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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『マイウェイ 12,000 キロの真実』
<公開直前ヒット祈願イベント>

2012年1月5日(木)14:00~
登壇者:オダギリジョー(35歳)、チャン・ドンゴン(39歳)、カン・ジェギュ監督(49歳)
場所:ザ・ペニンシュラ東京 24F スカイルーム

2012年1月14日(土)からの日本全国公開を控え『マイウェイ 12,000 キロの真実』の<公開直前ヒット祈願イベント>が開かれました。昨年11月21日(月)の<世界最速 緊急フッテージ試写会&記者会見>、12月19日(月)の<完成披露試写会&記者会見>に続いて、3回目の記者会見。司会は今回も伊藤さとりさん。3人が登壇する前に、嬉しいお知らせとして、2月に開催される第62回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門“スペシャル上映作品”として出品されることが決定したと発表されました。

◆韓国と日本の歴史をあらためて考えた正月

司会:公開直前に韓国より再びカン・ジェギュ監督とチャン・ドンゴンさんが駆けつけてくださいました。まずは、ひと言ずつどうぞ!

オダギリ:こう何度も会見をすると何の発表があるのかと。特に何もないです。(会場 笑)しいて言えば、お二人がわざわざ韓国からいらしてくださったのと、新年の挨拶と、ベルリン国際映画祭での上映が決まったことの報告です。完成披露もしましたし、初日もまだですし。

ドンゴン:コンニチハ チャン・ドンゴン デス。 マタ オアイデキテ ウレシイデス。昨年、映画の紹介のために来日して、また新しい年を迎え、新年の挨拶と、公開が近づきましたので、参りました。韓国は今とても寒いです。日本に今日着いて、日差しが暖かくて気分が良くなりました。映画について興味をお持ちくだされば嬉しいです。

監督:新年を迎えて、『マイウェイ』を通してまたお会いできることができ嬉しいです。この作品は日本と韓国の若者が戦争を通して友情を取り戻す物語です。お互いどう思っているかが映画の中で語られていますので、お互いのことを考えるきっかけになると思います。

司会:監督に伺います。日本公開もいよいよ1月14日に迫り、年末も来日、新年も来日し、あわただしい年末年始ですが、新年はどのように迎えられましたか?

監督:年末年始は二人と一緒でした。年明けにも釜山で一緒に舞台挨拶に立ちました。私たちの歴史は何なのか? 作品の中でも描かれている韓国と日本のことをあらためて考えを深めるようになりました。どういう問題、どういう誤りがあったのか? 映画から離れたことも考えるようになり、意義ある時間でした。


 チャン・ドンゴン          カン・ジェギュ監督

オダギリジョー

◆ベルリンで上映される意義を感じている

司会:ベルリン出品が決定しました。世界の人々に観て貰えるお気持ちは?

監督:まだまだスタートしたばかりです。これから世界の方に紹介し、メッセージである人と人との関係において、恨みや憎悪を持ったりせず、心を開いて一つになることが大事だということを感じていただければと思います。

オダギリ:すごく安心していますね。こういう商業的大作で三大映画祭に選ばれることはあまりないこと。エンタメ作品がアート性や監督の技量を評価いただいたということはなかなかあることじゃないので、監督も映画祭にだいぶんお金を渡したのかなと。(会場 笑) ただのエンタメ作品に終わらなかった作品に参加できて光栄ですね。

ドンゴン:実は映画を撮り始める最初の頃に、ベルリンの開幕作品に出品したらと監督に提案したことがありました。ヨーロッパの方たちの観点から見た第二次世界大戦でなく、東洋人から見た第二次世界大戦を観ていただくのに、ベルリンは密接な関係のある場所でふさわしいと思いました。開幕作品ではありませんが、出展されることになり、ヨーロッパの方がどう観てくれるのか是非知りたいです。(通訳の方が伝え終わるやいなやオダギリジョーがチャン・ドンゴンのマイクをさっと奪いました。)

オダギリ:素晴らしいコメントだったので、僕のさっきのコメントはすべて無しにしてください。

◆忘れられない釜山の初日の出

司会:新年、少しはお休みがあったのでしょうか?

ドンゴン:新年は皆で一緒に過ごしました。12時にも皆で「ファイティン!」と乾杯して、とても素晴らしい新年を迎えることができました。

司会:オダギリさんは辰年。年男ですね。『マイウェイ』で年明けしていかがでしたか?

オダギリ:年末年始、海外でたった一人で過ごしました。行く前はどんよりした気分でしたが、皆でカウントダウンして、ホテルで初日の出を見ることが出来ました。36年間生きてきて初日の出は初めてのことで忘れられない思い出になりました。

◆歴史を乗り越え日本と韓国の新しい関係を作ってほしい

司会:『マイウェイ』をひと言でいうとしたら?

監督:少し前まで歴史は歴史に過ぎないと考えていました。映画で描いたのは過去の歴史ですが、単なる戦争映画としてだけでなく、二人が少しずつ歩み寄っていく姿を若い人たちに見ていただいて、新しい歴史を作ってほしいと思います。

ドンゴン:一言でいえば、夢と希望。厳しさを克服していく映画。日本も韓国も今、厳しい時代です。映画で描いた戦争は厳しさの象徴。日本は昨年自然災害で多くの方が被災しました。少しでも希望を持っていただければと思います。

オダギリ:お二人のコメントがほんとに素晴らしくて、最後に順番が来るのはどうしてなのかと。今日のオダギリは無言だったと。(と言いながら、話し続けるオダギリジョー)日本と韓国は仲がいいようで仲が良くなれない。どこか踏み入れられない超えられない部分があって、それは韓国の方がより強く持っている感情です。そんな中で、日本と韓国の青年の友情を描くという、誰も取り上げなかったことに監督は挑戦されました。今は、K-POPが浸透して若い人たちには何の違和感もなく感じられるようになっていますが。こんな映画を作った監督は大した人だと思います。

◆観客それぞれの立場で違う受け止め方

会場より質疑応答

― オダギリさんに伺います。クランクインから1年半かかって、いよいよ公開されます。手ごたえをお聞かせください。

オダギリ:正直な話をすると、まだ韓国で一度しか観てなくて、字幕版を観てないんです。周りの方からメールをいただくのですが、「ボロ泣きでした」という言葉が多くて、どこで泣けるんだろうと。そういう作品なのだなぁという手ごたえです。これから広く公開されますが、日本では珍しい戦争映画。どう受け止められるのかなぁと。

ドンゴン:韓国では公開され、観た方の反応はまちまちです。良いという人、あまり良くないという人もいます。この時代に監督が勇気を持ってこのようなテーマで作ってくれたことが凄いなと思います。日本の皆さんがどう観てくださるか気になります。歴史的背景を背負っているので観る人のポジションによって受け止め方が違うと思います。映画は作っている時には監督やスタッフのものですが、出来上がった映画は観客の皆さまのものであると、今、強く感じています。

◆『マイウェイ』に込められた思いを書初め

司会:書道家の木下真理子さんを招いて書初めをしたいと思います。まずは、木下さん、映画をご覧になった感想を!

木下:ベルリン出展おめでとうございます。『マイウェイ』という題名を伺って、マラソンに引っ掛けて作られたものなのかなと思っていたのですが、拝見して、奥深い意味があると思いました。国の為に命を捧げるのが当たり前の時代に自分の道を切り開くというのは勇気のいること。辛いことのほうが多い。生き抜くことこそが意味があると感じました。自分なりに思ったことを書にしたいと思います。

3人が脇から見守る中、力強く「絆」という字を書き上げる木下さん。カン・ジェギュ監督が携帯で写真を撮っていらっしゃる姿が可愛かったです。


木下:今書かせていただいたのは「絆」。映画で描かれているのは、国と国というより個と個。それぞれの立場を取り払っての絆。日本人の美意識や美学もかなぐり捨てて、人間と人間の間に結ばれているのが真の絆。それを監督が描きたかったのかなぁと。

◆甲骨文字の龍に目入れ

司会:もう1枚あらかじめ書いていただいた字を出していただきます。
(「絆」の字の隣に、もう1枚、書が掛けられます。)

木下:漢字のルーツである甲骨文字で書いた龍の文字です。

司会:目の部分が入っていないので、3人で目入れをして完成させていただきたいと思います。

オダギリ:辰に目を入れると聞いて、ダサいなと思っていたのですが、芸術性があってびっくり。綺麗なお顔で身体の小さいお嬢さんが力強い字を書いてくださって感動しました。


この後、3人が順番に目を入れたのですが、一つの目に3人で?と疑問に思ったら、丸い目を入れるのでなく、3本の線を入れて完成! ほんとに芸術的な書でした。


さらに、木下さんが書いた<『マイウェイ』1月14日全国公開>のボードを持ってフォトセッション。端に立った木下さんを気遣って内側に入れてあげるチャン・ドンゴン。最後まで優等生ぶりを見せてくれました。

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(取材:景山咲子)
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