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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

パキスタン映画『BOL ~声をあげる~』
2012年福岡でのショエーブ・マンスール監督インタビュー
~ 東京での上映に寄せて ~

賞状を受け取る監督。アップの写真でない理由は、文中でご確認を!

2月17日から東京国立近代美術館フィルムセンターで行われている「現代アジア映画の作家たち 福岡市総合図書館コレクションより」で、パキスタンのショエーブ・マンスール監督の『神に誓って』と『BOL ~声をあげる~』の2作品が上映されます。いずれも、アジアフォーカス・福岡国際映画祭の最高賞である観客賞を授賞した作品です。
これを機会に、『BOL ~声をあげる~』が2012年に福岡で上映された折に来日されたショエーブ・マンスール監督インタビューや、上映時のQ&A、観客賞授賞式とその後の囲み取材の模様をお届けします。
シネマジャーナル86号 および 日本パキスタン協会・会報「パーキスターン」に寄稿したものを元に構成しました。)


【フィルムセンターでの上映日】

◆『神に誓って』IN THE NAME OF GOD
168分・35mm・カラー
上映日:3/5(木) 2:30pm 3/8(日) 0:00pm
フィルムセンター http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2015-2/kaisetsu_17.html
アジアフォーカス http://www.city.fukuoka.lg.jp/fu-a/ja/film_archives/detail/207.html

◆『BOL ~声をあげる~』SPEAK UP
153分・35mm・カラー
上映日:3/5(木) 6:30pm 3/8(日) 4:00pm
フィルムセンター http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2015-2/kaisetsu_18.html
アジアフォーカス http://www.focus-on-asia.com/entry/3195


◎2012年 ショエーブ・マンスール監督 来日報告

2012年9月14日~23日にかけて開催されたアジアフォーカス・福岡国際映画祭2012で、パキスタン映画『BOL ~声をあげる~』(原題:Bol/ speak out)がみごと福岡観客賞に輝いた。観客が選ぶ第1位の作品に贈られる賞で、アジアフォーカスでの最高賞である。
授賞式でショエーブ・マンスール監督は、2008年に長編第1作の『神に誓って』(原題:Khuda Key Liye)が福岡観客賞を受賞したのに次いで、長編第2作も受賞したことに驚き、喜びと感謝の言葉を繰り返した。
BOLは、ウルドゥー語で「話せ」。保守的な社会で抑圧されている女性たちに、胸の内を明かしましょうと勇気づける作品。私の福岡滞在中、上映後のQ&Aや、授賞式、そして個別インタビューで、監督が映画に込めた思いをたっぷりお伺いすることができた。
 何より、本作を福岡に出品することができたのは、麻田豊氏(元東京外国語大学・ウルドゥー文学研究者)のお蔭だったことを強調されたのが印象的だった。

☆注:1作目の『神に誓って』を麻田豊氏が、youtubeで見つけて、是非アジアフォーカスにと進言して出品が実現。そして、この2作目に繋がった。

★ストーリー★

古都ラホールで薬屋を営む信心深く封建的な家長。生まれてくるのは娘ばかり。伝統的な薬の売れ行きは悪く家は貧しいが、跡取りの息子が生まれるまで妻に子どもを生ませ続ける。やっと男の子が生まれたと思ったら両性具有。娘のほうがまだマシと、戸籍にいれず学校にも通わせずひたすら隠して育てる。息子は隣家の青年の紹介でトラックに絵を書く仕事につくが、たちまち男たちの餌食になる。それを知った父親はついに息子を殺してしまう。警察に賄賂を渡して罪を逃れるが、経済的に困窮した父親は、売春宿の主人から金を借りる。娘を生ませる能力を買われてのことだ。売春宿の孫娘との間に女の子が生まれる。娼婦となる運命の赤子はその後父親の家に匿われるが、奪い返しにきた者たちとの争いの中で、はずみで長女が父親を殺害してしまう。死刑執行されるという段におよんで、長女は報道陣を集め、なぜ自分が父親を殺すに至ったかを語り始める・・・


◆9月17日 上映前の挨拶

観る前には何も申し上げないでおきましょう。ただ、2つだけ。まず、出演者は一人を除いて初めて映画で演技しています。もう一つ、前作『神に誓って』は、宗教界からはネガティブに捉えられて、脅迫されたりして命の危険にあいました。前作はアジアフォーカスで幸運にも観客賞をいただきました。今回の作品も脅迫されたりしましたが、なんとか生き延びて、ここに立つことができました。観に来てくださって、感謝しています。


◆上映後のQ&A

司会(映画祭ディレクター梁木靖弘氏): 最後の5分、お父さんが亡くなって家族が幸せになるエンディングにびっくりしました。

監督:実際、結末がキモです。見せたかったのは、父親のような硬い考え方が他の人の人生を妨げているということ。宗教的な原理主義がいかに壁になっているかを伝えたかったのです。


*会場の観客との質疑応答

― 最後が現代とすると、7~8年前の話だと思うのですが、その頃よりも今は解放的と考えていいのでしょうか?

監督:残念ながら、パキスタンでは今でも多くの父親が保守的です。日本やアメリカ、ヨーロッパでも保守的だった時代がありましたが、だんだん変化しました。変化は世界でいつも起きていることです。今、パキスタンは2つのクラスに分かれています。時代の変化を受け入れている階層と、保守的で変化に抵抗している階層。その保守的な階層がパキスタンでは今も大多数なのです。

― お父さんには共感できませんでした。座敷牢のような生活とコンサートに行ったりする、全く別の生活が描かれていて、まるで2つの映画を観ているようでした。

監督:映画は実は家族の話ではありません。あのような家族が多いことを踏まえ、パキスタンでは二つの階層があることを描きました。女は子育てをして家事をしていればいいという階層が大多数。父親は不合理なことをしているようだけれど、普通の国民はあれが普通だと思っています。娘は家から出るべきでないと。もう一つは変化を受け入れて前進している人たち。娘たちは逃げることができると思うかもしれませんが、逃げても独立して生きていける状況ではありません。自分が逃げても他の家族が心配。長女は前進した考えを象徴しています。何度も父に挑戦しています。父親は自分なりに宗教を正しいと解釈しているのに対し、若い人たちは受け入れられない。この映画は二つの考え方がパキスタンの中で衝突していることを描いています。


Q&A終了後、映画館入口ロビーでサイン会が開かれた。大勢の観客が並ぶ。一人一人とにこやかに会話されているのを少し離れたところから眺めていたら、サインをしながら、私に笑いかけてくださったような気がした。もしかして、2008年にお会いしたのを覚えていてくださったのかと嬉しい一瞬だった。


◆マンスール監督インタビュー

9月18日、単独インタビューの時間をいただいた。
「昨日はサイン中でしたが、前にお会いした方がいると嬉しかったです」と開口一番。
2008年来日の折に、個別取材はできなかったが、観客賞受賞直後の記者会見で正面に座って質問もしたので、覚えていてくださったようだ。
前日のQ&Aを踏まえて、お話を伺った。


*パキスタン社会の二層化を描いた

― パキスタンでは、ベーナズィール・ブットーが首相を務めたなど、一部の女性が社会的に活躍する一方、パシュトゥーンなど民族によっては女性が自由に外出できない実態があり、極端な社会です。『BOL』でも、ザイナブの処刑現場からレポートする女性ジャーナリストを登場させて二つの階層の対比が見事でした。

監督:現場レポートに女性のジャーナリストを登場させて、パキスタンにはあのようなインテリ層の女性もいることを示しています。もちろん意図的な演出です。外国人に極端に女性の階層が分かれていることをわかってもらいたいという思いもありました。同様にザイナブの隣の家は父親が校長で、息子も娘も大学で医学を学んでいます。隣同士でもそれほど違うことを見せたかったのです。
もっとも、今、社会は変化し、女性でも教育を受けるようになってきています。大都会では90%の女子は学校に通っています。運転もします。私の妻や娘は私より運転が上手なくらいです。都市で一般的に女子が学校に行かないのは経済的な問題。男女問わず学校に行けないのは貧困の為です。

― 撮影に使ったラホールの家がとても美しかったです。

監督:古い家で400年前位からある家です。実際に女子校として使われている家で、撮影のために4つの教室を借りました。隣の家との対比を描くのに最適な作りでした。また、学校に行かせてもらえない娘たちが階下にいる女子校生たちを眺める場面がありますが、あれは本物の生徒たちです。


*国内と国外で異なる反響

―「ヒジャーブ(頭や身体の線を覆うもの)を脱ぎ捨てて新しい人生を!」と、女性は勇気づけられたと思います。一方、保守的な男性たちからは批判があったことと思います。国内での映画の反響はどんなものでしたか?

監督:混じりあった反応です。一つの階層は、変化を求めていて歓迎してくれました。保守的な階層は抵抗を示しました。彼らは女性の教育や女性が働くことを嫌う傾向があります。

―外国での評判はいかがでしたか?

監督:映画は主にパキスタンの観客を対象に考えていました。国外では、インド、アメリカ、カナダ、イギリス、アラブ首長国連邦、オーストラリア等で上映しましたが、観てくれたのは、主としてインドやパキスタンの出身者です。きっと女性には受けたと思います。どこの社会でも起こり得ることだと思います。奇妙なことが起きているわけではありません。Q&Aの終わった後に、ある男性が父親ハキームは非現実的に見えるとおっしゃいました。あのような人物は過去にもいたし、今もいると思うのですが。

― インドの許可書が冒頭に出てきましたが、インドからも資金を得たのでしょうか? それとも、インド国内で上映するための許可だったのでしょうか?

監督:インドの許可番号が冒頭に入っていたのは、アジアフォーカスの入手したフィルムがインドでプリントしたものだったからだと思います。インド資金は入っていません。インドでの評判は、とてもよかったです。いい評論もいただきました。パキスタンで賛否両論だったのと違って、インドではポジティブな反応ばかりでした。


*少数派のシーア派

― パキスタンではシーア派は少数ですが、本作では、いかがわしい商売をしているチョウドリー氏がシーア派です。シーア派はパキスタンでどのように見られているのでしょうか?

監督:パキスタンでシーア派は少数派で差別されることが多いです。ほかの国でもマイノリティーが差別されていると思います。奇妙なことなのですが、パキスタンで売春宿を営むのはすべてシーア派です。シーア派には一時的に結婚できる「ムトア婚」(一時的といっても1日から99年間までOK)というシステムがあるので、それを売春に応用しているのではないかと思います。一方で、娘にも大学で教育を受けさせている隣の家もシーア派です。必ずしもマイナーな訳ではありません。

― 父親がチョウドリーから貰った汚いお札を洗ってアイロンがけしているところが強烈でした。チョウドリーが父親に対して、「犬もあなたも同じ家族」と語るのも強烈でした。

監督:犬はイスラームでは忌み嫌われていますから。


*適材適所でキャスティング

― プロの映画俳優は一人だけと上映前におっしゃっておられました。皆、演技が見事で、誰がプロだったか、判別できないくらいです。

監督:プロの映画俳優は売春宿を営んでいるチョウドリーだけです。

― 映画出演経験のない人たちをどう演出されたのでしょう?

監督:それはもう、私の人生をかけて映画を作っていますので、適材適所でキャスティングしています。ムスタファ役のアーティフ・アスラムはパキスタンで人気のあるトップシンガーです。アイーシャ役のマーヒラ・ハーンはこの映画がデビュー作ですが、今は人気が出て、多くのテレビドラマシリーズなどにも出演しています。高級娼婦のミーナを演じたのは、トップモデルです。

― 名作『パーキーザ』や『踊り子』が引用されていましたね。

監督:いずれも古いインド映画で、とても人気があって、マイルストーンになった様な映画です。音楽が素晴らしいです。

― 父親がガーリブの詩集を人生の指針にしていました。今はそのような人は減っているのでしょうか?

監督:以前は伝統的によく人生の指針として使われていました。今は確かに減ってきていると思います。


*はびこる賄賂体質

― ザルダーリー大統領は奥様のベーナズィール・ブットーが首相だった頃、内閣で大臣を務め、関連予算の10パーセントを常に着服しているとして、「Mr.テンパーセント」として有名でした。本作でも、警察が自分はお金を受け取らないといいながら、賄賂を強要しています。役人や警察などの人たちから、どのような反応がありましたか?

監督:反応しませんでした。自分たちが賄賂体質であることを認めているから、何も言えないのです。賄賂を要求するのが多数派。賄賂や汚職が上から下まで普通のこととなっています。


*2作品セットで意味を持つタイトル

― タイトルの『BOL』に込めた意味は? また、題字のBOLのBの字の中に、美しいウルドゥー文字がいろいろと綴られていましたが、どのような意味の言葉が書き込まれていたのでしょうか?

監督:BOLは、ウルドゥー語で「話せ」。声をあげましょうという意味で使っています。題字のBの中には、もちろん映画の内容に通じるような言葉を散りばめてあります。初めて作った映画は、『神のために』。1作目と2作目のタイトル二つ合わせて意味を持ちます。

― 3作目のタイトルが楽しみです。

監督:さて、どうなるでしょう。

― 撮影中に苦労されたことは?

監督:全世界どこでも同じだと思うのですが、ハリウッドですら、今、映画が簡単に撮影できません。いつも問題を抱えています。

― ぜひ3作目を完成させて、また福岡にいらしてください。タイトルを楽しみにお待ちしています。



★9月19日 観客賞 受賞式

授賞式を取材するプレスに対し、「本日の受賞者より、写真はアップで撮らず、引きで撮ってくださいと依頼されています。特に英語など外国語のサイトにはアップで撮った写真を載せないようにお願いします」とのメモが配られた。受賞作が『BOL』だと確信したのは言うまでもない。(監督は、個別取材の折にも、アップの写真を撮られたくないとおっしゃっていたので)


受賞発表を待つゲストの皆さん             壇上にあがったゲストたち  

トロフィーと賞状を胸に、「映画の出来には満足していなかったのですが、麻田豊先生に勧められて出品しました。唯一出品した映画祭です。たった2作しか映画を作っていないのに、ここ福岡で2回目の観客賞。どれだけ嬉しいか、ほんとに言葉がありません。皆さんに感謝しています」と満面の笑みの監督だった。



★囲み取材

授賞式終了後、ロビーでプレスの囲み取材が行われた。BGMの音が大きかったため、テレビ用に再度同じ質問に答えていただくことになった。恐縮する記者に、「自分も長い間テレビ業界で働いていましたから、よくあることです」と気遣う監督。一度答え終えた質問から、囲み取材は再スタートした。


― 今のお気持ちは?

監督:とても興奮しています。人生でたった2本しか映画を作ってない人間が2本ともここ福岡で観客賞をいただいたのですから、どれだけ嬉しいか想像してください。福岡の人たちが大好きです。2008年に来日した時に麻田先生と個人的な友人となり、その後奥様と二人でパキスタンの自宅にもいらしてくださいました。自分としてはいい出来だと思わなかったけれど、是非出品するように勧められました。麻田先生にほんとうに感謝しています。

― どんな思いを込めて作られましたか?

監督:この映画にはあまり満足していません。賞を取るために作ったためでも評論家に高く評価されるために作ったのでもありません。映画を作った目的は自分が生きている社会の向上です。国の人たちのために作ったものです。もっともっと啓発したいと思って作ったのです。間違ったことをしている人が多くて、そのために苦しんでいる人も多いからです。啓発するための映画が必要だと思うのですが、時には説明が多かったりします。問題を取り上げるだけでなく解決策を提示しないと不十分です。教育水準の高い国では問題提起するだけで十分かもしれませんが。こうしたら解決できるということが見えるものを作らないといけないと思いました。今の世代の人たちは見ても受け入れてくれないかもしれませんが、次の世代の人が見て前進してくれればという期待を持って作りました。

― テレビ界で長い間、今おっしゃったような問題提起もされてきたのでしょうか?

監督:テレビでは主にエンタメ番組を手がけていました。音楽やショーやコメディーやドラマで人々を楽しませるものです。テレビ業界を離れて、わかったのですが、自分の人生ももうあまり残っていないのに、まだまだ私の国の人たちの生活は何も変わっていない。そこで映画を作ることにしたのです。
パキスタンの映画業界は衰退していて、映画を復興したいという思いもありました。テレビ番組は消費されて消えてしまう。映画は影響力も大きいし、作られてから存続する期間も長いので映画を活用して自分のメッセージを伝えたいと思いました。

― 監督自身の映像が流れるとまずいと言われたので、それだけ本心を突いた映画だといえますね。

監督:海外のメディアに顔を隠したいのは恐怖心からではありません。より大きなメッセージを人々に伝えたいから作品を作っています。大事なのは作品であって、それによって名声を得たいからではありません。舞台裏で社会に貢献したいのです。若者たちに言いたいのは、作品を作る時には作品に集中しなさい。それによって顔を売って有名になろうということはしないほうがいい。

― 今回の作品のみどころ、ここを観てほしいというところは?

監督:全部! 海外の観客に向けて作ったものでなく、パキスタンの人たちに観てもらいたいと思って作ったものです。パキスタンでは長い間、いろいろと誤ったことをしている人がいて、それを是正してほしいと思って作ったのです。海外でこの映画を観て理解してくださるのはいいことだと思います。パキスタンの女性たちがどれほど大きな苦しみや痛みを受けているかを同じように感じていただければと思います。集中して描きたかったのは、パキスタンの今の国内で起きている二つの階層の対立です。一つは、すでに前進して変化を受け入れて発展している階層。もう一つは時代の流れに抵抗して変化を受け入れたくない人たち。昔ながらのやり方で社会を後戻りさせています。古いやり方をいまだに守ろうとしています。その二つの階層の衝突をテーマにしています。父親が古い階層の代表。原理主義的な古い掟を守ろうとしています。長女が父親に挑戦する新しい階層の象徴。もっと前に進みたい。女性でも教育を受けたい、外で働きたい、家の中に閉じ込められるのでなくもっと前に進みたいと思っています。そういう女性たちを勇気づけたいと思って作ったものです。



★☆★★☆★


2012年10月10日、パキスタン北西部スワートで下校途中の通学バスが覆面の男に襲撃され、少女が頭部に銃弾を受けたというニュースが世界を駆け巡った。重体の少女マララ・ユスフザイさんは、ブログを通じて、イスラーム武装勢力によるテロや女子校の破壊行為を批判し、女性への教育の必要性を訴えていたことから目を付けられたのだ。
『BOL』を観て、これが現代のことかと思う観客が多かったが、まさにマンスール監督が憂う現状そのものだ。
2014年、マララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞されたことは周知の通り。その後、状況が改善されたとはいえないのが残念だ。

本作は社会的なテーマを扱いながらパキスタンで大ヒット。それは、実力派アイドル歌手アーティフ・アスラムが出演しているというだけではないだろう。長年テレビ界でエンタメ番組を手がけていた監督が、その手法も取り入れ、進歩を望みながら声を出せない人々に代わって叫んだことが拍手喝采で受け入れられたのだと思う。
ところで、歌って踊っての場面をインド映画につきものと思われる観客も多いことと思う。突然組み込まれるのでなく、本作では父親の重しがなくなった時に踊っていることに注目していただきたい。
インド社会とはまた違うイスラームを色濃く背景にしたパキスタン社会を垣間見れる作品だが、元々自国民を対象に作ったものなので、外国人が監督の意図を理解するのには、もっと解説が必要かもしれない。

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取材:景山咲子
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