女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

クエンティン・タランティーノ 来日記者会見

2007年8月2日(木) ウェスティンホテル東京

クエンティン・タランティーノ

日本通でおなじみのクエンティン・タランティーノ監督が、最新監督作『デス・プルーフ in グラインドハウス』のために来日、記者会見を行った。
"グラインドハウス"というのは、60〜70年代のアメリカの大都市周辺に存在した、インディーズ系の映画を2,3本立てで上映していた映画館のことをいう。
大規模で上映される映画は、たくさんの本数のフィルムがプリントされてそれぞれの映画館で上映されるが、グラインドハウスで上映される映画はプリント本数が少なく、それをいろいろな都市で使いまわすので、プリントに傷が付いていたり、カットが紛失したりという自体も珍しいものではなかったそうだ。
監督は幼い頃からグラインドハウスで上映される映画を好み、いつかこのような(ダメージを含む)映画を作ってみたいとの夢を、盟友ロバート・ロドリゲス監督と共に実現させた。
タランティーノ監督が『デス・プルーフ』、ロドリゲス監督が『プラネット・テラー』と、2つの作品は異なった映画ではあるけれども、同じガールズムービーで、グラインドハウス(手法というものか?)である。

<タランティーノ監督挨拶>

たくさんの方にお集まりいただいて本当に嬉しいです。ありがとうございます。この映画を皆さんが気に入ってくださると、とても嬉しく思います。日本には16年間、通い続けているという感じです。初めての来日は『レザボア・ドッグス』の時で、その当時はアメリカ国内はおろか、L.A.より他に行ったことがないような状態で、本当に初めての外国という感じでした。大好きな東京にこうやって足を運べることは毎回とても嬉しく、日本の友人の方々とお会い出来るのも嬉しいです。アリガトウゴザイマシタ。

:『グラインドハウス』はロバート・ロドリゲス監督と一緒に企画を立てて、60年代の作品へのオマージュをこめて作ろうとお考えになったそうですが、具体的にどういう発想だったのでしょうか?

監督:彼とのプロモセッションは7回にも及んでいて、長い付き合いの中でお互いにベストフレンドと呼んでいます。母親違いの兄弟みたいですね。私はフィルムのプリントコレクションがかなりありまして、家にもムービーシアターがあります。そしてプリントを上映して、友達に見せるという企画をやっています。そこにロバートもよく足を運んでくれて、彼が「クェンティンの家でのムービーナイトがどんなものか、こういう映画を世界中の人たちに見せてあげようよ」というところから始まりました。

:今回は撮影監督もなさっていたということで、撮り方が下からなめまわすようなかなりセクシーな撮り方をされていますが、その点は監督ご自身のセクシイズムというか願望が投影されているものなのでしょうか?そういったセクシーなシーンの中で、監督自身一番お気に入りのシーンはどこでしょう?

監督:実はですね、今まで監督として女性や女優さんたちとの相対し方に関しては誇りに思っていることがひとつありまして、常に自分はジェントルマンであったということなんです。けれども今回の『デス・プルーフ』に関しては、自分の中のジェントルマンには家に帰ってもらいました(笑)。やはりグラインドハウスですから、そんな紳士的な視点で観た映画、映像は皆さんが観たくないと思ったからです。むしろこういう風に自分は興奮を覚え、こういうものがセクシーなんだということを自分の視点からとらえて、映して、そして皆さんに見せることをしなければいけないと思いました。もちろん、そのセクシーの定義に関しても皆さんそれぞれが違うと思います。でもこの映画は皆さんの映画じゃありません。僕の映画なので(笑)、自分がセクシーだと思うものを存分に撮って、映像化したというわけです。一番セクシーなシーンに関しては、ベランダでジャングル・ジュリアの足先から舐めるように撮っていくシーンでしょうか。

:今回のグラインドハウスの二つの作品ですが、2人の監督のそれぞれの女性論が詰め込まれていると感じましたが、それは2人で話し合ってガールズムービーを作ろうと思ったのでしょうか?

監督:驚かれるかもしれませんが、今回は別々に仕事をしていたんです。お互いに何を書いているのか100%把握していたわけじゃなかったんです。ただ2人とも女性に関しては、自分はシングルマザーの手によって育てられています。家の中の哲学として、「女性に出来ないことで男性に出来ることなどない」と教えられて育ちました。ロバートの場合は6人の姉妹がいらして、常にガールズパワーに囲まれて育っていたんです。だからお互いにそういった部分で女性との関係、絆っていうのは近しいというのはありますね。

ここで千葉真一氏登場。花束とサムライコート(下記画像でタランティーノ監督着用)をプレゼント。
「深作欣二監督も今の時代に古き良き手法で映画を撮ってみたいとおっしゃっていましたが、この映画はCGとかを使わず、スタントマンを使って全くごまかしがない。そういう原点に戻って映画を観たような気がしました。それを平気でやってしまうというのはものすごいなあと思いましたね。サプライズといいましょうか、アンビリーバブルというんでしょうかね。そういう言葉がピッタリな監督ですよね。」

クエンティン・タランティーノ、千葉真一 クエンティン・タランティーノ

9/1(土)〜『デス・プルーフ in グラインドハウス』
9/22(土)〜『プラネット・テラー in グラインドハウス』
TOHOシネマズ六本木ヒルズほか、連続ロードショー

『デス・プルーフ in グラインドハウス』 R-15
第60回カンヌ映画祭コンペティション部門正式出品
2007年/アメリカ/113分
監督/脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン
公式HP http://www.deathproof.jp/
配給:ブロードメディア・スタジオ
© 2007 The Weinstein Company



『プラネット・テラー in グラインドハウス』 R-15
2007年/アメリカ/105分
監督/脚本:ロバート・ロドリゲス
出演:ローズ・マッゴーワン、ブルース・ウィリス、フレディ・ロドリゲス
公式HP http://www.planetterror.jp/
配給:ブロードメディア・スタジオ
©2007 The Weinstein Company

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(写真・文 金子ひろみ)
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