女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
33号   (1995 June)   pp. 93 -- 95

艾敬のソロコンサート実現!

宮崎 暁美(写真も)


 三一号で艾敬のコンサートのことを書いた最後に、今度はぜひ、 ソロコンサートを! と書いたけど、半年後、それが実現した。 最近、日本でもアジアのアーティストたちへの関心が高くなっていることの 現われと言っていいかもしれない。セカンドアルバム『艶粉(ヤンフエン)街の物語〜 私が生まれた街』の発売に合わせて行なわれた日清パワーステーションでのコンサートは 二日間とも、ほとんど満員だった。ファーストアルバム『我的一九九七』で注目され、 昨年は日本でのコンサートをいくつかこなし、今年の元旦のNHKテレビの番組では 小澤征爾さんが司会の番組に香港からディック・リーと共に出演していた。 それに、一月二日の日本テレビでもアジアのアーティスト特集で紹介されていたし、 アジアンNビートでは相変わらず人気が高い。

 コンサートではファーストアルバムから四曲が歌われ、「我的一九九七」 は日本語に訳して歌っていた。最新アルバムからは七曲が歌われた。自作の曲も増え、 このアルバムではほとんどの曲を作詞している。作曲も三曲ほど担当して、 シンガーソングライターという肩書きも板についてきた。特にタイトル曲の 「艶粉街の物語」は自分が生まれ育った街をテーマに、時代を盛り込んだ詞が印象的だった。 北京語の抑揚ある響きと「我的一九九七」を彷梯とさせるメロディライン、 アコースティックな響きは最近あまり日本のラジオやTVからは流れてこないので、 新鮮な感覚で聞くことができた。「おばあさんのような女」もサイモン& ガーファンクルばりのイントロがすてきな曲。女の人の一生って誰のために生きているの? と問い掛ける歌でもある。中国語の題名から見ると「おばあさんはこのような人だった」 という意味のようだ。筑紫哲也ニュースで使われた「川は流れる」も私の好きな曲。 これは彼女のアルバムには収められていないので次のアルバムには是非収めて欲しいと 思う。「情陥89」は詞の内容から察するところ、八九年の天安門事件を比楡したもの なのかなと思う。一九八九(イーチュウパーチュウ)と繰り返して出てくるのが 印象的だった。「LOVE IN MY DREAM」は珍しくロックっぽい曲。ロシア民謡「トロイカ」 を中国語で歌った「三套車」は艾敬ののびのびとした素晴らしい歌声が聞ける曲だった。 この「トロイカ」は、香港でも去年、「希望」という曲名で李克勤(ハッケン・リー) が歌い、ヒットさせている。最後は「島唄」を日本語で歌い会場中が沸き立った。

 前回とくらべて格段にステージパフォーマンスがうまくなったなという気がしたし、 彼女の天性の明るさと作品の持つ雰囲気とが相乗効果を上げているように思った。 それに少しづつ上達している日本語がとてもチャーミングだった。

 今回のステージではバックに THE BOOM のメンバー栃木孝夫(Dr)、山川浩正(Ba)、 小林孝至(G)が参加したのを始め、中国から艾敬や崔健のレコーディングにも参加した ドラマーの劉効松(リュウ・シャオソン)、バックコーラスには艾敬の妹、艾紅(アイ・ホン) も参加。他にもコーラス、キーポード、ヴァイオリンなどの編成。さらに、なんと 香港から劉以達(タッツ・ラウ)がギターで参加していた。達明一派(ダットミンペア) というバンドを八○年代後半にやっていた人で、現在は映画音楽の分野でも活躍している。 『蒼き獣たち(五虎將之決裂)』の中で、梁朝偉が殺され劉徳華が悲嘆にくれるシーンの バックに流れた「興孤獨在奔往(作曲・劉以達、作詞・主唱 劉徳華)」はとても 印象的だったし王靖[雨/文]か歌った『誘僧』の主題曲「誘惑我」も、香港で大ヒットした。 他には『ラスト・ブラッド(驚天十二小時)』などの音楽も担当。さらに彼は映画にも 出演している!。『籠民』ではビヨンドの黄家駒と共演し、『つきせぬ想い(新不了情)』 では劉青雲の作曲家仲問として出演していた。達明一派復活の動きもあるとか、 彼の活躍にも期待したい。

 艾敬を見いだしたのは香港の劉卓輝(ジーン・ラウ)という、作詞家としても 活躍している人だそうだ。香港では日本と違って、作詞家でプロデュースなどにも 加わっている人がけっこういるのだろうか?。三月に来日した、郭富城のマネージャー兼、 作詞を多く担っていたのは小美(シュウ・メイ)だった(現在はコンビ解消になっているらしい)。 劉卓輝の作詞家としての作品としては、ビヨンドの「長城」「情人」「大地」、 『セカンド・フロアー』に収められた「打救ni」 「仍然是要[もんがまえ+鳥]」の他、ディック・リーの初めての広東語アルバム 『北南西東』に収められている「大地」「自由」等。ディックの「大地」は黄家駒を 偲ぶアルバム『祝ni愉快』で歌われていたもの。 他には劉徳華の『愛意』に収められた「今夜夢還暖」 「最愛是ni」、巫啓賢の『有心』の中の 「只因ni傷心」「不相信自己」「太傷」などがある。

 ところで、艾敬は日本語読みをアイ・ジンにしてるけど、中国語のJINの発音は チンに近い。チとヂの間の発音だ。せめてアイ・チンかアイ・ヂンにしたほうが いいのではないかと私は思う。崔健(ツイ・ジエン)のJIANもチエンの方が中国語の発音に 近い。

 艾敬は今年の夏の CLUB ASIA にも出演するようなので、 また彼女の歌が聞ける! 映画にも出演して欲しいな!


(写真略)
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