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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
Sept. 17, 2001

『イルマーレ』ふたりトーク

松下: 面白かったねー。なんだか感想を人に話したくなるような映画だった。観終わってすぐ「うー、水間さんと話したい」って思ったよ。私は恋愛映画には厳しくて、観てよかったなと思えるものが少ないんだけど、この映画は信じがたい設定なのに、すんなり話に入っていけたのが驚きだった。親に捨てられたとか、恋人が留学先で心変わりしたとか、使い古されたネタにもかかわらず嫌味に感じないし・・・・・。描写があっさりしてたからかなあ?

水間: 韓国映画では珍しく、濃くないというか・・・・・。普通だったらもっと泣かせるとか熱い友情や恋愛がでてくるんだけど、これはホントにあっさりしていた。でも観終って深い余韻が残るのよね。すごく繊細に作られていると思った。

松下: 作りがすごくきれいだよね。イルマーレなんて、特に黄昏時は素敵だし、料理のシーンもおいしそうだった。あと済州島の海もきれいだったし、遊園地や5歩ずつの間隔で木が植わってる散歩道はもちろん、ウンジュがいつも座る駅のベンチ、留学前に最後に会った喫茶店、大学までも印象に残ってるのはすごい。デートムービーになるのも頷ける。カメラマンは『反則王』のホン・ギョンピョなんだよね。

水間: 監督(イ・ヒョンスン)は大学の視覚デザイン科卒業で、他監督の作品のアートアドバイザーを努めたりするらしいよ。ひとつひとつのシーンがポストカードみたいにキマッているのよね。でもただ映像だけに凝っているんじゃなくて、主演の二人の心情もじっくり描かれていたのがよかった。それも手紙で。手紙の書き文字って(ハングルだけど)なんかその人の性格が現れていると言うか誠実なソンヒョンはかっちりした字だったし、ウンジュは若い女の子らしく丸っこい字だけど、一生懸命思っていることを伝えようとしているのがわかる感じがして、そんなとこでも丁寧だなあと思った。だから時間がずれているという設定がそんなに変に思わなくなってくる。その設定ならではの話の展開にはなってくるんだけど。

松下: そうそう、手紙っていうのもいいよね。あれがメールだと『ザ・コンタクト 接続』みたいに、もっとクールなタッチの話になっちゃう。

水間: メールが主流の今だからこそ余計にぐっとくる。「あーハングルが読めれば」と思った。

松下: 主演の2人もよかったね。よく考えるとさわやかすぎるけど、映画の雰囲気にははまってた。イ・ジョンジェもフェロモンを隠して、なんだかとっても人畜無害みたいな感じだったわ(笑)。コーラ役の犬も『變臉 この櫂に手をそえて』の猿に匹敵するくらいの名演技だったよね。ウンジュ役のチョン・ジヒョンってスー・チーに似てない?

水間: この映画のジョンジェのことを語ったら長くなるわよ(笑)。最初の方でコーラを抱き上げて笑った顔でもういっきにその魅力に引きこまれてしまったわ。笑うと細い目がたれてすごくかわいいのよね。料理する姿もさまになってたし。なぜか良く服を着替えていたわよね。おなかが引き締まっているのよー。(どこをみているんだ、いったい)あと、とにかく私はこの人の「手」に惚れているので、手の動きに注目してました。チョン・ジヒョンもあんまりお化粧もしてなくて、済州島でのびのび育ったコが、仕事や恋愛に悩んでいる等身大の感じが良かったと思った。スー・チーよりもかわいいと思うけど・・。

松下: スー・チーよりも色気はないけど、角度によってはかなり似てるように見えたよ。田舎から出てきて、声優を目指して頑張ってて、それで売れてはないけどいちおう夢を実現した女の子という設定は、感情移入しやすいよね。映画でのジョンジェを見るのは初めてで、役柄もあってかけっこうグッときた。耳当てしてる姿なんてかわいかったし。でもいま私のいち押しは『ロシアン・ブラザー』のセルゲイ・ボドロフJrだからさ(笑) スタッフ日記に書いたけど、本当に素敵なのよ〜! セルゲイの手はジョンジェよりも大きいわよ(たぶん)。

水間: セルゲイね。でも私は東洋人が好きなのよ。それに手が大きいだけじゃダメで細くてスッとした指でないとだめなの。とそんなことはどうでもいいよね(笑)

松下: 原題の〈時越愛〉って字面には「まいった」って感じ。わたし的には韓国のロマンス体質の謎の一端が解けたかもしれない。続けて公開される『純愛譜』だって、今の日本人にはなかなか思いつかないタイトルだよ。ストレートでロマンチック。

水間: ほんと漢字の威力ってすごいね。公開タイトルも『イルマーレ』だけだと何だかわからないから『イルマーレ 時越愛』にすればもっとよかったと思う。ひとめでラブストーリーってわかるもんね。

松下: うーん、でも日本人向けには『イルマーレ』があっさりしていていいんじゃない? 映画と合ってるし。韓国映画に馴染みがない人が見たら〈時越愛〉じゃ引くかも。昔やったマッチと明菜の恋愛ものみたいにクサそうで。

水間: 松下さんたら、マッチと明菜の映画なんて言ってたら年がバレちゃうわよ。

松下: 難を言えば、ラストが「じゃあ、わたしたちが今まで観ていた話は何だったの?」とツッコミを入れたくなるところだけど、それもイ・ジョンジェの笑顔に気をとられて「まあいいか」と思えてくる(笑)。この映画のイ・ジョンジェって、全女性の警戒心をときほぐすようなスマイルだわ〜。

水間: 私も今回の『イルマーレ』で完璧にジョンジェファンになってしまったわ。30代以上の女性に受けるタイプよね。ジョンジェの魅力だけでなく、「自分のことをわかってくれる人」の大切さを丁寧に描いているのもどちらかといえば、しっとりと大人の女性向きだと思うしこれからの季節にひとりでじーっくり観るのにオススメです。

松下: 確かに秋に観たい映画だよね。でもさ、ひとりじゃなくてもカップルで観に行ってもいいんじゃないの(笑)

水間: まあそうなんだけど、「時間がずれるなんてありえない」とか言いそうじゃない? 韓国では幸運のデートムービーと言われてロケ地をデートしたりするのが流行ったそうだけど。

松下: ホント、『イルマーレ』は多くの人にぜひ観てもらいたい映画です。これで『純愛譜』『インタビュー』と渋谷シネパレス韓国映画路線が楽しみになったわ〜。日本もこういう映画を作ればいいのにな。『冷静と情熱のあいだ』はどうなんでしょう? 恋愛映画というとこのくらいしか思いつかないんだけど。

水間: ほんとねー。渋谷は嫌いだけどシネパレスには通うわ。『インタビュー』もシム・ウナの結婚が決まったから彼女の最後の作品になるかもしれない(多分引退すると言われている)し、絶対観ておかないと。『冷静と〜』っていいと思う? だいいちケリー・チャンの役って日本人なんでしょう。日本語が不自然だとそれだけでもうだめじゃない? 彼女に合わせて設定変えたのかなー。まあ原作読んでないからわからないけど、竹之内豊も好きじゃないし・・・・・。そういえば邦画で恋愛映画って思い浮かばないね。原田友世の『落下する夕方』って好きだったんだけどあれはどちらかというと失恋から立ち直る話で、ラブ・ストーリーではないからなあ。なにかおすすめのがあったら知りたいね。

松下: 私は渋谷好きよ。若者だからさ(笑) ハハ、単に映画館とレコード屋がいっぱいあるからなんだけどね。話を戻して、私もケリー&竹之内、辻仁成&江國香織という組み合わせには全然ひかれなかったんだけど、キャストの名前ずーっと見ていったらマイケル・ウォンの名が。それで「マイケル、どんな役やるの?」って急に興味津々(笑) だから、私はマイケルを観に行くの。これから封切のものじゃないけど『ワンダーランド駅で』はおすすめだよ。雰囲気は『イルマーレ』と似てるかも。

水間: 今度恵比寿ガーデンプレイスで『インティマシー 親密』というイギリス映画?(監督はフランスのパトリス・シェローで舞台、俳優はイギリスなの)があってそれはちょっと期待してます。恋愛体質ではないので、あまり恋愛映画って観ないけど、『イルマーレ』がしみじみと良かったので、もっと他のも観てみようという気になりました。

松下: そうだね、秋は『イルマーレ』を契機に恋愛力を高めよう!ってところかな(笑)

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