女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

許冠文/マイケル・ホイ来日記者会見

8月25日 グランドハイアット東京

イジリー岡田、マイケル・ホイ、広川太一郎

「Mr.Boo! DVD‐BOX」が8月26日にリリースされました。そのプロモーションのため、10年ぶりに来日した許冠文/マイケル・ホイ氏の記者会見の様子をお届けします。ゲストは『Mr.Boo!』の日本語吹き替えでおなじみの広川太一郎氏、司会はイジリー岡田さん、通訳は周さん。

小学生のころから『Mr.Boo!』ファンだというイジリー岡田さんが広川氏の物真似を披露したところに、ご本人登場。

広川 実際にホイさんに会うのは今日が初めてなんですよ。でもなんだかそんな気がしなくて、「はじめまして」じゃなくて「お久しぶり」と言ってしまいました。今日はホイさんの会見なので、僕があんまりでしゃばってはいけないんですが・・・広川太一郎です。よろしく。

テーマソング「半斤八両(原題)」にのってマイケル・ホイ氏登場。(大拍手)手にはヌンチャク!? 

ホイ みなさんこんにちは。30年たって、僕が変わったかどうか次のアクションをご覧になってください。これ(ヌンチャク)は先ほど(記者から)プレゼントされました。映画の中のアクションをやってみます(拍手)。  

ヌンチャクを持ってポーズ、振り回して自分に当たって顔をしかめています。うわぁ映画のまんま!

マイケル・ホイ
いくぞ!
マイケル・ホイ
うりゃうりゃうりゃぁ!
マイケル・ホイ
イテッ!

ホイ 先ほどは年取っていないと言いましたが、実は最近「認知症」になった気がしています。毎朝目が覚めて隣に寝ている女性は誰だったかなぁと思います(笑)。実は家内ですが、新しいガールフレンドだと思ってしまうんです。だから非常に彼女に対しては優しくしているのに、彼女は僕の頭を棒でたたくんですよ。(笑)みなさん僕を若い若いと言ってくれますが、誓って整形などしていません(笑)。鼻や顎にプラスチックを入れたりするのは苦手です。心配なのは死んだ後、「なんでこんなところにプラスチックがあるんだ?」と思われることです(笑)。冗談ですよ!(笑)

最近香港ではあまり映画に取り組んでいなかったのですが、香港コロシアムで冗談ばっかり言うトークショーをしました。1万3千人を前に2時間マイク1本で。来月DVDが発売されますので、日本でもぜひ字幕をつけて発売されるといいなと思います。

30年もたってこのDVD-BOXが発売されました。それほど人気があるのには理由 があると思います。一つにはこの広川さんの声の吹き替えがあったから。彼の吹き替 えは生き生きしていて本当に素晴らしい!もうひとつ重要な理由があります。日本の 皆様はほんとに人情に厚いんです。昨日観た映画を今日はもう忘れてしまうようなそ んな時代なのに、30年前の映画を覚えていてくださってありがとうございます。もう一度、ほんとにありがとうございました。

「この技はブルース・リーから習いました」とヌンチャクを振り回すホイ氏。

テーブルにあったオシボリを広川氏に持たせ、「勇気を出して。手に当たるだけだから」とそれをヌンチャクで叩き落そうと真剣な顔。「替わりましょうか」という司会の声に広川氏応じず、しかし腰がひけています。何度か試して成功!(会場大喝采)

マイケル・ホイ、広川太一郎
李小龍直伝!
マイケル・ホイ、広川太一郎
まぁまぁ、当たっても手だけだよ!
マイケル・ホイ、広川太一郎
アチョー!

司会 これだけ根強いファンがいることについていかがでしょうか?

ホイ 先ほども言いましたが、本当に嬉しいです。日本の皆様は長い間人情たっぷりに応援してくれます。今もし独身であれば、必ずや日本人のお嫁さんをもらうんですが。すると便利なことがあります。日本人のお嫁さんをもらって年取って老後を迎えたら、僕のDVDを熱心に観ていてくれるでしょう。麻雀や買い物に付き合ったりしなくていいです。(笑)

司会 ちなみに日本の女性タレントでタイプの方は?

ホイ 以前は山口百惠さんがとても好きでした。引退してしまいましたが。今は『ぽっぽや』に出ていた女優さんが好きです。(名前が出てこず、記者席から「広末涼子!」と声があがる)そうそう。たくさん彼女の映画を観ましたが、どれも非常に自然でまた綺麗でした。もちろん高倉健さんはいうまでもなく私のアイドルで、演技は素晴らしいです。

司会 広川さん、この作品を初めて吹き替えしたときの感想は? 作品を観たときどんなインパクトがありましたか?

広川 そうですね、日本のみなさんは人情があって、今度生まれてきたときには日本の・・・吹き替えしてるよ!(場内爆笑)

初めて観たときはなんていうのかなぁ、僕が今まで吹き替えしてきたものとはまるで異質のものだったんです。これはひとつなんか違う方向性が見えたって気がしますね。日本の喜劇の場合だと、弱虫だけども正義感が強い、お人よしだけども実は・・・とかですよね。ところがこのMr.Booはどことなく性格悪いんですよね。(笑)日本の人たちにそこのおかしさ、ギャップをセリフでわかってもらおうと、日本語としてのオリジナリティを僕なりに作った、っていいますかね。

司会 当時の製作秘話なども伺いたいので、ダイジェスト版で思い出していただきましょう。

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会場スクリーンに懐かしい映像が次々と現れます。記者も楽しみ一ファンに戻った気がしました。 

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ホイ 当時の香港のコメディに、アクションはなかったのです。初めてカンフーやアクションシーンを盛り込んだのですが、僕はブルース・リーやジャッキー・チェンと違ってカンフーは全くできません。弟たち、リッキーやサミュエルもできませんし、アクション場面はほんとに大変でした。失敗して怪我をしたりさせたりしました。それをジャッキーが現場で見ていて、「そんなことやらなくていいのに。こういうのは僕達に任せておけば」と言うんですね。でも彼は後で自分の映画にそういうアクションを取り入れたりしてるんです(笑)。ブルース・リー、ジャッキー・チェン、チャウ・シンチーもカンフー好きですが、僕は彼らとは違って大人しくてハンサムで優しい人間なので、アクションがどんなに大変だったか想像がつくでしょう?(笑)

先ほどのヌンチャクのアクションは、映画でソーセージを使うのですが、1分のシーンを撮影では3日がかり、練習は2ヶ月もしました。ブルース・リーは練習している僕に呆れ顔で「一生かかってもアクション俳優は無理、才能はないからもう諦めなさい」と言いました。家に帰ると父親にも言われます。「お前は早口すぎる。ちっともユーモアがない」と。話すのもアクションも下手で、どう考えても俳優や監督になるなんて素質はないんですね。自分が監督になっているなんて今でも不思議で、まさに奇跡だと思います。ですから今の若い人達に「自分には何か隠れた才能があるかもしれない、やりたい事をどんどんやってみなさい」と言いたいです。

司会 3人兄弟で喧嘩をしたりすることは?

ホイ それはありません。

司会 広川さん、こういう雰囲気の吹き替えが生まれたきっかけは?

広川 先ほども話しましたが、日本のコメディとは感じが違うので、アクションがおかしかったときでもセリフそのものを直訳しただけでは面白くないこともあったんです。吹き替えに自分のオリジナリティを持ち込んだっていうのはこれの作品が初めてだと思います。そのへんから、あの、しっちゃかめっちゃかのが始まったという・・・(笑)。

司会 よく見ていると喋っていないところでも、(吹き替えでは)話していますよね。(笑)

広川 僕のいいところであり、悪いところでもあると思います。(笑)ただ、一人でやってるところはともかく、相手のあるものですからリハーサルと本番では同じにします。本番でも下向いて笑いをこらえている人もいましたけど。

司会 楽しそうでいいなぁと思っていましたが。

広川 いやー、現場を壊さないよう、限度がありますから。

司会 ではマスコミの皆様から質問を

Q 香港の映画ではあまり台本がないと聞きますが、この作品には周到な台本が用意されていたのですか?それともアドリブが多いのでしょうか?

ホイ 香港のコメディの場合、あまりちゃんとした台本がなくて、現場で考えればいい、というのが普通でした。でも僕は違う考えです。ちゃんとした台本を作りました。毎回現場でアドリブでは、上手くいかなくなったときどうします?

大事なのは、今までだれも観たことも聞いたこともない新しいストーリーを作ることです。ここ10何年新しい映画を撮っていないのも、それが理由です。今映画を観るみなさんは非常に利口になっています。今まで観たこともない作品を観てはじめていい映画だと思うんですね。ハリウッドでCGを多く使うのは観たことのない場面を作るためです。僕はCGを使わずに新しいものを作らねばなりません。こういう角度で考えると、現場でのアドリブで映画を作ることはどうしてもできません。

Q お二人は今日が初対面だそうですが、お互いの第一印象をお聞かせください。

ホイ 僕は日本でMr. Booと呼ばれていますが、今までその意味を知りませんでした。今日初めて映画会社の人から聞きました。公開した当時、「Mr. Booになるためのの10の条件」というのがあったそうです。それをお教えします。

1番目、見た目よくないこと。初めて日本で吹き替えをした方に会ったとき・・・ちょっとみっともないですよね(笑)。ぴったりですよね、ハンサムじゃないところ。(笑)(広川氏苦笑)2番目、スケベなこと。女性が大好き。(笑)どうですか?

広川 あまり好きではありません。(笑)嘘です。(笑)

ホイ スケベだけじゃなくって「ど」スケベじゃないといけないんですよ。広川さんもそうだから僕の役をこれだけうまくできたんですね。これは東宝東和の方が言ったんですよ。そして3つめはどケチ! 

広川 全然ほめてない。こんな人初めてです。(笑)

ホイ ほめてます。

広川 ほめてないって!(笑)

ホイ ほんとに心をこめてほめております。(爆笑)10番目の条件もあります。信じられなければ記録して調べるとわかります。10番目は非常に心が優しいこと。おそらく広川さんも心の優しい方なんでしょう。ま、多少スケベでも・・・。(笑)

広川 何を信じたらいいの?(爆笑)マイケルさん、人をはぐらかして喜んで、後でほくそえんで、表向きはほめ殺しで・・・一番たち悪いですね。

ホイ ほめ殺しとかいじめるとか、それは条件の6番目です。(爆笑)

広川 勝手に作ってる!(笑)

ホイ その現物は映画会社にあります。今朝記者の友達がそれを持ってきてくれて初めて見たんです。記念に取っておこうと思ったらくれませんでした。コピーを取りましたので今度お見せします。初めて謎が解けました。日本でコメディ映画が売れるには、主役が必ずハンサムじゃなく、スケベでケチで心優しい、そういう条件が必要だと。(笑)

広川 ちょっとここで困らせようかな。あのー、8番目はなんですか?(笑)

ホイ(爆笑)普通8番目の条件といえば目の細い人。(笑)

広川 嘘ばっかり!

ホイ 嘘じゃない、ほんとに細いじゃないですか、二人とも。この「10の条件」というのは弱点ですよね、これが10も揃って初めてみんなが笑って面白がってくれるのです。ハンサムな人だと向かないとは言わないけど、やりにくいんじゃないかと思います。トム・クルーズさんはコメディやりません。

司会 さて広川さん、第一印象を。

広川 一つの質問でこんなに長くなっちゃうんですねぇ。(笑)しかし、ホイさんってほんとにおしゃべりですねぇ。僕が話すこともうなくなっちゃいましたよ。さっきのやりとりで、もうだいたいわかったと思います。ここはまじめな話です。彼の奥底にインテリジェンスを感じるんです。そこが好きなんです。脚本の仕事が一番好きだとおっしゃっていましたし。『Mr. Boo!』の中ではその辺を隠すために、オーバーにどスケベだとかどケチだとか、意地悪(なキャラ)にできているんじゃないかなって感じがしましたね。

Q かつて中学校の教師や広告代理店勤務などをされていた経験は『Mr. Boo!』の中で生かされていますか?

ホイ たくさんあります。脚本、監督、俳優と3つの役をこなすのですが、経験を全て取り入れてやっています。私立探偵会社の社長が僕の役ですが、どケチで弟をいじめたりしています。このキャラクターは僕の父親そのものです。ずーっとケチでした。子供のころを覚えていますが、父は冷房の会社に勤めていて、帰ってくると必ず「今日もまた社長にいじめられた!」と言います。すると僕達はご飯を半分しか食べられません。そこで、映画の中で僕が鶏肉を食べているとき、弟二人には鶏の爪先だけなのです。(笑)ほかに周りの友人たちを観察して、その弱点や面白いところを抽出して、映画の中のキャラクターを作り上げました。いつも思うのですが、コメディの一番の素材というのは、やはり身の回りの生活の中から出てくるものです。想像の中から生まれたものはそれほど笑えないと思います。


質疑応答はここまで、フォトセッションに入りました。ホイ氏はDVD-BOXを手に登場。「半斤八両」の歌をバックに、ステージ?を右へ左へ。ゆっくりポーズをとりながら、カメラマンの要求に応えて止まったり動いたり大サービス。

広川太一郎氏も加わって、しっかり肩を組んでのツーショット。最後に「僕も入ると台本にあります」とイジリー岡田さん。嬉しい嬉しいといいつつ、にこにこのスリーショット。


カメラマンたちからの
「ゆっくり!」
のお願いに・・・
マイケル・ホイ
ゆっくり、左から右へ
マイケル・ホイ
視線をくれました
マイケル・ホイ
あの、DVD裏側見せてますけど
マイケル・ホイ
歌う真似してます
マイケル・ホイ
「半斤八両」に
合わせて・・・

なごやかで爆笑連続の会見は全て終わりました。録音を再生すると笑い声が大きく入っていて聞き取るのに苦労しました。楽しさが伝わったでしょうか?若々しくて(1942年生まれ)元気なホイ氏とダンディな広川氏でした。最初にちょっと話していた認知症のエピソードは香港の雑誌記事にあった、撮りたい映画のストーリーではなかったでしょうか? 新作をひっさげてまた来日していただきたいものです。さて、DVD観直そうかなっと。

「Mr.BOO! DVD-BOX」8月26日セルリリース!!すべてデジタル・リマスター版
収録作品:Mr.BOO! ミスターブー 
     Mr.BOO! インベーダー作戦 
     Mr.BOO! ギャンブル大将  
     新Mr.BOO! アヒルの警備保障 初DVD化
     新Mr.BOO! 鉄板焼 初DVD化(この作品のみ吹き替えなし)
価格:BOX 16,275円(税込)各単品 3,990円(税込)
発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

発売元HP:http://www.universalpictures.jp/_present/hongkong/no4/hongkong04_index.html

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(取材・まとめ:白石映子 写真:梅木直子)
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