女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『マッハ!!!!!!!!』

7月24日(土)よりロードショー

「アクション映画好きなら、この作品を観ないときっと後悔する!」、「ジャッキー・チェン登場以来の衝撃」などといった評判が聞こえてくる 『マッハ!!!!!!!!』が24日よりいよいよ公開されます。 それに先立ちプレミア試写会が行われ、 主演のトニー・ジャーらが舞台挨拶とムエタイのパフォーマンスを披露してくれました。

[物語]

 村を災いから守り信仰を集めていた仏像が、ある晩何者かによって首を切り落とされ、 盗まれてしまった。仏像の奪還は寺院で育った孤児のティンにゆだねられる。 彼は古式ムエタイを武器に、村に平穏を取り戻すため一人闘いの旅に出る。

[プレミア試写会舞台挨拶の模様]

7月18日(日) 15:30〜 渋谷公会堂にて

出席者:プラッチャヤー・ピンゲーオ(監督)、トニー・ジャー(主演)、 プマワーリー・ヨートガモン(女優)、パンナー・リットグライ(武術監督)、 ガッツ石松(ゲスト) 司会:伊藤さとり

 開演のMCの後、照明が落ち、大量のスモークが焚かれる。 その煙の中にピンスポットの下、トニー・ジャーが静かに座っていた。 鮮やかな登場に会場がどよめく。そして演舞が始まった。 その身体は大きくはないものの肌色と筋肉が美しく、そこから生み出される流れるような動きがまた実に美しい。 そして信じられないような跳躍力を見せつけ、会場は更にどよめいた。 2分ほどの彼の演舞で、会場のこの映画に対する期待が一気に膨らんだのが感じられた。

トニー・ジャー

 司会が登場し、トニー・ジャー以外の出席者、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督、 主演女優のプマワーリー・ヨートガモン、武術監督のパンナー・リットグライが舞台に案内され、 一人一人の簡単な挨拶がなされた。トニー・ジャーは10歳からムエタイを学んだという。 彼曰く、現在ムエタイには、1に古式ムエタイという原始的な形のもの、 2にリングで格闘技として行われているもの、3にスポーツとして楽しむもの、 の3種類があるそうだ。そして映画の中では1の古式ムエタイを見せているので、 ムエタイの芸術性、そしてタイの文化を感じて欲しいと述べていた。
主演女優のプマワーリーは初の映画出演で、 しかもヒットしてこんな風に外国にも来られてうれしいと、屈託がない。
武術監督のリットグライは、司会に「一番大変なシーンは?」と聞かれて、 膝蹴りのシーンは危険かつ難しかったと答えていた。

 挨拶の後、トニー・ジャーとスペシャルアクションチームとでムエタイのデモンストレーションをしてもらいましょうという時に、 突然「ちょっとまったー!」の声がかかり、客席横の扉から、なぜか股旅姿でゴッドファーザーのテーマに乗って、ガッツ石松氏が登場。 この映画をビデオで観たと言うことで、「15分に1回のアクションシーンがあって、中盤から後半には感動、感激があって、涙があって、最後には幸せな気持ちになって帰れる、すばらしい映画だね。」とひとしきり映画の感想を述べた後、 半ば強引にトニー・ジャーにも「OK牧場」を言わせていた。 その後、二人でミット打ちをやってみせたのだが、なかなか呼吸が合わず、 ガッツ氏が「監督、トニーって撮影でもこんなに段取りの覚え悪かったの?」 などと言ってみたりする。ガッツ氏はいつものように、数々の迷言を吐いて会場を笑わせていたが、その辺はTVやスポーツ紙の記事に任せよう。ガッツ氏退場の後、いよいよムエタイのデモンストレーションが始まった。これがまた、本当に立っている人たちの頭上を走ってキックをかましたりして、映画の中で見せる技がワイヤーとか無しで出来るんだというのが実感できる、凄いものだった。 映画館にあるこの映画立て看板に「びっくり!!ココまで跳べるか! ヒザ高2m50cm!!」 という表示があるが、本当に彼は跳べるのだ!

トニー・ジャー

 デモンストレーションの後に写真撮影があり、舞台挨拶は終了となった。その後、 ロビーでトニー・ジャーとガッツ石松の囲み取材があった。 司会者の質問の中心はガッツ氏に対してで、おまけにトニーに対して「OK牧場」 の発音練習まで始まったので、トニーの声がなかなか聞けなかったが、 トニーの話を抜粋してお伝えしよう。

トニー・ジャー

司会者  「ガッツさんが賞賛していますが(いかがですか?)」

トニー  「とってもうれしいです。ガッツさんに褒めていただいて、僕も感動しています。 更に日本の方々が僕をこんなに歓迎して下さるとは思いもよらないことでした。 僕はタイのムエタイだけを継承しているのではなく、韓国のテコンドー、日本の柔道、 空手なども習得しています。格闘技を学ぶということは、 身体の訓練だけでなく精神の訓練も同時に行うことが出来ます。 だから僕は格闘技の勉強がとても好きなんです」

ガッツ氏 「何歳なの?」

トニー  「28歳です」

ガッツ氏 「割と老けてんだな」

トニー  「映画を作るのに7年もかかっちゃったんです。 この間に僕は21歳から28歳になってしまいました」

ガッツ氏 「ムエタイの試合はしたことあるの?」

トニー  「ムエタイの試合は5回やったことがあります。よく聞かれることがあります。 なぜリングの上で試合をしないのか。そんなに自信があるなら映画をやっているだけでなく、リングの上で試合をしたらどうかと。それに対しては僕はこのように答えたいと思います。 僕はムエタイの原型である古式ムエタイを自由に映画の中で表現したい思ったんです。 リングの上では自由な芸術というより、勝負の世界になってしまいます。 僕は芸術を或いは文化を映画の中で表現したいんです」

司会者  「最後に日本の観客の皆さんに一言映画のPRをお願いします」

トニー  「日本のアクション映画ファンの皆さんに是非僕たちの『マッハ!!!!!!!』 を見ていただきたいと思います。これは準備期間も含めて7年を費やした、非常に価値のある映画です。 この映画の中で僕は世界の人々に古式ムエタイを紹介したいと思います。 またムエタイだけでなく、この映画を観ることによって皆さんは何か幸せな気持ちになれるのではないかと思っています」

トニー・ジャー、ガッツ石松

トニー・ジャーを写真で見たときは、正直「うーん、イマイチ」と思っていたのだが、動く本人を見ると、予想以上に可愛らしい笑顔だし、受け答えもマジメな性格を伺わせて、いきなり好感度アップだ。映画の方は筆者は未見だが、実は4月に香港に行ったときに上映終了しており、その評判は聞き及んでいた。既に見た香港の友人たちが口を揃えて「面白かった!あのアクションは凄い!」と言うのだ。加えて「仏像を取り戻せ!」というキャッチコピーに表れる単純明快さ、そして彼のデモンストレーションを見て間違いなく素晴らしいアクションが見られそうだという期待感から、この夏必見の映画とお薦めしたい。

『マッハ!!!!!!!!』公式HP http://www.mach-movie.jp/

return to top

(取材・写真:梅木直子)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。