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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

「ニュー香港ノワール・フェス」

8月11日(土)より9月6日(木)まで、新宿武蔵野館にて下記3本の香港ノワール・シネマが公開されます。



『強奪のトライアングル』


『コンシェンス/裏切りの炎』


『やがて哀しき復讐者』

この中で、『強奪のトライアングル』は、2007年に開催された香港映画祭(東京国際映画祭の中のプログラム)で、『鐵三角』(原題)というタイトルで上映されました。シネマジャーナルでは、この2007年の香港映画祭上映時に徐克(ツイ・ハーク)、林嶺東(リンゴ・ラム)両監督にインタビューしましたが、シネマジャーナル72号に掲載された記事をHP用に転載します。


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『強奪のトライアングル(鐡三角)』
ツイ・ハーク、リンゴ・ラム 2人の監督に聞く 2007年10月24日

取材・まとめ 米原 弘子
取材・写真  渡辺 典子

 お金に困っている飲み仲間3人(サム、フェイ、モク)の前に、謎の老人が現れ、政府ビルの地下に古代の秘宝が眠っていることを告げる。3人がビルに忍び込むと、出てきたのは棺に入った数百万ドルはくだらない黄金の礼服だった。この秘宝に3人のほか、サムの妻や彼女の愛人の刑事、そして中国本土のギャングも絡んでいく。欲に目がくらんだ3人の友情は? そして、夫婦の愛は果たして?と、この荒唐無稽なストーリーを料理したのは、香港映画ファンであれば知らぬ者はいない監督3人、ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トーだ。
香港映画祭でオープニング上映されたこの『鐵三角』は、30年来の親友同士である3人が、香港初のエクスクィジット・コープス(つなぎ創作)のスタイルで1/3ずつ、文字通り「鐵三角」(深い絆という意味だそうだ)となってリレー方式で撮った作品である。やっぱりいいなあ、香港映画は。こうでなくっちゃいけないなあと、最近とんと御無沙汰の香港映画の面白さを再認識させてくれた。まあ、正直な話、どこで監督が変わったのか、わかったようなわからないような…だったが。
それをあれこれと想像するのもこの映画を楽しむ醍醐味だろう。ちなみに、くたびれた冴えない中年男サムを演じるのは、最近ますます円熟味を増すサイモン・ヤム。ちょっと調子がいいけど、憎めない若者フェイにはルイス・クー、モクは中国俳優のスン・ホンレイが演じている。

 そしてオープニングセレモニーの翌日、ツイ・ハーク、リンゴ・ラム両監督からお話を伺うことができた。本当はルイス・クーも出席のはずだったが風邪のため欠席。香港ノワール映画さながら黒いサングラス姿でおふたり登場。

左 徐克(ツイ・ハーク)監督、右 林嶺東(リンゴ・ラム)監督     左 林嶺東(リンゴ・ラム)監督、右 徐克(ツイ・ハーク)監督
左 徐克(ツイ・ハーク)監督、右 林嶺東(リンゴ・ラム)監督   左 林嶺東(リンゴ・ラム)監督、右 徐克(ツイ・ハーク)監督  

Q:3人でリレー形式で撮られたということですが、登場人物のキャスティングはどなたがされたのですか?

ラム監督:一番最初に撮ったのはツイ・ハークさんですので、キャラクター、ストーリー、衣装まで彼が決めました。残りのふたりはそれについていきました。

ハーク監督:リレー方式でしたが続けて撮ったわけではなく、それぞれの間、2,3ヶ月あきました。このことは役者にとっては、やはり一気に撮った方がやりやすかったと思います。また3通りのそれぞれのパートの脚本があり、しかも自分のカラーが強い監督なので、おそらく役者にとっては大変だったと思います。

Q:どこからリンゴ・ラム監督、どこからがジョニー・トー監督が撮ったのか、ファンとしては気になるところですが?

ラム監督:そんなにはっきり言わなくてはならないですか?(笑)
実は最初は、はっきり分けた方が面白いと思ったのですが、3人で話し合った結果、ツイ・ハークさんの作品をよく観ている観客、ジョニー・トーさんのスタイルをよく知っている観客は、観ればわかるのではないかと。そうなると残りは私の撮った部分になるわけですから。謎を残した方が観客も面白く観てもらえるのではないかということになりました。
ヒントを言えば、人間関係の展開や表現が豊かなところがツイ・ハークさん、人間の心の内面を出すのが私の持ち味、そしてジョニー・トーさんの場合は、映画のメインテーマは何であるのか、メッセージはどこにあるのか、エンディングとしての締めを表現することに強いところだと思います。大まかに言うと、そういう役割分担です。

Q:脚本は、それぞれの監督ごとにあったのか、それとも1本あって、それを3人で分担したのでしょうか?

ハーク監督:私の脚本は1/3の部分しかありませんでした。なぜ3人でリレー方式で撮ったかというと、ストーリーの展開や演出方法は、3人それぞれカラーが違いますので、それを最大限に生かすにはどうしたらいいかというのがキッカケだったのです。
リレー方式の面白さというのはお互いの部分が謎だということです。最初の部分は私が撮ったのですが、カンヌで観るまではお互いの部分は知りませんでした。お互いに刺激を与え合うようなコラボレーションが面白かったです。初めての試みでしたが、作り手にとっても観客にとっても面白かったのではないかと思います。

ラム監督:実は撮影前に2ヶ月ぐらい3人で話し合ったんです。最初から最後まで、皆で話し合って通しのものを作ろうという話もありましたが、2人が自己中心的だったので(笑)、結局まとまりませんでした。無理だとわかったので、バトンタッチして撮ることなりました。

林嶺東(リンゴ・ラム)監督     徐克(ツイ・ハーク)監督
林嶺東(リンゴ・ラム)監督        徐克(ツイ・ハーク)監督

Q:それではカンヌで本当に完成作品を観られたのですか? 最後ドタバタチックになっていましたが、本当のところどのように思われましたか?

ラム監督:本当にカンヌで初めて観ました。エンディングはジョニー・トーさんらしいと思いました。彼の持ち味が最大限出ていると思います。今回の狙いは、それぞれの持ち味を生かすことでしたから満足しています。

ハーク監督:私にとって意外だったのは、コメディの要素が強かったということですね。観客も意外だったと思いますが、そういう意外性を持たせてくれたので満足しています。

Q:エピソードや苦労話があったら教えて下さい。

ラム監督:1人当たり30分程度ですので、それほど苦労はなかったです。面白かったのは、私は真ん中の部分を撮ったのですが、最初の1/3は出来ていたので役者に観るかと聞いたら、観ても意味がないと言っていました(笑)。観てもヒントを貰えない、残りはどのように展開されるかわからないからだと思いますが、このことは役者の本当の持ち味を引き出すには良かったと思います。場面に合わせてどのように演じるか、自分で考えるからだと思います。

ハーク監督:私は最初に撮ったので、ラムさんに難問を残そうと思いました。映画の中で箱の中身を開けるのはラムさんに託したのですが、箱の中の金と、ヒロイン(サムの妻)に深い繋がりがあったことが意外でした。またラムさんのところでは、ヒロインは死んだと思っていたのが、ジョニー・トーさんで生き返ったことも意外でした(笑)。

ラム監督:この映画は3人の男の友情と、男と妻とその不倫相手の愛情の話です。私のところでヒロインは死んでもいいと思っていましたが、ジョニー・トーさんのところで、友情も愛情も復活していたのが面白かったです(笑)。それぞれ、どのように展開されるのか、サプライズの連続で大変面白かったです。


映画紹介は下記をごらんください。

>> 「ニュー香港ノワール・フェス」

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