女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『オールド・ボーイ』初日舞台挨拶レポート!

 カンヌ映画祭でグランプリを獲得してから半年。いよいよ待ちに待った「オールド・ボーイ」の初日を迎えた。この日を何度指折り数えただろう。初回が終った後、主演の二人、チェ・ミンシクとユ・ジテの舞台挨拶があると聞いて、さっそく駆けつけた。
 劇場の横で初回が終るまで待機していたが、終了後、観客の盛大な拍手が聞こえて内心ホッとする。この拍手は二人に届いただろうか。あ〜心配。
 さて、場内は2回目からの観客も入場したので、通路も人が溢れている。いいぞ!みんなで二人を盛り上げなくてはね。と、しばらくして大きな拍手と歓声と共に今回の主役達が登場。そのチェ・ミンシクとユ・ジテは二人ともラフなジャケット姿。ミンシクにいたってはTシャツとジーンズにジャケットと、見ようによってはダサイというか普通に街を歩けばタダのおっさんといった風情。どこにあの怪演とも言える役者としてのパワーが潜んでいるのか。ユ・ジテはさすがモデル出身とあって背が高く、見栄えのする姿が印象的だ。



[舞台挨拶]

(チェ・ミンシク=、ユ・ジテ=)

Q.公開初日を迎えて一言お願いします。

ミ:少し居心地の悪い映画だったと思いますが最後まで見てくださってうれしく思っています。私は『シュリ』で皆さんにお目にかかっていますが、この『オールド・ボーイ』で再び会えて、まるで友人の家に来ているような感じがしています。今回、ミド役のカン・ヘジョンや監督と一緒に来れなくて残念でしたが、また良い作品で日本に来たいと思っています。

ユ:「春の日は過ぎ行く」から2年経ち、この映画で再び皆さんにお会いできてうれしいです。映画を通して良いコミュニケーションを築いていきたいと思っています。

チェ・ミンシク

Q.ミンシクさんにとって記憶に残るシーンはどこですか?また生きたままタコを食べるシーンはどうでしたか?

ミ:この映画はすべてのシーンに愛着がありますが、あえて言うならばラストシーンです。ミドの言葉「愛している、おじさん」に対して、私が演じるオ・デスは果たして記憶が無くなっているのか、それとも記憶を背負って生きていかなければならないのか、と考えさせられるという意味で心に残るシーンだと思っています。
タコについては、韓国人はあれほどの大きなものではありませんが生きたタコを食べることがあります。このシーンはオ・デスの復讐、怒りの気持ちを表しています。

ユ・ジテ

Q.ユ・ジテさんは、脚本を読んでこの役を演じるにあたりどのように感じましたか?

ユ:大変うれしかったです。周りの人達は役者のイメージについて何かと言いますが、私としてはイメージよりも俳優として与えられたキャラクターを一生懸命演じるだけです。

チェ・ミンシク、ユ・ジテ

Q.お互いの印象はどうですか?

ミ:背が高いなあと(笑)。彼は誠実という言葉では足りないほど本当に努力している俳優です。そして年齢を重ねるごとに期待できる俳優だと思っています。

ユ:私を含めて男優の中でもっとも尊敬されている俳優です。彼のようなりっぱな俳優との共演は重圧を感じましたが、この私を受けとめ引っ張ってくれた素晴らしい先輩です。それから私はミンシクさんの顔の皺がうらやましいです(笑)。

Q:最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

ミ:まだ観ていない人には内容は絶対に教えないで下さい。心からお願いします。

ユ:今はインターネットやTVで映画を見ることができますが、この映画は是非劇場で観てください。この映画を観なければ後悔します。



 舞台挨拶の途中、ミンシク演じるオ・デスが15年間の監禁生活で食べ続けたとして映画に出てくる中華料理店「紫青龍」の揚げ餃子が横浜中華街の店で再現され二人に振舞われた。
ミンシクは「私が15年間食べていたのよりグレードアップしている」とリップサービスを忘れない。ユ・ジテも「これを食べたら15年ぐらいは監禁生活に耐えられる」そうだ。

★映画の感想
う〜ん、なんという映画だ。DVDで1度観ているものの、目を背けたくなるシーンのてんこもり。よくぞここまで人間として見たくないところまで、見せつけてくれるものだ。映画の途中、突然に現われる劇画タッチの構図は、遊びすぎ〜!とも思えるし、ストーリーは、理不尽な逆恨みで荒唐無稽。なのに見終わった後、ある種の心地よさを感じてしまったのだ。パク・チャヌク監督の最後まで息をつかせず観る者をグイグイと引っ張っていく手腕はやはり只者ではない! もちろん監督の力量だけではなく、なんといってもチェ・ミンシクのここまでやるか!の怪演と言っても足りないほどの凄まじい演技。そして意外といっては申し訳ないが、そのミンシクと互角に、そして大きな懐で受けとめるようなユ・ジテの細やかな演技と存在感には本当に感心した。そしてストーリーの展開に欠かせない音楽や小道具ひとつひとつが美しく圧倒される。何はともあれ観なくては後悔する1本。私の(今のところの)今年のベスト1である。

return to top

(取材・まとめ、米原 撮影、平國)

[おまけレポート 前夜祭もあった!!]

 初日前夜には、青木さやか嬢が乱入!の舞台挨拶つき前夜祭もありました。メインレポートと重なる部分もありますので、ピックアップしてお伝えします。

司会:ミンシクさんは何度目のご来日、ジテさんは日本に短期留学されたことがありますが、日本にまつわる思い出は?

ユ:私は以前6ヶ月ほど二本に滞在していました。2年ほど前『春の日は過ぎ行く』という作品のプロモーションで来日して、その時韓国に帰るのがなんだかイヤになってそのまま日本に滞在してました。
 私にとってその滞在期間は、非常に大切で無駄に過ごしてはもったいないので一生懸命勉強しました。思い出に残っている場所は新宿です。今後も機会があれば是非また日本に来たいと思っています。

ミ:私と家族ともども日本食、特にラーメンとおそばが大好きです。この映画の中で私が演じるオ・デスという人物は、15年間監禁中毎日焼き餃子を食べさせられていたのですが、もしそれがラーメンとおそばだったらずっと監禁されてても良かったかも・・・。

司会:では、映画のご質問をさせていただきます・・・。

(「ちょっと、待ったー」の大声とともに着物姿の青木さやか入場)

司会:ヨン様、ウォンビン、チャン・ドンゴンとイケメン俳優来日にはかけつけるものの警備員に取り押さえられてしまい、いまだ誰とも会っていないという、青木さやかさんです。

青木:アンニョンハセヨー。(よくわからない韓国語をしゃべる) 訳:私はかっこいい男性をみるとどうしていいかわからなくなります。

ミ:普段から落ち着かないような感じですが・・・・(場内、爆笑)

青木:彼女はいますか?

ミ:私は妻帯者です。・・・・・バイバイ(笑)。

ユ:(小さい声で)オプソヨ・・・(いないですが)

青木:日本女性の印象は?

ミ:日本の女性と近くで接したことはありませんが、非常にいい印象を持っています。礼儀正しくてマナーがいいですね。

青木:その通りです。

ユ:ある人の話によると、結婚するなら日本女性がとてもいいそうです。礼儀正しく、周りの人とも上手く合わせられると聞いた事があります。

青木:ジテさんは、ビジュアル的にはどういう人がいいんですか。

ユ:外見よりも中身が深い方がいいかなと思います。

青木:私・・・?

ユ:(そうじゃ)ナイデスネ(笑&拍手)。

青木:今日は私プレゼントを持ってきました!(でっかいハンマー登場・・・)

司会:ゲストの方が大変困っていらっしゃいますが(笑)、実はハンマーは映画の中で大きなイミを持っているんです。

青木:会場全体がどうしていいかわからない空気につつまれてますが・・・。

チェ・ミンシク、青木さやか、ユ・ジテ チェ・ミンシク、ユ・ジテ

[囲み取材]

Q:お二方に、今日青木さんとお会いになっていかがですか。

ミ:韓国にチョ・ヘリョンさんという女性のコメディアンがいるのですが、少し似ているかなと思いました。非常に才能に溢れている方です。

ユ:悪い意味でなく、ご自身の強い意思が感じられる方だなと思いました。

青木:サイコーの気分です。

Q:映画はいかがでしたか。

青木:復讐のお話なんですが、復讐ってこんなに深いものなのかなって・・・。最後はとても切なくて涙してしまいました。

Q:たくさんの方に映画を観ていただいて、いかがですか。

ミ:本当に幸せなことです。映画作りはいつも大変ですが、特に今回、非現実的な物語をいかにして観客の皆さんに真実味をもって観ていただけるか、それを悩みました。

Q:日本では韓流ブームで、たくさんの女性ファンがいるのですがどう思われますか。

ユ:日本のファンの方々には非常に感謝しております。私達を愛してくださっていますので頑張らなくてはいけないなと思います。

Q:青木さんの着物の印象はいかがですか。

ミ:非常に良く似合っていてセクシーだと思います。

ユ:節制の中の美しさがあると思います。

青木:多少お世辞が入ってるとしても、こういうふうに言ってくれる日本男性っていないじゃないですか。こういうところも韓国俳優が人気がある理由のひとつだと思いますねー。

チェ・ミンシク、ユ・ジテ チェ・ミンシク、青木さやか、ユ・ジテ


★声がとっても素敵(もちろん姿も!)なミンシク氏。ユーモアのセンスが最高でした。少しぽっちゃり気味(最新作でかなり太ったと聞きましたが)のジテ氏は相変わらず誠実さが感じられます。取材終了後「オツカレサマデシター」と日本語で言いながら帰っていかれました。

return to top

(取材・撮影:宮崎、水間 まとめ:水間)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。