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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第21回日本映画批評家大賞 授賞式レポート

2012年4月13日(金)
於 調布グリーンホール


映画批評家・水野晴郎さんが先輩の淀川長治さんや小森和子さんに相談し、自分たちの本音で選ぶ映画賞をと立ち上げた日本映画批評家大賞も第21回目を迎えました。昨年は、東日本大震災の影響を受け、予定の時期を大幅に遅らせて山梨県で授賞式が行われました。今年は、映画のまち調布市との共催事業として、調布グリーンホールで開催されました。会場は、京王線調布駅南口の階段を降りてすぐ右脇の建物の2階にあり、広場に面した2階のテラスにはお立ち台が作られ、受賞者の皆さんが到着すると次々に広場に集まった人々に手を振って挨拶。それを大きな拍手で迎える観衆。映画のまち調布での開催にふさわしいスタートでした。

☆オープニング


調布市立第三中学校吹奏楽部の映画音楽演奏で幕開け

調布市立第三中学校吹奏楽部の映画音楽演奏で華やかに幕開け。開幕宣言も中学3年生の男女二人の生徒さん。受賞関連作品の映像が流れたあと、司会の露木茂氏と尾崎朋美さんが登壇。まずは、共催の調布市を代表して長友貴樹市長が「日本映画株式会社の多摩川撮影所が昭和8年に開設され、今年100周年を迎える日活の撮影所をはじめ、今なお40を超える映画関係の会社がある調布。映画を愛する人が、映画に贈る賞である日本映画批評家大賞は、まさに我が調布市でこそ開催させていただく意義があると自負しています」と挨拶。次に選考委員9名の方が紹介され、選考委員会代表の渡部保子さんが「私たちは映画が大好きで大好きで、ここまでやってきました。心から愛している映画を観ていただけるのは嬉しい。新人の方は、すぐ辞めないで、いい映画を作ってくださいね」と述べられました。


      司会の露木茂氏と尾崎朋美さん          長友貴樹調布市長          


選考委員会代表・渡部保子さん

☆各賞発表     ※発表順、受賞者敬称略

*製作者部門*

◆特別功労賞(増淵健賞) 今村治子 (スクリプター・美術)

日本映画批評家大賞が映画スクリプターに賞を贈るのは、21年間で初めてのこと。
「黒子のスクリプターに目を向けていただきありがとうございます」と感無量の今村治子さんを、一緒に仕事をした 『大鹿村騒動記』の阪本順治監督がハグして激励しました。


左:今村治子さんをハグして激励する『大鹿村騒動記』 の阪本順治督監          
右:特別功労賞 スクリプターの今村治子さん(お顔が光ってしまい申し訳ありません・・・)

◆編集賞(浦岡敬一賞) 山下健治 『一命』

先人の方たちが大切にしてきた時間の流れを大事にしながら編集に携わってきたという山下氏。「浦岡さんの編集に対する精神を心に刻んで、これからの人々にも伝えたい」と真摯に語りました。


左:編集賞トロフィーを山下健治さんに手渡す浦岡ユキ子さん
右:編集賞 山下健治氏                 

◆映画音楽アーティスト賞(日野康一賞) 辻井伸行  『神様のカルテ』

「生まれて初めての映画音楽に賞をいただき嬉しい」とビデオメッセージを寄せられました。

◆アニメーション功労賞(DIVE賞) 保田道世(色彩設計)、古川雅士(編集)

ジブリ作品に携わってきた保田道世さんからは、「優れた監督に出会い、応援して下さった方がいて、ここまでやってこられました」と喜びのメッセージ。もう一人の受賞者古川雅士さんは、『鉄腕アトム』はじめ多くの手塚作品などを手掛けてきた方。

◆撮影監督賞(株式会社IMAGICA賞) 金宇満司(撮影)『黒部の太陽』

『黒部の太陽』を撮影してから44年。「石原裕ちゃんから、テレビでなく広い画面で観てもらいたいという遺言がありました。今回、再上映できることを嬉しく思います」と喜びの声。


撮影監督賞 金宇満司さん

◆特別賞 『黒部の太陽』 石原プロモーション

石原プロモーションを代表して石原まき子さんが登壇。「44年前(1968年)にこのような作品がよく作れたと思います。三船と石原の二人の賜物。石原裕次郎は調布の日活撮影所でデビュー。私も相手役として出演しましたので調布にはご縁を感じています」と、女優・北原三枝を垣間見せてくださいました。


石原まき子さん

◆新人監督賞 三宅喜重  『阪急電車 片道15分の奇跡』

「いつも関西テレビでドラマを作っていて、映画は敷居が高いと思っていました。宮本信子さんをはじめ皆さんのお陰で撮ることができました」


新人監督賞 三宅喜重監督

◆監督賞  成島 出  『八日目の蝉』

「調布は20代の頃から仕事をしてきた町。戻って来られて嬉しい」


監督賞  成島 出監督

◆作品賞 『大鹿村騒動記』

阪本順治監督が登壇。「真っ先に駆け寄ってお礼を述べたい人がいないのは寂しい」と、昨年7月に急逝された原田芳雄さんへの感謝の思いの溢れる挨拶をされました。


作品賞 『大鹿村騒動記』 阪本順治監督

◎ゲスト紹介

ここで、「映画で日本を元気に!」を合言葉に、日本映画批評家大賞受賞作を全国で上映する「映画で元気プロジェクト」の一環で、上映設備のない被災地でも仮設会場などで上映を行うとのことで、気仙沼や郡山から来場された関係者の方々が紹介されました。

また、海外からは、今年「海と人間」をテーマとしたパラオ国際映画祭を開催するパラオ共和国の上院議員メルビ・メトゥルさん、昨年第31回が開催された映画評論家協会賞を代表して来場したキム・ドンホさんが紹介されました。


*演技者部門*

◆新人賞(小森和子賞)

(1) 剛力彩芽『カルテット!』

趣味で習っていたフルートを劇中で披露した剛力彩芽さん。「ロケ地の浦安市が(東日本大震災で)液状化の被害を受け、こんなときに映画を撮っていていいのか悩みましたが、逆に浦安の人たちに励まされました。一人でも多くの方に笑顔を与えることができれば」と初々しく語りました。


新人賞 剛力彩芽さん

(2) 前田敦子『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

所属する「AKB48」からの卒業を発表して話題の前田敦子さん。「日々後悔しないように頑張りたい」と今後の活躍を期待させる発言でした。調布市出身力士・皇風関が登壇し、「自分も頑張っているので、一緒に頑張りましょう」とエールをおくりました。


新人賞 前田敦子さん

◆助演女優賞 宮本信子  『阪急電車 片道15分の奇跡』

「とっても嬉しいです。伊丹(十三)映画、すべて調布で撮影しました」と感無量の面持ちの宮本信子さん。「鬘にとうとう白が入り、新たな女優人生のスタートです」と、しっとり落ち着いた大人の風情でした。


助演女優賞 宮本信子さん

◆主演男優賞 三浦友和  『RAILWAYS~愛を伝えられない大人たちへ~』

「私の妻とのコンビ作品は東宝配給でしたが、撮影はすべて日活撮影所でした。名誉ある賞をいただき、おごることなくまい進していきたいです。今年1月に60歳になり、人生をあらためて考える機会となりました。あらためて自分が映画をいかに愛していることにも気がつきました。これからも携わっていきたいと思っています。思っても、声をかけていただく方がいないといけません。よろしくお願いします!」と、益々の意欲をみせる三浦友和さん。


主演男優賞 三浦友和さん

◆主演女優賞 大竹しのぶ  『一枚のハガキ』

大竹しのぶさんは舞台公演で来場できず、「私にとって忘れられない作品。新藤兼人監督は今月百歳になられます。監督は“生きている限り”とよくおっしゃいます。皆の心に生き続ける作品にこれからも参加したいです。一日一日を頑張って生きたい」とビデオメッセージを寄せられました。

◆審査員特別演技賞 西田敏行  『星守る犬』他

「父はシベリア抑留から戻ってきて育ててくれました。半ドンの日は帰ってくると映画館に連れていってくれて、子供が観ちゃいけない映画も観せてくれて、時には6本立てという時もあり、ほんとに映画を観まくりました。日活の映画館を出ると石原裕次郎に成りきっている自分がいました。小学校5年生の頃から、いつか自分も映画に出たいと思っていました。演じることは学ぶこと。人生日々楽しく悲しく辛く生きています。福島はじめ東北は大変な日々にあわれていますが、映画を観ることによって、生きることは楽しいと確認していただければ嬉しい」と、故郷福島への思いを感じさせる西田敏行さんの言葉でした。


審査員特別演技賞 西田敏行さん

◆ゴールデングローリー賞(水野晴郎賞)

(1) 蟹江敬三

初主演した『MAZE マゼ ~南風~』(2005年)で共演した仁科亜希子さんからトロフィーを受け取った蟹江敬三さん。「こういう賞は老人が戴くもの。老人という意識はなく、まだ引退するつもりはありません。ちゃんとした老人が演じられるようになるまで頑張りたい」と、ゴールデングローリー賞をいただくには若すぎると謙遜されていました。


蟹江敬三さん               仁科亜希子さん

(2) 白川和子

『バタアシ金魚』(1990年)『黒い雨』(1989年)『デンデラ』(2011年)の映像が流れたあと、ビデオメッセージで「宝くじが当たった気分。続けてきてよかったです。土の匂いのする女優になりたいと思い続けてきました。今、若い監督やスタッフの皆さんと仕事ができるのが嬉しい。年間3本は出たい」と語りました。

(3) 山本陽子

『源氏物語』(1966年)、『華麗なる一族』(1974年)『デンデラ』(2011年)の映像が流れたあと、山本陽子さんが着物姿で登壇。「日活でデビュー。最近はあまり出演していませんが、賞は50年にわたり携わってきた賜物だと思います」と控えめに語りました。


左:山本陽子さんに表彰状を手渡す選考委員の島敏光さん
右:山本陽子さん                  

(4)北大路欣也

『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973年)、『八甲田山』(1977年)、『桜田門外ノ変』(2010年)の映像の後、北大路欣也さんが颯爽と登場。「渡部保子さんに初めてお会いしたのは、13歳の時。今、毎日調布で撮影しています。これからも一生懸命汗を流して頑張っていきたい」と意欲を見せました。


左:北大路欣也さんにトロフィーを手渡す渡部保子さん
右:北大路欣也さん                

◆ダイヤモンド大賞 浅丘ルリ子

『栄光への5000キロ』(1969年)、『銀座の恋の物語』(1962年)、『デンデラ』(2011年)の映像が流れたあと、真っ白いスーツ姿の浅丘ルリ子さんが登壇。「ずいぶん待ちました。お選びいただきましてありがとうございます。14歳で日活でデビューして57年。年は重ねましたが身体は丈夫です。これから先どれくらい仕事ができるかわかりませんが、もうちょっと頑張っていきたいです」と、か細いながら貫禄ある浅丘ルリ子さんでした。


左:浅丘ルリ子さんにトロフィーを手渡す長友調布市長
右:浅丘ルリ子さん                


◎総評 そして、片岡愛之助さん着物姿でぎりぎり間に合う!

ダイヤモオンド大賞の発表も終わり、助演男優賞の片岡愛之助さんが到着するのを待っていましたが間に合わず、選考委員を代表して平山允さんの総評。
「水野晴郎さんが旅立って4年。今年は特に映画に関係の深い調布で開催でき、感謝とお礼を申し上げます」と冒頭に述べたあと、各賞を受賞した人たちを称えました。 総評が終わり、司会の露木さんより「片岡さんが到着されました!」とアナウンス。羽織袴姿で片岡愛之助さんが舞台に上がり、「国立劇場での公演を終えて、この格好で車を運転してきました」と第一声。会場もどっと沸きました。


助演男優賞 片岡愛之助さん

最後に、受賞者全員のフォトセッション。壇上の準備が整うまで、舞台の下、最前列に用意された受賞者用の丸テーブルに片岡愛之助さんも座って談笑されていました。


フォトセッションを前に談笑する受賞者の皆さん



出席された受賞者の皆さん。横断幕と椅子の位置のバランスが悪かったのが残念!

幕に張られた日本批評家大賞授賞式の横断幕と、舞台の上に並べられた椅子の位置がちょっとずれていたのが残念ですが、受賞者全員の記念写真も終わり、オープニングに演奏したブラスバンドの中学生たちも加わっての写真撮影。大物映画スターが大勢居並ぶところに嬉しそうに駆け寄る中学生たちが可愛かったです。


****

受賞者の皆さんから感じられたのは、いかに調布が映画人にとって馴染み深い町かということでした。私にとっても、調布は実家からほど近い町。いつも都内に外出するときに電車で通り過ぎているのですが、映画人に愛されている調布の町を今度ゆっくり探索してみたいと思いました。

取材:景山咲子


◆受賞一覧◆

作品賞 『大鹿村騒動記』
監督賞 成島 出  『八日目の蝉』
主演男優賞 三浦友和  『RAILWAYS~愛を伝えられない大人たちへ~』
主演女優賞 大竹しのぶ  『一枚のハガキ』
助演男優賞 片岡愛之助  『小川の辺』
助演女優賞 宮本信子  『阪急電車 片道15分の奇跡』
新人賞(小森和子賞) 剛力彩芽『カルテット!』
前田敦子『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
新人監督賞 三宅喜重  『阪急電車 片道15分の奇跡』
特別功労賞(増淵健賞) 今村治子 (スクリプター)
編集賞(浦岡敬一賞) 山下健治  『一命』
映画音楽アーティスト賞(日野康一賞) 辻井伸行  『神様のカルテ』
アニメーション功労賞(DIVE賞) 保田道世 (色彩設計)古川雅士 (編集)
撮影監督賞(株式会社IMAGICA賞) 金宇満司 (撮影)『黒部の太陽』
特別賞 『黒部の太陽』 石原プロモーション
審査員特別演技賞 西田敏行  『星守る犬他』 ゴールデングローリー賞(水野晴郎賞) 北大路欣也、蟹江敬三、白川和子、山本陽子
ダイヤモンド大賞 浅丘 ルリ子

公式サイト: http://jmc-award.com/

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