女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『雨音にきみを想う』
ディラン・クォ合同インタビュー

2006年9月13日(水) 都内某ホテルにて
ディラン・クォ

『雨音にきみを想う』は、愛に飢えている孤独な青年チョッカン(ディラン)と、難病を抱えながらも家族の面倒を見ている貧しい少女ウィンイン(フィオナ・シッ)とのラブストーリーです。

映画紹介はこちらを参照。

今年3度目の来日となるディランが「こんにちは」と日本語で挨拶してくれたあと、合同インタビューが始まりました。

Q: 何本かの映画に出演されていますが、この映画はどういう位置付けにあるのでしょうか?

Dylan: それまではテレビドラマで演じていたのですが、この作品でスクリーンデビューをしたので、自分にとってはかなりのターニングポイントになりました。「この世界に入って間違いなかった」と思える作品です。

Q: ウィンインをだんだん好きになっていくというところは難しかったと思いますが、どのようなことに気をつけましたか?

Dylan: チョッカンは確かに彼女を愛したけれども、たぶん自分が彼女を愛する資格はないと思っていただろうし、自分が悪いことをしているわけだから、それに引きずり込んではいけないとも思っていたでしょう。でも彼女が心配でなんとかしてあげたくてたまらないという、その【どうしようもなさ】みたいなものをかかえていたと思うんですね。だから彼女に対して初めはすごく矛盾した感情を抱いていたと思うので、そのように考えて演じました。

ディラン・クォ

Q: ジョー・マー監督の印象に残っている演出方法は?

Dylan: ジョー・マー監督は、僕にとっては映画についてのイロハを教わった監督という感じで、とても啓発されました。彼にいわれたことは、今まではテレビ的なオーバーな演技をしていたので、映画の演技を勉強して欲しいということでした。それは何かというと、セリフで自分の感情を表現するのではなくて、目やしぐさであるとか表情で演技をすることといわれて、改めて映画を学びました。

Q: 大変なシーンはありましたか?

Dylan: やっぱり言葉が一番大変でしたね(注.ディランは台湾人で広東語が話せない)。ほとんどのスタッフが広東語で話すので僕にはわからないし、監督も広東語で演出するのでなかなかそれがうまく伝わらないし、脚本もよく読めないので大変でした。フィオナがどういう意味かを教えてくれたり、脚本もローマ字で読み方を書いてくれたり、監督の話も通訳してくれてすごく手伝ってくれました。

Q: 映画の雨のシーンでのご苦労はありましたか? あと個人的に雨の日で思い出すような出来事があれば教えてください。

ディラン・クォ

Dylan: 雨のシーンは全部人工的に降らせている雨なので、特に大変ってことはなかったです。雨の思い出といえば学生時代に僕はバイクに乗っていて、雨の日にバイクに乗るときにはレインコートを着るんですよ。それで後ろに彼女を乗せると彼女が僕のレインコートの中にすっぽり入って、ピタっと身体を寄せるんです。暑いんですけれど、とてもロマンティックでした。

Q: 子役のシウヤウから得たことはありますか?

Dylan: あります。本当に役にすっと入れるんですよね。脚本を見てセリフを覚えるわけじゃなくて、周りの大人が「次にこういうことをいってこうやって泣くんだよ」というと「あーわかりました」とやるんです。本当にすごくプロフェッショナルなので、彼女を学びたいと思います(笑)。

Q: 香港のタイトルを訳すと『誠実な愛』ですが、ディランさんにとっての誠実な愛とは、対女性ではなくてもどういうものだと思いますか?

Dylan: やっぱり母が僕に対して注いでくれた愛情が、一番僕にとっては誠実な愛だと思います。母が亡くなってからかなり時間が経つんですけれども、いまだに子供の時の母との想い出は忘れられないですし、本当に真実の愛というと母の愛です。

ディラン・クォ

Q: 映画のラストシーンは観客にゆだねるというものですが、ディランさん自身はどう思われますか?

Dylan: 監督もあえてそうしたと思うんですね。必ずしも全ての映画が、はっきりした結末がなければいけないというものではないので、観客にもおそらくこういう形の愛もあるんだっていうことを思ってもらいたかったのではないでしょうか?

Q: チョッカンは静かな愛の形ですが、ディランさんの愛の形は?

Dylan: チョッカンは彼女に言葉ではいわなかったですけど、いろいろな行動で彼女に対する好意は示していると思うんですね。僕自身も相手を好きになったら口でいうのではなくて、彼女に自分の行動でわかってもらえるような方法で気持ちを伝えると思います。

Q: 前作の『BLACK NIGHT』で日本でもファンがたくさん増えたと思いますが、今の状況をご自身ではどう受け止めていますか?

Dylan: すごく感動しています。日本は子供の時からすごく好きな国で、是非日本で活躍したいとも思っていましたので、日本に来ることができて、そして日本の人にもし好きになってもらえるのなら、こんなにうれしいことはないです。

Q: 日本の脚本で演技をしてみたいとか、日本の俳優さんと共演してみたいとか思いますか?

Dylan: 子供の時から日本のドラマを見て育ったし、日本の映画やトレンディドラマも好きですので、本当に絶対に機会があったら日本の作品をやってみたいと思っています。それから自分から誰と共演したいというほどの資格はまだ自分にはないと思うので、相手が誰であっても脚本がよければ本当に日本のものに出たいです。日本のドラマでは『プライド』が好きです。一番最近に見たDVDは『世界の中心で愛を叫ぶ』です。

ディラン・クォ

Q: アンディ・ラウさんがお好きだそうですが、もしアンディさんの映画をリメイクしてディランさんが演じるとしたら、何の映画を選びますか?

Dylan:(かなり迷って)いろいろありますが…例えば『天若有情』とか。あと(タイトルを忘れたようで)アラン・タムと共演している博徒の役です(『カジノ・レイダース』)。小学生の時の時にこの映画を観ました。

Q: 次回作『夜の上海』はどんな映画ですか?

Dylan: ビッキー・チャオがタクシー・ドライバー、僕が修理工、本木雅弘さんが日本からやってきた凄腕のスタイリストという役です。ビッキーが僕を好きで、しょっちゅう車が壊れたとかでやってくるんです。そしてある日の夜「車が事故にあったから直しにきて」といわれて行くと、その場に本木さんが居合わせているんです。そして僕が「実は明日結婚するんだ」というと彼女が泣き崩れて、それを本木さんが目撃してしまうという一日の話です。



もちろん通訳さんが付いてのインタビューですが、ディランが話して通訳さんが訳して話したあとにディランは「はい」とか「そうですね」とか日本語でいうんですよ。日本語がほとんど話せない彼なのに、その絶妙の間は「素晴らしい!」の一言です。前回(6月)のインタビューでも感じましたが、彼は本当に頭の回転が早くて、とても気の利く人だと思いました。

そしてインタビューのあと写真撮影に移るわけですが、その時にディランが「これ、どうぞ」(日本語)と私たち記者に台湾のおみやげのパイナップルケーキをくださったんです! そのディランのやさしさに皆が感動したことはいうまでもありません!

写真撮影で場所を移動する時も、掲げてあったポスターを指差し「これも一緒に移動しますか?」という気遣いも見せてくれました。

ディラン・クォ パイナップルケーキ
ディランにいただいたパイナップルケーキ

ディラン・クォ『雨音にきみを想う』イベント

2006.9.13(水)  お台場ヴィーナスフォート2F教会広場

ディラン・クォ

この日は映画にふさわしい雨の一日となってしまいましたが、ファンの皆さんの心の中はディランの笑顔で晴々だったことと思います。

イベント会場は教会をモチーフにしたもので、その中央の教会のドアからディランが登場し、そのあとファンの前を通るサービスへと続きました。その後は司会者の方やファンからの質問タイムがありましたので、いくつかご紹介します。
ディランはファンが質問をするたびに、まず「初めまして」と挨拶するんですよ! 本当にもうこの人は〜(嬉笑)。

Q: 実際に出来上がった映画を観て、どんな印象でしたか?

Dylan: 初めて観たのは香港でのプレミアの時だったのですが、スクリーンを観ることができなくて隣の席の監督の手を握って「僕、大丈夫ですか?」って聞いたら監督が「大丈夫、よくやっているよ」といってくれて、やっとそれで観ることができました。

Q: 気に入っているシーンはどこですか?

Dylan: 彼女と一緒に夜寝ている時に、彼女がこっそり僕の部屋に上がっていって、実は僕が泥棒をしているんじゃないかと疑っていて金庫を開けるんですね。でも金庫の中に入っていたのはお金ではなくて、子供の頃の想い出の品や写真が入っているんです。その時に僕が上がっていって彼女に対して怒るわけではなくて、「子供の頃に海賊に憧れていたんだ」というシーンが好きなんです。そしてその写真は、実際に僕の子供の頃やお母さんの写真なので、とても意義深いシーンでした。

Q: 日本で報道される時に速水もこみちさんに似ているといわれることをうれしく思うのか、それとも「いや、俺はディラン・クォだ」って思うのでしょうか?

Dylan: 台湾でよく僕は「台湾のもこみちです」なんて自分でも自己紹介しているんですが、本当に日本で大変人気がある、しかもかっこいい俳優さんに似ているっていわれることはとてもうれしいですし、光栄に思います。

(ファンが「ディランさんの方がかっこいいです!」というとディランは口元に手を当てて「シーッ」っとゼスチャーを!大爆笑でした。)

Q: 座右の銘はなんですか?

Dylan:「努力をしても必ずしも成功するとは限らないけれども、努力をしなければ絶対に成功はしない。」ということわざです。

Q: 今、何か掲げている目標はありますか? 

Dylan: 子供の頃からあまり大それた目標はたてませんが、今はとにかく次の作品を前の作品よりもいいものにしたいということが目標ですね。

ディラン・クォ

『雨音にきみを想う』は11月18日(土)から新宿武蔵野館にて上映されます。香港の新界が舞台になっていて、雨の降る街はどこか懐かしさを感じます。ディランとフィオナが演じるせつない恋のゆくえを、是非劇場で堪能し、涙を流してください。

☆『雨音にきみを想う』公式サイト http://www.amakimi.com/

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(取材・記事 金子 ひろみ)
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