女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

「ジェイ・チョウ
ワールドツアー 2008 in Japan」レポート

2008年2月16日(土)、17日(日) 日本武道館にて

緊張のオープニング・ド派手衣装
PHOTO: Hiroaki Yoda
写真提供:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

「ジェイはとっても忙し〜そう」

確かシネマジャーナルにてジェイの台湾及び香港でのライブ後のインタビュー記事を書かせていただいたのが2003年1月だから、すでにもう5年前になる。

★2002 ジェイ・チョウ(周杰倫)・コンサートIN 台北&プレスカンファレンス (2002/10/28)
http://www.cinemajournal.net/special/2002/jay_chow.html

★2003 周杰倫(ジェイ・チョウ)香港コンサート&日本コンサート実現へむけて (2003/1/7)
http://www.cinemajournal.net/special/2003/jay_chow.html

あの時、「日本のみんなは僕の歌を気に入ってくれるのかなあ」とちょっと心細げだったジェイはいずこ? 5年前のジェイ本人や私の不安がウソのように、その100倍も1000倍も大きくなって日本に戻ってきてくれたジェイ。今日はその感動の日本武道館公演についてレポートしたいと思うが、その前に、これまでのジェイの軌跡を振り返ってみた。

実はジェイは5年前の香港でのインタビューで、今年は日本でもライブする予定なんだと、ちょっと言っていたのだ。しかし、その冬からちょうどSARS騒ぎがあり、なんだかんだしているうちに、ライブの噂は聞かなくなってしまった。そのうちにジェイが映画に主演するらしいという情報。『インファナル・アフェア』の監督が日本の漫画を映画化。『頭文字D(イニシャルD)』の主演と音楽をジェイが担当するらしいこと。そしてその製作発表が日本でも行われた。当然日本でも公開が決まっており、その映画の公開と合わせてソニーミュージックよりジェイのベスト盤的なアルバムが発売されることになった。(「イニシャルJ」)その時久しぶりに、それも日本のホテルでインタビューする機会があった。

私は日本への強いこだわりを持っていたジェイが、音楽ではなく映画で日本デビューするというのはどうなの?と思っていたのだが、本人は意外にあっさりと、「多くの人がそれで僕の音楽を聞く機会が増えることは、それはそれでいいんだ」と語っていた。

その語り口に、ん?ちょっとプロデューサー的な匂いの片鱗を感じて、そのときは、大人になったんだなあと思っていた。しかし、その後の彼の活動の軌跡を見ると、しっかり実業家としての面もあったんだと納得した。

というのも、この5年間に彼は古い事務所アルファーミュージックから独立をして、自分自身の事務所を設立。また、台湾市内に骨董屋(今はやめている)をオープンしたり、イタリアンレストランの経営までしている。その間に『頭文字D(イニシャルD)』の主演、チャン・イーモウ監督作品『王妃の紋章』(本年4月日本公開予定)にも出演、そして自身が監督・主演もちろん音楽も担当した映画『不能説的秘密』、そして今年の旧正月に公開された『カンフー・ダンク!』(本年7月日本公開予定)の主演と、音楽以外での活躍がめざましい。本当に忙しそうだ。

音楽の方でも『頭文字D(イニシャルD)』の公開後、日本初のコンサートも東京国際フォーラムで2日間ほぼ満員の状態で成功させている。私の杞憂はなんだったの?というくらいうれしいことだった。

そして今回の日本武道館の2日間。本人たっての希望だったという日本武道館公演は台湾人初ということになるという。1日目、またまたド派手な衣装(X−JAPANかと思ってしまった)で現れたジェイは緊張しているように見えた。しかし3曲目「最後的戰役」のとき、戦争をテーマにした重い曲にも関わらず、唄いながら思わず笑みがこぼれたのを私は見逃さなかった。「うーん、武道館だあ」と満員の観客を見てそう思ったに違いない。

その後、日本語のMCも格段にうまくなって、観客との距離もかなり近くなっていた。コンサートの内容は前アルバム「依然范特西(スティルファンタジー)」と今回のアルバム「牛仔很忙(僕はとっても忙しい)」の新曲中心のステージとなっていた。

1日目は場面転換に多少もたつき感が、見られたが、2日目にはきっちりとタイトに仕上がり、出来もかなり良くなっていた。

印象としては、今までのコンサートと構成的にはほとんど変わらず、これはジェイのアルバムにも言えることだが、偉大なるマンネリという感がなきにしもあらず。

今回違っていたのは、毎回最後はメランコリックな曲で終わるのに、今回はノリノリで終わったという点だ。アルバム自体もかなり楽しげな曲が多く、ジェイの今の心境なのかもしれない。ジェイのちょっとはかなげなところが好き、という(私もそうだが)人にはちょっと違和感があったかもしれない。しかし、2日間見た限りでは、これもアリなんだと思った。スローな曲にはジェイのピアノでじっくり聞かせ、ラップやアップテンポの曲では観客と一体となって盛り上げる。なんといってもライブだもん!という感じがした。

そしてジェイ自身踊りに慣れてきたのか、ファンにとっては楽しみでもあった突っ込みどころもあまりなくなっていた。キョンシーダンスやラテンダンスも登場。反対に今回連れてきたダンサーたちに踊りの統一感がなかったのがちょっと残念。今回ジェイはドラムスのソロとアンコールでは津軽三味線にも挑戦。ゲストに二胡奏者のチェン・ミンや津軽三味線の小山会の方などが出演したが、紹介がなかったのがちょっと残念(2日目にはチェン・ミンだけは紹介があった)。それと通訳が中途半端で、するならする、いないならいない、という方が良かったような気がする。ゲストの南拳媽媽もジェイとの技量の差が激しすぎてテンションが下がる。可愛がるのもいいが、ゲストコーナーだけでいいような気もした。

前回の日本公演は台湾や香港のような奇をてらうような演出はなく、純粋にミュージシャンとしてのジェイを全面に出していて、新しいジェイのファンを獲得していた。また、ジェイのかねてよりの日本への熱い想いが伝わってきて、胸を熱くするシーンもあった。今回はそこから一歩踏み出して、ワールドツアーの中の1つの都市「日本」と位置づけられたのか、MCでの日本語や中島美嘉の「雪の華」の弾き語り、三味線などだけが日本向けに演出されたものだったようだ。しかし衣装替えからダンス、さまざまな楽器、そして日本語!(小島よしおの「そんなの関係なーい」がお気に入りのご様子)相当大変だったろうなと思う。

その中でも今回私が一番好きだったのは中華風な曲を集めたコーナーと、やはりアンコールのラップ2曲だ。2日目は中国語圏のファンが多かったせいか、言葉のやり取りもスムーズで、最後の「豆腐ー、カンフー」というかけ声に武道館が揺れた。楽しかった〜という声があちこちから聞こえてきて、親でもないのに、よかったよかったと変に感動して武道館を後にした。今回直接のインタビューはかなわなかったが、ジェイは「とっても忙しい」のだろう。今年はこのライブを皮切りに、4月『王妃の紋章』、7月『カンフー・ダンク』とジェイ旋風はまだまだ続く。

中華コーナーで「お父さんとお母さんに、あなたの歌は歌詞がはっきりわからないっていわれたから、今日はものすごくはっきり唄うよ」
PHOTO: Hiroaki Yoda
写真提供:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

2/17日のセットリスト

  1. 黄金甲(黄金の鎧)
  2. 無雙(無双)
  3. 最後的戰役(最後の戦い)
    *映画『不能説的秘密』映像
  4. 不能的秘密 Jay
  5. 退後(後戻り)
  6. 麥芽糖
  7. 牛仔很忙(忙しいカウボーイ)
  8. 聽媽媽的話(ママの言うことを聞いて) Jay
    *周潤發と張學友が映像出演
  9. 黒色幽默(ブラックユーモア)
  10. 最長的電影(いちばん長い映画)
  11. 雪の華
  12. 安静(ひっそりと)
  13. 千里之外(遥かかなた)
  14. 青花瓷(染付の花瓶)‾本草綱目
  15. 夜的第七章(夜の第七章)
  16. 夜曲
  17. 迷迭香(ローズマリー)
  18. 忍者〜彩虹(虹)
  19. 開不了口(言い出せなかった)
  20. 七里香(シルクジャスミン)
    *16日はこの後「甜甜的(スィート)」がありました
ENCORE
  1. 陽光宅男(明るいオタク)
  2. 周大侠(映画『カンフー・ダンク』テーマソング)
  3. 霍元甲+雙截棍
文:永原めぐみ (ライター ミュージシャン)
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