女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
27号   pp.28 -- 40

劉徳華(アンディ・ラウ)がやってきた

1961年香港生まれ。80年にTVB演技生訓練所に入学。卒業後、TVで活躍。 82年『彩雲曲』で映画デビュー。 (同年の作品『望郷/ボートピープル』で注目されたのでこちらが事実上の デビュー作になる)

 その後、『法外情』で人気を博し『家在香港』『法内情』『今すぐ抱きしめたい』 『人海孤源』『ゴッド・ギャンブラー』『ゴッド・ギャンブラー2』『欲望の翼』 『川島芳子』『五億探長雷洛傳』『機BOY小子眞假威龍』『戰神傳説』などの 名作・ヒット作で、今やジャッキー・チェンやチョウ・ユンファに代わる次代の スーパースターとなった。

 88年に台湾のゴールド・ドラゴン委員会の主演男優賞を受賞。89年には公認の ファンクラブも設立され、香港のみならずシンガポールや台湾にもファンが多い。

 シンガーとしても有名で、香港では彼のCDはどれも大ヒット。 出演映画の主題歌も数々歌っている。





フィルモグラフィ

HP担当者より:以下のフィルモグラフィは1993年の時点で地畑さんが書かれたものを、 今回白石さんが最新のデータに基づいてupdateしてくださったものです。

1982年
  • 『彩雲曲』(呉小雲)
  • 〈望郷/ボートピープル〉『投奔怒海』(アン・ホイ[許鞍華])
1983年
  • 『毀滅號地車』(クラレンス・フォ[霍耀良])
  • 『家在香港』(敬海林)
1984年
  • 『停不了的愛』(マイケル・マック[麥當傑])
  • 〈上海13〉『上海灘十三太保』(チャン・チェ[張徹])
1985年
  • 〈七福星〉『夏日福星』(サモ・ハン・キンポー[洪金寶])
  • 『法外情』(呉思遠)
1986年
  • 〈十福星〉『最佳福星』(エリック・ツァン[曾志偉])
  • 〈マジック・クリスタル〉『魔翡翠』(バリー・ウォンorウォン・チン[王晶] *以下バリー・ウォンで統一)
1987年
  • 『肝膽相照』(デビッド・ライ[黎大〓])
  • 〈愛と復讐の挽歌〉『英雄好漢』(テイラー・ウォン[黄泰來])
  • 〈愛と復讐の挽歌・野望編〉『江湖情』(テイラー・ウォン[黄泰來])
1988年
  • 『精装追女仔之二』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈チャイナ・フィナーレ清朝最後の宦官〉『中国最後一個太監』(ジェイコブ・ チャン[張之亮])
  • 『最佳損友』(バリー・ウォン[王晶])
  • 『法内情』(テイラー・ウォン[黄泰來])
  • 〈いますぐ抱きしめたい〉『旺角門』(ウォン・カーウェイ[王家衛])
  • 『猟鷹行動』(ノーマン・ロウ[羅文])
  • 〈香港極道・野獣刑事〉『神探父子兵』(ユン・ケイ[元奎])
  • 〈ドラゴンファミリー〉『龍之家族』(ラウ・カーウイン[劉 家榮])
  • 『群龍奪寶』(袁振洋)
  • 『最佳損友闖情關』(バリー・ウォン[王晶])
1989年
  • 〈餓狼烈伝〉『同根生』(王龍威)
  • 『省港旗兵第三集』(マイケル・マック[麥當傑])
  • 『飆城』(デビッド・ライ[黎大〓])
  • 『最佳男朋友』(陳國新)
  • 〈トップ・ポリス〉『傲氣雄鷹』(李烱柱)
  • 『第一繭』(梁本煕)
  • 『神行太保』(趙良駿)
  • 〈カジノ・レイダース〉『至尊無上』(バリー・ウォン[王晶]&向華勝)
  • 『小小小警察』(エリック・ツァン[曾志偉])
  • 『人海孤鴻』(プーン・マンキッ[潘文傑])
  • 『専釣大〓』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈チャイナ・ホワイト〉『轟天龍虎會』(ロニー・ユー[于仁泰])*日本版にはアンディの場面なし
  • 『法内情大結局』(マイケル・マック[麥當傑])
  • 『精装追女仔之3狼之一族』(シャーマン・ウォン[黄靖華])
  • 〈ゴッドギャンブラー〉『賭神』(バリー・ウォン[王晶])
1990年
  • 〈アンディ・ラウ 野獣戦線〉『愛人同志』(テイラー・ウォン[黄泰來])
  • 『富貴兵團』(ケント・チェン[鄭則士])
  • 〈アンディ・ラウ 武闘派烈伝〉『再戦江湖』(張同祖)
  • 〈カジノ・シンジケート/組織犯罪覇権抗争〉『至尊計状元才』(向華勝&テイラー・ウォン[黄泰來])
  • 〈アンディ・ラウの逃避行〉『天若有情』(ベニー・チャン[陳木勝])
  • 〈サンダーボルト・如来神掌〉『摩登如来神掌』〈テイラー・ウォン[黄泰來])
  • 〈川島芳子〉『川島芳子』(エディ・フォン[方令正])
  • 〈アンディ・ラウ 仁義なき抗争〉『義胆雄心』(陳恵敏)
  • 〈アンディ・ラウ 獄中龍〉『獄中龍』(ケント・チェン[鄭則士])
    『異域』(チュー・イェンピン[朱延平])
  • 〈ゴッド・ギャンブラー2〉『賭侠』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈欲望の翼〉『阿飛正傳』(ウォン・カーワイ[王家衛])
1991年
  • 『整蠱専家』(バリー・ウォン[王晶])
  • 『中環英雄』(ハーマン・ヤウ[邱禮濤])
  • 〈アンディ・ラウ ラスト・ブラッド/修羅を追え〉『驚天12小時』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈レイダース〉『至尊無上II永覇天下』(ジョニー・トー[杜?L峯])
  • 〈蒼き獣たち〉『五虎将之決裂』(エリック・ツァン[曾志偉])
  • 〈香港マフィア・暴虐IN歌舞伎町/極道追踪〉『極道追踪』(アン・ホイ[許鞍華])
  • 〈炎の大捜査線〉『火焼島』(チュー・イェンピン[朱延平])
  • 〈暗黒英雄伝〉『衝撃天子門生』(ピーター・ポー[何卓榮])
  • 〈リー・ロック伝大いなる野望/part1炎の青春〉『五億探長雷洛傳I雷老虎』(ローレンス・アモン[劉國昌])
  • 〈リー・ロック伝大いなる野望/part2香港追想〉『五億探長雷洛傳II父子情仇』(ローレンス・アモン[劉國昌])
  • 〈アンディ・ラウの神鳥伝説〉『九一神?闍 侶』(ユン・ケイ[元奎]&デビッド・ライ[黎大〓])
  • 『與龍共舞』(バリー・ウォン[王晶])
1992年
  • 〈アンディ・ラウ カジノ・タイクーン〉『賭域大亭之新哥傳奇』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈英雄烈伝〉『嘩!英雄』(ベニー・チャン[陳木勝])
  • 〈アンディ・ラウ 獅子よ眠れ〉『龍騰四海』(霍耀良)
  • 〈九龍帝王/ゴッドオブクーロン〉『廟街十二少』(蒋家駿)
  • 『機BOY小子眞假威龍』(ゴードン・チャン[陳嘉上])
  • 〈アンディ・ラウ カジノ・タイクーン2〉『賭域大亭之至尊無敵』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈アンディ・ラウ 神鳥聖剣〉『九二神?阡V痴心情長劍』(ユン・ケイ[元奎]&デビッド・ライ[黎大〓])
  • 『侠聖』(黄文雲)
  • 〈天空伝説/ハンサム・シビリング〉『絶代雙驕』(エリック・ツァン[曾志偉])
1993年
  • 『戰神傳説』(サモ・ハン・キンポー[洪金寶])
  • 『反斗馬[馬留]』(エリック・ツァン[曾志偉])
  • 〈アンディ・ラウのスター伝説〉『天長地久』(ジェフ・ラウ[劉鎮偉])
  • 『超級學校覇王』(バリー・ウォン[王晶])
1994年
  • 〈酔拳2〉『酔拳II』(ラウ・カーリョン[劉家良])
  • 〈キリング・アンド・ロマンス/狂気の愛〉『殺手的童話』(ヴェロニカ・チャン[陳静儀])
  • 〈酔拳3〉『酔拳III』(ラウ・カーリョン[劉家良])
  • 〈アンディ・ラウ 天與地〉『天與地』(デビッド・ライ[黎大〓])
  • 『刀・劍・笑』(テーラー・ウォン[黄泰來])
1995年
  • 〈復讐のプレリュード/大冒険家〉『大冒險家』(リンゴ・ラム[林嶺東])
  • 〈フル・スロットル/烈火戰車〉『烈火戦車』(イー・トンシン[爾冬陞])
1996年
  • 『奇異旅程之真心愛生命』(サムソン・チュウ[趙良駿])
  • 〈アンディ・ラウ 戦火の絆〉『天若有情III/烽火佳人』(ジョニー・トー[杜?L峰])
  • 〈上海グランド〉『新上海灘』(プーン・マンキッ[潘文傑])
  • 『1/2次同床』(ノーマン・ロー[羅文]、ダニエル・ユー[余偉國])
1997年
  • 〈アンディ・ラウ アルマゲドン〉『天地雄心』(ゴードン・チャン[陳嘉上])
  • 『黒金』(マイケル・マック[麥當杰])
1998年
  • 『龍在江湖』(バリー・ウォン[王晶])
  • 『賭侠1999』(バリー・ウォン[王晶])
1999年
  • 〈愛は波の彼方に〉『愛情夢幻號』(ハーマン・ヤウ[邱禮濤])
  • 『黒馬王子』(バリー・ウォン[王晶])
  • 『賭侠大戰拉斯維加斯』(バリー・ウォン[王晶])
  • 〈暗戦/デッドエンド〉『暗戰』(ジョニー・トー[杜?L峰])
  • 『龍在邊縁』(クラレンス・フォ[霍耀良])
2000年
  • 『決戰紫禁之巓』(アンドリュー・ラウ[劉偉強])
  • 『孤男寡女』(ジョニー・トー[杜?L峰])
  • 〈ファイターズ・ブルース〉『阿虎』(ダニエル・リー[李仁港])
2001年
  • 『痩身男女』(ジョニー・トー[杜?L峰])
  • 『全職殺手(YOU&I)』(ジョニー・トー[杜?L峰])

*『 』は原題、〈 〉内は邦題(ビデオタイトルも含む)
 ( )内は監督名、読みは出来る限りの掲載です。

*以上は主に電影雙周刊、香港電影通信を参考にさせていただきました。

*『神鳥伝説』は11月19日ポニーキャニオンよりビデオリリース予定

*『…神鳥聖剣』は11月21日コロムビアビデオよりビデオ・LD発売予定






東京国際ファンタスティック映画祭'93より

地畑寧子

 行ってきました。行ってきました。去る九月三十日のファンタスティック映画祭 “スター伝説”アンディ・ラウ。一日に四本の映画を観るのは久しぶりだったので、 途中で寝てしまいはしないかと不安だったのですが、とんでもない! 会場の熱気に押されて最後まで感動ばかりして帰路につきました。

 折りしもこの“気になるあの人”のコーナーで、アンディ・ラウをしようねと スタッフ約二名で話していたので、この映画祭はうれしい限り。企画して下さった方に 感謝しております。

 私は特にアンディ・ラウの大ファンというわけではありませんでした。それでも 香港映画はわりと好きでけっこう観るので、俳優としての彼は再々スクリーンで 観ていたのですが、香港の音楽事情などまるで知らず、香港電影通信の会員でもなく、 銀色世界や電影雙周刊も読んでいない私は、彼があちら香港などではスーパースターだとは 聞いていたものの、日本にこんなに彼のファンがいたとはちっとも知りませんでした。 と、いうのも前々々日に『ワンス・アポン・ア・タイム 獅王争覇』を喜びいさんで 観に行ったものの、長蛇の列に驚いて、もしかしてこの日も長蛇の列?と考えて、 私なりに多めに見積もり開場時間の一時間半前にパンテオンに行ったのです。

 が、なんと!!!六階の階段まで 女性がびっしり。しかも手にはカメラはもちろん、花束や贈り物らしきかわいらしい 包みを抱えているではありませんか。

 ひゃーの一言。 自分の甘さに気が付き恥じ入るばかりでした。待ち時間の間、香港のアンディ・ラウの ファンクラブに入っている人や、熱狂的ファンの人たちから、いろんな彼に関する 情報を教えていただき、舞台挨拶も二回あるとかの噂も飛びかい、ファン同士の会話も 階段中に響いていました。開場前からこの熱気。圧倒されました。



 さていよいよ開場。映画の見易い席より舞台に近い方へと走る観客。 私も波に乗り、ステージ前に撮影場所を確保したいものの、会場係員に 追い返される始末。そういえば香港と中国からもプレスのカメラマンが来ていました。 ロビーでは映画祭に合わせて発行された彼の写真集が飛ぶように売れて、入り口前では 彼の特大写真の前で記念撮影。とろい私はおろおろするばかり。と、何とか 一階の後部に席を取り、耳を澄ましていると、関西弁、“ホテルどこに取りました?” の会話が聞こえてくる。こんな遠くから観にきている人がいるんだと思わず その人たちを尊敬の眼差しで観てしまいました。



 ベルがなりいよいよ開演。スクリーンには今年のファンタスティック映画祭の 予告編が流れ、スター伝説アンディ・ラウの場面になるや会場は拍手の渦。 お次は例のごとく小松沢氏の登場となったわけですが、カメラを手にした女性が 一斉に構え、本人の登場。会場は一気にフラッシュの嵐と“アンディ”“華仔” の声が飛びかい、たちまち撮影タイムとプレゼントの手渡し時間に早代わり。

 ろくなカメラも持って行かず、プレゼントなど持ってもいない私は、 会場の熱狂的なファンの熱気に呑まれながらも、アンディ・ラウ本人の姿を遠くから、 観ているだけでした。しかし、遠目に観た彼はやっぱりスターの名にふさわしい人なんだなぁと実感。 ステージに詰め掛けるファンが贈る花束やプレゼントを一つ一つ大切そうに受け取り、 握手をし、ついにはステージに座り込んでにこやかに応対。ファンを大切にする心は、 どこかの国の芸能人に見習ってほしいと痛感。それに彼のステージパフォーマンスも 堂に入っている。ただ舞台挨拶だからといってステージの真ん中につっ立っているんじゃなく、 端から端まで歩いて声援に答えるおおらかさ。

 結局彼自身も、観客のパワーに答えて四回の舞台挨拶を決行。観客も日本人のみならず、 中国やシンガポールの人たちがいたりして広東語が飛びかい通訳の人も追付かない一幕も。 彼が、毎回服装も変えて現れるサービスにもびっくりしたけれど、一、二回目はいきなり そのトップシンガーの喉を披露してくれたり、ファンからの質問に答えたり、三回目は クイズの正解者に直筆サイン入りのCDのプレゼントをしたり、 四回目は彼のスタッフ5人の紹介と二階の観客へ、サインボールを投げたりとファンに 対する姿勢もただただ恐れ入るばかり。



 小松沢氏の言の通り、スターが少なくなった日本。特に私くらいの年代では、 映画を観る年頃になった時には日本映画はすでに冬の時代になっていて、 心がときめくようなスターといえる俳優はいなくなってしまっていた。 この会場に詰め掛けていた女性(観客の九割は女性だったと思います)たちは、 そんな私と同年輩くらいの人ばかり。彼にあんなにも惹かれる気持ちが痛いほど わかったのです。

 ちなみにファンからの質問の中で気になった点を上げると、 自分が出演していない作品で好きな作品は、『酔拳』と『誰かがあなたを愛してる』 だそうで、(『酔拳II』に出演している彼なら全うな答えだと思います) 97年の香港中国返還後も、香港に残るとの答えでした。


▼『天若有情』監督チャン・ムク・シン

 純愛映画の代表作として、香港映画史上に名を残す名作だとのこと。 端的に言えば、良家のお嬢様と孤独な街のチンピラの悲恋もので、 どこかで観たようないわゆる日活映画の味わい。(小松沢氏の言の通り 『泥だらけの純情』なんです)彼が演じるチンピラは、香港の裏町に住む 境遇の恵まれない人たちの子供の典型みたいな青年で、自殺した彼の母親は 元売春婦で、彼を見守っているおばさんたちも安アパートの自室で、 お客を取るような人たち。劣悪の環境で行き場のない人生を送る若者の描写が、 香港の若者の一部分を等身大にして映しているようで痛々しく感じられたし、 愛する女のために身を退く男のせつない思いもしみじみと(こういった 感情を口に出してしまうと作品が白けてしまうから、アンディ・ラウの役どころが 言葉少なというのは正解だと思う)伝わってきた。

 画的にはマカオのシーンが妙に物悲しく綺麗だし、結婚衣装のままバイクで飛ばし 一気にたたみ込んでくるラストはかなり???感動的だったけど、どうも前半の どぎつい暴力シーンやトラックでのチキンランのシーンの描写が引っ掛かって…。 つまりはこの監督のカラーに乗れず、感情移入できなかったのが残念。


▼『神鳥聖剣』監督ユン・ケイ/デヴィッド・ライ

 アンディ・ラウ自身の映画製作会社天幕の作品。

 夢の中に出てくる美女を求める冒険ものというあたりは、どことなく『天山回廊』 風だし、リチャード・ンの役どころは『ゴールデン・スワロー』風(この作品自身が 『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のパクリみたいなものなので、手が込んでいる)、 随所に『ゴッド・ギャンブラー』『男たちの挽歌』のパロディがあったりして、 香港映画お得意の他作品からのアイディアを頂くとか(つまりは焼き直しっていうものかな)、 パロディが多くて大いに笑える。ただ、香港映画のいいところは本題は別のところにあって、 頂いたものはその作品のカラーに合わせて料理して十分に消化して作品に栄養をつけているところで、 いつもその辺りに感嘆してしまうのだけれど。

 さらにこの作品にはワイヤーをつかったSFXシーンも多く、 かなりエンタテイメントしてる。アンディ・ラウの剣さばきも鮮やかで、 いかにも妖精してるロザムンド・クアンも美しく、堪能できた。


▼『神鳥伝説』監督ユン・ケイ/デヴィッド・ライ

 『神鳥聖剣』と同じく天幕の作品。監督も同じ。ラストシーンも同じ。 しかしこれは『神鳥聖剣』の前年の作品なので、本当はこちらを先に観たかったのだが。 で、出演者が私でも知っている人ばかり(アニタ・ムイ、ケニー・ビー、 グロリア・イップ、カリーナ・ラウ、アーロン・コク)と豪華。

 巻頭いきなり悪役のアーロン・コクの派手なアクションが入り、いやがおうでも 目はスクリーンに釘づけ。舞台は無国籍の未来で(昔のハリウッド映画の史劇みたいな 室内セットがまた綺麗でよく出来ている)、アンディ・ラウ、アニタ・ムイ、 ケニー・ビーはどうやらバウンティ・ハンターみたいな人たちらしい。もちろん、 ラウの見事な剣さばきもワイヤーを使ったアクションにも堪能できるけど、 人間が人間の体を通り抜けるSFXも見事。それにアニタ・ムイの派手なアクションが かっこよく参ってしまった。その彼女がおかしな姉の二役もやっていて、こちらでは 徹底したコメディエンヌぶりを発揮。

 どことなくハリウッド映画の匂いもあって、私は『神鳥聖剣』より、断然こちらを かいます。ちなみにこの作品も他作品のパロディがうまく挿入されていました。 気がついたところでは、グロリア・イップがおみくじをひくシーンで、 人形がついた機械が出てくるけれど、あれはまったく『ビッグ』のパクリ。 人形の顔も、出てくるおみくじのカードもそっくりで笑ってしまいました。


▼『天長地久』監督ジェフ・ラウ

 この映画も天幕の作品。そしてこの日の四本で、私が一番感動した作品。 この作品を最後に観れたことは幸い。『欲望の翼』のテイストが好きな人なら 感動受け合いです。ローエル・ローの音楽も美しく、現在の娘と昔の母親との 同じ動作をダブらせたり、画的にも凝ったシーンが多い。特に私が好きだったのは、 ナット・キング・コールの優しい歌声をバックに花火の中をアンディ・ラウと恋人が 自転車で走り抜け、彼のパトロンに二人の逢瀬を見とがまれ、つないでいた手を パット放すシーン。ここで思わず涙。

 ストーリー展開は『ドクトル・ジバゴ』式の娘の父親探しから入り、舞台は一気に 60年代に遡る。町で出会った男女がお互いパトロンを持つ身の男優と女優として再会し、 当時の映画界の裏側もちらりとのぞかせながら、運命に翻弄されていくといったもの。 文字で書くとえらく感傷的な作品に見えるけれど、永遠の愛をテーマにした純愛ものとして かなりの作品と感じました。

 ちなみにこの作品は、開演が9時を回っていたので、遠方からの客で観られなかった 人がかなりいたようです。加えて私ももう一度観て再度泣いてみたいと思っています。 この作品の一般劇場公開を強く望んでいます。






アンディ・ラウ出演作品から

地畑寧子

 こんなにたくさんの作品に出演しているアンディ・ラウだけれど、日本に入ってきた (フィルモグラフィのページで〈 〉が行頭になっている作品)作品はほんのわずか。 劇場公開作はそのまた一部で、ビデオ化のみという作品もある。そのビデオも レンタル屋にもなかなかない。中でも『省港旗兵』は、第一、二、四集は日本で ビデオ化されているのに、彼が出ている89年の『省港旗兵第三集』だけなぜか ビデオ化されていないというのも残念。

 初めて彼をしっかりスクリーンで観たのは、『愛と復讐の挽歌』。 特に気になる俳優ではなかったけれど、顎の線がシャープで体のきれがいいハンサムな 俳優だなっとは思っていました。この作品と『…野望編』は大方はハードアクションの 触れ込みになっているものの、さすがに香港映画らしく?大陸からの移民の問題にも 触れていて、よく出来てる。アンディ・ラウは“実子よりも養子の方が出来がいい” の典型みたいな養子の役。権力がほしくて我慢できないキレてる義理の兄 (アレックス・マン)に気を使いながら、結局はボスのチョウ・ユンファに期待される ホントお得な役ではありました。前作の回顧録になる『…野望編』でも、 気弱なアラン・タム(チョウ・ユンファが彼に「やさしいのはおまえの天性だ」なんて いうけど、これってまるで『クライング・ゲーム』みたい)を助けるいい役。 口がきけないほどの拷問を受けるシーンもあるけど、堪え忍ぶ様が妙に雄々しく 印象的な役がらではありました。

 そして『ゴッド・ギャンブラー』の1,2。主役のチョウ・ユンファのカードさばきに 目がテンで、彼の軽重両方の演技に感服。 もちろん、アンディ・ラウのそこらのあんちゃんみたいな軽さもよかった。 記憶喪失になったユンファを馬鹿にしながらも面倒をみてしまうお人好し。 ハードなアクションもお手のもの。う〜ん、やっぱりこの人もあっての 『ゴッド・ギャンブラー』だったんですね。 『…2』は、彼より軽いチャウ・シンチーの登場で、ちょっと兄貴風をふかせざるを 得なくなったアンディ・ラウ。1をパロりながら、しっかり勝負に勝ってしまう展開に笑。 彼にはヤッパリTシャツとGパンが一番似合うけれど、ここで着てたタキシードも なかなかフィットしてたと思うんですが。

 『カジノ・レイダース』は、あの『ゴッド・ギャンブラー』に興行成績が 肉迫するほどの大ヒット作だったということだけど、勝負のシーンが少なく 軽快さに欠けているためかピンとこなかった。アンディ・ラウも絆を重んじる男の役で まぁ良かったけれど、日本語、広東語、英語の三ヶ国語会話で、外国語をぜんぜん 話さない彼にちょっと不満。ラスト、タムの偽装が発覚するシーンで作品が救われた感じでした。 『ゴッド・ギャンブラー』でキーになる役をやっていたお二人(一方の人は日本人の役で 日本語がうまいし、一方の人は英語がうまい)も出演。

 忘れちゃいけないのが福星シリーズに出ていた若かりし?頃の彼。昔『七福星』も 『十福星』も観たのにまるで気が付かなかった。なにしろ出演者が超豪華で彼の出番は 少なかったから。『七福星』では、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウと三人一組の刑事役。 名前が特捜刑事ラッキーっていうのには笑。まだ若造って感じだし、髪も短い。 懐かしいパーソンズの黄色のジャケットを着ていました。そういえば少女少女してる ロザムンド・クァンも可愛かった。と、『十福星』ではおじさん連の旧五福星に代わって 登場の新五福星の一人。この話の発端が日本赤軍が武器を買うとかなんとか。 日本赤軍なんて懐かしい言葉。ここでは彼はランボー(これも懐かしい響き)という名の 軍隊出身のマッチョな青年。ヘボい女教官にチョッカイを出す五人の一人。 彼は鼻の形がいい(顎の線といい鼻といいこの人の横顔はいい)のでサングラスや 眼鏡も似合う。ここでは『神鳥伝説』などを予感させる見事な剣さばきをしてました。

 『炎の大捜査線』は、ジャッキー・チェンが死ぬシーンがあると話題になり、 邦題に騙されてかっこいい刑事ものを期待したのに、舞台はほとんど刑務所の中。 四人のビッグスターを時間均等割にして主役にしている感じで、アンディ・ラウは ヤクザの若頭の役。ジャッキー・チェンを狙うなかなか侮りがたい男。こういう一見 陰湿な役もイケる俳優だと確認。

 うって変わって『欲望の翼』。これはいうことなしの作品で大好きです。 青春群像ものは欧米にも秀作が多いけれど、この作品もしかり。けだるいムードで 色もきれい。主題曲がこれまた素敵。この作品でアンディ・ラウっていい俳優だったのかと 遅まきながら気が付きました。ということで、同じ監督の『いますぐ抱きしめたい』 は最近になって観たというフトドキモノの私。巻頭伯母さんから従妹のマギー・チャンが 病院に行くから泊めてあげてと電話がかかってくるシーンから、彼の部屋のつくりは そっくり『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のパクリ。もちろんその後の展開は 全く違うけれど。電話ボックスでのキスシーン、バスを追うシーン、マギー・チャンの 物憂い横顔。もちろん、人生を模索しているアンディ・ラウやもがいているジャッキー・ チュンの生きざまに、始終胸が締め付けられる思いがしたけれど、マギー・チャンの はかなげな美しさはこたえました。青色が作品の基調になっているのも効果的で、 いたく感動した作品。

 ビデオのみの公開作品で、『望郷/ボートピープル』を観られなかったのは 不徳のいたすところ。アン・ホイの秀作と聞いているので是非とも観たいところ。 『チャイナ・フィナーレ清朝最後の宦官』もかなり本国ではヒットしたらしいけれど、 未公開。主役の最後の宦官を演じているのは『ワンス・アポン・ア・タイム〜』 シリーズの莫少聰。アンディ・ラウと三角関係になる女性は可愛らしい温碧霞。アンディ・ ラウは、やけにかっこいい革命分子の役。ラスト莫少聰に温碧霞と自分の子供を託して 旅立っていく出来すぎなくらいのイイ男。貧しさから逃れるために自分の体を 犠牲にしてまで宦官になる一人の男の人生を描いたものだけれど、一歩間違えば ひどく感傷的になるところを莫少聰の持ち前の明るさがカバーしていて、かなり感動的 (初めの十五分くらいに少々ドぎついシーンがあるけれど、その後は大丈夫)。 当時の庶民の姿や社会事情を上手に盛り込んである点もいいところ。監督は 『黄昏のかなた』のジェイコブ・チャン。製作がサモ・ハン・キンポー(京劇の 旅芸人の頭で印象的な役で出演もしてます)。 他の出演者もウーマ、ポーリン・ウォン、林正英など大変豪華。主題歌はアンディ・ ラウが歌ってます。

 『トップポリス』は、まったく『トップガン』のパクリ。巻頭に流れる曲までそっくり。 この邦題をつけた人もなかなかスルドイ。巻頭にアンディ・ラウの名スナイパーぶりを 見せるシーンはあまりに荒唐無稽で大笑い。ちなみにケリー・マクギリスの 女教官の役はロザムンド・クァン。子持ちの親友がアンディ・ラウの無謀追跡で 死ぬところや、彼の好敵手になる男の名前が元ネタでは(ヴァル・キルマーが演っていた) アイスマンだったけれど、こちらではヒーマン。97年の香港中国返還を想定しての話で、 ハードアクションに感嘆するべきなんだろうけれど、あまりに『トップガン』してるので、 笑って観てしまいました。

 以上ずらずらとアンディ・ラウの出演作で観れた物を書きましたが、作品として 一番好きなのは『天長地久』『チャイナ・フィナーレ〜』も落としがたいけれど、 やっぱり『欲望の翼』。彼の役柄で好きなのがやはり『いますぐ抱きしめたい』 となりました。

 それにしても彼はどうしてあんなに鼻血を出すシーンが多いんでしょう。草思社刊 「秘伝香港街歩き術」で藤木弘子さんが書いているように彼は“香港一の鼻血男” なんじゃないかな。まぁそれだけ、ハードアクションをしているということなんだけれど。 そして異常な量の出演数。体には十分気をつけて頑張ってほしいと思います。

 アクションもコメディもいいけれど、やはりドラマで勝負できる俳優になってほしいと 願っています。それに彼の出演した作品や共演者が賞をザクザク取っているのに彼には 賞が回ってこない。これじゃまるで、トム・クルーズ。賞取りが俳優の目的ではないとは 思うけれど、何かの賞を取れるような好運を願っています。
 噂によるとデビッド・クローネンバーグ監督の作品に出演するとか。 クローネンバーグファン(特に『デッド・ゾーン』は好き)の私といたしましては、 (ちょっと彼の作品のカラーとアンディ・ラウが結びつかなかったので意外だったのですが) 期待度は大です。『超級學校覇王』も面白そうなので日本での劇場公開を期待してます!!






劉徳華/アンディ・ラウ旋風 日本でも起こるか?!

宮崎 暁美

 東京国際ファンタスティック映画祭「劉徳華(アンディ・ラウ)特集」に、 わがシネマジャーナルからも二名が興味津々行ってきました。十二時からの 開場だというのにものすごい数の人で、十一時頃には開場になった程。二日も 前から並んでいた人もいたらしい。

 当のアンディ・ラウはというと四本の上映作品『天若有情』『神鳥聖剣』『神鳥伝説』 『天長地久』の始まる前に、毎回舞台挨拶というサービス。しかも毎回衣装を変え、 歌は歌ってくれるは、クイズをやっちゃうはで、ファンにとっては至福の一日でした。

 ファンがちょっと過熱気味で、キャーキャーとうるさかったのにいやな顔ひとつせず、 サービス精神旺盛なのにはびっくりした。香港のスターってけっこうみんな気さくなのかな。

 この映画祭では梁家輝(レオン・カーファイ)や張国栄(レスリー・チョン)、 關之琳(ロザムンド・クアン)という豪華来日メンバーだった。レオン・カーファイの コメディ『黒薔薇VS黒薔薇』も見にいったけど、終わったあとのティーチ・インで ファンの質問に真面目にかつユーモアも含めて答えていたのが印象的だった。

きっかけ…私は中国映画に興味があって、 中国の映画情報を知りたいと思って中国図書を扱う本屋さんに行ったら「大衆電影」 「中国銀幕」という本があったのだけど、日本に入ってくるのに二カ月遅れくらいで 情報がどうも遅いなと思って、そばにあった香港の映画雑誌「銀色世界」や 「電影雙周刊」「影藝」を見たら中国の映画情報も載っていて、見始めたのが香港映画に 興味を持ったきっかけ。

 その頃周潤發の『風の輝く朝に』を見て、香港映画もけっこういけると思った。 それまでの香港映画というとジャッキー・チェンというイメージがあって、 アクション物に興味のなかった私は香港映画を見たことがなかった(今はけっこう ジャッキー映画も見ていますが)。私が本を見始めたのは一九八九年頃からで、 ちょうどアンディ人気が沸騰し始めた頃だった。だから毎号どの本を見ても彼のことが 載っていて、どんな俳優なのかなと気になっていた。

 許鞍華(アン・ホイ)監督の『望郷(ボート・ピープル)』も見たいなと 思っていたけど、とうとう見そこなってしまっていて、初めて彼の映像を見たのは 『賭神(ゴッド・ギャンブラー)』。町の気のいいチンピラだけど、なんか憎めない そんな役だった。 そのあと『旺・角・・門(いますぐ抱きしめたい)』 を見て、すっかりアンディのファンになってしまった。この映画のファンで 三留まゆみさんが「アンディ・ラウの背中には淋しさや哀しみが同居している」 「生き急ぎ、死に急ぐ、出口のない青春。明日なき青春ってやつがアンディには よく似合う」って書いていたけど、私も同感。今回のアンディ特集で上映された 『天若有情』『天長地久』もまさにその路線。でも私は『天長地久』のほうが 好きだった。

 『阿飛正傳(欲望の翼)』、みんなこの映画を絶賛するけど、私はストーリー性と ドラマチックな要素が入った映画が好きなので、この手の映画は苦手。でもこの映画の アンディはかっこよかった。『トップポリス』でもそうだったけど、彼ってけっこう 警官のあの帽子が似合う。

 今回のあまりの人気に十一月二三日から新宿シネマアルゴで彼の特集が組まれ 「アンディ・ラウ映画祭」がレイトショーで行われることになった。見落とした作品を この機会にぜひ見たい。この映画祭のプログラムには今回の特集で上映された作品のうち、 三本が上映されるけど『天長地久』は入っていない。あの日まわりの人の感想を聞くと 『天長地久』が一番人気だったように思うし、私もまた見たいと思った。ぜひこの作品 どこかで公開して欲しいな。

 アンディは歌手としても活躍している。すでに十枚以上のCDが出ているそうだ。 シネマジャーナル前号で劉徳華も歌がうまいなんて 書いたのが恥ずかしい。こんなにCDを出しているとは知らなかった。私は 北京語のアルバム「謝謝的愛」しか持っていないけど、 こんど、彼の本領発揮の広東語アルバムを買ってみよう。

 俳優としてのアンディ、コメディも見てみたいけど、将来的には渋い役をやれる役者に なって欲しいな。ここ数年、年間十本以上映画に出ているようだけど、無理して 周潤發のように体をこわさないように、そして息の長い活動をするために、もう少し 作品を選んでじっくり良い作品に出演していって欲しいと思う。ともあれ、 ファンタスティック映画祭での興奮さめやらず、ますますのめり込みそう。 日本でももっとアンディの出演作品が見られますように。



「アンディ・ラウ映画祭」

シネアルゴ新宿レイトショー
11/23〜29 神鳥聖剣
11/30, 12/1 今すぐ抱きしめたい
12/2, 3 カジノレイダース
12/4〜10 天若有情
12/11〜17 神鳥伝説
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