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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『友へ チング』完成披露試写会へ行ってきました!

 「待ち焦がれる」というのは今日のような気持ちの事を言うのだろう。
 韓国の俳優、ユ・オソンの大ファンである私 (53号でも熱く語っています)は、 昨年4月にソウルでこの映画を言葉もわからずに観た。何と言っているかわからないが、 ユ・オソンの演技とこの映画の力強さに魅了された。韓国で観客動員歴代1位となり、 日本でもどこかの映画祭で上映されるだろうと思っていたがされず、 がっかりしていたのだが、とうとう日本語字幕つきが観られるのだ。

 映画の舞台は釜山。70年代、消毒車がまく煙を追って遊ぶ子供達の中に 四人の男の子がいた。ヤクザの息子ジュンソク、葬儀屋の息子ドンス、優等生のサンテク、 お調子者のジュンホ。仲が良く、Hビデオをみたり泳ぎにいったり楽しい子供の時間を 過ごしていた。
 80年代、高校が同じになった四人は、相変わらず仲良くしている。初恋やケンカ、 先生との衝突…。他校の生徒にからまれたサンテクを助けて大乱闘となり、 もともとワルだったジュンソクとドンスは退学、ジュンホは転校、 サンテクは停学になってしまう。
 その後、サンテクとジュンホは大学生に、ジュンソクとドンスはヤクザとなり 思いもかけない未来を生きていく事になる…。

 はっきりいって、この映画に目新しい要素はない。ヤクザものでは良くある話かも しれない。暴力シーンは過激だし、あまりにベタだという意見もあるだろう。 でも、心をグッとつかまれるのだ。ラストでは男泣き(女性でも)してしまうのである。

 主人公のキャラクターがしっかりしている。ヤクザの息子で、そこにしか 生きる道がないジュンソク。普通の家庭で優秀に育ったサンテクがうらやましく、 そういう友人がいることを心の拠り所としている。母親が死んで ヒロポン中毒になってしまったり、サンテクに歳をとってヤクザが出来なくなったら 個人タクシーをやらせてくれると約束しろと懇願したり、本当は強くない男なのだ。 父親も亡くなり、やっていくしかないと腹をくくってからは子分から慕われる 頼れるアニキとなっていく。

 貧しい葬儀屋の息子ドンスは、家の仕事がイヤでたまらない。 小学生の時から信頼を寄せ、常にそばにいたジュンソクはいつもサンテクばかり 大事にしている。学校も退学になり刑務所にも入ってしまった。 ヤクザになって稼いだ金を父親に持っていっても「そんな金は受けとれん」と言われる。 誰も自分を受け入れてくれないという思いを持っていてひねくれている。 そしてジュンソクの組織と対立している組織へと入ってしまうのだ。

 ジュンソクを演じるユ・オソン、ドンスを演じるチャン・ドンゴンが キャラクターに同化していて素晴らしい。特に今回字幕版を観て、 ドンスがとても良かったと思った。 (韓国語版ではユ・オソンを目で追うのに精一杯だった) いつも怒りにみちているが、心の底では子供時代の思い出を大事にしている寂しい男が合っていた。

 二人ともいいやつなのに何でこんな事になってしまったの…と思いっきり感情移入して 観ていたら、ラストは涙なしでは観られない。実際、ラスト近くではすすり泣きが していたし、後ろの男性は号泣状態だった。

 完全に男の友情物語なので、女性は敬遠するかもしれないけど、 彼らのピュアさに泣けます。ちょっと男ってものがうらやましくなります。 ユ・オソンの男気とチャン・ドンゴンの影ある色気に心奪われます。 恋愛映画だけでなく、たまにはこういう映画もいいですよ。 

東宝東和株式会社

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(文:水間かおり)
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