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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『花ゲリラ』川野浩司監督インタビュー

川野浩司

脚本の池田眞美子さんに続いて、川野浩司監督にもインタビューの機会をいただき、撮影当時のようすを伺いました。



脚本を見せてもらったときに、すごく良いホンで気に入りました。共感を得ましたし、ぜひやらせてください、と。脚本がしっかりしていたので、それに乗っていけば全然問題ないと思いましたね。後は撮りやすいように、ちょっとだけ直させてもらいましたが、基本的には脚本どおりです。ロケハンの際に問題点がわかれば相談して変えますし、現場で動いてみてからも変更していくものなんです。

-- 池田さんはト書きをたくさん書かれたそうですが。

ちゃんと伝わるようにと、たくさん書かれたんだと思います。今回変更はあったにしても、池田さんの思いからは外れていない気がしています。

-- タイトなスケジュールだったのですか?

そうです。しかももう1本の映画『夏休みのような1ヶ月』の仕上げをやっていたので、超タイトでした。

川野浩司

-- いつもそんな感じのお仕事なんですか?

いや、そんなことはないです(笑)。いつもそんなに忙しかったらいいんですけどね。去年はたまたま映画が多かったですけど、今年どうなるかはわからないです。

-- いろいろな場所で撮影していますが、ロケハンというのはどんな順でされるんでしょうか?

他の映画にも言えることですが、基本的には映画の軸になる大事なところから探します。それから一般的に考えて面倒なところ。たとえば撮影許可が降りにくそうなところ。『花ゲリラ』でいうと、線路です。そういったところからアプローチして行きます。

-- 線路の場面は大切なものでしたね。どのあたりだったのでしょうか。

ロケ場所はナイショですが、電車は、あまりスピードが出ていない、都会の街の中を縫って走る路面電車をイメージしていました。普通、撮影現場って人がたくさんいてうるさいものなんですが、これは終電後から始発までの撮影でしたから、ご近所は眠っている時間です。とにかく静かに、喋るのは必要最低限度、音を立てずにやりました。しかも雨も降ったんですよ。梅雨の間の撮影でしたから、めちゃめちゃ降りましたね。ほとんど雨ですから。ちょっと上がったときに撮影していました。
遊園地のシーンは花やしきで撮ったのですが、時間が限られていて1時間半くらいしかなかったのに土砂降りだったんです。それでああいう屋根のあるところでの撮影になりました。

-- 1箇所にどのくらいの時間いて撮影するのでしょう?

最低1時間はいますね。雨だと3時間か4時間になったりします。終電から始発の間に線路周りで撮影したときは、0時~5時の5時間くらい。1回で撮りきれなくて2回行きました。線路のところでは5シーンくらい撮りました。それでも制作の都合もあったので減らしています。

-- ユウスケが行動するのはどのへんですか?

劇中に「品川区」と住所を書くところがありますよ。特定できるものはあんまり写さないようにはしましたけど、設定は東急池上線沿線です。キーワードは「都会」、その中での孤独というのを出したいと思いました。
ユウスケと映子の二人は近いといえば近い、徒歩なら遠いくらいのところに住んでいて同じ駅を使っている。ユウスケは夜中へとへとになるくらい歩いています。自転車でなく、歩くのにこだわっているという感じです。

川野浩司

-- 自転車だと見逃すものが多くて、種を蒔くところを見つけにくいですよね。

ロケハンも、「ユウスケが種を蒔くところはどこだろう」と探しましたよ。ロケハンは制作部が前もっていくつか候補を探し出しておいてくれます。そして僕と制作部とカメラマン、美術、いわゆるメインスタッフが車で行って、キョロキョロと見るわけです。カメラとか照明とかいろいろ都合もあるので、みんなにとってベストなところにします。

-- ロケハンって面白そうですね。

映画がだんだんリアルになっていくのがロケハンです。だから大事なんですけど、僕なんか、まだあんまり決めたくないんですよ。最後までなにかもっとあるんじゃないかと思ってしまうので。僕が好きなのは衣装合わせなんです。楽しくて。決めるのが監督の仕事なんですけどね。諦めるのも監督の仕事、っていう人もいます(笑)。



監督から観客のみなさんへのメッセージ
「今回の映画は“距離感”を特に意識して撮影しました。登場人物同士の立ち位置や心のキョリ、カメラと役者のキョリ。そういうところも感じながら見て頂ければいいなぁと思います。」

川野監督は、子供のころに『スター・ウォーズ』を観たのがきっかけで、映画の道に進むことになったのだそうです。エドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の思い出』の日本ロケのスタッフとして関わったとき「文化が違う」と強烈に感じたとか。自分の監督作品を観ていただけないうちに亡くなられてしまって残念、とおっしゃっていました。ほかにもいろいろ興味深いお話を伺ったのですが、それはまた別の機会にご紹介します。

上映情報はこちら

『花ゲリラ』脚本家 池田眞美子さんインタビューもご覧下さい。

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(取材・まとめ・写真:白石映子)

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