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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『柘榴坂の仇討』
完成報告記者会見レポート

いよいよ9月20日(土)より公開の『柘榴坂の仇討』。
安政7年3月3日に起きた「桜田門外の変」に関わった二人の男の物語。
一人は、大老・井伊直弼(中村吉右衛門)の御駕籠回り近習役として仕えていた彦根藩士の志村金吾(中井貴一)。もう一人は、水戸藩の刺客18人の内の一人である佐橋十兵衛(阿部寛)。
金吾は、主君を守りきれなかったことを悔み、刺客を明治に入っても探し続け、13年後、刺客の最後の生き残りである十兵衛(阿部寛)を見つけ出す。直吉と名を変えた十兵衛の引く人力車に乗り、雪の柘榴坂をあがっていく。しかし皮肉にもその日、明治の新政府は“仇討禁止令”を布告していた・・・・

猛暑の7月30日(水)、『柘榴坂の仇討』完成報告記者会見が、品川駅北側にまっすぐのびる実在の柘榴坂に面したグランドプリンスホテル新高輪の宴会場で開催されました。

◎蝉しぐれの中で、柘榴味のかき氷

会見に先立ち、日本庭園でフォトセッション。
木立に囲まれた庭園の中ほどの空間に設営された、かき氷屋さんの店先といった風情の赤い毛氈の敷かれた縁台。赤い蛇の目傘が太陽の強い陽ざしを遮っています。
夏真っ盛りで、ものすごい蝉しぐれ。
「こればっかりはどうしようもないですね。すみません」と主催者。
音声さん泣かせの蝉の大合唱です。


人力車で登場

木陰から人力車に乗って中井貴一さんと阿部寛さんが静々と登壇。
後の記者会見で、阿部さん、「貴一さんに引けと言われましたが断りました」と言って、笑わせる場面も。

町娘風の着物に白いエプロンの文明開化時代のカフェの女給風の4人の女性たちが二人を迎えます。


柘榴坂にちなんで、柘榴のシロップをかけたかき氷が二人に振る舞われました。
中井さん第一声「酸っぱいですね」
MC「阿部さん、いかがですか?」
阿部さんも「酸っぱいですね」


柘榴シロップのカキ氷を食べる

会見が終わって、私たちもご相伴に預かったのですが、さっぱりして美味しいけれど、確かに男性には酸っぱさが気になるかも。


☆『柘榴坂の仇討』公開記念として、映画の舞台となった「柘榴坂」(品川駅高輪口からまっすぐ高輪方面に伸びる坂道)に隣接しているグランドプリンスホテル高輪とグランドプリンスホテル新高輪、品川プリンスホテルで、「柘榴坂」にちなんだスイーツなどのメニューを計画中とのお話がありました。
9月20日から販売の柘榴をアレンジしたスイーツやパンの詳細は、公式サイトで!
http://www.zakurozaka.com/news/?p=72
美味しそうです!


◎若松節朗監督を交えて記者会見


左から若松節朗監督、中井貴一、阿部寛

MC: 本作は、2014年1月5日、京都でクランクイン、2月10日 クランクアップされました。
先ずは一言ずつどうぞ。


左から若松節朗監督、中井貴一、阿部寛

中井:京都での撮影から約半年。いよいよ公開が近づき、映画については深くお話できませんが、頑張って参りますのでよろしくお願いします。


中井貴一

阿部:久しぶりに時代劇の映画に出演しました。本当に素晴らしい作品になっていると思います。今日はよろしくお願いします。


阿部寛

若松節朗監督:あまりしゃべるなと言われております(笑)。 この暑い夏に、涼しげな良い映画が出来たと思います。誇りと覚悟を持って、主君の敵討ちをしようと生きる男と、阿部さんの演じる男。雪の涼しさだけでなく、2 人のクールな役どころも含め、涼しさが溢れる作品になっていると思います。


若松節朗監督

MC:中井さんと阿部さんのお二人の本格的な共演は初めてとのことですが、お互いの印象は?

中井:1回目の『麒麟の翼』では僕は遺体で彼は刑事でした。2回目の『素敵な金縛り』では僕が刑事で、阿部さんは弁護士。二人の会話はあまりありませんでした。3回目で初めて本格的な共演だったのですが、仇という間柄。阿部さんも気を遣ってくれて、お互いあまり会話を交わさないようにしてました。2か月間、京都での撮影でしたので、ご飯でも一緒に食べたいなと思っていたのですが、「おはようございます」「お疲れさまでした」と挨拶を交わすくらいで、阿部さんの真面目さをひしひしと感じさせていただきました。

阿部:この作品に入る前に、貴一さんとお会いし、主君の仇を13年間も追い続ける男を演じられる覚悟をお聞きし、あまり貴一さんの前に姿を現さない方がいいと思っていたら、初日からメイクが隣りの席でした。(会場 笑)

MC お二人、それぞれ殺陣のシーンがとても印象的でした。稽古の時や、撮影の時などで印象に残っていることはありますか?

中井:長槍を阿部さんが持って逃げる場面があるのですが、阿部さんが持つと普通の槍になるんです。とうてい立ち回りできる長さじゃないのですが、阿部さんだからできる! あぁ阿部さんで良かったなと思いましたね。おかげで気持ちの良い立ち回りができました。

阿部:長槍は本当に重かったですね。先が重いんです。3.5m位あって、振り回されるんです。僕だからやりましたけどね(笑)。あと人力車を引くのがとても大変でしたね。貴一さんを乗せていて、坂が逆になるといけない。さっき、日本庭園で人力車に乗る時に、貴一さんが「引け」って小さな声で言われたのですが、断りました。(会場 笑)

MC :お二人はこれまでの人生の中で仇討ちをしたいと思ったことはありますか?

中井:しょっちゅうですね。根に持つ方なので、仇討ちが出来るものならしたいですね(笑)。

阿部:僕は性格が良いのでありません! (笑)

MC 若松監督にとって初の時代劇。ご苦労は?

監督:阿部さんが思いやりがあると言っていましたが、こんな仲の悪い共演者はいないと思った瞬間に、今度は仲の良い兄弟をやりたいよねとか言ったりしてました。京都で美味しいものを食べようなんていう雰囲気もなかったし。現場でお菓子を食べたりしたいのに、それも許してくれない。(笑) 雪のシーンが多くて、9月公開ですが、涼むにはいいのではと思います。

左から若松節朗監督、中井貴一、阿部寛 左から若松節朗監督、中井貴一、阿部寛

☆記者よりの質疑応答

― 撮影中のエピソードで、苦労されたことや意外だったことは?

中井:今年の冬は寒かったのですが、京都の底冷えする中で、雪が実際多くて、降ったり降らなかったりは、撮影にとっては困る。皆で合い間に暖を取るのですが、(役柄)仲良くというわけにいかないので、苦労しました。 監督の変なコメントに惑わされないでください。

阿部:人力車を引くのは意外と難しいんです。柘榴坂を上るシーンは、坂が急で、雪も敷き詰めてあって、自分で引きたいと助っ人も断ったら、ほんとに重くて。僕の身長だと余計に人力車は大変でした。重兵衛は金吾の重さを感じながら引かなくてはならないと思って、30メートルの坂を上りきったのですが、貴一さんは他のことを考えていらしたらしくて・・・。何を考えていたか、ご本人から聞いてください。

中井:阿部さんの、ふ~んと気張っているのを聞いて、このまま離されたら、後ろ向きに落ちるのではと、どうしようと思いながら撮影してました。

― 特別な役作りをされましたか?

中井:特に特別なことはしていません。時代劇がTV からどんどんなくなり、映画も観て貰えない中で、どストレートな日本映画を撮ってくださるのですから、日本男児のDNAにある武士道精神を出すようにと心がけました。

阿部:小さい女の子に慕われるシーンがあるのですが、最初の段階で脚本がいくつかありました。女の子に対しては笑顔を見せる。そこまで追い込まれながらも、優しくしようという役どころ。また時代の行く末を見て、“生”にこだわる人間という部分もしっかりと演じようと思いました。

― この映画に描かれている日本人ならではの義や誇りについて、どう感じられていますか?

中井: ニュースで経済のことばかり報道されます。生きていく手段ではあるけれど、それが第一義であっていいのか? 同時に殺人事件も多いです。今、日本人がすべきことは、貧しくなれる勇気を持つことや、義とか誇りというDNAを呼び起こすこと。この映画を観て、その精神を理解してくれる20代の方が一人でもいてくれたら幸せだなと思います。

阿部:効率をよくと車に頼っていますが、たまに歩いてみると違うものが見えて新鮮。義の精神は効率には余計なものだけど、日本人にとってはそういう精神が大事。それを若い世代に伝えることのできる映画だと思いました。

― 主君への忠義がテーマですが、お二人が恩師から学んだことは?

中井:幸い、いい先輩に出会えたと思っています。父が俳優でしたが、早く亡くなって、背中を見ていません。上下の関係という利害ではなく、この先輩、好きだなぁ~という人に出会えました。

阿部: 今までこの世界でやってきて、人に恵まれてきました。今回も監督や貴一さんをはじめ本当に良い出会いをさせて頂きました。


*****

中井さんと阿部さんのお二人に、映画を通じて時代が大きく変わるのを追体験したお気持ちを伺ってみたいと手を挙げていたのですが、質疑応答の時間は終わってしまいました。
フォトセッションの後、取材陣にも柘榴味のカキ氷が振る舞われました。実は、この日、夏風邪で微熱があって、甘酸っぱい柘榴シロップの冷たいカキ氷は嬉しい一口でした。 阿部ちゃんがどんな発言するかを直接聞いてみたいと、風邪を押して取材に行ったせいで、その後、1ヵ月、風邪に苦しむことになってしまいました。(咲)

スタッフ日記ブログ 『柘榴坂の仇討』完成報告記者会見で、柘榴味のかき氷 (咲)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/403082055.html

シネジャ作品紹介ブログ 『柘榴坂の仇討』
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/405360890.html

ミッキーの毎日・映画三昧: 武士の誇りと情に打たれた 9月20日公開 『柘榴坂の仇討』
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/article/403638876.html

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(取材:宮崎暁美(写真)、景山咲子(文))
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