女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
29号 (May 1994)   p.81

趙季平作品コンサート

宮崎暁美

趙季平(チャオ・チーピン)は現在、世界各国で注目されている中国語圏映画で、 数多くの映画音楽を手掛けた作曲者。 今回のとーくで取り上げた 『さらば、わが愛〜覇王別姫』でも彼の曲が使われている。 その人の作品コンサートが細野晴臣さんらの企画で、昨年十二月に開催された。 彼の作品の特徴は中国の古典音楽に西洋音楽の要素も取り入れ、 さらには中国の古典楽器を使用して独特の音を作り出していること。 初めて映画音楽を手掛けたのは陳凱歌監督の『黄色い大地』だそうだけど、 その後、張芸謀監督のほとんどの作品を手掛けている。 大陸の監督作品以外にも香港の嚴浩(イム・ホー)監督の『天菩薩』、 台湾の葉鴻偉(イエ・ホンウェイ)監督の 『ファイプ・ガールズ・エンド・ア・ロープ』などの作品も手掛けている。 というわけでコンサートだけれど、趙季平自身は出演せず挨拶だけで、 中国から若手の演奏家たちが来て行われた。

笙や土笛、琴、チャルメラ、太鼓、尺八のような楽器や弦楽器などの古典楽器とドラム、 サックス、シンセサイザーなどの現代的な楽器など、いろいろな楽器が現われ、 それぞれの映画のなかの印象的なメロディはこの楽器で演奏されたのかと、 映画の場面を思い出しながらコンサートを楽しむことができた。 「少女の歌」「酒をかわす歌」など『黄色い大地』で使われた音楽が多く演奏されたけど 『紅いコーリャン』の中の「妹妹曲」「神酒曲」、 『菊豆』で使われた組曲も演奏された。 その中で一番印象に残ったのは『菊豆』の音楽。 あのフクロウの鳴き声のような不思議な音は丸い形をした土笛で奏でられた音だった。

私が初めて中国の音楽テープを買ったのは、海賊版だと思うけど 姜文(チアン・ウェン)が歌う、『紅いコーリャン』の「妹妹曲」「神酒曲」 が入ったテープだった。このテープの中には『黄色い大地』の主題歌 「少女の歌」も入っていた。一九九一年の中国映画祭では姜文自身が来日し、 開幕式の時に生で彼の歌を聞くことができた。 その後、地畑さんが台湾で買ってきたという、張芸謀監督自身が歌っている 「妹妹曲」が入っているテープをもらった。

このコンサートでは『紅いコーリャン』の中の花嫁を籠に乗せて行くシーンで使われていた曲も歌われたけど、 映画と違ってレゲエ調で歌われ思わず笑ってしまった。 また「神酒曲」は姜文の泥臭い歌い方と違って、町の響きのする切れのよい歌い方をしていた。 でも私はやっぱり、姜文のあまりうまくないけど土臭いあかぬけしない歌い方の方が好きだ。 上手いのは張監督自身の歌だけど。

コーリャン畑で歌われていた「妹妹曲」はこのコンサートではクラッシック的な ろうろうとした歌い方で同じ曲でも歌い方演奏の仕方で随分変わってくるもんだなと思った。


趙季平(チャオ・チーピン)作曲家

1945年8月20日、河北省東鹿生まれ。
現在、陝西省文藝劇院院長、陝西省音楽家協会副主席、中国民族管弦楽学会理事、 中国舞踏家協会会員に在任中で国家第一級作曲家。彼の父親は、 「長安絵派」の創始者として有名な水墨画家であり、 兄は国際的に活躍しているチェロ奏者で、幼い頃から彼らの影響を受け、 優秀な成績で西安音楽学院作曲学部を卒業。その後20年に渡り、 陝西省戯曲研究院にて作曲、指揮者としての経験を積みながら、 中国古典音楽を基盤に、様々な作品を発表。彼は、国際的に活躍めざましい 中国の映画監督の張藝謀(チャン・イーモウ)、陳凱歌(チェン・力イコー) らの映画の音楽を多数手掛け、1991年、フランスのナント国際映画祭で、 彼の作曲による中国台湾映画「ファイブ・ガールズ&ロープ」により、 中国初の最優秀音楽賞を受賞している。その他、様々な国の映画祭で、 数多くの賞を受賞し、脚光を浴びる。

彼独自の、中国古典音楽と西洋音楽の絶妙なバランス、彼の映画音楽に対しての 新しい意識と芸術性は、世界的に高く評価され、大きな反響を呼んでいる。


彼の手掛けた映画音楽作品には、「黄色い大地」、「大閲兵」、「天菩薩」、 「紅いコーリャン」、「菊豆」、「ファイプ・ガールズ&ロープ」、 「紅夢」、「心の香り」、「秋菊の物語」、「〜さらば、わが愛〜覇王別姫」 等をはじめ日本未公開の数多くの中国映画作品がある。

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