女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
14号 (1990.04)  pp. 42 -- 51

春にお薦めの映画です

  

今回のおすすめ映画のテーマは、春にちなんで 〈桜〉〈旅立つ人へ〉です。

春といえば、真っ先に思い浮かぶのは桜の花です。そして桜の花の下、入学、卒業と、 人々はそれぞれ新しい場所へと動いていきます。

のんびりとした春の日の楽しい『鴛鴦歌合戦』や、「春雨じゃ濡れて行こう」 (『月形半平太』)などと、粋なセリフを吐いていたのも今は昔。 暖房装置の冬が行くと冷房装置の夏が来てしまうのです。

春という季節を背景にした映画というのは、他の季節に比べて少ないようです。 日毎に移ろいゆく微妙な季節は、フィルムに定着させにくいのでしょうか。 けれと、ロメールの新作が『春のお話』というのだと聞いて、 彼の映画の中の夏や冬の空気を思い出すと、期待はふくらんでいきます。 暖かい春の日を心待ちにするように。

  


薄墨の桜
七七年・藤プロ
監督/羽田澄子
岐阜県の山麓にある樹齢一三○○年といわれる桜。 その“薄墨の桜”と呼ばれる桜の木の美しさを、愛おしむように幻想的に映像化した記録映画。
四二分

陽炎座
八一年・シネマプラセット
監督/鈴木清順
製作/荒戸源次郎
出演/松田優作/大楠道代/原田芳雄
満開の桜の上に、品子さんは浮かんでいた。 何処からともなく狸囃子の聞こえるうらうらとした春の日。 凝り過ぎという声もあるくらいの清純美学の極地的作品。 桜といえぱ鈴木清順の映画ばかりが浮かんでくる。 〈夏のおすすめ〉で紹介した 『ツィゴイネルワイゼン』にも、桜の印象的なシーンが何箇所かある。 他に伊武雅刀、風吹ジュン主演の桜を追いかける話のビデオ作品があると 聞いたことがあるのだが、御存じの方がいたら、教えて欲しい。
『ツィゴイネルワイゼン』は三月二八(水)〜三一(土)まで、 大井武蔵野館の鈴木清順特集で上映されます。
一三九分

けんかえれじい
六六年・日活
監督/鈴木清順
出演/高橋英樹/浅野順子/川津祐介
モノクロの夜の中に浮かび上がる白い桜、桜、桜。 その下を歩く男女は不自然に距離を保っている。 “純情”そんな言葉を思い出す。
八六分 モノクロ作品

桜の森の満開の下
七五年・芸苑社
監督/篠田正浩
出演/若山富三郎/岩下志麻/伊佐山ひろ子
満開の桜の森にもしも迷い込んだら、人はどんな気分になるだろうか。 途切れることなく散り続く桜の花びらの下で、 美しいと思う気持ちよりもきっと叫びだしたい恐怖にかられるに違いない。 美しい都の女に惚れた山賊が、女の言うがままに人間の首を集めるというストーリーとあいまって、 ラストシーンでは女が鬼婆に変わってしまう視覚的な恐ろしさと、 満開の桜のあまりの美しさゆえの心理的な恐怖とでなんとも忘れがたい映画だ。
九五分

細雪
八三年・東宝映画
監督/市川崑
出演/佐久間良子/吉永小百合/古手川祐子
前作にはおよばないけれど、豪華で美しいシーンが多かった。 なかなか集うことのない四姉妹が、あでやかさを競った桜が散る道を歩くシーンは特にいい。
一四〇分

砂の上のロビンソン
八九年・ビッグバン
監督/すずきじゅんいち
出演/大地康雄/浅芽陽子/高橋ひとみ
一戸建てを夢見る多くのサラリーマンの方々に観て欲しい。 ラストシーンの桜の木の下で絆が崩れた父親と次男の遭遇の場面がいい。 桜の花びらがやさしくふりそそぐ心暖かい映画。
一〇五分

忠臣蔵/桜花の巻・菊花の巻
五九年・東映京都
監督/松田定次
出演/片岡千恵蔵/大友柳太朗/東干代之介/中村錦之助/大河内伝次郎/美空ひばり
なんと言っても浅野内匠頭が、桜の花びらの散る下で切腹するシーンは有名。 色々忠臣蔵も映画化されているが、この作品がとにかく出演者が豪華で感動的。 忠臣蔵は日本人の心です!
一八三分
旅立ち
愛と青春の旅だち
八二年・米
監督/テーラー・ハックフォード
出演/リチャード・ギア/デブラ・ウィンガー
海軍士官学校に入学した青年が、様々な出来事を経験して成長し、 そして卒業するまでを描いた青春映画。 ラストシーンの旅立ちがとても心に残る。
一二四分 アカデミー助演男優賞=L・ゴセットJr. 主題歌賞

『さよなら』の女たち
八七年・東宝映画
監督/大森一樹
出演/斉藤由貴/雪村いづみ/古村比呂
高校教師の父親は、若いころの目標に再挑戦する為に、娘は自分を見つめ直す為に、 それぞれ同時に家をあとにする。斉藤由貴三部作の最後に大森一樹は、若い女の子達だけでなく、 中年の人達にも夢を忘れないで、人生はまだこれから、と応援を送っている。
九二分

キューポラのある街
六二年・日活
監督/浦山桐郎
出演/吉永小百合/浜田光夫
自分をきリひらいて生きていく吉永小百合演じる少女の生き方に元気づけられる。 ひねりの少ないストレートな作風に感動。
九九分 モノクロ作品

草原の輝き
六一年・米
監督/エリア・カザン
出演/ウォーレン・ビーティー/ナタリー・ウッド
“草原の輝ける時、花美しく咲きし時、それは再びかえらずとも嘆くなかれ。 その奥に秘めたる力を見出すべし”というワーズワースの詩をモチーフに作られたこの映画は、 『青春の愛と旅立ち』の話。 ひとことで言い切れるほど単純ではないけれど、愛とセックスを青春の真只中に、 どうクリアし新たな出発を目指すか…。ウィリアム・インジの脚本も最高です。
一二四分 アカデミー脚本賞

早春物語
八五年・角川春樹事務所
監督/澤井信一郎
出演/原田知世/林隆三/田中邦衛
青春へとはばたく一歩手前の十七才の女の子の春休みの体験。 原田知世が恋をする中年男の林隆三が、いやらしくなく魅力的。 無理して大人ぶる原田知世の姿もよかった。
九六分

卒業
六七年・米
監督/マイク・ニコルズ
出演/ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス
結婚式の最中に、花嫁を奪って逃げるシーンが目に焼きついている映画。 “私をさらってくれる男”に憧れた。 バックに流れる「サウンド・オブ・サイレンス」は、いつ聞いてもふっと手が止まる。
一〇六分 アカデミー監督賞

旅立ちの時
八八年・米
監督/シドニー・ルメット
出演/リバー・フェニックス/マーサ・プリンプトン
反戦運動家の両親と共に逃亡生活を続ける多感な少年を、リバー・フェニックスが好演。 アカデミー助演男優貰にノミネートされた。さわやかな印象を残してなかなかの秀作。
一一五分

ちいさな恋のメロディ
七一年・英
監督/デビット・パットナム
出演/マーク・レスター/トレイシー・ハイド/ジャック・ワイルド
一番好きなシーンは、墓地に集まった女の子達がミック・ジャガーのポスターを広げて、 中の一人がキスするところ。そしてもちろんラストシーン。 旅立つときはいつだって最終的な目的地なんてない。 小さな恋人達がこぎだすトロッコの先には、まっすぐの線路があるだけ。
一〇六分

テンダー・マーシー
八二年・米(未公開)
監督/ブルース・ベレスフォード
出演/ロバート・デュバル/テス・ハーパー
人生をあきらめた、枯れかかった男の二つ目の人生への旅立ち。 未練のある過去をぬぐい去っていく、静かな男と新妻、息子との感情が心地いい。
八七分 アカデミー主演男優賞=R・デュバル オリジナル脚本賞

Dead poets society (三月公開予定 邦題『いまを生きる』)
八九年・米
監督/ピーター・ウィアー
出演/ロビン・ウィリアムズ
教師達や親達の敷いたレールの上しか走れない生徒達に、自分のスタンス、 生き方を持つことを教える型破りな教師、ロビン・ウィリアムズがいい。 表面上では彼の教育は敗北し、彼は学校を去るが、 それを見送る生徒達一人一人が示す“自分を生きる” 意思表示をするラストシーンは泣かせてくれる。

眺めのいい部屋
八六年・英
監督/ジェームズ・アイボリー
出演/ヘレナ・ボナム・カーター/ジュリアン・サンズ/マギー・スミス
窓を開けると、広々としたフィレンツェの街が拡がる。 少女の前途を暗示するように空はのびやかで明るい。 精神の自由は、望むものすべてに与えられる。だからまず、切実に望むこと。 何よリも正直に求めること。
一一四分 アカデミー脚本貰・美術監督装置賞・衣裳デザイン賞

パーマネント・バケーション
八○年・米
監督/ジム・ジャームッシュ
出演/クリス・パーカー/ジョン・ルーリー
永遠の休暇に旅立つには、船以外考えられない。 ジャームッシュ初の長編は、主人公の少年の持つ瑞々しさで満たされている。 それにしても、ジャームッシュの映画の主人公達は、必ず最後には他の場所へと旅立ってしまい、 その場にとどまることを知らない。
七五分

晩春
四九年・松竹大船
監督/小津安二郎
出演/笠智衆/原節子/杉村春子
最愛の父親から旅立つ娘。送リ出す父親。小津らしい、しっとりした作品。
一〇八分 モノクロ作品

レインボウ
八九年・英
監督/ケン・ラッセル
出演/サミ・デイビス/アマンダ・ドノホー
とにかく女の子は(モチロン男の子も)元気なのがいい。 新しい世界へ飛び込むときは、希望もあれば不安もある。 そんなきは迷わず希望を選ぶ。 とにかくひたむきなサミ・デイビスは二四時間戦える栄養ドリンクなんかより 絶対元気になれると思うんだけど。
一一二分

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