女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
33号   (1995 June)   pp. 28 -- 31


またまたお節介な台北ガイド


関口治美




 古き良き日本の香りがして、初めてなのに懐かしい。 英語よりも日本語が通じてしまう…。 台湾は日本人が最も安心して遊べる国のような気がします。 かつて日本統治下であった国とはいえ、台湾の人々はとってもきさくで親切。 親近感さえ覚えてしまいます。その上ここは映画ファン、音楽ファンにとってのまさに 宝島なのです。そんな台湾の首都台北へ行ってきました。



《観光編》

 かつての日本統治のなごりが街並みや人々の生活から感じられ、歩いていると 外国という気がしなくなることも。なんだか一昔前の東京にそっくりです。

 台北市内の交通網はバスとタクシーしかないのが現状。市の東部をモノレール、 西部を地下鉄が開通しているはずでしたが (台湾観光協会発行の地図にはルートが載っている)、実際には今だに試運転段階。 計画では市内を縦横無尽に新交通システムが走るとのことで、 20世紀中に出来上がるといいのですが…。 バスは時刻表(これがまあ、ガイドブックみたいに分厚い!)を読みこなしさえすれは どうにか乗りこなせますが、台北の隅々まで行きたいならタクシーに乗る事をお薦め。 初乗り運賃は50元(l元/3.4円)で30分乗っても東京の初乗り以下と安い!  その上、運転手(ウンチャンと呼ばれています)それぞれが自慢の抜け道を知っていたり、 タクシーのシート・カバーが花柄で妙にオシャレだったり。 ボラれる事も故宮博物院以外ではまずないし、チップを受け取る人もほとんどいません。 また、ジェット・コースター並みの飛ばし方もスリリングで楽しいし、 窓の外では二人乗りなど当たり前のスクーター族(柄物マスクがオシャレ)がぎっしり。 はっきりいって空気はおいしくありませんが、夜の道路の混雑ぷりは 感動さえおぼえるほどの見応えです。タクシーからのタウン・ウオッチング、ぜひお試しを。

 街の雰囲気に慣れたら、台北駅前に昨年出来たばかりの新光摩天楼へ登りましょう。 ここの展望台から見た夜景の美しさにはうっとりすること間違いなし。遥か北には 黄金に輝く圓山大飯店(『恋人たちの食卓』の父親はここのシェフだったという設定) が見え、道路には光輝く車の群れ。台北のイルミネーションは香港よりも穏やかですが、 まさにえも言えぬ麗しさです。この夜景を見ながらレストランで食事というのも ロマンチックでいいですよ。

 『さらば、わが愛/覇王別姫』に感動した貴女なら、ちょっと足を延ばして 国立復興劇芸実験学校ヘ。ここは台湾唯一の京劇学校で、明日のスターを夢見る 10才から18才までの少年少女達が学んでいますが、週三日観光客向けの見学日があります。 きらびやかな衣裳の展示を見ているだけでも楽しいし、真剣な練習ぶりにも感心 (ただし、カメラを向けるとついVサインをしてしまうのが今風)してしまいます。 もちろん、彼らによる京劇の実演もあって、大人顔負けの演技とアクションに 見惚れてしまいます。台北駅からパスで行く事が出来るのでぜひぜひ。ちなみに、 私は京劇の衣裳を着せてもらいました(有料)が、これが暑くて重いしまた似合わなくて、 恥のかきすてとなってしまいました。希望者にはメイクもしてくれるので、 興味のある方はどうぞ。

 台北最大の見所はなんといっても故宮博物院。中国四千年のお宝がぎっしり 詰まっている、とはいってもメインは清の時代の物ばかりなので、中国古代史に 興味のあった私には、やや物足りないものがありました。広い館内にゆったりと 展示されているので、自分が興味のある所から見ていくのがコツ。4階にある中国茶芸館 「三希堂」は珍しいお茶菓子が多いし、意外と空いているので景色を見ながら くつろげます。また、時間があったら庭園(至善園)へちょっと寄りましょう。 大陸風の中国庭園で心が落ち着きますよ。

 故宮博物院と圓山大飯店の間にあるのが国民革命忠烈祠。戦死した兵士を祭るこの廟で見所は、 一時間毎に行なわれる衛兵の交替式。一糸乱れぬ彼らの行進ぶりは台湾版『タップス』 みたいでステキです。ここの衛兵は見目麗しきし18〜20才の若者とのことですが、 へルメットで顔が見えないのが難でした。



《エンターテインメント編》

 さて、映画ファンなら一度は行ってほしいのが西門町。 原宿竹下通りと新宿歌舞伎町をミックスしたみたいにゴチャゴチャして 小さなブティックが立ち並ぶ一帯に、映画館の大看板があちこち立っていて、 電影街と呼ばれる一帯もあります。かつての日比谷をお手本にしたみたいに 映画館だらけで、ついついポスターやロビー・カードに見惚れてしまうのは必至。 たとえ映画を見る時間がなくても胸が一杯になるのは確実。上映されているのは ハリウッドか香港の作品がほとんどで、当の台湾映画はなぜかあまり目につきませんが、 私の行った時期(G・W)にノベライゼーションと主題歌CDの三つ巴で宣伝していたのが 『少女小漁』という作品。監督は女優の張艾嘉(シルビア・チャン)、 製作が『恋人たちの食卓』の監督李安(アン・リー)という、 ファンなら食指が動く組合せでした(でも観なかった)。各作品のタイムテーブルは 新聞の朝刊紙に一面広告が、写真なしのものも夕刊紙に載っているし、 形態は香港と違って日本と全く同じ。居酒屋やコンビニなどには新聞の映画欄が よく貼られています。値段は100元から180元までとまちまちですが、 上映開始時間はだいたいどこの劇場でも同じ。全席指定、各回入れ替えというのは 香港と同じですね。上映前には国歌が流れます。台湾では北京語版がほとんどでしたが、 ちょうど香港金像獎受賞作の特集上映をしている映画館がありまして (結局私が見たのは『金枝玉葉』)、『恋する惑星』は広東語バージョンでした。 ということは、通が良けれぱ広東語の香港映画も見られるというわけ。 この西門町以外でも、台北のあちこちに映画館をよく目にします。 実は台北の中心は徐々に市の東地区(忠孝東路付近)へと移ってきていて、 西門町はややさびれてきた気がします。崇光(そごう)を中心に ファッショナブルな店でいっぱいの東地区にもお酒落っぽい映画館があるので、 ショッピングついでにそんな所へ飛び込むのもいいかも。 最近ではケープルTVやMTV(カラオケボックス風のレンタル・ビデオルーム)が流行で、 映画はやや押され気味だとか。それでも日本に比べれば、 まだまだ映画は黄金時代が続いているようです。

 映画のついでにレンタル・ビデオ屋をのぞくのも忘れずに。 香港、ハリウッド映画ばかりか、日本の映画やTVドラマも豊富。 台北では香港映画の封切りが本国よりも早いことがあるので、 遅が良ければ香港では只今公開中の新作が店頭に並んでいることもあります。 台北でつい最近公開されたばかりで、香港ではちようど公開中だった、 關之琳〈ロザムンド・クワン)主演の『狂野生死恋』が店頭にさりげなく並んでいました。 台北に住んでビデオ三昧もいいかも、なんて考えてしまいます。 お店によってはビデオを売ってくれるとか。

 さらにCDショップも要チェック。品揃えといい、スケールの大きさといい、 町中のお店よりも市内に二軒(西門町と忠孝東路)あるタワー・レコードがお薦め。 台湾、香港、そして日本のCDが同一フロアを占めていて、アジアの血が ドキドキワクワクしてきます。価格もだいたい300元前後。 日本のCDが本国より安く買えてしまうから不思議です。MTVはCDよりも安いし、 日本と同じVHS方式なので安心。カセット・テープは160元だし、 私にはまるで天国みたいな所でした。

 以前は露店があちこちにありましたが、最近はコンビニのおかげで すっかりなりをひそめてしまったようでした。特に目につくのはセブン・イレブン。 こちらもぜひ覗いて下さい。目当てはアイドル雑誌で、だいたいの物は買えますし、 CDやテープも置いています。また、台北駅に近い重慶南路(ミニ神保町的な書店街) を廻って雑誌や写真集を探すのも楽しいもの。台湾の芸能雑誌は台湾、香港、 日本のアイドルがゴチャゴチャに入り乱れていて、面自くてたまりません。 ケーブルTVでは日本の番組も観ることができ、新聞のTV欄にはNHK衛星のコーナーが しっかり載っています。ちなみにあるアイドル誌の人気投票一位は酒井法子〈日本人〉、 林志頴(ジミー・リン)〈台湾〉、郭富城(アーロン・クォック)〈香港〉、 トム・クルーズ〈欧米〉といった具合。他にも日本人では内田有紀やSMAPが人気。 宮沢りえや吉田栄作の人気もまだあるようです。漫画やアニメでは「クレヨンしんちやん」 がどうやら一番人気。ビデオはなんと北京語宇幕になっていました。

 こうしたアイドル・グッズがお好きな方ヘ、穴場を最後にお教えしましよう。 香港通ならお馴染みのドラッグ・ストア、ワトソンズです。店頭に3枚100元のCD (黎明/レオン・ライの日本曲カヴアー・アルバムなんて物も)があったかと思うと、 文具売場の一角がスターの生写真コーナーだったり。こちらも街のあちこちにあります。 台湾は香港のように買物天国ではないし、一時のような日本人観光客 (どんな客かは言いませんが)が少ないというのも魅力。 食物だって、日本人好みの味付けが多いので、心ゆくまでグルメ体験ができます。 香港旅行のついでにでも寄ってみる価値は充分。今年は日本でも台湾映画が続々と 公開予定ですから、話題先取りしてみませんか?




[お詫び]

小誌前号掲載の 「ゆうばり国際・冒険ファンタスティック映画祭95」は関口治美さんの記事でした。 執筆者の名前が落ちておりましたことを、お詫びいたします。(編集部)




—オマケの極秘情報—

〔日華資料センター〕

 台湾のあらゆる資料がぎっしりで、コピーや閲覧はもちろん貸し出しもでき、 郵送返却可能。一日二日前までの台湾の新聞が3〜4紙ありますので芸能欄を 捜してみてください。最新の情報が面白いほど見つかります。最新とはいえませんが、 CDもあります。ビデオの棚には台湾のTVドラマや日本のTVでの台湾特集、 様々な台湾紹介ビデオに混じって、なんと、台湾金馬獎のビデオが!  それも何年分もあります。モニターがあるのでその場で観ることもできます。 旅行の予定がなくても、つい足が向いてしまいませんか?

 東京都港区三田5の18の12
  自由新聞ビル内
   □03(3444)8724
 ※都営三田線・営団南北線白金高輪駅下車徒歩3分
 開館日時火〜土9:00〜5:00
ホームページ:http://www.roc-taiwan.or.jp/data/index.html
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