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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
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『ホンコン旅日記』その2

May 7, 2001

4月27日

 朝食は大排[木當]でフレンチトーストを食す。しかし、この日のものは油っぽく、いつもよりおいしく感じなかった。しかも、ここのアイスミルクティーの味は好みでないのに、注文して1口飲むときまで、いつもそのことを忘れている。今思えば、この朝食の失敗は、この日の私の運命を暗示していたのかもしれない。その後、金像獎のプレス受付をするため、KさんとチムサーチョイのHMVで待ち合わせて一緒に行く。昼食をKさんと一緒に食べた後、私は、イーキンがテレビ番組で薦めていたデザート屋に行くため1人西貢へ。でも、今ご飯を食べたばかりでお腹いっぱいなんだよな……。デザートは別腹という人はたくさんいると思いますが、私は「甘いものは嫌いじゃないけど、好きでもない」という微妙なポジション。しかし、果物は大好きで、マンゴーは好物のひとつなのです。テレビに映っていたマンゴーケーキ1個食べるために、わざわざ出かける…… 考えてみれば贅沢な話です。

 西貢に行くには、まず、地下鉄で彩虹まで行き、そこからバス。バス停のとなりに小巴(ミニバス)乗り場もあり、西貢行きが何台も停まっている。「小巴のほうが速そうだなあ、でもバスのほうが安上がりだし」とバス停で迷っていると、お父さん、お母さん、おじいさん、親戚のおばさん又はお母さんの友達とおぼしき人が、それぞれ子供達を連れてバス停にやってきた。おばさんらしき人が「小巴にしよう」と言ったかはわからないが、お母さんが「バスのほうが安全でいいわよ」みたいなことを大声でさんざん強調していたので、私もつい「そりゃ安全なほうがよかろう」と説得され、次々出発する小巴を尻目にバスを待つことにする。10分弱でバスに乗ることができた。

 バスの中で、駅の売店で買った「men's uno」をぱらぱらとめくる。表紙の高橋克典みたいな人は誰かと思ったら、ピーター・ホー。すっかり大人路線になっちゃってるけど、私としては、「HEY! LOVER」のジャケットみたいな健全純朴青年的雰囲気をもう少し続けてほしかったなあ。今のスタイルもかっこいいとは思うが、ちょっと違和感を感じる。

西貢

 山を切り開いたような緑多い道路を抜けて、20分ほどで西貢へ。目当ての店はバスが通る道沿いにあるので、すぐわかるはず……何と閉まってる! ショックを受けたものの、「ま、店を尋ね歩くなんて、柄にもないことをするからこうなるんだ」と自分を慰める。それより、せっかく来たのだから、西貢でのんびりしようと堤防のほうへ足を向ける。海の匂いがちょっと臭めなところに生活感が漂う。海沿いには、いけすから選んだ魚を即料理して食べられるレストランが並んでいるが、今の時間はどこもひまそうだ。

西貢
堤防に人が集まっているので覗いてみると、船の上にいる漁師が捕れたばかりの魚を売りに来ていた。魚やお金のやりとりは、柄の長い網で行う。私が見たときには、おばあさんがちょうど「少ないねえ」と文句を言いつつ、海老を買っていたところだった。買っていたのはこの人くらいで、人手の割にはあまり売れていなかった。堤防には船の立ち入り禁止海域の注意書きが立てられており、普段の香港観光からは見えてこない緊張感を感じた。

 結局、西貢まで赴いて、得たものはイーキンの「Beautiful life」のポスターのみ。レコード屋でもらってきたのだ。ずうっと放っておかれたため、ポスターの先が丸まっているのが泣ける。あとは喧噪から逃れて、久々にのんびりすることができたのが嬉しい。ついつい雑踏の中を徘徊しがちだけど、リフレッシュのために、これからは沙田や島めぐりを日程に組み込もうと素直に思った。

西貢

 夕方、太子へ。ニコラス&スティーブンらが監督したオムニバス映画『恋愛起義』を見に、GV旺角(注 映画館)に行くためだ。しかし、ついつい駅前の聯合廣場で寄り道をしてしまう。日本雑誌とVCD、若者ファッションを求めている人にはおすすめのビル。2階の漫画屋で「中華英雄」セットを見つける。〜篇、〜篇と3つに分かれていて、ひとつの篇が9冊くらいのボリューム。1冊38HKドルだが、中にはなぜか120HKドルの巻もある。「特価9冊342元」の札が貼られていたが、342HKドル……今の私には手痛い額。面白ければいいけど、万一つまらなかった場合どうしよう…… さんざん迷って、結局やめにする。

 GV旺角に着くと、ちょうど『恋愛起義』が始まるところだった。第1話はウィン・シャが監督した『非走不可』で、第2話がニコ&ステの『愛得鎗狂』なのだが……共に爆睡。まともに見たのは第3話『不得了』だけ、という情けない有り様。『不得了』は、若い男女(19歳と16歳)の出会いから本当の恋人らしくなるまでを描いた話。以前オーブリー・ラム監督の『12夜』を見たときも思ったが、「センスはあるけど、どうでもいい話だなあ」というのが率直な感想。第1作ということを考えれば、上出来といえるのかな。もう少しどうでもいい話を力で見せ切る技を身につければ、面白い映画を作る人になるかもしれない。このオムニバス映画の主人公を演じているのは、みな新人だそうだが、これから活躍しそうな予感。でも、第2話の主人公が出てきたとたん、観客が笑ったのは何でだろう?

 その後20時から、同じくGV旺角(シネコンなのだ)で、ニコラス、セシリア主演の『老夫子2001』を見る。これは以前から気になっていた映画で、漫画の主人公(なんと3D)と俳優との共演が見ものの作品。原作者の王澤も本人役で特別出演している。肩のこらない楽しい作品で、私の後ろに座っていた子供も、隣に座っていたおばあさんも、大きな声をあげて笑っていた。家族連れで楽しめるところも、ヒットの理由かもしれない。同じ時間に上映されていた『九龍冰室』はガラガラだというのに、こちらは8割方の入り。とにかく、漫画のキャラクターと実写が、想像以上に違和感がないのにびっくり。陳恵敏、劉以達、張堅庭ら脇役のコミカル演技も楽しい。最後にはメイキングの過程も流れ、香港人にしては珍しく、お客さんもすぐには席を立たずに見ていた。

 それから、流れ流れて旺角へ。夜ごはんは適当に入った明苑という名の餐廳で。私は外で炊いていた[保/火]仔飯を頼んだので、やけに待たされたが、ほかのお客さんは麺を頼んでいる人が多かった。私の前に座ったお姉さんも、イカ団子麺と油菜を食べている。ここの店員のテーブルの拭き方が、だらんと垂らしたタオルのはしでテーブルの一部分を1回なでるだけと、余りにも適当すぎてグー。それはそうと、「MEN & FITNESS」にも書いてあったが、本当に若者、特に女性の喫煙者が増えた。この餐廳でも半分くらいの女性客が吸っていたのではないか。みんな灰を下に落としている(灰皿がないのです)。なかなか美味しかったし、店のローカルな雰囲気もよかったので、これから旺角でご飯を食べる場所に困ったらここに寄ることにしようかなあ。

その3へつづく〜

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(文・写真:まつした)
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