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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第28回香港電影金像奬授賞式レポート

 4月19日(日)、香港カルチャーセンターで行われた香港電影金像奨授賞式。当日はレッドカーペットの始まる丁度5時過ぎから雷雨になるとの天気予報でしたが、年に1度の晴れやかな式典に天気も遠慮したのか雨はほとんど降らず、関係者はホッと一安心。

★レッドカーペット★

ボンドガールならぬバリーガール(孟瑶・劉洋)を連れて登場した王晶監督(バリー・ウォン)を筆頭に続々とスターたちが登場。

レッドカーペット写真集

そして気がついてしまいました。かわいいなーと思って見ていた任達華(サイモン・ヤム)のネクタイと呉尊(ウー・ズン)のネクタイが一緒。服の色の組み合わせは任達華はジャケットが黒、パンツが茶色、対する呉尊はジャケットが茶色、パンツが黒で素材もちょっと似た感じだなと思っていたらそれもそのはず、二人ともDior Hommeでした。しかしながら、授賞式中に発表されたベストドレッサー賞では任達華が勝ち取る結果に。ちなみに女性のベストドレッサーは数年ぶりに公の場に姿を現した夏文汐(パトリシア・ハ)でした。

主演男優・女優候補者で行われたテープカットの儀式の時にふと人数が足りない事に気がつきました。そういえば主演男優候補の梁朝偉(トニー・レオン)がいない。どうしたんだろうと思っていたら「梁朝偉夫妻はすでに会場に座っているらしいぞ」とどこかの記者たちが喋っている声。翌日の新聞によると彼らが遅刻したのではなく、金像奨協会の派遣した車が渋滞で待ち合わせの場所に到着しなかったのだとか。よりにもよってレッドカーペットの目玉とも言える彼らを遅刻させるなんて金像奨も大ポカをやってしまったものです。

【おまけ】

ものすごい普段着っぽい格好でレッドカーペットを歩いていた方中信(アレックス・フォン)。その飾らない姿勢が好き。

★オープニング★

オープニングは甄子丹(ドニー・イェン)の叩く太鼓と数十頭の獅子舞。チムサーチョイの時計台をバックに太鼓を叩く甄子丹とはとても素敵でした。続いては台湾からのゲスト呉建豪(ヴァネス・ウー)が歌って踊るヒップホップ獅子舞。曲はおなじみの黄飛鴻のテーマ。授賞式にふさわしい華やかな幕開けとなりました。

★香港映画史百周年記念ショートフィルム『偸焼鴨(Stealing a Roasted Duck)』★

香港で一番最初に製作された映画のタイトルは『偸焼鴨』。しかしそのフィルムは現存していない為、映画タイトルの「ローストダックを盗む」をテーマに呉宇森監督や王家衛監督など有名監督の手法を真似してこの映画を再現(つまりパロディ)。内容はオリジナルの監督たちも苦笑いする出来だったのだけど、タイトルのつけ方に個人的に爆笑したのでここに記しておきます。もっと個人的には『英雄本色(呉宇森監督)』のパロディ『英雄本鴨』で最後にたくさんの白い鳩のCGが飛び出してきたところにも大爆笑。

【オリジナル】 【パロディ】
英雄本色(A better tomorrow)
阿飛正傳(Days of Being Wild)
見鬼(The Eye)
無間道(Infernal Affairs)
英雄本鴨(Duck with a better tomorrow)
阿飛正鴨(Days of being a wild duck)
見鴨(The Duck's Eye)
無鴨道(Infernal Affairs of duck)

★専業精神奨 丁羽(ティン・ユ)★

 プレゼンターの洪金寶によると、昔の映画のセリフは全て吹き替えで、役者はセリフを間違えても感情がこもって無くても吹き替え担当に任せてしまえば問題ないので、彼らの存在はとても重要だったという。
 受賞者の丁羽は吹き替え界の皇帝と呼ばれた人物で年間100本以上もの吹き替えを担当し、時には1日22時間も吹き替えの仕事をすることもあったという。楚原監督の『七十二家房客』や成龍(ジャッキー・チェン)の『プロジェクトA』も彼の率いるチームが吹き替えを担当。顔は知らなくても声を聞けば知っているという人も多いのではないでしょうか。「映画界に身をおいて56年。なぜなら香港電影金像奨には“吹き替え賞”などという項目は無いから、まさか自分がこの像を手にする事ができるとは思っても見なかった。」と言葉を詰まらせ、自分を支えてくれた奥さんと審査員にお礼の言葉を述べました。司会の曾志偉(エリック・ツァン)が最後にポツリと呟いた「多くの人が彼に感謝している。彼はいつも仕事場に一番に来て、最後まで残っていた。彼が受賞して当然だ」という言葉が心に響きました。

★終身成就奨 蕭芳芳(ジョセフィーヌ・シャオ)★

審査員が満場一致でないと貰う事が出来ないというこの奨を、病気と闘う蕭芳芳が受賞。
 彼女の経歴を紹介するビデオは『漫畫威龍』で共演した周星馳(チャウ・シンチー)がナレーターを担当。耳が聞こえず、補聴器をつけている彼女の為にプレゼンターの王家衛(ウォン・カーワイ)監督が拍手ではなく蛍光棒を振って彼女を迎えるように観客を誘導しました。壇上に上がった彼女は「皆さん、拍手をしないでくれてありがとう。音の無い拍手とはこんなものなんですね。1人の俳優が観客の拍手が聞こえなってしまったらおしまいです。梁朝偉(トニー・レオン)、鮑起静(パウ・ヘイチン)はこの奨をもらえなかったからと言って残念がらないで。あなたたちはまだ私のように障害があるわけではない。慌ててこの奨を貰わなくても良いでしょう」と少し自嘲的にスピーチを始め、「娘に壇上に上がったら家族にお礼を言いなさいと言われたのだけど・・・(名前を呼んでも反応しない夫の張正甫に向かって)あなたちょっと眠いの? 彼は私を見ると必ず眠くなるんですよ」と笑いを誘う場面も。病気を抱えていてもユーモアのセンスは健在な蕭芳芳でした。

★復活!七小福★

今年で50周年を迎える七小福の洪金寶・元彬・元彪・元寶・元華・呉明才・元武がアクション監督賞のプレゼンターの為に集まりました。惜しくも香港・台湾に対する失言報道中の成龍(ジャッキー・チェン)だけが出席できませんでした。
『三国志/三國之見龍卸甲』と『葉問』で自らもノミネートされていた洪金寶(サモ・ハン)。結果は見事『葉問』で洪金寶と梁小熊が受賞。金像を手にした洪金寶は「来年はもっと多くのアクション映画がこの金像奨の舞台で競うようになって欲しい」と希望を述べました。

★張家輝(ニック・チョン)・鮑起静(パウ・ヘイチン) 涙の受賞★

 主演女優賞を獲得したのは芸暦40年のベテラン鮑起静(パウ・ヘイチン)。2000年に『忘れえぬ想い/忘不了』、2003年に『千言萬語』で助演女優賞にノミネートされていましたがいずれも受賞には至りませんでした。4年連続で中国人女優が受賞していたこの賞を今回彼女が獲得した事は香港映画界にとっても意味のある受賞でした。彼女の他にも『性工作者2 我不賣身‧我賣子宮』の劉美君(プルーデンス・リュウ)の演技も素晴らしく、香港人女優の頑張りが見られた1年だったと思います。
 主演男優賞の張家輝(ニック・チョン)も2度の助演男優賞ノミネート(2007年『エレクション2/黑社會以和為貴』、2008年『出エジプト記/出埃及記』)で受賞を逃し、鮑起静と同じく3度目のノミネートでの受賞。
 自分の名前が呼ばれた瞬間、奥さんと長い間抱き合って喜びを噛み締めていた張家輝。喜びで頭が混乱しているのか「金像を手にすることが出来て・・・」と言うところを「手を金像することが出来て・・・」と言い間違えたり、「第18回目の主演男優賞は張家輝です!(本当は第28回)」と言ってその度にプレゼンターの呉君如(サンドラ・ン)にツッコミを入れられている姿が可愛かったです。

*受賞者たちの喜びのコメント等は本誌76号に掲載しています。

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(文:阿嵐 写真:阿嵐・阿松)

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