女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
29号   pp. 51 -- 53

ゆうばりファンタスティック映画祭報告記




関口治美

今年で五周年を迎えた、ゆうばリ国際冒険・ファンタスティック映画祭。 私は昨年初めて参加しましたが、その楽しさ、市民の皆さんの暖かさが とても気に入って今年も行ってまいリました。東京ファンタの弟分ですが、 作品の質の高さやゲストの華やかさは兄貴以上。今年は暖冬で雪が少なく、 加えて相棒の体調が思わしくなかったため、スキーはパスして四泊五日で 計十四本の作品を観ました。


ゲスト

五周年というだけあって、ゲストは超豪華。 ゆうばりファンタには三つのコンペティション部門がありますが、 メインのヤング・ファンタスティック・グランプリ部門の審査員は 往年の色男ことロジェ・バディム監督、今までは審査される側だった勝新太郎、 二十五歳の彼女を同伴してきたデニス・ホッパー、 そして可愛いお嬢さんの良きパパ侯孝賢の四人。 ほかにも、ビデオ部門の審査員はヘア・ヌードで復活した川島なお美と 懐かしの"赤色エレジー"あがた森魚、 オフ・シアター部門にはスピーク・ラークの加藤雅也といった具合。 また、勝新の応援に来た竹中直人や原田芳雄、映画出品作のゲストとして、 うじきつよし、金子修介、田口トモロヲ、遊びがてらの大友康平、 ロケハンに来た中原俊と中島ひろ子などなど…。 こういったスターたちがホテル(夕張には主なホテルは二軒だけなのです)や会場、 はたまたゲレンデ(デニス・ホッパーはスキー・スクールに入ったそうな) や道端をウロウロしているわけですから、映画ファンには堪えられません。 エレベーターのドアが開くと、原田芳雄が飛び込んできたリ、 売店で侯孝賢が並んでいたり、朝食に行けばデニス・ホッパーが上手に箸を扱いながら 味噌汁をすすっていたり…。エピソードを書けばキリがありません。 とにかくカメラとサイン帳が大活躍して、私がもらったサインはなんと二十五名分でした。



作品

ゆうばりファンタは前記のように三つのコンペティション部門と招待作品上映、 それにスペシャルイベントで構成されています。 スペシャル・イベントはほとんど参加しませんでしたが、勝新太郎劇場や ごぞんじ澤登翠の活弁による追悼マキノ雅広特集などが上映されました。 澤登さんとはなぜかトイレや送迎バスでやたらとご一緒するハメになり、 すっかリ顔なじみになってしまいました。
自主製作映画まで観る気がないので、オフ・シアターもパス。 ビデオ部門(邦画と洋画に分かれていて各四本がビデオ上映)では、 メル・ブルックス製作総指揮の『ガーグランド』というサスペンスを観ましたが、 オーソドックスなサイコ・スリラーでなかなか楽しませてくれました。 ヤング・ファンタスティック・コンペテイション部門は、 たったの六本の参加作品しかありませんでしたが、どれも粒揃いで面白い作品ばかリです。
ざっと感想を書いてみますと…。


『カルネ』 (フランス)

四十分のシネマスコープ作品。馬肉屋の親父とその自閉症の娘をめぐる ブラックでやるせないお話。字幕がシニカルで笑いを誘うのですが、 私の前に座っていた某監督(さて誰でしょう)の座高が異常に高くて 右半分が欠けてしまい、ほとんどスタンダード・サイズ状態で残念無念。 監督のギャスパー・ノエは小松沢プロデューサーに「女好き!」とからかわれていました。 南俊子賞受賞。



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  • すっかりなじんでゴキゲンなデニス・ホッパー。 ファンタオタクが新聞で作ったカブトで登場。 勝新とももうオトモダチ。
  • 審査員長のロジェ・バディム。バルドー、ドヌーブ、 ジェーン・フォンダを妻にした天下の二枚目も今じゃただのおっさん。 お腹のたるみが悲しくてたまりませんでした。 左はデニス・ホッパーの彼女です。
  • 開会式/あがた森魚に拍手を習う侯孝賢(ホウ・シャォシェン)が可愛い。


『コーンヘッズ』 (アメリカ)

『ウエインズ・ワールド』に続き、米のTV「サタデー・ナイト・ライブ」 の一コーナーを映画化。 トンガリ頭のおかしな宇宙人がまきおこすナンセンス・コメデイで、 『ショウビズ・トゥデイ』では酷評でしたが、お腹の底からよく笑えました。 スティーブ・バロン監督にサインをもらうと「映画は観たか? 気に入ったか?」 などと根掘り葉掘り聞かれてしまいました。


『エル・マリアッチ』 (アメリカ)

超低予算(七千ドル=約87万円)で作られたとあちこちで話題になっている ノー天気なラテン・アクション。ギター抱えた主入公が「オイラはただの流し〜」 などといきなリ歌いだす所なんて軽くて楽しめました。 急遽"最も楽しませてくれた"賞受賞。賞品はやまいもと夕張メロン。


『青空に一番近い場所』 (日本)

劇団・第三舞台の演出家である鴻上尚史によるサラリーマンに捧げるファンタジー。 マネージャーが私の友人だったことから観たのですが、予想以上に出来が良く、 観てよかったと思います。特に三浦友和の演技には目を見張りました。 この作品は無冠でしたが、デニス・ホッパーはいたくお気にいりだったようで、 彼の再編集後クズイ配給でカンヌに持って行くという噂。 実現すればすごいけど、さてどうなリますやら。


『ありふれた事件』 (ベルギー)

無差別殺人を犯す殺し屋と彼をレポートし続ける撮影クルー。モノクロだから、 ブラック・ユーモアとして観られるけれど、あの死体の数では カラーだったらただのグロかも。主演の三人(長いので名前はパス)が監督、 スタッフも兼ねていて、ホテルや会場で映画そのものみたいなヘンテコ行動をしていました。 東京ファンタオタクの連中は彼らに鶴の折り方を教えて遊んでいたそうな。 審査員特別賞受賞


『キリング・ゾーイ』 (アメリカ)

昨年のゆうばりファンタで衝撃の日本デビューを飾ったクエンティン・タランティーノ (デニス・ホッパーにゆうばりを勧めたのは彼なんですと)が、 製作総指揮にあたった九十年代版『狼たちの午後』。 主演がエリック・ストルツとジヤン=ユーグ・アングラード、ジュリー・デルピーという豪華さ。 中でもドラッグ漬けでエイズというアングラード(なぜか故ジョン・カザールに似てる) の演技がすごすぎてファンが減リそうだけれど、 見事にタランティーノ印になっているので、『レザボア・ドッグス』や 『トゥルー・ロマンス』が好きな方は必見です。 グランプリ受賞。



その他、招待作品では『デモリッション・マン/アメリカ・バージョン』 (ロードショー版との違いって何だ?) 『ネクロノミカン』(いかにもファンタ向きのモダンホラー) 『バッド・ルーテナント』(ハーヴェイ・カイテルの正面ヌードにゲーッ!) 『危険な友情 マックス&ジェレミー』(女性監督によるフイルム・ノアール。お薦めです) 『トラウマ』(ダリオ・アルジェント久々のサイコ・サスペンス) 『愛が微笑む時』(閉会式にピッタリのハートウォーミングなファンタジー) を観ましたが、最後に特別上映された『アニメ版RAMPO』にふれておきたいと思います。 これは夜中に行なわれた勝新太郎&白井佳夫の対談 (ビデオを持っていけば良かったと思うくらいの超面白トークでした) とワハハ本舗のショーに続いて上映されたのですが、 江戸川乱歩の短篇のひとつを四分にまとめた非常に出来のいい作品です。 もしかしたら、二パターンで公開される実写版よリも遥かに出来がよかったリして…。

来年のゆうばりが早くも待遠しい私ですが、秋には東京ファンタ十周年祭が控えています。 どうやらこちらもすごいことになりそう(と私が勝手に思っている) で体力とお金を貯えようとしている今日この頃なのです。



掲載写真(省略)キャプション
  • 会場でサインに応じる侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。 とっても気さく。




>> ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

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