹介。また、アニメーション界の“カンヌ”ことアヌシー国際アニメーション映画祭招待作で、『息もできない』のキム・コッピが声優に初挑戦した話題作・長編『家』も特別上映。各会場には韓国からゲストが来場し、トークイベント・ワークショップ・交流会なども開催されます。


『ラクダたち』                 『家』


『ソウルに暮らす子猫』               『Alone』   

各会場のチラシ
<東京 会場> http://anikr.com/2012/leaflet_tokyo.pdf
<大阪 会場> http://anikr.com/2012/leaflet_osaka.pdf
<名古屋会場> http://anikr.com/2012/leaflet_nagoya.pdf

公式 HP >> http://anikr.com/

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タイタニック 3D (原題:TITANIC)

監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
製作:ジェームズ・キャメロン/ジョン・ランドー
製作総指揮:レイ・サンキーニ
撮影:ラッセル・カーペンター
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット ビリー・ゼーン キャシー・ベイツ フランシス・フィッシャー ビル・パクストン バーナード・ヒル ジョナサン・ハイド ヴィクター・ガーバー デヴィッド・ワーナー グロリア・スチュアート スージー・エイミス

ジェームズ・キャメロン監督が1997年に制作費2億ドルを投じて完成させ、世界中で大ヒットとなった『タイタニック』。実際のタイタニック号が沈没してから100年にあたる2012年、『アバター』で3D映画を世界に広めたキャメロン監督自ら、最新の技術を用いて3D変換をした作品。
1912年、イギリスの港から豪華客船タイタニック号が出港。政略結婚に絶望するローズ(ケイト・ウィンスレット)は、甲板から海に身を投げようとするが、そこに居合わせた青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)に助けられる。それを機に二人は惹かれ合っていくのだが、ローズの婚約者の策略でジャックは宝石泥棒に仕立て上げられ警備員室に閉じ込められてしまう。その頃、船が巨大な氷山と接触して浸水が始まり、船体が傾いていく……。


(c) 2011 Twentieth Century Fox and Paramount Pictures. All Rights Reserved

「『タイタニック』は劇場でこそ観るべき映画だ」と監督が話している通りである。タイタニック号の中で起こる閉鎖感は、映画館という閉ざされた空間で観ることでよりその世界観を感じられるし、3Dになって帰ってきた映像はなにより家のテレビで見るそれとは迫力が違う。ヒューマンドラマあり、パニック要素あり、ラブストーリーあり。やっぱり良い作品というのは何回見ても面白い。有名なシーンや音楽しか知らない人、DVDやビデオでしか見たことのない人、もちろん公開当時映画館へ観に行った人も、この機会に是非また映画館へ行き『タイタニック』の新しい魅力を堪能してほしい。(明)

2012年/アメリカ/カラー/194分/2D 3Dデジタル
配給:FOX

★4月7日(土)TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー

公式 HP >> http://www.foxmovies.jp/titanic/

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コーマン帝国(原題:Corman's World)

監督/製作:アレックス・ステイプルトン
出演:ロジャー・コーマン/ロバート・デ・ニーロ/ジャック・ニコルソン/マーティン・スコセッシ/ロン・ハワード/ジョナサン・デミ/ピーター・フォンダ/ブルース・ダーン/ポール・W・S・アンダーソン/クエンティン・タランティーノ/デヴィッド・キャラダイン/ピーター・ボグダノヴィッチ/ジョン・セイルズ/イーライ・ロス

ロジャー・コーマン。インディペンデント映画の神、B級映画の帝王、世界一ケチで世界一多作な映画人。監督作50本以上、プロデュース作500本超! ジャンルは、バイオレンス!ロック!エロ!宇宙!・・・と多彩。映画作りのモットーは、「早く!安く!そして儲ける!」。予算や許可がなくても撮りたいものを撮る。警官が来たらカメラを持って逃げる。センスは二の次。いかに安く観客の求める映画を仕上げるか。まさにファストフードのように量産した映画は、大衆に大受け。ジャック・ニコルソン、フランシス・フォード・コッポラ、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノなどなど、コーマンの率いる低予算作品の現場から巣立った著名人たちが、コーマンの人物像を語る。「礼儀正しくて、紳士で、あんな暴力的な映画を撮ると思えない」「上品だけど心の中は煮えたぎっている」という言葉が並ぶ。アメリカ映画界最重要人間、コーマンの本質に迫ったドキュメンタリー。

2009年にはアカデミー賞名誉賞も受賞してしまったロジャー・コーマン。風貌は、まさに沈着冷静な大学教授。好きな映画監督は、ベルイマン、アントニオーニ、トリュフォー、黒沢・・・。南部の人種差別反対の映画も1本作ったことがあるそうですが、居並ぶB級作品からはとても想像できない上品な紳士。どれも私好みの映画ではなさそうだけど、思わずどんな作品を作っているのか観てみたくなった。奥様のジュリー・コーマンさんが語る結婚の経緯や、夫からのほんの30分程の指示で映画を監督させられてしまった話も楽しい。「キープ・ギャンブリング!」「チャンスをつかみ続けろ!」という言葉を私も心に刻みたい。(咲)


作っている作品と監督さんご自身の風貌がまるっきり正反対。信頼おける病院長、大学教授っていう温厚そのものの方。東京国際に急遽来日され六本木に激震号外が出たほど。
これは見逃さないでほしい。きっと情の深い、男義のある方とお見受けした。最後ジャック・ニコルソンが涙目になって、彼を語っていたシーンに感動した。(美)

2011年/アメリカ/カラー/91分/ビスタ/デジタル
提供:キングレコード
配給・宣伝:ビーズインターナショナル

★2012年4月7日(土)、新宿武蔵野館ほか全国にて爆裂ロードショー!

公式 HP >> http://www.corman-movie.com/

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別離(ペルシア語原題:Jodaeiye Nader az Simin 英題:Nader and Simin, A Separation)

製作・監督・脚本:アスガー・ファルハディ(『彼女が消えた浜辺』)
出演:レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ、ババク・カリミ

夫ナデルに対し離婚申し立てをした妻シミン。判事に対し、暴力、麻薬、お金の問題、どれも該当しない、夫はあくまでいい人だと、さらりと答える。11歳になる娘の教育のためにやっと移住許可を取ったのに、夫は父親が認知症になり、父を置いては外国にいけないというだけなのだ。離婚を認められず、シミンは実家に帰ってしまう。ナデルは認知症の父親の介護のために家政婦ラジエーを雇う。ラジエーの夫は失業中だが、妻が働くことには反対していて、こちらの夫婦も問題を抱えている。信心深い彼女は、他人である男性を着替えさせたりして身体に触れることが罪にならないかという不安も持っている。ある日、ラジエーが父を縛り付けて外出したのを知ったナデルは、怒って彼女を突き飛ばしてしまう。ラジエーは流産し、19週目の胎児を死なせた「殺人罪」の容疑でナデルは訴えられる。ラジエーの流産はナデルのせいなのか? 逆にナデルはラジエーを父に対する虐待容疑で告訴する・・・

昨年、アジアフォーカス福岡国際映画祭で『ナデルとシミン』のタイトルで上映された折に観た時には、離婚調停の場面で始まる本作に、1999年山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された『イラン式離婚狂想曲』を真っ先に思い出した。離婚したい女性たちの弁の立つこと! イランでは、男は自由意志で離婚できるのに、女は判事が納得する離婚理由を申し立てないといけないから必死だ。何も離婚しなくても移住してしまえば・・・と思うが、イランでは女性が出国するには、既婚者は夫、未婚者は父親の許可がいるという事情がある。
今回、再度観てみたら、家政婦ラジエーとの裁判沙汰の方に目がいった。裁判所でちょっと騒いだだけで、「騒乱罪で3日間拘留させるぞ」などという言葉が出てきたりして、イランの社会状況をさりげなく語っているのも憎いなと思った。また、英語教師をしている颯爽としたシミンと、貧しいけれど信心深いラジエーとの対比も、まさに今のイランの中流階級と貧困層の二極化を表していて興味深い。イランの社会が見える作品だが、一方でテーマはどこの国でもありえる普遍的なもの。冒頭、離婚訴訟のところで、判事が「この国は子供に望ましい?」と聞く場面がある。この問いにも、自分の居場所はここでいいのか?とドキッとした。
ほんとによく書き込まれた脚本で、アカデミー賞の脚本賞にもノミネートされたのも納得。
できれば外国語映画賞と共に取って欲しかった! 思慮深く大人びている娘は、11歳には見えないと何人かの人に言われたが、演じていたのは監督の実の娘で実年齢。アカデミー賞授賞式では、さらに大人びた娘さんの姿も見えた。監督と共に彼女の活躍も期待したい。(咲)

2011年/イラン/123分/カラー/デジタル/1:1.85/ステレオ
配給:マジックアワー、ドマ

◆『彼女が消えた浜辺』特別上映

『別離』アカデミー賞外国語映画賞受賞記念
2012年3月17日(土)~3月23日(金)連日15:00、19:00
場所:Bunkamuraル・シネマ

シネジャの作品情報 →http://www.cinemajournal.net/review/2010/index.html#about_elly
アスガー・ファルハディ監督インタビュー →http://www.cinemajournal.net/special/2010/about_elly/index.html

★4月7日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.betsuri.com/

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レッド・ティアーズ SWORD OF BLOOD

監督:辻本貴則
脚本:辻本貴則
撮影:辻本貴則
音楽:吉田光
アクション監督:浅井宏樹
特殊造形監修:西村喜廣
出演:加藤夏希(御手洗紗代子)、石垣佑磨(野島鉄雄)、倉田保昭(三島巌次郎)、山田果林(紗代子の母)

都内各所で頭部が切断された死体が続けて発見され、失踪者もたくさん出ていた。事件を追う刑事・野島鉄雄は、失踪者と一緒に証拠写真に写っていた美しい女性・紗代子に心を奪われてしまう。
その後、偶然に暴漢に襲われそうになっていた紗代子を助け、それがきっかけで清純な交際をするが、紗代子には誰にも言えない悲しい宿命があった・・・。

国際的な活躍を続けるアクション界の伝説・倉田保昭が自らプロデュースして、倉田自身の映画出演作として100本目となる記念的な作品。
和製ゾンビ映画としてこんなに面白いのはなかなかない!私好み!
アクション良し!女良し!音良し!(音響がとってもクリア)結末良し!ラブ有り!(それも純愛!)
謎の美女・御手洗紗代子を演じるのは加藤夏希。必死で生きている、必死で愛している、必死で庇おうとする女性を体いっぱいで表現していた。痛い痛い場面もあるが納得できた・・・。
血しぶきや血まみれのシーンがうまい!とおもってプレス資料を後から見て大納得! 特殊造形が『片腕マシンガール』の西村喜廣氏だった。タイミングが命の氏の仕事ぶりををメイキングで見たいとつくづく思った作品だった。(美)

2011年/日本/カラー/88分/ビスタサイズ
配給:ユナイテッド エンタテインメント

★4月7日よりシネマート新宿、4月14日よりシネマート心斎橋にてロードショー公開

公式 HP >> http://www.redtears.net/

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片桐はいり×キネカ大森 ≪キネカよ、今夜も有難うVol.2≫

キネカ大森にて、3/31~4/6の期間に、片桐はいりさんの企画により、【キネマ旬報コラボ企画 キネカよ、今夜も有難うvol.2】と題して、ツァイ・ミンリャン監督作品『西瓜』と『楽日』が上映されます。 初日3/31の夜にはトークショーも開催されます。

<トークショー>

【日時】
3月31日(土)最終回『楽日』18:00の回、上映終了後

【登壇予定ゲスト】
片桐はいりさん(大森出身の地元俳優)
三田村恭伸さん(「楽日」出演俳優)
篠原弘子さん(プレノンアッシュ代表)

【入場料金】
2本立て:一般1300円、学生・シニア1000円
名画座キネカードを利用可能。

※整理券の案内に関しては下記サイトをチェックして下さい。

トークショーの後・映画を語りたい方達でお茶&座談会があります!
(ゲスト3名も参加予定)

<お茶会>

【日時】
トークショー後(カウンター前に集合)
【会場】
キネカ隣「サクティ」

キネカ大森の案内ページ >> http://www.ttcg.jp/cineka_omori/topics/detail/12483

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ヘルプ~心がつなぐストーリー~(原題:The Help)

監督・脚本:テイト・テイラー
原作:ケイト・ストケット著「ヘルプ 心がつなぐストーリー」集英社文庫刊
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
オリジナル・サウンドトラック:ユニバーサル ミュージック インターナショナル
出演:エマ・ストーン(スキーター)、ヴィオラ・デイヴィス(エイビリーン)、オクタヴィア・スペンサー(ミニー)、ブライス・ダラス・ハワード(ヒリー)、ジェシカ・チャスティン(シーリア)、アリソン・ジャネイ(シャーロット)、シシー・スペイセク(ミセス・ウォルターズ)

1960年代のアメリカ南部。上流階級の家に生まれたスキーターは黒人メイドの存在を当たり前として育った。子どものころから家にいたメイドを慕っていて、大学生活を終えて再会できるのを心待ちにしていた。しかし大学を終えて故郷に戻ると自分を育ててくれたメイドはやめており、黒人差別はさらに激しくなっていた。地元の新聞社に職を得たスキーターは家事にまつわる記事を書くため、友人の家のメイド、エイビリーンと話す機会ができた。スキーターはメイドの立場からの本を書きたいと打ち明けるが、エイビリーンは「それがどんなことか貴女はなにもわかっていない」と拒絶する。メイド専用のトイレを作る運動をしているヒリーは、メイドのミリーが自宅のトイレを使ったと首にしてしまう。子沢山のうえ、飲んだくれの亭主のいるミリーの収入が途絶えてしまった。ミリーの親友であるエイビリーンは勇気をふりしぼってスキーターに話をする。

彼女たちの話を聞き書きするスキーターが主人公ではありますが、本当の主人公はエイビリーンとミリーをはじめとする「ヘルプ」と呼ばれる黒人メイドたちです。幾人もの話を聞くうち、スキーターは匿名にすれば大丈夫という自分の考えが甘かったことを知ります。エイビリーンとの友情を育んだスキーターの成長物語でもあります。生まれながらの環境に疑問を持たずにいる白人たち、あきらめているヘルプたち、個性豊かな登場人物たちが物語を彩ります。ミリー役のオクタヴィア・スペンサーがアカデミー賞助演女優賞を獲得、小さな小錦みたいな愛嬌のある人でドラマの要となっています。ジェシカ・チャスティンも好演。憎まれ役のヒリーはロン・ハワード監督の娘ブライス・ダラス・ハワードが演じてこれもうまいです。原作も一気に読めるほど面白かったです。出版社に持ち込んで断られ続けたというのが信じられません。(白)

2011年/アメリカ/カラー/2時間26分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
  配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
© 2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

★3月31日(土)、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

公式 HP >> http://disney-studio.jp/movies/help/

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少年と自転車(原題:LE GAMIN AU VELO)

監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
撮影:アラン・マルコァン
美術:イゴール・ガブリエル
出演:セシル・ドゥ・フランス(サマンサ)、トマス・ドレ(シリル)、ジェレミー・レニエ(シリルの父)

ただ、一緒にいてくれたら、それだけでいい。
12歳のシリルは自分を施設に預けた父からの連絡を待っている。いつまでも迎えにこないのを心配して施設を抜け出し、もといた家に行ってみるが空っぽになっていた。大事にしていた自転車もない。美容院を経営するサマンサはシリルの探していた自転車を見つけ出し、買い戻してくれた。シリルはサマンサの優しさにすがり、週末だけ里親になってくれるよう頼み込む。

『息子のまなざし』『ある子ども』と秀作を送り出してきたタルデンヌ兄弟の新作。カンヌ映画祭コンペでグランプリを受賞しました。映画宣伝で来日した際、「屋根に上って親の迎えを待ち続ける子ども」のエピソードを聞いて着想を得たのだそうです。子どもは親をそんなにも欲しているのに、親のほうは・・・という現実。映画のシリルには幸いサマンサという女性と出会う幸運が用意されて、優しい映画になっています。サマンサには仕事も恋人もあり、シリルと同じほど不幸なわけではありません。足りないものを補い合うような設定が多いのでちょっと意外でした。演じるセシル・ドゥ・フランスはミニスカートの似合うかわいこちゃんタイプだと思っていましたが、いつのまにかたくましい母性も感じる年頃になっていました。必死で父親を求めるシリル役のトマス・ドレの赤いTシャツに、『黒い土の少女』を思い出しました。(白)

2011年/ベルギー、フランス、イタリア/カラー/87分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ビターズ・エンド
© Christine PLENUS

★3月31日(土)よりル・シネマほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/jitensha/

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ルート・アイリッシュ(原題:ROUTE IRISH)

監督:ケン・ローチ(『麦の穂をゆらす風』『エリックを探して』)
出演:マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ、ジェフ・ベル、タリブ・ラスール、クレイグ・ランドバーグ、トレヴァ-・ウィリアムズ、ジャック・フォーチュン

2007年、英国リバプール。イラクに民兵として参戦し命を落とした親友フランキーの葬儀に参列するファーガス。5歳の頃から将来一緒に世界を回るのが夢だった二人。月1万ポンドを非課税で稼げるとイラクに誘ったのはファーガスだった。遺品の携帯電話に残された画像の中の言葉を翻訳してもらおうと、フランキーはイラク出身のミュージッシャン、ハリムを訪ねる。誕生日を祝って踊る人たちの動画に続き、イラクの少年が銃殺される瞬間を写した動画が残っていた。民間人の家族を殺したと同僚ネルソンを責めるフランキーの声も。実は、フランキーが亡くなった日、ファーガスの留守電に「大事な話がある。今夜電話が欲しい」とメッセージが残されていた。フランキーは何を話したかったのか・・・ 

フランキーが命を落としたのは、「ルート・アイリッシュ」と呼ばれるバグダッドの空港と市内の米軍管理区域グリーンゾーンを結ぶ12キロの道路。2003年の米軍によるイラク侵攻以降、テロ攻撃の第一目標とされ、世界一危険な道路として知られているそうです。その道をフランキーはなぜ通らなくてはならなかったのか・・・と、推理が進んでいきます。
本作は、職がなく、高額の報酬を貰える民兵として戦争に赴いた英国人の悲哀を軸に描いていますが、アメリカのイラク侵攻で傷ついたイラクの庶民にも眼差しを向けた作品。監督は、イラク戦争を「イラクの人々に対する犯罪」と位置づけ、「米国人兵士が最大の犠牲者かのような描き方をしている米国映画を観るとウンザリ」と、製作の動機を語っています。米国政府の政策で参戦し犠牲になった米国人兵士も、もちろん戦争の犠牲者。戦争さえ、この世からなくなれば・・・と、ほんとに悲しくなります。
本作の中で、少年を銃殺した男が、少年が携帯を振り回していたのは、何かの合図だと思ったと銃殺を正当化しています。戦争状態の中で、こういう誤解で命を落とす民間人もほんとに多いのではと思います。
ところで、先日、古本屋さんで「星と風のバグダッド」(高橋英彦著)という昭和55年に発行された本を見つけました。まだイラン・イラク戦争も始まる前、イラクに大勢の日本人がイラク開発のために駐在していた時代。仕事の合間にイラク各地をスケッチしながら旅したエッセイには、心優しいイラクの人たちの姿が描かれています。誰が後の戦争状態を想像したでしょう・・・ (咲)

2010年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン/ 109分/カラー
配給:ロングライド

★2012年3月31日銀座テアトルシネマほか 全国ロードショー

公式 HP >> http://www.route-irish.jp/

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ドライヴ(原題:DRIVE)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ホセイン・アミニ
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェルASC
音楽:クリフ・マルチネス
出演:ライアン・ゴズリング(ドライバー)、キャリー・マリガン(アイリーン)、アルバート・ブルックス(バーニー・ローズ)、ブライアン・クランストン(シャノン)

天才的なドライブテクニックを持つ孤独で寡黙な男は、昼はカー・スタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手。街の道という道、ちょっとした隠れ場所など熟知している。
そんな彼が同じアパートに住むアイリーン親子(息子)とエレベーターに乗り合わせたり、偶然自動車の故障をなおしたりしたのがきっかけで親しくなっていく。
しばらくしてアイリーンの夫が服役を終えて帰ってきたが、本心から再生を誓う夫にアイリーンは、ドライバーに心を残しながら別れを告げる。彼もアイリーン家族から引くが・・・。

このコンビがなかなかいい。男は『ラースと、その彼女』『ブルー・バレンタイン』のダイアン・ゴズリング。女はキャリー・マリガン!!!!(すっごく可愛かった・・・)
この女と息子のために・・・彼は・・・あ~切ない! なんでそこまでするの~って、涙がとまらなかった。
彼の幸せなそうな笑顔の時間は短いものだったけど、その幸せそうな笑顔が秀逸だった。本当に愛している人には「幸せになってほしい」と心底願っている彼の無垢な表情をもう一度観たい。
※どこ探しても彼の名はでてこない、ただドライバーとだけ・・・これも切ない・・。(美)

2011年/アメリ/カラー/109分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス

★2012年3月31日より新宿バルト9ほか全国順次公開

公式 HP >> http://drive-movie.jp/

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ほかいびと 伊那の井月

監督:北村皆雄
音楽:一柳慧
語り:樹木希林
出演:田中泯

井上井月(いのうえせいげつ)は、ふらりと伊那谷へやってきて幕末から明治の初めまで30年暮らした。自分のことを語らず、家を持たず、俳句を詠み、酒を楽しみ、ひとところに留まらない漂泊の人生を送った。「ほかいびと」とは、ほかい(寿・祝)に生きる人のこと。ノリ寿詞をとなえて祝福する信仰の担い手である。村、家、人を巡り歩く門付け芸人となり、いつしか食を乞う「乞食(こつじき)」となった。

井月はもと長岡藩の武士で、藩も家も家族も、それまでの自分いっさいを捨てて無一物となって生きた人だといいます。出身地の長岡と伊那はかつて敵対した地域であったようですが、なぜそこへ来たのか本当のところはわかっていません。明治になって近代化した村の共同体はもはや放浪の俳人を受け入れる余裕はなく、井月は子どもらに石つぶてを投げられ、目前で戸を閉められ、ついには野垂れ死にしてしまいます。それもまた彼の望むところだったろうと、井月を演じる田中泯さんを観ながら思いました。自然の中に暮らして朽ちていった井月にしては、田中さんはエネルギーも色気もあるのですが、生身のもう一人の井月を観るような気がしました。樹木希林さんのナレーションが、謎の多い井月の人生を暖かく包み込むようでした。(白)

2011年/日本/カラー/119分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ヴィジュアルフォークロア

★3月24日(土)~4月6日(金)ポレポレ東中野
期間中にトークショーが行われます。詳しくはHPへ

公式 HP >> http://www.seigetsu.org/

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僕達急行 A列車で行こう

監督・脚本:森田芳光
撮影:沖村志宏
音楽:大島ミチル
主題歌:RIP SLYME「RIDE ON」
出演:松山ケンイチ(小町圭),瑛太(小玉健太),貫地谷しほり(相馬あずさ),ピエール瀧(筑紫雅也),村川絵梨(日向みどり),星野知子(日向いなほ),伊東ゆかり(大空ふらの),菅原大吉(谷川信二),三上市朗(由布院文悟),松平千里 (大空あやめ),笹野高史(小玉哲夫),伊武雅刀(早登野庄一),西岡徳馬(天城勇智),松坂慶子(北斗みのり),ジュン(アクティ),デイビット矢野(ユーカリ)

ココから 世界のどこだって行ける!!
恋と仕事と好きなコト――森田芳光監督からのラストエール
 のぞみ地所に勤める小町圭と、コダマ鉄工所の2代目小玉健太は鉄道ファン。同じ電車に乗り合わせ、その後再会したことから親しくなる。ちょうど引越し先を探していた小町はコダマ鉄工所の社員寮に住むことになり、ますます意気投合する。やがて小町の九州転勤が決まり、二人は福岡の鉄道を楽しみにする。シャイな二人の恋愛は趣味や仕事のようにうまく運ばない。小町は積極的なあずさに好意は持っているが、結婚したい気持ちは盛り上がらない。秘書室のみどりも小町を「少し好き」らしい。小玉はお見合い相手のあやめにぞっこんだけれど、あやめの方は冷静だ。

草食系男子の二人が、仕事に恋に大好きな鉄道に心躍らせたり、悪戦苦闘したりの作品。東京から九州までの鉄道20路線、車両は80モデルが登場します。主人公の小町と小玉をはじめ、登場人物たちが急行の名前であるのも楽しいです。いくつわかるでしょうか?年齢も業種も関係なく、好きなもので繋がり楽しみを分かち合える仲間は何にもかえがたいものです。松山ケンイチも瑛太もこれまでさまざまな役をこなしてきましたが、この映画では二人の関わり方が心地良く演技をこえて楽しそうです。
自身も鉄道ファンである森田監督が30年も暖めてきて完成した作品ですが、昨年12月20日急性肝不全のため亡くなられ、これが遺作となりました。ところを変えて寅さん映画のようにシリーズ化できたのに、と残念でなりません。気候が良くなったら監督の足跡を追ってロケ地探しをしようっと。(白)

2011年/日本/カラー/117分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
©2012『僕達急行』製作委員会

★3月24日(土)、渋谷TOEI・TOHOシネマズららぽーと横浜ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.boku9.jp/

主人公・小町を「ちょっと好き」という社長秘書・日向みどりを演じた村川絵梨さんのインタビューをシネマジャーナル84号に掲載しています。急逝された森田芳光監督の思い出もたっぷりお伺いしています。


村川絵梨さん [撮影:(暁)]
※ クリックで拡大します

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マリリン 7日間の恋(英題:MY WEEK WITH MARILYN)

監督:サイモン・カーティス
原作:コリン・クラーク 「マリリン・モンロー 七日間の恋」(新潮社文庫刊)
出演:ミッシェル・ウィリアムズ(『ブロークバック・マウンテン』『ブルーバレンタイン』)、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ジュリア・オーモンド、ドミニク・クーパー、ダグレイ・スコット、エマ・ワトソン、ジュディ・デンチ

1956年。ロンドンの空港で大歓迎を受けるマリリン・モンロー。傍らには結婚したばかりの著名な劇作家アーサー・ミラー。新婚旅行も兼ねてのイギリス訪問は、彼女が設立した製作会社の初プロデュース作品として選んだイギリスのローレンス・オリヴィエ監督・主演の『王子と踊り子』撮影のためだった。マリリンの斬新な演技法を受け入れようとしないオリヴィエとの衝突で、撮影は思うようにはかどらない。NGを連発され、お酒と薬で気を落ち着かせようとするマリリン。その見張り役を命じられたのは、駆け出しの第3助監督のコリン・クラークだった。マリリンは撮影現場を抜け出し、小旅行に出る。マリリンに付き添ううちコリンは恋心を抱くようになる。それは魅惑的な1週間だった・・・

36歳の若さで謎の死を遂げたマリリン・モンロー。没後50年となる2012年の今でも、セクシーな姿が語り継がれる伝説の女性マリリン。本作は、華やかな姿の裏で苦悩していた彼女を垣間見たコリン・クラークの手記を映画化したもの。3度目の結婚で注目の的のマリリンと過ごした1週間は、まだ23歳の青年コリンにとって、まさに夢のようだったでしょう。いつも人の目にさらされて女優として生きていたマリリンにとっても、つかの間の自分自身を取り戻した時間・・・ 二人の間に何があったのかの真実は知る由もありませんが、コリンにしてみれば、これはもう、自分だけの思い出にはしておけなかったのですねぇ。天国のマリリン、今になってこんなエピソードが映画になっていると知って、どう思うでしょう・・・ (咲)

2011年/アメリカ・イギリス/スコープサイズ/SRD/100分
配給:角川映画

★2012年3月24日  角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://marilyn-7days-love.jp/

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カエル少年失踪殺人事件(原題:~Children..)

監督:イ・ギュマン
脚本:イ・ヒョンジン、イ・ギュマン
撮影:キ・セフン
出演:パク・ヨンウ(カン・ジスン)、リュ・スンリョン(ファン・ウヒョク)、ソン・ドンイル(パク・キョンシク)、ソン・ジル(ジョンホの父)、キム・ヨジン(ジョンホの母)

1991年3月26日、大韓民国大邱(テグ)の城西(ソンソ)国民学校に通っていた5人の小学生が失踪した事件。
事件直後から警察や軍を動員して捜索活動が行われたが、11年が経過した2009年9月、少年たちのものと思われる白骨死体が発見されるまで、全く捜査の糸口がつかめなかった。
検死の結果、道に迷っての遭難や転落などの事故ではなく、何者かによる他殺であることが判明。犯人が誰であるかは不明のまま、2006年3月25日に時効が成立した。

「カエルを捕まえに行く」という最後の言葉から、失踪小学生は通称「カエル少年」と呼ばれている。

韓国未解決事件!『殺人の追憶』レベルの作品だ。あの結末が本当なら、なんで後一歩で警察が甘くなったのかわからない。見応えは120%。犯人役がすっごいいいのも『殺人の追憶/犯人かと思われる役のパク・ヘイル』レベルだった。

※<韓国・三大迷宮入り事件>
★「華城連続殺人事件」『殺人の追憶』で映画化

★イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件」『あいつの声』で映画化 1991年にソウル江南区で起こった9歳の少年の誘拐事件)

以下はパク・ジンピョ監督作品『あいつの声』の感想

 1991年にソウルで発生した誘拐事件を基に、最愛の息子を連れ去られた両親と誘拐犯との44日間を描いている。未だ解決されていない事件。

ソル・ギョング主演とわかり飛ぶようにして名古屋西口シネマ・スコーレに行く
ソル・ギョングは今や韓国映画界の信頼おける相談役的存在。この作品では落着いたニュースキャスターをつとめているが、子どもが誘拐された哀しみを乗り越え、テレビ画面を通じて切々と訴えるシーンは涙なしでは観られなかった。

★「カエル少年失踪事件」本作『カエル少年失踪殺人事件』で映画化。 

(美)


カエルを取りに行くといって行方不明になった5人の子どもたち。その日は地方統一議会選挙投票日。警察は投票場の監視に忙しく捜索の始動が遅れる。後に、1票を争う町で、親を投票に行かせないために子どもを隠したという憶測まで出る。謎は解けないまま。いろいろな推理に興味津々。
子供たちの親を演じた役者さんたちが、ドラマや映画で見たことのあるお馴染みの人が多いのに、それぞれがほんとに子供を案じる親そのもの。特に、行方不明から2ヶ月経って、息子ジョンホから電話がかかってきたと証言する母親を演じたキム・ヨジンさんは髪も振り乱し、悲しみに暮れる母親そのもの。「チャングムの誓い」では女医、「イサン」では王妃役が強烈な印象だったのですが、プロフィールを調べてみたら、『ディナーの後に』が映画デビュー。その後の『ペパーミント・キャンディー』『醉画仙』『4人用の食卓』なども観ているのに記憶にありません。映画に溶け込んでいらしたということでしょうか・・・
さて、カエルといえば、中学生の頃、理科の授業で解剖の実習をしたのを思い出します。大人になって、クラス会の時に、あの時のカエルは同級生の男の子たちが大邸宅に住む同級生の家の庭の池に取りに行ったと話してくれました。いろいろ餌を試したけれど、カエルが飛びついてきたのは、光る金物だったそうです。お屋敷の池に住むカエルは光物が好き?
韓国で行方不明になった5人の小学生たちも実験用のカエルを調達に行ったのだったでしょうか・・・ (咲)

2011年/韓国/カラー/132分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:コムストック・グループ

★3月24日よりシネマート六本木ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/theater/special/kaerusyounen/

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テイク・シェルター(原題:TAKE SHELTER)

監督:ジェフ・ニコルズ
脚本:ジェフ・ニコルズ
撮影:アダム・ストーン
音楽:ディヴィッド・ウィンゴ
美術:チャド・キース
出演:マイケル・シャノン(カーティス)、ジェシカ・チャスティン(サマンサ)、トーヴァ・スチュワート(ハンナ)、シア・ウィグハム(デュワート)

土木工事の作業員のカーティスは、優しくて美しい妻サマンサと耳が不自由な娘ハンナの三人で、オハイオ州の片田舎で貧しいながらも幸せに暮らしていた。
だが最近、土混じりの黄色の雨が降ったり、竜巻が襲ってきたりする幻覚を瞬間的に見るようになった。彼には分裂症の母がいて、自分も気が狂ってしまうのではないかと心配だったが、その不安がどんどん膨らんで行く。
ついに彼は銀行から多大な借金をし、庭に災害時の頑強なシェルターを作り始めるのだった。

 この役がぴったりのマイケル・シャノン!彼以外に考えられない。カーティスは母親が精神を病んでいたので、自分もという不安を抱えていたので、余計に哀れが際立っていた。
 特異な役ばかりを演じるマイケル・シャノンをはじめて知ったのは、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』。それから『ロシアン・ルーレット』だ。
『テイク・シェルター』でも<家族を愛する>ゆえに、徐々に精神的に追い込まれていく役どころを見事に演じている。
最近の終末映画『メランコリア』『生きているものはいないのか』の中では、これが一番現実的で怖かった。(美)

2011年/アメリカ/カラー/120分/スコープサイズ
配給:プレシディオ

★3月24日(土曜)新宿バルト9他全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.take-shelter-movie.com/

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横浜みなと映画祭

期間:2012年3月16日(金)~18日(日)
会場: シネマ・ジャックアンドベティ、横浜ニューテアトル、CROSS STREET

横浜・伊勢佐木町に新しい町の映画祭が誕生します。
伊勢佐木町は、明治44年(1911年)に、日本初の洋画封切館であるオデヲン座が開館した街。かつて映画、演劇、寄席など多くの劇場で賑わいを見せた伊勢佐木町ですが、今では横浜ニューテアトル、シネマリン、シネマジャック&ベティの3つの映画館を残すのみとなってしまいました。横浜みなと映画祭は、映画興行の発祥の地でもある「伊勢佐木町の復権」を掲げた新しい映画祭。主要プログラムは08年、09年と開催された「黄金町映画祭」を継承しています。

オープニングトークショーやレセプション・パーティをはじめ、横浜みなと映画祭たまり場トークなど、映画祭関係者やゲストとの交流の場も盛りだくさんです。

◆シネマ・ジャックアンドベティ  全10作品
東京人間喜劇  (2010年、深田晃司監督)  ★オープニング作品
Single (2005年、中江和仁監督)
蒼い手/Deep blue (2011年、中江和仁監督)
君とママとカウボーイ (2010年、稲葉雄介監督)
隼 (2005年 市井昌秀監督)
ユリ― 愛するについて  (2009年、東恵美子監督)
ミチコ教会  (2008年、八幡亜樹監督)
想いは壁を通り抜けて、好きな人に逢いに行く  (2011年、頃安祐良監督)
大地を叩く女  (2008年、井上都紀監督)  ★クロージング作品 2作品同時上映
不惑のアダージョ  (2009年、井上都紀監督)  ★クロージング作品 2作品同時上映

◆横浜ニューテアトル  全2作品
ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム  (2004年、サンマーメン監督)
ヨコハマメリー  (2006年、中村高寛監督)

◆CROSS STREET
*オープニングトークショー
“町と映画、そして映画祭―地域振興型映画祭の可能性”
3月16日(金)19:00~20:20
司会者:井川広太郎(「横浜みなと映画祭」プログラマー/映画監督)
ゲスト:
林海象(映画監督 濱マイクシリーズ『我が人生最悪の時』、他)
藤岡朝子(「山形国際ドキュメンタリー映画祭」東京事務局ディレクター)
飯田淳二(「TAMA CINEMA FORUM」ディレクター)
アミール・ナデリ監督(映画監督『CUT』『駆ける少年』)

*オープニングレセプション・パーティ
3月16日(金)20:30~

*エディ藩ミニライブ&上映『ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム』
3月17日(土)18:15~ 

*クロージングトークショー&特別上映“不惑の映画” 3月18日(日)18:15~


主催:横浜みなと映画祭実行委員会

★2012年3月16日(金)~18日(日)

公式 HP >> http://www.ymff.net/

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アース・ビジョン 地球環境映像祭 EARTH VISION Tokyo Global Environmental Film Festival

最新の受賞作品に加えて、これまでの応募作品の中から、年月によっても色あせない作品をレトロスペクティブとして上映。

◆会期:3月16日(金)~18日(日)
◆会場:新宿区 四谷区民ホール
    四谷区民センター9階
◆交通 東京メトロ・丸ノ内線「新宿御苑前駅」大木戸門方向(2番)出口
    新宿通りを四谷方向へ徒歩約5分

◆上映作品
3月16日(金)14:00 - 20:00
くらしを変える 未来が変わる
『セカンド・ハンド』『小さな町の大きな挑戦―ダイオキシンと向き合った川辺町の6年』『石おじさんの蓮池』『おとなりさんとわたし』『シード・ハンター』『北京―ゴミの城壁』

3月17日(土)10:00 - 18:30
つながりを取り戻す~ 3.11から1年
『100,000年後の安全』『余震?村は何処へ行くのか』『チェルノブイリ・フォーエバー』『自然の楯―Tsunamiからいのちを守ったもの』『海と森と里と―つながりの中に生きる』『南三陸町歌津・伊里前三嶋神社 秋の大祭?「復興へ」子どもたちが繋げる里の祭り・絆』

3月18日(日)10:00 - 20:30
思いをつなぐ
『沈黙の春を生きて』
『人とクマと森と』
『ホタルに恋して』
『帰ってこい!ふるさとの川へ―九頭竜川物語 サクラマス編』
『レオニッドの物語』『思いを運ぶ手紙』『地球の一日』『ビューティフル アイランズ』

◆参加:協力費1日1,000円 高校生以下無料・事前予約不要
    3日間通し協力費(カタログ付き)一般2,000円 学生1,500円

公式 HP >> http://www.earth-vision.jp/

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マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(原題:The Iron Lady)

監督:フィリダ・ロイド(『マンマ・ミーア!』)
出演:メリル・ストリープ(『マンマ・ミーア!』『プラダを着た悪魔』)、ジム・ブロードベント(『ハリー・ポッター』シリーズ、『アイリス』)

マーガレット・サッチャー、86歳。8年前に他界した夫の遺品をようやく整理する決心をするが、食卓や居間で今も夫が生きている幻想にかられる日々。自叙伝に旧姓マーガレット・ロバーツでふっとサインしてしまった彼女は、自分の人生を振り返る・・・

1975年、保守党の党首に選出され、さらに1979年には英国首相に上り詰め、1990年の引退まで長きに渡って国際社会で活躍したサッチャーの姿をリアルタイムで知っている身。鉄の女の異名通り力強い女という印象はもちろんですが、一方で、いかにも英国女性らしいきちんとした身だしなみでエレガントな雰囲気さえ感じていました。サッチャーが首相として采配を振るった時代、日本でもようやく女性が社会で活躍の場を得始めていましたが、まだまだ男性優位の社会。本作を観て、イギリスとて同じ状況だったのを知りました。多くのプレッシャーの中で、長年にわたって首相として君臨した陰には、彼女をさりげなく支えた夫サッチャー氏や、彼女を和ませてくれる二人の子供たちの存在があったことを感じました。老いて認知症で苦しむ姿も描かれ、まだ存命の方なのに、いいのか・・・と思いつつ、颯爽とした政治家サッチャーとの双方を体現したメリル・ストリープは凄いと思いました。サッチャーを政治家としてだけでなく、ひとりの女性として細やかに描いたのは、女性の監督だからこそとも思いました。(咲)

2011年/イギリス/105分/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ

★2012年3月16日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて公開

公式 HP >> http://ironlady.gaga.ne.jp/

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映画 プリキュアオールスターズ New Stage みらいのともだち

監督:志水淳児
原作:東堂いづみ 脚本:成田良美
作画監督:青山充
声の出演:福圓美里、田野アサミ、金元寿子、井上麻里奈、西村ちなみ、大谷育、熊田聖亜、能登麻美子、子安武人

横浜のみなとみらいでは、謎の怪物「フュージョン」が暴れ廻り、世界を闇に飲み込もうとしていた。危機を察したプリキュアたちの活躍でフュージョンは粉々に砕け散り、街は平和を取り戻す。女の子たちがプリキュアの活躍に胸を熱くしているとき、転校生のあゆみも一緒に話したいのに声をかける勇気がない。帰り道で小さな生き物を見つけたあゆみはフーちゃんと名づけ家に連れ帰る。たった一人の友だちとして話しかけると、フーちゃんはあゆみに答えるようになった!

映画版を初めてちゃんと観ました。プリキュアってこんなにたくさんいたんですね。歴代のプリキュアたち28人が登場するので「オールスターズ」。女の子たちの憧れる「可愛くて強くてかっこいい女の子たち」が力を合わせて戦うストーリーです。転校したばかりで友だちのいない女の子あゆみが見つけた小さな生き物が、外界のものを飲み込んで大きくなっていくようすは『千と千尋』の顔なしを思い出しました。にぎやかな色、キャラクターの造形は今風ですが、信じること、勇気をもって踏み出すことは今も昔も変わらないテーマです。春休みのお子さん、お孫さんと一緒にお楽しみください。(白)

2012年/日本/カラー/72分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
© 2012映画プリキュアオールスターズNS製作委員会

★3月17日(土)より全国ロードショー

公式 HP >> http://www.toei-anim.co.jp/movie/2012_precure_allstars/

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種まく旅人~みのりの茶~

監督:塩屋俊
原作:青葉薫
脚本:石川勝己、三浦千秋
撮影:阪本善尚
音楽:宮本貴奈
主題歌:中村中「ずっと君を見ている」
出演:陣内孝則(大宮金次郎)、田中麗奈(森川みのり)、吉沢悠(木村卓司)、柄本明(森川修造)、石丸謙二郎(森川修一)、永島敏行(太田忠志)、寺泉憲(市長)、中村ゆり(栗原香苗)、林美智子(衛藤フジエ)

東京でデザイナーをしていたみのりはリストラされてしまい、再就職活動も思ったようにはいかない。気分転換に大分県臼杵市でお茶農家をしている祖父修造のもとを訪ねた。祖母が亡くなって一人暮らしの修造は、繁忙期に訪ねてくれる「金ちゃん」とひどく仲がいい。その大宮金次郎、実は身分を隠して全国の農家を回っている農水省の役人だった。何もかも東京とは違う暮らしに最初はとまどうみのりだったが、修造が倒れたのをきっかけに、お茶の栽培に取り組むことになってしまった。臼杵に転属した金次郎も勤めの合間を縫って毎日指導にやってくる。


©「種まく旅人~みのりの茶~」製作委員会

臼杵の茶畑の風景がすがすがしく、塩屋監督の故郷への愛情が感じられる作品。農家の人々に好かれる金次郎が実は農水省のお役人というのは、ちょっと「水戸黄門」みたいな設定です。人の本音と建前が両方わかる面白さもあり、演じる陣内孝則の軽妙さ親しみやすさがいいです。都会育ちのみのりが小さな村の暮らしで感じる居心地の良さと同じだけの窮屈さ、あるある!と共感しました。少しずつ馴染んでいくプロセスも無理がありません。お茶の有機栽培を中心に、農業に携わる人たちの苦労や将来への問題点など多くのエピソードが盛り込まれています。2時間では描ききれなかったことも多いでしょう。ネタはまだまだありそうです。続編ができるといいなぁ。(白)

2011年/日本/カラー/121分/サイズ/ドルビーデジタル
配給:ゴー・シネマ

★3月17日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.tanemaku-movie.com/

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僕等がいた

監督:三木孝浩
原作:小畑友紀「僕等がいた」(小学館 「月刊ベツコミ」連載) 脚本:吉田智子
撮影:山田康介
音楽:松谷卓
主題歌:Mr.Children「祈り~涙の軌道」「pieces」 出演:生田斗真(矢野元晴)、吉高由里子(高橋七美)、高岡蒼甫(竹内匡史)、本仮屋ユイカ(山本有里)、小松彩夏(山本奈々)、柄本佑(アツシ)、比嘉愛未(千見寺亜希子)、須藤理彩(竹内文香)、麻生祐未(矢野庸子)

釧路の高校に通う七美は、学校きっての人気者の矢野元晴と知り合い、言葉を交わすようになった。矢野がときおり見せる寂しげな表情は、年上の恋人を亡くしたせいだと知ってショックを受ける。七美と同じ2年生の山本有里の姉、奈々がその人だった。しかし、気持ちはすっかり矢野に向いてしまっている七美は生まれて初めて告白してしまう。まっすぐな七美に矢野の心も少しずつほぐれていく。矢野の親友の竹内匡史は秘めていた七美への思いが募り、山本有里も射るような目で二人を見つめている。大学受験がせまってきたころ、矢野が東京へ引っ越すことが決まった。


©2012「僕等がいた」製作委員会©2002小畑友紀/小学館

発行部数累計1000万部を突破した大人気の少女漫画が原作。15巻まで発行済みで、完結篇の第16巻は3月26日発売予定。映画は高校生時代の釧路を舞台にした前篇を3月17日より、3年後の東京を舞台にした後篇を4月21日に公開します。七美の矢野への想いを中心に、2人の恋の行く末と、それぞれに秘めた想いを寄せる男女を描いた王道のラブ・ストーリー。年齢的な青春のはるか遠くまで来てしまったオバサンも、純な気持ちはいまだどこかにあり、若い恋人たちの軌跡に胸を熱くしたり、痛めたりしました。実年齢より上の俳優さんたちが高校生を演じるのはちょっときついものがありますが、吉高由里子さんははつらつとして可愛いです。(白)

2011年/日本/カラー/123分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東宝

★3月17日(土)、後篇4月21日(土)全国東宝系にて2部作連続ロードショー

公式 HP >> http://www.bokura-movie.com/

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青い塩(原題:Hindsight(青い塩))

監督/脚本:イ・ヒョンスン(『イルマーレ』)
出演:ソン・ガンホ、シン・セギョン、チョン・ジョンミョン、イ・ジョンヒョク、キム・ミンジュン、ユン・ヨジョン、キム・レハ、オ・ダルス

闇組織の伝説のボスだったドゥホンは足を洗って、母の故郷・釜山でレストランを開いて静かに暮らしたいと料理教室に通い始める。教室でセビンという若い女性と意気投合する。セビンは実はかつて優秀なライフル競技の射撃選手で、ある事件をきっかけに闇組織の手下となりドゥホンの監視役として教室に通わされていた。セビンがドゥホンの人柄に次第に惹かれ始めた頃、闇組織からドゥホン暗殺を命じられる・・・

『イルマーレ』のイ・ヒョンスン監督11年ぶりの新作。しかもソン・ガンホ主役となれば期待も高まる。ソン・ガンホが料理する時のいかにも楽しそうな顔は、とても元ヤクザの親分には見えないけれど、その笑顔は組織から抜けた嬉しさと思えば納得か。『イルマーレ』でもイ・ジョンジェが料理する姿がとても楽しそうだったけど、イ・ヒョンスン監督ご自身も料理好き? 豪快な男の料理にぐぐっとお腹がなります。終盤の深く青い塩田が広がる光景は神秘的。行ってみたくなりました。蛇足ながら、映画はもう少し短くてもよかったかなと。(咲)

2011年/韓国映画/122分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタルSRD
配給:CJ Entertainment Japan

★2012年3月17日(土)、丸の内TOEI、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.aoi-shio.com/

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長ぐつをはいたネコ(原題:PUSS IN BOOTS)

監督:クリス・ミラー
脚本:トム・ウィーラー
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:アントニオ・バンデラス (長ぐつをはいたネコ“プス”)、サルマ・ハエック(キティ・フワフワーテ)、ザック・ガリフィナーキス(ハンプティ・ダンプティ)、ビリー・ボブ・ソーントン(ジャック)、エイミー・セダリス(ジル)、コンスタンス・マリー(イメルダ)、ギレルモ・デル・トロ(コマンダンテ)

捨て猫のプスは孤児院でみんなのママ、イメルダの愛情を受けて育った。人気者だったが無実の罪で町を追われてしまう。お尋ね者となって放浪の旅の途中、兄貴分だったハンプティ・ダンプティと再会する。魔法の豆を探して、その先の王国にある幸せをもたらす金の卵を手に入れる計画をたてた。それを持って町に帰ったらきっと汚名をそそぎ、イメルダママを喜ばすことができるに違いない。まずは悪党のジャックとジルの持っている魔法の豆だ。美女ネコのキティ・フワフワーテを仲間に加え、3人はジャックとジルを追う。

大ヒットしたアニメシリーズ『シュレック』の長ぐつをはいたネコ、主要キャストの中でも人気の彼がシュレックに会う前のストーリーです。可愛い子猫時代、長ぐつをはくことになったいきさつがわかります。見た目は可愛い茶トラの彼ですが、実はダンディで渋い声のいい大人。彼がここぞというときにとるポーズ+「うるうる光線」を発する瞳でじっと見つめるのにヤラレタ猫好きは多いことでしょう。
日本語吹き替え版ではプスを竹中直人、ハンプティ・ダンプティを勝俣州和が演じています。3D,2D同時公開。ダンスシーンや追いつ追われつのアクションはどちらでも楽しめますが、迫力なのは3Dかな、やっぱり。劇場によって上映方法が違いますので、出かける前にお確かめください。(白)

2011年/アメリカ/カラー/90分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
絵 配給:パラマウント
© 2011 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

★3月17日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://www.naganeko.jp/

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映画 桜蘭高校ホスト部

監督:韓哲
脚本:池田奈津子
出演:川口春奈(藤岡ハルヒ)、山本裕典(須王環)、ニックン(ローランス・新・モナール)、篠田麻里子(ミシェル・絵梨華・モナール)

桜蘭学院は日本有数なお金持ちのお子様が通う学園。ここのホスト部は、暇を持て余した美男生徒六人が女生徒をおもてなしをする華麗なる遊戯集団。
そんなホスト部に庶民の奨学生・藤岡ハルヒが迷い込んでしまい、ホスト部室にあった800万円の壷を割ってしまった。その借金を払うために、部員以外には秘密で、男装してホスト部に入部したのだった・・・。

同じ試写会場だけど、「あほらしい、なにが高校ホスト部だ、観てられるかい!」と、これはパスして家に帰ろうと思ったが、待てよ、貼り出されたポスターをよく見ると、主役がかわいい子ちゃん・川口春奈ならみるかぁ~と続きで居座ってしまった。
わかりやすく、スピーディな展開、学校内部のゴージャスさなど、思っていた以上の出来のよさ。日本語も気になる乱れはなかったし、ハルヒにちゃんと将来の夢を語らせていた。
それにぃ~、春奈ちゃんやカリフォルニア生まれのニックンが孫ならいいなぁ~と・・・おばぁは思ってしまったの!
だから、評がちょっと甘いかも。その日はバレンタインデーだから甘いのゆるして! (美)

2012年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントbr/>

★3月17日より 新宿ピカデリーほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.tbs.co.jp/ouran_movie/

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桃まつりpresents すき 2012

2012/03/17(Sat) - 30(Fri)
渋谷ユーロスペースにてレイトロードショー

女性監督集団“桃まつり”が2012年は「すき」をテーマに様々な形の愛をお届けします。


『フィガロの告白』 天野千尋
  フィガロの告白
『口腔盗聴器』 上原三由樹
『最後のタンゴ』 熊谷まどか
  最後のタンゴ
『the place named』 小森はるか
『LATE SHOW』 佐藤麻衣子
『春まで十日間』 ステファニー・コルク
『帰り道』 竹本直美
  帰り道
『SAI-KAI』 名倉愛
  SAI-KAI
『さめざめ』 星崎久美子

チケット前売り 1000円

(千)

公式 HP >> http://www.momomatsuri.com/

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第7回大阪アジアン映画祭(Osaka Asian Film Festival 2012)

毎年春3月、「大阪の街を元気に!」を合言葉に開催されてきた大阪アジアン映画祭。 第7回となる今回は、2012年3月9日(金)~18日(日)の10日間にわたって開催され ます(プレイベントも、3月3日から先行開催)。

第7回大阪アジアン映画祭

会期:2012年3月9日(金)~18日(日)

オープニング:3月9日(金)(場所:梅田ブルク7)
『道~白磁の人~』<ワールドプレミア>
2012年/日本映画/2時間(予定)/配給:ティ・ジョイ/
http://hakujinohito.com/

監督:高橋伴明 原作:江宮隆之 脚本:林民夫
出演:吉沢悠、ペ・スビン、酒井若菜、石垣佑磨、塩谷瞬、黒川智花、近野成美、チョン・ダヌ、チョン・スジ、市川亀治郎、堀部圭亮、田中要次、大杉漣、手塚理美


© 2012「道~白磁の人~」フィルムパートナーズ

公式 HP >> http://www.oaff.jp/

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へんげ

監督・脚本・編集:大畑創(『大拳銃』)
撮影:四宮秀俊
特技監督:田口清隆(仮面ライダーシリーズ、『ウルトラゾーン』)
音楽:長嶌寛幸(『恐怖』『接吻』)
出演:森田亜紀、相澤一成、信國輝彦 

閑静な住宅地。瀟洒な家で暮らす恵子は、夫の吉明が夜な夜な奇妙な発作に襲われ野獣のような声をあげる姿に不安を覚える。吉明の医大の後輩坂下にカウンセリングを頼み、催眠療法を試みるが原因は判明しない。次第に発作と共に吉明の身体が変化するようになる。坂下の勧めで強制入院させるが、その頃から都内各地で謎の通り魔事件が頻発するようになる。犠牲者は皆、身体を引き裂かれた姿に変わり果てている。ある日、吉明が病院を抜け出し恵子のもとに帰ってくる。ある行動から夫が通り魔事件の犯人であることを悟る恵子・・・

夫が奇病で変貌する姿を妻の恵子は、深い愛で受け止め、手助けする。普通なら逃げ出してしまうだろう。刑事に追われる二人の逃避行。そこで繰り広げられる光景には、もう唖然。自分なら、こんな風に愛を貫けるだろうか・・・ 男がどんなに変貌を遂げても女が変わらない愛を注いでくれるなんて、男の幻想とつい思ってしまう。それは抜きにして、圧巻のラスト。もう、笑うしかない。(咲)

2011年/日本/54分/カラー
配給:キングレコード

★2012年3月10日(土)よりシアターNほか全国順次公開! *同時上映『大拳銃』

公式 HP >> http://hen-ge.com/

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FLY!~平凡なキセキ~

監督:近藤真広
脚本:上田誠、山脇唯
撮影:田中康彦
主題歌:斉藤和義「満男、飛ぶ」
出演:小籔千豊(平野満男)、相武紗季(高崎ななみ)、温水洋一(シカタ)、本仮屋ユイカ(ホステス)、なるみ(ママ)、笹野高史(工場長)、大杉漣(店長)

町工場で働く満男はまじめだけがとりえの冴えない独身。妹にいやみを言われながらまだに親元でくらしている。同僚のシングルマザーの高橋ななみにひそかに想いを寄せているがとても告白などできない。ある日川原で妙な物体を見つける。そこには想像とは全く違った宇宙人のシカタがいた。こっそり部屋に匿うことにした満男とシカタはふしぎとウマが合い、いつしか友情が生まれていた。


©朝日放送/吉本興業

地球に落っこちてきた宇宙人が全身銀色タイツ・オカッパ頭の温水洋一。もう想像がついて口元がゆるむ人はこの作品が楽しめます。小籔千豊をこの作品で初めて知りました。知らなかった分余計にどこにもいそうな気がしてリアルです。非モテ系・片思いの二人が悩みに共感しあい、満男は知恵を振り絞ってシカタを星へ返す算段をします。女性の活躍場面は少ないですが、満男のマドンナ、相武紗季のヤンママ姿が意外に似合い、子役もなかなか達者で可愛いです。脱力系のゆるい笑いがいっぱいで、そんなことで帰れるのかというつっこみもなしに、ほんわかと観終わりました。殺人事件の映画が続くとこういうのもホッとします。(白)

2011年/日本/カラー/107分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

★3月10日(土)よりシネマート新宿、シネマート六本木、シネマート心斎橋、コロナシネマワールド全国順次公開

公式 HP >> http://fly-the-movie.com/

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超能力者(英題:HAUNTERS)

監督・脚本:キム・ミンソク
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:イ・ジェジン
出演:カン・ドンウォン(チョイン)、コ・ス(ギュナム)、ピョン・ヒボン(“ユートピア”チョンシク社長)、チョン・ウンチェ(社長の娘ヨンスク)、ユン・ダギョン(チョインの母ヒョスク)、チェ・ドクムン(チョインの父)、アブダド(ボバ)、エネス・カヤ(アル)、キム・グァンギュ(警察署長)

他人と目を合わせないように、ひっそりと生活している青年チョイン。彼には目で人を意のままに操れる超能力があったが、生活に必要なだけの金を手に入れるのに使うだけだ。ギュナムは廃車場で外国人の同僚と働く気のいい若者だが、事故で働けなくなり、ユートピア(質店)に再就職する。そこで小金を調達しにきたチョインに出遭ってしまう。自分の力が通じない男ギュナムに出会って驚愕するチョイン。それは彼の世界の均衡が崩れることを意味していた。ギュナムはチョンイに出会って、初めて自分の力に気付く。二人は対決しなければならない運命なのか。

どこから観ても絵になるカン・ドンウォン。『オオカミの誘惑』の笑顔にハートを打ち抜かれた女性は多いことでしょう。『デュエリスト』での来日会見に行って、そのスターのオーラと立ち姿の美しさに驚いたのがついこの前のようです。どちらかといえば陰の魅力の彼に対し、陽のコ・ス。人気の二人がガチで対決となるわけですが、孤独なチョンイをギュナムが理解してやって、とつい思ってしまうのは、カン・ドンウォンが母性をかきたてる役者だからかも。これが初めての長編映画となるキム・ミンソク監督は『グッド・バッド・ウィアード』で脚本と助監督をつとめていました。今後の作品も注目しています。(白)

2010年/韓国/カラー/113分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ツイン 宣伝:アルシネテラン
© 2010 United Pictures & ZIP CINEMA. All Rights Reserved.

★3月10日(土)よりシネマート新宿、3月17日(土)シネマート心斎橋ほか全国順次公開

公式 HP >> http://choin.jp/

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311 仙台短篇映画祭制作プロジェクト『 明 日 』

毎年9月に開催される「ショートピース!仙台短篇映画祭」。昨年は3月11日の東日本大震災の影響を受け、それまでの開催場所でもあった仙台メディアテークが被災し、開催が危ぶまれていました。これまで参加した監督たちから「仙台のために何かできないか」という声が上がりました。その声を受けて映画祭側から各監督たちに「映画祭がやりたい、映画を作ってほしい」と連絡をしたところ、41人が作品制作の形でそれに応えてくれました。3分11秒という制約の中で、それぞれが3月11日以降の自身と対峙し、葛藤を経て作られたオムニバス作品。東京での上映が決定いたしました。

●参加監督および作品タイトル

阿部理沙『ひとりの父』、生田尚久『C e l l 』 、井上剛『あたらしい日常』、今泉力哉『Mother Said. I sing. Wife Listen.』入江悠『Never Give Up by MC TOM( SR サイタマノラッパー) 』、ウイスット・ポンニミット『明日』、岡田まり『バースデー』、甲斐田祐輔『夏の視界』、片岡翔『超スーパーギガゴーレムSV プラス超リーサルウエポンⅡアンドギガ』、加藤直輝『Echo Never Goes out』 、河瀬直美『わすれなぐさ』、 境千彗子『夜は明ける』、佐々木健太『パスポート』、佐藤央『2011/194』、佐藤良祐『Carnival』、塩田明彦『世界』、志子田勇『測量技師たち』、篠原哲雄『柔らかい土』、鈴木太一『ベージュ』、鈴木卓爾『駄洒落が目に沁みる』、瀬田なつき『Humming』、タカハタ秀太『びんた』、田中博之『駆ける愛×YOU 欠ける彼 架ける明日』、田中洋一『10.19』、田中要次『蝶蜻蛉は虹の夢を見る』、田平衛史『我が家のなす模様』、遠竹真寛『春江』、冨永昌敬『妻、一瞬の帰還』『武闘派野郎』、外山光男『手』、内藤瑛亮『廃棄少女』、中野裕之『明日』、朴美和『ちょうちょ』、濱口竜介『明日のキス』、日原進太郎『アイツがやって来る』、日向朝子『一枚の履歴書』、平林勇『Matou』、堀江慶『3・12』、真利子哲也『スポーツマン』、守屋文雄『ダーンポンビャ』、山下敦弘(真夜中の子供シアター)『無事なる三匹』、和島香太郎『WAV』
※上映はあいうえお順

http://www.shortpiece.com/311_asu.html

3月10日(土)~3月11日(日) ブリリアショートショートシアターにて期間限定で公開
3月10日(土)~3月16日(金) キネカ大森にて期間限定で公開
3月31日(土)~4月 6日(金) ポレポレ東中野にて夜9時からレイトショー
3月31日(土)~終了未定   下北沢トリウッド ロングラン決定! 昼12:30からロードショー(火曜休映)

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ヒューゴの不思議な発明(原題:Hugo)

監督:マーティン・スコセッシ
原作:ブライアン・セルズニック
脚本:ジョン・ローガン
撮影:ロバート・リチャードソン
美術:ダンテ・フェレッティ
音楽:ハワード・ショア
出演:エイサ・バターフィールド(ヒューゴ)、クロエ・グレース・モレッツ(イザベル)、サシャ・バロン・コーエン(鉄道公安官)、ベン・キングズレー(パパ・ジョルジュ)、ジュード・ロウ(ヒューゴの父)、レイ・ウィンストン(ヒューゴの叔父)、クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス)、ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ)、リチャード・グリフィス(ムッシュ・フロック)、フランシス・デ・ラ・トゥーア(マダム・エミール)、エミリー・モーティマー(リゼット)、マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール)

1930年代のパリ。時計職人の父を火事で失ったヒューゴは、駅の時計番をしている叔父に引き取られる。飲んだくれの叔父は、ヒューゴを学校にも行かせず仕事を覚えさせたあげく、飲みに出て行ったまま帰ってこない。一人ぼっちのヒューゴは時計のネジを巻きながらひっそりと時計台に住み続けている。父が美術館のガラクタ置き場から見つけ出した古い機械人形だけが、ヒューゴの友だちであり父とつながるものだった。壊れたからくりを直すため、古道具屋の店先からおもちゃを盗み出そうとして、年取った店主ジュルジュにつかまってしまう。

スコセッシ監督が長年夢見ていたという3Dで製作された作品。時計台の歯車、パリを見下ろす風景、降りしきる雪etc,etc。存分にその効果が現れています。俳優陣も美術も豪華なうえ、そこかしこに映画の先人へのオマージュが散りばめられています。ジョルジュ・メリエスは実在の映画監督で、映画の創世期にさまざまな技法を開発&駆使して、それまでにない映画をいくつも製作しました。父を亡くした少年が機械人形を発端にジョルジュ・メリエスと出会うのは創作ですが、夢を映画に実現させたその先駆者の偉業に光を当てる“映画愛”が、原作にも映画にも満ちていて映画ファンには必見です。
ブライアン・セルズニックの原作は、絵本としても読み物としても高い評価を受け、日本でも翻訳出版されています。挿絵もセルズニック本人が描いていて、映画のシーンをそのまま観るようです。文庫版も出ましたので映画とあわせてご覧ください。 (白)

2011年/アメリカ/カラー/126分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル/2D、3D
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
©2011 GK Films. All Rights Reserved.

★3月1日(木/映画の日)TOHOシネマズ六本木ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.hugo-movie.jp/

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戦火の馬(原題:War Horse)

監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:マイケル・モーパーゴ
脚本:リーホール、リーホール
撮影:ヤヌス・カミンスキー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ジェレミー・アーヴィン(アルバート・ナラコット)、ピーター・ミュラン(テッド・ナラコット)、エミリー・ワトソン(ローズ・ナラコット)、ニエル・アレストリュプ(エミリーの祖父)、デヴィッド・シューリス(ライオンズ)

第1次大戦間近のイギリス。貧しい農家の主人テッドが農耕馬を買うつもりの市場で競り落としてしまった子馬。農耕には向かない馬だったが、すっかり気に入った息子アルバートはジョーイと名づけ親身に世話をする。賢く美しく育ってかけがえのない家族となったころ、ジョーイは軍馬として買い上げられ、遠くの前線に送られていった。ジョーイは行く先々でいくつもの出会いをする。やがてアルバートも兵隊となって家を出る日が来た。

スピルバーグ監督の新作は、兵隊でなくもの言わぬ馬を主人公に、戦場を転々とする「彼」の出逢いと別れを通していくつもの人間ドラマを描きます。馬が重要な戦力であったとき、乗り手とともに撃たれたり、力尽きて倒れたり、戦利品として敵側に連れて行かれたりとさまざまな道を辿ったはず。この原作は1982年に出版された小説ですが、のちに舞台化されてスピルバーグ監督が目にして映画化となったのだとか。
第2次大戦で兵隊だった私の父が、馬との写真を大事に持ち帰っていて、馬がどんなに賢くて可愛いか何度も言っていたのを思い出します。戦争が終わった後、人間はなんとしても故郷に帰りますが馬はどうなるのかと思っていました。それはこの作品をご覧になるとわかります。(白)

2011年/アメリカ/カラー/2時間27分/シネスコサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©Dream Works II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

★3月2日(金)全国ロードショー

公式 HP >> http://Senka-no-uma.jp/

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劇場版はらぺこヤマガミくん

監督:井口昇、西村喜廣、塩崎遵
脚本:継田敦
音楽:福田裕彦
キャラクターと声優:ヤマガミくん(井口昇)、イソベくん(福井真奈)、カワカミくん(福田裕彦)、キノシタちゃん(水井真希)ナレーション(仲谷明香AKB48)

ヤマガミくんは古代から生き続ける山の神様。自然破壊で餌がなくなり、里に下りてくるが、なんと好物は「人間」。あの手この手を使うが毎回大失敗。だからいつもはらぺこ。さあ、失敗続きだけどマンプクヤマガミくんにいつなれるかな?

東京に雪の降った日に試写室に到着したら、私一人だった。なんだかとってももったいないやら、配給さんに悪いやらで気持ちが落ち着かなかったが、珍しいショート・着ぐるみコメディだから観逃したくなかった。

監督さんたちは『電人ザボーガー』『ロボゲイシャ』の井口監督、そして、4月公開の『レッド・ティアーズ』特殊造形の西村喜廣監督作品も。
内容は3分ぐらいの着ぐるみショートで全部で25話。ユーモア?あり、風刺辛辣あり、残酷あり、爆笑あり、「そこまでやるか?」あり、ミュージカルありで、大人向け着ぐるみショートを楽しんだ。(美)

2011年/日本/79分/カラー/PG-12
配給:ポニー・キャニオン、ツイン

★2012年 3月3日より銀座シネパトスにて公開

公式 HP >> http://www.yamagamikun.com/

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アリラン(原題:Arirang)

脚本・監督:キム・ギドク
主演、製作、撮影、録音、編集、音響、美術:キム・ギドク

前作『悲夢』(2008年)の自殺シーン撮影中に、女優が命を落としそうになる事故を経験したキム・ギドク。自分の映画のために人が死んだかもしれないという心の痛みを抱え、映画界との接触を絶ち、山あいの町外れの粗末な一軒家で自身を振り返る日々。映画を作る前の自分は誰にも注目されることはなかった。映画を作ってみたら、賞も取り、世界に知られる存在になった。しかし、人の命を粗末にしてまで映画を撮る意味はあるのか・・・ 

13年間に15本の映画を作り続けてきたキム・ギドク監督が、映画を撮れなくなった思いを赤裸々に語ります。それでも「映画が撮りたいんだ」と怒るように吐露し、やがて、手製のピストルを手にして街に出るキム・ギドク。鳴り響く銃声が、3年間の沈黙を破って、また映画を作るぞという宣言にも思えました。実のところ、前半は、ただただ小汚いおっちゃんの隠遁生活。東京フィルメックスで観客賞を受賞したのは、映画の中でも監督自身が歌っている朝鮮民謡「アリラン」を上映後に熱唱したのが効を発したのだろう・・・ぐらいに思っていたのが当たっているかなという印象だったのですが、後半になって、只者じゃないキム・ギドクをグッと感じました。
「アリランの歌を歌うと何もかもが理解できる」とキム・ギドクが語ります。アリランの〔ア〕は自我の〔我〕、〔リ〕は道理の〔理〕で「自らを知る」という意味があるとの一説があるそうです。ちなみにエンディングでキム・ギドク本人が歌っているアリランは、日本で馴染みのあるメロディー。途中で歌っているのは、どの地方のアリランなのでしょうか・・・ 朝鮮民族の「ハン(恨)」の感情は、劇中で歌っている節の方により強く感じました。(咲)

2011年/韓国/ 91分/HD/1:1.77
配給:クレストインターナショナル

★2012年3月3日、シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.arirang-arirang.jp

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父の初七日(原題:父後七日)

監督:ワン・ユーリン、エッセイ・リウ
原作・脚本:エッセイ・リウ
音楽:ドゥー・ドゥージー
出演:ワン・リーウェン(アメイ)、ウー・ポンフォン(アイー)、チェン・ジャーシャン(タージ)、チェン・タイファー(シャオチュアン)ジャン・シーイン(アチン)、タイ・バオ(父)

台北で働くアメイの元に、故郷の父が亡くなったと知らせがあった。急ぎ戻って兄と一緒に、父を送らねばならない。道士でもある叔父の指南どおり占いで葬儀の日取りを7日後と決める。アメイは次々とやってくる弔問客の相手をし、叔父の指示どおりに泣き、と忙しい。泣き女や楽隊も集まって、しきたりどおりに式次第が進む。全てが終わって一人になったとき、父との思い出が後から後からわいてくるのだった。

この作品は脚本・監督をつとめたエッセイ・リウの散文(エッセイと訳せば近いんでしょうか)が原作で、台湾では口コミで観客が増え、拡大公開&ロングランとなったそうです。誰もが経験する近親者との別れを描いて、笑って泣いてしみじみとした共感を呼ぶからでしょう。お父さん役はジャッキー・チェンの映画脇役としてよく顔を見せていたタイ・バオ(太保)。アメイ役のワン・リーウェンは、これが映画初出演。それまでは企画や脚本を書いていたそうです。演技っぽくなくとても自然です。
台湾の道教に基づく伝統的なお葬式は、日本よりも何もかも派手でまるで一種のお祭り。冠婚葬祭の儀式は、あまりに日常とかけ離れているせいか、どこか滑稽な感じが漂ってきます。自分の親を送ったときも、なんだかめまぐるしく追われているうちに終わってしまい、悲しさ寂しさは後からじんわりやってきましたっけ。(白)

2009年/台湾/カラー/92分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:太秦
©2010 Magnifique Creative Media Production Ltd. Co. ALL rights reserved.

★3月3日(土)より東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスにて “父をおくる”ロードショー!ほか全国順次公開

公式 HP >> http://shonanoka.com/

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プリピャチ(英題:Pripyat)

監督:ニコラウス・ゲイハルター
撮影:ニコラウス・ゲイハルター
出演:プリピャチに関わっている人々

チェルノブイリ原子力発電所から約4キロメートルに位置する町、プリピャチ。1986年の原発事故後、原発の周辺30キロメートルが立入制限区域“ゾーン”と呼ばれ、許可なく入ることができない管理された「ゴーストタウン」になっている。
立入制限区域は有刺鉄線で覆われたフェンスで区切られ、管理者が区域内に入るすべての人々をチェックし、区域内からどんないものも持ち出すことは禁止している。
このドキュメンタリーは、原発や関連施設で働く人々や、プリピャチの立ち入り制限区域で生きる人々を、モノクロの映像で記録している。

『いのちの食べかた』のニコラウス・ゲイハルター監督作品。驚くことばかりのドキュメンタリーだった。
一番の驚きは、チェルノブイリ原子力発電所の一部稼動していた事実。だから働く人も出入りするわけだ。特別高い給料を貰っているわけではなく、ある労働者が「昼ごはんが無料なんだ」と嬉しそうに言っていたのが耳に焼き付いている。
稼動しているチェルノブイリ原子力発電所内部の狭い一室で事務員みたいな仕事をしている女性は、いままで住んでいた、すぐ近く(歩いて3、4分のところに住んでいた)のプリピャチにある自分の住宅を時々見に行っていたが、そのたびに自分が落ち込むので、もう行かないことにした・・・といいながらも監督さんと久しぶりにもといた家に行くが、誰かに荒らされていて、とても正視できない哀しそうな表情だった。
その反対に、いままでどおり危険区域の自宅で暮らしている老夫婦は、自給自足して案外気楽に生活しているように見えた。いつかお一人になったらここでは暮らせまいと先々の心配してしまったが、ご夫婦の幸せそうなお顔をみていると「あんまり先のこと考えるのはよそう・・・」と思った。

※映画撮影時には1万5000人の人々が原発や放射能の影響を調べる研究所など、この区域内で働いていて、驚くべき事に一般の市民も約700人、許可を得て区域内で生活している。(美)


プリピャチと聞いて思い出すのが、昨年の東京国際映画祭 natural TIFF部門で上映された『失われた大地』。こちらは、原発事故当日にプリピャチの町で結婚式を挙げた女性を主人公にした物語。披露宴の最中、新郎は自衛消防団の一員として出動し、人間原子炉と化して面会もできないままに逝ってしまいます。数年後、チェルノブイリ見学ツアーのガイドとして、髪の毛が抜け始めカツラを被って健気に見学者を案内するヒロイン。身体への悪影響を承知で故郷を離れられない人々の気持ちがずっしり伝わり、福島の現実が重なる作品でした。そこに住んでいた人たちにとっては、災害自体よりも故郷を追われたことのトラウマの方が大きいと『失われた大地』のミハル・ボガニム監督が語っていましたが、『プリピャチ』で取材されている人たちの言葉からも、それを強く感じました。福島の原発事故から1年経った今、1999年に製作された本作が日本で公開されることの意義は大きいでしょう。(咲)

1999年/オーストリア/カラー/100分/モノクロ
配給:アップリンク

★3月3日 渋谷アップリンクほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/pripyat/

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ピナ・バウシュ 夢の教室(原題:Tanztraume - Jugendliche tanzen Kontakthof von Pina Bausch)

監督:アン・リンセル
撮影:ライナー・ホフマン
音楽:ウーヴェ・ドレッシュ、トーマス・ケラー、他
編集:マイク・シュレマー
出演:ピナ・バウシュ、ベネディクト・ビリエ、ジョセフィン=アン・エンディコット

世界的な舞踏家ピナバウシュのもとに、40人のティーンエイジャーが集まった。 演劇好きな少年、ロマの子、愛する身近な人を亡くした子、ヒップホップをしていた子・・・。
やっていたことも家庭の事情も違う、ましてやピナの名前すら知らない彼らに共通するのは<ダンスを習った経験がないこと>だった。
10ヶ月後に、ピナバウシュの代表作「コンタクトホープ」に立つこと。 この挑戦を実現するため、毎週土曜にピナバウシュの弟子でもあるベネディクトとジョーによる猛特訓が始まるのだった。

ピナ・バウシュ自身が指導するシーンなどをおさめた生前最後の公式映像。一人ひとりに踊り方を教える以上に、同列になって語りかけて、その中から何かしら提言する姿勢にうたれた。
『トーク・トゥー・ハー』の最初の場面で踊っているのがピナ・バウシュご本人と聞いて、すぐにDVD屋に駆けつけたが貸し出し中だった。3日おいてもう一度行ったら、あった! 最初の相当長い間、踊っていた・・・ひたすら踊っていた。
ピナが生徒たちに「相手に触れなさい!」となんども言っていた。ピナが言っていた<他者との触れあう>意味を彼女の身体表現から理解できた。
※『トーク・トゥー・ハー』は2002年公開のスペイン映画。 監督・脚本はペドロ・アルモドバルで、第75回アカデミー賞・脚本賞を受賞している。 (美)

2010年/ドイツ/カラー/89分/HD
配給:トランスフォーマー

★3月3日ユーロスペース、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.pina-yume.com/

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恋人たちのパレード(英題:WATER FOR ELEPHANTS)

監督:フランシス・ローレンス
原作:サラ・グルーエン「サーカス象に水を」(ランダムハウス講談社)
出演:リーズ・ウィザースプーン、ロバート・パティンソン、クリストフ・ヴァルツ、ハル・ホルブルック、ポール・シュナイダー

1930年代、大恐慌時代のアメリカ。ポーランド移民の両親の愛にはぐくまれたジェイコブ。コーネル大学獣医学部の卒業試験の日、両親が交通事故で亡くなったことを知らされる。息子の学費のために両親は家を抵当に借金をしていたため、ジェイコブは家族も住む家も失ってしまう。あてもなく線路を歩き、衝動的にサーカス団の列車に飛び乗る。馬の病を見抜いたジェイコブをサーカス団の団長は一座に迎え入れる。やがて馬が亡くなり、ホースショーに代わる目玉として、団長は象のロージーを連れてくる。象をあやつる花形スターは団長の美しい妻マーリーナ。象の世話をするうち、ジェイコブはマーリーナと心を通わせるようになるが、それは禁断の恋だった・・・

サーカス小屋の切符売り場に迷い込んだ老人が、かつて一世風靡したサーカス団が火事で消滅したことを思い出として語る形で始まる物語。繰り広げられる1930年代のサーカス団の華やかな表舞台と、厳しい台所事情の裏舞台。映画のトーンが、一昔前の懐かしい雰囲気。小さい頃にこんな映画を観たような錯覚におそわれました。(咲)

2011年/アメリカ/カラー/シネマスコープ(1:2.35)/121分/デジタル上映
配給:エスピーオー

★2012年2月25日よりシネマート新宿ほか全国にて順次公開

公式 HP >> http://video.foxjapan.com/koipare/

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ヤング≒アダルト(原題:Young Adult)

監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コーディ
撮影:エリック・スティールバーグ
音楽:ロルフ・ケント
出演:シャーリーズ・セロン(メイビス)、パットン・オズワルト(マット)、パトリック・ウィルソン(バディ)、エリザベス・リーサー(ベス)

自称作家のメイビス・ゲイリー。実はヤングアダルト(少女向け)小説のゴーストライター。人気が落ちて打ち切りになり、パソコンをあけて最終話を書き始めたが、少しも進まない。そこへ高校時代のボーイフレンドだったバディからのメールが届く。娘の誕生パーティの招待だった。メイビスは彼と別れてから一度結婚し、まもなく離婚。その後もデートの相手にはことかかないが、一夜限りの付き合いばかり。輝いていた10代の思い出が蘇り、その招待に応じる気になった。愛犬を車に乗せてしばらく疎遠だった故郷へ向かう。

ジェイソン・ライトマン監督が再び『JUNO/ジュノ』の脚本家ディアブロ・コディとタッグ。シャーリーズ・セロンはコーラをラッパ飲みし、キティTシャツにジャージのパンツといういでたち(気合を入ったときとの落差が大きいこと!)でイタイ三十路女性を演じます。過去の栄光よもう一度と、元彼とよりを戻そうとするのですが、彼は故郷で結婚し妻子と幸せに暮らしています。元カノのつけいる隙などどこにもないのに、自分の都合のいいように捻じ曲げて考えるメイビスには知ったこっちゃありません。昔彼女に憧れていた今も独身のマットが、いくら諭しても聞く耳持たず。イタさ全開でドラマが進んでいきます。大人になりきれない高ビー&自己チュー女子に共感するや否や?(白)

2011年/アメリカ/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
©2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved

★2月25日(土)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.young-adult.jp/

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英雄の証明(原題:Coriolanus)

監督:レイフ・ファインズ
脚本:ジョン・ローガン
原作:ウィリアム・シェイクスピア
撮影:バリー・アクロイド
音楽:イラン・エシュケリ
出演:レイフ・ファインズ(コリオレイナス)、ジェラルド・バトラー(オーフィディアス)、バネッサ・レッドグレーブ(母ヴォルムニア)、ブライアン・コックス(メニーニアス)、ジェシカ・チャステイン(妻ヴァージリア)

ローマ侵略を狙いじわじわと近づいていたオーフィディアスは、ローマの将軍コリオレイナスを打ち負かせずにいる。コリオレイナスは数々の武勲により、今や独裁といえるほどの力を持っており、政治家たちは彼の力をそぐことを考え始めていた。政治的野心を持つ母ヴォルムニアは息子を叱咤激励し、従順で美しい妻ヴァージリアはひたすら夫の身を案じていた。

ウィリアム・シェイクスピアの悲劇「コリオレイナス」を現代に置き換え、戦う男たちを描いたものです。現代の戦争を舞台にするのはかなり無理がある感じがしました。レイフ・ファインズが、イギリスでは誰もが知る古典の原作を初の監督作品に選んだのはなぜ?日本で時代物を現代に置き換えて作るようなものなのかしら。名前もセリフも時代がかって聞こえるのですが、本国での評判はいかがだったんでしょう?
国のため戦い続けてきたのに、国にも民衆にも背を向けられるレイフ・ファインズの悲哀。かたや国民に愛される武将ジェラルド・バトラー、主演二人の熱い演技合戦はみもの。(白)

2011年/イギリス/カラー/123分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
©Coriolanus Films Limited 2010

★2月25日(土)、丸の内ルーブル、渋谷東急ほか全国ロードショー

公式 HP >> http://gacchi.jp/movies/eiyu-shoumei/

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幸運の壺 Good Fortune

監督:小川通仁
脚本:福間正浩、加藤浩平、佐藤友治
撮影:上野彰吾
出演:ほっしゃん。(袴田良作)、麻生久美子(袴田麻美)、戸田恵子(管理人 上野しのぶ)、佐津川愛美(袴田エリカ)、前田公輝(小澤翔)ほか

売れない役者の良作は、鬼嫁・麻美のDVに耐えつつ毎日を送っていた。マンションの管理人に「幸運の壷」を押し付けられてから、なぜか突然日常が激変する。仲間うちで冗談に「殺すしかない」と言っていた鬼嫁が事故死してしまったのだ。日頃の不和から殺人犯と疑われてしまう!思わず良作は隠蔽工作に走るが、死体を外に持ち出すことができない。妹や、その彼氏、麻美の父親など次々とやってくる訪問者から麻美の死体を隠そうと躍起になるのだが。


©日本テレビ/吉本興業

お笑いタレントのほっしゃん。の初主演作。「幸運の壷」をもらったばかりに不幸の連鎖にまきこまれていく不運な男のストーリー。ヨネスケさんが突撃してくるわ、死体が増えていくわ、のドタバタコメディです。爆笑というより、嫁の立場では「笑っていいのか?」な展開ですが、最近のお笑いに慣れた若い方にはうけるのでしょう。沖縄国際映画祭のLaugh部門出品作品。鬼嫁・麻美のお父さん役に麿赤兒さん。このごろいろんな作品でお見かけします。(白)

2011年/日本/カラー/83分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

★2月25日(土)シネマート新宿他全国ロードショー

公式 HP >> http://tsubo-goodfortune.com/

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Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(原題:PINA)

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団のダンサーたち

1973年、ドイツのルール地方の小さな工業都市ヴッパタール舞踊団の芸術監督に抜擢されたピナ・バウシュ。当時は無名だったピナだが、伝統や常識を超えて演劇とダンスを融合させた独自のスタイル「タンツテアター」で、世界に名を馳せる舞踏家、演出・振付家となる。そのピナの独創的な舞台を映像で描くには、3Dしかないと、20年来の友人ヴィム・ヴェンダース監督はピナに提言。半年に及ぶ徹底的な準備を終え、3Dのリハーサル撮影を2日後に控えた2009年6月30日、ピナが急死する。一度は撮影中止を決めたヴェンダースだが、世界中から届く映画化を願う声に後押しされ本作を完成させる。


(c)2010 NEUE ROAD MOVIES GMBH, EUROWIDE FILM PRODUCTION


(C)NEUE ROAD MOVIES GmbH photograph by Donata Wenders

ピナの振付によるパフォーマンスが、劇場だけでなく、街や森に飛び出して繰り広げられる様が3Dで圧倒的に迫ってきます。中でも私の目を引いたのが、何度も出てくるヴッパタール市内を走る「空中鉄道」。1901年に開通した現役最古のモノレールだそうで、もちろん何度かリニューアルされているそうですが、存在感がすごいです。この空中鉄道の中や、空中鉄道を背景にした街中でのパフォーマンスを観ながら、ヴッパタールに行ってみたくなりました。もちろん、本場でヴッパタール舞踊団の公演も観てみたくなりました。
さて、映画の中では、ピナを知る人たちの「はかなさと強さを併せ持つ人」「限界を知らない人」「屋根裏に宝物をたくさん隠しているような人」といった言葉から、ピナという女性の人物像も浮かびあがってきます。実は私は今回、『ピナ・バウシュ 夢の教室』を試写で観て初めてピナを知りました。若い人たちに適切で素敵な言葉で指導をするピナに惹かれました。続けて観た本作でも、ダンサーたちに語りかける「もっとクレイジーに」「私を怖がらせてね」「探し続けなさい。たとえ方向がわからなくても」「自らを失わないように」といったピナの言葉が心に残りました。人生の指針を貰った思いです。(咲)

2011年 ドイツ=フランス=イギリス/104分/カラー/ヴィスタ/SRD
配給:ギャガ

★2月25日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9他全国順次3D公開

公式 HP >> http://pina.gaga.ne.jp/

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メランコリア(原題:MELANCHOLIA)

監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
撮影:マヌエル・アルベルト・クラロ
衣装:マノン・ラスムッセン
出演:キルスティン・ダンスト(ジャスティン)、シャルロット・ゲンズブール(クレア)、アレクサンダー・スカースガード(マイケル)、キーファー・サザーランド(ジョン)、ジョン・ハート(デクスター)

巨大惑星メランコリアが地球に接近する中、ジャスティンは披露結婚宴を催す。妹を気遣う姉クレアとその夫は、所有する屋敷で盛大な披露宴は開いてくれるが、花嫁のジャスティンはどこか空虚な表情だった・・・。


(C)2011 Zentropa Entertainments ApS27

ラース・フォン・トリアー監督の最新作。『アンチクライスト』はイマイチ好みでなかったが、これは、すぐ前に観た『ヒミズ』も寄せつけないほど緊張感のある作品だった。
まず、不安な気持ちにさせられるのだ。結婚するんだから、幸せじゃないんかい?と聞いてみたくなるほどだったが、この始まりの不安感+不気味に、はまってしまった。 最初の不安感が最後で納得できたが、こんな悲観的なのいや~、特にいろんなことの起こった日本では悲しすぎる・・・と思いながらも、とっぷりとある種の恍惚感もちゃんと感じられるから、不思議な映画だった。
ジャスティンを演じたキルステン・ダンストの不安オーラと地球に異常接近して来るメランコリアを、もう一度大画面で観てみたい作品。 (美)

2011年/デンマーク、スウェーデン、フランス、ドイツ/カラー/135分/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ

★2月17日よりTOHOシネマズみゆき座他にて全国ロードショー

公式 HP >> http://melancholia.jp/

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TIME タイム(原題:IN TIME)

監督:アンドリュー・ニコル
脚本:アンドリュー・ニコル
撮影:ロジャー・ディーキンス ASC/BSC
音楽:クレイグ・アームストロング
衣装:コリーン・アトウッド
出演:ジャスティン・ティンバーレイク(ウィル・サラス)、アマンダ・セイフライド(シルビア・ワイス)、オリヴィア・ワイルド(レイチェル・ワイス)、カリアン・マーフィ(レイモンド・レオン)

現代の社会に似た近未来の世界。科学の進化により老化は完全に無くなり、すべての人間は25歳で成長がストップするようになった。
そこでは、唯一“時間”が通貨になる。25歳になるとすべての人間の左手に刻まれたボティ・クロックが起動して、余命時間がカウントダウンする。

近未来も金持ち、貧乏の仕組みは変わらない。それを命と引き換えだから切ない。
貧乏人は「あと三日分の家賃をはらったら、2時間しかない。働きにも行けないから5時間かして」とせちがないやり取りがある。
でもこれをお金に置き換えると「携帯代払ったら、昼飯代なくなってしまった!今月、五千円かして…」など考えたら今も一緒。なんだか身につまされる内容だった。
 金持ちはめちゃめちゃ時間持ちで120年分とかで、中産階級はないみたい。(実際、この普通?レベルの家庭が、病気や離婚などのアクシデントで転落しているから、一番不安定階級かもしれない)大金持ちとその日暮らしの2パターンで、地域も区切られていて行き来できない。
 試写でいただいたプレス資料によると、スラム・ゾーンでは、マックに入ってフライドポテトとコーヒーを飲めば約8分、一ヶ月の家賃36時間、一ヶ月の電気代8時間、バス代2時間、公衆電話1分・・・。
反対のリッチ・ゾーンでは、高級車59年、高級ホテル一泊2ヵ月・・・もう勝手にやってくれって感じ。
 スラム・ゾーンでいくら賃金がでるか知らないが、日本のマックはコーヒー100円、それが4分だから1分2.5円。公衆電話は1分だから、2.5円、日本より安い。家賃が36時間(2160分)×2.5=5400(円)・・・やす!計算機片手にアホな計算しちまった!(美)

2011年/アメリカ/カラー/109分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:20世紀フォックス映画

★2012年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日劇他にて全国ロードショー。

公式 HP >> http://www.foxmovies.jp/time/

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おとなのけんか(原題:CARNAGE)

監督:ロマン・ポランスキー
脚色:ヤスミナ・レザ
撮影:パヴェル・エデルマン
衣装:ミレーナ・カノレノ
出演:ジョディ・フォスター(ペネロペ・ロングストリート)、ケイト・ウィンスレット(ナンシー・カウアン)、クリストフ・ヴァルツ(アラン・カウアン)、ジョン・C・ライリー(マイケル・ロングストリ)

ここはニューヨークのブルックリン。11歳の子ども同士の喧嘩で、ロングストリート夫妻の子が棒でたたかれて前歯を2本折ってしまう。
今日、その話し合いのために、加害者の親カウワン夫妻がロングストリート家を訪ねて来た。
冷静に始まったはずの話し合いは、次第に険悪になり、やがてお互いに口汚く罵り合い、本性がむき出しになっていく。さらに夫婦間の問題までに発展して・・・。

登場人物はたったの4人。公園の遠景とアパートの玄関先と室内だけで話は進み、時の流れもそのまま切り取られている。音楽でいえばちょっとテンポの速い弦楽四重奏を聴いているような躍動感があった。
よく躾の悪い子どもを見て、「親の顔が見たい」などと言うが、私は「この親の子の顔が見てみたいわ」と思ってしまった。
それにしても名優4人使っているが、何日間で、カメラを何台置いて、おいくらかかったのかお聞きしたかった。もちろんポランスキー監督に! (美)

2011年/フランス、ドイツ、ポーランド/カラー/79分/スコープサイズ
配給:ピクチャーズ エンタテインメント

★2月18日よりTOHOシネマズ シャンテにて公開中

公式 HP >> http://otonanokenka.jp/

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汽車はふたたび故郷へ(原題:CHANTRAPAS(歌わない子))

監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ライオネル・カズン(グルジア)、ジュリー・グルンバウム(フランス)
出演:ダト・タリエラシヴィリ、ビュル・オジェ、ピエール・エテックス

旧ソ連時代のグルジア。友人たちと幸せな少年時代を過ごしたニコは夢を叶えて映画監督になり、国家が管理する中でも精一杯映画作りに励んでいた。完成した映画が検閲官の怒りを買い、さらに、上映禁止になった映画を持ち出したことから投獄されてしまう。グルジアでは思うように映画が作れないと、祖父たちの後押しもあってニコはパリに赴く。しかし、フランスでもプロデューサーたちが何かと口出しをして編集まで変えられてしまう。なんとか再編集して完成させるが、映画の反応は今ひとつ。ここも自分の居場所じゃない。ニコは汽車に乗り故郷を目指す・・・


©2010 Pierre Grise Productions

グルジア出身のイオセリアーニ監督の自伝的物語。社会主義国家だったグルジアでも、自由に思えるフランスでも、どこにいても何らかの制約があるのが世の常。その中で自分をいかに貫くか・・・ 冒頭、試写室で幼馴染みのバルバラとルカの二人に映画を見せる場面がある。美しいマーガレットの花が咲き乱れる大地をブルドーザーが整地していく。「カットしないと面倒なことになるわよ」と指摘されても「切らない」と笑顔で答えるニコ。信念を持って、目的を達することの大切さを教えてくれる素敵な作品。
どんな環境にあっても自分自身でいたい! そして、人生の中で自分を支えてくれる家族や友人たちを大事にしたい!

2010年/フランス=グルジア/ドルビーデジタル/126分
後援:グルジア大使館
配給:ビターズ・エンド

◆『汽車はふたたび故郷へ』公開記念

オタール・イオセリアーニ映画祭2012
開催期間:2012年2月4日(土)~2月10日(金)
場所:オーディトリウム渋谷

(1)『四月』1962-2000 モノクロ/48分

(2)『歌うつぐみがおりました』1970 モノクロ/82分

(3)『蝶採り』1992 カラー/118分
(4)『群盗、第七章』1996 カラー/122分
(5)『素敵な歌と舟はゆく』1999 カラー/117分  ※特別上映
(6)『月曜日に乾杯!』2002 カラー/127分  ※日本最終上映

(7)『ここに幸あり』2006 カラー/121分


上映スケジュールなど詳細 →  http://a-shibuya.jp/archives/2283

★2012年2月18日(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://bitters.co.jp/kisha/

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フラメンコ・フラメンコ(原題:FLAMENCO, FLAMENCO)

監督:カルロス・サウラ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:イシドロ・ムニョス

1995年、カルロス・サウラ監督と撮影監督のヴィットリオ・ストラーロが初めてタッグを組んだ『フラメンコ』には世界的な活躍をしていた舞踊家たちが登場。日本でもヒットし、一気にフラメンコ熱が高まった。前作から15年を経て、フラメンコの歴史を作ってきた偉大なアーティストに加え、前作に登場しなかった若いアーティストを登場させ、さらに美しく芸術的な21幕の構成でお目見えした。

まるで美術館の展示室のような空間で繰り広げられる舞踊。光と影がおりなす独特の舞台で、人の一生が表現されていきます。なんと感情豊かな音楽と舞踊なんだろうと見入っているうちに、時間がすぎていきました。日本はフラメンコの本場スペインについで2番目に愛好家が多い国なのだそうです。フラメンコ音楽は東洋的なものと西洋的なものが自然に融合されていて、これはほかの音楽には見られない特徴なのだとか。それもひきつけられる要因なのかもしれません。(白)

2010年/スペイン/カラー/101分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート

★2月11日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http:// flamenco-flamenco.com/

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痛み(原題:痛み, 英題:PAIN)

監督:クァク・キョンテク(『友へ チング』『タイフーン』)
原案:カン・プル(『あなたを愛しています』『純情漫画』)
プロデューサー:イ・チスン(『TSUNAMI-ツナミ』)
撮影:ファン・キソク(『私たちの生涯最高の瞬間』)
照明:パク・ジョンチャン(『ワンス・アポン・ア・タイム』)
出演:クォン・サンウ(『悲しみよりもっと悲しい物語』「レディプレジデント~大物」)、チョン・リョウォン(『彼とわたしの漂流日記』「私の名前はキム・サムスン」)、マ・ドンソク(『国家代表!?』「太陽を飲み込め」)

幼い頃の交通事故で家族を失い、後遺症で痛みを感じなくなった男、ナムスンは少年院での兄貴分の使い走りとして借金の取り立てをしながら、毎日を無気力に生きていた。そんなある日、取り立て先でドンヒョンという道端で手作りのアクセサリーを売る女に会う。お互いに不思議な感情を抱き始め、やがてナムスンは行くあてのないドンヒョンを自分の家に連れてくる。同居を始めたふたりは、時にいがみ合いながらも次第に距離を縮めていく。ドンヒョンはナムスンの事故のいきさつを、ナムスンはドンヒョンがわずかな痛みや出血が致命傷になる血友病患者だと知る。二人は互いの“痛み” を知って相手への愛を深めていくのだが。。。


© 2011 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

私にとってのクォン・サンウは、韓流ドラマスターのイメージが強過ぎて映画を観るのを何となく避けていたのだが、この作品を観てとても反省した。角刈りでやぼったい風貌の彼は、笑わない、泣かない。カッコ良くて強いモムチャンのイメージは封印し、やられっぱなしで傷だらけだ。ひたすら抑えた演技なのだが、痛みを感じなかったはずの体の奥からじわじわと湧いてくる切ない感情が観客にも伝わってきた。ヒロインのチョン・リョウォンは可愛いだけでなく強い女性をしっかりした存在感で演じている。辛いストーリーの中で二人の束の間の幸せな時間に掃除や料理をきちんとこなす場面に救われた。韓国映画はいつも食事のシーンが丁寧に描かれる。家族の不幸な過去、不治の病、闇社会、などと韓国ドラマの王道をいくストーリーのようだが、主演二人の演技の質が高いので、安っぽくなっていない。監督は米国で映画制作を学んできた方で、『友へ チング』『タイフーン』のような大作だけでなく様々なジャンルの作品に意欲的に取り組んでいる。韓国映画界をこれからも牽引していく期待される監督の一人に間違いない。クォン・サンウは映画出演10 作目となるそうで、本人も「私にとって最高の作品です!」とインタビューでも答えている。かなり良いので、もともとファンだった皆さんも食わず嫌いだった皆さんもぜひ観てほしい。 これからは、映画は縁があればとりあえず観てみなくてはならない、と思った。(祥)

2011年/韓国/104分/カラー/ビスタ/ドルビーSRD
字幕翻訳:根本理恵/配給:エスピーオー

★2012年2月11日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて全国順次公開

公式 HP >> http://www.itami-movie.com/

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キツツキと雨

監督:沖田修一
脚本:沖田修一、守屋文雄
撮影:月永雄太
美術:安宅紀史
出演:役所広司(岸克彦)、小栗旬(田辺幸一)、高良健吾(岸浩一)、古舘寛治(鳥居)、山崎務(羽場敬二郎)

人里離れた山間の村。木こりの岸克彦は、毎朝、早くから仲間と山林に入り、木々を伐採して生計を立てていた。妻に先立たれ、今は定職に就かずにふらふらしている息子の浩一と2人暮らし。
ある日、こんな山深い場所に、ゾンビ映画の撮影にやってきた映画監督の田辺幸一と助監督の鳥居に偶然に会い、なんだかんだと言いくるめられて撮影に協力するハメになった克彦だったが・・・。

去年の東京国際映画祭で唯一日本からコンペティション部門に出品され、審査員特別賞を受賞した作品。
監督は『このすばらしきせかい』『南極料理人』の沖田修一。彼の作品の守り神でもある古舘寛治も万年・助監督役で冒頭から登場している。
ひょんなことから撮影に協力するはめになったが、他人事みたいに立っているだけの監督に「君、いったい誰?ぼーっとしていないで手伝わないか。君が一番若いんだろ?」と意見するところなど、思わず笑ってしまった。
かわいい子ちゃんが出てくる恋の話などないが、新米監督の「スタート!」の声がだんだん大きくなる様子、大笑い確実の役所・ゾンビ、痔持ち大御所俳優を演じる山崎務も見逃せない。老若男女、誰でもが楽しめる日本映画だ。(美)

2011年/日本/カラー/129分
配給:角川映画

★2012年2月11日より角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.kitsutsuki-rain.jp/

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ポエトリー アグネスの詩(原題:Shi(詩)英題:Poetry))

監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
撮影:キム・ヒョンソク
衣装:イ・チュンヨン
出演:ユン・ジョンヒ(ミジャ)、イ・デビッド(ジョンウク)、キム・ヒラ(カン老人)

 遠く釜山で働く娘の代わりに、中学生の孫息子を育てている初老の女性ミジャ。このごろ忘れっぽくなり、医者からアルツハイマー初期と言われる。
だが、彼女はどこまで病を理解しているのか、たまたま通りがかりに詩作教室を見つけ、詩を書いてみたいと思い立つ。
そんな彼女に追い討ちをかけるように、孫にまつわる大変な出来事が起こり、あまりにも厳しい現実と精神状態の中、彼女は意外にも詩作の世界に迷い込んでいくのだった。

最初のシーンから印象的だった。大きな川に流れて来る死体が映っているのだ。これは彼女ミジャと係わりないように見えるが、これが後に生きてくる。
カルチャーセンターの詩作の教室の彼女、自宅で孫に小言をいう彼女、孫の仕出かした事件で奔走する彼女、週3日介護の仕事をする彼女・・・私なら発狂するかも知れない設定を「半分ぼけているから?嫌、そんなら詩作はできまい・・・」などと思いながら観ていた。
同じ65歳だから非常にわかるところと反対に理解できないところもあった。
辛い状況であるべきなのにおしゃれして、しゃなりしゃなり歩く様は正視に堪えられなかったが、彼女は何もかも超越して詩の世界に入り込んでしまったのだろう。
主役のユン・ジョンヒ(パリ在住で16年ぶりの復帰)と介護されている老人(キム・ヒラ)の風呂場セックスシーンは見事だった。
※生活保護を受けている設定だが、今の日本ならこの暮らしで生活保護はうけられまい。ましてや、おしゃれして外出しようものなら、近所の噂が飛び交うのが現実。韓国の生活保護の実情が知りたくなった。(美)

2010年/韓国/カラー/139分/ドルビーSRD
配給:シグロ/キノアイ・ジャパン

★2月11日より銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他にて全国順次公開

公式 HP >> http://poetry-shi.jp/

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はやぶさ 遥かなる帰還

監督:瀧本智行
脚本:西岡琢也
撮影:阪本善尚
音楽:辻井伸行
美術:若松孝市
出演:渡辺謙(山口駿一郎)、 江口洋介(藤中仁志)、 夏川結衣(井上真里)、 小澤征悦(鎌田悦也)、吉岡秀隆(森内安夫)

2003年5月9日、鹿児島内之浦宇宙空間観測所。小惑星探査機「はやぶさ」を搭載したロケットが発射された。
緊張の面持ちで見守っていた山口教授は、これからスタートする壮大なプロジェクトに対し決意を新たにしていた。
そして2005年、小惑星「イトカワ」の姿をとらえたはやぶさはタッチ・ダウンに成功するが、化学エンジンの不良や姿勢制御が不能になるなどのトラブルに見舞われてしまう・・・。

この<はやぶさ >、私は瀧本監督だから観たかった作品。地味作りだが、脚本がよく感動押し付けもなかった。
宇宙開発センターはいろんな企業、研究者の研究の場であり、各々の立場のせめぎあいの場でもあることを教えてくれた。
彼らが<はやぶさ>帰還のために気持ちを一つにするまでの道のりが、簡単ではなかった現実をちゃんと見せてくれた。
下町工場の手書きに近い設計図からはじまる<はやぶさ>誕生から、燃え尽きるまでを、観ている一人ひとりの知の探求心をかきたてながら進行させていく展開は見事だった。
山崎務扮する町工場社長と古い町工場の佇まいがとても人間臭く感じた。(美)

2012年/日本/カラー/136分
配給:東映

★2月11日より東映系映画館にて全国ロードショー公開 ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.hayabusa2012.jp/index.html

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ニーチェの馬(原題: A TORINOI LO(トリノの馬) 英題: THE TURIN HORSE)

監督:タル・ベーラ(『サタンタンゴ』『倫敦から来た男』)
脚本:タル・ベーラ、クラスナホルカイ・ラースロー 
撮影:フレッド・ケレメン
音楽:ヴィーグ・ミハーイ
出演:ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ

19世紀末のドイツの哲学者ニーチェ。1889年、イタリアのトリノを訪れていたニーチェは、御者に鞭打たれて疲れきっている馬を見かけて駆け寄り、その馬の首を抱いたまま発狂したという。本作は、脚本家クラスナホルカイ・ラースローが1985年に劇場でニーチェの物語を朗読した最後に投げかけた「その馬はどうなったのだろう」という疑問に感動したタル・ベーラ監督がラースローと共に描いたその後の馬の物語。
馬の飼い主の男は貧しく、娘と共に荒野の一軒家に住んでいる。この家の唯一の収入源は荷馬車だが、馬は日に日に弱っていき仕事にならない。ついに飼い主は馬と娘を連れて家を出るが、吹きすさぶ風に道のりは険しい・・・
本作で描かれているのは馬が亡くなるまでの6日間。聖書の創世記で神が6日間でこの世界を創造したと書かれているのに対し、6日の間に少しずつ何かが失われ終末を迎えることを語っている。人間誰しも最後は静かな孤独を迎え消えていくことを監督は問いかけたかったという。

風が激しく吹き荒れる中、井戸に水を汲みに行く娘。どんな日にもこなさなくてはならない営み。台詞をほとんど廃し、ひたすら男と娘と馬の日常を追った154分。モノクロ映像の美しさは絶品だが、生きることの厳しさがぐっと迫り息苦しくなった。終始風が唸り、忍耐を要求される作風にアミール・ナデリ監督の『水、風、砂』を思い起こした。(咲)

2011年/ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ/モノクロ/35㎜/1:1.66/ドルビーSRD/154分
配給:ビターズ・エンド

★2012年2月11日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/uma/

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トーキョー ノーザンライツ フェスティバル2012北欧映画の1週間

2012/02/11 sat - 17 fri
ユーロスペース & アップリンク

今年も真冬のこの時期に、北欧にどっぷり浸かれるイベント盛りだくさんの映画祭が渋谷にて開催されます。
 アイスランド出身のフリドリック・トール・フリドリクソン監督の特集や、直輸入の初公開作品、更には今や有名監督になったトマス・ヴィンターベア、ベント・ハメール、ラース・フォン・トリアーらの長編デビュー作の特別上映もあります。
 その他の作品もコメディ、ホラー、ファンタジー、ドキュメンタリーとあらゆるジャンルが揃っていて注目です。是非、温かい格好をして、渋谷に足をお運びください。


  マンマ・ゴーゴー             ネクストドア/隣人

シンプル・シモン                  魔女    

チケット:前売り 1回券 1300円(Pコード 463-314)
         3回券 3600円(Pコード 463-315)
     当日  1回券 1500円 学生・シニア・ユーロスペース会員 1200円
         3回券 3900円

公式 HP >> http://www.tnlf.jp/

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ペントハウス(原題:TOWER HEIST)

監督:ブレッド・ラトナー
脚本:テッド・グリフィン、ジェフ・ナサンソン
撮影:ダンテ・スピノッティ ASC,AIC
音楽:クリストフ・ベック
出演:ベン・スティラー(ジョシュ)、エディ・マーフィ(スライド)、ケイシー・アフレック(チャーリー)、マシュー・ブロデリック(Mr.フィッツヒュー)、ガボレイ・シディベ(オデッサ)

NYマンハッタンの超一等地にそびえ立つ超高級マンション「ザ・タワー」の管理人・ジョッシュは、最上階に住むアーサー・ショウが詐欺容疑で逮捕されたことを知る。
そして、同時にタワーの従業員たちの虎の子の全財産も騙し取られていたことも発覚。彼と従業員は財産を取り戻す計画を立てるが・・・。

マンションは最上階が一番値段が高い。だが、このマンション、嫌、御殿マンションは凄い! 超一流ホテルの広さで最上階のペントハウスはお金模様のプール(これは必見の価値あり)や真っ赤なフェラーリの実物が置いてある。成金趣味バリバリだけど、凄い!のひと言。
 そこの住民でスーパーリッチな生活を送る大富豪アーサー・ショウは、その最上階のペントハウスに住む、最もVIPな居住者だったが、それが身の回りの世話や掃除をする人たちの大切な虎の子も騙し取っていたのだ。
だんだん話しがせこくなってくる。
 使用人たちは財産を取戻そうとプロの泥棒さんに手ほどきを受けるが、そこは素人・・・なかなか物を一つ盗るのも大汗をかいていた。根が善人だからうまく行きっこないと思いながらも、あの手この手で活躍する。「そんなの無理、無理・・・」と考えながらも応援していた。
※実際にこのレベルの一番小さな分譲住宅の値段は最低でも5億円だげな!(名古屋弁)
※撮影に使ったマッハタンのトランプ・インターナショナルホテル&タワーは、ドナルド・トランプ社長から許可が出て撮影された。ロケ地探訪にいってりゃ~す?(また名古屋弁)
※『プレシャス』の主役の超太目少女が、同じ体型で出ていた。(美)

2011年/アメリカ/カラー/104分/ドルビーSRD
配給:東宝東和

★2月3日よりTOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://penthouse-movie.com/

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LAマザーファッカーズ(原題:I'll be there with you)

監督:北村昭博
脚本:北村昭博
撮影:ジョン・バー
音楽:バラク・モフィット
出演:北村昭博(アキ)、アダーシャ・ベンジャミン(アニー)、ダニエル・ボールドウィン(コンスタンティン)

ロサンゼルスに住むカップル、アキとアニーは友人4人と共にサンディエゴの旅を楽しんでいた。泊まるところは、2年前に顔見知りになった男性コンスタンティンの家。
食事の後、アキたちは、アニーとジルとジョンの3人を残して、夜のディスコに繰り出していった。 アキはディスコで、若くて綺麗な(虚言癖のある)女と意気投合して最高の夜を過ごしたが、一方、アニーたちは・・・。

 主役を演じるのは、『ムカデ人間』の先頭者・北村昭博! 彼の初監督作品。
冒頭から、凄いシーンで、おぉっ!となってしまった。彼の知らないところで事件が2つ起こっているが、そのつなぎ方が面白く、納得がいく展開だ。
この監督さんの女優さんチョイスの目は確かだ。3人出てくるが(どっちかというと日本人好み)、三人三様性格も違い、体も声もいい。
アキ本人も本音は大阪弁、口説くのは甘く英語で・・・その台詞もいいし、字幕も◎。 DVD同時発売の『ムカデ人間』ともどもご覧いただきたい。

2006年/アメリカ/カラー/92分/16×9ビスタ/日本語字幕
発売:トランスフォーマー

★2012年2月3日『ムカデ人間』と同時 DVD発売

ハリウッドで愛をさけぶ!! 北村昭博 オフィシャルブログ>> http://ameblo.jp/akihiro-kitamura/


※2011年の夏に『ムカデ人間』を観たが、そのときの感想も。

『ムカデ人間』トム・シックス監督・脚本/オランダ、イギリス合作

森の中の広大な屋敷に住むヨーゼフ・ハイター博士はシャム双生児分離手術のエキスパートである元外科医。彼の夢は複数の人間の口と肛門をつなぎ合わせてムカデ人間をつくることだった。
旅行者を麻酔銃で麻痺させて誘拐。自宅手術室でムカデのようにつなげていく。もちろんそのままつなげて生活させたいと願っている・・・。

今回、誘拐してきたのは男一人、女二人。女は若いアメリカ人女性で友人同士、男は日本人。
それも日本語しか話せないヤクザ者。(この作品で有名?になったハリウッド在住の北村昭博さんで、最後、観念した彼の台詞が泣かせる)
人間の口と肛門をつなげて行く奇怪さがたまらなく面白い。だが、よくこんな作品に男ならともかくも美しい女優さんが・・・。エライ覚悟がいっただろう。
終わってからパンプレットの売り場に、さっと12、3人が並んだ。悪趣味?ではあるが、完成度は高く役者も厳選されていた。(美)

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ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵

監督:窪岡俊之
アニメーション制作:STUDIO4℃
原作:三浦建太郎
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン:恩田尚之
総作画監督:恩田尚之
声の出演:岩永洋昭(ガッツ)、櫻井孝宏(グリフィス)、行成とあ(キャスカ)、梶裕貴(ジュドー)、寿美菜子(リッケルト)、藤原貴弘(ピピン)

いつ果てるともない戦争の続く暗黒の時代。産み落とされたときに母親は死に、酷薄な養父のもとで育ったガッツ。暗い過去を封印したまま、誰とも関わらず一匹狼の傭兵として生きてきた。ある戦場で傭兵集団「鷹の団」の首領グリフィスと出逢い、勝負をすることになった。その容姿に不似合いな強さにガッツはしたたかに打ちのめされ、約束どおり鷹の団の一員となった。ガッツは初めて仲間を得、グリフィスは自分の国を持ちたいという野望に着々と近づいていく。

1989年から22年にわたって連載され、今も進行中のダークファンタジーコミックが原作。一度も原作を見ないまま、この第一部の試写に行ってみました。うわ、面白いではないですか。自分の腕っ節だけを頼りに生きてきた孤高の傭兵ガッツに、超美形のカリスマグリフィス。二人の確固として離れがたいと思われた絆がこれからどう変わっていくのか、目が離せません。今年中に第2部、第3部と公開されるということをすぐ担当の方に確かめました。(白)

2011年/日本/カラー/80分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ワーナー
(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS

★2月4日(土)よりほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.berserkfilm.com/

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鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言

監督:山崎佑次
撮影:多田修平
編集:今岡裕之
ナレーター:石橋蓮司

宮大工 西岡常一氏は、明治41年奈良県生まれ。戦争による応召をはさみ、法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を棟梁として手がけた。飛鳥時代から続く宮大工の技術を惜しみなく後進に伝え、1000年の檜のいのちを1000年生きる建物へと繋ぐことが宮大工の務めと実行し続けてきた。「鬼」というのはその信条を曲げない厳しさのこと。遺された貴重なフィルムに、多くのゆかりの人々の証言を継いでできあがったドキュメンタリー。

西岡氏は大工になる前、祖父常吉棟梁の勧めで生駒農学校に入学しています。初めは不承不承だったそうですが、農作業には、“法隆寺大工「口伝」”(これは何にでも通じる言葉です!)にある伽藍建築の全ての真髄が含まれていると知ります。自然は土を、土は木を育みます。土を知り、木を知り、そのいのちを繋いでいく尊さが仏教建築の原点であると。飛鳥建築を復興するのに使う檜が日本にはない、という現実に驚き、西岡氏の技術と心を受け継ぐ若い人々がいることに安堵しました。道を極めた人の言葉はまっすぐに心に届き、しゃんと背筋が伸びます。(白)

2011年/日本/カラー/88分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:太秦
(C)『鬼に訊け』製作委員会

★2月4日(土)よりユーロスペース・シネマサンシャイン大和郡山(奈良県)にて“祈り”のモーニングショー 他全国順次公開

公式 HP >> http://www.oninikike.com/

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レイトオータム(英題:Late Autumn)

監督: キム・テヨン
出演: ヒョンビン(『百万長者の初恋』『まわし蹴り』「シークレット・ガーデン」「私の名前はキム・サンスン」)、タン・ウェイ(『ラスト、コーション』)

暴力を振るう夫を誤って殺してしまい収監されて7年になるアンナ。母が亡くなり葬儀のために72時間だけ外出を許される。シアトルへ向かうバスに、誰かに追われているらしいアジア系の若い男が乗ってくる。同じアジア系のアンナにバス代を貸してほしいと頼む男。仕方なくお金を貸すアンナ。借金のカタにと強引に腕時計を押し付ける男。その後も男は必要以上に調子よく話しかけてくる。長い刑務所生活で久しぶりの異性との会話に戸惑うアンナ。やがて霧深いシアトルの町に着く。男から渡された電話番号を書いた紙をゴミ箱に捨ててしまうアンナだが、街で思わぬことで男に再会し助けられる。その後、男は葬儀の場に花を持って現れる・・・

1966 年のイ・マニ監督作品『晩秋』(フィルム遺失)のリメイク。これまでに、韓国国内で『肉体の約束』(1975 年イ・ギヨン監督)、『晩秋』(1981 年キム・スヨン監督)と2度リメイクされたほか、日本でも1972 年に斎藤耕一監督が『約束』のタイトルで岸恵子と萩原健一競演で製作しています。残念ながらオリジナル作品もその後のリメイク作も観ていないので、逆に先入観なしに新鮮な思いで観ることができました。
男フンはアメリカに来て2年。なんとか英語も上達し、寂しい女性たちのエスコートをして生計をたてている。一見軽そうだけど、ホストとしてアメリカで生きるつらさを秘めた男を楽しそうに演じているヒョンビン。軍隊の中でも訓練がハードなことで有名な海兵隊に志願して入隊した骨太なヒョンビンですが、本作では、私の大好きなドラマ「私の名前はキム・サンスン」の軽やかなイメージ。また、成り行きでDV夫を殺してしまった哀しい思いを抱えたアンナを演じたタン・ウェイは、『ラスト、コーション』とまた違った愁いのある雰囲気をかもし出していて好演。なんとも切ない恋物語。(咲)

2010年/韓国・香港・米/113分/カラー
配給:スプリングハズカム

★2012年2月4日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、他にて公開

公式 HP >> http://www.sumomo.co.jp/lateautumn/

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最高の人生をあなたと(原題:TROIS FOIS 20 ANS)

監督:ジュリー・ガヴラス
脚本:ジュリー・ガヴラス、オリヴィエ・ダザ
撮影:ナタリー・デュラン
音楽:ソディ・マルシシェヴァー
出演:イザベラ・ロッセリーニ(メアリー)、ウイリアム・ハート(アダム)、ドリーン・マント(ノラ)、ケイト・アシュフィールド(ジュリア)、エイダン・マクアードル(ジェイムズ)

ロンドンに住むメアリーとアダムは結婚生活30年を迎える。3人の子どもたちもそれぞれ巣立ち、孫にも恵まれた。高名な建築家で今も後進の指導にあたるアダムは今も忙しい。若い女性たちとの付き合いも多いアダムは服装も変わって、老いなど認めようとしない。
一方、忍び寄る老いの影に不安のあるメアリーは、有り余る時間にボランティアをと出かけるが、スタッフの対応に腹を立てる。今までの自分の生活や夫とのこれからに疑問がわいてくるのだった。


(C)2010 Gaumont - Les Films du Worso - Late Bloomers Ltd

同世代の話なので、身につまされるやらおかしいやら。生活に不自由なく幸せそうに見えていても、悩みは生まれるものです。特にイザベラ・ロッセリーニは輝く美貌の持ち主でしたから、男性から一人の女性とみなされないことに寂しくなるこの役柄はぴたり。冒頭の会場から出て一人ホールの椅子に座っているシーンは、まるで宝石の広告映像のように美しいです。そんな彼女が男性にちょっと注目されたいと、シャツのボタンを一つずつ外していったり、しみじみと鏡を眺めたりするシーンなど、ただのおばさんの私でも「わかるわかる」と頷いてしまいます。二人の脱線も長い夫婦生活の中でみればほんの寄り道なのかもしれません。終わりよければ全てよし。(白)

2011年/フランス、ベルギー、イギリス/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アルバトロス・フィルム

★2月4日(土)より Bunkamuraル・シネマ にてロードショー

公式 HP >> http://saikou-jinsei.com/

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ビーストリー(原題:BEASTLY)

監督・脚本:ダニエル・バーンズ
原作:アレックス・フリン
撮影:マンディ・ウォーカー
プロダクションデザイン:ラスティ・スミス
音楽:マーセロ・ザーヴォス
出演:ヴァネッサ・ハジェンズ(リンディ・テイラー)、アレックス・ペティファー(カイル・キングソン)、メアリー=ケイト・オルセン(ケンドラ)、ピーター・クラウス(ロブ)、リサゲイ・ハミルトン(ゾラ)、エリック・ヌードセン(テリー)、ダコタ・ジョンソン(スローン)、ニール・パトリック・ハリス(ウィル)

セレブな父を持ち、ハンサムで人気バツグンの男子高校生カイルは、魔女とあだ名のあるケンドラを軽い気持ちでからかってしまった。ケンドラは彼に呪いをかけ、自慢の容姿を心がそのまま現れた醜い姿に変えてしまう。元に戻してもらいたいと懇願するカイルに「一年以内に真実の愛を見つけること」と答える。父親は彼を一人別のマンションに住まわせ、家庭教師と家政婦を雇う。顔を隠して外出したカイルは、これまで自分をちやほやしていた人間の本音を聞き、ようやく自分を見つめていたリンディに気付いた。

「美女と野獣」を現代に置き換えたストーリー。慢心して人を傷つけても気付かないカイルは醜悪な姿に変えられてしまいますが、このビジュアルが凄い!作るには時間かかりそうですが若い人たちには受けるかも。ヴァネッサ・ハジェンズは「ハイスクール・ミュージカル」(テレビ版&映画)から5,6年経ちましたが、芯の強い女生徒が似合います。高慢なカイルが成長していく過程もいいです。
雰囲気が独特なメアリー=ケイト・オルセンはプロデューサー業もやれば、自分のファッションブランドも展開している才女。ミステリアスなケンドラのサイドストーリーが観たくなりました。(白)

2011年/アメリカ/カラー/86分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファイン・フィルムズ
(C)2011 CBS FILMS INC

★2月4日(土)より新宿武蔵野館ほかにて“バレンタイン” ロードショー!

公式 HP >> http://www.finefilms.co.jp/beastly/

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人生はビギナーズ(原題:Beginners)

監督:マイク・ミルズ
脚本:マイク・ミルズ
撮影:カスパー・タスセン
音楽:ロジャー・ネイル他
出演:ユアン・マクレガー(オリヴァー)、クリストファー・プラマー(ハル)、メラニー・ロラン(アナ)、ゴラン・ヴィシュニック(アンディ)

38歳独身のオリヴァーは母が亡くして5年になる。ある日、ガンの宣告を受けた父から、ゲイであることをカミングアウトされる。
驚いたオリヴァーは事実を受け止められず、こともあろうに、愛し合っていた恋人・女性アナとの関係も終わらせてしまう。だが、真実を告白した父は、残された人生を謳歌していた・・・。

GAP、NIKEのCMなどを手がけているマイク・ミルズ監督自身の実話。
ストーリーも面白そう・・・。突然、父親にゲイとカミングアウトされたらどうだろう・・・、すごくショックだろうなぁ。映画では立ち直りが早かったが、映画を作るまでの葛藤はきっと何をやっていても頭から離れなかったと思う。
監督はこれが多分(日本で公開されている)2作品目で、前作は『サムサッカー』。この作品の指を吸う青年がユアン・マクレガー扮するオリヴァーに重なった。(もちろん『サムサッカー』は彼の体験ではないが)
ユアン・マクレガーのぼんやり悩む?雰囲気が格別だった。アナ役のメラニー・ロランも美しい!前向きに生きようと変化してく人々の姿を静かに見守っている作品。(美)

2010年/アメリカ/カラー/105分/ビスタサイズ
配給:ファントム・フィルム、クロックワークス

★2月4日より新宿バルト9、TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開

公式 HP >> http://www.jinsei-beginners.com/

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日本列島 いきものたちの物語

監督:出田恵三
撮影:岩合光昭、嶋田忠、中村政夫、渕上拳、他
音楽:服部隆之
編集:澤村宣人
ナビゲーター:相葉雅紀、長澤まさみ、ゴリ(ガレッジセール)、黒木瞳

日本列島に生息するいきものたちの生態を、北は北海道・稚内から南は沖縄・西表島まで、全国20都道府県約30カ所で2年半にわたり撮影をおこなった日本初の自然ドキュメンタリー。

日本も捨てたものじゃないんだ!が私の一番最初に思った感想。
いきものの家族、仲間を守ろうとする愛を、ずっしりと感じた反面、厳しさも描かれていた。孤児になった子猿のメダカを寄せつけない他の猿家族、ひぐまの兄弟の別れ、ちょっと私の胸がチクっとなった丹頂鶴の夫婦愛。
ナビゲーターはやはり黒木瞳が声に温かみがあり一番よかった。昨日観た『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オ・ザ・ウォーター』にも黒木瞳が出ていた。好みの女優さんでなかったが、この二日間で黒木瞳を見直した。 (美)

2011年/日本/カラー/95分
配給:東宝

★2012年2月4日より東宝系にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://www.nihon-rettou.jp/

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荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE

監督:飯塚健
脚本:飯塚健
撮影:相馬大輔
音楽:海田庄吾
出演:林遣都(市ノ宮行・リク)、桐谷美玲(ニノ)、小栗旬(村長)、山田孝之(星)、徳永えり(ステラ)上川隆也(市ノ宮積)

大企業の御曹司・市ノ宮行は恐れている父・積から荒川地区再開発の妨げとなっている不法占拠者を一掃しろと命じられた。
荒川に行ってみた行は荒川河川敷の住民ステラと鉄男、鉄郎に「ボンタン狩りじゃ~!」と襲われ、ズボンを奪われ川に落とされてしまった。だが、そこに自らを「金星人」と名乗る金髪ジャージ姿の美少女ニノに助けられる。
“他人に借りを作るな”の家訓に従い、ニノの申し出「私に恋をさせてくれ」によりニノと恋人になる行だった・・・。

素敵なお尻ラインの林遣都、口元への字の桐谷美玲、しばらく小栗旬とわからなかった河童くん、表情豊かな山田孝之…みんな荒川河川敷ではじけていた。
隠された秘密が下敷きになっていて最後ホロリとなる。若手芸達者・徳永えり『春との旅』の悪評(私だけの)をはじき飛ばしてくれた。脚本、音楽、美術◎ (美)

2012年/日本/35mm/115分/ビスタサイズ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

★2012年2月4日より新宿ピカデリー、シネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://autb.jp/

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ハンター(原題:THE HUNTER)

監督:ダニエル・ネットハイム
脚本:アリス・アディソン
撮影:ロバート・ハンフリーズ
出演:ウィレム・デフォー(マーティン)、フランシス・オコナー(ルーシー)、サム・ニール(ジャック)

凄腕のハンターのマーティンはとあるバイオテクノロジーの企業の依頼でタスマニア島を訪れた。
目的はタスマニアタイガーの生体サンプルを採取すること。困難を極める任務で未開の地に踏み入れたマーティンは、ベースキャンプ代わりの民家に住む女性とその子供たちに心を通わせていく。

大自然が広がるタスマニア。これを観るだけでも価値があると思い試写に行った。どうして生体サンプルがほしいかと思ったらタスマニアタイガーには獲物を麻痺させるものを体に持っているからだ。それを研究するために躍起になっている。 圧倒的なスケールと緊迫感をもたらしてくれる。最後の彼の決断や子どもに対する愛が、この作品をぐっと身近なものにしてくれた。
※『アンチクライスト』の映画は好みではなかったが、孤独な影のある個性派俳優ウィレム・デフォーに痺れた。 (美)

2011年/オーストラリア/カラー/110分/シネマスコープ
配給:ブロードメディア・スタジオ

★2012年2月4日(土)丸の内ルーブル他全国順次公開。

公式 HP >> http://hunter-movie.jp/

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タンタンと私(原題:Tintin et Moi)

監督:アンダース・オステルガイド
脚本:アンダース・オステルガイド
撮影:サイモン・プラム
出演:エルジュ(ジョルジュ・レミ)、ヌマ・サドゥール、マイケル・プァー、ハリー・トンプソン、アンディ・ウォーホール、他

世界中で愛され親しまれているキャラクター・タンタン。その生みの親であるベルギーの漫画家エルジェが、タンタンをいかに作り出したかを本音で語っている。
このインタビューは約30年前のものだが、しゃべりすぎた為に今まで公表されなかった。 そのインタビューを中心に、タンタンを描くエルジェの姿やインスピレーションの源となった中国人チャン氏の感動の再開、彼をよく知る人のインタビュー・フィルムなどが集められている。


偶然にも、すぐ前に観た作品も芸術家のドキュメンタリー『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』だったので、どうしても見比べてしまった。
はっきり言えばお客さんは『グレン・グールド』の方にたくさん入ると思うが、『タンタンと私』のほうがドキュメンタリーとしての作りは上だと感じた。 エルジェの本物の声のテープとニュース映像を駆使して作ってあるが、エルジェの写真を縁取りしてそれを工夫し、まるで、そこに彼自身が息を吹き返して生きているように見せてくれた。
エルジェの人生も、グレン・グールドの人生も表面から窺い知れない悲哀があった。もう一度みたい作品。

※12月1日に公開するスティーヴン・スピルバーグ監督『タンタンの冒険 ★ユニコーン号の秘密★』とあわせて、エルジェの人生を克明に描いたこのドキュメンタリー『タンタンと私』も是非ご覧ください。(美)

2003年/デンマーク、ベルギー、フランス、スイス、スウェーデン/カラー/75分
配給:アップリンク

★2012年2月4日(土)、渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマ、新宿K'sシネマ他、全国順次公開

アップリンク HP 関連記事>> http://www.uplink.co.jp/tintin/

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アコースティック

監督: ユ・サンホン
出演:シン・セギョン、イム・スロン(2AM)、イ・ジョンヒョン(CNBLUE)、カン・ミンヒョク(CNBLUE)、ペク・ジニ

ラーメンを食べないと生きられない不治の病に侵されたシンガーソングライターのセギョン(シン・セギョン)。彼女は自分が作った歌を世の中に伝えようとして病院を抜け出す。だが、セギョンの歌は人々の心をなかなか掴むことができない。彼女の焦りとともに病気も深刻になっていく。
 セギョンの知人が訪れたライブハウスで演奏するロックバンド「タージマハル」のソンウォン(イ・ジョンヒョン)とヘウォン(カン・ミンヒョク)。だが彼らの音楽は客から受け入れられず、店を追いだされる。生活のため仕方なくギターを売ろうと決心するが、へウォンはギターを売りに行く途中、空腹に耐えられず、パン屋に寄ってギターを失くしてしまう。
 30年後、音が武器となり音楽が消えてしまった未来。海賊テレビで「タージマハル」のライブが放送されている。音の研究をしている大学生ジフ(イム・スロン)は、ちょっと変わった少女ジニ(ペク・ジニ)と出会うが、ジニは博物館に飾られているiPhoneを持っていた。ジニを通じて音楽を知ったジフは、しだいに音楽と彼女への思いが深まっていく。音楽に青春をかけた彼らの物語が始まる…。(作品資料より)


『アコースティック』の舞台挨拶で初々しく笑顔をふりまくイム・スロン

音が武器となり音楽が消えてしまった30年後の未来に、音の研究をしている大学生を演じたイム・スロンくんが、1月16日に行われたプレミア試写会で舞台挨拶に立ちました。「2AMのほかのメンバー2人にどうだった?と電話したら、30秒位ずっと笑ってました」と発言。「映画が楽しかったのか、自分が可笑しかったからなのか」とのことでしたが、どうやら楽しそうな映画のようです。(映画は未見で、コメントできません。咲)

2010年/韓国 / HD / Color / 88min 
配給:シネマスコーレ&キノアイジャパン

★2012年2月4日(土)“トキメキ”のロードショー! K’s cinema、第七藝術劇場、シネマスコーレ にて

公式 HP >> http://acoustic-movie.com/

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DOCUMENTARY of AKB48 show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る

監督:高橋栄樹
企画:秋元康
撮影:村上拓
音楽:大坪弘人
出演:AKB48

子どもから大人まで大人気の少女グループAKB48のドキュメンタリー。東日本大震災で被災者となった少女がAKB研究生にも一人いた。被災地を慰問するキャラバンに彼女も特別参加する。被害状況に絶句しながらも、集まってくれた観衆へ笑顔で元気を届ける彼女たち。分刻みで動くスケジュールの中、アイドルのトップに上り詰めた彼女たちは何を手にし、何を失ったのだろうか?舞台裏に密着したカメラは、インタビューに答える屈託のない無邪気なようすとともに、大きなプレッシャーに押しつぶされそうになる小さな背中も映し出す。

「AKB48」といえば、あの数えきれないほどたくさんの少女グループね、くらいの認識で一人ずつCMに登場する子以外はバラになったら全くわかりませ~んな状態でした。しか~し、昨年に続く第2弾のドキュメンタリーを見ますと、一人ずつの個性もちょっとだけわかってきた感じです。華やかな表舞台の裏にある厳しい練習やリーダーとなり、センターの位置をめぐる競争。獲得したらしたで、さらに高まる期待やプレッシャーなど、辛い思いの後に掴むものがあるからこそ彼女たちは挑戦をやめないのでしょう。ファンはもちろん必見!!ファンならずとも彼女たちの頑張りに背筋が伸びる思いをするはず。(白)

2011年/日本/カラー/121分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東宝映像事業部 宣伝:エレクトロ89
(C)2011「DOCUMENTARY of AKB48」製作委員会

★1月27日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

公式 HP >> http://www.2011-akb48.jp/

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犬の首輪とコロッケと

監督:長原成樹
脚本:稲本達郎
撮影:平尾徹
音楽:川本盛文
出演:鎌苅健太(セイキ)、ちすん(ミチコ)、山口智充(セイキの父)、中村昌也(ヤマト)

大阪の生野区で、毎日コロッケとキムチしか出さない父の子として生まれたセイキ。どうしようもない不良だったセイキは、相棒のタツヤ、ガリ勉のトシ、いつも殴り合う悪友でライバルのヤマトたちと、ケンカに明け暮れ、ついには少年院に入れられてしまう。
 少年院から出て来たセイキは友人達からミチコを紹介される。セイキはミチコの美しさと、前歴もひっくるめて愛してくれる彼女のおおらかさに真面目に生きることを誓う。
芸人の道を志していたタツヤの強引な誘いでお笑いの舞台に立ち、人を笑わせる喜びを覚えたセイキは、本気で芸人を目指していく。

これは長原成樹監督自身の自伝小説を映画化したもの。この作品では暴力=喧嘩=遊びで見ていられた。痛い!とか、これなら死んでしまう!というものは感じなかった。「あ~、この子達、このやり方で、話し合っているんだなぁ」と思った。
山口智充(ぐっさん)の父親が息子たちを男手一つで育てる様が、言葉は少ないが、ちょっと乱暴な温かさで描かれていた。ちすん(ミチコ役)もほんわかしていてよかった。
※<犬の首輪>は在日外国人が常時携帯を義務付けられている外国人登録証のこと。(美)

2011年/日本/カラー/85分/PG12
配給:ファントム・フィルム製作:吉本興業

★2012年1月28日シネマスクェアとうきゅうほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.inukoro.jp/

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イエロー・ケーキ  クリーンなエネルギーという嘘(原題:Yellow Cake: Die Luge von der sauberen Energie)

監督:ヨアヒム・チルナー

イエロー・ケーキ、それは天然のウラン鉱石を精錬して作られる黄色の粉末のこと。これが燃料棒のもととなり、原子炉の中で核分裂して熱を生み、発電機を回す。発電時に二酸化炭素を出さず、再処理を行えば繰り返し使用できることから、ウラン燃料は“クリーン なエネルギー”と言われてきた。これが誤りであることは既に1930年代に明らかになっていたが、隠蔽され続けてきた・・・

本作では、まず、かつてウラン世界第3位の生産高を誇った旧東ドイツ南部の採掘会社ヴィスムート社に焦点をあてる。東西ドイツ統一後、危険地域と指定されウラン生産無期限停止となったが、かつての勤務者の肺癌発生率が異常に高い。稼動していた当時、働いていた人々は採掘後のウラン鉱石が放射能を帯びた有害物質であることを明かされてなかったという。さらに、カナダ、ナミビア、オーストラリアのウラン鉱山で働く人々を撮影拒否にあいながら5年間にわたって取材した映像が映し出される。女性の雇用が法制化されているナミビアの鉱山では、くったくのない笑顔で働く女性たちの姿も目立つ。各地のウラン鉱山で、一抹の不安を抱きながらも生きるために働く人たちに、いったいどれほどの真実が知らされているのだろうか。
オーストラリアには原子力発電所はないが、ウランを世界に輸出して儲けているという。一方、日本には操業中のウラン鉱山はないが、世界のウラン鉱山に東電を始め複数の日本企業が出資している。そして、3.11以降、脱原発を宣言したドイツ・・・ 原発の是非を考えさせられる一作である。(咲)

2010年/ドイツ/デジタル上映/1時間48分
配給:パンドラ
特別協力:東京ドイツ文化センター

◆チルナー監督来日記念 先行有料試写会+シンポジウム
日時:1月25日(水)18:30~
会場:東京ドイツ文化センター
登壇者(予定):ヨアヒム・チルナー監督、鎌仲ひとみ監督他
料金:1500円

★2012年1月28日(土)渋谷アップリンク にてロードショー

公式 HP >> http://pandorafilms.wordpress.com/roadshow/yellow/

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グッド・ドクター 禁断のカルテ(原題:THE GOOD DOCTOR)

監督:ランス・デイリー
脚本:ジョン・エンボム
撮影:ジョナサン・キング
出演:オーランド・ブルーム(マーティン)、ライリー・キーオ(ダイアン)、J・K・シモンズ、タラジ・P・ヘンソン、マイケル・ペーニャ

生真面目な研修医のマーティンは病院の中で孤立しているようで不安だった。ベテラン看護士たちも自分を軽んじているように見える。18歳の美少女ダイアンが入院し、マーティンが担当となる。ダイアンが自分に寄せる信頼を感じ、毎日接するうちにマーティンはダイアンにひそかに恋するようになる。ダイアンは快方に向かい、退院が決まった。ダイアンと離れずにすむよう、マーティンはある細工をする。

オーランド・ブルーム主演のサスペンスドラマ。3部作『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)の美しきエルフのレゴラスからすでに10年余り。『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)のウィルも忘れがたいですが、その後が大変だろうなぁと想像します。先に公開された『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』では華のある悪役。こちらも今までになかった役で、俳優としての幅を大きく広げる時期なのでしょう。ダイアン役のライリー・キーオは、プレスリーの孫娘だそうです(母:リサ・マリー・プレスリー)。10代からモデルをしていて映画はこれが2本目。(白)

2010年/アメリカ/カラー/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活
(C)2010 Tesuco Holdings Limited. All Rights Reserved.

★1月21日(土)より 銀座シネパトス他 全国順次ロードショー

公式 HP >> http://good-dr.com/

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ジャックとジル(原題:Jack and Jill)

監督:デニス・デューガン
脚本:スティーブ・コーレン、アダム・サンドラー
撮影:ディーン・カンディ
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ、ワディ・ワクテル
出演:アダム・サンドラー(ジャック、ジル)、ケイティ・ホームズ(ジャックの妻エリン)、アル・パチーノ(本人)

成功した兄ジャック
残念(?)な妹ジル
年に一度のハプニングがやってきたッ!
大手広告代理店に勤め、美しい妻と可愛い子どもに恵まれたジャック。唯一の頭痛の種は双子の妹ジルだった。ずっと親の世話をしてくれたジルには感謝しているものの、小さな頃からマイペース、空気の読めない妹にいつも振り回されてきたのだ。そんな兄の気も知らず、毎年感謝祭にはジャック一家と過ごすのを楽しみにやってくるジル。母親が亡くなったので、今年は長居しそうな予感・・・。

アダム・サンドラーが双子の兄妹を一人で演じます。合成技術も格段に進歩しているので(子どものころ観たのは必ず離れていて、真ん中に微妙な線がみえた)動きのある場面も違和感ありません。芸達者なサンドラーの「コメディエンヌぶり」も楽しめるドタバタコメディです。中でジャックが女装をしてジルに化ける場面があり、2重に面白いのですが、出色なのが本人役で出演しているアル・パチーノ。率直なジルに惚れこんで追っかけまわす設定で、大スターの裏側(?)を見せて爆笑でした。(白)

2011年/アメリカ/カラー/109分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

★1月21日(土)丸の内ピカデリーほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.jack-jill.jp/

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ALWAYS 三丁目の夕日 '64

監督:山崎貴
脚本:古沢良太、山崎貴
撮影:柴崎幸三
音楽:佐藤直紀
出演:吉岡秀隆(茶川竜之介)、堤真一(鈴木オート社長)、小雪(茶川の妻)、堀北真希(鈴木オートの従業員・六子)、薬師丸ひろ子(トモエ/鈴木の妻)、須賀健太(古行淳之助)

昭和39年、東京オリンピック開催間近。戦後19年目にして見事な復興を遂げた日本は経済成長の真っただ中。そんな中、夕日町三丁目は変わらず、人情味溢れる生活が続いていた。
もうすぐ家族が一人増える予定の茶川家。事業も快調で“日本一の会社にする”夢にまっしぐらの鈴木オート。そんな中、ほのかな恋をする人も・・・。

第2作品目より6年たっているだけだが、この5、6年って大きい変わりようだった。
もちろん東京オリンピックも大、大イベントで、大きく変わる要因だったが、生活自体が電化される変動期だった。
昭和21年生まれの私は花の18歳(どひゃ~!自分で書いて驚いた!)。もう新幹線は走ってたし、テレビはカラーだった。だけどクーラーはなかった。今のように暑かったのか覚えはないが、ピアノの部屋に付けるか、客間に付けるか、喧嘩した覚えがある。
そのころ月賦という販売形式がちまたに広がった。ピアノだってオルガンから月賦でピアノを買う生徒が増えたのもこの頃。<物=幸せ>の始まる時期をうまく描いていた。(美)

2011年/日本/カラー/142分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:東宝
© 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会

★2012年1月21日全国東宝系ロードショー公開

公式 HP >> http://www.always3.jp/

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預言者(原題:Un Prophète  フランス映画祭2010において『アンプロフェット』のタイトルで上映)

監督:ジャック・オディアール(『真夜中のピアニスト』)
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ
出演:タハール・ラヒム、ニエル・アレストリュプ、アデル・ベンチャリフ、ヒシャーム・ヤクビ

ツワモノの多いパリ中央刑務所に6年の刑で収監されたアラブ人の青年マリク。「宗教は?」「特に」「食べられないものは?」「特に」「豚肉は?」「大丈夫」と刑務官の質問が終わり、観察期間用の牢に入れられる。服役者たちを牛耳るコルシカマフィアのボスであるセザールが、「あいつ(反対勢力のアラブ人レィエブ)を殺さなければ、おまえを殺す」と脅しにくる。看守に助けを求めるが、看守もマフィアに押えられている。やがて、レィエブに麻薬を貰うという口実で近づき、彼の牢を訪れる。アラブ人どうし打ち解けた会話がはずむ。「母国語は?」「孤児だから(アラビア語でもフランス語でもどちらでもないという意味?)」。施設でフランス語を習っただけというマリクに、レィエブは刑務所でフランス語を学ぶと良いと薦める。そんなレィエブを自己保身の為に殺してしまうマリク。1年後、アラブ人の友も出来、誕生日を祝ってもらう。その友の子供の名付け親になるマリク。だが、その友はやがて病で逝ってしまう。セザールの力で外出も許されるようになったマリクは、亡くなった友が捕まる前に隠した麻薬を入手し、それを元にだんだん力をつけていく・・・・

刑務所の中で、「犬よりタチの悪いアラブ野郎」と、コルシカマフィアたちに蔑まされているアラブ系囚人たちですが、中庭で過ごす時間になり、アラブ系の人たちがお互いに握手を交わしている姿に、見知らぬ人ともすぐに打ち解けるイスラームの精神を垣間見る思いでした。コルシカマフィアたちが、そうした彼らを見ながら「アラブどもが増えた。大きな絨毯がいる」という言葉に思わず笑ってしまいました。
フランス映画祭で原題をそのままカタカナにした『アンプロフェット』というタイトルで上映され、最初ピンと来なかったのですが、フランス語原題をよ~く見て、なぁ~んだ、「プロフェット(預言者)」だと納得! イスラームでは旧約・新約聖書のアダム、モーゼ、ノア、イエスなども預言者(神の言葉を預かる人)として認めていますが、最大にして最後の預言者がムハンマド。麻薬ビジネスで成功し、刑務所の中でだんだんと服役者たちに認められ、彼の周りに人々が集まってくる姿に、イスラーム創設当時、ムハンマドが信奉者を集めていった様を思い浮かべました。(監督が『預言者』とタイトルを付けた意図は別のものらしいのですが・・・)
主人公を演じたタハール・ラヒムは本作が映画初出演。孤児で無垢なマリクが颯爽とした青年となっていく姿を自然体で演じていて好感が持てました。これは有力株思っていたら、中国のロウ・イエ監督がパリで撮影した『Love and Bruises』で中国人女性と恋に落ちる青年役に起用。『スプリング・フィーバー』公開前、ロウ・イエ監督にインタビューした折にお伺いしたら、「彼はフランス国籍でアルジェリア系の爽やかな青年」とおっしゃっていました。まさに映画の印象通り。タハール・ラヒムのことばかり褒めてしまいましたが、本作ではマフィアのボスを演じたニエル・アレストリュプの存在感もずっしり。凄みをきかせたボスが、だんだん落ちぶれていくさまを見事に体現しています。フランス映画祭で観て公開を待ち望んでいた作品。とにかく嬉しい。(咲)

2009年/フランス/カラー/シネマスコープ/150分
配給:スプリングハズカム

*カンヌ国際映画祭2009グランプリ受賞、第35回セザール賞史上最多9部門受賞など、国内外で数多くの賞を受賞

★2012年1月21日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.sumomo.co.jp/

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ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬(原題:JOHNNY ENGLISH REBORN)

監督:オリヴァー・パーカー
脚本:ハーミッシュ・マッコール
撮影:ガイ・ベンズリー
音楽:アイラン・エシェケリ
衣装:ベアトリクス・パストール
出演:ローワン・アトキンソン(ジョニー・イングリッシュ)、ジリアン・アンダーソン(M17局長/別名ペガサス)、ドモニク・ウェスト(サイモン/別名エージェント1号)、ロザムンド・パイク(M17心理学者/ケイト)、ダニエル・カルーヤ(タッカー諜報員)、ピク・セン・リム(殺し屋・掃除婦)

祖国イギリスの危機を救ったのも過去の話の敏腕スパイ・ジョニー・イングリッシュもモザンビークでへまをしたことから、自信を失い、今はチベットの僧院に引きこもっていた。そんな折り、M17から新たなミッションの要請があった。

太い眉毛と顔全体の表情の変わりようで独特な笑いを提供してくれるローワン・アトキンソン。ちょっとお顔は濃いが、気楽に楽しめる作品だった。
チベットでの修行は無駄になっていないし、最後にお料理を手際よく(ちよっと乱暴だが)作っているオマケもあったし、スピーディな展開もでわかりやすい。
※これ、ほしい!★スパイ用・超速・車椅子★持ち主の声の命令で動くロールス・ロイス。
※掃除婦(ピク・セン・リム)殺し屋は敏腕スパイ・ジョニー・イングリッシュと互角に勝負している。(美)

2011年/イギリス/カラー/101分/ドルビーSRD
配給:東宝東和

★2012年1月21日有楽町スバル座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://je-kiyasume.jp/

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ピアノマニア(原題:PIANOMANIA)

監督:リリアン・フランク、ロベルト・シビス
撮影:ロベルト・シビス、ジャージー・パラツ
編集:ミシェル・バルバン
出演:シュテファン・クニュップファー、ピエール=ロマン・エマール、ランラン、ティル・フェルナー、クリストフ・コラー、ジュリアス・ドレオク、イアン・ボストリッジ

このドキュメンタリー映画は調律師に光を当てている。主人公のシュテファン・クニュップファーは、世界一のピアノ、スタインウェイ社専属のドイツ人調律師。
バッハ晩年の未完の傑作“フーガの技法”に、フランスを代表するピアニスト・ピエール=ロラン・エマールが挑むことになった。選ばれたピアノは、スタインウェイ社の“245番”。
録音までの一年をウィーン・コンツェルトハウスで、調律師がそのピアノと格闘する日々を追っている。


©OVAL Filmemacher / WILDart FILM

こればっかりは、ピアノの専門の方に観ていただきたいので、配給さんにお願いして音楽学校のW先生(シネマジャーナルの映画川柳に投稿してくださる方)と一緒に試写に行かせていただいた。

まずはW先生の評から

 ピアノと関わって半世紀以上 。巨大でありながら環境に左右される繊細な楽器。故に調律は義務だが コンサートピアニストは別として年に1~2回 2時間余の調律で後はタッチや脱力等の工夫で、演奏者が音色を探るのが日本では一般的である。
 この映画は調律師に光を当て ピアニストが求める音色に 目、耳、手先と経験を駆使し 日夜奮闘する裏方のマエストロのドキュメンタリー。しかも大音楽家達の本家本元のオーストリアとドイツの合作であり、緻密で完璧主義の国民性も相まって圧巻であった。
 息を呑むような緊張の中、街の風景や チーズケーキの差し入れ、コーヒータイム、度肝をぬかれたイグデスマン & ジョーの登場と、観ている側の緊張を解いてくれた。
 あのようにして録音された フーガの技法 をバッハが聴いたら何と評価するだろうか。ランランの狂詩曲をリストはどう評価するだろう。想像するだけでもワクワクして楽しくなってくる。再度観てみたい映画!

W先生はこのように評されているが、私も同感だ。
 主人公のシュテファン・クニュップファーはピエール=ロラン・エマールの表現する音を的確に捉えていて、それも音が出た瞬間のみではなく、音が空中を泳いで行く時の振動音にまで及ぶ・・・それをこの調律師は理想の音に近づけている。
この2人に負けず劣らずレコード技術者も楽譜を見て、「ここのFの音、少し音を外しましたね。ここだけ音程が高くなって・・・」など簡単に言ってのけるマニア集団。
「そこまで、言われても私にはわかりません! 参りました!」と頭を下げるしかなかった。
フランスを代表するピアニスト・ピエール=ロラン・エマールを調べてみたが、この方、演奏プログラムに非常にこだわりを持っていて、古典と現代の曲が交互に演奏されても、そこで見えてくるのは、その曲と曲の繋がりの<新しい発見>があると書いてあった。W先生が書かれたように、私ももう一度、この濃厚でスリリングな<マニアの世界>に入ってみたい。(美)

自分のピアノを各地でのコンサートに持ち歩けないピアニストにとって、あてがわれたピアノをいかに自分のものにするかは、調律師の腕にかかっている。小学生から高校生にかけてピアノを習っていたけれど、ほとんど調律もせず弾いていた私は、今も音には鈍感だけど、本作にはぐいぐい引き込まれた。シュテファン氏がピアニストのどんな要求にも楽しそうに立ち向かう姿に、なにごとも楽しんで行うことが良い結果を生むのだなぁ~と教えられた。シュテファン氏はいたって真面目な人物なのだけど、ちょっとした一言に笑わせられる。人を和ませる名人でもある。私ももう一度観たい一作。ピアノに関心のない人にもお薦め。(咲)

2009年/オーストリア・ドイツ合作/97分/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー

★2012年1月21日シネマート新宿、2月名古屋名演小劇場ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.piano-mania.com/

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アニマル・キングダム(原題:ANIMAL KINGDOM)

監督:デヴィッド・ミショッド
脚本:デヴィッド・ミショッド
撮影:アダム・アーカポー
音楽:アントニー・パートス
衣装:カッピ・アイルランド
出演:ジェームス・フレッシュヴィル(ジョシュア)、ジャッキー・ウィーヴァー(ジャニーン/ジョシュアの祖母)、ベン・メンデルソーン(長男アンドリュー)、ジョエル・エドガートン(コディ一家の友人)、ガイ・ピアース(刑事・ネイサン)

メルボルンに住む17歳の青年ジョシュアは、薬物過剰摂取で母を亡くし、しばらく行き来がなかった祖母ジャニーンの家に引き取られた。
だがその家に住む死んだ母の兄弟・親族は、強盗・麻薬売買などで生計を立てていて、祖母ジャニーンはその中心的存在であった。そんな中で暮らしていくうちに、気が小さく真面目だったジョシュアも、徐々に犯罪の世界に巻き込まれていく・・・。

試写に入る前に配給の方が「もう一つの『家族の庭』だよ」と教えてくれた。俄然みる気満々になった。なるほど、迫力満点のオーストラリア版「家族の庭」だった。
 警察はジョシュアを一家から引き離し、真相を証言させて一網打尽を狙うが、なかなかジョシュアもしぶとい。親族と警察の板ばさみにも苦しむ。気弱な青年がこんな家族と一緒に暮らすなんて、ライオンの檻にリスかウサギが入ったようなもの・・・。 実在の一家をモデルにしたそうだが、脚本と演出がよかった。
 それにしても、犯罪家族のゴッドばぁちゃんがすごい。いっぱしのワルも彼女の直感と言葉には逆らえない。(このばぁちゃん、大の大人の倅に口にブチュってキスしてた!) ジョシュアの顔が、この家庭にいる間にだんだん引き締まって大人の顔になってくる。きっと、この子の母親は死の間際「私が死んでも実家には帰るな。知らせる必要はない」と言いたかったのだろう。痛い場面もあるが、納得できる作品だった。最後の幕切れも見事。(美)

2010年/オーストラリア/カラー/113分/35mm/ドルビーデジタル
配給:トランスフォーマー

★2012年1月21日TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.ak-movie.com/

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ダーク・フェアリー(DON'T BE AFRAID OF THE DARK)

監督:トロイ・ニクシー
脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:ケイティ・ホームズ(キム)、ガイ・ピアーズ(アレックス)、ベイリー・マディソン(サリー)

両親の離婚で傷ついた内気な少女サリーは、父親のアレックスと彼の恋人のキムとともにロード・アイランドにある古い屋敷に引っ越してくる。サリーはそこで、ずっと封印されていた秘密の地下室を発見して扉を開けてしまう。

古い屋敷に棲んでいる魔物の恐怖を描いたテレビ映画「地下室の魔物(1973年)」をリメイクしたサスペンススリラー。
助けを求めたいが、誰も信じてくれない少女は、父のカミソリと光りに弱いと知りポラロイドカメラのフラッシュを使いながら撃退するが、この少女役のベイリー・マディソンがとてもきかん気の顔をしていてよかった。
信じてくれない甘ちょろい大人とは比較にならないほど、いい顔をしていた。あとから封印された獣の正体がわかってからは少しがっかりしたが、この少女の奮闘演技に拍手したい。
チラシもエンドロールも3番目にこの子の名前が出てきたが一番最初にすべき。(美)

2010年/アメリカ・オーストラリア・メキシコ/100分
配給:フェイス・トゥ・フェイス、ポニー・キャニオン

★2012年1月21日 シネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.darkfairy.jp/

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しあわせのパン

監督・脚本:三島有紀子
撮影:瀬川龍(J.S.C.)
美術:井上静香
音楽:安川午朗
主題歌:矢野顕子、忌野清志郎「ひとつだけ」
出演:原田知世(水縞りえ)、大泉洋(水縞尚)、 森カンナ(齋藤香織)、平岡祐太(山下時生)、 光石研(未久のパパ)、八木優希(未久)、中村嘉葎雄(阪本史生)、渡辺美佐子(阪本アヤ)、中村靖日(広川のだんなさん)、池谷のぶえ(広川の奥さん)、本多力(郵便やさん)、霧島れいか(未久のママ)、あがた森魚(阿部さん)、余貴美子(陽子さん)

北海道洞爺湖のほとりにある“マーニ”は東京から移り住んだ水縞くんとりえさんが始めた小さなパンカフェ。ここには日々いろんなお客様がやってくる。水縞くんが焼いたパン、りえさんがいれるおいしいコーヒーと料理。二人の心をこめたもてなしに、みんなはほっと息をつき心をあたためて帰っていく。さまざまな想いを抱いてきた人たちとマーニの四季折々の物語。

NHKでドキュメンタリーを数多く手がけてきた三島有紀子監督初の長編作品。矢野顕子、忌野清志郎の「ひとつだけ」にインスパイアされて書き下ろしたという脚本は当初の狙いの「北海道の知られていない魅力を伝えたい」という意図を十二分に実現させています。
水縞くんのほんわかした空気がどこか寂しげなりえさんを包んでいて、ベストカップルです(それにしても原田知世さんは昔から変わらないですねぇ)。観客は訪れる人たちの誰かに自分や親しい人を観る思いがすることでしょう。私は阪本さん夫婦の登場にやっぱりどきりとさせられました。でもここに来たなら大丈夫と安心したのです。湖を見渡せる景観も素晴らしければ、お店の二人と集う人々の交流が暖かくやさしく、こんなところに住みたい!と思ってしまいました。月浦の実在のお店を借りて撮影されたそうです。これはロケ地探索にぜひ行ってみなくてはっ!(白)

2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2011「しあわせのパン」製作委員会

★1月21日(土)北海道先行 / 1月28日(土)全国ロードショー

公式 HP >> http://shiawase-pan.asmik-ace.co.jp/

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デビルズ・ダブル ある影武者の物語(原題:The Devil's Double)

監督:リー・タマホリ
脚本:マイケル・トーマス
撮影:サム・マッカーディ
音楽:クリスチャン・ヘンソン
衣装:アンナ・B・シェパード
出演:ドミニク・クーパー(ウダイ・フセイン/ラティフ・ヤヒア)、リュディヴィーヌ・サニエ(サラブ)、ラード・ラウィ(ムネム)、フィリップ・クァスト(サダム・フセイン)、ナセル・メマジア(ラティフの父)

世界中の国を敵にまわしたイラクの独裁者サダム・フセインには<狂気の申し子>と悪名高い息子ウダイ・フセイン(1964~2003)がいた。そのウダイに顔が似ている理由で選ばれ影武者として生きた男の実話。

興奮する映画だった!
なぜ影武者が必要かというと、前線に行き兵士を激励するのに使われるからだ。 酷似するように歯の矯正、整形、しぐさなど徹底的に作り変えられ、周りも間違うほどになるのだ。本ものは声が甲高く、偽ものは声が低いとしか私にも解らなくなるぐらい。これは誇張などなく、みんな現実に起きたこと。
ウダイの愛人にリュディヴィーヌ・サニエ、彼女の<哀しみを含んだ>美しい表情にうっとり。主演のドミニク・クーパーは脇役スターの人だったが、見事に二役を演じきっていた。
最後の字幕で、影武者は行方知れずと記してあったが、無事であってほしいと心から願った。(美)

2011年/ベルギー/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/109分
配給:ギャガ
(C)Filmfinance VI 2011 - All Rights Reserved

★2012年1月13日(金)TOHO六本木ヒルズほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://devilsdouble.gaga.ne.jp/

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三国志英傑伝 関羽(原題:関雲長 英語題:THE LOST BLADESMAN)

監督・脚本:フェリックス・チョン、アラン・マック
武術指導:ドニー・イェン
出演:ドニー・イェン(関羽)、チアン・ウェン(曹操)、スン・リー(綺蘭)、ワン・ポーチエ(漢・献帝)、アンディ・オン(孔秀)、アレックス・フォン(劉備)ほか

後漢末期。関羽は劉備の夫人たちと共に曹操の捕虜となっていた。曹操は捕虜でありながら「白馬の戦い」で曹操軍を率いて袁紹軍を破った関羽の力量を高く評価する。再三にわたり自分の部下となるように説得するが、関羽は聞き入れず劉備の元へ帰ることを望んだ。義を重んじる関羽に応えた曹操は、手形なしで関所を通れるように計らい彼の一行を送り出す。しかし、関羽はその後次々とやってくる追っ手と戦わねばならなかった。


三国演義の中でも人気の高い英雄関羽を主人公に「過五関斬六将」のくだりを主にして展開させた作品。ドニー・イェンの華麗なアクションがたっぷり観られるのはもちろん、同じく人気の曹操を演じるチアン・ウェンとのからみも楽しめます。いやもうさすがの存在感。それに愛嬌もあるチアン・ウェン曹操には、劉備よりこちらにつけばいいのに、と思わせる力を感じます。
ドニー・イェン祭りといいたいほど主演作公開が続く(ほかのが少ないともいう)ドニー様ですが、今年は何本になるのでしょうか。(白)

2011年/日本/カラー/109分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活

★1月14日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか新春ロードショー

公式 HP >> http://www.sangokushi-kanu.com/

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月光ノ仮面

監督:板尾創路
脚本:板尾創路、増本庄一郎
撮影:岡雅一
落語指導:鈴々舎馬桜
出演:板尾創路(男)、浅野忠信(岡本太郎)、石原さとみ(弥生)、前田吟(森乃家天楽)、國村隼(席亭)、六角精児(森乃家金太)、津田寛治(熊倉)

昭和22年。日本が敗戦の痛手から立ち上がり始めたころ。顔中に包帯を巻いた復員兵が寄席にふらふらと近づいていく。自分が誰なのか記憶を失っていたが、所持品から落語家の森乃家うさぎとわかる。死んだと思われていたうさぎの復員に、師匠の森乃家天楽、その娘でうさぎと将来の約束をした弥生は大喜びで迎え、親身に世話をする。得意だった落語「粗忽長屋」をぶつぶつと言うだけだったうさぎも、少しずつ元に戻ったように見えた。そんなとき、もう一人の男が戦地から戻ってきた。

板尾創路監督・主演で『板尾創路の脱獄王』(2009)に続く長編作品2本目。なかなか豪華なキャスト陣です。 記憶をなくし、顔が変わっても婚約者ならばわかるはず、という突っ込みはなしにして。同じ場所に同じような痣がある、と証拠らしきものを一つ設定しております。前作も王道の笑いからちょっと外したおかしさが漂っていました。これを板尾ワールドというのでしょうか。下敷きとなった落語の「粗忽長屋」は行き倒れの死体を親友の熊だと見た八つぁんがあわくって長屋へ戻ると、熊はちゃんと生きている。熊は八と二人で死体を引き取りに行き、「ここで死んでいるのは確かに俺だが、じゃあ今ここにいる俺はいったい誰なんだ?」というシュールな落ち。(白)

2011年/日本/カラー/102分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:角川映画
(C)2011「月光ノ仮面」製作委員会

★1月14日(土)角川シネマ有楽町他全国ロードショー!

公式 HP >> http://gekkonokamen.com/

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はさみ hasami

監督:光石富士朗
脚本:光石富士朗、木田紀生
撮影:猪本雅三
音楽:遠藤浩二
出演:池脇千鶴(永井久沙江)、徳永えり(木村弥生)、窪田正孝(葉山洋平)、なんしぃ (田村いちこ)、竹下景子(築木洋子)

理容・美容の専門学校を舞台にした「絆」の物語
永井久沙江は東京の理容・美容専門学校の若き教師。自分もかつてここの生徒で、築木先生の厳しい指導を受けてきた。カットの技術が思うように上達せず、やる気がなくなっている弥生。複雑な家庭環境から不登校気味の洋平。熱心で腕も確かなのに、学費に困窮しているいちこ・・・。久沙江はさまざまな境遇にある生徒たちの心や生活にも気を配り、一緒に悩んだり励ましたりする。彼や彼女たちの夢が実現するように、プロとして羽ばたけるように。


(C)アートポート「はさみ hasami」製作委員会

『大阪ハムレット』の光石富士朗監督の2年ぶりの作品。ロケ地となった中野区の理容美容学校での実際にあったエピソードを取材して脚本に織り込み、リアルで心温まるストーリーになりました。なかなか見ることのできない学校での授業風景も珍しく、こんな風に勉強しているのね~、と興味津々で観ました。学校や中野区の協力・バックアップのもと、とても親近感のわく作品になっています。(白)

2011年/日本/カラー/112分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アートポート

★1月14日より新宿K's cinema にて公開

公式 HP >> http://www.artport.co.jp/movie/hasami/

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マイウェイ 12,000 キロの真実(原題:MY WAY)

監督:カン・ジェギュ(『シュリ』『ブラザーフッド』)
撮影:イ・モゲ(『悪魔を見た』『グッド・バッド・ウィアード』『オアシス』)
出演:オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビン

オリンピックを目指すマラソン好きの辰夫とジュンシク。出会いは辰夫が11歳だった1928年3月、日本占領下の朝鮮の京城。辰夫の祖父は憲兵隊司令官。ジュンシクは司令官の家の使用人の息子だった。マラソン大会でジュンシクが優勝した夜、辰夫の祖父のもとに送られてきた包みに爆弾が仕掛けてあり、ジュンシクの父が犯人として捕まる。10年後、人力車を走らせ脚を鍛えるジュンシク。オリンピック代表選考会で再び辰夫と競ってジュンシクが優勝するが、走者妨害で失格扱いにされ、それに反発して騒動を起こした朝鮮人たちと共に罰として軍人として戦うことを命じられノモンハンの前線に送られる。そこに辰夫が守備隊長として着任し、朝鮮人兵士をソ連軍の特攻隊に任命する・・・

1944年のノルマンディー上陸作戦後に撮られたドイツ軍捕虜の写真の中に東洋人が写る1枚―― カン・ジェギュ監督がアメリカ国立公文書館に保管されていたその写真を知ったことから出来上がった壮大な物語。日本、ソ連、ドイツという3つの国の軍服を着て戦いながらノルマンディーにたどり着いた男の辿った道を想像を膨らませて、日本人と韓国人の青年の友情という形で描きあげた物語。12月19日の完成披露記者会見に監督と共に登壇したオダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビンの3人が口を揃えて「想像を絶する戦闘シーンの撮影現場」と発言。作り物の現場でもそんな壮絶な状態なら、本物の戦闘の前線にいた人たちは、どんな思いだったのだろうと涙の出る思いでした。描かれているのは、1939年ノモンハン事件、1941~45年 独ソ戦、1944年 ノルマンディー上陸作戦。過酷な戦闘シーンが続きますが、見終わったあとには、不思議と爽やかな気分が残りました。一方で、日本が朝鮮を占領していた時代のことを忘れてはならないと、心が痛みました。様々な思いがよぎる映画。(咲)

2011年/韓国/35mm/カラー/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給: CJ Entertainment Japan /東映

Web版特別記事
『マイウェイ 12,000キロの真実』<試写会&記者会見 レポート>
『マイウェイ 12,000 キロの真実』<公開直前ヒット祈願イベント>

★2012年1月14日全国公開

公式 HP >> http://myway-movie.com/

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ヒミズ

監督:園子温
脚本:園子温
撮影:谷川創平
音楽:原田智英
出演:染谷将太(住田祐一)、二階堂ふみ(茶沢景子)、でんでん(金子)、神楽坂恵(田村圭子)、窪塚洋介(テル彦)br/>

家庭に問題のある15歳の住田祐一と、彼に憧れる同級生・茶沢景子の痛い青春もの。
なぜか、住田を慕う震災ホームレスたちが周りにテントを張って暮らしている。 住田の両親は、実の母親は新しい恋人の元に走り、ほとんど姿を見せないし、息子には無関心。その母親の何度目かの夫が、いまだに父親然として、しょっちゅう来ては、祐一に暴言・暴力を振るう・・・。

映画ストーリー説明文の最初に「家庭に問題がある」と書いてしまってから、そもそも「家庭」って言えるか?と思った・・・2度目観て、そう思ったから仕方ない評だが、小屋としかいいようはないが、一応家もあり、目前に池もあり、貸しボート屋も営むから見た目は「家庭」で○なんだけど、どこ見たってその二文字が浮かぶ光景は小屋のうちそとにない。だから、震災ホームレスさんたちが来やすかったのかと納得。
少女の家庭はある意味、親と子ども密だ。だが、少年より危険な家庭。これは観て確かめてほしい。この少年少女の「家庭」が急にこうなったのではあるまい。私のふつふつ出てくる、この作品の不満はここから。
こんな「家庭」で育って、一応ある時点まで登校している、丈夫で歳相応の背丈・体重がある、それも、まともな考えで育っていること。<奇跡>だ。
「この二人どうなっちゃうんだ?」と途方にくれ始めているのは私(観ている方)で、この二人はずっと前から途方にくれていたのだ。地震で大地が揺れようが、津波が襲って来ようが、放射能汚染だと騒ぐこともなかったのだ。
この二人の最後のやりとりを見ているとボロンくそに言おうと思ったことが、口から出てこなかった。かすかな光りが見えたからだ。 2回観て本当に良かったと思え、評がガラリと変わった作品だった。(美)

2011年/日本/カラー/129分/アメリカンビスタ/ドルビーSR
配給:GAGA★
(C) 2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ

★2012年1月14日から新宿バルト9、シネクイントほか全国順次公開

公式 HP >> http://himizu.gaga.ne.jp/

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ロボジー ROBO-G

監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
撮影:柳島克己
音楽:ミッキー吉野
美術:新田隆之
ロボットデザイン:清水剛
出演:五十嵐信次郎(鈴木重光)、吉高由里子(佐々木葉子)、濱田岳(小林弘樹)、川合正悟(太田浩二)、川島潤哉(長井信也)、田畑智子(伊丹弥生)

中規模の家電メーカーの木村電器に勤務する落ちこぼれ社員の小林、太田、長井の3人は、社長命令でもうすぐ始まるロボット博の企業広告のために、二足歩行のロボット開発に必死になっていた。
だが手違いで完成間近のロボットが壊れてしまう。困った3人は首になるのを恐れて、ロボット型の中に人を入れる算段をする。
「誰でもできる楽しい仕事、1日3万円」の広告を出して体型の合う、一人暮らしの老人・鈴木(五十嵐信次郎=ミッキー・カーチス)をロボットの中に入れて出場したところ、鈴木の奇妙な動きが絶賛されてしまい・・・。

矢口史靖監督の『ウォーターボーイズ』『ハッピーフライト』は楽しい作品で、美しい日本語が台詞に入っていて、好感のもてる監督さん。今回は、頑固でわがままなじぃちゃんとロボットをテーマにした爆笑コメディー。
主役は五十嵐信次郎(ミッキー・カーチスさんの本名)で、元気いっぱいの73歳(実際のご年齢と同じ)。だんだん人気が出てくると「ここの蟹がうまいなぁ」「次は温泉と按摩さん、お願いね」なんてわがまま放題。
 普通、ロボットなら高度な技術と思うが、頭は炊飯器など家電製品だけで作ったロボットは存在感があり、落ちこぼれ社員3人(この3人がいかにも落ちこぼれなので笑ってしまう)がロボットのことがまるでわからないのを、大学生のロボットオタクたちの知恵を拝借しながら、会社や世の中から注目を集める存在になるのが、その展開が無理なく描かれていて面白く仕上がっていた。(美)

2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東宝

★2012年1月14日より東宝系映画館にて全国ロードショー公開

公式 HP >> http://robo-g.jp/

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哀しき獣(原題:黄海(ファンヘ) 英題:The Yellow Sea)

監督・脚本:ナ・ホンジン
出演:ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ

中国、延辺朝鮮族自治州・延吉。タクシー運転手のグナム(ハ・ジョンウ)は生活が苦しく、借金をしてまで妻を韓国に出稼ぎに行かせたが、妻とは連絡が取れなくなっていた。なんとか借金を返そうと賭け麻雀で一発逆転を狙うが今日も負けてしまう。グナムは地元を牛耳る貿易商の社長ミョン(キム・ユンソク)から、韓国に密入国して人を一人殺してくれば借金を帳消しにしてやると持ちかけられる。グナムは悩んだあげく、韓国に行けば愛妻に会えるかもしれないという思いを抱えて密航船で黄海を渡る。ソウルに潜入し、殺人ターゲットの体育大学教授の行動パターンを観察しながら、妻の行方を捜す。やっと突き止めたアパートに妻はいない。一方、体育大学教授はグナムの目の前で別の人物に殺されてしまう。動揺しながらも殺しの証拠に死体の親指を切り落として立ち去ろうとしたところへ警察が到着する。殺人犯として追われるグナム。中国に帰る密航船の指定日は迫っていた。そんな時、「朝鮮族30代女性のバラバラ死体発見」と、「朝鮮族殺人事件容疑者逮捕」のニュースを目にする・・・

1.タクシー運転手 2.殺人者 3.朝鮮族 4.黄海 の4段階で語られる物語。
無実のグナムが追ってくる警察から逃れることはできるのか、愛する妻に会うことはできるのかと、はらはらドキドキ。グナムは、なぜ妻を出稼ぎに出さなければならなかったのか、そして、その借金のために、なぜ殺人まで犯す決意をしなければならなかったのか・・・。さらに、朝鮮民族の人たちが、なぜ中国、北朝鮮、大韓民国と3つの国に分かれて住むことになってしまったのかということにも思いが至ります。ラスト、暗い黄海を小船で行くグナムの姿に悲哀がぐっと迫ります。そして、エンドロールの終わった後の映像に、さらに悲しみは深まります。エンドロールの途中で決して席を立たないで、最後の最後までご覧ください。(咲)

2010年/韓国/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/140分
配給:クロックワークス

★2012年1月7日(土)、シネマート新宿 他 全国ロードショー

公式 HP >> http://www.kanashiki-kemono.com/

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マジック・ツリーハウス

監督:錦織博
原作:メアリー・ポープ・オズボーン
脚本:大河内一楼
キャラクター原案:甘子彩菜
キャラクターデザイン・総作画監督:柳田義明
アニメーション制作:亜細亜堂
音楽:千住明
声の出演:北川景子(ジャック)、芦田愛菜(アニー)、山寺宏一(パパ)、水樹奈々(ママ)、真矢みき(モーガン)

本好きのジャックと元気なアニーは仲良し兄妹。ある日ネズミを追いかけていった森の中で、大きな木の上に不思議な家を見つけた。書棚から恐竜の本を手に取ったジャックは思わず「行ってみたいな」とつぶやく。すると家がぐるぐる回り出し、二人とネズミのピーナツは、白亜紀の恐竜の世界に到着してしまった!!この家は本の中を旅することができる魔法のツリーハウスだった。プテラノドンと友だちになったり、ティラノサウルスに追いかけられたりするうち、ジャックは金色のメダルを見つける。


(C)メアリー・ポープ・オズボーン/「マジック・ツリーハウス」製作委員会

ジャックとアニーはメダルを探して4つの違う世界へ出かけます。7歳と8歳の兄妹にしてはあまりに過酷な冒険なのですが、そこはお話の世界、手助けしてくれる仲間や魔法使いもちゃんと現れます。ドラえもんの「どこでもドア」とのび太くんたちの冒険のようで、小さなお子様にも親しめます。原作は世界中で翻訳され、日本でも31巻目が映画に合わせて出版されました。日本版の挿絵(甘子彩菜)を気に入った著者が初めての映画化を許可したのだとか。歴史上の人物や事件に遭遇する二人が次第に成長していくのを楽しみながら私も原作を全部読んでしまいました。さまざまな国へ時空を越えて行く子どもたちの旅は大人が読んでもワクワクします。(白)

2011年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ

★1月7日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

公式 HP >> http://magictreehouse.jp/

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パーフェクト・センス(原題:PERFECT SENSE)

監督:デヴィッド・マッケンジー
脚本:キム・フップス・オーカソン
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
音楽:マックス・リヒター
出演:ユアン・マクレガー(マイケル)、エヴァ・グリーン(スーザン)、ユエン・ブレムナー(ジェームズ)、スティーヴン・ディレイン(スティーブン) 、コニー・ニールセン(ジェニー)

スーザンはアパートのすぐそばのレストランのシェフ、マイケルと知り合う。愛情が信じられないスーザンだったが、楽天的なマイケルの明るさに救われる。そのうち突然臭覚がなくなる奇病が各地で発生し、感染症を研究するスーザンは原因を追求するが、ようとして掴むことができない。この病気には潜伏期間があり、発病の前に突然悲しみの感情がわきあがるなど共通した症状があった。しだい蔓延してくる奇病は二人をも襲う。臭覚の次は味覚がなくなった。お客がこなくなった店でマイケルたちは、舌触りや食べるときの音を楽しむ工夫をする。

人の五感がなくなっていくという、不思議な感染症を媒体に、人々の反応やその後を描いていきます。なくなっていくことでパニックになる人もいれば、残された感覚を大切に日常を送ろうとする人もいます。静かな描写が心に残ります。ユアン・マクレガーは暖かく誠実な印象そのままに、マイケルを演じています。強い視線のエヴァ・グリーンが、一緒にいたい人のもとへと走るときひたむきな女性の感情を見せていました。あたりまえだと思っていたことが失われたとき、自分ならどうするかと考えました。(白)

世の終わりを感じたとき、人はどんな行動に出るのでしょう。この世が終焉を告げるなら、やっぱり最期には人と触れ合っていたい・・・ そんなことを感じさせてくれる作品。いざという時には、プラス思考で立ち向かいたいとも思わせてくれました。ほんとに何が起こるかわからない世の中。事が起こったとき、映画のように、素敵な人と巡りあえるといいな。(咲)

2010年/イギリス/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
(C)Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010

★1月7日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.perfectsense.jp/

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フライトナイト ―恐怖の夜―(原題:FRIGHT NIGHT)

監督:クレイグ・ギレスビー
脚本:マーティ・ノクソン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
衣装:スーザン・マシスン
音楽:ラミン・ジャワディ
特殊メイクアップ:ハワードバーガー&グレッグ・ニコテロ
出演:アントン・イェルチン(チャーリー・ブリュースター)、コリン・ファレル(ジェリー)、トニ・コレット(ジェーン・ブリュースター)、デヴィッド・テナント(ピーター・ヴィンセント)

ラスベガス郊外の住宅街に住む高校生チャーリーは、学園アイドル・エイミーと仲良し。だが、隣に引っ越しして来た男によって絶好調の日々は無惨に打ち砕かれてしまう。 なんと、その男の正体は・・・。

『ラースと、その彼女』の監督さん。1985年に公開された『フライトナイト』はクラシックな<吸血鬼もの>として、斬新なアイデアと当時最新の特殊メイクでホラー映画の伝説的傑作。それを今、新たなキャストとスタッフで3D映像(2Dも)で『フライトナイト/恐怖の夜』が蘇った。
やはり正統派のバンパイアもの。なかなか凝った作りで飽きさせない映像力だった。だが、コリン・ファレル扮する吸血鬼があまりにも行動が<あからさま>なので白ける部分もあった。
彼に噛まれたり、血を吸われた人は、太陽や明るい火にあたると一瞬で粉々になるが、その映像は◎。2Dで観たが、3Dでも観たい気はするが・・・怖さも比例するか?
特殊メイクアップのハワードバーガー&グレッグ・ニコテロ は『イングロリアス・バスターズ』『ピラニア3D』でも担当している、今や恐怖物映画には欠かせないお二人。(美)

2011年/アメリカ/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

★2012年1月7日 より3D/2D 新宿バルト9ほか全国ロードショー公開

公式 HP >> http://disney-studio.jp/movies/frightnight/

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Coming Out Story

監督:梅沢圭
撮影:猪本太久磨、梅沢圭
録音:豊島圭
音楽:KIKORI
出演:土肥いつき、米沢泉美、阿久津麻理子

肉体的に男性でありながら心は女性という、「性同一性障害」を長年抱えていた京都の公立高校の教諭土肥いつきさんのドキュメンタリー。
梅沢監督は日本映画学校の卒業製作として作った本作は、最優秀監督に贈られる「今村昌平賞」を受賞。
京都の公立高校で数学を教える土肥いつきさんは、10年以上も待ちわびていた<性別適合手術>に向かう。生れながらに性別を越境して生きるトランスジェンダーとして自分を特別視することなく、女性の身体を獲得する夢を実現してきた彼女の友人、生徒を通して様々な疑問を問いかけていく。

彼女は(見た目は完全な女性、声はどちらともいえないトーン)学校でも隠しておらず、転勤もなく27年間ずっと同じ高校で勤務している。「私を引き受ける高校がないから転勤はないんでしょう」と笑って言っていたが、なんとも明るい前向きな人だった。
家庭には妻と子どももいて了解のもとで、男から女になるのだ。なんか凄いことなんだろうが、この方にかかるとなんでもなく感じるのが不思議だった。
若いときの写真が映し出されると会場から「ほぉー」というどよめきがあった。そこには正真正銘の男性が写っていたからだ。<性>って一体なんだろう?と深く考えさせられた作品。

※「性別適合手術」を受けるのが名古屋の病院。私の地元(名古屋駅西方面?)でこんな手術する専門病院があることに驚く。それも町にある小さな外科医院の規模だ。きっと先生の技術がいいんだろう。(美)

2011年/日本/カラー/HD/60分

★1月4日より東京都世田谷区のトリウッドにて公開中

公式 HP >> http://www.coming-out-story.com/

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善き人(原題:Good)

監督:ヴィセンテ・アモリン
原作:C・P・テイラー
脚本:ジョン・ラサール
撮影:アンドリュー・ダン
出演:ヴィゴ・モーテンセン(ジョン・ハルダー)、ジェイソン・アイザックス(モーリス)、ジョディ・ウィッテカー(アン)、スティーヴン・マッキントッシュ(フレディ)ほか

1930年代、ヒトラーが台頭してきたドイツ。大学で文学を教えているジョン・ハルダー、家庭では音楽家の妻のために家事をこなし、年老いた母の世話をする彼の生活が一変する。ナチスから呼び出しがかかり、ジョンが以前書いた小説をヒトラーが気に入り、文化人を迎えたいナチスに入党せざるを得なくなったのだ。生き延びるために必要な選択だったが、唯一の親友モーリスはユダヤ人であるため、友情に亀裂が入ってしまう。やがてユダヤ人弾圧が厳しくなり、モーリスをパリへ逃がすために手助けしようとするジョンだったが・・・。

「善き人」であろうとするジョンが抗えない流れに翻弄される胸の痛むストーリーです。俳優であるばかりでなく、画家でも詩人でもあるヴィゴ・モーテンセンが、この大学教授役によくはまっていました。自分だったらどうするかというのと同時に、個人を消してしまう国家、組織というものを考えてしまいます。戦争中ジョンのような選択をせねばならなかった人は多かったはず。家庭では善き父であり、息子であり普通の家庭人であった人が、上の命令どおりに辛い選択をすることが今後決してありませんように。(白)

2008年/イギリス/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
©2007 Good Films Ltd.

★1月1日(日、元日)よりスバル座ほか全国順次公開

公式 HP >> http://www.yokihito-movie.com/

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