女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
28号 (Feb. 1994)   pp. 43 -- 45

ちょっとお節介な香港ガイド

関口治美

何度も行ったことのある方は「こんなの知ってるわ!」と思うかもしれませんが、 香港は映画ファンにとってオモチャ箱みたいな所です。 一度しか行ったことがない私ですが、これから行かれる方や香港に興味のない方は ぜひご一読いただけると幸いです。

たいていのツアーは半日〜一日の観光がついています。土産物産廻リが多いので、 最近ではパスする人が多いのですが、映画ファンならではの楽しみ方もあります。 『慕情』のレパレス・ベイ (ただし『傾城の恋』の舞台となったレパレス・ベイ・ホテルまでは行ってくれません)、 そろそろなくなる九龍城砦(『新ポリス・ストーリー』の爆破シーンにも登場) を眺めながら、日本が生んだ世界のヤオハンの本部 (道路の真ん中にドーン!と構えた舟が店)があるホンハム地区へ。 観光の終点はおそらく東尖沙咀の免税店ですが、その隣は『ツイン・ドラゴン』 でジャッキー・チェンがスィート・ルームに宿泊していたホテル日航免税店の中へは入らずに、 このホテルでティー・タイム(すいているし日本人向きなので落ち着く) してから旅程を練りましょう。

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さていよいよ行動開始。せっかく滞在するのだから夜景は必ず九龍側、 香港島の両側から見ましょう。あまりの違いにびっくりします。 香港島からはやっぱりビクトリア・ピーク。ピーク・トラム(登山電車) の乗って出来るかぎり山頂まで行きましょう。 またピーク・トラムの山麓駅までは中環駅前から出ている送迎バスがお薦め。 二階建てのオープントップバスでしかも無料というすぐれモノで、 二階へ昇りスリリングな気分を味わって下さい。山頂にカメラと三脚を持っていけば、 かの百万ドルの夜景はもう貴女のもの。私は三脚なしで撮りましたが、 結構綺麗なな仕上がりだったのが自慢です。 一方九龍側はあまリ高い山がないので、私は香港太空館の周辺から見ましたが、 シェラトン・ホテル脇のシグナルヒル・ガーデンからも綺麗という噂。 お金と時間があればリージェント・ホテルからのラウンジもいいのではないでしょうか。

香港を征服するコツは、交通手段を使いこなすこと。九龍ならばネーザンロードを 歩いて散策すれば充分ですが(『いますぐ抱きしめたい』 の原題のモンコク以北は夜の女性一入歩きは物騒な気がします)、 香港島へは必ずフェリーで渡リ、島内ではトラム(路面電車)を。 同じ路線を地下鉄も走っているし、二階建てバスもあるけれど、 トラムの楽しさは香港ならではのもの。二階へ昇って、 映画でお馴染みの貼リ出し看板を見ながら映画のキャスト気分にひたって下さい。 面白そうな通りにぶつかったらふらっと降リて散策し、 また乗っては降りるのも楽しいもの。料金も一回一香港ドル(約十五円) と安いのが魅力です。なぜか日本人観光客の多くは乗らないのですが、 もったいないと思います。まずは中環から西の端上環までテレテレ歩きましょう。 香港の丸ノ内みたいな中環駅周辺からほんの十分ほどで古い通りに出ます。 壊れかけたようなアスファルトの道、古い町並みからはホイ兄弟やサモ・ハンあたリが 顔を出してきそう。飽きてきたらトラムに乗り、東へ引き返します。 中環から少し行った所になるパシフィック・プレイスまでのあたりは 『シティ・ハンター』のローラースケートでのチェイスとか、 『妖獣都市』などのロケで使われていました。 東の端の北角も必見です。トラムは繁華街を抜け、いつしか住宅地へ。 と思った途端に急に市場へ突入するのです。 狭い通りいっぱいに出ている露店の間をトラムが進んで行くという光景は ここでしか見られません。市場を抜けたトラムはUターンして中環方面へと戻りますので、 そのまま乗リっぱなしでいましょう。途中で降りて市場見学も面白いですね。 『新・極道の妻たち』(だったかな?)では、この市場を和服で岩下志麻が歩いていました。

食事は必ず自分の足で予約に行くべきです。 結構高級店でも服装はカジュアルでOKでした。 現地の人たちと同じフロアでおいしいものをリーズナブルに食べましょう。 私のお薦めのお店は「天天漁港」なる海鮮料理店で、アラン・タムがオーナー。 店内の水槽で泳いでいる魚介類を好きなように料理(調理代はタダ)してくれるのですが、 難点は広東語オンリーだということ。でもご安心を。 英語ペラペラのハンサムなマネージャー氏がいますので捜して下さい。 ここの海老チリとスープは絶品でした。三店舗もあるということですが、 私が行ったのは佐敦駅前店。九龍の銀座通りとも言うべきネーザンロードに面していて 眺めも抜群です。ビル内には映画館(戯院)倫敦シアター (『さらば、わが愛〜覇王別姫〜』を上映中でした)があるので、 食事のあとに映画を観るのもよいでしょう。食事は広東料理がやっぱり一番おいしいので、 まずはずれがないとは思いますが、汁ソバはやめた方が無難。 どうやらダシが日本人の口にはあわないようです。どうしても麺を食べたい時には 焼きソバにしましょう。映画ファンならではのお土産をひとつ。 スーパー・ワトソンズにしか売っていないお茶〈暴暴茶〉がそれ。 ゴールデン・ハーベストの副社長チャイ・ラン氏が発明したお茶で、 暴飲暴食を抑え二日酔いにも効くというもの。 香港人の好むポーレイ茶と薔薇のつぼみをべースに何種類かの漢方薬を ブレンドしたものですが、飲みつけると病み付きになってしまいますよ。

さて、しんがリはお待ちかねの映画。香港は狭いのに、映画館が多くてびっくりです。 私が入ったのは、パシフィック・プレイスにあるUA金鐘という所。 観たのはアンディ・ラウの『戦神伝説』古装物(時代劇)で、 共演がケニー・ビー、アニタ・ムイ、マギー・チャン、スタッフにサモ・ハンや チン・シュウトンの名もあるので期待したわりには出来はイマイチ。 アンディの天幕の製作作品ですが、日本では商売にならないでしょう。 映画はともかくこの映画館は最新設備でとっても綺麗。チケットはコンピュータ発券で、 自分で席を選ぶというもの。入口と出口が別の完全入れ替え制でしたが、 驚くべきことには出口の外はもう大通リという斬新な設計でした。

ほかの映画館にかかっていた作品はというと、よくガイドブックに出てくる 銅鐸湾の明珠と翡翠では『覇王別姫』と『夢醒時分』というコン・リーの二本立。 ホテル近くのオーシャン・シアターでは先行オールナイトで『シティ・ハンター』。 免税店の傍にある映画館(館名不明)では、サミュエル・ホイ、レスリー・チャン主演の 『花田[喜喜]事』といったところ。看板やポスターの写真ばかり撮ってしまいました (ビデオもね)が、ほとんどは日本公開されそうもなく写真を見るたびに映画に対する期待が 膨らんでしまいます。

とまあ、いくら書いても話は尽きないのですが、1997年の返還までには また行きたいと思っています。どなたか私と同行して下さる方はいませんか?



掲載写真キャプション (写真は略)
  • 空港近くホンハム地区にある舟の形のヤオハン
  • 香港島の東の端北角(ノース・ポイント)の市場。 よくみると真ん中に線路がありこの中をトラム(路面電車)が通る!
  • コーズウイ・ベイにある映画館ジェイドとパールの看板 (ここの看板はよくガイドブックに載っています)。
  • 『夢醒時分』のポスター?大きすぎて全部撮れずコン・リーのアップで。 シルビア・チャン監督、ケニー・ビー共演。
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