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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『7番房の奇跡』 パク・シネ来日記者会見報告

2013年12月20日 ザ・ペニンシュラ東京にて

刑務所を舞台に、冤罪で投獄された知的年齢6歳の父親と、しっかりものの6歳の娘との愛情を描いた『7番房の奇跡』。韓国で1289万人を動員。『シュリ』『私の頭の中の消しゴム』『王になった男』を越え、歴代動員記録第3位の大ヒットとなりました。
日本で2014年1月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館他全国で公開されるのを前に、主演女優パク・シネさんの来日記者会見が開かれました。

*ストーリー*

知的年齢6歳の父ヨングは、6歳の娘イェスンを育てるシングル・ファーザー。「明日お給料が出たら買ってあげるね」と、ショーウィンドーに飾ってあるセーラー・ムーン模様の黄色いランドセルを見上げる父娘。その目の前でランドセルが売れてしまう。「それはイェスンのランドセル」と買主に食ってかかるヨング。翌日、買ってもらったばかりの黄色いランドセルを背負った女の子が「ほかに売ってるお店を知ってるの」とヨングを案内していく。途中で少女が突然倒れる。落ちてきた煉瓦が当ったのだ。一生懸命介抱するヨングだったが、少女にいたずらをした上に殺してしまったと逮捕されてしまう。何が起こったかも理解できないまま刑務所の7番房に入れられるヨング。7番房の先輩、スリや詐欺、密輸、姦通犯の男たちから手荒い洗礼を受ける。やがて、一人娘に会いたいというヨングの思いを叶えようと、7番房の仲間たちは策を練り、慰問の聖歌隊に混じらせてイェスンを7番房に忍び込ませることに成功する。でも、いつまでも隠して留め置くわけにはいかない・・・

パク・シネさんの役どころは、大人になった娘イェスン。弁護士の卵となり、模擬国民参加裁判で父親の冤罪を晴らそうと熱弁をふるう。感極まって言葉を詰まらせ涙ぐむ姿に、観ている者も娘の父親への思いの深さに涙することでしょう。

◎記者会見


会見場には、つぼめた口に人差し指を当てたキュートなパク・シネさんの大きな写真。カメラマンから、「フォトセッションで同じポーズをお願いできますか~?」との質問も飛び出て、ドラマ「美男<イケメン>ですね」などで人気のパク・シネさんを感じさせてくれました。

白いシンプルなワンピース姿で登壇したパク・シネさん。
「初めまして。パク・シネと申します。(ここまで日本語) アンニョンハセヨ。お目にかかれて嬉しく思います」と挨拶をして、さっそく質疑応答に移りました。

*司会者からの代表質問

―『7番房の奇跡』、韓国での大ヒットをどのように感じていらっしゃいますでしょうか?

シネ:韓国では今年の頭に公開されたのですが、正直言いまして、1000万人を超えるスコアーを出すとは予想していませんでしたので、大ヒットしたことに驚きました。私としては、『7番房の奇跡』のイェスンに出会えただけでも光栄でしたし、素敵な先輩の皆さんと共演できたことを非常にありがたく思っていたのですが、さらに多くの観客の皆さんに愛されて、本当に楽しく幸せな1年でした。


*会場よりの質問

― いろいろな経験をした子ども時代と違って、成長したイェスンの法廷でのシーンが主でしたが、苦労した点は?

シネ:子ども時代のイェスンの感情を引き継がなければならなかったので、現場にも努めて観に行くようにしていました。ただ、現場で見られなかった部分、例えば父との別れのシーンなどは、監督から仮編集したものを見せていただきました。法廷シーンを撮る前には、編集の映像を観ながら流れを理解して、現場に入るようにしていました。映像で見たものというのは、台本で読んで私が感じていたものとはまた違っていたので、編集された映像を見ながら、イェスンの感情を受け継いでいくかを考えました。弁論をするシーンは、どうように父の冤罪を晴らしていくかを思い巡らすのですが、実際の法廷ではなく、模擬法廷で真実を明かさなくてはならないという役どころです。私は弁護士の経験がないので、法廷で専門用語を自然に話せるようにすることが大変でした。自然とその感情になって役に成りきって台詞が出るように心がけながら演じていました。

―オ・ダルスさん始め多くの素敵な先輩たちと共演されていますが、面白いエピソードは?

シネ:個人的にはコミカルなシーンは多くなく、出演場面自体も多くなかったのですが、7番房の仲間のおじさんたちを訪ねていくシーンで、短い分量ではありましたが、先輩たちが現場でアドリブで演技をされている場面があって、そのシーンはご一緒していて、ほんとうに楽しく演じました。


模擬法廷に立つ弁護士の卵イェスン (パク・シネ)
(C)2012 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & FINEWORKS Co., Ltd. All Rights Reserved.

―非常に印象深かったのが最終弁論のシーンです。あれだけ感情を高ぶらせる状況を、どういう気持ちで演じられたのでしょう? 現場の緊張感なども教えてください。

シネ:最終弁論のシーンを撮る前日は、夜も眠れないほどに緊張していました。それまでの模擬法廷と最終弁論シーンは別撮りでしたので、感情が途切れないよう気持ちを保つように心掛けていました。感情を高めるという部分については、共演した先輩の皆さんに助けられた部分が大きいです。普通は自分がカメラの前に立たない時には休まれたりするのですが、全ての先輩方が現場にいてくださって、カメラに写っていなくてもイェスンが父親のために最終弁論する姿を応援のまなざしで皆さん見守ってくださっていました。監督から事前に父親と子ども時代のイェスンの別れのシーンの映像を見せていただいていましたので、その感情をつかんだ状態で撮影に臨むことができました。撮影はほぼワンテイクで撮っているのですが、とても厳粛な雰囲気の中で撮影が行われました。

―少女時代のイスィンを演じたカル・ソウォンちゃんとは共演シーンはありませんが、現場で直接触れ合う機会はあったのでしょうか?

シネ:ソウォンちゃんが演技されている時に現場によく訪ねて行って演じているのを見ていましたし、映像もよく見ていました。台本読み合わせの時にも一緒にしたり、インタビューでもよく会っていました。周りからは私たち二人がよく似ていると言われました。現場で彼女の演技を見守りながら、どんな風に演技をしているのか、どんな風な表情をしているのかを注意深く観察していました。

―観客の皆さんから寄せられた感想の中で、印象的だったものは?

シネ:「自分が大きくなって、父との関係が少し疎遠になっていたけれど、この映画を観て父親の愛情について、いろいろ考えさせられた」というコメントをたくさんいただきました。状況は違ったとしても、娘と父親の間に通う感情には特別なものがあると思います。韓国ではこれまで母性愛に関する映画は多く作られてきましたが、父性愛を描いた映画はそれほど多くありませんでした。この作品を通して、父親の愛情をもう一度振り返るきっかけになったというお話をたくさんいただきました。私は父親ととても仲が良くて、子ども時代から父によくなついていましたし、今でも父とは仲がいいので、そんな感想を寄せていただいたことがとても記憶に残っています。

―今回で仕事とプライベートも含めて何度目の来日ですか? また、今回の来日中に楽しみにしていることは?

シネ:日本には数え切れないほど来ていると思います。2009年以降は、来日する機会が増えて、プライベートを含めると、10回は超えていると思います。私は温泉が大好きなので、日本に来るたびに温泉に行くことを夢見ているのですが、毎回スケジュールの都合で行けないので、とても残念です。日本といえば、美味しい食べ物やスイーツがたくさんある国なので、それも楽しみにしています。冬なので、札幌の雪祭りにも必ず行きたいのですが、今回はタイミングが合わないので残念です。機会があればぜひ行ってみたいと思っています。また、大阪のお祭りにも行きたいと思っています。

―今年はこの映画のヒットから始まって、ものすごくご活躍の顕著な一年でしたが、来年の抱負を教えてください。

シネ:今年は私にとってほんとうに意義深い一年となりました。年頭から本当に忙しい毎日を過ごしていたのですが、この『7番房の奇跡』だけでなく、ドラマ「となりの美男<イケメン>」や短編映画、最近放送が終わったばかりのドラマ「王冠をかぶろうとする者、その重さに耐えろ~相続者たち」もありました。私自身、私の中の新しい姿に気づかされた一年でもありました。来年もすごく忙しい1年になりそうです。今、次回作を検討中ですが、2月か3月に撮影に入ることになりそうです。次回作についても、もうすぐ皆さんにお知らせすることができると思います。


****************

30分弱の質疑応答時間はあっという間に終わり、フォトセッション。はにかみながら、カメラに向かって笑顔を見せてくれるパク・シネさんでした。


パク・シネさん 撮影:景山咲子

今回の記者会見は、ディナーショーのために来日するパク・シネさんが急きょ応じてくださって開かれたものでした。急な案内でしたが、50人強の取材陣。韓国で大ヒットした『7番房の奇跡』への期待を感じました。
ドラマ「美男<イケメン>ですね」では、引きこもりのぽわ~んとした女の子でしたが、『7番房の奇跡』では、弁護士を目指す真面目な法学生の雰囲気をちゃんとかもし出していました。声が意外と低いのも、知的な印象を与えてくれるのかもしれません。
どの質問にも、的確に答えてくれました。私自身が質問した“印象深い観客の感想”として、父との関係を見直すきっかけになったという感想が多かったことが、私にとっても印象的でした。愛情を注いで育ててくれた父を大事にしたいと私も思いました。

取材:景山咲子


◆『7番房の奇跡』

監督:イ・ファンギョン(『角砂糖』)
出演:リュ・スンリョン(『神弓 KAMIYUMI』『王になった男』)、パク・シネ(「となりの美男<イケメン>」)、カル・ソウォン、チョン・ジニョン(「トンイ」)、オ・ダルス(『オールド・ボーイ』『10人の泥棒たち』)、パク・ウォンサン、キム・ジョンテ(「ドリームハイ2」)、チョン・マンシク(『ミッドナイトFM』)、キム・ギチョン他

第50回大鐘賞映画祭 主演男優賞ほか4部門受賞
配給:コムストック・グループ 配給協力:キノフィルムズ
2014年1月25日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館他 全国ロードショー!

(C)2012 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & FINEWORKS Co., Ltd. All Rights Reserved.

作品紹介 http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/383813982.html

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