女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
40号   pp. 2 -- 10
1996年度 読者&スタッフが選ぶベストテン

曽我部

劇場ベスト10

  • パリのレストラン
     シニカルなユーモアとクラシックなフランス映画の持っていた人情味という要素を うまく処理した作品である。

  • 月夜の願い
     悪ふざけの部分もなきにしもあらずだが、父と息子が兄弟のように強い 信頼関係を結ぶシーンにはジーンときた。

  • クロッシング・ガード
     人間の魅力の一つは他人を許せること。ショーン・ペン監督に本作で教えてもらった。

  • 恋する惑星
     寂しさを抱える男女が出会い心が傾く、ウォン・カーウァイ監督はそんな瞬間を センスよく撮っている。

  • ひとりで生きる
     〓〓な少年と守護天使のような少女の素晴らしさに尽きる。

  • エドワード・ヤンの恋愛時代
     これだけ沢山登場人物がいるのにちゃんと個性を描ききってる所がすごい。

  • パトリス・ルコントの大喝采
     ロシュフォール、マリエル、ノワレのいかしたオヤジたちの珍道中に心が躍った。 ブラン、ジャコブ、体を張った演技に驚愕。

  • 蒼い記憶
     覚醒作用を持っているようなブルーとペパーミントの映像美に魅了された。 ピーター・ギャラガーは突出した演技力の俳優だ。

  • その場所に女ありて
     鈴木英夫監督の62年度の作品。都会的なセンスにあふれた映画だ。 えらく司葉子が絵になっている。

  • 月の瞳
     雪とくもり空と官能的なムードの融合が映像美を作り出している。




伊藤

劇場ベスト10

  • 秘密と嘘
     役者たちの演技にのみこまれた。フレッシンのよく泣く姿が印象的。 人間の底力ってすごい。

  • グース
     子供、動物、家族愛に弱い私は大泣きしてしまった。
     カナダの大自然もすばらしい。

  • 太陽と月に背いて
     ディカプリオの魅力が全開。好きな俳優がでていると2倍楽しめる。

  • 大地と自由
     「ケス」を含めケン・ローチ監督の人間描写がとても好き。 ファシズムと戦った人々の息吹が伝わり、なんだか悲しい。

  • アンダーグラウンド
     旧ユーゴを舞台にした現代史的寓話。構想がすばらしい。 ラストシーンの迫力にも圧倒された。

  • ファーゴ
     人物描写が淡々としていて、いっそう人間のエゴイズムを感じさせる。 スタイリッシュな映像もいい。

  • キッズ・リターン
     北野武監督の人間をみつめる姿勢が好き。しっかりした演出がひかる。 日本映画の最高傑作。

  • トレイン・スポッティング
     どんな悲惨なことでもちゃんと笑える。ノリのいい疾走感。キレぎみの音楽も粋。

  • ユージュアル・サスペクツ
     こってりのくせ者たちが、たくさんいて、だまされたような気がしてもう一度観たくなる。

  • リービング・ラスベガス
     人生に疲れた2人の真実の愛がせつないし、スクリーンからお酒も臭(にお)って 苦しくなった。




大園

劇場ベスト10

  • ユージュアル・サスペクツ
     犯人が最後まで判らず騙され続けたにもかかわらず、なぜかスッキリした気分で観終わった。

  • 誘惑のアフロディーテ
     重いのと軽いのが入り混じったとっても笑える映画だった。 他のウディー・アレン監督の作品も観てみたいと思いました。

  • デッドマン・ウォーキング
     死刑執行のリアリティさに負けない、ショーン・ペンとスーザン・サランドンの心の 触れ合いの演技にすごく感動した。

  • ヒート
     やっぱり主演の2人はカッコよかった。それだけで十分な映画だったと思う。

  • リービング・ラスベガス
     男と女、どうにもならないお話。せつなすぎるラスト、 悲しくて忘れられないラブ・ストーリーの一つになりそう。

  • ブロークン・アロー
     『サタデー・ナイト・フィーバー』や『グリース』のジョン・トラボルタからは違う彼を発見、 悪役の彼の瞳がとっても悪役ぶりを出していた。

  • ケーブルガイ
     ブラックユーモアの中に、人と人とのコミュニケーションの大切さを教えてくれた。 ちゃんと奥のある怖いお話をジム・キャリーは本当におもしろおかしく演じていた。

  • 白い嵐
     スクリーンの中とはいえ溺れそうになってしまう海のシーンが印象的。 海にふさわしく男たちのドラマにも感激です。

  • ガール6
     とってもセクシーな声とステキなファッションが楽しめて、女性に元気を与えてくれる映画。

  • ジャイアント・ピーチ
     ハイテクの映像、夢のある、おとぎ話の世界に思わず引き込まれてしまいました。




市川

劇場ベスト10

  • イル・ポスティーノ
     イタリアの孤島に生きた純朴な青年が、詩人の影響ですこしずつ目覚めていく。 観終わった後で、すこしだけ優しい気持ちになれるような映画。

  • ウェールズの山
     山として認定してもらうために、村中で山のてっぺんに土を運ぶという 何でもないお話なんだけれど、こういうおかしくって、心温まるような映画って好き。

  • 秘密と嘘
     「人生ってなるようにしかならないけれど、みんな孤独だけれど、でも、 ちょっといいかもしれない」という気分にさせてくれる映画。 俳優たちがそれぞれすごく上手い。

  • ミッション・インポッシブル
     手に汗握って2時間、アー面白かったと楽しませてくれる映画。 これも映画の醍醐味です。トム・クルーズ頑張ってるよね。

  • リービング・ラスベガス
     ハンサムでもないし、お腹も出てるし、毛深いし、でもニコラス・ケイジは好きな俳優のひとりです。 「人の優しさってなんだろう」とつくづく思わせる映画。

  • グース
     これも心温まる小品です。よほどギスギスした中に生きてるんでしょうか、 こういう映画ばかり選んでいる私は。グースと一緒に空を飛んでいる気分。

  • セブン
     怖い映画だった。でも、面白かった。ブラッド・ピットは結構、いろんな役に 挑戦しているなあ。

  • 青いドレスの女
     不思議な画面の映画。ストーリーというよりも、その雰囲気を楽しんだ。 デンゼル・ワシントンはなんといっても美しい。

  • 3人のエンジェル
     パトリック・スウェイジの女装は気持ち悪くて笑ってしまった。でも、 「他人の目なんて気にしないで自分らしく生きなくちゃ」 というメッセージは強く伝わって来た。

  • Shall we ダンス?
     日本映画を一本と思って迷った末にこれに。楽しい映画ではあるんだけれど、 この路線ばかりでわね、周防監督。「シコ踏んじゃった」の方がずっと好き。




中江

ベスト10(旧作含む。順不動)

  • Shall we ダンス?(周防正行監督)
     とりたてて変わったところのない、よくある話を映画にするには力量がいる。

  • 反国家宣言(山崎祐次監督/72・95)
     沖縄の運動家たちの議論を見つめていたカメラが、東京を離れ、沖縄へ、 そして北海道のアイヌの元へと旅するドキュメンタリーは反国家というより 超国家の域にまで達しようとする。

  • 沖縄のハルモニ(山谷哲夫監督/79)
     監督が沖縄本島に住む一人の元韓国従軍慰安婦のもとを訪れる。 初めは頑なだった彼女の気持ちがほぐれていくにつれて、一人の女性の 悲惨な人生が浮かび上がるが、映画は決して暗くはならない。

  • 海とお月さまたち(土本典昭監督/80)
     水俣シリーズの一本。月の満ち欠け、潮の満ち干と共に暮す天草の海に生きる人々の様子が 童話のようにやさしく美しく語られる。

  • クローズ・アップ(A・キアロスタミ監督/90)
     嘘が映画という嘘(作り事)によって真実になるという話は映画を愛する者にとって 最高の幸福。

  • ツイスター(ヤン・デ・ボン監督)
     役割のはっきりした登場人物をわかりやすいストーリーの中で手際良くまとめあげた ヤン・デ・ボンて、なかなかの人だと思う。

  • 夏物語り(エリック・ロメール監督)
     いつも同じように見せかけて常に何か新しいことに挑戦し続けてそれが映画として 成立しているというのがロメールのすごいところ。しかもこの年齢で。

  • 家庭(フランソワ・トリュフォー監督/70)
     アルメンドロスの撮影はほんとうにきれいで、見ているだけで楽しい。 この映画のJ・P・レオーに、映画に登場した日本娘のように恋した私。

  • ニノチカ(エルンスト・ルビッチ監督/39)
     あの時代にこんなにも政治的な題材をここまで皮肉たっぷりに笑って笑って 笑い倒すルビッチ映画の面白さにはいつものことながらあきれるばかり。

  • キッズ・リターン(北野武監督)
     ボクシングに関するシーンのうまさはさすがだと思う。




勝間

劇場ベスト10(日付順)

  • デスペラード
     バンデラス、めちゃくちゃかっこいい!! (なんでメラニー・グリフィスと結婚したのよー?)

  • ブロークン・アロー
     最後まで追跡にくっついて行くサマンサ・マティスの公園監視員が、 実にあっぱれなキャラクター。

  • ユージュアル・サスペクツ
     ビデオが出てすぐ借り、もう一度見てしまった。ガブリエル・バーン、渋い。

  • ニック・オブ・タイム
     周囲が皆敵だった知事の姿に『JFK』を思い出してしまった。 アメリカの政界ってこわい。

  • いつか晴れた日に
     エマ・トンプソンの脚本賞はうれしいが、監督のアン・リーはノミネートもされず、 今さらながら人種の壁の厚さを思い知らされた。

  • 12モンキーズ
     観終わった直後は「えーっ、何だよこれ?わかんないよー」と思ったが、 時間がたつにつれ、怪作であると確信。体調バッチリの時にビデオを借りて、 再チャレンジするつもり。

  • イル・ポスティーノ
     詩人からの見返りを全く期待せず、ただ相手への感謝の念で行動する主人公を見ていて、 なんだか自分がとても恥ずかしかった。

  • 天使の涙
     金城武のあふれんばかりの父親への愛情表現が可愛い。 一見別々の個性を持つ二人の女(ミッシェル・リーとカレン・モク) のそれぞれの孤独は、つきつめていけば同じ肌寒さだと思う。

  • フィオナの海
     弟を探しに行くフィオナの意志の強さが美しかった。 あきらめないことの素晴らしさを小さな少女に教えられた。

  • ティン・カップ
     誰が何と言おうと、ケビン・コスナーは私にとって目の保養。 こういうお気楽ロマンスの彼は安心して見ていられる。

ワースト3(日付順)

  • 赤い薔薇 白い薔薇
     さすがのスタンリー・クワンも完敗。満足できたのはジョアン・チェンの艶やかさのみ。 ウィンストン・チャオは時代の設定に全く合ってない。

  • ため息つかせて
     女4人のうち美容師以外のエピソードはステレオタイプすぎる。 監督も出演者もアフロ・アメリカンで、しかも中流階級の話で、彼らにしてみれば、 やっと人並みになれたという誇りがあるのはわからなくもないが。

  • マンハッタン花物語
     メアリー・スチュアート・マスターソンが、今回すごい老け顔で、全然かわいくなかった。 クリスチャン・スレーターの性格が理想的すぎるのも不満。

ビデオベスト5(日付順)

  • インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

  • あなたが寝てる間に

  • ザ・ペーパー

  • Shall we ダンス?

  • 乙女の祈り




佐藤

劇場ベスト

  • イル・ポスティーノ
     すいこまれるような夜空が心に残っています。

  • 秘密と嘘
     黒人の娘のシャキッとした自立度に魅せられました。

  • ナヌムの家
     老女になっても闘えるんだという勇気を与えてくれる映画。

  • Shall we ダンス?
     楽しかった!!ヒットしても周防監督には、お金が入らないという日本の興業の 不思議さにイカリを覚えます。

  • 新北京物語
    最近の北京の様子がわかって考えさせられました。

  • 女人、四十。
     香港に住む人々の熱気が伝わってくる。

  • ガスパール(君と過ごした季節)
     観た人がいるかなー。老女と二人の泥棒の心あたたまる交流。南仏の海辺が舞台。

  • パリのレストラン
     題名だけでみたくなる。レストランを夫と共に仕切ってきたマダムが魅力的でした。

(一本も米映画がないのに自分でも驚きました。 米映画も観てるけどベストテンに入るものではなかったということでしょうか。)



福田

劇場ベスト

 選ぶのに苦労した不作の年でした。香港で観たのは全滅。
  • ファイナル・プロジェクト
     どんどんスケールアップして、グレードアップする成龍の映画は凄い。 けど、香港映画じゃないみたい。

  • チャイニーズ・オデッセイ
     香港で、ゆうばりで、そして新宿で、観るたびに新発見があった。 髪をアップにした星仔がきれいだった。

  • パリのヴァンパイア
     期待なしがよかったか、思いの外楽しめた粋な佳品。 サイン会でのマギーは凛とした麗人でした。

  • 女人、四十。
     サマースノーの場面は、今想い出しても胸がきゅんとなる。 淡々とした描き方がとてもよかった。

  • 古惑仔 I
     細かいことを言えば変なとこは多々あるけど、妙にかっこよくって。 小春がいい味だしてる。

  • 大冒険家
     女二人の間で揺れる華仔は(くさいけど)はまり役でかっこいい。 ポッカリしたロザの瞳がコワかった。

  • ハイリスク
     クールなリー・リンチェイもよかったけど、學友の怪演がなくては成り立たなかった作品ですね。

  • ザ・ブレード
     ゲロゲロなところはあったけど、全体的に流れるストイックな色っぽさに ゾクゾクしちゃいました。

  • 大内密探霊霊發
     階段を何度もこけるシーンがとっても好き。 星仔、ちゃんとすれば女装いけると思うんだけどなぁ。

  • 天使の涙
     ミッシェル・リーの評価がなんで低いんでしょう? 王家衛は、音楽の使い方がホントに上手。

欄外

 1996のワーストスリー 〜余りにもひどかったのでつい書いてしまいました〜
  • シクロ
     画面に酔って気持ち悪くなってしまった。皆さん、そこまで褒める作品でしょうか。

  • 12モンキーズ
     思わせぶりな広告につられて今年観た唯一の洋画だったのに、あのラストはないよね。

  • 金枝玉葉II
     期待するなというのがムリ。でも、思いっきり裏切ってくれました。 お金、かかってたけどねー。




岡田

劇場ベスト10

  • ミッション・インポッシブル

  • インターネット

  • エグゼクティブ・ディシジョン

  • ザ・ロック

  • セブン

  • アンダーグラウンド

  • デスペラード

  • 白い嵐

  • いつか晴れた日に

  • 誘惑のアフロディーテ

〔番外〕
カット・スロート・アイランド、青いドレスの女、ため息つかせて、ジェーン・エア、 フロム・ダスク・ティル・ドーン、ティン・カップ、ザ・ファン、エディ

ビデオベスト10

  • ウォーター・ダンス

  • トーチソング・トリロジー

  • ボーイズ・オン・ザ・サイド

  • マイアミ・ラプソディ

  • 忘れられない人

  • あなたが寝てる間に

  • ボーイズ・ライフ

  • ハイヤーラーニング

  • メイド・イン・アメリカ

  • アイラブトラブル

〔番外〕
はだしのマリー、インドシナ、恋人たちのアパルトマン




岸井

劇場ベスト10(観た順)

  • レッドチェリー
     過酷な状況下の人間の健気さと優しさ、その逆の残忍さ狡さ、 両面を描いて深みがある。傷ついた少女、兵士になれなかった少年、 それぞれが選んだ行動に息をのんだ。

  • キャリントン
     愛してくれない相手、体の関係を持てない相手を愛し続けることは可能か。 私がヒロインだったらどうするだろう、と考えながら観た。

  • トキワ荘の青春
     時流に乗った漫画を描くことを拒否して去っていった主人公は、古き良き時代の象徴だ。

  • ブロークン・アロー
     始めから終りまで息もつかせぬスリルとサスペンス、流麗なアクション、 ジョン・ウー監督らしいケレン味。最高!

  • ナヌムの家
     難しい題材を節度ある態度で撮りあげた力量に感服。 戦争・紛争によって心身に傷を負い、人生を狂わされる人々が現在も絶えないことを考えさせられる。

  • トワイライト・ランデブー
     若い二人の初々しさとひたむきさに感動。同時に恋愛とはこのように偶発的で 不確かなものだと示されたみたいで、ちょっと苦い。

  • ペディキャブ・ドライバー
     40年代香港が舞台の人情アクションコメディ。こういうサモ・ハン・キンポーは大好き。

  • 真夜中のダンサー
     ゲイクラブでヌードダンサーとして働く三人兄弟。 マニラの裏街の生活と人々の心のつながりが力強く描かれている。

  • ハイリスク
     リー・リンチェイもかっこいいけど、ジャッキー・チョンもあそこまでやるとは。 ジャッキー・パパ、そっくり!

  • 變臉
     お涙ちょうだいものかなとハスに構えようとしたけど、 しっかりその手にのせられてドキドキ、ハラハラ、ホノボノ。




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