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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

(2003/03/23掲載)

「3rd Encounter EASON Concert」

2月16日から22日まで、7日間に及ぶ(イーソン・チャン陳奕迅)のコンサートが紅館 (香港コロシアム)で行われた。紅館での大型コンサートは3度目だが、 休業中だったニコラス・ツェー(謝霆鋒)が本来おさえていた会場の枠を、 今回急遽使うことになり、突然のスケジュールにファンをあわてさせた。 「間に合うのか〜?!」

紅館1度目のステージは、「自分の部屋」。2度目は「遊園地」。 毎回テーマを決めて舞台設計を作り上げるイーソンの舞台、 今回のテーマはでこぼこなコンクリート地面の「廃墟」だった。 ワイヤーが飛び出ていたり、廃棄されたテレビがそこら中に置かれ、火花が散り、 ほこりのようにスモークがたかれ、異星のような雰囲気。 そこへ唯一の生き残り地球人(?)のイーソンが現れ、初っぱなからアカペラで、 オペラ『フィガロの結婚』アリアを歌い出して、コンサートは始まった。うまい……。 彼の歌がうまいのは、わかっているけれども、うまいとしか言いようが無い。 第一声で会場中がイーソンにもっていかれた。 照明装置を自分の頭ぎりぎりの位置まで下ろして円盤に見立てたりと、見た目にも楽しい。 イーソンはいつものように、相変わらずステージを走り、休みなく動き回り、汗だくになって歌う。 それなのに音程は絶対狂わず、乱れない安定したボーカル。

そして廃墟の中に置かれたピアノに向かい、「エリーゼのために」をぽろぽろと弾いて、 続けてその曲がモチーフとなっている『給愛麗欺』を歌ったり、アコーディオンを弾いたりと、 彼自身、楽器も弾きつつ歌う。

香港のコンサートにつきもののゲスト出演は、前回に引き続き今回もなし。 彼の自分の歌だけを聞かせるコンサートにしたい、との意向で、MCもほとんどなし。ただ、 唯一のゲストミュージシャンが登場。 イーソンとアルバムなどで一緒に創作活動をしているタン・ハンジン(陳奐仁)である。 クィーンの『Bohemian Rhapsody』のカバーから入り、続けてイーソンの曲を歌い、 コーラスを重ね、ラップを入れる。 ハンジン自身の声や音楽の才能・感性もすばらしく、観客はしばらく息を呑んで、 ふたりのかけあいを見守っていた。 終わった時の、ウォーという歓声が紅館中にこだまして、一気にボルテージがあがった。

アルバム曲にアレンジをほどこしたものも数曲あり、そのうちの『黒夜不再来』などは、 鳥肌がたつほど素晴らしく、口をただポカンと開けて、聞き入るしかなかった。 一体あの声はどこから出てくるのだろう(もちろん体型も関係あるでしょう……)。 今回のコンサートのためにやったダイエットは成果が見られた、とはいかなかったが、 一応体力づくりは努めたようで、「肥仔〜」と言われても「いやいや痩せたでしょ〜。」 とシャツを胸までペロッとめくったりもしていた。決して自分を飾らず、 素の自分をいつも見せているので、観客も友達のようにイーソンに話しかけている。 会場は男の子が多い。

歌い進めていくと、廃墟に雪が降ったり、一輪の花が咲いたりと、 まるでイーソンの歌でだんだん大地が回復していくかのような様子で、 最後にはいろんな生き物の命が生き返ったかのごとく、 いろいろなコスチュームを着た被り物チームが登場し、イーソンと一緒に舞台を跳ね回っていた。 もう観客も座ってはいなかった。下から上まで総立ちで踊り叫びまくる。 紅館中がうなって、地響きが起こっているかのような歓声だった。 その後、あの香港人たちが(失礼!)バラードになっても座らず、 立ち続けていたのにはびっくりした。

コンサートは、一回おおよそ3時間、曲数は40曲ほど。 今回はイーソンの音楽性の幅広さを再確認した。 衣装替えで3度舞台を降りる以外は、ずっとステージ中を走り回っていた。 実を言うと、イーソンの体調は悪かった (どうやら、コンサート終演後はレコーディングを続けていたらしい。 信じられないスケジュール……)。 それでも最後まで声量が落ちなかったイーソンは本当に素晴らしかった。 娯楽性を先行させる香港において、あくまでも音楽性を追求する姿勢は、 どこかで妥協しなくてはいけない部分もあろうかと想像に難くない。 しかし、イーソンの実力なら、自分のやりたいようにやり遂げられるであろうし、 心をこめて歌うその真摯な姿勢はいつまでも持ち続けて欲しい。 イーソンは歌う事が本当に好きなのだから。

最後に、衣装と髪型については、沈黙させていただきます(笑)。

(葉月夏生)

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