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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『キッチン ~3人のレシピ~』
ホン・ジヨン監督インタビュー

ホン・ジヨン監督

『キッチン ~3人のレシピ~』は、当初、2009年5月30日に公開予定でしたが、本作品の主演俳優であるチュ・ジフンが5月中旬に麻薬管理法違反容疑で逮捕されたことにより、公開が延期されていました。この度、執行猶予付き判決が出され、既に本人が十分に社会的制裁を受けていることを反映した判決であることなどを考慮して、日本での公開がようやく実現することになりました。

3月31日、都内ホテルにてチュ・ジフンと監督を招いて『キッチン ~3人のレシピ~』の来日記者会見が行われましたが、会見の前に監督にインタビューの時間をいただきました。シネマジャーナル76号に監督インタビューの抜粋を掲載しましたが、この度、ようやく一般公開されるのを機に、インタビューの全容をお届けします。

なお、来日記者会見につきましては、すでにWeb版特別記事で報告しています。あわせてご覧ください。
『キッチン~3人のレシピ~』チュ・ジフン、ホン・ジヨン監督記者会見(2009/4/5)

ホン・ジヨン
1971年生まれ。延世大大学院哲学科卒。映画アカデミー14期を修了。
脚本と助演出で参加した1995年『Herstory』が、クレルモンフェラン国際短編映画祭競争部門にノミネーされ、1999年初めての演出作『Rosa Story』が各種国際映画祭に招請され注目を浴びる。本作品は長編デビュー作。

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◆ スクリーンの中の1人1人の人生を大切に描きたい

監督は、事前に拝見していた写真のボーイッシュなイメージと違い、カーリーヘアの可愛い方でした。

ホン・ジヨン監督

― ご主人であるミン・ギュトン監督の『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』(以下『アンティーク』)と、『キッチン~3人のレシピ~』(以下『キッチン』)の2作は、まったく違う物語なのに、主演がどちらもチュ・ジフンであること、背景にとても美味しそうな食べ物のある透明感に溢れた美しい映像ということで、似たイメージを受けてしまいます。ご夫妻で相乗効果を狙ったのでしょうか?

監督:ジフンさんのところには色々シナリオがいっていました。秀フィルムと仕事をすることになり、たくさんの仕事の中から、ジフンさんが気に入ったのが偶然『アンティーク』と、『キッチン』でした。同時期だったので、別の俳優で進めようとしていたのですが、ジフンさんがその前のドラマで演じたのが暗い役でしたので、正反対の明るい作品だとギャップが大きすぎるということで、ブリッジとして『アンティーク』を先に撮りました。 似ているイメージとのことですが、一見すると、フランス語が出てきたり、ジフンさんが出演しているので同じような印象を受けるかもしれません。『アンティーク』はトラウマを抱えた人物、『キッチン』は限りなく明るい人物、と性格がかなり違います。ですが、ジフンが共通の主人公ということで同時期に進めることが出来ました。夫婦で撮るということは、それほどありませんし、夫婦で悩みながら撮った作品をワンセットのようにみていただけるのは、ありがたいことです。

― ご主人のミン・ギュトン監督との出会いは?

ホン・ジヨン監督

監督:私も夫も専攻は映画ではありません。「映画とは何か?」というワークショップで知り合い、『ハストリー』(his story ⇒ her story)を共同脚本。夫がメインの演出、私がサブで製作しました。その後、同じ映画アカデミーで学んだ仲です。

― 韓国の映画界ではスタッフとして活躍する女性が多いと聞いていますが、女性の監督は少ないようです。韓国で女性が監督することを巡る状況はいかがでしょう?

監督:まだまだ難しい点があります。先入観が強いとか、話をしても女性は融通が利かないという思い込みがあります。私自身、順調に進めてきたように見えますが、『キッチン』 は5年もの準備期間がかかりました。次はそれほど待てません。演出する機会さえ与えられれば男女の差はありません。機会を与えられることがなかなか難しいのです。

― 本作では、妻が関係した男性が偶然にも夫の仕事のパートナーで、しかも同じ家に住むことになります。妻が告白した後、3人の信頼関係を続けていくのは、とても難しいと思います。夫サンインの立場は特に微妙です。裏切られた夫が妻を許すということが、監督は可能だと思いますか?

ホン・ジヨン監督

監督:多くはないけれど、あり得ると思います。告白を聞いて、サンインは彼女への思いを大切にするが為に、ドゥレとの関係はなかったことにしようと思います。夫婦には二人の歴史の中で築いた信頼関係があります。サンインの受けた傷は大きいけれど、彼女も傷つけるつもりはなかったと多めにみてくれるということもありえるでしょう。逆に一人の男性と二人の女性という場合でも、同様だと思います。私が女性であることで、フェミニストの映画と見られることもありますが、フェミニスト的な視点で描いたつもりはなく、ヒューマニズムの映画として観ていただけたらと思います。

― お料理は切るシーンが多く、焼いたり炒めたりの場面がなくてリアルでないのは意図的ですか?

監督:与えられた条件、限られた条件の中で、基礎的な作業の次に完成品を出して印象的に見せようという意図がありました。主題は恋愛。料理に力を入れすぎると、全体的な話を崩してしまいます。人物が出ない場面を躍動的に見せるのに、料理やダンスを用いました。ダンスは、将来テーマにして撮りたいと思っています。ちなみに、次回作はスリラーの要素のあるミステリーを考えています。

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(取材:梅木・景山)

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