女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
過去の映画作品紹介(2007年)

『ラッキーナンバー7』  『スキトモ』  『不都合な真実』  『マイ・シネマトグラファー』  『それでもボクはやっていない』  『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』  『僕は妹に恋をする』  『マリー・アントワネット』  『エレクション』  『幸せのちから』  『幸福な食卓』  『輝く夜明けに向かって』  『フィレーネのキライなこと』  『あなたを忘れない』  『ユメ十夜』  『ルワンダの涙』  『夏物語』  『墨攻』  『ピンチクリフ・グランプリ』  『世界最速のインディアン』  『カンバセーションズ Conversation(s)』  『スターフィッシュホテル』  『長州ファイブ』  『華麗なる恋の舞台で』  『マジシャンズ』  『モーツァルトとクジラ』  『となり町戦争』  『チョムスキーとメディア 〜マニュファクチャリング・コンセント〜』  『エクステ』  『キャプテントキオ』  『孔雀 —我が家の風景—』  『さくらん』  『素敵な夜、ボクにください』  『叫 さけび』  『絶対の愛』  『ボッスン・アップ』  『ボビー』  「進化する日本映画〜Evolving Japanese Cinema」  「EARTH VISION 第15回 地球環境映像祭」  「アラブ映画祭2007」  「フランス映画祭2007」  『ニューヨークで暮らしています 彼女たちがここにいる理由』  「イタリア映画祭2007」  「韓国アートフィルム・ショーケース」  「日本クラシック、海外発信中!」  「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2007(第4回)」  『パフューム −ある人殺しの物語−』  『龍が如く 劇場版』  『ダウト』  『蒼き狼 地果て海尽きるまで』  『約束の旅路』  『サン・ジャックへの道』  『ナヴァラサ』  『棚の隅』  『渋谷区円山町』 『ポイント45』 『フランシスコの2人の息子』 『黒い眼のオペラ』  『素粒子』  『蟲師』  『ブラックブック』  『アルゼンチンババア』  『クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』  『ヘレンケラーを知っていますか』  『ホリデイ』  『情痴 アヴァンチュール』  『忍者』  『檸檬のころ』  「第2回難民映画祭」  「国際交流基金映画講座2007-1 ヤスミン・アハマドとマレーシア映画新潮」 『黄色い涙』  『ママの遺したラヴソング』  『プロジェクトBB』  『13/ザメッティ』  『オール・ザ・キングスメン』  『ふるさと—JAPAN』  『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』  『ツォツィ』  『ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド』  『輝ける女たち』  『恋しくて』  『明日、君がいない』  『アボン/小さい家』  『机のなかみ』  『フライ、ダディ』  『あしたの私のつくり方』  『イノセントワールド —天下無賊—』  『ストリングス〜愛と絆の旅路〜』  『バベル』  『恋愛睡眠のすすめ』  『ザ・ライド〜ハワイアン・ビーチ・ストーリー』  「日中国交正常化35周年記念 2007年中国映画祭」  「第3回アジア海洋映画祭イン幕張」  「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2007」  「ビョン・ヨンジュ監督特集 [上映+トーク]」  「第3回甲賀映画祭」  「第20回東京国際映画祭」  『メイド 冥途』  『歌謡曲だよ、人生は』  『14歳』  『寂しい時は抱きしめて』  『しゃべれども しゃべれども』  『ひめゆり』  『GOAL!2』  『COMANDANTE コマンダンテ』  『ボラット』  『毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』  「第10回京都国際学生映画祭」  『つばさ』(澤登翠活弁リサイタル)  『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』  『それでも生きる子供たちへ』  『恋する日曜日 私。恋した』  『Watch with me 〜卒業写真〜』  『選挙』  『プレステージ』  『雲南の少女 ルオマの初恋』  『図鑑に載ってない虫』  『ジェイムズ聖地(エルサレム)へ行く』  『イラクー狼の谷ー』  『リサイクル—死界—』  『エマニュエルの贈りもの』  「エロチック乱歩」  『吉祥天女』  『そして、デブノーの森へ』  『シュレック3』  『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』  『石の微笑』  『ボルベール<帰郷>』  『Genius Party(ジーニアス・パーティ)』  『アドレナリン』  「こわい童謡」  『傷だらけの男たち』  『レッスン!』  『私たちの幸せな時間』  『ルネッサンス』  『童貞ペンギン』  「ヒロシマ、爆風ののちに」  『ゴースト・ハウス』  『幸せの絆』  「中国映画の全貌2007」  『インランド・エンパイア』  『モン族の少女 パオの物語』  『陸に上がった軍艦』  『天然コケッコー』  『夕凪の街 桜の国』  『ヒロシマナガサキ』  『リトル・チルドレン』  『フロストバイト』  『水になった村』  『トランスフォーマー』  『消えた天使』  『怪談』  『おやすみ、クマちゃん』  『トランシルヴァニア』  『ドッグ・バイト・ドッグ』  『呪怨 パンデミック』  『キャプテン』  『純愛』  『スプリング☆デイズ』  「シネマコリア2007」  『酔いどれ詩人になる前に』  『ベクシル ‐2077 日本鎖国‐』  『WHITE MEXICO』  『長江哀歌(ちょうこうエレジー)』  『阿波DANCE(アワダンス)』  『たとえ世界が終わっても』  『TAXi4』  「韓流シネマ・フェスティバル2007 ルネサンス」  『ショートバス』  『親父』  『ファイアー・ドッグ 消防犬デューイの大冒険』  『ウィッカーマン』  『チャーリーとパパの飛行機』  『オフサイド・ガールズ』  『PUNK'S NOT DEAD』  『ミリキタニの猫』  『ワルボロ』  「喜劇特急第8幕〜落語だいすき!」  『GROW −愚郎−』  「マザー・テレサ メモリアル『母なるひとの言葉』+『母なることの由来』」  『題名のない子守唄』  『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』  『ボーイ・ミーツ・プサン』  『アーサーとミニモイの不思議な国』  『夜の上海』  『めがね』  『サルバドールの朝』  『おやすみ、クマちゃん』  『Mayu-ココロの星-』  『ディテクティヴ』  『エディット・ピアフ 愛の讃歌』  『ローグ アサシン』  『私の胸の思い出』  『白い馬の季節』  『パンズ・ラビリンス』  『ナルコ』  『北極のナヌー』  『ふみ子の海』  『カンフー無敵』  『クワイエットルームにようこそ』  『ヘアスプレー』  『ヒートアイランド』  『アフロサムライ』  『ゾンビーノ』  『自虐の詩』  『この道は母へと続く』  『犯人に告ぐ』  『アレックス・ライダー』  『愛の言霊』  『ヴィットリオ広場のオーケストラ』  『北京の恋〜四郎探母〜』  『鳳凰 わが愛』  『ONCE ダブリンの街角で』  『ノートに眠った願いごと』  『僕のピアノコンチェルト』  『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』  『やじきた道中 てれすこ』  『ロンリーハート』  『いのちの食べかた』  『花蓮の夏』  『風の外側』  『カルラのリスト』  「第8回東京フィルメックス」  『フライボーイズ』  『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』  『ソウ4』  『肩ごしの恋人』  『ヒッチャー』  「伊勢真一監督作品 特集上映」  『サラエボの花』  『ダーウィン・アワード』  『おそいひと』  『マリッジリング』  『やわらかい手』  「韓国映画ショーケース2007」  『花の夢〜ある中国残留婦人〜』  『夜顔』  『眠れる美女』  『中国の植物学者の娘たち』  『Little DJ 小さな恋の物語』  『チャプター27』  『ペルセポリス』  『タクミくんシリーズ そして春風にささやいて』  『かぞくのひけつ』  『再会の街で』  『迷子の警察音楽隊』  『ルイスと未来泥棒』  『パルス』 

2007年1月13日〜

『ラッキーナンバー7』(原題:Lucky Number Slevin)

監督:ポール・マクギガン
脚本:ジェイソン・スマイロヴィック
出演:ジョシュ・ハートネット(スレヴン),ブルース・ウィリス(グッドキャット),ルーシー・リュー(リンジー),モーガン・フリーマン(ボス),ベン・キングズレー(ラビ)、スタンリー・トゥッチ(ブリコウスキー捜査官)

仕事を首になり、ニューヨークの友人ニックを頼ってきたスレヴン。ところが、ついたとたんに強盗に襲われて鼻を折られるは、ニックの部屋の隣人リンジーには、シャワー上がりの素っ裸を見られるは、さらには裸のまま謎の男たちに連れ去られてしまう。どうやら留守にしているニックと勘違いされているらしい。ボスに借金の返済を迫られ、金がないなら敵対するラビの息子を暗殺しろと言われる。ようやく部屋に戻ると、また別の男たちに連れ去られ、今度はラビの元へ。彼からも借金を返せと言われる始末。どうやらとことんついていないらしい。しかし、ボスとラビの元には、怪しげな男の影があった。

この出演者たちを観れば、面白い映画を期待せずにはいられません。
脚本も伏線がいっぱいで、それらが最後に集約していく様は、読んでいてさぞや面白かったのでしょう。この脚本に惹かれて、これだけの役者たちがこぞって出演を希望したというのが分かります。あぁ、それなのに、何故こんなに謎解きの爽快感がなく、妙なまったり感が残るのでしょう。ブルース・ウィリスが格好良すぎて、他の素晴らしい俳優たちの魅力を生かし切ってるとは言い難く、とっても残念でした。(梅)

2005年/アメリカ/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/111分/R-15
提供:アートポートxハピネット
配給:アートポート

公式 HP >> http://www.lucky-movie.jp

★2007年1月13日(土)より、丸の内プラゼール、新宿ジョイシネマ他全国松竹・東急系公開


『スキトモ』

監督:三原光尋(『村の写真集』)
脚本:金杉弘子
撮影:芦澤明子
出演:斎藤工、相葉弘樹、小松愛梨、寉岡瑞希、西秋愛菜

蒼井智和(斎藤工)は、ボクシング部で活躍する大学三年生。 ボクシング部の練習や試合の場には、同じ大学の1年生で幼馴染みの斉藤ヨシキ(相葉弘樹)や、 中学3年生の妹.みさお(小松愛梨)が、いつも駆けつけている。 実はみさおは血のつながらないお兄ちゃんに恋をしていて、 何かとお兄ちゃんと仲のいいヨシキに嫉妬しているのだった。 一方、ヨシキも智和に恋心を抱いていた!!

同性愛と兄妹愛の三角関係... といっても、爽やかな青春物語。
ミュージカル「テニスの王子様」で共演した斎藤工と相葉弘樹の二人が いまどきの若者らしい甘〜い雰囲気。 若いっていいなと、はるか昔を思い出しました!(咲)

2006年/日本/67分/カラー/ビスタサイズ

製作:バンダイビジュアル/トライネットエンタテインメント/ビデオプランニング
宣伝:グアパ・グアポ
配給:ビデオプランニング

2007年1月13日(土)〜 渋谷シアターイメージフォーラムにてレイトショー
2007年2月3日(土)〜 大阪シネ・ヌーヴォにてレイトショー
2007年2月3日(土)〜 名古屋シネマ・スコーレにてレイトショー
公式HP>>  http://sukitomo.com/



2007年1月20日〜

『不都合な真実』An Inconvenient Truth

監督:デイビス・グッゲンハイム
製作総指揮:ジェフ・スコル、デイビス・グッゲンハイム、ダイアン・ワーアーマン、リッキー・ストラウス。ジェフ・アイヴァース
製作:ローリー・デイヴィッド、ローレンス・ベンダー、スコット・Z・バーンズ
出演:アル・ゴア

元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏は、学生時代から環境問題について関心を持ち、 議員になってからも長年取り組んできた。 2000年の大統領選でブッシュに敗北したが、以後は地球温暖化問題を伝える活動を開始する。 多くの問題を提起し、何をしなければならないか、何ができるのかを人々に訴えて回ることにしたのだ。 彼はスーツケースにパソコンとスライドをつめてアメリカだけではなく、 ヨーロッパ、アジアへもスライド講演に出かけ、その数はすでに1000回を越える。 その講演を聴いたジェフ・スコル(『シリアナ』、『スタンドアップ』製作)が、 映画化を提案、この作品が完成した。 アメリカのドキュメンタリー史上記録的なヒットとなっている。

地球が瀕している危機的状況が、たくさんのわかりやすいグラフや、 過去と現在を比較した写真などで知らされます。 「不都合な真実」を、ゴア氏はまじめに、ユーモラスな語り口で紹介しますが、 のんびりしてはいられないのだとひしひしと感じます。
予告編を観ているだけでも十分に驚きますよ。ただ脅かすだけでなく、 「今すぐ一人から始められることもあります」とこのドキュメンタリーは結びます。 私はその一つを今クリアしました。“この映画を観て友達に知らせましょう” (白)

2006年/アメリカ/カラー/1時間36分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
配給:UIP

http://www.futsugou.jp/  (すぐ予告編が始まり,音声が出ますのでご注意!)

2007年1月20日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
★東京国際映画祭 特別招待作品として上映決定!
10/24(火) 於:TOHOシネマズ六本木ヒルズ


『マイ・シネマトグラファー』

製作・監督・ナレーション:マーク・S・ウェクスター
撮影:マーク・S・ウェクスター、サラ・リヴィ
音楽:ブレーク・リー
出演:ハスケル・ウェクスラー、ビル・バトラー、ビリー・クリスタル、マイケル・ダグラス、ジェーン・フォンダ、ミロス・フォアマン、デニス・ホッパー、ロン・ハワード、ノーマン・ジュイソン、ジョージ・ルーカス、ジュリア・ロバーツ、シドニー・ポワチアエ、マーチン・シーンほか

=『アメリカン・グラフティ』を撮った男。伝説の撮影監督の真実が今、明らかになる=

『バージニア・ウルフなんかこわくない』(’66)、 『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(’76) で2度オスカーを手にしたハリウッドの名カメラマン、ハスケル・ウェクスラー。 これは実子のフォト・ジャーナリスト、マーク・S・ウェクスターが 80歳を越えた父と向き合い、真の姿を見出そうとした記録である。

「今まで自分が撮影した作品を自分が監督していれば、もっといい作品になった」 と言うハスケル、カメラを向ける息子にもいちいち注文が飛んでくる。 今何をしているの?と説明を求める息子に、 ハスケルは「お前はドキュメンタリーを撮っているんだろ、淡々と映すうちに何かが起こる。 出来事は必然なんだ。気づけば幸運。気づかなきゃそれまで。 説明するなんて、観客に対する裏切りだよ」とびしびし。 かつて仕事をした俳優や監督にハスケルについてのコメントを、と思うと 「彼らの言葉で俺の人物伝なんか作るな」とくる。 “プロ中のプロ”と仕事仲間から賞賛される父を持った息子の心中やいかばかり。 同じく有名な父を持ってしまったジェーン・フォンダの言葉が温かい。(白)

2004/アメリカ/95分/カラー/ビスタ/35mm
提供:レイドバックコーポレーション 配給:グラッシィ
© 2004 WEXLER'S WORLD,INC. ALL RIGHTS RESERVED
http://www.glassymovie.jp/mycinema/

2007年1月20(土) 渋谷Q‐AXシネマにてモーニング&レイトショー



『それでもボクはやってない』

監督・脚本:周防正行
製作:亀山千広
撮影:栢野直樹
照明:長田達也
美術:部谷京子
音楽:周防義和
編集:菊地純一
出演:加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、田中哲司、光石研、尾美としのり 小日向文世、高橋長英、役所広司、大森南朋、鈴木蘭々、唯野未歩子、山本浩司、大和田伸也 清水美砂 竹中直人、正名僕蔵ほか

就職活動中の金子徹平(加瀬亮)は、会社面接に向かう満員電車で痴漢に間違えられ、 現行犯逮捕されてしまった。警察で無実を主張するが、担当刑事に自白を迫られ、 留置場に勾留されてしまう。勾留生活の中で、孤独感と焦燥感に苛まれる徹平。 さらに、検察庁での担当検事の取り調べで無実の主張が認められず、ついに徹平は起訴されてしまう。 刑事事件で起訴された場合、裁判での有罪率は99.9%と言われている。 徹平の無罪を信じる母や友人が見守る中、ついに裁判が始まった…。

大ヒット作『Shall We ダンス』の周防正行監督が11年ぶりに、 今までのコミカルな作風をがらりと変え、刑事裁判や痴漢冤罪事件の検証、 考察を3年間に渡り取材し、それを元に社会派映画『それでもボクはやってない』を完成させた。
これはもうすぐ始まる「陪審員制度」を見据えたテーマですが、 知らずに関わってしまうと大変なことになりそう…。 映画は二時間半近くありますが、こんな事態になったら怖い! 自分だったらどうするんだろう?と主役、加瀬亮こと金子徹平と一緒に、驚き、怒り、戸惑い、 気落ち、等々を共に体験する映画です。
出演者すべての演技が自然で、誰もが、その場面の主役として演じきっています。 特に際立っているのが、新旧の裁判長(正名僕蔵と小日向文世)と事件の目撃者(唯野未歩子)です。俳優さんのうま味がたっぷり出た映画でもあります。
試写の後、渡された用紙に判決を下すのですが、もちろん「無罪」と書きました。(美)

2006年/日本/2時間23分/カラー/ビスタビジョン/ドルビー
http://www.soreboku.jp/
2007年1月20日より 全国東宝系ロードショー


『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(原題:Brothers of the Head)

共同監督:キース・フルトン&ルイス・ペペ(『ロスト・イン・ラ・マンチャ』)
脚本:トニー・グリゾーニ(『ローズ・イン・タイドランド』)
原作:ブライアン・オールディス(『A.I.』)
出演:ハリー・トレッダウェイ、ルーク・トレッダウェイ、ブライアン・ディック、ショーン・ハリス、ケン・ラッセルほか

イギリス東海岸のレストレンジ岬で世間と隔絶されて育った結合双生児のトムとバリーは、18歳の時に父によって興行主ザック・ベダーウィックに売られた。彼らは楽器を教えられ、1975年にロックバンド”ザ・バンバン”を結成してデビュー。観客の好奇の目と、罵声の中、臆することなく身体をさらけ出し、シャウトする彼らはロックそのものであり、ブリティッシュ・ロックシーンに大きな衝撃を与えた。しかし、わずか10ヶ月で活動を中止。伝説となった彼らの軌跡を追うドキュメンタリー、のようなフィクション。

何も知らずに観ていたら、本当にこんなバンドがいて、そのドキュメンタリー作品だと思いこむところでした。これまで『ロスト・イン・ラ・マンチャ』などのドキュメンタリー作品を撮ってきた二人が、その経験を生かして、フィクションだけれどもまるでドキュメンタリーのようなリアルさを追求したユニークな作品を作り上げました。結合双生児を演じた新人のハリー&ルーク兄弟は一年もかけて、バンドの練習や結合双生児としての役作りをしたそうです。妖しく美しい二人が、孤独と恐怖にさいなまれ、ドラッグ漬けになって堕ちていく姿に、目が釘付けになりました。彼らが歌うオリジナルの楽曲も当時のパンクへとつながる雰囲気を持っていて、グッドです。(梅)

2006年/イギリス/カラー/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/日本語字幕:石田泰子
提供:フィルム・フォー
共同提供:EMメディア
製作:ポットボイラー
配給:アスミック・エース

公式 HP >> http://www.brothers-head.com/

★2007年1月20日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー
 東京国際映画祭特別招待作品
 オリジナル・サウンドトラック 2007年1月 ビクターエンタテインメントより発売


『僕は妹に恋をする』

監督・脚本:安藤尋
原作:青木琴美「僕は妹に恋をする」(小学館)
音楽:大友良英
出演:松本潤(結城頼),榮倉奈々(結城郁),平岡祐太(矢野立芳),小松彩夏(楠友華)、浅野ゆう子(結城咲)

頼と郁は双子の兄妹。幼い頃に「郁は僕のお嫁さんだよ」とシロツメクサの指 輪をプレゼントする程、仲が良かった二人。高校生になった今、頼は何故か郁 に冷たく振る舞い、郁は悩んでいる。頼の友人でもある矢野に交際を申し込ま れて、どうしようかと相談しても、頼の答えは「郁の好きにすれば」とつれな い。しかしある晩、頼は眠る郁の唇にキスしようとする。目を覚まして驚く郁 に、頼は堰を切ったように秘めた思いを打ち明ける。「ずっと好きだった…」


©「僕妹」フィルムパートナーズ

大ヒットコミックの映画化。最近本当に多いです。原作の世界を忠実に実写化 する作品が多いですが、この作品は違います。コミックの方は、かなりエロ ティックな場面がふんだんにあり、彼らの秘密が外の人間に知られそうになる ハラハラ感があります。しかし、この映画はベースの部分だけ同じで、ストー リーは独自のもの。頼と郁の内面的な葛藤が主になっています。それで122分 あるのは、ちょっと長いと感じてしまいました。
果たしてこの違いは原作ファンに受け入れられるのでしょうか?
郁役の榮倉奈々は映画初主演ですが、笑顔がとても魅力的です。(梅)

松本潤は『東京タワー』で人妻の寺島しのぶを誘惑する大学生を演じていました。この作品は妹への思いに悩む高校生で、かなり雰囲気が違います。でもこのお話、妹が兄を好きじゃなかったら性的虐待。高校生にもなった兄妹が同じ部屋、2段ベッドで寝てるってところから間違ってます! お母さんが台所で寝てでも別の部屋にするべき! と親心・・いや老婆心を起こしてしまいました。そんな硬いこと言わず少女漫画として楽しみましょう、なのですかねぇ。(白)

2006年/日本/122分/ビスタサイズ(1:1.85)/DTSステレオ/PG-12
製作:東芝エンタテインメント、小学館、日本テレビ放送網、ジェイ・ストーム、ズームエンタープライズ
配給:東芝エンタテインメント

公式 HP >> http://www.Bokuimo-themovie.com/

★1月20日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

マスコミプレス プレゼント!

ジャニーズ事務所「嵐」の松本潤の初単独主演作『僕は妹に恋をする』 がいよいよ1月20日から公開されます。妹郁役の榮倉奈々の笑顔が、ほんとに可愛くて、 禁断の恋に落ちてしまうのも納得してしまいます。
公開を記念して、3名様に、写真満載のマスコミプレスをプレゼントします。
ご応募お待ちしています!

*応募要領*
氏名、住所、シネマジャーナルHPの感想をご記入の上 cinemajournalhp@yahoo.co.jp  宛メールで応募してください。
(件名に「僕妹マスコミプレス希望」と記入のこと)

締切り: 1月19日(金)

応募者多数の場合は、抽選の上、3名様にお届けします。

マスコミプレス表紙


『マリー・アントワネット』

監督・脚本: ソフィア・コッポラ
撮影:ランス・アコード
衣装:ミレーナ・カノネロ
美術:K.K.バーレット
原作:アントニア・フレイザー「マリー・アントワネット」上下巻 早川書房刊
出演:キルステン・ダンスト(マリー・アントワネット)、ジェイソン・シュワルツマン(ルイ16世)、アーシア・アルジェント(デュ・バリー夫人)、マリアンヌ・フェイスフル(マリア・テレジア女帝)、ジュディ・デイヴィス(ノアイユ伯爵夫人)、リップ・トーン(ルイ15世)、スティーヴ・クーガン(メルシー伯爵)、ジェイミー・ドーナン(フェルゼン伯爵)、ローズ・バーン(ポリニャック公爵夫人)、オーロール・クレマン(シャール公爵夫人)、モーリー・シャノン(ヴィクトワール内親王)ほか

=恋をした、朝まで遊んだ、全世界に見つめられながら。=

オーストリア皇女のアントワーヌは、母親である女帝マリアテレジアの命により、 フランス王太子へ嫁ぐことになった。まだ14歳。 フランス王家のしきたりに従い、国境で全てのものを脱ぎ捨て、 フランスの衣服に着替えなければならない。 愛犬とも泣く泣く別れ、オーストリア大使のメルシー伯爵だけを頼りに、 マリー・アントワネットとしてフランス王族の仲間入りをする。 将来のルイ16世となる夫のオーギュストもまだ15歳の少年、世継ぎを期待されているが、 ベッドを共にしてもまるで妻に関心がなかった。 マリーは孤独を紛らわすために、靴やドレス、お菓子にシャンパンの浪費、 夜毎のパーティにギャンブルへとのめりこんでゆく。

ソフィア・コッポラ監督は今までに語られた歴史上のマリー・アントワネットでなく、 14歳で王家に嫁ぎ、18歳で王妃となった1人の少女の内面と成長を描きたかったそうです。
奇奇怪怪なヴェルサイユの慣習に「馬鹿みたい」と驚きながらも従わねばならず、 プライバシーもない生活を続け、夫と結ばれるのは結婚して7年後! 待望の男子に恵まれるのはさらに後。 心の隙間を埋めるような、ドレスに靴に花にケーキetc。 まるで女性雑誌のグラビアのような画面に、同年齢の女の子が共感できるマリーを思いました。 背景は特別ですが。歴史物でなく、女の子のストーリーとして楽しく観られます。 ロケーション協力を得たヴェルサイユ宮殿がすばらしい! 民衆からどれほど吸い上げてきたことやら。
ルイ16世役のジェイソン・シュワルツマンは監督といとこ同士 (母はF・コッポラ監督の妹タリア・シャイア)、 ということはニコラス・ケイジ(父がF・コッポラ監督の兄)ともいとこで、 だから眉と目が似てるんだと納得。(白)

2006/アメリカ・フランス・日本合作/カラー/2時間3分/ビスタサイズ
提供・配給:東宝東和、東北新社

http://www.ma-movie.jp/

2007年1月20日(土)〜日劇3ほかにて全国ロードショー!
コサージュつき特別鑑賞券発売中。数に限りがあります。



©2005 I Want Candy LLC.


『エレクション』(原題:黒社會)

監督:杜[王其]峰(ジョニー・トー)
脚本:游乃海(ヤウ・ナイホイ)、葉天成(イップ・ティンシン)
撮影監督:鄭兆強(チェン・シウキョン)
出演:任達華(サイモン・ヤム)、梁家輝(レオン・カーファイ)、古天楽(ルイス・クー)ほか

香港の裏組織”和連勝会”は2年に一度、幹部たちによる選挙で会長を決めている。今回はロクとディーという全くタイプの違う二人が候補者だ。冷静沈着で年長者を敬うロクに対し、短気で派手好き、強引な手法で相手を引き込むディーは、なりふり構わぬ裏工作をしていた。結果は最も皆の信頼が厚い長老のタンの一言で、ロクが新会長と決まる。しかしディーは承伏せず、会長の証として引き継がれてきた”龍頭棍”をロクに渡さぬように、現会長のチョイガイを脅す。混乱を恐れたチョイガイは手下に”龍頭棍”を持って広州に逃げるよう命ずる。ロク、ディー双方の陣営による争奪戦が始まった・・・

組織の中で唯一無二の権力を掴もうとする男たち。その剥き出しの欲望を、スピーディーでスリリング、そしてスタイリッシュに描き出した傑作。人間の強欲さに身震いし、息をのむ結末まで、片時も目が離せない。作品は2006年香港電影金像奬で最優秀作品、監督、脚本、主演男優賞(梁家輝)と主要4部門を受賞した。すでに香港などでは『エレクション2/黒社会2以和為貴』も公開されている。こちらは2年後、ロク(任達華)とジミー(古天楽)が対峙することになる。
11月に開催される第7回東京フィルメックスでは、一足早く、しかも1と2の両方が上映されるので、一刻も早く観たい方は、こちらへどうぞ。(梅)

マギー・シュー以外男ばかり、『ザ・ミッション』、 『PTU』を思い出す男たちの映画でした。 このところ警察側の役が続いていたサイモン・ヤムが、 人当たりの良い笑顔を見せながら非情な殺しもできるロクを演じています。 そういえばこの人、昔は異常な殺人鬼役もやっていたのを思い出しました。 やたらテンションの高いディー役のレオン・カーファイが目立ちますが、 二人甲乙つけがたい熱演。ジョニー・トー組と言えるお馴染みの面子を始め、 脇の俳優さんたちが多くて、だれがだれやら、ちょっとわかりにくいかもしれません。
儀式の場面から無駄なく積み上げられたエピソードは、どう取材したのかと思うほどリアル。 私はもちろん知りませんが、そう見えます。銃よりも、ナイフや石を使った痛い場面が多く、 思わず目をつぶりました。権力に狂う男たちの中で、ロクの息子の行く末が心配です。 2を観なくては!(白)

2005年/香港/101分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD
提供:東京テアトル/エイベックス・エンタテインメント/ツイン
配給:東京テアトル/ツイン
宣伝:メゾン

http://www.eiga.com/official/election/

★1月20日(土)より、テアトル新宿にて公開

第7回東京フィルメックス 11/19(日) 13:00- 『エレクション』 11/20(月) 19:00- 『エレクション2』上映


2007年1月27日〜

『幸せのちから』the PURSUIT of HAPPYNESS

監督:ガブリエレ・ムッチーノ『The Last Kiss』、『Remember Me My Love』
製作総指揮:マーク・クレイマン、ディヴィッド・アルパー
脚本:スティーヴン・コンラッド
撮影:フェドン・パパマイケル
音楽:アンドレア・グエッラ
出演:ウィル・スミス(クリス・ガードナー)、タンディ・ニュートン(リンダ)、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス(クリストファー)、ブライアン・ハウ(トゥイッスル)

1980年代のシカゴ。 クリスは医療機器のセールスマンをしているが、なかなか売れず家賃は滞納、 息子クリストファーの保育所の払いも遅れている。 支え続けてくれた妻のリンダも、一日16,7時間もの労働ですっかり疲れてしまっていた。 ある日クリスは、真っ赤なスポーツカーから降りるスーツの男性に見惚れて声をかける。 「質問が二つ。貴方の仕事は?どうしたらこうなれますか?」と。 男性は株の仲買人だった。高卒でも養成コースを受けて採用されればよいと言う。 新しい夢を見つけた彼はさっそく申し込みに行き、リンダに報告の電話をするが、 「私、クリストファーを連れて出て行きます」が彼女の返事だった。 失意のクリスは息子だけは取り戻し、無給の養成コースに通い始めるがすぐに生活費は底をついてしまう。

全米メディアで取り上げられた実話が元になっています。 本当にホームレスから億万長者へと、夢のような話を実現させた男をウィル・スミス。 健在のクリス・ガードナー本人に多くの助言を得て演じた主人公が魅力的です。 愛らしい息子クリストファー役は、コネでなく、 オーディションで採用したウィル・スミスの実の息子。カエルの子はカエルですね。 ガブリエレ・ムッチーノ監督は英語圏の作品は初めてですが、 製作にも参加したウィル・スミスのたっての希望でメガホンをとりました。 国際映画祭で観たパトリック・タム監督の『父子』とはえらく違って、 才能に加えて努力を惜しまず、決してあきらめない主人公+愛情溢れる親子の物語です。(白)

2006/アメリカ/カラー/120分/
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.sonypictures.jp/movies/thepursuitofhappyness/index.html

2007年1月27日(土)より 日比谷スカラ座ほか全国ロードショー


『幸福な食卓』

監督:小松隆志
脚本:長谷川康夫
原作:瀬尾まいこ
音楽:小林武史
主題歌:Mr.Children「くるみ‐for the Film‐幸福な食卓」
出演:北乃きい(中原佐和子)、勝地涼(大浦勉学)、平岡祐太(中原直)、さくら(小林ヨシコ)、羽場裕一(中原弘)、石田ゆり子(中原由里子)ほか

「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」・・・始業式の朝、家族が集まる食卓で、突然父さんが口にした一言。佐和子の中学校生活最後の1年はこうして始まった。
3年前、父さんは自殺をはかった。専業主婦だった母さんは、家を出てパートをしながら一人で暮らし、元天才高校生だった兄の直ちゃんは、大学進学をやめて農業を始めたのだった。母さんはときどき父さんと連絡は取り合っていて、お惣菜作りに「お邪魔しまーす」と帰ってきたりする。うちはこれからどうなってしまうんだろう?そして新学期のクラスには、大浦くんという転校生がやってきて、佐和子の隣の席になった。


©「幸福な食卓」ASSOCIATES
原作は未読ですが、本の空気もきっとこんななのでしょうね。過剰な演出などなく、淡々とした会話と、どこにでもありそうな風景の中で、佐和子の日常が綴られていきます。いつのまにか崩壊していった家族の、一つ一つのできごとは十分にドラマなのに、詳しくも大仰に描かれてはいません。役割を放棄したヘンな大人たちの中で、くじけもせずにしゃんとしている佐和子ですが、大浦くんと出会うことで、やっと普通の中学生の顔になります。この二人のやりとりが、はーるか昔の青春時代を思い出させます。すっかり物語に入り込み、後半は涙が止まりませんでした。ラストは爽やかですが、主題歌が流れると、また涙が戻ってきてハンカチ必携の作品。この映画の中で「異質」な小林ヨシコがとっても「普通」で、セリフが生きていました。佐和子役の北乃きいさんは映画初出演、ちゃんと中学生に見えた勝地涼くんは『空中庭園』、『亡国のイージス』にも出ていました。二人ともいい俳優さんになりそう。(白)

製作:「幸福な食卓」ASSOCIATES 配給:松竹

公式 HP >> http://ko-fuku.jp/pc/

★2007年新春1月27日(土)全国ロードショー
“幸福なくるみ”付前売鑑賞券 2006年10月28日発売開始! 一般 ¥1,300(税込)
 ※一枚につき、1個付いてきます(数に限りがございます)
 ※このくるみは食べられません

『幸福な食卓』初日舞台挨拶

小松隆志監督: 今日公開の作品が16本もあります。 そんな中でこの映画に来てくださってありがとうございました。 撮っているときはいつもこれでいいのか、という思いがあります。 時間がたつと客観的に観られます。頑張った甲斐がありました。


北乃きい(中原佐和子): 家族で食卓を囲むことの大切さに気づきました。 勝地さんは事務所の先輩なんです。 初めてのキスシーンはとっても恥ずかしかったです。


勝地涼(大浦勉学): 明るいし前向きで、大浦勉学っていいやつだなと思いました。


平岡祐太(兄の直ちゃん): ぴんと来るものがあったら、 他の人にも勧めてください。最後の歌に凝縮されていると思います。


©「幸福な食卓」ASSOCIATES

さくら(小林ヨシコ): ヨシコは不器用でひたむきなところがあります。 いい奴だったねと思ってほしいです。 この映画で小さな幸せに気づくことができました。 大切な人を連れてまた観に来てください。


羽場裕一(父): 映画のお話があったときすぐに原作本を買いにいきました。 お父さんをやめてお母さんになるのかと最初思いました(笑)。 表に出る派手さのない役ですから、ただいること、を意識して演じました。

石田ゆり子(母): 直ちゃんのお母さんというのは、 ちょっときついものがありました(平岡祐太とは15歳違い)。 大浦くんが佐和子に言う「大丈夫、気づかないうちに守られてるから」 というセリフが好きです。




*登場したみなさんが「観終わった後、心があったかくなる映画です」 と口を揃えていましたが、ほんとにそんな映画です。 セリフが少ないのですが、とても印象に残りました。(白)



『輝く夜明けに向かって』CATCH A FIRE

監督:フィリップ・ノイス
製作:アンソニー・ミンゲラほか
製作総指揮:シドニー・ポラック
脚本:ショーン・スロヴォ
撮影:ロン・フォーチュナト、ジェリー・フィリップス
音楽:フィリップ・ミラー
出演:ティム・ロビンス(ニック・フォス)、デレク・ルーク(パトリック・チャムーソ)、ボニー・ヘナ(プレシャス・チャムーソ)、ムンセディシ・シャバング(ズーコ・セプテンバー)ほか

1980年、アパルトヘイト下の南アフリカ。セクンダ精油所で真面目に働き、美しい妻と子と平穏に生活していたパトリックが突然逮捕される。アフリカ民族会議 (ANC)の犯行により製油所が爆破されたとき、嘘の休暇届を出していたことから 一味ではないかと疑われたのだった。取締官のニック・フォスは厳しく追及するが、 無実のパトリックは証拠不十分で釈放される。しかし、妻も拷問を受けていたのがわかって、パトリックはANCへの入党を決意する。誰にも告げずに家を出て、テロリストとしての訓練を受けるのだが、ニックも執拗にテロリストを追っていた。

南アフリカの英雄と呼ばれた実在の人物の軌跡を、実話に基いて映画化したもの。ごく普通の労働者だったパトリックがテロリストの道を選ぶまで、それからの活躍と苦難を描いています。保安部の取締官ニック・フォスも冷酷な人間ではなく、家族思いの父親であるようすも見せています。彼も家族を守り、政府の仕事として遂行したのでしょうが、対照的なラストでした。ただ、パトリックの妻のプレシャスの行動が納得いきません。それも実話なんでしょうか。パトリック本人と、彼を演じたデレク・ ルークが出会う場面に、生きていてほんとに良かったねと思いました。(白)

2006/ユニバーサル映画/スタジオカナル/ワーキングタイトル|ミラージュエンタプライズプロダクション/シネマスコープ/5巻/カラー/上映時間:1時間41分/ 翻訳:古田由紀子
UIP配給 宣伝:スキップ

★1月27日(土)シャンテシネ他にて全国順次公開


『フィレーネのキライなこと』

監督:ロバート・ヤン・ウェストダイク
出演:キム・ファン・コーテン(フィレーネ),ミヒル・ハウスマン(マックス)、タラ・エルダース(ラーラ)

フィレーネは「Sorry(ごめん)」という言葉を言うのはもちろん、聞くのも大嫌い。 その性格が災いしてか、恋はいつもあまり長続きしない。 でも、今回の相手マックスは俳優志望で超イケメンな上に、とっても優しい。 彼こそ運命の人と思っていた矢先、彼は相談もなしにニューヨークへ演劇の勉強に行ってしまう。 いつもならそれで終わりの恋も、今度ばかりはあきらめられない。 フィレーネは我慢できずに彼の後を追う。ところがそこで彼がやっていた舞台は、 「ロミオとジュリエット」がベースながら、ポルノと見まごうばかりの内容。 フィレーネの怒りが爆発する。

わがまま女の騒動記かと思ったら、全然違う!  フィレーネは確かにお上品ではありませんが、彼女の怒りは至極真っ当なもの。 初めはそのパワーには圧倒されますが、だんだん「マックスになんて謝る必要ないぞ〜!」 と観ているこちらの方が過激になってきました。でも恋は盲目なんだなぁ。
2003年にオランダで公開され、大ヒットした作品。 キム・ファン・コーテンはフィレーネをパワフル&キュートに演じています。 オランダだけあって、性描写や女の子同士の赤裸々な会話は、かなり刺激が強かった。
マックス役のミヒル・ハウスマンは『ブラック・ブック』にも出演している、 今オランダで一番人気のある若手俳優なんだそうです。 イケメン好きは要チェック。(梅)

2003年/オランダ/35mm/カラー/ドルビーデジタル/94分/R-18
配給:アートポート
宣伝:ビー・ウイング

公式 HP >> http://www.phileine.jp/

★1月27日(土)より シネセゾン渋谷にてレイトショー


『あなたを忘れない』原題:26 Years Diary

監督:花堂純次
脚本:花堂純次、J・Jミムラ
撮影:瀬川龍
主題歌:槇村敬之「光〜あなたを忘れない〜」
原作:辛潤賛(シン・ユンチャン)著「息子よ!韓日に架ける命の架け橋」潮出版社刊
   康熙奉(カン・ヒボン)著「あなたを忘れない」早稲田出版刊
   佐桑徹著「李秀賢さんあなたの勇気を忘れない」日新報道刊
出演:イ・テソン(イ・スヒョン)、マーキー(星野ユリ)、竹中直人(ユリの父)、原日出子(ユリの母)、ジョン・ドンファン(スヒョン父)、金子貴俊(風間龍次)、大谷直子(高木五月)ほか

2001年1月26日、JR新大久保駅のホームから酒に酔った男性が線路に転落した。 日本語学校留学生のイ・スヒョンさん(26歳)とカメラマンの関根史郎さん(47歳)が、 落ちた男性を助けようとして、線路に飛び降りたが間に合わず、 入ってきた電車にはねられ3人とも亡くなってしまった。

もう6年前の事故ですが、はっきりと記憶しています。 当時、三村順一プロデューサーは「なぜ韓国の青年が命がけで日本人を助けようとしたのか」 と疑問をいだき、イ・スヒョンさんの三回忌にご両親を訪ねたそうです。 そのときご両親は「普通の人間なら当たり前のことです」と答えたそうです。 この言葉が映画完成までの長い道のりを支えてくれたのだとか。 実話を元にフィクションを加えて、 スヒョンさんの魂を浮き彫りにするような作品が作られました。 なお、事故の後全国から寄せられたお見舞金をスヒョンさんのご両親が寄付されたのをきっかけに、 アジアからの留学生を援助する奨学金が設立されました。 今までに約250人の就学生を援助しています。(白)

2006/日本・韓国合作/2時間10分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
http://www.sonypictures.jp/movies/26yearsdiary/site/

2007年1月27日(土)よりロードショー


©2007映画「あなたを忘れない」プロジェクト/ワイズジャパン.


『ユメ十夜』

原作は夏目漱石の短編小説「夢十夜」。

「余が見た十の夢、その謎は百年後に明かされるであろう」 という文豪・漱石の100年前の挑戦を、 日本映画界の巨匠〜異彩の監督たち10人が独自の映像世界で解釈。 モノクロ、ダンス、アニメーションと様々な映像表現が豪華な顔ぶれで楽しめます。 女優陣の着物姿がいろっぽくてよろしいです。 東京国際映画祭には間に合わなかった十夜めでは、 松山ケンイチの珍しい色男ぶりと本上まなみの女優魂に瞠目。(白)



©「ユメ十夜」製作委員会
○第一夜
監督:実相寺昭雄
脚本:久世光彦
出演:小泉今日子、松尾スズキ

○第二夜
監督:市川崑
脚本:柳谷治
出演:うじきつよし、中村梅之助

○第三夜
監督・脚本:清水崇
出演:服部圭亮、香椎由宇

○第四夜
監督:清水厚
脚本:猪爪慎一
出演:山本耕史、菅野莉央

○第五夜
監督・脚本:豊島圭介
出演:市川実日子、大倉孝二

○第六夜
監督・脚本:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ、TOZAWA、石原良純

○第七夜
共同監督:天野喜孝、河原真明
出演(声):Sascha、秀島史香

○第八夜
監督・脚本:山下淳弘
脚本:長尾謙一郎
出演:藤岡弘、、山本浩司

○第九夜
監督・脚本:西川美和
出演:緒川たまき、ピエール瀧

○第十夜
監督・脚本:山口雄大
脚本:加藤淳也
脚本:漫☆画太郎
出演:松山ケンイチ、本上まなみ、石坂浩二
2006/日本/110分/カラー・モノクロ/ビスタサイズ/
配給・宣伝:日活 http://www.yume-juya.jp/

2007年1月27日(土)より全国開運ロードショー


『ルワンダの涙』Shooting Dogs

監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ
共同製作:デヴィッド・ベルトン、ヤンス・ミューラー、ピッパ・クロス
原案:デヴィッド・ベルトン、リチャード・アルウィン
脚本:デヴィッド・ウォルステンクロフト
撮影:アイヴァン・ストラスバーグ BBC
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:ジョン・ハート(クリストファー神父)、ヒュー・ダンシー(ジョン・コナー)、クレア=ホープ・アシティ(マリー)、ドミニク・ホロウィッツ(デロン大尉)、ニコラ・ウォーカー(レイチェル)ほか

2006年の初めに公開され大変話題となった『ホテル・ルワンダ』。この作品は ルワンダで起きた大虐殺を日本人に知らしめる大きな機会となりました。
2007年の初めに公開されるこの『ルワンダの涙』は、『ホテル・ルワンダ』と は逆の視点で描かれた作品です。すなわち、虐殺が行われる中、ルワンダ人た ちを見捨てて去っていく欧米人たちの物語なのです。
舞台となった公立技術専門学校は、当時神父によって運営され、ベルギー軍国 連部隊の駐屯地でもあったため、虐殺が始まると、多数のツチ族が避難してき ました。しかし虐殺が始まって5日目に、国連部隊は退去し、残された2500人 余りのツチ族は、門の外にナタを持って待ちかまえたフツ族たちに、わずか数 時間の間に殺されました。
この事実をもとに、映画は技術学校にボランティアの教師としてやってきた青 年の目を通して描かれます。脚本を書いたのは、当時ジャーナリストとして現 地を取材し、残されたルワンダ人たちが殺されると分かっていながら逃げてきた経 験を持つ、デヴィッド・ベルトンです。もう一人の重要な人物クリストファー神父 は、ベルトンが当時出会ったキュリック神父がモデルとなっています。キュリッ ク神父は最後までルワンダに残ってツチ族の人々を匿い、国外への脱出を助け ていた人物。後にキュリック神父がルワンダで殺されたことを知って、彼の封印し ていた記憶がよみがえり、自分が為すべきことをなしていない事実に直面して、 映画の脚本を書くに至ったのだといいます。
もしも自分がその場にいたら、いったい何ができたでしょう? 99.9%、彼ら と同様、退去する国連軍の車に乗せてもらったことでしょう。それだけに、彼 らの絶望感、無力感、そして抱え続ける罪悪感を肌で感じて、『ホテル・ルワ ンダ』を観たとき以上の痛みを感じるのです。
この作品がルワンダの現地で撮影されたことも特筆に値します。撮影には、技 術学校での虐殺を辛うじて生き抜いた人々も参加したそうです。撮影は思い出 したくもない辛い体験の再現ですから、困難も沢山あったそうですが、それ以上 に彼ら自身がこの惨劇の事実を世界に伝えたいという強い意志を持って臨んで いたため、無事に撮影を終えることができたといいます。
それではわたしたちも、真摯にその勇気を受け取りに、そして絶望の先にある ものを確かめに映画館へ行きませんか?(梅)

2005/イギリス・ドイツ/カラー/シネマスコープ/DTS/115分/
配給:エイベックス・エンタテインメント 宣伝:フリーマン

★1月27日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://www.r-namida.jp/



『夏物語』

監督:チョ・グンシク
脚本:チョグンシク、キム・ウニ
撮影:イ・ヒョンドク
音楽:シム・ヒョンジュン
美術:イ・チョルホ
日本版エンディングテーマソング:藤井フミヤ「大切な人へ」
出演:イ・ビョンホン(ユン・ソギョン)、スエ(ソ・ジョンイン)、オ・ダルス(ギュンス)、イ・セウン(スジン)、チョン・ソギョン(マンドク)、ユ・ヘジン(プロデューサー)ほか

TV局のスタッフが「会いたい人を探し出す」企画のため、 大学教授のユン・ソギョンを訪れる。 独身を貫き、60を越えた彼の忘れられない人とは・・・。
1969年夏、軍事独裁政権下のソウル。裕福な親のいる大学生のソギョンは、 学生運動もおざなり。外出禁止の時間まで酒に酔っては帰宅する日々だった。 熱心な友人に誘われて、気まぐれに農村への労働奉仕に出かける。 たいしてやる気もなくソウルに戻ろうとしていたが、 村で図書館司書をしているソ・ジョンインに出会ったことから、特別なひと夏となった。

『品行ゼロ』でデビューを飾ったチョ・グンシク監督作品。 69年当時の韓国の世相を把握していたほうが、よく理解できると思います。 日本では高度成長期、学生運動も続いていたものの、 グループサウンズや歌声喫茶が流行っているような時代。 韓国の軍事政権下の事情など知らずにいました。こんなに深刻だったんですね・・・。
イ・ビョンホンが20代の大学生と、珍しく老け役!60代の教授を演じます。 彼が相手役に推薦したというスエが複雑な過去を抱える薄幸のヒロインを演じて泣かせます。 後半、取調べ室でのジョンインがソギョンを見つめ続けている間の表情の変化は見逃せません。 大切なアイテムの「ヒノキの小枝のカード」を作りたくなりました。 (白)

2006/韓国/カラー/116分/ビスタ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー

http://www.excite.co.jp/cinema/natsu2007/

1月27日(土)よりシネマート新宿、シネマート六本木ほか全国ロードショー


2007年2月3日〜

『墨攻(ぼっこう)』

監督・脚本・製作:張之亮(ジェイコブ・チャン)
撮影監督 阪本善尚(さかもと ぜんしょう)
プロデューサー
 中国 黄建新(ホワン・チェンシン) 王中軍(ワン・チョンジュン)
 香港 徐小明(ツイ・シャオミン) 
 韓国 李柱益(リー・ジェイク)
 日本 井関 惺(いせき さとる)
音楽 川井憲次(かわい けんじ)
原作:漫画「墨攻」 森秀樹(原作小説:酒見賢一/漫画脚本:久保田千太郎)小学館刊
提供:キュービカル・エンタテインメント+アミューズソフトエンタテインメント+松竹+小学館
出演
 革離: 劉徳華 アンディ・ラウ
 巷淹中:安聖基 アン・ソンギ
 梁王: 王志文 ワン・チーウェン
 逸悦: 范冰冰 ファン・ビンビン
 子団: 呉奇隆 ウー・チーロン (ニッキー・ウー)
 梁適: チェ・シウォン
 使徒: 牛馬  ウー・マ
 牛子張: 錢小豪 チン・シウホウ

 

今だからこそ描く必要があった『墨攻』
中国の戦乱の世に「非攻」を掲げ、平和を目指した墨家という思想集団がいた!

『墨攻』は、日本の漫画を原作にした中国の歴史大作で、中国の戦国時代紀元前370年頃を舞台にした作品です。紀元前5世紀、墨子という思想家が始めた「非攻」という、攻めずに守り抜き平和を目指すという思想は、墨子の思想に賛同する墨家という集団によって広まったが、始皇帝の中国統一で、戦国時代が終わると墨家は忽然と消えてしまったとされている。

 戦乱の古代中国。小国の梁(リョウ)城は、大国趙(チョウ)の軍勢十万に攻められていた。趙軍を率いるのは名将軍巷淹中(こうえんちゅう)、梁の住民はわずか4000。今や落城の危機に瀕していた。梁王が降伏を決意した時、粗末な身なりの男、革離(かくり)が現われた。墨家(ぼっか)からただ一人救援のためにやってきた墨者だった。梁王から指揮権を得た革離は、梁城の民を守るため、重臣や王子の梁適(りょうてき)の反発を押さえ、孤軍奮闘、守りの戦いをすることになった。そして、自らの策を認めさせた。

 墨者革離が陣頭指揮を執ることになったことを知った巷淹中は革離を訪ね、盤上の戦いを挑んだ。革離を手強い相手と認識し、実戦での再会を約して巷淹中は去って行った。十万の軍勢を相手に革離がめぐらす、あの手この手の作戦とはどのようなものなのか? 果たして城を守り通すことはできるのか?

 

 小説家の酒見賢一氏が1994年「墨攻」を書き、それを基に森秀樹氏が漫画に。漫画版「墨攻」はアジア各国で翻訳され、この漫画を11年前に見た香港のジェイコブ・チャン監督が感動し、この作品をぜひ映画化したいと構想した。
 戦いの連続の中に出現した盤上の戦いや、芽生えた愛、戦うことの愚かさ虚しさが強く伝わってきます。
 ジェイコブ・チャン監督の描く世界は、戦争に英雄はいないということ。(暁)

2006年/中国・日本・香港・韓国
配給:キュービカル・エンタテインメント/松竹

★2007年2月3日(土)より、丸の内ピカデリー1他 全国松竹・東急系にて拡大ロードショー

公式 HP >> http://www.bokkou.jp/



『ピンチクリフ・グランプリ』(原題:The Pinchcliffe Grand Prix)

監督・編集・アニメーション:イヴォ・カプリノ
脚本:ヒェル・アフクルスト、ヒェル・シーヴェンシェン、イヴォ・カプリノ、レモ・カプリノ
キャラクター:ヒェル・アフクルスト
撮影:チャールズ・パティ、イヴォ・カプリノ

自転車修理工で発明家のレオドルは、ピンチクリフ村で、あひるとカササギのミックスのソランと、ハリネズミのルドビグの二人の相棒と穏やかに暮らしている。
ある日、テレビでグランプリレースに3連勝中のレーサー、ルドルフを見て、レオドルは彼がかつての弟子だと気づく。ルドルフは彼の発明を盗んで作ったスーパーカーでレースに勝っていた。話を聞いたソランは、作りかけの車を完成させてレースで挑戦しようと言い出した。しかし、車を作るお金が全然ない。ソランは村に来ていたお金持ちにスポンサーになってもらうことを思いつく。

1975年にノルウェーで作られた人形アニメ映画で、本国ノルウェーでは観客動員ナンバー1の記録を今でも保持している作品です。その動員数は当時の国内人口の2/3にあたるというから凄いです。実は、1978年に一度日本でも公開されたのですが、その時には残念ながらあまりヒットしませんでした。しかし、当時地方に住んでいて、この作品を観たくても観られなかった一人の映画好きの少年が、長じて映画配給会社の社員となり、「この作品が観たい!」という30年越しの夢を実現するにいたりました。
わたしはもちろん初めて観たのですが、その凝りにこった人形世界と30年経っても全く古さがないどころか、一層輝きを増している面白さに驚愕しました。まず、人形アニメでここまでできるのかという驚き。ディテイルの凝りようは凄いの一言。現存するならば、是非一度人形たちや、レオドルたちの作ったスーパー・クラシック・カーのイル・テンポ・ギガンテ号を手にとって見てみたい。村のジオラマも間近に見てみたい! またジャズバンドの演奏シーンは、全楽器の各音に合わせて置かれる指の位置まで再現しているのです。気の遠くなるような地道な作業だったことでしょう。どおりで制作に5年もかかったわけです。
レオドルたちの穏やかで幸せな日常から、クライマックスの刺激的で迫力満点のレースシーン、そしてまた穏やかな日常へ戻っていく物語構成もとても魅力的。そして個性的なキャラクターたちが生き生きしていて、今でもノルウェーの人々に愛され続けている作品だというのが、よくわかります。(梅)

1977年モスクワ国際映画祭グランプリ(児童映画部門)、最優秀アニメ映画賞 ダブル受賞

1975年/ノルウェー/90分/カラー/スタンダード/ドルビーSRD
後援:ノルウェー王国大使館、スカンジナビア政府観光局
協力:日本レースプロモーション、スナップオン・ツールズ
提供:メディア・スーツ+キングレコード
配給:メディア・スーツ

公式 HP >> http://www.pinchcliffe.com

★2007年2月3日(土)より、シアターN渋谷ほか全国順次公開


『世界最速のインディアン』The World's Fastest Indian

監督・脚本:ロジャー・ドナルドソン
撮影:デヴィッド・グリブルA.C.S.
音楽:J・ピーター・ロビンソン
美術:J・デニス・ワシントン、ロブ・ギリーズ
出演:アンソニー・ホプキンス(バート・マンロー)、アーロン・マーフィー(トム)、アニー・ホイットル(フラン)、クリス・ウィリアムズ(ティナ)ダイアン・ラッド(エイダ)、ポール・ロドリゲス(フェルナンド)、ほか

ニュージーランドの田舎町に住むバイク好きのバートは62歳。 これまでひたすら早く走ることに人生を捧げてきた。 年金で一人暮らしの彼の良き理解者は、隣家の少年トムと、ガールフレンドのフラン。 バートの愛車は40年以上も前の年代物のインディアン・スカウトだが、 自分で部品を作り日々改良を重ねている。 夢はアメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で世界記録に挑戦することだ。 お金も若さもなく、おまけに心臓病を抱えるバートはやるなら今しかない、 と渡航を決心する。バイクと一緒に船に乗り込み、地球の裏側までの長い長い旅が始まった。


バート・マンローは実在の人物で(1899〜1978)、 ロジャー・ドナルドソン監督は1971年に彼に会ってドキュメンタリーを製作しています。 語りきれなかったと感じた監督はそれ以来、 映画化のチャンスを待ち続け30数年たってようやく実現させました。 劇中バートが語るいくつもの味わい深いことばは、監督がバート本人に会って感銘を受け、 観客に伝えたいバートの人生哲学です。 長い旅の途中で困難に遭いながらも少しもあきらめることなく、 誰にでも優しく明るい彼をアンソニー・ホプキンスが好演しています。 こんな人なら誰もが応援したくなります。変質者や神経質な役の多い彼ですが 「僕はすごくハッピーな人間だから、バートの人生哲学は僕の気性に合うんだ」 と語っています。(白)

試写室のロビーに撮影で使われたバイクが展示してありました。その手作り感満載のマシンを見たら、こんなので時速300kmも出したのかと、あらためてその凄さを感じました。お金もなければ、若さもない。全てを情熱で補って、夢に向かって邁進するバートは、究極のバイクヲタです。でも、60歳を過ぎても全然枯れてないその姿に、老若男女全ての人が胸を熱くするでしょう。(梅)

2005/ニュージーランド・アメリカ/カラー/127分/
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

http://www.sonypictures.jp/movies/theworldsfastestindian/index.html

2006年10月22日(日) 東京国際映画祭にて上映
2月3日(土)より テアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほかロードショー


『カンバセーションズ Conversation(s)』

監督:ハンス・カノーザ
脚本:ガブリエル・ゼヴィン
撮影:スティーヴ・イェドリン
音楽:クリス・ヴァイオレット
主題歌:カーラ・ブルーニ
衣装:ダグ・ホール
出演:ヘレナ・ボナム・カーター、アーロン・エッカート、ノラ・ザヘットナー、エリック・アイデム

=男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト=

結婚披露のパーティ会場で、若いころに恋人同士だった二人が再会した。男は新婦の兄。女は新郎の元妻、付添い人の数合わせにロンドンからパリまでやってきていた。独身の男は「ガールフレンドはいるけど、遊びだよ」と言い、再婚した女は「夫は脳外科医、愛してるの」と言う。突然出て行った女に恨みごとを少しずつ吐きながら甘える男に、「少年と年増女みたい」とため息をつく女。明朝はロンドンに発つ女と行かせまいとする男・・・さて。

二人の主人公が、2分割されたスクリーンの右と左にずっと出ずっぱり。(回想シーンは若い俳優が演じている)ときどき段差ができたり、右から左へ中心線を越えてするりと抜けるシーンがあったりで、あら、と思う。向かい合っている二人の表情が同時に観られてなかなか面白かった。俳優は舞台にいるようにずっと演技し続けることになり、それもアップなので手は抜けない!という、演技力がものを言う作品。
アーロン・エッカートは『ブラック・ダリア』、『サンキュー・スモーキング』と公開作品が続いている。ヘレナ・ボナム・カーターは、昨年この作品で(当時の題名は『女たちとの会話』)東京国際映画祭最優秀女優賞を受賞している。会話が軽妙で洒落ている大人の恋愛映画。試写室では男性の笑い声が多かった。身に覚えがあるんだな?(白)

2005/アメリカ/84分/カラー/シネスコサイズ/ドルビーSRD/字幕:古田由紀子
配給:松竹 宣伝:ザジフィルムズ

公式 HP >> http://conversations.cinemacafe.net/

★2月3日(土)より、シネスイッチ銀座にて心ゆれるロードショー!
特別鑑賞券を劇場窓口でお買い求めの方に限り、先着で「彼女のトラベル・ルームシューズ」プレゼント!


『スターフィッシュホテル』

監督・脚本:ジョン・ウイリアムス
エグゼクティブ・プロデューサー:ブライアン・ホルス
プロデューサー:マーティン・ライクロフト/古川実咲子/戸山剛
撮影:ベニート・ストランジオ
美術:金田克美
コンセプチュアリ・デザイナー:斎藤岩男
照明:仲西祐介
編集:矢船陽介
音楽:VORTEX
主題歌:ケイコ・リー
キャスト:佐藤浩市(有須)、木村多江(ちさと)、KIKI(佳世子)、串田和美(黒田)、トリックスター(柄本明)

有須はごく普通のサラリーマン。ある日を境に怪奇的な事件に巻き込まれていく。
妻ちさとの失踪、その鍵を握る謎の人物たち。
彼らの言葉は嘘か誠か…有須は迷宮の中へ入って行く。

ジョン・ウイリアムス監督の前作品『いちばん美しい夏』に主演した南美江に似た切れ長の目、 稟とした面立ちの女二人、対、爬虫類的な肌触りを感じさせる男三人…。 現実、夢、空想を行きつ戻りつする時間の迷路を、 この登場人物たちが異次元の国に誘ってくれます。 まさに、大人版「不思議の国のアリス」です。 間接照明の使い方、古い西洋と日本の美術、部屋の設え、それがうまくミックスされています。 日本在住のイギリス人監督の独自の目線が幻想的な世界に私たちを迷い込ませて困惑させてくれます。(美)

2005年/日本映画/カラー/ドルビーステレオ/アメリカンビスタ/98分
配給:ファントム・フィルム 宣伝:アンカー・プロモーション

http://www.starfishhotel.jp/

2007年2月3日よりシネマート六本木、他全国ロードショー


2007年2月10日〜

『長州ファイブ』

監督・脚本:五十嵐匠
製作総指揮:前田登
撮影:寺沼範夫(JSC)
音楽:安川午朗
美術:池谷仙克
出演:松田龍平(山尾庸三)、北村有起哉(井上馨/志道聞多)、山下徹大(井上勝/野村弥吉)、三浦アキフミ(伊藤博文/伊藤俊輔)、前田倫良(遠藤謹助)、原田大二郎(村田蔵六)、寺島進(高杉晋作)、泉谷しげる(佐久間象山)、ミシェル・(エミリー)、榎木孝明(毛利敬親・友情出演)

=幕末の世、日本の未来のために刀を捨てた、サムライがいた=

1853年黒船の来航により太平の夢が破られた日本は、外国の脅威に対峙せねばならなくなった。 10年後、尊皇攘夷の嵐が吹き荒れる中、長州藩の山尾庸三、伊藤俊輔、志道聞多らは 高杉晋作とともに品川に建設中のイギリス公使館に火を放っていた。 これが何になるのかと疑問を抱いた志士たちは、佐久間象山の開国論に心を動かされる。 長州藩主、毛利敬親は国禁を破る渡航を黙認し、聞多に仲間を集めよと申し渡す。 イギリスへの密航を企てた聞多は、ロシアに渡航経験のある山尾を誘い、山尾は野村弥吉を呼ぶ。 伊藤俊輔、遠藤謹助も加わった。「俺たちは生きたる機械となって日本に戻るんじゃ!」 と決意を新たに、ついに5人はロンドンまで命がけの旅に出る。


(c)長州ファイブ製作委員会

日本の近・現代史を駆け足でやった世代で、こんな史実があったことは知りませんでした。 面白かった!1863年、密航した当時の5人は20歳〜27歳。 最年少の弥吉がロシアで覚えた英語を話すだけで、後の4人は航海中に学んでいます。 武士の象徴であった髷を切り、刀も捨てて不退転の決意で臨んだ5人は、 ロンドンに上陸してその発展ぶりに目を見張ります。 それぞれの得意分野を苦労して学ぶうち、藩にこだわるのでなく、 国全体を思うようになっていきます。
実在の人物の映画を多く撮った五十嵐監督は、今だからこそ、 この「長州ファイブ」の生き様を見せたいと言います。 異国で学んで戻った5人はみな、新しい日本を実現する重要な人物となっていることに驚き、 当時彼らを送り出した人たち、また、受け入れたイギリスの懐の深さを思いました。(白)

五十嵐監督の前作『HAZAN』や『アダン』に主演した榎木孝明さんにインタビュー (記事、67号に掲載)した時に、 「五十嵐監督から、次回作で毛利のお殿様の役をやってくださいって頼まれたんですよ。 ずぅ〜っとお茶たてているだけでいいですからって」と、おっしゃっていたのが、 この作品だったのか・・と納得。 家臣から彼らの禁を破る渡航希望を聞かされて、黙認した上に、 資金援助までする太っ腹なお殿様で、話を聞いている間、ずっとお茶をたてているという次第。
それはさておき、外国人を見たら切り倒せという時代に、 密航してでも外の世界を見たいと飛び出していった勇気ある若者達がいたお蔭で、 日本の近代化が急速に進んだのだと思うと、胸が熱くなります。
長州ファイブの5人は、その誰もが英国から帰国して偉業を遂げています。 伊藤俊輔は後の伊藤博文(初代内閣総理大臣)、志道聞多は、後の井上馨(初代外務大臣)。 遠藤謹助は帰国後大阪造幣局長を務めた人物で、春の大阪の風物詩、 造幣局の桜の通り抜けは彼のアイディア。 あの素晴らしい桜を見られるのも、彼のお蔭と思うと、ぐっと親近感が沸いてきます。 野村弥吉は、帰国して日本初の鉄道を新橋—横浜間に開通させた後の井上勝。 そして、山尾庸三は、近代化を進めるには人材養成が不可欠と、 工部大学校(後の東京大学工学部)の設立に尽力、日本工学の父と呼ばれます。
ロンドン到着早々、下宿先の邸宅の玄関ドアの前に5人の脱いだ靴がきちんと並んでいる様は、 一見笑える光景なのですが、よく考えれば、彼らが躾の行き届いた士族だと捉えるべきことですね。 土足で家にあがる方が、彼らにとっては無礼なこと。 こんな文化の違いを克服しながら、異国の地で努力をした先人がいたことを、 今一度思い起こしたいと思いました。(咲)

2006/日本/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタ/ドルビー/119分
配給:リベロ

http://www.chosyufive-movie.com/

2月10日(土)より シネマート六本木、立川シネマシティ他にてロードショー

世田谷の松陰神社をご存じですか?  伊藤博文らが学んだ松下村塾を主催した吉田松陰が祀られている神社です。 この松陰神社で、去る2月3日、伊藤博文役を演じた三浦アキフミさんによる ヒット祈願が行われました。

奇兵隊(長州防衛の為に高杉晋作により結成された)に扮した一行と三浦アキフミさんは、 吉田松陰の墓前に献花をし、宮司によるヒット祈願を受けました。


(c)長州ファイブ製作委員会

三浦アキフミさんのコメント:
「松陰神社には、伊藤博文役が決まってから、すでに5,6回来ています。 実は、つい先日も初詣に来たばかりなので、 そんな馴染み深い神社でヒット祈願ができたことを、とても嬉しく思います。 しかも、今日は奇兵隊の方もいてくれたので、なおさら嬉しかったし、 とても光栄なことだと感じました。銃を持った奇兵隊の方が強そうなので、 僕も普段と違って、あまり笑わないようにして、"力強さ"を表現してみました(笑)。
 『長州ファイブ』は、伊藤博文はじめ立派な人物ばかりですが、若い頃は、 僕らと同じように、悩みや不安を抱えていたはずです。でも、とにかく行動に移してみる、 という勇気は見習いたいですね。映画を見た人に、 『悩む前に行動する』というメッセージが伝われば良いな、と思います」



『華麗なる恋の舞台で』Being Julia

監督:イシュトヴァン・サボー
脚本:ロナルド・ハーウッド
撮影:ラホス・コルタイ
音楽:マイケル・ダナ
美術:ルチアナ・アリギ
衣装:ジョン・ブルームフィールド
出演:アネット・ベニング(ジュリア・ランバート)、 ジェレミー・アイアンズ(マイケル・ゴセリン)、ブルース・グリーンウッド(チャールズ卿)、ミリアム・マーゴリース(ドリー)、 ジュリエット・スティーブンソン(エヴィ)、 ショーン・エヴァンス(トム・フェネル)、ルーシー・パンチ(エイヴィス)、マイケル・ガンボン(ジミー・ラングトン)、トム・スターリッジ(ロジャー・ゴセリン)

1938年のロンドン。 舞台女優ジュリアはすでに地位も名声も手にし、理解のある夫マイケルと息子も持ちながら、 倦怠の日々を送っていた。 それがある日、親子ほど年の違うアメリカの青年トムに言い寄られ、あっさりと恋におちてしまう。 ジュリアは再び輝く時間を取り戻し、舞台の出来も上々だった。 しかし、トムは若い女優に心が動いていた。 彼はそ知らぬ顔で、ジュリアの新しい舞台にぜひ使ってと頼み込む。


(C)2004 2024846 Ontario Inc.; Being Julia Productions Limited ;
ISL Film kft, All rights Reserved

30年代ファッションとアネット・ベニングの笑顔が素敵です。 映画の中に舞台劇をたびたび登場させ、現実の世界との裏表を見せています。 亡くなったジュリアの恩師のジミーがここぞというときに現れ、ジュリアにいろいろ語るのです。 劇場に精霊のように存在しているらしいこのジミーのセリフがなかなか面白いです。 女優であるジュリアがそれを最大限に発揮してみせるラストが痛快。 「やったね!」と思わず拍手したくなりました。 聡明な息子ロジャー役トム・スターリッジがちょっと気になっています。 原作は文豪サマセット・モームの「劇場」だそうで、文学全集に入っているんでしょうね。 読んでみようかな。(白)

62回ゴールデン・グローブ賞「ミュージカル・コメディー部門」主演女優賞受賞作品

2005年アカデミー賞主演女優賞 ノミネート

2004年/カナダ・アメリカ・ハンガリー・イギリス/104分/英語/アメリカン・ヴィスタ/ドルビーSRD
配給・宣伝:アルシネテラン

http://www.alcine-terran.com/kareinaru/

2月10日(土) Bunkamura ル・シネマ他にて拍手喝采ロードショー


『マジシャンズ』

監督・脚本:ソン・イルゴン
撮影:パク・ヨンジュン
テーマソング:「Sylvia」(LOVEHOLIC)
美術:ホン・ジ
出演:チョン・ウンイン(ジェソン)、チャン・ヒョンソン(ミョンス)、イ・スンビ(ジャウン)、カン・ギョンホン(ハヨン)、キム・ハクソン(お坊さん)

大晦日の夜、山荘のカフェ・マジシャンズでジェソンとミョンスがバンド時代の話に花を咲かせている。 ドラマーのジェソンとギターのジャウン、キーボード&ベースのミョソンはボーカルのハヨンとそれぞれ恋人同士だった。 3年前ジャウンが自殺したことでバンドは解散してしまったのだ。 2人にはわからないが、ジャウンもそばにやってきている。 ハウンが到着するまで、残された2人は現在と過去を行きつ戻りつ・・・。 そこへお坊さんが訪れる。

ポーランドで映画の勉強をしたというソン・イルゴン監督の不思議な余韻の残る作品。 95分ワンカット、全て夜に撮影されています。 5分の長回しでさえ大変と聞いていたので、観ていて緊張してしまいました。 ワンカットに耐えられる舞台出身の俳優をそろえ、丁寧なリハーサルをしたようです。 過去と現在の話の切り替えは、俳優が着替えることで現していますが、 よく観ていないと混乱するかもしれません。
カメラマンは森の中を動く俳優について回ります。デジタルカメラとはいえ、 制約の多い自然の森が舞台ではさぞ大変だったことでしょう。カメラマン泣かせですね。 フィルメックス上映時での質疑応答では、 「外の撮影で寒くて鼻水があごまで垂れても、ふくわけにもいかなかった」とあります。 想像するとおかしいやら気の毒やら。 映画を志す人なら一度はやってみたい、しかし2度はいい、という感じかしら。 (白)

2005/韓国/カラー/ドルビーSRD/95分/DV/
配給:IMX
宣伝:ステップ・バイ・ステップ

1月20日(土)より 渋谷ライズXにてミラクルロードショー!

http://www.magicians.jp/


『モーツァルトとクジラ』

監督:ピーター・ネス
脚本:ロナルド・パス
原作者:ジェリー・ニューポート
キャスト:ジョシュ・ハートネット(ドナルド)、ラダ・ミッチェル(イザベル)、ゲイリー・コール(ウォーレス)、ジョン・キャロル・リンチ(グレゴリー)

数字を見ると他のことが頭に入らなくなるドナルドは、タクシーの運転手として働くものの、 失敗ばかりして長続きしない。 一見普通の若者だが、彼はアスペルガー症候群という障害を抱え、 平穏な生活を営むことが出来ずにいた。 しかし彼は、同じ障害を持つ仲間たちの為に集会を開いて、 少しでも環境に適応する力を身につけようと努力している。 そこに、美容師のイザベルがメンバーに加わった。思ったことを素直に語り、 奔放に振る舞う彼女にたちまち魅了され、恋に落ちてしまう。 だが、ともに求め合いながらも傷つけ合ってしまう二人には、 平穏な生活はやはり遠い夢なのだろうか。

この作品は、友人に薦められて観た『レインマン』がきっかけで、 自らの障害に気付いたジェリー・ニューポートの実話を元にしています。 彼を演じるのは『ラッキーナンバー7』『ブラック・ダリア』で、現在日本に於いて、 一番ホットなハリウッド若手スター、ジョシュ・ハートネット。 ドナルドの愛情を全身全霊で受け止めるイザベルには、『メリンダとメリンダ』、 『サイレントヒル』のラダ・ミッチェル。 この映画はアスペルガー症候群の人達のストーリーですが、 イザベルが汚いドナルドの部屋を、綺麗に整理整頓したのに、 烈火のごとく彼に拒否されたり、またドナルドがデート前に鏡に向かい、 表情や言葉の練習をする…なんてことは、二つとも昔々私にも経験があります。 恋愛中のカップル、少し冷めてしまったカップル、冷え切ってしまったカップル (そんなカップルは二人で来ないか?)に、是非とも観ていただきたい。 不思議な力をもった作品です。 そう言えば、モーツァルトもクジラも不思議な力がありますね。(美)

2004年/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/ドルビー/94分
配給:アートポート

http://www.mozart-kujira.jp/

2007年2月10日(土)より シネスイッチ銀座にてロードショー

〓「モーツァルトとクジラ」NHK出版より1月下旬発売。


『となり町戦争』

監督:渡辺謙作(『ラブドガン』)
原作: 三崎亜記
撮影:芝主高秀
音楽:Sin
美術:浅野誠
出演:江口洋介(北原修路)、原田知世(香西瑞希)、瑛太(智希)、菅田俊(町長)、余貴美子(室長:室園)、飯田孝男(室長補佐:前田)、岩松了(田尻主任)、小林麻子(本田)

「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日5月7日。終戦予定日は8月31日。」 ある日届いた、となり町との戦争のお知らせ。 偵察業務に就かされた“僕”は、その業務遂行のために、 対森見町戦争推進室の“香西さん”と夫婦生活を始める。 戦時にもかかわらず、町は平穏を崩さない。 かろうじて戦争状態と分かるのは、日々のニュースで発表される戦死者の数だけ。 淡々とした日常生活のなかに侵食した戦争。 “僕”は、知らず知らずのうちに、その戦争の中心にいたのだ・・・。

2006/日本/ビスタ/カラー/ドルビーSR/1時間54分
配給:角川ヘラルド映画/製作プロダクション:フィルムメイカーズ

http://kadokawa-herald.co.jp/official/tonarimachi/

2月10日(土)〜新宿ガーデンシネマほか全国ロードショー



2007年2月17日〜

『チョムスキーとメディア 〜マニュファクチャリング・コンセント〜』原題:Manufacturing Consent: Noam Chomsky and the Media

監督:マーク・アクバー/ピーター・ウィントニック

ノーム・チョムスキー: アメリカの言語学者、思想家、活動家。 マサチューセッツ工科大学教授。1928年フィラデルフィア近郊の生まれ。 両親は、ウクライナ、ベラルーシから移住してきたユダヤ人で共にヘブライ学校教師。 チョムスキーもヘブライ語の学校で学ぶが、そこで教えられたシオニスト運動は、 ユダヤとアラブの両民族の共生をうたうものだったという。 10歳の時、学校新聞にスペイン内戦での人民戦線敗北についての論説を初寄稿。

アメリカの外交政策やグローバル資本主義を堂々と批判することで知られるチョムスキー。 本作では、著名人によるチョムスキーへのインタヴューやテレビ討論の場面などを通じて チョムスキーの思想を描き出す。 相手がエキセントリックに扇動しても、いたって穏やかに受け答えるチョムスキーの姿から、 その発言は真実味を帯びて私たちに伝わってくる。

自由に発言できる民主主義社会に暮らしていると思っているアメリカや日本。 そこにある落とし穴・・・ 情報は溢れているけれど、何が真実かわからない。 聞かされている情報は、権力者にとって都合のいい切り口で語られているから要注意だと チョムスキーは語る。例えば、虐殺も身内がやった場合は隠蔽し、 敵がやれば大虐殺と報道する。 アメリカには一定の世界観を押しつけるシステムがあると言い切り、 そのため思想の幅が狭いという。

日本では1993年山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたが、 その後配給が決まらず、この度初めて劇場公開されることになった。 今になってこそ、チョムスキーが1990年代初頭に解き明かしたアメリカのメディアの仕組みが、 9・11事件やそれ以降のこの時代を生み出したのではないかと思い当たる。

1992年/カナダ/167分(95分+72分)/DVカム/カラー

★2007年2月17日(土)より ユーロスペースにてロードショー

http://www.cine.co.jp/media/



『エクステ』

監督・原案:園子温
脚本:園子温、安達正軌、真田真
撮影:柳田裕男
出演:栗山千明、大杉漣、佐藤めぐみ、つぐみ、町本絵里、佐藤未来、山本未來ほか

横浜港のコンテナの中から、膨大な量の髪の毛に埋もれた女性の遺体が発見された。臓器売買の被害者のようだが、不思議なことに死んでいるのに髪の毛が生えてきていた。遺体安置所の管理をしている山崎は究極の髪の毛フェチ。嬉々として彼女を自宅に持ち帰る。
黒髪の美しい優子は美容師を目指して勉強中。偶然、優子を見かけた山崎は彼女の髪に惚れ込み、彼女の勤める店に自作のエクステンション用毛髪を売り込みに行って彼女に接近する。店の美容師たちはそのエクステを気に入って使い始めるが、それをつけた女性たちが次々に奇怪な死を遂げるのだった。

ホラーなので、主に髪の毛を使ったおぞましい映像の数々があるのですが、色んなところに遊び心があって、観ていて楽しいです。栗山千秋の可憐さや、つぐみ演ずる姉の憎たらしさも良いのですが、何と言っても大杉漣!! 究極の髪の毛フェチで奇々怪々たる山崎役を、歴史に残る大怪演で見せてくれます。ホラーなのに大爆笑してしまいました。怖いのは苦手という方でも、これはきっと楽しめます。(梅)

ところどころ目をつぶりながらも、「ぼくちん」の大杉漣のおかげで最後まで観ました。大杉さんサイコー! あの大量の、湧いてきて攻撃してくる髪の毛がしばらく忘れられません。プレスシートの表紙に1本髪の毛がついていて、思わずはらってしまいました。印刷だったんですけど(笑)。ああ、思うツボ。(白)

製作プロダクション:セントラルアーツ
配給:東映

公式 HP >> http://www.exte-movie.jp

★2月17日(土)より、池袋サンシャインシネマほか全国ロードショー


『キャプテントキオ』

監督・脚本:渡辺一志
撮影:岡雅一
音楽:PANTA
美術:磯見俊裕、黒川利通
出演:ウエンツ瑛士(フルタ)、中尾明慶(ニッタ)、泉谷しげる(都知事)、いしだ壱成(アロハ)、渡辺一志(映画屋)、渋川清彦(モヒカン)、飯田一期(タムラ)、日村勇紀/バナナマン(署長)、設楽統/バナナマン(スター)、山岡由実(カンナ)ほか

20XX年、大地震により崩壊した東京は、日本政府に切り捨てられてしまった。 無法地帯となったこの町に、エネルギーのある若者達が集まり始めていた。 ライブがあるという噂を聞きつけ、地方から自転車で二人の高校生がやってくる。 ギターを担いだロック少年ニッタと、誘われてついてきた映画少年フルタ。 彼らは到着早々手錠をかけられ、トラックに放り込まれるというトンでもない目に逢ってしまう。

『19』(2001年)の監督・脚本・主演で注目をあびた渡辺一志監督・脚本作品。 荒廃した街に入り込んでしまった高校生二人が、いろいろな大人に出会ってもまれていきます。 親友だった二人の関係もしだいに微妙に変化。 監督が映画を撮り始めたのが15歳だったそうで、その年頃の子供たちに観てもらいたいと、 少年二人の設定にしたそうです。 本人も映画屋(ワンマンな監督)として出演。 お笑いのバナナマン、泉谷しげるに車だん吉、石立鉄夫のキャスティングでギャグ漫画を観ているようでした。 少年たちに受け、共感されそう。 初主演のウエンツ瑛士くん(1985年生まれ。あら、もう成人でした)は、 『ブレイブストーリー』の声優としてカンヌ映画祭に参加、 ファッション誌のスカウトがあったほどの美形ですが、 バラエティ番組の出演が多いですね。 GWには主演作『ゲゲゲの鬼太郎』も公開予定です。(白)

2007/日本/95分/ビスタ/ドルビーSR/
配給:プレグレッシブ ピクチャーズ/ディーライツ 宣伝:スキップ

http://www.captain-tokio.com/

2月17日(土)より渋谷シネマGAGA!シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー


『孔雀 —我が家の風景—』

監督:クー・チャンウェイ(『紅いコーリャン』『さらば、わが愛/覇王別姫』撮影)
脚本:リー・チャン
撮影:ヤン・スー
出演:チャン・チンチュー(『セブンソード』『花嫁大旋風』)、フェン・リー、ルゥ・ユウライ

文革が終わった1977年。中国のとある田舎町。 元は金持ちのお屋敷だったと思われる家のテラスで、いくつもの家族が食卓を囲んでいる。 カオ家の3人の子供たち。大きな図体の長男ウェイクオは知的障害を持っていて、 母親は彼を不憫に思って、正月に飴を分けるときにも、 長女ウェイホンや次男ウェイチャンに、兄に多く分けるように言う。 兄は下の二人にとって、ちょっぴりお荷物だ。
自由奔放なウェイホンは、ある日、空から降って下りてきた落下傘部隊の将校に恋をして、 落下傘部隊に志願するが、夢を果たせない。 自分で作った落下傘を自転車の後ろにつけて、町を走りまわるウェイホン。 一方、ウェイチャンも障害者の兄にうんざりして、学校をやめて家を出て行く…。

『紅いコーリャン』『さらば、わが愛/覇王別姫』『太陽の少年』 『オータム・イン・ニューヨーク』など、数々の作品の撮影を手がけたクー・チャンウェイの初監督作品。 地方都市の風情ある町並みや、家族ひとりひとりの描写が素晴らしい。

娘や息子に、いい仕事につかせようと、一所懸命要人に付け届けをする両親。 子を思う親の気持ちがせつない。待っていても開いてくれない孔雀の羽のように、思うようにはいかないそれぞれの人生。やるせないけれど、なんともあじわいのある作品でした。(咲)


★NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映
11月1日 10:30〜(監督ティーチイン予定) 中止
11月4日 20:30〜(上映前に監督舞台挨拶予定)

◆2007年2月17日(土)より Q−AXシネマ他 全国順次ロードショー

2006年/中国/136分/DOLBY SRD/ビスタサイズ

提供:レントラックジャパン、ナインテンタテインメント
配給:キネティック、アルゴ・ピクチャーズ

公式 HP >> http://www.eiga.com/official/kujaku/



2007年2月24日〜

『さくらん』

監督:蜷川実花
脚本:タナダユキ
原作:安野モヨコ「さくらん」
撮影:石坂拓郎
音楽:椎名林檎
美術:岩城南海子
出演:土屋アンナ(きよ葉・日暮)、椎名桔平(倉之助)、安藤政信(清次)、木村佳乃(高尾)、成宮寛貴、菅野美穂(粧ひ)、夏木マリ(女将)、石橋蓮司(楼主)、遠藤憲一、市川左団次ほか

吉原の遊郭・玉菊屋には今日も多くの男たちが集まってくる。 きよ葉は8歳でここに売られてきた。 気が強くて何度も足抜けをし、そのたびに折檻されても泣き声ひとつたてたことがない。 粧ひに「花魁になどなれぬ」と言われて、逆に奮起したきよ葉は、「手練手管」を学んでゆく。 粧ひは金持ちの旦那に身受けされ、羨望を一身に浴びながら吉原を出て行った。 粧ひにかんざしを贈られたきよ葉は、やがて1本立ちし「新造」から「花魁」へと登りつめてゆく。

主人公きよ葉・日暮には『下妻物語』の土屋アンナ、 先輩の花魁に菅野美穂、木村佳乃が肌もあらわな熱演。 女将に夏木マリ、楼主に石橋蓮司とベテラン勢。 きよ葉に入れあげるお客に成宮寛貴、椎名桔平。安藤政信はきよ葉を幼いころから見守る役。 フォトグラファー蜷川実花が、初の長編映画を監督しました。 独特のあふれんばかりの色彩が、画面をくまなく輝かせています。 舞台となる遊女の部屋、衣装、床の間の花(東信)まで今までにない色使いで、目を見張ります。 赤い色が際立つのはパワーの象徴なのかも。 喧嘩のシーンには「下妻のいちご」を思い出しました(大好き!笑)。 閉塞した遊郭の中で自分の意思を貫くきよ葉はすがすがしく、 子供のために泣くきよ葉にはお母さんになった土屋アンナさんがかぶりました。(白)

配給:アスミック・エース

http://www.sakuran-themovie.com/

2007年2月24日(土)〜シネクイント、新宿ジョイシネマ、池袋シネリーブルにてロードショー

★『さくらん』大ヒットで、シネクイントにて「花魁サービス実施中」
上映期間中着物で来館の3人以上の方は1000円で鑑賞できます!!



『素敵な夜、ボクにください』

監督:中原俊
脚本:黒沢久子・祢寝彩木
企画:小澤俊晴(プログレッシブ ピクチャーズ)
音楽:遠藤浩二
出演:吹石一恵(木村いずみ)、キム・スンウ(イ・ジンイル、カン・スヒョン)、占部房子(山本裕子)、関めぐみ(木村ひかり)、枝元萌(沢谷聡子)、飛坂光輝(パク・ファンソク)ほか

イ・ジンイルは韓国のカーリング選手。試合の大事な場面でチームメイトの助言を無視、強引な逆転を狙ったものの大外れ、チームは負けてしまった。主力メンバーから降格となったジンイルは、気分転換に日本に留学中の後輩ファンソクを訪ねる。
売れない女優のいずみは、来日中の韓流スター「カン・スヒョン」とめぐり合う。片言の日本語で甘い言葉をささやかれ、すっかりその気。スターへの足がかり!の下心も手伝って一夜を過ごすことになった。目覚めると彼はいなくなっていたが、残された切符はいずみの故郷の青森行き。てっきりこれは結婚の申込みと早合点、有頂天で帰郷すると、いずみがカン・スヒョンと思い込んでいたのは、瓜二つのイ・ジンイルだった。

韓国スターのキム・スンウが、二役で日本映画に初主演。スターのスヒョンとしての出番はほんの少しで、行きがかり上ど素人の女の子たちにコーチをするはめになる、カーリング選手のジンイル役が殆どです。思い込みが強くて行動的、少々わがままないずみ役に吹石一恵、いずみに引きずられてチームを組む3人の女性たち、真面目な裕子、気のいい聡子、クールな妹のひかり、それぞれいい味出しています。似たもの同士のジンイルといずみのすれ違いの恋模様と、カーリングのかけひきの面白さも盛り込んで、気軽に楽しめるラブコメディになっています。カーリングの映画には、実話を元にした『シムソンズ』があります。ルールなどについてはそっちが詳しいので、先に観ておくともっとよくわかりますよ。(白)

韓流にカーリングって、なんだかはやりものを無理にくっつけてない? なんて思いながら観に行ったのですが、これがなかなかどうして、楽しく可愛らしいラブコメディに仕上がっているのでした。お話の転がり方にあまり無理がなく、良い役者が揃って、アンサンブルが軽やか。楽しい気分になりたいときには、おすすめですよ。(梅)

配給:エスピーオー、プログレッシブ ピクチャーズ

公式 HP >> http://www.sutekinayoru.com/index.html

★ 1月20日(土)青森先行ロードショー!!
★ 2月24日(土)シネマート新宿、シネマート六本木ほかにて全国ロードショー


『叫 さけび』

監督・脚本:黒沢清
出演:役所広司、小西真奈美、葉月里緒奈、伊原剛志、オダギリジョー、加瀬亮ほか

刑事の吉岡は、先頃起きた女性殺害事件の犯人に自分の影を見て不安を募らせている。この世のものとは思えない赤い服を着た女の影も見るようになっていた。そんな彼に優しく接する恋人の春江。しかし二人の間に微妙な距離があるのは明らかだった。
吉岡の周りでは、似たような手口の殺人が次々に起こり始める。何故かその犯人たちを導かれるようにして見つける吉岡。犯人たちは、奇妙な幻影を見て恐れおののいていた。そして吉岡にも今やその女の姿は頻繁にはっきりと見えていた。しかし、それが誰なのかが分からない。

古典的な幽霊話なのですが、葉月里緒奈扮する赤いドレスの幽霊はかなりパワーアップしています。従来の幽霊は自分に犯した罪の償いをさせるべく、犯人への恨みをはらさんとしますが、彼女は自分を無視し続けた世の中へ恨みを拡大させ、甲高い叫び声がどんよりと曇った東京の空をつんざきます。それにしても葉月里緒奈の幽霊は似合いすぎます。(梅)

2006年/日本/カラー/35mm/ヴィスタサイズ/DTS/104分
製作:TBS、Entertainment FARM、エイベックス・エンタテインメント、オズ、日活
製作プロダクション:オズ
配給:ザナドゥー、エイベックス・エンタテインメント、ファントム・フィルム

公式 HP >> http://www.sakebi.jp

★2月24日(土)より、シネセゾン渋谷・新宿武蔵野館他にて全国ロードショー


『絶対の愛』原題:Time

脚本・監督・製作・編集:キム・ギドク
製作総指揮:鈴木径男
出演:ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン、キム・ソンミン、杉野希妃(ソ・ヨンファ)

セヒ(パク・チヨン)は、ジウ(ハ・ジョンウ)と付き合い始めて2年。 いつもの喫茶店で、恋人ジウがウェイトレス(杉野希妃)に目線を向けただけで嫉妬してしまうほど、自信をなくしている。 このままでは、彼に飽きられてしまう!  思いつめたセヒは、部屋を引っ越し、携帯電話も変えて、整形外科医(キム・ソンミン)のもとを訪れる。 手術の壮絶な映像を見せられ、このままでも十分綺麗なのにと言われても、 顔を変えなければと決意は固い。 そして半年。セヒがいなくなって寂しい思いをしていたジウは、 スェヒという女性と親しくなる。 が、いざという場になると、忽然と消えた恋人への思いが募り、一歩踏み出せない。 そして、実はスェヒがセヒだと気がついた時、ジウは思いもかけない行動に出る...。

キム・ギドク監督の13作目。『春夏秋冬そして春』が静だとすると、 『絶対の愛』は動。感情が激しくうごめき、人間の本性を見せ付けられる思いがした。 人はいったい何に惹かれて相手を愛するようになるのだろう。 入り口は看板である顔かもしれない。 そうして愛し合うようになっても、繰り返される日常に慣れてしまうと、 いつしか飽きてしまい、変化も求めたくなる。 小さな幸せがずっと続けばそれでいいという思いの人もいるだろう。 でも、人生に永遠はない。お互いの気持ちを同じレベルで持ち続けることの難しさ!  それにしても、恋焦がれる思いに縁遠くなった我! (咲)

2006年/韓国・日本/カラー/ドルビーSRD/アメリカンビスタ/1時間38分
提供・配給:ハピネット
宣伝:ムヴィオラ


★『絶対の愛』公開記念!
キム・ギドク レトロスペクティヴ 「スーパー・ギドク・マンダラ」
2月24日(土)〜3月16日(金)
ユーロスペースにて
連日レイトショー9:10PM〜、他モーニングショーあり
日本未公開作品を含む、長編第2作からの全作品を一挙上映!

◇キム・ギドク監督が参加する来日記念パーティー 日時:2/24(土)7:00PM-9:00PM
会場:Prologue(ユーロスペース1F)

公式HP>>  http://zettai-love.com/


『ボッスン・ナップ』boss'n up

監督・脚本:プーク・ブラウン
製作:アミア・ヤズディ/テッド・チャン/ディラン・ブラウン
撮影:マックス・ダ・ヤン・ワン
美術:カルロス・オソリオ
音楽:スヌープ・ドッグ
出演:スヌープ・ドッグ、リル・ジョン、トリーナ、サンディ・カーター、キャリン・ワード、ラリー・マッコイ、シャレー・アンダーソン他

スーパー店員のコーデ(スヌープ・ドッグ)は、この境遇から抜け出して大金を掴むことを夢見ていた。 特技は女性の扱い。 スーパーのレジで客にチップを貰うなんて彼だけだ。 そこへ伝説のピンプ(売春斡旋業)のオレンジ・ジュース(ホーソン・ジェームズ)が現れ、 「弟子にするから超一流の女を捜して来い」と持ちかける。 シャルドネ(シャレー・アンダーソン)に出逢ったコーデは、彼女こそ運命の女だと直感! 二人で裏の世界で成り上がっていく。

ラップ・スターのスヌープ・ドッグが自らのアルバム「ブルー・カーペット・トリートメント」 の曲をたっぷり使って作った、男の夢物語な作品。 ピンプって早く言えばヒモですかね〜。 たくさんのいい女を抱えて、客をとらせて上がりを受け取るという、 長良川の鵜飼いを思い浮かべてしまいました(笑)。 ホーソン・ジェームズの濃さと、 ヒロインに抜擢されたシャレー・アンダーソンのいい女ぶりが見もの。(白)

2005年/アメリカ/90分/ドルビーSR/ビスタサイズ
配給:ビー・ビー・ビー
http://www.bossn-up.com/

2月24日(土)よりシアターN渋谷、シネヌーヴォXにて公開



『ボビー』原題:BOBBY

監督・脚本:エミリオ・エステヴェス
撮影:マイケル・バレット
美術:パティ・ポデスタ
音楽:マーク・アイシャム
キャスト:アンソニー・ホプキンス(ジョン)/ハリー・ベラフォンテ(ネルソン)/ウィリアム・H・メイシー(ポール)/ヘザー・グラハム(アンジェラ)/シャロン・ストーン(ミリアム)/クリスチャン・スレーター(ティモンズ)/ローレンス・フィッシュバーン(副料理長)/イライジャ・ウッド(ウィリアム)&リンジー・ローハン(ダイアン)/マーティン・シーン(ジャック)&ヘレン・ハント(サマンサ)/エミリオ・エステヴェス(ティム)/デミ・ムーア(ヴァージニア)/アシュトン・カッチャー(売人)/フレディ・ロドリゲス(ホセ)/ジョシュア・ジャクソン(ジェイド)/ニック・キャノン(ドウェイン側近)/ジョイ・ブライアント(パトリシア)/メアリー・エリザベス・ウィンステッド(スーザン)/シア・ラブーフ(ジミー)/ブライアン・ジェラーティ/(クーパー)/スヴェトラーナ・メトキナ(記者)/ディヴィッド・クラムホルツ(フィル)/ジェイコブ・ヴァルガス(ミゲル)

1968年6月5日のLAアンバサダーホテル。 ロバート・F・ケネディが大統領予備選挙に立候補して、 カリフォルニア州の選挙結果が出るこの日、ホテルにいた22人の男女の群像劇。 かつての老ホテルマン、ジョンとネルソンは引退した後も毎日やってきて、 チェスを楽しみ昔話をしている。 厨房ではケネディ上院議員を迎えるため、ダブルシフトが組まれた。 野球観戦に行くつもりだったホセは夜勤になってしまい、憤懣やるかたない。 不法労働者たちだから、と外出を禁じた厨房の責任者ティモンズを、 ポール支配人は「クビだ!」どなりつける。 支配人の妻ミリアムが働くホテルの美容室に、 今晩結婚するというティーンエイジャーのダイアンが訪れる。 落ち目で酒びたりになった歌手ヴァージニアは、ボビーの記者会見の前に歌う予定だが、 今日も夫ティムと口論している。 ボビーの若い側近は、選挙ボランティアの学生たちを送り出し、会場の準備におおわらわだ。 誰もが様々な想いを抱えるなか、ボビーはひとつの「希望の星」だった。

"ボビー"と呼ばれて人々に親しまれ、 アメリカ改革の期待を受けていたロバート・F・ケネディは、 このホテルのボールルームで勝利演説をした後、 群衆が多いため厨房を抜けようとしてある男の銃弾に倒れました。 その史実を軸に、血の通った人々のストーリーを結びつけ、 まさに『グランドホテル』形式の映画をエミリオ・エステヴェスが作り上げました。 映画の中で元ホテルマンを演じるアンソニー・ホプキンスとハリー・ベラフォンテが、 『グランドホテル』のセリフの話をするシーンがあるので、 思わずニヤッとしてしまいました。 監督のエステヴェス本人も、父親のマーティン・シーンも群像の1人として出演しています。
映画にはボビーの実際のフィルムが挿入され、スピーチがかぶさります。 これが今の政治家達にきっちり覚えてもらい、実践してほしい内容です。 この人が大統領だったらアメリカは変わっていただろうと、今更ながら惜しくてなりません。 悲劇を目の当たりにした群衆とともに泣けました。 キャストひとりひとりの熱演と音楽にも拍手。(白)

2006/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタル/120分/
提供・配給:ムービーアイ
オリジナル・サウンドトラック:ユニバーサル インターナショナル
http://www.bobby-movie.net/

2月24日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー


2007年2月2日〜4日

国際交流基金主催 英語字幕付き日本映画上映会第7弾
「進化する日本映画〜Evolving Japanese Cinema」

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の主催で 日本映画の英語字幕付き上映会が開催されます。 第7弾の今回の上映会では、現代の最前線を担う監督たちの初期の秀作6作品が上映されます。 日本在住の外国の方々にとって日本映画の豊かさに触れる絶好のチャンスです。 お知り合いの外国の方々に是非ご紹介ください。

期間:2007年2/2(金)〜2/4(日)
会場:赤坂・OAGホール
(東京都港区赤坂7−5−56 ドイツ文化会館内)
地下鉄銀座線・半蔵門線・都営大江戸線「青山一丁目」駅A4出口より徒歩5分
主催:国際交流基金
企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
協力:角川ヘラルド、シネカノン、松竹、日活

料金:当日600円(当日券のみ) 
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)


<タイムテーブル>

【2/2(金)】
18:30 その男、凶暴につき(1989/103分/監督:北野武)
Violent Cop / 1989 / 103 min. / KITANO Takeshi

【2/3(土)】
13:30 MONDAY(2000/100分/監督:SABU)
Monday / 2000 / 100 min. / SABU

16:00 ファンシィダンス(1989/101分/監督:周防正行)
Fancy Dance / 1989 / 101 min. / SUO Masayuki

18:30 月はどっちに出ている(1993/109分/監督:崔洋一)
All Under the Moon / 1993 / 109 min. / SAI Yoichi

【2/4(日)】
13:30 害虫 (92分)(2001/92分/監督:塩田明彦)
Harmful Insect / 2001 / 92 min. / SHIOTA Akihiko

15:15 講演 塩田明彦 監督
Lecture by SHIOTA Akihiko

17:30 カリスマ(2001/92分/監督:黒沢清)
Charisma / 2000 / 103 min. / KUROSAWA Kiyoshi

<お問合せ先>
会期前のお問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
          Tel: 03-3560-6394(11:00〜17:30 平日のみ)
会期中のお問合せ: Tel: 080-5150-5053(開催期間中のみ)

サイト>>
(日)  http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-7.html
(English)  http://www.jpf.go.jp/e/culture/topics/movie/fsp7.html



2007年3月9日〜

「EARTH VISION 第15回 地球環境映像祭」

環境をテーマとしたさまざまな映像を通して地球環境について考えることを目的に、 日本を含むアジア、オセアニア・ポリネシアに広く作品を公募し、 コンペティション形式の上映会を行っています。 地球環境をテーマとした映像であれば、作品のジャンル、プロ・アマチュアを問わない点が、 この国際映像祭の大きな特長です。 事務局審査、事前審査で最終的に選ばれた入賞作品を上映します。 上映後には、監督からのあいさつや観客との質疑応答があります。

  • 2007年3月9日(金)〜11日(日)
  • 四谷区民ホール
    新宿区内藤町87番地 四谷区民センター9階
    丸の内線「新宿御苑前」大木戸門出口

  • 協力費1日1000円 中学生以下無料・事前予約不要
    3日間通し協力費(カタログ付き)一般2000円 学生1500円

      http://www.earth-vision.jp/top-j.htm


上映作品
●3月9日(金)
14:00〜『気候大異変ー環境の崩壊が止まらない』(日本/監督:藤川 正浩/52分)
15:15〜『ビッグ・ブルー』(オーストラリア/監督:ジェニファー・クレバーズ/50分)
16:30〜『死の季節よ、さらば』(フィリピン/監督:ボイェッテ・リンバン/33分)

●3月10日(土)
10:00〜子どものための環境映像プログラム
 『雪渡り』 (日本/監督:こぐま あつこ/14分)
 『らっぱ』 (インド/監督:P. シェーシャードリー/108分)
 
13:00〜『古民家のつぶやき—建築家ムラさんの家づくり』(日本/監督:宮川 直子/25分)
13:40〜『石おじさんの蓮池』(台湾/監督:ワン・チンリン、チュ・シャオチェン/24分)
14:45〜『危険なオレンジ』(タイ/監督:ティーナー・アムリト・ギル/28分)
15:30〜『生命の干潟』(韓国/監督:イ・ミンス/50分)
16:55〜『断罪の核心—元裁判長が語る水俣病事件』(日本/監督:本田 裕茂/48分)
18:10〜『プージェー』(日本/監督:山田 和也/110分)

●3月11日(日)
10:00〜子どものための環境映像プログラム
 『ABU未来への航海-アジアの10代 熱帯雨林の旅』(日本/監督:渡辺 利明、佐藤 知樹/44分)
 『おとなりさんとわたし』(ベルギー/監督:ルイーズマリー・コロン/8分)
 『グランド・ゼロー聖なる大地』(アメリカ/監督:カレン・アクア/9分)
 『地球は虫の惑星だー昆虫写真家・海野和男の映像世界II』(日本/監督:春原 晴久/47分)
13:00〜『イノセンス』(タイ/監督:アーリーヤー・チュムサーイー、ニサ・コンシリー/100分)
15:15〜 中国環境ドキュメンタリー映像祭 特別プログラム
 『ホワイト・プラネット』(フランス・カナダ /監督:ティエリー・ラゴベール、ティエリー・ピアンタニダ/83分)
18:00〜表彰式

 アース・ビジョン大賞作品上映/交流会


「第3回国際交流基金 アラブ映画祭2007」

2005年に始まったアラブ映画祭も、今年で3回目を迎えました。 今年は、「アラブ新作パノラマ」で5本、 「エジプト映画回顧展」で12本の計17本の映画が上映される他、 ゲストを迎えてのシンポジウムが2回開かれます。
「アラブ新作パノラマ」では、これまで恐らくほとんど日本で紹介されたことのない、 サウジアラビアとイエメンの映画が上映されます。 一方、「エジプト映画回顧展」では、 アラブ諸国の中でもダントツの映画大国エジプトのバラエティに富んだ映画の数々が新旧織り交ぜて上映されます。

会期:2007年3月9日(金)〜18日(日)
会場:赤坂・OAGホール
東京都港区赤坂7−5−56 ドイツ文化会館内
地下鉄銀座線・半蔵門線・都営大江戸線「青山一丁目」駅A4出口より徒歩5分

◆アラブ新作映画パノラマ
『インターネットの扉』Bab el Web 2005年/アルジェリア
『バーブ・アジーズ』Bab‘Aziz 2004年/チュニジア=ドイツ=フランス=イギリス
『沈黙の影』Shadow of Silence 2005年/サウジアラビア
『古きサナアの新しき日』 A New Day in Old Sana'a 2005年/イエメン
『長い旅』Le Grand Voyage (2004年/モロッコ=フランス)

『長い旅』は、「アラブ映画祭2006」人気No.1作品のアンコール上映。 シネマジャーナル67号で紹介しています。 南フランスに住むモロッコ人の老人がいやがる息子に車を運転させて メッカ巡礼に行くロードムービー。 聖地メッカでの撮影も敢行。 肌の色も言葉も違う人々と接する内に、移民二世の息子の気持ちに変化が起きていきます。 この息子役を演じたニコラ・カザールは、 3月に公開されるフランス映画『サンジャックへの道』でもアラブ系移民二世を演じています。

◆エジプト映画回顧展
『喜劇万事快調』 Everything is Fine 1937年
『歌姫ウンム・クルスームのファトマ』 Fatma 1947年
『渓谷の争い』 Feud in the Valley 1954年
『カイロ中央駅』 Cairo Station 1958年
『郵便局長』 The Postmaster 1966年
『ナイル河のから騒ぎ』 Adrift on the Nile 1971年
『ズーズーにご用心』 Watch out for Zuzu 1971年
『ヒンドとカミリアの夢』 Dreams of Hind and Kamilia 1989年
『テロリズムとケバブ』 Terrorism & Kebab 1992年
『恐怖の大地』 Land of Fear 1999年
『閉ざされたドア』 The Closed Door 1999年
『ヤコービエン・ビルディング』The Yacoubian Building 2006年

主催:国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
後援:在日本アラブ・エジプト共和国大使館
協力:エジプト文化省、エジプト国立フィルムセンター、アラブ・アジア文化交流協会(アーダード)
運営協力:ぴあ株式会社

  http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2007.html

スタッフ日記にアラブ映画祭のレポートを掲載しましたのでご覧下さい。



2007年3月15日〜20日

「フランス映画祭2007」

今年はフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴを来日代表団団長に迎え、東京・横浜・大阪で開催されます。 上映予定の18作品は全てジャパン・プレミア。詳細は公式HPに順次アップされますので、ぜひチェックしてください。

【東京・横浜】
六本木 3/15(木)〜18(日)TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
お台場 3/17(土)〜18(日)シネマメディアージュ
横浜  3月予定 TOHOシネマズ ららぽーと横浜

【大阪】
難波 3/18(日)〜20(火) TOHOシネマズ なんば
高槻 3/19(月)〜20(火) TOHOシネマズ 高槻 

http://www.unifrance.jp/festival/index_pc.php

●カトリーヌ・ドヌーヴ出演 上映作品
『輝ける女たち(仮題)』 (Le Heros de la Famille) 2006年仏公開
 監督:ティエリー・クリファ
 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール
 配給:ムービーアイ
 2007年GW公開 Bunkamura ル・シネマ

『ストーン・カウンシル』 (Le Concile de pierre) 2006年仏公開
 監督:ギョーム・ニクルー
 出演:モニカ・ベルッチ、カトリーヌ・ドヌーヴ
 配給:アルバトロス・フィルム
 2007年公開予定

『輝ける女たち(仮題)』より
© 2006 SBS FILMS EDELWEISS SRL FRANCE 2 CINEMA


2007年4月28日〜

ニューヨークで暮らしています 彼女たちがここにいる理由』

○上映会のお知らせ (入場無料)

日時 2007年4月28日(土)PM2:00〜3:30
場所 ヴィータホール
   京王線聖跡桜ヶ丘駅前ヴィータコミューネ8階 042-374-9711
問合せ 090-4748-3050 杉浦まで

ご家族、お友達を誘っておいでください、お待ちしています!


○すでに終了した上映会

○2006年10月13日(金)東京ウィメンズプラザホール
 「映画!映画!映画!シネマジャーナル創刊20年大会」ワークショップで上映
  場所はこちらの地図を参照下さい。
  18:00 開場 18:30 開映 19:45 パネルディスカッション
  問合せ 03-5991-3486 テス企画シネマジャーナル

○2007年1月28日(日)池田市民文化会館アゼリア小ホール 
 後援(財)いけだ市民文化振興財団
 阪急宝塚線石橋駅西口から徒歩6分
 18:00開場 18:30開映 19:45Q&A監督の話「作山?o治・典子ご夫妻のNYアトリエを訪ねて」
 チケット発売11/20から 問合せ072-761-8811池田市民文化会館

※共通参加費500円です。チケット制でない場合は当日受付清算です。



「イタリア映画祭2007」
・4月28日(土)〜5月5日(土)
・有楽町朝日ホール (マリオン11F)

《日本未公開の最新イタリア映画12本を一挙上映! 》
◆『犯罪小説』
(2005年/146分) 監督:ミケーレ・プラチド
キム・ロッシ・スチュアート,ステファノ・アッコルシ,ジャスミン・トリンカ
4月30日(月・休)18:00
5月4日(金・祝)13:00

◆『私たちの家で』
(2006年/101分) 監督:フランチェスカ・コメンチーニ
ヴァレリア・ゴリーノ
4月30日(月・休)10:20
5月2日(水)18:40

◆『家族の友人』
(2006年/110分) 監督:パオロ・ソレンティーノ
4月29日(日・祝)13:10
5月2日(水)10:20

◆『気ままに生きて』
(2006年/108分) 監督:キム・ロッシ・スチュアート
バルボラ・ボブローヴァ
4月28日(土)14:50
5月3日(木・祝)13:00

◆『カイマーノ』
(2006年/112分) 監督:ナンニ・モレッティ
ジャスミン・トリンカ,シルヴィオ・オルランド
4月29日(日・祝)16:00
5月5日(土・祝)11:00

◆『わが人生最良の敵』
(2006年/115分) 監督:カルロ・ヴェルドーネ
カルロ・ヴェルドーネ
4月30日(月・休)13:10
5月4日(金・祝)16:10

◆『N‐私とナポレオン』
(2006年/110分) 監督:パオロ・ヴィルツィ
モニカ・ベルッチ,ダニエル・オートゥィユ
4月29日(日・祝)10:20
5月3日(木・祝)15:50

◆『新世界』
(2006年/120分) 監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
シャルロット・ゲンズブール
4月28日(土)17:30
5月2日(水)13:00

◆『ヴィットリオ広場のオーケストラ』
(2006年/90分) 監督:アゴスティーノ・フェッレンテ
5月1日(火)10:20
5月4日(金・祝)19:00

◆『結婚演出家』
(2006年/100分) 監督:マルコ・ベロッキオ
セルジョ・カステッリット,サミ・フレー
4月28日(土)12:00
5月2日(水)15:50

◆『星なき夜に』
(2006年/104分) 監督:ジャンニ・アメリオ
セルジョ・カステッリット
5月1日(火)13:05
5月4日(金・祝)10:20

◆『プリモ・レーヴィの道』
(2006年/92分) 監督:ダヴィデ・フェラーリオ
ドキュメンタリー
5月1日(火)15:50
5月3日(木・祝)10:20

*プレミア上映
◆『空のように赤く(仮題)』
(2004年/95分) 監督:クリスティアーノ・ボルトーネ
4月29日(日・祝)18:50

◆『それでも生きる子供たちへ』
(2005年/130分) オムニバス作品
5月1日(火)18:35

◆『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』
(2006年/102分) 監督:マリオ・カナーレ、アンナローザ・モッリ
ドキュメンタリー
5月3日(木・祝)18:40

*サイレント映画
◆『カビリア』 [染色(一部彩色)版]
(1914年/3308メートル、16コマ/分=181分)
5月5日(土・祝)15:00

*短編作品

  1. 『癒しがたき愛』 (2005年/16分) 監督:ジョヴァンニ・コヴィニ
    Un inguaribile amore (Giovanni Covini)
  2. 『ザカリア 』(2005年/15分) 監督:ジャンルーカ&マッシミリアーノ・デ・セリオ
    Zakaria (Gianluca & Massimiliano De Serio)
  3. 『見えますか?』 (2006年/13分22秒) 監督:アレッサンドロ・デ・クリストファロ
    Do you see me? (Alessandro De Cristofaro)
  4. 『ニュース』 (2006年/4分) 監督:ウルスラ・フェラーラ
    News (Ursula Ferrara)
  5. 『私です』 (2006年/21分) 監督:セルジョ・カステッリット
    Sono io (Sergio Castellitto)

詳細は公式HPをご覧ください
http://www.asahi.com/event/it07/index.html


「韓国アートフィルム・ショーケース」

韓国映画振興委員会(KOFIC) の全面協力で、韓国のアート系作品4本を特集上映します。
初日は、一挙4作品を上映予定。

『キムチを売る女』(原題:芒種)
脚本・監督:チャン・リュル
撮影:ユ・ヨンホン
出演:チュ・ヒョンヒ、キム・パク、ジュ・グァンヒョン、ワン・トンフィ

朝鮮族の女スンヒは、夫は殺人事件を起こして服役中。故郷の延平から遠く離れたこの町の鉄道脇の粗末な家に、一人息子のチャンホと二人移り住み、露天でキムチを売って生活している。
同じ朝鮮族であることから親しくなった男キム。彼女のキムチをよく買ってくれ、露天商の許可を取るのを世話してくれるワン警官。チャンホがガラスを割ってしまい、お詫びに届けたキムチを気に入ってくれた工場の食堂長。
初めは親切だが、一皮むけば暗い本性が表れる。そんな男たちに対して、辛うじて毅然として立っていたスンヒ。しかし、ある出来事が彼女の心を打ち砕いてしまう。

チャン・リュル監督は、朝鮮族(韓国系中国人)で、元々現代中国文学を代表する作家として有名でした。特に映画制作の勉強をしたわけではないのですが、初作品の短編『11歳』が、いきなりベネチア国際映画祭に招聘されています。この『キムチを売る女』は長編第2作になります。全く無駄のない、シンプルで美しい映像の中に、深い哀しみと怒りを撮る人です。賈樟柯やキム・ギドクに続く、映像作家として大いに期待されています。

2005年カンヌ国際映画祭批評家週間ACID賞
2005年ぺサロ映画祭ニューシネマ部門グランプリ
2006年ブゾル映画祭グランプリ
2006年シネマノボ映画祭グランプリ
2006年タオスアジアン映画祭グランプリ&観客賞 他多数受賞

2005年/韓国・中国/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/109分

★第1弾 2007年1月27日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

『不機嫌な男たち』
監督・脚本:ミン・ビョングック
出演:チョン・チャン、キム・ユソク

2004年東京国際映画祭最優秀アジア映画賞
★第2弾 2月17日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

『許されざるもの』
監督:ユン・ジョンビン
出演:ハ・ジョンウ、ソ・ジャンウォン、ユン・ジョンビン

テジョンは約2年の兵役を、もうすぐ模範的に終えようとしている。ある日、彼の班に中学の同級生だったスンヨンが配属されてくる。スンヨンは軍隊特有の不条理さになかなか馴染めない。テジョンはそんな彼を何かとかばってやるのだが、彼は妥協できずに周囲との摩擦が絶えず、テジョンは苛立ちを覚える。
しばらくして、新兵ジフンが配属されてきた。スンヨンはジフンに対して良い先輩でいようとするのだが、少し鈍いジフンはスンヨンの気も知らず勝手な行動を取り始める。
除隊して普通の社会生活に戻っていたテジョンの元に、休暇のスンヨンが訪ねてくる。若干うっとうしさを感じながら、どうしても会って話したいことがあるという彼に会いに行くのだが・・・

無名の大学生が卒業作品として制作を始めた本作が、釜山国際映画祭で最多4冠受賞というサプライズを起こしたのは2005年のことでした。韓国の成人男性のほとんどが経験する兵役中の軍隊生活の実情を、鋭く切り取って映しだし、韓国の観客の大きな共感を得ました。主演のハ・ジョンウは大いに注目され、キム・ギドク監督の最新作『絶対の愛』の主演に抜擢されました。
わたしは昨年アジア海洋映画祭イン幕張で上映された台湾の短編映画『海岸巡視兵(原題:海巡尖兵)』(林書宇監督・2005年)を思い出しました。台湾にも兵役があり、主人公たちは階級の違う若い3人の兵士です。そこで描かれていたのはこの作品と同様に、先輩が後輩に不条理ないじめを行い、人としての道理を通そうとするのが非常に困難な現実でした。どこの国であっても、軍隊という組織に属することがどういう事なのか、それが避けがたい義務になっているのがどういう事なのかを考えさせてくれます。(梅)

2005年/韓国/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/121分
2005年釜山国際映画祭国際批評家連盟賞・ニューカレンツ特別言及賞・NETPAC賞・観客賞 (最多4冠受賞)
★第3弾 3月10日(土)〜3月30日(金)、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

『映画館の恋』
監督:ホン・サンス
出演:キム・サンギョン、オム・ジウォン、イ・ギウ

<第1部>
大学入試を終えたばかりの青年が、兄から小遣いをもらって街に出た。偶然通りかかった眼鏡屋で、初恋の女性に再会し、彼女の仕事が終わったら食事をする約束をする。二人でしたたか飲んだ後、夜の街を歩き出すが・・・
<第2部>
第1部の物語の映画を観て出てきた男。彼は映画の監督の後輩で、この物語が自分の事のように思えて妙な気持ちでいた。その時、映画のヒロインを演じていた女優が同じ館内から出てきたことに気がつく。思い切って声をかけると、親切に答えてくれた彼女に、彼はのめり込んでいく。

事前に一切情報を入れずに観ていたので、後半に入って急に話が切り替わって、先ほどまでのが劇中劇だったと気付くまでに、しばらくかかってしまいました(苦笑)。微妙な居心地の悪さを感じさせる人間関係を生々しく、でもさらっと描いていて、いかにもホン・サンス監督らし い作品だなぁと感じます。第2部の主人公の男を、『殺人の追憶』のキム・サンギョンが、ヒロインを『美しき野獣』のオム・ジウォン、 第1部の主人公の男を、『ラブストーリー』のイ・ギウが演じています。(梅)

2005年/韓国/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/89分/原題:劇場前
★第4弾 3月31日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー

配給:ドンスアートセンター
配給支援:韓国映画振興委員会 KOFIC
配給協力:ダゲレオ出版+マジックアワー
宣伝:マジックアワー

公式 HP >> http://www.kaf-s.com/



「日本クラシック、海外発信中!」

-- The Japan Foundation Film Series Part 8 --
  Rediscovery of Japanese Cinema
  英語字幕付き日本映画上映会

●期間:2007年5/25(金)〜5/27(日)
●会場:赤坂区民センターホール
    東京都港区赤坂4-18-13 赤坂コミュニティーぷらざ内
    地下鉄銀座線・丸ノ内線「赤坂見附」駅A出口より徒歩8分

●主催:国際交流基金
●後援:港区
●企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●協力:角川映画、国際放映、松竹、東宝

● 料金:当日600円(当日券のみ)
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)

<お問合せ先>
・ 会期前のお問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
      Tel: 03-3560-6394(11:00〜17:30 平日のみ)
・ 会期中のお問合せ: Tel: 080-6953-3270(開催期間中のみ)

<タイムテーブル>(6作品上映)   *入替制(開場は15分前)
■5/25(金)
19:00 「安城家の舞踏会」(1947年、89分、吉村公三郎監督)
 ※16mmプリントでの上映
■5/26(土)
13:00 「二十四の瞳」(1954年、155分、木下恵介監督)
16:30 「煙突の見える場所」(1953年、108分、五所平之助監督)
19:00 「近松物語」(1954年、102分、溝口健二監督)
■5/27(日)
13:00 「しとやかな獣」(1962年、96分、川島雄三監督)
14:45 講演:平野共余子氏<英語逐語訳つき>
17:00 「女ばかりの夜」(1961年、96分、田中絹代監督)

公式 HP >> http://www.jpf.go.jp/



「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2007(第4回)」

期間:7月14日(土)〜22日(日)
場所:埼玉県川口市「SKIPシティ」彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール・多目的ホール他
アクセス:会期中、JR川口駅東口キャスティ前臨時バス停より、SKIPシティまで直行の無料シャトルバスが運行されます。(所要:約12分)
   → http://www.skipcity-dcf.jp/access/

オープニングを飾るのは、昨夏、SKIPシティ内にオープンセットを建設し、 昭和33年の広島のバラックの町並みを再現したことでも話題になった『夕凪の街 桜の国』。 メインは、国内外のデジタルで撮影・制作されたデジタルシネマ作品の長編・短 編コンペティション。
長編部門(国際コンペティション)には、南アフリカ、トルコ・フランス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イスラエル、ベルギー、スペイン、デンマーク、ドイツ、イタリア、フィリピン、中国、日本から12作品がノミネートされています。 審査委員長は香港の女性監督メイベル・チャン。 また、短編部門(国内コンペティション)審査委員長は、俳優の高嶋政伸。 そのほか、招待作品、特集プログラム、D-コンテンツマーケット、 シンポジウムや市民イベントなど様々なプログラムが開催されます。
上映は、4Kデジタルシネマプロジェクターという最高の環境。 また、各作品の上映後には、各国から訪れた作品ゲストとの交流の場も用意されています。 詳細は公式HPでご確認ください。 また、HPでは、全作品の予告編も観ることができます。

公式HP>> http://www.skipcity-dcf.jp/index.html



2007年3月3日〜

『パフューム −ある人殺しの物語−』 原題:Perfume:The story of a murderer

監督・脚本:トム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』)
原作:パトリック・ジュースキント「香水」(文春文庫刊)
サントラ:サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(東芝EMI)
出演:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン(『ハリー・ポッター』シリーズ)、レイチェル・ハード=ウッド(『ピーターパン』)

18世紀、パリの魚市場。 産気づいた魚屋の女が魚の腸が散乱する中で赤ん坊を産み落とし放置する。 捕まえられ死刑になる母親。 残された子供は、ジャン=バティスト・グルヌイユと名付けられ孤児院で育つ。 親に見捨てられた彼に神が与えたのは、一切の体臭を持たない特異体質とあらゆるものを嗅ぎ分ける驚異的な臭覚。 大きくなり、なめし皮工場で働きはじめた彼は、町ですれ違った美女の体臭に惹きつけられる。 ある時、皮の納品先の香水屋で、今は落ち目の天才的香水調合師バルディーニ(ダスティン・ホフマン)に出会う。 美女の香りを抽出したい一心で、弟子入りするグルヌイユ。 やがて、ここでは、“生き物”の匂いを取り出す技術を学べないと悟った彼は、 より高度な技術を学びに香水職人の町グラースに旅立つ。 そしてグラースの町で続出する美女殺人事件。 彼の目指す香りは、世界に一つしかない天国の香り・・・。

映像で“におい”を伝えるのは難しいけれど、冒頭の魚市場の悪臭だけはしっかり伝わってきました。 数百名のエキストラを集めてのラストは圧巻でしたが、残念ながら私には天国の香りは薫ってきませんでした。 グルヌイユを演じたベン・ウィショーの、不可思議な存在感も凄かったけれど、 なんといってもダスティン・ホフマンの落ちぶれた香水調合師は、あっぱれ!(咲)

2006/ドイツ映画/147分/シネスコ/DTS、ドルビーデジタル/カラー
提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by:ヒューマックスシネマ

★2007年3月3日(土)より、サロンパスルーブル丸の内他全国松竹・東急系にてロードショー 公式HP>> http://perfume.gyao.jp/


『龍が如く 劇場版』

監督:三池崇史
脚本:十川誠志
撮影:山本英雄(J.S.C)
音楽:遠藤浩二
美術:稲垣尚夫
エンディング曲&挿入歌:クレイジーケンバンド
出演:北村一輝(桐生一馬)、岸谷五朗(真島吾朗)、塩谷瞬(悟)、サエコ(唯)、夏緒(遥)、加瀬邦彦(一輝)、高岡早紀(由実)、哀川翔(野口刑事)、コン・ユ(朴)、真木蔵人(錦山)、遠藤憲一、田口トモロヲ、荒川良々ほか

神室町の銀行に2人組の強盗が押し入った。しかしなぜか金庫はからっぽ。 やけになった強盗が空調機を壊してしまい、暑さにきれそうになったころ、 刑期を終えて出所した桐生一馬は遥(はるか)という少女と出逢った。 母を捜しているという遥を連れて神室町の馴染みの店を訪れる桐生だったが、 宿敵真島吾朗一派が彼を追っていた。 一方若いカップルの悟と唯は、手っ取り早く金を作ろうと強盗に精を出していた。 熱帯夜の町で巻き起こる事件が、やがて一つに収束していく。

PS(プレイステーション)2で大ヒットした同名ゲームの映画作品。 ちらしはゲーム版デザインのシルエットの中に、出演者の顔写真が入っています。 桐生一馬と真島の戦いをメインに、母親を探す子供、強盗に謎の韓国人、 ホストに武器屋と登場人物満載。 ゲームを知らない人には人間関係がいまいち判りにくいかも。 一馬と由実、錦山は同じ施設で育った親友。 10年前錦山の罪をかぶって刑務所に入った一馬だったが、 出てみると大きく変わっていたのは町ばかりではなかった。 緊迫感&スピード感溢れるアクションに、笑いもまぶして楽しませてくれます。 三池監督はこの作品世界をつかむために、さっそくゲームを買い求めてクリアしたとか。 敵を倒す爽快感はゲームのまま、桐生強し!真島のキレっぷり、テンションの高さに唖然呆然。 しかし「岸谷さん、似合う!」と芸の幅に感心。 細かい突込みはなしで、いや、突込みもまた良し。 劇場の画面でこのゲーム感覚エンタテイメント作品をお楽しみください。(白)

原作のゲーム感覚を踏襲した、突き抜けたありえなさ加減が楽しいです。北村一輝さんと真木蔵人さんの対決は、まさにボスキャラ登場のラスト・ラウンド。お二人とも凄い身体をしていらっしゃる。CGじゃないですよね?(梅)

2006/日本/カラー/120分/
配給:東映  製作:SEGA
http://www.ryu-movie.com/

3月3日(土)より全国ロードショー!


©2007「龍が如く」フィルムパートナーズ


『ダウト』Slow Burn

監督・脚本:ウェイン・ビーチ
撮影:ウォリィ・フィスター
音楽:ジェフ・ローナ
出演:レイ・リオッタ(フォード・コール検事)、LLクールJ(ルーサー・ピンクス)、ジョリーン・ブレイロック(ノラ・ティマー)、 メキー・ファイファー(アイザック)、キウェテル・イジョフォー(トリッピン)、テイ・ディグス(ジェフリー・サイクス)、ブルース・マッギル(局長)、ガイ・トーリー、 ジョー・グリファシ、フィッシャー・スティーヴンス

フォード・コールは元警官の検事。 ジャーナリストのトリッピンの密着取材を受けていた。 大きなガス漏れ事故がおきて車も渋滞中。 そんな夜に恋人の検事補、ノラ・ティマーから「レイプした男を射殺してしまった」 と電話が入る。 ノラは正当防衛を主張し、フォードも力になってやりたいと思うが確固たる証拠がない。 そこへ、現場に居合わせたとルーサー・ピンクスという男が現れ、計画された殺人だと訴える。 ノラが嘘を言っているのか? ルーサーは何者なのか?

オープニングタイトルの背景に設計図があり、次々と数字や線が書き込まれて行きます。 この映画には都市開発やそれにからむ利権の話が出てくるのですが、それは後のこと。 次々と事件が起こり、謎が積み重ねられ、真実を言っているのは誰なのか、 フォード検事と一緒に観客は困惑させられます。 ウェイン・ビーチ監督はこれまで脚本家として活躍、 この作品では自ら監督もしてひとひねりもふたひねりもある作品を完成させました。 ジョリーン・ブレイロックは白人ですが、ミステリアスなヒロインの黒人ノラを演じています。(白)

2005/アメリカ/35mm/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル/93分
配給:アートポート
宣伝:アンカープロモーション
3月3日(土)よりK's cinemaほかにて全国順次ロードショー



『蒼き狼 地果て海尽きるまで』

製作総指揮:角川春樹
監督:澤井信一郎
脚本:中島丈博、丸山昇一
原作:森村誠一「地果て海尽きるまで 小説チンギス汗(上下)」(ハルキ文庫刊)
出演:反町隆史、菊川怜、若村麻由美、袴田吉彦、松山ケンイチ、松方弘樹 ほか

800年前に、史上最大のモンゴル帝国を築いたチンギス・ハーンの半生を描いた歴史エンタテインメント。
部族間の闘争が繰り返される12世紀末のモンゴル。部族長の息子として生まれたテムジンだったが、14歳の時に敵方に父を殺され、生活が一変する。母が他部族から略奪された身で、第一子の彼は出生を疑われ、父の部下たちに離反されてしまったのだ。辛酸をなめながらも、一族を束ね、次第に勢力を増していくテムジン。妻をめとり、一族の長としてこれからというときに、敵に襲われ、最愛の妻を略奪されてしまう。

全編モンゴルロケを敢行しただけあって、シネスコサイズのスクリーンには、緑の草原と青い空が広々と広がり、とても美しいです。そしてそこで繰り広げられる、騎馬軍団による戦いのシーンは雄壮で迫力があります。しかし、それに比べるとドラマの部分が全体を浅く広くなぞったようで、貧弱に感じてしまいます。これほど波瀾万丈の人生を送り、壮大な帝国の王になった人物なのに、凄味や貫禄が伝わってこない。戦の中で略奪の対象となり、「戦争が起こるといつも一番苦しむのは女たち」という台詞がありますが、これだけ戦闘シーンが多く、しかもあまり悲壮感はなくて勇猛果敢さが目立つと、とってつけたような言葉に聞こえてしまいました。 (梅)

2006年/日本・モンゴル/136分
©2007「蒼き狼 地果て海尽きるまで」製作委員会
角川春樹事務所 エイベックス・エンタテインメント 松竹 フィー ルズ TOKYO-FM JFN 読売新聞 Yahoo!JAPAN 日本航空 エイチ・ アイ・エス ティー・アンド・エム 創芸 ハーティス スマート・ エックス 幻戯書房
配給:松竹

公式 HP >> http://www.aoki-ookami.com/

★3月3日(土)、丸の内ピカデリーほか 全国超拡大ロードショー


2007年3月10日〜

『約束の旅路』原題:Va, vis et deviens

監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
脚本:アラン=ミシェル・プラン、ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:ヤエル・アベカシス、ロシュディ・ゼム、シラク・M・サバハ

1984年、飢餓に喘ぐアフリカで、ソロモンとシバの子孫であるエチオピアのユダヤ人を、 イスラエルとアメリカの援助でイスラエルに移民させる「モーゼ計画」が秘密裏に進められた。 エチオピアからスーダンの難民キャンプに歩いて辿り着いたユダヤ人を飛行機で輸送するという大プロジェクト。 スーダンの難民キャンプで、あるキリスト教徒の母親が我が子だけでも助けたいと、 9歳の息子にシュロモというユダヤ名を教え込み、 息子を亡くしたばかりのユダヤ女性に託してイスラエルに逃れさせる。 シュロモはフランス系ユダヤ家族に養子として迎え入れられる。 自分が孤児でもなく、キリスト教徒の黒人であることが発覚するのではないかと怯える日々。 やがてイスラエル社会にも溶け込み、白人系ユダヤの娘と恋にも落ち、 医師としての人生を歩み始めるが、難民キャンプで涙ながらに別れた母に思いが募る...

『行け、生きろ、生まれ変われ』のタイトルで、 第13回フランス映画祭横浜2005において上映された作品。 私が1991年にイスラエルを訪れた折に、 エルサレムの町で数多く見かけた漆黒の肌の人たちが、 エチオピアから来たユダヤ人だと聞かされて驚いたことを思い出し、 この作品には格別の興味を覚えて観にいきました。 少年から青年へと人生を歩んでいく姿や、産みの親、育ての親、 そしてわが子の母をなる妻という大勢の母親たちの姿が素晴らしく、 一般公開を待ち望んでいました。 フランス映画祭横浜の折りに、来日したラデュ・ミヘイレアニュ監督と、 シュロモの青年役を演じたシラク・M・サバハ君に1時間にわたりインタビューさせていただいたレポートを、 シネマジャーナル65号 (表紙も、まさにこの映画です!)に掲載しています。 朝方までファンと飲んでいた二人でしたが、しっかり語ってくれました。
シラク君は、役の上では偽のユダヤ人ですが、彼自身は正真正銘のエチオピア系ユダヤ人で、 家族と共にエチオピアから何日も歩いてスーダンにたどり着き、 イスラエルに移住した経験はまさに本物。 演じながら自分の過去が重なったといいます。
満席のマスコミ試写では、終わったときに、自然と大きな拍手が沸きました。 母を思う気持ちは万国共通。それが観る者の心を揺さぶるのだと思います。 娯楽的にも楽しめる作品で、長さを感じさせません。 この春、是非ご覧になっていただきたい一作!(咲)

2005年ベルリン国際映画祭パノラマ部門 観客賞ほか、多数受賞

2005年/フランス映画/140分/シネマスコープ/カラー/ドルビーデジタル
字幕:松岡葉子
字幕監修:臼杵陽
配給 カフェグルーヴ,ムヴィオラ

★岩波ホールにて2007年3月10日(土)より5月上旬まで公開

公式HP>>  http://yakusoku.cinemacafe.net/
岩波ホールHP作品紹介のページ>> http://www.iwanami-hall.com/contents/next/next.html

シネマカフェにて、ブログ募金キャンペーンを実施中!
映画『約束の旅路』ブログに書き込まれたエントリ1つに対して、 UNHCR(国連難民高等弁務官)駐日事務所アフリカキャンペーンに50円の寄付が行われます。 『約束の旅路』を通じて、あなたも難民問題について考えてみませんか? そして、行動してみませんか?
詳細はこちら → http://blog.cinemacafe.net/yakusoku/index.html


『サン・ジャックへの道』(原題:Saint Jacques...La Mecque)

監督・脚本:コリーヌ・セロー
出演:ミュリエル・ロバン、アルチュス・ド・パンゲルン、ジャン=ピエール・ダルッサン、パスカル・レジティミュス、マリー・ビュネル

仲の悪い3人兄弟の元に、亡くなった母親の遺産相続の条件が、北スペインにあるキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(サン・ジャック)まで一緒に歩いて巡礼することという知らせが届く。忙しいビジネスマンの兄、無神論者の教師の妹、アル中の弟。3人共、巡礼など行きたくはないが、遺産欲しさに巡礼ツアーに渋々参加する。そこに集まってきた老若男女9人。1500キロの道のりを歩いていくうちに起こる様々な出来事...。

2006年3月フランス映画祭で、『サンティアゴ...メッカ』のタイトルで上映された作品。イスラーム文化に興味のある私にとって、フランス映画祭のライナップの中で、真っ先に気になった作品。作品紹介には、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼に縁あって一緒に出かけた9人・・とあったので、「キリスト教徒のメッカ(総本山)」という象徴的な意味のタイトルかと思って観始めたら、巡礼ツアーの集合場所にサイード(字幕では、サイッド)というアラブ名の青年が現れる。同行の従弟ラムジィはほんとのメッカに巡礼に行くと思い込んでいて、イスラーム教徒としての義務が果たせるのを嬉しそうにしている 。
コメディ仕立てで大いに笑わせられるが、宗教や文化の違いを越えて、人と人とが理解し合えることを、この映画は教えてくれる。

フランス映画祭の折りに、ツアーガイド役のパスカル・レジティミュスさんにインタビューさせて頂いた。(シネマジャーナル67号に記事掲載)
パスカルさんは父親がカリブ海の島の出身、母親がアルメニア人で、浅黒い肌の持ち主。映画の中で、スペインの修道院でイスラーム教徒の男の子二人と共に、宿泊を拒否される。ちなみに本人はアルメニア正教徒で、映画の中ではガイドの彼の宗教については言及していないが、監督がロケハンをした時に、有色人種の人たちが巡礼路の宿泊施設で人種差別されたのを目撃したのだそうだ。監督が彼をツアーの引率者役にキャスティングしたのも、フランスの様々な人種や宗教の人がいる社会を象徴できると考えたからだという。原題に二つの宗教の聖地を組み合わせているのも、人が宗教の違いを超えて一つになれるという思いを込めたものだ。思えば、監督の前作『女はみんな生きている』でも、アルジェリア移民の家族が登場した。社会問題をさらっとユーモア溢れる作品に仕立てあげるセンスが素晴らしい。

さて、もう一人、本作でアラブ系移民2世のサイードを演じたニコラ・カザールは、アラブ系でもなく、ムスリムでもないが、2006年3月、フランス映画祭の直前に開催されたアラブ映画祭で上映された『長い旅』(2004年 モロッコ・フランス作品)で、フランスに住むモロッコ移民2世を演じている。ちょっと注目株!

登場人物9人それぞれが個性的で素敵な本作だが、実際に9人が2ヶ月かけて歩いてロケしたという巡礼の道は、自然が豊かで、絵のように素晴らしい光景の連続。10人目の登場人物とも言えるフランスやスペインの風景も存分に楽しめて、心が洗われるようである。(咲)

フランス/2005/112分/35mm/ヴィスタ/ドルビーSRD&DTS/カラー
後援:フランス大使館 スペイン政府観光局  協力:ユニフランス東京
提供:クレストインターナショナル/ハピネット
配給・宣伝:クレストインターナショナル

公式 HP >> http://www.saintjacques.jp/

★3月10日(土)より、シネスイッチ銀座にて、旅立ちのロードショー!


2007年3月17日〜

『ナヴァラサ』原題:NAVARASA [Nine Emotions]

監督・原案・脚本・撮影・製作:サントーシュ・シヴァン(『マッリの種』)
共同脚本:ラージャー・チャンドラシェーカル、ヴィシュヌ・ヴァルダン
音楽:アスラム・ムスタファ
録音:ラージャー・クリシュナン・M. R.
編集:A. シュリーカル・プラサード
美術:M.A. シャー、G.R.N. シヴァシャンカル、G.R.N. シヴァクマール
出演:シュエータ(シュエータ)、クシュブー(ガウタム)、ボビー・ダーリン(ボビー・ダーリン)、アーシャ・バーラティ(会長)、エッジ(シュエータの父)、アペクシャー・バート(シュエータの母)、プリンス・プラナヴ(隣家の少年)

13歳のシュエータが初潮を迎え、両親は華やかな成女式を催す。急に大人になったと言われても戸惑う彼女は、ある日仲良しの叔父のガウタムが女装しているところを見てしまった。「男に生まれたけれど、心は女」と打ち明けられたシュエータだが、どうしても叔父の気持を理解することができない。
ガウタムはクーヴァガムの祭に参加するために家を出、シュエータは彼を連れ戻して医者に診せなければと後を追う。旅に出たことで、祭の美人コンテストに出るというボビー・ダーリンや、多くのサード・ジェンダーの人々に出会って少しずつ気持が変わっていく。

クーヴァガムの祭は、インドの大叙事詩マハーバーラタにある(*) アラヴァンを信仰する人々が集まる大祭。 男性が女装し、彼の花嫁となって翌日は未亡人になります。 ガウタムはこの儀式を通じ、女性として生きることを決意しています。 この映画はサード・ジェンダーの人々に出会ったサントーシュ・シヴァン監督が、 彼ら一人一人の物語に心動かされて作られたもの。 あらすじとキャストのシュエータ、ボビー・ダーリンの二人を決めただけで祭に飛び込み、 フィルムを回し続けたのだとか。 この部分はドキュメンタリーが混在しています。 祭でガウタム役となるクシュブーやアーシャ・バーラティ会長に出会い、 ストーリーが固まっていったのだそうです。 ボビー・ダーリンが映画の中で語る彼女の生い立ちは本当のこと。 この作品でモナコ国際映画祭で助演男優賞を獲得、 絶縁していた父から和解の電話が入ったとの後日談があります。(白)

アラヴァンの物語は、 この映画の舞台である南インド、タミル・ナードゥ州につたわるバージョンにしか存在しない。

2005年/インド/1時間39分/ヨーロッパビスタ1:1.66/ドルビーSR
配給:オフィスサンマルサン、カグス
協力:チャンネルアジア

2007年3月17日より、ユーロスペースにてモーニング&レイトショー公開

公式 HP >> http://www.sanmarusan.com/navarasa/index.html



『棚の隅』

画像:(C)2006『棚の隅』製作委員会

監督:門井肇
原作:連城三紀彦
脚本:浅野有生子
撮影:鈴木一博
音楽:延近輝之
主題歌 榊いずみ「つまらない世界」
出演:大杉漣(宮田康雄)、内田量子(岡崎擁子)、渡辺真起子(宮田秀子)、榊英雄(進藤亮介)、今井悠貴(宮田毅)、徳井優(問屋店主)、今宿麻美、江道信

—あなたが心の隅に置き忘れたものはなんですか—

宮田は若い妻と8歳の息子の3人家族。 小さなおもちゃ屋を経営しているが、景気は良くない。 ある日店に入ってきた女性を見てはっとする。 まだ乳飲み子の息子と宮田を置いて出て行き、消息の知れなかった前妻の擁子だった。 保険会社に勤めているという擁子は、その後もたびたび店の近くに現れる。

監督は、劇場映画第1作となる門井肇。 映画を作るときはぜひ、と大杉漣に頼んであったのだそうです。 出演作品300本以上の大杉氏ですが、初の主役でしょうか? 辛い過去のあるおもちゃやの店主をしみじみと演じています。 再婚した妻役の渡辺真起子が明るくたくましくていいです。 連城三紀彦作品といえば思い出すのが「恋文」ですが、 これも同じく男1人に女が二人。妻がしっかりしていましたっけ。(白)

http://tananosumi.com/
3月17日(土)よりシネマアートン下北沢(東京)ほかにて公開



『渋谷区円山町』

監督:永田琴
原作:おかざき真里(「Cookie」集英社刊)
脚本:長谷川明
出演:榮倉奈々、眞木大輔、仲里依紗、原裕美子、ふかわりょう

(story 1)
  由紀江は明るい元気な女子高生。ある日、若い臨時教師ヤマケンが 彼女のクラスの担当になる。休日に友達たちと渋谷に遊びに行き、好奇 心から円山町のラブホテル街を散策していたところ、偶然ヤマケンが女 性とホテルに入っていくところを見てしまう。それ以来、彼女はヤ マケンのことが気になって仕方ない。
(story 2)
  糸井は吹奏楽部でフルートを吹いている女子高生。最近、友達だと 思っていたクラスメイトからいじめを受けるようになったのだが、 その事実から逃れるようにフルートに打ち込んでいた。そんな彼女 に、いつも人の輪から離れて立っている有吉が、一緒に渋谷に行か ないかと声をかける。

道玄坂とBunkamuraの間に広がる円山町はラブホテル街として有名な 場所です。以前は子供が近づいてはいけない場所の匂いが強かったで すが、最近は、ライブハウスやクラブやこの映画が上映される渋 谷QA-Xシネマなどが入るビルなども出来て、ちょっと足を踏み入れや すくなりました。
story1では、今年になって主演作が続く榮倉奈々が、好奇心一杯で大 人の恋に憧れる少女を、その笑顔の魅力を最大限に生かして好演して います。こんな可愛い子にわがまま言われたら、先生も怒れないか。
story2では、寂しさから自分がいじめられている事実すら受けいれられずにいる女の子と、彼女を助けようとして、自分も寂しさを受け入れる女の子の友情を描いています。(梅)

2006年/日本映画/35mm/110分/ヴィスタサイズ/カラー/ステレオ
配給:デックスエンタテインメント
配給協力:クロックワークス
宣伝:広美
宣伝協力:ビー・ウイング

公式 HP >> http://www.maruyamacho-movie.com/

★3月17日(土)、渋谷QA-Xシネマにて桜咲くロードショー


『ポイント45』

監督・脚本:ゲイリー・レノン
撮影:テオドロ・マンチーニ
音楽:ジョン・ウッド
美術:デヴィッド・バーカム
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ(キャット)、アンガス・マクファーデン(アル)、スティーブン・ドーフ(ライリー)、アイーシャ・タイラー(リズ)、サラ・ストレンジ(ヴィック)ほか

ニューヨークのスラム街、ヘルズキッチンで拳銃や盗品を売るキャットとアルのカップル。キャットはここを出て、海辺に家を持つのが夢だ。ある日、内緒で新しい顧客と取引したキャットは、アルの逆鱗にふれて髪を切られ、したたかに殴られる。アルの友人のライリー、レズビアンのヴィックはキャットを心配し、助けようと警察に連絡する。ソーシャルワーカーのリズも、アルの暴力からキャットを保護しようとする。

長身のミラ・ジョヴォヴィッチが危険な女をカッコよく演じています。足が長〜〜い。足は短くておなかも出てますが、キャットが愛する男臭さむんむんのアルを演じるアンガス・マクファーデンは『SAW3』に出演していましたね。長髪なので見違えました。この危ない二人の母親(劇中の)が、娘、息子を語るシーンがありますが、この親にして・・・という感じで笑えます。強烈!(白)

2007/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/SRD/1時間36分
配給:ムービーアイ、東宝東和

公式 HP >> http://www.point45.jp/

★3月17日(土)〜お台場シネマメディアージュほかにてロードショー


『フランシスコの2人の息子』  原題:Two sons of Francisco

監督: ブレノ・シウヴェイラ
音楽監修:カエターノ・ヴェローゾ&ゼゼ・ヂ・カマルゴ
出演:アンジェロ・アントニオ、ジラ・パエス、マルシオ・キエリンギ、チアゴ・メンドンサ、ダブリオ・モレイラ、マルコス・エンヒケ

ブラジル、ゴイアス州シチオ・ノーヴォ村。小作農のフランシスコは無類の音楽好き。 愛する妻のエレーナとの間に次々と7人の子供をもうける。 胎教はラジオから流れる音楽。 サッカーボールさえ買ってやれないほど貧しいフランシスコだが、 子どもたちを一生人に使われる小作で終わらせたくない!  有り金をはたいてアコーディオンとギターを長男ミロズマルと次男エミヴァルに買い与える。 が、地代も払えなくなり、一家はゴイアニアの町への移住を余儀なくされる。 極貧の中、独学で楽器をマスターした2人は、ある日、 日銭を稼ごうとバスターミナルに出かけ、恐る恐る歌い始める。 やがて、2人の才能に目を付けたエージェントのミランダが彼らを演奏ツアーへと連れ出す。 ミロズマルとエミヴァルのデュオは各地で評判を呼ぶが、 ある日、デュオを解散しなくてはならない悲劇が起こる・・・

本作は、リリースしたアルバム総数が2200万枚以上という、 ブラジルで圧倒的な人気を誇る兄弟デュオ、 ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノのサクセスストーリーである。 頂点に上り詰めたのは、もちろん、その素晴らしい音楽センスによるものだが、 夢は叶うと信じた父の力も大きい。 100万枚売る自信があると、父フランシスコは、 お給料をすべて電話用コインに換えて同僚に配り、 ラジオにリクエストさせるというクレージーぶり。 映画のラストに、実際のコンサートの模様が映し出され、 熱狂的なファンの様子に彼らの人気の程を思い知らされる。 そして、本物の父フランシスコが、 アンジェロ・アントニオが演じたどころじゃないクレージーな人物だとわかって微笑ましかった。
少年時代のミロズマルとエミヴァルを演じた2人が、とにかく可愛い。  どうして大人になったら、こうなっちゃうの〜??と思う位、 小太りのふつ〜の中年男なのだが、 本物の2人に限りなく似た人をキャスティングしたことが判明。 う〜ん、人気は音楽の実力とお人柄なのね・・・(咲)

2005年/ブラジル/124分/ビスタ/ドルビーデジタル/カラー

提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズ
後援:ブラジル大使館

★2007年3月17日よりシャンテシネほか全国にて順次公開

公式HP>>  http://2sons.gyao.jp/



2007年3月24日〜

『黒い眼のオペラ』原題:黒目圏

監督・脚本:ツァイ・ミンリャン
撮影:リャオ・ペンロン
美術:リー・ティエンジェ
出演:リー・カンション(若い男・息子の二役)、チェン・シャンチー(店員)、ノーマン・アトン(ラワン)、パーリー・チュア(女主人)ほか

オペラ「魔笛」の歌声が流れる部屋の中、うつろな目で寝たきりの若者がいる。 彼を世話しているのは、母親に雇われた不法労働の若い女。 階下の店でも働き、一日中自由はない。くたくたになって屋根裏部屋に戻って眠るだけ。 町ではあやしげな賭博のグループについていった若い男が、無一文のため袋叩きにあった。 道端に倒れこんだところを通りがかった男たちに助けられる。 そのうちの一人、ラワンの献身的な世話を受けて、怪我をした男は回復していく。

ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督が初めて故郷のマレーシアで撮影した最新作。 2006年東京フィルメックスのクロージング作品となりました。 登場人物の説明も、セリフもほとんどありません。 リー・カンションが寝たきりの息子と、 怪我をして助けられる若い男(なぜかモテる)の二役を演じます。 膨張した経済が急激に破綻し、建てかけのまま朽ちていくビルには深いよどんだ水がたまっています。 これは動けない息子そのもののようにも思えます。 リー・カンションの肩に止まる茶色い大きな蝶(蛾?)は、「胡蝶の夢」の暗示でしょうか。 最初と最後のシーンはメビウスの輪のようにつながっているのではと思ってしまいました。 マレーシアのじっとりと水を含んだ熱い空気を思い出します。 どうしようもない人の哀しさ、愛しさにあふれていて好きな作品でした。(白)

2006/台湾・フランス・オーストリア/118分/35mm/1:1.85
配給: プレノン・アッシュ

3月24日(土)、シアター・イメージフォーラムにてロードショー


『素粒子』原題:Elementarteilchen

監督・脚色:オスカー・レーラー
原作:ミシェル・ウエルベック「素粒子」(筑摩書房刊)
出演:モーリッツ・ブライプトロイ(『ミュンヘン』)、フランカ・ポテンテ(『ラン・ローラ・ラン』)、マルティナ・ゲデック(『マーサの幸せレシピ』)、クリスティアン・ウルメン、ニーナ・ホス

異父兄弟のブルーノとミヒャエル。 母親は幼い二人をそれぞれの父方の祖母に預けてインドに行ってしまう。 異なる境遇で育つ兄弟。 兄ブルーノは、高校の国語教師という安定した職に就くが、 妻アンネでは自分の性的欲求を満たされず、悶々とした日々をおくっている。 一方、幼い頃から人類の進化に興味を持ち、生物学者となった弟ミヒャエルは、 女性に関心がなく、遺伝子研究に没頭している。 母が亡くなり、二人に転機が訪れる。 ミヒャエルは、祖母の墓石の移動に立ち会うために訪れた故郷で、 幼馴染のアナベルから恋心を打ち明けられ、初めて女性に目覚める。 一方、妻から離婚を言い渡されたブルーノは、参加者の男女比率1:2という広告に惹かれ、 ヒッピー集団のキャンプ場「変革の場」を訪れる。 そこでようやく自分の性的衝動を理解してくれる女性クリスティアーネと出会う...。

兄弟共に、愛を分かち合えるパートナーに出会うが、それぞれに試練が訪れる。 人生において、誰しもが大なり小なり経験するであろう決断を迫られる時。 生きていくということは、苦しみもあれば、楽しみもある。 そう思わなくちゃ、やってられない。 異父兄弟の母親ジェーンは、息子を連れて男と旅に出たり、あげく、 インドに行ってイスラームの神秘主義集団に入ってしまう。 なんとも自由奔放でいいなぁ〜 (咲)

母親の自由奔放さのおかげで、異性への自然なアプローチができなくなってしまった二人の息子が、その呪縛から解かれようと七転八倒する様を、乾いた笑いを込めて描いています。最近日本でも育児放棄や家庭崩壊の問題が顕著ですが、そんな中で育つ子供たちが未來に抱える苦しみの形のひとつに見えたりもしました。(梅)

2006年/ドイツ/カラー/1.85ヴィスタ/ドルビーSRD/113分
提供:新日本映画社、朝日新聞社
協力:ドイツ文化センター、ルフトハンザドイツ航空
配給・宣伝:エスパース・サロウ

★2007年3月24日(土)〜 ユーロスペースにてロードショー

公式HP>> http://www.espace-sarou.co.jp/soryushi/



『蟲師』

監督:大友克洋
脚本:大友克洋、村井さだゆき
原作:漆原友紀 「蟲師」講談社刊
撮影:芝主高秀
音楽:?`島邦明
美術:池谷仙谷
VFXスーパーバイザー:古賀信明
出演:オダギリ ジョー(ギンコ)、江角マキコ(ぬい)、大森南朋(虹郎)、蒼井優(淡幽)、たま(李麗仙)、りりィ(庄屋夫人)ほか

—100年前の日本。そこには「蟲」が棲む豊かな世界が広がっていた—
精霊でも幽霊でも物の怪でもない「蟲(むし)」という妖しき生き物がいた。 時に人間にとりつき不可解な現象を引き起こした。 その蟲の源を探りながら、蟲を鎮め人を癒す力を持つ者は「蟲師」と呼ばれた。 幼いころの記憶を持たないギンコもその一人。 雪の山里で一夜の宿を請うたことから、庄屋で働く者たちを診る。 彼らは片耳だけ聴力を失っており、ギンコはそれが家に棲みついた蟲のせいだとつきとめる。



©2006「蟲師」フイルムプロジェクト

原作は月刊アフタヌーンに連載されたコミック。 2006年の講談社漫画賞に輝き、単行本シリーズも7巻までに290万部出ています。 大友克洋監督が自ら原作者の漆原友紀さんを訪ねて映画化を熱望されたのだとか。
日本各地をロケハンして回った甲斐あり、 日本の原風景といえるような壮大で幽玄な世界が広がっています。 そこにVFXを加え、蟲を見えるものにしました。
蟲を引き寄せるため、ひとつ所にいられない孤独なギンコ、 旅の道連れとして配された素朴で気のいい虹郎、文字で蟲を封じる淡幽ら、 魅力的なキャラに似合いのキャストです。 原作は一話完結の短編が連載ですが、映画は芯となるエピソードをいくつか集めました。 主人公のギンコが「どこから来てどこへいくのか」ぜひ劇場でごらんください。(白)

2006/日本/カラー/アメリカンヴィスタ/SRD/2時間11分
配給:東芝エンタテインメント 宣伝:P2

http://www.mushishi-movie.jp/
2007年3月24日よりロードショー公開

■映画『蟲師』展—大友克洋:幻想と神秘の世界
  • 2007年3月9日(金)〜3月26日(月)
  • パルコミュージアム 渋谷パルコpart3 7F
  • 入場料 一般500円、学生400円、小学生以下無料
■映画『蟲師』公開記念 〜大友克洋の世界〜
  • 2007年3月17日(土)〜3月30日(金)
  • シネマスクエアとうきゅう 東急MILANOビル3階
  • 上映作品
     ●『AKIRA』1988年 東宝 124分
     ●『スチームボーイ』2003年 東宝 126分
     ●『MEMORIES』1995年 松竹 113分
     ●『老人Z』1991年 東京テアトル 80分


『ブラックブック』(原題:Black Book)

監督:ポール・バーホーベン
原案:ジェラルド・ソエトマン
脚本:ジェラルド・ソエトマン、ポール・バーホーベン
出演:カリス・ファン・ハウテン(ラヘル/エリス)、セバスチャン・コッホ(ムンツェ)、トム・ホフマン(ハンス)、ハリナ・ライン(ロニー)

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のオランダで、ユダヤ人の歌手ラヘルは迫害を逃れるために、ドイツ軍から解放されたオランダ南部へと逃げようとする。しかし、何者かの裏切りにより、乗った船がドイツ軍に待ち伏せされ、両親も弟も財産も奪われ、彼女だけが辛うじて生き延びる。
髪をブルネットに染め、名をエリスと変え、レジスタンスのスパイになった彼女は、ドイツ軍の諜報部トップのムンツェに接近。しかし、優しい人間味のあるムンツェと、彼女はいつしか本気で恋に落ちていた。それは彼女を更に過酷な運命へと導くのだった。

ハリウッドで『氷の微笑』や『スターシップ・トゥルーパーズ』など、人間の性を少々グロテスクな手法で描いて人気の高かったポール・バーホーベンが、母国オランダに戻り、オランダの映画産業としては破格の規模で撮り上げたサスペンス・エンタテインメント大作です。ハラハラ、ドキドキの連続で、144分という長さを全く感じませんでした。
戦中、戦後の史実を織り交ぜながら描いており、中でも戦後のナチ協力者の収容所で行われた虐待については、あまりこれまで語られておらず、オランダ国民にとっても衝撃的な内容だったそうです。タイトルの”ブラックブック”とは、終戦直後に射殺されたハーグの弁護士の日記帳で、そこには裏切り者と協力者のリストが載っていたと言われますが、現在その行方はわかりません。
過酷な運命に翻弄されながらも生き抜くラヘルを、カリス・ファン・ハウテンが気高く美しく演じています。歌声も素晴らしい。ちなみに撮影後、ムンツェ役のセバスチャン・コッホと本当に恋に落ちてしまい、現在も交際中。(梅)

1956年 イスラエル。 聖地巡りツアーのバスが、とあるキブツ(イスラエル式社会主義に基づく共同生活施設)に着く。 バスから降りたロニーという女性がキブツの小学校を覗きこむ。 「写真はダメ」と語りかけてきた女教師の顔を見て、ロニーは思わぬ再会に驚く。 「生きていたのね。ユダヤ人だったの?」  次にシーンは、1944年9月のオランダへと遡る。
この冒頭のシーンで、物語が、ユダヤ人であることを隠してユダヤ人虐殺の時代を生き延びた女性を描いたものであることがわかる。 美しいヒロインは死なないとわかっていても、次から次に起こる出来事に、いやもう手に汗握る緊張感。 スピード感溢れる展開で、ほんとにあっという間の144分。
オランダといえば、「アンネの日記」。 この映画のヒロイン、ラヘルも、アンネ・フランクと同様、善意のオランダ人宅で、食器戸棚の裏の隠れ部屋に息を潜めて暮らしている。 匿ったオランダ人自身、見つかれば処刑されかねない時代である。 戦争が終わり、立場は逆転し、ナチに加担した者たちが虐待される目にあう。
さて、イスラエルに逃れたラヘルだが、1956年に中東戦争が勃発し、ここも決して安住の地ではないことを暗示して物語は終わる。 地球から人と人が戦う構造がなかなかなくならないのが悲しい。(咲)

2006年/オランダ・ドイツ・イギリス・ベルギー/144分/スコープサイズ
提供・配給:ハピネット
宣伝:東芝エンタテインメント

公式 HP >> http://www.blackbook.jp/

★2007年3月24日(土)より、テアトルタイムズスクエア、テアトル梅田ほかにて全国ロードショー


『アルゼンチンババア』

監督:長尾直樹
原作:よしもとばなな
撮影:松島孝助 JSC
音楽:周防義和、小松亮太
主題歌:タテタカコ
美術:池谷仙克
出演:役所浩司(涌井悟)、鈴木京香(ユリ)、堀北真希(涌井みつこ)、森下愛子(滝本早苗)、小林裕吉(滝本信一)、手塚理美(涌井良子)、岸部一徳、きたろう、田中直樹ほか

みつこの大好きだった母が亡くなった。その日以来、父は姿を消してしまう。 石を彫る生真面目な職人だった父は、母を大切にしていた。 きっと戻ってくる、と父の好きなビールを冷やして帰りを待っていたが、いつしか半年が過ぎた。 父の悟は、みつこ達が子供のころから「アルゼンチンババア」と呼んでいる風変わりなユリの家で、 一緒に暮らしていたのだ。みつこは父の奪還に向かうのだが・・・。

頑固で子供のような父親としっかりものの高校生の娘のストーリー。 一家の支えだった母を亡くして父は葬儀もせず、いなくなってしまいます。 娘がけなげなので、余計に「なんちゅう親!」と眼が三角になります。 そんなダメ父の悟を、「アルゼンチンババア」のユリはゆったりと包み込みます。 鈴木京香は男性ばかりでなく、心に穴の空いてしまった人を両手を広げて迎える不思議な女性を演じて、 リアルとファンタジーの境目にいる感じです。 居心地が良さそうなユリの家が気になって聞いてみましたら、 栃木県那須の町営牧場に敷地を借りて建設されたオープンセットだそうで、 撮影終了後撤去したのだとか。 タテタカコの歌う主題歌「ワスレナグサ」(アンデス民謡に詩をつけたもの)がまたいいなぁ。(白)

2006/日本/112分/アメリカンヴィスタ/ドルビーデジタル/

http://www.arubaba.com/

3月24日(土)全国ロードショー



『クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』

原題:CROSSING THE BRIDGE -sound of Istanbul-
監督:ファティ・アキン(『愛より強く』『太陽に恋して』)
出演:アレキサンダー・ハッケ、ババズーラ、オリエント・エクスプレッションズ、デュマン、レプリカス、エルキン・コライ、ジェザ、イスタンブール・スタイル・プレイカーズ、メルジャン・デデ、セリム・セスレル、ブレンナ・マクリモン、シヤシヤベンド、アイヌール、オルハン・ゲジュバイ、ミュゼィイェン・セナール、セゼン・アクス

アレキサンダー・ハッケ(前衛的なドイツのバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのメンバー)は、 ファティ・アキン監督の前作『愛より強く』で音楽制作を担当し、 イスタンブルに滞在した折に、イスタンブルの音楽シーンの魅力に取り憑かれる。 東西の文化が交差するイスタンブルを再び訪れ、様々なジャンルのミュージッシャンを取材し、 自らも楽器を携え彼らとセッションを行う。

冒頭、ヨーロッパ大陸とアジア大陸を結ぶボスポラス大橋が映し出され、 一気に魅惑の街イスタンブルに引き込まれる。海峡から眺めるモスクの尖塔、 祈りを促すアザーン、街の喧噪・・・  トルコを旅する人にとって懐かしい風景が繰り広げられるが、そこで奏でられる音楽は、 実に多様だ。エレクトロニカ、ロック、ヒップホップ、民謡、大衆音楽・・・。 それぞれのミュージッシャンの語る言葉が、実に真実をついていて絶妙。 「東西が相容れないというのは権力者の偽善。ホワイトハウスの住人は、 ソ連が崩壊して敵がいなくなり、悪者をつくりあげたいから、文明の衝突だなんて言っている」 「路上で演奏するのはヨーロッパ風だから、警察が許してくれている」 等々。
クルドの女性歌手アイヌール。 かつて公の場所で禁止されていたクルド語やクルド音楽。 「英語やドイツ語の歌がOKなのに、身近なものが歌えないなんて」と語る。 別のクルドの男性。「10年前兵役を終えて家に帰ろうとしたら家が見つからないんだ。 森ごと焼かれていた。1990年クルド語が解禁になったのは外国からの圧力。 かつてはお互いの文化を受け入れて何年も一緒に暮らしていたのに」 この発言は、ドイツ籍のアキン監督だからこそ映画に取り入れることができたものかと思ったら、 トルコでも上映され、日本公開にも大使館が協力している。時代も変わったものだ。
往年の映画スター、オルハン・ゲジュバイは、トルコの演歌であるアラベスク(アラブ風) というジャンルの流行に一役かった人物。 トルコ映画全盛時代の彼の出演作も映し出され興味深い。 アラベスクは、1934年法律によってトルコ音楽の放送が禁止され、 庶民が近隣のアラブ諸国のラジオを聴いていた影響で生まれたもの。 国家が、西に目を向けようとも、伝統的なアジア的な心は崩せるものでないということだろう。
現在86歳になる往年の歌姫ミュゼィイェン・セナールが、 黒いスーツに蝶ネクタイ姿の老楽士たちの伴奏で歌う姿は迫力だ。 歌い終わってラク(酒)をぐっと飲み、グラスを捨てる。そんな彼女が嬉しそうに言う。 「セゼン・アクスが私の70周年を祝ってくれたの。彼女は女神」
トルコ民謡とポップスを融合させ、皆に愛されているトルコの誇る歌姫セゼン・アクス。 彼女が、ボスポラス海峡の見える自宅で熱唱する姿に、私も心が震える思い。 途中で挿入される昔のイスタンブルのモノクロ写真も味わい深く、東でも西でもない、 あの街だけが持っている魅力を再認識させられた。(咲)

注:映画の題名は、日本風に「イスタンブール」となっていますが、長母音の入らない 「イスタンブル」の方が、しっくりくるので、解説&感想部分は、 「イスタンブル」とさせていただきました。

ここに登場するミュージシャンたちのことを、わたしは全く知りませんでした。 その音楽を聴いた瞬間、自分の中にまたも素晴らしい音楽の地平が新たに広がったと、心から嬉しくなりました。わたしは昔からジャズが好きですが、どんぴしゃジャズではなく、その要素を多分に持ちながら違うタイプの音楽と融合したものが、 一番好きなタイプです。そんな人間には、トルコの地で独自な発展をしてきた音楽でありながら、オルハン・ゲジュバイやセゼン・アクスの歌の中にも、セリム・セスレルのクラリネットの音にも、シャシャベンドのストリート音楽にも、 ジャズに通じるものを感じるのです。卓越した技をもち、音に自分を同化させ、 その時に湧き上がる感情を表現できる彼らの音楽。このサントラは買いです。 (梅)

2005年 /トルコ・ドイツ / 92分/アメリカン・ヴィスタ/ドルビーSRD/カラー/ 英語 ・ ドイツ語 ・ トルコ語

字幕・資料監修:サラーム海上
配給:アルシネテラン
協力:トルコ共和国大使館、トルコ航空、ドイツ文化センター、ビクターエンタテインメント

◆第13回大阪ヨーロッパ映画祭にて、11月23日オープニング上映
http://www.oeff.jp/program/intro_jp.php

★3月24日(土)より、シアターN渋谷にて、エキゾチックにロードショー
公式HP>>  http://www.alcine-terran.com/crossingthebridge/

!!公開記念イベント開催!!
11月27日(月)に作品の主人公であるノイバウテンのアレキサンダー・ハッケの新プロジェクト、“The History of Electricity”による、音と映像を融合させた9部構成の電子マルチメディアパフォーマンスを行います。無料イベントとなっていますので、お気軽にお出かけ下さい。
アレキサンダー・ハッケ:ドイツのインダストリアル・ミュージックやノイズ・ミュージックの代表的な前衛的バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのギタリスト/ベーシスト。今回は1985年以来の来日。

日時:11月27日(月) 17:15開場、17:30〜18:30イベント
場所:ドイツ文化センター (港区赤坂7-5-56)
   (地下鉄青山一丁目駅A4出口から赤坂郵便局方面へ徒歩5分)



『ヘレンケラーを知っていますか』

監督:中山節夫
脚本:下島三重子
出演:小林綾子、登坂紘光、鈴木重輝、左時枝、夏八木勲ほか

ー みんなちがって、みんないい。 ー
ひきこもりでリストカットを繰り返す少年・祐介。ある日、病院へ連れて行こうとする父の車から逃げ出して、人里離れた一軒家に一人で住む不思議な老女と出会う。彼女・北崎絹子は目も見えず、耳も聞こえないが、ヘルパーの助けを借りながら身の回りのことは自分でやり、金子みすずの詩を愛読し、明るさを失っていない。祐介は彼女の手にカタカナを書いて、少しずつコミュニケーションをとる。そして、少しずつ彼女の苦難の連続だった人生を知って、彼自身も変わっていく。

この北崎絹子さんには実在のモデルがいます。かつて日本のヘレンケラーと話題になりながら、母という介護者を失って以来、地域とのコミュニケーションがとれなくなり、悲惨な生活に陥ってしまった方です。地域にネットワークが生まれ、重度重複障害者団体ができたものの、彼女は慣れ親しんだ故郷に住むことを地域住民に拒まれ、今は行政に用意された山の一軒家に一人暮らしをしています。
競争や格差が政府によってあおられてきた最近の日本。同じ方向に走り続けられない人間は排除しようとする傾向が、ますます強まっているように感じます。その対象は、障害者であったり、高齢者であったり、学校に馴染めない子供であったり、果ては大きな荷物を持って歩いている女性であったり。それぞれ向かう方向も歩くペースも違ってあたりまえ。困っているようなら手を差し伸べる余裕がなくて、何が豊かな社会なのでしょう? 「みんなちがってみんないい」有名な金子みすずの詩「私と小鳥と鈴と」の一節の真の意味を考えさせてくれる作品です。(梅)

2005年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/105分
企画・制作:(有)山口県映画センター、映画「ヘレンケラーを知っていますか」製作委員会、山口県シネクラブ協議会
配給:H&Mインコーポレーテッド

公式 HP >> http://www.helen.jp/

★3月24日(土)より、銀座シネパトスより全国順次ロードショー


『ホリデイ』the Holiday

監督・脚本:ナンシー・メイヤーズ
撮影:ディーン・カンディ
音楽:ハンス・ジマー
プロダクション・デザイン:ジョン・ハットマン
出演:キャメロン・ディアス(アマンダ)、ケイト・ウィンスレット(アイリス)、ジュード・ロウ(グラハム)、ジャック・ブラック(マイルズ)、イーライ・ウォラック(アーサー)、エドワード・バーンズ(イーサン)、ジャスパー(ルーファス・シーウェル)ほか

ハリウッドで映画予告編の製作会社を経営するアマンダは、恋人イーサンと大喧嘩。 彼を追い出した後、長い休暇をとることにした。 同じ頃、ロンドンの新聞社に勤めるアイリスは、 長い間恋していた同僚のジャスパーの突然の婚約に大ショック! インターネットで旅先を探していたアマンダは、「ホーム・エクスチェンジ」の広告を見つける。 お互いの住居、車を一定期間そっくり取り替えて休暇をすごそうというものだ。 アイリスのコテージを気に入ったアマンダはさっそく申し込み、 アイリスもジャスパーを忘れるため、ハリウッドに出かけることにする。

他人同士が家を交換して2週間も暮らすなんて!と思いますが、 これはほんとにあるのだそうです。 ナンシー・メイヤーズ監督は、これを題材に二人の女性が家を取り替えたことで、 新たな出逢いを体験するロマンチックなお話を書きあげました。 贅沢な配役とストーリーで、2本の映画を一度に観ているような感じがします。 主演の4人がそれぞれ魅力的なのと、 陽光のハリウッドと雪のロンドン郊外の両方の家のインテリアも見所です。(白)

2006/ユニバーサル映画&コロムビア映画提供/カラー/2時間15分/ヴィスタ/DTS,SRD,SDOS
配給:UIP 宣伝:宣伝:サンダンス・カンパニー

3月24日(土)より日劇3ほかにてロードショー



2007年3月31日〜

『情痴 アヴァンチュール』

監督:グザヴィエ・ジャノリ
脚本:ジャック・フィエスキ、グザヴィエ・ジャノリ
音楽:アレキサンドル・デプラ
キャスティング:アントワーヌ・カラール
助監督:ドミニク・ドゥラニ
撮影:ヨリック・ル・ソー
美術:フランソワ=ルノー・ラバルト
衣装:シャルロット・トスカン・デュ・プランティェ
編集:フィリップ・コトゥラルスキ
キャスト:リュディヴィーヌ・サニエ(ガブリエル)、ニコラ・デュヴォシェル(ジュリアン)、ブリュノ・デスキーニ(ルイ)、フロランス・レワレ=カイュ(セシル)、エステル・ヴァンサン(ジェミラ)、アントワーヌ・ドゥ・プレケル(マルタン)

恋人と同棲をし始めたジュリアンは、ある晩裸足でさまよう美しい女性ガブリエルに出会う。 翌日、再び彼女を見かけるが、別人のようにエレガントだった。 やがて彼は彼女が夢遊病であることを知る。 彼女との出会いが、彼を予期せぬアヴァンチュールへ導いていく…。


『スイミング・プール』で奔放な娘を演じたリュディヴィーヌ・サニエ。 ここでは、わけ有りの子持ち若妻、しかも夢遊病者を演じています。 私は、彼女の顔の右と左の表情の違いにハッとしました。 右側は戸惑いや不安を、左側は執着や確執を現している様に感じたのです。 ガブリエルはゆるぎない確かな愛を探し求めて、さ迷っている…。 その切なさが伝わってきます。誰もが人生において、 夢遊病者になりえることを暗示する、少し痛い映画です。

〓ラブラブニュース〓
この主演の二人は、私生活でも熱愛中です。 サニエは2005年に女の子を出産しました。 15年後のフランス映画界に新星誕生!?なんて楽しみですね。(美)

2005年/フランス・ベルギー/1時47分/ドルビーSRD/スコープサイズ/R−15
配給:東芝エンタテインメント 宣伝:アステア

http://www.jyochi.com/

3月31日(土)より、シネマスクエアとうきゅう 他にて全国ロードショー


『忍者』

脚本・監督:邱褸濤(ハーマン・ヤウ)
出演:魔裟斗、白田久子、黄聖依(ホアン・シェンイー)、黄子華(ウォン・ジーワー)ほか

いかなるウイルスにも効果のあるワクチンを発明した博士が、甲賀忍者衆に襲われ殺された。彼らの背後には、そのワクチンで全世界を支配しようと企む男がいた。ワクチンの入った箱を奪ったものの、特殊な箱でどうやっても開けることが出来ない。一方、博士の死を知った伊賀忍者衆は、博士以外唯一その箱の開け方を知る男・コピーをブライアンの手から守り、ワクチンを取り戻そうと動き始める。

「香港で日本の忍者が大活躍って、またまた(笑)」なんて思っていたんですが、B級テイスト満載ながらもストーリーが予想以上にキチンとしていて、かなり楽しんで観ました。さすがハーマン・ヤウ監督(『八仙飯店之人肉饅頭』『欲望の街外伝 ロンリーウルフ』など作品多数)です。ちなみに今年の香港国際映画祭では彼の作品が特集されるそうです。
甲賀忍者の頭を演じるのは魔裟斗。最近、結婚されて話題になってましたね。彼を愛する伊賀忍者を演じるのは白田久子。彼女は以前にも香港映画に出演したことがあり、引き続いてアクションも頑張っています。2007年のミス・インターナショナル日本代表になったそうです。『カンフーハッスル』の出演で日本にも知られた黄聖依は、若く溌剌とした伊賀忍者。そのおじいちゃんを演じているのが、香港映画ファンにはおなじみの高雄(エディ・コー)、そして悪役ブライアンは李子雄(レイ・チーホン)です。
物語のキーマンのコピー役は黄子華。彼の出演作品はあまり日本で公開されていませんが、香港ではコメディアンとして有名で、舞台はとても人気があります。黙っているとちょっといい男だったりします。(梅)

2004年/日本・香港・中国/35mm/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/95分/原題:終極忍者
配給・宣伝:アートポート

公式 HP >> http://www.ninja-movie.jp/

★3月31日(土)より、銀座シネパトスほか全国順次ロードショー


『檸檬のころ』

脚本・監督:岩田ユキ
原作:豊島ミホ「檸檬のころ」(幻冬舎文庫)
出演:榮倉奈々(秋元)、谷村美月(白田)、柄本佑(佐々木)、岩田法嗣(西)、林直次郎(辻本)ほか

秋元加代子は吹奏楽のリーダーを務め、成績も良く、東京の大学へ進学するつもりでいるが、特に将来の夢があるわけではない。野球部の練習を見つめる先には、エースの佐々木と西の姿がある。西の視線をつい避けてしまう彼女。同じ中学から進学してきて、心が通い合う時期もあったのに、いつの間にかすれ違ってしまった二人。佐々木が冗談交じりに言った「オレ、加世ちゃんのこと好きなんだ」の言葉にも、西は反応できない。
秋元と同じクラスの白田恵は、将来は音楽ライターになると決めている。ある日、立ち入り禁止の屋上で、同じように音楽にのめり込んでいる辻本に出会い、存在が気になり始める。彼女のリクエストはがきが読まれたラジオ番組を辻本も聴いていたことから、二人は話始める。 好きなロックの話は尽きることがなかった。辻本は、文化祭で演奏する曲の作詞をして欲しいと彼女に頼む。彼への恋心から、白田は引き受けて頑張るのだが・・・

誰もが通ってきた「檸檬のころ」。失敗や恥ずかしいことだらけで、 もどりたいとは思わないけれど、懐かしさに胸の奥がうずき、苦笑いしながら思い出してしまう。そんな季節を、二人の普通の女の子を通して実に瑞々しく、愛情一杯に描いています。
榮倉奈々は今年に入ってもう3本目の主演。これからどんどん活躍しそうです。柄本佑は、 ちょっと情けないけれど、純粋さ溢れる男の子として佐々木役を好演しています。辻本役の林直次郎は、兄弟ギターデュオ「平川地一丁目」の弟です。ちょっと見ない間に、すっかり精悍な青年になっていて驚きました。主題歌の「hikari」を作曲し、この度ソロデビューするそうです。初演技はまあまあですが、歌う姿がやはり断然格好良かったです。
今回、長編初監督の岩田ユキさんはイラストレイターでもある女性。 また新たな才能有る女性監督が生まれました。(梅)

2007年/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)/DTS STEREO/115分
企画・制作:ゼアリズエンタープライズ
配給:ゼアリズエンタープライズ
宣伝:マジックアワー

公式 HP >> http://www.lemon-no-koro.com/

★3月31日(土)より、渋谷シネ・アミューズほかにて春休みロードショー


「第2回難民映画祭」Refugee Film Festival in Tokyo 2007

時代に翻弄され難民となってしまう人たち・・・ 世界の各地で絶えることなく起きている難民の問題に焦点を当てた映画30本を上映する「難民映画祭」が開かれます。

2007年7月18日(水)〜26日(木)
会場: 東京日仏学院,ドイツ文化センター,イタリア文化会館,スウェーデン大使館
入場料: 無料 (申し込み不要・先着順)
※席に限りがありますのでお早めに起こしください。

共催: 国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所, 日本UNHCR協会


イラクのカケラを集めて

私の名はベルトルト・ブレヒト

ルワンダの涙
(c)BBC, UK Film Council and Egoli Tossell 2005

ヨーロッパへの道

日本初上映作品となる『イラクのカケラを集めて』『乾いた大地に降る雨』『立ち上がれウガンダの子供たち』『愛車ダイアナ』『私の名はベルトルト・ブレヒト』『ヨーロッパへの道』『紙は余燼を包めない』をはじめ、かつてシネマジャ ーナル本誌で取り上げた『戦争のあとの美しい夕べ』(45号)、『TAIZO』(60号)、『フォッグ・オブ・ウォー』(63号) 、『約束の旅路』(65号)、『ルワンダの涙』(69号,70号)、『異国の肌』(68号)などの旧作が上映されます。
上映作品詳細をHPでご確認の上、是非この機会に世界各地で起きている難民問題に心をかたむけていただければ幸いです。

<上映作品> *印は仮訳

◆東京日仏学院(JR/地下鉄「飯田橋」駅 徒歩7分)
『戦争の後の美しい夕べ』
『ボファナ、カンボジアの悲劇』
『焼けた劇場のアーティストたち』
『さすらう者たちの地』
『アンコールの人々』
『サイト2:国境周辺にて』
『紙は余燼を包めない』
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』
 (以上全て監督: リティー・パニュ、フランス/カンボジア映画)
『オランダへようこそ*』(監督: サラ・ヴォス、オランダ映画 字幕:英語)
◆Goethe-Institut ドイツ文化センター(地下鉄「青山一丁目」駅 徒歩5分)
『戦争の子供』 監督: クリスチャン・ワグナー
『杉原千畝の決断 *』 監督: ロバート・カーク
『異国の肌』 監督: アンジェリーナ・マッカロネ
『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』 監督: エロール・モリス
『ルワンダの涙』 監督: マイケル・ケイトン=ジョーンズ
『私の名はベルトルト・ブレヒト』 監督: ノーバート・ブンジ
『約束の旅路』 監督: ラデュ・ミヘイレアニュ
『祖国への手紙 *』 監督: ジョー・エリオット
『イラクのカケラを集めて *』 監督: ジェームス・ロングリー
『ヨーロッパへの道 *』 監督: フリッツ・バウマン

◆イタリア文化会館(地下鉄「九段下」駅 徒歩10分)
『戦争カメラマン:ジェームズ・ナクトウェイ *』 監督: クリスチャン・フレイ
『国境を越えて *』 監督: ローランド・コラ
『スーダン難民による映画』 監督: カクマ難民キャンプ フィルムエイド・インターナショナル
『イラクのカケラを集めて * 監督: ジェームス・ロングリー
『ジョージ・クルーニー ダルフールヘ行く *』 監督: ジョージ・クルーニー、ニック・クルーニー

◆スウェーデン大使館(地下鉄「神谷町」駅 徒歩5分)
『愛車ダイアナ *』 監督: ボリス・ミティッチ
『立ち上がれウガンダの子供たち *』 監督: ピート・マッコマック、ジェス・ジェームス・ミラー
『津波が生んだ世代 *』 監督: フォルケ・ライデン
『レフュジー・オールスターズ』 監督: ザック・ナイルズ、バンカー・ホワイト
『TAIZO』 監督: 中島多圭子
『杉原千畝の決断』 * 監督: ロバート・カーク
『乾いた大地に降る雨 *』
『ジョージ・クルーニー ダルフールヘ行く *』 監督: ジョージ・クルーニー、ニック・クルーニー
『見えない子供たち *監督: ボビー・ベイリー、ローレン・プール、ジェイソン・ラッセル
『スーダン難民による映画』 監督: カクマ難民キャンプ フィルムエイド・インターナショナル

公式 HP >> http://www.refugeefilm.org/



「国際交流基金映画講座2007-1 ヤスミン・アハマドとマレーシア映画新潮」

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)によるマレーシア映画上映会が開催されます。昨年の東京国際映画祭で話題をさらったマレーシア新潮流の作品群を再び観るチャンスです。ヤスミン・アハマド監督のオーキッド4部作に加え、本邦初公開の何宇恆(ホー・ユーハン)監督の『霧』、釜山、ロッテルダムの国際映画祭でグランプリを獲った陳翠梅(タン・チュイムイ)監督の『愛は一切に勝つ』など、全9作品が上映されます。昨年見逃した方も、ご覧になった方も、是非この機会をお見逃し無く。

上映作品リスト:
『ラブン』、『細い目』、『グブラ』、『マクシン』(ヤスミン・アハマド監督)
『霧』(ホー・ユーハン監督)
『グッバイ・ボーイズ』(バーナード・チョーリー監督)
『鳥屋』(クー・エンヨウ監督)
『愛は一切に勝つ』(タン・チュイムイ監督)
『私たちが恋に落ちる前に』(ジェームス・リー監督)

会場:アテネ・フランセ文化センター
期日:7月31日(火)〜8月4日(土)
主催:ジャパンファウンデーション、アテネ・フランセ文化センター
チケット:当日1回券800円、3回券2,100円
     * 前売券はありません。
     * JFサポーターズクラブ会員、アテネ・フランセ文化センター会員、65歳以上の方は、当日受付で証明書をご提示いただければ、1回券700円、3回券1,800円になります。
     * 各回入替制・全自由席。全作品日本語字幕付き。

詳しいスケジュールは下記の国際交流基金のページをご覧ください

国際交流基金 HP >> http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/jfsls7.html



2007年4月4日〜

『黄色い涙』

監督:犬堂一心
脚本:市川森一
原作:永島慎二(黄色い涙シリーズ「若者たち」より)
音楽:SAKEROCK
出演:二宮和也、相葉雅紀、大野智、櫻井翔、松本潤、香椎由宇 ほか

1963年。日本は高度経済成長に湧き、誰もが今日よりも明日、明日よりも明後日は豊かになって、幸せな未來が来ると信じていた。その年の夏、東京・阿佐ヶ谷の4畳半アパートで、若者4人が共同生活をしていた。漫画家の栄介、画家の圭、作家の竜三、歌手の章一。とはいえ、みんな夢見る卵たちだ。プロとして金を稼げているのは、栄介だけ。彼とて自分の描きたい作品と出版社の求めるものが大きく違い、金は少なく悩みは尽きない。
ある日、圭の絵が初めて売れ、栄介も先輩漫画家のアシスタントとして不眠不休で働いて、まとまった金が手に入る。栄介はこれを元手に、夏の残された時間を創作にあてようと提案する。それぞれが、自らの夢と真剣に向かい合う日々が始まる。

1974年にNHK銀河テレビ小説で放送されたドラマ「黄色い涙」を、当時見て感動した犬堂一心監督が、ずっと抱えていた映画化したいという願いを、ようやく叶えたのがこの作品です。青春ドラマですが、ありがちな爽快感とか疾走感とは無縁で、その日暮らしの、冴えない、でも夢だけはでかい青年たちの、等身大のほろ苦い青春を描いています。アイドルグループ嵐のメンバー5人がそろっての主演ですが、そこにいるのは「これがアイドル?」と思ってしまうほど、地味で情けない男たちでなかなか良いです。(梅)

2007年/日本/128分/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD
制作:タイガーチャイルド ピクチャーズ
製作・配給:ジェイ・ストーム

公式 HP >> http://www.kiiroi-namida.com/

★4月4日(水)、東京グローブ座 先行ロードショー
4月恵比寿ガーデンシネマ、ワーナー・マイカル・シネマズみなとみらい、梅田ガーデンシネマ他にてロードショー


2007年4月7日〜

『ママの遺したラヴソング』A LOVE SONG FOR BOBBY LONG

監督・脚本:シェイニー・ゲイベル 原作:ロナルド・イヴァレット・キャップス
撮影:エリオット・ディヴィス
美術:シャロン・ロモフスキー
オリジナル曲:ネイサン・ラーソン、グレイソン・キャップス
出演:ジョン・トラヴォルタ(ボビー・ロング)、スカーレット・ヨハンソン(パーシー・ウィル)、ゲイブリエル・マック(ローソン・パインズ)、デボラ・カーラ・アンガー(ジョージアナ)、デイン・ローズ(セシル)ほか

家を飛び出し学校へも行かず、怠惰な日々を送っていたパーシーの元へ母が亡くなったと知らせが届く。 フロリダから急いでニューオーリンズの生家へ戻ると、ボビー・ロングという男がいた。 彼は古くからの母の友人で元文学部教授。教え子のローソンと二人、 母と同居していた家から出ないと主張し、パーシーはしぶしぶ一緒に暮らすことになった。 なにかにつけ文学作品の一節を持ち出すボビーと、パーシーはそりがあわず衝突ばかりしているが、ローソンには次第にうちとけてゆく。

今やハリウッドの人気女優となり、出演作がひきもきらないスカーレット・ヨハンソンが、 シェイニー・ゲイベル監督と何年もミーティングをくりかえし、 実現を待ち望んだ作品だそうです。 セクシーな最近の役と違って、この作品では等身大の女の子をみずみずしく演じ、 ゴールデングローブ賞にノミネートされています。
ジョン・トラヴォルタが初老の元教授役、過去の傷から逃れられず、 酒に溺れて身体をこわしてしまうという今までに全くなかった役です。 病い持ちにしてはガタイの良すぎるのがちょっと難ありですが、 ギターを爪弾きながら歌う場面など、ほぉ〜と見入りました。 舞台がニューオーリンズというのも、この映画の雰囲気をかなりアップさせています。(白)

2004/アメリカ/カラー/2時間/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
http://mamanolovesong.com/

4月7日(土)〜シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー



『プロジェクトBB』

製作・脚本・監督:ベニー・チャン、ジャッキー・チェン(アクション監督)
原案・脚本:アラン・ユン
撮影:アンソニー・プーン
音楽:チェン・フェイヨン
美術:ウォン・チンチン
出演:ジャッキー・チェン(サンダル)、ルイス・クー(フリーパス)、マイケル・ホイ(大家)、マシュー・メドヴェデフ(赤ちゃん)、ユン・ピョウ(警部)、カオ・ユェンユェン(メロディ)、シャーリーン・チョイ(バッイン)、クー・フェン(サンダル父)、チェリー・イン(赤ちゃん母)ほか

サンダル、フリーパス、大家の3人組は腕のいい泥棒チーム。 「盗みはしても非道はしない」をモットーに、今日も金庫荒らしに病院へやってきた。 まんまとせしめた現金を山分けするが、サンダルは賭博であっというまにすってしまい、 借金が増えるばかり。 フリーパスは金持ちの女をモノにしようと、プレゼント攻勢で浪費。 大家は子供を亡くして以来、精神的に不安定な妻を抱えて金の亡者になっていた。 不運が重なって追い詰められた3人は、大金に目がくらんで自戒を破り、 子供の誘拐を請け負ってしまうのだが・・・。

ジャッキー・チェンが香港風味満点の映画を製作。 『エレクション』でクールなマフィアを演じたルイス・クーと、 赤ちゃんにふりまわされる気のいい泥棒を演じています。 香港映画界御大のマイケル・ホイも、泥棒とはいえ憎めない役です。 久々にスクリーンに登場したユン・ピョウが太っていて(いつのまにやら50歳です!)、 見違えちゃいました。何より赤ちゃんが可愛くて顔がゆるんでしまいます。 すっかり保護者気分の泥棒コンビが命がけのアクションをする遊園地など、 ハラハラシーンもたっぷり。 ダニエル・ウーとニコラス・ツェーの二人が登場するシーンもお見逃しなく! 試写場内爆笑でした。(白)

2006/香港/カラー/2時間6分/スコープサイズ/ドルビーSR、DTS,SRD/
配給:UPI 宣伝:サンダンス・カンパニー
http://www.projectbb.jp/top.html

4月7日(土)より全国ロードショー



『13/ザメッティ』 原題:13TZAMETI(グルジア語で13の意)

製作・監督・脚本:ゲラ・バブルアニ 出演:ギオルギ・バブルアニ、オーレリアン・ルコワン、パスカル・ボンガール、フィリップ・パッソン、オルガ・ルグラン

グルジアから移民してきた22歳の青年セバスチャンは、屋根の修理に出向いた家で、家主の男が家人に、「近いうちに大金を稼ぐ誘いの手紙が届く」と話しているのを耳にする。男がヤク中で命を落とした時、セバスチャンは偶然にもその手紙を手にする。封筒にはパリ行き列車のチケットとホテルの予約済み領収書。何かにとり付かれたように列車に乗りパリのホテルに赴くセバスチャン。深夜、電話のベルが鳴り、次なる行き先の司令が出る。やがて暗い森の中の館に連れ込まれたセバスチャンは、13番の札を渡される。それは、命をもてあそぶ邪悪なゲームの始まりだった…。

13人の男たちが拳銃を手に輪になって合図を待つ。高らかにゲーム開始を告げる声。電球が光りを放った瞬間が引き金を引く時だ。異様な興奮が場を包む。バブルアニ監督は、なかなか資金が付かないため、この集団ロシアンルーレットのシーンを自腹で撮る。その強烈で奇抜なアイディアに、即座に出資者が決まったという。監督は、グルジアから17歳の時にフランスに移民。父親テルム・バブルアニはグルジアで実績を持つ映画監督。主人公セバスチャンを演じるギオルギ・バブルアニは、監督の実弟。監督自身も、セバスチャンの兄役として、出演している。

全編モノクロームのクラシカルな映像が実に美しい。冒頭、セバスチャンが梯子をリヤカーに載せて、石造りの家並みを歩いていく姿に、一気にゲラ・バブルアニ監督の世界に引き込まれてしまった。セバスチャンを演じる線の弱いギオルギが、目線と全身で死と隣り合わせの恐怖を体現していて、凄い。いつまでも彼の物憂げな表情が脳裏から離れず、身震いのする映画に出会った興奮がいまなお覚めやらない。(咲)

驚愕の作品でした。
ロシアンルーレットなんてもんが出てくる映画はまっぴらごめんと、普段、 この手の映画は観ない私なので、グルジア人監督の作品ということで、 試写の案内を(咲)さんに振ったのですが、その試写を観た(咲)さんから 「ぜひ、観てみて」と言ってきて、夜遅い試写会に行かせてもらいました。
最初、なんだかけだるい感じで話が進んでいたのですが、主人公の青年が、 わけもわからぬまま、ロシアンルーレットの渦中に投げ出された時から、 冷や冷やドキドキしながら目は画面に釘付けに。
輪になってのロシアンルーレットが始まり、倒れていく人々。 生き残りをかけて、数回のルーレットが繰り返されるシーンは緊張感がいっぱい。 ロシアンルーレットは、命をもてあそぶ犯罪なのに、それをゲームとして、 お金を掛け合う人々。ルーレットをする本人たちは、次に死ぬのは自分の番かと、 おだやかならぬ心で、次のゲームを待つ。 モノクロの画像が効果的でした。
しかし、監督はどうして恐ろしくも残酷なこの物語を作ったのでしょう。
観終わった後、虚脱感を感じるほど、衝撃的な作品でした。(宮)

提供:エイベックス・エンタテインメント
配給:エイベックス・エンタテインメント+ロングライド
宣伝:ライスタウン・カンパニー
協力:ユニフランス東京

2005年 ヴェネチア国際映画祭 最優秀新人監督賞受賞
2006年 サンダンス映画祭 ワールドシネマコンペティション(ドラマ部門)審査員大賞受賞

2005年/フランス/35mm/B&W/シネマスコープ/フランス語&グルジア語/ドルビーSRD/1時間33分

公式 HP >> http://www.13movie.jp/

★2007年4月7日(土) シネセゾン渋谷にて 輪になってロードショー!


『オール・ザ・キングスメン』ALL THE KING'S MEN

監督・脚本:スティーヴン・ゼイリアン
原作:ロバート・ベン・ウォーレン
撮影:ハヴェル・エデルマン
音楽:ジェームズ・ホーナー
美術:パトリシア・フォン・ブランデンスタイン
出演:ショーン・ペン(ウィリー・スタ−ク)、ジュード・ロウ(ジャック・バーデン)、ケイト・ウィンスレット(アン・スタントン)、パトリシア・クラークソン(セイディ・バーグ)、アンソニー・ホプキンス(アーウィン判事)ほか

—善は、悪からも生まれる。—

ルイジアナ州の下級役人のウィリーは、学校建築入札の不正を知り汚職を厳しく批判して解雇になる。 ウィリーを取材した新聞記者のジャック・バーデンは社会変革の理想に燃える彼に興味を抱く。 州知事選挙の当てゴマとして担ぎ出されたウィリーは、 真相を知って用意されたスピーチ原稿を捨て、彼自身の言葉で同じ労働者たちに呼びかける。 貧しい生い立ち、労働者や農民のために改革を成し遂げることetc。 この演説は貧しい人々の心を捉え、予想もしなかった地滑り的勝利をおさめウィリー・スターク知事が誕生する。 新聞社をやめ、ウィリーの側近となっていたジャックは、 権力を得て次第に変わっていくウィリーを見つめていくことになる。

主演は監督が彼だけを望んだ、というショーン・ペン。 不正を糾弾していた実直な男が政界に入り、 公約を成し遂げるために次第に裏の顔を見せていきます。 変わっていくというより、もともとあった2面性が発揮できる場を得て、 顕著になったと言えそうです。 上流階級の出のジャックとの友情は次第にねじれていきます。 政界の裏側をたたみこむように見せる前半、後半はジャック周辺の話が多くなります。 『エイプリルの七面鳥』 (2003)で母親役だったパトリシア・クラークソンが ウィリーに深く関わる女性として登場。 アンソニー・ホプキンスとショーン・ペンのからむ場面が少々でちと残念。 銃を持った運転手と十字架がたびたび出てきて、先を予感させます。(白)

*原作はピューリッツア賞に輝き、日本でも「すべて王の臣」として邦訳が出版されています。 1949年にすでに映画化(ロバート・ロッセン監督・脚本)され、アカデミー主演男優賞、助演女優賞受賞。

2006/アメリカ/カラー/128分/ビスタサイズ/SDDS、SRD、SR/
配給:ソニー・ピクチャーズ

http://www.sonypictures.jp/movies/allthekingsmen/index.html

4月7日(土)より、日比谷みゆき座ほかにてロードショー



『ふるさと—JAPAN』英題:JAPAN, OUR HOMELAND(FURUSATO JAPAN)

監督・脚本:西澤昭男
声の出演:関根直也、河口舞華、木村昴、花村さやか他

昭和31年春。 東京・深川の木場の小学校に、音楽学校を卒業したばかりの坂本理恵子先生が赴任してきた。 時同じくして、神戸から歌うことの大好きな宮永志津が転校してくる。 明るくスポーツも勉強もできる志津は、一躍6年4組の人気者に。 学級委員長で建具屋の息子・アキラも、ほのかに彼女に憧れる。 坂本先生は年末に開かれる区の合唱大会での優勝をめざすことを提案し、 志津やアキラもメンバーに選ばれ、練習に励む日々。 そんなある日、ガキ大将のゴンの遊び仲間たちが文具店で万引きをして捕まってしまう。 アキラも残念ながら、その仲間だった。 泣く泣く合唱大会出場辞退を決めたころ、志津が海の事故で亡くなってしまう。 志津の合唱大会への思いを叶えたいと、アキラはなんとか合唱大会に出場したいと学校に嘆願する...。

敗戦から10年、ようやく敗戦の混乱から立ち直り、明るい兆しの見え始めた時代。 坂本先生は、特攻隊で亡くなった兄から 「教師になって童謡を子どもたちに伝えていってほしい」という遺言を受けていた。 美しい日本語でつづられる童謡、『花の街』『赤とんぼ』『故郷(ふるさと)』 『浜辺の歌』『月の沙漠』『荒城の月』...  私の世代にとっては懐かしい歌の数々も、今の子どもたちには、 もしかしたら馴染みがあまりないかもしれない。
時代は変わっていくものと思うが、戦後、 日本は伝統的なものをあまりにも失いすぎてはいないだろうか。 町並み、人情、日本語・・・。このアニメを観て、子どもたちが、 日本が戦争で痛手を受けた国であることを少しでも感じてくれればとも思う。

空き地で遊ぶゴンやアキラたちが、転校してきた志津のことを話題にする場面で、 「神戸は関西弁でも大阪とは違うんだよ」という言葉があって、 神戸育ちの私はそうそう!と思わず相槌。 (大阪とは違う!と、こだわる神戸っ子。もっとも、 神戸でも地区によって言葉が違うのだが...) 合唱が盛んな学校で育ち、歌うのが下手な私には苦痛だったが、 今では歌のメロディーと共に、皆で一緒になって合唱に励んだことを懐かしく思い出す。 何十年も経って離れ離れになっても、とても仲が良くて、 今も意識不明で入院している友の見舞いに入れ替わり立ち代わり駆けつけるような同級生たち。 人との繋がりも大切にしたい・・・、そんなことも思わせてくれる映画で、 『荒城の月』を聴きながら、ぼろぼろ泣いてしまった。(咲)

第12回リヨン・アジア映画祭にて<アニメーション部門><子ども映画部門> の両部門でグランプリ受賞!

2006年/日本/1時間38分/カラー/ヨーロピアンビスタサイズ/ドルビーデジタル

製作:株式会社ワオ・コーポレーション
配給: AMG エンタテインメント

★4月7日(土)〜 UCI豊洲他にて全国ロードショー!
公式HP>> http://www.furusatojapan.com/



2007年4月14日〜

『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』原題:龍虎門 DRAGON TIGER GATE

監督:葉偉信(ウィルソン・イップ)
スタイルコンサルタント:張叔平(ウィリアム・チャン)
音楽:川井憲次
アクション監督・主演:甄子丹(ドニー・イエン)
主演:謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、余文樂(ショーン・ユー)、董潔(ドン・ジェ)

ドラゴン(甄子丹)は、道場「龍虎門(ドラゴン・タイガー・ゲート)」 を創設した武術家フーフーの長男だが、幼い頃にワケあって秘密結社「江湖」のボス、 マーに拾われ、悪の世界で育つ。 一方、弟タイガー(謝霆鋒)は、「龍虎門」の師ウォン・ホンロンに育てられ、 武道のすべてを学ぶ。ある時、タイガーは「江湖」の一味に襲われるが、 絶体絶命と思われたところで、なぜか敵方は去っていく。 その場に残された翡翠のペンダントから、 「江湖」で異彩を放っていた技の持ち主が生き別れになった兄だと悟る。 そんなある日、「江湖」のボス、マーは、娘シャオリン(董潔)との平穏な暮らしを望んで、 巨大犯罪組織「羅刹門」との関係解消を表明する。 激怒した「羅刹門」のボスに虐殺されるマー。 ドラゴンは妹同然のシャオリンをタイガーに預けて、復讐のためにその場を去る。 タイガーもヌンチャクの名手ターボ(余文樂)と共に「羅刹門」に闘いを挑むが、 師ウォン・ホンロンを惨殺され、「龍虎門」の看板も奪われてしまう。 いよいよ全身全霊をかけた最後の闘いが始まる...。

香港で35年以上も愛読され続けている漫画「龍虎門」からエピソードを抽出して映画化。 CGを駆使した映像は、まさにコミックの世界だが、張叔平の映像美は健在。 ドニー・イェンのまっすぐ見据えた目線が、 長く垂れた前髪の陰から刺さるように飛んできます。 謝くんの綺麗なお顔は、前髪に隠れていてよく見えない...。 ショーンの緑がかった金髪は、彼のまじめなイメージにはちょっとあわないかな。 ショーンの顔もやっぱり前髪で半分隠れています。 そう、まさに人物もコミックから飛び出してきたよう!  久しぶりの謝くんたちの香港映画、もっとちゃんと顔を見たい!(咲)

2006年/香港/カラー/シネスコ/ドルビーSR ドルビーデジタル/94分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by:ヒューマックスシネマ
提供:ギャガ・コミュニケーションズ x フジテレビジョン

公式HP>>  http://kachikomi.gyao.jp/

★4月14日(土)より、 シネマGAGAほか全国ロードショー


『ツォツィ』TSOTSI

監督・脚本:ギャビン・フッド
撮影:ランス・ギーワー
音楽:マーク・キリアン、ポール・ヘプカー
原作:アソル・フガード「ツォツイ」青山出版社より4月発刊予定
出演:プレスリー・チュエニハヤエ(ツォツイ)、テリー・ベト(ミリアム)、ケネス・ンコースイ(アープ)、モツスイ・マッハーノ(ボストン)、ゼンゾ・ンゴーベ(ブッチャー)、ZOLA(フェラ)、ジュリー・モフォケン(モリス)ほか

南アフリカ、ヨハネスブルグのスラム街。過去を封印し、自分の本名さえ名乗らず「ツォツィ(不良)」とだけ呼ばれる少年がいた。彼の仲間は、切れやすく冷酷なブッチャー、とろいが気のいいアープ、先生になりそこねた頭の良いボストンだ。街を徘徊する4人の今日の獲物は恰幅の良い黒人紳士。ネクタイを買うのに袋ごとの現金を懐から出すのを見てしまったのだ。電車に乗り込んで紳士を取り囲み、ブッチャーがアイスピックで一突きする。4人は金を手に入れ、うまく逃げ出すが、ボストンはショックがおさまらない。酒に酔ってリーダーのツォツィをなじり、「名前はなんだ?親はいるのか!お前は捨て犬か!」と叫ぶ。怒りが吹き上げたツォツィはボストンを袋叩きにし、1人高級住宅地へ向かう。降りたばかりの女性の車を奪い、走り出すと、後ろの座席には赤ん坊が残されていた。

昨年のアカデミー賞で最優秀外国語映画賞を受賞した作品です。ギャヴィン・フッド監督は南ア生まれ、当地の大学を卒業した後、一時俳優として活動。アメリカUCLAで監督と脚本の勉強をして南アに戻り、映画制作をしています。プロデューサーに声をかけられたとき、この作品の映画化をずっと待っていた!と、原作のスピリットを生かし現代に置き換えた脚本を猛スピードで書き上げたそうです。絶望と怒りの中で無為に暮らすツォツィと対照的な、シングルマザーのミリアムが美しく、無垢な赤ん坊が南アフリカを変えていく希望の象徴のように思えました。南アでもっとも流行っているという音楽、クワイトが力強く全編を彩り、シンガーのZOLAも出演しています。アソル・フガードの原作は公開に合わせて発売されますので、そちらもご覧ください。(白)

2005/イギリス=南アフリカ共同制作/カラー/95分/シネマスコープ/SR,SRD
配給:日活、インターフィルム 宣伝:ムヴィオラ

公式 HP >> http://www.tsotsi-movie.com/

★4月14日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー


『ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド』(That's the way of the world)

監督・製作:シグ・ショア
原作・脚本:ロバート・リプサイト
音楽:モーリス・ホワイト、アース・ウインド&ファイアー(以下EWF)
出演:ハーヴェイ・カイテル(コールマン)、エド・ネルソン、シンシア・ボスティック(ヴェロア) 、バート・パークス

敏腕音楽プロデューサーのコールマンは、新進気鋭のバンド、その名も「ザ・グループ」(EWF)を、これぞ次世代の音楽と自信を持ってレコーディングしていた。しかし、その最中に社長から呼び出され、白人グループ「ベイジス」のプロデュースを命ぜられる。ところがそれは人気絶頂のカーペンターズのまがいもののようなグループ。彼がこれまで築き上げてきた名声に傷をつけかねない代物で、彼は到底納得できない。それでも、社長に業界からの追放までちらつかされては、命令に従わざるを得なかった。コールマンはザ・グループのレコーディングを中断し、ベイジスに取りかかるが、ザ・グループのメンバーからは不審を買い、ベイジスのヴェロアからは言い寄られ、次第に追い詰められていく。

1975年の作品ですが、日本初公開となります。70年代の巨大産業化した音楽業界の裏側を描いた作品で、現代にも通じる痛烈な社会批判を含んでいます。加えて、コールマンのアーティストとしての戦いを描いた物語でもあるし、更にはこの映画のサントラ(邦題:暗黒への挑戦)が大ブレイクのきっかけとなったEWFの当時のライブ映像を観られる貴重な資料でもあります。EWFの音楽が好きだったわたしは、当時のライブシーンを観られただけでも興奮もの(ピ、ピアノが回ってる^o^;)。アメリカ公開当時はあまりヒットしなかったようですが、今観ると色んな側面から楽しめる作品です。コールマンを演じているのは、ハーヴェイ・カイテル。『タクシードライバー』を撮る前年で、これまた若くてかっこいいんですよ。(梅)

1975年/アメリカ/100分/カラー/字幕翻訳:落合寿和
配給:シネフィル・イマジカ
宣伝:B.B.B.inc.

公式 HP >> http://cinefil-imagica.com/world

★4月14日(土)よりシアターN渋谷にて、レイトショー決定!!


『輝ける女たち』原題:LE HEROS DE LA FAMILLE(英語題:Family Hero)

監督:ティエリー・クリファ
脚本:ティエリー・クリファ、クリストファー・トンプソン
撮影:ピエール・エイム
音楽:ダヴィッド・モロー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(アリス)、エマニュエル・ベアール(レア)、ミュウミュウ(シモーヌ)、クロード・ブラッスール(ガブリエル)、ジェラール・ランヴァン(ニッキー)、ミヒャエル・コーエン(ニノ)、ジェラルディン・ペラス(マリアンヌ)、ヴァレリー・ルメルシェ(パメラ)ほか

ニースのキャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエルが急死した。 彼と親子のように過ごしてきたマジシャンのニッキーは店を相続できるものと思っていたが、 遺言にはニッキーの子供たちに譲るとあった。ガブリエルの本意はどこにあるのか? 疎遠になっていた元妻のアリスとシモーヌ、 彼女たちとニッキーの子供ニノとマリアンヌも駆けつける。

豪華なスター共演、キャバレーで歌われる懐かしい歌、 たくみなストーリーテリングに最後までひきつけられ、楽しみました。 貫禄たっぷりのカトリーヌ・ドヌーヴはフランス映画祭に団長として来日しますね。 この作品がオープニング上映です。いち早く観たい方はどうぞ六本木へ。 歌姫役のエマニュエル・ベアールは、監督に「君の声で」と言われ、 きちんとレッスンを受けて歌っています。美人顔でないのに、とても美人だと思わせる人。 息子役のミヒャエル・コーエンは、フランス映画には希少な美男です。 公開作品がほかになくて残念。(白)

2006/フランス/35mm/カラー/シネスコサイズ/SRD
オリジナルサウンドトラックが4月上旬CINEMANIAより発売予定

http://www.kagayakeru-movie.com/

4月14日(土)より、Bunkmuraル・シネマほかにて全国ロードショー



『恋しくて』

監督・脚本:中江裕司
原案:BEGIN
撮影:具志堅剛
音楽:磯田健一郎
主題歌:「ミーファイユー」BEGIN インペリアルレコード
美術:金田克美
出演:石田法嗣(セイリョウ)、東里翔斗(栄順)、山入端佳美(加那子)、宜保秀明(マコト)、大嶺健一(浩)、与世山澄子(母)、平良とみ(おばぁ)ほか

石垣島は今日も太陽がまぶしい。高校生になった加那子は幼馴染の栄順に再会した。 父がいなくなった加那子がおばぁの家に引越して以来だ。 ひらめきだけで生きているようなにいにい(兄)セイリョウの一声「バンドやるどー!」で、 マコトは持ったこともないギター、栄順はボーカル、 加那子は恥ずかしがりの栄順を歌わせる役を担うことになった。 加那子の母は自分のバーでプロの歌手として歌っている。 加那子も歌が好きだったが、父が「奄美へ歌を探しに」行ったまま帰らなくなってからというもの、歌えなくなっていた。 栄順は加那子を気遣いながら、いつしか歌う楽しさに目覚めていく。

『ナビィの恋』、『ホテル・ハイビスカス』と沖縄から映画を発信している中江監督 4年ぶりの新作。 BEGINのエッセイにインスパイアされ、 オリジナルなストーリーを書き上げて作られた映画です。 『カナリア』で鮮烈な印象を残した石田法嗣が兄を好演。 ほかの4人の高校生は全て沖縄でオーディションして見つけた現役の高校生たち。 順撮り(シナリオの時間の経過通りに撮影すること)したことで、 彼らの成長がそのままドキュメンタリーのようにフィルムに残っています。 沖縄のことばは独特ですが、現地の高校生の彼らですからなぞったのではないホンモノ。 つきぬけて明るく元気な歌がいっぱい。文化祭のシーンの高校生たちの歌に驚きました。 まさに歌の島です。ビギニングが歌う「恋しくて」はBEGINの書き下ろし。(白)

配給:東京テアトル
原作小説:「恋しくて」中江裕司著 新潮社刊 4月12日発売予定

http://koishikute2007.jp/

4月14日(土)より、テアトル新宿にてロードショー
4月28日(土)より、銀座テアトルシネマ・109シネマズ川崎にてロードショー



2007年4月21日〜

『明日、君がいない』 原題:『2:37』

監督・脚本:ムラーリ・K・タルリ
撮影:ニック・マシューズ
音響デザイン:レスリー・シャッツ
出演:テレサア・パルマー(メロディ)、フラアンク・スウィート(マーカス)、サム・ハリス(ルーク)、チャールズ・ベアード(スティーヴン)、ジョエル・マッケンジー(ショーン)、マルニ・スパイレイン(サラ)、クレメンティーヌ・メラー(ケリー)

—2時37分、そのとき孤独が世界を満たす—

朝の空気、木漏れ日、ハイスクールのいつもの一日が始まった。 放課後、開かないトイレのドアの隙間から流れてくる赤い血に気づいた生徒の1人が助けを呼びに行く。 こじ開けられたドアの向こうに見えたのは・・・。
メロディ、マーカス、ルーク、スティーヴン、ショーン、サラ、6人のそれぞれが抱える様々な悩みや葛藤がカメラに向かって語られていく。明日いないのは、誰なのだろう?

ムラーリ・K・タルリ監督はこれが初監督作品。 自身が学生のときに友人が自殺して大きなショックを受け、 その半年後こんどは自分が自殺未遂。意識が遠のく中で恐怖にかられ、 もし助かったならもう2度とこんなことはしない、好きな映画を作ると思ったのだそうです。 翌朝目覚めて猛然と脚本を書き始め、36時間で第一稿が書きあがったのだとか。 それまでなんの経験もなかった19歳の彼をサポートしたのが、 撮影監督のニック・マシューズでした。 製作会社を作り、プロデュース、編集も助けています。 ほとんど映画初出演の俳優たちが演じていますが、まるでドキュメンタリーのように自然で演出された感じがしませんでした。 監督や俳優のこれからが楽しみです。
昨年の第19回東京国際映画祭コンペに『2:37』の原題で出品され、 同じく高校生が主人公の『十三の桐』とともに印象に残りましたが、 この作品のほうがより切実で心が痛みました。 同世代の若者はきっと深く共感することでしょう。 親世代の私は子供が抱える闇の深さに大人は気づかねば、と思いました。 かつては同じ若者だったのに、 記憶は錆付いて痛みに鈍くなっている自分・・・。(白)

2006/オーストラリア/1:1.85/カラー/99分/ドルビーデジタル
配給:シネカノン

http://www.cineamuse.co.jp

4月21日(土)より、渋谷アミューズCQNにてロードショー

2006年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品
2006年トロント国際映画祭正式出品
2006年メルボルン国際映画祭正式出品
第19回東京国際映画祭コンペティション公式出品



『アボン/小さい家』

監督・脚本:今泉光司
撮影:Boy Yniguez
音楽:ジョーイ・アヤラ、アーネル・バナサン
出演:ジョエル・トレ(ラモット)、Lui Q.Manansala (ラモットの母)、Nand San Pedero(ラモットの父)、Banaue Micalat(イザベル)、へーゼル(ケユ)、ニーナ(ビリット)、ハンジ(ノップノップ)、キドラット・タヒミック(村の自然医)ほか

2000年、フィリピンのバギオ市で乗り合いジープの運転手をしているラモットは日系3世。 山岳地帯から豊かな生活を求めて、都市部にやってきた。 高級住宅地で暮らすことを夢見るが、生活は楽ではない。 妻が外国へ出稼ぎにいくことになり、3人の子供たちと涙で別れてマニラへ行ったものの、 偽造パスポートが見つかり逮捕されてしまう。 渡航費用を借金して工面したラモットは返済に苦慮し、危ない仕事に手を出そうとする。 不法住居からも立ち退かされた一家は、両親を頼って田舎へ戻ることになった。 自然を敬い、つましく生活をする村の人々に囲まれて、子供たちはのびのびと暮らし始める。

バギオ市と北ルソン山岳地帯でのオールロケーション。このコルディリエラ地方には1900年頃、多くの日本人が労働者としてやってきて、急峻な山岳地帯の中での道路建設をしていたそうです。その後バギオには大きな日本人町が形成されるまでになりましたが、第2次世界大戦の折、日系民間人は日本軍に同行を強制され、戦後はフィリピン人からの憎悪の対象となり、苦難の道を歩まねばなりませんでした。日系人は人里離れた山の中へ移り、名前を隠してひっそりと暮らしたのだそうです。そんな史実を少しも知らずにいました。
今泉監督は96年からバギオ市で生活し、フィリピンの多くの映画関係者や、日本人、フィリピン北部の先住山岳民族の人々の協力を得てこの映画を製作しました。都市と山岳地帯の対照的な生活のようすがまるでドキュメンタリーのように、また芸達者な俳優によってコメディ色をも持って語られています。手作り感いっぱいですが、深いところにしみてくる作品でした。(白)

日本・フィリピン/カラー/オリジナル16mm、35mm/新デジタル日本語字幕版/1時間51分

公式 HP >> http://www.ne.jp/asahi/small/home/

★4月21日〜渋谷アップリンクXにて待望のロードショー


『机のなかみ』

監督:吉田恵輔(『なま夏』)
出演:あべこうじ、鈴木美生 ほか

フリーター馬場が家庭教師として教える事になったのは、女子高生の望。その可愛いさに馬場はメロメロで、同棲している彼女がいながら、何かとちょっかいだそうとする。望はそんな馬場の攻撃を軽くかわしながら、今の成績ではとても受かりそうにない志望大学目指して猛勉強。彼女が頑張るのには理由があった。そんな彼女の秘めた思いも知らず、馬場の妄想は広がるばかり。

前半は馬場の視点で、後半は望の視点で描かれて、馬場の勘違いし放題な半年間の実態が明かされるという構造になっています。なんだかちょっと痛くて、クスッと笑ってしまうお話です。態度は粗暴だけど乙女な心をもった馬場の彼女に親近感を覚えて、好きでした。(梅)

2006/日本/ヴィスタサイズ/カラー/104分
製作:日本出版販売/アムモ
配給:アムモ
配給協力:トライネットエンタテインメント

公式 HP >> http://www.tsukuenonakami.com/

★4月21日(土)よりテアトル新宿にてレイトショー


『フライ、ダディ』

監督・脚本:チェ・ジョンテ
原作:金城一紀「フライ、ダディ、フライ」
撮影:チェ・ジェヨン
音楽:ソン・ギワン
出演:イ・ジュンギ(コ・スンソク)、イ・ムンシク(チャン・ガピル/チャンガ)、キム・ソンジュン(オ・セジュン)、キム・ジフン(チェ・スビン)、イ・ヨンス(ガピル妻)、イジュ(カン・テウク)、キム・ソウン(チャン・ダミ)、ペク・ソンギ(バス運転手)ほか

妻と娘を愛する平凡なサラリーマンのガピル。真面目に働いてマンションも買い、昇進も間近だ。そんな彼に、ふってわいたような悲劇が!愛娘のダミがカラオケ店で男子高校生に殴られ怪我をしたというのだ。相手は高校ボクシングのチャンピオンのカン・テウクだった。学校と実家に守られている彼は、型どおりの謝罪のことばのみ。ショックのあまり娘にあたって、「帰って!」と追い出されてしまう。カン・テウクに復讐しようと、刃物を持って高校にやってきたガピルはコ・スンソクの一撃で気絶する。スンソクとその友人達にわけを聞かれ、ガピルは喧嘩の強いスンソクに弟子入りを頼みこむ。

韓国公開は2006年8月、『王の男』は2005年12月。イ・ジュンギの目の強さが気に入ってキャスティングしてから『王の男』が始まり、イ・ジュンギが大ブレイクしてしまい、「父と娘」の物語を撮ったのに、話題がジュンギのほうへ行ってしまったと、監督の話がプレスにありました(笑)。原作者が脚本も担当した日本版(2005年)では、岡田准一(パク・スンシン)、 堤真一(鈴木一) の組み合わせでしたが、堤真一が(どうしてもカッコよくて)へなちょこサラリーマンには見えなかったんです。韓国版のイ・ムンシクは普通のお父さんが「ダディ」になっていくところが、よく出ていました。体重を15kgも増やしたうえ、今度は減らしたりと苦労しています。娘をひたすら思う気持に世の父親は共感するでしょう。イ・ジュンギは正面は中性的ですが、横顔は男性的。この先どんな顔を見せてくれるのか楽しみです。前作で身についた色っぽさが抜け切ってないとこがある、と監督談ですがそのへんも楽しみに観てください。軽快なダンスを見せるオ・セジュンにお〜っと思いましたが、彼はプロのダンサーでもありました。エンドロールでもたくさん踊ってくれてます。日本版よりどのエピソードも濃いなぁという印象でした。さすが東洋のイタリア(?)な韓国の映画です。(白)

2006/韓国/カラー/117分/ヴィスタ/ドルビー
配給:エスピーオー 宣伝:スキップ

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/flydaddy/

★4月21日(土)より シネマート新宿、シネマート六本木にてロードショー


2007年4月28日〜

『あしたの私のつくり方』

監督:市川準
脚本:細谷まどか
原作:真戸香(講談社刊)
撮影:鈴木一博
音楽:佐々木友理
主題歌:「天気予報」シュノーケル
美術:山口修
出演:成海璃子(大島寿里)、前田敦子(花田日南子)、石原真理子(寿里の母)、石原良純(寿里の父)、高岡蒼甫(田村先生)、近藤芳正(小学校担任)、奥貫薫(日南子の母)、田口トモロヲほか

大人になった少女たちに、見てほしい物語があります

小学生の寿里(じゅり)はどこにでもいる平凡な女の子。仲間はずれにされたくなくていつも友達に合わせてしまう、クラスで人気者の日南子(かなこ)に、ひそかに憧れていた。寿里の両親は毎日ケンカばかりしていて、それも悩みの種。挑戦した中学受験に失敗し、学校に久し振りに戻ると日南子が女子から総スカンをくっていた。卒業式の日、偶然二人きりになった寿里は、日南子から「ホンモノの自分」と「ニセモノの自分」の話を聞く。
そして中学生になって寿里の両親が離婚し、同級生から日南子が転校したと聞いた寿里は、初めて携帯へメールを送る。

『トニー滝谷』、『あおげば尊し』の市川準監督最新作。14歳の成海璃子、秋元康が手がけるアイドルプロジェクト「AKB48」の前田敦子15歳が、ホンモノとニセモノの自分の間で揺れ動く中学生を演じています。二人は離れてしまってから、携帯のメールのやりとりをするのですが、その内容が思わずくすっと笑ってしまう可愛さ、いや大人の付き合いにも通じるものかも。
その1.聞き上手がモテ上手
その2.あえての恋愛相談が、友情を深める
その3.奇数人のグループを見つけて合流すること
・・・
あとは劇場でお確かめください。イケメンな若手男優が多くなったこのごろですが、この二人のように将来楽しみな女優さんも増えています。思春期には大事なものも、そして問題もいっぱいあったなぁと思い出します。(白)

2007/日本/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーSR/97分
©明日の私のつくり方製作委員会
宣伝:メディアボックス、日活

公式 HP >> http://watatsuku.goo.ne.jp/

★4月28日(土)より、シネ・リーブル池袋、渋谷アミューズCQNほか全国順次ロードショー


『イノセントワールド —天下無賊—』

監督・脚本:フォン・シャオガン
撮影:チャン・リー
美術:チャオ・ジン、チャオ・ハイ
オープニング曲「ラヴィアン・ローズ」小野リサ
エンディング曲「知道不知道」:Yae
出演:アンディ・ラウ(ワン・ポー)、レネ・リウ(ワン・リー)、グォ・ヨウ(フー・リー)、リー・ビンビン(シャオイエ)、ワン・バオチアン(シャーケン)ほか

息の合う泥棒コンビのワン・ポーとワン・リーは愛し合う恋人同士でもあったが、 リーは足を洗ってまともな暮らしをしたいと望んでいた。 草原を走る車の中で大喧嘩した挙句リーは車を降り、怒ったポーは走り去ってしまった。 1人歩き続けて倒れそうになったころ、自転車で通りかかった青年シャーケンに助けられる。 彼は出稼ぎで貯めた結婚資金6万元を持って故郷に帰ろうとしていた。 リーはポーに再会したが、人を疑うことを知らない純朴なシャーケンは、 駅で6万元のことを口にしてしまう。リーはシャーケンを守ろうと心に決めるが、 大金を狙っているのはポーだけではなかった。


中国で人気のフォン・シャオガン監督恒例のお正月映画。 2005年の公開時、2週間で8000万元を稼ぐ大ヒットとなりました。 壮大な風景に豪華な列車の中など、なかなか目にすることのできない舞台と、 人気・実力を兼ね備えた俳優陣。 アンディ・ラウとレネ・リウの泥棒コンビの愛情物語を縦糸に、 この2人とスリ合戦を見せるグォ・ヨウをボスにいただく窃盗団との攻防がからんできます。 無垢な青年に気づかれないよう、あの手この手のやりとりがスリリングで見ものです。(白)

2004/中国/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/1時間56分
配給:キネティック、アルゴ・ピクチャーズ 宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
4月28日(土)より, 渋谷Q-AXにてロードショー
http://www.q-ax.com/

公式サイト http://www.official.cine-tre.com/innocentworld/



『ストリングス〜愛と絆の旅路〜』

(オリジナル・バージョン)
監督・脚本:アンデルス・ルノウ・クラルン
(ジャパン・バージョン)
監督:庵野秀明
脚色:長塚圭史
出演(声):草なぎ剛、中谷美紀、劇団ひとり、優香、小林克也、香取慎吾、戸田恵子、伊武雅刀、市村正親

へバロン王国の暴君カーロが己の所業を悔いて自殺した。遺書には平和を願って穢れを知らぬ息子のハルに王位を譲ると書かれていた。ところが王位を狙うカーロの弟・ニゾは遺書を破り捨て、その死を敵対する一族ゼリスの長、サーロによるものに見せかける。何も知らないハルは、心配する妹ジーナを城に残し、家臣のエリトと共に仇を捜す旅に出る。旅の途中でハルが見たものは、父王の死を知って喜ぶ民衆や、荒廃した土地など、想像だにしなかった国の惨状だった。


© 2004 Bald Film

デンマーク生まれの、CGもVFXも使わず、作り込んだセットと、熟練の人形使いたちに命を吹き込まれた人形によって生み出された気品あるファンタジー映画です。
木製のマリオネットによる人形劇なのですが、マリオネットを操る糸が天上から下りていて、頭の糸が切れることが死を意味し、運命の人とは天上で糸同士がつながっているなど、独自の世界観を丁寧に作り上げた、これまでにない人形劇になっています。冒頭のシーンは「王宮の室内なのに、なぜ雨が?」と不思議に思ったのですが、皆が天上からの糸につながっているので、この世界では建物に天井が無いのでした! 城門も下りるのではなく、上がると出入りが出来ないのです。
今回の日本公開版は、ジャパン・バージョンと称して庵野監督や長塚圭史さんによる脚色が施されているようですが、どんな変更が行われたのか、オリジナル・バージョンも観て比較してみたいものです。(梅)

マリオネットの糸は普通見えないように工夫するものですが、 この作品はその糸がとても大事。文字どおり天から降りてくる命の糸です。 長い長い糸に繋がった彼らが大勢いたら、絡まるでしょうにと思ったら、 子供たちが遊んでいて「絡まっちゃった!」と言うシーンがあり、笑ってしまいました (お母さんが丁寧にほどく)。様々な素材でできたマリオネットたちがとても表情豊かです。 雨の中、水の中、火の中でまでも自在に動き回り、もうびっくりでした。 この作品のプレスにはちゃんと庵野監督(エヴァンゲリオンの)、脚本家が載っています。 翻訳したものを元に、日本語のセリフを作り上げ、声優を演出するってことなのでしょうか (他の作品はどうだったっけ)?普通の映画のキャストのような声優陣も豪華です。(白)

制作:ジェイ・ドリーム
提供:ジェイ・ドリーム、エイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日、プレシディオ、ファントム・フィルム
配給:エイベックス・エンタテインメント+ジェイ・ドリーム
宣伝:ファントム・フィルム
宣伝協力:アンカー・プロモーション

公式 HP >> http://www.stringsweb.net/

★4月28日(土)より、ホップ・ステップ・ジャンプ!ロードショー
TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて


『バベル』  原題: BABEL

製作・原案・監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本・原案:ギジェルモ・アリアガ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、アドリアナ・バレッザ、菊地凛子


本年度アカデミー賞最有力候補作品!
ブラッド・ピット、役所広司ほか、3大陸4カ国の夢のスーパーキャストたちが終結した、
2007年最大の話題作が、世界を揺るがす!

メキシコ、モロッコ、そして東京。
出会うはずのはい人々が運命のいたずらによって絡み合ったとき、
3つの事件がひとつにつながる

言葉が通じない。心も伝わらない。想いはどこにも届かない。
かつて神の怒りに触れ、言語を分かたれた人間たち。
我々バベルの末裔は、永遠に分かり合う事ができないのか?
世界規模のスケールで人類の絶望と希望を描く衝撃のヒューマン・ドラマが、いよいよ日本上陸!

2007年、世界はまだ変えられる。

モロッコ、アトラス山脈。密かに猟銃を手に入れたベルベル人の父親が、 山羊を襲うジャッカルを撃つためにと、まだ少年の息子二人に猟銃を渡す。 競って試し撃ちをする二人。崖下を行くバスをめがけて弟の放った弾が、 アメリカ人観光客の女性(ケイト・ブランシェット)の腕に当たってしまう。 夫(ブラッド・ピット)は、瀕死の彼女を助けようと必死に叫ぶが、 アメリカ政府は、テロリストに襲撃されたとして厳戒態勢で臨み、 なかなかヘリコプターをよこそうとしない。 アメリカ人夫婦は、メキシコ国境に近いサンディエゴの留守宅に幼い子供たちをメキシコ人のベビーシッターに預けて旅に出てきていた。 夫婦が予定通りに旅から帰らないため、 ベビーシッターの老女はメキシコにいる息子の結婚式に出席するため、 子供たちを連れて国境を越える。 結婚式も無事終わり、 披露宴での酒がまだ抜けない甥(ガエル・ガルシア・ベルナル)の運転する車で、 サンディエゴに帰ろうとするが、国境で飲酒を咎められた上に、 白人の子供たちを連れていることを不審に思われ、 甥は国境を強行突破してしまう。 一方、遠く離れた東京では、聾唖の女子高校生(菊地凛子)が、 人並みに愛を得たいともがいている。 彼女の母親は自殺してしまい、父(役所広司)と二人暮らしだが、 仕事に忙しい父は娘をなかなかかまってやれない...。


©2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.

モロッコ、アメリカ・メキシコ、日本と、遠く離れて暮らす人々の姿が、 交差して映し出され、ことに東京での場面は唐突な感じがしてしまう。 が、やがて3つの地点での悲劇的な出来事が実は繋がっていることがわかる。

メキシコとの国境の米国警察が、 必死に説明しようとする老女の言葉を聞こうともしない態度や、 アメリカ人が襲撃されればテロだと思い込む米国政府の対応は、 9.11以降、過剰なまでにテロとの闘いを推し進める米国政府の姿を揶揄しているようだ。

アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた菊地凛子の体当たり演技は、確かに凄い。 でも、あれが日本の現代の若者の姿と勘違いされるのではと、ちょっと怖い気もする。
ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、 役所広司という名の通った役者たちの演技はごくごく控えめだ。 イスラーム文化圏好きの私にとっては、なによりもモロッコのベルベルの人たちの風俗や、 素人の人たちの自然な演技に興味を惹かれた。

言葉が通じないことによって引き起こされる摩擦を描く一方で、 心が通い合えば平和が得られる可能性を示唆していて、見終わったあと、 ずっしり重いものを感じた。(咲)

メキシコ/143分/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル
提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズ

★4月28日(土)よりスカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー

公式HP>>  http://babel.gyao.jp/



『恋愛睡眠のすすめ』
画像:(c) couramiaud - horse created by Lauri Faggioni

監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
製作:ジョルジュ・ベルマン
撮影:ジャン=ルイ・ボンポワン
音楽:ジャン=ミシェル・ベルナール
芸術監修:ピエール・ベル、ステファヌ・ローセンバウム
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(ステファン)、シャルロット・ゲンスブール(ステファニー)、アラン・シャバ(ギィ)、ミウ=ミウ(母)、ピエール・ヴァネック(上司)、エマ・ド・コーヌ(ゾーイ)、オレリア・プティ(マルチーヌ)、サシャ・ブルド(セルジュ)ほか

デザイナーのステファンはメキシコから母の住むパリに戻り、カレンダー会社に勤めることになった。期待と違う退屈な仕事にがっかりするステファン。ある日アパートの隣にステファニーが越してくる。次第にステファニーに恋心が募ってくるが、シャイな彼は告白することができない。夢の中ではどんなこともできるのに・・・。思い込みが激しいステファンは夢と現実の区別がつかなくなって、現実のステファニーにプロポーズしてしまう。

『エターナル・サンシャイン』でヒットを飛ばしたミシェル・ゴンドリー監督が、今度は自分がかつて住んでいたアパートを舞台に、夢と現実をさまよう青年のストーリーを映像化しました。ステファンは監督の分身であるようです。夢と現実を行き来するのがめまぐるしくて、そのうちステファンのように観ているほうもどっちなのか境界がわからなくなります。
クリエイターであるステファンとステファニーの部屋や、夢の世界のダンボールや布などでできた舞台がとても楽しくてモノ作りが好きな人、「不思議ちゃん」好きな人は必見。ステファンは考えればちょっとあぶない男の子なんですが、ガエル・ガルシア・ベルナルが演じるとなんだか可愛いです。シャルロット・ゲンスブールが落ち着いているので、恋人というより保護者に見えてしまいました。妙な同僚たちをベテランが演じて笑わせます。(白)

2006/フランス、イタリア/カラー/105分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
★3月17日(土)フランス映画祭でも上映

公式 HP >> http://renaisuimin.com/

★4月28日(土)より、シネマライズほかにてロマンティックにロードショー


『ザ・ライド〜ハワイアン・ビーチ・ストーリー』

監督・脚本:ネイザン・クロサワ
音楽総指揮:グレッグ・ゴールドマン
演出:スコット・デイビス、シーン・クアワ、メリー・パアラニ ほか

サーフィンの若きワールドチャンピオン、デビッドは、メディアやファンに騒がれて、最近自信過剰気味だった。そんな中、ハワイのノースショアでの大会でワイプアウトし、波にもまれて意識を失う。気がついたとき、何と彼は1911年のワイキキ・ビーチにいた。彼を助けてくれたのは、ハワイアンのパオアだった。そのパオアこそ、伝説的サーファーであり、オリンピックで2度にわたり100m自由形金メダルを獲ったデューク・カナハモクだった。デビッドは100年後の世界から来たことを話すが、誰も信じるはずがなかった。ただ一人、美しいレファだけは彼を未来が読める人だと言ってくれる。手つかずの自然の中で、デュークたちとクラシックスタイルなサーフィンを学ぶ毎日。デュークは言う「ボードではなく、波に乗るんだ」と。デビッドは次第にハワイアンが持つ自然に対する畏敬の念を理解し、人として成長していく。

© 2003 Third Reef Pictures.

ワイキキ・ビーチというと、巨大な観光ホテルが建ち並ぶ一大リゾートですが、1911年当時ホテルは一軒しかなく、自然豊かな静かなビーチでした。主人公がタイムスリップしたことに気付かず、「あのホテルが建ち並ぶワイキキ・ビーチはどこだ?」とパニックになるのも無理ないほど、この100年あまりで変わったのです。それでもハワイアンの大自然に対する畏敬とそこから学ぶ謙虚さは、文化として受け継がれているようです。親しみやすく爽やかな物語の中に、監督のそんな故郷ハワイに対する溢れる愛情を感じます。2003年ハワイ国際映画祭での上映は大変な盛り上がりをみせ、見事観客賞を受賞したそうです。(梅)

2003年/アメリカ映画/91分/カラー/スタンダード
提供:レイドバックコーポレーション
配給・宣伝:グラッシィ

公式 HP >> http://www.glassymovie.jp/movie/ride.html

★4月28日(土)より、渋谷Q-AXシネマにてモーニング&レイトショー!


「日中国交正常化35周年記念 2007年中国映画祭」

会 場 : 新宿バルト9
期 間 : 2007年8月31日(金)〜9月3日(月)
主 催 : 文化庁、中国国家広播電影電視総局電影管理局
共 催 : NPO法人映像産業振興機構(VIPO)、新宿バルト9
後 援 : 在日本中国大使館、社団法人日本映画製作者連盟、協同組合日本映画製作者協会、 財団法人日本映像国際振興協会

◆上映作品

8月31日(金)オープニング上映『夜の上海』招待
この作品は9月22日(土)より、ロードショー公開されます。

9月1日(土)舞台挨拶あり
13:00 『美しきホームランド』 ガオ・ファン監督
15:10 『天狗』チー・ジエ監督
17:30 『公園』 イン・リーチュエン監督
19:40 『恋人紐』フォ・ジェンチィ監督

9月2日(日)
11:00 『赤いネッカチーフをつけた二人の女』ハン・ジージュン監督
13:00 『トルファンの恋歌』ジン・リーニー監督
15:00 『THE LAW OF ROMANCE=ロウ・オブ・ロマンス』シュ・ゲン監督
17:00 『美しきホームランド』
19:00 『恋人紐』

9月3日(月)
11:00 『公園』
13:00 『天狗』
15:00 『赤いネッカチーフをつけた二人の女』
17:00 『トルファンの恋歌』
19:00 『THE LAW OF ROMANCE = ロウ・オブ・ロマンス』

http://www.vipo.or.jp/jp/china/



「第3回 アジア海洋映画祭イン幕張」

とき:9月14日(金)〜16日(日)
会場:シネプレックス幕張
   ホテルスプリングス幕張 国際ホール (表彰式など)

コンペティション作品(8/24現在での情報)

今日という日が最後なら
2007年・日本・107分
【監督・脚本】柳 明菜
【音楽】伊豆一彦
【キャスト】森口彩乃、柳裕美、清水増子、藤谷文子、本多章一、岡田真由子
練習曲
2006年・台湾・108分(英題:Island Etude)
【監督】陳懷恩(チェン・ホァイエン)
【出演】東明相、楊麗音、呉念真、SAYA、胡徳夫 他
妻の愛人に会う
2005年・韓国・92分
【監督】キム・テシク
【出演】朴広正、鄭普碩
ぼくのフットボールの夏
2006年・台湾・103分(原題:奇蹟的夏天  英題:My Football Summer)
【監督】楊力州・張栄吉
【出演】美崙中学校サッカー部の17人 他
野。良犬
2007年・香港(原題:The Pye-dog)
【監督】郭子健
【出演】陳奕迅、曾志偉、林子祥
約束
フィリピン(英題:The Promise)
【監督】Mike Tuviera
【出演】Richard Gutierrez Angel Locsin

公式 HP >> http://www.amffm.net/



2007年9月14日〜

「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2007」

会期:9月14日(金)〜24日(月・祝)
場所:ソラリアシネマ1(福岡市中央区天神2-2-43 ソラリアプラザ7F)
エルガーラホール(福岡市中央区天神1-4-2 エルガーラビル8F)他

16年間ディレクターを務められた佐藤忠男氏が退かれ、 どんな切り口になるのかと興味津々でしたが、8月に行なわれた記者会見では、 「市役所にしては、ここまでやっていいのか〜という所までやっていきたい」 と意欲満々の発表でした。試写で観た作品も、テンポの速い作品が多くて、 一味違ったアジアフォーカスになりそうです。

16カ国・地域の32作品が上映されるほか、協賛企画や、シンポジウムなど、盛りだくさん! 是非、HPでチェックしてみてください。
http://www.focus-on-asia.com

【上映作品】
特集1「I Want to Dance! 泣くな、踊れ、アジアの女性たちよ!」
◆バナジャ(2006年/インド・アメリカ/111分)
◆ダンシング・ベル(2007年/マレーシア/98分)
◆マイ・マザー・イズ・ア・ベリーダンサー(2006年/香港/100分)
◆あたしが踊る!(2006年/中国/83分)
特集2「ディーパ・メータ監督特集 〜ディアスポラのアジア」
カナダ在住のインド女性監督の三部作
◆とらわれの水(2005年/インド・アメリカ/118分)
◆1947年・大地(1998年/インド・アメリカ/104分)
◆炎(1996年/インド・アメリカ/101分)
日本の民衆史
◆陸(おか)に上がった軍艦(2007年/日本
◆新・あつい壁(2007年/日本
◆小梅姐さん(2007年/日本
福岡フィルムコミッション支援作品
◆相撲ら!(2007年/マレーシア・日本
◆逃亡くそたわけ−21才の夏(2007年/日本
アジアの新作・話題作
◆砂塵を越えて(2006年/イラク・フランス/76分)
◆地の果てまでも(2006年/イラン/89分)
◆天空の路(2006年/ウズベキスタン/77分)
◆ドン(2006年/インド/171分)
◆いきなり、ダンドゥット(2006年/インドネシア/95分)
◆永遠探しの3日間(2006年/インドネシア/110分)
◆ここに陽はのぼる 〜東ティモール独立への道(2006年/シンガポール・東ティモール/81分)
◆早春譜(2006年/タイ/112分)
◆ミージュー(2007年/タイ/80分)
◆アオザイ(2006年/ベトナム/135分)
◆風と砂の女(2006年/モンゴル・韓国・フランス/123分)
◆トゥーヤの結婚(仮題)(2006年/中国/96分)
◆自転車で行こう(2006年/台湾/83分)
釜山アジア短編映画祭2007入賞作品
※以下の6作品をひとつのプログラムとして上映
◆贈り物(2006年/韓国/28分)
◆普通の人々(2007年/韓国/28分)
◆過ぎ去る一日(2007年/韓国/19分)
◆道具(2006年/韓国/8分)
◆いつか判る(2007年/韓国/21分)
◆グレースランド(2006年/タイ/17分)



2007年10月12日〜

「ビョン・ヨンジュ監督特集 [上映+トーク]」

山形国際ドキュメンタリー映画祭『アジア千波万波』の審査員として来日する監督を東京に迎え、まるごとビョン・ヨンジュ監督・作品の魅力に浸かる!

2007.10.12 (金) 〜 14 (日)

10月12日(金)19:00〜20:30
前夜祭 「ビョン・ヨンジュ監督と語ろう!」
ビョン・ヨンジュ × 斉藤綾子 対談 [上映なし]

場所:港区立男女平等参画センター リーブラ
http://www.kissport.or.jp/sisetu/libra/index.html
参加費無料 (保育あり:事前にリーブラまで)
JR 田町駅下車 東口徒歩2分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅下車 徒歩4分
港区芝浦3-1-47 TEL: 03-3456-4149

10月13日(土)&14日(日)
特集上映 「ビョン・ヨンジュのすべて」
[5作品上映+監督トーク]

場所:シネマート六本木
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/index.html
六本木駅より徒歩2分
港区六本木3-8-15 TEL: 03-5413-7711

*チケットはすべて当日券のみです。
1回券=1500円
13(土)1日券=3900円
14(日)1日券=2600円

10月13日(土)@シネマート六本木(スクリーン4)
13:00〜『ナヌムの家』
14:40〜 監督トーク
15:40〜『ナヌムの家II』
17:20〜『息づかい』
18:40〜 監督トーク

10月14日(日)@シネマート六本木(スクリーン4)
12:00〜『密愛』
14:00〜 監督トーク
15:00〜『僕らのバレエ教室』
17:00〜 監督トーク

主催・山形国際ドキュメンタリー映画祭
   港区立男女平等参画センター リーブラ
共催・FAV (連連影展)

協力:シネマート六本木、SPO、パンドラ、ハピネット、シネマトリックス、SIB
会場:シネマート六本木・港区立男女平等参画センター リーブラ

お問い合わせ:山形国際ドキュメンタリー映画祭・東京事務局
TEL: 03-5362-0672
E-MAIL: nac@tokyo.yidff.jp

ビョン・ヨンジュ監督関連記事掲載号の紹介
『ナヌムの家』紹介 36号37号 (在庫なし。記事リンク
『息づかい』監督インタビュー 49号
『蜜?密?愛』監督インタビュー 57号
『僕らのバレエ教室』監督インタビュー 66号, 67号



2007年10月14日, 19日, 20日, 21日

「第3回甲賀映画祭」

滋賀県甲賀市で第3回甲賀映画祭が開催されます。
(公式HP:http://cinepa.jp/site/kff07/index.html)

今年の映画祭テーマは「かぞくのえいが」。家族にまつわる作品の特集です。
  >> スケジュール

滋賀県近江八幡市を中心にロケされた、 今秋公開予定の中国映画『呉清源 極みの棋譜』のプレミア上映もあります。

■日時:10月14日(日)・19日(金)・20日(土)・21日(日)
■会場:忍びの里プララ・水口アレックスシネマ・碧水ホール・水口社会福祉センター
■チケット
(一般)
 1回券:前売 800円 当日1,000円
 3回券:前売2,100円 当日2,400円
(こども)
 1回券:500円(前売・当日とも)
(フリーパス) 4,000円(前売・当日とも)
(『呉清源 極みの棋譜』プレミア上映) 前売1,500円 当日1,800円

前売り券は好評発売中!
・チケットぴあ
・コンビニ(ファミリーマート・サンクス・サークルK)
Pコード 478-010
 (『呉清源 極みの棋譜』プレミア上映 553-192)

■問合せ:甲賀シネマパーティー
(甲賀映画祭実行委員会)
Tel : 0748-63-2006
Fax : 0748-63-0752
E-mail:info@cinepa.jp


「第20回東京国際映画祭」

期間:2007年10月20日(土)〜10月28日(日)
会場:六本木ヒルズ(港区)、Bunkamura(渋谷区)ほか
主催:ユニジャパン(財団法人日本映像国際振興協会/第20回東京国際映画祭実行委員会)

前売券(一般発売)発売日  2007年10月6日(土)

公式HP>> http://www.tiff-jp.net/





*主要部門*
コンペティション

特別招待作品
『ミッドナイト・イーグル』、『シルク』、『オヲン座からの招待状』、 『鳳凰 わが愛』、『レイ・ハリーハウゼン特集』他

アジアの風
より広く、より深く、範囲を中東・中央アジア・南アジア・東アジアに拡大
エドワード・ヤン追悼特集も

ワールド・シネマ  ★新企画
ヨーロッパや南北アメリカの作品を中心に、話題の新作を紹介。 国際映画祭で高い評価を受けた秀作や、有名監督の最新作などを日本初上映

日本映画・ある視点

第20回特別企画 映画が見た東京 
戦後から、高度成長期、バブル、そして現代まで、映画の中に 映し出されたさまざまな東京の風景
あなたの選んだ映画が国際映画祭の上映プログラムに!!
戦後から今日までの“東京”を描いた、心に残る一本を大募集!!

 
     下町               野獣狩り

<あなたが選ぶ「映画が見た東京」 応募要項>

応募期間:8月10日(金)午前10時 〜 31日(金)午後11時59分

応募方法:
 東京国際映画祭公式サイト(http://www.tiff-jp.net/ja/)へアクセスし、 あなたが選ぶ「映画が見た東京」応募専用メールアドレス(eiga-tokyo@tiff-jp.net)に必要事項を記入の上、メールを送信してください。(※携帯からのご応募も可能)

応募対象作品:ジャンルは問いません。東京が舞台、東京で撮影、東京がテーマであるなどの作品から1本を選び、関連エピソードも併せてご応募ください。

結果発表:10月初旬に東京国際映画祭公式サイトにて発表。

プレゼント:以下、1か2のどちらか、ご希望の方を明記してください。

  1. 第20回東京国際映画祭「映画が見た東京」の指定席引換券 20名様
    このチケットは満席の場合はお断りする可能性がございます。
  2. 第20回東京国際映画祭公式プログラム 20名様

お問い合わせ:東京国際映画祭事務局  tiffinfo@tiff-jp.net




映画批評家プロジェクト
映画祭期間中に「コンペティション」部門の作品を鑑賞のうえ、 1作品につき800字以上、1500字以内の批評文を募集。複数応募可能。

応募締切り : 11月15日(木)必着

年齢、性別の制限はありません。映画に関する媒体に対し、 原稿料を伴う執筆経験者は応募不可です。 (但し個人ウェブサイト、ブログ等の執筆に関しては、 上記に範囲に入らないものとします。)
*自主企画*
animecs TIFF2007
東京ネットムービーフェスティバル
東京国際映画祭 声優口演ライブ with 山下洋輔
外国映画吹き替え放送50周年を記念しての企画。声優は皆元気!  皆さんも声を出して!

*共催・提携企画*
第20回東京国際女性映画祭
期間:2007年10月21日(日)〜10月25日(木)
会場:東京ウィメンズプラザ
  • 『サラエボの花』(ボスニア・ヘルツェゴビナ、やすみら・ズパニッチ監督)
      *第56回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品
  • 『私たちの家で』(イタリア、フランチェスカ・コメンチーニ監督)
  • 『水』(カナダ、ディーバ・メータ監督)
  • 『肩ごしの恋』(韓国、イ・オニ監督)
  • 『女性監督にカンパイ!』(日本、山崎博子監督)
  • 『バッコスの信女』(日本、羽田澄子監督)
  • 『シロタ家の20世紀』(日本、藤原智子監督)
  • 『エージェント・オレンジ』(日本、坂口雅子監督)
  • 『心理学者 原口鶴子の青春 〜100年前のコロンビア大留学生が伝えたかったこと〜』(日本、泉悦子監督)

*アンコール上映
『宗家の三姉妹』(香港・日本、メイベル・チャン監督)

そのほか、バリアフリー上映(日本映画)、日本映画学校卒業作品、 フランス、キューバ、香港作品など選考中


ニッポン・シネマ・クラシック
「ふるさとの詩(うた)」と題し、“懐かしい古里”、“大切な場所”、 “心の故郷”など、 “ふるさと”をテーマにしたさまざまな作品
期間:2007年10月21日(日)〜10月24日(水)
会場:渋谷Bunkamura ル・シネマ1 シアターコクーン

文化庁映画週間
「文化庁映画賞贈呈式及び記念上映会」「全国映画祭会議」 「世界映画人会議」「全国フィルムコミッション・コンベンション」

みなと上映会
港区内の商店会、自治会、町会で結成された「東京国際映画祭みなと委員会」 との共催企画。子供から大人まで楽しめる作品の上映とイベント

コリアン・シネマ・ウィーク 2007

2007東京・中国映画週間
日中国交正常化35周年記念、「2007日中文化・スポーツ交流年」認定事業として 中国の最新作、話題作を上映

香港映画祭
香港の中国返還10周年を記念して開催

日時 2007年10月23日(火)〜25日(木)
会場 渋谷Bunkamura オーチャードホール
上映作品
10月23日(火) 『鐵三角TRIANGLE』 ※オープニング作品
監督:ツイ・ハーク(徐克)リンゴ・ラム(林嶺東)ジョニー・トー(杜[王其]峰)
出演:サイモン・ヤム(任達華)ルイス・クー(古天樂)ケリー・リン(林熙蕾)
10月24日(水) 『父子』(After This Our Exile)
監督:パトリック・タム(譚家明)
出演:アーロン・クォック(郭富城)ン・キントー(呉景滔)チャーリー・ヤン(楊采[女尼])ケリー・リン(林熙蕾)
10月24日(水) 『男兒本色』(Invisible Target)
監督:ベニー・チャン(陳木勝)
出演:ニコラス・ツェー(謝霆鋒)ジェイシー・チェン(房祖名)ショーン・ユー(余文樂)
10月25日(木) 『天堂口』(Blood Brothers)
監督:アレクシ・タン(陳奕利)製作:ジョン・ウー(呉宇森) 
出演:ダニエル・ウー(呉彦祖)スー・チー(舒淇)リウ・イエ(劉[火華])
★お問い合わせ:
 9月19日よりハローダイヤル TEL:03-5777-8600 (7:00〜23:00)
★チケット:9月末よりチケットぴあにて発売予定

ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2007
受賞作品上映&ワークショップ

CJax —日加ショートアニメーション・エクスチェンジ—

GTFトーキョーシネマショー2007

東京国際シネシティ フェスティバル2007
「We love KABUKICHO」をキーワードに、「歌舞伎町」活性化の推進
期間:2007年11月23日(金・祝)〜25日(日)



2007年5月5日〜

『メイド 冥途』

監督・脚本:ケルヴィン・トン
製作総指揮:ダニエル・ユン(『the EYE』)
出演:アレッサンドラ・デ・ロッシ(ローサ)、チェン・シュウチェン(テオ)、ホン・フイファン(テオ夫人)、ベニー・ソウ(アスーン)

太陰暦の7月を道教信者は「鬼月」と呼び、地獄の門が開いて霊が人間界に戻り、様々な悪さをすると信じている。そのため、この時期には様々なタブーがある。
その月の初めに、ローサはフィリピンからシンガポールへ、メイドとしてテオ夫妻の元へとやってきた。テオ夫妻は伝統劇の劇団を率いていて、一人息子のアスーンは知的障害があるが、ローサはすぐにうち解けた。
しかし、キリスト教徒のローサはこの時期のタブーを知らず知らずのうちに犯していく。そして、彼女の周りに奇妙なことが起こり始める。

ケルヴィン・トン監督は2006年の東京国際映画祭で『Love Story』が上映されていますが、劇場公開はこれが初めてです。
「鬼月」の習慣は日本人にとっても珍しいので、ローサと一緒になって「そうなんですか?」となるのではないでしょうか。この時期、シンガポールだけでなく香港や台湾など、華人の住む街へ行くと、あちらこちらで、模造紙幣を燃やしている光景が見られます。人間界に降り立った霊を弔うためです。また、映画の中でも見られますが、この時期に劇団が公演を行っているのは、やはり霊たちを弔うためのもので、最前列は幽霊専用の席なので人間は座ってはいけません。他にも、一人の時に呼び止められても振り向いてはいけないだとか、知らない人に声をかけてはいけないだとか、色々な禁忌が興味深いです。海外旅行や水泳、引っ越し、結婚式も控えるのだそうです。(梅)

2005年/シンガポール/35mm/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/90分/日本語
字幕:関美冬/原題:The Maid
提供:パラマイウント ホーム エンタテインメント ジャパン
配給:ザナドゥー

5月5日(土)より、シアターN渋谷ほかにて全国順次ロードショー公開。



2007年5月12日〜

『歌謡曲だよ、人生は』

昭和の歌謡曲12曲をモチーフに、12人の個性溢れる監督が自由闊達な映像世界を作り上げています。

「ダンシング・セブンティーン」歌:オックス
オープニング

「僕は泣いちっち」歌:守屋浩 監督・脚本:磯村一路
出演:青木崇高、伴杏里

「これが青春だ」歌:布施明 監督・脚本:七字幸久
出演:松尾諭、加藤理恵

「小指の想い出」歌:伊東ゆかり 監督・脚本:タナカ・T
出演:大杉漣、高松いく

「ラブユー東京」歌:黒沢明とロス・プリモス 監督・脚本:片岡英子
出演:正名僕蔵、本田大輔

「女のみち」歌:宮史郎 監督・脚本:三原光尋
出演:宮史郎、久野雅弘、板谷由夏

「ざんげの値打ちもない」歌:北原ミレイ 監督・脚本:水谷俊之
出演:余貴美子、山路和弘

「いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー」歌:荒木一郎 監督・脚本:蛭子能収
出演:武田真治、久保麻衣子

「乙女のワルツ」歌:伊東咲子 監督・脚本:宮島竜治
出演:マモル・マヌー、内田朝陽、高橋真唯

「逢いたくて逢いたくて」歌:園まり 監督・脚本:矢口史靖
出演:妻夫木聡、伊藤歩、ベンガル

「みんな夢の中」歌:高田恭子 監督・脚本:おさだたつや
出演:高橋惠子、烏丸せつこ

「東京ラプソディ」歌:渥美二郎 監督・脚本:山口晃二
出演:瀬戸朝香、田口浩正
エンディング

企画・製作:アルタミラ・ピクチャーズ
共同製作:ポニーキャニオン。ザナドゥー
配給:ザナドゥー

公式 HP >> http://www.kayomusic.jp/

★5月12日(土)より、シネスイッチ銀座、シネマスクエアとうきゅう他にて、 歌って踊って、泣いて笑って、感激の”歌謡劇場”ロードショー

特別記事『歌謡曲だよ、人生は』完成披露パーティーレポートもご覧下さい。



2007年5月19日〜

『14歳』

監督:廣末哲万(ひろすえ・ひろまさ)
脚本:高橋 泉
プロデューサー:天野真弓
撮影:橋本清明
照明:清水健一
録音:林 大輔
美術:松塚隆史
編集:廣末哲万、普嶋信一
音楽:碇 英記
出演:廣末哲万(杉野浩一26歳)、並木愛枝(深津綾26歳)、染谷将太(雨宮大樹14歳)、小根山悠里香(一原知恵14歳)、笠井薫明(芝川道菜14歳)、夏生さち(林路子14歳)、河原実咲(深津綾14歳)、榎本宇伸(杉野浩一14歳)、藤井かほり(雨宮純子38歳)、渡辺真起子(一原京子39歳)、香川照之(小林真46歳)ほか

中学生の深津綾、飼育小屋に火をつけたのかと担任に聞かれている。 去っていく担任の背中に彫刻刀を刺してしまう綾。 それを目撃した同級生の杉野浩一は、たびたび理科室で紙を燃やしている彼女も見ていた。 精神科に通うようになった綾は、医師の影響で教職の道を選び、 今は中学校教師として勤めている。 受け持っている一原知恵の家庭訪問に来て、 同じクラスの雨宮大樹の家から出てきた浩一とばったり出会う。 浩一はバイトで大樹のピアノ指導を始めたところだった。 一原知恵は好きなバレエを受験勉強にさしつかえるからとやめさせられ、 うっぷんを林路子にぶつけていた。向かいの雨宮大樹がピアノを続けているのも面白くない。

PFF出身の監督、脚本の作品。2004年のPFFではこのコンビの作品『ある朝スウプは』 (高橋が監督・脚本、廣末が主演)が、グランプリ。 『さよなら さようなら』(廣末が監督・主演、高橋が脚本)準グランプリを獲得しています。

ゆれたり不安定で先の予測がつかない画面が、14歳の内面を現しているかのようです。 岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)も14歳の中学生たちの映画でしたが、 彼らの抱える闇に気づくおとなは出てこなくて、とことん不幸せでした。 痛ましい事件が続いて14歳という年齢が注目されましたが、1年に10cmも15cmも大きくなり、 身体の成長に心がついていかない年頃です。親の方も仕事や身体の変わり目でもあり、 小学生のときのように子供に目を注いでいないかもしれません。 そんな両方の隙間が大小の事件になってしまうんでしょうか。

少なくともこの『14歳』には、かつての自分とそっくりな彼らと向き合う覚悟の大人たちが出てきます。 香川照之扮する、生徒と目が合わせられない教師もいますが、 それを詫びる姿に一歩進んだねと思えます。 ちいさなリアルを積み重ねたこの作品は痛いところもあるけれど、 希望につながる優しさも見せてくれました。(白)

PFFスカラシップ作品。2007年ロッテルダム国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞

2006/日本/カラー/35mm/114分/
配給・宣伝:ぴあ 宣伝協力:アルバトロス・3フィルム

http://www.pia.co.jp/pff/14sai/

5月19日(土)より、ユーロスペースにてロードショー



『寂しい時は抱きしめて』(原題:Lie With Me)

監督:クレメント・ヴァーゴ
脚本:タマラ・フェイス・バーガー、クレメント・ヴァーゴ
原作:「Lie with me」タマラ・フェイス・バーガー
出演:ローレン・リー・スミス(ライラ)、エリック・バルフォー(デビッド)

ライラは肉体の愛しか知らない。両親の不仲で、愛情も結婚もなんなのか分からなくなっている。快楽を求めて街をさまよう中で、ある日デビッドと出会い、他の男とは違った感情を抱く。離れていても、一日中相手のことが頭から離れない。抱き合えば、これまで経験したことない満足感に満たされる。初めて知った身体だけではない、本当の恋。しかし、どんなに愛しても全てを共有することはできない。それは初めて知る苦しみでもあった。

過激な性描写に初めの方は少々面食らいましたが、デビッドと出会ってからは、女性が男性に抱く愛情と不信感の細かい揺れが丁寧に描かれていたり、次第に相手の身体だけでなく、恐る恐るだけれど、相手を取り巻くもの全てを受け入れていこうと成長する二人の姿に、ちょっとグッときました。若い人たちには、もっと切実に感じるかもしれません。原作者のタマラ・フェイス・バーガーと監督のクレメント・ヴァーゴは夫婦で、映画も二人の共同作業で作っています。
ところで、従姉妹の結婚式のシーンを観ると、ライラの家はどうやらユダヤ教徒のようです。ユダヤ教徒というと厳格で保守的な家庭観を守っている人たち。そんな背景を考えると、ライラがあれほど不安定な状態に陥ったのは、両親の離婚などでそれまでの価値観を崩壊させてしまったためなのかなと、推測したりできます。(梅)

18禁なシーンはありましたが、ライラ役のローレン・リー・スミスが可愛くていや らしくなりません。デビッドが老父を優しく介護しているのに好感度アップ。この人 の横顔、トランプのジャックに似てませんか?(白)

2005年/カナダ/ヴィスタサイズ/SRD/93分/R-18
配給:AMGエンタテインメント
宣伝:フリーマン・オフィス

★5月19日(土)、シアターN渋谷ほか、全国順次ロードショー


2007年5月26日〜

『しゃべれども しゃべれども』
ちらし画像:© 2007『しゃべれども しゃべれども』製作委員会

監督:平山秀幸
脚本:奥寺佐渡子
撮影:藤澤順一(JSC)
音楽:安川午朗
美術:中山慎
原作:佐藤多佳子「しゃべれども しゃべれども」新潮文庫刊
出演:国分太一(今昔亭三つ葉/外山達也)、香里奈(十河五月)、森永悠希(村林勝)、松重豊(湯河原太一)、八千草薫(祖母:外山春子)、伊東四朗(今昔亭小三文)、占部房子(実川郁子)ほか

今昔亭三つ葉は二つ目の落語家。普段も着物で暮らし、新作より古典落語が好き。 まだ自分の芸がつかめないのが悩みの種だ。 師匠の小三文が講師を務めるカルチャーセンターにお供で行き、 そこで話の途中で退席した若い女性が気になって呼び止める。 「本気でしゃべってない!」という十河五月。 三つ葉は自分の落語を聞きに来いと言い、本当にやってきた彼女を前に高座でとちってしまう。 祖母にお茶を教わっている郁子に、三つ葉は想いを伝えることができずにいるが、 郁子の甥の勝に落語を教えてほしいと頼まれる。 三つ葉の家には小学生の勝と無愛想な五月、毒舌家の元プロ野球選手までが落語を習いにやってくることになった。

舞台は東京下町。落語の稽古場面や寄席の内側、楽屋も垣間見られて楽しいです。 映画ではちょっと異色な落語が中心ですが、描かれていくのは何気ない日常とことばのやりとり。 大阪弁の森永悠希くんは、にこにこと可愛くて、よどみなく出るお喋りがそのまんま、 お笑いのようでした。 不器用な大人と違って、この子は弟子入りしなくてもOKてな感じです。 柳家三三(さんざ)師匠の指導のもと、国分太一くんの落語がだんだんうまくなっていきます。 うまくなったといっても、毎日「良かったり、悪かったり」なのが、生の落語なのだそうですが。 ふんわりと幸せな気分になる作品。(白)

2006/日本/カラー/1時間49分/ドルビーSR/ヴィスタサイズ
配給:アスミック・エース

http://shaberedomo.com/

5月26日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー



『ひめゆり』

監督:柴田昌平
プロデューサー:大兼久由美、小泉修吉
撮影:澤幡正範、川崎哲也、一之瀬正史、川口慎一郎
音声:吉野奈保子、翁長良、山根則行
音響効果:鈴木利之
音楽演奏・編曲:浦尾画三
出演:石川幸子 大見祥子 富村都代子 本村つる 世嘉良利子 新垣世紀子 城間和子 津波古ヒサ 照屋信子 仲里正子 比嘉文子 前野喜代 宮良ルリ 上原当美子 島袋淑子 謝花澄枝 照屋菊子 与那覇百子 宮城信子 大城信子 新崎昌子 宮城喜久子

“忘れたいこと”を話してくれてありがとう

「ひめゆり」学徒隊は、第2次大戦末期、 沖縄での地上戦の折に看護要員として戦場に送られました。 3月から6月までの3ヶ月間で、15歳から19歳の少女達211人もの命が失われました。 戦後何本かの映画が作られましたが、これは劇映画ではありません。 実際に苛烈な戦場にいて、生き残った22人の証言を集めたドキュメンタリーです。 自分たちが生きて話せるうちに残しておきたい、という強い意志から生まれたものです。 1994年から13年に渡って撮り続けられ、撮影は今も続いています。
おさげ髪やセーラー服の写真と、どんな学生だったかが字幕で説明されます。 かつて働いたり、逃げまどったり、親友を失ったりしたその場所に、 年を取られた今の彼女たちが案内します。 当時のことを昨日のようにはっきりと語る姿に戦後何十年経とうが、 この方々の中には今も戦場があり、亡くなった友達がいるのだ、と思いました。

突然召集を受け戦場に放り込まれ、追い詰められて解散とは・・・ 耳を疑うようなことばかりでした。よく生き抜いてくださったと思います。 一人でも多くの方にこの声が届きますように。(白)

2006/カラー/130分/16mm/スタンダードサイズ/

共同製作:財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会
製作・配給:プロダクション・エイシア
http://www.himeyuri.info/

★5月26日(土)より東京・ポレポレ東中野
*夏以降〜大阪・第七藝術劇場、広島・横川シネマにて劇場公開決定*


『GOAL!2』(原題:GOAL!II Living the Dream)

監督:ジャウム・コレット=セラ
共同脚本:エイドリアン・ブッチャート
撮影:フラビオ・ラビアーノ
音楽:スティーヴン・ウォーベック
美術:ジョエル・コリンズ
出演:クノ・ベッカー(サンティアゴ・ムネス)、アレッサンドロ・ニヴォラ(ガバン・ハリス)、スティーヴン・ディレイン(グレン・フォイ)、アンナア・フリエル(ロズ・ハーミソン)、レオノア・ヴァレラ(ジョルダナ・ガルシア)、エリザベス・ペーニャ(ロサ・マリア/母親)、ルトガー・ハウアー(監督)ほか

サンティことサンティアゴ・ムネスは、入団したニューカッスル・ユナイテッドvsリヴァプールの一戦いで決勝点を決め、一躍この街のヒーローとなった。婚約者のロズは結婚式の準備を着々と進めている。ロズの母親たちと会食中に、エージェントのグレンがやってきてサンティにビックニュースを伝えた。なんと、スペインの強豪レアル・マドリードから移籍の誘いがあったのだ。世界一のクラブチームの一員になれるのか?サンティはグレンとともに、詳しい話を聞くためアジアツアー中のレアルを東京に訪ねていった。

サッカー少年の夢を次々と叶えてくれるようなこの『GOAL!』3部作、第2章ができました。前作は子供のころからサッカーが好きで、逆境にあっても夢をあきらめなかったサンティが、憧れのヨーロッパへ渡りニューカッスル・ユナイテッドの正選手となって活躍するまで。第2弾は、2005年7月日本でクランクインしており、レアルチームが来日していたとき、同時にロケも行われていたのでした。当時のレアルの選手たちが大挙画面に登場します(なんだか懐かしい)。特にベッカムとGKのカシージャスは重要な場面が多いため、オフの時間に全面的に協力してくれたのだとか。サッカーの試合場面は前作以上に多いですが、サンティの人間関係や栄光を掴んだあとにやってくる試練などドラマ部分も描かれています。大きな画面で迫力の試合をご覧ください。(白)

2007/イギリス、スペイン、ドイツ合作/1時間54分/スコープサイズ/ドルビー
SRD,DTS,SDDS
公認:FIFA,UEFA,JFA
配給:東芝エンタテインメント 宣伝:メディアボックス

公式 HP >> http://www.goalthemovie.jp/

★5月26日(土)より、全国ロードショー!


『COMANDANTE コマンダンテ』

監督:オリバー・ストーン 撮影:ロドリコ・プリエト 音楽:アルベルト・イグレシアス 出演:フィデル・カストロ、オリバー・ストーン

2002年2月、オリバー・ストーン監督は3日間にわたり、キューバ革命の父フィデル・カストロのドキュメンタリー撮影を敢行した。監督自らのインタビューは30時間に及んだ。カストロは途中いつでもやめられること、を条件としたが中止されることはなく、内容の変更削除もいっさい求められなかった。元々はスペインのTV番組用のプロジェクトだったが、映画化され2003年のサンダンス映画祭でプレミア上映された。アメリカでの上映は禁止となり、その理由は、映画の視点がアメリカ政府にとって「不快」で「批判的」だからというものだったと、オリバー・ストーン監督自身が認めている。

カストロの盟友チェ・ゲバラは美男子でした(いきなり卑近な話題ですみません)。早く亡くなりましたが今も人気で、日本でもTシャツの絵柄にもなっているのを見かけます(革命のシンボルですが歴史をちゃんと解っているんでしょうか)。カストロは数々の戦いを生き延びて、「コマンダンテ(司令官)!」と国民に尊敬され親しまれています。街や大学で人々に囲まれるシーンがあり、こんなに人気の指導者は日本にはいないなぁと羨ましく思えました。雄弁家としてもつとに有名な彼が、社会派オリバー・ストーン監督の鋭い質問を受け、ユーモアを交えて回答するようすに、ほ〜と見入りました。大国アメリカに屈せず、戦い続けてきた長身痩躯のコマンダンテは、現在病床にあります。(白)

2003/アメリカア・スペイン合作/英語・スペイン語/カラー/100分/ヴィスタ/ドルビーSRD
配給:アルシネテラン 後援:キューバ大使館

アルシネテランHP >> http://www.alcine-terran.com/

★5月26日(土)より、ユーロスペース他全国順次ロードショー


『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』
(原題:Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan)

監督:ラリー・チャールズ
出演:サシャ・バロン・コーエン、ケン・デヴィティアン、パメラ・アンダーソン

カザフスタン国営テレビのレポーター、ボラット・サカディエフ。 長身で、鼻の下に亀の子タワシのような髭をたくわえた彼の趣味は、ピンポン、日光浴、 女性トイレの盗撮。天敵は、ユダヤ人。そんなボラットが、太っちょのプロデューサー、 アザマートを伴って、ニューヨークへ。目的はカザフの発展のために、 偉大なるアメリカ文化をリポートすること。フットワーク軽く、 国連本部やロデオ大会などへと出かけていく。 まじめに受け答えするフェミニズム団体のおばさまたちや、 電車内の突撃インタビューに逃げ惑う人々。
ある夜、ホテルの部屋でTVドラマ「ベイウォッチ」を見ていたボラットは、 女優パメラ・アンダーソンに一目惚れ。 折りしも、国からは妻が不慮の事故で死んだとの電報。これ幸いと、 パメラを妻にしようと彼女の住む西海岸を目指す...。

ボラットは、ユダヤ系イギリス人コメディアンのサシャ・バロン・コーエンが、 自らが持つイギリスのTV番組「Da Ali G Show」の中で、 体験レポートコーナーのために作り出したキャラクター。 あくまで本物のレポーターを装って、アメリカロケを敢行。 それにしても、あまりな下ネタ。カザフ人の大半がイスラーム教徒であることを考えると、 体を露出したりすることは、あり得ないし、 カザフの人たちから文句は出ないのかと思ったら、 やはりいろいろと問題になったそうだが、アメリカはじめ世界各国での大ヒットに、 カザフスタンの名前を知らしめることになったと、歓迎する向きもあるそうだ。
けれども、冒頭とラストに出てくる、ボラットの故郷クーセク村は、 カザフスタンではなく、 ルーマニアのシンティロマというジプシーの村でロケをしたとのこと。 村で行われている「ユダヤ人走り」というユダヤ人を虐待する祭も、 もちろん架空のもの。 コーエン自身がユダヤ系だからこそ、ユダヤに対する自虐的ギャグも笑って済ませられる。
さて、一目惚れしたパメラを麻袋に入れてかっさらうという、 カザフ式結婚を挑むボラット。カザフのお隣、キルギスの留学生のインタビュー記事 (シルクロード愛好家の元弁護士の主宰するハルブーザ会の会報 「ハルブーザ342号」2001年3月発行)によれば、 キルギスでは今でも略奪婚があるとのこと。 ただし、略奪者が全く見知らぬ人というケースは少なく、 面識のある女性を車などに無理やり乗せて、男性の家に連れて行き、 門をくぐらせてしまえば、その家の嫁になるというもの。 話がそれたが、それぞれの民族には固有の文化があることを認識することが、 平和共存の第一歩ということを、この映画も言いたいのだと思った次第。 それにしても、ギャグがあまりにお下品...  あなたは笑って済ませられるか??  (咲)

2006年/アメリカ/1時間24分
配給:20世紀フォックス映画
宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ/ムービーアイ

★5月26日 渋谷シネ・アミューズ他<賛否両論必至!>緊急公開

公式HP>> http://movies.foxjapan.com/borat/



『毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』原題:FUR -AN IMAGINARY PORTRAIT OF DIANE ARBUS

監督:スティーヴン・シャインバーグ
出演:二コール・キッドマン、ロバート・ダウニー・Jr.、タイ・バレル

1958年、ニューヨーク。 瀟洒なアパートにある写真スタジオで毛皮ショーの準備に追われるダイアン。 金持ちの顧客たちの相手はちょっと憂鬱だ。 ふと窓の外に目をやると、引越の車から、目だけ出る頭巾を被った男が降りてくる。 上の階に引っ越してきた不思議な男の強い眼光になぜか惹かれるダイアン。 ある日、水道管に大量の毛を見つけたダイアンは、 ついに階段を上って彼を訪ねていく...。

1923年3月14日ニューヨーク生まれ。 裕福なユダヤ家庭に育ったダイアン・アーバスは、14歳の時に出会った初恋の人、 アラン・アーバスと4年後に結婚。 ファッションフォトグラファーの夫アランの手ほどきを受けて、 彼女もファッション写真家として活躍する。 後に、夫とは袂を分かち、小人、巨人、シャム双生児、同性愛者、 ヌーディストといった「フリークス(変わった人々)」を被写体とするようになり、 その名を後世に残すことになる。
監督のスティーヴン・シャインバーグは、少年時代、 自分の部屋に入る手前にユダヤ人の大男と自分の両親を一緒に写した写真があって、 どこか心惹かれるものがあったという。 監督の叔父で作家のローレンス・シャインバーグがダイアンと親しくしていたのだが、 監督自身はダイアンと会ったことはない。

最初に、「これは伝記ではない」と断り書きがあるように、 本作は写真家ダイアン・アーバスの人生を描いたドキュメンタリーではない。 ダイアンの残した写真に触発されて、監督と脚本家のエリン・クレシダ・ウィルソンが、 フリークスに目を向けるようになっていったダイアンの心の動きをイメージして作り上げた物語である。

夫や娘たちを愛していた貞淑な妻だったダイアンが、 上の階に住む多毛症の男を訪ねていき、身も心もゆだねていく姿は、 あまりに大胆だが、彼女の残したフリークスの写真からは、 それもありかなと思わせられる。 (二コール・キッドマンの演じるダイアンからは、 身勝手さだけが感じられてしまったのだけど!)
冒頭のヌーディストたちを訪ねていった場面で、ヌーディストの男女が、 すべてを脱いでいるのに靴だけ履いている姿に、 アメリカ人は家の中でも靴を履いているということに思いが至って可笑しかった。(咲)

2006/アメリカ/カラー/ビスタ/122分/R-18

5月26日(土)シネマGAGA!ほか全国順次ロードショー

公式 HP >> http://kegawa.gyao.jp/



「第10回京都国際学生映画祭」

京都国際学生映画祭は今年で10年目を迎えます。国内外の学生映画・映像作品を観ることのできる数少ない映画祭です。未来の巨匠がここから現れるかもしれません。
コンペティションのほかに、ワールドプログラムは海外の国や学校などに焦点をあてて、特集上映します。今年はドイツ、中国、マレーシアです。詳しいスケジュールは公式HPでご確認ください。

開催日程:2007年11月23日(祝)〜30日(金)
会  場:11月23日(祝)〜25日(日)ART COMPLEX1928
     11月24日(土)〜30日(金)京都シネマ
料 金:《4プログラム》 一般 2400円(2000円)学生 1600円(1200円)
    《1プログラム》 一般 700円(600円) 学生 500円(400円)
     ※()は前売料金です。前売券はチケットぴあのみでの販売となります。
   【発売】11月2日(金)〜22日(木)  Pコード 「478-282」
   【購入方法】・電子チケットぴあ(TEL | 0570-02-9999)
         ・@電子チケットぴあ(URL | http://pia.jp/t)
    ・チケットぴあ店舗、ファミリーマート、サークルK・サンクスでの直接購入

公式 HP >> http://kisfvf.com/index.html



2007年12月29日

『つばさ』Wings −澤登翠活弁リサイタル−

監督:ウィリアム・A・ウェルマン
出演:クララ・ボウ(メアリー)、チャ−ルズ・ロジャース(ジャック)、リチャード・アーレン(デヴィッド)、ジョビナ・ラルストン(シルヴィア)、ゲーリー・クーパーほか

第1回アカデミー賞作品賞受賞の『つばさ』が、名調子の活弁つきで上映されます。
ウィリアム・A・ウェルマン監督は自らもパイロットとして従軍した体験を生かし、この作品以後も『空行かば』『紅の翼』と空戦を描いた作品を送り出しています。
第一次世界大戦を舞台に、壮大なスケールで描く青春群像劇をご覧ください。

昭和3年度キネマ旬報ベストテン 洋画部門第5位
1927年/アメリカ パラマウント映画/138分

日時:12月29日(土)18時開演
会場:新宿紀伊国屋ホール
出演弁士:澤登翠
楽団:カラード・モノトーン
木戸銭:当日1800円
    前売り1500円(紀伊国屋5階 キノチケットカウンター)
    無声映画鑑賞会会員1000円(事務局03-3605-9981平日10時〜18時)
http://www.matsudafilm.com/matsuda/indexj.html



2007年6月2日〜

『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』

監督:藤原敏史
企画・製作:伏屋博雄
撮影:加藤孝信
監督補:今田哲史
音響監督:久保田幸雄
出演:土本典昭

水俣の映画を17本も撮り続けてきた土本典昭監督が、 かの地を再訪することになり藤原敏史監督はカメラとともにその旅に同行します。 旧作のシーンと土本監督へのインタビューも織り込みます。 水俣の海や街、人々を万感の思いで見つめる土本監督。 かつて映画に登場した胎児性水俣病の男の子がすっかり大人になり、 若かったお母さんは、ご苦労だったろう年月の皺を刻んで年取っていました。 地球環境映像祭でグランプリだった『断罪の核心-元裁判長が語る水俣病事件』に登場した、 国に有罪判決を出した地裁の裁判長の涙を思い出しました。(白)

2006/DVCAM・16mm/カラー/94分/
製作・配給:ビジュアルトラックス

http://www.tsuchimoto-eiga.com/

6月2日(土)よりユーロスペースにてモーニングショー

●[君は土本典昭を知っているか?その映画を見たことがあるか?]

  • 5月10日(木)
  • アテネフランセ文化センターにて
    東京都千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F
     (JR/地下鉄 御茶ノ水・水道橋駅徒歩7分)
    TEL. 03-3291-4339(13:00〜20:00)
◆『水俣—患者さんとその世界—』上映
(1971年/167分/35ミリ・16ミリ/モノクロ/撮影:大津幸四郎, 第一回世界環境映画祭グランプリ受賞)
◆トークイベント
ゲスト(予定):
  大津幸四郎(撮影監督/『パルチザン前史』『不知火海』)
  藤原敏史(「映画は生きものの記録である」監督)ほか

※ タイムテーブルなどの詳細はお問い合わせください
※ 上映作品、イベントゲストなど変更の可能性がありますのでご了承ください



2007年6月9日〜

『それでも生きる子供たちへ』All the Invisible Children

大人は誰も、昔は子供だった。でもそのことを忘れずにいる大人はほとんどいない。
(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子様」より)

7人の監督による子供の未来のための7つの物語。どれも心を揺さぶります。

『タンザ』 TANZA
監督:メディ・カレフ/アフリカ
マシンガンを握りしめる少年兵の、それでも無垢な瞳。

『ブルー・ジプシー』 BLUE GYPSY
監督:エミール・クストリッツァ/セルビア・モンテネグロ
盗みでしか生きられない親と子の、どこか滑稽な抒情詩。

『アメリカのイエスの子ら』 JESUS CHILDREN OF AMERICA
監督:スパイク・リー/アメリカ
HIVの両親と娘の、愛情と苦悩、そして再出発。

『ビルーとジョアン』 BILU E JOAO
監督:カティア・ルンド/ブラジル
廃品を拾って生活する兄妹、今日も宝探しが始まる。

『ジョナサン』 JONATHAN
監督:ジョーダン・スコット、リドリー・スコット/イギリス
地球上で消えない紛争、彼らは生きるために助け合う。

『チロ』 CIRO
監督:ステファノ・ヴィルネッソ/イタリア
大人たちと互角に渡り合う、窃盗も辞さない子供たちの夢と現実。

『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』SongSong & Little Cat
監督:ジョン・ウー/中国
路上で働く孤児と、愛に飢えた少女。それぞれの悲しみと希望。

提供/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:ギャガ宣伝【ゼロ】× maison こども bureau
後援: 財団法人日本ユニセフ協会/WFP 国連世界食糧計画/イタリア大使館

2005年/イタリア・フランス映画/上映時間:130分/ビスタ /ドルビーデジタル/カ ラー/PG-12
http://kodomo.gyao.jp/intro/

6月9日(土)より、シネマライズほかにて全国順次ロードショー



『恋する日曜日 私。恋した』

監督:廣木隆一
プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ
脚本:渡辺千穂
撮影:水口智之
音楽:遠藤浩二
美術:桜井陽一
主題歌:「花〜すべての人の心に花を」喜納昌吉&チャンプルーズ
出演:堀北真希(二宮なぎさ)、窪塚俊介(石川聡)、高岡早紀(絵里子)、岩本千波(まどか)、若松武史(なぎさ父)、吹越満(絵里子の夫)ほか

高校3年生のなぎさに癌が見つかった。昨年母親が同じ病気で亡くなったばかり。 母と同じ病院、同じ主治医にかかることになったが、 入院前に「会いたい人がいる」と旅に出る。 なぎさが生まれ、3年前まで住んだ海辺の町には幼馴染の聡がいた。 病気のことは隠し、今は一人暮らしの聡の家に泊めてもらうことになった。 幼いころに戻ったように最後の夏を過ごすなぎさだったが、 聡が人妻の絵里子と不倫をしているのに気づいてしまう。

出演作が相次いでいる堀北真希が、余命3ヶ月の高校生を演じています。 しだいに要求される演技のハードルが高くなっているようですが、 きちんと応えていますねぇ。 『恋する日曜日』一作目についでメガホンを取った廣木監督の描写はいつも細やかです。 主人公が死んでしまうという作品は廣木監督も今までなかったとか。 映画は病気と闘う場面は出さず、17歳のなぎさの恋を中心にしています。 病気のことも恋心も聡に告げずにいる切なさに胸がいっぱいになり、 自転車で走るシーン、まどかを連れ歩くシーンも胸が痛みます。 長回しのラストシーンまでハンカチ出しておきましょう。 (白)

2007/日本/カラー/35mm/97分/ビスタサイズ/
制作:BS-i
配給:エム・エフボックス

6月9日(土)新宿トーアほか全国で順次ロードショー

http://w3.bs-i.co.jp/jbreak/koisuru/watakoi/index.html



『Watch with me 〜卒業写真〜』

監督:瀬木直貴
脚本:高橋圭、瀬木直貴
プロデューサー:瀬木直貴、佐藤朝泰、藤本敦史
音楽:谷川賢作
主題歌:HiFi SET 「卒業写真」
出演:津田寛治(上野和馬)、羽田美智子(由紀子)、中野大地(16歳の和馬)、高木古都(萩原ひとみ)、山崎直樹(田中孝平)、EIJI(緒方悟)、根岸季衣(和馬の叔母)ほか

元報道カメラマンの上野和馬はがんで余命半年と宣告された。 故郷の福岡県久留米市で余生を過ごそうと、妻の由紀子を伴って戻ってくる。 同級生の孝平が勤務するホスピスに入院し、 卒業アルバムを見ながら旧友たちと思い出話に花を咲かせるが、 和馬には思い出せない少女がいた。

やはりがんで逝ってしまった父親の最後を思い出しながら観ました。 自分だったらこの世の残り時間がわかったとき、何がしたいかしら? そばで支える妻や友人たちの気持は想像できるけれど・・・。 納得いかなかったのは、和馬がひとみのことを覚えていなかったというところ。 奥さんの協力もあって、だんだん思い出していくけれど、 そんなに簡単に忘れてしまうもの?封印していたんでしょうか。 私も懐かしい「卒業写真」の歌を聴きながら、アルバムでも見ようかなっと。(白)

Watch with Me?「私とともに目を覚まして祈りなさい」(新約聖書・マタイによる 福音書)は、近代ホスピスの創設者、シシリー・ソンダース女史がこの言葉にホスピスの基本精神を託して、「死が近い人を見守る」という意味で使い始めたもの。人生の終末を迎えた人も、それを見守る人も、どちらも辛い。私は怖れるだけで、また覚悟ができていない。
和馬が、かつてイラクで撮った子供たちの写真(フォトジャーナリストの広河隆一氏提供)を見ながら、「あの子たちは劣化ウラン弾の被害で治る可能性がないんだ」とつぶやく場面がある。自分は余命いくばくと言われても、それでもまだ可能性があると。
人生の卒業アルバム作りに最後の力をふりしぼる和馬の姿に、限りある人生、思い残すことのなく過ごしたいと再認したけれど、いまだに悔いの残る毎日! 

それにしても、死ぬ前にひとめ会いたいのは誰かしら... 
和馬は、かつて自分に写真を撮るきっかけをつくってくれた同級生の少女のことを、決して忘れていなかったけれど、奥様に気を使って思い出せないふりをしていたとみたのですが、どうでしょう?(咲)

テレビドラマでも共演中の津田寛治さんと羽田美智子さんは、息がとても合ってました。津田寛治さんて、映画の中では、気むずかしかったり、変わり者だったりする役が多いので、眉間にしわを寄せた顔が思い浮かぶのですが、先だってTV番組の「チューボーですよ」に出演されていたときの弾けっぷりと笑顔にはビックリ。とても魅力的でした。(梅)

2007/日本/カラー/
配給:ティ・ジョイ 宣伝:フレスコ

2007年4月21日(土)九州先行公開
2007年6月9日(土)全国拡大ロードショー

★舞台挨拶のお知らせ★
初日6月9日(土)16:05〜16:20 
新宿バルト9 シアター5(11階)にて、主演の津田寛治と羽田美智子、および瀬木直貴監督が登壇する舞台挨拶が予定されています。

http://www.sotsugyo-mov.jp/



『選挙』Campaign

監督・製作・撮影・録音・編集:想田和弘
出演:山内和彦(川崎市議会補欠選挙・自民党公認候補)、山内さゆり(山内和彦の妻)

2005年秋、川崎市宮前区の市議会議員補欠選挙。 ひょんなことから自民党公認候補として出馬することになった「山さん」こと山内和彦(40歳)。 東京で気ままに切手コイン商を営んでいた山さんは、政治とは無縁。 宮前区に地盤もない。民主党と議席が切迫する自民党は、 なんとしても勝たなければと必死。東大卒の肩書きで選ばれたと山さんは笑う。 地区の自民党総出で山さんを勝たせるための戦闘体制が組まれ、 参院選ともあいまって、川口順子、石原伸晃、荻原健司、橋本聖子、 さらには当時の小泉純一郎首相まで、応援演説に駆けつける。

ニューヨーク在住の監督は、別の題材を撮影するために日本へ行く準備をしていたところ、 東京大学入学当時のクラスメートである山さんが補欠選挙に立候補したことを知る。 撮影は2005年10月7日から23日の投票日までのわずか2週間。 監督は事前の準備もせず、撮影に臨んだが、編集には10ヶ月をかけた。 ナレーションもテロップも音楽も一切廃し、素の映像だけをつないだものだが、 それだけに生の面白さがある。「観察映画」だと監督は言う。

補欠選挙で当選しても、1年半後の次の選挙では、 それぞれの地区で決まった候補者を支援するから、 今回だけの応援だとあからさまに言われても、にこやかに笑って 「今回限り、山内和彦をよろしくお願いします」と、 自民党支援者たちに頭を下げる山さん。駅前で演説し、握手をしてまわる山さんは、 思わずケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダースさんとも握手してしまう。 にじみ出る山さんのお人柄に、う〜ん、この人は政治家に向いているのか・・・ と思いながらも、勝たせてあげたいと思ってしまう。
山さんや奥さん、自民党支援者たちの本音発言に、 試写室も笑いの渦。今年のベルリン映画祭に正式招待され、大絶賛された本作、 日本人が見ると、ちょっと気恥ずかしい日本的社会が丸出しだけど、 外国人に大受けするのも納得。政治は誰のものか・・・なんてことも、 ついつい考えてしまう。(咲)

日本・アメリカ/120分/カラー/デジタル上映(16:9/ステレオ)
配給・宣伝:アステア

公式HP>> http://www.laboratoryx.us/campaignjp/

★6月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムをはじめ、日本全国17都市でロードショー



『プレステージ』(原題:THE PRESTIGE)

監督:クリストファー.ノーラン(『メメント』『バットマン ビギンズ』)
監修:デビッド・カッパーフィールド
原作:「奇術師」クリストファー・プリースト(ハヤカワ文庫)
出演:ヒュー.ジャックマン(『X-MEN』シリーズ)、クリスチャン・ベール(『バットマン ビギンズ』)、マイケル・ケイン(『バットマン ビギンズ』)、スカーレット・ヨハンソン(『ブラック.ダリア』)、デヴィッド・ボウイ(『戦場のメリークリスマス』)

19世紀末ロンドン。華麗な奇術で人々を魅了する2人の天才マジシャン、ロバート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド.ボーデン(クリスチャン・ベール)。一瞬のうちに遠くへ身を移す瞬間移動の術を競いながらも尊敬し合う二人。ある日、アンジャーの妻が、トリックでほどけるはずの縄がほどけず舞台の下で死んでしまう。縄を結んだボーデンに復讐を誓うアンジャー。しかし、そのアンジャーが舞台上で壮絶な死を遂げ、翌日アンジャー殺しの犯人として、ボーデンは逮捕されてしまう。刑務所の中で必死に冤罪だと訴えるボーデン・・・

一流のマジックは、3つのパートから成る。
1.プレッジ(確認) 
タネも仕掛けもないことを観客に確認させる。だがもちろん、タネはある。
2.ターン(展開)
その仕掛けのない道具で、パフォーマンスを見せる。トリックは見破られない。
そして、
3.プレステージ(偉業)
それだけでは観客は満足しない。最後にもう一段、予想を超えた驚きを提供する。

映画は、最後の最後まで、これでもかのトリックの連続。19世紀末のヴィクトリア朝の華麗な舞台に酔いつつ、え? いったい何が真実? と狐につままれた思いの130分でした。(咲)

配給 ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ
2006年/アメリカ/ カラー/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル

公式 HP >> http://prestige.gyao.jp/

★2007年6月9日よりスカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開


2007年6月16日〜

『雲南の少女 ルオマの初恋』

監督:章家瑞(チアン・チアルイ)
脚本:孟家宋(モン・チアソン)
出演:李敏(リー・ミン)、楊志剛(ヤン・チーカン)、祝琳媛(シュー・リンエン)、李翠(リー・ツイ)

ルオマは雲南省紅河州に住む少数民族ハニ族の少女。おばあちゃんと二人暮らしで、毎日街に出て焼きトウモロコシを売っている。近所の写真館を経営しているのは、都会からやってきた写真家のアミン。でも全然稼げていないらしく、ルオマから買ったトウモロコシ代もなくて、代わりにヘッドホンステレオを彼女に渡す。それからはエンヤの「カリビアン・ブルー」が聞こえてきた。初めて聞く西洋の音楽をルオマはとても気に入る。
外国人観光客は民族衣装を着た美しい彼女と写真を撮りたがるけれど、肝心のトウモロコシはなかなか売れない。その様子を見たアミンは、彼女に観光客と一緒に写真を撮る商売をしないかと持ちかける。

世界遺産にも登録された雲南の美しい棚田風景の中で織りなす、17歳の少女の初恋は、素朴で美しいながらも、少数民族の伝統的生活が否応なく変わりつつある中で、外の世界へ憧れる若い世代の現実も垣間見せていて、印象深いものになっています。ハニ族の農耕文化は日本のそれと共通するところが多くて、遠い地でありながら懐かしさすら感じます。グローバル化の波は避けがたいかもしれませんが、どうか彼女たちの輝く笑顔が失われないようにと祈るような気持ちになりました。(梅)

思えば、この作品が『ルオマは17歳』のタイトルで、アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されたのが、2004年のこと。映画そのままの民族衣装姿で会場に登場したリー・ミンさんは大人気でした。記者会見でも、思わず皆、彼女に駆け寄って記念写真を撮っていました。(記者会見での記念写真は珍しい!)
監督は、ハニ族の人たちの棚田を自然遺産に登録したいという思いを知って、その一助となればと、この作品を撮ったそうですが、「今年(2004年)、無事世界遺産に登録されました」と、嬉しそうに福岡で報告されていたのが印象的でした。
私自身にとっては、25年前に、悪天候のため昆明から広州に軍用機で飛んだことがあって、かなりの低空飛行のお陰で、まるで等高線のように広がる棚田を間近にして感激した思い出があります。そこに住む人たちの地道な努力の賜物だということに、この作品を観てあらためて思いが至りました。
3年前、福岡で「祖先が残してくれた伝統も大事にしながら、新しいものとうまく調和していきたい」と語っていたリー・ミンさん。今年来日した折りには会いに行けませんでしたが、70号に掲載されている報告記事で見る彼女は、ちょっぴり大人っぽくなったけれど、相変わらずの初々しさ。中国の隅々まで押し寄せている近代化の波につぶされないことを願うばかりです。(咲)

北京青年映画撮影所・雲南良黎影視文化伝播公司
2002/中国/ヴィスタビジョン/90分/原題:[女若]瑪的十七歳
字幕:田村祥子
配給:ワコー、グアパ・グアポ
宣伝:グアパ・グアポ

公式 HP >> http://www.ruoma.jp/

★6月16日(土)より、東京都写真美術館ホールにてロードショー(他全国順次公開)
★バックナンバー63号の公開画像のところで、2004年福岡でのリー・ミンさんの初々しい民族衣装姿が見られます!

本誌70号に監督、主演女優の舞台挨拶記事が掲載されています。


2007年6月23日〜

『図鑑に載ってない虫』

監督・脚本:三木聡
撮影:小松高志
音楽:坂口修
美術:丸尾知行 中川理仁
出演:伊勢谷友介(俺)、松尾スズキ(エンドー)、菊池凛子(サヨコ)、岩松了(目玉のおっちゃん)、ふせえり(チョロリ)、水野美紀(美人編集長)、笹野高史(モツ煮込み屋の親父)、松重豊(真島)ほか

フリーライターの俺は「月刊 黒い本」の編集長から「臨死体験をして来い」という命令を受けてしまった。 「死にモドキ」という虫を探せばそれができるらしい。 相棒のエンドーを呼び出して、ヒントを持っているらしいカメラマンの真島のアパートへ向かう。 真島の残したメモを手がかりに、虫さがしを続けるが出会うのは、 ヘンなヤクザやSM嬢たち。果たして締め切りに間に合うのだろうかっ??

『イン・ザ・プール』、『亀は意外と速く泳ぐ』、『ダメジン』 と脱力系作品を送り出してきた三木聡。 今回は伊勢谷友介が2の線から大きく外れたキャラで、松尾スズキといいコンビです。 岩松了、ふせえりら常連に負けず、 あら!と思うキャストたちが意外な役で次々と登場します。 キャスティングたいへんだったでしょうねぇ。 あいかわらず小ネタ満載で、あははと笑わせてもらいました。(白)

2007/日本/カラー/103分/35mm/アメリカンビスタ/DTSステレオ
配給:日活 宣伝:アンプラグド

6月23日(土)より、テアトル新宿ほかにてロードショー

http://www.zukan-movie.com/



『ジェイムズ聖地(エルサレム)へ行く』原題:James'Journey To Jerusalem

監督:ラアナン・アレクサンドロヴィッチ
プロデューサー:アミール・ハレル(『パラダイス・ナウ』共同プロデューサー)
出演:シアボンガ・シブ、アリー・エリアス、サリム・ダウ、サンドラ・ショーンワルド

南アフリカの小さな村の純粋で敬虔なクリスチャンの青年ジェイムズは、 村人たちの期待を一心に集めて、 次期牧師候補として聖地エルサレムへの巡礼の旅に送り出される。 心躍らせたどり着いたイスラエルの空港で、 不法移民と決め付けられ留置所に入れられてしまうジェイムズ。 ほどなく、留置所にやってきた手配師の男に助け出されるが、 払った保釈金分働けと命令される。 これも神様の試練とまじめに働くジェイムズは、手配師の父親に気に入られる。 チップに渡されたお金を、「金持ちが天国に行くのは駱駝が針の穴を通るより難しい」と、 最初は受け取らなかったジェイムズだが、 「フライヤー(ヘブライ語で“人に利用される人”)になるな」と言われ続けるうちに、 人を利用して金儲けする方法を身につけてしまう。 はたしてジェイムズは聖地エルサレムに行くことができるのか?

純情なジェイムズが毒されていく姿や、古い一軒家に住む父親を立ち退かせて、 その土地に大きなビルを建てようと目論む息子など、 拝金主義の社会がユーモアと皮肉たっぷりに描かれていて、大いに笑わせられた。 目的地の聖地は、すぐそばにあるのに、なかなか辿り着けない。 努力すれば夢はつかめるものなのにという例えだろうか。 土地を巡る親子の対立など、この映画はイスラエルを舞台にしているが、 とても普遍的なメッセージを感じさせてくれるものだった。 聖歌隊の歌をバックにした冒頭とラストの寓話的な描き方が、 現代の御伽噺という雰囲気。考えさせられる楽しい映画!(咲)

2003年/イスラエル/87分/ カラー/ 35mm/ ビデオ上映(日本国内)
言語:英語+ヘブライ語+ズールー語(日本語字幕:落合寿和)

提供:ラウンドテーブル・シネマ 配給:ラウンドテーブル・シネマ/アップリンク

公式HP>> http://www.roundtablecinema.com/

★6月23日(土)よりロードショー  東京 : アップリンク X 大阪 : シネ・ヌーヴォ X



『イラクー狼の谷ー』

監督:セルダル・アカル
脚本:ラージ・シャシュマズ、バハドゥル・オズデネル
出演:ネジャーティ・シャシュマズ、ハッサン・マスード、ビリー・ゼイン(『タイタニック』)、ゲイリー・ビジー(『ビッグ・ウェンズデー』)

2003年7月4日、イラク北部のクルド自治区で、トルコ特殊部隊の秘密本部が同盟国であるはずのアメリカの軍部隊に突然踏み込まれ、11人の兵士たちは頭にフードをかぶらされて連行された上、長時間の抑留を余儀なくされた。誇り高いトルコ将校のスレイマンはこの屈辱に耐えかねて、遺書を親友であり、元トルコ秘密諜報員であるポラットに残して自殺した。ポラットと二人の仲間は友の遺志を継ぎ、アメリカの部隊を指揮したサム・マーシャルへ同様の屈辱を与えるためイラクへと向かう。

これはイラクを舞台にしていますが、あくまでもトルコの娯楽映画であるということは了解しておいた方がいいでしょう。元々この諜報員ポラットは、マフィアへの潜入捜査で活躍する人気テレビシリーズのキャラクターです。彼とアメリカの指揮官サムとの戦いを追いながら、イラクでの実際の事件や噂を織り交ぜてアメリカの非道を強烈に描き、イスラーム社会では大受け、欧米では物議を醸しました。現カリフォルニア州知事がかつて主演していたイスラームの人たちを殺戮する映画は問題にならないのにねぇ。
元来トルコはイスラム国家の中では最も親米派路線をとっていたにもかかわらず、このようなナショナリズム丸出し、アンチ・アメリカな映画を作って大ヒットしてしまったあたりに、現在のトルコ社会の大きな揺れを感じます。
単純に娯楽映画として観ればかなり面白いのです。サムを演じるビリー・ゼインなど、見事な悪役っぷりです。しかし、この映画に熱狂したトルコの観客の根底に渦巻く憎悪と偏見を思うと、複雑な気分になりました。願わくはキャラクターの一人であるイスラームの導師の徳のある言葉にこそ熱狂して欲しいものです。(梅)

トルコから潜入してきたポラットと手を組み、アメリカの指揮官サムに立ち向かうのが、 アラブ族の女性レイラ。彼女は結婚式を襲われ、新婚の夫を失ったことから、 闘争心に燃えるのですが、 結婚式への誤爆という事件もアフガニスタンやイラクなどで実際にあった話。 民族服姿の美しいレイラは、ポラットと英語で流暢に会話する聡明な女性。 家族や同族のアラブ人とは、もちろんアラビア語で会話しています。 ポラットは仲間とはトルコ語で会話。 そして、ポラットがトルコから一緒に潜入した中にクルド人がいて、 イラク北部のクルディスタンのクルド人とは彼を介して意思疎通。 英語以外の言語の時には、日本語字幕に、<  >が付いているのですが、 トルコ語、クルド語、アラビア語の区別は残念ながら無くて、 せっかく英語とそれ以外の言語を区別したのに惜しい!
さて、アラブ、クルドそれぞれの民族から尊敬されているアラブ人の導師は、 自爆テロについて、自殺行為はイスラームでは禁じられていることと語って、 米軍批判だけでなく、イスラーム内部の批判もしています。 自爆テロに走るしかない状況を作ったのは誰か?ということはさておき、 導師の率いる神秘主義教団の人たちが輪になって集団で祈る姿が圧巻でした。 モスクの絨毯も緑を基調にしていて素敵で、行ってみたくなりました。 どこだかわかった方、是非教えてください!(咲)

2006年/トルコ/122分/DOLBY SRD/ビスタサイズ/原題:Kurtlar Vadisi : IRAK (Valley of the Wolves Iraq )
配給・宣伝:アット エンタテインメント

公式 HP >> http://www.at-e.co.jp/ookami/

★2007年6月23日(土)より、銀座シネパトスにて公開


『リサイクル—死界—』原題:鬼域

監督・脚本・製作・編集:オキサイド・パン、ダニー・パン
撮影:デーチャー・スリマントラ
出演:アンジェリカ・リー(ディンイン)、ラウ・シウミン(老人)、ローレンス・チョウ、レイン・リー ほか

ディンインは新進女流作家チョイチュンとして成功を収めていた。 恋愛小説が映画化されることになり、記者会見の席上で次の作品について質問を受ける。 「鬼域」という題が決まったばかりの小説が霊的体験をテーマにしていること、 そのため霊に遭遇して恐怖を体験してみたいと答えてしまう。 しかし執筆が思うように進まず、 書いては消しを繰り返すうちにディンインの周りで奇妙な現象が起こり始める。 長い髪の毛、人の気配、無言電話・・・思えばみな、 ディンインが書いては捨てた言葉と合致していた。 そして青ざめた老婆とその孫らしい女の子とエレベーターに乗り合わせ、 彼女たちがあるはずのない地階へと沈んでいくのを見てしまう。 走り出したディンインが足を踏み入れたのは廃墟のような建物の並ぶ世界だった。

双子の兄弟監督、パン・ブラザースが『The EYE』シリーズのアンジェリカ・リーを主演に 製作したホラー。ディンインが虚構か現実かと疑う、 マンション内の事件は目新しいものではありませんが、 彼女が迷いこむ死界の造形がゲームの中の世界みたいで面白いです。 バンコク郊外に建てられた巨大なセットだそうですよ。 最初の建物群は「クーロンズ・ゲート」だなぁとか、 これは必須アイテムだとか思いながら見ていました。
人は生きていくうえでたくさんのものを消費し、ゴミにして捨て、 忘れ去っていきます。それがみな集められた場所があり、そこへ放り込まれたとしたら、 私なんぞ「すいません、すいません」と謝りますね、きっと。 素直にもっとモノを大事にしよう、お墓参りにも行こうと思いましたよ。 何でかは映画を見てくださいね。割合先の読めるストーリーですが、 アンジェリカ・リーの熱演と美術、特殊効果が楽しめます。(白)

2005/香港・タイ/カラー/1時間48分/シネマスコープ/SRD・SR
配給:UIP
http://recycle.uipjapan.com/

6月23日(土)シネマート六本木にてロードショー



『エマニュエルの贈りもの』(原題:Emmanuel's Gift)

製作/監督:リサ・ラックス、ナンシー・スターン
出演:エマニュエル・オフォス・エボワ,ジム・マクラーレン、オプラ・ウィンフリー(ナレーション)、ロビン・ウィリアムズ(特別出演)

1977年、西アフリカ・ガーナで右足に障害をもって生まれたエマニュエル。父親には見捨てられたが、母親の大きな愛情に包まれて育った彼は、ハンディキャップを克服し、米国の支援団体に働きかけて得た自転車でガーナ全土を片足義足で制覇。またトライアスロンにも兆戦するなど、義足のアスリートとして活躍するだけでなく、障害者が自立して暮らしていくために日々社会に働きかけている。

本作は、エマニュエルに感銘を受けたリサ・ラックスとナンシー・スターンが、2年以上の歳月をかけて、ガーナからアメリカへと彼の活動を追って記録した400時間にも及ぶ映像をドキュメンタリー映画としてまとめたもの。
このところ、取り上げられることの多いアフリカですが、いち早く独立したガーナには、比較的進歩的なイメージを抱いてい ました。「障害を持って生まれた子供は呪われた者」という、前近代的な思想が根強く残り、親からも社会からも見捨てられ 、物乞いをして生きるしか道がないということに驚くばかり。しかも、障害者は全人口の1割、200万人もいるということに 、さらに驚きました。ポリオワクチンの不足などが原因とのですが、それにしても多すぎないでしょうか? ガーナというと 、黄熱病の病原体の研究にあたった野口英世博士が思い出されます。この地から風土病が完全になくなるのはいつのことでし ょう。障害者の保護については、本作でエマニュエルが注目され、彼が中心となって働きかけた結果、ようやくガーナにも保 護法ができたそうです。片足が悪いことなど、どこ吹く風というエネルギッシュなエマニュエルを見ていると、五体満足なの に、のんべんだらりと毎日を過ごしている自分が情けなくなりました。少し気を入れて頑張らなくちゃ!(咲)

アメリカ/2005年/80分/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:デジタルサイト
宣伝:アニープラネット
後援: ガーナ共和国大使館/ 後援: ガーナ共和国大使館
協力:(社)日本トライアスロン連合
(社)日本PTA全国協議会推薦作品/ 文部科学省選定作品

公式 HP >> http://www.emmanuelsgift.jp/

★6月23日(土)渋谷シネマGAGA!他全国順次ロードショー


2007年6月30日〜

「エロチック乱歩」

『屋根裏の散歩者』

監督:三原光尋
脚本:伊土紀州
撮影:芦澤明子(J.S.C.)
音楽:遠藤浩二
美術:中川理仁
VE:宇津野裕行
出演:嘉門洋子、窪塚俊介、村木仁、永瀬ひかり、清水萌々子、遊井亮子、木下ほうが、でんでん

2006/日本/カラー/DV/ステレオ/87分

『人間椅子』

監督:佐藤圭作
脚本:佐藤圭作・武井彩
撮影:大内勇
音楽:柳田しゆ
美術:松本知恵
VE:宇津野裕行
出演:宮路真緒、小沢真珠、鈴木薫、鈴木拓也、茅野雅生、水戸ひねき、石川謙、辻修、板尾創路

2006/日本/カラー/DV/ステレオ/76分

制作:円谷エンターテイメント
製作:アートポート

江戸川乱歩の有名小説を土台に、新しい脚色をほどこした作品です。 大正14年の作品を現代に置き換えているので、 どこがどう変わっているのか原作を読みたくなりました。 『村の写真集』の三原監督がこういう作品も撮るのと意外。 『人間椅子』の不思議なシチュエーション、小沢真珠のこわれっぷりもみどころ。 『屋根裏の散歩者』は女性カメラマンのようです。珍しいなぁ。(白)

6月30日(土)より、シアターN渋谷、銀座シネパトス他にて、2作週代わりでロードショー



『吉祥天女』

監督・脚本:及川中
原作:吉田秋生(小学館刊)
撮影:柳田裕男
音楽:神津裕之
美術:中川理仁
出演:鈴木杏(叶小夜子)、本仮屋ユイカ(麻井由似子)、勝地涼(遠野涼)、深水元基(遠野暁)、市川実日子(麻井鷹子)、津田寛治(小川雪政)、江波杏子(叶あき)ほか
主題歌:「仰げば尊し」スーザン・オズボーン(PONY CANYON)

昭和45年春の金沢。能楽好きの元気な高校生、 麻井由似子のクラスに転校生が入ってきた。 長い黒髪の美少女、叶小夜子に誰もがひきつけられる。 叶家はこのあたりの土地の殆どを所有する旧家で、小夜子はその孫娘だった。 新興の遠野建設は、その土地を手に入れるため一人息子の遠野暁と小夜子の縁組を画策していた。 小夜子の同級生の遠野涼もその一族だったが、涼だけは小夜子に近づくことをしなかった。

吉田秋生の同名漫画が原作。20年以上も前の作品だったとは、時の流れは速い!!

原作の小夜子は日本的でミステリアス、 ぞくっとするような色気の漂う少女という印象でした。 この作品のモチーフとなる「吉祥天」というのは、 インドの女神マハーシュリーが起源なのだそうで、 それなら目鼻立ちのくっきりした鈴木杏の小夜子も「あり」ですね。 ワンカットのアクション頑張っています。 小夜子の髪の量(エクステ?)が少なかったのが惜しいです。 津田寛治/雪政はなかなか素敵でした。 最後に「仰げば尊し」がろうろうと流れて気をつけ(はしなかったけど)気分。(白)

2007/日本/カラー/116分/PG−12/
配給:CKエンタテイメント

http://www.kisshohtennyo.jp/
6月、渋谷Q−AXシネマほか全国ロードショー


『そして、デブノーの森へ』

監督・脚本:ロベルト・アンドゥ
共同脚本:サルバトーレ・マルサレッリ
出演:アナ・ムグラリス、ダニエル・オートゥイユ、グレタ・スカッキ、ミシェル・ロンズデール、マグダレンナ・ミェルツァシ、ジョルジオ・ルパーノ

ベストセラー作家セルジュ・ノヴァク。彼は決して人前に現れず、その素性は全くの謎に包まれており、そのことが世間の興味を一層そそっていた。
しかしダニエル・ボルタンスキーというポーランド出身のユダヤ人の男こそが、セルジュ・ノヴァクその人であった。ある日、ダニエルは義理の息子の結婚式に出席するために、カプリ島へと向かう。その途中の船上で、美しく魅惑的な女性と出会い、彼女に誘われるまま一夜を共にする。翌朝、目覚めると彼女はもういなかった。ダニエルは結婚式へ駆けつけるが、息子の花嫁ミラとしてそこにいたのは、昨夜の彼女だった。
ミラは結婚してもダニエルに接近しようとする。ダニエルはその意図を計りかね、困惑しながらも、彼女にのめり込んでいく・・・。

初めはただファム・ファタールに翻弄される中年男の悲哀の話かと思ったのですが、サスペンスの要素が強く、次々と予想を裏切る展開で最後まで目が離せず、非常に楽しめました。 上流階級が舞台なので、シャネル、フェンディといったメゾンから提供されたアナ・ムグラリスのファッションも素敵ですし、フランスのパリ、南イタリアのカプリ島、スイスのジュネーブなどのロケ地の風景も美しい。 『あるいは裏切りという名の犬』『隠された記憶』に続き、ダニエル・オートゥイユの卓越した演技を楽しむことができます。(梅)

冒頭、キッパを被った老人がヘブライ文字を書いている姿。 次に、初老の男性二人、「僕たちユダヤ人には見えないよね」との会話。 ユダヤであることがこの物語にどう関わってくるのかと、 一気にこの映画に惹かれてしまいました。 そして、ダニエル・オートゥイユ演じる主人公が船上で出会う謎めいた美女は、 祖父の母語がイディッシュで、 ダニエルは自分と同じ言葉を解する彼女にぐっと引き込まれていきます。 それほどユダヤに詳しいわけではないので、 この物語の背景にあるものが深くは理解できなかったのですが、それを抜きにしても、 複雑に絡む二人の過去を紐解いていく面白さにぞくぞく。 お墓参りの時に、お墓の上に石を置く風習なども興味深いものでした。 そして何より、主役二人の大人の魅力に惹かれました。(咲)

第57回カンヌ国際映画祭正式出品
第21回アヴィニヨン映画祭・UCMF賞受賞<ルドヴィゴ・エイナウディ/音楽>

2004年/フランス・イタリア・スイス/カラー/109分/DOLBY SRD/シネスコサイズ
配給:アット エンタテインメント
宣伝:アンカー・プロモーション

公式 HP >> http://www.at-e.co.jp/soshite/

★2007年6月30日(土)より、シアターイメージフォーラムにて公開


『シュレック3』SHREK THE THIRD

監督・脚本:クリス・ミラー
製作・脚本:アーロン・ワーナー
共同監督:ロマン・ヒュイ
共同脚本:ジェフリー・プライス&ジェフリー・シーマン
原作:ウィリアム・スタイグ
音楽:ハリー・グレグソン・ウィリアムズ
美術:ギョーム・アレトス
視覚効果:フィリップ・グルックマン
出演:マイク・マイヤーズ(シュレック)、キャメロン・ディアス(フィオナ姫)、エディ・マーフィ(ドンキー)、長靴をはいた猫(アントニオ・バンデラス)、ジュリー・アンドリュース(リリアン王妃)、ジョン・クリース(ハロルド王)、ルパート・エヴェレット(チャーミング王子)、ジャスティン・ティンバーレイク(アーサー)ほか

おとぎの国のバトル・ロイヤル!次の王様は誰だ?!

第2話で愛するフィオナと結婚、楽しい毎日を送っていたシュレックだったが、 ハロルド王重態の知らせに急いで「遠い遠い国」に駆けつける。 瀕死のハロルド王から次期国王になってほしいと頼まれたシュレックは大慌て、 もう一人の候補者の名前をやっと聞き出した。それはフィオナのいとこで、 魔法ハイスクールに通うアーサー。国王になんてなりたくないシュレックは、 ドンキー、長靴をはいた猫と一緒にはるばる海を渡って、アーサーに会いに行く。 旅立つシュレックにフィオナはベビーができたことを告げたが、 シュレックには父親になる気持がまだ整っていなかった。 一方チャーミング王子は、懲りずに王位を狙って画策していた。

緑色の心優しい怪物シュレックの物語、第3弾。 原作は子供向けの短編なのだそうですが、2001年に第1作、 2004年に第2作が発表され大ヒット。1,2のアンドリュー・アダムソン監督は、 今回製作総指揮に回り、クリス・ミラーの初監督作品となりました。 ミラー監督は1、2でストーリーに参加、声の出演もしているそうです。 このシリーズは、回を重ねるごとにシュレックが成長して行き、 この3作目ではとうとう父親になります。最初一人ぼっちだったのが仲間ができ、 恋人に出会って結婚し、家族が増えていきます。 この普通のストーリーが、おとぎの国で展開され、 よく知ったおとぎ話のキャラクターのパロディが満載。声優陣も豪華で、 日本語吹き替え版も濱ちゃんや藤原紀香が続投しています。(白)

2007/アメリカ/ドリームワークス作品/ビスタサイズ/DTS,SRD,SDDS/1時間33分
提供:ドリームワークスアニメーションSKG
配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント
http://www.shrek3.jp/site/index.html

6月30日(土)より、サロンパスルーブル丸の内ほか松竹・東急系にてロードショー!



『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』UNA VITA DOLCE

監督:マリオ・カナーレ,アンナローザ・モッリ
撮影:アントネッロ・ブランカ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
ナレーション: セルジオ・カステリット
出演:フェデリコ・フェリーニ、ルキーノ・ヴィスコンティ、ソフィア・ローレン、アヌーク・エーメ、キアラ・マストロヤンニ・・・

かつてマストロヤンニを撮った監督、共演した俳優たち、そして娘たちがもっとも愛 されたイタリアのスター、マルチェロ・マストロヤンニを語るもの。電話魔だったと いう彼のエピソードや休憩時のようすなど、過去の映像と新しいインタビューで綴り ます。イタリア映画の黄金期を観てみませんか。(白)

2006/イタリア/カラー/102分/
クレストインターナショナル

6月30日(土)より、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー

公式 HP >> http://marcello.jp/


イタリア映画祭でひとあし早く上映されます。
5月3日(木・祝)18:40


『石の微笑』原題:The Bridesmaid

監督:クロード・シャブロル
脚本:ピエール・レシア、クロード・シャブロル
撮影:エドゥアルド・セラ
音楽:マチュー・シャブロル
原作:ルース・レンデル「石の微笑」角川文庫
出演:ブノワ・マジメル(フィリップ)、ローラ・スメット(センタ)、オーロール・クレマン(クリスティーヌ)、ベルナール・ル・コク(ジェラルド)、ソレーヌ・ブトン(ソフィー)、アンナ・ミハルシア(パトリシア)ほか

フィリップは、建築会社の営業職。 母親クリスティーヌ、2人の妹ソフィー、パトリシアと郊外の家に住んでいる。 父親は亡くなって、母が美容師を続けてきた。ソフィーはもうすぐ結婚、 下のパトリシアは奔放で問題の多い子で頭が痛い。 フィリップはロマンチストで、庭にあるフローラという石像を大切にしていたが、 母がボーイフレンドにプレゼントすると言い出しても反対することができない。
ソフィーの結婚式で、フィリップは花嫁の付き添いを務めるセンタと知り合った。 センタは情熱的で「一目見て、運命の人だとわかった」と告白する。 フィリップはフローラに似たセンタに夢中になり、 彼女の部屋へ通うが次第にセンタの言動に疑問を持つようになる。 センタはフィリップに「愛していることを証明して」と、4つの約束を実行させようとする。 「1.木を植える 2.詩を書く 3.同性とセックスをする 4.誰かを殺すこと」

ミステリー映画の旗手クロード・シャブロルが、女流作家のルース・レンデル作品を映画化。 誰にも優しく繊細なフィリップをブノワ・マジメル、 ミステリアスなセンタをジョニー・アリディ(似てます!)とナタリー・バイの娘であるローラ・スメット。 優しい男の子が、アブナイ女の子に絡めとられ愛してしまうストーリー。 ベテランのシャブロル監督は、不安材料をぽつりぽつりと配し、 忘れたころに浮かび上がらせます。フィリップがセンタに惹きつけられていくのは、 女ばかりの家庭で育ち、父親がわりもしなければならなかった反動かなぁ。 イカレていると思いながら、気持を止めることができません。純情です。 ローラ・スメットのセンタは、無邪気に見えてぞくっと怖いです。(白)

2004/フランス・ドイツ/カラー/107分/ヨーロピアン・ヴィスタ/DTS Digital
配給:CKエンタテインメント
http://eiga.com/official/ishinobisyo/

6月30日(土)より渋谷Q−AXシネマ(レイトショー)ほか全国順次ロードショー



『ボルベール<帰郷>』 (原題:VOLVER)

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
製作総指揮:アグスティン・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、チュス・ランプレアヴェ、ヨアンナ・コバ

ライムンダ(ペネロペ・クルス)は、気性は激しいが明るくたくましい女性。ある日、15歳になる娘パウラ(ヨアンナ・コバ)が、「ほんとの父親じゃないから」と迫ってきた父を刺し殺してしまう。たまたまその日、売りに出された隣のレストランの鍵を預かったライムンダは、夫の死体をレストランの冷凍庫に隠す。そんな夜、故郷ラマンチャに住む大好きな伯母(チュス・ランプレアヴェ)が亡くなる。ライムンダは、葬儀への列席を美容師の姉ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)と隣人の末期癌の女性アグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)に任せる。
レストランで夫の処理をどうしようと悩んでいると、近くでロケをしていた映画監督が、ロケ隊の食事を任せたいとやってくる。張り切って切り盛りするライムンダ。
やがて、葬儀から戻ってきた姉の部屋を訪ねたライムンダは、十数年前大火事で死んだはずの母(カルメン・マウラ)の匂いを感じる。母とはわだかまりを残したまま死に別れてしまったのだった...

冒頭、お墓を掃除する大勢の女性たちの姿。この地方では、生きているうちに自分のお墓を掃除する風習があるのだそうだ。自分の死を受け入れ、死者との対話を絶えず忘れない人たち… アルモドバル監督は、自らの故郷ラマンチャ地方の村の人たちが、死と死者に対して自然に立ち向かう姿に賛辞を込めて、この映画を作ったという。
なにごとにもひるまないライムンダ、自分を殺して生きてきた母をはじめ、登場する女性たちそれぞれの生き様が、ぐっと迫ってくる。昨年のカンヌ国際映画祭で、『Indigenes(原住民)』の出演男優全員が最優秀男優賞を取ったのと相対するように、本作の出演女優6人が最優秀女優賞を取ったのも納得である。(6人で舞台にあがって皆が嬉しそうな顔をしている中で、ペネロペがちょっぴり不満そうな顔だったのは気のせい?)それぞれに秘密を抱えて生きている姿に、人は皆、同じなんだとも納得する。それをどう乗り越えるか… 胸の内を話せる人がいればと思うけれど、それができないのが秘密である所以ですね。(咲)

スペイン/2006年/カラー/シネスコープ/ドルビーSR,ドルビーデジタル/120分

公式 HP >> http://volver.gyao.jp/

★2007年6月30日よりTOHOシネマズ六本木ほか全国にて公開


2007年7月7日〜

『Genius Party(ジーニアス・パーティ)』

1 GENIUS PARTY 福島敦子
2 上海大竜 河森正治
3 デスティック・フォー 木村真二
4 ドアチャイム 福山庸治
5 LIMIT CYCLE 二村秀樹
6 夢みるキカイ 湯浅政明
7 BABY BLUE 渡辺信一郎

声の出演: 柳楽優弥 菊地凛子 栩原楽人 小倉久寛

『鉄コン筋クリート』を送り出したSTUDIO4℃が制作した、 14人(and more)の映像作家による新感覚の「パーティ・アニメ」。 第1弾は7人の作家による特色ある7作品。 3の『デスティック・フォー』は、『鉄コン筋クリート』の美術監督をつとめた木村真二。

2006/日本/カラー/104分/
制作:STUDIO4℃
配給:日活 宣伝:スキップ
http://www.genius-party.jp/

7月7日ロードショー公開



『アドレナリン』(原題:CRANK)

監督・脚本:マーク・ネヴェルダイン、ブライアン・テイラー
撮影:アダム・ビドル
音楽:ポール・ハスリンガー
出演:ジェイソン・ステイサム(シェブ)、エイミー・スマート(イヴ)、ホセ・パブロ・カンティーロ(ヴェローナ)、エフレン・ラミレス(カイロ)、ドワイト・ヨーカム(ドク・マイルス)他

フリーランスのスナイパー、シェブが昏睡からさめると宿敵ヴェローナからのメッセージが残されていた。「毒を注射した。お前の命は後1時間」!驚愕したシェブは 馴染みの医者に連絡する。ようやく捕まえた彼の答えは「動き続けてアドレナリンを出し続ければ、毒の作用を遅らせることができる」だった。アドレナリンを出すため にシェブはあらゆることを試し続ける。暴走する彼は、1時間以内にリッキーから解毒剤を手に入れることができるのかっ??

むちゃくちゃな展開でおバカな映画ですが、面白い! 冷静沈着な役柄が続いていたステイサムが、アドレナリンを出し続けるためにノンストップアクションを繰り広げます。真面目な顔してやることがコメディになっています。人の悲劇は見るほうには喜劇って映画ですね。中国製の合成毒ということでしたが、中国マフィアのつてをたどって、解毒剤を探すという方向には行きません。ひたすら走ってまた走り、中華街であられもない姿を見せ(とても言えません)、あげくヘリコプターから宙吊り ・・・。身体を張ったアクションを見せるジェイソン・ステイサム1972年生まれ。イギリスでは飛び込みの選手で世界12位のダイバーであったそうです。(白)

公式 HP >> http://www.adrenaline-movie.com/
この公式HPはアドレナリンを出し続けないと次を見ることができません(爆)。
さあ、連打!連打!!

★7月7日(土)より全国のユナイテッド・シネマ、109シネマズにてロードショー


「こわい童謡」

●『こわい童謡<表の章>』

監督・脚本:福谷修
音楽:原田勝通
撮影:福田陽平
照明:中村晋平
出演:多部未華子、近野成美、悠城早矢、桐島れいか他

東京郊外のお嬢様名門校、聖蘭女学院。転校生彩音は、奇妙な幻聴に悩まされていた。そんな時、寮のルームメイト奈々香が、校舎屋上から飛び降り自殺する。 彼女の死の直前、「かごめかごめ」を呻きながら歌っていた。さらに合唱部長未紀が、トイレで首を吊ったまま「通りゃんせ」と囁いていたのを彩音が見つけ、衝撃で気を失ってしまう。 この女学院には過去にも、失踪や自殺が相次いでいたとか…。

●『こわい童謡<裏の章>』

出演:安めぐみ、松尾敏伸、石坂ちなみ、多部未華子、津田寛治他

<表の章>から五年たった聖蘭女学院は廃校になった。しかし近隣から、夜中に童謡の歌声が聞こえるという証言が出た。 それを取材するため、TVクルーが訪れる。五年前の事件をなぞるように、次々と異変がクルーを襲う。

今、女子高生の間では怖〜いホラーを、女の子どうしでキャーキャー言いながら観るのが、真夏の恒例行事だそうです。何故だか、異性ではダメらしいですよ。観た後、友情の絆が深まるんですって…。なんかわかる気がします。
そこでこの映画です。同世代の女の子が謎解きに、果敢にも行動します。夜の学校の中を一人で…、おぉ〜いやだいやだ!私には出来ない相談。 勇気あるわぁ〜!しかしそこが後から、やっぱりね! となるんですが、その事は裏の章まで引きずります。表を観たら裏も観なきゃ話しにならん! です。

(美)

2007/日本/カラー/デジタル/表の章74分・裏の章79分
配給:東京テアトル

公式 HP >> http://www.douyou-movie.jp/

★ 公開:<表の章> 7月7日、<裏の章> 7月28日、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー


『傷だらけの男たち』原題:傷城

監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
製作:アンドリュー・ラウ、チョイ・ホンタッ
脚本:フェリックス・チョン、アラン・マック
撮影監督:アンドリュー・ラウ、ライ・イウファイ
音楽:チャン・クォンウィン
主題歌:「Secret」浜崎あゆみ(香港版はデニス・ホーがカバー)
出演:トニー・レオン(ラウ・チンヘイ)、金城武(ポン)、スー・チー(フォン)、シュー・ジンレイ(スクツァン)、チャップマン・トウ(チョイ)ほか

2003年クリスマスの香港、飲めない酒を無理に流し込んでいる若い刑事ポン。 上司で親友のヘイたちと凶悪犯を追っていた。 ようやく犯人を逮捕してポンが帰宅すると、恋人がベッドで自殺していた。 しかも彼女のおなかには子供がいたのだった・・・。
3年後、警察を辞職し私立探偵になったポンは、恋人の死後アルコールに溺れていた。 一方ヘイは順調に出世し、富豪の娘スクツァンと結婚して幸せの絶頂と見えた。 しかしスクツァンと疎遠だった父親チャウが、何者かに側近とともに惨殺される事件が起こる。 やがて証拠品と共に、犯人と見られる男たちが死体で発見されたが、不審な点が多く、 スクツァンはポンに捜査を依頼する。

『インファナル・アフェア』製作チームが放つ最新作。 2003年といえば香港はSARSによってまさに「傷だらけの都市」と化していました。 原題はそこから来ているのでしょうか。 トニー・レオンと金城武が『恋する惑星』以来初の本格共演を果たしています。 心に深い傷を負った二人の男のストーリーですが、それぞれ今までになかった役柄です。 あまり書くとネタばれしてしまいますね。スー・チーがとてもキュート、 金城くんの泣き顔も印象的でした。
アカデミー賞作品賞を受賞した『ディパーテッド』に続き、 ハリウッドでのリメイクがすでに決まっています。 脚色賞を獲得したフランシス・モナハンが製作総指揮&脚本、 主演はディカプリオ。楽しみですね。(白)

『インファナル・アフェア』同様、表面上の立場は違うけれど、心の深い部分で繋がっている二人の男がたどる道程を描いています。しかし今回は、梁朝偉(トニー・レオン)と金城武に舒淇(スー・チー)と徐静蕾(シュー・ジンレイ) という異なるタイプの二人の美女が絡み、『インファナルー』よりも、甘さと切なさが一層引き立てられている感じです。香港の街の風景も印象的で、観ればまた香港に行きたくなることうけ合いです。(梅)

(若干ネタバレ 注意!)
 これはまた、『インファナル・アフェア』シリーズ同様、最後にズシーンとくるアンドリュー・ラウ印の作品でした。予想もつかない最後だったけど、終わってみれば納得。思えば、底流にあるものを見せ隠れさせながら、物語をぐいぐい進めていく展開は、アンドリュウ・ラウ監督お得意の手法。主人公の感情をうまく表現していると思いました。
 トニー・レオン演じる刑事の複雑な生い立ち、背景がだんだん明らかになってきて、犯人かと思わせたり、やっぱりそうでないかと思わせたり、けっこう凝った脚本。物語が展開して行く中で観客に、こうなのかな、ああなのかなと思わせながら、真実が一気に浮かび上がって来るシーンは見事でした。
 そして、探偵役の金城武がいい。金城は演技がうまくなりました。以前の学芸会的な演技から脱して、ひと皮向けた俳優になったなあと思いました。恋人を亡くして自暴自棄になり、酒を飲めない男から、酒におぼれる男への変身、男の悲哀を充分に伝えていました。
 アンドリュー・ラウ監督の作品は、どうしても女性たちが添え物的なのが残念なのだけど、徐静蕾はそれなりの存在感を表していました。トニー演じる刑事と結婚し、全幅の信頼を寄せているかにみえたけど、殺害された父親の捜査に疑問をもった彼女は、トニー演じる刑事に真相究明をお願いするのではなく、金城演じる探偵に捜査を依頼するところは、けっこう伏線だったなあと思います。鋭い勘をもった女性を演じていました。  それに対して舒淇の役回りは、ちょっと華を添えるために付け加えた道化のようで、彼女をそういう風にしか使わないのが残念だなと思いました。ただの可愛い女の子だった。彼女はもっと、深い演技ができる女優なのに…。  とはいえ、傷ついた二人の男たちの思いが、しっとりと伝わってくる作品でした。この微妙な心の動きを、ハリウッドではリメイクできるのか…。『ディパーテッド』のときのように、表面だけなぞったような作品にならないことを望む私です。 (暁)

2006/香港/1時間51分/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/
http://drywhisky.com/index.html

7月7日(土)より みゆき座ほか全国ロードショー

特別記事 『傷だらけの男たち』来日イベントレポート も是非ご覧下さい。



2007年7月14日〜

『レッスン!』 原題:Take the Lead

監督:リズ・フリードランダー
出演:アントニオ・バンデラス(『デスペラード』『レジェンド・オブ・メキシコ』)、ロブ・ブラウン、カティア・ヴァーシラス(『Shall we Dance ?』)、アルフレ・ウッダード

ニューヨークのスラム街で社交ダンス教室を経営するピエール・デュレイン (アントニオ・バンデラス)。 ある日、高校の校長先生(アルフレ・ウッダード)の車をめちゃくちゃに破壊して逃げ去る高校生ロック(ロブ・ブラウン)を見かける。 ピエールは校長を訪ね、問題児たちに社交ダンスを教えたいと申し出る。 あの子たちの更正など無理なことと思いながら、校長はピエールを特別講師として迎え入れる。
さっそくレッスンを始めるが、HIP HOPしか知らない生徒たちは、 社交ダンスなどハナから受け入れない。 必殺技で、ダンス教室から美人ダンサーを連れてくるピエール。 ようやく、悪ガキたちも、HIP HOPと社交ダンスをうまく融合させて自分たちのものにしていく。 そして臨んだ社交ダンス大会...。

本作のモデルとなったのは、 ニューヨークのスラム街の小学校で社交ダンスを教えている実在の教師ピエール・デュレン氏。 映画化にあたり、物語に広がりを持たせるために、 子供たちの年齢を小学校から高校に変えたという。 ティーンエイジャーの抱える様々な問題をも描くという点では、 それは良いアイディアだったかもしれないけれど、 小さな子供たちが社交ダンスを踊るおしゃまな姿を観てみたかった!  設定を高校生にしてしまったために、 あまりにお決まりの物語になってしまっているような気がする次第。 何はともあれ、アントニオ・バンデラスは素敵でした!(咲)

提供:ギャガ・コミュニケーションズ×松竹
配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ
2006年/アメリカ/ 1時間57分

★7月14日(土)より、シネマGAGA!ほか全国順次ロードショー

公式HP>> http://lesson.gyao.jp/



『私たちの幸せな時間』

監督:ソン・へソン
脚本:チャン・ミンソク,パク・ウンギョン
撮影:カン・スンギ
音楽:イ・ジェジン
出演:カン・ドンウォン(チョン・ユンス/死刑囚 3987)、イ・ナヨン(ムン・ユジョン)、ユン・ヨジョン(修道女)、カン・シニル(イ主任)、チョン・ヨンスク(ユジョン母)、チャン・ヒョンソン(ユジョン兄)

ユンスは子供のころ母に捨てられ、目の見えない弟と物乞いをして暮らしていた。 ヤクザの使い走りから足を洗おうとして、 最後の仕事についていき殺人事件にまきこまれてしまう。 3人を殺害したとして死刑が確定し、全てに絶望したユンスは早く死ぬことばかり望んでいた。 元歌手のユジョンは裕福な家庭に育ちながら、心に深い傷を抱え3度も自殺未遂を起こしていた。 修道女の叔母の誘いで刑務所に行き、死刑囚に面会する。 弟が好きな歌手だったから、とユジョンに面会を希望していたのはユンスだった。


(c) 2006 Bear entertainment co., ltd.
(c) Prime entertainment co.ltd.
All rights reserved

『ラブレター 〜パイランより〜』『力道山』のソン・へソン監督の最新作。 作家のコン・ジヨンの同名小説が原作です。 カン・ドンウォンが死刑囚を演じることで話題になりました。 死刑囚の男と自殺未遂を繰り返す女が、毎週木曜日の10時から1時まで刑務所で会い、 次第にお互いの傷を理解していきます。 面会を重ねるたびに、二人の気持が次第に通じ合っていくところがとてもよく出ていました。 見守るイ主任役のカン・シニルもいいです。 慶尚南道出身のカン・ドンウォンが方言で話しているようですが、 違いがわからなくて残念。 試写でそんなに泣くことになると思わず、ティッシュもハンカチもバッグに入れたまま。 音を立てないように取り出すのに苦労しました。用意しておきましょう。(白)

久しぶりに納得のいく韓国映画を観ました。韓国映画お決まりの、泣け泣け光線たっぷりの音楽は無し!
ほとんどクラシックのピアノ曲を使っていました。
主役の二人(カン・ドンウォン/イ・ナヨン)はもちろん良いのですが、脇を固める 中年おばさん役(修道女、被害者の母、ユジュンの母)の三人が、個性を発揮してい て、悲しい中にも、力強さのある映画になっています。特に、リアルな死刑執行シー ンに、私はやはり韓国映画だなぁと感じました。映画で泣くのは年に三回もありませ んが、この映画では涙目になりました。(美)

2006/韓国/カラー/120分/
提供:アミューズソフトエンターテインメント/フィールズピクチャーズ
配給・宣伝:デスペラード
http://www.shiawasenajikan.jp/

7月14日(土)より、シネカノン有楽町、渋谷シネアミューズほか全国ロードショー



『ルネッサンス』(原題:PARIS 2054 RENAISSANCE)

監督:クリスチャン・ヴォルクマン
アニメーション・スタジオ:アティシュード・スタジオ
音楽:ニコラス・ドッド
声の出演:ダニエル・クレイグ、キャサリン・マコーマック、ロモーラ・ガライ、イアン・ホルム、ケヴォルク・マリキヤン、ジョナサン・プライス

2054年、パリ。医療関連のコングロマリット、アヴァロン社の女性研究者イローナが誘拐された。アヴァロン社のCEOダレンバックは警察に捜査を依頼。レパラス警部が捜査にあたる。レパラスはイローナが最後に会っていた姉のビスレーンの線から洗い始める。しかし、彼の捜査の後をつけ回る怪しい影があった。レパラスは捜査を進めるにつれ、誘拐事件の背後にうごめく恐ろしい計画を知っていく。

凝りにこった3Dアニメーションを敢えてハイコントラストな白黒映像にし、これまで見たことのない独自の映像世界を見せています。『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』といった数多くのSF映画の秀作を観て育ったヨーロッパの若いクリエーターたちが出した、ひとつの素敵な返信です。サスペンス・アクションの王道をいく展開ながら、スピーディーで、背景に生命科学研究の発展がもたらす危険性を描いていて、興味深いものがあります。新ボンド役のダニエル・クレイグが主人公の声をやっているのも話題。近未来のパリの造形も面白いですが、ガラスの立体交差する歩道は、スカートをはく女性にとってはありえないな(笑)。(梅)

フランス・イギリス・ルクセンブルク合作(英語)/2006年/シネマスコープ/ドルビーSRD/106分
提供・配給:ハピネット、トルネード・フィルム
宣伝:ビー・ウィング

公式 HP >> http://www.renaissance-movie.net/

★7月14日(土)、シネセゾン渋谷、吉祥寺バウスシアター、ユナイテッド・シネマ豊洲ほかにて、全国ロードショー


『童貞ペンギン』FARCE OF THE PENGUINS

監督・脚本・製作:ボブ・サゲット
音楽:ピーター・ロジャース・メルニック
出演:サミュエル・L・ジャクソン(ナレーション)
声の出演:クリスティナ・アップルゲイト(メリッサ)、ルイス・ブラック(ジミー)、トレイシー・モーガン(マーカス)、モニーク(ヴィッキー)、ボブ・サゲット(カール)ほか

毎年3月、数百羽の皇帝ペンギンの一団が花嫁を求めて、70マイルの旅をします。童貞ペンギンのカールは、まだ見ぬ伴侶を夢見て、親友のジミーと歩いています。そして純情なメリッサ、いけいけなヴィッキーたち♀ペンギンの群れも、そわそわと彼らを待っています。ホンモノの愛と幸せは手に入るのでしょうか?

大ヒットした『皇帝ペンギン』と同じく、実写版のペンギン物語。 写真はこんなペンギンたちですよという「イメージ」。 こんな格好をしてるわけではございません。念のため。 サミュエル・L・ジャクソンのナレーションも初めッから下ネタ満載。映像が似ていても、ナレーションとセリフが変わるととんでもなくおかしくなり、まるでコントを見ているようでした。ペンギンたちは、そんなセリフがついているとは知らずに、ひたすら本能のままに異性をめざします。一列に並んでのよちよち歩きも可愛いです。しかしなぜ毎年毎年子供を育てた後、遠く離れて暮らすのでしょう?謎です。
ボブ・サゲット監督は人気のTVドラマシリーズ「フルハウス」で、3人の娘のパパ役だった人。スタンダップ・コメディが得意な芸人さんでもあるそうで、あの脚本のキレっぷりは年季が入っているんですね。(白)

2006/アメリカ/SRD・SR/80分
配給:ムービーアイ

公式 HP >> http://www.movie-eye.com/lineup/2006/08/farce_of_penguins.html

★7月14日(土)よりシアターN渋谷ほか全国にて公開


2007年7月17日〜8月31日

「ヒロシマ、爆風ののちに」

2007年7月17日(火) -8月31日(金)
プログラム企画:クリスティーヌ・シベール
主催:東京日仏学院
協力:ミシェル・ポマレッド、フランス・キュルチュール

2005年8月、運命の2日、1945年8月6日と9日のちょうど60年後、 フランスで放送された『ヒロシマ、爆風ののちに』 と題された合計17時間にわたるラジオのドキュメタリー番組。 この番組を取材先である日本でも是非識ってもらいたいという思いから、 東京日仏学院で放送すると共に、写真展、映画上映、 シンポジウムなど「ピカドン」を巡る様々な分野に渡る一連の催しが行われます。

●映画上映 (上映日等詳細は、HPでご確認ください)
『予言/歴史=核狂乱の時代』監督:羽仁進
『ヒロシマ・原爆の記録』 監督:松川八洲雄
『もうひとつのヒロシマ』 演出、構成、企画:朴壽南(パク・スナム)
『生きていてよかった』 監督:亀井文夫、勅使河原宏、山崎聖教
『世界は恐怖する─死の灰の正体』 監督:亀井文夫、勅使河原宏、小山内治夫
『ビデオ絵本 ひろしまのピカ』『ひろしまを見た人—原爆の図丸木美術館—』監督:土本典昭
『ヒロシマ・原爆の記録』監督:松川八洲雄
『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』監督:アラン・レネ
『H Story』監督:諏訪敦彦
『さらば夏の光』監督:吉田喜重
『鏡の女たち』監督:吉田喜重
『吉田喜重 オペラ「マダム・バタフライ」と出会う』監督:オリヴィエ・ホルン


■映画&シンポジウム
2007年08月04日(土) 17:30—20:00
『吉田喜重 オペラ「マダム・バタフライ」と出会う』上映後、吉田喜重、青山真治、岡田茉莉子によるシンポジウム 「映画においてヒロシマを表象することの不可能性を超えて」


◆写真展 
山端庸介 『長崎ジャーニー』
土田ヒロミ 『ヒロシマコレクション』
2007年07月17日(火) -2007年08月31日(金)
休館日:2007年8月7日(火)〜8月18日(土)
場所 : 東京日仏学院ギャラリー


◆土田ヒロミ講演会&スライドショー
「フアインダーから覗いた被爆者の姿」
2007年08月01日(水) 19時00分
HP>> http://www.ifjtokyo.or.jp/agenda/festival.php?fest_id=29



2007年7月21日〜

『ゴースト・ハウス』The Messengers

監督:オキサイド・パン、ダニー・パン
製作:サム・ライミ
原案:トッド・ファーマー
脚本:マーク・ウィートン
撮影:デヴィッド・ゲッデス
音楽:ジョセフ・ロドゥカ
出演: クリステン・スチュワート(ジェス)、ディラン・マクダーモット(父ロイ)、ペネロープ・アン・ミラー(母デニース)、ジョン・コーベット(ジョン)、ダスティン・ミリガン(ボビー)ほか

ノースダコタの古い家に引っ越してきたジェスとその家族。 ジェスはシカゴで問題を起こし、3歳の弟は話すことができなくなり、 母親との関係も悪くなっていた。失業していた父親は、 そんな家族と生活の建て直しをしたいと田舎の家を買い取ったのだった。 一家が入居してまもなく、「家の買い手が現れて、上乗せした金額を払うと言っている」 と銀行員が訪れる。ひまわり畑の成功に賭けていた父親は独断で拒否する。 一方ジェスと幼い弟だけが家の中にいるものに気づいていた。 ジェスは不安を父母に訴えるが聞いてもらえない。 ひまわり畑にはカラスの大群が押し寄せ、 流れ者のジョンが追い払ったのをきっかけに雇われることになった。


サム・ライミが製作し、全米初登場1位という快挙をおさめたこの作品は、 オキサイド&ダニー・パン兄弟のハリウッド進出長編第1作。 『the EYE』がヒットし、リメイク権の争奪戦が話題となりました。 『レイン』リメイク版はニコラス・ケイジが製作・主演、その脚本・監督もするそうです。 人気です。 主演は『パニック・ルーム』でジョディ・フォスターの娘を演じていた、 クリステン・スチュワート。家族に信じてもらえないハイティーンを演じています。 この辺の事情もうすこし詳しいと良かったのになぁ。
不気味な同居人(?)が次第に姿を現してくるところなど、 けっこうどきどきさせられます。 「The Messengers」という原題がヒントになりますが、あんまり細かく考えず、 お化け屋敷を覗く気持でいると楽しめる一本。(白)

脚本はパン兄弟ではないので、とってもアメリカっぽいお話ですし、ちょっと荒いです。でも、映像にはパン兄弟らしさがあります。舞台となる家がある場所の風景が、とても美しくて、どこだろうと思ったのですが、どうやらカナダでの撮影らしいです。(梅)

2007/アメリカ/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーSRD、SDDS/
配給:東宝東和
http://www.ghosthousemovie.jp/
7月21日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー


『幸せの絆』(原題:暖春)

脚本・監督:ウーラン・ターナ(烏蘭塔娜)
出演:チャン・イェン(張妍)、ティエン・チェンレン(田成仁)ほか

80年代末、とある村にゆき倒れになっていた小さな女の子が運び込まれる。村は貧しく、どこの家も少女を引き取ろうとはしない。しかし一人のおじいさんが不憫に思って家に連れ帰る。目覚めた少女・小花(シャオファ)はひどく怯えた様子で、「家に送り返さないで、ここに置いて」と懇願するのだった。聞けば両親も祖母も相次いで亡くなり、親戚の家にあずけられるもろくに食べさせてもらえず、暴力を振るわれていたらしい。おじいさんは小花の村の村長と相談の末、引き取ることにする。優しいおじいさんとの生活は小花にとっては夢のようだが、おじいさんの息子とその嫁はただでさえ生活が苦しいのにと面白くない。何かと小花に辛く当たるのだが、小花は受け入れてもらえる日を夢見て、一生懸命に尽くすのだった。

内モンゴル出身の女性監督の初監督作品で低予算映画ながら口コミで大ヒットしたというこの作品は、中国メディアには”大催涙弾”映画と称され、多くの映画館で”感動しなかった観客、泣けなかった観客には、入場料を払い戻します”というキャッチフレーズで上映した結果、払い戻しを請求した観客は一人もいなかったそうです。確かにひたすら健気に尽くす少女に涙を搾り取られるような感じです。何だか小林綾子さんが演じた「おしん」を思い出しました。映画では貧しくて生きるのに必死で殺伐とした村人たちの心を、おじいさんの優しさと少女の健気さが変えていきます。現在は拝金主義で殺伐とした中国の人々の心を、この映画は潤してくれたのかもしれません。(梅)

2003年/中国/89分/35mm/カラー/ドルビーSR/日本語字幕:加藤正純
提供:新星映画有限公司(香港)
配給・宣伝:フリーマン・オフィス

★7月21日(土)より、銀座シネパトスにてモーニングロードショー

ウーラン・ターナ監督
(2006年あいち国際女性映画祭にて、宮崎暁美撮影)


「中国映画の全貌2007」

香港返還10周年、日中国交正常化35周年の今年、毎年恒例の「中国映画の全貌」が場所を新宿K's cinemaに移して開催されます。
今年は全74本が上映され、そのうち新作は2本。現代中国の礎を築いた指導者[登卩]小平を描いた劇映画『[登卩]小平』と、2006年中国国内ナンバーワンヒット作『クレイジー・ストーン 〜翡翠狂想曲〜』です。『クレイジー・ストーン 〜翡翠狂想曲〜』は昨年の東京国際映画祭で上映されましたが、見逃した方は是非、この機会にご覧ください。詳しいスケジュールに関しては新宿K's cinemaのHPに掲載されますので、そちらをご覧ください。

開催期間:7月21日(土)〜9月7日(金)
場所:新宿K's cinema

新宿K's cinema HP >> http://www.ks-cinema.com/



『インランド・エンパイア』

監督・脚本:デビッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・セロー

ニッキーはハリウッドの女優で、街の実力者を夫に持ち、豪邸に暮らしている。ある日、奇妙な訪問者から不気味な予言を聞き、困惑するが、その後キングスリー監督の新作『暗い明日の空の上で』に主演することが決まり喜ぶのだった。
 撮影は始まるが、ニッキーはこの作品がポーランド映画『47』のリメイクで、元の作品は主演の二人が撮影中に殺され未完に終わったという曰く付きであることを知る。撮影が進むにつれ、ニッキーと相手役のデヴォンはストーリーと同様に現実でも不倫をするようになる。次第に、現実と映画の境界が曖昧になってくる・・・

「うーん、わからない…だってリンチだもんっ」と半ば開き直ってしまう『インランド・エンパイア』。
「今はいったい現実なの?夢なの?映画撮影のシーンなの?」なんて考えていると、完全に取り残されます(苦笑)。
ここはたっぷりどっぷりリンチ世界に浸っていただいて、内容を理解するのはもう2度3度(じゃ足りないかも?)と観ていただくしかありません!  驚いたのは、全てのシーンをDVカムコーダー(家庭用モデルの業務用後継機)で撮影したんだそうです。素人が使うようなもので撮影したとはとても思えない映像美も楽しめます。 私の一番のお気に入りは、ウサギ人間です。どんな人間?それは見てのお楽しみ。
本作とは関係ありませんが、リンチ監督の名作(迷作?)ドラマ『ツイン・ピークス』がDVDで発売されます! チェリー・パイを食べ、コーヒーを飲みながらまたリンチワールドに浸ってしまいそうです。(金)

リンチ作品というと『デューン/砂の惑星』と『ストレイト・ストーリー』くらいしか体験していない私には、これはかなり強烈なインパクトを残しました。ついついストーリーを追おうとしてしまう(また追いたくなるような思わせぶりがいっぱいあるんだ)のですが、最後にいたって「この映画はそういう楽しみ方をすべきじゃないな」と気づいた次第。まずは悪魔的魅力を持つ映像と音楽に浴するのが一番。後でそこに隠されているかも知れない意味をあれこれ考えて楽しむ。そしてどうしてもわからなくて、気になって悔しいなら、また観に行けばいいのです。リンチの思うつぼです。(梅)

何も知らないでデビッド・リンチの初洗礼を受けた私は、 もう、めくるめく世界にクラクラ。交錯する現実と非現実...。 アイロンをかけるウサギ人間には、もう、たまげました。  そして、強い印象を残したのが、たどたどしい英語で一生懸命語る東洋系のホームレスの女の子。 どこかで見たような...と思ったら、裕木奈江さん!  長まわしで一言もカットなしで登場だそうです。 かと思えば、ナオミ・ワッツは、声だけの出演という、なんとも贅沢なキャスティング。 いやもう、リンチ世界に降参です。(咲)

2006年ベネチア映画祭 栄誉金獅子賞 受賞
2007年全米映画批評家協会賞 実験的作品賞 受賞
2006年/アメリカ/180分/カラー/ドルビーSRD/ビスタサイズ
配給:角川映画
宣伝:メゾン

公式 HP >> http://www.inlandempire.jp/index_yang.html

アニエスベー presents INLAND EMPIRE写真展
2007年7月14日(土)〜8月6日(日) アニエスベー青山店
2007年7月21日(土)〜8月6日(日) アニエスベー神戸大丸店

★7月21日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ他ロードショー


2007年7月28日〜

『モン族の少女 パオの物語』

監督・脚本:ゴー・クアン・ハーイ
撮影 コーデリア・ベレスフォード
出演:ドー・ティ・ハーイ・イエン(『夏至』『愛の落日』)、グエン・ニュー・クイン

ベトナム北部の山岳地域に住む少数民族モン族の家父長制が色濃く残る旧家に生まれたパオ。 子供を生むことができなかった母キアの代わりに、 子供を生むための女性シムが連れてこられ、パオが生まれた。 生みの親シムと育ての親キア、二人の母と17歳のパオをめぐる3人の女性の数奇な運命を描いた作品。
お祝いの時に着る服を川辺に残したまま姿を消したキア、 家の中に居場所がなく出て行ってしまったシム。 父が病気になったことで、実の母を捜す旅にでたパオ。 その旅の途中で、二人の母の思いを知ることになる。


実話をもとに映画化された、ベトナム初のインディペンデント映画だそうです。

2006年/ベトナム /97分/カラー/ドルビーSRD-EX/ヴィスタ(1:1.85)/35mm
配給: ダゲレオ出版、イメージフォーラム・フィルム・シリーズ
協賛:ベトナム航空
協力:NHKアジア・フィルム・フェスティバル、アジアフォーカス・福岡映画祭

★シアターイメージフォーラムにて7月28日ロードショー公開!
公式HP>> http://www.imageforum.co.jp/pao/

>> Web版特別記事
『モン族の少女 パオの物語』ゴー・クアン・ハーイ監督 インタビュー



『陸に上がった軍艦』

監督:山本保博
制作:平杉則安
原作・脚本:新藤兼人
音楽:沢渡一樹
編集:渡辺行夫
キャスト:新藤兼人(証言)、大竹しのぶ(語り)、蟹江一平、滝藤賢一、三浦影虎、鈴木雄一郎、友松タケホ、藤田正則、二木てるみ、他。

1944年春。召集令状を受け、32歳で広島呉海兵団に、 二等水兵として入隊した新藤兼人は、同年6月に、宝塚海軍航空隊に配属、 翌年上等水兵で敗戦を迎えた。この映画は当時の様子を、新藤兼人自らが克明に語り、 また彼の実体験をリアルに再現しているドキュメンタリー・ドラマです。


(C) ピクチャーズネットワーク

7月6日に名古屋同朋大学において、山本保博監督を迎え《映画人「新藤兼人」を語る》 が開催されました。お話の中心はやはりもうすぐ公開の『陸(おか)に上がった軍艦』です。
山本監督は「新藤さんは60年以上も前の出来事を鮮明に語ってくれた。 一度口を開くと1時間でも2時間でも、話は尽きなかった。 抽象的な話ではなく、戦争の不条理を、惨めな弱兵の目線で語りかける戦記を、 一人でも多くの方に、肌で感じてもらいたかった」と話されました。

同期の100人の中で、生き残ったのは6人だけ…、皆、 戦争で個人の生活を根こそぎ破壊されたのだ。 何としても、戦争は二度としてはならない。その強いメッセージが伝わってくる。(美)

2007/日本/95分/カラー/ドルビーSR/アメリカンヴィスタサイズ
配給:パンドラ 宣伝:マジックアワー
http://www.oka-gun.com/
7月28日(土)より、渋谷ユーロスペースにて公開



『天然コケッコー』

監督:山下敦弘
脚本:渡辺あや
原作:くらもちふさこ「天然コケッコー」集英社刊
撮影:近藤龍人
音楽:レイ・ハラカミ
(OST:サプライムレコーズ/ミュージックマイン)
主題歌:くるり「言葉はさんかく こころは四角」
美術:金勝浩一
出演:夏帆(右田そよ)、岡田将生(大沢広海)、柳英里沙(伊吹)、藤村聖子(篤子)、森下翔梧(右田浩太郎)、本間るい(カツ代)、夏川結衣(そよの母)、佐藤浩市(そよの父)、大内まり(広海の母)、廣末哲万(シゲちゃん)ほか

右田そよは中学2年生。山と田んぼと畑に囲まれた全校生徒6人の分校に通っている。 みんなが知り合いのこの村で、子供たちは家族のように仲が良い。小学生は3人。 まだ一人でトイレに行けない1年生のさっちゃんに、元気な2年生のカッちゃん、 そよの弟の浩太郎は6年生。床屋の娘の伊吹と、漫画好きの篤子が中学1年生。 ここへ転校生の大沢広海が入ってきた。そよの初めての同級生は、 東京から来た「イケメンさん」だった。 そよの父親は、広海と親しくなることを厳しく禁じ、そよは不思議でならない。


©2007「天然コケッコー」製作委員会

くらもちふさこの漫画を読んだプロデューサー氏が映画化を切望し、 10数年たってようやく実現したものだそうです。 原作と作者の大ファンだという脚本家渡辺あやが、セリフを大切に生かし、 『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督がユートピアのような田舎の日常を丁寧に見せてくれます。 天真爛漫な子供たちの一年が、原作と同じ村の中で再現されています。 「もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、 ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」というそよのセリフに、 「そうそう、そうなんだよね」と頷いてしまいました。 小さな宝物をそっと渡された気分になった作品です。(白)

2007/日本/2時間1分/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース

http://www.tenkoke.com/

7月28日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほかにてロードショー



『夕凪の街 桜の国』

監督:佐々部清
脚本:国井桂、佐々部清
原作:こうの史代「夕凪の街 桜の国」(双葉社刊)
出演:田中麗奈(石川七波)、麻生久美子(平野皆見)、吉沢悠(打越豊)、伊崎充則(石川旭・青年時代)、中越典子(利根東子)、藤村志保(平野フジミ)、堺正章(石川旭)

〜 夕凪の街 〜
原爆が落ちてから10年以上が経った広島の街に住む平野皆見は、会社の同僚の打越を密かに想っていた。しかし、その打越から愛を打ち明けられたとき、彼女の脳裏によぎったのは、原爆で死んでいった父や妹やたくさんの人々のこと。幸せになることに後ろめたさを感じていた。打越は「生きとってくれて、ありがとうな」と彼女の手を取るのだった。
〜 桜の国 〜
平成19年夏の東京に暮らす石川七波は、最近黙って徘徊する父・旭のことが気にかかる。その夜も、黙って出かける父を追って駅に行ったところ、以前住んでいた家のお隣で幼なじみの東子と出会う。東子の”行こう!”の言葉に後押しされて、七波は広島に向かった父の後を追う。

原作は平成16年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞や第9回手塚治虫文化賞新生賞などを受賞し、各メディアでも絶賛されたマンガです。映画を観た後に早速買い求め読みました。103ページの短い作品ですが、原爆の恐ろしさの本質を、静かな語りで鮮やかに見せていて、非常に深い感銘を受けました。
映画はその原作の持つ精神を大切に、実直に映像化しています。ただ、前半がちょっとウェットになりすぎたように感じるのが残念でしたが、原爆を知らない若い世代に訴えかけるには、このくらい必要なのかもしれません。
戦争は何年経っても消えない心と体の傷を残しますが、原爆の放射能は、さらにもっと酷いものを残します。60年以上が経って、多くの人にとって遠い記憶になりかけていますが、若い七波たちまでその哀しみと無関係では生きてはいけないのです。(梅)

2007年/日本/35mm/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/118分
配給・宣伝:アートポート

公式 HP >> http://www.yunagi-sakura.jp/

★7月28日(土)より、全国ロードショー


『ヒロシマナガサキ』(原題:WHITE LIGHT/BLACK RAIN: The Destrucion of Hiroshima and Nagasaki)

監督:スティーヴン・オカザキ
2007年/アメリカ/86分/カラー
配給:シグロ・ザジフィルムズ 協力:岩波ホール・ANT - Hiroshima
特別推薦 日本原水爆被害者団体協議会

スティーヴン・オカザキ監督は1991年に『待ちわびる日々(Days of Waiting)』でアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門でオスカーを受賞しているドキュメンタリー映画作家です。監督は1981年に初めて広島を訪れ、1982年に『生存者たち(Suvivors)』という作品を発表しています。それ以来、被爆者たちの取材を続け、2005年に制作した『マッシュルーム・クラブ(The Mushroom Club)』はアカデミー賞にノミネートされました。そして、25年にわたる取材の集大成として今年制作されたのがこの『ヒロシマナガサキ』です。
この作品は、14人の広島と長崎の被爆者と4人の爆撃に関与したアメリカ人へのインタビューと、貴重な記録映像や資料からつづられいます。1945年8月6日と9日に何が起こったのか、核爆弾とはどんなものなのか、ある程度知っている人も、何も知らない人も、この作品から衝撃を受けずにはいられないでしょう。現在、他国からの脅威をより大きな脅威で制圧しようと、核にしがみつく国家が後を絶ちません。しかし、彼らがしがみついているものの正体を、彼らも我々も知っているのでしょうか? 戦後60年以上が経過し、広島・長崎の生存者たちも高齢になりました。映画の冒頭で、原宿あたりを歩く若者たちに「8月6日は何の日?」と聞いて歩くシーンがあります。多くの若者たちがわかりませんでした。過去の事として忘れ去れば、被爆者たちの味わった地獄に、その若者たちが再び放り込まれることになります。そんなことにならないためにも、どうぞ彼らの声に耳を傾けてみてください。(梅) 

転勤族だったころ、長崎に3年住みました。 子供たちが通ったのは爆心地から近い山里小学校です。 かつてたくさんの死傷者が運び込まれたところ。 地元ですから原爆や戦争についての平和教育は熱心で、 8月6日、9日に何があったか誰もが知っていました。 このフィルムの冒頭の若い人たちには答えられません。 それにひゃーと驚きました。 時間が確実に風化させているのですね。 唯一の被爆国の日本がこれでは、他の国での認知の程は想像に難くありません。
私も写真で見て記憶にある、ひどい火傷を負った少年が存命で登場しました。 衣服の下の見える傷ばかりでなく、 心にも大きな傷を負っただろう方々が出演してくださっているのに感銘を受けました。 忘れないでという思いがひしひしと伝わります。 どうぞ一人でも多くの方が観て、そしてほかの方へも知らせてくださいますように。 (白)

マスコミ試写になかなか伺えないでいたら、本作に興味を寄せていた戦争体験者の母が、聖路加国際病院理事長、日野原重明氏の講演付きの試写に当たったので、一緒に行ってきました。「『ヒロシマナガサキ』をとおして、いのちと平和を語る」と題し、95歳にもなる日野原氏が30分間立ったまま、「この映画を数多くの人に観てもらって、“いつか来た道を再びもどらないように”立ち上がって欲しい」と熱く語る姿に感銘を受けました。
映画の中で、太平洋戦争当時にアメリカで流された映像だと思うのですが、元駐日アメリカ大使が、「天皇を神とあがめるように訓練され、死をもいとわない狂信的な人たち。思考回路は西欧とは異なり、全く理解できない。時代遅れだ」と言い切る姿に、サッダーム・フセインやアルカーイダを悪とみなし、「テロとの戦い」と正当化して、庶民を巻き込む戦争を今なお繰り返しているブッシュ大統領の姿が重なりました。
狂信的な日本国民をアメリカに刃向かわせないために主要都市を空爆し、そのとどめが広島と長崎への原爆投下だったと正当化するアメリカ政府を是とする人たちに、原爆のもたらした被害がいかに酷いものかを、本作を観て再認識してほしいと切に思います。また、被爆国であることを意識していない日本の若い世代の人たちにも、観てほしいと思うのですが、冒頭に流れる、「満州へ侵略」「真珠湾奇襲攻撃」「天皇の顔を見てはいけない」などのニュース映像は、“だからアメリカが日本に戦争を仕掛けたのは仕方なかった”と誤解されかねないと感じました。あの映像を流すのであれば、日本の行為が侵略戦争だったかどうかについて異論があることも触れてほしかったと思う次第です。いずれにしても、いかなる理由があれ、戦争は負の遺産しかもたらさないことを、世の権力者に認識してほしいと願うばかりです。(咲)

★2007年7月28日(土)より岩波ホールにてロードショー 他全国順次公開

公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/hiroshimanagasaki/



『リトル・チルドレン』LITTLE CHILDREN

監督:トッド・フィールド
脚本:トッド・フィールド、トム・ペロッタ
原作・製作:トム・ペロッタ
撮影:アントニオ・カルヴァッシュ
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ケイト・ウィンスレット(サラ・ピアース)、 パトリック・ウィルソン(ブラッド・アダムソン)、ジェニファー・コネリー(キャシー・アダムソン)、ノア・エメリッヒ(ラリー)、ジャッキー・アール・ヘイリー(ロニー)、フィリス・サマーヴィル(ロニー母)他

サラ・ピアースはボストンの郊外に引っ越してきたばかり。 夫のリチャードが仕事で成功して家を買ったのだ。 3歳になる娘と「公園デビュー」を試みるが、 女子高生のようなお喋りばかりしている近所の主婦達の仲間には入れずにいた。 ぎこちないつきあいをするうち、 彼女たちが「プロム・キング」と呼んでいるハンサムな主夫ブラッドと知り合う。 サラのちょっとしたいたずら心が二人を急接近させ、 ブラッドの妻キャシーの疑うところとなってしまった。

中流家庭の主婦サラのブラッドへの思いを中心に、 刑期を終えて町に戻ってきた性犯罪者ロニーとその母親、 ロニーにいやがらせをする元警官などのエピソードをからませてストーリーが進んでいきます。 他の母親たちと距離を置いて初めはクールで知的な雰囲気だったのに、 ブラッドに恋するやただの女の子になってしまうサラをケイト・ウィンスレット、 やり手の美人妻に頭のあがらないブラッドをパトリック・ウィルソンが好演。 その行状が痛すぎて苦笑させられます。
ロニー役のジャッキー・アール・ヘイリーは、 『オール・ザ・キングスメン』にもシュガー役で出演していた子役からのベテラン俳優です。 「セックス障害」とセリフにありましたが、 母親に溺愛されていて大人の女性に興味が持てない男性を演じています。 ロニーがいることで、町にさざなみが立ち、作品の苦いスパイスとなっています。 タイトルの「リトル・チルドレン」はこのロニーも含めた大人になりきれない登場人物全てのことなのでしょう。 棚に並べられたおびただしい数の子供の人形が象徴的でした。(白)

2006/アメリカ/カラー/137分/ドルビーデジタル/SDDS
配給: ムービーアイ

http://www.little-children.net/

7月28日(土)より、Bunkamura ル・シネマ、シャンテ・シネ他にてロードショー



『フロストバイト』 原題:frostbite

監督:アンダシュ・バンケ
出演:ペートラ.ニールセン、カール=オーケ・エリクソン、グレーテ・ハヴネショルド、ヨーナス・カールストロム、ペール・ローフベリィ、エンマ・テー.オーベリィ

第2次世界大戦中のウクライナ。本隊からはぐれた北欧義勇兵たちが森の中の小屋に逃げ込む。その小屋から小さな棺桶を故国に持ち帰る兵士。
一転、時代は現代。スウェーデンの北極圏に近い小さな町に、女医のアニカが娘のサガと共に移り住んでくる。折りしも、町は約1ヶ月、太陽のほとんど出ない「極夜」の季節。サガは高校の同級生たちからパーティーに誘われる。ドラッグを調達しろと命令された男子生徒が、病院から赤い透明の美しい錠剤の入った瓶を盗み出す。パーティーも佳境に入り、赤い錠剤を口にした者たちが次々とヴァンパイアと化していく...

太陽の光に弱いヴァンパイア。太陽がほとんど顔を見せないこの季節は、ヴァンパイアにとって敵なしの天国。次から次と今どきの若い子たちがヴァンパイアになっていく光景には、もう笑うしかない! 最初の戦時下の緊張した雰囲気とのギャップに戸惑うばかり。スウェーデンの若手監督の奇抜な発想に、怖さよりもユーモアを感じた次第。(咲)

提供:アミューズソフトエンタテインメント
  配給:LIBERO
2006年/スウェーデン/96分/シネマスコープ/ドルビーデジタル

公式 HP >> http://www.blood-movie.jp/frostbite/

★7月28日、東京・シアターN渋谷にてレイトショー


2007年8月4日〜

『水になった村』

監督 大西暢夫
ポレポレ東中野で公開中

岐阜県の徳山村にダ厶ができると知ったのは30年くらい前。
その後、増山たづ子さんの「故郷 〜私の徳山村写真日記〜」という写真集を見て、 徳山村に行ってみたいと思ったのですがかないませんでした。 この写真集は、徳山村で民宿を営んでいた増山たづ子さんが、 自分の住んでいる村がダムに沈んでなくなってしまうと知り、 持っていたピッカリコニカというコンパクトカメラで村人たちや、村の生活、行事、 景色などを撮ったもので1983年に出版されています。 その時、私はこの写真集を買ったのですが、 60歳を過ぎてからカメラを始めたお婆さんがコンパクトカメラで撮った写真集というのにびっくりしました。 村の人々の表情が生き生き写しだされ、りっぱなカメラでなくても、良い写真集が作れるんだ!!  写される人との関係性で、良い写真は撮れるんだと、感動したのを覚えています。
その増山たづ子さんが去年亡くなられ、ダムにはとうとう水が入り、 徳山村はダムになってしまったんだと寂しい気持ちでいた時に、 『水になった村』という作品があると知りました。8月4日に公開されていたのですが、 シネマジャーナル71号の編集が8月4日、12日にあり、観に行くことができませんでした。 そして、ようやく観に行くことができました。
監督の大西暢夫さんは15年前(1992年)、 もう村には誰も住んでいないだろうと思って徳山村に出かけたのですが、そこには、 昔ながらの生活を続けていた人がいたのです。 一旦は村から立ち退いた人たちですが、村が水に沈むまで、 可能な限り徳山村で過ごしたいと思った人たちでした。 そのジジ、ババたちの生活に魅せられ、大西監督は15年間通い続け、 徳山村の人たちの生活を記録してきました。
春には、こごみ、わらび、ぜんまいなどの山菜、秋には、またたび、 さるなしなどの木の実やきのこを獲り、保存食に蓄えるという生活。 徳山村の豊かな自然の恵みの中で暮らす人々の暮らしを通して、昔ながらの山村の生活、 営みが消えてゆく無常さを感じました。
ジジ、ババたちの暮らしの知恵、四季折々の自然の恵みに生かされた生活、 そんな工夫に満ちた生活への監督の驚きも感じられて、こころ癒されるとても暖かい作品でした。
それにしても、大西監督の執念には恐れ入ります。15年も撮影を続けていたのです。 そんな中で深めていった村人たちとの交流が、増山たづ子さんの写真集にもひけを取らない、 村人たちの良い表情を引き出しているんだなと思いました。
私も自然の中での生活に憧れ、信州に5年くらい住んでいましたが、春には山菜、 秋には木の実ときのこの採集という生活を続けていたので、この作品を観て、 その時のことが走馬灯のように思い浮かびました。 それにしても直径15cmはありそうなしいたけが獲れたり、 胃薬になるというキハダの皮をはがすシーンとか、とても印象に残りました。 また、さるなしやまたたびは、今まで焼酎に漬けて、果実酒にする方法しか知りませんでしたが、 この作品を観て、蜂蜜漬けというのを知り、試してみたくなりました。
ヒタヒタと水がせまり、水に追われて移動をするバッタの姿、 あと少しで水の中に見えなくなる小学校の屋根のシーンに、 とうとう徳山村は水の中に消えてしまったんだなあと、寂しく思いました。

MIYA


『水になった村』公式HP http://web.mac.com/polepoletimes/

増山たづ子さんの写真集 「故郷 〜私の徳山村写真日記〜」も、下記のアドレスで見ることができます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TP1130Masuyama.html



『トランスフォーマー』

監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、マイケル・ベイ
脚本:アレックッス・カーツマン、ロベルト・オーチー
撮影:ミッチェル・アマンドセン
プロダクション・デザイナー:ジェフ・マン
視覚効果:スコット・ファーラー
特殊効果:ジョン・フレイザー
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
出演:シャイア・ラブーフ(サム)、ミーガン・フォックス(ミカエラ)、ジョシュ・デュアメル(レノックス大尉)、タイリース・ギブソン(エッブス軍曹)、レイチェル・テイラー(マギー)、ジョン・ヴォイト(国防長官)ほか

1897年南極、一人の探検家がクレバスに落ち、とてつもないものを発見した。
2007年、アメリカのハイスクール。 サムがレポートの発表ついでに祖父の遺したガラクタを売ろうとしていた。 女の子を乗せる自分の車がなくっちゃ。 中古の黄色いカマロを手に入れたサムは、これが普通のクルマではないことに気がつく。 いったいどうなってるの? そして灼熱のカタールでは軍用機が暴走、逃げ出した兵士をどこまでも追ってくる。 エアフォース・ワンの機内ではラジカセが動き出していた。彼らは金属生命体。 ある目的のために地球に到達し、あらゆるメカにトランスフォーム(変身)していたのだ。

「トランスフォーマー」は1980年代に当時のタカラが発売したおもちゃ、 変身ロボットのシリーズの総称だそうです。 アメリカでアニメにもなって(今カートゥン・ネットワークでも放映中)大ヒット、 製作総指揮のスティーブン・スピルバーグも大ファンなのだとか。 実写版のこの作品は世界最大の自動車メーカーGM社、 そしてアメリカ軍の全面協力を得て作られています。 メカの懲りようが尋常ではありません。みんな子供心を忘れない大人なのねぇ。 アメリカでは7月3日に公開されるや、『スパイダーマン』1,2を破り、 全米の記録を塗り替えています。車、ロボット、飛行機などのメカ&戦闘好き男子は必見!(白)

2007/アメリカ/2時間24分/シネマスコープ/パラマウント映画+ドリームワークス映画提供
配給:UIP映画
宣伝:サンダンス・カンパニー
http://www.transformers-movie.jp/top.html

8月4日(土)日劇1ほか全国一斉ロードショー



『消えた天使』The Flock

監督:アンドリュー・ラウ
脚本:ハンス・バウアー、クレイグ・ミッチェル
撮影:エンリケ・チェディアク
音楽:ガイ・ファーレイ
美術:レスター・コーエン
出演:リチャード・ギア(エロル・バベッジ)、クレア・デインズ(アリスン・ラウリー)、ケイディー・ストリックランド(ビオラ・フライ)、ラッセル・サムズ(エドマンド・グルームス)、マット・シュルツ(グレン・カティス)、アヴリル・ラヴィーン(ベアトリス)、レイ・ワイズ(ボビー・スタイルズ)ほか

公共安全局の管理官エロル・バベッジは引退を間近に控えている。 18年もの間、性犯罪者を追い続け、バベッジは心身ともに消耗していた。 最後の仕事は後任の女性管理官アリスン・ラウリーのトレーニング。 アリスンは、規則破りをするバベッジに呆れるが、少女が行方不明になり、 バベッジと事件を負うことになる。 バベッジは自分の追っていた性犯罪者たち(Flock)のしわざと言い切り、 かすかな手がかりをもとに少女を探し始めた。

アンドリュー・ラウ監督、ハリウッド進出第1弾。
性犯罪が頻発するアメリカでは、元性犯罪受刑者の氏名、住所、 顔写真などを付近住民に公開する制度があるそうです。 再犯率が非常に高いからでしょうか? リチャード・ギア演じる管理官はこの制度のもと、彼らを見続けるのが仕事のようです。 誰もがあやしく見える中、真犯人に近づいていくバベッジと、 引きずられるようについていくアリスンとのと息詰まるシーンがありますが、 警官ではないのでできることが限られています。 『インファナル・アフェア』のような、たたみかけてくる緊迫感がもひとつ足りないのは、 この設定のせいじゃないでしょうか。
失踪した子供たちが本当に多いこと、 奥底に悪意と狂気をひそませた人間がいることにぞっとします。 人気歌手のアヴリル・ラヴィーンが出演しています。どういうご縁だったのか、 いいの?と聞きたくなる役。(白)

2007/アメリカ/カラー/シネスコ/105分/R-15
配給:ムービー・アイ 宣伝:フリーマン
http://www.kieta.jp/

8月4日(土)よりスバル座ほか全国ロードショー



『怪談』

監督:中田秀夫
製作総指揮:迫本淳一
プロデューサー:一瀬隆重
脚本:奥寺佐渡子
音楽:川井憲次
撮影:林淳一郎
美術:種田陽平
衣装:黒澤和子
キャスト:尾上菊之助、黒木瞳、井上真央、麻生久美子、木村多江、津川雅彦、瀬戸朝香、一龍斎貞水(特別出演)、榎木孝明(友情出演)

『リング』の中田秀夫監督が五年ぶりに、 三遊亭円朝の傑作「真景累ケ淵(しんけいかさねがふち)」を題材に、 深い因縁に裏打ちされた男女の愛憎を描いた怪談。
美しい顔立ちと優しい心を持った煙草売りの若い新吉、 艶やかな姿で凛とした年上の三味線の師匠、豊志賀(とよしが)の燃えるような恋は 偶然ではなく、親の代からの不思議な縁で結ばれていたのだった。
豊志賀は、愛するあまりか、年下で色男の新吉を異常に嫉妬する。 ちょっとした諍いの中、顔に傷を負ってしまう。

とにかく色彩の上品さに目が奪われました。 また、案内役の一龍斎貞水の渋く深みのある声が、 これから起こる奇縁の不思議を感じさせてくれます。 脚本も、現在の日本語アクセントは、ちらりとも出てこない。 特に主演二人の言葉使いは江戸情緒たっぷりです。怖い場面も多々ありますが、 音楽が恐怖感を煽りたてていないので、怖いのダメ!という方にも、 これはお薦めできる「怪談」です。(美)

怖い話はちょっと...と思いながら試写に出かけ、予備知識なしに見始めたら、 キャストに大好きな榎木孝明さんの名前が...。しかも、冒頭に登場!  雪の降る夜、借金の督促に訪れた按摩師の皆川宗悦を斬り殺してしまう武士、 深見新左衛門というのが、榎木さんの役どころ。 愛憎劇の主人公、豊志賀と新吉の因縁は、この出来事にあるのでした。
榎木さんは友情出演で、出番はこれっきりでしたが(笑)、 黒木瞳さんの艶やかな中に迫力ある姉御姿と、 尾上菊之助さんのおっとりした物腰の年下の男という組み合わせが、なんともいい雰囲気。 江戸時代の庶民の生活って、こんな感じだったのかなぁ〜と思わせてくれた一作でした。(咲)

美と恐怖、愛と憎しみの、この映画『怪談』は世界50ケ国で、配給が決定。
http://www.kaidan-movie.jp/home.html

2007/日本/カラー/35ミリ/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/1時間59分
配給:松竹 (C)2007 「怪談」製作委員会
8月4日(土)より全国一斉ロードショー



『おやすみ、クマちゃん』

監督:ルツィアン・デビンスキ、マリアン・キェルバチャク、ヤドゥガ・クドゥジッカ、ダリウス・ザヴィルスキ、エウゲニウシュ・イグナチュク 音楽:ピョートル・ヘルテル
製作:“セ・マ・フォル”スタジオ
原画・美術:ズビグニエフ・ルィフリッキ
声の出演:ケロポンズ(ケロ/増田裕子、ポン/平田明子)

『おやすみ、クマちゃん』は1957年から50年に渡り、ポーランドをはじめヨーロッパ諸国で愛されている、幼児向けアニメです。ポーランド国営放送と国営人形アニム・スタジオ<オ・マ・フォル>が共同制作した104本の人形アニメーションは、ポーランドを代表する挿絵作家、ズビグニエフ・ルィフリツキ(1922〜1989)が絵を担当しています。おもちゃ屋の棚に並んでいたこぐまのぬいぐるみが表へ出て、いろんな仲間と友だちになり、愉快な体験をします。今回の劇場公開は、シリーズの中から厳選した10話を、春夏編と秋冬編に分けて上映されます。

これを観た方は、きっと無垢な幼児期にタイムスリップできますよ。
私、今年で還暦ですが、これを観た後、顔のシワがいつもとは違う弾力でした。一話はどれも7分で、ぬいぐるみクマちゃんが、今日一日の面白い出来事を話して、「おやすみなさい」と、ベッドに入ります。
各話ごとにセンス抜群のパジャマ(104話、全部違う物ですって!)。色合い、素朴なインテリア…、素晴らしい手づくり美術が堪能できます。日本の子ども達は、寝る前にどんなテレビを観ているのかな…と少し心配になりました。是非とも、親子連れで楽しんでいただきたい、お子様向け手づくりアニメです。(美)

おみみが目印のクマちゃんは、クマではありません。ぬいぐるみのクマなんです。だから「木になんて登れないよ、ぼくぬいぐるみだもん」なんて言ったりします。あまりの可愛らしさに観ている間中、目尻が下がりっぱなし。子供たちに対する教育的なものも、さりげなく入っていていいんです。小さな子供だけでなく、大人が観ても楽しめて癒されますよ。(梅)

カラー/ポーランド/80分(途中休憩あり)
配給:エデン
宣伝:フリーマン・オフィス

公式 HP >> http://www.oyasumi-kumachan.com/

★8月4日(土)より恵比寿ガーデンプレイス内 東京都写真美術館にて


2007年8月11日〜

『トランシルヴァニア』TranSylvania

監督・脚本・音楽:トニー・ガトリフ(『ラッチョ・ドローム』『ガッジョ・ディーロ』『愛より強い旅』)
音楽:トニー・ガトリフ、デルフィーヌ・マントゥレ
出演:アーシア・アルジェント(『マリー・アントワネット』)、ビロル・ユーネル(『愛より強く』『太陽に恋して』)、アミラ・カサール

 人けのないトランシルヴァニアの静かな村に、フランスからやってきた二人の女性、 ジンガリナとマリー。 ジンガリナは結婚目前に姿をくらましてしまったロマ族の音楽家ミランを探しにやってきたのだった。 占い師の女は、「男もあなたを想って泣いている」と言うが、 祭礼の夜に再会したミランは「愛してなんかいない」とジンガリナを突き放す。 身ごもっていることも言えずに、ロマ族の衣装に身を包み、親友マリーとも別れ、 一人で荒涼としたトランシルヴァニアを彷徨うジンガリナ。 やがて、彼女はチャンガロという得体にしれない男と出会う。 チャンガロは、 村人たちから古い貴金属や骨董品を買い取っては売りさばいて金を手にしている。 いつしか行動を共にする二人。 やがてジンガリナは雪深い道を走っているとき、車の中で産気づく...。

 自らのルーツの一つである流浪の民ロマ(ジプシー)をテーマに映画を撮り続けているトニー・ガトリフ。 愛を求めて世界の果てを彷徨う女を描いた、監督初の女性が主人公の映画である。 ロマの魂が乗り移ったようなジンガリナを演じたアーシア・アルジェントは、 曾祖母の一人がロマだという。自らも映画監督として活躍するアーシアの存在感は凄い。 ジンガリナと共にトランシルヴァニアを彷徨う男チャンガロを演じたのは、 トルコ系ドイツ人監督ファティ・アキンの『愛より強く』で独特の雰囲気をはなっていたトルコ人俳優ビロル・ユーネル。 そして、この映画の何よりの魅力は、トランシルヴァニアの人たち。 年輪を感じさせる老人たちがなんとも味わい深い。 ルーマニア東部のこの地は、ルーマニア、ハンガリー、ロシアの文化が交じり合い、 ロマ族、ハンガリー人、ルーマニア人、ドイツ人などが共存して暮らすところ。 この地の様々な音楽にインスピレーションを受けて トニー・ガトリフとデルフィーヌ・マントゥレが作り出したサウンドは、 力強い中に哀調を感じさせてくれて心に響く。悪魔祓いや祭礼の呪術的世界も魅力。(咲)

2006年/フランス/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/102分
2006年カンヌ国際映画祭クロージング作品
協力:ユニフランス東京/東京日仏学院
配給:日本スカイウェイ
宣伝:グアパ・グアポ

★8月11日(土)より、情熱のロードショー!!!  渋谷・シアターイメージフォーラム

http://www.net-broadway.com/nsw/cine/transylvania/



『ドッグ・バイト・ドッグ』(原題:狗咬狗)

監督:ソイ・チェン 脚本:セット・カムイェン、マット・チョウ 撮影:フォン・ユン・マン 美術:シルバー・チャン 編集:アンジー・ラム キャスト:エディソン・チャン、サム・リー、チョン・シウファイ、ペイ・ペイ、ラ ム・シュー

香港の高級レストランで殺人事件が発生した。殺されたのは、弁護士のリー婦人。 容疑者のパン(エディソン・チャン)を、プロの殺し屋と推測したベテラン刑事リン (ラム・シュー)とワイ刑事(サム・リー)は、容疑者を追い詰めるが、パンは人質を殺し、説得に当たったリン刑事も刺殺する。怒りを覚えたワイは、パンに銃を向けるが、パンは無抵抗で取り押さえられ、パトカーで連行。しかし、一瞬の隙に、片手 を手錠から外し逃亡する。ワイの執拗な捜査が進むにつれ、パンの生い立ちが次第にわかってくる…。

これは観ていて息つく暇がない! 一瞬一瞬が、えっ? これは現実にあること? いやいや、まさか! の連続です。
二人の役の意外性も驚きの一つ。クールでナイスガイのエディソン・チャンは、殺し 屋に(幼少から闘犬として育てられていた/私設地下格闘場では、子供が犬さなが ら、どちらかが死ぬまで戦う。それに金をかけて楽しむ大人たちが、何回も写し出さ れる…)、一方ひょうきん者でコミカルなイメージのサム・リーは刑事(殺し屋パン を追い詰めて行くうち、闘犬に変貌していく/サム・リーのファンとしては、彼の笑 い顔が拝めないのは、ちと寂しいが…)。しかし、この主役二人の顔つきが、その後 微妙に変わっていきます。それが、この映画の最大の魅力です。(美)

夏の暑さを乗り切るには、この一本は見逃せない!
香港発、ノンストップ・リアル・アクション映画!!

2006年/香港/カラー/108分/35mm/ビスタ/ドルビーデジタル/R-15
配給・製作:アートポート ©2006 Art Port Inc.

公式 HP >> http://www.dogbitedog.jp/

★8月11日(土)より 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー


『呪怨 パンデミック』(原題:The Grudge 2)

監督:清水崇
脚本:スティーブン・サスコ
出演:アンバー・タンプリン、エディソン・チャン(陳冠希)、アリエル・ケベル、テレサ・パーマー、宇野実彩子、ジェニファー・ビールス ほか

東京のインターナショナルスクールに転入したばかりのアリソンは、友達になりたくて、クラスメートのヴァネッサとみゆきにつれられるまま、最近火事のあった都内の有名な幽霊屋敷にやってくる。二人の悪ふざけで、押し入れに閉じこめられたとき、アリソンは恐ろしいものを見てしまう。その日以来、彼女たちに異様な蔭がつきまとう。

カリフォルニアのオーブリーの元に、東京にいる姉のカレンが入院したと連絡が入る。東京の病院へと駆けつけるが、カレンはある家への放火の容疑で警察の監視下にあった。カレンを助けた香港の記者イーソンは、カレンが火を放った家でかつて起きた無理心中事件と、その後頻発する謎の連続死を調べていた。イーソンはオーブリーにそのことを告げるが、そのとき二人の目の前でカレンは謎の転落死を遂げる。

シカゴに住む少年ジェイクは、家に父の再婚相手が引っ越してきて、多少複雑な気持ちを抱えていた。時を同じくして、ジェイクの隣家の娘が帰ってきたようだが、それ以来、隣からは異様な物音が聞こえ、アパート全体の空気がよどんでいく。

2002年『呪怨』、2003年『呪怨2』、2004年『THE JUON/呪怨』と続いてきた呪怨ワールドが、更に国際的スケールをもって展開されます。伽椰子と俊雄の怨念の増大はもはや誰にも止められず、パンデミック(感染爆発)へと突き進みます。わたしはホラーを観てもなかなか怖いと思わないのですが、何気ない日常生活の中に異形のものが唐突に現れる瞬間が一番ゾォッとします。この作品にはそういう瞬間がいくつかあって、久しぶりに怖っ!と思いました。香港からエディソン・チャンがとっても良い役で参加しています。怖くてもファンは必見。(梅)

2006年/アメリカ/カラー/35mm/ヴィスタサイズ/ドルビーSR・SRD・DTS・SDDS/92分
配給:ザナドゥーXエイベックス・エンタテインメント

公式 HP >> http://ju-on.jp/index_pc.html

★8月11日より、池袋シネマサンシャイン、新宿トーア、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて先行ロードショー! 18日より全国ロードショー!!


2007年8月18日〜

『キャプテン』

監督・脚本:室賀厚
原作:ちばあきお
撮影:田宮健彦
音楽:安川午朗
主題歌・挿入歌:Lead「空の彼方へ」、「君は何かができる」
出演:布施紀行(谷口タカオ)、小川拓哉(丸井)、中西健(イガラシ)、岩田さゆり(佐々木舞)、小林麻央(三咲先生)、河野朝哉(佐野)、菅田俊(権藤)、筧利夫(タカオの父)、宮崎美子(タカオの母)、永井浩介(サブ)ほか

墨谷二中に転校してきた谷口タカオは、内気で野球好きな3年生。 野球部に入部申込みに行くと、キャプテンが受験準備のために退部したばかりだった。 谷口のユニフォームが中学野球の名門、青葉中の野球部のものだったことから、 お調子者の2年生の丸井にキャプテンに担ぎ出されてしまう。 実は谷口が在籍していたのはたった3ヶ月。 青葉では補欠の補欠でタマ拾いしかしたことがなかったのだ。 しかし、まぐれで場外ホームランを打ち、谷口は誤解を解くまもないまま、 陽南中との練習試合が決定してしまった。 この試合で、守備も打撃もボロボロなのがナインにわかってしまう。 谷口はキャプテンを降りようとするが、父に励まされ、 サブを相手に毎晩猛特訓を始める。

恒例の甲子園の野球に沸き返っている今日この頃ですが、 野球少年&野球好きならこの「キャプテン」を一度ならず読んだはず。 1972年月刊少年ジャンプに掲載され、後にコミック化されています。 私も当時大好きで、この後日談になる「プレイボール」まで揃えて持っていました。 実写版と漫画は違うものですが、 キャラクターの雰囲気を伝える子たちがそれぞれ集められたなぁと思います。 試写室でも懐かしい〜という声がいっぱいでした。
いまどき「頑張る」のはかっこ悪いと思う子もいるかもしれませんが、 頑張ったからたどり着けるところは、頑張らない子には決して行けないところです。 漫画と違うのは、ライバル投手の佐野くんがきわだってイケメンなこと。(白)

2007/日本/カラー/98分/シネマスコープ/DTSステレオ
製作:キャプテン製作委員会(IMAGICAイメージワークス、Entertainment FARM、ポニーキャニオン、アサツー ディ・ケイ、集英社、ホーム社、トルネード・フィルム
制作プロダクション・配給:トルネード・フィルム
宣伝:フリーマン

http://www.captain-movie.com/

8月18日(土)より全国“熱闘”ロードショー!!



『純 愛』*日中共同映画

製作総指揮・脚本・主演 小林桂子
監督・脚本: ジャン・チンミン
撮影: 館岡 悟
美術: ウー・リージョン
主題歌 ”INORI" : ATSUSHI(EXILE)
出演: 小林 桂子、YASUTAKA、ポン・ボー、チャン・シェオホワ、諏訪 太郎、 川津 春、 波岡 一喜、川津 祐介

1945年夏、中国。 戦争が終わり、開拓団の集会所で愛と俊介の結婚披露宴が行われていた時、銃声が轟く。 逃げ惑った二人は村人、山麓(シャンロン)に助けられる。 山麓の年老いた母親は、日本軍に夫を殺されたショックから口がきけないが、 優しく二人を受け入れる。 数日後、日本への帰国を夢見て 近くを通る鉄道に飛び乗ろうとするが、 そこには国民党の軍人。とっさに愛の手を離して逃す俊介。 そして聞こえてきた銃の音。 山麓のところに戻った愛は、俊介の子を宿していることに気づく。 「父親になる」と愛に告げる山麓。そして三年後、死んだと思っていた俊介が訪ねてくる。が、愛が親子三人幸せに暮らし ている姿を見て、俊介は静かに立ち去る。

*きっかけは中国残留婦人から聞いた実話
1997年、戦後50年日中友好訪中団の一員として、中国で舞台に立った小林桂子さんは、 舞台を観に来ていた何人もの中国残留日本人婦人から次々と体験を聞かされる。 中でも心を惹きつけられたのが、『純愛』の核となった、 身篭る彼女を受け入れた中国人の現夫と、愛するが故に身を引いた日本人の元夫の物語。 いつか中国残留婦人の人生を描いた映画を製作しようと、1999年、 学校と映画を作る[「純愛」プロジェクト]を立ち上げる。 2004年、中国泰山に、教育を受けられない子供たちのための小学校を建設。 『純愛』のチケット代から、なるべく多くを世界の子供たちの為にまわしたいと考えている。
小林桂子さんは、自分自身は戦争の時代を実際に体験していないけれど、 あの状況の中で助けてくれた中国の人たちに、「ありがとう」という気持ちを込めて、 本作を製作したという。

*主題歌「INORI」誕生秘話
8月7日、小林桂子さんと、主題歌「INORI」を作詞作曲し唄ったEXILEの ATSUSHIさんを囲んで、記者会見が開かれました。 エンディングの歌を誰にお願いすれば自分の思いを伝えられるかと探し求めていた小林さん。 ATSUSHIさんの歌を聴いて心が震え、 魂を伝えられる人はこの人しかいないと思い、 まだ音楽も字幕もつかない映画をATSUSHIさんに観てもらったという。 そして、観終わって、いきなり歌詞を書き出したATSUSHIさん。 数分で「できました」という歌詞は、歌という次元でなく、祈り。 桂子さんがプロジェクトで言いたいメッセージをすべて言ってくれていると思ったそうです。

製作:K' project 1 日中共同映画「純愛」製作実行委員会・ Keis' company
宣伝協力:グアパ・グアポ
配給宣伝:株式会社プロジェクトデザイン

2007年 / 日本 / 115分 / カラー / SRD

公式HP>> http://www.jun-ai.jp/

★8月18日より、銀座シネパトスにてロードショー



『スプリング☆デイズ』

監督・脚本:越坂康史
出演:立花未樹 鈴木梨乃 上月あや 関谷愛里紗 川原真琴 加々美正史 長井秀和

千春は全寮制の女子高一年生。 映画製作を夢見る彼女は、夢に一歩近づこうと放送研究部に入るが、 下っ端の仕事は雑用ばかり。 ある日、放送室の片隅に眠るUHF発信機を見つけた千春は、同室の智恵美に、 オールナイトの海賊放送を実行しようと持ちかける。 実行日は試験の終わった夜。 同級生達には大いに受けた放送も先生たちにばれてしまい、 1週間のトイレ掃除を言い渡される。 そんなことにもめげず、長井秀和演じる担任の先生から、 ビデオカメラを奪うように借りて、千春たちは映画製作に挑戦する。

千春たちが劇中で製作する映画『学校の怪人』の主演は、 今年の「週刊ヤングジャンプ」制服コレクションでグランプリに輝いた川原真琴。 相手役は、『爆竜戦隊アバレンジャー』の加々美正史。
『学校の怪人』は、インターネットで配信されています。 映画を観る前にチェックして行くか、映画を観てから確認してみるかは、お任せ!
配信サイト>>  http://www.odoroku.tv/entertainment/g_kaijin/

今どき珍しい直球のアイドル映画。夢に向かって、まっしぐらに走る女子高生たちの姿がまぶしい。(咲)

2007年/日本/カラー/58分
企画:アイドルcheck!
製作・著作:© 2007「スプリング☆デイズ/学校の怪人」
製作委員会 .
配給:キッチュ
公式サイト>>  http://spring.idol-check.net/


★2007年8月18日(土)より、池袋シネマ・ロサにてレイトショー

8月18日(土)20:45〜 初日舞台挨拶
ゲスト:立花未樹、上月あや、関谷愛里紗、橘未来、小西美希、中嶋かねこ、越坂康史監督



《シネマコリア2007》
期間&会場
 8/18(土),19(日) 東京:イイノホール
 8/25(土),26(日) 名古屋:愛知芸術文化センター 12階 アートスペースA
 9/ 1(土), 2(日) 大阪:第七藝術劇場
上映作品
『懐かしの庭』2007年/イム・サンス監督/チ・ジニ×ヨム・ジョンア
 80年代、民主化運動の時代の青春と愛のかたちを描いた情感溢れる感動作
『ラジオ・スター』2006年/イ・ジュニク監督/アン・ソンギ×パク・チュンフン
 人生に敗れた中年男二人の心温まる再生の物語
 
『ホリデイ』2006年/ヤン・ユノ監督/イ・ソンジェ×チェ・ミンス
 88年に起こった脱獄囚人質立てこもり事件を題材にした社会派娯楽作
『青燕』2005年/ユン・ジョンチャン監督/チャン・ジニョン×キム・ジュヒョク
 実在の女性パイロット朴敬元の生涯を描いた航空映画
 
公式サイト:
http://cinemakorea.org/filmfes/


『酔いどれ詩人になる前に』FACTOTUM

監督:ベント・ハーメル
制作・共同脚本:ベント・ハーメル、ジム・スターク
撮影:ジョン・クリスティアン・ローゼンルンド
原作:チャールズ・ブコウスキー
出演:マット・ディロン(ヘンリー・チナスキー)、リリ・テイラー(ジャン)、マリサ・トメイ、ティディエ・フラマン、フィッシャー・スティーヴンス、エイドリアン・シェリーほか

チナスキーは自称作家で詩人。 あふれ出てくる言葉を書き付けては、ポストに投函する。
出版社からはちっとも良い返事がないけれど、書かずにはいられない。 食べるために様々な仕事を渡り歩くが、生来の酒好きのため、いつも長続きしない。 今日も氷を届けた先で一杯やってしまった。 車のドアは開いたまま、中の氷は溶けてまたクビになった。 酒場で出会った女、ジャンの家に転がり込み、酒とセックスばかりの日々を送る。 タクシー会社に勤めたが、競馬に入れ込んでまたクビになった。 それでも書くことだけは続けていた。

『クラッシュ』で存在感を見せつけたマット・ディロンがオールド・パンクと呼ばれた作家、 チャールズ・ブコウスキー(役名はチナスキー)を演じています。 この人、身体が四角くがっちりしていて労働者風になりました。 もっと細かった『ランブルフィッシュ』『アウトサイダー』あたりから観ていますが、 いい感じに年取っています。ニコラス・ケイジと同い年です。
チナスキーは、だらしなくて人の言うことはまったく聞かない、 したいことだけしている憎めない酔っぱらい。 リリ・テイラーはその女版って感じ。監督もお酒好きなのでしょうか、 家族にいたら迷惑だなぁと思うこの二人を暖かい視線で描いています。 しばらく見なかったマリサ・トメイにはちょっとびっくりでした。 アカデミー助演女優賞を獲った『いとこのビニー』からもう15年たっているんですね。 (白)

2005/アメリカ、ノルウェー合作/94分/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル
配給:バップ、ロングライド
宣伝:メゾン

http://yoidore.jp/

8月18日(土)より、銀座テアトルシネマ(ロードショー)、シネセゾン渋谷(レイトショー)にて公開予定



『ベクシル ‐2077 日本鎖国‐』

監督:曽利文彦
脚本:半田はるか、曽利文彦
音楽:ポール・オークンフォールド
エグゼクティブプロデューサー:濱名一哉
声の出演:黒木メイサ、谷原章介、大塚明夫、松雪泰子、朴 [王路]美、櫻井孝宏ほか

21世紀初頭、人類に延命効果をもたらしたバイオ・テクノロジーやロボット産業が、急速に発展を遂げたことで、日本は市場を独占し、世界を大きくリードしていた。しかし、様々な危険性を指摘されるようになると、国連はこれらの技術を厳格に規制する事を求めた。だが日本政府は反旗を翻し、2067年、完全鎖国をスタートさせた。
それから10年後の2077年…。
米国特殊部隊の女性兵士ベクシルが、日本へ潜入する。日本の姿はどうなっているのだろうか。

完成度の非常に高い3Dライブアニメです。監督は『ピンポン』の曽利文彦。監督は「今のテクノロジーの進歩は、知らず知らずのうちに、人間を孤立化に向かわせている。この恐れを日本鎖国という設定で、警鐘を鳴したかった」と語っています。
ハイテクの中に生まれ育った未来人ベクシル(黒木メイサ)、責任感のあるチームリーダー、レオン(谷原章介)、レオンの元恋人マリア(松雪泰子)、彼等のリアルな表情の3Dアニメのライブと、スピード感を盛り上げる音楽ライブの相乗効果で、たっぷり楽しませてくれました。(美)

2007/日本/カラー/アニメーション/109分
配給:松竹
制作:OXYBOT、CCRE、(C)2007 「ベクシル」製作委員会

公式 HP >> http://www.vexille.jp/

★8月18日(土)より全国ロードショー


『WHITE MEXICO』

監督・脚本・原案:井上春生
主題歌:Akeboshi"Along the line"
挿入歌:大江千里「静寂の場所」
出演:大江千里(佐藤)、ティアラ(パステル)、はねゆり(祐未)、篠原勝之(辰雄)、ブラザートム(刑事)ほか

東京湾近くのバス停で、青森行きの長距離バスを待っている男がいた。その足元には札束のつまった紙袋。
その男、佐藤は妻を亡くした後、一人娘の祐未と一緒にいる時間を作るためコンビニを始めていた。祐未がレジにいたある日、からんで来たチンピラに殺されてしまう。心の支えを失った佐藤が復讐を果たし、ついでに手に入れたのがこの大金。追いかけてきたチンピラの女を振り切り、バスに乗り込む佐藤に、パステルという若い娘がつきまとう。

映像と音楽の新たなカタチを創造する"cinemusica"シリーズの第3弾。前2作も井上春生監督作。
お久し振りの大江千里さんが、高校生の父親役で主演でした。17年ぶりの映画出演。そのころは2,3歳だったティアラさんが相手役。沖縄生まれ、モデル出身だっそうです。脚の長い美人です。
ショッキングな事件を入れなくても、大切な人を失った二人の物語はできるんじゃないでしょうかねぇ。次第に心が近づいていくあったかいシーン、大江さん書下ろしの新曲とAkeboshiの主題歌が流れます。
黄色い複葉機に乗って二人が空を飛ぶ場面は、絵本の1pのようです。この可愛い飛行機は、日本で唯一飛ぶことを許可されているWACO。これをたまたま目にした人たちは驚いたはず。飛行機マニアさん見てね。(白)

娘を亡くした主人公が、どさくさまぎれに手に入れた大金を、娘が憧れて会いに行こうとしていた元神父のプロレスラーの主宰するメキシコの慈善プロレス団体に寄付するという突拍子もない発想は、NPO法人クロスアーツの副代表理事を務める井上監督ならでは。監督は、この秋にアフガニスタンとの合作劇映画の製作総指揮をされるとのことで、先日、ペルシア語通訳の本間梨江さんの結婚式二次会でお会いしたのでした。スタッフ日記2007年6月第1週に、花嫁花婿と一緒に写っている写真を掲載しています!(咲)

2007/日本/カラー/70分
★8月18日(土)お台場メディアージュほか順次ロードショー

公式 HP >> http://www.white-mexico.jp/
cinemusica HP >> http://www.sonymusic.co.jp/cinemusica/



『長江哀歌(ちょうこうエレジー)』(原題:三峡好人 英題:STILL LIFE)

監督・脚本: ジャ・ジャンクー(賈樟柯)
撮影:ユー・リクウァイ(余力為)
音楽:リン・チャン(林強)
出演:チャオ・タオ(趙涛)、ハン・サンミン(韓三明)、 ワン・ホンウェイ(王宏偉)、リー・チュウビン(李竹斌)、マー・リーチェン(馬礼珍)、チョウ・リン(周林)、ホァン・ヨン(黄勇)

三峡ダムの建設で沈む運命にある奉節(フォンジェ)の町。山西省からやってきた炭鉱夫ハン・サンミンは、船を降りるなりマジックショーに連れ込まれ、金を巻き上げられそうになる。マンゴー柄のタバコのパッケージの裏に書かれた住所を頼りに、16年前に別れた妻子を探しに行くが、すでにそこは水に沈んでいた。安宿に腰を落ち着け、妻の兄の居場所を聞き込み訪ねていくが、サンミンの差し出す酒を義兄は受け取らない。
安宿には、マジックショーの客引きをしていたマークという若い男がいた。大好きなチョウ・ユンファにあやかった呼び名だ。サンミンはマークと酒を酌み交わし、携帯番号を交換する。マークの着メロは「上海灘」。
時同じくして、シェン・ホンという山西省の女が、三峡に働きに出て2年間音信不通の夫を探しに奉節にやってくる。夫の職場には荷物だけが残っていた。荷物の中にあったお茶を飲んでみるシェン・ホン。夫の友人に、夫の今の職場である住民撤去管理部へ案内してもらうが、夫は留守。彼女が妻だと知らない青年から、夫であるグォが独身で経営者のディン女史と出来ているらしいと聞かされる。
サンミンの宿もいよいよ取り壊しの日が近づく。解体現場で働くマークは景気が良さそうだ。ウサギ印の飴を手下の若い衆に配っている。その夜、サンミンはマークと飲む約束をしていたがマークは現れない...

烟(タバコ)、酒、茶、糖(アメ)をキーワードとして、解体工事の音が響く古都奉節を舞台に人々の人生が語られる。2000年以上の歴史を持つ町が、わずか2年間で取り壊されることに、中国の今の状況が集約されていると感じた監督。急速な変化の中で、現実に立ち向かい精一杯生きている人々に感銘を受けて、本作を撮ったという。
出稼ぎによる家族崩壊、生きていくために危険な仕事に就く人々...、描かれている人生は実に辛い。が、どこか希望も感じさせてくれる、なんとも味わい深い一作。(咲)

壊れかけた町の中で、壊れかけた関係を修復しようと模索する二組の男女。一方は古い関係を断ち切って新たな人生を歩き始め、もう一方は細々と続いてきた縁を諦めることなく繋ぎとめようとする。前者には未來に向けた力強さを感じ、後者には過去を捨て去らない頑固さに愛しさを覚える。監督は消えゆく街に対する相反する感情を、二人の人物に重ねているようんだ。
デジタル・ハイビジョン・カメラで撮影した映像は、ユー・リクウァイならではの美しさがあるものの、デジタル映像の特徴としてやはり堅さを感じてしまうのが残念。(梅)

●2006年ベネチア国際映画祭金獅子賞グランプリ
*東京フィルメックス2006 オープニング上映
提供:バンダイビジュアル、テレビ朝日、ビターズ・エンド、オフィス北野
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
宣伝:ムヴィオラ

2006年/中国/カラー/113分/HD→35mm/1:1.85/SRD

公式 HP >> http://www.bitters.co.jp

★8月18日(土)より、シャンテシネほか全国順次ロードショー!


『阿波DANCE (アワダンス)』

画像:(c)2007「阿波DANCE」Film Partners

監督:長江俊和 プロデュース:森谷雄、西前俊典
脚本:大野敏哉
音楽:海田庄吾
主題歌:TRF「survival dAnce」2007年バージョン
出演:榮倉奈々(茜)、勝地涼(コージ)、北条隆博(ユッキー)、橋本 淳(カズ)、尾上寛之(ミノル)、岡田義徳(担任)、星野亜希(アイドル教師)、笑福亭松之助(茜祖父)、高樹沙耶(茜母)、高橋克実(コージ父)、CO−KEYほか

阿波踊り「伝統芸能」 × ヒップホップ「若者文化」=“阿波DANCE”

東京のヒップホップのダンス大会で優勝した女子高生の茜。 ニューヨーク行きを誘われたばかりだったのに、 突然離婚した母のふるさとに転校することになった。 そこはヒップホップとは無縁の徳島・鳴門。 古い日本家屋に着いた茜は「人生終わった」とつぶやくのだった。
地元の伝統・阿波踊りを誰よりも愛するコージは、 「渦おたく」の担任から聞いた天女伝説をユッキー、カズ、ミノルの前で熱く語っていた。 「300年に一度大きな渦から金の石を背負った天女が現れるんや。 今年はその300年目の年!」そのとき、 彼らの目の前をキックスケーターを駆った茜が通りすぎていく。 「天女さ〜ん」と美少女を追いかける4人。 翌日茜の転校したクラスにはコージたちがいた。そして「ダンス部」にも・・・。

出演作の続く榮倉奈々と勝地涼ら若手俳優が主演。 カーリングに挑戦する女の子たちを描いた『シムソンズ』 のクリエイターチームが送り出すさわやか青春ドラマです。 東京からやってきたクールな女の子と、地元の熱い男の子が初めは反発しあいながらも、 すこしずつ理解していくという王道のストーリー。 母と娘、父と息子の関わりや、ちょっとしたロマンスや男の友情も加味されて、 じんわりさせられました。お爺ちゃんやお父さんのなんでもないセリフにもぐっときます。 大盛り上がりの阿波踊りのシーンは圧巻です。 民謡と三味線が得意な榮倉奈々がヒップホップに、 歌や踊りは苦手な勝地涼が阿波踊りに燃える男に挑戦しています。 勝地涼はこういうまっすぐな熱い男の子役似合いますねぇ。 振り付けはKABA.ちゃん。(白)

2007/日本/カラー/111分/配給: CKエンタテインメント
http://www.awadance.jp/


8月18日(土)より、渋谷アミューズCQN先行ロードショー、
8月25日(土)より、他全国順次ロードショー!



2007年8月25日〜

『たとえ世界が終わっても』Cycle soul apartment

監督・脚本:野口照夫
撮影:安田光
美術:井上心平
音楽:花澤孝一
出演:芦名星(宮野真奈美)、安田顕(長田寛治)、大森南朋(管理人妙田)、平泉成、白川和子ほか

真奈美は会社の同僚や上司に「このごろ痩せたね」と声をかけられた。 実は亡くなった母親と同じ病気なことがわかり、余命数年と宣告されていたのだ。 インターネットで自殺サイトを見つけ、 参加しようと待ち合わせ場所の小さな駅に降り立った。 同行するのは若い男性と女性が一人ずつ。 サイトの管理人の妙田は「お久し振り」と真奈美を迎える。
練炭を用意してイザ決行!というときに、妙田が 「ドラマの最終回を見逃してしまう!」と言い出してTVを観始める。 「我慢していたラーメンが食べたい」「ボウリングでストライクを出したい」 という希望に付き合い、いつのまにか朝になってしまった。 なぜか会社の机で目が覚めた真奈美が屋上へ上ると、 「死ぬ前に、あなたに助けてもらいたい人がいる」と妙田が現れる。

『演じ屋』『駄目ナリ!』の野口監督の初長編作品。 芦名星(あしなせい)はモデルやTV出演を経て、カナダ、フランス、 日本の合作映画『シルク』のヒロインに抜擢。今後の活躍が期待される。 妙田が真奈美と引き合わせる長田には演劇ユニットTEAM NACSの安田顕。 長田の両親役に平泉成、白川和子が配されてドラマを引き締めます。 活躍著しい大森南朋が物語のキーマンである妙田を演じて、一ファンの私は嬉しかったです。 彼の上着の背中の模様が気になっていたのですが、観ていくうちに「あ、なるほど」と。 これは狙ったんですよね(>衣装さん)。 邦題より英語題が内容に合ってわかりやすい気がします。(白)

2007/カラー/HD/98分
配給・宣伝:アルゴピクチャーズ
http://tatoe-sekaiga.jp/

8月25日(土)よりユーロスペースにてロードショー



『TAXi4』

監督:ジェラール・クラヴジック
製作・脚本:リュック・ベッソン
撮影:ピエール・モレル
音楽:MASTA
出演:サミー・ナセリ(ダニエル)、フレデリック・ディファンタール(エミリアン)、ベルナール・ファルシー(ジベール署長)、エマ・シェーベルイ=ヴィークルンド(ペトラ)、エドュアルド・モントート(ジャン=クリストフ・ブヴェ(将軍)、ジャン=リュック・クシャール(凶悪犯)ほか

人気のシリーズ4作目。ダニエルとエミリアンの二人は今日も快調!? 超VIPサッカー選手のジブリル・シセを乗せ、純白のタクシー、 プジョー407を駆ってサッカースタジアムを目指す。 試合開始に遅れるわけには行かない。 エンジン全開最大最速の312.8km/h、見事ピッチに滑り込んだ!
次の仕事は、ヨーロッパ最強の凶悪犯「ベルギーの怪物」を護送すること。 警察署で尋問を始めたまではよかったが、エミリアンが例によってドジを踏み、 凶悪犯はまんまと逃亡してしまった。ダニエルとエミリアンは可愛い息子を預けて、 犯人グループを追って一路モナコを目指すのだった。

コンビは共に父親になっていました。それぞれの可愛い息子は、 ちゃんと似た子供を選んだそうです。もう一人?の主役、 車もパワーアップして「プジョー406」から「プジョー407」へ。 見た目もカッコよくあれこれ仕様も増えていて、車好きにはたまらないでしょう。 元スーパーモデルのエマ・シェーベルイ=ヴィークルンドの活躍ぶりはクール。 彼女以外ここの警察官みんなヘンですけど、 ベルナール・ファルシー扮する署長のぶっ飛びぶりには目が点。 フランスのコメディ好きはぜひ。(白)

2007/フランス/カラー/91分/スコープサイズ/ドルビーデジタル/
ヨーロッパ・コープ制作 配給:アスミック・エース
http://www.taxi4.jp/

8月25日(土)より全国拡大爆走ロードショー!



「韓流シネマ・フェスティバル2007 ルネサンス」

作品主義宣言!新たなる“韓流映画の魅力”を伝える“ルネサンス”全21作品上映決定!

期間:2007年8月25日より
会場:下記ほか各地劇場にて
チケット:7月21日より前売り開始 チケットぴあ、劇場窓口
詳細は「韓流シネマ・フェスティバル」オフィシャルサイトへ。

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/han-fes2007/

●上映作品:21本

作品 監督 出演
『卑劣な街」 ユ・ハ チョ・インソン、ナムグン・ミン
『レストレス〜中天〜』 チョ・ドンオ チョン・ウソン、キム・テヒ
『愛するときに話すこと』 ピョン・スンウク ハン・ソッキュ
 
『公共の敵2 あらたなる闘い』 カン・ウソク ソル・ギョング、チョン・ジュノ
『ミスター・ロビンの口説き方』 キム・サンウ オム・ジョンファ
『チ・ジニ×ムン・ソリ 女教授』 イ・ハ チ・ジニ、ムン・ソリ
『拍手する時に去れ』 チャン・ジン シン・ハギュン、チャ・スンウォン
『マイ・ボス マイ・ヒーロー2 リターンズ』 キム・ドンウォン チョン・ジュノ
『恋愛の目的』 ハン・ジェリム パク・ヘイル、カン・スジョン
『ウォンタクの天使』 クォン・ソングク イ・ミヌ
『強敵』 チョ・ミノ パク・チュンフン、チョン・ジョンミョン
『甘く、殺伐とした恋人』 ソン・ジェゴン パク・ヨンウ、チェ・ガンヒ
『浜辺の女』 ホン・サンス キム・スンウ、コ・ヒョンジョン
『多細胞少女』 イ・ジェヨン キム・オクビン、パク・チヌ
 
『手紙』 イ・ジョングク パク・シニャン、チェ・ジンシル
『ピーターパンの公式』 チョ・チャンホ オン・ジュワン
『ソウルウェディング〜花嫁はギャングスター3〜』 チョ・ジンギュ イ・ボムス、スー・チー
『サム〜SOME〜』 チャン・ユニョン コ・ス、ソン・ジヒョ
『20のアイデンティティ/異共』 ホ・ジノ、ポン・ジュノほか ファン・ジョンミン、リュ・スンボム
『愛なんていらない』 イ・チョルハ ムン・グニョン、キム・ジュヒョク
『角砂糖』 イ・ファンギョン イム・スジョン、ユ・オソン

◆シネマート六本木
 開催期間:2007年8月25日〜10月12日
 チケット:前売り・当日料金とも全席指定 1,800円(税込)
       20周年記念回数券(限定数) 1,500円×5枚=7,500円(税込)
 住所:東京都港区六本木3-8-15 
 電話:03-5413-7711

シネマート六本木公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/

◆シネマート心斎橋
 開催期間:2007年8月25日〜9月14日
 チケット:前売り1回券 1,600円(税込)
      前売料金(5回券) 1,500円×5枚=7,500円(税込)
      20周年記念回数券(限定数) 1,500円×5枚=7,500円(税込)
      当日料金 1,800円(税込)
      全作品共通
 住所:大阪府大阪市中央区西心斎橋1-6-14ビッグステップビル4階
 電話:06-6282-0815

公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/theater/shinsaibashi/

ほか北海道、宮城、千葉、愛知と続々と劇場が決定しています。


『ショートバス』

監督・脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
撮影:フランク・G・マルコ
音楽:マイケル・ヒル
オリジナル楽曲:ヨー・ラ・テンゴ
アニメーター:ジョン・ベア
出演:イ・ソーキン(ソフィア)、ポール・ドーソン(ジェイムズ)、PJ・ドゥボイ(ジェエイミー)、リンゼイ・ビーミッシュ(セヴリン)、ラファエル・パーカー(ロブ)、ジェイ・ブラナン(セス)ほか

カップル・カウンセラーのソフィアは、いろいろなカップルの相談に応じていたが、 実は自分にも悩みがあった。ジェイムズはセルフビデオを撮っているハンサムなゲイ。 ジェイミーとカップルだが、ジェイミーの愛が強くて重い。 二人の関係を少し拡げようとソフィアの元を訪れた。 二人の参加している「ショートバス」というサロンにソフィアも行ってみると、 そこには本当のセックスと愛を求める人々が集っていた。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督 5年ぶりの新作。いきなりぼかしの入ったシーンが続いて、 おばさんでもひゃーと固まりました。 でも、愛し愛され生きることに真剣なのねぇと思える優しさがありました。 映画の作り方がちょっと変わっていて、俳優達がみなオーディションテープを送り、 ワークショップに集められたのは最終選考に残った40人。全員がテープを見て、 自分が好きな相手に点数をつけてカップルを決めたのだそうです。 ワークショップの中から脚本を生み出していき、 即興演技を繰り返してシーンが積み重なっていったとか。だからリアルなんですね。 みんな濃いキャラですが、ジャスティン・ボンドが一番印象的。 ニューヨークの街並みのアニメーションと全編を彩る音楽がすごく好きです。(白)

2006/アメリカ/カラー/ヴィスタ/101分/R-18
配給:アスミック・エース
http://shortbus.jp/

8月25日(土)より、シネマライズほかにてハートあふれるロードショー



『親父』

監督:千葉真一・井出良英(共同監督)
脚本:龜石太夏・井出良英
原作:もりやまみつる「親父」(小学館刊)
出演:JJ.Sonny Chiba(沼田竜道)、田中好子(沼田敏子)、斉藤慶太(沼田伸吾)、北川弘美(沼田洋子)、榊英雄(津川靖史)、筒井康隆(山城組長)、龜石征一郎(清太郎)

チンピラにいいように使われ、ボクサーを志しながらも荒れた生活を送る伸吾、夫の暴力に耐えかね実家に戻ってくる洋子、そんな2人の子供を心配しながらも温かい目で見守り続ける母・敏子の貧しい3人の生活。洋子を取り戻すため、ヤクザの夫・靖史がやってきて暴力を振るった時、17年前の火事で命を落としたはずの父・竜道が帰ってきた。今までの不在を詫びるかのごとく、様々な問題を解決していく竜道。そんな父の姿に、バラバラだった家族の絆が徐々に築かれていき、伸吾、洋子も新しい生活を始める決心をしていくのだが…。

先ほど引退を表明した千葉真一の千葉真一による千葉真一のための映画…といっても過言ではないでしょう。無口で頼りになる昭和の親父を演じられる役者が、千葉さんの他に今の日本の映画界にはいるのでしょうか? 68歳(撮影時は67歳)とは思えないキレのあるアクションは健在。私事ですが、ティーンエイジャーの頃にJACのファンだったので、何十回と千葉さんに(一方的に)お逢いしたことがありますが、本当にお変わりのない姿にご本人の努力を垣間見た気がしました。斉藤慶太さんの屈折した行き場のない怒り、北川弘美さんのダメ男を愛してしまった悲しみ、田中好子さんの子供たちを心配するだけで何もできない自分のふがいなさ、それぞれに感情移入ができると思います。そしてその感情を払拭する親父の存在感。男は黙って背中で語る…参りました。(ひ)

2006年/日本/ステレオ/カラー/108分
配給:チェイスフィルム エンタテインメント

★8月25日(土)よりQ−AXシネマにてレイトショー


2007年9月1日〜

『ファイアー・ドッグ 消防犬デューイの大冒険』

監督:トッド・ホランド
脚本:マイケル・コリアリー
撮影:ヴィクター・ハマー
音楽:ジェフ・カルドーニ
出演:ジョシュ・ハッチャーソン(シェーン)、ブルース・グリーンウッド(コナー)、ビル・ナン(ジョー)、スコッチ・エリス・ローリング(ライオネル)、スティーヴン・カルプ(ザカリー)、犬のデューイ;アルフェン、フロド、ローハン、ストライダー

ハリウッドの超人気セレブスター犬が、撮影中のアクシデントでただの迷い犬となってしまう。 見知らぬ街で火事に巻き込まれ、助けられた先は閉鎖目前の落ちぶれ消防署。 無理矢理世話を言いつけられた、ちょっと反抗的な消防隊長の息子シェーン。 彼に抜群の運動能力を発見され、 消防署のマスコット犬〈デューイ〉として救助活動にも大活躍! みんなの心をひとつにしていくが、消防署の管轄では不審火が続く。 実はその街にはある陰謀が隠されていたのだった…。



(c) 2007 Regency Entertainment (c) 2007 TWENTIETH CENTURY FOX

子供も大人も暖かい気持ちで映画館を後に出来るファミリー映画。 犬と暮らしたことのある人なら、 演じるアイリッシュ・テリアのつぶらな瞳に頬が緩んでしまうこと間違いなし。(了)

2006/アメリカ/カラー/1時間51分/シネマスコープ/
配給会社:20世紀フォックス映画
宣伝:スキップ

http://microsites2.foxinternational.com/jp/firehousedog/

9/1(土)よりT・ジョイ大泉ほか全国ロードショー



『ウィッカーマン』The Wicker Man

監督・脚本:ニール・ラビュート
オリジナル脚本:アンソニー・シェイファー
撮影:ポール・サロッシー
音楽:アンジェロ・パダラメンティ
出演:ニコラス・ケイジ(エドワード・メイラス)、ケイト・ビーハン(シスター・ウィロー)、エレン・バースティン(シスター・サマーズアイル)、モリー・パーカー(シスター・モリー)、リリー・ソビエスキー(シスター・ハニー)ほか

カリフォルニア州の白バイ警官エドワード・メイラスは、母親と幼い娘が乗る車を停車させた。 娘が窓から落とした人形を渡そうとしたのだが、大型トラックがその車に激突! 炎に包まれる少女を助け出せないまま、メイラスは爆風で気を失う。 この事故で精神的ダメージを負った彼は、家に閉じこもり仕事に復帰できずにいた。 そこへ失踪したまま、なんの連絡もなかった婚約者ウィローからの手紙が届く。 彼女は生まれ故郷のサマーズアイルに戻っており、 「メイラスとの間にできた娘のローワンが行方不明になっているので助けてほしい」 と書かれていた。 サマーズアイル島でようやく会えたかつての婚約者は何かに怯えていて、 島の人々は頑なにローワンの存在を否定するばかりだった。

1973年の同名のカルト映画が元だそうです。 厳格なクリスチャン対異端の人々という図式だった前作を、現代風にアレンジしています。 ニコラス・ケイジ自身がこの前作を気に入って製作にあたっています。 物語の冒頭の、自動車事故で死んだはずの母娘の遺体が見つからない、 というあたりからこれはミステリーか、ホラーかしらとちょっとびくびく。 ニコラス・ケイジ、昔はゴキブリを食べるような役もやっていますので、何が出るやら。 メイラスと一緒に不安に陥りながらまだ見ぬ娘を探しましょう。 題名の「ウィッカーマン」はラスト近くまで姿を現しません。(白)

http://www.wickerman.jp/
2006/アメリカ/1時間41分/カラー/シネマスコープ/SDDS、SRD
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給協力:アートポート

9月1日公開予定 新宿トーアほか全国順次ロードショー



『チャーリーとパパの飛行機』L'avion

監督:セドリック・カーン
脚本:セドリック・カーン、イズマエル・フェルーキ、ジル・マルシャン
撮影:ミシェル・アマチュー
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:ロメオ・ボツァリス(チャーリー)、イザベル・カレ(ママ)、ヴァンサン・ランドン(パパ)、ニコラ・ブリアンソン(グザビエ氏)、アリシア・ジェマイ(メルセデス)ほか

チャーリーがパパからもらったクリスマスプレゼントは真っ白な飛行機。 自転車がほしかったチャーリーはがっかり。 パイロットのパパは忙しい仕事の合間に作ったので、 喜んでもらえずにやっぱりがっかりしている。 「自転車は買ってあげるよ」とメモを残してパパは出張に出かけたのに、 そのまま帰ってくることはなかった。事故で突然亡くなってしまったのだ。 ママは寝込んでしまい、チャーリーはパパの最後のプレゼントの飛行機を抱いて眠った。 ところが朝になると、飛行機はパパが置いたタンスの上に戻っていた。 チャーリーが話しかけると、飛行機は光を点滅させ、飛んでみせてくれるのだった。 ママは信じてくれず、飛行機はパパの同僚のグザビエ氏に持って行かれてしまう。


(C) 2005 FIDÉLITÉ FILMS – AKKORD FILM PRODUKTION – FRANCE 3 CINEMA – PATHE DISTRIBUTION/WISEPOLICY

大好きなパパが残したプレゼントは不思議な飛行機でした。 青い空を飛ぶ真っ白な飛行機が美しいです。 もっといろいろ描かれたり、部品がくっついたりしていません。 子供が抱いたり、つかまったりしても痛くないすべすべした本当にシンプルなフォルムです。 思いがけない冒険をとおして、小さなチャーリーはたくましくなりました。 パパがいなくなったらチャーリーがママを、 ママはチャーリーを守らなくてはと互いの絆が強くなります。 普遍的なストーリーにファンタジーの味付けで、親子で楽しめる作品です。(白)

2005/フランス/100分/シネマスコープ/ドルビーSRD・DTS/
配給:ワイズポリシー/ジェネオンエンタテインメント

http://www.wisepolicy.com/lavion/

9月1日(土)よりシネ・リーブル池袋ほか全国にて順次公開



『オフサイド・ガールズ』原題:OFFSIDE

監督:ジャファル・パナヒ
脚本:ジャファル・パナヒ、ジャドメヘル・ラスティン
撮影:ムハマード・カラリ
音楽:コロク・ボゾルグブール
美術:イラジュ・ラミンファル
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ、M・キェラバディ、イダ・サデギ、ゴルナズ・ファルマニ、ナザニン・セディクジャザデほか

バーレーンとイランのワールドカップ出場を決定する大事な試合を前に、 競技場へ向かうバスはすでに興奮状態。その中で一人座っている男装した女の子。 大枚はたいてチケットを買ったものの、競技場には男性しか入れず、 ゲートで見つかって逮捕されてしまう。 フェンスで囲まれた場所に次々と男装した女の子たちが連れてこられる。 競技場にいながら、高い壁に隔てられ試合を観られない。 なんとかようすを知ろうと口々に中を見せてほしいと訴えるが、 監視の兵士には相手にされない。 トイレを我慢していた一人が兵士に伴われて男子用のトイレに行くが、これまた一騒動。 彼女たちはこれからどうなるのだろう。

イランではサッカーが国民的人気。 しかし競技場へ女性が入って男性と一緒に観戦することはできない規則があります。 それでもサッカーが大好きで、家のTVで見るのでなく 競技場で観戦したい女の子たちは実際にいるわけです。 男装してもぐりこもうとして逮捕されてしまった5人の女の子が奮闘する様が とてもユーモラスに描かれています。 体制を批判しているとして国内では上映されていません。 「なぜ女が入ってはいけないのか」と聞く彼女たちに兵士も明確には答えられません。 監督が来日してお話しが聞けそうなので楽しみです。(白)

2005年の日本・イラン戦の時に、日本女性が特別に入場を許されたのは画期的なこととして、 日本でも話題になったことを覚えている方も多いと思います。
捕らえられた男装の女の子たちと警備の兵士との問答。 「日本の女性は入れたのに...。イラン人に生まれたのが悪かった?」 「日本人に汚い言葉を言ってもわからないからいいんだ」「言葉が問題?」 「映画館は暗いのに男女一緒でいいの?」兵士も答えに詰まります。 イランでは、大型バスは男女別なのに、ミニバスや乗り合いタクシーは男女同席といった具合に、 中途半端な男女別社会。 監督は社会の矛盾をサッカー場を舞台に描いて、大いに笑わせてくれました。 昨年の第7回東京フィルメックスで観客賞を受賞したのも納得!
護送車の中でワールドカップ出場を決めるゴールに歓声をあげる女の子たち。 どこからともなく護送車に乗りこんできて、お菓子の箱を持って配る人。 以前にオリンピックの重量挙げで金メダルが決まった時に、 私が乗っていた観光バスにもお菓子を配りに来た人がいたことを微笑ましく思い出しました。 社会にあれこれ矛盾はあっても、こんな優しさを持ち合わせているイラン人の姿にも、 ちょっと注目してほしい。
それにしても、女性たちが、スタジアムで歓声をあげることができるのは、 いつのことになるのでしょう。(咲)

第56回ベルリン国際映画祭銀熊賞
第7回東京フィルメックス観客賞

2006年/イラン/カラー/88分/35mm/
配給:エスパース・サロウ、パンドラ

9月1日(土)より、日比谷シネシャンテほかにてロードショー

公式 HP >> http://www.espace-sarou.co.jp/offside/



『PUNK'S NOT DEAD』

監督:スーザン・ダイナー
製作:ティム・アームストロング
出演:マイク・ネス(Social Distortion)、ビリー・ジョー・アームストロング(Green Day)、チャーリー・ハーパー(The U.K. Subs)、デクスター・ホーランド(The Offspring)ほか多数

監督のスーザン・ダイナーは、自身がパンク・ロックファンで、80年代初期から活躍したカメラマン。生涯を通じてパンク・ムーブメントを追い続けてきた。撮りためてきた貴重な写真と、その撮影を通して築き上げてきたパンクスたちとの信頼関係により、この映画を100%DIYで作り上げた。
パンクの黎明期から現在までをたどり、現在パンクはどうなったのかを探っている。

イギリスでパンクが生まれた頃は、最下層の労働者階級の若者たちが、失業と貧困が蔓延する社会に対する怒りをぶちまける、強烈にメッセージ性を持った音楽だった。そのファッションも音楽性も極めて攻撃的で、大人たちが顔をしかめるのに十分な異端の存在だった。それが今や、最新ファッションにパンクの要素は欠かせず、メイン・ストリームのチャートにパンクバンドが名を連ねるものの、その音楽には批判精神といったものは皆無と言った具合に、社会とパンクの関係は大きく変わっている。パンクは死んでしまったのか? いやいや、今なお世界中にパンク・ロッカーを自負するミュージシャンたちは老いも若きもたくさんいるんだと、この映画を観ればわかる。
パンクに限らず、自分の理想の音楽を追い求めるミュージシャンたちにとって、今の巨大化した音楽産業とどう対峙していくかは大きな問題。長きにわたってパンクを貫き通してきたベテランも、これから世に出たいと考えているティーンエイジャーのパンクスも、今や同じ敵と闘っているように見えた。(梅)

2007年/アメリカ/97分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル5.1ch
配給:キングレコード

公式 HP >> http://www.kingrecords.co.jp/pnd/

★9月1日(土)より、シアターN渋谷にてロードショー 他、全国順次公開


2007年9月8日〜

『ミリキタニの猫』

製作・監督 :リンダ・ハッテンドーフ
製作:マサ・ヨシカワ
撮影:リンダ・ハッテンドーフ、マサ・ヨシカワ
編集:出口景子
音楽:ジョエル・グッドマン
出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ、リンダ・ハッテンドーフ、ロジャー・シモムラ、ジャニス・ミリキタニほか

ニューヨーク、ソーホーの路上で絵を描いて売っているホームレスの老人がいる。 彼はジミー・ミリキタニ、80歳。 カリフォルニアで生まれ、母の故郷広島で教育を受ける。 画家を志していたが第2次世界大戦中、日系人強制収容所へ送られた。 全てを取り上げたアメリカ政府に怒り、彼は戦後も社会保障の一切を拒否していた。 若い映像作家のリンダ・ハッテンドーフはジミーの絵を買ったのが縁で、ときおりビデオ撮影をしていた。 2001年9月11日、世界貿易センターが瓦解し、騒然としたニューヨークの路上で咳き込みながら絵を描いていたジミーにリンダは声をかける。 「家へいらっしゃい」と。

これは、怒りを抱きながら誇り高く生きてきた日系アメリカ人、ジミー・ミリキタニと、 たまたま出逢ったリンダ・ハッテンドーフとの数年間の記録です。 二人の同居生活は微笑ましく、 帰りの遅いリンダに説教しているジミーは父親のように見えます。
リンダは彼の記録を遡って探し、社会保障を受けられるよう奔走します。 市民権は1959年に回復されていましたが、 転々と住居を変えていたジミーには届きませんでした。 収容所時代の政府への手紙や、通知の記録が保管され、 そこまでたどり着けたのには驚きました。 アメリカのお役所の情報管理の確かさや、柔軟さもみてとれます。 日本だったらこうはいかないでしょう。
ジミーは気持の良い住居に住み、収容所以来生死も知れなかった姉にも会うことができました。 かつての収容所を訪ね、鎮魂の花を手向けるジミーの表情は穏やかでした。 これらはリンダとの出会いなくしてはありえません。 自分を振り返って、他人にこんな風に関われるかと嘆息するばかりです。 人の出会いの尊さをしみじみと感じた作品でした。(白)

昨年の東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で最優秀作品賞を得たほか、 各地の映画祭での受賞多数。

2006年/カラー/74分/
配給:パンドラ
宣伝:アステア、アップリンク

http://www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani/

9月8日(土)より ユーロスペース他、日本全国にてロードショー



『ワルボロ』

監督:隅田靖
脚本:木田紀生
撮影:佐光朗
美術:山崎秀満
音楽:鮎川誠、遠藤幹雄
原作:ゲッツ板谷「ワルボロ」(幻冬社刊)
主題歌: ザ・クロマニヨンズ 『ギリギリガガンガン』
出演:松田翔太(コーちゃん)、新垣結衣(山田)、福士誠治(ヤッコ)、木村了(キャーム)、古畑勝隆(ヒデチャン)、城田優(小佐野)、途中慎吾(カッチン)、仲村トオル(叔父)、戸田恵子(おかん)ほか

1980年代の立川。 ピストル型のこのショボイ街から出ようと真面目に勉強一筋だったコーちゃん。 ある日ヤッコの挑発にぶちきれてしまった。それがなんとも快感! 突如不良に目覚めたコーちゃんは髪はオールバックに、学ランはもちろん変形。 憧れの山田の視線が冷たいのがちょっと気になるが、 喧嘩けんかで明け暮れる充実した毎日が続いた。



(C)2007「ワルボロ」製作委員会

ゲッツ板谷原作の自伝的青春小説「ワルボロ」が原作。愛すべきバカな男の子たちの話で、 私は怒りまくるおかんに共感しました。親は心配ですよ。 今の男の子たちはこんなにじゃれあったりせず、もっとさめている気がしますね。 松田翔太を中心にちょっとトウのたった高校生もいますが、 チャン・ドンゴンの『チング』ほどではありません。 優等生役の新垣結衣にもうすこし活躍の場がほしかったな。 元気でやんちゃな翔太くんは可愛かったです。(白)

2007/日本/カラー/PG-12
配給:東映

http://www.waruboro.jp/  (音が出ます)

2007年9月8日(土)より 全国ロードショー



「喜劇特急第8幕〜落語だいすき!」

シネマアートン下北沢で落語をテーマとした喜劇映画12本の特集上映が行われます。

劇場:シネマアートン下北沢
期間:9月8日(土)〜10月5日(金)
料金  一般・学生:1200円/シニア:1000円
     シネマアートン会員:900円/2回券3回券あり

9/8(土)〜9/14(金)
14:00 「落語野郎 大脱線」('66)立川談志、酒井和歌子
15:50 「落語野郎 大馬鹿時代」('66)立川談志、古今亭今輔、桂米朝
17:40 「運が良けりゃ」('66)ハナ肇、倍賞千恵子、渥美清
9/15(土)〜9/21(金)
14:00 「大笑い江戸っ子祭」('59)三木のり平、雪村いづみ、有島一郎
15:40 「幽霊繁盛記」('60)フランキー堺、香川京子、有島一郎
17:30 「幕末太陽傳」('57)フランキー堺、左幸子、南田洋子、小沢昭一
9/22(土)〜9/28(金)<映画スター・古今亭志ん朝>
14:00 「喜劇 冠婚葬祭入門」('70)三木のり平、倍賞美津子、古今亭志ん朝
15:50 「くたばれ!社用族」('64)藤田まこと、古今亭志ん朝
17:40 「裸でだっこ」('70)渥美マリ、古今亭志ん朝
9/29(土)〜10/5(金)<昭和の名人の姿を映画で見よう>
14:00 「春だドリフだ全員集合!」('71)三遊亭円生、柳家小さん
15:50 「羽織の大将」('60)桂文楽
18:00 「ひばりの子守唄」('51)古今亭志ん生

イベント:落語実演
 9/10(月)「運が良けりゃ」上映後
 9/20(木)「幕末太陽傳」上映後
 ゲスト:隅田川馬石 師匠(落語協会 真打)

シネマアートン下北沢 HP>> http://www.cinekita.co.jp/



『GROW −愚郎−』

監督:榊英雄
脚本:後藤克秀
音楽:榊いずみ
出演:桐谷健太(村上敦)、寺島進(山田泰三)、木下ほうか(横山淳一)、菅田俊(佐藤鉄治)、中村映里子(晴香)、三上真史(滑川)、田辺みさき(マキ)、倉科カナ(雅美)、遠藤憲一(マー君)、深浦加奈子(マッハババァ)、板尾創路(ミカエル)、渡辺裕之(石橋)

学校では滑川らにいじめられ、家では父親の暴力に悩む敦は、相談する友達もいない孤独な高校生。ある日、偶然に入り込んだ廃墟で自殺を試みるが、突然現れた長ランを着た伝説の不良三人組に助けられる。どう見ても高校生には見えない強面の三人だが、敦は男気あふれる彼らの助言に従って、徐々に男らしくなっていく。ある日、滑川らに追いかけられている敦の足の速さに気づいた体育教師の石橋は、敦を陸上部に入部させる。走ることに喜びを見出した敦は、今まで見て見ぬ振りをしていた家庭での問題にも立ち向かい、自分に自信をつけ始める。そんな矢先、敦は陸上の大会を目前にして、妹をかばい足を負傷してしまう。その上、滑川から三人組の正体を聞かされ動揺するが、「男になれ」と教えてくれた三人組の恩に報いるためにも走る決心をする。

笑いと泣きが絶妙にブレンドされた、青春映画の傑作ではないでしょうか!! 不良三人組を通して、この映画が長編初監督作となる、俳優の榊英雄監督の熱い想いが伝わってきました。笑いながら涙が出て、もうどうしようもなかったです。試写会場では終映後に拍手が起こっていました。そして榊監督が出口で挨拶してくださったのですが、号泣して顔がボロボロだったため、そのまま通り過ぎてしまい本当に申し訳なかったです・・・
いじめが話題になる昨今。いじめられる子には、こういう三人組、石橋教師のような存在がどんなに大切か… 人との出逢いによって、人は変われるんですよね。
寺島さん、木下さん、菅田さんの三人組は、昔からトリオだったの? と思うぐらいに息がピッタリ。さすが日本映画界を支える男前な役者さんたちです。(ひ)

2007年/日本/ステレオ/カラー/114分
配給:チェイスフィルム エンタテインメント

公式 HP >> http://www.grow510.com/

★9月8日(土)よりQ-AXシネマにてレイトショー


2007年9月15日〜

マザー・テレサ メモリアル『母なるひとの言葉』+『母なることの由来』
〜没後10周年記念・ドキュメンタリー2部作〜

貧しい人々に献身的な愛を注ぎ、マザー・テレサの名で世界中の人から敬愛された修道女 アグネス・ゴンジャ・ボヤジュ。 1997年9月5日にその生涯を閉じ、今年没後10周年となるのを記念して、 彼女の人となりを描いた2本のドキュメンタリーが上映される。



『マザー・テレサ:母なることの由来』原題:MOTHER TERESA

製作・監督: アン・ペトリ、ジャネット・ペトリ
撮影:エド・ラッハマン/サンディ・シセル
音楽: スザンヌ・シアーン
ナレーション: リチャード・アッテンボロー

1988年に日本公開されたドキュメンタリー『マザー・テレサ:母なることの由来』のデジタル復刻版。 コルカタ(カルカッタ)、レバノン、ニューヨークなど、 マザー・テレサの精力的な活動を5年間、10ヶ国に渡り追った記録と共に、 ごく平凡な家庭に生まれた彼女の生い立ちから“偉大なる聖女”と呼ばれ 世界中の尊敬を集めるまでの経過を、克明に描いてゆく。 あらゆる困難を乗り越え、世界中に愛を届けた一人の女性の記録。

1986年/アメリカ/カラー/DVD上映/83分


(c)1986 Petrie Productions,Inc. All rights reserved.

『マザー・テレサ:母なるひとの言葉』原題:MOTHER TERESA: THE LEGACY

製作・監督: アン・ペトリ、ジャネット・ペトリ
撮影:エド・ラッハマン/サンディ・シセル
音楽: スザンヌ・シアーン

1997年9月5日、マザー・テレサは天に召さる。享年87歳。 9月13日に異例の国葬が行われ、コルカタの道路を埋め尽くす人々が見守る中、マザーのご遺体は、 ガンディーやネルーをも運んだ砲架車で静々と葬儀会場へと導かれる。 スコピエ(現マケドニア)でアルバニア人の娘として生を受けたマザー・テレサ。 葬儀には、アルバニア大統領など世界各国から要人が駆けつけた。
葬儀の様子を映し出す合間に、生前に撮影されたマザー・テレサ本人のインタビュー映像が流れる。 彼女が静かに語る言葉の一つ一つは、実行しようと思えば、誰にでも可能なことだ。 それを黙々と実践し続けたマザー。「真の聖者」とも言われた所以であろう。


(c)2004 Petrie Productions,Inc. All rights reserved.

10年前の9月13日、BBCが中継する国葬の様子をじっと眺めていたのを思い出す。 何より驚いたのは、砲架車の上にむき出しになったマザーのお顔。 彼女を見送るために駆け寄ってくる民衆のために、その姿をあらわにしていたのではないかと思ったものだ。 マザーが亡くなれた2年後、コルカタでマザーの残した病院の一つを訪れたことがある。 質素で、まさに清貧のイメージの中に、暖かさの篭る空間だった。 寄付などほとんどしたことのない私が、思わず寄付をしてしまったものだ。 そんな力をマザーはお持ちなのだと思う。(咲)

2004年/アメリカ/カラー/DVD上映/55分

★東京都写真美術館ホールにて、9月15日(土)より上映
休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
上映時間:
『母なるひとの言葉』 10:30/14:00/17:30
『母なることの由来』 12:00/15:30/19:00

公式HP>> http://www.motherteresa.co.jp

★特別記事>> <没後十周年記念・ドキュメンタリー2部作> マザー・テレサ メモリアル 没後十周年・記念上映会 座談会報告



『題名のない子守唄』原題:La Sconosciuta

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽:エンニオ・モリコーネ
撮影:ファビオ・ザマリオン
美術:トニーノ・ゼッラ
衣装:ニコレッタ・エルコーレ
製作総指揮:ラウラ・ファットーリ
キャスト:クセニア・ラバポルト、ミケーレ・プラチド、クラウディァ・ジェリーニ、ピエラ・デッリ・エスポスティ、マルゲリータ・ブィほか

ここは、東欧と接する北イタリアのトリエステ。
イレーナ(クセニア・ラパポルド)が、何故ここにやってきたのかは誰も知らない。

裕福なアダケル夫婦と4歳になる娘テアが暮らす建物のそばにアパートを借り、 裏窓から盗み見ている。
イレーナは何をしようとしているのか…。 そしてイレーナを執拗につけ狙う男の影もある。
そんな中、イレーナの念願が叶い、アダケル家の家政婦になり、 可愛いテアとの間にほのかな愛情が芽生えるが、遂に事件が起こる…。

『ニュー・シネマ・パラダイス』のイタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、 『マレーナ』以来6年ぶりに愛と謎に包まれたミステリーを製作しました。
この映画、始まりからショッキングなシーンで、題名から想像する柔らかなイメージは、 ふっとんでしまいます。
イレーナがアダケル家の家政婦の職を手に入れるまで、ハラハラの連続ですが、 目をそむけたくなるシーンも、彼女の黒い瞳に、強く何かを求める意志を感じ、 見続けられました。脇役のピエラ・デッリ・エスポスティ (イレーナに家政婦の職を奪われる)や、マルゲリータ・ブイ(イレーナを気遣う弁護士役) がこの映画を後味の良いものに仕上げています。 予告でも流れている子守唄のメロディが、物悲しい余韻を残しますが、 最後には救いも用意されているのでご安心を。(美)

2006/イタリア/スコープサイズ/ドルビーSRD/121分
配給:ハピネット 宣伝:ザジフィルムズ
http://www.komoriuta-movie.com/  (音が出ます)

9月15日(土)より、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロードショー!



2007年9月22日〜

『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』

監督・撮影・編集:キャサリン・リントン
出演・音楽:ジョン・キャメロン・ミッチェル、オノ・ヨーコ、ヨ・ラ・テンゴ、フランク・ブラック、ブリーダーズ、ベン・フォールズ、他
出演:クリス・スルサレンコ、メイ・バン、エンジェル・サンティアゴ、テナジャ・ジョーダン、ラファエル・ラモス、ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールの生徒たち

2001年、世界に「ヘドウィグ」ブームを生み出し、 今年八月公開「ショートバス」で再び監督として注目を集めているジョン・キャメロン・ミッチェルと、 音楽プロデューサー、クリス・スルサレンコ、そして多数のミュージシャンが一堂に会し、 ニューヨークのLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア) の青少年の高校「ハーヴェイ・ミルク・ハイスクール」の理念 「“違い”というものは尊ばれるものであり、 あらゆる生徒に安全な教育と“ホーム”と呼べる場所があるべきだ」に賛同し、 立ち上がった。
「ヴォイス・オブ・ヘドウィク」はジョン・キャメロン・ミッチェルと ミュージシャンたちの一年にわたるアルバム制作を軸に、 ハーヴェイ・ミルク高校の生徒四人(二人のレズビアン、 一人のゲイ、一人のトランスジェンダー)に焦点をあて、 自分は人とは違うという葛藤、家族や周りの人々との関係、 そして自分の存在を肯定する様を描いたドキュメンタリーです。

久しぶりに興奮しました!
もう、これは何をおいても、観ていただきたい作品です。
三つのがあります。

まず一つ目の
2003年、ニューヨークにLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、 トランスジェンダー、クィア)の高校が正式に認可された…、この事は初耳でした。 さすがニューヨークと驚きましたが、来日中のキャサリン監督は、 このニューヨークでさえ、反対勢力があり、状況は複雑であると語ってくれました。 生徒たちの明るい表情から想像できませんが、 彼等の家族にすら理解してもらえない苦しみが、徐々にあぶり出されます。

二つ目の
(自分以外の人の曲を演奏するのは初めてよ、本当にすごくいい曲。 でも出だしが難しいから、その時になったら私の肩を叩いて!お尻じゃないわよ) とジョン・キャメロン・ミッチェルに頼んだのは誰だと思います? なんと、オノ・ヨーコさんなのです。 東洋的で、落ち着いた響きのある魅力的な声でした。

三つ目の
三年前に上映された「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」 の重要部分が何回も出てきます。当時の画面に出てくる ケバ〜いジョン・キャメロン・ミッチェルと、今、 ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールの資金集めに立ち上がった、 素顔の素敵な彼…たっぷり堪能できます。

キャサリン・リントン監督は、世界的なミュージシャン達が、 何回もの撮り直しに、いやな顔一つせず協力してくれたことを、 心から感謝していると謙虚に語っておられました。(美)

ゲイやレズビアンの高校生たちが、実にのびのびと自分らしく生きている姿に感動しました。 自分を見つけて、自分の夢に向かって突き進む...、これは、誰にとっても大事なこと。 なんだかとても元気になる映画でした。(咲)

2006年/アメリカ/カラー/16.9/101分

配給・宣伝アップリング

★東京渋谷ライズXにて、9月22日土曜より、ロードショー

公式HP>> http://www.uplink.co.jp/voiceofhedwig/



『ボーイ・ミーツ・プサン』

監督:武正晴(たけまさはる)
脚本:窪田信介
撮影:鍋島敦裕
音楽:Tatsuya
出演:柄本佑(クリハラ)、江口のり子(ヨーコ)、光石研(イガラシ、チャン)、川村亜紀(マツオカ)、前田綾花(ワカナ)ほか

韓国・釜山港に着いたフェリーからビデオカメラ片手に降り立ったクリハラ。 西も東もわからず、看板さえ読めないこの街で、 たった一人で観光用プロモーション撮影をしなくちゃいけない。 上司のイガラシが教えたくれたのは「アンニョンハセヨ=こんにちは」 「ケンチャナヨ=大丈夫」「サランヘヨ=愛してます」の3語だけ。 これだけ覚えればやっていける、と丸暗記させられたものの実は意味を知らないのだった。 迎えに来ているはずの通訳とは会えずじまい。 とりあえず街に出てカメラを回していて、気になる女性を見つけるが 「勝手に撮らないで!」と怒鳴って去っていく。 翌日も翌々日も通訳には会えないのに、この女性とは遭遇。 彼女はヨーコと名乗った。

釜山国際映画祭で賑わう街が舞台。 これが初の監督作品となった武監督自身が、 以前釜山映画祭を訪ねたときのエピソードが元になっているそうです。 柄本佑くん扮する青年クリハラが泊まる簡易旅館?のおばちゃんが元気で とてもいい味を出しています。 川村亜紀さん演じる通訳さんの設定はあんまりです。そんなアホな! これで、クリハラには特別な日々になるわけなんですが。 光石研さん二役でおかしいです。 個人的に注目中の江口のりこさんがビキニ姿を披露していました。 スレンダーガールです。クリハラが撮影のためにうろうろする観光地や、 ヨーコと歩く繁華街、映画祭の雰囲気など旅行気分も味わえます。 ちょっと甘酸っぱい「Boy Meets Girl@釜山」ストーリー。(白)

2006/日本/カラー/80分/
配給:ブレス
問い合わせ:アルゴピクチャーズ

9月22日(土)より渋谷シネ・ラ・セットにてロードショー

公式ブログ >> http://boymeetspusan.blog114.fc2.com/

★初日舞台挨拶
9/22(土)モーニングショー(朝10:00〜)上映終了後
ゲスト:柄本佑さん、江口のりこさん 、川村亜紀さん、武正晴監督
★トークイベント
9月28日(金)21時半の回
ゲスト: 前田綾花さん、川村亜紀さん、武正晴監督



『アーサーとミニモイの不思議な国』 ARTHUR AND THE MINIMOYS (ARTHUR ET LES MINIMOYS)

監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン , セリーヌ・ガルシア
CGアニメーション:BLUE CIE
CG監督:ピエール・ブファン
撮影:ティエリー・アルボガスト
美術監督:パトリス・ガルシア、フィリップ・ルシエ
音楽:エリック・セラ
出演:フレディ・ハイモア(アーサー)、ミア・ファロウ(おばあちゃん)、セレニア(声マドンナ)、マックス(声スヌープ・ドッグ/吹き替え:三浦友和)、マルタザール(声デヴィッド・ボウイ)、国王(声ロバート・デ・ニーロ)ほか

アーサーは冒険を夢見る10歳の少年。 留守がちの両親と離れてお婆ちゃんと二人暮らしだ。 アーサーの楽しみは、屋根裏で冒険家のお爺ちゃんが残したものを見ること。 お爺ちゃんは4年前に出かけたまま帰ってこない。 ある日その中から「ミニモイ」に関する書物と宝の地図を発見した。 お婆ちゃんは借金取りに脅されて寝込んでしまった。 明日までに帰さないとこの家が取り上げられてしまう。 アーサーは家族の危機を救うため、ミニモイと宝を探す冒険に旅立つことにした。



(c)2006 EUROPACORP - AVALANCHE PRODUCTIONS - APIPOULAI PROD

リュック・ベッソン監督が構想7年をかけて完成した作品。 実写版とCGを駆使したアニメーションが組み合わさっています。 最近観なかったミア・ファロウは、ピンクの花柄の似合う可愛いお婆ちゃん役。 フレディ・ハイモアは『チョコレート工場の秘密』のころより大きくなっていましたが、 すぐに2mmのミニモイに変わってしまいます(笑)。 アーサーがミニモイの世界に行くときに現れる長身のアフリカの人々がとても綺麗でした。 ミニモイの人々の造形は、ゲームの世界の妖精のようですがファッションはなかなかに今風。 実写、アニメどちらも自然が美しく描かれていて、ボイス・キャストも魅力的です。 吹き替え版には神木隆之介、三浦友和、Gackt、タカアンドトシらが登場。(白)

2006/フランス/ヨーロッパ・コープ提供・製作/カラー/1時間44分/スコープサイズ
配給:アスミック・エース

http://www.arthur-movie.jp/top.html


完成披露試写会(6月12日)のリュック・ベッソン監督と、神木隆之介くん

9月22日(土)より、丸の内プラゼールほか松竹・東急系にて全国拡大ロードショー



『夜の上海』

監督:チャン・イーバイ(張一白)
脚本:高燕、山村裕二、チャン・イーバイ、高真由子
原作:「夜の上海」講談社
撮影:ヤン・タオ
音楽:tearbridge production
出演:本木雅弘(水島直樹)、ヴィッキー・チャオ(リンシー)、西田尚美(高橋美帆)、塚本高史(龍一)、ディラン・クォ(ドンドン)、サム・リー(通訳)、和田聰宏(加山淳)、大塚シノブ(理恵)、竹中直人(山岡)

トップへアアメイクアーチストの水島、カリスマと呼ばれ仕事はひきもきらず、 今日は音楽祭のために上海にやってきた。 公私ともにパートナーの美帆との関係はすでにときめきのないものに変わり、 仕事を終えて街を一人歩きする。見知らぬ通りで方向を失った水島は、 突然後ろからタクシーに追突され、気を失ってしまう。 青くなって揺すぶっていたのは、タクシー運転手のリンシー。 弟に留学資金をせびられ、片想いの彼には告白できず滅入っていたところだった。 水島が無事なことがわかると、リンシーは商売になると踏んでタクシーに乗せる。 無一文の水島は親切からかと思って喜ぶが、二人の会話は全く通じなかった。

『アバウト・ラブ』のチャン・イーバイ監督が、元木雅弘、ヴィッキー・チャオを主演に、 日本、香港、台湾の俳優たちを助演に迎えロマンチックな“旅恋ストーリー”を作り上げました。 カメラに向かうポーズも決まっている元アイドルのモックンも、 いまや実力派でもう不惑の年頃。 ひとまわりほど違うヴィッキーと並んでも若くて相変わらずハンサムです。 上海の美しい夜景をバックにかみ合わない会話を続ける二人と、 いなくなった水島を探す人々が点在。 一人濃い雰囲気を醸し出している竹中直人と、 妙な日本語通訳のサム・リーがひょうひょうとしていておかしいです。 ディラン・クォが自動車修理工の役で、婚礼衣装店でのシーンがありますが、 遠目に見えるだけなのに、これがすっごく綺麗。さすがモデル!(白)

2007/日本・中国/カラー/110分/ヴィスタ/SRD
配給:ムービーアイ
http://www.yorunoshanghai.com/

9月22日(土)より、全国“旅恋”ロードショー



『めがね』

監督・脚本:荻上直子
撮影:谷峰登
照明:武藤要一
美術:富田麻由美
音楽:金子隆博
エンディング・テーマ:大貫妙子「めがね」
フード・スタイリスト:飯島奈美
出演:小林聡美(タエコ)、市川実日子(ハルナ)、加瀬亮(ヨモギ)、光石研(ユージ)、もたいまさこ(サクラ)、薬師丸ひろ子ほか

春浅いどこか南の小さな町。「来た」と空を見上げる二人。 いそいそと小屋を組み立てていると、 バッグひとつを持った女がやってきて深々とお辞儀をする。 同じ飛行機からもう一人女が降りた。 大きな旅行カバンをひきずって予約した宿をさがしているのはタエコ。 たどり着いたのは表札が隠れている「ハマダ」。 あんまりお客が来たら困るからこのくらいがいいんです、と言う主人はユージ。 愛犬の名はコージ。迷わずに来たタエコは、「ここにいる才能ありますよ」と言われる。 サクラをはじめ今まで会ったことのないユニークな人々に、「無理」と宿替えをするが、 そこは「もっと無理!」なところだった。 サクラの自転車で戻ってきたタエコは前より空気になじんでいく。



(c)めがね商会

都会から集まってきたらしい二人の男に、三人の女が主な登場人物です。 背景など詳しくは語られず、人々はただただ自由に「たそがれ」ています。 何もしないことをする、とは旅行社のキャッチコピーだったでしょうか?  前作『かもめ食堂』で、ヘルシンキのおにぎり屋さんに集まる人々を描いた荻上監督は、 舞台を南国に移し、小林聡美を今度は旅人にしました。 おいしそうな食事が今回も出てきますが、 作る手元がアップになったり料理の音が入ったりしないので前ほど、 涎が出ることはありませんでした。今回一番おいしそうだったのは、 加瀬亮くんの食べっぷりが気持良かった海老と氷あずき! 前作よりさらにまったり、ゆったりした時間の流れるこの作品は、 ストーリーがあるようなないような。さてこの映画を楽しむ才能がありやなしや?(白)

2007/日本/カラー/106分/アメリカンビスタ/
配給・宣伝:日活 

9月22日(土)より テアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国ロードショー



『サルバドールの朝』SALVADOR

監督:マヌエル・ウエルガ
脚本:アルカラーソ
撮影:ダビ・オメデス
音楽:ルイス・リャック
出演:ダニエル・ブリュール(サルバドール)、レオノール・ワトリング(クカ)、レオナルド・スバラグリア(看守ヘスス)、トリスタン・ウヨア(弁護士アラウ)、ホエル・ホアン(オリオル)、イングリッド・ルビオ(マルガリーダ)ほか

サルバドール・プッチ・アンティック(1948年−1974年)は、スペイン、カタルーニャ地方の中流家庭に生まれた。 1939年からのフランコ独裁政権が続く中、無政府主義者の組織MILの同志となり、 労働者解放のために活動する。資金援助のためたびたび繰り返された銀行襲撃の運転手として重用される。 先に捕まった仲間の自白から、待ち伏せを受け銃撃戦の末一人の警察官が死亡する。 サルバドールも重傷を負ったが命はとり止め、警察官殺害犯人として軍事委員会に裁かれる。 警察官はサルバドール以外からの銃弾も受けていたが、検死結果や医者の証言は取り上げられなかった。 拘留中に起こった別の組織の爆弾テロにより、ときの首相が暗殺され、その報復に死刑を求刑される。 被告側の証人も認められず、死刑は確定してしまう。

実際にあったこの事件が、ほんの30年ほど前のことだというのが信じられない思いです。 スペインで知らない人はいないという若き政治犯、サルバドールが死刑に処せられるまでが、 彼を応援する人々の動きと交互に描かれています。 見るだに肌が粟立ちそうな死刑のための道具、執行人をカメラは画面いっぱいに写します。 暴力を振るい、証拠を隠匿しながら彼の死を願った警官たちは、寝覚めが悪くないのでしょうか。 「恥じることはしていない」と最後まであきらめず生きたいと願った彼と、 応援する家族たちにちょっと心温まり、その分この青年を死なせてしまった時代に涙が出ました。 正当な裁判であったならば、と残念。 命を絶たれてしまったサルバドールの家族は今も係争中だそうです。(白)

2006/スペイン製作/135分/カラー/ドルビーSRD /シネマスコープ/
配給:CKエンタテインメント(株)キネティック

9月22日(土)より、シャンテ シネほか全国順次ロードショー!



『おやすみ、クマちゃん』

監督:ルツィアン・デビンスキ、マリアン・キェルバチャク、ヤドゥガ・クドゥジッカ、ダリウス・ザヴィルスキ、エウゲニウシュ・イグナチュク 音楽:ピョートル・ヘルテル
製作:“セ・マ・フォル”スタジオ
原画・美術:ズビグニエフ・ルィフリッキ

『おやすみ、クマちゃん』は1957年から50年に渡り、ポーランドをはじめヨーロッパ諸国で愛されている、幼児向けアニメです。ポーランド国営放送と国営人形アニム・スタジオ<オ・マ・フォル>が共同制作した104本の人形アニメーションは、ポーランドを代表する挿絵作家、ズビグニエフ・ルィフリツキ(1922〜1989)が絵を担当しています。おもちゃ屋の棚に並んでいたこぐまのぬいぐるみが表へ出て、いろんな仲間と友だちになり、愉快な体験をします。今回の劇場公開は、シリーズの中から厳選した10話を、春夏編と秋冬編に分けて上映されます。

これを観た方は、きっと無垢な幼児期にタイムスリップできますよ。
私、今年で還暦ですが、これを観た後、顔のシワがいつもとは違う弾力でした。一話はどれも7分で、ぬいぐるみクマちゃんが、今日一日の面白い出来事を話して、「おやすみなさい」と、ベッドに入ります。
各話ごとにセンス抜群のパジャマ(104話、全部違う物ですって!)。色合い、素朴なインテリア…、素晴らしい手づくり美術が堪能できます。日本の子ども達は、寝る前にどんなテレビを観ているのかな…と少し心配になりました。是非とも、親子連れで楽しんでいただきたい、お子様向け手づくりアニメです。(美)

おみみが目印のクマちゃんは、クマではありません。ぬいぐるみのクマなんです。だから「木になんて登れないよ、ぼくぬいぐるみだもん」なんて言ったりします。あまりの可愛らしさに観ている間中、目尻が下がりっぱなし。子供たちに対する教育的なものも、さりげなく入っていていいんです。小さな子供だけでなく、大人が観ても楽しめて癒されますよ。(梅)

8月4日(土)より、東京都写真美術館ホールほか全国にて上映中でしたが、吹き替え版だけでなく「どうしてもオリジナル音声でも見たい!」というお客様からのたくさんの要望に答えるかたちで、ポーランド語・日本語字幕版の上映が決定しました。

カラー/ポーランド/79分/全10話(途中休憩なし)
配給:エデン
宣伝:フリーマン・オフィス

公式 HP >> http://www.oyasumi-kumachan.com/

★9月22日(土)よりシネマート六本木にてロードショー
夜1回上映(詳しい上映時間・料金等は劇場にお問い合わせください)
同時上映:「こぐまのウシャテク」(カラー9分)

*** リピーター割引のお知らせ***
東京都写真美術館で吹替え版をご覧のお客様は、鑑賞時のチケットの半券を窓口で提示いただくと、割引料金にてご覧いただけます。
(当日:一般1,800円⇒1,500円/学生:1,500円⇒1300円)
※東京都写真美術館の前売券はご利用いただけませんので、ご注意ください。



2007年9月29日〜

『Mayu-ココロの星-』

監督・脚本:松浦雅子
原作:大原まゆ「おっぱいの詩 21歳の私が、どうして乳がんに?」講談社
撮影:柴主高秀
音楽:西村由紀江
出演:平山あや(竹中まゆ)、塩谷瞬(桜田優紀)、池内博之(新堂亮)、京野ことみ(尾崎たまみ)、若葉竜也(弟)、浅田美代子(母)、三浦友和(父)ほか

=だいじょうぶ きっと私は がんばれる=

竹中まゆは医学部を目指し、2浪したが玉砕。今は広告会社で元気で働いている。 21歳の誕生日、中学の「星を観る会 ポーラスター(北極星)」の仲間たちと ひさしぶりに集まった。 歌手を目指すケイ、ニートのアユミ、家事手伝い中のミスズは今も気のおけない親友たちだ。 お笑い芸人を目指すサトル、元彼の優紀(まさき)も参加、 「来年の誕生日には、会の名前の北極星に近いところで祝おう!」と盛り上がる。
まゆが小学生のときから、卵巣がんで入院していた母は今も闘病中だ。 それだけに健康には人一倍気をつけてきたはずが、 恋人新堂とのデートの日胸にしこりを見つける。 母に励まされて受けた検査で、乳がんと診断がくだってしまった。 大きなショックを受けたまゆだったが、勤めをやめて治療に専念し、 がんと闘うことを決意する。


(c)2007「Mayu ココロの星」製作委員会

原作の大原まゆさんは札幌在住で、2003年に乳がんの告知を受けました。 自らの闘病を綴った原作を目にした水野プロデューサーは、 すぐに出版元と交渉して映画化権を獲得。 大原さんとも映画化にあたって話し合いを重ねたそうです。
当事者の視点がしっかり入っているこの作品は、今闘病中の方、 周りの方にも大きな勇気を与え、励ましになることと思います。 札幌の実父をがんで亡くした私は、背景のひとつひとつを懐かしく見、 家族の反応や病院のようすに当時を思い出しました。 患者さんの一人を演じた京野ことみさんには泣かされました。 今生きている私たちとて、幕をひく時がいつかやってきます。 毎日が大切な一瞬の積み重ねであるのを忘れまいと思いました。(白)

2007/日本/カラー/123分/
配給:ティ・ジョイ

http://www.mayu-movie.jp/index.html
http://blogs.yahoo.co.jp/mayu_kokoronohoshi  (原作の大原まゆさんの公開ブログ)

9月15日北海道先行公開
9月29日(土)よりバルト9ほか全国ロードショー



『ディテクティヴ』UNTIL DEATH

監督:サイモン・フェローズ
脚本:ダン・ハリス、ジェームス・ポートルース
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム(アンソニー・ストウ)、セリーナ・ギルズ(妻ヴァレリー)、スティーヴン・レイ(キャラハン)、ウェス・ロビンソン(チャド)、マーク・ダイモンド

ニューオリンズの背徳と暴力の街、フレンチクォーター。 かつては正義感の強い麻薬捜査官だったアンソニーは、ドラッグに溺れ、 妻ヴァレリーとの仲もうまくいかず、ダーティな刑事になりさがっていた。 アンソニーが執拗に追うのは同僚だったキャラハン、 今やドラッグマフィアとして頭角を現していた。 キャラハンとの取引に潜入捜査官を送り込み、逮捕するかとみえたとき 狡猾なキャラハンは逃亡、銃撃戦で部下は殉職してしまった。 アンソニーはますます署内で白眼視されていった。

今までのマッチョなジャン=クロード・ヴァン・ダムではありません。 こけた頬に暗い眼差しの彼に「ダーティ・ハリー」を思い出しました。 細身の身体を革ジャンに包み、居場所がなく街をさまよっては娼婦を脅すアンソニー。 自分はドラッグに溺れながら、定年間際の同僚を密告したりもします。 落ちてゆくさまと苦悩の中から再生していくストーリーがよくできていて、 引き込まれました。 ヴァン・ダムだけでなく敵役のスティーヴン・レイはじめ脇役も良く、 思わず「面白かったですね」と、一緒に試写を観た方と言い合ってしまいました。(白)

2006/アメリカ/カラー/35mm/シネスコ/ドルビーデジタル/106分
http://www.detective-movie.jp/

9月29日(土)より銀座シネパトスほかにてロードショー
(c)2006 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GmbH & Co. KG All Rights Reserved.



『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』原題:LA VIE EN ROSE

監督・脚本・脚色:オリヴィエ・ダアン
脚色:オリヴィエ・ダアン、イザベル・ソベルマン
撮影:テツオ・ナガタ
音楽:エドワール・デュポワ
美術:オリヴィエ・ラウー
出演:マリオン・コティヤール(エディット・ピアフ)、シルヴィエ・テステュー(モモーヌ)、パスカル・グレゴリー(ルイ・パリエ)、エマニュエル・セニエ(ティティーヌ)、ジャン=ポール・ルーヴ(父ルイ・ガション)、クロチルド・クロー(母アネッタ)、ジャン=ピエール・マルタンス(マルセル・セルダン)、ジェラール・ドパルデュー(ルイ・ルプレ)ほか

愛に生きた世界の歌姫 涙と喝采の物語

1915年、第一次世界大戦中のパリでエディット・ジョアンナ・ガションは生まれた。 大道芸人だった父は戦地に行ったまま。 歌手を目指していた母は道端で歌って日銭を稼いでいた。 3歳のエディットは娼館を営む祖母に預けられ、娼婦たちに可愛がられるが、 復員してきた父に連れられて各地を回る生活を送る。そのうち人前で歌うようになり、 父から独立し親友のモモーヌとパリへ戻る。 路上で歌っているエディットを見出したのは、名門クラブのオーナー、ルイ・ルプレ。 彼はガションの姓をピアフ(雀)と変えて、自分のクラブでデビューさせた。 エディット・ピアフは一躍人気歌手となる。


(c) 2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION OKKO PRODUCTION s.r.o.-SONGBIRD PICTURES LIMITED

エディット・ピアフの顔は浮かばなくとも、代表曲「愛の讃歌」や 「バラ色の人生」は耳に残っているでしょう。 貧困の中で天賦の才能を花開かせ、豊かな感性で詩を書きドラマを歌い上げた歌手です。 そのピアフの10代から47歳で息を引き取る瞬間までを、渾身で演じているのは マリオン・コティヤール。『TAXi』シリーズ、『ロング・エンゲージメント』、 『プロヴァンスの贈りもの』に出演しています。 今までの役の片鱗も見せず、発声や息遣いまで研究し、ピアフになりきった彼女に拍手。 この作品を観て日本の歌姫、美空ひばりを思い出しました。 同じように歌を愛し、人を愛し病に倒れたひばりさん。漢字では「雲雀」ですねぇ。 「愛の讃歌」もカバーしています。(白)

2007/仏・チェコ・英合作/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル、dts/140分/翻訳:古田由紀子
提供:ムービーアイ・エンタテインメント×東宝×テレビ東京×朝日新聞社
配給:ムービーアイ
宣伝:アルシネテラン

http://www.piaf.jp/

9月29日(土)より、有楽座ほか全国ロードショー



2007年10月6日〜

『ローグ アサシン』ROGUE ASSASSIN

監督:フィリップ・G・アトウェル
脚本:リー・アンソニー・スミス、グレゴリー・J・ブラッドリー
撮影監督:ピエール・モレル
アクション演出:コーリー・ユエン
音楽:ブライアン・タイラー
日本版主題歌:「ストロングスタイル」KREVA
キャスト:ジェット・リー(ローグ)、ジェイスン・ステイサム (ジャック・クロフォード)、ジョン・ローン( リー・チャン)、石橋凌(シロー・ヤナガワ)、デヴォン青木(キラ)、サン・カン(ゴイ)、マーク・チェン(ウー・チー)、ケイン・コスギ(ヤクザ)ルイス・ガスマン(ベニー)ほか

サンフランシスコでは様々な人種による抗争が続いていた。 FBI捜査官の ジャック・クロフォードとトム・ウィンは、 抗争の裏で暗躍している伝説の殺し屋「ローグ」を追っていた。 埠頭でジャックが撃たれたが、トムはローグと思しき男を追い詰め銃弾は顔に命中する。 男は夜の海に落ちたまま死体は上がらなかった。 数日後、何者かにトムの一家が惨殺されてしまう。 ジャックはローグがいつも現場に残すチタンの薬莢を発見、 親友を殺したローグへの復讐を心に誓う。 そして3年後、クラブにいたヤクザたちが黒尽くめの男に殺される。 駆けつけたジャックは、そこにトムの家に残されていたものと同じ薬莢を見つける。 ローグは戻ってきた。

ジェット・リーとジェイソン・ステイサムは2001年の『ザ・ワン』以来の共演。 その後順調にハリウッドでの地位を築いてきましたね。全部は観ていませんが、 今までになかった役じゃないでしょうか。 FBIのジャッ クが復讐に燃えて殺し屋を追っていくのが芯のストーリーですが、 チャイニーズ・マフィアとジャパニーズ・ヤクザの、血で血を洗うが如き抗争がからんでいるので、 人が死ぬ死ぬ・・・。それもひどく痛そう。熱い戦いに水をさすのが、 日本語と日本語で書かれた看板や幕。日本語がわからなければ、ただの音であり記号なわけで、 何の問題もないのでしょうが、日本人が観るとそっちへ意識が行ってしまいます。
ジェット・リーが表情ひとつ変えず、冷徹に戦うシーンは満載です。 ケイン・コスギとのバトルをもう少し観たかった。(白)

2007/アメリカ/カラー/1時間43分/スコープサイズ/ドルビーデジタル/
製作:フィアーズ・エンタテインメント共同製作:ライオンズ・ゲート
配給:アスミック・エース=東映
(C) 2006 Lions Gate Entertainment, All right reserved.
http://www.rogue-assassin.com/

10月6日(土)より全国ロードショー



『私の胸の思い出』原題:天性一對

監督:ロー・ウィンチョウ
製作:ジョニー・トー
脚本:アイヴィー・ホー
原作:「哀悼乳房」シー・シー(西西)著
音楽:ベン・チョン
出演:ミリアム・ヨン(ビンゴ)、リッチー・レン(ヴィー)、ジョー・コク(ワイ)、ジャスティン・ロー(シンピン)、ラム・ガートン(モク)、マギー・シュー(女医)ほか

なんで、私なの?神様お願い、私の胸を取らないで・・・。

広告会社でバリバリ仕事をこなすビンゴは、30歳独身。 特定の彼氏はいないが、いわくありげなポケベルを大事にしている。 友達と訪れた店で知り合ったヴィーを自宅へあげていいムードになったとき、 左の乳房に“しこり”があると指摘される。 思いがけないことにうろたえ、ヴィーを追い出したものの、彼に紹介された医師を訪ねてみるビンゴ。 「しこりの80%は良性」との説明に望みを託すが、検査の結果は悪性で左乳房切除をすすめられる。 表向きは明るくふるまっていたが、手術の決心がつかず「結婚もしたい、子供も産みたいのに」 と気は沈むばかり。悶々として仕事もうまくいかないビンゴを、 精神科医のヴィーは気にかけなにかと世話を焼くが、彼女は素直に頼ることができない。



(C)Media Asia Films (BVI) ltd

—香港からピンクリボンを応援する、切なくも心温まる映画が届きました—

初めて香港映画を観る方がいたとしたら、この“幕の内弁当状態”エンターテイメントに驚かないでね、 と先に申し上げておきます。これ、普通ですので(笑)。 女の子たちの会話は過ぎるくらいに元気、キャリアウーマンの敵も出て来ますし、 乳がんの告知を受けた悩みも苦しみも描かれていますが、コメディ色もたっぷりです。 一足早く公開される、乳がんをテーマにした邦画とはずいぶん違うのはお国柄。 香港映画に慣れた方々は、人気歌手&俳優のミリアム・ヨンとリッチー・レンのカップルに新鮮味を感じるでしょう。 エンディング・テーマはこの二人がデュエット。 映画初出演のシンガーソングライター、ジャスティン・ローの挿入歌もいいです。 今回はプロデューサーの“ジョニー・トー組俳優”の出演にニヤリ。 ロー・ウィンチョウ監督はこれまでジョニー・トーのもとで編集に携わってきて、 これが初(単独)監督作品です。 乳がんを自己発見するための方法も映画の中で説明されていますので、お試しください。(白)

2006/香港/カラー/98分/ビスタ/ドルビーSRD/
配給・宣伝:ユナイテッド エンタテインメント
http://www.pink-ribbon-movie.jp/

10月6日(土)よりシネマート新宿、シネマート六本木ほか、幸せになるロードショー

★「ピンクリボン」は、乳がんの早期発見・診断・治療の大切さを伝えるシンボルマークです。 1980年代のアメリカで発足し、日本では2000年代になって知られるようになりました。 アメリカでは女性の8人に1人、日本では20人に1人が乳がんになると言われています。 2006年に乳がんで亡くなった女性は1万1千人を越え、年々増えています。 女性の壮年層(30〜64歳)のがん死亡原因の第1位となっています。 10月は乳がん月間です。東京、神戸、仙台でピンクリボンフェスティバルが行われるなど、 各地で運動が展開されます。
http://www.asahi.com/pinkribbon2007/

★『私の胸の思い出』公開記念プレゼントを先着順で3名様に!!!
詳細はこちら



『白い馬の季節』原題:季風中的馬

監督・脚本:ニン・ツァイ
製作:ナーレンホア、フォ・ビンホア
撮影:ジョン・リン
音楽:オラ−ントゲ
出演:ニンツァイ(ウルゲン)、ナーレンホア(インジドマ)、チャアン・ランティエン(ツァオ)

内モンゴルの草原は長く続く旱ばつのため砂漠化していた。 牧草も枯れ果てて、ウルゲンの家に残った数少ない羊たちも毎日のように餓死していった。 1人息子のフフーの学費を捻出するため、妻のインジドマはただ一頭残った白馬のサーラルを売るほかない、 と夫に訴える。ウルゲンにとって、愛馬を手放して街に移るのは遊牧民の誇りを捨てるようなもの。 最後の望みとかつての牧草地まで行くと、そこは保護区に指定されていた。 鉄条網を破ろうとしたウルゲンは、漢族の男たちに袋叩きにあい、警察に連行されてしまう。 罰金を支払うため、ついに愛馬サーラルを手放す日がやってくる。

この作品が監督デビュー作のニンツァイと、公私にわたるパートナーのナーレンホアは 『天上草原』(02年/マイ・リースー監督)で夫婦役を演じています。 男っぽい風貌のニンツァイ監督は、自身も内モンゴルの遊牧民の出身、 この作品には監督の積年の思いがつまっているのでしょう。
ウルゲンは草原で生まれ育ってきて、時代とともに変わってゆく暮らしについてゆくことができません。 頑なに草原に残ろうとしますが、それでは生きていけるはずもありません。 一方、一輪の可憐な花のようなナーレンホア演じるインジドマは、たおやかですが芯が強く、 何より家族を大切に思っています。暮らしていくための才覚もあり、 この人がいれば大丈夫だろうという安心感を感じさせました。 布で飾られ、歌で送られる老いた馬は風に吹かれて去っていきます。 消えつつある民族の生活とウルゲンのようで、哀切でした。(白)

2005年ハワイ国際映画祭NETPAC賞受賞
2005年ロッテルダム国際映画祭正式出品
2006年東京国際女性映画祭出品


2007/中国映画/ビスタサイズ/ドルビーSR/105分/モンゴル語
配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ
配給協力・宣伝:グアパ・グアポ

10月6日(土)より岩波ホールにてロードショー



『パンズ・ラビリンス』

監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナバロ
音楽:ハビエル・ナバレテ
美術:エウヘニオ・カバレロ
特殊効果:カフェFX
出演:セルジ・ロペス(ビダル)、マリベル・ベルドゥ(メルセデス)、イバナ・バケロ(オフェリア)、ダグ・ジョーンズ(パン/ベルイマン)、アリアドナ・ヒル(カルメン)ほか

1944年スペイン。フランコ軍事政権下の自由なき暗黒の時代。オフェリアの父は内戦で亡くなり、母は独裁者フランコに心酔するビダル大尉と再婚する。母のおなかの子を男と決めつけるビダルは、戦地へ母子を呼び寄せるが、母は長旅がたたって衰弱していくばかり。オフェリアは冷酷さが垣間見えるビダルを好きになれず、孤独と不安にかられるが心から頼れる人もいない。森をさまよって足を踏み入れてしまった ラビリンス(迷宮)で、パン(山羊の姿をした牧神)に出会う。驚くオフェリアにパンは「あなたは魔法の国のプリンセスに違いない。それを証明するには三つの試練を克服しなければならない」と告げるのだった。

暗い画面に展開される、現実と幻想を行きつ戻りつするストーリーは、観ているほうもオフェリアと同じ不安な気持に引きずり込みます。義父のビダルの残忍さを見せるシーン(半分目つぶってました)や、対抗するゲリラ組織との攻防の組み入れ方も巧みです。ラビリンスやパンの造形が素晴らしく、アカデミー賞で美術賞を受けています。おすすめのダークファンタジー。
ギレルモ・デル・トロ監督は特殊メイクから映画界に入った人。日本のコミックのファンだそうで、ほかの監督作は『ヘルボーイ』、『ブレイド2』などホラー、サスペンスがお得意なんでしょうか。この作品も全てが遺憾なく発揮されています。外見がピーター・ジャクソン監督と似ています。いつかアカデミー賞制覇なるか?(白)

幼い少女にはあまりに暗く厳しい現実世界。それから逃れるための儚い夢だったのか、はたまた輝かしい栄光の玉座にたどり着いたのか。観る人によって、あるいは観たときによって、それぞれ解釈が違うであろうラストシーンが非常に印象深く、味わいのあるファンタジー作品です。でも、小さい子には相当怖いかも。(梅)

2006/スペイン・メキシコ/カラー/119分/ヴィスタ/SRD/PG-12
配給:CKエンタテインメント

公式 HP >> http://www.panslabyrinth.jp/

★ 10月6日(土)より、恵比寿ガーデンシネマほかロードショー


『ナルコ』NARCO

監督・脚本:トリスタン・オリエ、ジル・ルルーシュ
製作:アラン・アタル
撮影:永田鉄男
音楽:セバスチャン・テリエ
出演:ギョーム・カネ(ギュス)、ザブー・ブライトマン(パム)、ブノワ・ポールヴールド(レニー)、ギョーム・ガリエンヌ(ププキン)、フランソワ・ベルレアン(ギィ)、ジャン=ピエール・カッセル(ケヴィン)、ジル・ルルーシュ(ツイン・スター)、ジャン=クロード・ヴァンダム

ギュスは子供のころから「ナルコレプシー」という病気を抱えている。 ストレスに会うと、いつでもどこでも眠りに落ちてしまうのだ。 でもハイスクールのプリンセスと憧れたパムと結婚し、40年のローンを組んで郊外に家も持った。 夫婦にパムの連れ子のケヴィン、ギュスの父親の4人での幸せな暮らしができるはずだったのだが。 病気のおかげで仕事はどれも長続きせず、妻の収入に頼る有様。 昏睡状態のときに見る夢の中では、いつだってヒーローなのに・・・。 昔から絵を描くことが得意だったギュスは、夢のストーリーをコミックにすることを思いつく。 我慢の限界にきたパムのすすめでセラピーに参加した彼は、 自分の夢の話が喜ばれたことでちょっと自信を取り戻す。 洗濯室の片隅で、ギュスは夢中でコミックを描き始めるのだった。

『マイ・プライベート・アイダホ』でのリヴァー・フェニックスがこの病気という設定でしたね。 1000人に1人くらいの割合で発症するのだそうで、 現在は薬での治療や生活指導などによりかなり改善できるようです。 この作品の主人公ギュスは、病気のために子供のころから周りから軽んじられたり、 失職したりしてやる気を失っています。笑顔がとってもいいですが、体型も着ているものもゆるゆる〜。 これが『戦場のアリア』の軍服姿も麗しいギョーム・カネだとは! 役作りのために10kg増量だそうです!
周りに濃〜いキャラを配して笑わせながら、 夢と現実のドラマをテンポ良くナレーションでつないでいく手腕は、長編第1作の監督とは思えません。 コミックという目標を見つけたギュスにはまだ悲劇が襲いかかり、 これをどうやって〆るのかぜひ劇場でご覧ください。 音楽も軽快♪ ジャン=クロード・ヴァン・ダムが本人役で、 ジル・ルルーシュ監督も俳優として登場。(白)

2004/フランス/35mm/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/105分
配給問い合わせ:ロングライド

★劇場窓口で特別鑑賞券(¥1400)お買い上げの方に特製色鉛筆プレゼント中。

初日2日目来場者プレゼントもあり。
詳しくはHPで http://narco-movie.jp/

10月、ユーロスペース、吉祥寺バウスシアターにてロードショー



『北極のナヌー』

監督・カメラ:アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン
製作:キーナン・スマート、アダム・リープツィグ
音楽:アレックス・ワーマン
ナレーション脚本:リンダ・ウルバートン、モス・リチャード、クリスティン・ゴア

日本語版ナレーション:稲垣吾朗
主題歌:手嶌葵「奇跡の星」
出演:白くまのナヌーほか、北極の動物たち

北極の氷が地球温暖化の影響で、今までにないスピードで減少しています。 後30年後にはこの広大な氷の大陸がなくなってしまうと言われています。 そんな中で白くまのナヌーは生まれました。 6ヶ月間暮らした雪穴から離れ、母親と弟と一緒に餌を求めて移動する暮らしが始まります。 溶けてゆく氷の上での狩りは難しく、猛烈なブリザードにも襲われます。 厳しい自然の中、早くひとり立ちをしなければならなかったナヌーと、 彼女が出会っていく北極の生きものたちを丹念に追った作品です。

構想から10年間に及ぶ撮影、危険と隣り合わせで撮った貴重なシーンは必見です。 800時間分ものフィルムの編集に20ヶ月かかったそうです。 ほかにいくつもの物語ができそうですね。 ナレーション脚本に『不都合な真実』のアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領の娘クリスティンが参加しています。 この映画を観た後、もう一度ゴア氏の言葉を思い出し、 すぐ自分ができることを始めてみてはいかがでしょうか? あ、ずっと続けていました?(白)

2007/アメリカ/カラー/84分/ドルビー/アメリカンビスタ

提供:コムストックグループ
配給:松竹
宣伝:マジックアワー

http://www.nanu.jp/

10月6日(土)より、シネマGAGA!ほか全国ロードショー



2007年10月13日〜

『ふみ子の海』

監督:近藤明男
脚本:篠原高志
エグゼクティブプロデューサー:本間信行
音楽:沢田完
原作:市川信夫『ふみ子の海』(理論社刊)
出演:鈴木理子(子役)、藤谷美紀、遠野凪子、遠藤憲一、山田吾一、高松あい、尾崎千瑛(子役)、あおい輝彦、中村敦夫、宮路オサム、平田満、水野久美、高橋長英、高橋恵子

昭和のはじめ、貧しさゆえに、その瞳から光を奪われた少女ふみ子。眼が見えなくても読める文字、点字の存在を知り盲学校への進学を希望するが、女に学問は不要という風潮の強い時代である。病身の母の苦悩を知りふみ子はあんまへの道を選んだ。つらく厳しい修行の日々。しかし、いつも母と行った海のキラメキを胸に、希望を忘れず前向きに生き、ヘレン・ケラーの自伝と運命的に出会う。

この作品は、新潟県の高田盲学校で教鞭をとり、生涯を視聴覚障害者に捧げた粟津キヨさんの少女時代を描いた実話。粟津さんはあんまの修行ののち、盲学校へ入り、東京女子大学を卒業した。
その前向きに生きる生き方に感銘を受けると共に、少女を演じた鈴木理子、あんま宿のおかみを演じた関根恵子はじめふみ子を支える大人たちの演技が光る。2時間近くの映画だが、歯切れのよい演出で一気に見てしまう。清潔感と女性への優しさに満ち、一人の女性が学問を続けるには本人の努力はもちろん、いかに回りの大人たちの支えが大切かを感動的に教えてくれる作品。ハンカチを持っていってくださいね。(海)

2006年/日本/105分
後援:新潟市 上越市 柏崎市 支援:文化庁 製作:C.A.L.
配給:パンドラ シネマ・ディスト
厚生労働省 推薦

公式 HP >> http://www.fumikonoumi.com/

★10月13日(土)より、シネスイッチ銀座にてロードショー


『カンフー無敵』

監督:イップ・ウィンキン
脚本:エディ・チウ、タム・ワイ・キット
出演:ヴァネス・ウー、ラム・ジーチョン、ブルース・リャン、チャン・クォックワン、ティン・カイマン、リー・フィほか

1940年代の上海、富と名声を求める人々が集まる街。光の影にある闇の中では、マフィアの抗争が繰り広げられていた。故郷の家も母もなくした若者リク(ヴァネス・ウー)は、まだ見ぬ父を捜し求めて、この街に足を踏み入れる。超人的な力を持つという父親は、きっとこの街にいるに違いない。リクも同じ力を受け継いでいたが、まだコントロールすることができなかった。賭博場で同郷だというファッ(ラム・ジーチョン)と仲良くなるが、ファッが偽札を使ったせいでマフィアに追われるはめになってしまった。大立ち回りを演じた食堂でリクは気を失い、親切に介抱される。食堂へ弁償するためリクは人力車をひき、クラブの歌姫ロンイー(エマ・ウォン)に出会う。

(C)2006 My Way Film Co.,Ltd

台湾の人気アイドルグループ“F4”のメンバー、ヴァネス・ウーが2003年の『スター・ランナー』に続き、またまた本格カンフー映画挑みました。武術指導出身(日本公開作は『少林キョンシー』2004)のイップ監督の厳しい注文に応え、アクションをたっぷり見せています。すずしげな容貌ですが、この映画では文字通り「熱い」です。
『少林サッカー』(2001)、『カンフーハッスル』(2004)でもおなじみのチェン・クォックワン、ティン・カイマンが敵対するマフィア役です。ストーリーは一昔前の香港映画のようで、とっちらかっていますが(笑)、ヴァネスの熱演に加え、食堂のおやじさん役のブルース・リャンと、アクション指導をしているルイス・ファンが、力強いカンフーを見せています。(白)

2006年/香港/カラー/103分
配給:日本スカイウェイ n.s.w.

★10月、シアター・イメージフォーラムにてロードショー


2007年10月20日〜

『クワイエットルームにようこそ』

監督・脚本・原作:松尾スズキ
撮影:岡林昭宏
美術:小泉博康
音楽:門司肇、森敬
出演:内田有紀(佐倉明日香)、宮藤官九郎(鉄雄)、蒼井優(ミキ)、りょう(ナース江口)、妻夫木聡(コモノ)、大竹しのぶ(西野)、平岩紙(ナース山岸)ほか

佐倉明日香28歳、職業フリーライター。目がさめると白い部屋のベッドに寝ていた。5点拘束されて身動きがとれず、なぜここにいるのかも思い出せない。ナースの江口がやってきて「アルコールと睡眠薬の過剰摂取で昏睡状態になり、丸二日間目覚めなかった」と告げる。ここは精神病院の女子閉鎖病棟、この部屋は「クワイエットルーム」と呼ばれていると、若い拒食症患者のミキに教わった。なぜ自分が?と納得できない明日香だが、主治医と保護者である明日香の同棲相手、鉄雄の同意がないと退院はできない。さまざまな事情を抱えた患者たちとのめくるめく14日間が始まった。

内田有紀は9年ぶりの映画復帰ですが、濃〜いキャラ揃いの中でも埋もれません。恋人役の宮藤官九郎も、情けないながらとことん優しい男を、歯を汚しながら(笑)演じています。妻夫木聡、大竹しのぶは振り切っちゃっていますし、ナースのりょうさん、拒食症役の蒼井優ちゃん、「大人計画」の面々など、出てくるキャラ1人ひとりに物語がありそうで、サイドストーリーを見てみたい気がします。病院の中で生きているあの人この人も、今、病院じゃない「シャバ」にいる人とそんなに変わらないよねと思えます。底まで行っちゃって沈んでいる人もなんだか元気になれそうな映画でした。塚本晋也監督、庵野秀明監督は俳優として、『オズの魔法使い』もそこかしこに登場します。(白)

2007/日本/カラー/
配給:アスミック・エース
http://www.quietroom-movie.com/
(C)「クワイエットルームにようこそ」フィルムパートナーズ

10月20日(土)〜シネマライズ、新宿ジョイシネマほか全国ロードショー



『ヘアスプレー』原題:HAIRSPRAY

監督:アダム・シャンクマン(『ウェディング・プランナー』『ウォーク・トゥー・リメンバー』)
出演:ジョン・トラヴォルタ、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、クイーン・ラティファ、ザック・エフロン、ニッキー・ブロンスキー、ブリタニー・スノウ、アマンダ・バインズ他

トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)は、テレビの人気ダンス番組「コーニー・コリンズ・ショー」が大好きな女子高生。 今日もヘアスプレーでばっちり髪を固めて、歌いながら学校へ。 夢は、いつしか自分もテレビに出演して、憧れの同級生リンク(ザック・エフロン)と一緒に踊ること。 太っててチビだなんてことは気にしない。 授業のときも夢うつつで、居残りを命じられてしまう。 でも、その居残りの教室で、トレーシーは、独特のステップを踏む黒人たちと出会って心躍らせる。 ある日、番組レギュラーのオーディションがあることを知ったトレーシー。  巨漢の母親(ジョン・トラヴォルタ!!)には反対されるも、 父親(クリストファー・ウォーケン)に「夢を追ってビッグになれ」と励まされて、 学校をさぼってオーディションに...。

舞台は、1960年代初頭のボルチモア。黒人たちが人種分離政策に反対して、 公民権運動に立ち上がっていた頃のこと。「コーニー・コリンズ・ショー」では、 1ヶ月に一度、黒人デーがあるのだが、白人至上主義者のプロデューサーのベルマ (ミシェル・ファイファー)は、黒人デーなど廃止してしまえと豪語する。 一方、リンクは、黒人デーは廃止して、白人黒人一緒に番組を盛り上げようと主張する。 トレーシーも、親しくなった黒人の友人たちと共に人種差別反対デモに参加してしまう勇敢さ。


TM & (C) MVII New Line Productions,Inc.All Rights Reserved.

本作のオリジナルは、ジョン・ウォーターズ監督の『ヘアスプレー』(1988年)。 その後、2002年にブロードウェイでミュージカル化され、 「ヘアスプレー現象」と呼ばれるほどの大ブームに。 シャンクマン監督は、オリジナル映画のコメディの要素とミュージカルの楽しさを盛り込んで、 本作を完成させたという。

なんといっても見物はトラヴォルタの巨漢ママ。もう、笑わずにはいられません。 でも、ニッキー・ブロンスキー演じる太っちょのトレーシーも忘れられないキュートさ。 トレーシーが憧れるリンクも、60年代の雰囲気たっぷりでクール。 楽しさいっぱいのエンタテイメント・ムービーながら、 人種差別問題もしっかり考えさせてくれる一作。(咲)

≪『ヘアスプレー』ジャパンプレミア 舞台挨拶≫
10月4日、渋谷C.C.レモンホールで行われたジャパンプレミアで、ニッキー・ブロンスキー、ザック・エフロン、アダム・シャンクマン監督の3名が、満員の観客を前に舞台挨拶を行いました。ニッキー・ブロンスキーは、6ヵ月にわたるオーディションを経て選ばれたシンデレラガール。「選ばれた瞬間に私の人生は変わりました。夢は必ず叶いますから諦めないで!!」という言葉が印象的でした。
ポップな音楽のブロードウェイミュージカルを経て、『ヘアスプレー』の二度目の映画化!
主演は、『グリース』のジョン・トラボルタ。ヒロインのトレーシーは、ニッキー・ブロンスキー。コールドストーンというアイスクリーム屋で働いていた彼女、NYの式典で歌を披露していました。また、ディズニーチャンネルで人気の「ハイスクール・ミュージカル」のザック・エフロンがヒロインの恋人役で出演しています。特に“You Can't Stop The Beat”は題名通り踊り出したら止まらない音楽が必見です。随所に60年代アメリカンテイストが散りばめられていて、心地よい幸福感に浸れる作品です。(池畑)

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2007年/アメリカ/116分/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル

★2007年10月20日(土)丸の内プラゼール他 全国松竹・東急系にてロードショー

公式HP>> http://hairspray.gyao.jp/



『ヒートアイランド』

監督:片山修
脚本:サタケミキオ
原作:垣根涼介「ヒート アイランド」(文藝春秋)
出演:城田優(アキ)、木村了(カオル)、北川景子(ナオ)、小柳友(ジュン)、浦田直也(タケシ)、鈴木昌平(サトル)、松尾スズキ(折田)、細川茂樹(桃井)、伊原剛志(柿沢)ほか

アキ、カオル、ナオ、ジュン、タケシ、サトルの6人からなる”ギルティ”は、渋谷でファイトパーティを主催している。ドラッグや窃盗には手を出さない約束を破って、タケシとサトルが、いかにも怪しげなボストンバッグをかっぱらってきた。そして中を見るとものすごい大金が入っていた。リーダーのアキはやばいことになったと直感する。アキの心配通り、その金はプロの強盗団が関西ヤクザの経営するカジノから奪った金だった。強盗団も関西ヤクザも、ファイトパーティの上がりを狙う地元のヤクザや、南米マフィアまでがその金を血眼になって探していて、気がつけば争奪戦のど真ん中に立たされていた。このままじゃ、殺される… アキたちはイチかバチかの作戦に出る。

一見お馬鹿なように見えて、実は切れ者で度胸も満点なアキ。濃い面々の大人たちが欲望丸出しで襲いかかるのを、するりするりとかいくぐり、これはなかなかワクワクするものがあります。そのアキの前に立ちはだかるのがプロの強盗である柿沢。二人の出会いが、また新たな物語を生み出していきそうです。
城田優、木村了は『ワルボロ』や「花ざかりの君たちへ イケメン★パラダイス」などに出演している注目の若手。伸び盛りです。6人の若いメンバーを大人たちが演技の面で支えているのも楽しく観られる一因。豊原功輔、近藤芳正らのこゆ〜いヤクザや、パパイヤ鈴木、谷中敦の怪し〜いブラジル人にもご注目あれ。(梅)

2007年/日本映画/カラー/ヴィスタ/ドルビーSR/106分/PG12
製作:「ヒート アイランド」製作委員会
制作プロダクション:タイガーチャイルドピクチャーズ(IMJ-E) ツインズジャパン
配給:ザナドゥー

公式 HP >> http://heatisland.jp/

★10月20日(土)、シネセゾン渋谷ほかにて全国ロードショー


2007年10月27日〜

『アフロサムライ』

監督:木?ア文智
脚本:山下友弘、むとうやすゆき、Derek Draper(英語版)、Chris Yoo(英語版)
原作:岡崎能士
音楽:The RZA
アニメーション制作:GONZO
キャスト:サミュエル・L・ジャクソン(アフロ)、ケリー・フー(お菊)、ロン・パールマン(ジャスティス)

一番、それは神となるハチマキ。 二番、それは神に近づくハチマキ。

刀と銃と暴力が横行する無秩序きわまりない世界に、復讐を誓った一人の侍がいた。彼の名前はアフロ(声:サミュエル・L・ジャクソン)、額に巻かれたハチマキには「二番」の文字が刻まれている。この世界では、二番を持つ者だけが、一番ハチマキを持つもの、すなわち世界一の剣客(=神)と戦えるという掟があり、二番強奪を企む輩にアフロは常に命を狙われる。そして彼もまた、幼い頃父親を殺した一番ハチマキの持ち主を目指して旅をする、一人の剣客であった。
ロケット弾を放つ「六太郎」、アフロの剣術データをメモリしたロボット「アフロドロイド」、アフロの昔なじみらしいかぶりものの「クマ侍」等等、無無坊主が次々と送り込む剣客の数々に、果敢に挑むアフロサムライ。彼ははたして、父親の復讐を果たすことが出来るのだろうか?

2006年/日米共同制作/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/116分
サウンドトラック:ビクターエンタテインメント
製作:Spike TV/Bushwazee Films/フジテレビ/GONZO/電通/サムライプロジェクト
協力:ポニーキャニオン
配給:トルネード・フィルム

10月27日(土)、シネマライズにて“日本凱旋”ロードショー!

公式 HP >> http://www.afrosamurai.jp/



『ゾンビーノ』  原題:Fide

監督・脚本:アンドリュー・カリー
脚本・原案:デニス.ヒートン
出演:キャリー=アン・モス、ビリー・コノリー、ディラン・ベイカー、クサン・レイ、ヘンリー・ツェーニー、ティム・ブレイク・ネルソン

とある時代、地球が放射能の雲で覆われ、世界中の死体が甦ってゾンビとなって人間を襲い始め、世界は恐怖に包まれた。この危機を救ったのは、安全保障会社ゾムコン社の開発した特殊な首輪。この首輪さえつけておけば、ゾンビは人間に従順になるのだ。かくしてゾンビは、家事労働など何でもやってくれる便利なペットとして一家に一匹(一人)の時代を迎える。のどかな田舎町ウィラード。少年ティミーの家は、近所で唯一ゾンビを飼っていない家だったが、隣にゾムコン社の有力者が引っ越してきて、ゾンビを見せびらかされたママは、パパの反対を押し切って、ついにゾンビを買ってくる。ティミーをいじめる悪ガキどもをゾンビがやっつけてくれたのを機に、ティミーはゾンビにファイドと名付けて、仲良しになる。そんなある日、ファイドが近所の口うるさいおばあさんを食べてしまう...。

ゾンビというと怖いホラーを連想していましたが、これはなんともユーモラスで、一見のどかな物語。首輪をしていれば従順なゾンビも、それが外れると暴れだすし、ウィラードの町は、金網に囲まれていて、その外には恐ろしいゾンビが金網を破ろうとして取り巻いているのです。 権力を振りかざすことの虚しさ...そんなことを感じた一作でした。それと、家族の絆の大切さ! 一昔前のアメリカのホームドラマを観ているようでもありました。(咲)

2006年/カナダ/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/93分

配給:ショウゲート

★第20回東京国際映画祭特別招待作品 10月21日(日)18:20〜

★10月27日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次ロードショー

公式HP>> http://www.zombino.jp



『自虐の詩』

監督:堤幸彦
脚本:関えり香・里中静流
原作:業田良家「自虐の詩」(竹書房刊)
主題歌:安藤裕子「海原の月」
出演:中谷美紀(森田幸江)、阿部寛(葉山イサオ)、遠藤憲一(あさひ屋マスター)、カルーセル真紀(福本小春)、西田敏行(森田家康)、名取裕子(美和子)、竜雷太(組長)、ミスターちん(難波警部)、金児憲史(船場巡査)、松尾スズキ(中年男)、佐田真由美(幸江の母)、蛭子能収(新聞販売店主)、アジャ・コング(熊本さん)、Mr.オクレ(喫茶店主)、島田洋八(ポン引き)、斉木しげる(訪問販売の男)

不運と貧乏を絵に描いたような幸江と元ヤクザで無口な乱暴者のイサオは、大阪のアパートで一緒に暮らしている。気に入らないことがあるとすぐにちゃぶ台をひっくり返し、酒乱で警察のお世話になることも日常茶飯事のイサオ。だが幸江は、隣に住む小春に別れるよう薦められても、パート先のあさひ屋マスターにプロポーズされても、イサオへの想いが揺るぐことはなかった。そんな中、幸江は妊娠するが、転落事故で意識不明の重体となる。生死をさまよう幸江の脳裏には、貧しかった少女時代、荒んだ生活を送っていた頃のイサオとの出逢いが走馬灯のように浮かび上がる。果たして幸江は目を覚ますのか? 幸江とイサオに明るい未来はあるのか?

私の好きなミュージシャンが言った「幸せかどうかなんて、自分にしか決められないだろ?」という言葉を、この映画を観て思い出しました。傍目には不幸せにしか見えなくても本人がよければそれでいい。人にはそれぞれ様々な想い出があり、それを糧に生きている人もいる。そんな不幸なんだけれどちょっと笑っちゃう幸江の人生を、中谷美紀さんが好演しています。彼女の最初のセリフが「おかあちゃん」という問いかけなんですが、まずこの一言で完全にヤラレました。うまい!うまいんです!鳥肌が立ちました。
大阪を舞台にしているだけあって、笑いあり涙ありの人情喜劇。西田敏行さんと遠藤憲一さんとの掛け合いは漫才を見ているようでお見事。そしてちゃぶ台ひっくり返しのスローモーションのシーンは、笑いと同時に芸術を感じました(笑)。(ひ)

2007年/日本/1時間55分/ドルビーデジタル/ヴィスタサイズ
配給:松竹株式会社

公式 HP >> http://www.jigyaku.com/index.html

★ 2007年10月27日(土)より 全国ロードショー


『この道は母へと続く』ITALIANETZ

監督:アンドレイ・クラフチューク
脚本:アンドレイ・ロマーノフ
撮影:アレクサンドル・ブーロフ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
出演:コーリャ・スピリドノフ(ワーニャ)、マリヤ・クズネツォーワ(マダム)、ユーリィ・イツコーフ(孤児院長)、ニコライ・レウトフ(グリーシャ)、ダーリア・レスニコーワ(ムーヒンの母)、デニス・モイセーインコ(カリャーン)ほか

「ほんとうのママに会いたい──」
ロシアとフィンランドの国境近くの極寒の地。 ひときわ貧しい孤児院には、親に捨てられた多くの子供たちが暮らしている。 ここから出るには、家族か養親の迎えを待っているほかはない。
イタリアから一組の夫婦がやってくる。マダムと呼ばれる仲介業者は多額の手数料を取り、 養子縁組がうまくいくと孤児院にもなにがしかの収入となるのだ。 イタリア人夫妻が気に入ったのは、6歳の男の子ワーニャ。 正式な手続きが終わったころ、ワーニャの仲良しだったムーヒンの母親が捨てた息子を探しにくる。 院長に追い返された彼女に話しかけられたワーニャは、 ムーヒンも養子になっていったのだが、今の消息は知れないと答える。
この日から今まで考えもしなかった「ほんとうのママ」が気になってくる。 イタリアに行ってしまってからママが迎えに来るかもしれない・・・。

実話を元にした「母親を探す男の子」の物語です。 「母をたずねて3千里」が浮かびますが、マルコと違ってこのワーニャは、 母親の顔や名前さえ知らないのです。 年長の子供たちに習って字を覚えたワーニャは、 驚くべき行動力で母親を探す旅に出てゆきます。 彼自身の努力と周りの人々の助けで、しだいに母親に近づいていくワーニャが 無事にたどり着いて、と祈るような気持になります。
実際の孤児院でロケをしており、ワーニャと二人の少女以外、孤児院の子供たちだそうで、 ドキュメンタリーのような仕上がりです。 子供を手放さねば自分が生きられないほど貧しい暮らし、 その子供たちの育つ施設の過酷な環境がリアルに描かれていますが、 たくましい子供たちや善意の人々の登場に救われます。 ワーニャが字を覚えて本を拾い読みするシーンがありました。 「ママ」と読めたときの笑顔の良いこと!!(白)

2005年ベルリン国際映画祭少年映画部門グランプリ
2006年アカデミー賞外国語映画賞部門ロシア代表作品
2006年トロント国際映画祭正式出品

2005年/ロシア/カラー/1時間39分/ヨーロピアンヴィスタ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
http://eiga.com/official/konomichi/

10月27日(土)〜Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー



『犯人に告ぐ』

監督:瀧本智行
脚本:福田靖
原作:雫井脩介「犯人に告ぐ」双葉社刊
撮影:芝主高秀
音楽:池頼広
出演:豊川悦司(巻島史彦)、石橋凌(曾根)、小澤征悦(植草)、笹野高史(津田)、松田美由紀(巻島園子)、片岡礼子(杉村未央子)、井川遥(早津名奈)、崔洋一(韮沢キャスター)、石橋蓮司(迫田)ほか

2000年12月31日の新宿。6歳の少年が誘拐され、犯人は母親に現金を持って立っているよう要求した。警視庁の指導のもと、神奈川県警の巻島も現場に張り込んでいたが、約束の時間に犯人は現れず、横浜を次の取引場所に指定したメモが見つかる。県警の曽根刑事部長は、メンツのため警視庁に手を引かせろと巻島に命令し、県警単独の捜査となった。新年のカウントダウンでごったがえす中、巻島は不審者を見つけるが手違いから逃げられてしまう。翌日警察を嘲笑する犯人のメッセージが届き、少年の遺体が発見される。事件の責任を取って巻島は地方転勤となり、6年が過ぎた。
足柄署を検挙率ナンバーワンに押し上げていた巻島に、県警トップへ返り咲いた曽根からの呼び出しがかかる。連続児童殺害事件の捜査責任者として戻れというものだった。

2004年のベストセラーだった同名のミステリーを映画化したものです。『樹の海』で注目された瀧本監督の2作目。初めての刑事役という豊川悦司が、6年前と現在の巻島を演じわけ、おおっと思うほど存在感あり。石橋凌、小澤征悦が絶対上司や同僚になってほしくない嫌な奴を、逆になくてはならない真情あふれる部下を、笹野高史が好演しています。
捜査に行き詰った警察は、TVの報道番組を使って捜査官が犯人に呼びかけるという、奇策を展開していきます。情報があふれかえっていても、近所に住む人の顔もわからないこのごろでは、ありえないとは言い切れません。警察組織やマスコミ内部の人間模様も「ありそう」感いっぱいです。巻島が犯人に呼びかける台詞のかっこ良すぎが気になりますが、トヨエツさんがこっちを見据えて言うと似合います。終わりまで引き込まれました。(白)

2007/日本/カラー/117分/ヴィスタ/ドルビーSRD/
配給:ショウゲート
http://www.hannin.jp/

10月27日(土)より新宿シネマスクエアとうきゅうほか全国順次ロードショー



『アレックス・ライダー』STORM BREAKER

監督:ジェフリー・サックス
脚本:アンソニー・ホロヴィッツ
原作:アンソニー・ホロヴィッツ
「少年スパイ アレックス ストームブレイカー」集英社刊
アクション監督:ドニー・イェン
撮影:クリス・シーガー
音楽:アラン・パーカー
出演:アレックス・ペティファー(アレックス・ライダー)、ユアン・マクレガー(イアン・ライダー)、ミッキー・ローク(セイル)、ビル・ナイ(ブラント)、アンディ・サーキス(Mr.グリン)、ミッシー・パイル(ナディア)、アリシア・シルヴァーストーン(ジャック)ほか

高校生のアレックスは出張がちの叔父イアンと同居している。地味な銀行員だと教えられていたイアンは、実は別の顔を持っていた。帰宅する前に彼の運転する車は空から狙われる。アレックスもついに少年諜報員として任務を果たすことになった。幼いときから射撃、空手、ボクシングなどを仕込まれ、数ヶ国語を話すこともみなそのための準備だったことがわかる。さて初のミッションは・・・。


(C) MMVI Film & Entertainment VIP Medienfonds 4 GmbH & Co. KG

主人公アレックス・ライダーを演じるのは、金髪でハンサムなアレックス・ペティファー。父は俳優、母はモデルという17歳。原作はシリーズものとして人気だそうなので、今後も活躍していきそうです。プレスを全く読まずに本編を観ていたら、アレックスが縄を使うアクション場面がありました。あれあれと見入って、後で確かめるとドニー・イェンがアクション指導でした。なぁーるほどと納得!悪役のミッキー・ロークの老け様に驚き。苦労したんでしょうか。Mr.グリン役のアンディ・サーキスは『ロード・オブ・ザ・リング』のスメアゴル(ゴラム)だった俳優さんです。(白)

2006/ドイツ、アメリカ、イギリス/アメリカンヴィスタ/SRD/93分/
配給:CKエンタテインメント

http://www.alexrider.jp/

10月27日(土)より東劇ほか全国ロードショー



『愛の言霊』

監督:金田敬
脚本:横田理恵
原作:紺野けい子「愛の言霊」(フロンティアワークス刊)
出演:徳山秀典(大谷晋也)、齋藤ヤスカ(立花都)、松岡璃奈子(水沢雪子)、加々美正史(祥吾)

高校の同級生だった大谷晋也と立花都は卒業後同じ大学に進学し、今は一緒に暮らす恋人同士。幸せな日々を送っていたが、ある日、高校の同級生・水沢雪子が二人の前に現れる。立花との仲を疑っていた大谷にとっては面白くない再会だったが、大谷の心配をよそに立花は再会を喜び、水沢は二人との距離を縮めようとする。大谷のイライラは募るばかり・・・

(c)2007紺野けい子・フロンティアワークス/「愛の言霊」Partners

原作は人気のBL(ボーイズラブ)コミック。親友のようであり、兄弟のようでもあるけれど、男女と同じように嫉妬や不安にさいなまれて喧嘩してしまう、二人の微妙な心模様を描いたさわやかな青春映画になりました。わたしは、ときどきくすぐったいような気分になって、直視できないこともありましたが、BL好き、イケメン好きにはよだれものかも。(梅)

2007/日本/72分/カラー/ヴィスタサイズ
製作:トライネットエンタテインメント、フロンティアワークス、ジェネオン エンタテインメント、ビデオプランニング
制作・配給:ビデオプランニング
宣伝:フリーマン・オフィス

公式 HP >> http://aikoto.com/

★10月27日(土)より渋谷Q-AXシネマにてレイトショー
特別記事『愛の言霊』完成披露試写会舞台挨拶レポートもご覧ください。


2007年11月3日〜

『ヴィットリオ広場のオーケストラ』原題:L'orchestra di Piazza Vittorio

監督・脚本:アゴスティーノ・フェッレンテ
出演:
マリオ・トロンコ(イタリア; 音楽監督,フェンダーピアノ ) フシン・アター(チュニジア; ヴォーカル) ペッペ・ダルジェンツィオ(イタリア; バリトンサックス,バスクラリネット)
オマール・ロペス・ヴァリェ(キューバ; トランペット,フルーゲルホーン)
ジョン・マイダ(アメリカ; ヴァイオリン)
カルロス・パス(エクアドル; ヴォーカル,アンデスフルート)
ピーノ・ペコレッリ(イタリア; ダブルベース,エレクトリックベース )
ラウル“クエルヴォ”スチェッバ(アルゼンチン; マリンバ,グロッケンスピエル,コンガ,パーカッション)
ジアド・トラベルシ(チュニジア; ヴォーカル,ウード)

15カ国30人が、映画館「チネマ・アポロ」と街を救うため、民族楽器を武器に立ち上がった...!
新しい音楽が誕生するまでの、情熱の5年間。

ローマ旧市街のヴィットリオ広場。周辺はいつしかアジア、アフリカ、中南米など60以上の移民たちが住む多民族地域と化していた。急速に街が変化していく中、伝統ある美しい映画館「チネマ・アポロ」が閉館されようとするのを知ったピアノ弾きのマリオとドキュメンタリー映画作家のアゴスティーノは、映画館の再生と、多様な民族の相互理解のため、「アポロ11号」のプロジェクトを立ち上げた。それは、ミュージッシャン、知識人、俳優等々、職業も人種も宗教も様々な人たちによるオーケストラを結成して、チネマ・アポロでお披露目公演を開くことだった。
マリオの呼びかけで、インド、アラブ、アフリカ、南北アメリカ、イタリアのミュージッシャンたちが、それぞれの民族楽器を手に集まってきた。彼らが目指したのは、「エスニックミュージック」ではなく、みんなが一緒に奏でる「もうひとつの音楽」。

映画『終着駅』の舞台となったテルミニ駅にほど近いヴィットリオ広場。十数年前にテルミニ駅近くの広場で観光バスの到着を小一時間待たされたことがある。噂に聞いていたジプシーの子どもたちが同じツアーのご老人たちめがけて寄ってきたのを思い出す。
この映画を観て、界隈の商店街が今やほとんど中国人の経営となっていることを知って驚いた。裏に中国マフィアの存在もあるらしい。マリオたちは、住人の多数派となった中国人にもオーケストラへの参加を呼びかけたが、いまだ一人も参加していないそうだ。金儲けには長けていても、楽器を奏でる術を持っている人がいないということなのだろうか。様々な民族楽器が融合して、不思議な音を醸し出すオーケストラに、東アジアから二胡や三味線も加わるときっと面白いと思う。
それぞれが自分の音楽を守りながら、不協和音でなく、さらに素敵な音を作っているように、世界もこんな風に共に生きていけるといいなと思わずにいられなかった。(咲)

2006年/イタリア/90分/35mm/カラー/1.85ヴィスタ/DolbySRD

提供:オンリー・ハーツ/朝日新聞社
配給:オンリー・ハーツ
宣伝:セテラ・インターナショナル
特別協力:イタリア文化会館

★11月3日(土・祝)渋谷 シアター・イメージフォーラムにて公開! 他全国順次ロードショー

公式HP>> http://www.vittorio-hiroba.com



『北京の恋−四郎探母−』原題:秋雨

監督:孫鉄(スン・ティエ)
脚本:シュエ・シャオルー
撮影:スン・ミン
美術:ツイ・レン
音楽:ホアン・シャオチウ
主演:前田知恵(橋本梔子)、チン・トン(ホー・ミン)、ピー・イェンチュン(ホー・チーチュー)、チャン・ハン(チュー・ミャオチュン)

京劇を学びに北京にやってきた日本人の少女橋本梔子(しこ)は京劇役者の青年にホー・ミンに淡い恋心を抱くが・・・。

美しい京劇の調べに乗ってつむぎ出すほろ苦く切ないラブストーリー
NHK「中国語会話」出演中の前田知恵主演

2004/中国/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/98分/
配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ
宣伝:グアパ・グアポ

11月3日(土)より、銀座シネパトスにてロードショー

公式 HP >> http://pekingnokoi.jp/



『鳳凰 わが愛』

監督:ジヌ・チェヌ
脚本:シュン・ジェ
製作:シャーリー・カオ、中井貴一、坂上直行
撮影:モン・シャオチン
音楽:S.E.N.S メインテーマ「Crossing Over」
    挿入曲ワン・イー「鳳求凰」
出演:中井貴一(リュウ・ラン)、ミャオ・プゥ(ホン)、グォ・タォ(リアン)ほか

1920年代の中国。リュウ・ランは恋人を助けるため、ささいな諍いから相手を傷つけ、15年の刑を受けて投獄されてしまった。その間に恋人は同じ男に辱めを受け自殺したのを知る。生きる望みがなくなり、反抗的なリュウ・ランは、懲罰の場で女囚のホンと出会う。彼女は夫の暴力に耐えかね、毒殺したあと夫の子を身ごもったことがわかり、自殺を企てたのだった。人生に絶望していた二人は、しだいに心を近づけていく。脱獄したり為政者が変わったりで、牢獄での生活は30年にもなった。


(C)2007「鳳凰」製作委員会

実話を元に映画化したもの。激動の時代と厳しい自然を背景に、苦難の中で愛を貫いた二人を描いています。中国で鳳凰は蛇と鶏から生まれるといわれています。リュウ・ランとホンの干支がそうだったことから「鳳凰」は二人の愛の象徴となっています。挿入歌「鳳求凰」の通り、お互いをかけがえのない相手として求め合った壮大なラブ・ストーリー。
初のプロデューサーとして、全てのクリエイティブなことに参加しましたと語っていた中井貴一は血気盛んな若者から、白髪の老人までを演じます。ミャオ・プゥも凛として美しいです。(白)

2007/日本・中国合作/カラー/2時間1分/ドルビーSRD/
配給:角川映画 配給協力・宣伝:デスぺラード
http://ho-oh.jp/

11月3日(土)より恵比寿ガーデンシネマ他、全国ロードショー
★東京国際映画祭2007招待作品に決定



『ONCE ダブリンの街角で』原題:ONCE

監督・脚本:ジョン・カーニー
撮影:ティム・フレミング
音響:ロバート・フラナガン
美術:タマラ・コンボイ
出演:グレン・ハンサード『ザ・コミットメンツ』、マルケタ・イルグロヴァ(映画初出演)ほか

ダブリンの街角。穴のあいたギターを抱えて、去った恋人を歌う男がいる。花売りの女が立ち止まり、質問をあびせかける。適当にあしらうと、今度は掃除機をひきずってやって来た。女はチェコからの移民で、休み時間に楽器店でピアノを弾かせてもらっている。音楽という共通点で二人は親しくなり、いつしか一緒に演奏するようになった。

主演のグレン・ハンサードはアイルランドで有名なミュージシャン。ロックグループ、ザ・フレイムスの創立メンバーで、ギターとボーカルを担当。当時、ジョン・カーニー監督はベーシストだったとか。17歳のマルケタもチェコのシンガーソングライターで、映画は初めての出演だそうですが、無理なく自然体で演じています。多くの曲が歌われ、無口な二人の心情を代弁するかのようです。メンバーを集めてスタジオでレコーディングするようすなど、まるでドキュメンタリーを観ているようでした。小さいけれどぽっと火がともるような暖かい映画です。(白)

★2007年サンダンス映画祭 ワールドシネマ部門観客賞
★2007年ダブリン国際映画祭 観客賞

2006年/アイルランド/87分/35mm/ドルビーSR/
提供:ショウゲート+ジェネオン エンタテインメント
配給:ショウゲート
http://www.oncethemovie.jp/

11月3日(土・祝)より渋谷シネ・アミューズ他、全国順次ロードショー
■「ONCE ダブリンの街角で オリジナル・サウンドトラック」
2007.10.17リリース予定 SICP1571 ¥2,520(tax incl.)



『ノートに眠った願いごと』

監督:キム・デスン
脚本:チャン・ミンソク
撮影:イ・モゲ
音楽:チョ・ヨンオク
出演:ユ・ジテ(ヒョヌ)、キム・ジス(ミンジュ)、オム・ジウォン(セジン)ほか

検事のヒョヌは、婚約者のミンジュを1995年のデパートの崩落事故で亡くしていた。その日二人で出かける約束だったのを、仕事の都合でミンジュ1人先に行かせたのだった。待ち合わせた地下のコーヒーショップでミンジュは事故に遭い、ヒョヌはずっと自分を責め続けてきた。10年後、仕事で苦境に立たされた彼のところへ、ミンジュの父親が遺品のノートを届けにくる。そこには新婚旅行の計画が細かく記されていた。ヒョヌはノートを手に、そこに書かれたとおりの日程で旅に出るが、行く先々でセジンという女性に出会う。

ミンジュはTVプロデューサーで取材のためあちこちを訪れています。ヒョヌと再訪したいと思った韓国の景勝地が次々と登場し、居ながらに旅をしている気分になります。ユ・ジテは、久々に切ないロマンスものに戻ってきました。きりりとしてしっかりもののキム・ジスもチャーミング(ずばり『チャーミング・ガール』にも主演していましたね)。お父さんもっと早くノート渡してあげてよ、と思ってしまいましたが、ま、それは映画の進行上しょうがないか。
『バンジージャンプする』のキム・デスン監督が、今回は実際にあった事故をエピソードにしました。ストレートでちょっとだけ不思議もあるラブストーリーを秋色に染めて見せてくれます。これは旅心誘われますね。(白)

2006年/韓国/カラー/1時間48分/スコープサイズ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

公式 HP >> http://www.sonypictures.jp/movies/tracesoflove/

 ★11月3日(祝)よりシネマート新宿など全国ロードショー

特別記事『ノートに眠った願いごと』ユ・ジテ初日舞台挨拶 もご覧ください。



『僕のピアノコンチェルト』vitus

監督:フレディ・M・ムーラー(『山の焚火』)
脚本:ペーター・ルイジ、フレディ・M・ムーラー、ルカス・B・スッター
撮影:ピオ・コラディ
音楽:ミリアム・フルーリー
出演:テオ・ゲオルギュー(ヴィトス12歳)、ブルーノ・ガンツ(祖父)、ユリカ・ジェンキンス(母ヘレン)、ウルス・ユッカー(父レオ)、ファブリツィオ・ボルサニ(ヴィトス6歳)ほか

学業ばかりかピアノの才能も天才的なヴィトス少年は、飛び級して高校、大学に入学した。 母親は自慢の一人息子をピアニストにするため手間ひま惜しまない。 ヴィトスは周囲の期待を一身に受けながらも、普通の少年でいたいと思っている。 ヴィトスが唯一自由でいられるのは、大好きなおじいさんと一緒に過ごす時間だけ。 おじいさんは子供のころパイロットになりたかった夢を今も捨てずにいる。


(C)Vitusfilm 2006

主人公ヴィトスを演じるのは、当時スイスのコンセルヴァトワールに在学中だった 実際の天才ピアノ少年テオ・ゲオルギュー。彼の精神的ささえとなる祖父を、 『ヒトラー最後の12日間』の名演が思い出されるブルーノ・ガンツが演じています。 この二人のやりとりが祖父と孫というより、いたずら仲間という感じでほほえましいです。 天才でいるのが重荷になってきたヴィトス少年がどうしたか、 お子様もいっしょにご覧ください。親の立場ならちょっと胸を痛めて反省し、 子供なら拍手喝さいの展開です。(白)

映画の公開に先立ち、テオ・ゲオルギューが来日し、8月30日紀尾井ホールにて、 日本デビュー公演を果たしました。撮影当時より20cmも身長が伸びた彼は タキシード姿でフレディ・ムーラー監督とともに登壇し、満場の観客にあいさつ。 すぐにピアノソロが始まり、ショパンの「舟歌 嬰ヘ長調」、 スカルラッティの「ソナタ ホ短調」、そして難曲と言われるリストの 「パガニーニ大練習曲集第3番 ラ・カンパネッラ」が次々と演奏されました。 東京ニューシティ管弦楽団とともにベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番ハ短調」も披露。 アンコールにもこたえて初の来日コンサートは スタンディングオベーションで讃えられました。


♪テオ・ゲオルギュー プロフィール♪

1992年8月12日チューリッヒ生まれ。9歳からピアノをはじめ、 15歳からプロとしてヨーロッパ各地で演奏を行っています。 2004年サンマリノ国際ピアノコンクール優勝、同年ドイツ、 ワイマールで行われたフランツ・リストコンクールでも優勝。 現在はロンドンの名門音楽学校パーセル・スクールに在学中。

第1回ローマ国際映画祭観客賞受賞
AFI2006観客賞受賞
2007年スイス映画賞最優秀作品賞受賞
2006年度アカデミー賞外国映画賞スイス代表作品

2006年/スイス/カラー/ビスタ/ドルビーSRD/121分
提供:東京テアトル/ポニー・キャニオン
配給:東京テアトル

http://eiga.com/official/bokunopiano/
11月3日(土・祝)より、銀座テアトルシネマ他 全国順次ロードショー



2007年11月10日〜

『琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。』

純沖縄県産映画が誕生しました。沖縄のCMディレクター3人による短編3本。ナビゲーターは芸歴62年、沖縄喜劇の女王・仲田幸子!






●『マサーおじいの傘』監督・脚本:大城直也/38分

三十年前の糸満を舞台に、実在した伝説の空手家『マサー文徳』を脚色し、本当の強さとは何か?を教えてくれる、少年海斗の成長物語。 ミステリアスな短編ファンタジー物語なのである。

●『See Me?』監督・脚本:當間早志/39分

「シーミー(清明祭)」という年中行事を軸に、沖縄の精神世界を沖縄人ならではの視点で縁取り、コミカルな登場人物とスタイリッシュな映像で、現代の沖縄文化に対する若者たちのホンネを、明るく、テーゲー?感覚、満載で描いていく。

●『Happy☆Pizza』監督・脚本:福永周平/12分

ペルー出身の沖縄県系3世アーティスト、アルベルト主演!
宅配ピザ店員が配達先で出会った、ちょっと不思議な女の子との切ないショートラブコメディー。

2007/日本/カラー/94分/ステレオ/

http://www.ryukyucowboy.com/
(C)2007RYUKYUCOWBOYFILMS

10月27日沖縄桜坂劇場公開 11月10日(土)テアトル新宿ほか順次全国公開予定



『やじきた道中 てれすこ』

監督:平山秀幸
脚本:安倍照雄
撮影:柴崎幸三
音楽:安川午朗
出演:中村勘三郎(弥次郎兵衛)、柄本明(喜多八)、小泉今日子(お喜乃)、ラサール石井(梅八)、笑福亭松之助(与兵衛)、淡路恵子(おさん)、間寛平(奉行)、松重豊(地廻り太十)、山本浩司(地廻り甚八)、藤山直美(お仙)、國村隼(代貸)、笹野高史(お喜乃の父)ほか

太平の世、大阪で「てれすこ」という不思議な生き物が見つかり、万病に効くという話題でもちきりだった。お江戸では人の良いしんこ細工屋の弥次郎兵衛が、惚れた花魁のお喜乃の注文の品を届けに遊郭へ出向いていた。幼馴染の喜多八は歌舞伎役者になっていたが舞台で大失敗、もう生きてはいられないと廓の庭で首をくくる寸前だった。足元の灯篭が倒れてほんとに死にそうになったとき、弥次郎兵衛に助けられる。二人はお喜乃の親孝行を応援しようと、足抜けを手伝って江戸を脱出することになった。

なんとも豪華、賑やかな配役陣です。主役の三人以外は、ほんの少しずつの出番でもったいない気がしました。かなりトウのたった「やじきた道中」ですが、そこは芸達者な二人、腰の痛みも川の冷たさも(ロケは11月下旬だったそうです!)ものともせず笑わせ、しんみりさせてくれました。タイトルにある「てれすこ」はじめ、「お茶汲み」、「たぬさい」など落語のネタがいくつも入っています。平山監督の前作は『しゃべれどもしゃべれども』でしたね。劇中で、柄本明さんの歌舞伎の場面、幇間役のラサール石井さんが踊りの場面などお楽しみもあります。(白)

2007/35?o/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル/108分)
支援:文化庁
配給:松竹
宣伝:ファントム・フィルム
(C)「てれすこ」講中(オフィス・シロウズ/バンダイビジュアル /トータル/テレビ朝日サービス)
http://www.telesco-movie.com/

11月10日(土)より、丸の内ピカデリー2他全国公開決定!!
★劇場窓口にて特製手ぬぐい付き前売り券 発売中 一般1,300円



『ロンリーハート』LONELY HEARTS

監督・脚本:トッド・ロビンソン
撮影:ピーター・レヴィ
音楽:マイケル・ダナ
キャスト:ジョン・トラボルタ(エルマー・C・ロビンソン)、ジェームズ・ガンドルフィーニ(チャールズ・ヒルダーブランド)、ジャレッド・レト(レイモンド・フェルナンデス)、サルマ・ハエック(マーサ・ベック)、スコット・カーン(ライリー)、ローラ・ダーン(レネ)ほか

1951年3月8日、ニューヨークのシンシン刑務所で死刑が執行されようとしていた。凶悪犯の最期を見届ける関係者の中に、彼を逮捕したエルマー・C・ロビンソン刑事がいた。

新聞の交際欄「ロンリーハート」には、夫や恋人を戦地で亡くした孤独な女性の広告が載っている。これを見ては結婚詐欺を繰り返していたレイモンド・フェルナンデスは、1945年マーサ・ベックと運命的な出会いをする。文通を経て会ったものの、お金のない彼女とすぐ別れるつもりだったレイモンドは、マーサの機転で詐欺師とばれそうなところを助けられる。以後二人は兄妹と称して詐欺コンビを組むようになった。それまでに辛い人生を送ってきたマーサは、レイモンドを愛し、嫉妬から相手の女性を手にかける。レイモンドはマーサに辟易しながらも、二人の歪んだ愛と凶行は続いていた。
エルマーは妻に自殺されて以来、息子とも向き合えず仕事への熱意も失っていた。若い女性の不審な自殺をきっかけに、刑事としてのやる気を取り戻す。相棒のチャールズとレイモンドの足跡を辿り、次第に間近に迫っていった。

これは実際におこったアメリカ犯罪史上最も凶悪な事件を元にしています。ロビンソン監督の祖父にあたるのが、トラボルタが演じたエルマー・C・ロビンソン刑事。今までも犯人2人を主人公に、2度映画化されたそうですが、監督は刑事の側面も入れてそれまでとは違った切り口となっています。
寡黙で渋いトラボルタはさすがですが、ヴァンプなサルマ・ハエック、凶悪犯になってしまってもどこか可愛げのあるジャレッド・レトも注目。本物のマーサは100kgもあった巨漢の女性でしたが、サルマ・ハエックは豊満な胸と強い眼差しが凄絶な色気を発散。ジャレッド・レトは小男で禿げ上がっていたという本物に似せて、髪を剃りあげ鬘をのせての熱演でした。(白)

2006/アメリカ/カラー/107分/35mm/シネマスコープ/SRD/15R

公式 HP >> http://www.sonypictures.jp/movies/lonelyhearts/index.html

★11月10日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー


『いのちの食べかた』OUR DAILY BREAD

監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター 編集:ヴォルフガング・ヴィダーホーファー 脚本:ヴォルフガング・ヴィダーホーファー、ニコラウス・ゲイハルター 録音・整音:ステファン・ホルツァー、アンドレアス・ハンザほか リサーチャー:デイヴィッド・バーネットほか

私たちが日々口にしている食べ物が、どこから来てどうやって店頭に並べられるか知っていますか?米、野菜やせいぜい魚は見当がつきます。では肉はどうでしょう?食肉市場というものがありますが、その中を映像としてみることはありません。
この作品はオーストリアのニコラウス・ゲイハルター監督がおよそ2年間をかけて取材し撮影したドキュメンタリーです。工場の中で流れ作業で屠畜、解体される鳥や豚や牛たち。店頭のスライスされた肉ばかり見ていると、もともとは生きているものだったということを忘れてしまいます。この映像を観ると、ほんとうにいのちをもらって食べているんだというのを実感します。
原題の「OUR DAILY BREAD」は、「日々の糧」ですね。お祈りの言葉を思い出します。この邦題は森達也さんの同名の本から取ったようです。この本は子供向けに書かれていますが面白いですよ。
ナレーションも音楽も台詞もなく、淡々とした映像だけが目の前にあります。ずっと引き込まれて観ていました。日本の食糧自給率は40%くらいなんですね。スーパーの棚にどれだけ外国から来たものが並んでいるか、そして残飯がどれほど出ているのか考えてしまいました。(白)

ナレーションもなく、淡々と繰り広げられる肉の解体プロセスや、トマトの収穫作業。思わず、第6回東京フィルメックスで上映されたアミール・ナデリ監督の『サウンド・バリア』を思い出してしまいました。やはりナレーションも台詞もないままに時が過ぎていき、監督は観るものの忍耐力を試したいのかと思ったものでした。けれども、『いのちの食べかた』には、いつしか映像に引き込まれていき、観終わってみると、ずっしりと食べ物の有難さを感じていました。何よりも現場で働いている人たちが凄い! いや、働くって、こんなにも大変なんだと驚嘆しました。(咲)

2005/オーストリア・ドイツ/カラー/92分/35mm/ヴィスタ/SRD

公式 HP >> http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

★11月10日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか、全国順次ロードショー!


『花蓮の夏』(原題:盛夏光年 ETERNAL SUMMER)

監督:陳正道(レスト・チェン)
脚本:許正平(シュー・チェンピン)
撮影監督:林志堅(チャーリー・ラム)
主題歌:阿信(アシン)from Mayday(五月天)『盛夏光年』(ロックレコード)
出演:張睿家(ブライアン・チャン)、張孝全(ジョセフ・チャン)、楊淇(ケイト・ヤン)

太陽のように明るい少年・ショウヘン(張孝全)と、月のように静かに彼を見守る少年・ジェンシン(張睿家)。親友だった二人の前に、彗星のように突然現れた少女・ホイジャ(楊淇)。彼女の存在が、安定していた二人の関係を大きく変える。自らの秘めた思いに気づき思い悩むジェンシン。恋人と親友の二人を失いたくないショウヘン。全てを知って見守るホイジャ。互いを思いやる三人の行き着く先は・・・


(C)アミューズ、ポニーキャニオン

2006年の東京国際映画祭で上映され好評を博した『永遠の夏』が、邦題を『花蓮の夏』と新たにし公開されます。男二人と女一人の複雑な三角関係を題材に、全てが不安定に揺れ動いている、若者の成長過程を描いた作品です。愛情と友情の間で揺れ動く繊細な心を、ブライアンとジョセフが見事に体現して見せています。二人はこの作品で台湾金馬奬の新人賞にノミネートされ、ブライアンが最優秀新人男優賞を受賞しました。今年の7月に開催された第16回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭ではクロージング作品として上映され、主演の二人もゲストとして来日を果たしました。その時のインタビュー記事が本誌71号に掲載されていますので、是非ご覧ください。(梅)



上 インタビュー時のブライアンとジョセフ
下 2006年東京国際映画祭の時のレスト・チェン監督とブライアン

2006年/台湾/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/95分
提供:アミューズ、ポニーキャニオン
配給・宣伝:マジックアワー

公式 HP >> http://www.karen-natsu.com/

★11月10日(土)より、ユーロスペースほか全国にてロードショー


『風の外側』

原作・脚本・監督:奥田瑛二
出演:佐々木崇雄、安藤サクラ、石田卓也、加納史?、かたせ梨乃、北村一輝、夏木マリ、奥田瑛二 ほか

岩田真理子はオペラ歌手を夢見る高校生。登校途中にチンピラにからまれて、通学鞄を海に落としてしまった。拾い上げてくれたのは兄貴分と思われる男。鞄は戻ったが大事な楽譜がなくなってしまい、ちょうどストーカーに悩んでいた真理子は「お詫びのかわりにボディガードをやって」と持ちかける。男はあっけにとられるが、以後律儀に校門の前で真理子を待つようになった。本名を名乗らない男に真理子は好きな名前をつけ、二人は少しずつ親密になっていく。

名前を明かそうとしない在日朝鮮人3世のチョ・ソンムンを演じるのは、モデル出身でCMや演劇で活躍中の佐々木崇雄。この作品が映画初主演。同じく初主演の安藤サクラは奥田瑛二・安藤和津の次女。母、姉とともに「桃山さくら」名義で奥田監督の前作『長い散歩』にも参加しています。主演の若い二人に夏木マリ、北村一樹、かたせ梨乃、石田卓也らが加わった豪華キャスト。海峡の町、下関でのオールロケの美しい映像をご覧ください。(白)

前作『長い散歩』では愛をテーマにした奥田監督の次なるテーマは夢です。かなりストレートに夢への憧れと恋を描いていて、すれたおばさんはちょっと気恥ずかしいような気持ちになりました。山と海に囲まれた下関の街がきれいで、行ってみたくなります。(梅)

2007年/日本/35mm/アメリカンビスタ(1:1.85)/カラー/dtsステレオ/123分
製作:ゼロ・ピクチュアズ/風の外側サポートファンド
配給:ゼアリズエンタープライズ
宣伝:グアパ・グアポ

奥寺瑛二ブログ >> http://www.eijidokudan.jp/

★11/10(土)より、下関スカラ座シアターゼロほか撮影地の山口県(山口県4館と北九州1館)で、全国に先駆けて公開。
 12/22(土)より、東京ロードショー。新宿K'sCINEMAにて。


『カルラのリスト』 CARLA'S LIST

監督:マルセル・シュプバッハ
出演:カルラ・デル・ポンテ

「戦争犯罪人は一国家の法体系を超え、国際正義の名の下に起訴されるべきである」
ー カルラ・デル・ポンテ(旧ユーゴ国際刑事法廷、国連検察官 ー 


カルラ・デル・ポンテ。1947年スイス生まれ。スイスで司法長官として、資金洗浄を行うマフィアと闘い、1998年には元メキシコ大統領サリナスの預金1億5000万ドル(約170億円)を凍結。その後、スイスで唯一、24時間武装したガードマンに守られる公人となる。1999年、オランダ・ハーグにある旧ユーゴスラヴィア国際刑事法廷(ICTY)と、ルワンダ国際刑事法廷(ICTR)の検事に任命される。
この作品は、旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)で、セルビア人勢力がイスラーム教徒のモスレム人を虐殺した「スレブニツァの虐殺」の主犯たちを調査し起訴していこうとするカルラを追いかけたドキュメンタリー。世界各国をスイス軍の専用小型ジェット機で飛び回り、協力を仰ぐ。また、集団虐殺の戦犯だと知っていても彼らを逮捕しない非協力的なセルビア政府に対しても、粘り強く交渉を重ねる。
合間に、夫や息子を虐殺で失ったスレブニツァの女性たちの嘆く姿が写る。主犯が特定され裁かれたところで、彼女たちの元に愛する家族は戻らない。戦争という名の下で行われる理不尽な行為が、国際的に裁かれるという正義が定着して、平和な世界が実現することを願わずにいられないが、道のりは遠い。なぜ、世の中には戦いを好む人たちがいるのだろう・・・(咲)

◆国際刑事裁判所 2007年10月1日 日本正式加入を機に、本作緊急公開決定
東京裁判、ニュルンベルグ裁判において戦勝国が敗戦国を裁いたという反省に基づき、カルラが働くICTYを経て、ようやく世界中のNGOや国際組織の望んでいた「武力の支配から法の支配する国際社会へ」という願いが実った形で、2002年オランダのハーグに国際刑事裁判所(International Criminal Court)が設立された。
 日本はようやく2007年10月1日、ICCに105番目の国として正式に加入。世界が望んだ国際裁判所だが、クリントン政権時にICCを作るという国家間での規定にサインしたアメリカはブッシュ大統領になり“非サイン”という造語を作って撤回。ロシア、中国、イスラエル、そしてダルフールの虐殺を起こしているスーダンなども加入していない。

配給:アップリンク
2006年/スイス/95分/カラー/35mm,video/1:1,85

公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/carla/

★2007年11月10日〜 東京都写真美術館ホール 12月1日 アップリンクXにて公開


2007年11月17日〜

「第8回東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2007」

期間:2007年11月17日(土)〜11月25日(日)

メイン会場:有楽町朝日ホール

映画祭ディレクター林加奈子さんと、プログラム・ディレクター市山尚三氏が、各々400本近くの作品を観た中から、よりすぐりの37本が上映されます。
今年もフィルメックスらしい作品に出会えそうです。

【東京フィルメックス・コンペティション】 (10作品)
●ジェリーフィッシュ(原題) (イスラエル)
監督:エトガー・ケレト、シラ・ゲフェン
●テヒリーム (イスラエル)
監督:ラファエル・ナジャリ
●ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた (イラン)
監督:ハナ・マフマルバフ
●13歳、スア (韓国)
監督:キム・ヒジョン
●最後の木こりたち (中国)
監督:ユー・グァンイー
●アイ・イン・ザ・スカイ(原題) (香港)
監督:ヤウ・ナイホイ
●ドラマー (香港・台湾)
監督:ケネス・ビー
●ヘルプ・ミー・エロス (台湾)
監督:リー・カンション
●むすんでひらいて(日本)
監督:高橋泉
●接吻 (日本)
監督:万田邦敏

ジェリーフィッシュ

ブッダは恥辱のあまり
崩れ落ちた

ヘルプ・ミー・エロス


【特別招待作品】(11作品)
<オープニング作品>
●それぞれのシネマ (フランス他)
監督:テオ・アンゲロプロス、オリヴィエ・アサイヤス、ビレ・アウグスト、ジェーン・カンピオン、ユーセフ・シャヒーン、チェン・カイコー、マイケル・チミノ、イーサン&ジョエル・コーエン、デヴィッド・クローネンバーグ、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、マノエル・デ・オリヴェイラ、レイモン・ドゥパルドン、アトム・エゴヤン、アモス・ギタイ、ホウ・シャオシェン、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アキ・カウリスマキ、アッバス・キアロスタミ、北野武、アンドレイ・コンチャロフスキー、クロード・ルルーシュ、ケン・ローチ、ナンニ・モレッティ、ロマン・ポランスキー、ラウール・ルイス、ウォルター・サレス、エリア・スレイマン、ツァイ・ミンリャン、ガス・ヴァン・サント、ラース・フォン・トリアー、ヴィム・ヴェンダース、ウォン・カーウァイ、チャン・イーモウ

カンヌ映画祭が60回開催を記念して世界の著名監督に委嘱した短編によるオムニバス。3分間という制限の中で35人の監督たちがそれぞれの視点から"映画館"を描く。



<クロージング作品>
●シークレット・サンシャイン(原題) (韓国)
監督:イ・チャンドン   配給:エスピーオー


●脳に烙印を! (カナダ)
監督:ガイ・マディン
●食べよ、これは我が体なり (ハイチ)
監督:ミケランジュ・ケイ
●撤退 (イスラエル)
監督:アモス・ギタイ
●サントゥール奏者 (イラン)
監督:ダリウシュ・メールジュイ
●東(Dong) (中国)
監督:ジャ・ジャンクー
※併映『私たちの十年』(中国) 監督:ジャ・ジャンクー(賈樟柯)
●無用 (中国)
監督:ジャ・ジャンクー
●Exiled 放・逐(原題) (香港)
監督:ジョニー・トー
●アンジェラ・マオ 女活殺拳 (香港) ※デジタル・リマスター
監督:ファン・フェン

撤退

サントゥール奏者

アンジェラ・マオ
女活殺拳


【特集上映 山本薩夫 ザッツ <社会派> エンタテインメント】
●戦争と平和  *ニュープリント (1947年)
●赤い陣羽織  *ニュープリント (1958年)
●荷車の歌  *ニュープリント (1959年)
●忍びの者 (1962年)
●赤い水  *ニュープリント (1963年)
●傷だらけの山河  *ニュープリント (1964年)
●にっぽん泥棒物語  *ニュープリント (1965年)
●スパイ  *ニュープリント (1965年)
●白い巨塔 (1966年)
●にせ刑事  *ニュープリント (1967年)
●座頭市牢破り  *ニュープリント (1967年)
●牡丹燈籠  *ニュープリント (1968年)
全作品英語字幕付き

【リッティク・ゴトク監督特集 〜インドの伝説的巨匠〜】
●非機械的 (1958年)
●黄金の河 (1962年)
●ティタシュという名の河 (1973年)
●理屈、論争と物語 (1974年)


【前売券】 チケットぴあにて11/3(祝・土)より発売

ハンディなリーフレット型ちらしが、10月10日(水)以降より、有楽町朝日ホール、シネカノン有楽町1丁目、フィルムセンター等にて配布されます。
小さめのサイズですので、どうぞお見逃しなく!

その他、上映作品の内容、イベント情報、チケット代金など詳細は、HPでご確認ください。

公式HP>> http://www.filmex.net/index.htm


『フライボーイズ』 原題:Flyboys

監督:トニー・ビル
製作:ディーン・デヴリン、マーク・フライドマン
出演:ジェームズ・ブランコ、ジャン・レノ、マーティン・ヘンダーソン、ジェニファー・デッカー、タイラー・ラビン

1916年、ヨーロッパでは第一次世界大戦が激化の一途をたどっていた。当時、まだ中立を守って参戦していなかったアメリカから、自らの意志でフランス空軍に入隊し、ドイツ軍と戦った若者たちがいた。農場を差し押さえられたローリングス(ジェームズ・ブランコ)、権力者の父に勇気を示そうとする臆病者のロウリー(タイラー・ラビン)、黒人を差別しないフランスへの忠誠を誓う元ボクサーのスキナー(アブダル・サリス)等、志願した理由はさまざまだ。アメリカ人を受け入れる飛行中隊“ラファイエット戦闘機隊”の司令官セノール大佐(ジャン・レノ)は、志願兵たちがフランス語もろくに出来ないことに呆れながらも、暖かく彼らを迎える。一方、飛行士が戦場で3〜6週間しか生きられないことを知る先輩飛行士のキャシディ(マーティン・ヘンダーソン)は、新米たちに冷たく接する。
ある日、ローリングスは訓練飛行中に不時着事故を起こす。介抱してくれた清楚な村の女性ルシエンヌに恋心を抱くが、お互い言葉が通じない。一人前の飛行士となった頃、ルシエンヌの家の近くまでドイツ兵が迫っていることを知ったローリングスは、無断で飛行機を飛ばし、彼女と甥っ子たちを助けに行く...

ラファイエット戦闘機隊には、265人のアメリカ義勇兵が所属したという。本作では、実在の人物にヒントを得て、ローリングスの物語を核に数名の人生を描いている。圧巻は約70億円をかけて描いた空中での戦闘シーン。アメリカのライト兄弟が有人初飛行に成功したのは、1903年 12月。発明されたばかりの飛行機が、第一次世界大戦で、さっそく兵器として利用された次第だが、当時は飛行しながらお互いの顔が見える戦闘であったことを、この映画は思い知らせてくれた。 派手な空中戦に憧れて、スヌーピーがゴーグル付き飛行帽・赤いマフラー姿で犬小屋にまたがる物語もあるほどだが、思えば、撃墜王・フライングエースとして貰った勲章は、裏返せば人を殺した証。そして、戦闘に巻き込まれて犠牲になる庶民...。実写さながらの迫力ある映像を観ながら、戦闘の形は変わっても、今なお各地で繰り返される戦争の悲劇に思いが至った。(咲)

人類が初めて経験する世界大戦で、無差別大量殺戮が行われる中、かろうじて騎士道精神が残っていたのが、戦闘航空機の戦いでした。大空への憧れと、自由を守るためにという宣伝文句に共感して志願兵となった若者たちは、過酷な戦争の現実を知って、あらためて戦う意味を考えはじめます。しかし、映画のメインは若者たちの恋や友情、そして飛行機マニアには嬉しい、当時の複葉機の勇姿です。(梅)

提供・配給:プレシディオ
宣伝:プレシディオ、アルシネテラン

2006年/アメリカ/カラー/138分/DOLBY DIGITAL/SDDS/DTS/シネマスコープ

★11月17日(土)シアターN渋谷、ユナイテッドシネマ豊洲ほか全国ロードショー

公式HP>> http://www.flyboys.jp/



『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』( 原題:Children of Glory )

監督:クリスティナ・ゴダ
プロデューサー:アンドリュー・G・ヴァイナ
脚本:ジョー・エスターハス、エヴァ・ガールドシュ、ゲーザ・ベレメーニ、レーカ・ディヴィニ
出演:イヴァン・フェニェー、カタ・ドボー

“ドナウの真珠”と称されるハンガリーの首都ブダペスト。1956年、失われた革命とオリンピックの栄光があった。

1956年モスクワ、ソ連対ハンガリーの水球の試合。前回のオリンピックで優勝したハンガリーだが、ソ連びいきの判定が続き、審判にボールを投げつけるハンガリーのスター選手カルチ。更衣室で表向きには笑顔で握手しながら、お互いに言葉がわか らないのをいいことに罵りあう両国の選手たち。だが、「ホモ」の言葉に反応して乱闘になってしまう。ブダペスト駅に着いたカルチは秘密警察AVOの本部に連れていかれる。拷問部屋の前をいくつか通過し、“フェリおじさん”と名乗る幹部らしき 男に「家族が大事なら、今後一切ソ連の同志に刃向かうな」と言い渡される。帰宅すると、ラジオがポーランドでの民衆蜂起を伝えていた。「自由のために反撃すべき時もある」とカルチに声をかける祖父。
大学では、「ポーランドのニュースは資本主義社会の作り話だ」と体制派が演説する中、反体制派の学生たちの中から女学生ヴィキが立ち上がり声をあげる。政治には興味のなかったカルチだが、美しく聡明なヴィキの演説に惹かれ、声をかける。オ リンピック選手として特権を持つカルチに最初は目もくれないヴィキだが、共に革命運動に身を投じるカルチにヴィキも恋心を抱くようになる。
民衆の運動が激しさを増す中、メルボルン・オリンピックへと旅立ったカルチは、ブダペスト郊外でソ連軍戦車の隊列とすれ違う・・・

 

ハンガリー動乱と呼ばれた、1956年の民衆蜂起。ソ連の影響下、独裁的な共産政権に対して、自由を求めて立ち上がった動きは、民衆から見れば革命であった。だが、ソ連軍によって弾圧されてしまい、ハンガリーの人々がやっと自由を手に入れ たのは1989年のこと。民主化されて間もない90年代半ばにプラハやブダペストを訪れたことがある。地下鉄のエスカレーターなどにソ連の面影を感じつつ、かつて民衆が集まった広場に立ち、人々の自由への思いに心を馳せたのを思い出す。 本作は、『ランボー』『トータルリコール』などハリウッドで数々の大作を手がけてきた名プロデューサーであるアンドリュー・G・ヴァイナが、母国ハンガリーへの思いを込めて企画した作品。ヴァイナは、1956年12月6日、偶然にもメルボ ルン・オリンピックの金メダルを争う水球の試合の日に、12歳にして国を出たという。オリンピック史上に残る水球チームの物語に、革命に身を投じた学生たちのことを重ね合わせ、カルチとヴィキの恋物語に仕立てて、1956年のハンガリーで起 こった出来事を劇的に見せてくれる。弾圧覚悟で立ち上がった人々の勇気に心が震えた。(咲)

*あいち国際女性映画祭2007にて、『チルドレン・オブ・グローリー』のタイトルで上映。観客賞受賞。
2006年/ハンガリー/120分/カラー/シネマスコープ/SRD
配給: シネカノン

公式 HP >> http://www.hungary1956-movie.com/

★11/17(土)シネカノン有楽町2丁目(新館)ほか全国順次ロードショー

特別記事『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』クリスティナ・ゴダ監督合同インタビューもご覧ください。



『ソウ4』SAW IV

監督:ダーレン・リン・バウズマン
製作総指揮:リー・ワネル、ジェームズ・ワン
脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン
撮影:デヴィッド・A・アームストロング
プロダクションデザイン:デヴィッド・ハックル
衣装デザイン:アレックス・カヴァナ
音楽:チャーリー・クロウザー
出演: トビン・ベル(ジグソウ/ジョン・クレイマー)、 コスタス・マンディロア(ホフマン刑事)、スコット・パターソン(ストラム捜査官)、ベッツィ・ラッセル(ジル)、リリク・ベント(リッグ刑事)、アシーナ・カーカニス(ペレーズ捜査官)ほか

ジグソウ死す。
解剖室。ジグソウの胃の中から、ロウにくるまれたカセットテープが発見された。ホフマン刑事が呼ばれ、テープが再生される。「私の死で、全てが終わったと思っているかもしれない。だが、それは間違っている。私の仕事は続く。ゲームは始まったばかりだ」
最後のゲーム現場で謎を解こうとするホフマン、SWATのリッグ隊長はケリーの無残な遺体を発見する。FBIのストラム、ペレーズ二人の捜査官も加わり、現場のようすからすでに死んだアマンダのほかにもジグソウの協力者がいると推測する。彼らは、ジグソウの元妻ジルを重要参考人として尋問することにした。一方リッグは自宅で何者かに襲われ、ゲームに参加させられてしまう。制限時間は90分。

大ヒットシリーズ第4弾。これまで未見の方は、まずおさらいして登場人物を把握してから鑑賞を。以前の謎に結びついた展開を見せます。ただのミステリー、ホラー、スプラッターとは一味違ったこのシリーズ。苦手なジャンルなのですが気になるので、眼をつぶりながら(!)こわごわ観て来ました。ほんとによくこんなストーリーを考えつくものです。ゲームの謎を解く鍵はいつもジグソウの言葉の中にありますが、あまりにも特異なシチュエーションに放り込まれ、時間に追われてその鍵を見失ってしまうのです。監督は2、3から続いてのダーレン・リン・バウズマン。3と90%同じスタッフで作られたこの4は、小さな役(SWATチーム、看護士たち)も同じ俳優が演じているそうです。アメリカでは初登場1位でのスタート!日本ではどうでしょうか。(白)

2007/アメリカ/カラー/ヴィスタサイズ/1時間33分/ドルビーデジタル
ライオンズゲート リリース、ツィステッドピクチャーズ製作
配給:アスミック・エース
宣伝:ファントムフィルム

公式 HP >> http://saw4.jp/

★2007年11月17日(土)〜TOHOシネマズ六本木ヒルズほか、全国ロードショー


2007年11月下旬〜

『肩ごしの恋人』

監督:イ・オンヒ
脚本:コ・ユンヒ、キム・ウネ
原作:「肩ごしの恋人」唯川恵著 集英社文庫刊
撮影:ホン・ギョンピョ
出演:イ・ミヨン(ジョンワン)、イ・テラン(ヒス)、ユン・ジェムン(ヒスの夫)

有名カメラマンの助手として実力を認められつつあるジョンワンは、妻のあるハンサムな男性と「恋愛は恋愛」と割り切って、楽しんでいる。幼馴染のヒスとは男の好みからなにもかも違うが、だからこそ本音で言い合える親友だ。ヒスは大恋愛の経験がありながら、お金はあるけどダサくて地味な男性と結婚した。ヒスに言わせれば「保険」のようなもの。ところが、ヒスが夫が浮気をしているのを知ってジョンワンの部屋に転がり込んでくる。クールに別れるつもりだったジョンワンだったのに、そのころから恋人の妻が気になってきた。

『アメノナカノ青空』でデビューしたイ・オンヒ監督が、唯川恵のベストセラー小説をコミカルで切ないラブ・ストーリーに仕上げました。
女としての自信たっぷりで甘え上手なヒスを演じるのは、テレビドラマ「噂のチル姫」で驚異的な視聴率をあげたというイ・テラン。こういう人は男から見て可愛いかも。夫のお金を当然のように使ってきたヒスが、初めて仕事を探しに行き、「免許がない、資格がない、経験もない」と言われてショックを受けるシーンは身につまされます。一方、イ・ミヨン演じるジョンワンは、自立した有能な女性ですが、意に反して泥沼にはまりそうになって苦しみます。脚本を『恋愛の目的』でどっきりさせたコ・ユンヒ。共感を呼ぶ台詞がみっちりとつまっていて、ファッションも楽しめます。(白)

2007/日本・韓国合作/カラー/1時間41分/
配給:ショウゲート
宣伝:スキップ
http://katagoshi.jp/

11月23日(金・祝)、シネマメディアージュほか全国順次ロードショー



『ヒッチャー』

監督:デイヴ・メイヤーズ
製作:マイケル・ベイ
脚本:エリック・レッドほか
撮影:ジェームズ・ホーキンソン
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
出演:ショーン・ビーン(ジョン・ライダー)、ソフィア・ブッシュ(グレース)、ザカリー・ナイトン(ジム)、ニール・マクドノー(エスタリッジ警部)ほか

大学の春休み、恋人同士のジムとグレースは、ニューメキシコの湖までドライブに出かける。土砂降りになった夜半、よそ見をした一瞬、ロングコート姿の男をはねたかと肝を冷やす。男はこちらに近づいてきたが、見知らぬ男を乗せるのをためらい、雨の中においてきてしまった。気にかかったまま立ち寄ったガソリンスタンドで、その男に再会。先ほどの負い目から断ることができず、モーテルまで乗せることになった。男はジョン・ライダーと名乗ったが車の中で豹変、二人にナイフを突きつける。必死に抗い、走る車からつき落として逃げおおせたと思えたが・・・。

1986年、ルトガー・ハウアー主演でヒットした同名作品(このほどDVD発売されました)のリメイク。オリジナルも十分怖かったようですが、この作品でも何度も飛び上がるようなシーンがありました。心臓の弱い方、ご注意。
『ロード・オブ・ザ・リング』のボロミア役で日本でも知名度の上がったショーン・ビーンが怖いのなんの。途中で「実は」といい人に変わらないかなと期待しましたが、そういうストーリーではありませんでした。音楽はとってものりが良いので、ターゲットはこういうのをキャーキャーと楽しめる若者かな。映画の後、ヒッチハイカーの乗車拒否が多くなったことでしょうねぇ。(白)

2007/アメリカ/カラー/84分/スコープサイズ/SRD
配給:ムービー・アイ

11月24日(土)より、銀座シネパトスほか全国ロードショー!



「伊勢真一監督作品 特集上映」
会場:横浜シネマ ジャック&ベティ
11月24日(土)〜11月30日(金) 『奈緒ちゃん』1995年 各日10:00
12月1日(土)〜12月7日(金) 『ありがとう ー 奈緒ちゃん自立への25年 ー』2006年 各日10:00

『ありがとう ー「奈緒ちゃん」自立への25年 ー』

監督・脚本・演出・編集:伊勢真一
撮影:石倉隆二
出演:奈緒ちゃん一家

てんかんと知的障害を合わせ持つ奈緒ちゃん。監督は、姪である奈緒ちゃんの姿を8歳の時から追い続けてきた。長くは生きられないかも知れないという家族の心配を跳ね飛ばし、奈緒ちゃんは、今、32歳。お嫁にやりたいというお母さんの願いはまだ叶わないけれど、自立して、障害者のグループホーム「みなみ風3」で暮らし始める ことになった。弟の記一さんも別のグループホームの担当職員として障害者の親代わりの日々。家はお父さんとお母さんの二人きりになり、お母さんは「ぽっかり穴が空いたようで寂しいわ」と嘆くが、お父さんは、「新婚時代に返ったみたいでいいじゃないか」とくったくがない。

「奈緒ちゃんより先に死ねない」とお母さんはつぶやく。健常児でも子育ては大変だと思うのに、障害児を育てるのは並大抵のことでないと思う。でも、この一家は、奈緒ちゃんを中心にして、がっちり気持ちが結ばれていて、今どき珍しい位の家族愛に満ち溢れている。伊勢真一監督がプロデューサーを務める山本起也監督の『ツヒノスミカ』同様、家族の何気ない会話が光る作品である。(咲)

伊勢監督の姪御さんである西村奈緒ちゃんは、てんかんと知的障害があり、生まれたときにはそれほど長くは生きられないだろうと言われました。監督は家族のアルバムのつもりで、奈緒ちゃんが8歳の時から一家を撮り始めますが、奈緒ちゃんを中心として深い絆で繋がれる家族に惹かれて、長きにわたり撮り続け、とうとう1995年にドキュメンタリー映画『奈緒ちゃん』を発表しました。その後、2002年には『ぴぐれっと』を発表。そして今回、25年に渡る奈緒ちゃんの自立への記録としてこの『ありがとう』を制作したのです。  

奈緒ちゃんは32歳になりました。彼女のお母さんたちが立ち上げた、障害者の自立を助ける地域作業所「ぴぐれっと」は、さらに一歩進んでグループホームを開設し、彼女も家を出てグループホームで仲間と助け合いながら暮らすことを望みます。しかし、いざとなると奈緒ちゃん自身よりも、お父さん、お母さんの方が彼女が家からいなくなることに耐えられないのです。そのあたりの様子を見たときに思い出したことがあります。
韓国映画『マラソン』のモデルとなった母子が日本を訪問し、自立支援作業所を訪問する様子がテレビのニュースで放送されたことがありますが、その時も自閉症である息子は新しい環境と自立するということに興味があり、所長さんから「ここで一度生活してみてはどう?」という誘いにも前向きなのですが、お母さんが明らかにうろたえているのがとても印象的でした。

奈緒ちゃんのお父さんも、行かせたくないと言い、さらに定年を迎えることもあって、これからどうすればいいかと大いに悩んでいます。お母さんも奈緒ちゃんと福祉に没頭してきたこれまでの生き方に、ちょっと不安を感じて揺れています。一方、弟の記一くんは今や「ぴぐれっと」運営の中心メンバーとして信頼されており、姉のグループホームでの生活に不安を感じながらも、頑張って欲しいと冷静に願っています。

 
提供:いせFILM

年月が経てば、子供は親の元から旅立ち、どこの家族も形を変えていかざるを得ません。しかし西村家には、奈緒ちゃんという明るく素敵な心の接着剤があり、絆が断ち切れることはないようです。それは、とても幸せなことですよね。映画が映す彼らの様子は、思ったことを言い合い(亡くなった犬のぷーちゃんのお墓についての激論が面白い!)、一緒に考えることを止めません。それは絆を保つために、どこの家族にも必要なことだよなぁと、改めて思いました。(梅)

2006年/日本/16mm/カラー/105分/レーザーキネコ、レーザーサラウンド

シネマ ジャック&ベティ HP >> http://www.jackandbetty.net/
いせフィルムHP >> http://www2.odn.ne.jp/ise-film/



2007年12月1日〜

『サラエボの花』原題:Grbavica 英語タイトル:Grbavica The Land of My Dreams

監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ミリャナ・カラノヴィッチ(『パパは出張中!』『アンダーグラウンド』)、ルナ・ミヨヴィッチ、レオン・ルチェフ

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボ。エスマは12歳の娘サラと二人暮し。大学時代には医師を目指していたエスマだったが、紛争で挫折。政府からのわずかな生活補助金と裁縫の仕事だけでは生活が苦しく、子供がいることを隠してナイトクラブでウェイトレスとして働き始める。「女を武器にチップを稼ぐのよ」と助言する女の言葉には耳もかさず、ひたすら男を避けるように働くエスマ。
一方、サラは学校でサッカーに興じているうちに、同級生の男の子サミルと喧嘩になる。先生から両親を呼び出すといわれ、「パパはいない。シャヒード(殉教者)よ」と胸を張るサラ。そんな彼女も、父親を紛争で亡くしたサミルといつしか親しくなる。
学校では修学旅行が近付き、費用を納めなくてはならないが、殉教者証明があれば費用免除になると聞いたサラは、母親に証明書を求める。「遺体が見つからないから、証明書は出ないの」と言うエスマだが、真実は...

かつて、ユーゴスラビアは、「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国」と言われる、チトー大統領の絶大なカリスマ性によってバランスが取れていた多民族国家だった。1980年にチトーが後継者を指名せずに死去した後、次第に民族主義が台頭。1989年の東欧民主化の動きとあいまって、1991年ついに紛争勃発。スロベニア、マケドニア、クロアチアと次々に独立していき、ボスニア・ヘルツェゴヴィナも92年に独立したが、内戦はその後も続き、1995年11月にようやく終結。

1989年春に、旧ユーゴスラビアを旅したことがある。ドゥブロヴニクからアドリア海沿いに北上して国境を越え、イタリアのトリエステからヴェネツィアまで行くというツアー。イスラーム圏に興味のある私としては、ユーゴスラビアに行くのならば、まずはサラエボと思っていたけれど、またいつでも行けると思って、GWにぴったりはまり込んだその魅力的なツアーに参加したのだった。絵のように美しい町をいくつも訪ね、まさか、その数年後にそこが戦場になるとは思いもよらなかった。
『サラエボの花』の中で、時折背景に大きな新しいモスクが出てきたのだが、あれは紛争後に作られたものなのだろうか。紛争当時、ことごとく破壊された家やモスクの数々...。モスタールのオスマントルコ時代に作られた石橋は復元されたが、愛すべき家と共に壊された人々の気持ちはなかなか修復できないだろう。

民族浄化の名のもとに、セルビア人がモスレム人女性に無理矢理子供を生ませているというニュースには、耳を覆いたくなったものだが、当事者にとっては一生背負って生きていかなければならない現実。父親不在の子供にとっては、自分の父親がどんな人物だったのか、もちろん知りたいだろう。民族浄化の事件はいずれ子供の耳にも入るだろうけれど、例え口が裂けても、母親は真実を天国まで持っていくべきじゃないかと思う。エスマは、生まれてきた子を見て、世の中にこれほど美しいものがあるのか・・と思ったというが、いくらお腹を痛めて産んだ子でも、忌まわしい記憶は一生つきまとうだろう。サラは事実を知って、父親に似ていると言われた髪の毛を剃ることによって、母への愛を示すけれど、子供にとっても真実を知ってしまったことは一生心の負担になるのではないか。などと、子供を産んだことのない私にはとやかく言う資格はないかもしれない。母性とは、そんなことも乗り越えるものなのだろうと想像するしかない。

重いテーマだが、ルナ・ミヨヴィッチ演じるサラの、ちょっとボーイッシュで魅力に溢れる姿に、すがすがしい気持ちになれた。心を分かち、許しあうことで、平穏な人生がおくれることと思う。(咲)

2006年/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ,オーストリア,ドイツ,クロアチア/1時間35分/ビスタサイズ/カラー/ドルビーSR/PG−12

提供:ツイン,ニューセレクト,博報堂DYメディアパートナーズ
配給:アルバトロス・フィルム,ツイン
宣伝:アルバトロス・フィルム

2006年ベルリン映画祭金熊賞(グランプリ)/エキュメニカル賞/平和映画賞 他 受賞多数
2007年東京国際女性映画祭参加作品

★岩波ホール創立40周年記念作品第1弾
上映期間:2007年12月1日(土)より2月上旬まで
(2007年12月30日から2008年1月2日まで休館)
岩波ホールHP>> http://www.iwanami-hall.com/contents/next/next.html

公式HP>> http://www.saraebono-hana.com



『ダーウィン・アワード』THE DARWIN AWARDS

監督・脚本:フィン・タイラー
撮影:ヒロ・ナリタ
美術:ピーター・ジェイミソン
視覚効果:マージョリイ・トランブレー=シルヴァ
出演:ジョセフ・ファインズ(マアイケル・バロウズ)、ウィノナ・ライダー(シリ・テイラー)、ジュリエット・ルイス、デヴィッド・アークエット、クリス・ペンほか

サンフランシスコ殺人課のマイケルは優秀なプロファイラーだが、血を見ると失神してしまうという弱点があった。連続殺人犯を追い詰めながらも、このために取り逃がし首になってしまった。暇にまかせて、インターネットの「ダーウィン賞」を見ているうちに、この受賞者が毎年保険会社に損失を与えていることに気がつく。さっそく保険会社にプロファイリングの能力を売り込みに行き、それを証明できれば採用してもらえることになった。女性捜査員のシリと二人、ダーウィン賞にまつわる案件の調査の旅に出た。


「ダーウィン賞」はアメリカのインターネットサイトに現存しています。「最も馬鹿げた死に方をして、劣悪な遺伝子を絶つことにより、人類に貢献した人に与えられる」賞なんだそうです。『恋に落ちたシェークスピア』のジョセフ・ファインズが抱腹絶倒なプロファイラーを演じて、こういう役も似合うのねと感心。ウィノナ・ライダーはお久しぶり。顔を思い出そうとすると、活躍著しいキーラ・ナイトレイの顔が浮かんでいたこのごろ、これで大丈夫。「どうやって保険金を払わないようにするか」の講釈が聞けます。彼女の紹介で出演可能となったというロックバンド「メタリカ」のステージも劇中で見られます。(白)

結果的に死んじゃっているので気が引けるんだけど、やっぱり爆笑せずにはいられません。馬鹿すぎると笑いつつ、なんだか人間が愛おしいものに思えてきます。ジョセフ・ファインズ扮するマイケルは、ダーウィン賞ウォッチを趣味にしているうちに、自分も彼らの行動パターンに近づいていき、信じられないような失敗を連打して、笑わせてくれます。でもやっぱりイギリス演劇界の貴公子。ラブシーンでは人が変わったような色気が出てたぞ。
ちなみにダーウィン賞のサイトはこちら。(梅)

2006年/アメリカ/カラー/95分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
http://darwin-award.jp/
★12月1日(土)より、シネセゾン渋谷ほか全国ロードショー



『おそいひと』

監督:柴田剛
原案:仲悟志
編集:市川恵太、鈴木啓介、熊切和嘉、柴田剛
音楽:world's end girlfriend、バミューダ★バガボンド
出演:住田雅清、とりいまり、堀田直蔵、白井純子、福永年久、有田アリコ

住田は重度の脳性麻痺を持つ身体障害者である。電動車椅子で移動し、トーキングエイドという音声を出す機械で人とコミュニケーションを取る。介護者のサポートを受けながら一人暮らしをし、バンドマンのタケとはしょっちゅうビールを飲んで、何となく平穏な日々を送っていた。
ある日、卒論を書くために介護経験をしたいと大学生の敦子がやってくる。これまでにもそういうことはあった。それなのに、彼女の存在は住田の心を掻き乱す。恋をしたのだ。住田の孤独は深まり、次第に狂気を生んでいく。

重度身体障害者が犯罪者へと変貌するショッキングな内容が賛否両論を生み、TOKYO Filmex2004で上映されて以来、なかなか一般公開へと結びつかなかった作品が、海外の映画祭などでの評価を得て、ようやく公開されます。ノイジーで過激な音楽と、主演の住田雅清さんの圧倒的な存在感と、モノクロームの映像が三位一体となって、こちらに襲いかかってくるような強烈さ。あまりのかっこよさに、久々にしびれました。彼の絶望的な孤独と苦しみが、トーキングエイドの機械的な音声で発せられる数少ない言葉で、暗闇の中にギラリと光るナイフのように現れ、ドキッとさせられます。見事なハードボイルド作品です。障害者と犯罪を結びつけたことに嫌悪感を感じるなら、是非この作品を観て、自分の感情の奥底にあるものをしっかりと見つめることをお勧めします。住田雅清さんは、阪神障害者解放センターの事務局長やNPO法人の副代表などを勤めるとともに、バンドを組んでライブ活動もしているそうです。(梅)

2004年/35mm/モノクロ/83分
製作・配給:シマフィルム
配給協力:ポレポレ東中野

公式 HP >> http://osoihito.jp/

★ 12月1日(土)より、ポレポレ東中野にてレイトショー(その後、全国順次公開予定)


2007年12月8日〜

『マリッジリング』

監督:七里圭
脚本:西田直子、七里圭
原作:渡辺淳一「泪壷」所収
撮影:高橋哲也
美術:桜井陽一
音楽:侘美秀俊
出演:小橋めぐみ(森谷千波)、保坂尚希(桑村紀夫)、高橋一生(藤沢佳介)、田口浩正(野田課長)、西尾まり(桑村優子)、中村麻美(竹内絵里)、矢沢心(太田康代)

森谷千波は平凡な25歳のOL。学生時代からの友人詩織は年下の彼と婚約、絵里は不倫で熱愛中。千波にも圭介という彼氏がいるけれど、このごろ仕事が忙しいとすれちがい気味なのが不満だ。
職場では女子に不評な野田課長の代わりに、本社から桑村紀夫が転任してくる。妻子持ちだが端正なマスクの桑村は、たちまち女子社員の憧れの的となった。千波もなんとなく気になってつい目がいってしまう。圭介と会えないまま、ある晩残業で遅くなった千波は、桑村課長に食事に誘われる。

渡辺淳一原作の不倫モノですが、意外にドロドロせず「禁断の愛」というより、心にすきまのできた二人がちょっと寄り道しました、な感じです。上司とOLの恋愛というのが、いまや劇的なドラマでなく、よくあることになってしまったからでしょうか?小橋めぐみは強烈な印象はないですが、時代ものも似合いそうな品があります。七里圭監督は『眠り姫』を観て芸術家肌の方かと思っていましたが、長い助監督時代もあったそうでこういう作品も手堅く撮られるんですね。(白)

2007/日本/カラー/35mm/ビスタサイズ/99分/R-15
制作:円谷エンターテインメント
製作:アートポート
宣伝:アルゴピクチャーズ

http://www.m-ring.jp/

12/8(土)より銀座シネパトスにてロードショー



『やわらかい手』(原題:Irina palm)

監督:サム・ガルバルスキ
原案・脚本:フィリップ・ブラスバン
撮影:クリストフ・ボーカルズ
音楽:ギンズ
出演:マリアンヌ・フェイスフル(マギー)、ミキ・マノイロヴィッチ(ミキ)、ケヴィン・ビショップ(トム)、シヴォーン・ヒューレット(サラ)、ジェニー・アガターほか

ロンドン郊外の小さな町。未亡人のマギーは、難病を抱えた孫オリーの治療費のため、住み慣れた家さえも手放していた。しかし、オリーの病気は悪化し、オーストラリアに渡っての特別な手術を進められる。それにかかる莫大な費用はとても息子夫婦やマギーには工面できそうもない。万策つきたとき、「接客係募集・高給」の貼り紙が目についた。そこはセックスショップで、個室の仕事場の壁には穴があいている。壁一枚を隔てて男を絶頂に導くという、箱入り主婦が想像もしなかった「接客業」だった。面接したオーナーはあまりにも純朴なマギーに呆れるが、高給の条件を提示する。恥ずかしさに店を飛び出すものの、他にすべはなく、ベテランの接客係の指導を受けることになった。

多くのCMを手がけた監督の無駄のない演出、人気小説家・劇作家の書いた脚本、面白くないわけがありません。あけすけな台詞もユーモアに満ちていて、何度も笑ってしまいました。セックスショップの個室が舞台の映画は初めてですが、作中のオーナーの台詞によれば「東京にあった店を真似た」のだそうです。こんなところがあるんでしょうか??極上の「やわらかい手」の持ち主だったマギーは、ベテランをしのぐ売れっ子となります。
60年代のポップ・アイコンだったマリアン・フェイスフルは、かつてはミック・ジャガーの恋人、スターの座から転落、麻薬中毒、ホームレスと壮絶な人生を体験しながら復帰したのだそうです。この作品で演じるのは正直で純粋で平凡な主婦。ただただ愛する息子や孫のために働くうち、しだいに自信を持ってきます。ただのおばさんのマギーがだんだん魅力的に見えるのは、マリアンが演じているからこそと思えました。原題の「イリーナ・パーム」とは「イリーナの手のひら」という意味で、マギーの源氏名です。(白)

2006/イギリス、フランス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルク合作/カラー/103分/ドルビーSR/SRD
配給・宣伝:クレストインターナショナル

公式 HP >> http://www.irina-palm.jp/

★2007年12月8日(土)より、Bunkamura ル・シネマにて、愛と刺激のロードショー!


「韓国映画ショーケース2007」

期日:2007.12.8(土)- 14(金)
会場:シネカノン有楽町1丁目
   (JR有楽町駅前 ビックカメラ7F)

上映作品:9本

『カンナさん大成功です!』キム・ヨンファ監督
キム・アジュン、チュ・ジンモ
『家族の誕生(原題)』キム・テヨン監督
オム・テウン、ムン・ソリ
『極楽島殺人事件』キム・ハンミン監督
パク・ヘイル、パク・ソルミ
『千年鶴』イム・グォンテク監督
チョ・ジェヒョン、オ・ジョンヘ
『バント(仮)』パク・ギュテ監督
チョン・ジニョン、チェ・ウヒョク
『飛翔』イム・ユチョル監督
スポーツドキュメンタリー
『マイ・ファーザー』ファン・ドンヒョク監督
キム・ヨンチョル、ダニエル・ヘニー
『横綱マドンナ(仮)』イ・ヘヨン、イ・ヘジュン監督
リュ・ドックァン、ペク・ユンシク
『ウリハッキョ〜われらの学校』キム・ミョンジュン監督
ドキュメンタリー

イベント:12月9日(日)開演15:00
「国境を越える映画の力」
韓国からの来日ゲストと、シネカノン李鳳宇代表によるパネルディスカッションが開催されます。上映作品のチケット、もしくは半券で入場できます。

チケット:チケットぴあにて前売り券発売中
     全席指定 1300円

スケジュールなど詳細はHPにてご確認ください。
http://www.cqn.co.jp/ks2007/



『花の夢〜ある中国残留婦人〜』

監督・脚本:東志津
出演:栗原貞子
語り:余貴美子
プロデューサー:伊勢真一

中国残留婦人というのは国が終戦当時13才以上であれば、自らの意志で中国に残ったと見なしている女性たちを表します。そのため、帰国政策によって帰国した中国残留孤児と違って、帰国のための支援もなく、生活補助もありません。映画は、その一人である栗原貞子さんの口から語られる、苦難に満ちた過去と、慎ましく穏やかな現在とを対比させ、もう二度と戦争だけはやってはいけないという彼女の思いを強く静かに伝えます。

 

7月にポレポレ東中野で上映されましたが、再び今度は横浜で上映されます。本誌71号に東志津監督のインタビューを掲載しています。

2007年/カラー/97分

シネマ ジャック&ベティ HP >> http://www.jackandbetty.net/
いせフィルムHP >> http://www2.odn.ne.jp/ise-film/

★12月8日(土)〜21日(金) 各日10:00 横浜シネマ ジャック&ベティにて上映


2007年12月15日〜

『夜顔』Belle Toujours

監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:サビーヌ・ランスラン
美術:クリステイアン・マルティ
出演:ミシェル・ピコリ(アンリ・ユッソン)、ピュル・オジエ(セヴリーヌ)、リカルド・トレパ(バーテンダー)、レオノール・バルダック(娼婦1)、ジュリア・ブイゼル(娼婦2)ほか

アンリ・ユッソンはパリのコンサートで、友人だった外科医の妻セヴリーヌを見かける。思わず声をかけるが彼女は足早に去っていってしまった。38年前、美しかったセヴリーヌは夫に言えない秘密を持っていた。知っていたのはそのきっかけを作ったアンリ。彼はもういちどセヴリーヌと出会い、逃げ出そうとする彼女に「ある真実を打ち明けたい」という口実で、ディナーの約束をとりつけた。


©filbox films d'ici onoma

ルイス・ブニュエル監督の『昼顔』(1967年)は、カトリーヌ・ドヌーヴ主演。夫を愛する若妻が昼の間だけ娼婦となる、という当時話題となった映画でした。未見でしたので、DVDで鑑賞。この『夜顔』は、オリヴェイラ監督(1908年生まれ)がルイス・ブニュエル監督と脚本家へオマージュを捧げた作品です。
その38年後の設定で、アンリ・ユッソンを当時と同じミシェル・ピコリが、セヴリーヌをピュル・オジエ。過去に触れられたくないセヴリーヌを、可憐な女性として演じています。カトリーヌ・ドヌーヴが出演したなら、貫禄ありすぎて全く別の力関係になったのではと思います。
『マリー・アントワネット』でアカデミー賞をうけた、ミレーナ・カノネロのシックな衣装もみどころ。冒頭のコンサートシーンに使われたのは、ローレンス・フォスター指揮、カルースト・グルベンキアン基金管弦楽団。(白)

2006/ポルトガル・フランス/カラー/70分/35mm/
配給・宣伝:アルシネテラン

http://www.alcine-terran.com/main/home.html

12月15日(土)〜銀座テアトルシネマにてロードショー
『夜顔』公開にちなんで『昼顔』、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『わが幼少時代のポルト』も上映予定です。



『眠れる美女』House of the Sleeping Beauties

監督・脚本:ヴァディム・グロウナ
原作:川端康成「眠れる美女」
撮影:シーロ・カペラッリ
美術:ペーター・ヴェーバー
音楽:ニコラウス・グロウナ、ジギー・ミュラー
出演:ヴァディム・グロウナ(エドモンド)、アンゲラ・ヴィンクラー(マダム)、マキシミリアン・シェル(コーギ)、ビロル・ユーネル(運転手)、モナ・グラス、マリーナ・ヴァイス、ベンヤミン・チャブック、ペーター・ルッパ

実業家のエドモンドは15年前に妻子を自動車事故でなくしていた。以来人生に希望も見出せず、孤独に過ごしていた。彼を見かねた友人が、ベルリンの街にひっそりとある秘密の館を紹介する。老齢の顧客のみを迎えるのは、謎めいた上品なマダム。いくつかの注意と簡単な説明をうけ、奥まった部屋に案内される。ベッドには一糸まとわぬ美しい娘が横たわっていた。薬で眠らされていて、お客のいる間目覚めることはないという。エドモンドは、瑞々しい肉体に寄り添い陶酔の一夜を過ごした。


(C)2005 Atossa Film All Rights Reserved

川端康成「眠れる美女」が原作。舞台をドイツに移して、ベテランのヴァディム・グロウナが監督・脚本・主演。訪れるたびに違う眠れる美女が待っていて、それも慣れていたり、そうでなかったり、一人でなく二人だったり。エドモンドがすっかり溺れて欲が出てしまうのも無理はありません。どういう娘たちなのか、マダムは何者なのか?ミステリー色も加わった話題作。(白)

2005年/ドイツ/カラー/103分/ 配給:ツイン、ワコー
配給協力:グアパ・グアポ
12月15日〜渋谷ユーロスペースにてロードショー



『中国の植物学者の娘たち』原題:LES FILLES DU BOTANISTE(植物園)

監督・脚本:ダイ・シージエ(『中国の小さなお針子』)
音楽:エリック・レヴィ
出演:ミレーヌ・ジャンパノイ (『あるいは裏切りという名の犬』)、リー・シャオラン(『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』)、リン・トンフー、 グエン・ニュー・クイン(『シクロ』『夏至』『モン族の少女/パオの物語』)

中国人の父とロシア人の母の間に生まれたリー・ミンは、1976年の唐山大地震で両親を亡くし孤児院で育てられた。ある日、ミンは昆林の湖に浮かぶ植物園に住む植物学者チェン教授のもとに実習生として赴く。到着するなり、時間を守らないと厳しく叱る教授。娘アンは10歳の時に母を亡くし、封建的な父親と二人暮らし。同年代のミンを暖かく迎え入れ、いつしか二人の間には淡い恋心が芽生える。
軍人であるアンの兄ダンが里帰りし、教授はミンを嫁に貰うよう勧め、その気になったダンはさっそくプロポーズする。いやがるミンだが、アンは兄の任地チベットには家族帯同できないから、ここでずっと一緒に居られると結婚を勧める。結婚式の前夜、ミンとアンは結ばれる...。

禁断の愛をテーマにした本作は、中国での撮影許可を得られず、中国にほど近いベトナム北部で撮影された。ひたすら耽美を追及した映像に、幻想的な音楽や鳥の声が重なる世界は、トラン・アン・ユン監督の『青いパパイヤの香り』や『夏至』を彷彿させる。中国人とフランス人のハーフのミレーヌ・ジャンパノイはエキゾチックな魅力。『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』で悪女ぶりを発揮していた(というが覚えていない・・)リー・シャオランは、しっとりとした東洋の魅力。封建的な父親やデリカシーのない兄を見ていると、男を拒否して美女どうし惹かれあう気持ちもわからなくはないが、私には遠い世界。それにしても、同性愛が罪になるという世界も凄いが、父親が二人の関係を世間に暴露するなんて信じられない! (咲)

2006年モントリオール世界映画祭 最優秀芸術貢献賞(撮影監督ギイ・デュフォー)・観客賞(ダイ・シージエ)受賞

2005年/カナダ・フランス/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/1時間38分

配給・宣伝: アステア

★12月15日(土)より、楽園の夢に染まるロードショー  東劇他全国にて

公式HP>> http://www.astaire.co.jp/shokubutsu/



『Little DJ 小さな恋の物語』

監督:永田琴
脚本:三浦有為子、永田琴
原作:鬼塚忠「Little DJ 小さな恋の物語」ポプラ社刊
撮影:福本淳
音楽監督:佐藤直紀
出演:神木隆之介(高野太郎)、福田麻由子(海乃たまき)、広末涼子(たまき)、佐藤重幸(若先生)、村川絵梨(かなえ)、松重豊(捨次)、光石研(結城)、西田尚美(母)、石黒賢(父)、原田芳雄(大先生)ほか

ラジオがまだまだ輝いていた1970年代。元気いっぱいの野球少年の太郎は12歳。野球のラジオ中継の真似が得意で、深夜放送をこっそり聴く毎日だった。病気知らずの太郎が学校で倒れ、診断は白血病。海辺の病院に入院することになってしまった。痛くて退屈な入院生活に参っていたある日、レコードがいっぱいの部屋にたどりついた。そこは大先生の院内放送を流すスタジオだった。大先生はマイクに向かう太郎を見て、特別治療と称し太郎のDJで音楽番組を作ることを思いつく。院内放送は人気で、太郎は交通事故で入院していた海乃たまきと仲良くなる。


(C)Little DJ film partners

ベテラン子役だった神木隆之介くんも14歳。少年から青年に変わっていく境目の年頃です。細身ではかなげですが、病床でDJに挑戦し、好きになった女の子に思いを伝えようとする男の子をしっかりと演じています。太郎より一つ年上の明るい美少女たまきを、ほんとは年下の福田麻由子。病院の患者に松重豊、光石研・・・それぞれのエピソードにしんみりしました。荒れる太郎を諭すイケメンくんは新人の賀来賢人。要チェック。
思いをことばにして伝えることの大切さをしみじみ感じる作品です。子どもの時代や病気の友人を思い出したり、親の気持ちになったりでずいぶん泣けちゃいました。ハンカチを忘れずに。70年代のヒット曲がたくさん挿入されているのも嬉しいです。(白)

2007/日本/カラー/128分/ビスタサイズ/ドルビーSRD/
配給:デスペラード
http://www.little-dj.com/
12月15日(土)より、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほかにてロードショー

★東京国際映画祭特別招待作品に決定
10月24日(水)18:30〜 六本木会場screen7



『チャプター27』

監督・脚本:J・P・シェーファー
原案:ジャック・ジョーンズ著 「ジョン・レノンを殺した男」
撮影:トム・リッチモンド
音楽:アンソニー・マリネリ
出演:ジャレッド・レト(マーク・デイヴィッド・チャップマン)、 リンジー・ローハン(ジュード)、ジュダ・フリードランダー(ポール)、アーシュラ・アボット ジャンヌ・フルニエほか

1980年12月8日 ジョン・レノンはなぜ殺されたのか? 犯人は何者なのか?
1日目:マーク・デイヴィッド・チャップマンはニューヨークに降り立った。チャップマンは「ライ麦畑でつかまえて」の主人公ホールデンと自分自身を重ね合わせている。タクシーの運転手に同じ質問をし、同じYMCAに泊まる。敬愛するジョン・レノンの住むダコタ・ハウスに行き、ついにやってきた!と心を震わす。
2日目:本屋でジョン・レノンのインタビューが載っている雑誌を買う。「イマジン」の中で「財産を持たない世界を想像して」と歌うジョンの贅沢な生活を垣間見る。ホールデンは“偽善者は抹殺されねばならない”と言っている。彼と同じように売春婦を買い、同じように空しさがこみ上げる。
3日目:朝、チャップマンは「今日が実行の日だ」と確信する。

自らもジョン・レノンと、「ライ麦畑でつかまえて」のファンであるJ・P・シェーファー監督は、服役中の本人に200時間のインタビューを行って脚本を書き上げました。同じファンであるチャップマンがなぜ殺害に至ったのか、その疑問がスタートだったそうです。
チャップマンを演じたジャレッド・レトは、この役のために30kgも体重を増やしました。資料にあるチャップマンの写真にそっくりです。ダコタ・ハウスの前で何時間もジョンが出てくるのを待ち、彼を殺したい思いと葛藤するチャップマンを追うシーンは緊張感にあふれ、まるで自分もそこにいるような気持ちになりました。ダコタ・ハウスは実際にジョン・レノンが住んでいた建物で『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年/ロマン・ポランスキー監督)もここで撮影されています。(白)

2007/カナダ/1時間25分/ヴィスタサイズ/ドルビー/
http://chapter27.jp/
(C)2006 PA Fade In Films, INC. All Rights Reserved
12月15日(土)より、シネクイントほか全国ロードショー



2007年12月22日〜

『ペルセポリス』原題:PERSEPOLIS

原作・監督・脚本: マルジャン・サトラピ
共同監督・共同脚本:ヴァンサン・パロノー
声の出演:キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ダニエル・ダリュー

1978年、イラン。9歳のマルジはブルース・リーが大好きな元気な女の子。フランス系の学校に通い、両親や大好きなおばあちゃんに囲まれて幸せに暮らしていた。王政打倒の声が高まり、ついに翌年シャー(王)は国を去る。正義と自由に浮かれる人々。やがて、学校は男女別になり、ヘジャーブ(イスラームの教えに沿った服装)を義務付けられる。そして、イラクが攻撃してくる。革命後2年で国民の日常生活は180度変わってしまう。そんな中、「PUNK IS NOT BAD(パンクも悪くない)」と書いた上着を着て平気で町を歩くマルジ。心配した両親は、1983年、マルジをウィーンに留学させる。革命と戦争を経験した自分に興味を持つ人たちに「イラン人だし、それが誇りよ」と堂々と振舞うマルジ。いくつかの恋に破れ、ズタズタになった彼女はついに国に帰る決意をする。何も聞かず、暖かく迎えてくれる両親。大通りの多くが殉教者の名前に変わってしまった故国で、大学の美術学部に入学。青春を謳歌しはじめるが、恋人と車に乗っているところを革命防衛隊に咎められ、それならばと学生結婚。そして離婚。マルジはフランスに旅立つことを決意する。祖母と一緒に祖父の墓を訪れ、「誇れる人間になる」と誓うマルジ・・・

ブラジャーの中に潜ませたジャスミンの花の香りが素敵なおばあちゃん。「恨みや復讐ほど憎いものはない」「自分が何者なのかを見失わないで」「誰にでも選択肢はある」「公明正大に」と、おばあちゃんがマルジに語る言葉は人生の指針。

現在、パリを拠点に活動するイラン女性マルジャン・サトラピ。自伝的物語をグラフィックノベルで描いた「ペルセポリス」は世界16カ国で翻訳される。日本でも、2005年にバジリコより「ペルセポリス1・2」が刊行され、イラン愛好者の間で一躍話題になった。モノクロの独特の絵が目を引き付ける。 ペルセポリスは、紀元前550年〜330年、広大な領土を誇ったアケメネス朝の都。「ペルシアの都市」という意味の名前をこの都に付けたのは、この都を焼き払ったアレキサンダー大王。
私が長年イランの人たちと接していて感じるのは、自分たちは古代ペルシアからの伝統を受け継いできているという誇り。マルジャンが『ペルセポリス』というタイトルに込めたのも、まさにその思い。狂信的な故国のイメージを変えて貰えれば嬉しいとマルジャンは言う。

 私が初めてイランを訪れたのは1978年春。帰国直後に日本の新聞に「反体制集会に軍が発砲」と数行の記事が載ったが、まさか翌年王政が崩壊するなどとは思いもよらなかった。が、旅人ならずとも、イランの人たち自身にとっても、気がついたら世の中が変わっていたというのが実感だとよく聞かされる。『ペルセポリス』には、その様子が如実に描かれている。当時を経験した人たちにとっては追体験になるし、若い世代にとっては、当時を知る良い教科書となる。
マルジャンは、「政治やイラン社会そのものを語りたかったわけじゃない、一人の人間の成長の物語として観て欲しい」と語る。社会の変化の中で人生を歩んでいかなくてはならないのは、誰にでも共通すること。家族の愛情がいかに支えになるか身に染みる。人は一人では生きていけないこともつくづく感じた。(咲)

2007年/フランス/1時間35分/B&W(一部カラー)/1.85/DOLBY SRD
提供:ロングライド、アスミック・エース エンタテインメント
配給:ロングライド / 宣伝:樂舎

★12月22日(土)より渋谷のシネマライズほかにて全国順次公開

公式hp>> http://www.persepolis-movie.jp/

Web版特別記事『ペルセポリス』マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー両監督来日レポート


『タクミくんシリーズ そして春風にささやいて』

監督:横山一洋
脚本:金杉弘子
原作:ごとうしのぶ(角川ルビー文庫刊)
撮影:鍋島淳裕
美術:石毛朗
音楽:和乃弦
主題歌:「さかさまワールド」GOING UNDER GROUND
出演:柳下大(タクミ/葉山詫生)、加藤慶祐(ギイ/崎義一)、牧田哲也(野崎大介)、齋藤ヤスカ(高林泉)、滝口幸広(赤池章三)、坂口りょう(片倉利久)、相葉弘樹(井上佐智)、羽田野渉(吉沢道雄)ほか

全寮制の男子高校、祠堂学院2年のタクミは、ギイこと崎義一とルームメイトになった。学校一の成績、ルックスも抜群のギイはアイドル的存在で、ギイに憧れる高林はタクミをねたんでいる。バスケット部キャプテンの野崎はタクミにしつこく迫ってくるが、他人に触れられるのが苦手なタクミは逃げ回っている。ギイはタクミのそんなようすを見てやさしくかばってくれるのだった。

原作はボーイズラブ小説のタクミくんシリーズ、最初の巻がこの「そして春風にささやいて」です。15年前に出版されて累計400万部のヒットシリーズなのだそうです。愛されキャラのタクミにはD-BOYSの柳下大、ギイにはドラマ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」の加藤慶祐。ほかに『WATER』『スキトモ』『愛の言霊』とシネジャでも紹介した作品に出ているイケメンくんたちが、まとめて出演。寮の部屋のベッドや机が二つ並んでいたりして(普通は両端よね)環境的にまずいんじゃないでしょうか?しかしみんな若くて綺麗で目の保養〜(私はオヤジか?)。
試写にギイの加藤慶祐くんと風紀委員の滝口幸広くんが来ていました。映画では高校生ですが、ほんとはもっと大きいので(実際背も高い)私服の彼らは大人です。とってもハンサムでしたよ。役得、役得。(白)

2007/日本/カラー/75分/ヴィスタサイズ/
制作・配給:ビデオプランニング
宣伝:アルゴピクチャーズ
http://takumi-kun.com/

12月22日(土)よりシアターイメージフォーラムにてレイトロードショー



『かぞくのひけつ』

監督:小林聖太郎
脚本:小林聖太郎、吉川菜美
撮影:近藤龍人
音楽:FLAT THREE
出演:久野雅弘(島村賢治)、秋野暢子(母 京子)、桂雀々(父 宏治)、ちすん(大澤ゆかり)、谷村美月(桜井典子)、テント(薬屋)、九十九一、南方英二、浜村淳ほか

なんで男と女は一緒になろうとすんねやろ?

高校生の賢治は、大阪十三(じゅうそう)の不動産屋の息子。半年もつきあってる彼女の手もにぎれない。ホテルなんてますますダメだ。なぜなら経験もないのに、性病にかかったと思い込んでいるのだ。
女癖の悪い父に毎度大騒ぎする母は、賢治に1万円を渡し、そぶりのあやしい父の尾行をさせる。案の定若い女性と居酒屋でいちゃつく父親を見つけた賢治。その女性ゆかりの後をつけるが、ストーカーと間違えられてしまった。あわてて事情を話して諦めるように頼むも、ゆかりは聞き入れないばかりか、なんと不動産屋のアルバイトに応募、何も知らない母は採用してしまった。

小林監督はこの作品が初の監督作品。第47回日本映画監督協会新人賞に輝きました。大阪出身の俳優で固めた、普段着の大阪人を描いた人情喜劇です。撮影中男前ぶりを発揮したという秋野暢子は、大阪のおかんファッションも着こなして愛するがゆえの焼餅をやいてみせ、桂雀々は「男のさが」ゆえに女と見るとほっとけない、困ったおとんをまるで素のように演じます。怪しい薬屋のあやしい歌が流れる中、男たちはピンチをくぐり抜けられるのか、女たちは男を取り戻せるのかっ?
撮影中の逸話もこまごまと書かれた監督ブログは、映画にもまさるとも劣らない面白さです。落語がお好きなんだそうで、さもありなん。(白)

2006/日本/DVカラー/ステレオ/83分/
配給・宣伝:シマフィルム、第七藝術劇場、スローラーナー

http://kazokunohiketsu.com/index2.html
(ブログへのリンクあり)

12月22日より、ユーロスペースにてレイトロードショー



『再会の街で』Reign Over Me

監督:マイク・バインダー
プロデューサー:マイケル・ロテンバーグ
脚本:マイク・バインダー
撮影:ラス・オルソーブルック
美術:ピポ・ウインター
編集:スティーブ・エドワーズ/ジェレミー・ルーシュ
音楽:ロルフ・ケント
出演:アダム・サンドラー(チャーリー)、ドン・チードル(アラン)、ジェイダ・ピンケット=スミス(ジャニーン)、リヴ・タイラー(アンジェラ)、サフロン・バロウズ(ドナ・リマー)ほか

話すことで、癒されていく傷がある。
アランはニューヨークでクリニックを経営する成功した歯科医。傍目には愛する家族と順風満帆な人生を送っているが、仕事上の悩みもあれば、このごろは妻と二人になると居心地が悪い。精神科医のアンジェラを待ち伏せして、つい友人のこととして相談をもちかけてしまうほどだ。そんな折、大学時代のルームメイトのチャーリーと偶然再会した。彼は9.11で妻と娘、愛犬までを一瞬にして失って以来家族はないものと心を閉ざしていた。アランはチャーリーを訪ね、昔のように遊び歩き、チャーリーも少しずつアランに心を開いていく。



©2007 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

10代からスタンダップ・コメディアンとしてスタートしたアダム・サンドラーは、脚本やプロデューサーもこなし、近年はヒット作を連発しています。この作品ではくしゃくしゃの髪(髪型は重要だわ!)、だぶだぶの衣服でいつもとは全く違う表情を見せます。演技派のドン・チードル、サフロン・バロウズ、ジェイダ・ピンケット=スミス(ウィル・スミス夫人)らも、この繊細な物語を彩ります。チャーリーがスクーター(原付キックボード?)で縦横に走り回る姿を追うカメラワーク、彼の心情を現すように全編に流れる音楽も素敵です。9.11は私にもショックなできごとでした。心の傷が完全に癒えることはないでしょうが、こういう映画がアメリカでできるほど時間がたったのですね。(白)

2007/アメリカ/カラー/124分/35mm
http://www.sonypictures.jp/movies/reignoverme/index.html

12月22日(土)より恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー



『迷子の警察音楽隊』原題:Bikur Hatizmoret 英題:The Band’s Visit

監督・脚本:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ、ロニ・エルカベッツ、サーレフ・バクリ、カリファ・ナトゥール、イマド・ジャバリン

1990年代初頭、中東和平に明るい兆しが見えていた頃の、ある一夜の物語。
エジプトの警察音楽隊8名が、イスラエルのベタハ・ティクバ(“希望を開く”の意)に出来たアラブ文化センター開所式での演奏を頼まれて空港に降り立った。が、出迎えがいない! 誇り高いトゥフィーク隊長は、自力で行く!と、部下のカーレ ドに行き方を調べさせバスに乗るが、たどり着いたのは僻地のわびしい新興住宅地。バス停近くの小さな食堂の女主人ディナと英語でなんとか意志疎通をはかる一行。ディナから、ここはベイト・ティクバ(“希望の家”)だと聞かされる。バスは明 日まで来ない。エジプト領事館にも連絡がつかず、ディナの好意で、8人はディナや食堂の常連客の家に一晩泊めてもらうことになる。夫と別れ一人暮らしのディナの家に落ち着いたトゥフィーク隊長とカーレド。ディナは、若いカーレドの思わせぶ りな誘いを無視して、堅物のトゥフィークを夜の町に誘う。赤いワンピースに身を包み張り切るディナ。ぎこちなかった二人の会話も、ディナがトゥフィークの音楽への思いに敬意を示した頃から打ち解けてきて、お互いの身の上話を語り始める・・・。

冒頭のタイトルやキャスト紹介から仲良くヘブライ語とアラビア語が並ぶのが嬉しい。ユダヤ人とアラブ人、古くからの宿敵のように語られることが多いけれど、これほどまでに関係が悪化したのは近年のこと。言語的にも親戚関係にあるし、イスラ エル建国までは多少のいざこざはあったとしても共存して暮らしてきたはずだ。ディナが、「かつて金曜日の夜にエジプト映画が上映されていて、皆、オマー・シャリフやファテン・ハママに憧れてたわ」と語る場面があって、イスラエル建国後にも、そんな時代があったのだと興味深かった。
エジプトの警察音楽隊一行と、僻地の町に住むイスラエルの人たちとの一夜は、決して100%打ち解けたものではなかったけれど、触れ合う機会が、お互いの距離を縮めてくれることを感じさせてくれた。ブラックユーモアをちりばめ、ゆったりと 時が流れる作風に、パレスチナのエリア・スレイマン監督の作品を思い起こした。イスラエルの監督もアラブの監督も、お互い歩み寄りたいと叫んでいるのに、政治的亀裂は深まるばかりで悲しい。(咲)

2007年/イスラエル=フランス合作/87分/ドルビーSRD/1:1.85/35mm/カラー
配給・宣伝:日活株式会社
後援:イスラエル大使館

◆第20回東京国際映画祭コンペティション公式出品作品
10月23日 14:00〜 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6
10月25日 19:10〜 Bunkamura シアターコクーン

公式 HP >> http://www.maigo-band.jp/

★12月22日(土)より シネカノン有楽町2丁目ほか 全国順次ロードショー


『ルイスと未来泥棒』MEET THE ROBINSONS

監督:スティーブン・アンダーソン
脚本:ジョン・バーンスタイandミシェル・スピッツほか
原作:ウィリアム・ジョイス「ロビンソン一家のゆかいな一日」
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ダニエル・ハンセン(ルイス)、スティーブン・ジョン・アンダーソン(山高帽の男/バドおじいさん/タルーラ)、ウェズリー・シンガーマン(ウィルバー)、イーサン・サンドラー(ドリス/CEO/スパイク/ディミトリ)、アンジェラ・バセット(ミルドレッド)

本当に発明したかったのは《家族》かもしれない・・・

ルイスは12歳の男の子、赤ん坊のときから孤児院で育った。発明好きが邪魔して養子の引き取り先も決まらない。本当のママがどこかにいるはず、と画期的な発明を思いつく。忘れてしまった記憶を取り戻す装置を作り、自分が捨てられたときの記憶を思い出せば、きっとママに会える!
不眠不休で研究に取り組み、ついに完成!科学フェアでそのマシン「メモリー・スキャナー」を披露するときが来た。しかし、マシンは山高帽の男に盗まれてしまった。落胆したルイスの前に未来からやってきたという少年ウィルバーが現れる。

世界初の長編アニメ『白雪姫』から70年。ディズニーから初めての未来の物語が誕生しました。ユニークでファンタジックな未来都市が目の前に広がります。この画面を見た子供たちの顔が想像できます。原作は人気の絵本作家ウィリアム・ジョイスの「ロビンソン一家のゆかいな一日」です。短いストーリーの舞台を未来にし、「ほんとうの家族」を探すルイスの物語を加えました。自身も養子に迎えられた経験があるという、スティーブン・アンダーソン監督の切実な思いもこめられています。冬休みご家族でぜひごらんください。(白)

2007/アメリカ/カラー/ドルビーSRD/ビスタサイズ/1時間42分
配給:ウォルトディズニー モーションピクチャーズ ジャパン
(C)DISNEY ENTERPRISES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/lewis/index.html

★12月22日(土)より全国ロードショー


『パルス』(原題:PULSE)

監督:ジム・ソンゼロ
脚本:ウェス・クレイヴン、レイ・ライト
出演:クリステン・ベル、イアン・サマーハルダー、クリスティナ・ミリアンほか

不安げな様子で図書館にやってきた大学生のジョシュは、そこである人物と会う予定だった。しかし、彼を得体の知れない影が襲う。
マティは、最近連絡のとれない元彼のジョシュを心配していた。自宅に帰ると留守電にジョシュからのメッセージが残っていたが、明らかに様子がおかしい。翌日、マティがジョシュの自宅を訪ねると、荒れ果てた部屋の中にジョシュはいたが、やつれて別人のようだった。そしてマティの目の前で首つって死んでしまう。
彼の死後、大きなショックをうけたマティと友人たちのチャット中に、ジョシュからの「help me」のメッセージが。一方、大家が勝手に売りさばいてしまったジョシュのパソコンをデクスターという青年が手に入れる。マティは彼のイタズラと思い非難するが、彼はまだパソコンの電源すら入れていなかった。デクスターがそのパソコンの電源を入れたとたんに現れたのは「幽霊に会いたいですか?」というメッセージ。その頃から、次々に人が姿を消すという奇妙な社会現象が起きていた。

黒沢清監督の『回路』(2001年)のリメイクですが、ネットを通じて人間の想像を超えた存在が蔓延し人間の生存を脅かすという基本部分以外は、まったく別もの。アメリカらしい学園ホラー映画になってます。つっこみどころ満載(笑)。(梅)

2006年/アメリカ/35mm/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/86分
配給:アートポート
宣伝:ハル・メディア・ランチ

公式 HP >> http://www.pulse-movie.jp/

★12月22日(土)よりシアターN渋谷ほか全国感染ロードショー
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
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