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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

20周年を迎える大阪ヨーロッパ映画祭
大阪ヨーロッパ映画祭実行委員長パトリス・ボワトーさんに聞く

Q 数年で終わってしまう映画祭もある中で、大阪ヨーロッパ映画祭は今年20周年を迎えるということで、おめでとうございます。今回は20周年を記念して、充実した企画を練られているということですが、そのあたりのことを具体的に教えて下さい。

A 今年の大阪ヨーロッパ映画祭(2013年11月15日(金)~25日(月)の全9日間に阪急うめだホールとエルセラーンホールにて開催)は、規模自体はそれほど変わっていませんが、全部で24作品を上映する予定です。日本や関西で初公開のヨーロッパの最新長編映画をはじめ、20周年を振り返るためにこれまで大阪ヨーロッパ映画祭で上映されて人気が高かった作品を上演します。フィクション作品の上映が中心の当映画祭ですが、ドキュメンタリー、アニメ、クラシックも期間中に上映します。またプレイベントとして、今年25周年を迎える六甲アイランドでも作品を上映し、上映後はヨーロッパの食文化を楽しむイベントも予定しています。10月26日には世界のCMフェスティバルが今回は昼の部も含め夜の部(オールナイト)と計二回開催されます。そして今インタビューしているこの場所(阪急うめだ本店9階・祝祭広場)でも、今年度の名誉委員長であるクラウディア・カルディナーレの写真展、これまで映画祭のポスターをデザインした人たちの作品の特別展も予定しています。ヨーロッパの商品や食文化を楽しむ物販・試食コーナーも隣接しています。

Q 今年の名誉委員長としてクラウディア・カルディナーレさんが選ばれた経緯を教えて下さい。

A 毎年違う国の方にお願いしていますが、今回は20回目で特別ですので、15回目の名誉委員長を務めていただいたモーリス・ジャール氏(「アラビアのロレンス」(デビッド・リーン監督)で音楽を担当したことでもよく知られ、アカデミー賞を3回も受賞している)のように、色々な国の言葉を話し、色々な国の監督と仕事をした人で、現役で活躍されている方というとかなり少ないのが現状です。その点、クラウディア・カルディナーレさんは数々の名作に出ていますし、75歳になられた今も主演女優として毎年映画に出演されています。日本でもよく知られている方でもありますので名誉委員長をお願いしまして、大変お忙しい方ではありますが、今回スケジュールが合えば来日していただける可能性もあります。

Q いつも映画祭の上映作品の選定についてはどのようにしているのですか?

A 年間300本ほどの最新長編映画のDVDを観たり、関係者からの話を参考にして社会性・芸術性・多様性という基準で秀でた作品を選んでいます。ただし、製作国やジャンルなど全体のバランスとの兼ね合いで、個人的に好きな作品を取り上げられないこともあります。また、映画は頭と心を使って作るものでありますし、観客の身にもなって、作り手だけが理解できるような「インテリっぽい」作品は避けています。他に上映機会がありそうなエンターテイメント性が強い作品も選びません。観客の方たちから書いてもらうアンケートも参考にしていますが、具体的な作品を推薦するケースはこれまでありませんでした。

Q この20年を振り返ってみて思い出に残ることはありますか?

A 思い出はたくさんありますが、その中で一番良い思い出は、映画祭期間中の出会いです。人間としても素晴らしい監督や俳優もいらっしゃいました。あえてベストを選ぶとすれば、先ほど触れた音楽家のモーリス・ジャールと俳優のジャック・ペラン(「ニュー・シネマ・パラダイス」(89年)などにも主演した著名なフランスの俳優で「WATARIDORI」や「オーシャンズ」を監督した)でした。モーリスには彼の奥さんの実家があるクアラルンプールまで会いに行って、名誉委員長の役を引き受けてくれるように頼みました。彼ほどの人に承諾してもらえるか心配でしたが、家族の話を聞いたりするうちに意気投合して、映画祭を応援するつもりで参加を快諾してもらいました。彼は来日中に事故に遭いましたが、ここで彼の責任感の強さを知ることになりました。車椅子に乗りながらも名誉委員長として登壇され、「アラビアのロレンス 完全版」のニュープリントバージョンの上映まで参加してくれました。ジャック・ペランはフランスでは誰でも知っている神様のような人ですが、そんな人にありがちな傲慢さはなく非常に気さくな良い人でした。

Q それでは逆に、この20年を振り返ってみて難しかったことはありますか?

A 99%がそんな経験でした(笑)。大阪ヨーロッパ映画祭は関西では先駆的な映画祭で、京都国際学生映画祭もこの後に続いて出てきた位なのですが、実はすぐにやめようと思っていました。私は映画製作の他に大学で講師もしていますが、これと並行して映画祭の資金繰りのために企業や団体のスポンサー探しもしています。これは結構大変です。また具体的な話になると、ジャック・ペランの「WATARIDORI」にちなんで、2メートルほどの渡り鳥の写真を街頭に展示しようとしました。2年間頑張りましたが、「今までやったことがないから出来ない」という理由で実現しませんでした。技術的には可能なのに、考え方の違いの問題でしょう。諦めたことはたくさんあります。イタリアだったら今までやったことがないことでも面白ければ「すぐやりましょう!」となるでしょう。イタリアの社会は確かに滅茶苦茶だけど(笑)、アートのレベルは高いです。そこが、決断するまでに時間がかかる日本との違いでしょう。

Q 最後に読者へのメッセージをお願いします。

A 現在、世界各地で経済格差などに起因する不穏な動きが起きています。決して楽観できない今後を背負っていく若い人たちに、是非ヨーロッパの文化に触れて学んでもらいたいと思っています。そこで映画塾というものを企画し、あちこちの大学や映像関係の専門学校で来日ゲストによる講演会を実施する予定です。また、過去の子供向けイベントで子供たちが作った短編アニメーション作品の上映も予定しています。今年は20年間の映画祭の集大成ですので、是非多くの方に来ていただきたいです。


2013年8月14日 取材・文責 石井 香江




大阪ヨーロッパ映画祭の詳しい情報については
 URL: http://www.oeff.jp/
 Facebook: https://www.facebook.com/osaka.european.film.festival.fanpage

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