女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『イーオン・フラックス』シャーリーズ・セロン来日記者会見

〜MTVの短編アニメを実写化。台詞に頼らず身体の動きでストーリーを語る役に挑戦〜

3月8日 都内ホテル

シャーリーズ・セロンがSF超大作『イーオン・フラックス』PRのため、2003年の『ミニミニ大作戦』以来3年ぶり3回目の来日を果たした。
舞台は2415年、外界から隔絶された都市ブレーニャは、君主と少数の科学者で統治され、隅々まで監視される潔癖なまでの管理社会だった。その政府に立ち向かう反政府組織“モニカン”の戦士イーオン・フラックスを颯爽と演じるのがシャーリーズ・セロンだ。今回、ブロンドを黒髪に変えて寡黙な女戦士を熱演している。
『モンスター』でオスカーを受賞後の初来日ということで、やはり自信の表れか、美しさだけでなく風格も加わったような気がしたのは私だけ?

シャーリーズ�・セロン
話し方はサバサバした感じで
それもまた格好良かった。

この映画でのセロンは、完璧なプロポーションを厳しいトレーニングでさらに鍛え上げ、アクロバティックな動きを次々披露する。

「今回の役はセリフを使わず体でストーリーを語るという実験でした。私はバレリーナとして12年間トレーニングを受けた経験があり、当時は舞台上で踊ってストーリーを語っていたのです。そのルーツに再度戻り、肉体でいかに気持ちや感情を表せるかの挑戦をしたのが本作です。」

今回の役は黒髪がとてもクールで印象的だが、ブロンドを黒にするのに抵抗があったのかという質問には
「私は髪の色を変えるのは大好きで、全然苦ではありませんでした。髪をカットして黒に染めてあの衣装を着たとき、本当に自分が戦士になったような気がしたわ。あの役には黒髪がピッタリだったと思います。」
ついでに「私は飽きっぽいところがあります。髪の色は気に入らなかったらすぐ変えられるし」と、潔いコメント。

アクションで苦労したところは?

「一番大変だったのは、肉体の改造です。今までこれだけハードなアクションやったことはなく、どれだけ自分の体が耐えられるか毎日が挑戦でした。週6〜7日、1日5,6時間、ジムナスティックス、マーシャルアーツなどあらゆるトレーニングをしました。(資料にはイスラエル式の武術クラヴマにも挑戦したと書いてある)シルク・ド・ソレイユの体操選手テリー・バートレットに柔軟性も鍛えてもらったの。本当に精神的にも肉体的にも大変だったけど、体を鍛えることが役の中心、“核”になることだったので、それができなかったらこの役もできないと思って全力で臨みました。そういった意味でも私にとってはチャレンジでした。」

さて、本作の監督は『ガールファイト』でボクシングをする女性を描いた日系の女性監督カリン・クサマ。セロンは『モンスター』ではパティ・ジェンキンス、『スタンド・アップ』ではニキ・カーロと、フェミニズム系の女性監督との仕事が続いているが、敢えて女性監督を選んで出演しているのだろうか?

「特に女性だからというわけで彼女たちと仕事をしているわけではありません。私は素晴らしい演出家や監督と仕事をしたいと思っているだけです。だからスカートを履いていようが、パンツをはいていようが関係ないこと。自分のビジョンを持っている人たちと良い作品、良い題材でパートナーシップを築きたいと思っています。カリン・クサマ監督は『ガールファイト』で、キャラクターが強い作品を撮りました。私もキャラクター中心の作品に出演したいと思っていたので今回一緒に仕事をしたわけです。SFは監督にとっても初挑戦の分野でしたが、原作の雰囲気を壊さないように、一緒にこの『イーオン・フラックス』の世界を探求し、創っていきました。」

セロンが「言葉ではなく肉体でストーリーを語る」ことにこだわったのは、イーオン・フラックスがクールで寡黙な女戦士だから。シャーリーズ・セロン自身との共通点はどんなところだろう。

「イーオンは自分の置かれた状況に疑問を感じ、自分で考えて行動する。私も子どものころから母親に、自分で考えて、疑問をもったらそれに対して質問を投げかけなさいと教えられました。そういうところは共通しているかもしれないですね。」

初めに触れたように、本作はアニメーションの実写化。普通なら絶対ありえないような設定やアクション、衣装なども、セロンのような人間離れしたような完璧なプロポーションの女性が演じると、全然違和感がないからすごい。

シャーリーズ�・セロン
右下のカメラ邪魔ですね、スミマセン。
いくら心が穏やかで幸せでも
このスタイルにはなれません・・・

そんな彼女の「美の秘訣」は幸福でいることだそう。

「私は“幸せ”(彼女はhappinessという言葉で表現)を信じているの。人は心が穏やかなときに美しくなれると思う。幸せそうな人は美しく見える。まあ、でも私も人間ですから、幸せでないことはヘアメイクのスタイリスト、洋服はスタイリストに助けてもらっているわけ。(笑)」と、会場にいたスタッフを皆に紹介する気配りをみせたセロン。あと週に5回は日本食を食べているのも、彼女の美貌の維持を助けていると勝手に思いたい。

日本では1月にアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされた『スタンド・アップ』も公開されたばかり。社会派とエンタテインメント作品をバランスよく選択し、作品ごとに全く違う役柄を自分のものにして演じ分けて着実にステップアップしている。
最近、親しみやすい女優さんが多いなか、圧倒的なスタイルのよさと美しさをもつスターらしいスターというのでしょうか、そんな彼女のような女優は貴重な存在なのではないでしょうか。美しさだけではなく、演じること、いい仕事をすることにとても貪欲である人だと思いました。会見で何度も「挑戦」という言葉を遣っていたのが印象に残っています。

次号シネマジャーナルでは、セロンのもうひとつの主演作『スタンドアップ』をトークでとりあげるので、そちらもお楽しみに。

『イーオン・フラックス』3月11日より 日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー中
公式サイトはこちら http://www.aeonflux.jp/

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(取材・文・写真:吹田)
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