女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『21グラム』アレハンドロ監督、ベニチオ・デル・トロ来日!

 人間は死ぬ瞬間、21グラム分何かを失うらしい。その21グラムとは?

 余命1ヶ月と宣告され、生きるために心臓移植の順番を待つポール、夫と娘2人で幸せな家庭を築いているクリスティーナ、信仰を心の寄り所としながらも、常に罪の意識に苛まれている前科のあるジャック。映画『21グラム』は、ポールの心臓移植をめぐって、それまで見ず知らずだった男女3人の過去と現在の断片を、まるでジグソーパズルのように交錯させ、そしてそれらがぴったりとハマッた時、決して重いとはいえない21グラムの本当の重さに気づかされる。監督は、初監督作『アモーレス・ペロス』でカンヌ映画祭グランプリを獲ったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。ポールには、今年のアカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞したショーン・ペン、クリスティーナには、本作で主演女優賞にノミネートされたナオミ・ワッツ。そしてジャックを演じるのは、同じく本作で助演男優賞にノミネートされたベニチオ・デル・トロ。今回この『21グラム』でベニチオが監督と共に初来日(監督は2度目)を果たし、記者会見が行なわれた。

ベニチオは、サングラスをカチューシャのように髪に留め、うっすら不精ひげ、正直言うとあまりスマートいう感じではない。打てば響き、映画のことを語らせると止まらなくなってしまいそうな監督に比べると、朴訥とした人という印象。実際、彼はプエルトリコ出身で英語は母国語ではないそうだが、自分の気持ちを正直にきちんと伝えようとする様子から、実直な人柄であることがよくわかった。

(以下、記者会見抜粋)

Q. 演技および演出をするにあたって難しかったシーンは?

ベニチオ: シンプルに見えるシーンが一番難しい。例えばトラックから降りて子供と妻に挨拶をするシーンなど。ドラマチックで緊張感のあるシーンはそれなりに心積もりができていて準備もできるが、このような何気ないシンプルなシーンこそ難しい。

監督: 子供を使ったシーンが一番難しかった。なぜなら子供達の集中力を維持させる作業がとても大変だったから。ただ子供がいるシーンで気に入っているものは、私が「(大統領の)ブッシュシーン」と呼んでいるベニチオが子供の頭を叩くところである。このシーンでベニチオが演じる人物の複雑な矛盾に満ちた人格がよく表現されたと思う。

Q. 撮影に入る前に、役柄についてどのような研究をしたのか?また監督はどのようなアドバイスをしたのか?

ベニチオ: 脚本は映画の流れ通りに書かれていて、非常に複雑だった。自分の役柄を理解するために役柄が辿った旅路を読み込み、監督が何を求めているか理解すると同時に、監督に私がどこに行こうとしているか理解してもらうために話をした。また、子役に対して暴力的なシーンもあるので、演技であることを子供達に理解してもらうために1週間ぐらいいっしょに遊んで楽しい時間を過ごすようにした。

監督: 監督として行なったことは、俳優が私に何を求めているかを理解して、質問に答えていくということだった。必要な情報を与え、彼らが何をしようとしているのか理解するということに力を入れた。ベニチオは探求心のある俳優なので、彼の質問に答える中で、私や脚本家がインスパイアされて脚本に加えることもあった。


 21グラムを残されて生きる人間にとっては、タダの21グラムであるかもしれないし、重い重いものであるかもしれない。いずれにせよ人生は続いていくのだ。

『21グラム』は6月5日(土)より、丸の内ピカデリー2他全国松竹・東急系にてロードショー

記者会見

ベニチオ・デル・トロ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督
ベニチオ・デル・トロ(左)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督




ベニチオ・デル・トロ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督
ベニチオ・デル・トロ(左)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督




ベニチオ・デル・トロ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督
ベニチオ・デル・トロ(左)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督










試写会舞台挨拶

ベニチオ・デル・トロ
ベニチオ・デル・トロ




ベニチオ・デル・トロ
ベニチオ・デル・トロ




ベニチオ・デル・トロ
ベニチオ・デル・トロ




ベニチオ・デル・トロ
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督




return to top

(文・写真:HIROKO YONEHARA)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。