このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』本田隆一監督インタビュー

~ゆうばり国際ファンタスティック映画祭クロージング作品~

本田隆一監督
昭和な雰囲気の本田隆一監督

「新婚なのに、もう倦怠期。向かった先は、1泊2日の新婚“地獄”旅行?!」
「演劇界の奇才・前田司郎原作」
「映画“初”コメディの竹野内 豊 × 新婚妻役に水川あさみ。その他、樹木希林、片桐はいり、荒川良々、橋本愛、でんでん、山里亮太(南海キャンディーズ)、柄本明など、豪華競演で贈る、笑いと愛に満ちたヒューマン・コメディ!」

『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』場面写真 『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』場面写真
©映画「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」製作委員会

2011年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のクロージング作品

雪が降りしきる美しい山間の町で、「おかえりなさい。」と迎えてくださる地元の方々の心温まる心遣いを随所で受け、映画の作り手と演じる俳優と映画を愛するファンが親密に交流できる暖かく優しい映画祭でした。ただ、私が足を運んだ作品では、ことごとく血しぶきがあがり手足がもげて首が飛んだのは、いったいどうしてだったんでしょう?(笑)別にホラー系スプラッター系だけの映画祭ではないし、シリアスドラマ系、コメディー系とジャンルもいろいろだったのに、「ファンタスティックってどういう意味でしたっけ?」と隣の人と苦笑しあうほど、残酷残虐なブラックユーモア系の作品の勢いが目立ちました。そんな中でこの作品はほっこりゆる~く笑えて、ほろりとした感動があるとても癒される作品でした。

地元の奥さん達が、温かい飲み物と甘い物を振舞ってくださる市民会館の休憩所で監督にお話を伺いました。

「ゆうばり」が生み「ゆうばり」で育てられた本田隆一監督

― 2001年にこの映画祭でグランプリを受賞して以来、もう何度目の凱旋参加となりますか?

監督:1993年から映画を専攻していた学生時代から8年くらいずっと自主映画をとり続けていたのですが、世に出る最後のチャンスだと思って『東京ハレンチ天国・さよならのブルース』という作品を出品しました。タランティーノ風味で、大好きな昭和の香りがするB級感覚バイオレンスコメディーでした。これが、行定監督をはじめとするそうそうたる審査員が全員一致でオフシアター部門グランプリをもらいました。それからは、4~5回作品で招待されています。どれも「ゆうばり」ならではのファンタジックな作品です。

― 地獄の色彩や設えがとてもアーティスティックでした。

監督:おどろおどろしい色が好きなのですが、この作品で僕にとって地獄は遊園地のようなイメージで、おしゃれでポップな感じの地獄にしたかったんです。新婚なのに倦怠期を迎えてしまった二人がちょっと旅行に行って家族の絆を再認識するという話なので、設定は熱海みたいな場所でも良かったかもしれません。怪しい旅館に泊まってちょっと変な遊園地に行ってみたら意外に楽しかった、みたいな感じで作りました。テーマパークのアトラクションのように、次々と起こる奇想天外なイベントも用意しました。

― 竹野内豊さんが気になります。このところ軍服やスーツでびしっと決めた硬派な役柄が続いていましたが、コメディも初めてなら、ジャージのような出で立ちでのゆるいキャラクターは初めてですよね。監督が撮られた竹野内豊はとてもセクシーで魅力的でした。素顔はどんな方でしたか?

監督:ご自分からコメディーもやってみたかったと言って役を引き受けたと聞いています。まさに主人公“信義”のゆる~いキャラクターに近い人です。のほほん、ほんわかした方で驚きました。実際にお会いしてみると、予想外にとても気さくで優しい方でした。竹野内さんは本当にかっこいいですよ。真のスターなんですよ。地獄のホテルの場面で、ボロくて古いアメリカ車を使いました。エンジンがかからなくなって困っていたら、竹野内さんがふらっと近づいてきてボンネットの中を覗き、「あ、これはこうやるんじゃないかな」とさくっと直してしまった時にはスタッフ一同「かっこいい~~!!」と歓声があがりましたよ。

― 水川あさみさんの印象は? それから二人をどう演出されましたか?

監督:水川さんは、映画の中での役である“咲”そのもののように、かなりのしっかり者です。お芝居も計算されていて、毎回きちんと同じ動きができたりするプロですよ。逆に竹野内さんは、その場の雰囲気とか空気感で演技するタイプです。二人ともこの役柄に本当にぴったりでした。いろいろなことがばたばた起こるストーリーなので、とにかく二人には自然体でそれぞれの出来事に溶け込んでほしいと伝えました。

― この映画で観客に伝えたいことは?

監督:「夫婦」「家族」というキーワードやモチーフをちりばめてみました。タイトルも敢えて「大木家」というふうに「家」を強調しています。彼氏彼女としてただ一緒に暮らしていただけの二人が籍を入れて結婚してみたけれども、何も変わらないと自分達は思っていた。でも、奇妙な地獄への旅行の中で、これから生まれてくる子供達と遊んで疑似家族を体験したり、妻を恋しがるホテルの案内人と接したりしているうちに「ああ、夫婦の絆って、家族っていいな」と思い始めます。観客の皆さんもそう感じてくださるといいなと思います。

インタビューの感想

ものすごい苦労人というわけではなく、好きな映画について大学、大学院と学び、その後も映画を撮り続けて経験を積み、20代で映画祭で受賞。その後の作品も良い評判を受けています。着実かつ順調にキャリアを重ねていらっしゃる、しなやかなイマドキな監督さんという印象を受けました。これからもその笑顔で楽しく作品を世に出し続けてくださると信じています。

本田監督ご自身は、小さいお子さまがいらっしゃるまだ30代半ばのパパで、「倦怠期はちょっとしたことですぐ言い争いになるというくらいの浅いことしか思いつかない」と堂々の幸せ発言をしていらっしゃいました(笑)。監督のお子様が中高生になったころに、ぜひ『大木家のたのしい旅行「熟年」篇』を撮ってくださることを待っています!

最後に、「ゆうばりファンタスティック国際映画祭」が生んだ本田隆一監督の「密着PHOTO@昭和の香り」です。楽しくアットホームな映画祭の雰囲気もあわせてお楽しみください。


千歳空港からゆうばりへの映画祭特別列車

ゆうばり駅で熱烈歓迎

懇親会でのおもちつき

ちょっとグループ・サウンズ風

白いところは解けてしまった雪だるまです

ゲストの集合写真、ここから未来の巨匠が…

★ 2011年5月14日 新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
上映情報はこちら

公式 HP >> http://ookike.gaga.ne.jp/

return to top

(取材/文:祥)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。