女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

グレーター トウキョウ フェスティバル 2004 トーキョーシネマショー

〜『ターンレフト・ターンライト』『TUBE チューブ』試写会レポート〜

2002年以来、毎年夏に開催されている、スポーツ、音楽、映画、舞台、夏祭りなど、様々なイベントを複合したイベント、「グレーター トウキョウ フェスティバル」。今年は7月1日から9月4日まで約2ヶ月にわたり東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県が協力して様々なイベントが行われてきました。その中の一つとして8月28日から9月2日まで「トーキョーシネマショー」が開催されました。

 我々は『ターンレフト・ターンライト』『TUBE チューブ』の試写会、およびスペシャル イベントとして開催された『シルミド』のカン・ウソク監督と経済産業省の広実郁郎氏との対談と、『TUBE チューブ』に主演したキム・ソックンさんとペ・ドゥナさんによるトークショーに参加させていただきました。対談は1時間半近く行われ、文書にすると長いですが、韓国映画のここ数年の急成長に関して、その中心的存在であるカン・ウソク監督自らが語っているため、大変興味深い内容です。また韓国の人気俳優二人によるトークショーも、よくある舞台挨拶よりも長い時間が取られていたため、より彼らの素顔が覗けて楽しいものでした。

Greater Tokyo Festival 2004 HP >> http://www.gtf04.com/
トーキョーシネマショー HP >> http://www.gtf04.com/pc/movie/01.html

『ターンレフト・ターンライト』試写会

 8月29日(日)「トーキョーシネマショー」の中で、上映された『ターンレフト・ターンライト』に行ってきました。会場は超満員。この作品は、10月30日(土)から新宿シネマミラノほかで公開予定です。

『ターンレフト・ターンライト』(原題『向左走・向右走』)
監督 ジョニー・トウ ワイ・カーファイ
原作 幾米(ジミー・リャオ) 
出演 金城武、ジジ・リョン、林雪ほか

運命の不思議を信じる人に送るファンタスティックなラブストーリー

 詩をこよなく愛す翻訳家イブ(ジジ・リョン)と、ヴァイオリン弾きのジョン(金城武)。二人は運命の人の存在を信じていた。ジョンには右に曲がる癖があり、イブには左に曲がる癖があった。二人はアパートの隣どうしで住んでいるのに、お互いの存在を知らない。アパートの入り口は別々だし、門を出ても彼は右に曲がり、彼女は左に曲がってしまう。運命の人なのに二人は出会えないでいた。
 でも二人は、街の雑踏の中、エレベーター、公園、遊園地の木馬、電車の乗り降り、回転ドアと、知らないうちに街のどこかで、すれ違っていたのだ。すれ違いを繰り返すうち、あるハプニングから、二人はとうとう公園で知り合い、お互いを運命の人と気がついた。出会ってみれば、やっぱりすでに子供のころから気になっていた人だった!
 せっかく会えたのもつかの間、運命のいたずらは続いた。公園で会ってお互いの電話番号を交換したのに、紙に書いた電話番号が雨に濡れてにじんで、わからなくなってしまい、やっぱり、二人は離れ離れ。
 彼に惚れてしまう食堂の女性店員や、彼女に惚れてしまう病院の医者などなど、街のまわりの人たちも巻き込み、いろいろ騒動が持ち上がるが、二人はなかなか再会できない。そんな二人は再会できるのか…。

 この作品は、中国、香港、台湾、韓国で大人の絵本ブームを巻き起こした、台湾の絵本作家 幾米(ジミー)によるベストセラー絵本を元に作られている。いつもと違う方向に曲がってみれば、奇跡がまっているかもしれない。今までの生き方が変わるかもしれない。違う世界が開けるかもしれない。そんなメッセージがこめられた作品である。
 実は、この作品を観ながら中国映画『十字路』を思い出していた。1937年作のこの作品では、主人公の男が隣の部屋に住む女性と、騒音や振動をめぐるトラブルから敵対しているのに、隣の女性の顔を知らず、ほかの場所でその女性に一目ぼれしたことから起こる、すれ違いのおかしさと騒動を描いていた。
 この現代のすれ違いを描いた『ターンレフト・ターンライト』は、『十字路』ほど、強烈ではないけど、ほんわりソフトに、現代のすれ違い恋愛の絶妙さを描いて、さわやかではある。

 正直に言うと、これでもかこれでもかと続くすれ違いの連続に、そんなに観客を焦らさせないで早く出会わせてあげればいいのにとも思ったけど(笑)、金城武とジジ・リョンのキャラクターを生かし、コメディタッチの中にもファンタジックな世界を展開させている作品だった。このすれ違いの妙というのは、ジョニー・トウ監督お得意の世界でもある。

(文: 宮崎暁美)

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『TUBE チューブ』試写会&キム・ソックン舞台挨拶

11月東劇ほか全国ロードショー

 韓国から再びアクション大作がやってきます。監督は『シュリ』の脚本家であったペク・ウナク、主演は『燃ゆる月』で日本のファンにも注目されたキム・ソックンと『ほえる犬は噛まない』『子猫をお願い』でその演技力を高く評価されたペ・ドゥナです。映画はインチョン国際空港でのど派手な銃撃シーンから始まり、息もつかせぬアクションシーンの連続です。都市鉄道公社の協力により、ソウルの地下鉄ジャックのシーンは迫力に満ちています。切なく哀しい『ダイ・ハード』といった印象でした。

[物語]

 ソウルの地下鉄が市長と多数の乗客を乗せた状態で乗っ取られた。犯人は国家機密諜報機関から抹殺されようとした元工作員ギテク。彼は殺された仲間や家族の恨みをはらさんと、政府要人に秘密工作の事実を公開することを要求する。そのギテクを執拗に追う刑事チャン。彼は以前ギテクが起こした政府要人襲撃事件の中で、恋人を失っていた。そのチャンに仄かな想いを寄せるスリのインギョン。彼女は偶然にも地下鉄ジャックの現場に居合わせ、密かにチャンに連絡を取るが自らも巻き込まれてしまう。チャンは危険を覚悟で単身乗り込み、必死にギテクの計画を阻止しようする。一方地下鉄制御センターでは、乗客の命を守るため全力を尽くす職員と、保身のために乗客の命より国家機密保全を図ろうとする政府要人との闘いが繰り広げられていた。人質、爆弾、そしてそれぞれの哀しみを乗せたまま、地下鉄は爆走する。

[キム・ソックン舞台挨拶の模様]

9月1日(水)15:00〜 イイノホール
ゲスト:キム・ソックン 司会進行:田代親世

司会 それではキム・ソックンさん、今日ご来場の皆様に一言ご挨拶をお願いします。

キム皆さん、こんにちわ。キム・ソックンと申します。今日はこれから皆様に『TUBE チューブ』をご覧いただくわけですが、映画の中で主人公を演じております。今回は日本に来ることができて本当にうれしく思っています。

司会 この『TUBE チューブ』、ほとんどがアクションシーンの連続ということなんですけれども、スタントとかはあったんですか?

キム 私はアクションを使う映画やドラマにたくさん出演していて、アクションには慣れていたんですが、今回は100%自分自身ではなくて、私が演じているのは95%です。皆さんどうか映画を観ながら、私のアクションなのか、スタントの部分なのかよく見守っていただきたいと思います。

司会 そうですか。でもほとんどがご自身でやられているということなので、楽しみですね。ハード・アクションということで、そのために何か特別に準備されたり、トレーニングされたことはありますか?

キム 以前私が演じたことのあるアクションというのは、刀を使ったアクションが多かったのですが、今回は刀は一切無くて、素手の拳で殴ったり、足を使うアクションが非常に多かったです。そして監督は華麗な足蹴りのアクションを求めていたので、今回撮影前に2,3ヶ月、とにかく足を使った訓練をたくさん受けました。

司会 ファンの方から聞いたんですけど、この撮影は2年前に行われたということなんですが、まだ腰が痛いというのはその華やかな足蹴りが原因なんですか?

キム はい。これは韓国の格言と言っていいのか、ことわざと言っていいのかわからないのですが、独身男性が腰を痛めると結婚できないと言われています。これは2年前の『TUBE チューブ』のアクションシーンの撮影で怪我をしてしまって腰を痛めたんですが、未だに腰が痛むんです。ですから痛むたびに『TUBE チューブ』の撮影のことを思い出します。

司会 でも結婚できないかもしれないと言うのは、女性ファンにとってはひと安心のような、でも自分にもチャンスが無いかのような、ちょっと複雑ですね。

キム (日本語で)ありがとう(笑)

司会 映画の中でも魅力たっぷりで、恋する方も多いのではないかと思いますが。

キム (かなり照れながら日本語で)ありがとう(笑)

キム・ソックン キム・ソックン

司会 今回の映画、キム・ソックンさんが出演されると言うこと以外にもう一つの注目は、監督が大ヒット作『シュリ』の脚色をされましたペク・ウナクさんということで、監督初作品なんですね。キムさん、このペク監督との出会いのエピソードなどがあれば聞かせていただきたいんですが。

キム 今回ペク・ウナク監督がメガホンを取られたんですが、日本の皆さんもよくご存じの『シュリ』という映画を脚色をされて、また助演出も担当されています。この『TUBE チューブ』で監督としてデビューされたわけですが、私がカン・ジェギュ監督が立ち上げたカン・ジェギュフィルムという制作会社の『TUBE チューブ』の前のフィルムに出演したというご縁がありまして、ペク・ウナク監督とは自然に知り合うことになりました。そして監督は私の大学の3年先輩でもあります。

司会 ご縁があるんですね。そして今回共演されていますのが、ペ・ドゥナさんという韓国でも大人気の女優なんですけれども、彼女の印象はどうなんでしょうね?

キム ペ・ドゥナさんは最初の印象は、飛び抜けて目鼻立ちがはっきりしているとか、可愛いといった印象ではなかったのですが、本当に演技力のある女優さんだと思っていました。今回一緒に共演してみまして、演技に対する情熱にあふれた女優さんで、私は今まで多くの方と共演したのですが、その中でも最も印象に残っています。今回共演できて非常にうれしく思っていますし、今まで共演した女優さんの中で最も一所懸命やる女優さんだと思います。今回日本の映画に彼女が出演すると聞いていますので、その映画も成功してほしいと思っています。

司会 はい、わかりました。それでは最後に、これから『TUBE チューブ』をご覧になる皆様にこの映画の見所を教えて下さい。

キム この『TUBE チューブ』という映画は決して複雑な映画ではなくて、誰が観ても大衆的に楽しめるエンターテインメントの映画だと思います。見所はアクションなのですが、アクションを観終わった後に、最後に深い感動、少し悲しい気持ちになるのですが、そういう思いを皆さん持ち帰っていただければと思います。とにかく楽しんでご覧下さい。

司会 実際、金浦国際空港を封鎖したり、地下鉄の中で撮影したりと、リアル感もたっぷりあるようですから。

キム そうですね。今回は空港で撮影したり、韓国に都市鉄道公社という所があるのですが、そこが協力してくれて地下鉄の中でも撮影できました。なかなかそういった形で撮影することは難しくて、過去にもほとんど撮影した経験は無いですし、今後もなかなか撮影許可が出ないと言われています。良いシーンがたくさん取り込まれていますので、どうか楽しんで観てください。

司会 はい、わかりました。楽しみにしたいと思います。キム・ソックンさんでした、ありがとうございました。

公式HP >> http://www.tu-be.com/

(まとめ・写真:梅木直子)

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スペシャルイベント Part1 韓国映画の秘密を探る

9月2日(木) 10:30〜12:00 イイノホール
ゲスト カン・ウソク(映画監督/シネマ・サービス会長)
     広実郁郎(経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長)

カン・ウソク

広実 おはようございます。今ご紹介いただきました広実(ひろざね)でございます。この二人の格好を見比べていただいてもわかるように、非常に場違いな役人がこの席にいます。なぜ役人がここにいるかというと、たまたま経済産業省の建物が隣で、交通費ゼロ、借金ゼロで来られるからということではありませんで、この会の趣旨が韓国映画そのものの魅力に関すると言うよりは、韓国映画産業界が今本当に元気なので、その秘密を探ってもらいたいと依頼を受けました。産業が元気だから、お金がよく儲かるから、すばらしい映画がどんどん出てくるわけですけれど、なぜこれだけ元気なんだろうか、その秘密をカン・ウソク監督から探り出したいと思っております。今、”韓流”という言葉があります。韓流熱風、熱い風。これは日本だけではありません。我々はよく台湾やシンガポール、中国・上海などに行くのですが、どこへ行っても晩飯の会話は韓国ドラマや韓国映画の話で盛り上がるんですね。ベトナムなんかもそうです。本当に今、韓国のコンテンツがアジアを席巻しています。カン・ウソクさんは日本では『シルミド』の監督として有名なんですが、監督だけにとどまらず、韓国映画産業界の第一人者として高い評価を受けられています。簡単にご紹介しますと、88年に初めて映画を作られました。その後93年にご自分のプロダクションを作られて、”シネマサービス”という会社を持たれた。ある意味では大会社とは全く関係のないベンチャー企業だったと思うのですが、それがあれよあれよと言う間に今や韓国を代表する配給会社、更に制作部門もグループに入っている。また韓国の中でも毎年”映画人No.1”にここ数年ずっと選ばれている、という方であります。”韓国のスピルバーグ”と言われておられます。映画監督というと日本でもそうなのですが、そんな金持ちの人はいないですね。貧乏な方が多いと思うのですが、そういう方がなぜ韓国映画の第一人者となり得たのか?その秘密は何なのか?そのあたりを今日は伺ってまいりたいと思います。
 まず映画に対して、国とか国民がどう思っているのか?例えば日本では映画というのは産業としてみた場合、90年代中頃までは衰退産業でした。多分大学を出て映画会社に勤めますという人は、本当に映画が好きな人だけだったんじゃないかと思います。日本の政府も半導体やロボットなどには一所懸命応援して、皆さんの税金から出たお金を補助金としてどんどんそうした産業の強化に回していましたが、映画に対してはほとんどそうしたことをやってきませんでした。ここ2,3年変わっていますが。ところが韓国は90年代前半に経済危機、IMF危機を迎えたのですが、その頃から映画というものを文化産業の4番バッターとしてとらえるんですね。文化産業を全体として伸ばしていくのだと。映画が韓国の政府・民間を挙げて大事な産業だと注目されてきたわけです。なぜ、そういうことが可能だったのか?それを是非、最初に伺ってみたいと思います。

カン こういった場に私を招待していただいたことに関しまして、まず感謝を申し上げたいと思います。今、質問を受けながら私が何を感じたかと言いますと、韓国の映画産業について誤解が多いのではないかということを感じました。韓国の映画業界が1997年のIMF通貨危機をきっかけとして、その頃から急速に成長し始めたとご理解していらっしゃるようですが、実際はもう少し早かったです。1988年に私が初めて映画監督として仕事をし始めた頃ですが、その当時は私のみならず他の監督や映画に携わる人たちが、映画運動なるものを起こそうではないかという、ムーブメントがありました。どういうことかと言いますと、韓国映画は資金面ではハリウッド映画にかなわないですが、ドラマや頭の中で考えるソフトに関してどごがハリウッドに劣ろうかという考えの元に、絶対に韓国の映画はハリウッド映画に面白さという面では負けないんだ、ということを強調しようということでした。私は元々「すべての映画は面白くなくてはならない」ということを信条にしていますので、一番大きな声でそういった運動に参加していた者だと言えます。その当時は韓国映画がハリウッド映画に勝てるんだということを話しますと、映画産業界の人にも一般の観客の方にも、「ちょっとおかしいんじゃないの」という目で見られてしまいました。そういった当時の感情が起爆剤となり、作品を手がけるようになったわけです。韓国映画は制作費の面では劣るかもしれないが、絶対観客を楽しませる、満足させる作品を創ろうと、私のみならず映画産業界の人々が努力をしてきたわけです。そして1993年に『トゥー・カップス』という作品に出会いました。その時に韓国において興行が、ハリウッド映画および外国映画すべてを含めて一番大きな観客動員数を誇ることができたのです。その頃から韓国の観客たちも、「このくらい面白ければ韓国映画を観るよ。ハリウッド映画は観ないよ」と言ってくれるようになったのです。その時から韓国映画は、ハリウッド映画にも香港映画にも負けず劣らず実力を持つことができるという自信を持ち始めたと思います。
 その当時でも、日本の映画界と同じように、学校を卒業して映画会社のスタッフになるとか監督を目指すというのは、貧しい芸術家としての道を歩むのだという社会の認識があったと思います。ところが私が『トゥー・カップス』を大ヒットさせたことにより、それまで名も知れなかった監督が一挙に有名になり、お金も儲かるようになりました。映画を成功させることにより、監督が有名になりお金も儲かったということでマスコミも大騒ぎしました。映画によってお金を儲けられるという常識を壊すような噂が広がり、このことが若い人を映画に注目させるきっかけになったように思います。若い能力のある人たちが、映画をやれば名誉もお金も手に入れられ、それに面白い仕事ができるのではないかと、魅力を感じるようになってきたと思います。その当時はまだ映画産業は厳しいもので、一年に一本の映画を作るのがやっとという状況でしたので、映画によって稼いだ収益金はすべて映画を作るために投資し、なるべく多くの映画を作るように心がけてきました。
 今でも映画は芸術であるという雰囲気は残っています。つまりほとんどの映画は海外の映画祭に出品して賞を受けるようなことを目標に作られたりします。あるいは監督によっては、「映画が何で金儲けの道具なんだ?海外でもらう賞と自分の作品と何の関係があるんだ?」と言って芸術性だけを追い求め、自分の道を行く監督もいます。そういった雰囲気が産業界に残る当時、私が陰口をたたかれるのを覚悟で言った言葉があります。「海外に出て賞をもらえる映画がお金を儲けられないのであれば、結局は芸術性を追求した映画も作ることができなくなるのだ」と、声を大にして言いました。今はとりあえず商業性の高い映画を作って、韓国の映画産業を活性化させよう。つまり観客の喜ぶ映画を作ろうということです。その中で資金を回すことができるのです。しかし映画の芸術性にこだわる映画評論家や監督、観客、映画業界の人たちは私を大変嫌っていました。お金のことしか頭にない商売人だと。しかし今にいたってその当時私の言っていたことを少しずつ理解してくれているようです。つまり韓国の映画産業界を先に活性化させて、そこから生じる豊かな資金によって芸術性のある作品も作られ、海外の映画祭に出品して賞を取ることもできるようになるということを、理解してくれるようになりました。
 今の発展を見てのことかもしれませんが、一般の人の韓国映画界を見る目も変わってきています。四十代くらいの若い制作者がどんどん輩出され成功してきている姿、彼らがこれまでの十何年間韓国の映画界を発展させようと努力してきた先駆者たちの姿を見て、若い後輩たちあるいは小さな子供たちまでもが、将来の夢は監督になることだ、映画製作者になることだ、あるいは俳優になることだといった夢を持つようになりました。スポーツ選手や芸能人をみて憧れて夢を持つのと同じように、映画監督、映画関係の仕事にも夢を持つようになったのです。このように、韓国の映画界が次世代が責任を持って担っていくというような希望のある業界になってきています。

広実 今のカンさんの言葉はすばらしい言葉でして、我々はよく「クリエーターがフェラーリを買える」といったビジネスモデルになると、若い人間が夢を持ってその業界に入れるのではないかと言います。残念ながら日本ではまだ映画監督は映画を作るたびに借金ができます。フェラーリを買えるのはゲームクリエーターや音楽など一部の業界の人です。我々はそういうことを映画人に言うのですが、必ず嫌われます。映画は作家性が基本だと。これは多分正しい価値観だと思いますが、やっぱり観客を喜ばせることとの両立が産業としての成功につながるのだと思い、今のお言葉に本当に感銘を受けています。
 日本は映画は文化であって産業ではないという声が非常に強いのです。その心は何かというと、文化であるからなかなかお金が入らない。従ってもっと国が映画をもっと支援しないといけないのではないか。韓国の政策もそういう文脈で取り上げられて、韓国は政府を挙げて映画産業をサポートしている。毎年百億円の予算を映画の振興のために使っている。国立の映画アカデミーを作って人材作りをやっている。国が建てた映画のオープンセット、国立撮影所でどんどん良い映画ができる。それに引き替え日本の政府は何をやっているのだと。小泉さんは映画好きなのでよく観られるようですが。とにかく、国の支援をもっと強化すべきではないかという意見がかなりあります。ただ映画というのは表現のビジネスですから、国が支援して成功させるのは方法論としては非常に難しいです。先ほどカンさんは、韓国に対する外からの見方と現実にギャップがあるとおっしゃったのですが、その点が絡むのかも知れませんが、国の支援が映画産業の活性化に最も効果を上げている部分はどこなのか?それとも本当はあまり効果を上げていないのか?その辺の秘密を教えていただけたらありがたいと思います。

カン 今、韓国の映画界が発展しているのを見た海外の人からよく聞く言葉は、政府が支援をしているからこのように発展したんだ、政府主導の元にここまで発展できたのだというものですが、これはとんでもない話で全くそうではないと思います。確かに5年くらい前から多額の金額を映画撮影のために支援はしてくれました。ただ国家がお金を支援することで映画産業が発展するのであれば、ヨーロッパの国はとっくにハリウッドを越える映画産業界を作っているだろうし、どこの国でも映画産業が発展していることでしょう。お金だけでは映画産業が発展するものではありません。政府が取った施策の中で最も大きなものは二つ挙げられます。スクリーン・クオーター制と世論を作り出したことです。この世論というのが最も大きかったと言えます。政府の意志はしっかりしていました。つまり韓国の映画界を絶対に活性化させるのだという、確固たる意志がありました。そこで国民に韓国映画を観てくださいというアピールをしたのです。韓国の映画を観るのは韓国の文化を生かす行為だ、つまり一種の愛国行為なのだというレベルまで、国民の意識を高めていったのです。それと同じ文脈から、スクリーン・クオーター制を制度的な保護装置として作ったというのがあります。スクリーン・クオーター制というのは、全国のどこの映画館でも365日の内の146日は韓国で作られた映画を上映しなければならないという保護制度です。この制度も韓国政府の映画産業を育成するという確固たる意志から生まれた保護制度だと思います。このように、最も効果を上げた部分は国民に対してのアピールで愛情を持って自国の映画を観る世論を作り出したことと、スクリーン・クオーター制だと思います。

広実 国民の映画への思いへうまく訴えかけたことと、映画作りが二つ合わさってうまくいったのだろうと思います。ちなみに今日本にスクリーン・クオーター制は無いですが、興行収入の3割くらいが日本映画で7割が外国、ハリウッドや韓国などの映画が占めています。韓国の方は、スクリーン・クオーター制のためかはわかりませんが、興行収入の5割を超えるのが国産映画。ハリウッド製より韓国映画の方が人気があるという状態です。こういった状況を作り出したのは、映画の担い手、人材ということになるのですが、先ほどカンさんのお話にもありましたように、韓国では非常に若手、30、40代の人たちが監督のみならず、プロデューサー、経営者として大活躍されています。日本では一般的にIMF危機が契機になって、それまで韓国映画を支配していた古い方々が退場し、新しい世代が活躍できるようになった。よく386世代と言って、30代で80年代に大学生活を送った60年代生まれの人たちが、映画に限らず、ITや色々なビジネスの世界で韓国再生の担い手になっているという話を聞きます。こういった我々の見方が本当に正しいのか?系列とか財閥とかいったバックグラウンドを持たないフリーな人間がどうして活躍できたのか?このあたりの秘密を教えていただけないでしょうか。

カン 先ほどのことと若干重複するところあるかも知れませんが、簡単な例を挙げて申し上げます。例えばオリンピックに出ますよね。それまではあまり脚光を浴びていなかった種目にもかかわらず金メダルを取れば、世間が関心を持ち、親が子供にその種目をやらせようという気持ちになるじゃないですか。それと同じようなことだと思います。90年代の初めの頃に私を含め何人かの若い世代の監督が、いくつかの成功作品を出した頃、私たちの行動、結果、これからの映画界に対する意志などを見て、本当に多くの後輩たちがこの業界に押し寄せてきました。その人材は非常に優れた人たちで、良い大学を出て勉強もできる優秀な人たちが、ちょっと苦労してみよう、絶対にやってやるという強い意志を持ってこの業界に入ってきました。私たちは当時、彼らを見ながら、これで韓国の映画界は未来があるぞと、2000年代に入ったら映画界は発展するだろうと希望を見いだしていました。監督やプロデューサーになるのだと夢を持って努力してきた人たちが、今韓国映画産業界を席巻し、沢山の分野で活躍しています。照明や美術などのスタッフにも有力な人材が育ってきています。今業界には数え切れないほどの人材がいて、映画会社だけでも1000を超えます。そして毎年新人監督だけでも40名以上輩出されています。その中から何人かは本当に優秀な監督として息長く活躍しています。これらの沢山の人材は、よく言われるようなIMFがあってからではなく、それ以前から韓国映画に未来を見て自信を持ち、そして夢を持った人たちが映画界に入ってきて、ずっと努力してきたのです。そして今も努力を続けている人たちによって映画界は支えられているのです。

広実 今の点で若干疑問があります。映画制作本数が、日本は毎年300本近く作っているのですが、韓国は意外にそんなに多くないのです。2002年の数字ですと78本、上映本数、これは前後の年も含めているのでしょうが82本。すごい多くの人材が入っている、他方出口の制作現場での本数が増えているとはいえ100本前後である。この辺りは今後どのように動いていくのでしょうか?

カン 例えば日本の高校野球を見てもわかるように、出場する人たちは高校生の野球少年の頂上にいる人たちですよね。その中からプロ野球に入って、更にその中からスター選手になるのは本当のごく少数だと思います。それと同じように、現在韓国には夢を持って映画の仕事に携わる志望生たちが沢山いますが、その中で生き残った人たちは卓越した人たちなので、彼らが将来韓国映画産業を引っ張っていくことになるでしょう。一方働いている内に、自分はだめだと思った人たちは自然淘汰されて業界を去っていくことになるのだと思います。映画産業界はすべての個人をサポートすることはできません。ですから市場が必要とする人材がそこに残ることになり、市場原理によって自然淘汰されていくことになると思います。ただ私が思うのは、非常に多くの人材の中から韓国映画産業界のために、本物の真珠を見つけなければならないのです。俗物のような言い方ですが、強い人が生き残るのであり、生き残る人が強いのです。

広実 初めて映画界の人から市場原理によって人材が育成されるという話を聞いて、大変心強く思っています。生態系のピラミッドのように裾野が広く、その中から優秀な人たちがステップアップして最後にはトップにいける。そしてトップに行ったらちゃんとリターンが受けられる。そういうシステムができれば、産業は本当に伸びていくのでしょうし、日本でも早くそうなれば良いと思います。
 産業として成功するには人が必須、それからお金が集まるんですね。政府のお金もその一部ではあるのですが、やはり民間がこの産業にもっと投資をしたいという声が起こってくると良いものができていくわけです。日本では映画を作るときに“制作委員会”というのがよくできまして、映画の制作会社が一部お金を出し、東北新社さんなどの興行がお金を出し、電通・博報堂といった広告代理店が出し、あとテレビ局が出して3,4億円集めて映画を作り、それを配給して当てると。こういうやり方が多いですね。これはなかなか一人でお金が調達できないので、みんなにリスクヘッジをするわけで、ある意味優れたやり方です。お金を出すのはすべて業界内部の人で、それぞれその後ビジネスができるのです。広告代理店でしたら、映画のPRという仕事を請け負えるなどです。日本ではこうしたやり方が主流です。韓国では投資家がファンドにお金をどんどん出しているとうかがっていますが、韓国映画にとってどういったお金の集め方が今後の発展に役立つとお考えですか?

カン 私は映画に自ら投資をし、その結果についての責任を自ら負ってきましたので、映画というのはそのように動くものなのだと思ってまいりました。しかした最近は映画もどんどん産業化していますので、一人の人や一つの企業が出資するのではなく、ファンドという形で多くの人がビジネスとして投資をするというやり方ができてきました。しかし問題はお金をどう集めればいいかという問題ではないと思います。つまり、投資をする人がどういう気持ちを持ってそこに投資をしているのかという点が問題なのではないかと思います。その作品にどれだけの自信を持って投資をしてくれているかということです。リスクを分散するためにファンドが作られているのですが、投資者の性格の問題であって、システムの問題ではないと思います。日本の映画界においても、その作品にお金を投資することでどれだけ助けを与えているか、助けることでどれだけお金が戻るか、そういった優先順位の問題ではないでしょうか。それから重要なことは、投資家は自分の出すお金がどのような作品を作ることに使われるのか、という点に気を遣って選択しお金を投資するという心理が必要なのではないでしょうか。元々映画というのはお金を儲けるために作られるものではないからです。ですから投資家がその作品に対して愛情を持って支えるという思いが重要なのだと思います。

広実 愛情を持った投資というのは投資家を見つけるのは大変かも知れません。恐縮ですがもう少し具体的例に踏み込ませてください。例えば『シルミド』は韓国で大成功を納めたのですが、制作費も相当かかっていると思いますが、そのような愛情ある投資家をどのように集めたのか、教えていただければありがたいです。

カン 『シルミド』の制作費に関しては全額我が社で負担しました。なぜリスク分散するための努力をしなかったのかという指摘は多く受けましたし、投資をしたいという人もいたのですが、私はすべてそれを断りました。何故かというと、『シルミド』ほどの素材を映画にするのであれば、リスク分散のために投資を募るというのは自分が今まで映画界で生きてきながら言ってきた私の信条と合わないのではないかという考えが浮かんだからです。この『シルミド』には会社が傾いても良いという覚悟で臨みました。実は私の作る映画のほとんどは他社からの投資を受けていません。もちろん一部投資を受けることはありますが、それはリスク分散の目的でも、その作品に不安があるからでも無く、単純に資金が足りないから一部借りたというだけのことです。短期で例えば今年一年で成功しなければならないのであれば、もちろん沢山お金を稼がなければなりませんが、私は過去に置いても現在に置いても将来においても映画に携わっていくわけですから、今年損をしたとしても来年は大きな利益を得ればいいといったスタンスでいつも臨んでいます。作りたい映画を作るために、リスクを避けるために人にお金を借りるようなことは一切しません。たとえ会社が潰れても全額自分が負担するぞというスタンスをとることが多いです。

広実 どうも伺っていますと、カンさんの中には有能なビジネスマンという側面と、非常に強い志を持った映画人という側面が同居されている方じゃないかと感じています。日本でもあまりに作家性が強すぎると市場で良い評価を受けられない、観客を喜ばせられない。他方あまりに観客の方ばかり向いていると作品としての評価が受けがたい。その両立というのは大変難しいことだと思いますが、『シルミド』という作品はそこを非常にうまく両立させてできていると思いました。多分一人の人格の中に二人が同居されているので、どうやってそこをコントロールしているのだろうと素朴な疑問があるのですが。

カン 私はこれまで海外の映画祭で賞を取ろうとか、世界的に有名な監督になろうとか思ったことはただの一度もありません。ただいつも考えているのは、どうやって面白い映画を作るか、どうやって多くの観客を動員させるか、つまり多くの人に面白い映画を観せるかということを求めてきました。私の最終目標は、本当に面白い映画でありながら、完成度も達成されているという映画を作ることです。やはり観客の入らない映画は映画ではないと思っています。これは芸術性ばかりを求めている映画を皮肉っているのではなく、私はこれまでいつも商業性の高い映画を作りながら、芸術性のある映画を作らせてきました。つまり映画界にフィードバックしてきたということです。映画というのものは観客のためにあるものだと思います。それが私の信条です。

広実 今度、カンさんの率いる「シネマ・サービス」は日本の配給市場にも積極的に参入されると発表されています。我々としても日本というマーケットが海外の人にとっても魅力的なマーケットであるということは大変ありがたいことで、どんどん多くの方に入ってきていただきたいのです。現在日本の映画のマーケットは、だいぶ元気にはなってきたのですが、規模を言いますと映画館の興行収入は2000億円、DVDが5000億円なので合わせて7000億円くらいで、産業としてはさほど大きくないのです。トヨタは7兆円ですから。その2000億円のマーケットの70%くらいをハリウッド映画が押さえています。この2000億円のマーケットがこれから増えるのでしょうか?我々は増えることを期待しているのですが。業界の人の話ではそれほどでもないよという方もいて見方がまちまちです。今回日本への進出を決められたわけですが、日本市場の成長の見通し、どういった見通しがあって決断されたのか、その辺りの考えを教えてください。

カン 私の作った映画が日本の方々に観られるようになったのは、1993年からのことでした。それから作品ごとに試写会を持つたび私が感じるのは、どうしてこんなに韓国での反応と同じなんだろう、泣くポイントも笑うポイントも本当に同じだな、ということです。言語が違い、文字が違っても、韓国人も日本人も同じ国の人のようだと感じています。つまり日本の市場というのは韓国と同一市場だと考えても間違いはないと考えています。今回「シネマ・サービス・ジャパン」を設立する決定を下したのは、日本市場を拡大する一助をしたいということもありますが、日本の映画産業界への刺激剤になればという望みもありました。日本映画産業界が刺激を受けてかつてのような活気を取り戻せればと思っています。そして沢山映画が作られて、今韓国映画が日本に上陸しているように、日本映画が韓国に沢山上陸してほしいと思っています。そうすることで両国の映画市場が発展し、ハリウッドを押さえ、アジア市場を席巻することができるのではと望みを持っています。ですから皆さんにも申し上げたいのですが、日本の映画を日本の観客がもっと愛し、もっと支援して盛り立てていって欲しいと思います。そのためにも、韓国と日本の映画界の交流をもっと推進し、共同制作あるいは共同投資誘致といった機会をもっと持ってもよいのではないかと思い、今回その拠点として会社設立を考えたわけです。

広実 確かに仰ったように日本と韓国はよく似ていまして、私も去年初めてカンヌ映画祭を観に行ったのですが、日本映画も韓国映画も試写をやっていますが、お互いに日本映画の試写を一番観ているのは韓国の方ですし、韓国映画の試写を一番観ているのは日本人で、何でわざわざカンヌまで行って観なきゃいけないんだろうと、素朴な疑問を感じました。今後は良い刺激材料というだけに留まらず、パートナーとなっていけば我々も大変ありがたいと思います。他方、ようやく日本映画も最近元気になってきて、リメイク件の欧米へのビジネスとかかなり増えてきているのですが、残念ながら韓国マーケットでここ2,3年大ヒットが無いように思います。韓国政府も徐々に対日文化制限を緩和してきて、もう一部のアニメを除いて制限は残っていません。逆に解放されたのに韓国で日本映画がヒットしていない。テレビ放送もケーブルや衛星放送で解禁されたのですが、日本の番組がそれほど視聴率を稼いでいない。もう少し韓国で日本のコンテンツを観ていただけたら、韓日交流のために良いことだと思うのです。日本の映画が韓国でもっと成功する秘訣を教えていただけませんか?

カン 特別な秘訣は無いと思いますが。解禁になった時、それを歓迎する動きがあったと共に心配する向きもありました。韓国市場が侵されるのではないかと心配する向きが映画産業界の中ではありました。ところが日本映画が韓国国内で公開されるようになった時、少しホッとしたというのは事実です。と言うのは、映画を観ると本当に良く作られているのです。しかし若干娯楽性、面白さが足りないと感じました。芸術性というか、照明など撮影に関する様々な技術は本当に素晴らしく、美術的な感覚も素晴らしいのですが、やはり娯楽性が足りなかったのではないかと思っています。つまり韓国の観客のセンスと日本映画の美点が合わなかったということです。その理由として思うのは、日本の国民はあまりにもハリウッド映画ばかりを愛しているのではないか、あまりにも自国の映画に対する関心が薄れすぎているのではないかということです。私は日本の映画界のために一つアドバイスをしたいと思います。それは日本の映画界でとにかく早く一人スター監督を輩出することです。つまり日本の映画監督と言ったら誰もがあの人だと思い浮かぶような人を一人作り出すことです。どういった社会に置いても、皆を引っ張っていくリーダーの存在が必要です。それができるスター監督を早く輩出して欲しいと思います。今、韓国で日本の映画監督といえば、昔活躍された黒沢明監督や大島渚監督といった一世代前の方の名前は良く出てくるのですが、今活躍されている監督といいますと、私個人としては岩井俊二監督ぐらいしか浮かびません。彼の作品『Shall we ダンス?』が韓国で上映されたとき、「本当に素晴らしい作品だな、これからが期待されるな」と思ったのですが、今韓国の人たちに「岩井俊二」という名前を出しても誰も知りません。既に一度忘れ去られているのです。ですから日本の映画界の復興のためには、アジアに置いて名前を出せば「あぁ、あの監督」と思い出せるような監督を早く輩出してください。
 (※多少混乱があったようです。岩井俊二監督は『Love Letter』『Shall we ダンス?』は周防正行監督の作品です。カン監督が話されているのは、どちらなのか定かで無いです。)

広実 貴重なアドバイスをありがとうございました。確かに岩井さんの作品『Love Letter』が韓国でヒットして以後、あまりヒット作がないですね。これからも是非自由競争しながらお互いの国の映画が強くなって、更にお互いの映画を両国民が観て、文化交流、互いの尊敬と理解が深まっていけばありがたいと思います。ちょうど時間になりました。本日は本当にどうもありがとうございました。

(まとめ・写真:梅木直子)

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スペシャルイベント Part2 韓国スターの素顔に迫る

9月2日(木) 12:00〜12:30 イイノホール
ゲスト キム・ソックン、ペ・ドゥナ 司会進行:田代親世

司会 お二人は日本は何度目なのですか?

キム 私は4回目になります。北海道に2回、残りの1回は東京ですが、数年前に東京国際映画祭のために日本を訪れました。

  私は結構来ていまして、今回で9回目くらいになると思います。撮影のために来たこともありました。雑誌の撮影では北海道にも行ったことがあります。東京には何度も来ていて、日本を旅行するのはとても好きです。

ペ・ドゥナ、キム・ソックン

司会 キム・ソックンさんの数年前というのは、2000年の『燃ゆる月』という映画の舞台挨拶だと思うのですが、その時と比べて今日本では韓流が巻き起こっているのですが、今回来日してその時との違いを肌で感じることはありますか?

キム 今回『TUBE チューブ』という映画のプロモーションのために来ているのですが、インタビューを受けた中で多くの記者の方が最近の韓流についてどう思いますかという質問をされました。確かに韓国の映画やドラマが日本で紹介され、高い評価を受けていることは非常にうれしく思います。その反面少し心配もありまして、この韓流ブームを良い意味で続けていくためには、水準の高い良い映画がこれからも紹介されていく必要があると思います。数人の俳優の名前だけでドラマの内容が伴わないようなものがあまり紹介されてしまうと、ブームが短い期間で終わってしまうのではと気がかりです。

司会 厳しいですね。冷静なご意見でしたけれども。ペ・ドゥナさんは元々日本の大衆文化がすごく好きだったとお聞きしていますが、そんな中で今日本が逆に韓国のことを大好きな状態になっているのですが、そういった状況に関してはいかがですか?

  日本文化すべてが好きだというのは誇張されて伝わっているかもしれません。私が好きだったのは高校生の頃、日本の音楽が大好きで良く聞いていました。ただ当時は日本文化が解禁される前でしたから、日本の音楽が入ってくること自体が違法ということになってしまい聞く機会が無かったのですが、関心があったので色々探して、“Mr.Children”とか“安室奈美恵”さんの歌を良く聴いていました。音楽には関心があったのですが、日本文化全体についてはまだ知らないことが沢山あります。しかし韓国でも日本文化が解禁されて、日本の映画やドラマが入ってくるようになりました。今お互い両国が良い意味で良い効果を作用し合って出しているのではないかと思うので、現状は非常に満足しています。しかし韓国ブームと言われているからには、“ブーム”という言葉はいつかは終わるという意味が込められていると思います。しかし終わらずにお互い手を取り合って両国が発展して欲しいと願っています。

司会 そうですね。それにはお二人が出ている映画やドラマがその一翼を担うのではないかと思います。さてお二人が出演した『TUBE チューブ』ですが、本当に凄いアクションで手に汗握る展開だったのですが、この作品はお二人にとってどういった思い出、印象が残っている作品なのでしょうか?

キム 『TUBE チューブ』はアクション映画ですが、私はこの作品の以前にもアクション映画やドラマに出演した経験がありましたが、この作品ほど肉体的に過酷だった撮影はないです。これからも色々な作品に出るでしょうが、これほど大変な撮影はないのではないかと思えるほど、本当に肉体的に苦労したという記憶が残っています。

司会 アクションが大変だと仰っていますが、普段からそれに対応するように鍛えていらっしゃるんですか?

キム 実は私は普段運動やトレーニングをしない方です。俳優というのは映画やドラマの作品ごとにそれに備えてトレーニングをするものですが、私は特にアクションものをやっていたので大丈夫かなという思いがありました。しかしアクションは体力もさることながら、かなり難易度の高い技術が必要とされます。だからその体の動きというよりも、技術を身に付けることに時間をかなり費やしました。そして監督も、私はアクションには自信があると言ったのですが、それ以上の高い水準のものを目指したいと仰ったので、撮影に入る前に一層難易度の高いトレーニングを数ヶ月にわたって積みました。

司会 その成果を皆さんにこの『TUBE チューブ』という作品の中で観ていただきたいと思います。

キム (日本語で)ありがとう。

司会 さてペ・ドゥナさんにとってはこの作品はどんな作品だったんでしょうか?

  この作品に出る前は、実はメロドラマやラブストーリーに挑戦したことがなかったんです。誰かを愛して心を痛め、涙を流して愛する人を見送るという役は今回全く初めてだったので、私にとってはメロドラマへの挑戦という意味合いを持っています。その結果としてのこの作品は、自分としてはとても満足しています。この映画の中の恋愛は韓国の人の感情を上手く表していると思います。非常に切なく、観ていると心が痛むような感情が描かれています。作品の規模としても初めて大きな作品に挑戦しました。アクション大作というのは初めてで、とても良い経験になりました。今までは小規模な、インディペンデントとまではいきませんが、日常生活を描いた作品が多かったので、超大作に出演したと言うことも一つの挑戦でした。

司会 中性的でいながら、とても女らしい哀切がにじみ出ていたと思うのですが、監督からこんなイメージでやって欲しいというような注文はあったのですか?

  監督とは色々なことを話し合いました。ただ撮影は今から2,3年前に行われたので、詳しい記憶をたどるのに時間がかかってしまいます。撮影そのものは10ヶ月から1年かけて撮った作品です。私が感じたインギョンという人物は、陰があってか弱いけれどもクールなイメージでいったらどうかと思い、監督に提案したのですが、監督の考えは違っていて、あくまでも切なく女性らしさを際だたせて演じて欲しいと言われました。もう少し詳しく思い出せると良いのですが。

司会 ありがとうございました。さてお二人は映画、ドラマ、演劇と多方面でご活躍ですが、この3つの分野は仕事する上で心構えの違いや、仕事のやり方の違いなど、どんなものがあるのか教えてください。

キム 心構えとしては3つの分野すべてに置いて違いはないと思います。ただ分野ごとに仕事の進め方、スタイルの違いはあると思います。私は大学の時に演劇を専攻していて、テレビや映画に出演するという考えは全く無かったのですが、運命が私を映画やドラマに導いてくれたのかなと思っています。3つの中で一番落ち着いて気楽にできるのが、やはり演劇です。演劇のスタイルが私の性に合っている気がします。しかしそれぞれに良い面があり、いずれも良いとは思うのですが、映画は特徴として演技が非常に難しいということがあると思います。演劇やテレビよりも非常に凝縮した演技を求められます。何故かというと映画は画面が大きいので細部にこだわって、細かい部分まで演技しなければならないということがあります。テレビの方は、日本と韓国ではドラマの作り方が違うと聞いているのですが、韓国ではドラマ作りのシステムや環境は劣悪なところがあり、俳優たちは準備する時間があまり無く、台詞を覚えたらすぐに出演しなければならないといった大変さがあります。いずれも非常によい媒体で魅力もあるので、私は一つに特化するのでなく、三つとも満遍なく出演していきたいと思っています。

  私もキム・ソックンさんと同じような考えです。どの分野でも変わらず自分を励まして、気合いを入れて臨んでいます。それぞれ魅力のある分野だと思いますし、私も一つの分野だけにこだわりたくないと思っています。今はドラマよりも映画の方が主になっているのですが、ドラマをやるときはあまりにも忙しすぎて眠る時間もないので、体力の限界に挑戦しているなという気持ちでドラマをやることが多く、自分が消耗されていくのを感じます。そうした意味では映画が一番居心地が良いと感じてしまうのですが、現場が家族のような雰囲気で、スタッフは私がベストを尽くせるように環境を作ってくれるので、ちょっと私がワガママを言ってもそれに合わせて環境を整えてくれるという良い点があると思います。今回日本にいるのは、この仕事の他に『リンダリンダリンダ』という日本映画に出演するためなのですが、来る直前に生まれて初めて演劇の舞台に立ちました。そして演劇というのも凄く魅力があると改めて認識しました。俳優も舞台に上がってしまえばスタッフの一人になるのだということを知り、本当に良い経験をしました。これからも三つの分野を平行してやっていきたいと思っています。

ペ・ドゥナ、キム・ソックン  ペ・ドゥナ

司会 二人のお話を聞いていると、特にドラマなんかとても過酷なのだなという状況がよくわかりますが、そんな中どの様に気分転換をしながら仕事に臨んでいるのですか?

キム ドラマに入ったら苦労の始まりだという覚悟でやっています。

  人間というのは何か難しいことをやり遂げた後の喜びが非常に大きいと思います。ですから私もドラマのワンシーンが終わるたびに出来るだけ喜びを感じようとしています。疲れている時ほど喜びを感じるようにしていて、自分をマインドコントロールしながら撮影をしています。先ほど挙げたのは、少し大げさに聞こえたかも知れませんね。映画や演劇に比べるとやはり少し劣悪な部分もあるのですが、ドラマも非常にやりがいがあると思います。

司会 キム・ソックンさんは、次はまたその過酷なドラマだと聞いているのですが。次の作品の予定など教えていただけますか?

キム 確かに次の出演作は映画ではなくドラマが決まっているのですが、今ここに座っているこの瞬間でさえ不安なんです。帰って撮らないといけないと思うと気分が暗くなってしまうのです。そう考えると、もしかして自分はドラマは性に合わないのかなとも考えなくはないのですが、俳優という仕事を持った人間は自分一人だけの存在ではないと思います。常に大衆と呼吸をして、大衆と一緒に生きていかなくてはならないと思いますので、自分がやりたい仕事、自分が出演したい作品だけに出ていてはだめだと思うのです。大衆の皆さんが望むものに出ることも必要なのではないかと思います。もし自分がやりたいことだけをやっていたら、疎外された人間のようになってしまうのではないかと思います。いずれの分野も大衆芸術だと捉えていますので、そのことを常に念頭に置きながら活動しています。でも帰ったら本当にすぐにドラマに入らなくてはいけなくて、今回は放送回数も長いドラマですので、日本に来ているこの間にもシナリオを見たりしています。

キム・ソックン ペ・ドゥナ

司会 とても素直な感情を出してくれて、とても親近感が持てますね。ペ・ドゥナさんは先ほども仰ったように次の作品は日本映画の『リンダリンダリンダ』ということで、これはどんな物語でどんな役柄なんですか?

  『リンダリンダリンダ』は女子高生が「ブルーハーツ」というロックグループのコピーバンドを結成して高校の学園祭で歌う、その三日間を描いた映画です。私の役は韓国人の留学生で、高校三年生に留学してくるのですが、来たばかりでまだ友達となじめなくて、日本語も下手なんですが、ひょんなことからバンドに入ることになり、日本のみんなと馴染んでいく姿が描かれます。

司会 公開されるのがとても楽しみですね。これから撮影なんですよね?

  はい。クランクインは9月9日です。

司会 そういうことで、どこか街中でペ・ドゥナさんの姿を見かけることが出来るかも知れません。今日はお二人ともお忙しい合間を縫ってトークを披露してくださってありがとうございました。

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(まとめ・写真:梅木直子)
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