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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『クジラの島の少女』記者会見

ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・パラテーン

7月16日(水)  ニュージーランド大使館において


会見の前に、毎年ニュージーランドへホームステイに行くという、 横浜高校の男子生徒15人によるマオリダンスが披露された。大使の挨拶に続いてゲストのケイシャ・キャッスル=ヒューズ(パイケア役)、ラウィリ・パラテーン(コロ役)の挨拶。

ケイシャ 今日は有難うございました。作るのがとても楽しかったので、みなさんも私たちと同じように楽しんでいただけますように。

ラウィリ (立ち上がって) とても座っていられません。有難うございました。監督もここに来るはずだったのですが、人生で最大の作品を作ったところ、つまり初めての娘を出産しました。この場で原作者のイヒマエラにも感謝を捧げます。彼の原作がなければこの映画はありえませんでした。あちらにケイシャのお母さんと私の息子がいます。彼らがいたからこそここまでやってこれました。日本ヘラルドの方にも感謝します。

Q ケイシャさんは初めての映画出演なのに、とても自然な演技でした。どういうふうにしてできたのですか?

ケイシャ 撮影に入る前に4週間のリハーサルがありました。その時にキャラクターを理解することから始まって、演技の基礎の呼吸法、発声法を覚えました。自然に演じるというのは自分のありのままではなく、どうやってやればいいのかというのを監督に細かい指示を受けて演じました。

Q ラウィリさんは自分のお祖父さんをモデルにしたそうですが。

ラウィリ 家系的には長老を出す家でしたが、私は皿や鍋を洗っていました。祖父は伝統を重んじる大変優れたチーフ(長)でした。まさに今回のコロそのものですね。1960年代、私の父の時代は安い未熟練労働力として村から町へ出て行った時期です。もちろん私たち子どもが良い教育を受けられるように、地方から都会に出てきたということもありました。マオリ性を失ってしまいそうな時代でした。祖父はそれではいけないということで、集会所ではマオリ語を話すこと、長老を敬うことなど厳しく、愛情と信念をもって指導しました。そういう偉大な指導者だった彼がいたからこそ、私たちが失ってしまったかもしれないマオリの誇りや伝統を保存できたのだと思います。

Q 日本のイメージは? この映画はどのように日本に受け入れられると思われるか?

ケイシャ ごめんなさい。地理の知識がなくて日本がどこにあるのかも知らないで来てしまったんですが、とても楽しんでいます。大都会は嫌いではないけれど、乱暴だったり無礼だったりします。でも日本の場合は全然そんなことがなく、みなさんとても親切でした。

ラウィリ 日本には4回来ています。実は72年以来東京に住んでいる伯父がいて、彼は日本の女性と結婚しました。だから私には日本人の叔母がいるんです。ニュージーランド映画協会の副会長をしていた関係で92年の福岡のアジア国際映画祭にも参加しています。日本の礼儀正しさや平安な状態が大好きです。それにマオリと日本の文化は長所も短所も含めてですが非常に似ているのではないかと思いま。日本の文化を深くわかっているふりをするつもりはないのですが、少なくとも絶対に言えることは「日本料理は美味しい!お魚も美味しい!」

ケイシャ オーストラリアやニュージーランドをはじめ色々なところで公開されていますが、私が観るたび皆さん同じところで笑ったり泣いたりしてくださって、観終わった時「良かったよ」と声をかけてくださいます。自分でも何度観ても気にいっているので、日本の皆様も心を開いて受け入れてくだされば、きっと気にいっていただけると思います。

ラウィリ できるだけたくさんの方に観に来てほしいと思いますし、私たちと同じように海と関わりの深い国の方々には理解していただけると思います。

Q クジラはマオリ語ではなんというのですか? クジラに関しての儀式などはありますか?

ケイシャ 「トポラ」といいます。

ラウィリ クジラ全体をそう呼ぶので、それぞれ種類によって個別の名前が与えられています。祭りというのでなく、歌や神話の中に登場したり、霊的なとらえ方をされたり、伝統的に大切にされています。クジラを見て自然と人間との関わりを感じ、あるいは血縁の家族のように敬い、愛情を注いでいます。浜に打ち上げられるようなことがあれば、それは海の神からの我々への祝福、プレゼントとして受け取り、活用しました。骨を武器にしたり、油や皮や内臓など全体を余さず使いました。
クジラを食べるために狩ったという記録はありませんが、それはマオリの海が豊かで、魚が多くそれを食べる鳥も飛べないくらいよく太り…。そんな風に私たちの島にはいくらでも食料があったので、クジラを追い求める必要がなかったということかと思います。

Q パイケアはケイシャさんご自身に似ているところは? 演じる上で難しかったですか?

ケイシャ 彼女も私もとても独立心が旺盛ではっきりしているところは似ています。複雑な思いを抱いている少女なのでそれを演じることはチャレンジでした。自分の生活の中ではそういう気持になることはないし、そういう感情の表現の仕方をリハーサルのときに監督と何度も話して切り開いていくのは大変でした。



『クジラの島の少女』チラシ

 ケイシャさんは映画の時より髪が長く、毛先にウエーブがあって女の子らしくなっていた。赤いワンピース風の上着に黒のパンツ、サンダルばき。ラウィリさんは黒の上下に民族衣装らしい赤の刺繍の前掛けのようなものを巻いていた。高校生たちのダンスのとき一緒に歌って、とても嬉しそうだった。

 会見終了後、『千と千尋の神隠し』で、千尋の声をあてた柊瑠美さんが花束をもって登場。ケイシャさんと並んで2人ともピカピカに可愛い。お互いの映画を観ていて誉めあっていた。次はどんな作品に出るのか聞きそびれてしまって残念。しかしこの映画にたくさんの人が出かけるのが、次の作品に繋がる。観に行ってね!

本記事は本誌59号 掲載の記事とほぼ同一です。

作品紹介

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(文・写真:白石映子)
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