女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『南極日誌』記者会見

8月10日(水) 於 渋谷セルリアンタワー東急ホテル

南極到達不能点を目指して6人の探検隊員が果てしなく広がる雪と氷の世界に足を踏み入れる。どこにあるかわからないクレバス、寒さと突風。昼だけの日が6ヶ月続き、あとの6ヶ月は夜だけが続く。生命の象徴である太陽でさえも、そこではただ不気味に存在しているだけだ。まさしく「無」の世界。すべてのものが白く見えるホワイトアウトの世界がどれほどの恐怖を人間に与えるのか。ある日彼らは80年前に遭難したイギリス探検隊の日誌を発見する。その日から日誌に呪われたかのように次々と事件が起こり、そして次々と人が死んでいく。だが、なぜか隊長はかたくなに不能点を目指すことを主張する。男達はそれぞれ思いを抱えながらも歩みを進めて行く……

そんな息がつまるような世界を極上のサスペンスとして仕上げた監督は、本作が長編デビューとなるイム・ピルソン。主演の隊長にはソン・ガンホ。どちらかというと感情の起伏の激しい役柄が多いというイメージを持っていたが、今回は寡黙で決して笑わない。それだけにゾッとするような表情が背筋を凍らせる。その隊長を慕う最年少の隊員にユ・ジテ。『オールド・ボーイ』ですっかり演技派の仲間入りをした彼は本作でも微妙な感情の動きを繊細な演技で見せる。

イム・ピルソン、ソン・ガンホ、ユ・ジテ

この3人を迎え10日に記者会見が行なわれた。今世間を賑わせている(その時代はもう終った?)いわゆる韓流スターのような派手さはないが、役者としての自信、貫禄がその受け答えの端々に感じられた。






イム・ピルソン監督







ソン・ガンホ







ユ・ジテ
空港ではチョン・ウソンと鉢合わせで大変でしたね








ユ・ジテ、背高!







似てるかな?







梨花を迎えて



『南極日誌』のアイディアはどこから生まれたのですか?

監督:1999年TVで南極探検隊のドキュメンタリー番組を見たのがきっかけです。そのドキュメンタリーでは、ある1人の隊員の体に異常が発生して探険を放棄してしまいました。その時、隊長が涙を流して会見をしていました。南極は何もないし、寒いだけなのに何が彼をそんなに泣かせるのかと思いました。それで、南極を舞台にして映画を描けば人間の本性、欲望をうまく描けるのではないかと思いました。

ソン・ガンホさんは随分前からこの作品の出演を決めていたと聞いていますが…

ソン・ガンホ:新しい作品に挑戦したいと思うのが俳優の本能です。初めて聞くストーリーだったし、いつも新しい作品に出会いたいと思っているのでこの作品を選びました。撮影は大変でしたが、楽しみながら挑むことができました。

初めて共演なさったユ・ジテさんはいかがでしたか?

ソン・ガンホ:ユ・ジテさんは、ヨンさまよりハンサムですよ(笑)。(「ヨンさま」の部分は日本語)実力のある後輩で、ぜひ一度共演してみたいと思っていました。この映画は役者としてのユ・ジテの魅力と実力が十分わかる作品となっていると思います。

ユ・ジテさんはソン・ガンホさんと仕事をしていかがでしたか?

ユ・ジテ:皆さんもよく御存知のように、韓国でも日本でもソン・ガンホさんの演技力は知られています。演技力だけでなく、後輩たちの面倒見もとても良く、今回一緒に仕事ができて非常に嬉しかったです。また、『南極日誌』はシナリオが素晴らしく、そのため良い俳優に配役される作品だったので私も是非参加したいと思いました。本当に光栄です。この席をお借りして、ソン・ガンホ先輩と6人の隊員達にお礼を申し上げたいです。

ユ・ジテさんは映画のためにトレーニングをされたと聞いていますが、どのようなものでしたか?

ユ・ジテ:探険に関する知識を勉強したり、探検記を読んだりしました。また、映画で私達が雪原で引っ張っているソリは、重さが100kgあったので、そのための訓練が必要でした。そして1日25km歩いているということでしたので、だんだんやつれていく様子を見せるため1日に3時間歩きました。

ソン・ガンホさんは、子供とのつらい過去を抱えた父親の役でしたが、そのためにどのような心理的なアプローチをしましたか?

ソン・ガンホ:この映画は笑いのない役を演じていますが、残念ながら私が笑わない作品は韓国ではヒットしません。しかし私はそういう作品だからこそ愛着を持っています。この映画では息子を失ったチェ・ドヒョン隊長の過去が背景にあります。作品をご覧になればわかりますが、この男の感情、狂気は原因があっての結果ではなく、その因果関係はそれほど大切というわけではありません。息子を亡くしたことは表向きなものでそれに焦点を当てているわけではないので、そのことを念頭に演技をしたわけではありません。

2度とやりたくないと思った場面と逆に楽しかったことについて教えて下さい。

監督:この映画は南極を舞台にしていますが、実際はスタジオで撮影したり、ニュージーランドで撮影したりしたので、南極という地域的な再現が難しかったです。ユ・ジテ演じるミンジェが到達不能点で夕日を眺めるシーンがありますが、人間の孤独さをうまく表現できて大変気に入っています。またニュージーランドと韓国のシステムの違いが大変でした。それと突風が吹くなど不可抗力の要因で撮影を中断せざるをえなかったことが残念でした。私としては、あと1カットでもよい絵を撮りたかったのですが、現地スタッフの判断で中断せざるをえませんでした。

ソン・ガンホ:今監督が言ったことは皆に共通することだと思います。俳優としては、映画の背景が白い雪原とテントの中を繰り返しで、その単調な背景の中で私達6人が密度の濃いものを作らなければならず、その内面的な緊張感の方が外国での撮影や寒さなどの外的な要因より大変でした。

ユ・ジテ:映画はレンガを一つ一つ積み上げていくようなものだと私は思っています。皆さんがご覧になったものが既に完成されたベストのものですので、また撮る必要はないと思います。

ユ・ジテさんはこの映画のために減量をされたらしいですが、その方法は?

ユ・ジテ:今回は低カロリーの物を食べて、運動を沢山しました。役者にとって体重は服だと思っています。10数キロ痩せましたが、何キロ痩せたかというのは問題ではなく、その映画に合わせてどのような俳優の服を着るかだと思います。

監督:私はストレスで太ってしまうのですが、この作品でも13kg太りました。非常に過酷な時でも私一人が痩せなかったので、俳優達にからかわれたりもしました。映画を撮り終えた後は身体が大変重かったです。次の作品は軽快に撮りたいので、ダイエットしようと思っています。

記者会見終了後、ソン・ガンホとユ・ジテの氷像がご本人とご対面。う〜ん、似てるのか?その努力は認めるが…… 二人とも戸惑っている様子がおかしい。その後ゲストの梨花も参加し、氷像を囲んで南極の氷入りの水で乾杯し、無事終了。毎日暑い日が続くが、是非とも映画館に足を運びこの雪の世界に浸っていただきたい。涼めること請け合いである。

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(文:米原、写真:宮崎)
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