女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

學友光年 世界巡回演唱会

2007年6月17日
東京国際フォーラム ホールA

張學友

2005年の『ベルベット・レイン(原題:江湖)』で再びアンディ・ラウと共演。『いますぐ抱きしめたい』とオーバーラップする役どころを、激しくも切なく演じ、昨年公開された『ウィンター・ソング(原題:如果・愛)』では、金城武の恋敵の映画監督に扮し、オペラ的歌唱で他を圧倒する歌声を披露。空中ブランコまでこなし? スクリーンでは健在ぶりをみせてくれていた張學友(ジャッキー・チュン)だが、日本公演決定の知らせは、嬉しい驚きだった!
と言うのも、ここ数年は韓流の勢いに押され、また最近の華流も、四大天王に代表される香港ポップス全盛時代に熱中した日本歌迷(ファン)としては、ちょっと寂しい状況だったからである。

いざ蓋を開ければ、この日を待ちわびた日本歌迷はもちろんのこと、前回をしのぐほど多くの中華圏の人々が詰めかけ、会場の東京国際フォーラムには亜洲世界が出現!
開演前から、満員の客席には今か今かと主役の登場を待ちわびる異様な熱気が充満。そのざわめきが頂点に達したころ、中央セリより學友が現れるやいなや、どよめきとともに大歓声が沸き上がる!!
オープニング曲「愛火花」に乗って、シルバーグレーの衣装をまとい髪に銀ラメの學友は、赤いシルクハットに奇抜な仮面のダンサーを従え舞台狭しと歌い踊る!
続けて「頭髪亂了」「和好不如初」を熱く激しくシャウトする學友は早くもパワー全開! 
いつもはスタジアムクラスの会場が多いだけに、客席に手が届くほどの会場(と言っても五千人収容ですが・・)だとノリも違う! これぞライブ! 學友のロック魂を大いに刺激したことだろう!

「なにか思い出すことはありますか?」と歌い始めたのは「一千個傷心的理由」「一路上有」など90年代バラードの名曲の数々・・ イントロが流れるだけで歓声が上がる。
心に染み入る熱唱に、ただただ聴き惚れる。が、大ヒット曲の「毎天愛[イ尓]多一些」「吻別」となると会場の様子は一変! 文字通り”學友の歌を聴いて育った”中国、台湾、香港出身の人々の反応が熱くなるのは当然といえば当然のこと。特に男性ファンの多くが声を合わせ、成りきって?歌う姿に、學友の存在の大きさを今更ながら実感!

ハードスケジュールの中、丸暗記ながらも今回も日本語でのトークを用意してきた學友。「みなさん、こんばんわ〜」と、いつものやや甲高い第一声の後は、日本でまたコンサートが出来て嬉しいこと。皆さんは聞くだけで、私には何も聞かないでと、たどたどしくもユーモアを交えての日本語を披露。
内容はアメリカ、カナダ、中国本土を廻るツァーのMCをほぼ忠実に日本語に翻訳したもの。言い回しの難しい言葉に詰まる度に、客席からのフォローの声が飛び、そのやり取りがなんともキュート! オーバーなリアクションも場内の笑いを誘う。MCタイムでも観客の心をワシづかみの學友だ。

張學友95年、99年、そして前回「2002年音楽の旅」から5年、ワールドツァーとしては4回目の来日公演となる今回は、新旧の代表曲を歌うほかに、オリジナルミュージカル[雪狼湖]と映画『ウィンター・ソング』から抜粋した曲にアレンジを加え、ミニミュージカル風に再現。學友の20年を超える音楽人生、そして自らの人生の歩みをたどる集大成ともいえる構成になっていた。
その中でも學友自身が大きな意味があると語ったのが、自らが制作したCD「Life is Like A Dream」を紹介するシーン。妻と娘、家族に対する愛情を曲にした「搖搖」「講[イ尓]知」、そして親しかった亡き友人達へ捧げた「給朋友」を歌う場面では、スクリーンに日本語の歌詞とメッセージが流れ、歌声ととも學友の心情がストレートに伝わってくる演出になっており、場内は静かな感動に包まれた。
「人生には嬉しい時も悲しい時もあります。諦めないで頑張ってください。信じて下さい。またいいことがあります」と結んだ言葉には紆余曲折を経験した學友だけに千金の重み。この言葉を直接伝えたいがゆえに、日本語でのMCにこだわったのでは、と胸が熱くなる。

プログラムの最後は、30分間のミニミュージカル。
[雪狼湖]と『ウィンター・ソング』に共通する、一人の女性をめぐる二人の男の愛と苦悩をテーマに二つのストーリーを融合、ドラマチックな展開でみせる。思い入れたっぷりの演劇的な歌唱・演技にミュージカルを見慣れない観客の中には戸惑いからか、始めのうちこそオーバーアクションに笑いが起きていたが、終盤にはステージ上の世界にすっかり引き込まれ、「愛是永恆」のスケールの大きい歌唱に心底酔いしれていた。
魅せる要素もたっぷりで、ヒロインの顔を覆うベールは神秘的な効果を出し、豪華だが、ちょっとイケてないんじゃない、と思ってしまうベロア調の衣装が定番の香港テイストも、この場面にはぴったり。

いよいよお楽しみのアンコールタイム!
フェイ.ウォンとのデュエット曲「非常夏日」の軽快なリズムに乗って白のスニーカーの學友とダンサー達が楽しげに走り回った後は、「我真的受傷了」「情書」〜「離開以後」「半月湾」と・・誰もが口ずさむ90年代ヒット曲のオンパレード! うねるような歓声が次から次へと沸き起こり、もはや場内は學友と観客とのコラボレーション。
そして、聴かずには帰れない「李香蘭」。この曲だけは、さすがに水を打ったように静まりかえり、全身全霊を傾けて歌い上げる學友の歌声にひたすら耳を傾ける。
が、ついに最後の曲「祝福」のメロディーが流れると、場内は興奮の渦。學友と声を合わせての大合唱!! 会場がひとつになった感動に身をおく幸せを感じられるフィナーレだった。

時間を忘れて學友世界に浸った3時間。
確か「ダンス、ダンスのコンサートはもうこれでお終い」と言っていたのは前々回のコンサートツアーの後だったと記憶しているが、回を追うごとにダンスナンバーが増え続けている。
”歌神”と呼ばれる歌唱力には更に磨きがかかり凄みと深みを増し、声量も衰えを知らない。私達を驚かせ、楽しませ、そして幸せな気持ちにさせてくれたステージだった。ちょっと頑張りすぎ!?・・と、歌迷としてはいささか心配にもなるが、持て得る限り、全力投球の姿勢はこれからも変わらないだろう。挑戦し続ける50代、60代、70代・・の學友をずっと見続けていこう・・
しかし、なんとしても一度だけのステージはもったいない!
願わくば、一巡後に再び日本、はないだろうか・・。

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(文:日向夏、写真:宮崎暁美)
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