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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

21st キンダー・フィルム・フェスティバル
オープニングセレモニー報告

キンダー審査員の子どもたちも勢ぞろい!

主催:一般社団法人キンダー・フィルム
http://www.kinder.co.jp/


世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭児童映画部門の協力を得て1992年にスタートしたこどもたちのための映画祭「キンダー・フィルム・フェスティバル」も今年で21回目を迎えました。2013年8月7日 調布市グリーンホールで行われたオープニングの模様をお届けします。


楽しく飾られた調布市グリーンホール

◆オープニングAプログラム

映画のまち調布での開催は6回目。まずは開催市を代表して長友調布市長が挨拶に立ちました。「グリーンホールがこんなにいっぱいになるのは年に数回」と、会場いっぱいの来場者に映画祭開催の喜びを語りました。


   映画祭の開幕を告げる少女               調布市・長友市長     

市長挨拶の後、さっそく『こまねこのおるすばん』の上映。タイプをしているこまねこちゃんが原稿にコーヒーをこぼすと、客席の子どもたちから「あぁ~」とため息。続いて、『ケープマン』では、岩の穴にはさまってしまったマンモスを前からはキツネが引っ張り出そうとし、後ろからは原始人たちが押し出そうとする姿に歓声があがります。実に素直な反応!


『こまねこのおるすばん』(C)TYO/dwarf・こまねこフィルムパートナーズ

会場が明るくなって映画祭チェアパーソンの戸田恵子さんが登場すると、皆、大きな拍手で迎えました。『ケープマン』の作者で、今回特集が組まれたイギリスアニメの巨匠グラハム・ラルフ監督を舞台に呼び込みます。久しぶりの来日。「小さなお祭りだったのが、こんなに大きくなって嬉しい」と語りました。


映画祭チェアパーソンの戸田恵子さんと、イギリスアニメの巨匠グラハム・ラルフ監督

いよいよ名物となったライブ吹き替え上映。
まずは、すっかり映画祭の顔となった内田恭子さん、ルー大柴さんが登場。「メニー、メニーなカストマーで嬉しい」と、得意の英単語を交えて会場を沸かせるルー大柴さん。(子どもたちにわかるのか?の英単語も!)


ルー大柴さんと内田恭子さん

戸田さんのナレーションによる『MOON~ムーン~』に続いて、戸田さん、内田さん、ルー大柴さんの生吹き替えによる『ピーターラビットラディッシュどろぼうのおはなし』。終ってから、内田さんがゲップの仕方をルー大柴さんに教えて貰ったと明かしました。


左:『MOON~ムーン~』                               
右:『ピーターラビットラディッシュどろぼうのおはなし』               
©2013 Frederick Warne & Co Limited and Silvergate PPL Limited. All rights reserved.

次に、これまた映画祭常連の中山秀征さんとジョン・カビラさんの二人を加えて、『きかんしゃトーマス』の上映。子どもたちにお馴染みの物語に息を吹き込みます。


左:ライブ吹き替え 左からルー大柴さん、中山秀征さん、内田恭子さん、戸田恵子さん
 (暗い中でやっと撮れた写真、戸田さんのお顔がぶれていました。)        
右:中山秀征さんとジョン・カビラさん                      

『きかんしゃトーマス』© 2013 Gullane (Thomas) Limited.

ライブ吹き替え最後の作品は韓国の『みえないパパとわたしと・・・』。地方から引っ越してきた少女ホン。方言や目の見えないお父さんをからかわれても健気に暮らすホンの物語。ホンを演じたダイちゃんとキム・ジュンイ監督が登壇。「世の中にはいろんな人がいることを理解してほしい」と語りました。


『みえないパパとわたしと・・・』(韓国)キム監督とダイちゃん

中山秀征さんも、「映画祭では楽しい物語や考えさせられる作品があって、世界にはいろんな人がいることを知ることができると思います。それが悪いことじゃない。映画の感想もみんな違っていい」と力説。さらに内田恭子さんが、「大人も楽しめる映画が揃いました。大人が観れば見方がまた違う。親子で楽しんでください」と添えました。

ルー大柴さん、「ジスタイムのメモリー思い出に、メニーメニー観て、エモーション感動を持っててくださいね」とまたまた英単語を連発。

最後に戸田恵子さんが、「映画を家で一人で観るのもいいですが、ぜひみんなで一緒に観て、それぞれに感じることが違うことを経験してください。世界には様々な作品があって、いいものがいっぱいあることを皆さんにお届けしたいと続けてきました。継続は力なり。作品の素晴らしさには自信を持っています。ぜひ大人の方がお子さんを誘っていらしてください」と締め括りました。


Aプログラムが終わったところで、フォトセッション。
Bプログラムで上映される『少年H』のH役の吉岡竜輝くん、Hの妹役の花田優里音ちゃんも登壇!
最後に、キンダー審査員の子どもたちも勢ぞろいして(トップ↑の写真をご覧ください)、フォトセッション終了。


左:『少年H』 H役の吉岡竜輝くんと妹役の花田優里音ちゃん          
右:『少年H』 H役の吉岡竜輝くん、Hの妹役の花田優里音ちゃんを交えて記念撮影

◆囲み取材

オープニングAプログラムが終わって、ライブ吹き替えの興奮冷めやらぬ登壇者の皆さんと、『少年H』のH役の吉岡竜輝くん、Hの妹役の花田優里音ちゃんを囲んで取材が行われました。


ロビーで囲み取材。

ジョン・カビラさん:普段のトーマスと全く違う。その場を共有できる緊張感を体験しました。
内田恭子さん:3つの物語、それぞれキャラも違って大変でした。
戸田恵子さん:皆さんがベテラン声優のごとく、違和感もなく普通にすぅ~っとやっているのが驚き。皆がキャラの顔になっているのでびっくり。画面と同じ表情をしてました!
中山秀征さん:いろいろ仕事をしている中で、もっとも緊張する不慣れな仕事です。
ルー大柴さん:ベリー ディフィカルト! 声優の皆さんは達者だなと思いました。画面を見ながらずれないようにするのが大変でした。

5人それぞれ生で吹き替えする緊張感を語りました。


◆オープニングBプログラム

まずは、9歳以上を対象に、おすすめの長編『はつこい』(オランダ/11分)を戸田恵子さんとジョン・カビラさんによるライブ吹き替えでプレミア上映。
ちょっと考えさせられる物語。子どもたちが少しずつ大人の仲間入りする助けになるような作品でした。


『はつこい』

次に、公開直前の話題大作『少年H』の限定プレミア上映。
上映前に、H役の吉岡竜輝くん、Hの妹役の花田優里音ちゃんが登壇して、会場にお客さんがいっぱいでびっくりですと語りました。
そして、大きな画面に、『少年H』で二人のお父さんお母さんを演じた水谷豊さんと伊藤蘭さんが映し出され、会場の観客に向けてメッセージを語りました。

水谷豊さん:キンダー・フィルム・フェスティバルでの上映、光栄です。名もなき家族の物語を楽しんでください。
伊藤蘭さん:あの時代を生きた同じ年代の子どもたちの思いを感じてください。うちの子たちがお邪魔していると思います。緊張していませんか?

これに答えて、吉岡竜輝くん、「緊張より興奮しています。この映画を観て、戦争がどれだけ残酷かを知りました。悩んだりした時のお父さんの言葉が心にしみました」と、しみじみ語りました。
花田優里音ちゃんは、「撮影中にひいおじいちゃんとひいおばあちゃんから戦争の話をいっぱい聞きました。家族で支え合うことが大事だということを感じました。戦争のことを扱っていますので、真剣に観て下さい。でも、楽しんでください」と、しっかりアピールしました。

『少年H』は、1997年にベストセラーを記録した、妹尾河童さんの自伝的小説をもとに描いた劇映画。昭和14年から終戦の頃にかけての神戸を舞台に繰り広げられる家族の物語。私自身にとって神戸は生まれ育った懐かしい町。しかも、少年Hが進学した神戸2中は、戦後、兵庫高校と名前を変えましたが、父が18年にわたって教師として勤めていた学校。格別の思いで映画を拝見しました。

上映が終わって、再び、吉岡竜輝くんと花田優里音ちゃんが登壇。観終わった感想を語りました。

吉岡竜輝くん:英語の字幕が付いていて、自分の台詞は英語ではこうなるのかと面白かったです。
花田優里音ちゃん:とっても感動しました。こんなに大きな画面で観るのは初めてでした。

また、撮影中のことを聞かれた二人、
吉岡竜輝くん:軍事演習の場面の練習が大変でした。
花田優里音ちゃん:疎開のシーンで、好子ちゃんの気持ちを考えたら悲しかったです。

『少年H』上映中は、子どもたちも固唾を飲んで画面を見守っていました。
平和な時代に生きていることを子どもながらに感じたのではないでしょうか。
帰り道、小学生1年生くらいの女の子がお母さんに、「好子ちゃんは一人で遠くに行ってかわいそうだったね」と語っているのを聞きました。さらに、その子が「お父さんは何も悪いことしてないのに、どうして刑務所に連れていかれたの?」と、お母さんに投げかけると、「そうね。悪いことしてないのにね。でも刑務所じゃなくて、あれは警察なのよ」とお母さんは丁寧に答えていました。
こういう親子の会話こそ、まさに戸田恵子さんはじめ、映画祭関係者の皆さんが期待しているものなのでしょう。
「映画を観た感想はみんな違っていい」と、皆さんが強調されていたのも素晴らしいことだと思いました。
キンダー・フィルム・フェスティバルの益々の発展を祈りたいと思います。

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(取材:景山咲子)
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