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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線
『台北に舞う雪』公開記念

菁桐駅

 私が初めて観た台湾映画は20年くらい前に観た『悲情城市』。冒頭に玉音放送が流れ、「台湾は解放された」という声が流れた時、台湾は長い間日本の植民地だったのだと実感した。この映画に出てきた日本時代の建物や、「とうさん」「おばさん」「にいさん」など、日本語の言葉が日常で使われていることにびっくりした。この映画がきっかけで台湾映画に興味をもち、その後たくさんの台湾を観るようになったけれど、台湾には行ったことがなかった。いつか行ってみたいと思いつつ、なかなか行く機会もなく長い年月がたっていた。

 アンディファンの私は、一昨年(2008年)アンディ・ラウのコンサートが台湾であると聞き、これは行かねばと思い、初めて台湾に行った。不純な動機ではあったけど(笑)、なかなか行くことができなかった台湾に初めて行き、街と人々にすっかり魅せられてしまった。そして、去年(2009年)12月、また台湾に行ってきた。

 この1年の間(2008~2009)に、『雨が舞う~金瓜石残照~』『風を聴く~台湾・九份物語~』『台湾人生』『一年之初』『バッテンライ(八田が来た)』『台北に舞う雪』『台北24時』『あなたなしでは生きていけない』『お父さん元気?』『海角七号 君想う、国境の南』など、台湾を舞台にした日本の映画や台湾映画を観て、また台湾に行ってみたくなったのだ。そんな中から、『台北に舞う雪』のロケ地「菁桐」のある平渓線周辺を紹介したい。

 菁桐は台北から電車で約一時間半。『悲情城市』の公開以来、観光地として有名になった九份の最寄駅、瑞芳駅で平渓線というローカル線に乗り換えて約40分。終点である。菁桐のひとつ手前が平渓。平渓線一帯はロケ地になったところが多い。途中の十分は、線路のそばまで人家が迫っていて、ああ、この景色、いろいろな映画で観た! あとで絶対寄りたいと思いつつ終点の菁桐へ。


平渓の街 車窓から

 菁桐駅は古い駅で屋根の苔に年代を感じる。『台北に舞う雪』の中では、この苔むした屋根が2回くらい出てきた。駅前は土産屋が軒を連ねている。主人公モウが菁桐の街を入ったり来たりするシーンで、何度もこの駅前が出てきた。願い事を書いた竹筒が吊るしてあるシーンも出てきたけど、駅前のお土産屋でその竹筒を売っていた。それをたくさん吊るしてある建物もすぐそばにあった。また、駅のすぐ隣に鉄道故事館というのがあって、そこには鉄道マニアの人が喜びそうなものがたくさんあった。その建物の前に郵便ポストがあって、天燈のミニチュアがすだれのようにかかっていた。ここのシーンも映画の中で出てきた。この駅と駅周辺は、映画の中で何度も出てきたが、絵になる風景だと思う。ノスタルジーを感じた。


         菁桐駅のホーム              菁桐駅の苔むした屋根       

      菁桐駅前のお土産屋さん通り        駅前の郵便ポスト。天燈と竹筒のすだれ   

     願い事を書いた竹筒を吊るした建物   犬の多い菁桐&前方に『台北に舞う雪』に出てきた喫茶店がある

 駅を出て右の方に行くと、少し歩いた橋のたもとに炭鉱夫の銅像があった。十分、九份、金瓜石と、この辺一帯は、日本時代から鉱山地帯だったという。この日は平渓線巡りの後、金瓜石、九份、基隆に行く予定だったので、次の電車までの一時間弱、周辺を散策するが、『台北に舞う雪』のロケ地らしき、家や建物は見当たらない。でも、田舎らしい景色、古い日本家屋が残っていた。後で写真を見たら、駅を出て左に行ったほうに街並みがあり、そちらに行っていれば、きっとこの作品に出てきた菁桐の街があったんだろうなと思った。時間があったら、そちらにも行ったんだけど、次の予定にせかされてそちらの方面には行かなかったのが残念。映画に幾度となく出てきた赤い橋も遠くから眺めただけだった。


  菁桐の橋のたもとにあった炭鉱夫の銅像           菁桐の家並         

何度も出てきた赤い欄干の橋

 時間が来たので駅に戻ったら乗る予定の電車は平日はなく、その次は2時間以上なかった。タクシーで十分まで戻ろうと思い、駅前食堂のおじさんにタクシーを呼べないか聞いたが、来るのに時間がかかるという。困ったなと思っていたら、丁度そこで取材をしていたTV局のカメラマンと交渉してくれて、十分まで送ってくれることになった。おかげであきらめかけていた十分にも行くことができた。途中、平渓の街を通ったとき、この周辺でも『台北に舞う雪』はロケしたのかもしれないと思った。街並みの雰囲気が似ていた。でも通りすぎただけ。こんなことなら菁桐から平渓まで歩けばよかったと思ったけどあとの祭り。次回、また来る機会があったら、菁桐から平渓まで歩いてみたいと思った。  十分までの間、カメラマンと話をした。なんと祖母が日本人で、基隆に住んでいるという。祖母は戦後一度も日本に帰ったことがないらしい。でも、お母さんは日本で働いていると言っていた。そんな会話をしているうちに十分に着いた。それにしても菁桐のおじさんといい、みんな親切。思わず、『台北に舞う雪』の陳柏霖演じるモウのことを思い出してしまった。

 十分は『恋々風塵』『午後3時の初恋』、『お父さん元気?』などの映画に出てきた。線路脇に民家が並び、電車が民家すれすれに通っていく。この景色が絵になるから、たくさんの作品に登場しているのだろう。線路のすぐ脇に柵もなく道路や人家があるのが不思議だった。


      十分駅『恋々風塵』の舞台           線路際まで民家がある十分駅周辺    

 また、平渓線一帯は天燈で有名なところ。旧正月の頃、天燈祭りがあるらしい。初めて天燈が出てくるのを観た『シーディン(石碇)の夏』の石碇も、平渓線周辺。菁桐で石碇を指す標識を見た。十分の土産屋で天燈のミニチュアを買い、今度は絶対天燈を飛ばしに来てみたいと思った。


天燈のミニチュアお土産

(宮崎 暁美)


この記事はシネマジャーナル78号の記事「台湾ロケ地めぐり(1) 平渓線沿線」に加筆したものです。


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