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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
『親愛なるきみへ』

ラッセ・ハルストレム監督インタビュー

写真提供:アルシネテラン

*ストーリー*
休暇で父親の住むサウスカロライナに帰省中の米軍兵士ジョン・タイリー。海に落ちたバッグを拾ったことがきっかけで知り合った女子大生サヴァナ・カーティスと恋に落ちる。2週間の休暇が終わり、特殊部隊の任地に戻るジョン。遠く離れた二人は思いを手紙に綴って愛を育てていく。もうすぐ任期が終わろうとする時、9.11の同時多発テロ事件が起こり、ジョンは任期を延長せざるをえなくなる。会えない切なさを手紙に託す二人だったが、世界のどこの任地にいても届いていたサヴァナからの手紙が、ばったり途絶える。ようやく届いた手紙には、サヴァナがほかの男性と結婚したことが書かれていた・・・・


9月23日からの公開を前に来日したラッセ・ハルストレム監督に、3誌合同でインタビューの時間をいただきました。『ショコラ』『HACHI 約束の犬』など心温まる作品で知られる監督。やさしい眼差しで私たちを迎えてくださいました。


ラッセ・ハルストレム監督

ラッセ・ハルストレム(監督)

1946年、スウェーデン、ストックホルム生まれ。スウェーデンでTVや短編映画に携わり、キャリアをスタート。さらに、著名なスウェーデンのバンド、アバなどの音楽ビデオの監督も務めた。1985年公開『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』で米アカデミー賞最優秀監督賞(脚色賞も)にノミネートされた初のスウェーデン人監督となった。『ギルバート・グレイプ』(93)の監督を務めた後、『愛に迷った時』(95)でもメガホンをとり、『サイダーハウス・ルール』(99)で米アカデミー賞最優秀監督賞に2度目のノミネートを果たした。ジョアン・ハリスの小説を映画化し、高評価を得た『ショコラ』(00)は、米アカデミー賞の最優秀作品賞を含む5部門にノミネートされた。

その後、『カサノバ』(05)、『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』(06)を手掛け大絶賛を浴びた。日本の忠犬ハチ公の実話に基づいた『HACHI 約束の犬』(08)も記憶に新しい。現在も、企画・開発のさまざまな段階にあるプロジェクトを多数抱え、活躍している。



ラッセ・ハルストレム監督

◆壮大な恋愛物語にチャレンジ

― 心温まる作品でした。恋愛小説家の作品を映画化したきっかけは? また、原作を読んでの思いをお聞かせください。

監督: 最初、脚本を送ってもらって読んで、今まで作ったことのない壮大なストーリーの恋愛物で、新しいチャレンジになると思いました。その後、小説は読みましたが、脚本家が素晴らしい脚本を書いてくださったので、変更は加えませんでした。

― 森の中のコテージで本を読み終えたときのようなすがすがしさを感じました。カンバスに絵を描くようなイメージで描かれたと、プレス資料にありましたが・・・

監督: すごく視覚的なイメージはありました。俳優の演技は別として、ビジュアルに興味がありました。1作目は自分で撮影しています。脚本の作家の時も編集の時も、感情をどう伝えられるかを考えました。 今回、手紙をいかに生かすかを心がけました。フリーハンドで描いて、自然光にこだわって、どの絵もビューティショットになるようにしました。



ラッセ・ハルストレム監督

◆反戦をロマンスの背景に

― もう任期がきて帰れると思っていたところに、9.11の事件が起こり、除隊できない雰囲気になってしまいます。決して皆が内心では戦いたいわけではないのに、それが言えない状況になって戦争がこの世からなくならないことを強く感じました。軍に所属するのは、決して戦いたいからではないと思います。ジョンの入隊の動機は特に述べられていませんが、軍に入るには皆それぞれの事情があるものだという共通認識があることを念頭においてのことでしょうか?

監督:実は戦争や軍に関しては、あくまで背景として考えていて、関心があったのは、二人の関係。 ジョンと父、ティムと自閉症の息子アランなどの人間関係に興味がありました。軍事関係のコンサルタントに参加してもらって、リアルは追及しましたが、あくまでロマンスの背景です。



ラッセ・ハルストレム監督

◆手紙は当時を思い起こさせてくれる素敵なツール

― 今やメールで簡単にやりとりができるようになって、手紙を書くことも減ったと思いますが、アメリカでの大ヒットで、あらためて手紙が注目されたのではないでしょうか? また、軍の任地のどんなところにも手紙が届くのがすごいと思いました。

監督:かつて、結婚前、妻には手紙よりも電話でした。違う国にいても、電話。記憶として残らない電話にずいぶんとお金をかけて無駄遣いをしてしまいました。元カノからの手紙は別荘にいっぱいあって、それは妻には見せられません。でも、形として残っていて、当時のことが蘇ってくるのは素敵なことです。自分はもう手紙を書かないけれど、今の若い人たちがそういう経験ができないのは残念なことだと思います。私自身、今やemail派。 emailになってからのほうが、たくさん手紙を書いています。

― 監督は奥様のレナ・オリンさんが女優で遠距離恋愛のエキスパートではないかと思います。遠く離れているカップルに、アドバイスをお願いします。

監督:私たちは3週間以上離れないようにというのがルールでしたが、スカイプで話すことができるようになりましたので、状況がずいぶん変わりました。でも、なるべく近くで撮影を行うようにして、あまり離れずにすんでいます。『カサノバ』をベニスで撮った時はさすがにしばらく会えませんでしたが・・・  もし気持ちがすれ違ってきたら、カウンセリングを受けてください。


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監督のお好きなラブストーリーを3作品教えてくださいとの問いに、『突然炎のごとく』(フランソワ・トリュフォー監督、フランス、1962年)、『ドクトル・ジバゴ』(デヴィッド・リーン監督、1965年、米・伊)、『アニーホール』 (ウディ・アレン監督、1977年、米)をあげた監督。これからも人間の感情を細やかに捉えた素敵な作品を生み出してくださることでしょう。


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『親愛なるきみへ』

監督:ラッセ・ハルストレム(『HACHI 約束の犬』『ギルバート・グレイプ』『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』)
原作:ニコラス・スパークス(『きみに読む物語』『ウォーク・トゥ・リメンバー』『メッセージ・イン・ア・ボトル』)
出演:チャニング・テイタム(『G.I.ジョー』『パブリック・エネミーズ』)、アマンダ・サイフリッド (『マンマ・ミーア!』『ジュリエットからの手紙』『赤ずきん』)、ヘンリー・トーマス(『E.T.』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『すべての美しい馬』)、スコット・ポーター(『スピードレーサー』『ラブソングができるまで』)、リチャード・ジェンキンス(『バーン・アフター・リーディング』『扉をたたく人』)
原作著作:「親愛なるきみへ」(ソフトバンク クリエイティブ刊)
配給:プレシディオ

★9月23日(金・祝)新宿ピカデリーほか全国拡大ロードショー


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(取材:景山咲子)
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