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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
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追いかけてイーキン 4 days Part 2

2日目(2/10)

SHIBUYA-AXにて 19:00〜

 生イーキンを見ても平静だったことから、「それどころじゃないかも」と誘いを断っていた「Andy Lau -畫展- in Tokyo」に足を向ける。この展覧会は友人が仲間と開いたもので、次から次へひっきりなしに人が来ていた。さすが華仔ファンの結束は固い!

 ここでのんびりしていたため、ライブの会場時間に着くのがぎりぎりになってしまった。代々木競技場の門をくぐると「券余らない?」の声。そう! ダフ屋がいたのです。このライブにはチケットを持った人しか来ないと思うんだけど、いったい、この人たちは何を間違ってしまったのだろうか……。

 会場前に着くと、見事に女、女、女。広いスペースが女の園。「イーキンファンってきれいな人が多い」とは同行のHさん。Hさん、普段イーキンファンというと私しか接してないもんなあ……。係員によると、リハーサルが長引いて開場が遅れるそうだ。ここ、SHIBUYA-AXは会場の外にロッカーがある。早々にコートを脱いだファンたちは寒さに震えたものの、でも「ここで風邪をひくわけにはいかない!」と気合いを入れていんだと思う。

 20分後、ようやく整理番号順に入場。噂に聞くより会場は狭く、整理番号90番の私は真ん中の前から4列目くらいをキープ。思ったよりステージが近い。一体どんなステージになるのだろう、特に、昨日イベントで宣言した日本語とスペイン風ホット・ダンスは見逃してはならないと心に誓った。

 19:10 ステージ両脇のスクリーンに22098コンサートの映像と、世界各地で行ったコンサートの映像が流れ、定刻より遅れてバンドの演奏が始まる。男女4人のダンサーが出てきて、男が女を肩に載せる。……と、そこに赤い皮スーツ、紫に黒の柄シャツを身につけたイーキンが登場。曲は『古惑仔1』の主題曲「友情歳月」だ。何だかイーキンはこわいほど真剣な顔つきで、緊張のためなのか、ファンがかけ声をかけても、それに応じる余裕がない。衣装のせいか、舞台演出のせいか、曲のせいか、歌手のライブというよりホストクラブのショーのようだ。などと思っていたら、間奏でイーキンがダンサーと群れになってサイドステップ、というか、上半身そのままで、足を横にずらして進んでいく振り付けを披露。香港流奇妙なダンスに場内は、「だから好きなんだよ、イーキン」とでも言うような腰くだけ的笑いがおきていた。私もこれは相当ツボにきました。イーキンの魅力の本質は、見た目のかっこよさではなく、こういったベタなことを真面目にやる素直さにあるのだと思う。笑う一方で、懸命さに胸を打たれる。最後に、かがんで縦に連なったダンサーの背に乗ってポーズをとったイーキンだけど、一体あれは何を表していたのだろう? 不思議だ。

 2曲目は「情路狂奔」。今度はステージの前方に出てきて、腰を振るというより突き上げるイーキン。目の前でそんなことをされると、やっぱり赤面して目を覆ってしまうのだが、ものすごく真面目に、肩の力をばりばりに入れてやっているため全然セクシーじゃない。でもすごくイーキンらしくていい。曲が終わると、ダンサーたちが上着を脱ぎ(きちんと畳んでいるところが好感をもてる)、ファンにはお馴染みのイントロが。昨年11月に日本でも公開された『超速伝説 ミッドナイト・チェイサー』の主題歌「極速」だ。イーキンの持ち歌の中では珍しくノリのいい曲で、ファンも自然と蛍光棒を振る手に力が入る。イーキンはサングラスをかけ、『超速伝説』の主人公、SKYのイメージ。途中で入るラッパー(男)とまで腰を合わせていたのはご愛嬌として。当然私もノリノリ。イーキンと一緒に大声で歌っていて、間奏後のサビの部分で、思いきり「SKY〜」と合の手を入れたら、そこで声を出したのは私ひとり。あれ、最近CD聞かなかったから間違えたかなあと思っていたら、2日目はみんな「SKY〜」と叫んでいた。まだ貸したCDが戻ってこず、確かめようがないんだけど、後から思えばCDではそんなかけ声が入ってなかった気がする。ああ恥ずかしい。

 この曲が終わって、やっとイーキンのMCに。早くも、ゲストのジェリー・ラムが、上海灘の黄色のチャイナジャケットを着て早くも登場、にこやかにイーキンの広東語を日本語に訳しているふりをする。そこへ舞台のそでから、香港明星通訳でお馴染み周さんが現れた。イーキンがジェリーを指して「こいつは偽物です」みたいなお決まりのやり取りがあって、2人で『古惑仔4』の主題歌「戦無不勝」をデュエットする。ジェリーがゲストなら、てっきりイーキンと小春とジェリーで歌った「一起飛」(『古惑仔6』の主題歌)を歌うと思っていたんだけどなあ。でも、彼がステージにあがって、イーキンの表情がすごく和らいだ。

 1曲でジェリーは退場し、今度は譜面台とギター2台、椅子が運び込まれた。「これから一番緊張しているアコースティックの部分に入ります」と断りがあって、日本語メドレーが始まった。いきなりイーキンが歌い出したのは「せまる〜、ショッカー」。仮面ライダーの主題歌だ。やっぱり緊張する日本語の最初の歌は、自分の得意分野でせめたのか? サビの部分を「ライダー♪」と自分で歌った後、私らにマイクをふるイーキン。みんなもきちんと「チョーップ」「キィーック」と返してあげていた。何だかここで初めて、イーキンとファンが交流できた気がした。

 お次は安全地帯の「恋の予感」。目をつぶっていると日本人が歌っていると思うくらい日本語の発音がよく、相当練習してきたなと思わせるにふさわしい出来映え。そして最初から予告していた「桜坂」。イーキンらしいさわやかな歌いっぷりで好感度大……でも日本語はちょっと難しそうだった。終わってから「今日のために日本語を勉強してきました。たくさん間違えてしまったので、今日終わってから練習して、明日はもっと頑張りたい」とコメント。イベントで語っていた「日本語」の内容は、日本語トークじゃなくて日本語の歌とわかり、てっきり日本語トークを猛勉強してきたと思っていた私はちょっと残念。でも、しかしこの素直なコメントには、「間違ってもいいよ、そんなに頑張らなくても十分だよ」と言ってあげたかった。イーキンは以前「日本語で歌を歌うには、その国に敬意を払わなければいけないと思う(要は生半可な気持ちではできないということか)」と記者会見で言っていたが、この日本語の歌は外国語が苦手なイーキンからの最大の日本人ファンへのサービスではなかったかと思う。

 「今回は、僕だけじゃなくて、僕の友人、僕の母にあたる人も日本語を勉強しました」と不思議なMCのあと、ダンサーと一緒にでてきたのは慎吾ママ、いやイーキンママに扮したジェリーだ。曲はもちろん「慎吾ママのおはロック」。またこのジェリーが完璧に、日本語&振り付けをこなしていた。特に歌は口パクかと疑ったほど。テレビ番組でも司会を務めていることもあって、やっぱり観客とのコミュニケーションのとり方は上手。さんざん盛り上げた後「私の息子イーキンをよろしくね〜」と言って、去っていった。

 その間にイーキンは衣装替え。「發現」のイントロにのって現れたイーキンの衣装は、襟と前立てにスパンコールを並べたピンクのシャツに、花のアップリケのジーンズと、う〜ん、香港テイストばっちり。前列にいたファンから蛍光棒を借り、左右に大きく振るイーキン。終わった後、ちゃんとファンに蛍光棒を返すなんて礼儀正しいなあと思ったら、「返せ」とファンに言われたことが後で発覚。やっぱりイーキンが触った棒は返してもらいたいよね。そして「これは僕の歌の中でも最も悲しいラブソングです」とのMCの後、流れてきたのは「甘心替代[イ尓]」、『古惑仔3』で恋人のサイが死ぬときに流れていた曲。これを切々と歌い上げた後、待ってました! スペイン風ダンス。舞台のそでからフラメンコの衣装を来た女性ダンサーがイーキンに近寄っていく。曲は「一個為[イ尓]甘去蹈火海的人」。やっぱりこれか。スペイン風に踊れそうなの、これしかないんです(笑)。またしても相手の顔をじーっと見つめ、真剣に踊っているイーキン。しかし、ペアダンスから群舞になったとき、かけ声をかけるタイミングがどうも合ってない。ここは3回の公演のうち、見事3回ともずれてました。ま、ちょっと難しそうなところなんですけど……。女性2人を脇にしたがえてのフィニッシュポーズも、何が違ってるというんじゃないけど、どこかおかしい。握りこぶしに、めいっぱい力をいれ過ぎだってば! 

 ポーズをとると、イーキンはさーっと逃げるようにして素早く引っ込み、ステージ両脇のモニターには『風雲』の映像が。男性ダンサー2人が、それぞれ「風」「雲」と字の入った大きな赤い旗を持って、ステージを右に左に、何度も駆け抜ける。と、舞台中央から、黒のふさふさロングコートに金のピタTシャツ、黒の皮パンツ姿のイーキンが登場、「風雲」を熱唱する。しかし相変わらず、この曲はノー振り付けで動かすのは手のみ。次に、17日から公開の『レジェンド・オブ・ヒーロー 中華英雄』の主題歌「天●孤星」(●印の部分、漢字が出ませんでした。急の心の部分をよつてんに替えて、右に攵という字)。赤いカツラにぴかぴか光るボンテージスーツ、手にはヌンチャクを持った女性ダンサー二人を従えて、でも、イーキンは変わらずノー振り付け。その代わり、剣舞のおじさんが観客をはらはらさせるほどに、狭いステージを大回転してくれる。最後だけポーズをとるイーキン。

 再びジェリー&周さんが登場し、うれしいお知らせと称して、観客の一人を舞台にあげイーキンと一緒にダンスができると言う。色めきだつファン。「1、2……ファー」とか「1、2……4」というお決まりのやりとりがあって、手を上げたたくさんの人たちからジェリーが選んだのは、黒い帽子に赤いコートを着たおしゃれな女の子。舞台に上がったとたん、イーキンは「かわいい子を選んだねえ」とでもいうように、ジェリーに向かってニコニコしながら指を振っていた。しかし、「ダンスはできますか」とジェリーに聞かれた女の子が「勉強したことがある」と答えたら、急に後ろに後ずさり(笑)。そんなこんなで始まった曲は「Magic」、『東京攻略』の主題歌だ。ジェリーがうまく女の子をリードして、2人でイーキンのまわりを華やげた。

 その後は、1年前のイーキンパーティーでも歌った「Together」。この歌はファンクラブの会報に、練習曲として(?)ルビが載っていたもの。でもみんなの声が細くてあんまりよく聞こえなかったかなあ。ここでイーキンが握手に降りてきたけど、さすがに前方の人しか触れることはできなかった。そして「I'm a bad boy」と一言、コートを脱ぐと、Tシャツではなくタンクトップだった! しかも妙に肉付きがいい。新曲「Bad Boy」を披露した。途中でポケットからチェーンをだして、ぐるぐる回してみるも、頭にあたってしまうイーキン。ああ、やっぱり……でもそんなところがツボなんです。

 歌い終わったイーキンは、「バイバイ」と去って行ってしまった。バイバイって… …と時計を見るとまだ1時間しか経ってない。もうアンコールかい、えらく短いなあと呆然としていると、周さんがそでから登場。「みなさん、これでイーキンとお別れなんて寂しいですよね。盛大に拍手してください」なんて、NHKのアナウンサーのような司会ぶり。みんなでウワーと拍手をしていると、バンドの演奏が始まった。「直至消失天與地」を歌いに出てきたイーキンの衣装は、黒のTシャツに「EKIN LIVE IN JAPAN 01」と赤のスパンコールの刺繍を施したもの(パンツはそのまま)。もう、彼は本当にこの衣装がかっこいいと思っているのだろうか……?? 本当に興味がつきない人だ。

 次の曲「同一秒」を歌う前に、イーキンはこんなことを言った。「この曲は2階にいるある人に送りたいと思います。皆さんも聞く権利はあると思いますが」。会場中が一瞬不機嫌(笑)。しゃべっているイーキンの言葉があいまいで、さらにそれを訳しているものだから、余計内容が不鮮明になっていた。「皆さんもご存知かと思いますが」という前フリからすると、ジジに捧げたとしか考えられないけど、でもその日、2階にいた人の話によると、それらしき人は見当たらなかったということだ。まあ、ともかくイーキンは「同一秒」を思い入れたっぷりに歌いました。何故かこの歌だけ日本語訳がモニターに映し出され、「いったい、この歌を誰に捧げてるの、キーッ」って感じ(笑)。続けて「一生愛[イ尓]一個」。ファンからハートの電気蛍光棒をもらって、嬉しそうに左右に振りながら歌った。そしていよいよ「Thank you for you ──My Song」と、中国名「我的歌」をラストに、全19曲を熱唱したイーキン・チェン・ジャパン・ツアー01、1日目は幕を閉じたのでした。


 1時間半というのは予想外の短さだけど(イーキンの気力がそれしかもたないと判断したのだろうか??)、想像以上にステージが近くて喜びひとしお、わたしも大いに盛り上がりました。特に、昔の歌はほとんどイーキンと一緒に歌えたのには、まだ覚えていたんだと我ながら驚き。イーキンの歌を聴き始めたころは、一生懸命辞書を見ながらルビをふって、1曲につき1時間くらいCDをリピートさせながら練習したものだったなあ。それまで意味もわからず、口まねで歌っていたのに、初めて歌詞に感情をのせられたのは「發現」だったっけ……などと感慨にふける。ステージの外に出て会場に送られた花の送り主を見ると、香港特別行政区駐東京経済貿易代表部の張敏儀氏、香港観光協会の加納國雄氏、テレビ朝日、辺見えみり、ビバ!伊麺組の5つのみ。他に共演した日本人俳優もいるのに、これはちょっと寂しい。

 競技場の門を出て、しみじみと今回のライブを思い返した。確かにわたしも大はしゃぎだったし、十二分に堪能した。でもライブが終わったらすっきりしてしまって、全然後をひかない。ライブを消費したという感じで、前日同様、やっぱりときめきがない。いつもだったら、イベントの後こそ異様に興奮して、知り合いに話したくてウズウズしているのに……。いったい、わたしったらどうしちゃったの?? やっぱりライブが始まっても不安は消えないのだった。

3日目に続く

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特別寄稿 Feb. 16, 2001 (Feb. 22 修正・加筆) (文:まつした)
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