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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
Sept. 5, 2001

『ザ・ミッション/非情の掟』特集その3
『ザ・ミッション/非情の掟』初日レポート

9/1 13:00〜 キネカ大森にて

プレミア上映の熱気から、「1時間前に劇場に行ってないと座れないのでは」と思っていたが、当日寝坊。「もう行くのをやめようか」という思いがチラと頭をかすめたものの、やっぱり初日の様子が気になる。急いでキネカに向かった。エレベーターを降りると、劇場ロビーは長蛇の列。「う、やっぱり……」と嬉しいショックを受けて、整理券を見ると番号は50番台。並んでいる人々は『千と千尋の神隠し』を見に来た人たちであった。さすがジブリは強すぎる。

12:40開始の『千』組がどどっと入場し、ロビーには『ミッション』組が大半、あとわずかに『大河の一滴』組が残される。ヤン・エンタープライズの人たちも総出で初日の様子を見守っている。初日プレゼントとしてジャンユーサイン入りポストカード(実は試写状)とヴィダーinゼリーコラーゲンオレンジ風味が配られる。テアトル系の映画館はヴィダーinゼリーを配るのだろうか? 思いがけずコラーゲン補給ができて嬉しい。

82席のキネカ2は満席、目測で男女比は1:3くらい。プレミア上映よりも男性の割合が増えている。年齢層は30代以上といったところ。初日らしい興奮が満ち満ちている。BGMもジャンユーの歌と『ザ・ミッション』のテーマ曲が交互に流される。と、キネカ大森劇場スタッフから上映前に、ジャンユーに向けて来日へのお礼も兼ねたメッセージを録画することが告げられる。その前に簡単な挙手アンケートがあった。「晩餐会に行った人」「プレミア上映に行った人」「誰のファンか」等々。俳優の人気投票では、この映画は登場人物がそれぞれにいいということもあって票が割れていた。前方にはビデオがスタンバイされ、客席へ白い紙が回されてくる。紙には広東語のふりがな付きでこう書かれてあった。「今日は『ザ・ミッション』の公開初日です。(先日は)日本に来てくれてありがとうございました。私たちは『ザ・ミッション』が日本で成功することを信じています。また日本に来てくださいね!」これを広東語で言うのである。前にファン代表とおぼしき2人組の女性が出てきて、発音指導を行う。意外にみんなスムーズに発音しているのには驚きだ。観客の一人からの発案で、メッセージを言った後に両手を銃を撃つように前に突き出して「ズキューン」とポーズを入れることになった。何だかテンションが高いぞ! ノーマルテンションの私はついていくのが精一杯である。何とか録画し終わった後、不在だった私の隣の席の男性が戻ってきた。この人はどう見ても香港映画ファンではなさそうである。なぜこの人は『ザ・ミッション』を見に来たのだろうか。知りたい知りたい…… しかし話すタイミングを失したまま映画が始まってしまう。

さて本日の見どころは、最初と最後の語りの部分がどう映画に影響しているか。昨秋の香港映画祭で上映されたときは、北京語部分のナレーションの音声、字幕とも入っていなかった。プレミア上映を見た人によれば、日本公開バージョンでは字幕がついているという。しかし、その人の仲間内では「ないほうがよい」という意見が大勢を占めたそうだ。もともと私はVCDで見たときから、このナレーションは何と言っているか、正確なところを知りたかったので、今回字幕がついたのは歓迎できる。が、音声なしで字幕が入るのにはちょっと違和感があった。しかも字幕が次に移るスピードが速く、説明書きを目で追うので精一杯。特に最初のナレーションなんて、せっかく例の音楽が高らかに鳴り、いい感じで映画の中に入っていけそうな流れがこの説明で一度断ち切られる気がした。字幕がないときは字幕を欲しがり、字幕がつくとないほうがよかったかもなんて無いものねだりだろうか。映画の字幕も繊細なものなんだなと思う。

映画が終わって、気分が昂揚していたせいもあり、隣の男性に「どうでしたか?」と話しかけてみた。「面白かったよ…… やっぱり人情だねえ」と高評価をいただいた。前評判が高かったので見にきたそうだ。前評判って一体どこから聞いたんだろうとさらにうかがいたかったが、「この映画はもっと大きいところでみんなにみてもらいたい映画だね」という映画通氏の意見に同調するうち、話は日本映画に移ってしまう。「こういうのを見ると、日本映画は負けてるね……『RED SHADOW 赤影』なんて子供だましだし」。香港映画の中でも傑作との呼び声も高い本作と、傑作かどうかは何とも言えない作品を比べてしまうのも、邦画がかわいそうな気もするが。しかし同時期に公開されるとあっては、邦画は配給会社が選び抜いてきた外国映画と客を奪い合いしなくてはならないのが現実なのだから同情は禁物とも言える。そんな辛口の彼でも『陰陽師』は面白かったそうだ。キネカ大森でも10月に公開されるが、しかし、公開前の作品をどこで見ているのだろうか? もしかすると映画関係者なのかもしれない。さすれば、前評判の謎も解けるのだが……。ロビーには興奮覚めやらず、仲間同士で話している人、ぴあの満足度調査隊に捕まっている人、ジャンユーの舞台挨拶のビデオに見入っている人など様々だった。もしもぴあ調査隊から声をかけられたら、「120点です」くらいは言ってみようと思っていたが、イヤラシイ企みを見抜かれたのか、そのチャンスは訪れなかった。

今年は『初恋のきた道』『花様年華』『山の郵便配達』などミニシアターでヒットしたアジア映画が、単館での上映終了後、地方のシネコンや、大作をメインにかけているような映画館に回ってきている。『ザ・ミッション』もそうなってほしいし、それだけの力のある映画だと思う。日本の映画ファンの目の高さを世界に知らしめすべし! と鼻息荒く意気込んでみるものの、ディズニーシーもオープンしたし、はてさてどうなるのか…… 定点観測はまだまだ続く。

『ザ・ミッション/非情の掟』特集
(0) 『ザ・ミッション/非情の掟』を観に行こう!
(1) フランシス・ンを囲む晩餐会レポート
(2) フランシス・ン舞台挨拶
(3) 『ザ・ミッション/非情の掟』初日レポート
(4) 『ザ・ミッション』はジャンユーで見ろ!

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(文:まつした)
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