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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
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『ホンコン旅日記』その5

June 8, 2001

4月29日〈後半〉

 はや金像獎から1ヶ月以上も経ってしまいましたが、さて、前回の続きを。17:00に一緒に取材をする他のメンバーと待ち合わせをし、現地を見つつ、スター入場時の撮影位置の打ち合わせをしたにはしたが、去年とはまた勝手が変わっているので、この分担で吉と出るか凶と出るかわからない。とりあえず、私はテープカットのセレモニーが行われた文化中心の1階ステージ前に陣取る。しかし、一緒に場所取りをしている香港マスコミの数が少ない。うーむ、こっちを選んだのは失敗だったかと思いつつ、1列目にいるこの場所から離れるのも癪である。こっちに来たスターの写真を精一杯撮るしかないと腹をくくり、式が始まるのを1時間以上待つ。

 式は始まらないといっても、映画関係者はぞくぞくやってきて、飲み物片手に談笑を始めた。その中にマンフレッド・ウォンの姿を見つけ、喜びいさんで、すかさずシャッターを切る。去年も彼を撮るチャンスはあったのだが、同時に来た呉志雄にカメラを向けている間に、スーッと通り過ぎて行ったという悲しい思い出があったのだ。今年、撮影できてもっとも嬉しい写真のひとつである。芸能人も入場してきて、しばしカメラタイム。車[女宛][女宛]は、記者に靴のブランドを聞かれ、サンダルを脱いで名前を見たところをばっちり写真に撮られていた(りんご日報)。グレイス・イップ、Swing、ジジ・リョン、ドゥドゥ・チェンなど、ステージで歌う人や司会者がこのセレモニーに出席した。毎度のことだが、少ないといっても香港マスコミのパワーは強力で、私の後ろにいた人はいつの間にか真横に来ているし、前に出ないよう張られたロープも、真ん中部分が人の力で大きく前へせり出している。テープカットと記念品の楯を出演者に渡して式は閉幕、急いで外のスターロードへと向かった。

 外へ出、人が少なかった階段の踊り場に場所を取ると、ちょうどニコラス・ツェーがやってきたところだった。しかし、まわりに人がいないということからもわかるように、ここで止まってポーズを決めてくれる人は少なく、たいていは素通り。スタートからつまづいているため、またしても場所取り失敗。とにかく、止まろうと止まるまいとガンガンシャッターを切ることに。ほどなく、ロイ・チョンがやって来た。去年の、ワインレッドのシャツに同色+黒の柄ネクタイ、グレーに白のストライプのスーツという壮絶な組み合わせの衣裳と比べると、今年は髪型ともどもすっきりしている。やっぱりノミネートを意識したのだろうか。……実は私が今回の金像獎行きを決めたのは、どうしても彼のインタビューをとりたいがためであった。去年、授賞式後のパーティーでチャンスはあったのだが、本人を目の前に上がりまくって、頭が真っ白になってしまったのである。後にどんなに後悔したことか。よし、今年こそは緊張しようが何だろうが、チャンスがあれば逃すまいと固く誓っていたのです。しかし、あることに気がついた。そういえば、去年のパーティーって、賞をもらった人か、ノミネートに関係なかった人しかいないんじゃなかったっけ……というわけで、「インタビューをとる」という目標が、『江湖告急』では受賞が難しかろう(失礼!)と、「写真だけでも押さえて載せる」と縮小せざるをえなかったのです。そのロイが階段を上って来た。慎重にシャッターを切るタイミングをはかる私……と、突然彼はくるりと向きを変えて階段を下り始めた。ど、どうして? 忘れ物でもしたのだろうか。このとき撮った写真は、見事他の人たちと逆向き。泣ける。すぐ後にやってきたチョウ・ユンファと言葉を交わし、握手をして去ってゆくロイ。行方をチラと目で追うものの、ユンファにアンディ・ラウと立て続けに大物がやってきたので、そっちをフォロー。ずい分後に再びやって来たロイは、階段を一段抜かしくらいのスピードで猛烈に駆け上がり、写真を撮るひまを与えてくれなかった。さらば、金像獎の目標よ……。

 金像獎での女優陣の衣裳をふりかえってみると、去年に比べてミニスカートが目立つ。というより、ジジ、ジョイ・ウォン(背中のあきもすごい!)、ミシェール・ヨーら、目立った人がミニを穿いていたというべきか。個人的にミス・フォトジェニックと崇拝している(?)ミシェールはピンクのスパンコールのドレス。日に焼けた肌とマッチして、大人の女性のかわいらしさが表れていた。本当に笑顔がきれいな人だ。しかし、私が撮った写真の中で、ベストスマイル賞はウォン・チン氏に差し上げたい。ドラえもんのような、心なごむ笑顔。眼鏡がフラッシュで光ってしまったのが残念だ。

 金像獎自体のレポートは次号をご覧いただくとして、その後行われたパーティーの話を少し。ホテルの入り口に着くと、偶然、車から降りてきたロイ・チョンと遭遇。とっさに呼び止め、写真を撮らせてもらう。「パーティーに来たなんて、これは何としてもインタビューを!」と闘志がみなぎる反面、食べ物が喉を通らないほど、がちがちに緊張しまくる私。他のメンバーが到着するまで、他のスターの写真を押さえに入る。パーティー会場前のスペースでは、会場に入る前のスターを捕まえ取材することができるのだ。パーティー会場に入らず、このスペースで取材を受け、そのまま帰っていく人も結構いる。そういうスターの今年の代表格はエディソン・チャン。誰も申込まなくなるまで延々取材を受け続け、マネージャーらしき人とそっと帰っていった。新人とはいえこの姿勢はえらいと、彼に対する印象がすっかり変わってしまった。ン・ジャンユーも大人気。階段を上がってきた途端、ぐわーっとカメラマンに囲まれ、全然近付けない。そのうちにまた、階段を下っていってしまったのでした。しかし何といっても、この日、1番多くの記者に囲まれた人はアン・リーだろう。臨時に設けられた記者会見席には、脚立の上に立ったカメラマンらで、あっという間に人垣というか人囲いができていた。人間ドームとも言えるかも。

 そんなこんなの喧噪の中、パーティー取材を終え、ホテルに帰ったのが午前2時近く。疲労と興奮で、4時まで眠れませんでした。だから余計、風邪を引きやすい状態だったのでしょう。さて、再三話題にしてきたロイ・チョンのインタビュー、次号に掲載しますので、ファンの方は今しばらくお待ちください。長々だらだらと続けてきたこの日記ですが、そろそろ次号の準備に入りますので、この辺で終わりにしたいと思います。お読みくださった皆さん、ありがとうございました!

〈補記〉ひとつ書き忘れました。アン・ホイ監督の最新作『幽霊人間』の予告編を見てきました。予告を見た限りでは、『チャイニーズ・ゴーストストーリー』の美しさプラス、『リング』などのホラーものを意識した怖そうなつくりで、アン・ホイ作品にしては異色作の雰囲気。ちょっと変なメイクをしていたスー・チーは霊視のできる看護婦役。共演者はイーソン・チャン、ジョー・コク、サム・リーなど。わたし的にはとっても期待大の作品。

裕華
チムサーチョイの裕華前にて。 飾りには「香港是家」とある。私が次に帰宅するのはいつなのか?

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(文・写真:まつした)
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