女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
24号   pp. 42 -- 43

秋のちょっとミーハー映画日誌

飯島

〈死んでもいい〉

恋というには重すぎる、人問の奥底に潜むどろどろとした情念が渦巻いていて、 すっかり息苦しくなってしまった。

一歩まちがえると、配役によってはひどいものになってしまうんだろうなあと思いつつ、 これに関しては、ほぼ納得のキャスティング。 異常なまでに執拗につきまとうキャラクターを演じながら、 生理的に嫌悪感を感じさせない永瀬の特異性。 映画の中では、良き夫で、常識的でありながら、やはり一癖あり、 さすがの存在感、室田日出男。 そして、男を狂わす女、大竹しのぶ。

好き嫌いが別れる映画だろうな、きっと。私はどちらかといえば好きかな。 根がくらいんだ、そういう問題ではないか。 映像の暗さ加減と挿入歌がよかったんだ。


〈王手〉

将棋の世界ということもあって「どついたるねん」 なんかに比べるとパワーにかけるかなあ。 でもこれこそ男の世界、勝負の世界という感じで、それなりによかったな。

あとなんといっても若山富三郎。遺作ということになるのだが、 「ブラックレイン」の松田優作にしてもそうだけど、鬼気迫るというのかな、 迫力あったなあ。加藤昌也もなかなか存在感あった。


〈寝盗られ宗介〉

つか作品のわりに、いまひとつピリッとしなかったが、なんといっても、 原田芳雄さん! 女装姿の芳雄さんが「愛の讃歌」を絶唱するシーン。 感動のあまり、ビービー涙はでるわ、おたおたしてしまうわで、 このシーンだけですべて吹き飛んでしまった。あのハスキーな声が耳から離れない。


〈天国の大罪〉

どうにかしてくれーという感じ。

冒頭の中途半端なベッドシーン、 どうみてもキャリアウーマンにはみえない頼りない女検事、 とにかく吉永小百合はみじめでした。

どうして国際映画祭でオープニングだったんだろう?


〈おこげ〉

よかったといえばよかった、のだけど、なにかインパクトに欠けた。 村田雄浩は頑張っていたし、登場する人々も皆魅力的だった。 物語や人間関係も、リアルで、涙をさそった。そうなんだけど、 いまひとつ、感情移入できなかった。 清水美沙が、村田と中原丈雄に押されっぱなしで、残念だった。


〈きらきらひかる〉

おこげと同じ、同性愛者の男性二人と女一人の関係を描いた話なんだけど、 どちらといわれれば、私は、「きらきら」の方が好きだった。

決して、豊川悦司さんびいきということではない。 (全くないとはいえないが)

「おこげ」は結構多くの人物が登場し、関わりをもつのに対し、 「きらきら」は三人に焦点を絞っていて、三人が身近な人物に感じ、 心理的に入っていきやすかった。

映像もどこか無機質な感じが漂い、エンディングの「大きな古時計」 もはまっていた。

でもやっぱり一番…は、豊川さんのあの百万ドルの笑顔。 アップのにっこり笑う豊川さん、よかったなあ。


〈青春デンデケデケデケ〉

いやあ、楽しかった。青春の甘酸っぱい香がめいっぱい漂っていてこれぞ、大林映画。

懐かしいんだろうな、30〜40代ぐらいの人があちこちで、涙を流しながら、 ゲラゲラとうけまくっていた。 楽器をかじっているわたしにとっても、そうそうそうだようというシーンが多くて、 ぐいぐいと大林ワールドに引きずり込まれてしまった。

なんといっても、インパクトが強かったのは、寺の息子でべース担当の郷田くん。 妙に大人びていて、それが嫌味なくおかしい。その味をうまく出しているのが、 あの「瀬戸内少年野球団」のバラケツ君こと、大森嘉之君。これからが楽しみです。 頑張ってほしい。

舞台は四国・香川の観音寺。ここにも60年代のパワーが流れこみ、 少年達はエレキを手にすることになる。 60年代??戦後の日本にとって最も活気に満ちた時代だったといえよう。

東京オリンピックがあり、学園紛争があり、音楽はベンチャーズ他、 ビートルズ、アニマルズ等々、人々は常に何かを求め、目を光らせていた。

そんな輝かしい青春時代への強い想いが随所にちりばめられた映画でした。

読者有志寄稿‥C. 長谷川

映画館で観る映画は何が何でも失敗したくない。 故に人一倍選択には慎重になってしまう私が、 人の評も聞かずに行った数少ない映画です。 何か予感がしたんですね、きっと。

地味な映画なんです。ある日ロックに目覚めてバンドを組む。 それが小学生ならいざ知らず、60年代とはいえ高校生だもん、普通ですよね。 唯一派手な活動は高校最後の文化祭のみ。 あとは本当に地味〜に川原なんかで練習とかして。 ファッションだってボーカルのちっくんが髪を少しばかり伸ばす程度。 サッカーやプラモデルに夢中になるのと少しも変わらない。 でも、それでも彼らは世界中の宝物を手中にしたように有頂天できらきらしている。 こっちまで、何やら嬉しくなるほどに。

カメラ・ワークが視点と同じ高さだからなのでしょうか。 映画を観ているという自分の存在を忘れてしまいます。 カメラが私の目となって、ストーリーが私の体験による記憶となっていく錯覚。 時代も場所も違うのに、知っている景色、知っている想い。 どんな人でも、この映画を観れば同じ気持ちになることでしょう。

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