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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『バンコクナイツ』
クランクイン直前スペシャルイベント

「バンコクナイツ」イメージビジュアル (c)空族

富田克也監督と相澤虎之助脚本の映像制作集団・空族の最新作『バンコクナイツ』クランクイン直前イベントが、先日9月2日、18:30~渋谷WWWにて開催されました。
イベント紹介ご参照
http://cinemajournal.seesaa.net/article/425104951.html


特報の爆音上映から始まったこのイベントは、10月20日にクランクインが予定されている同作品を応援するためのクラウドファンディングを呼びかけるもので、観客を映画制作に巻き込んでしまおうという企画のようです。「もう観客ではいさせない!」という富田監督の熱いメッセージに、この日集まったファンはあたたかい拍手で応えていました。


会場は満席でした!!

「この世の中そうとうヤバイところまで来ている」と語る富田監督は、「とにかく完成に向けて動き出す。必要なものは後からついてくる」というスピード重視・超ポジティブ志向。意欲的に作品を生み出していこうとするパワーに満ちあふれていました。とりあえずクランクインは決まったけれど、その先の資金調達はスタッフのギャラを含め未定。この日、応援に駆けつけたミュージシャンの菊池成孔さんは、このクラウドファンディングとは別に、ポケットマネーから出資するそうです。


樋口泰人×菊地成孔×富田克也監督

映画のプロデュースの仕方もかなり多様化していますが、思い込みにとらわれずに観客と直接つながっていこうという映画づくりの可能性には、ワクワクするものを感じました。空族の映画は「映倫を通さない」「DVD化しない」という独自のポリシーを持ち、作品そのものだけでなくそういう映画制作のありかた・上映の仕方も含めて熱い支持を集めているようです。菊池さんと共にステージに上がった映画評論家の樋口泰人さんもそんな支持者の一人です。樋口さんは爆音上映の仕掛け人としても知られています。

わたしたちはアジア人であるにもかかわらず、圧倒的にヨーロッパやアメリカ側からの情報が多く、たいへんバランスがよくない。たとえばベトナム戦争のことでも、日本人が抱くイメージはアメリカからの情報でつくられていて、ベトナムやミャンマーやラオスやタイの視点から見るとまったく別のものが見えて来るということです。『バンコクナイツ』がどんな映画になるのか、まだつまびらかではありませんが、自分はいったいどこに立っているのか、日本人としてどうするのかということを迫られるかもしれません。
今回のイベントで特に興味深かったのは、第2部で取り上げられたタイ東北部・イサーン地方の音楽「モーラム」の話でした。


脚本担当の相澤虎之助さんも登場

イサーン地方はラオスやカンボジアと隣接し、タイ中央部とは言葉も文化も異にするところです。歴史的に中央に対する反骨精神を持ち、富田監督によれば、イサーンの森は「抵抗勢力」が立てこもる場所だそうです。ここで伝統的に歌われ、様々な新しい要素を取り入れながら発展してきた「モーラム」という音楽が、世界中のレコード・コレクターやマニアから熱い注目を集めているというのです。


特別講師のsoi48さん

仏教のお布施を集めるための「語り」として始まったモーラムは、今ではダンスミュージックとなり、22以上もの型を持つユニークな音楽になっています。他の国や地域の貧困層は、当時月給と同じぐらいの価格のレコードは買いませんでしたが、音楽が大好きなイサーンの人々は、お金が無くてもどうにかしてレコードを買っていたそうです。だから70年代~80年代のモーラムのレコードが、今でも比較的たくさん残っている。インターネットが発達してCDが売れない時代になっても、イサーンの人たちはCDを買っているとのこと。いろんな型のモーラムがありますが、70年代、モーラムに携わる人たちは「楽しいものだけつくってりゃいいじゃん」ということに目覚め、アメリカンポップスなどの影響も受けながら、ひたすら「楽しい音楽」「踊れる音楽」になっていったそうです。みんな夜通し朝まで踊るのが、イサーンではいつものこと。モーラム歌手は尊敬されて、人間国宝になっている人もいる。そんなモーラム歌手の大御所の一人、アンカナー・クンチャイさんの『バンコクナイツ』への出演が決定しました。この「モーラム」が映画の中でどう描かれるのか、たいへん楽しみです。


日本の民謡のように、農作業の時に歌われたモーラムの歌詞が、工場労働の歌詞に入れ替えて歌い継がれていたりするという話を聞いて… イサーンの人たちのモーラムの楽しみかたには、音楽というものの「原点」があるように思いました。

このあと会場では空族の前作『サウダーヂ』の爆音上映が行われました。2時間40分、爆音で全身をマッサージされた感じ。。


(c)KUZOKU - All right reserved

上映後、俳優さん達の登場

商業ベースに乗った映画やテレビ番組やコマーシャルの「映像と音と言葉」のじゅうたん爆撃を日々受けているわたしたち。たまにはこういうブッ飛んだ映画の爆音上映を体験して、脳をリセットしたほうがいいかもしれません。

映像制作集団 空族公式サイト
http://www.kuzoku.com/
映画『バンコクナイツ』公式サイト
http://www.bangkok-nites.asia/

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(取材:山村 千絵 協力:せこ 三平)
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