女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『ベクシル —2007 日本鎖国—』

〜 全国大ヒット公開中 〜

『ベクシル —2007 日本鎖国—』場面写真

監督:曽利文彦
ボイスキャスト:黒木メイサ、谷原章介、松雪泰子
音楽:ポール・オークンフォールド
主題歌:mink「Together again」
制作:OXYBOY
配給:松竹
宣伝:アルシネテラン
©2007 ベクシル製作委員会
http://www.vexille.jp

『ベクシル −2007日本鎖国−』は、2067年にハイテク鎖国を開始した日本が、その10年後の2077年にはいったいどうなっているのか?ということを描いた3Dライブアニメ映画。
8月9日に行われた完成披露試写会では、ロカルノ国際映画祭でのオープニング作品として上映され高い評価を得て、全世界75ヶ国での公開も決まったと伝えられていた。しかし驚くべきことにその約10日後の初日舞台挨拶では、公開国が129ヶ国に増えたと発表された。さらに、9月のトロント国際映画祭の<ミッドナイト・マッドネス>部門での上映も決定され、ますます『ベクシル』の勢いは止まらない。
曽利文彦監督は「コミュニケーションがこの映画のテーマ」と語った。日本が誇るアニメーションの技術を通して人間ドラマを描いた『ベクシル』が、他国の人々の胸にはどう響くのだろうか?その前に日本人は?
尚、曽利監督のインタビューがシネマ・ジャーナル最新71号に掲載されるので、こちらも合わせてお読みください。

<『ベクシル −2077 日本鎖国−』 完成披露試写会>
登壇者 黒木メイサ、谷原章介、松雪泰子、mink、曽利文彦監督

2007年8月9日(木) 丸の内プラゼール

黒木メイサ、谷原章介、松雪泰子、mink、曽利文彦監督

曽利文彦監督インタビュー

曽利文彦監督

Q:この作品をつくろうと思ったきっかけは?

A:自分自身がハリウッドに育てられたようなところがあるので、恩返しという意味ではないんですが、一矢報いたいみたいな想いで派手なアクション映画を作りたいと思った時に、CG・アニメーションという手法が一番向いていると思いました。そういう想いのたけをぶつける作品を作りたい、それが一番初めのきっかけです。

Q:どんな想いをこの作品に込められたのでしょうか?

A:本当に堅いことをいうと、「コミュニケーション」というのがこの映画のテーマです。だんだんと人が直接顔を見合わせて話しをする機会が失われてきているので、それをなんとか取り戻していきたいという話なんです。でもアメリカ人を主人公にしたのはわけがあって、ハリウッドでは日本を描きながらアメリカ人が主人公で、アメリカ人の監督の目線でという映画が結構あるんですよね。でもこれは観ていて「う〜ん…」というところもあるので、日本人としては逆のパターンで望みたいと思いました。あえてアメリカ人を主人公にして、日本の監督が撮ることに意味があるのではないかと。映画を観ていただければおわかりになると思います。

ボイスキャストインタビュー

黒木メイサ(ベクシル役)

黒木メイサ

今回初めて声優に挑戦させていただきました。最初はすごく難しいと思って緊張していましたが、やってみると大きいスクリーンを見ながら演じることの楽しさを感じていました。出来上がった作品を初めて観た時には、自分の作った作品なのに何か違和感というか不思議な空間にいる感じがしましたね。でもストーリーが進んでいくにつれ、そんなことを忘れて普通に見入ってしまいました。2077年というそんなに遠くない日本が描かれているので、こういうことが本当に起こったらどうしようと思うぐらい、すごく映像やストーリーがリアルです。

谷原章介(レオン役)

谷原章介

まず台本、そして作品を観させていただいて、21世紀は女性の時代だと思いました。レオンは特殊部隊のリーダーで、仲間からも信頼されていて肉体的にも強くて頭脳も明晰なのに、黒木さん演じるベクシルに助けられ、松雪さん演じるマリアにも助けられ(笑)。「レオンはこれでいいのか?」と曽利監督に話したら、ストーリー上はこうなっているけれど、本来のサブテキストというか裏側の部分に関しては実はレオンは活躍していて、だからこそ仲間からの信頼が厚く、ベクシルやマリアに愛されるわけだと。だからどこかに魅力がある、そのどこかを探してずっと声を吹き込んでおりました。

松雪泰子(マリア役)

松雪泰子

日本民族の生き残りの長で、残された時間を生き抜くという強い女性でしたので、力強さや全てを悟った包容力や母性的な感覚を持った深みのある女性の声にしたいと思いました。スタジオに入った時にどういう声で演じるかといくつかためしたんですけど、やはり低い声でいこうということで。とても勉強になる時間でしたし、すごく楽しかったです。

mink(主題歌「Together again」)

mink

映画を先に観てから作詞をしました。人が感じる複雑な感情がすごくリアルに表現できている映画だと思いました。今がどれだけつらくても、希望を持って前向きにやっていこうという自分の経験を元に、正直に歌詞を書かせていただきました。

<『ベクシル −2077 日本鎖国−』 初日舞台挨拶>
登壇者 写真右よりmink、黒木メイサ、松雪泰子、曽利文彦監督

2007年8月18日(土) 丸の内プラゼール

黒木メイサ、松雪泰子、mink、曽利文彦監督 松雪泰子
黒木メイサ mink

曽利文彦監督からのメッセージ

この作品は企画の段階から世界市場に向けて、日本のエンターテインメントを輸出していくという志で作り上げたものです。内容は日本人にとってはショッキングなものかもしれませんが、日本人の美徳、奥ゆかしさ、謙虚さとかをより強調することで、日本の良きところを世界にアピールできると考えて作りました。
ハリウッドがアメリカNO.1みたいな映画をよく作りますが、日本人が日本人賛歌として作る映画というのは、決して日本が世界のNO.1という形で歌い上げるものではないと思います。こういう形の日本人的な美学というものが少しでも広まってほしいし、日本の未来が『ベクシル』のようであってはならないという部分が、『ベクシル』のメッセージだと思っています。

<取材後記>
曽利監督のインタビューから完成披露試写会、初日舞台挨拶とどっぷり『ベクシル』に浸からせていただきました。
70年後の日本を描いているとはいえ、キャラクターの日本人、アメリカ人はまさしく【THE侍】です。監督がおっしゃる【日本人の美学】が痛いほど伝わってくる映画です。泣きます!泣きました!!
完成披露試写会では谷原さんが、「CGのアニメ映画だと男性が多いという印象があるので、女性の方にも楽しんでほしい」とおっしゃっていましたが、本当に食わず嫌いをせず、女性にも是非観ていただきたいです。そして3Dライブアニメの映像の綺麗さ、迫力をストーリーと共に堪能してください!

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(写真・文 金子ひろみ)
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