このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第22回東京国際映画祭ラインナップ発表

〜 今年の見どころは? 〜

高井英幸理事長、辻仁成、木村佳乃、杏、アントニオ猪木、依田巽チェアマン

記者会見レポート

9月16日(水)、六本木アカデミーヒルズ タワーホールにて記者会見が開かれ、第22回東京国際映画祭(10/17〜25)のラインナップが発表されました。

チェアマンの依田巽氏は、今年をホップ、ステップ、ジャンプのステップの年とし、昨年に引き続きグリーン、エコロジーをテーマにして無事成功を収められるよう努めたいと挨拶。

その後、昨年に引き続き映画祭大使をつとめる木村佳乃さんと、グリーンアンバサダーの杏さんが登壇し、挨拶を行いました。

辻仁成、木村佳乃、杏、アントニオ猪木

コンペティション作品およびその他の部門の出品作品について簡単な紹介があった後、日本から唯一コンペティション作品に選ばれた『ACACIA』の辻仁成(つじじんせい)監督と主演のアントニオ猪木氏が登壇し、作品について語りました。

挨拶の第一声でアントニオ猪木さんは「元気ですかーっ!!!」 あまりの大音声で集まった記者たちは皆びっくりして飛び上がり、大笑いとなりました。

辻監督はこの作品を撮るきっかけを聞かれ「非常に個人的な理由なのですが、ぼくには子どもが2人いて、最初の子どもとは離婚のため遠く離れてしまっています。今、2人目の子どもと過ごしていると、その子のことをいつも思い出します。この思いを100年残ると言われる映画で伝えたかった」と語ります。また、主演にアントニオ猪木さんを選んだ理由について「日本の父性を代表するような、そして男のいい皺のある人をと考えていて、ホテルのロビーで打ち合わせをしているときに、“例えばアントニオ猪木さん”と話していたら、目の前を猪木さんが通り過ぎて行ったんですよ。思わず駆け寄って出演をお願いしました。」

突然の出演交渉に猪木さんは「感性で生きているのであまり計算をしません。せっかく選んでいただいたので映画出演も良いかなと思いうけました。人生は一寸先が“闇”じゃなくて“ハプニング”。何か起これば面白いなという気持ちで生きています。」

演技は監督に言われたとおりにやっただけと謙遜する猪木さんに、辻監督は「泣くシーンは朝から役作りをしていて、その集中した様子に誰も近寄れませんでした。いつもは気迫というものを闘魂でしか表してませんが、実は内側に強い思いを秘めていて、自分の命や魂を削ってでも何かに向かう姿には本当に頭が下がります」と敬意を表します。

観客の皆さんへのメッセージとして、猪木さんは「人生が出ているような映画は感動します。私自身8歳の子どもを飛行機の中で亡くしまして、ある部分役と重なるものがありました。人生は人それぞれ大事にしまってあるもの、それが見えたとき、その人の人間らしさが見えてくる。そんな思いを込めて撮影に挑みました。よろしくお願い致します。」

今年の見どころ

期間中110本以上もの作品が上映される今年の東京国際映画祭。さて、今年の見どころは?

コンペティション

今年選ばれたのは15作品。日本からは先にも触れた『ACACIA』(監督:辻仁成)が選ばれました。アジア作品としては『永遠の天/天長地久』(中国 監督:リー・ファンファン)、『台北に舞う雪/台北飄雪』(中国=日本=香港=台湾 監督:フォ・ジェンチイ)、『マニラ・スカイ/Himpapawid』(フィリピン 監督:レイモンド・レッド)、そして『ロード、ムービー/Road, Movie』(インド=アメリカ 監督:デーウ・ベネガル)があります。その他は、ヨーロッパ、南米、北米から。公式サイトでは一部予告編が観られる作品もあります。鑑賞の参考にし、是非、コンペティション作品をご覧になって下さい。世界の今の空気を感じ取れるかもしれません。

『ACACIA』
『ACACIA』
©2008『ACACIA』製作委員会
『永遠の天』
『永遠の天』
©2009 Dreams of Dragon Picture
『台北に舞う雪』
『台北に舞う雪』
©2009 北京博納影視文化交流有限公司/「台北に舞う雪」製作委員会/博納影視娯樂有限公司
『マニラ・スカイ』
『マニラ・スカイ』
©2009 PelikulaRed

今年の審査員は、審査員長に『21グラム』や『バベル』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。その他には女優の原田美枝子さん、昨年『アンナと過ごした4日間』で審査員特別賞を受賞しているポーランドの監督イエジー・スコリモフスキさん(監督作の特集上映もあります)、ゴダール映画の撮影監督として有名なキャロリーヌ・シャンプティエさん、韓国の俳優でショートフィルムの監督なども務めるユ・ジテさん、シネマテーク・ディレクターの松本正道さんが務めます。

特別招待作品

オープニング作品として海をモチーフとする『オーシャンズ』(フランス 監督:ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾー)、クロージング作品には空をモチーフとする『カールじいさんの空飛ぶ家』(アメリカ 監督:ピート・ドクター)がそろいました。その他、ジェームズ・キャメロン監督12年ぶりの新作で話題の3D映画『アバター』のフッテージ上映があります。すべての作品が今後日本公開予定の作品ですが、ゲストによる舞台挨拶が期待され、いち早く観たいファンで盛り上がることでしょう。

『オーシャンズ』
『オーシャンズ』
©Galatée Films - Pathé Production - France 2 Cinéma - France 3 Cinéma - Notro Films - Les Productions JMH - TSR ©Roberto Rinaldi
『カールじいさんの空飛ぶ家』
『カールじいさんの空飛ぶ家』
©2009 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS,ALL RIGHTS RESERVED.
『アバター』
『アバター』
©2009 Twentieth Century Fox. All rights reserved.
『E.YAZAWA ROCK』
『E.YAZAWA ROCK』
©2009 映画「ROCK」製作委員会

アジアの風

毎年各部門の中では最も上映本数の多いアジアの風部門。ファンは今年も取捨選択に頭を悩ませることでしょう。
韓国からはホン・サンス監督の『よく知りもしないくせに』。またうっとうしい登場人物の緩くてちょっとイタい物語が展開されていそうです。
久しぶりの新作で注目なのは、ハー・ピン(何平)監督『麦田』(中国)、フルーツ・チャン(陳果)とツイ・ジエン(崔健)監督『愛してる、成都』(中国)、グレン・ゴーイ監督『青い館』(シンガポール)の3本。『麦田』は『哀戀花火』など有名なでハー・ピン監督による時代劇大作。『ヘブン アンド アース 天地英雄』のような尻すぼみになっていないことを願います。『愛してる、成都』は時空の異なる2つのラブストーリーで、1976年パートをお久しぶりのフルーツ・チャンが、2029年パートを中国のカリスマロッカー、ツイ・ジエンが監督しています。グレン・ゴーイ監督は日本でも公開上映されて話題となった『フォーエバー・フィーバー』(1998)以来の新作。『フォーエバー・フィーバー』に主演していたエイドリアン・パンも出演しているらしいです(未確認)。

『よく知りもしないくせに』
『よく知りもしないくせに』
©2009 Jeonwonsa Film Co.. All Rights Reserved.
『麦田』
『麦田』
©Beijing Polybona Film Distribution Co. Ltd & Beijing Classics Media Co. Ltd All Rights Reserved
『愛してる、成都』
『愛してる、成都』
©Zonbo Media 2009
『青い館』
『青い館』

台湾からはオムニバス作品『台北24時』と『ヤンヤン』(監督:チェン・ユージエ)。『台北24時』は8人の気鋭の監督たちがそれぞれ、ある1日の8分の1の時間を描いています。最後の午前4時からのパートを描くのはリー・カンション(李康生)。主演はなんとツァイ・ミンリャン(蔡明亮)! 『ヤンヤン』のチェン・ユージエ監督も若手。2006年に初監督作品『一年のはじめ/一年之初』がやはりアジアの風部門で上映されています。

香港映画ファンの楽しみはアン・ホイ監督の特集でしょう。去年、アジアの風で上映された『生きていく日々』と、対をなす新作『夜と霧』が共に上映されるほか、初期の頃のテレビ作品集が上映されます。

『台北24時』
『台北24時』
©2009 Public Television Service, Taiwan
『ヤンヤン』
『ヤンヤン』
©2009 Khan Entertainment Co., LTD.
『生きていく日々』
『生きていく日々』
『夜と霧』
『夜と霧』
©2009 Mega-Vision Pictures Limited

中東からの作品は6作品(7本)。アッバス・キアロスタミ監督やラファエル・ナジャリ監督など大御所の名前が見えます。さらに日本におけるエジプト観光振興年記念事業として「エジプト映画パノラマ〜シャヒーン自伝4部作と新しい波」として6作品が上映。

更に、去る7月25日に急逝したマレーシアのヤスミン・アフマド監督を追悼する特集で、早すぎる遺作『タレンタイム』とCM作品集、昨年アジアの風で上映された『ムアラフー改心』、ヤスミンさんが出演している『RAIN DOGS』(監督:ホー・ユーハン)の上映があります。加えて、ホー・ユーハン監督の新作『心の魔』の上映があり、こちらはヤスミンさん最後の出演作でもあります。

『タレンタイム』
『タレンタイム』
©Primeworks Studios Sdn Bhd
『ムアラフー改心』
『ムアラフー改心』
『RAIN DOGS』
『RAIN DOGS』
©Focus Films
『心の魔』
『心の魔』
©Paperheart Limited

今年は、アジア映画ファンにはおなじみの監督の新作が多い一方、活きの良い若手監督の作品が少ないのが残念なところです。

WORLD CINEMA

この部門は今年の世界の映画祭で話題になった作品や、有名監督の新作で、2009年8月末現在日本公開が決定していない作品が集められています。サンダンス映画祭最高賞受賞の『プレシャス!』(アメリカ 監督:リー・ダニエルズ)や、ケン・ローチ監督の最新作でエリック・カントナが本人役で出演して話題の『エリックを探して』、ジュゼッペ・トルナトーレ監督が描くシチリア激動の現代史『バーリア』、ロッテルダム国際映画祭最高賞を受賞したトルコ映画『二つのロザリオ』(監督:マフムト・ファズル・ジョジュクン)などなど、話題作が目白押しです。

『プレシャス!』
『プレシャス!』
©Push Pictures LLC
『エリックを探して』
『エリックを探して』
『バーリア』
『バーリア』
©Medusa Film 2009.

ほかにも「日本映画・ある視点」「natural TIFF」「映画人の視点」といった部門がありますし、同時期に開催される共催・提携企画には「第22回東京国際女性映画祭」「コリアン・シネマ・ウィーク2009」「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2009 特別上映&ワークショップ」「2009東京・中国映画週間(ゲストも話題作も豊富)」「ドイツ映画祭2009」など盛りだくさんにあって、映画ファンは限られた時間と資金をどうやりくりするかで悩むこととなるでしょう。
そんなファンにとって、毎年悩みの種は、東京国際映画祭公式WEBサイトのスケジュールが期間全体で見渡せる一覧表の形で提供されないこと。東京近辺在住の方は、期間近くにリーフレットを入手することも可能ですが、そうでなければそれもままなりません。サイト運営者はなんとかpdfダウンロードでもいいから、一覧表の提供を考えてもらえないものかと思います。

チケット発売

先行抽選販売:9月26日(土)より、インターネット「電子チケットぴあ」(開始時間・11:00)、「ローチケ.com」(開始時間・12:00)で一部のチケットを抽選予約を受けつけます。

前売券一般販売:10月3日(土)10:00より、電話、インターネット、プレイガイド、コンビニエンスストア(サークルK・サンクス、ファミリーマート、ローソン)にて発売。

アジアの風セレクトパス:9/26(土)発売 全席指定 20,000円

スペシャルパス(オープニング/クロージング/東京サクラグランプリのチケットセット):10月3日(土)発売 全席指定 5,000円

コンペティションスペシャルパス:10月3日(土)発売 全席指定 9,000円

詳しくは公式サイトをご覧下さい。

第22回東京国際映画祭公式WEBサイト

return to top

(文・写真:梅木)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。