女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
[シネマジャーナル]
12号 (1989.08)  pp. 38 -- 41
ミーハー対談

トム・クルーズのこれからを考える

某会社のOLの方ふたりに『カクテル』について話していただきました。
A子さん:映画好き。ロードショウを中心にみているミーハーファン。 ブラット・パックと同年代のためか、この手の映画と俳優にやたらとくわしい。 トム・クルーズがお気にいり。今回はめいっぱいお話しいただきました。
B子さん:やっぱりかなりの映画通。ヨーロッパものを中心にみている落ち着いた映画ファン。 ブラット・パックにもトム・クルーズにも興味なし。今回は聞き役。

B: 

最近トム・クルーズがはやりだけれどどういうところがうけていると思う?

A: 

やっぱり顔がいい。カッコいい。でも演技とかは全部一緒なんですよね。上手とはおもわない。

B: 

『カクテル』みるとあの人のために作ったというかやたらアップが多くて… 私なんかがみるとね、何かどこかが抜けているみたいな感じ。 いい顔だとは思うけどなにかが足りない。

A: 

私はあの人と二歳違いだから妙に親近感があって。 でも真面目でしょ。

B: 

もう結婚しているしね。年上の奥さん。『誰かに見られてる』にでてた人。

A: 

ミミ・ロジャース。まさかあの人だとは思わなかった。

B: 

まさか?(笑い)

A: 

なんていうか、ちょっと二線級女優と結婚するとはおもわなかった。 でも、私生活では筋力トレーニングとかしてすごいんでしょ。

B: 

真面目なハンサム。

A: 

ヤッパリ画面に引き込む力っていうかあるんじゃないかな。 気持ちよくさせるコツみたいな〜カリスマじゃないけどなにかをもっている。 でもトップが一番よかった。 なぜかトップガンみたいな戦士的な役多いんですよね。 カ〜とする役が多いんです。『タップス』って知ってます?

B: 

見なかったけど知ってる。

A: 

あの時も過激的な予備学校生だったの。 ここ(首筋をさす)に青筋たてちゃってね。いつもカ〜となっていつも燃えてる男って感じかな。 それでダサクない、だからいい。 燃えてる男っていうとすぐ星飛雄馬みたいに“とうちゃん”とかなっちゃうんだけど。 ああいうのはいやなんですよね。(笑い)

A: 

で歳とったらどうなるんだろうって時々心配してあげちゃうんだけど。

B: 

うまく歳とれればいいけど。最近は年下も多くなって。 トム・クルーズになったらわかいな〜って感じる。

A: 

青二才って感じがするんですよね。だから心配。 “夏の日の恋”がかかる映画・・・

B: 

『おもいでの夏』?

A: 

じゃなくて・・・

AB: 

『避暑地の出来事』!

A: 

そう、その男の人・・とろい?

B: 

とろい? トロイ・ドナヒュー!

A: 

そうトロイ・ドナヒュー。あの人もやっぱり若もんものにでてたでしょ。 でもあの人歳とって転換がヘタでダメになったじゃない。

B: 

大林宣彦の『漂流教室』にでてた。

A: 

ゴッドファーザーにもでていたの。ロッキーの奥さん (つまりタリア・シャイアのこと)の恋人役にチョロっとしかでなかった。 あの長い1部2部になっている映画の中でたったの5分。 ちょっと昔は主役たくさんやってたひとなのに・・・いきなり『漂流教室』。 どっかのアメリカン・スクールの子供と出ちゃってびっくりした。 転身まちがえるとああなっちゃうんじゃないかって。 だからアランドロンみたいに実業家になっちゃうとか、 カッコよく転身したほうがいいんじゃないかって。 でも『レインマン』があるからいいか!

B: 

アカデミー賞の歴史を振り返るときにはでてくるんじゃない。

A: 

そうですよね。でも日本で公開された最近のが『カクテル』でしょ。 あれみてると行く末が案じられっちゃって。いやんなっちゃう。 もしかしてトロイおじさんになったらって。ファンだから心配。

B: 

でも作品の順番は『カクテル』が先でしょ。 撮った順・・・それ考えて『レインマン』に出たんじゃない?  将来のこと考えて。ダスティン・ホフマンとやっとけばまちがいない?


★背広が似合わないトム・クルーズ


A: 

マット・ディロンっていますよね。彼より明るいです。 マット・ディロンっていうといつもこう(手振りが入る)くわえ煙草ででてきちゃって。 セリフ、ハッキリいわないじゃない。(笑い) 場末のバーテンっていう感じで好きじゃない。 でもトム・クルーズは『カクテル』みたいな明るい南国のが似合う。 ラフなカッコウ似合うんですよね。でも背広が似合わない。

B: 

似合わない!

A: 

変ですよね!!

B: 

『カクテル』の中でジゴロみたいなときも・・

A: 

おかしい! 田舎からポっと出てきた人みたいで。 ソデがこう・・指の第一関節のとこまできてて。 いかにも借りてきたって感じ。(笑い) 『レインマン』のときもそうで、お兄さん(ダスティン・ホフマン)とカジノにいったときも “ビシッと着こなすぜ”っていってるんだけどぜんぜんそうじゃない。 ホフマンのほうが似合ってるんだけど。 あれはいったいどういうことなんだろうって思っちゃった。

B: 

どっちが病気かわからない。

A: 

そう、わからない。

B: 

これから何を望む?

A: 

一本調子の演技はやめてほしいですね。 やっぱり持味とかあるんだろうけどあの人の場合、どれみても一本調子の感じがして。 いっきにあの人とわからない役に挑んじゃうとか、 なにかとんでもない役を一回やらないとダメなんじやないかな。 けっこう世渡り上手の役ばっかりなんですよね。 『レインマン』のときも口八丁手八丁でごまかして車売るディーラー。 どうやってシナリオ選んでるのかしらないけど あの人くらいならいろいろくると思うんだけど。 選び方が自分のできる範囲って感じで。 ちょっとチャレンジャー意識が足りないんじゃないかと思います。 体当たりっていうのかな。『トップガン』はそれなりに体当たリだったけど、やっぱりカッコイイ役。 結局マスクを利用しちゃってる。容姿に頼らないで演技力つけてほしいです。 もう少し演技の幅に気を使ってほしいなって。

B: 

本人にきかせてあげたいような。

A: 

そうなんです。だれか英語にして!なんて・・

B: 

手紙書いちゃったりして。(笑い)

A: 

そうしてください。それこそ失敗をおそれないで、でないと俳優としていきづまるんじゃないかな。 『レインマン』もホフマンの役ならすごいけど、あの人の役はほかの人でもよかった。 ロブ・ロウっていますよね。彼『スクエアダンス』で知恵遅れの役やったでしょ。 あのまんまだっていってたヘンな人いたけど・・(笑い) ロブ・ロウは彼なリに挑戦しているんじゃないかって思います。 でもクルーズってああいう難しい役しない。 ノリはいいけどコメディーセンスあんまりないみたい。


★キファー・サザーランド/エミリオ・エステベス


B: 

真面目すぎちゃって。

A: 

惜しいなっておもう。若い人でもキーファー・サザーランドって好きなんだけど。 キファーって若さに頼ってない。まあお父さんの感じも受けちゃうんだけど。 悪役やってたでしよ。『STAND BY ME』とか。憎々しい役やって、コロっとかわって正義漢の役。 悩める青年の役も上手。結局彼には演技力があるんですよね。 こういう人は歳とってもどんどん役が舞いこんでくるし文芸物にも出られる。 けっこうふたりの差ってあると思います。(ちなみにクルーズ '63生、キーファー '66生)

B: 

これから10年が勝負だね。

A: 

そうですよね。ブラット・パックといっても・・エミリオ・エステベス。 彼なんか顔がとびきりいいわけじゃないことよくわかっているし、 監督とか脚本自分でやっちゃうでしょ。

B: 

そこでまたちがう見方されてる。

A: 

そう。で、『レポマン』とかカルトムービーに主役で出られるし。才能ありますよね。 クルーズとデビュー同じくらいだからつい比較しちゃいます。

B: 

ちょっとはずかしい。逆にあの顔が邪魔してなにか幅を狭めてる。 マスクのよさで売れたのに。 でもあんまり顔のいい人がコメディーやるとわざとらしさがでるときがある。

A: 

それがやっぱり一番つらいですね。TVに転じたいと思っても何か渋みがうける時代みたいだし。 マイアミバイスとか。40でしよ。ドン・ジョンソン。 人間的な重みとか。生き方のカッコよさ。ブルース・ウィルスにしたってそう。 トム・クルーズとかマット・ディロン・・これからが勝負ですね。


★『カクテル』はトム・クルーズのプロモーション映画


A: 

『カクテル』っていったいどういう映画だったんでしょうね?

B: 

話せない。

A: 

あらすじカンタンですよね。私でも書けそう。 くっついてどっかで別れなきゃって思ってたらヘンなおばさん出てきて誘って それにヒョイって簡単に乗っちゃう、あのスゴイ軽いノリ、今風ですね。 勢いにまかせて成功する、失敗をまるで考えない、商才があるのか、 ないのかさっぱりわからないキャラクターがよかったですねー。

B: 

だからどうなのって真面目にみてたら

A: 

しょうがない。

B: 

普通は当たり前すぎてあんな恥ずかしいストーリー書けない。

A: 

何か美形がそろって、サントラがいい、ノリだけでつくった・・・

B: 

トム・クルーズのプロモビデオ!

A: 

ホイチョイプロのノリに近い。時代感覚そのままうつしたっていう…

B: 

でも、そういう感覚映せるってすごい才能。

A: 

もろアイドル映画だけどたまにはいいかなって。気分スッキリの生活潤滑剤映画ですね。

B: 

でも、これでプロモ映画終わりにしてほしいなって、年齢的にね。

A: 

そうですね。次回は全うな作品期待したいですね。

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